産業の未来とict€¦ · 21 リーン生産方式 20世紀 組織 22 インターネット...

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第 1 章でみたように、1985 年の通信自由化以降、通信産業そして ICT 産業は大きく発展してきた。既に述べ たとおり、事業者間の活発な競争と数々のイノベーションにより、我が国 ICT 産業の実質国内生産額は約 98 兆 円に達し、全産業の10.6%を占めるまでに成長した。また、事業者による活発な設備投資が行われた結果、我 が国のブロードバンド環境は、速度と料金を総合してみた場合、OECD加盟諸国中で最高水準となっている。 その一方で、ICT機器のモジュール化やコモディティ化が進む中で、我が国ICT製造業の国際競争力が低下し てきたのも事実である。 それでは今後、ICT産業はどのように発展していくのだろうか。そしてその中で、我が国ICT産業はどのよ うな戦略を採るべきなのだろうか。本章では、ICT 産業のグローバルな現状を俯瞰した上で、IoT 化をはじめと する ICT の更なる進化によって、ICT 産業ひいては経済全体がどのように変化していくかを展望する。 我が国経済の将来課題とICT 1 本節では、次節以降での議論の前提として、我が国経済の将来課題とICTの果たし得る役割を一般論として 整理する。 我が国経済の将来課題 1 1 少子高齢化の進行と人口減少社会の到来 少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口は 1995 年をピークに減少に転じており、総人口も 2008 年 をピークに減少に転じている。国勢調査によると、2010 年の我が国の総人口は 1 億 2,806 万人(年齢不詳人口 を含む)、生産年齢人口は8,103万人である。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位推計)によ ると、総人口は 2030 年には 1 億 1,662 万人、2060 年には 8,674 万人(2010 年人口の 31.7% 減)にまで減少す ると見込まれており、生産年齢人口は 2030 年には 6,773 万人、2060 年には 4,418 万人(同 45.5% 減)にまで 減少すると見込まれている(図表 5-1-1-1)。 図表 5-1-1-1 我が国の人口動態と将来推計 2,979 3,012 2,843 2,553 2,515 2,722 2,751 2,603 2,249 2,001 1,847 1,752 1,680 1,621 1,583 1,457 1,324 1,204 1,129 1,073 1,012 939 861 791 5,017 5,517 6,047 6,744 7,212 7,581 7,883 8,251 8,590 8,716 8,622 8,409 8,103 7,768 7,682 7,341 7,085 6,773 6,343 5,787 5,353 5,001 4,706 4,418 416 479 540 624 739 887 1,065 1,247 1,489 1,826 2,201 2,567 2,925 3,317 3,395 3,612 3,657 3,685 3,741 3,868 3,856 3,768 3,626 3,464 8,411 9,007 9,430 9,921 10,466 11,189 11,699 12,101 12,328 12,544 12,670 12,729 12,708 12,706 12,660 12,410 12,066 11,662 11,212 10,728 10,221 9,708 9,193 8,674 4.9 5.3 5.7 6.3 7.1 7.9 9.1 10.3 12.1 14.6 17.4 20.2 23.0 26.1 26.8 29.1 30.3 31.6 33.4 36.1 37.7 38.8 39.4 39.9 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2014 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060 (万人) (%) (年) 実績値 推計値 高齢化率 65 歳以上人口 15 ~ 64 歳人口 14 歳以下人口 (出典)2010 年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を除く)、2014 年は総務省「人口推計」(12月1日確定値)、2015 年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の 将来推計人口(平成 24 年 1月推計)」(出生中位・死亡中位推計) 産業の未来とICT 5 平成 27 年版 情報通信白書 第2部 251 ICT5

