平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書...

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委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」 平成22年5月26日 高エネルギー加速器研究機構 量子ビーム次世代ビーム技術開発グループ編集

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平成21年度成果報告書

委託業務成果報告書

量子ビーム基盤技術開発プログラム

「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

平成22年5月26日

高エネルギー加速器研究機構

量子ビーム次世代ビーム技術開発グループ編集

Page 2: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

本報告書は、文部科学省の科学技術試験研究委託事業による

委託業務として、高エネルギー加速器研究機構が幹事機関とし

て実施した平成21年度「超伝導加速による次世代小型高輝度

光子ビーム源の開発」の成果を取りまとめたものです。参画機

関の成果も含みます。

Page 3: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

目   次

1.委託業務の目的……………………………………………………………………………… 1

2.平成21年度の事業計画…………………………………………………………………… 1

3.実施体制と役割分担………………………………………………………………………… 4

4.委員会………………………………………………………………………………………… 5

5.平成21年度研究成果報告

A.新フォトカソード開発東大、上坂研………………………………………………… 8

新フォトカソード :可視光カソード試運転

B.カソード、RFGun 開発広大、栗木研………………………………………………… 14

大強度高品質電子源開発

C.高圧 DCGun 開発と入射部超伝導空洞開発

日立ハイテクノロジーズ、小瀬グループ、原機構、羽島グループ…

C-1.…直流高電圧要素開発……………………………………………………………… …19

C-2.…直流高圧電子源開発……………………………………………………………… …23

C-3.…CW 超伝導加速空洞研究開発… …………………………………………………… …30

D.パルスレーザー蓄積装置開発広大、高橋研………………………………………… 35

パルスレーザー蓄積装置開発

E.パルス超伝導空洞開発KEK、早野グループ…………………………………………… 40

パルス超伝導加速空洞技術の開発

F.CW 超伝導空洞開発KEK、古屋グループ………………………………………………… 46

CW 超伝導加速空洞技術の開発

本報告書は、文部科学省の科学技術試験研究委託事業による

委託業務として、高エネルギー加速器研究機構が幹事機関とし

て実施した平成21年度「超伝導加速による次世代小型高輝度

光子ビーム源の開発」の成果を取りまとめたものです。参画機

関の成果も含みます。

Page 4: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

4

1.委託業務の目的

超伝導高周波加速器技術とレーザーパルス蓄積技術の融合によって、ポ

ストゲノム時代の生命科学研究、ナノ構造解析、創薬、医療診断、マイク

ロリソグラフィへの利用を画期的に飛躍させる軟X 線から硬X 線領域の

小型高輝度X 線発生装置(10m × 6m 程度)を実現する。本装置実現のた

めに、高品質大強度電子ビーム生成装置、大強度・高電界超伝導高周波加

速装置、高品質短パルス大強度レーザー蓄積装置、ミクロン精度での電子

ビーム軌道制御技術及び、レーザー光路精密調整といった技術の実用化を

図る。よって、超伝導高周波加速器技術を使った5 nm~0.025 nm 波長領

域の小型高輝度X 線発生装置の開発とその実用化に必要な基幹技術の確

