20世紀の世界史の構図 - teikokushoin.co.jp ·...

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− − この連載も最終回である。最後は20世紀の歴史 を、世界の一体化とその解体という観点から整 理しておこう。例によって『タペストリー』の世 界全図を広げてじっくり眺めるところから出発し たいのだが、よく見ると20世紀を前半と後半に分 けた40〜43ページ以外に、38〜39ページと44〜45 ページの図が20世紀の初めと終わりを含んでいる。 これはどういう意味だろうか。歴史教育がもつさ まざまな意味のうち、現在につながる過去を理解 するという意味がとりわけ大きい現代史の性格も 考えながら(そこで次ページには44〜45ページの 図を掲げる)、20世紀の構図を考えてみたい。 短い20世紀か長い20世紀か? 話を前の時代に戻すが、ヨーロッパ経済史で は、1450年から1620年ごろまで続いた拡大の時代 を「長い16世紀」と呼ぶ。その後、半世紀の景気 後退局面(17世紀の危機。またオランダの覇権時 代)の後に来るのが「長い18世紀」(覇権の面で は英仏の争いの時期)だ。最近では、これらのト レンドがヨーロッパおよび大西洋経済圏以外の地 域(とくに東アジア)にも共通していたことが主 張されている。では、1世紀おきで「長い20世紀」 はおとずれたのだろうか(大英帝国の覇権時代を 「短い19世紀」とする)。それとも複数の激変を経 験した20世紀の世界史には、「戦争の世紀」など という以上の、単一の性格づけはできないのだろ うか。 従来唱えられていた現代史の構図の多くは、20 世紀初頭までを旧時代と見なし、しかもこれこそ 現代と考えたものが20世紀末まで持続しなかった ので、結果として、「短い20世紀」を主張したこ とになる。たとえば、「ロシア革命から現代史が 始まる」という社会主義を主役とする時代像は、 ソ連崩壊と冷戦終了で終わった。また第一次世界 大戦後に始まった「民族自決権の時代」も、ソ連 やユーゴの解体ののちに大きく事情が変わった。 これらに共通する特徴は、19世紀末から20世紀初 頭(帝国主義の時代)にピークに達した、近代世 界システムが強制する世界の一体化に対して、そ こから抜け出すことを志向していた点にある。と すれば、「社会主義の挫折」や「国民国家のたそ がれ」は、帝国主義時代が、グローバル化を強制 する21世紀の今も続いている(または20世紀末か ら復活した)という意味で、「長い20世紀」の見 方を支持するのだろうか。それとも、現代のアメ リカ一国によるグローバル化の強制は、列強が競 合した帝国主義段階よりむしろ、19世紀イギリス の覇権時代と共通するものと見るべきなのだろう か。 第二次世界大戦の意味 一方、世紀単位で時代を区切るという、見るか らに便宜的なやり方にこだわらなければ、1945年 で大きく世界史を区切る方法が、今なお有効だろ う。第二次世界大戦は、ファシズムと民主主義の 戦いというだけでなく、第一次世界大戦同様の帝 国主義国間の世界分割をめぐる戦争という面をも ち、一方で第一次世界大戦でも一部に現れていた 民族自立の戦いという性格が(とくにアジアで) きわめて強くなった。その後今日まで、列強の世 界戦争というものが起こらず(起こりえず)、し かも植民地の大半が独立したことは、それで世界 全体が平和になったというものではまったくない (先進国が結託して紛争を第三世界に押しつける 体制ができたという皮肉な見方すらある)にせよ、 世界の一体化をめぐる16世紀以来の構図ないしル ールが変化したことを示すのである。 連載ゼミナール グローバル・ヒストリー 第6回 20 世紀の世界史の構図 大阪大学教授 桃 木 至 朗

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Page 1: 20世紀の世界史の構図 - teikokushoin.co.jp · たいのだが、よく見ると20世紀を前半と後半に分 けた40〜43ページ以外に、38〜39ページと44〜45

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 この連載も最終回である。最後は20世紀の歴史

を、世界の一体化とその解体という観点から整

理しておこう。例によって『タペストリー』の世

界全図を広げてじっくり眺めるところから出発し

たいのだが、よく見ると20世紀を前半と後半に分

けた40〜43ページ以外に、38〜39ページと44〜45

ページの図が20世紀の初めと終わりを含んでいる。

これはどういう意味だろうか。歴史教育がもつさ

まざまな意味のうち、現在につながる過去を理解

するという意味がとりわけ大きい現代史の性格も

考えながら(そこで次ページには44〜45ページの

図を掲げる)、20世紀の構図を考えてみたい。

短い20世紀か長い20世紀か?