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第1章でみたように、1985年の通信自由化以降、通信産業そしてICT産業は大きく発展してきた。既に述べたとおり、事業者間の活発な競争と数々のイノベーションにより、我が国ICT産業の実質国内生産額は約98兆円に達し、全産業の10.6%を占めるまでに成長した。また、事業者による活発な設備投資が行われた結果、我が国のブロードバンド環境は、速度と料金を総合してみた場合、OECD加盟諸国中で最高水準となっている。その一方で、ICT機器のモジュール化やコモディティ化が進む中で、我が国ICT製造業の国際競争力が低下してきたのも事実である。

それでは今後、ICT産業はどのように発展していくのだろうか。そしてその中で、我が国ICT産業はどのような戦略を採るべきなのだろうか。本章では、ICT産業のグローバルな現状を俯瞰した上で、IoT化をはじめとするICTの更なる進化によって、ICT産業ひいては経済全体がどのように変化していくかを展望する。

我が国経済の将来課題とICT第1節

本節では、次節以降での議論の前提として、我が国経済の将来課題とICTの果たし得る役割を一般論として整理する。

我が国経済の将来課題1

1 少子高齢化の進行と人口減少社会の到来

少子高齢化の進行により、我が国の生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じており、総人口も2008年をピークに減少に転じている。国勢調査によると、2010年の我が国の総人口は1億2,806万人(年齢不詳人口を含む)、生産年齢人口は8,103万人である。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位推計)によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の31.7%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.5%減)にまで減少すると見込まれている(図表5-1-1-1)。図表5-1-1-1 我が国の人口動態と将来推計

2,9793,012

2,8432,553

2,5152,722

2,7512,603

2,2492,0011,847

1,7521,6801,6211,583

1,4571,3241,2041,1291,0731,012 939 861 791

5,0175,517

6,0476,744

7,2127,581

7,8838,2518,5908,716

8,6228,409

8,1037,7687,6827,3417,0856,7736,3435,7875,3535,0014,7064,418

416479

540624

739887

1,0651,247

1,4891,826

2,2012,5672,925

3,3173,3953,612

3,6573,685

3,7413,868

3,8563,768

3,6263,464

8,4119,007

9,4309,921

10,46611,189

11,69912,101

12,32812,54412,670

12,72912,708

12,70612,660

12,41012,066

11,66211,212

10,72810,221

9,7089,193

8,674

4.9 5.3 5.7 6.37.1 7.9 9.1

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1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2014 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 2055 2060

(万人) (%)

(年)

実績値 推計値

高齢化率65歳以上人口 15~ 64歳人口 14歳以下人口

(出典)2010年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を除く)、2014年は総務省「人口推計」(12月1日確定値)、2015年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)

産業の未来とICT

第5章

平成27年版 情報通信白書 第2部 251

産業の未来とICT

第5章

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我が国経済の将来課題と ICT第 1節

2 少子高齢化・人口減少の経済への影響

こうした少子高齢化やそれに伴う人口減少は、我が国経済の供給面と需要面の双方にマイナスの影響を与え、我が国の中長期的な経済成長を阻害する可能性がある。すなわち、供給面からみた場合、経済成長の要因は、①労働投入、②資本投入、③生産性(全要素生産性)の3要素に分解されるが、少子高齢化による生産年齢人口の減少は、このうち①の労働投入の減少に繋がると考えられる*1。また需要面からみた場合、少子高齢化とそれに伴う人口減少は、医療・介護サービスなど一部の分野で国内需要を拡大させる一方、多くの分野で国内需要の縮小要因となると考えられる。

3 中長期的な経済成長に向けた方向性

少子高齢化や人口減少が進む中で中長期的な経済成長を実現していくためには*2、供給面の対策と需要面の対策を車の両輪として進めていく必要がある*3。まず供給面では、労働投入の減少を見据え、企業の生産性向上を図ることが何より重要である*4。加えて、女性や高齢者の就業促進による労働参加率の拡大や、教育・人材育成の充実による労働の質向上も求められる。また需要面では、企業の積極的なグローバル展開を通じて拡大する海外需要の取り込みを図るとともに、新たな商品やサービスの創造(プロダクト・イノベーション)を通じて持続的な需要創出を図ることが重要である*5(図表5-1-1-2)。