立を行うことを目的とする。 2009年度から以上の目的に大強度安定化に必要な次の技術開発を加える。500~

750kV数十mAの高電圧DC電子源開発、高性能光L-band RF Gun開発、小型高信頼性L-band

高周波源開発および3次元4枚ミラーリング光蓄積装置開発を行う。これにより,生

成するX線輝度を100倍以上高くすると同時に,レーザー光の偏光を高速で制御するこ

とによってのみ可能な世界でも特筆すべき高速可変偏光小型軟X線源を実現し,「軟

X線領域における円二色性光源」として実用化を図る。

このため、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、国立大

学法人東京大学、独立行政法人日本原子力研究開発機構、国立大学法人広島

大学、学校法人早稲田大学、東芝電子管デバイス株式会社及び株式会社日立

ハイテクノロジーズと共同で業務を行う。

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構では、超伝導加速空

洞開発および小型高輝度光子ビーム源装置に関するシステム統合化研究開

発を実施する。

2.平成21年度の事業計画

A. 新フォトカソード開発 高周波電子銃で動作できる高効率高寿命カソード開発のために、本年度はカートリ

ッジ交換システムの開発を行う。カートリッジ交換システムは酸素や水分に弱いカソ

ードを高真空内で交換できる機構である。可視光で駆動可能なアンチモンを用いたマ

ルチアルカリカソードの設計と試作を行い、効率並びに寿命を詳細に検討する。

B. 大強度高品質電子源の開発 KEK、原子力機構、東大などと共同で大強度高品質電子源の開発に取り組む。広

島大学では極高真空によるカソード評価装置を構築し、多くのサンプルについて表面

処理や活性化の条件などによる陰極の系統的な研究を行う。また、RF電子銃による大

強度高品質電子ビーム発生のため、既存の RF電子銃の長パルス化に取り組むとともに、

その研究をもとに長パルス運転のための RF電子銃空洞の最適化設計を行う。

C. 高圧 DC Gun 開発と入射部超伝導空洞開発

C-1. 直流高電圧要素開発(高電圧試験装置の設計と製作) 750kV印加可能な電子銃の実現に必要な要素技術として、耐電圧および暗電流特性に

優れた電極、セラミックの研究開発に着手する。今年度は、高電圧試験装置の設計と

製作を行う。

1

G.高周波超伝導空洞用入力カプラーの開発東大、中村研…………………………… 53

高周波超伝導空洞用入力カプラーの開発

H.小型 1.3GHz 高周波源開発KEK、福田グループ……………………………………… 60

小型 1.3GHz 高周波源開発

I.X 線検出装置の実用化開発…KEK、幅グループ………………………………………… 65

X 線検出装置開発

J.X 線測定および利用研究早稲田、鷲尾研……………………………………………… 69

X 線測定および利用研究

K.電子ビーム・レーザー衝突技術の開発(システム統合化)と

プロジェクトの総合的推進…KEK、照沼グループ、浦川グループ……………………… …78

電子ビーム・レーザ衝突技術の開発(システム統合化)と

プロジェクトの総合的推進

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1.委託業務の目的

超伝導高周波加速器技術とレーザーパルス蓄積技術の融合によって、ポ

ストゲノム時代の生命科学研究、ナノ構造解析、創薬、医療診断、マイク

ロリソグラフィへの利用を画期的に飛躍させる軟X 線から硬X 線領域の

小型高輝度X 線発生装置(10m × 6m 程度)を実現する。本装置実現のた

めに、高品質大強度電子ビーム生成装置、大強度・高電界超伝導高周波加

速装置、高品質短パルス大強度レーザー蓄積装置、ミクロン精度での電子

ビーム軌道制御技術及び、レーザー光路精密調整といった技術の実用化を

図る。よって、超伝導高周波加速器技術を使った5 nm~0.025 nm 波長領

域の小型高輝度X 線発生装置の開発とその実用化に必要な基幹技術の確

立を行うことを目的とする。 2009年度から以上の目的に大強度安定化に必要な次の技術開発を加える。500~