 話を前の時代に戻すが、ヨーロッパ経済史で

は、1450年から1620年ごろまで続いた拡大の時代

を「長い16世紀」と呼ぶ。その後、半世紀の景気

後退局面(17世紀の危機。またオランダの覇権時

代)の後に来るのが「長い18世紀」(覇権の面で

は英仏の争いの時期)だ。最近では、これらのト

レンドがヨーロッパおよび大西洋経済圏以外の地

域(とくに東アジア)にも共通していたことが主

張されている。では、1世紀おきで「長い20世紀」

はおとずれたのだろうか(大英帝国の覇権時代を

「短い19世紀」とする)。それとも複数の激変を経

験した20世紀の世界史には、「戦争の世紀」など

という以上の、単一の性格づけはできないのだろ

うか。

 従来唱えられていた現代史の構図の多くは、20

世紀初頭までを旧時代と見なし、しかもこれこそ

現代と考えたものが20世紀末まで持続しなかった

ので、結果として、「短い20世紀」を主張したこ

とになる。たとえば、「ロシア革命から現代史が

始まる」という社会主義を主役とする時代像は、

ソ連崩壊と冷戦終了で終わった。また第一次世界

大戦後に始まった「民族自決権の時代」も、ソ連

やユーゴの解体ののちに大きく事情が変わった。

これらに共通する特徴は、19世紀末から20世紀初

頭(帝国主義の時代)にピークに達した、近代世

界システムが強制する世界の一体化に対して、そ

こから抜け出すことを志向していた点にある。と

すれば、「社会主義の挫折」や「国民国家のたそ

がれ」は、帝国主義時代が、グローバル化を強制

する21世紀の今も続いている(または20世紀末か

ら復活した)という意味で、「長い20世紀」の見

方を支持するのだろうか。それとも、現代のアメ

リカ一国によるグローバル化の強制は、列強が競

合した帝国主義段階よりむしろ、19世紀イギリス

の覇権時代と共通するものと見るべきなのだろう

か。

第二次世界大戦の意味

 一方、世紀単位で時代を区切るという、見るか

らに便宜的なやり方にこだわらなければ、1945年

で大きく世界史を区切る方法が、今なお有効だろ

う。第二次世界大戦は、ファシズムと民主主義の

戦いというだけでなく、第一次世界大戦同様の帝

国主義国間の世界分割をめぐる戦争という面をも

ち、一方で第一次世界大戦でも一部に現れていた

民族自立の戦いという性格が(とくにアジアで)

きわめて強くなった。その後今日まで、列強の世

界戦争というものが起こらず(起こりえず)、し

かも植民地の大半が独立したことは、それで世界

全体が平和になったというものではまったくない

(先進国が結託して紛争を第三世界に押しつける

体制ができたという皮肉な見方すらある)にせよ、

世界の一体化をめぐる16世紀以来の構図ないしル

ールが変化したことを示すのである。

連載ゼミナール グローバル・ヒストリー 第6回

20世紀の世界史の構図

  大阪大学教授 桃 木 至 朗

Page 2: 20世紀の世界史の構図 - teikokushoin.co.jp · たいのだが、よく見ると20世紀を前半と後半に分 けた40〜43ページ以外に、38〜39ページと44〜45

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アメリカの20世紀

 次に、世界の一体化という点で間違いなく20世

紀の主役をつとめたアメリカ合衆国について、そ

の「強み」(強烈な影の部分をともなうにせよ)

を整理しておこう。経済面では第二次産業革命の

成果をオートメーション技術の発明などによって

もっとも高度に利用し、圧倒的な生産力を築いた

こと、その基盤のうえで大衆消費社会を実現した

ことなどである(両者に共通するのは、神を信じ

る者がスーパーコンピューターを駆使するような、

サイエンスに対するテクノロジーの優位)。社会

的には、移民の国らしい多様性への寛容と、「ア

メリカン・ドリーム」に象徴される未来志向だろう。

 このアメリカの19世紀末以降の対外進出の過程

と1920年代の生産力が、タペストリー40ページ下

段の図に示されている。ただしこの段階での「世

界の銀行」イギリスの力を過小評価してはいけな

い。現在のアメリカが世界最大の債務国でありな

がら、諸外国に対米投資を続けさせ資本の一斉逃

避を許さない「力」をもち、また大量消費で世

界の景気を支えている面をもつのと同様の存在が、

当時のイギリスだったとされる。その意味で、ア

メリカの1929年恐慌と「世界恐慌」を同一視する

のは正しくない(実際、世界的な恐慌状態は1930

年秋以降のことである)。また、ニューディール

でアメリカの景気が回復したのではない(30年代

末以降に戦争の中で景気回復する)ことは、広く

知られているだろう。アメリカの覇権獲得はあく

まで第二次世界大戦後のことである。

社会主義とはなんだったか?