経済成長におけるICTの役割2

1 汎用技術(GPT)としてのICT

持続的な経済成長の主要な原動力が、組織や制度の改革を含む広い意味での「技術進歩」であることは、経済学のコンセンサスとなっている。しかし、歴史を振り返った場合、全ての技術進歩が等しく重要な役割を果たしてきた訳ではない。第1次産業革命(18世紀後半~19世紀中期)における蒸気機関、第2次産業革命(19世紀後半~20世紀初頭)における内燃機関と電力のように、社会全体に広く適用可能な基幹的な技術革新がまず存在し、それが様々な分野での応用的な技術進歩を次々と引き起こすことで、持続的な経済全体の成長が実現してきた。このような、様々な用途に応用し得る基幹的な技術のことは汎用技術(GPT:General Purpose Technology)と呼ばれるが、ICTが蒸気機関や内燃機関、電力等に続く現代の汎用技術であるとの見解は、今日では広く支持されている(図表5-1-2-1)。

*1 加えて、高齢化によって退職世代が増加し、貯蓄を行う年齢層に比べて貯蓄を取り崩す年齢層が増加すると、国全体としての貯蓄率が低下し、②の資本投入量が減少する可能性もある。

*2 この点、マクロでの経済成長が実現できなくても、国民一人当たりのGDPが減少しなければ問題ないとの立場もあり得る。しかし、マクロでのマイナス成長は、規模の経済や集積の経済を失わせ、一人当たりGDPの低下に繋がり得る。また、高齢化に伴い社会保障に必要な費用の更なる増大が見込まれる中、マクロでの経済成長が実現できなければ、財政・社会保障制度の持続可能性に問題が生じる。

*3 同時に、総合的な少子化対策を通じて出生率の向上を図ることも重要である。*4 この点、対日直接投資の拡大は、資本投入の確保に繋がるとともに、海外の優れた技術・ノウハウの吸収を通じて国内企業の生産性向上に

も資すると考えられる。*5 中長期的な経済成長のためのプロダクト・イノベーションの重要性については、吉川洋・安藤浩一・宮川修子(2013)「プロダクト・イノ

ベーションと経済成長PartⅢ:TFPの向上を伴わないイノベーションの検証」RIETIDiscussionPaperSeries13-J-033<http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/13050020.html>等を参照。

図表5-1-1-2 人口減少社会での持続的成長の実現

供給 需要

供給力強化 需要力強化

国内需要の縮小懸念

持続的成長の実現

少子高齢化・人口減少

労働投入の減少傾向

●企業の生産性向上 (プロセス・イノベーション)

●新商品・新サービスによる需要創出 (プロダクト・イノベーション)

●労働参加拡大と労働の質向上 ●グローバル需要の取り込み

平成27年版 情報通信白書 第2部252

第5章

産業の未来とICT

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我が国経済の将来課題と ICT 第 1節

図表5-1-2-1 汎用技術(General Purpose Technology)の一覧*6

No. GPT 時期 分類1 植物の栽培 紀元前9000-8000年 プロセス2 動物の家畜化 紀元前8500-7500年 プロセス3 鉱石の精錬 紀元前8000-7000年 プロセス4 車輪 紀元前4000-3000年 プロダクト5 筆記 紀元前3400-3200年 プロセス6 青銅 紀元前2800年 プロダクト7 鉄 紀元前1200年 プロダクト8 水車 中世初期 プロダクト9 3本マストの帆船 15世紀 プロダクト10 印刷 16世紀 プロセス11 蒸気機関 18世紀末19世紀初頭 プロダクト12 工場 18世紀末19世紀初頭 組織

