平成21年度第3回ngo‐jica協議会 議事録 (敬称略) 部や名古 … · 2012. 9....

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平成 21 年度第 3 回 NGO‐JICA 協議会 議事録 (敬称略) 2009 年 12 月 10 日 JICA 中部 下澤(国際協力 NGO センター): それでは、第 3 回 NGO‐JICA 協議会をはじめます。今日は名古屋の開催ということで JICA 中 部や名古屋 NGO センターの方々にお手伝いいただきましてありがとうございます。それでは、開 会にあたりまして JICA 国内事業部部長の吉田部長から挨拶をお願いいたします。 吉田(JICA): JICA 国内事業部の吉田です。JICA を取り巻く状況につきましては、みなさんご存知の通り 11 月 24 日に事業仕分けが行なわれました。国内事業部も含めていろいろ指摘をいただきまして、その 点はネット等でご存知だと思います。国内事業部では、こちらの市民参加協力事業以外に研修関 係の事業も担当しておりまして、NGO の皆さまにもご協力いただいています。皆さまには開発教育 事業や草の根技術協力事業等でお世話になっているかと思います。 事業仕分けの中でいろいろ指摘をいただきました。こちらの NGO‐JICA 協議会は、今回で今年 度 3 回目となりますが、これまで 10 年ほどいろいろ形で連携事業や開発教育事業などの小委員 会を作らせていただきました。昨年、JICA と JBIC が統合され、NGO の方々も新 JICA に対応して いただくという形をとりつつ、今は分科会でいろいろとご議論いただいていると思います。 とりわけ今回の事業仕分けが済んで NGO の方々から厳しいご意見もいただいていると思います。 それ以外にもセンターの統合等につきましては、兵庫センターにつきまして、(NGO 側より)心強い ご支援をいただいています。今日も毎日新聞だったと思いますが、掲載されていました。私ども、大 変ありがたいと思っており、御礼を申し上げたいと思っています。ありがとうございます。 我々、市民参加協力事業をさらに発展させていきたいということ、それから草の根技術協力事業 のさらなる改善に向けて努力していきたいということで、今回は担当次長、草の根技術協力担当の 課長、全体の連携の担当の課長、地球ひろばから開発教育を含めた市民参加協力事業を担当す る課長が参っておりますので、いろいろご意見をいただきながら、NGO の方々に使い勝手の良い 内容にしたいと思っていますので、ご支援をよろしくお願いいたします。 下澤: 続きまして JICA 中部、なごや地球ひろばの稲葉所長からご挨拶をお願いします。 稲葉(JICA): JICA 中部の稲葉です。本日はなごや地球ひろばにお越しいただきありがとうございます。この NGO‐JICA 協議会を開催していただき、地元の NGO の方々に感謝しております。1、2 分いただ いて、なごや地球ひろばの紹介をできればと思います。名古屋 NGO センター加盟の NGO の 方々にはすでにご承知と思いますが、他の方にも紹介をしたいと思います。 1

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平成 21 年度第 3 回 NGO‐JICA 協議会 議事録 (敬称略)

2009 年 12 月 10 日 JICA 中部

下澤(国際協力 NGO センター):

それでは、第 3 回 NGO‐JICA 協議会をはじめます。今日は名古屋の開催ということで JICA 中

部や名古屋 NGO センターの方々にお手伝いいただきましてありがとうございます。それでは、開

会にあたりまして JICA 国内事業部部長の吉田部長から挨拶をお願いいたします。

吉田(JICA):

JICA 国内事業部の吉田です。JICA を取り巻く状況につきましては、みなさんご存知の通り 11 月

24 日に事業仕分けが行なわれました。国内事業部も含めていろいろ指摘をいただきまして、その

点はネット等でご存知だと思います。国内事業部では、こちらの市民参加協力事業以外に研修関

係の事業も担当しておりまして、NGO の皆さまにもご協力いただいています。皆さまには開発教育

事業や草の根技術協力事業等でお世話になっているかと思います。

事業仕分けの中でいろいろ指摘をいただきました。こちらの NGO‐JICA 協議会は、今回で今年

度 3 回目となりますが、これまで 10 年ほどいろいろ形で連携事業や開発教育事業などの小委員

会を作らせていただきました。昨年、JICA と JBIC が統合され、NGO の方々も新 JICA に対応して

いただくという形をとりつつ、今は分科会でいろいろとご議論いただいていると思います。

とりわけ今回の事業仕分けが済んで NGO の方々から厳しいご意見もいただいていると思います。

それ以外にもセンターの統合等につきましては、兵庫センターにつきまして、(NGO 側より)心強い

ご支援をいただいています。今日も毎日新聞だったと思いますが、掲載されていました。私ども、大

変ありがたいと思っており、御礼を申し上げたいと思っています。ありがとうございます。

我々、市民参加協力事業をさらに発展させていきたいということ、それから草の根技術協力事業

のさらなる改善に向けて努力していきたいということで、今回は担当次長、草の根技術協力担当の

課長、全体の連携の担当の課長、地球ひろばから開発教育を含めた市民参加協力事業を担当す

る課長が参っておりますので、いろいろご意見をいただきながら、NGO の方々に使い勝手の良い

内容にしたいと思っていますので、ご支援をよろしくお願いいたします。

下澤:

続きまして JICA 中部、なごや地球ひろばの稲葉所長からご挨拶をお願いします。

稲葉(JICA):

JICA 中部の稲葉です。本日はなごや地球ひろばにお越しいただきありがとうございます。この

NGO‐JICA 協議会を開催していただき、地元の NGO の方々に感謝しております。1、2 分いただ

いて、なごや地球ひろばの紹介をできればと思います。名古屋 NGO センター加盟の NGO の

方々にはすでにご承知と思いますが、他の方にも紹介をしたいと思います。

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Page 2: 平成21年度第3回NGO‐JICA協議会 議事録 (敬称略) 部や名古 … · 2012. 9. 18. · 平成21年度第3回ngo‐jica協議会 議事録 (敬称略) 2009年12月10日

この JICA 中部は名東区というところにありました。名古屋駅から電車で 20 分、そこから歩いて

10 分というところにありました。この 3 月にこの場所に引っ越してきました。その機会に、今までの

研修施設だけにとどまらず、なごや地球ひろばという、広尾の地球ひろばのような学習、展示施設

を作りました。ただ、広尾と違う点は、ここは常時研修員が 50 人、60 人いますので、海外からの研

修員とも日常的に交流できるところが新たな点です。

本日、何枚か資料を配りました。従来から NANGOC(名古屋 NGO センター)など NGO の方々

と市民参加協力をしております。東京では 9 万 3 千人が集まるグローバルフェスタがあります。中

部地域でも NANGOC さんと協力しまして、今年は 7 万 8 千人の参加を得ましてワールドコラボフ

ェスタという国際協力のイベントを開きました。先週、JICA 始まって以来と思いますが、ここでファッ

ションショーを開き、200 名を越える方にご参加いただきました。JICA 中部では地元の方々と一緒

に、関心をもっていただきながら、肩の張らない、気軽な国際貢献、あるいは国際協力を考えてい

ます。

これを機会に、東京、大阪などの他地域の NGO の方々とも協力していきたいと思いますので、ど

うぞよろしくお願いいたします。

自己紹介(出席者については別紙参照)

下澤:

それでは議題に入っていきたいと思います。

まず、NGO からのご提案なのですが、報告事項の追加として 4 番目に事業仕分けに関して、特

に地域センターの統合に関して JICA 側からご報告いただけないかと思っています。今分かる範囲

で、口頭で今こういう状況であるということをご報告いただければと思いますが、どうでしょうか。

大金(JICA):

できる範囲でお応えします。

下澤:

では、4 番は 10 分程度でお願いします。10 分ほど押すかもしれませんが、ご了承ください。それ

では、報告事項に入りたいと思います。

報告事項 1 評価調査「市民の国際協力推進への JICA の取組み」報告

高田(JICA):

資料 1 を使ってご報告いたします。タイトルは、「テーマ別評価『市民の国際協力への取り組みと

JICA の役割』」というものです。

市民参加協力事業の評価につきましては、NGO‐JICA 協議会でも第 1 回目、第 2 回目の中で

情報提供させていただきました。また、10 月の下旬に一般への公開セミナーということで、調査結

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果の報告をさせていただいた次第です。

今日は、結果のアウトラインの説明をさせていただきたいと考えております。こちら、12 月中に報

告書を出版いたします。また、ウェブでも公開する予定ですので後日ご覧いただければと思います

ので、本日はアウトラインだけにとどめます。

後ほど簡単に説明しますが、この調査の中では地域別の取り組みをケーススタディーということで

調査させていただきました。その中で、名古屋、愛知県を事例として選ばせていただきまして、ここ

にいらっしゃる名古屋 NGO センターを始め、多くの方の協力を得て調査した次第です。この点に

つきまして、この場で御礼を申し上げたいと思います。

まず、評価の目的について説明します。昨年度、市民参加協力に関する課題別指針を作りまし

た。それに基づいて、これまでの 7 年間の事業をおさらいして、今後どうあるべきかということを調査

で明らかにしようとしました。この市民参加協力事業について、国際協力への支持の拡大と開発へ

の貢献ということを目的にやっていましたので、その視点から評価を出しました。また対象としたスキ

ームは、開発教育支援事業と NGO 等研修、ボランティア事業、草の根技術協力事業としてありま

す。ただ、ボランティア事業、草の根技術協力事業は海外での調査は行なっておりません。草の根

技術協力については、国内事業部で調査をされるということですので、そちらと評価を共有したいと

考えています。

調査のプロセスについては、評価検討委員会を作り、それぞれの事業につきまして、アンケート

調査、インタビュー調査、地域のケーススタディをやりました。評価調査の構成については、スキー

ムを中心にプログラムという観点から評価しました。それから地域の観点からのレビューとあわせま

して教訓と提言を導き出しました。

また、市民参加協力におきましては、スキームが目標としていることと、また違った波及効果という

こともありましたので、その形で調査しました。次のページ、「評価対象:3 プログラムと 4 スキーム」

につきまして、いろんなスキームがありますのでそれを整理して、プログラムという言葉を使い、1 か

ら 3 のプログラムに分類しました。そして、それぞれのプログラムとしての目標達成はどうだったかと

いうことをみました。それから、日本国内への波及効果もみました。

4 ページ目の「プログラムレビュー①『市民の関心向上と取組みの推進』」について、一言でいい

まして、この 7 年間、実際にはもっと長くしていましたが、その成果として国際協力に関する市民の

関心は高まったのではないかと考えています。例えば、右側の棒グラフにあるように、「ODA や国

際協力をどういうところで知りましたか」という質問で、20 代の男性で学校で知りましたという方が多

い結果となっています。これは、NGO のみなさんとも協力して行なっている開発教育や施設訪問

の効果が大きかったのではないかと思います。

次に、関心の深まりということで、単に知るだけではなくて関心が深まったのではないかと考えて

います。特に、開発教育に携わっている先生が授業をしていく中で、生徒の意識にも変化が生ま

れたと答えていただいています。その中身は、国際協力、途上国への関心が深まったという部分も

あるのですが、もっと大きな意味での教育効果、学びの姿勢やともに生きる力にも効果があったと

評価していただいています。

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次のページです。「プログラムレビュー②『市民/団体の活動の活性化と人材育成』」の部分です。

この点においても、一定の成果があったのではないかと考えています。特に、2 番目です。草の根

技術協力事業を通じて JICA、ODA と NGO の親和性や連携関係が高まったのではないかと考え

ています。また NGO と研修ですとか、草の根技術協力の実施を通じて、実践される方の人材育成

もある程度進んでいると考えています。

次の「プログラムレビュー③『市民の知見を活かした国際協力の促進』」については、ODA では手

が届かない、もしくは規模が大きくてやりにくいというところを、市民が直接参加していただくことでよ

りより国際協力をやっていこうと思っていまして、その点からみました。市民参加というアプローチに

は、ここにあるようなよい特徴があると考えています。内容的な特徴では、政府が取り組みにくい支

援という非政府性や日本の伝統技術を活かした支援という専門性、また社会的弱者支援ということ

で独自性がある協力がなされているのではないかと感じています。それから一番下について、市民

参加以外のところ、NGO や市民による事業の実施ということで、地域保健や母子保健などで技術

協力プロジェクトにおいても知識や知見が活かされていると考えています。

1 ページ飛ばしまして「地域の条件に応じた効果的アプローチ」のページです。 国際協力活動

はいろいろな地域でやっているものですから、それぞれの成果がわかりにくく、まとまった成果にな

りにくいということで、地域を選んで評価しています。これまでの聞き取りで成果が出ている地域を

選びました。それぞれの地域での取り組みをやっていくことで、国際協力に関する関心が足りない

とかリソースが足りないとかそういうことを工夫しながらやっていけるのではないかと考えています。

事例として挙げさせていただきました愛知県では JICA と NGO、県、市などの複数の機関で連携

が維持されていて、より質の高い成果が得られました。

次に、波及効果の部分です。市民参加協力事業を通じて、国際交流の拡大や教育効果が成果

として出ていると思います。また、国際協力の経験を日本国内で活用することで、多文化共生の支

援になったり、地域づくりの活性化になったりということがありました。特に、多文化共生支援につい

ては、この JICA 中部では大きなテーマとして取り組んでいるということで、紹介させていただいてい

ます。

それから、次のページ「調査結果から得られた教訓」について、5 点を挙げています。まず、市民

参加協力事業の捉え方ということで、日本社会の中でいろんな役割を果たしているという視点でみ

ていくことが重要だと思っています。また、2 番目、地域益と組織益の重要性ということで、地域の

利益や組織の利益と十分連携をとってやっていく必要があると考えています。3 つ目と 4 つ目は関

係していると思いますが、地域に根ざしたみなさんとの連携が重要で、またそういう連携を深めてい

くためには事業の実施を通して一緒にやっていくことが重要ではないかと考えています。

次のページに行きまして、「今後への提言」についてです。こういう結果を振り返りまして、国際協

力活動への関心の裾野の広がりを生むための仕掛けとして、例えば地域メディアとつながっていこ

うとか、NGO の国内活動との連携も大事ではないかと考えています。裾野をしっかりと広げていこう

と考えています。また、地域に根ざした国際協力の展開ということで、地域の課題と我々の事業の

目的を上手に絡めていこうと考えています。また、よりよい協力を実施していくために、特に NGO

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セクターのみなさんとの環境整備、連携推進が大事ではないかと考えています。例えば、途上国