 「マルクス=レーニン主義」を中心とする社会

主義勢力が、20世紀にあれほど支持されたのは、

①資本主義の構造的矛盾と非人間性、そこから抜

け出す道を、理論的に説いた。②しかも理論だけ

でなく強力な組織と運動を築き、「社会主義国」

の建設や民族独立への支援を実行した、などがお

もな理由だろう。それが最初から全部陰謀やイン

チキだったという議論は論外だが、社会主義には

マルクスも含め、資本主義以上に近代的で高度な

生産をめざす「正統派」の発想以外に、小規模な

共同体(コミューン)を理想とする反近代的発想

がつねに混在していたことに注意する必要がある。

 それでは社会主義のどこが、どう破綻したのだ

ろうか。資本主義理論の面では、帝国主義が資本

主義の最高段階で、世界恐慌後はその「全般的危

機」の段階に入ったという説は、今後その正しさ

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台湾

ムルロア環礁 ファンガタウファ環礁

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地中海

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西

イ   ン   ド   洋

マ-シャル諸島

ロ シ ア 連 邦

モンゴル

中華人民共和国

日本

オ-ストラリア

ニュ-ジ-ランド

ミャンマ タイ カンボジア

マレ-シア

大韓民国

シンガポ-ル

フィリピン

ラ オ ス ェ ヴ

ト ナ ム

インドネシア

朝鮮民主主義 人民共和国

ブルネイ・ダルサラ-ム パラオ共和国

ミクロネシア連邦

バヌアツ フィジ-諸島

ソロモン諸島 パプア・ニュ-ギニア

ツバル諸島

キリバス

カ ナ ダ

ア メ リ カ 合 衆 国

ブラジ ル

メキシコ

イギリス

ドイツ

インド

フランス

アイスランド

アイルランド

ポルトガル スペイン

ノ ル ウ ェ -

ス フ ィ ン ラ ン ド

ウ ェ

デ ン

イラン アフガニスタン

パキスタン

イラク

イエメン

サウジアラビア

南アフリカ共和国

アルジェリア エジプト

リビア

ス-ダン

コンゴ民主   共和国

ナ イ ジ

ェ リ ア 中央アフリカ

カメル-ン

トルコ

モロッコ

リベリア

ゴ ナ エチオピア

アンゴラ

マダガスカル

ソ マ リ

ザ ン ビ

ガイアナ

スリナム

ベネズエラ

コロンビア

エクアドル

ペル-

ハイチ

キュ-バ

パラグアイ

ウルグアイ

アメリカ合衆国

グアンタナモ プエルトリコ

ノーフォーク アゾレス ロタ

ディエゴガルシア

ノースウェストケープ

グアム

横須賀

沖縄

佐世保 チャールストン

ロングビーチ サンディエゴ

ハワイ

ボリビア

カザフスタン

ポ-ランド

ギリシア

ナミビア

チュニジア

バングラデシュ

ア ル ゼ ン チ ン

グアテマラ

エルサルバドル

コスタリカ

バハマ

ホンジュラス

ニカラグア

パナマ

イタリア

エリトリア

オ マ

ン -

カタ-ル

ジプチ

コモロ

スワジランド レソト

セイシェル

モ-リシャス

ブルンジ

ウガンダ

ルワンダ

マラウイ

スリランカ

モルディヴ

アラブ首長国連邦

モ-リタニア マリ ニジェ-ル チャド

ベナン

ブルギナファソ

ザンビア

セネガル

ギニア

シエラレオネ

カ-ボベルデ

ガボン コンゴ共和国

ガンビア ギニアビサウ

コ-ト ジボワ-ル

赤道ギニア サントメ・プリンシペ

ボツワナ

ジンバブエ

ケニア

タンザニア

ドミニカ

共和国

グレナダ

シリア

レバノン

ヨルダン イスラエル

キプロス

グルジア アルメニア アゼル

バイジャン

ネパ-ル ブ-タン クウェ-ト

トルクメニスタン

ウズベキスタン キルギスタン

タジキスタン

トンガ

サモア

ギアナ

東ティモール

フォークランド諸島

1967 東南アジア諸国連合(ASEAN)発足

1995 南米共同市場(MERCOSUR)発足

1993 欧州連合(EU)発足

1994 北米自由貿易協定(NAFTA)発足

政府開発援助(ODA)

〔我が国の政府開発援助2000,ほか〕

国連平和維持活動(PKO)

国連休戦監視機構 国連インド・パキスタン軍事監視団 国連キプロス平和維持隊 国連兵力引離し監視隊 国連レバノン暫定隊 国連イラク・クウェート監視団

UNTSO UNMOGIP UNFICYP UNDOF UNIFIL UNIKOM

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名  称 略 称 派遣期間 MINURSO UNOMIG UNMIK UNAMSIL MONUC UNMEE UNMISET

国連西サハラ住民投票監視団 国連グルジア監視団 国連コソヴォ暫定行政ミッション 国連シエラレオネミッション 国連コンゴ(民)ミッション 国連エチオピア・エリトリアミッション 国連東ティモール支援団