No. GPT 時期 分類13 鉄道 19世紀半ば プロダクト14 鋼製汽船 19世紀半ば プロダクト15 内燃機関 19世紀終わり プロダクト16 電気 19世紀末頃 プロダクト17 自動車 20世紀 プロダクト18 飛行機 20世紀 プロダクト19 大量生産 20世紀 組織20 コンピューター 20世紀 プロダクト21 リーン生産方式 20世紀 組織22 インターネット 20世紀 プロダクト23 バイオテクノロジ 20世紀 プロセス24 ナノテクノロジー 21世紀 プロセス

(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)

前項で見たように、少子高齢化と人口減少が進む中で中長期的な経済成長を達成するためには、供給面での対策と、需要面での対策を併せて進めることが必要であるが、汎用技術であるICTは、その両面において中心的な役割を果たすと考えられる。

2 ICTによる企業の生産性向上(供給面①)

ICTは、企業の生産活動や流通活動を効率化し、生産性を向上させる。ICTによる生産性向上に向けた企業の取組は、古くはメインフレームによる業務システムの構築に始まり、その後のクライアントサーバシステムの普及を経て、現在ではクラウドコンピューティングを活用した業務効率化が業種を問わず広く行われている。このようにICTは、企業活動の効率性向上(プロセス・イノベーション)の最も一般的なツールであり、供給面からみた経済成長の原動力である。今後も、たとえば、ビッグデータの分析等を通じた生産過程や流通過程の更なる効率化が期待されている。

3 ICTによる労働参加拡大と労働の質向上(供給面②)

テレワークのようなICTを活用した就業形態は、育児中の女性や高齢者、障碍者等が、多様で柔軟な働き方を選択することを可能にし、労働参加率の向上にもつながると期待される。また、ICTの進歩は雇用に求められるスキルを大きく変えてきており、これからも大きく変えていくと予想されることから、早期のICT教育等を通じてこうした将来的なスキル変化に対応できる人材を育てていくことが、労働の質向上の観点からは重要になる。

4 ICTによる新たな市場の創造(需要面①)

ICTは、新たな市場創造の源泉である。ICT分野では、携帯電話、パソコン、薄型テレビ、スマートフォン、タブレット等の革新的な商品や、オンラインショッピング、コンテンツ配信、オンラインゲーム、ソーシャルメディア、スマートフォン各種アプリ等の革新的なサービスが、次々と開発・提供され、新たな市場を創造してきた。高度成長期にはいわゆる「三種の神器」や「新・三種の神器」の普及が経済成長を需要面で支えたが、90年代以降の我が国の経済成長を需要面で支えているのはICT関連の商品・サービスである。

ICT分野の商品やサービスも、その他の商品やサービスと同様、個別に見れば導入期から成長期を経て、いずれ需要の飽和に達する。しかし、ICT分野の商品やサービスには、ある商品やサービスが一たび市場に広く行き渡ると、その商品やサービスをプラットフォームとして派生的に新たな商品やサービスが創造され、その繰

*6 R.G.Lipseyら著“EconomicTransformations :GeneralPurposeTechnologiesandLongTermEconomicGrowth”(OxfordUniversityPress,2005)では、応用の多様性や波及効果等の視点から24の汎用技術を掲げ、その性質に応じて「プロダクト」「プロセス」「組織」の3つに分類している。

平成27年版 情報通信白書 第2部 253

産業の未来とICT

第5章

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我が国経済の将来課題と ICT第 1節

り返しにより新市場が多層的に形成されていくという特徴がある*7。たとえば近年では、スマートフォンの急速な普及が様々なアプリの開発と普及につながり*8、アプリの普及がアプリ内コンテンツ市場(たとえば、LINEの「スタンプ」市場*9)の拡大につながっている。あるいは、ソーシャルメディアの普及により信頼関係が可視化されたことを背景に、個人間でモノやサービスを共有する「シェアリングエコノミー

(共有経済)」と呼ばれる新たな取引形態が登場している。今後も、ICT分野でのこのようなプロダクト・イノベーションの連続が、我が国の経済成長を需要面で支えていくものと考えられる(図表5-1-2-2)。