支援につながるための NGO のみなさんの知恵をお借りしていくための具体的な手法を検討して

いく必要があると考えています。それから、事業の効果的運営のための体制の構築ということで、事

業を継続していくための体制ですとか、リソースの確保などがきちんと行なわれたかどうかという問

題を見ていこうということを考えています。

あとは、別紙ということで、事例を挙げています。以上で、報告を終わらせていただきたいと思いま

す。

下澤:

これにつきまして、質問はあるでしょうか。

龍田(名古屋 NGO センター):

お聞きしたいことは、このレビューでは全体の成果を強調していますが、ここから得られた課題は

なにでしょうか。特に興味があるのは、プログラムレビューの 2 と 3 のあたりです。草の根技術協力

事業等について調査する中で、浮き上がってきた課題と今後の課題について JICA としてどう取り

組むかお聞きしたいです。

高田:

課題として整理をしたつもりです。例えば、草の根技術協力ということで、スキームを用意して実

践をしていただく形をとっていますが、例えばスキームの手続きが非常に煩雑であるとか、アプライ

したいと考えているがまだ力がないとか、いろんな状況があるところに、今後の研修で対応していく

ことが必要ではないかと考えています。

それから、我々が現地で国際協力をしていく中で、NGO のみなさんとの取り組みが重要であるこ

とは論を待たないわけですが、それらを実際の事業の中に入れていくところがなかなか現状ではう

まくいっていないところもあると考えています。その部分について、もっとどういう事例があるか調べ

て、もう少し具体的に分析していく必要があると考えています。

草の根技術協力事業につきましては、我々は市民参加事業ということで大きな枠でみましたが、

実際のスキームの運営をしているのは国内事業部ですので、草の根技術協力事業につきましては、

今後国内事業部の方で評価をしていくと言っていますので、そちらの方でお願いしたいと考えてい

ます。

定松(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン):

今の点に関連して、こちらからこういう点もあるのではないかという話をしたいと思います。草の根

技術協力パートナーを実際に実施した経験からひとつ課題を挙げるとすると、配布資料の中の「地

域の条件に応じた効果的なアプローチ」の中で、愛知県の例があります。これは日本国内の事例と

いうことですが、これと同じようなケースを途上国の現場でやれればいいと思っています。実際にネ

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パールでパートナー型をして、公立小学校教育の案件をしました。JICA も私たちもこういうイメージ

をもって取り組もうとしましたし、専門家の方にも協力をいただいたのですが、いろんなことがありま

してなかなか草の根技術協力パートナーでやったものをベースにそれを面的な広がりにもっていく

ことまでいかなかったと考えています。私たちの支援はピンポイントで点になる傾向にあります。そ

れを、いかに面的なものに、あるいは政策的なところにもっていけるかというところで JICA と協力で

きるといいと考えています。それが現場レベルでも十分できていないし、JICA 事務所の方もそこま

でのパースペクティブをもって草の根技術協力というものを捉えている方はいらっしゃらない。担当

の方だけではなくて、アドバイザーの方も含めてです。

下澤:

他にまだ意見はありますか。

野田(名古屋 NGO センター):

3 つほどあります。NGO と JICA の連携は一日にしてならずということです。これは長年の積み重

ねのアセットだと思います。この認識をすでにお持ちであると思いますが、改めて確認いただきた

いと思います。具体的に申し上げると、愛知県では 5 年位前に大規模な調査をやっております。す

べての小、中、高で JICA と NGO が協力して開発教育に関する調査をしました。そういう過去の

JICA と NGO の共同の調査結果を踏まえていただけると、ここでおっしゃられているような「関心の

高まり」ということがさらに浮き彫りになるのではないかと思います。

次に、「関心の高まり」ということで、これはまさに JICA さんが書いていらっしゃるように教員のご

尽力が大きいと思います。口頭で説明されていたので、ややダブルかもしれませんが、実は教員養

成においては、JICA さんと NGO はかなり協力をしています。海外研修のまねを開発教育指導者

研修というかたちでやりました。私自身も JICA 中部さんと協力して、教材作り、および講師もやらせ

ていただきました。そういうことも合わせて留意していただきますとより包括的な評価になると思いま

す。

後に、今後への教訓に係るものと思いますが、もう一度いいます。NGO と JICA さんの連携は

一日にしてならず。アセットである。アセットである以上は、確認をはっきりしていただきたい。互い

に一生懸命やった、うまくやったということは、なんらかの形で明示的にお互いに確認して、互いの

成果として喜び合う姿勢が大事だと思います。すでにされていると思いますが、今後への提言とい

うことで改めて申し上げたいと思います。

竹内(ソムニード):

プログラムレビューの 3 について、「市民参加以外では、以下の領域で市民の知見が活用されて

いる」という点についてです。日本の歴史的経験や地域おこしの成功経験を活用した協力というこ

とについて、今はわからないかもしれませんが、どのくらいの地域で、またいつ頃からこういうことを

積極的に行なっているのかということをお聞きしたいです。

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高田:

NGO と JICA の連携がアセットであるということは、当方も認識しております。

研修の分野では、10 年以上前から農村の地域起こしの取組みを一緒にお手伝いするような形で、

いろいろな地域で地域起こしを手伝っています。東京や名古屋というより、むしろ地方で、例えば

富山や長崎などでやっております。

竹内:

高山もほぼ毎年受け入れています。ただ、バラバラとした形で受けて入れています。もう少し、地

域全体をみた形でのプログラムや要請があるといいという意見も地域にありました。毎年、どこどこ

を見学に行くというのではなく、地域全体を考えた形での活用を考えていただけるプログラムを作っ

ていただけるとありがたいなと思います。

高田:

わかりました。研修事業で、そういう取組みをやっていると思いますので、そちらでも検討してもら

うようにしたいと思います。

下澤:

次に、2 番目の報告に移りたいと思います。JICA 寄付金事業分科会に関する報告をお願いしま

す。

報告事項 2 分科会「JICA 寄付金事業」(第 2 回)報告

高城(JICA):

分科会の報告ということですので、私の方から概要を報告させていただいて、分科会の NGO の

委員の方から補足がありましたらお願いいたします。

資料は「分科会寄付金事業第 2 回報告」です。 初の分科会の概要のところは、前回の資料と

同様です。参考までに付けさせていただきました。設置の経緯やメンバーはこのようになっていま

す。第 1 回は 9 月 11 日に開催しました。今回は、第 2 回ということで 10 月 29 日に開催したもの

の報告です。参加者は、NGO 側の委員が、JANIC の下澤さん、ワールド・ビジョン・ジャパンの高

瀬さん、難民を助ける会の堀江さん、関西 NGO 協議会の藤野さんになっています。JICA 側は、

企画部の花里、国内事業部の高城が参加しました。それから事務局の林さんが出席しました。

議事の要旨は、長くなるのでポイントだけ説明します。4 ページに「寄付金事業分科会第 2 回の

論点と対応の整理」という表があります。これをご覧いただきながら報告します。

第 1 回は、NGO 側からこういったこともできるのではないかというご提案をいただきましたので、そ

れを JICA の中で検討して、その結果を表にまとめたものがこれです。まずは、寄付金の配分に係

る方針です。今、個別の団体で途上国で事業をやっているところを対象としていますが、例えばネ

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ットワーク NGO を支援の対象にできないかという議論がありました。全体の枠組みの中で、一部の

案件についてはネットワーク NGO を対象にするという形は検討できるのではないかと考えていま

す。ただ、来年の配分方針を決める運営委員会が 4 月にありますので、そこで 終確認をとる必

要がありますが、これは検討可能です。

2 番目の間接費、人件費の支援ができないかというところですが、これは寄付金による事業を委

託して支援するという形で今のスキームを作っておりますので、事業ではないところに支援すること

は難しいというのが検討結果です。

それから配分事業の対象分野について、現在「奨学金事業」や「マイクロクレジット事業」というど

ちらかというと交付金を使った形では支援できないところを寄付金で支援させていただいています

が、そこをもう少し分野を広げられないかという点についてです。これは、交付金でやっている分野

と重複しないというところであれば検討は可能ですが、なかなかそれも難しいところです。例えば、

草の根技術協力事業の対象分野との住み分けは難しい部分です。ですので、現状では、寄付金

事業は小額の案件を対象にするということで、交付金の事業と重ならないところで支援していくとい

う区分けはできるのではないかと考えています。ただ、配分対象を広くするためには、それなりに寄

付金のストックがないとできないのですが、今は資金規模が少ないので、大きくならないと分野を広

げるのは難しいと考えています。あとで、資金規模の話は報告させていただきたいと思います。

それから、配分方針や制度設計のところで、NGO 側から運営委員という形で参加させて欲しいと

いう要望は以前から受けておりまして、検討しているところです。この分科会もその過程です。ただ、

例えば配分の案件を決めるところに NGO を代表として委員に入るのは難しい部分もあるかもしれ

ませんので、配分の選考のところの委員会は参加しないで、配分方針を決めるときに、あるいは寄

付金募集方針を決めるときに参加いただくといった柔軟な参加も可能と思っています。この件は、

引き続き分科会で協議、検討することになっています。

募集の方法につきまして、今進めているインターネットを通じた募集以外に、例えば CSR を希望

する企業に対して、事業をやりたいと考えている NGO のリストを提供してマッチングを進めたり、あ

るいは逆に CSR による活動を行ないたいという企業に要望をヒアリングして、その要望に対して

NGO の方で「これはできる」といった要望をいただいて、両方の形でマッチングすることはできるの

ではないかと思っています。その一時的なつなぎとして、JICA 基金が受け皿となっていただいた企

業の寄付金をそこで使っていき、ある程度パイプができたところで直接寄付を NGO にしていただく

ということはできるのではないかと考えています。

それから、今寄付金が少ないという日本の寄付金文化の事情があるので、例えば地域でもっと寄

付文化が盛り上がるような啓発イベントを JICA 国内機関と連携しながらやっていくということは十分

に検討可能なところです。例えば、地域の NGO の要望を国内機関に提供して、イベントやセミナ

ーを作っていくことは検討可能です。

議事録に戻りまして、2 ページです。いくつか質疑応答がありました。この議事の中では⑧からが

質疑応答です。例えば、配分のところでどれくらい資金規模になって行くかという部分についてで

すが、今のところ急激に寄付金が伸びる見通しはありません。仮に増えたとしても、それで一件当

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たりの配分金額が草の根技術協力事業並になることはありません。逆に、小さい資金を市民参加

協力事業の海外プログラムのような形でより多くの NGO に使っていただく方向を考えています。

⑨の交付金との差別化についてです。規模で差別化することは難しいのではないかという指摘が

ありました。例えば、現地 NGO への支援とか、草の根技術協力事業を進めている地域以外での活

動への支援という提案もありました。ただ、何かあったときに JICA の事務所が迅速にリーチできると

ころが重要だと思います。また、現地 NGO との連携は、考えられる部分ではありますが、今プロジ

ェクトベースで現地 NGO と連携している案件もあるので、やはり重複する部分もあるかもしれませ

ん。

⑩は、これもよくご指摘いただきますが、助成金や補助金にしてしまってはどうか、という提案です。

今の JICA 法の中で、補助金が適用できるのが移住関係業務だけに規定されています。ですから、

それを越えることはできません。なるべく緩やかな、使い勝手のいい委託の形式で寄付金を使って

いただくという方向にもっていったほうがスムーズに進むのではないかと考えています。

⑪のところは、先ほどの議論と同じで、地域での寄付文化醸成のためのイベントが考えられます。

それから、⑫の運営委員会への関わりについても、検討していきます。

3 ページでは今後の作業の進め方について書いています。いくつか JICA で検討できるといった

ところは、早急に年度内に方針を作って、この寄付金の分科会があと 1 回か 2 回である程度のア

ウトプットを出す予定ですので、第 4 回の NGO‐JICA 協議会で報告させていただいて、4 月の寄

付金運営委員会にフィードバックする方向にもっていきたいと考えています。

あと、イベントなどについては、ワールドビジョンの高瀬さんから、いろいろアイデアがあるというこ

とを伺っていますので、NGO からのご提案もいただきながら考えていきたいと考えています。

次回は、1 月の末に開催したいと考えています。

毎回、寄付金の集まり具合を報告させていただいています。今回は、(配布資料に)載せておりま

せんので、口頭で報告させていただきます。11 月末現在の今年度の実績は、269 万 9,965 円です。

合計の件数は 238 件、個人の方が 225 件、法人が 13 件になっています。少し伸び悩んでいると

いう現状です。

前回も報告させていただきましたが、夏に公募した配分事業の報告をしたいと思います。今回は、

金額を入れた資料を配布しています。これは JICA 基金のホームページにも載せたところです。12

団体に上限 100 万円の支援ということで審査していただきましたので、金額は 100 万円の支援とな

っている団体もありますし、団体の希望で小額の支援の部分もあります。

JICA 中部ということで、中部関連の NGO を紹介させていただきますと、2 番目のハイチの会が

名古屋の団体です。5 番目の加藤悦子さんは、協力隊 OG で個人で活動している方で、この方も

愛知県出身の隊員です。それから裏にいきまして、2 番目のオヴァ・ママの会、3 番目のアジア子

供基金が同じく中部地方の団体です。ちょっと飛んで、 後から 2 番目の国際交流は子どもの時

から・アジアの会は岐阜県多治見市の団体と伺っています(注:正確には前者の「アジア子供基

金」が多治見市の団体で、「国際交流は子どもの時から・アジアの会」は神奈川県厚木市の団体)。

駆け足になりましたが、以上です。分科会の報告で補足がありましたらお願いします。

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下澤:

ありがとうございました。NGO 側からなにかあるでしょうか。

藤野:

分科会の委員の藤野です。追加でお伺いしたいのは、ゆうちょ銀行からのお金の動きはどうでし

ょうか。

高城:

年 2 回利息が発生したところで(ご寄付を)いただいています。前回報告しましたとおり、6 月に

39 万円強いただきました。これはゆうちょ銀行のホームページで報告されております。第 2 回目は

12 月にいただきました。近々ゆうちょ銀行より報告されるかと思いますが、26 万円強のご寄付をい

ただいております。

藤野:

それからこの前の会議の中で、小規模と地方を大事にされるということが話されました。その傾向

はあると思いますが、名古屋、中部以外ではどのような団体があるのでしょうか。

高城:

一番上の DPI 日本会議は、障害者支援をしている東京の団体です。3 番目のアマニアアフリカ

は宮城県仙台市の団体です。スランガニ基金は、スリランカで活動されている隊員の方です。地元

は東京だったと思います。間違っていたら恐縮です(注:東京都町田市の団体)。開発と権利のた

めの行動センターは神奈川県の団体です。バングラデシュと手をつなぐ会は福岡県の団体です。

アフリカ地域開発市民の会(CanDo)は東京の団体です。 後の環境修復保全機構は東京の団体

です。

下澤:

少しだけ補足します。この寄付金に関する議論は、2006 年から経緯を経て議論をしてきました。

この分科会ができた背景を簡単に確認します。残念ながら JICA のみなさんの方では、寄付金事

業を大規模に行いたいということで協議会で説明があり、内容について NGO から意見や異論が出

ましたが、内容については我々の意見が採用されないまま押し切られる感がありました。それから、

寄付行為という NGO が本来的にやるべき活動の中に、JICA が入ってくることに対して危機感も

NGO 側にありました。時間切れの感があった中でこれがスタートしました。そういうことで、もう一度

議論を整理したいということで、この分科会がスタートしました。これが一点です。

この分科会の主な役割としては、「べき論」は無理だろうということです。「すべきでない」という話

は、この枠組みでは難しく、別の決定機構によってなされるべきだということです。ここでは、募集や

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配分について NGO の意見に配慮をお願いするということで、テクニカルな話する方向で進めてい

るという理解です。募金に対して NGO が賛成して、応援するという見方もできますが、片方で慎重

なスタンスもありますということで進めています。

山崎(名古屋 NGO センター):

寄付文化醸成について、中小の NGO は社会的認知が低いためになかなか寄付をいただけな

い。他方で、JICA は社会的認知があるために、出してもらいやすい。ということは、寄付文化醸成と

いうことに関して、もっと JICA はできるのではないか。JICA に寄付金がどっと集まって JICA が寄

付文化を醸成したという形は望ましいのかということです。日本社会が NGO を支援するような JICA

の努力があってこそ寄付文化が醸成されるのではないか。持っている人はもっと社会に活かしてい

く工夫をするとともに、市民社会の中でいろいろ動きを起こしている人がいる。そういう人たちは信

用できないかもしれないが、JICA を通してそれは信用できる。名もなき市民が活動できる。循環し

ていく関係が作れるというのは JICA ならではの役割だと思います。JICA がこれだけお金を集めた

ということが誇りになるわけではないということを覚えておいていただきたいです。

吉田(JICA):

ご意見いただきありがとうございます。重々私ども肝に銘じたいと思います。確かに、寄付のことに

つきましては、今下澤さんがおっしゃったような経緯があったことは、私どもも確認しております。組

織の事情としてそうなってしまったという事実がありました。今は、JICA の中で、山崎さんがおっしゃ

ったように、JICA が寄付を集めてどうのこうのではなくて、できる限り皆様方と同じ目線でそういうこ

とができて、主体は NGO、JICA はお手伝いをできればという認識でやっているつもりです。ただ、

先に申し上げた組織の事情などがありますので、その中で我々も瞬間瞬間振り替えなければなら

ないことが出てきます。山崎さんの意見や、名古屋 NGO センターからのご意見をこういう場で教え

ていただいて、私どもも勇気づけられます。ただ、JICA の中では必ずしも全員が全員、皆様方

NGO の方がおっしゃっていることがそのまますっと腑に落ちてゆく感じがあるという訳ではありませ

ん。その結果としてこうなってしまったという状況もあります。ですが、今後そういうことのないように

我々フロントラインとしては考えておりますので、そのことを明確にしておきたいと思います。ご意見

ありがとうございます。力になります。

花里(JICA):

2 ページ目の⑥及び⑨につきまして、直接的に企業から NGO にこういう寄付でこういう仕事をし

てほしいというコミットメントを普通に得られるかというと、そういう NGO は多くはありません。 初は

1、2 年、JICA というネームバリューを使わせていただいて、2 年ほど経った上で直接企業さんの信

頼関係が育つようであれば直接やっていただくというマッチングを考えています。バックファンディ

ングになるのか、マッチファンディングになるのか、今そのシステムを考えています。できれば今年

度中に、分科会で協議した上で、ある程度の類型的なものを出していきたいと考えています。まさ

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に、そういうご指摘を分科会のメンバーで議論しています。

龍田:

吉田さんからおもしろい意見をいただいたので、それに対する反応です。できれば、具体的に

NGO と JICA の共同ファンドレイジングキャンペーンができればと考えています。NGO サイドとして

も JICA と一緒にキャンペーンを打つということで、一般市民からみれば JICA のネームバリューを

使って、JICA の信用力を使って、なおかつ NGO の支援も高められるということで、いい寄付文化

の醸成にいい効果があるのではないかと思います。それが、JICA 本体と中央の NGO だけでなく、

地域地域で行なうことで地域の活性化にもなります。具体的にご検討いただきたいと思っています。

下澤:

分科会のメンバーは、今のご意見を活かす形で継続審議をよろしくお願いします。

3 番の報告に移りたいと思います。

報告事項 3 BOP ビジネスとの連携にかかる新制度骨子

高野(JICA):

お手元の資料3に基づいてご報告します。資料のタイトルは「開発課題対応型BOPビジネス連携

制度」というものですが、名称は暫定的なものです。2ページに進みたいと思います。

BOPビジネスというのは、JICAの中でも新しい単語あるいはコンセプトだと思います。JICAの社内

でも、BOPビジネスとは何か、ということはまだあまり知られていない現状があります。今、民間連携

室では、世界の開発援助の中で議論されているBOPビジネスにJICAとしてどのように関わるかとい

う観点で検討しています。他国の開発援助機関が取り組んでいる事例が報告されるに至って、平

成20年度の後半、JICAの中で、BOPビジネスと援助機関の関係はなにかという勉強会を開きまし

た。20年度の勉強会の結果を受けて、平成21年度には勉強から研究へということで調査研究を行

ない始めました。この紙にもありますように、やはり途上国における民間セクターの役割が大きくな

ってきていますし、開発援助と民間セクターとの連携についても国際機関や他の援助機関におい

ても強化されています。BOPビジネスは、途上国の貧困層にとってプラスの開発効果を生むポテン

シャルがあるのではないかということで注目されてきていると理解しています。それから、UNDPなど

の国際機関、あるいは2国間の援助においてもそのような民間ビジネスとの連携の制度が設けられ

ていることも知られています。イギリスとドイツにおいては、開発援助機関が過去10年くらい民間企

業やNGOと連携しながらBOPビジネスをはじめとするビジネスの促進・連携を進める制度を運用し

ています。それらを踏まえまして、私どもとしては、BOPビジネスと呼ばれるもの、あるいはソーシャ

ルビジネスと呼ばれるケースもありますが、こういうものとの連携を進めるための制度を考えていきた

いということで、研究会の中では制度や具体的に途上国で行なわれているBOPビジネスの事例な

ども研究してきました。それらを踏まえまして、新しい制度を構築したいと考えています。

3ページ目にあるのが、我々の考え方を整理したものです。JICAは、もちろん途上国の開発に役

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立つ民間事業と連携することによって貧困削減をはじめとするMDGsの達成を支援するためにこの

制度を考えています。

制度としては、提案を公募する形です。提案企業あるいは団体から提案された優れた提案に対

してその事業に関する提案調査を委託することを考えています。これは平成22年度のできるだけ

早い段階に制度を作り上げて、初回公募については、まずは日本の企業またはNPOなどの法人と

いう形で開始したいと考えています。将来的には、現地の日系企業、さらにその先には現地の地

場の企業もありうると考えています。イギリスその他の制度においてはそのような提案公募の形にな

っています。3番目としては、BOPビジネスでは企業・団体が担い手となりますが、企業と

NPO/NGOとのパートナーとしての協働、すなわち一般事業会社だけではなくて現地の暮らしを良

く知っている現地のNGOや日本のNGOなど多様なパートナーと連携することを可能にすることを考

えています。

次の6ページ目のフローをみてください。BOPビジネスという場合、2側面あると言われています。

まずは、提供する製品、サービスをBOP層が買う、使う、消費する、ことによって彼らが抱えている

課題、生活の向上につながるものを提供する側面です。それから、製品・サービスの原材料の生産、

製造、流通、小売、さらにはリサイクルなど、いわゆるバリューチェーンといわれるもの、そこにBOP

層の人々に入っていただいて、取引や雇用を増やすということを通じた側面があります。この両方、

あるいはいずれかを持ったビジネスと連携をしたいと考えています。暫定的に2つのフェーズに分

けていますが、必ずしも常に2つに明確に分かれる場合ばかりではありませんが、コンセプトとして2

段階に分けています。1つは、情報収集・市場調査フェーズ、それからビジネスモデルを作り上げて

いくフェーズです。 終的には、それを踏まえて企業・団体がビジネスプランを作ります。こういった

段階で、提案をいただいてそれに対する委託をします。ビジネスプランができて、本格実施というと

ころになれば、あとは企業・団体に独自にやっていただく。

提案の選考の観点を3つにまとめています。ひとつは当然、JICAが行なう事業ですので、JICAの

ミッションにかなったものであるかという点です。公益性という言葉を使っていますが、それが事業で

実施されることによって、BOP層の人々が抱えている基本的にニーズに応えるものか、生活環境の

改善に繋がるのか、環境保全に繋がるのか、という点です。それから、JICAが連携することによって、

企業だけが行なうときと比べて、より大きな効果が生まれる、あるいはより早く達成されることが期待

されます。追加性という側面です。

2つ目は、ビジネスとして成り立つのか、持続可能なのか。当然、企業としては、赤字事業というこ

とになると持続、拡大が期待できないので、コストを回収し、持続可能となるモデルを作る。それか

らモデル自体がスケールアップできるもの。その場でスケールアップできるのか、あるいは違う地域

で展開できるのか、というようなモデル性も考えます。

次のページにもありますが、対象とする国については、制度立ち上げ後の当面の間はJICA事務

所が所在する国とします。規模については、業務委託契約上限額を原則として5千万円まで、実施

期間は3年以内とします。2010年度は2回公募の予定です。それから、業務委託経費については、

提案した側が必要と見込むものの、丸抱えではなく、JICAが業務委託として一部を負担します。内

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容については、これから検討します。選考方法については、まずJICAが1次選考した上で、外部の

方からなる第三者委員会で助言をいただき、その結果を踏まえて内定案件を決めます。この第三

者委員会には、NGOの代表の方が参加することも検討しています。

以上が、ざっとした制度の骨子です。BOPビジネスですので、基本的には本業に繋げていただく。

例えばこの連携を通じて、3年なら3年取り組んでいただいて、これが本当にビジネスとしてなりたつ

のか、必要な調査等を委託により実施していただく。 低限、コストが回収されないとビジネスの立

ち上げ自体が無理です。それが成り立つのであれば、立ち上げていただく。今、届いていないとこ

ろに、必要としているものをビジネスの形態を通じて届けていただく。CSRとの関係では、例えばそ

れが本業につながるために必要な活動なのかどうかというところで対象かどうかを考えます。例えば、

本業とまったく関係ないフィランソロピー活動をやりたい、どこかで小学校を建てたい、それで終わ

りです、というものは、今の制度では対象になりません。それをなにかビジネスの形で発展できる提

案である必要があります。

終わりに、BOPビジネスの事例として先ほど申し上げたBOP層が買って使うことにより開発効果が

期待できる事例をひとつ紹介します。これはフィリップス社が取り組んでいる無煙ストーブのケース

です。これは、オランダのNGOであるICCOとOxfam Novibのレポートからとらせていただいています。

それから2つ目は、BOPビジネスの2つ目の側面、生産とか流通の側面にBOP層が関わるケースで

す。いずれのケースでもNGOが参画しています。後者については、コンサベーションインターナショ

ナルが関わっています。

NGOやNPOへの期待としては、BOP層の人々の潜在的能力を高めていくことにつながるような形

で、企業とNGO、NPOとが連携して検討いただくことで、そういう効果が高まると考えています。それ

は先行例の中でも、NGO、NPOの強みを活かして効果を上げている例が紹介されていて、注目し

ています。それから、BOP層の脆弱性という観点で、企業とパートナーを組むときにNGO、NPOがし

っかりと詰めていくことを私どももNGO/NPOの役割として意識しています。

もうひとつ、企業とNGOの連携も検討されています。先日、CSR推進NGOネットワークの活動の一

環として行なわれたディスカッションに参加しました。NGOと企業の連携において、それが途上国

の現場で行なわれる場合に、JICAもなんらかの形で貢献する余地があるのではないかと考えてい

ます。

BOP ビジネス自体はすべての問題を解決する万能のビジネス、アプローチではありません。例え

ば、 貧困層、the poorest of the poor といわれる層に対しては、製品に対して価格をつけて販売

し、コストを回収ができるかどうかはわかりません。できるケースとできないケースがあるでしょう。

貧困層の場合には、無償で提供するケースが妥当な場合もあるでしょう。BOP ビジネスは万能で

はありませんが、それがもっているポテンシャルが活きる形で連携を考えていきたいと考えています。

下澤:

もう一度確認です。できるだけ報告を短くして、討議を長くするという方針でやっていましたので、

ご質問を含めて報告の時間を短くしていただければと思います。

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清水(FoE JAPAN):

大きく分けて 5 点質問があります。1 点目は、スケジュールを教えてください。今は、素案というこ

とですが、今後どのようなプロセスを経て決定に至るのか教えてください。また、確認ですが、この

研究会というのは経済産業省貿易経済協力局の下でやっている研究会でしょうか。これが 1 点目

です。

2 点目が海外投融資再開との関係です。海外投融資再開が現在検討されていると思いますが、

この BOP ビジネスはその一環として検討されているのかどうかということです。

3 点目は、他の行政機関が実施している事業との住み分けです。例えば、JETRO、経済産業省

の ODA でも、同種の調査を実施しています。こことの住み分けがどうなっているかということです。

それから、本体事業に入ったときに JBIC との住み分けをどのようにするかということについて、どの

ように検討されていますか。以前、海外投融資で問題となったことが、JBIC(当時は輸銀)にあった

と思います。例えば、JBIC に申請を断られたから JICA あるいは OECF の海外投融資にいきまし

た、あるいは JICA の方が譲許的な融資条件なので JICA の方にいきましたということが、事実関係

はわかりませんが、いろいろなところで懸念が出て議論され、あるいは出版されています。今回

BOP ビジネスを考えるにあたっては、このような点についてしっかりと検討する必要があると思いま

す。こういった他の機関との住み分けに関して、どのような基準を設けるつもりなのか、あるいは基

準を設けるつもりはないのかということをお教え願います。

4 点目は、JICA の既存のスキームではなぜだめなのかということです。調査であれば、協力準備

調査ではなぜだめなのか、あるいは今の円借款のスキームではなぜだめなのか。業務のスリム化と

いう観点からお伺いいたします。

5 点目は透明性です。民間企業が、開発課題に対して貢献するべきところは貢献するべきだとは

思いますが、懸念されるのは民間企業が入ったときに情報公開に制限が出てしまうということです。

現在、JICA の調査、あるいは環境社会配慮上の調査につきましても、ほぼ公開が前提となって、

透明性が高まってきている中で、こういった民間ビジネスが関わった場合にどういった弊害が出て

きてしまうのか。あるいは出てこないのか。出てきそうな気がするのですが、出てくるとすればどのよ

うな点について弊害が出てきてしまうのかという点について教えてください。

野田:

バングラデシュなどでソーシャルビジネスが立ち上がっていると思います。これは日本企業に限

定されています。その理由を教えていただきたい。日本は果たして BOP をやるビジネスは得意な

のか。例えば、マザーハウスなど少数はありますが、本当にできるのでしょうか。具体的なイメージ

はあるのでしょうか。

中島(名古屋 NGO センター):

BOP ビジネスのことはあまり知りませんが、イメージとして貧困層の人たちがいろんなところで便利

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になっていくということがあります。例えば、味の素が小分けしてフィリピンでは 1 ペソという形で売ら

れていますし、ネッスルが母乳の代わりに粉ミルクをといて与えてということがアフリカでありました。

また、塩と砂糖を溶いて下痢を止める経口保水塩の話も聞いています。そういうことに日本の企業

が BOP ビジネスとして参入していくというイメージがあります。そういうものが地域文化を壊したり、

いろんな意味で弊害を人々に逆に及ぼすこともところも出てくると思います。逆に、本当に現場の

人たちが、自立して発展していくような仕組み、現地の人たちのニーズにあった現場の中小企業と

いいますか、現地の企業が育っていくような、そういうところに技術をハンドオーバーしてその人た

ちの本来のエンパワーにつながる BOP もあると思います。そのような BOP を JICA が進めていく場

合の基準みたいなものを、いわゆる地域文化の尊重や搾取をしないというようなことですとか、人々

のニーズをしっかりと把握するなど、そのようなところをどのように保障するのか教えてください。

高野:

すべてご説明を始めると時間的に厳しいと思います。また、詳細の制度設計はこれからというとこ

ろです。

冒頭に質問のあった今後のスケジュールについては、今のところ平成 22 年度の早い時期に第 1

回の公募ができるよう作業を進めています。作業スケジュールの詳細はこれからとなっています。

今日ご説明をしたのは、研究会の議論を受けて出来たフレームワークです。中身の部分はこれか

らです。出来上がってから説明するよりも、大きな枠組み部分からみなさんにお知らせする方がよ

ろしいのではないかというご指摘を研究会委員からいただいたことも受けて、今回ご説明しておりま

す。

2 点目の海外投融資の一環であるかどうかについて。これは海外投融資の再開の検討プロセス

とは別に出てきたもので、たまたま 2 つの検討プロセスが同時期に並行的に進んでいるということ

です。BOP ビジネス制度検討は海外投融資の再開検討の一環として行っている、ということではあ

りません。

経済産業省の研究会は、「BOP ビジネス政策研究会」いう名前で行なわれていて、その下にワー

キンググループ会合が設けられています。私は、JICA からワーキンググループ会合に出ています。

先ほど言及した JICA の研究会は、「BOP ビジネス研究会」という名称の下でやっています。

既存制度との住み分けについては、私どもが目指している開発アジェンダにかなった企業や団

体との連携を目指していますが、どのような形で整理していくか検討しています。なぜ既存制度の

中でできないのかということについて、既存制度の中では、今申し上げたような BOP ビジネスと連

携する発想は非常に新しいものです。基本的には、企業、団体にとっては調査研究的ステージと

なりますし、JICA としてもモデルとしての成果を見ていきたい。もちろんそれは公開されます。それ

をもって BOP ビジネスの多様な先行モデルというものが共有されることになってくると思います。い

ずれにしても、新しい取組みで、位置づけとしてはこういう調査の一環ですので、調査研究的性格

を有しています。正式制度名称も決めて立ち上げたいと考えています。

情報公開については、当然企業・団体として秘匿しなければならない企業情報が出てくることも

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想定されます。したがって、先ほどおっしゃられたように、JICA がこの取組みについて全ての経費

全体を丸抱えするものではなくて、JICA としてこれを連携させていく意義は、BOP ビジネスが期待

されているような力が発揮されるケースを生み出し、将来の開発の現場で役立つ BOP ビジネスの

展開につなげることです。JICA にとって、開発援助にとって必要となるその成果については、情報

公開をしていきたいと考えています。 非常に細かい技術的仕様の部分、特許に関わる部分など

は、扱いが異なってくると思います。

それからどういう企業・団体が具体的にあるかという質問については、多くあります。ここでは具体

的には企業・団体名称は申し上げられませんが、民間連携室に多様な相談をいただいていまして、

栄養改善につながるものや感染症対策につながるものなどです。その中でひとつの企業は、ソー

シャルビジネスとして立ち上げることを考えています。余剰が出ても、余剰は株主に配当しないとい

う形です。そういう事業もあります。

弊害についてはご指摘の通りです。研究会の中では、レスポンシブルビジネスということで言われ

ていました。企業や団体の姿勢として、責任ある対応をとるという観点が非常に重要だろうと。私た

ちが、連携の対象とさせていただくときにそういう観点も選考の基準にするようにしたいと思います。

下澤:

まだご質問があるかもしれませんが、ここでこの報告は終わらせていただきます。

後に、追加でお願いしました事業仕分けについて、簡単な口頭での報告をお願いします。

NGO 側からも何点か発言したいとのことがありますので、少しだけ時間を延長したいと思います。

吉田(JICA):

国内事業部から、簡単にご説明します。JICA に関する行政刷新会議の事業仕分けが 11 月 24

日に実施されました。全体的な流れとして、JICA は高コストであるとの指摘があり、その中でさらに

合理化していくべきとの話がありました。その一環として国内機関の統合の話がありました。現在、

遡上に載っておりますのは、北からいきますと、札幌と帯広の統合、東京と横浜の統合、大阪と兵

庫の統合です。私どもとしては、行政刷新会議から(JICA 施設の)統合をお願いしたいとのことで

すので、それは真摯に受け止めて、淡々とその方向で検討していかなければならないと考えてい

ます。ただ、我々JICA だけで研修員受入事業なり市民参加協力事業なり協力隊募集の仕事をし

てきたわけではありません。関係する NGO の方もおられますし、地方自治体や一般市民の方々の

同意と支援の中で我々が地域でいろいろなことをやらせていただいてきました。そのような観点か

ら、皆さまからのご理解をいただいてから検討してゆくという方向で考えています。現在、事業仕分

けに対応する案を私どもの方から外務省、外務省から財務省、財務省から行刷会議に向けて話が

されており、(国内機関の)統合をどう扱っていくかという政治的な方向性も 12 月末までに示される

であろうと私どもは考えています。先ほど、地域の方々の理解が大事だということは申し上げました

が、現在財務省、外務省、内閣府が協議をしているところですので、(予想されない)いろいろなこ

とがあると思います。全てが事務方が積み上げたもので決まるというわけではなくて、政治的な決

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着というのも視野に入ってくるのではないかと考えています。JICA 国内機関の統合の指摘につい

ては以上です。

指摘は、国内機関のみならず本部の方にもきています。これはご承知かと思いますが、麹町本部、

幡ヶ谷の研修センター、地球ひろば、これらを統合して売却できるものは売却しなさいという指摘を

いただいています。昔、国総研といいました市ヶ谷の研究所についても、本部に統合するようにと

いう事業仕分けチームの結論が出ています。それも、今後どうするかということを検討中です。

何かありましたら、ご質問をお願いします。

藤野:

先ほど、少し申し上げましたが、昨日兵庫県の NGO が記者発表をし、岡田大臣と緒方理事長と

今の政権の民主党の県連に対して要望書を出しました。それは国内センターの維持に関する要望

書です。我々がそういうことを言ったとしても変わるわけではないし、JICA としても難しいことが今の

お話から聞こえてくるわけですが、こういう会議があること、それから NGO 連携ということがあること、

センターのいろんなところと連携していることを示したいと思います。関西でいうと大阪センターだけ

で滋賀、京都、大阪、奈良、和歌山をカバーしています。奈良や和歌山にとっては大阪センターは

非常に遠くて、足りないという話があるくらいのところに、さらに減らしていくということはなにを考え

ているのかということになります。今日ここでやっているような会議が名古屋であるということを、逆に

台無しにする、逆行する話になっていて、とても残念な方向性だと思っています。それに対して

JICA が文句をいえないものなのか。そういうことはある種の裁きを受ける側なので粛々と作業を進

めるしかないのか。ある種の物言いが言えるのか、お聞きしたい。

吉田:

ここに総務部の人間はおりませんが、官房部門である企画部の花里がおりますので、追って花里

から補強してもらいたいと思います。事業仕分けの現場に私はおりませんでしたが、少なくとも我々

から参加した者が事業仕分けの協議でベストは尽くしたと私は思っています。また、各関係自治体

の方には 11 月 24 日を踏まえて、仕分けの結果を報告しておりますし、理解をいただくようにして

おります。私自身も札幌に参りましたし、帯広、大阪、神戸、横浜にも参りました。行刷会議と JICA

の戦いだと言われたりもしますが、国民を相手に戦ってはいけないと思っております。尾立議員は

行刷会議は、内閣総理大臣の命を受けた国民のものです、と言われておられました。これは JICA

というよりは、外務省なり霞ヶ関の関係官庁における協議の中で決まっていくものと思っています。

ただ、JICA としては、こういう場でも我々の立場を説明させていただいておりますし、これからも

NGO‐JICA 協議会等で、JICA の国内機関の意義について理解を求めて参りたいと思います。

花里:

行政刷新会議の担当をしておりました。あの場だけで議論がされているわけではなくて、事前に

どういう事業を行なっているのかということについて話をしてきました。あの本会議で提示されたもの

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に基づいて予算をどうしていくかということで、今まさに予算の調整をしています。例年よりは若干

遅れた形での予算成立になると思います。国内センターの廃止の部分に関しては、直接的に予算

に大きく反映されているかといえばそうではありません。4 月から全部統合しますというのはフィジカ

ルにできません。いろいろな契約もあります。その方向性について、これからスケジュールを決めて

検討していきますという形になっています。その中で、今ご指摘があった JICA としてのセンターの

必要性を当然訴えていくべきだと思っています。

一方で、その議論の中で確かに我々の高コスト体質や行なっている事業をもうちょっと見直すと

ころがないかといわれると、ないわけではなくて、我々はこれだけの事業規模ですので非効率なと

ころもあります。これを見直し、効率化を図っていくという観点から事業全体の見直しを始めている

ところです。これには 2 つの方向性があって、1 つは指摘に沿った形で自分たちの活動を見直して

さらによりよいものにしていく流れと、もうひとつは説明しきるべきものに関しては、これからも説明の

機会を設けさせていただくという流れです。

今のところ、戦略会議が先行していないので、政府として大きな戦略としてこれをやっていくべき

だという観点で仕分けがなされているわけではありません。そうであれば我々も議論しやすいので

すが、そういう形ではなくあくまで無駄を省くという形で議論が進んでいます。しかし JICA として今

後、指摘に沿って改善を図っていきたいと思います。

吉田:

仕分けチームの方々が、我々にとにかく高コストということをおっしゃっていましたが、JICA の行

なっている業務については理解もするし重要だという認識であることは間違いないと思います。た

だ、もう少しコスト面でなんとかならないのかというところは、我々も税金でやっている以上、しっかり

と 1 円でも節約しながらやっていかないといけないという良いきっかけになったと考えています。現

在でも花里が申し上げたように、相当な部分まで切り込んでなるべく少ない費用で効果を上げてい

くような業務を各支部、センターでやっていくという事務的な詰めと作業を継続しているところです。

下澤:

この件は、これで終わりにします。休憩にします。

休憩

協議事項 2 草の根技術協力事業案件の「振り返りシート」(仮称)の試行について

下澤:

それでは、開始したいと思います。時間が少なくなっているので、プレゼンテーションなどは短め

にしてお話いただければと思います。また、議題を入れ替えて、2、3、4 と進み、残り時間が許す範

囲で 1 を進めたいと思います。

よろしくお願いします。

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吉成(JICA):

早速ポイントに入りたいと思います。草の根技術協力事業における NGO-JICA イコールパートナ

ーシップ振り返りシートというものをご提案させていただきました。本件については、名古屋 NGO

センターの清家さんの方から 初にご提案をいただきました。草の根技術協力事業を開始して約

8 年経ちますが、実施していく中で課題があるというお話でした。事業をイコールパートナーとして

運営していくべきなのですが、その中でいくつかイコールパートナーという関係性が十分保たれな

かった例があるのではないかという問題意識をいただきました。これについては重要な課題ですの

で、JICA としてもこれを改善するための方策を考えました。もちろん一義的には問題があった時点

でタイムリーに解決することがひとつですが、それに加えて事業を通じて NGO と JICA が同じ意識

で常にイコールパートナーであるということを認識するために事業終了時に振り返りをし、評価をす

るということを前提に事業を運営していくことにすると、常に意識を保てるのではないかという考え方

から、今回パートナーシップの振り返りシートを提案させていただきます。

お手元の資料の A3 の用紙の左側に、原案となるシートを載せてあります。この原案を元にした

振り返りシートの考え方の説明が真ん中に載せてあります。一番右にあるのが、具体的な振り返り

シート案です。まず、左にあります提案された評価シート原案をベースに、JICA の方で振り返りシ

ートを作りました。原案と違うところを説明させていただきます。

まず、イコールパートナーとしての原則です。説明書きに評価する観点を書いてあります。この中

で、対等の関係という欄と一番下の Win-win の関係の構築の 2 つを 1 つに統合して、取りまとめて

真ん中にある対等のところに集約しました。対等の関係を突き詰めて考えると、双方がそれぞれを

必要とする関係ということは、それぞれについてメリットがあるということですので、この原案で 2 つ

に分かれたものを 1 つとして整理させていただきました。

もう 1 つあります。コスト意識というところを追加させていただきました。これも部長の吉田の方か

らありましたとおり、すべての事業において JICA として改めてコスト意識は事業を進めていく上で

認識する必要があるということを踏まえまして、こちらに追加させていただきました。

基本的には、原案をベースとして大きくは変えておりません。今回、まずは試行していくことを考

えています。この振り返りシートの考え方に従って、今年度終了する案件で試行していきたいと考

えています。また、これを試行して、NGO の意見、JICA の意見をレビューし、場合によっては項目

を変えるとか、現在 5 段階の評価の基準を見直すとか、実際の運用を経てその経験をベースに改

善を加えたいと考えています。運用にあたっては、真ん中のシートの上に書いてあるように、地球

ひろばのパートナー型で終了する案件が 4 件あるので、まずそれを試行として実施していきたいと

考えています。草の根技術協力事業をしている団体はお分かりだと思いますが、従来から終了時

評価は個々の案件でやっていまして、これは変わらず実施していきます。これとイコールパートナ

ーシップのシートを併用していくということで考えています。

清家:

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これは、私たちの方で投げかけました。これは NGO と JICA の両方でやるという試みです。片方

がこうおもっていたけど、片方は別のことを思っていた。そういう形で問題が出てくると思います。そ

して、その問題が何かを考えることで次に繋がっていくと思っています。そういう意味で、このシート

の修正を JICA 側にしていただき、まず 4 件を行ない、またもし必要な項目があれば修正していくと

いうことで、やっていくということであれば私としてはうれしいと思います。

中島:

シートについて質問があります。得点で 1~5 までになっていますが、それをつけた理由を記述

式で全部書いてもらってはどうかと考えています。例えば、対等な関係であったかというところに、2

という評価をした場合に、その理由はなんですかということで記述をそこでそれぞれ JICA 側、NGO

側が記述式で書く、または事例を出すというのはどうでしょうか。

清家:

それがあればいいと思う。理由は必要だと思います。

吉成:

もう 1 つ説明を付け加えるのを失念してました。このシートでは、①~⑩まで数値に丸をつける形

ですが、一番 後に特記事項の欄をつけています。今のご提案のとおり、それぞれ欄を設けるとい

うのもありますが、全体として事業について気づいた点に関しては記述式で書く欄を設けようと考え

ています。元の原案にもついています。追加で説明しておきます。

吉田:

振り返りシートの前提だと思いますが、我々が(草の根技術協力事業の)公募をするときにこれを

作ることを前提とすることを明確にすることが 1 点です。あとは、これを公開するということでよろしい

でしょうか。

清家:

今おっしゃられた 2 点は、私たちからお願いしたことです。

吉成:

そのように考えています。

龍田:

対等の関係と Win-Win の関係を 1 つにまとめたとのことですが、これについて思うところがありま

す。というのは、そもそもこれを作る原因は、いくつかの対等な関係が保たれていなかったことに起

因しています。それが明記できる項目があったほうがいいと思います。これは個人の資質以前の問

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題で、どうしても独占的で大きな組織がそれ以外の組織を相手にするときは、必ずこのような問題

が起きるものです。一般的な企業に行けば独占禁止法の関連で下請法というのがあって、規模の

違う企業が下請けに発注する際にやってはいけないことが法律で明記されています。JICA はこの

分野で大きな組織であって、NGO や市民にとって他にチョイスがありません。その非対称的な関係

の中で、イコールパートナーの関係を保つのは非常に難しいと思います。やはり発注する側はいろ

いろ無理を言いやすい状況です。ただ、それを文化としてどういうふうに JICA の中で位置づける

かということが重要です。

もう 1 つ言えば、思い出すということです。イコールパートナーでなければいけない、ということを

思い出すような欄があって、先ほどおっしゃられたように、 終的に公開されるというのであれば自

制もします。それくらいやらなければ非対称な関係はなかなか難しいと思います。その辺いかがで

しょうか。

下澤:

確認ですが。変更された対等な関係の部分をなんらかの形で変更した方がいいという提案です

か。

龍田:

要は、発端となったところが評価項目として上がってくるような項目を加えるという話です。いつも

「なかった」というところに丸が打たれることになるとは思いますが、例えば JICA から圧力を感じた、

とかです。そういう直接的でなくても、要するにそれがわかるような項目があったほうがいいのでは

ないかと思っています。要は、担当者がそれを思い起こすシートであるということがとても重要な部

分であるように思います。

下澤:

もう 1 つ確認です。一番右側でいうと、③対等な関係だったかを 1~5 で選ぶのは単純すぎると

いうことですか。

龍田:

これだと事業全体をまとめているような形なので、1 項目では難しいかな、ということです。

清家:

それを挙げていけばキリがないと思います。ですから、これで一度はじめてみて、これで十分では

ないということであれば、何かこの中に加えていくということであればいいのではないかと思います。

吉成:

私の方で、対等な関係、win-win の関係とひとつにまとめていますが、今ご意見いただいた趣旨

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というのは、事業の成果だけではなくて、組織対組織の対話の中での行動や意識の対等性が必要

だということだと思います。そうすると、もともと清家さんから提案があったところの対等な関係を残し

て、今言われたような趣旨を書き加えるということは一案かなと思いました。ただ、今具体的にどう書

き表せば一般的に共通した理解に達するかわからないので、もし具体的な提案があれば教えてい

ただければと思います。

山崎:

イコールパートナーという言葉はわかったようでわからない。このシートに書かれている言葉の定

義に共通理解があるのでしょうか。立場の違う組織だからこそ存在価値があります。それが 1 つの

事業の関係をもって、うまく事業をまとめていくというのは本来的ではないと思います。それぞれみ

なさんが活かされてこそ、パートナーシップが活きると思います。独自性が活かされる形がいいと思

います。イコールパートナーというわかったようなわからないような言葉でまとめるのではなく、違い

をはっきりして、本来嫌なんだけれども、だからこそ一緒にやりたいということで進めるべきだと思い

ます。

下澤:

私の方から補足させていただきます。確かにイコールパートナーは言葉として曖昧になりやすい

です。ただ、この場合重要なのは、パートナーシップの中で違いがあるのは前提だと思います。そ

の中で決定権、プロジェクトのあるべき姿を決めるときに、お金を出す側が強くなり決定に影響力を

及ぼすことが一般的に知られています。そういったことがないような、決定権においても対等である

ようなプロジェクト、目標を目指す場合は対等に意見を述べ合って決定していくことが望ましいとい

うことでこの議論が始まったと思っています。当然、違いがあることをお互い認め合い、互いに有効

に使うことが前提になっているかと思っています。もし必要であれば、イコールパートナーの周辺の

文章において、イコールは何をさしているかわかるような文章があればいいと思います。

西井(フィリピン情報センター・ナゴヤ):

このようなパートナーシップの振り返りをすることはいいと思います。ただ、こういうシートに率直な

意見を書くのが NGO 側として求められているわけですが、あまりにも率直な意見を書いたために

不利益をこうむるのではないかという危惧も生じてくるかもしれません。そのときに、ここに書いてあ

る内容によって、その後の取り扱いで不利益が生じないというようなものを担保する記述があれば

あったほうが NGO としてはより率直な意見が言えると思います。

下澤:

公開する仕方は今後考えられると思いますが、特定の団体名や事業名はでない形でやるのでし

ょうか。

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吉田:

情報公開法に則って行いますので、原則公開となりますが、(団体が公開を望まない部分につい

ては)非公開の部分もあるかと思います。

下澤:

ただ、おっしゃった点は、出る出ないだけではなくて、それを見た担当官が怒って、これは違うと

いう議論が始まることですね。

吉田:

そこまで JICA が高圧的なことは無いかと思います。そこまでいくと、JICA の存在意義もありませ

んので、そのようなことはないと思います。そこはご理解いただければと思います。

清家:

さっきのイコールパートナーについてです。もともとイコールパートナーということで大きく捉えて、

議論をしていこうかということでした。ただ、それだといろんなことが曖昧になっていくので、草の根

技術協力事業の評価シートということで、案件を進める中でいろいろな不具合を感じたことを率直

に書いていき、いろんな例を炙り出し、これだけ役にたったということはまず出すことにしました。そ

して、そこから広げていく形でイコールパートナーということを考えていこうと思っています。はじめ

に NGO の会議の中で出したときには壮大な議論でした。互いの NGO の立場、JICA の立場という

ところから入っていこうと想定していましたが、よくよく考えていると多くのことがこの中で共有された

としても、問題はいろんな場面場面で出てくるので、ひとつのところで計れるものがあったほうがい

いなと思ったので、提案させていただきました。

大金:

西井さんの提案について考えるところがあります。このシートの提案を受けたときに、JICA も事後

評価表というのを書いていただいていました。そこで JICA に対する要望や気づきの点がありました。

現状でいいのではないかという議論もしました。ただ、こういうシートを作って公開することで、

NGO‐JICA 協議会のみなさんは、1 とか 2 とか点がシートについていることを互いに知るわけです。

すでに公開されてみなさん見ているわけですから、これまでの事後評価表よりももっと透明性が確

保されていると考えています。そのことが改善につながるということで、今回この提案がいいのでは

ないかということで受けさせていただきました。抑止力は公開することで高まると考えています。

西井:

おっしゃる意味はよくわかります。制度そのもののなかに抑止するものが仕組まれていることが、

情報公開によって確保されるのだということで、今後の運用を見守っていきたいと思います。

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中島:

連携事業の小委員会で、草の根技術協力事業のパートナーシップの話をしたときに課題になっ

た点を思い出しました。現地の事務所では、草の根技術協力事業についてはあまりタッチしないと

いう印象でした。現地のオフィサーにとっては、1 号案件が重要であって、草の根技術協力事業、

パートナーシップ事業は彼らの意識の中にはないという現地オフィサーの方もいらっしゃると聞きま

した。適切なアドバイスがもらえなかったということも連携事業の検討会議の中でも話されていまし

た。連携による相乗効果を出す努力をしたかという項目、例えば JICA 側は適切なアドバイスを草

の根技術協力事業に行なったか、情報提供を行なったか、資源を提供したか。また、NGO 側も連

携による相乗効果を出す努力をして、現地事務所に対して情報などを求める努力をしたか、アドバ

イスを求める努力をしたかという項目があればよいと思います。

清家:

そこは考えていました。そこは、JICA 側の横断的な連携調整という部分をつけました。国内の方

は一生懸命やっていても、現地事務所はどうなのかということが草の根技術協力事業の話合いの

中で出てきましたので、横断的な調整がなされたかということを聞いています。これは JICA 側も評

価するし、NGO 側も評価する。これは、JICA 側がちゃんとやりましたよ、といっても NGO 側が全然

できてなかった、ということがあるかもしれない。そのようなことでこの項目を入れさせていただきまし

た。

定松:

別のポイントですが、このパートナーシップシートで振り返るパースペクティブについて、ひとつの

提言です。この中に、NGO 側のキャパシティビルディングに対する項目があってもいいのではない

でしょうか。現在の草の根技術協力事業では、NGO へのインスティテューショナルビルディングに

対する資金的な支援はないと承知しています。事業の経験を通じて組織力がアップしていくことは

あると思います。そのことによって例えば途上国の現場においてプレゼンスが高まることがあるかも

しれません。また、相手国政府に対するアクセスが生まれるかもしれません。そういった副次的な効

果があると思います。そういったことを NGO 側が意識すると同時に、JICA の方にも草の根技術協

力事業はそういった副次的な効果もあるということを意識するほうがいいと思います。お金は関係な

くできると思うので、そういったことも評価、振り返りの対象に入れてはどうかと思います。

吉成:

このシートは、どちらかというと行動とか意識のあり方を振り返るシートです。別途現状ある終了時

評価の評価シートの中に、一部終了後に NGO 側がどういうメリットがあったのかという欄を漠とした

基準で書いていますが、定松さんがおっしゃったような NGO の方のキャパシティービルディングに

つながったか否かと明示的に書いていないので、むしろ事業の終了時評価のところに工夫を加え

る必要があるのではないかと感じました。

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下澤:

たくさんのコメントをいただきました。これは実施が現実的な状態になっていると感じています。こ

のファイナルをどういった形で確認するか決めて、この議題を終えたいと思います。今日、いろいろ

出された意見を取り込んでいただけるのではないかと思います。いずれにしても判断をしなければ

いけません。これを誰がどのような形で確認し、できればコンセンサスができたときに試行したらい

いと思います。もう一点気になったのは、ここにいない NGO の方は突然こういうものが出来た感が

あると思うので、何らかの認知の努力を NGO 側もして、一緒にやっていければいいと思います。こ

の決め方をどうしましょうか。全くお任せするということもありだと思います。

吉成:

できれば今年中に確定して、1 月以降に終わる案件から試行していきたいと考えています。

下澤:

提案です。時間をセーブする意味でも、清家さん、吉成さんの間で文字修正は任せて、なにかあ

った場合にコーディネーターに投げてもらって、問題なければ進めるということでどうでしょうか。利

用団体からいろんな異論がでるかもしれません。そのときにはここでまた話し合ってということでい

かがでしょうか。

清家:

吉成さんの方で完成したものを送ってもらって、NGO の間で揉んで、年内で固めるということでい

いと思います。

吉成:

それでよろしくお願いします。

協議事項 3 開発調査のフォローアップと JICA の責任

下澤:

それでは、西井さんから論点を含めて説明をお願いします。

西井:

開発調査のフォローアップと JICA の責任ということで、JICA の行なっているスキームの中で、特

に重要な開発調査について提案しました。私がフィリピンで関わっているセブの事例をここで挙げ

させてもらい、開発調査のひとつの例としてみていこうということです。

開発調査というのは、JICA のみなさんを前にして言う必要はないかもしれませんが、途上国の開

発計画の策定を支援するものです。同時に、計画策定を支援するプロセスにおいて、策定方法や

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調査の技術などの移転を目的としています。

今日取り上げましたセブの開発計画は、フィリピンのセブ地域における総合的な開発計画を策定

することと、技術移転を行なうことを目的に取り組まれた事業です。これに関して、2000 年以来私た

ちはセブに関わってきました。その過程でわかってきたことは、JICA の開発調査になんらかの改善

点があるのではないかということです。

どういうことかと言うと、開発調査の中身について、「フィリピン国セブ州総合開発計画調査 終報

告書」というタイトルの報告書を入手し、読ませていただきました。1994 年 1 月に出されたものです。

その中で、セブマスタープラン 2010 という 1993 年から 2010 年までの長期にわたるセブ地域にお

ける総合開発計画が策定されたことになっています。このマスタープランの中では、水事業などさま

ざまな計画が策定されています。この中で、環境影響評価という部分もあります。そこに、8 つの事

業が挙げられています。工業団地開発プロジェクトなどです。その中の 2 つが、私どもが関わって

いるセブの事例です。セブ南部埋め立てプロジェクトとセブ南部海岸道路プロジェクトの 2 つがあり

ます。これらに対して、セブマスタープランではこういうふうに書いています。

「当案件の環境影響調査結果は、環境自然資源省にすでに提出ずみであるが、工事によって

海洋汚染に特段の配慮が必要である」と書いてあります。つまり環境への配慮の注意喚起が行な

われています。

このセブマスタープランに基づいて、セブ市は国際協力銀行に円借款の申請をしまして、1995

年に第 22 円借款ということで、埋め立て事業と海岸道路の建設が行なわれました。そのプロセス

でマスタープランで注意喚起されている海洋汚染が起こったわけです。同時に、海洋汚染にともな

って自然環境の汚染だけではなく、住民生活への影響も起こりました。マスタープランでは注意喚

起が行なわれていない事態が起こったわけです。そのことについて、私も現地からの声に基づいて、

日本政府あるいは JBIC と協議をしながらやってきましたが、なかなかうまく解決にいかない。住民

の生活の改善や補償までいきません。現在は、JBIC の方で環境影響調査を実施して、それに基

づいてセブ市がある種の救済事業をやっています。

マスタープランにおいて環境汚染に配慮が必要だと書いているにも関わらず、住民への影響に

対する配慮というか見落としが事業の実施でなぜ起こったのか考えていきますと、プロジェクトサイ

クルの上流部分に目がいきました。そうすると開発調査が行なわれましたマスタープランにおいて、

環境汚染に対する配慮の記述があるのですが、住民への影響ということについての注意喚起がな

く、それが次のフィージビリスタディとか環境影響評価とかにつながっていった結果、事業を実施す

る段階において住民への甚大な影響が起こったのではないかと私どもは思っています。それが問

題意識です。

今日、お尋ねしたいのは、こういう開発調査をやった場合の各事業の実施段階において、進捗状

況の把握はどういうふうに行なわれているのか。もし行なわれていて、そのプロジェクトにおいてな

んらかの問題が発生した場合にどういう対応をとるのか、ということについてお聞きしたいと思いま

す。そして、開発調査の向上についてどうすればいいのか議論したいというのが私の提案です。

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下澤:

では、JICA の方からお願いします。

花里:

開発調査担当ではありませんが、わかる範囲でお答えします。基本的に、去年から開発調査とい

うスキーム自体が変更され、開発計画策定の中の協力準備調査となっています。FS の方は開発

調査という呼び方はしません。事業化するための調査といわれています。これが去年の 12 月にあ

った変更点です。

マスタープランに関しては、基本的にはフォローアップ調査を行なっています。定期的に行なっ

ているので、その案件がどういった形で活用されたか、事業化されたかについて統計的にフォロー

アップしています。この案件に関しても、フォローアップをしております。ただ、マスタープランは技

術協力の一環でやっておりまして、この調査の結果は JICA からの提案として相手国に提出されま

す。そして、相手国が受領した時点で、相手国政府のものになります。ですから、その結果をどうい

う形で斟酌し活用するかは相手国政府の責任という判断があります。ただ、JICA から提案した開発

計画が大きな損を与えるようなことがあった場合、例えばやるべき調査をしていなかったとか、環境

保全地域にダムを建てる提案をした場合には、社会的な責任を問われます。今まで訴訟になった

こともあります。そういう訴訟があれば、社会的、道義的責任を果たしていくことになると思います。

個別の案件に関しては、こういうところで話すべきことではなくて、詳しい議論をするのであれば企

画部、担当地域部で引き取らせていただきます。具体的な議論はここではしませんが、全体的に

はそういう形でフォローしていきます。

実施段階でマスタープランの結果が重大な影響を与えたという認識はこれまでありません。基本

的に JICA は提案をするのであって、なにかをしなさいという形ではありません。また、提案というの

は相手国政府と提案の内容を確認しつつ、環境に関しては当時ですと IEE 等行なっておりまして、

その後に FS の実施の中でさらに厳しい審査を行なっていると認識しています。1990 年代初めで

すと、社会配慮が若干弱かった部分もあると思います。現在に至るまでにそこのところは旧 JICA の

環境社会配慮ガイドライン、旧 JBIC のガイドライン、新 JICA のガイドラインとどんどん強化されて

います。そういう観点から、JICA が提案するマスタープランを改善していく中で現在出来る限りのこ

とをしています。我々がガイドラインを強化するにしたがって、実際にできなくなることが多くなり、し

てはいけない工事について遅延や中止という例がでてきています。それを踏まえた上で対応してき

ましたし、これからもしていきます。

マスタープランの結果に責任を持たないということは一切なくて、JICA は提案した方ですから提

言した責任は持ちます。ただ、民事責任が生じるようになると、そこは訴訟的な問題で JICA も自分

たちの責任を全うするときの論陣を張るということになります。

西井:

当時は、1994 年ですので、現在改定中の環境社会配慮ガイドラインはなかったということは承知

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しています。率直に住民への配慮、住民への影響というところに関しての標準が低かったというとこ

ろを言っていただきました。それに関して、実際に JBIC が 2002 年、JICA が 2004 年に環境社会

配慮ガイドラインを作って、そのときにも議論にはなったと思いますが、かつて起こった問題に対し

てどういうふうに対処するのかということがあったと思います。そういう観点からいいますと、このセブ

マスタープランにおいて住民への配慮がなかったということについて何らかの問題として認識して

いらっしゃるのであれば、その部分についてこれからはこれをとらないような仕組みがあればと思い

ます。もちろんそれが環境社会配慮ガイドラインの中にも、開発調査において留意すべき点という

ことで網羅をしてあると思いますが、スキームの実際の基準の中に環境だけではなくて住民への影

響を盛り込んでいくことによって再発を防ぐということも考えられると思います。

花里:

その点では、住民との対話はすでにプロセスに入っています。スキームごとになにかをしていくわ

けではなく、過去に問題があったと指摘された点についてはすべて網羅的にガイドラインの中に入

れて、ガイドラインを事業に適応する際にその中で対応するという観点からガイドラインの 終的な

とりまとめをしていると承知しています。

清水:

3 点質問があります。1 点目は、確かにおっしゃったように個別案件で毎年開発調査のフォローを

していることは承知しています。ただ、フォローの項目や目的をみていますと、あくまでも事業化率、

活用率、あるいは活用の内容であって、事業が果たしてうまくいっているか、あるいは環境社会影

響にどのくらい問題があったのか、なかったのか。あったのであればどのような状況にどのような対

応をとったのか。そういうところまで踏み込んだものではないと認識していますが。それらの点につ

いて今後調査をしていくのであれば、そういった項目を付け加えることを考えられないのかというこ

とが 1 点目です。

2 点目は、開発調査について確かに受領した時点で相手国政府の責任になるということはわかっ

ています。ただ、2004 年に策定された JICA のガイドラインの中でも、例えばフォローアップに関す

る項目がありまして、その中で事業化された段階で「JICA は環境社会配慮調査結果を考慮した環

境影響評価の手続きを審査前の段階で確認するためにフォローアップを行なう」と書いてあり、問

題があった場合には提言を行い提言内容を公開すると 2004 年のガイドラインには書いてあります。

確かに、この事業については 1994 年のものですから、2004 年のものは適用されないということは

わかっていますが、JICA が相手国政府あるいは実施機関の窓口あるいは対話のツールというもの

があるわけですから、そういったツールを通じて相手国政府あるいは実施機関に働きかけていくこ

とは可能ではないのかという点が 2 点目です。

3 点目は、マスタープランを実施した後、それをもって環境社会に影響があったことはないというこ

とでしたが、確かに直接的に影響があったことはないと聞いていますが、間接的な形であった事例

を知っているので、これを開発調査だからということで影響がないと一概にいえるものではないと理

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解しています。私が知っている案件は、ケニアのナイロビバイパスの案件です。以前、JICA が 1980

年代に開発調査を実施しました。その後、記憶が定かではありませんが、ケニア政府がその調査を

基にその案件を実施しようとしたときに、キベラスラムにおいてブルドーザーをもってきて、半強制

的にスラムの人を立ち退きさせようとしました。それをたどってみると JICA の FS が基になっていた

ということがありました。そういった調査を基に、相手国政府が非常に強権的な力をもって住民移転

をするということもありますので、影響があったことがないというのは、私は違うのではないと考えて

います。

花里:

3 点目について、私は FS のことは申しておらずマスタープランで直接的な影響はないという話を

しました。

住民移転の話は、今のガイドラインではかなり厳しくやっています。10 数年前には、マスタープラ

ンを作ったときに焼き討ちがあったりしました。JICA の作った開発計画が悪いと言われても、交渉

の際に政府が立退き料を払うという 適なオプションを選択しても、例えば政権が変わったり独裁

者に政権を握られたりして状況は変わります。それでも、我々が責任を追及されることもあります。

我々は逃げているわけではなくて、我々ができることは 大限対応してきていると認識しているの

で、そこは誤解がないようにしていただきたいと思います。我々は責任を回避しているわけではなく

て、責任を取るべきところはとります。この前のコタパンジャンダムの件のように、出るべきところは出

て、言うべきことは言います。

開発調査に関しては、事業化をどのくらいしたのかということをいつも聞かれます。それもあって

協力準備調査とマスタープランの 2 つに分かれています。基本的には、マスタープランは事業化

自体が目的ではなくて、開発の絵を描くものです。その国の開発の絵を描くことが焦点です。です

ので、マスタープランについて事業化の話をすることは意味がありません。

フォローアップ調査の中で環境などに関してフォローアップ事項を入れていくべきだと個人的に

は思います。せっかく調査をするのであれば、どういった形でフォローアップしていくのかというとこ

ろは当然我々の責任の中で行なっていくものと思います。今の JICA は先方政府との窓口をもって

いるので、フォローアップすべきところはすべきです。現場の人間は、フォローアップすべきところは

すべきという思いに立ってやってきていると私は思いますし、同僚もやってきていると思います。

残念ながら、JICA の職員が変なことをしたということもありましたが、JICA に 1600 人職員がいて、

1600 人が同じクオリティーで働いているわけではないということです。ですから、1500 人が一生懸

命していても、たまに間違いがあって、そこは JICA の責任ではございませんという話になることが

あるかもしれませんが、基本的に我々は開発事業の策定から人材育成、無償資金の協力から円借

款まで行なっているわけですから、日本の ODA に対して責任をもたないと JICA としての存在意

義がないわけです。ですので、ひとつひとつの事業に対して責任を持ってやっていきたいと思って

います。我々がもっているチャンネルは、ODA の事業がよくなるために使っていきたいと思ってい

ます。

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西井:

外務省が行なっている中に 2007 年の有識者評価があります。この中で開発調査を対象に評価

したものがあります。この提言の中で、フォローアップ調査を充実させ、事後評価を行なうことが含

まれています。プログラム評価が主流になるまでの移行期間中、開発調査の方法と結果が相手国

政府の制度構築や改革にどの程度貢献したかを整理しておく必要があると述べています。このよう

な形で、事後評価についてなんらかの取り組みをしたことはあるのでしょうか。

山崎:

さきほど、NGO と JICA の振り返りシートの話をしていました。相手国政府と日本とイコールパート

ナーのシートがあるといいなと考えていました。イコールパートナーをいうのであれば、成果のところ

で、相手国との関係の中で日本が悪者になっていると感じるときがあります。日本側の援助で立ち

退きされたとか、雇用がうまくいかないなどと言われています。その結果、 終的なところで日本が

評価されていないと感じます。そうなってしまうことを相手国のせいにするのではなく、日本として相

手国とイコールパートナーでやって欲しいと思います。相手国政府との間で、イコールパートナー

の関係が築けていないということを自覚してほしいと思います。

花里:

ご意見はよく理解できます。一概に相手が悪いといっているわけではなくて、そういう事例もありま

したという話です。例えば、独裁政権が焼き討ちをしたときに、独裁政権とイコールパートナーシッ

プを結ぶことはできません。議論はいろいろあると思いますが、出来る限りのことはしていますし、出

来る限りのことをしていきます。それで相手のせいにしてというところは、そう受け取られるのであれ

ばそう受け取ってもしょうがないですが、そこは組織としての踏み込み方などいろいろあると思いま

す。ひとつ言えるのは、JICA の活動が内政干渉として捉えられてしまう可能性があるということです。

GtoG で活動しているので、内政干渉と受け取られると活動ができなくなります。これはこうした方が

いいということがあっても、組織的、本質的にできないこともあります。ただ、援助や支援という言葉

は、イコールパートナーであれば気持ちとして使えないと思います。私もイコールパートナーとはな

にかよくわかりません。ODA は基本的に援助国と被援助国があって、その中で互いにメリットがあ

るから事業が続いているわけです。ODA もいやいやながらしているところもあるわけです。この国に

対してなんでしなければならないのか、と思いながらしていることだってあるわけです。今の政権に

支援することが本当にいいのかどうかということを疑念を感じながらすることもあるわけです。その中

で援助してきている話なので、いろんな局面でいろんな議論があります。すべての面で私たちが正

しいとはいいませんし、すべてが間違えているとはいいたくない。その時々に応じて、我々のベスト

の努力を続けていきたいと思います。それをどう捉えられるかは個人の考え方だと思うので、コメン

トは差し控えさせていただきます。

事後評価の方についてです。ご指摘でプログラム評価ということが出ました。今、プログラム評価

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の中で開発調査のマスタープランを扱うのが評価としては一番適当ではないかという議論をしてい

ます。プログラム評価については、この 3 年くらい前から試行してきていますが、いかんせんプログ

ラムということ自体を組織の中で共有することが難しく、プログラム評価のクオリティーがよかったり

悪かったりということが 1 年、2 年続いています。その中では、プログラムとしてマスタープランをこう

いう形で作って、無償、技術協力、有償をこうつけて、ということを 10 年 20 年のスパンでモニタリン

グしながら評価しています。プログラム評価は、一回で終わる話ではなく継続的に定点的にやって

いかなければ意味はありません。そうすると先ほど清水さんからご指摘のあった継続的なフォロー

アップ体制というのは必然的にプログラム評価の中に入ってきます。プログラム評価とフィードバッ

クという形を作る協議を今行なっている 中です。

下澤:

この点についてクリアな結論が出たというわけではないと思いますが、双方の問題意識が投げか

けられながら議論できたと思います。この議題については、これで終わりにできればと思います。

それでは、4 番目の議題について、竹内さんからお願いします。

協議事項 4 NGO との連携・協力事業における JICA 広報記事の表現方法

竹内:

時間がありませんので短く話をします。基本的に、これはソムニードが JICA 主催の研修に協力し

たものです。ここで、添付資料にありますように、一切団体名がどこにも明記されていないという広

報の仕方がありました。若干、 低限説明させてもらいますと、これは一日だけ受け入れたというの

ではなく、一週間ほど受け入れをした研修です。もうひとつの地球ひろばの国内研修の方もほぼ 1

週間受け入れました。3 月 27 日から 4 月 5 日の間で、前後に JICA の事務所も行っていますので、

この期間全部ではありませんが、かなりの期間を受け入れました。主催者は JICA ですが、その内

容にソムニードはかなり関与したケースです。議題案として出した紙に少しきつく書いています。

「JICA の方針」がそう書かせたのだと理解したと書きました。詳しくは、方針ではなく「広報担当」が

そういう方針だったのかな、とこのとき実は思いました。現場でうまくいかなかったわけではないです。

現場では担当者とすごくよかったので特に残念でした。 低でも関与した部分を書いていただけな

いかなと思っています。せめてその文中に書けなかったら受け入れ団体名を書いていただきたい

なということをお願いしたいということです。特に地方の団体の場合は重要です。地方の NGO は

JICA と比べて小さい小さい存在です。一緒になってやることで、地域の人が近所の誰々さんが国

際協力をやっているということを理解し、地域の国際協力への信頼とか親しみを持つと考えていま

す。ですから地方で受け入れる場合、組織力、資金力が全然違うことはたいへんなことです。そう

いうことを踏まえて受け入れているので、ぜひ、そのことを理解して欲しいと思っています。ある程度、

低のルールがあればいいと思います。逆の立場でいえば、NGO が JICA からいろんな形で資金

協力を得たときに、NGO 側もときどき忘れるということがあります。これは言い訳になるのですが、ス

タッフが大変少ないところに、そういう大きい事業を受けて慌てて報告書を作った例もあることはあり

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ます。その辺も踏まえて、せっかくいい協力をしたときに、いい結果を一般に示していくための広報

をなんとか考えていただけないかなということをお願いします。

吉田:

私、ちょうど 2002 年の 10 月 15 日から 2004 年 3 月 31 日まで JICA 東京におりました。この件は

覚えております。私は(当時)市民参加協力事業の取りまとめをしておりました。具体的な担当案件

ではなかったと思いますが、確かインドネシアの研修コースだったと思います。インドネシアの NGO

のリーダーの人たちと懇親会をしましたし、研修の現場にも行きました。竹内さんがここにお書きし

ていることについては、ごめんなさい、としか申し上げられません。はっきりいって恥ずかしい思い

がしております。ただ、担当者も非常に真面目で、気持ちがしっかりと入った研修ではありました。

本人も NGO 活動をしておりましたし。本当に本人の不注意としか言えないところです。

今の広報体制については、理事長直轄の広報室というものがあります。ですので、2003 年の状

況と広報室ができた 2008 年 10 月 1 日以降とは状況が違うのでこういうことはないと思います。今

私が国内事業の取りまとめ責任者ですが、ご指摘された件は恥ずかしいの一語です。こういうこと

が今後起こらないように、広報に関係する部署には徹底するつもりです。

ひとつ言わせていただきたいのは、今竹内さんもおっしゃいましたが、草の根技術協力関係やそ

の他 NGO の書いたもので JICA の名前が入っているところをほとんどみたことがないです。新聞の

記事でも、 近は JICA は仕分けとか、贅沢だとかで名前が出てきますが、JICA が関わっていても

JICA の名前がでないことは多いです。例えば私が携わっておりました国際緊急援助隊では JICA

の J の字ひとつも出てきません。事務局長をやっていまして、ああ、と思ったこともありますが、それ

は大人の判断はしております。私は、JICA のことが出なくてもあえて申し上げていません。NGO の

方々の都合なのでそれはそれで仕方がないなと思います。ただ、(ご指摘された件については)

我々はこれについては恥ずかしい。ごめんなさいというしかない。花里さん、徹底するしかないです

ね。では、広報担当していたもの(JICA 中部・矢部課長)から一言。

矢部:

今は、団体名を明記していないということはありません。JICA の月刊誌、JICA's World をご覧い

ただければわかると思いますが、私たちはヒューマンストーリーという人物にフォーカスを当てた広

報をここ数年やってきました。私どものウェブサイトでも人にフォーカスを当てたストーリーをひとつ

のコラムとして掲載しています。国内機関のウェブサイトにおいても同じように地元で活躍する人に

フォーカスしています。帰国して今こういうことを地域社会でやっています、というかつて JICA に関

わりがあった人で今地域に貢献している人についても掲載しています。広報のスタイルも当時のフ

ロンティアから組織的に変えています。JICA 中部は、組織も場合によっては広報しますが、まずは

人にフォーカスを当ててそこから人のバックグラウンド、経歴、そして今ここで働いているという形で

ソフトタッチの広報を展開していきたいと考えています。今後もご協力をお願いします。

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吉田:

ひとつ言い忘れたことがあります。担当者が書き忘れたというよりも JICA の方針がそう書かせたも

のと理解した、と(議題提案書に)書かれていますが、私はごめんなさいと謝るだけではなくて、今も

昔も(JICA の方針として)こういうことはありません、ということも言っておきたいと思います。担当者

が書き忘れたのは、管理職の責任だと思いますが、こういう(ことを意図的に行うような)JICA の方

針は全くありません。これは誤解のないようにしていただきたいと思います。まさにその当時の責任

者をはっきりさせるとすれば、名前はぱっとでますが、今はその者は JICA やめてしまったので、言

っても仕方がないかなと思います。

竹内:

わかりました。これは全体の方針より広報担当かな、と思ったのですが、そうでもないんですね。

吉田:

広報室ができて何ヶ月かたちました。ただ、事業仕分けで 3 コマも JICA が指摘の対象となった

のは、こういうことの積み上げが招いたものかと思います。JICA にずっと働いているものとして反省

しております。

竹内:

それで、2007 年の 6 月 7 日に関しては、実際にその依頼をしてきた方は、誠意のある態度でし

た。もう一度言わせていただきますが、向こうの事情で緊急事態で受け入れたということで、これは

私の理解では 終的な報告書作成者の問題かなと理解しておりますが、報告書にチェックは入る

のでしょうか。

吉田:

チェックはしているはずです。ただ、チェックがもれたのだと思います。これは 2007 年で 近です。

これも恥ずかしい話だと思いますので、こういう指摘はどんどんしていただいて、改めるべきだと思う

ので、改めていきたいと思います。失礼いたしました。

高城:

広報の直接の担当者ではないですが、広報と連携する立場から補足しますと、NGO の関係記事

をうちの広報誌に出すときは、かならず内容を関係団体に確認とるようにしています。写真を載せる

ときにも、NGO から頂いた写真のときは、NGO の著作権もありますので、クレジットについての確認

もします。ですので、例えばご協力いただいた受け入れ先の記事を書くというときは、必ずご協力

いただいた NGO に確認するようにしています。ちなみに来年 1 月の『JICA's World』で NGO 連

携特集を組む予定ですが、ご協力いただいた NGO、みなさんに記事の確認を編集担当者からさ

せていただいています。2003 年のときのようなことはまず起こらないと思います。

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(ご指摘の)ホームページの方は、掲載されている報告書も非常に簡単な印象を受けます。通常

もう少し詳しいものを載せますので、これは確かに急いで出してしまったところがあるのかなと思い

ます。そこらへんは国内機関にも今後注意していきたいと思います。

野田:

今、JICA の方から真摯なお応えを受けて、私としても心染み入るところです。それを受けて、もう

ちょっとコンストラクティブなことをお話したいと思います。この話は、記載がもれたというだけでなく、

かなりパートナーシップの話、ないしは国際協力のあり方自体に関わる話だと思います。NGO の側

としても、いろいろやらせていただくときは本当に一所懸命にやっています。JICA にとって、途上国

にとって、win-win の関係になるように一生懸命やっています。ただ、こういうことがあると一部では

あるものの JICA に NGO の知見をいいように使われているという誤解が生まれる懸念がなきにしも

あらずです。これをまずご理解していただきたい。

ここから先は建設的な話です。私自身、名古屋を中心に JICA と一緒にいくつもありがたい成功

体験を踏まさせていただいているわけです。脳科学者の茂木健一郎さん曰く、人間のモチベーシ

ョンはどう高まるかというと小さな成功体験を積み重ねることによって上がる。僕はそうだと思います。

全部の例を挙げることはしませんが、例えばこの協議会の中で、あるいは小委員会の中であったこ

とですが、JICA のみなさんはご存知の通り、広尾の地球ひろばを作るときに NGO としては大変あ

りがたいことにコメントを求められました。どういったコンセプトがよろしいかと。随分いろんな意見を

言いました。当時、非常にありがたいことに JICA は理解があって、私たちが申し上げたことをかなり

入れていただきました。これは私としてはありがたいことであり、成功体験だと思っています。若干、

こそばゆいこともしてまして、そのことを記念してプレート作るとかパンフレットに名前を入れるという

申し出もあって、かなり気恥ずかしい思いもしました。その後、それがどうなったか問わないにしても、

そういうありがたいことがあったということだけは成功体験として言わせていただきます。名古屋につ

いてもそうです。ワールドコラボフェスタもそうですし、開発教育についても教材を作らせていただき

ました。無料配布で作った 500 部の冊子があっというまにはけてしまい、商業出版にすることなりま

したが、それもあっという間に売り切れました。これはひとえに JICA と NGO のコラボレーションのお

かげだとおもいます。私が申し上げたいのは 2 つだけです。1 つは成功体験を積み重ねるときに、

お互いに確認をしあいましょう。うまくいったときに喜びあいましょう。これが次のモチベーションにつ

ながります。これがひとつです。

もうひとつ。これは NGO と JICA だけで共有するのではなく、広く国民に公開をしましょう。そうす

れば、多くの人たちがなるほど JICA はこういういい事業をしているんだ。海外だけでなく、国内事

業部、国内センターを中心に地域でもすばらしい取組みをしている。国内センターをなくしてはなら

ん、という意見にも繋がると思いますし、これは NGO にとってもいいことであると思います。ぜひ、

成功体験を積み上げ、それを形にして広く市民に知らせる。そのことによって、日本の住んでいる

私たち自身が国際協力の担い手として、より発展していく。そのことが、ひいては途上国の発展に

つながっていくというまさに win-win の関係をこれからも築いていきたいと切望しています。ぜひ

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JICA からも一言、基本的な認識、決意をお聞かせいただければ幸いです。