750kV数十mAの高電圧DC電子源開発、高性能光L-band RF Gun開発、小型高信頼性L-band

高周波源開発および3次元4枚ミラーリング光蓄積装置開発を行う。これにより,生

成するX線輝度を100倍以上高くすると同時に,レーザー光の偏光を高速で制御するこ

とによってのみ可能な世界でも特筆すべき高速可変偏光小型軟X線源を実現し,「軟

X線領域における円二色性光源」として実用化を図る。

このため、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、国立大

学法人東京大学、独立行政法人日本原子力研究開発機構、国立大学法人広島

大学、学校法人早稲田大学、東芝電子管デバイス株式会社及び株式会社日立

ハイテクノロジーズと共同で業務を行う。

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構では、超伝導加速空

洞開発および小型高輝度光子ビーム源装置に関するシステム統合化研究開

発を実施する。

2.平成21年度の事業計画

A. 新フォトカソード開発 高周波電子銃で動作できる高効率高寿命カソード開発のために、本年度はカートリ

ッジ交換システムの開発を行う。カートリッジ交換システムは酸素や水分に弱いカソ

ードを高真空内で交換できる機構である。可視光で駆動可能なアンチモンを用いたマ

ルチアルカリカソードの設計と試作を行い、効率並びに寿命を詳細に検討する。

B. 大強度高品質電子源の開発 KEK、原子力機構、東大などと共同で大強度高品質電子源の開発に取り組む。広

島大学では極高真空によるカソード評価装置を構築し、多くのサンプルについて表面

処理や活性化の条件などによる陰極の系統的な研究を行う。また、RF電子銃による大

強度高品質電子ビーム発生のため、既存の RF電子銃の長パルス化に取り組むとともに、

その研究をもとに長パルス運転のための RF電子銃空洞の最適化設計を行う。

C. 高圧 DC Gun 開発と入射部超伝導空洞開発

C-1. 直流高電圧要素開発(高電圧試験装置の設計と製作) 750kV印加可能な電子銃の実現に必要な要素技術として、耐電圧および暗電流特性に

優れた電極、セラミックの研究開発に着手する。今年度は、高電圧試験装置の設計と

製作を行う。

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5

C-2. 直流高圧電子源のための高電圧発生装置の開発 前年度までの業務で製作した装置を用いて、光陰極表面の洗浄・活性化試験、引き

続いて電子ビーム発生試験を進める。光陰極の長寿命化に必要な真空排気系の増強を

行う。

C-3. 直流高圧電子源と組み合わせて使用する CW 超伝導加速空洞の研究開

発 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構と連携して、直流高圧電子源と

組み合わせて使用する CW 超伝導加速空洞の開発を進め、前年までに試作した空洞の性

能試験を行い、CW 型超伝導加速空洞モジュールの製作に必要な知見を得る。

D. レーザー蓄積装置の開発 2008 年に引き続き、KEKにおける光子ビーム生成のためのレーザー蓄積装置の設

計を継続する。また、同装置のための、リング型蓄積装置を念頭においたデジタルフ

ィードバックシステムの研究を推進する。

E. パルス超伝導加速空洞技術の開発 パルス運転用超伝導加速空洞製作技術を高度化するために、表面処理条件を工夫し

た超伝導空洞を試作して、その性能測定を系統的に行うことによって、高性能超伝導

空洞製作が行える条件を調べる。2008年度、超伝導加速空洞製作に関する表面処理方

法の有用な知見を得たので、製作コスト削減に向けた空洞製作を行う。この空洞製作

技術の系統的な開発研究を2008年から2010年まで行うことによって、パルス超伝導加

速空洞の製品化の見通しを得るのが目的であるが、2009年度は2空洞の製作を開始する。

2010年度に2空洞の性能を確認して超伝導加速システムを完成さる計画であるが、その

性能試験を電子ビーム加速によって行える環境を整備する。また、製作コスト削減方

法の検討資料を作成する。

F. CW超伝導加速空洞技術の開発 CW超伝導加速空洞製作技術を高度化するために、CW運転に合わせた条件で超伝導空