5 ICT産業のグローバル展開(需要面②)

人口減少による国内需要の減少が懸念される我が国とは対照的に、新興国では人口増加や所得向上を背景として今後も急速な需要拡大が見込まれている。中長期的な経済成長のためにはこうした海外需要を積極的に取り込んでいくことが不可欠である。この点、ICT産業は我が国の主要産業であり、ICT産業のグローバル展開を積極的に推進することは、我が国経済全体としての海外需要の取り込みに大きく貢献すると考えられる。

本項の内容を整理すると右図のようになる(図表5-1-2-3)。

具体的検証3前項での整理を踏まえ、以下ではICTの我が国マクロ経済へのこれまでの貢献について、具体的なデータに

基づき検証する。なお、データの入手可能性等の制約から、以下での検証は前項での整理とは完全には対応していない。検証の精緻化は、今後の課題である。

*7 このような特徴は他分野の商品やサービスにも見ることができるが、ICT分野の商品・サービスは特に顕著である。*8 野村総合研究所の推計によれば、日本におけるスマートフォン向けアプリを利用したビジネス(アプリ経済)の市場規模(2013年)は約

8,200億円である。<http://innovation-nippon.jp/reports/NRI_Internet%20and%20Japan%20Economy_hi.pdf>*9 LINE株式会社はユーザーがLINEスタンプを制作・販売できるプラットフォーム「LINECreatorsMarket」を提供しているが、同社プレ

スリリースによれば、そこでの販売・購入実績は2014年5月の開始以降11月までの6か月間で35.9億円に達している。<http://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2014/880>

図表5-1-2-3 持続的経済成長へのICTの貢献

●企業の生産性向上 (プロセス・  イノベーション)

(例)クラウドの普及、ビッグデータの活用

(例)モバイルアプリ経済、シェアリングエコノミー

(例)ICT インフラのパッケージ展開

(例)テレワークの普及、ICT 教育の実施

●労働参加拡大と 労働の質向上

●グローバル需要の 取り込み

●新商品・新サービスによる需要創出

 (プロダクト・ イノベーション)

供給 需要

供給力強化 需要力強化

国内需要の縮小懸念

持続的成長の実現

少子高齢化・人口減少

労働投入の減少傾向

図表5-1-2-2 ICT産業の広がり

VAN

eコマース

パソコン通信

固定電話機 コードレス電話

自動車電話

ポケベル

ミニコン

タブレット端末

汎用機メインフレーム

ブログ

O2O

M2M

コンテンツ配信

アプリ

IP 電話

ビッグデータ

クラウドCDN

ウェブ広告

検索市場

モバイルファイナンス

デジタル携帯電話サービス

OS

固定電話サービス

通信

情報処理

インターネット・ウェブ

ウェアラブル

IoT

モバイルブロードバンド

スマートフォン

パソコン

サーバホスティング

インターネット接続サービス

アナログ携帯電話サービス

携帯端末市場

データセンター

固定ブロードバンド

SNS

ソフトウェア

ブラウザ

1970年~ 1980年~ 1990年~ 2000年~ 2010年~

電子メール・チャット・電子掲示板

(出典)総務省「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」(平成27年)

平成27年版 情報通信白書 第2部254

第5章

産業の未来とICT

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我が国経済の将来課題と ICT 第 1節

1 ICT投資の我が国経済への寄与

ア ICT投資の労働生産性への寄与●労働生産性成長率へのICT資本財の寄与度は1995年以降一貫してプラス

まず、企業のICT投資が我が国経済にどれだけ寄与しているかをみてみよう。右図は、労働生産性の成長率を、ICT資本財の深化による寄与度、非ICT資本財の深化による寄与度、それ以外の全要素生産性

(TFP)の上昇による寄与度に分解したものである。我が国の労働生産性成長率そのものは年によりマイナス値を取ることもあるが、労働生産性成長率へのICT資本財の寄与度は一貫してプラス値を取り続けていることがわかる(図表5-1-3-1)。●労働生産性成長率へのICT資本財の寄与度は製造業、サービス産業ともにプラス