1948.6~ 1949.1~ 1964.3~ 1974.6~ 1978.3~ 1991.4~

1991.4~ 1993.8~ 1999.6~ 1999.10~ 1999.11~ 2000.7~ 2002.5~

日本が最大援助元の国 アメリカが最大援助元の国 EU諸国が最大援助元の国 DAC(開発援助委員会)加盟国 その他の国・地域 おもな地域統合

アジア太平洋経済協力 会議(APEC)参加国

イスラーム諸国会議 機構(OIC)加盟国

アメリカのおもな海軍 基地

2004年10月現在続いているもの

20世紀末~21世紀初頭の世界 20世紀末~21世紀初頭の世界

最新世界史図説タペストリー 五訂版 p.44 〜 45

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が証明される可能性を残すものの、数十年程度の

スパンでは「オオカミが来たぞ」に終わった。一

方「社会主義国」についていえば、それが必ずし

も平和勢力ではないとか人権を抑圧したとかいう

点(それなら「理想を裏切った」でも説明できな

いことはない)だけでなく、「私的所有を廃絶す

れば搾取はなくなる」「したがってGNPは小さく

ても福祉は充実する」という理屈が、ごく狭い範

囲でしか成り立たなくなってしまったことが大き

い。社会経済的にどんな状態を社会主義と呼ぶの

かが、決められなくなってしまったのだ。そうす

ると、社会主義とは後発型工業化の一形態だとで

もいうしかなくなり、しかもそれは、韓国のよう

な開発独裁モデルより劣っていたことになる。

東アジアの奇跡

 20世紀後半、ベトナム戦争とならんでアメリカ

の覇権に打撃をあたえた(ように見えた)のは、

西欧の経済復興と統合、それに東アジアの連鎖的

経済成長だった。とくに後者は、旧来の日本特殊

論(日本は西欧的な社会をもともと持っていた、

ないし脱亜入欧に成功した結果、近代化をとげた

という論)の効果を弱め、「日本を含む東アジア」

が(前回取り上げた「勤勉革命」などの歴史を踏

まえて)地域として独自の近代化をとげつつある、

という新しい世界史像に注目させた点で、大きな

意義をもつ。近代世界システムにおいて周辺とさ

れた地域でも、「低開発」からの脱却が可能なこ

とを示した点も軽視できない。

 ただし日本−NIEs−ASEAN−中国(−イン

ド)と続く発展の連鎖は、大半が独裁政権による

追いつき型近代化であるから、近代市民社会の建

設という点では明らかに弱点をもつ。またそれは、

「対米従属」という側面を共有し、今日でも(東

アジアで伝統的に強力なナショナリズムとは裏腹

に)アメリカ中心のグローバル化を推進する歯

車という性格をもつ。この面で東アジアの、マン

ガ・アニメや映画など大衆文化の一部で示したよ

うなアメリカを超える動きが今後広がるかどうか

は、予断を許さない(社会・文化全般ではむしろ

アメリカナイズが進んでいる。今日の日本で広が

る歴史離れも、そこに一因がある)。

アメリカは衰退しているか?

 以上のように、20世紀の歴史には「そろそろは

っきりしてきた事柄」「今後変わるかもしれない

事柄」「どちらに進むかまだわからない事柄」が

折り重なっており、全体を一言で性格づけられる

ようになるのは、まだしばらく先のことであろう。

 たとえばアメリカの覇権が現在衰退しつつある

のかどうかも、単純ではない。経済面では、国内

生産の空洞化とドル安の進行は、即座にアメリカ

の崩壊につながりはしない。米国系多国籍企業は

むしろ支配力を拡大しているし、ドル安のもとで

もアメリカが世界の資本と消費物資を吸い寄せる

仕組みは崩れていない。オルターナティブの地位

をしぶとく保っている西欧型福祉社会も、先行き

を過大評価はできまい。ただ逆に、今日のアメリ

カがもつ軍事面での絶対優位も、全世界のアメリ

カ系企業をテロから守る力はないし(「第二のホ

ー=チ=ミン」がどこかに現れて、反米テロを「世

界が支持する正義の闘争」に転化させないとも限

らない)、資本主義の底力を示し社会主義をたた

きのめした電子化・IT化も、万能ではない。そ

れなのにグローバル化をますます強めなけれ

ばアメリカの覇権は維持できない、という現

在の自転車操業的な構図は、資源・環境・人

口などの問題から考えて、いずれ壁にぶつか

るだろう。その先は、世界の人々の選択にか

かるが(その結果によって20世紀の評価も最

終的に決まる)、そのとき、歴史認識や歴史

的思考の能力が、間違いなく問われるだろう。左:アメリカ(カジノ・ラスベガス)、右:中国(太極拳・上海)PANA通信社