洞を試作して、その性能測定を系統的に行うことによって、高性能超伝導空洞製作が

行える条件を調べる。この空洞製作技術の系統的な開発研究を2009年から2011年まで

行うことによって、CW超伝導加速空洞の製品化の見通しを得るのが目的であるが、2009

年度は超伝導空洞モジュールの試作に向けて具体的な検討を行う。また、2008年度に

日本原子力研究開発機構と連携して試作した直流高圧電子源と組み合わせて使用する

CW超伝導加速空洞の空洞試験の準備を整える。

G. 高周波超伝導空洞用入力カプラーのためのセラミック窓の開発 高周波超伝導空洞用入力カプラーにおけるセラミック窓は、超伝導空洞内の超高

真空と大気とを分けることはもちろんのこと、超伝導空洞内の性能を劣化させる粉

塵混入の抑制や機械的にカプラー本体を支える役目として非常に重要なコンポーネ

ントの一つであるが、大電力パワー投入下ではセラミック窓からの発熱や劣化など

が問題となる。特に極低温下の超伝導空洞への入熱を抑え、なおかつ安定に電力を

供給することが入力カプラーの開発としては必須である。本年度の主な目標は、大

電力パワー入力状態においてセラミック窓の発熱を軽減することとセラミック窓の

表面での放電を抑えることを実験的に検討することにある。大電力投入下にてセラ

ミック窓の性能評価試験を行うとともに、放電、発熱等に関して問題点を抽出する。

入力カプラーはクライオモジュール内の真空中にて設置されることとなるため、セ

ラミック窓等は断熱槽で覆い、なおかつ低温状態を保持することが重要であり、最

終的にはその状況下におけるセラミック窓の基本性能を評価する。

H. 小型1.3GHz高周波源開発 安定な高周波源であるクライストロンを低電圧駆動・三極管化・マルチビームク

ライストロンの技術を使って小型化設計を試みる。また、エネルギー回収型コレク

6

ターでさらに省エネルギー化を計った装置設計を行う。モジュレータ電源の小型化

も行い、システムの小型化、省エネルギー化を実現し、製品システム化がスムーズ

に行えるように高信頼性化を目指す。2009年度は試験装置の部品製作を行う。また、

2010年度に本試験装置を組み立て、必要な性能試験を行えるように準備する。そし

て2011年度に実用試験装置を製作する予定である。

I. X線検出装置の実用化開発 軟X線から硬X線検出装置の評価を行い、本課題装置に利用する場合の問題点を抽出

する。X線検出装置を試作して、X線測定実験を行い、どのような測定上の問題がある

かを整理する。2009年度は、軟X線検出装置の性能を調べる。

J. X 線の検出装置(時間分解及び空間分解)の設計及び試作を実施する。 具体的には、比較的低エネルギーの X線の計測システムを開発するための基礎的な

検討と、実験的な検証を実施する。一方スペクトロメータ開発の一環で、汎用性の高

いブラッグ反射を利用したシステムの予備的な試験を実施する。これらの結果を元に、

次年度以降に実施するエネルギー分割測定に必要な X線のフラックスの下限値の確認

を行うとともにエネルギー分解能等の評価方法について検討する。

I-1. X線検出システムの設計

I-2. 試作装置の作製

I-3. 検出試験

K. 電子ビーム・レーザ衝突技術の開発(システム統合化)とプロジェク

トの総合的推進 高周波電子源を使って、今までの300nC/300nsec電子ビーム生成実績を向上するため

に、新しい電子源を製作する。また、5MeV大強度電子ビームとレーザーパルスを高繰

り返しで衝突させて、レーザー逆コンプトン散乱で軟X線生成実験を行えるように装置

を改造する。2009年度に3次元4枚ミラーリング光蓄積装置を試作する。この光蓄積

装置で2010年度に生成軟X線を使った実用試験を行えるように、実験装置の改造を

進める。2008年~2010年間で電子ビーム・レーザー衝突実験によって、本提案課題装

置で将来必要となる安全システム・制御システム等の技術蓄積を行うために、2009年

度も基礎実験を行う。

プロジェクト全体の連携を密としつつ円滑に運営していくため、研究開発運営委員

会や技術検討会の開催等、参画各機関の連携・調整に当たる。特に、プロジェクト全

体の進捗状況を確認しつつ計画の合理化を検討し、必要に応じて調査或いは外部有識