続いて、労働生産性成長率へのICT資本財の寄与度を産業分類別にみてみよう。右図は、2000年から2013年までの期間を対象に、労働生産性成長率の寄与度分解を全産業、製造業、サービス産業のそれぞれについて行ったものである。製造業では期間中の労働生産性年平均成長率3.18%に対し、ICT資本財深化の寄与度は0.15%、サービス産業では期間中の労働生産性年平均成長率0.32%に対し、ICT資本財深化の寄与度は0.14%となっており、労働生産性成長率に対するICT資本財の寄与度は製造業、サービス産業ともにプラス値となっている(図表5-1-3-2)。

ICT投資が産業部門を問わず労働生産性を引き上げていることがわかる。イ ICT投資の経済成長への寄与●ICT資本サービスの経済成長への寄与は1990年以来一貫してプラス

次に、ICT投資が我が国の経済成長にどれだけ寄与しているかをみてみよう。右図は、資本を「ICT資本」とそれ以外の「一般財資本」の2種類に区分した上で、成長会計の手法により各生産要素の経済成長への寄与度を計測したものである。ICT投資によるICT資本ストックの増加を反映した「ICT資本サービス」の我が国経済成長率への寄与度は、1990~1995年が0.40%、1995~2000年が0.69%となっており、ICT投資が90年代以降、我が国経済の成長に大きく寄与したことがわかる。また、2000~2005年、2005~2010年においても、ICT資本サービスの寄与度はそれぞれ0.27%、0.34%となっており、やや小さくなりながらもプラスに推移している。2010~2013年にかけては、経済成長率全体が0.97%となる中、ICT資

図表5-1-3-1 我が国の労働生産性成長率の推移とICT資本財の寄与度

TFP -0.27-1.09-1.74 0.08 -0.40 1.02 0.30 0.14 0.29 1.15 0.02 1.36 -0.87-2.79 2.46 -0.56 0.04 1.090.19 0.41 0.26 0.12 0.03 0.26 0.06 0.10 0.05 0.22 0.05 0.21 0.18 0.13 0.11 0.14 0.10 0.09

非 ICT 資本財寄与度 1.70 2.51 0.98 1.75 1.40 0.67 1.08 0.65 0.79 0.66 0.59 1.18 0.56 -2.05 2.65 0.72 0.55 0.47労働生産性成長率 1.62 1.84 -0.50 1.95 1.03 1.95 1.44 0.89 1.12 2.04 0.67 2.75 -0.13-4.71 5.22 0.31 0.69 1.65

1.62 1.84 1.951.03

1.95 1.440.89 1.12

2.040.67

2.75

5.22

0.31 0.691.65

-6.0

-4.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

労働生産性成長率

(%)

95-96 96-97 97-98 98-99 99-00 00-01 01-02 02-03 03-04 04-05 05-06 06-07 07-08 08-09 09-10 10-11 11-12 12-13年

-0.50

-0.13

-4.71

ICT 資本財寄与度

(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成27年)

図表5-1-3-2 産業分類別労働生産性成長率へのICT資本財の寄与度

0.090.09

1.881.88

0.670.67

1.141.14

0.560.56

0.130.13

0.150.15

0.140.14

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

全産業 製造業 サービス産業

0.900.90

3.183.18

0.320.32

(%)

-0.38

TFP 非 ICT 資本財寄与度 ICT資本財寄与度

(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成27年)

図表5-1-3-3 ICT資本サービスの経済成長への寄与

1990-1995 1995-2000 2000-2005 2005-2010 2010-2013労働サービス -0.52 -0.35 -0.50 -0.40 -0.06一般財資本サービス 1.08 1.20 0.67 -0.36 0.27

0.40 0.69 0.27 0.34 0.190.47 -0.70 0.75 0.75 0.57

経済成長率 1.43 0.84 1.20 0.33 0.97

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5(%)