吉田:

おっしゃっていたこと、その通りと思います。本当にありがとうございます。先ほどどなたかが、緒

方理事長が当初 2003 年に着任した頃は、国内機関、国内事業に対して疑問とまでは言わないま

でも、基本的には海外に視線が向いていた、ということを言われていました。ただ、この 1~2 年は

相当違ってまして、こういう非常に厳しい時代になって、国内の方々からのご理解やご支援がない

と JICA の海外事業そのものもやっていけないということで逆に(国内での取組みを強化するよう)

叱咤されていて、がんばりなさいということも言われています。野田さんからおっしゃっていただいた

ことは内部でシェアできればと思います。確かに JICA はプレゼンが上手ではないので、実際に

NGO とやってきたことがうまくプレゼンできていない。ですので、今後ともイコールパートナーシップ

も含めてご支援いただければと思いますし、こちらからも積極的にやっていきたいと思っています。

下澤:

非常に真摯な話をしていただきまして、こういう場があって距離が縮むので、繰り返しになればい

いと思います。 後、予定の時間をすでに過ぎているという自体ですが、ただ定松さんはこのため

にいらしたということもありますので、できれば第 4 回に持ち越していくのかも含めて、JICA から回

答のものをお持ちならそれを述べていただいて、次回をどうするか確認しながら終えていければと

思います。それでは定松さんお願いいたします。

協議事項 1 JICA 本体事業(技プロ、無償など)における NGO との連携について

定松:

この議題の趣旨は、今日の議論の中で、ずっと話題になってきた草の根技術協力のことではなく

て、ODA の本体事業、おそらく 1 号業務といわれている分野ですが、そちらの方に NGO も参加

する道筋を作っていきたいということでの議題です。

背景としては、別途外務省と行なっている定期協議会等で 5 ヵ年計画が出ていまして、その中で

も ODA 本体事業への NGO の参画を拡大するということがでています。外務省との協議の場では、

コミュニティ開発支援無償というものがありまして、そちらを突破口にして NGO の ODA の本体事

業への参画を図っていこうということですでに勉強会等も行なわれています。

発題した NGO 側の JICA への 初の希望というのは、ODA 本体事業へ参画するにあたり何か

新しいスキームを検討していただけませんかという話でした。これまでの議論、前回のコーディネー

ターレベルでの議論を踏まえてまとめますと、前回のコーディネーター会議での JICA からの答えと

しては、まず NGO の JICA 事業への参加ということにおいては、現存する草の根技術協力事業を

まずは拡大するという方向で考えていきたい。そして、新しいスキームということにおいては、制度

的な困難もあるのでなかなか難しいという話だったと思います。その中で、出てきたのは JICA から

も民間提案型プロジェクト形成調査というスキームがありまして、これはスキームとしてできているの

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ですが、NGO 側が活用したケースが非常に少ないと。先ほど外務省と行なわれている勉強会の話

もしましたが、そういうことを民間提案型プロジェクト形成調査でもやってもいいのではないかという

話をして、今日ということです。

時間も限られていますので、どういうところが今後の議論の焦点になってくるかというところで、実

際に、民間提案型プロジェクト形成調査をやって経験があるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの立

場から若干意見を申し上げ、JICA の方からコメントがあればお願いします。それで今日は終わりか

なと思います。

実際に、民間提案型プロジェクト形成調査をやったときにどういうところが大変だったか。特に草

の根技術協力との比較において大変だったところについて話をしたいと思います。これは、JICA の

みなさんにとっては当たり前だと思いますが、公示が出てから短期間でプロポーザルを作る必要が

あります。これが、草の根技術協力とは異なります。草の根技術協力の場合は、ゆっくり時間を書け

てプロポーザルを作っていきます。公示が出てから、数週間とか一週間の単位でプロポーザルを

書く必要があります。というところで業務が集中化するところが負担になります。

それから、プロポーザルの中で、案件を落札できるかどうかというところで重要なのが、調査の要

員のクオリフィケーションの水準が非常に高いというところです。具体的に言えば、草の根技術協力

パートナーのプロポーザルであれば私たちのオフィスではオフィサーレベルで対応できるが、この

民間提案型プロ形ではマネージャーレベル、ダイレクターレベルで対応しなければならないレベル

です。実際に私たちはエジプトにおけるストリートチルドレンの支援プロジェクト形成調査ということ

でやらせていただきました。2008 年 7 月にプロポーザルを提出しまして、2009 年 1 月に報告書を

提出しました。実際に半年間くらい関わりました。それの前後を含めると、かなりの期間、幹部クラス

の職員がほぼ 100%で関わらないと対応できない時期があります。そうなってくると NGO はどこで

もそうですが、ギリギリのところで人員を回している NGO としてはかなりきつく、現実的な厳しさがあ

りました。

それと、プロポーザルを出すに当たって、さまざまなデータを提出しなければいけませんが、デ

ータベースの整理や類似案件を一覧表に直すとか、そういった体制の整備がともなわないと、なか

なかできない。そういったところがハードルの高さです。

これは次回以降の議題になると思いますが、NGO 側から JICA への要望ということでいえるとす

れば、先ほどの 5 ヵ年計画のところに立ち戻りますが、政策レベルで ODA の本体事業に NGO を

参画させるという方針が出ているのであれば、いわゆるアファーマティブアクションのようななんらか

の形で NGO が民間提案型プロ形のようなスキームに応札、落札するためのキャパシティビルディ

ングに関連した協力をいただけないかと思っています。説明会、勉強会はファーストステップです。

例えば、データベース整理や清算の方法なども含みます。

このスキームは基本的には事後清算ですが、基本的に厳しい資金力でやっている NGO として

は、実際に案件の実施が終わってからでないとお金が入ってこないというのはかなり厳しいです。

草の根技術協力だと概算で前もってお金をもらえます。そこらへんが、例えば平和構築の場合、治

安上の問題でプロジェクトが停止することもあります。そこに要員が張り付いていて、お金は支出さ

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れるけれどもいつお金が入ってくるか分からない状況で持ちこたえなければいけません。なかなか

厳しい状況です。そういったことも含めて引き続き話あいを続けてさせていただければと思います。

花里:

今日の質問に対する細かい回答は個別の勉強会などを企画して答えていきたいと思います。

JICA の一号業務への NGO の参加についてワールドビジョンの今西さんから話があったときに、

草の根技術協力事業の拡大を申し込んだが無理だったので、そうであれば一号業務、という話で

した。そういう観点から言うと、JICA は草の根技術協力の拡大を検討しています。実際に、役員レ

ベルまで上げて話をしています。しかし、いかんせん来年度の予算が課題です。どこから予算を持

ってくるか話をしていましたが、行政刷新会議で削られました。NGO のみなさんからは、JICA の草

の根技術協力予算は 20 億という来年度の目標を提案いただいています。それに沿った形での額

を目指した検討をしています。それがひとつです。

次に一号業務については、コーディネーター会議でも話をしましたが、プロテコという NGO の知

見を活かした形で協働するというスキームがあります。結局それは双方の負担が大きすぎて、継続

案件は現在 2 件のみになっています。これは JICA の中でヒアリングしても、やはりあまりにも負担

が大きすぎて事業として力を割けないと言われています。相手国政府の方でも、すぐに相手国政

府からの要望がでてくるわけではないので、なかなか国際約束の形成ができない状況があります。

JICA は組織としてプロテコを活性化してやっていくということはプラクティカルにないと思います。

そのようなことがあって今回、協力準備調査の民間提案ということで、事前調査からというよりも実

際にプロジェクトプログラムを作る形成段階から入っていくということを考えています。今、ご指摘が

あったいくつかの制度的なものは、改善できる部分もあると思います。例えば、公示が短期間という

ことについては、ご指摘を受けて即刻にでも変えられる部分だと思います。そのとき担当している部

で早くものを動かしたいということがあってそういうことになったのだと思います。通常、もっと長くとる

はずです。場合によっては、プレ公示といって、1 ヶ月か 2 ヶ月前にこういう内容のものを今後こうし

ますというお知らせをしておいて、後でもっと詳しい公示をするということもあります。そこはできるだ

け調整して、多くの方々にプロポーザルを書いていただくような体制の整備は可能だと思います。

概算払いの件については、前払いして後から精算するということは検討可能だと思います。そこ

のところは政府の方針として NGO の参画を進めている観点から、基本的に JICA の制度で対応し

解決できるものは、リストアップしてやっていきたいと思います。

紛争地などで自己負担が増えるという話については、周りから言われていまして、制度としては

改善しています。特に JICA の事業であれば対応はまだ容易です。JICA の判断で済むところは、

補填できます。ただ、無償資金協力で相手の政府からの契約金となると相手国政府が認めないと

支払いできないことになってしまいます。JICA で対応できるものは対応します。

一方で 要員の質については、ここは譲れないところがあります。1 号業務では質は絶対に落と

したくない。参加の機会を開けるのはやはり国民参加という形です。1 号に入るというのは競争の中

でやっているわけです。先ほどから吉田が仕分けについて言っているように、いかに透明性かつ公

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正性をもって委託者を選ぶかというところはギリギリやっています。そこのところを自ら緩めるわけに

はいきません。こういう事業にこういう能力が必要という観点から、特筆される NGO の得意な分野、

例えばバングラデシュのアジア砒素ネットワークなど、誰が見ても優位性を持っているところはあり

ます。そこのところはそういう観点で経験をみていきます。優位性をもったチーム編成を作っていた

だいて、やっていただくしかないと思います。ただ、プロポーザルの質は一朝一夕で改善するという

話ではありません。通常であれば、プロポーザルの書き方をお金をとって教えているコンサルがい

たりしますが、場合によっては、NGO 研修の中でよりステップアップするためにプロポーザルの書

き方を取り上げるということは検討させていただければと思います。今後、これらを継続的に検討し

ていく中で、JICA の制度で改善できるものは積極的に変えていきたいと思います。ぜひ参加して

いただいて、途中から入ってくるよりも、やはり上流のところから入っていただきたい。1 号業務に関

しても、NGO はここが違うという点を作って、NGO にやっていただいた方がいいような事業を形成

することが双方にとってストレスのない事業の展開だと思いますので、そのように進めたいと思いま

す。ただ、重ねて申し上げますが、質や要員のレベルについては、評価の仕方もあると思いますが、

今の評価の中でそこを下げることは対内的にも対外的にも厳しいところです。そこをクリアしていくと

ころが、NGO の中での重要な課題になってくると思います。

定松:

今のコメントを聞いて、一点だけ。私の発言の趣旨は、レベルを下げて欲しいということではなくて、

そのレベルに到達するための NGO 側の努力をなんらかの形でサポートしていただけませんかとい

うことです。勉強会は一歩一歩進むためのひとつのツールです。草の根技術協力以外のスキーム

について、まだ NGO 側で広く理解できているということでは全然ないと思います。そこらへんのとこ

ろから初めていきませんか、ということです。

花里:

上流での参画の機会としては、事前調査で官団員として参加する可能性もあります。例えば、コミ

ュニティ開発で、この人の能力を借りてプロジェクトを形成したいということがあると思います。個人

的にはソムニードなどはこちらから是非とお願いして、インドネシアの方に来ていただいたりしてい

ます。そういうネットワークを通じて、どこにどういう人がいて、どういう優位性をもっているのか、JICA

がまず把握する。そういう情報をシェアしていただいて、競争ではない世界で必然的に支援が必要

という中で参加していただく必要がありますし、ご協力いただければと思います。

下澤:

この議題についてはコーディネーター会議で取り扱っていくということにします。端折ったり急い

だりでインターンのみなさんなにがなんだか分からなかった部分もあると思いますが、この後の懇親

会でキャッチアップしてください。 後に名古屋 NGO センターの清家さんから締めの言葉をいた

だきたいと思います。

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清家:

地方開催で開催していただいてありがとうございました。JICA の方もありがとうございました。みな

さんが名古屋に足を運んでいただいたことを感謝します。また、そういう意味では私たちの仲間の

人たちの意見をたくさんくみ上げていただいて、また発言をしていただくことに至ったのはすごく感

謝です。また、N タマのインターン生の方々もこういう機会に参加していただいてありがとうございま

す。N タマ生というのは、NGO のタマゴという意味で、半年間で 20 万円出して、そして NGO の活

動に参加してくださっています。そういう人たちです。NGO のスタッフも頭が下がる思いです。そう

いう人たちが N タマとして参加していただいています。今日は時間を気にせず、濃密な議論ができ

たのではないかなと思います。JICA の方からも BOP ビジネスという新たな取組みをされているとい

うことで新しい時代の新たな枠組み、取組みというのを NGO も考えていかなければならなくなって

います。また、JICA と NGO の関係性のあり方も問われてくると思います。今日は、何度も win-win

の関係を築いていくということが言われました。いろんなところで win-win の関係を築いていくことが

テーマとなっていくと思います。こうしてみなさんが名古屋に来てくださったので、こういう議論がで

きました。ぜひ、協議会の中で、一年に一度と言わず、二度。関西にも名古屋にも、また地域にも。

そこに行けばそこでいろんな議論のテーマがありますし、また新たなものが見えてくると思いますの

で、ぜひよろしくお願いいたします。今日は本当にありがとうございました。

高城:

次回は、ひな祭りということで覚えやすいので 3 月 3 日午後で設定したいと思います。

以上