ICT 資本サービスその他(TFP)

(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成27年)

平成27年版 情報通信白書 第2部 255

産業の未来とICT

第5章

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我が国経済の将来課題と ICT第 1節

本サービスの寄与度は0.19%であった(図表5-1-3-3)。労働力人口の減少を背景に、経済成長への労働サービスの寄与度は1990年以来マイナス値を取り続けている。

これとは対照的に、ICT資本サービスの経済成長への寄与度は1990年以来一貫してプラス値を取っており、ICT投資が人口減少社会における経済成長を支える役割を果たしていることがうかがえる。

2 ICT産業の我が国経済への寄与

ア ICT産業の経済波及効果● ICT産業の経済波及効果は、付加価値誘発額及び雇用誘発数において、全産業最大の規模

ICT産業の実質国内生産額は2013年時点で98.1兆円である。その経済波及効果をみると*10、ICT産業の付加価値誘発額は88.5兆円、雇用誘発数は765.8万人となっており、我が国の産業の中でも最大規模となっている。なお、1995年時点では、ICT産業の実質国内生産額は63.3兆円であり、その付加価値誘発額は57.0兆円、雇用誘発数は653.6万人であった。ICT産業は技術革新の影響が大きいため、雇用誘発力よりも付加価値誘発力が強くなると考えられる(図表5-1-3-4)。

1990年代後半以降、鉄鋼や電気機械などの一般産業は、付加価値誘発額・雇用誘発数が横ばい傾向であるのに対し、ICT産業の誘発は(特に付加価値額について)2010年までに急激に上昇し、その後も高水準を保っている。

図表5-1-3-4 主な産業部門の生産活動による経済波及効果(付加価値誘発額、雇用誘発数)の推移

57.0

75.983.7

89.4 87.9 87.1 88.5

0102030405060708090100(兆円)

1995 2000 2005 2011 2012 2013(年) (年)2010

653.6 769.3 730.3

765.5 767.2 763.3 765.8

01002003004005006007008009001,000

1995 2000 2005 2011 2012 20132010

(万人)

情報通信産業計 鉄鋼 輸送機械 建設(除電気通信施設建設) 卸売 小売 運輸電気機械(除情報通信機器)

【付加価値誘発額】 【雇用誘発数】

(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成27年)

イ ICT産業の経済成長への寄与●実質GDP成長率へのICT産業の寄与度は一貫してプラス

第1章 で も み た よ う に、 実 質GDP成長率へのICT産業の寄与度を1985年から3年刻み(85年から95年までは5年刻み)でみると、ICT産業の寄与度はいずれもプラスとなっている。特に2007~10年は実質GDPが大幅にマイナスになっているのに対し、ICT産業の寄与度はプラスを維持している(図表5-1-3-5)。

*10経済波及効果の計測方法としては、①最終需要となる財・サービスに着目して、当該部門の最終需要が国内産業にもたらす経済波及効果をみる方法と、②産業部門に着目して、当該部門の生産活動(最終需要と中間需要の合計)が国内産業にもたらす経済波及効果をみる方法がある。ここでは後者を採用している。

図表5-1-3-5 実質GDP成長率に対するICT産業の寄与【再掲】

情報通信産業 0.4 0.2 0.4 0.4 0.2 0.5 0.1 0.1その他産業 4.1 1.2 0.2 0.2 0.3 0.8 -1.5 0.2全産業 4.5 1.4 0.6 0.5 0.5 1.3 -1.4 0.3

-2.0

-1.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0(%)

85~ 90(年平均)

90~ 95(年平均)

95~ 98(年平均)

98~ 01(年平均)

01~ 04(年平均)

04~ 07(年平均)

07~ 10(年平均)

10~ 13(年平均)

実質GDPは 2005年価格評価

(出典)総務省「ICTの経済分析に関する調査」(平成27年)

平成27年版 情報通信白書 第2部256

第5章

産業の未来とICT