者を招聘して意見を聞くなど、プロジェクトの推進に努力する。

2009年度から「高電圧DC電子源開発」の拡充計画として高安定高電圧電源開発を株

式会社日立ハイテクノロジーズが担当するので、日本原子力研究開発機構と日立ハイ

テクノロジーズ間の研究開発調整を高エネルギー加速器研究機構が行い、2011年度ま

でに500~750kV数十mA以上の電子ビーム生成実証試験を遂行できるように研究開発を

纏める。また、広島大学と研究協力機関大阪大学産業総合研究所が「高性能光L-band RF

Gun開発」を行う。これについてもL-band RF Gun性能実験設備を所有する高エネルギ

ー加速器研究機構が研究開発の調整と纏めを行う。

プロジェクトで得られた成果については、国内外において積極的に公表し、併せて

超伝導加速空洞やその周辺機器の最先端知見を得ることで、今後の展開に資する。

2 3

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C-2. 直流高圧電子源のための高電圧発生装置の開発 前年度までの業務で製作した装置を用いて、光陰極表面の洗浄・活性化試験、引き

続いて電子ビーム発生試験を進める。光陰極の長寿命化に必要な真空排気系の増強を

行う。

C-3. 直流高圧電子源と組み合わせて使用する CW 超伝導加速空洞の研究開

発 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構と連携して、直流高圧電子源と

組み合わせて使用する CW 超伝導加速空洞の開発を進め、前年までに試作した空洞の性

能試験を行い、CW 型超伝導加速空洞モジュールの製作に必要な知見を得る。

D. レーザー蓄積装置の開発 2008 年に引き続き、KEKにおける光子ビーム生成のためのレーザー蓄積装置の設

計を継続する。また、同装置のための、リング型蓄積装置を念頭においたデジタルフ

ィードバックシステムの研究を推進する。

E. パルス超伝導加速空洞技術の開発 パルス運転用超伝導加速空洞製作技術を高度化するために、表面処理条件を工夫し

た超伝導空洞を試作して、その性能測定を系統的に行うことによって、高性能超伝導

空洞製作が行える条件を調べる。2008年度、超伝導加速空洞製作に関する表面処理方

法の有用な知見を得たので、製作コスト削減に向けた空洞製作を行う。この空洞製作

技術の系統的な開発研究を2008年から2010年まで行うことによって、パルス超伝導加

速空洞の製品化の見通しを得るのが目的であるが、2009年度は2空洞の製作を開始する。

2010年度に2空洞の性能を確認して超伝導加速システムを完成さる計画であるが、その

性能試験を電子ビーム加速によって行える環境を整備する。また、製作コスト削減方

法の検討資料を作成する。

F. CW超伝導加速空洞技術の開発 CW超伝導加速空洞製作技術を高度化するために、CW運転に合わせた条件で超伝導空

洞を試作して、その性能測定を系統的に行うことによって、高性能超伝導空洞製作が

行える条件を調べる。この空洞製作技術の系統的な開発研究を2009年から2011年まで

行うことによって、CW超伝導加速空洞の製品化の見通しを得るのが目的であるが、2009

年度は超伝導空洞モジュールの試作に向けて具体的な検討を行う。また、2008年度に

日本原子力研究開発機構と連携して試作した直流高圧電子源と組み合わせて使用する

CW超伝導加速空洞の空洞試験の準備を整える。

G. 高周波超伝導空洞用入力カプラーのためのセラミック窓の開発 高周波超伝導空洞用入力カプラーにおけるセラミック窓は、超伝導空洞内の超高

真空と大気とを分けることはもちろんのこと、超伝導空洞内の性能を劣化させる粉

塵混入の抑制や機械的にカプラー本体を支える役目として非常に重要なコンポーネ

ントの一つであるが、大電力パワー投入下ではセラミック窓からの発熱や劣化など

が問題となる。特に極低温下の超伝導空洞への入熱を抑え、なおかつ安定に電力を

供給することが入力カプラーの開発としては必須である。本年度の主な目標は、大

電力パワー入力状態においてセラミック窓の発熱を軽減することとセラミック窓の

表面での放電を抑えることを実験的に検討することにある。大電力投入下にてセラ

ミック窓の性能評価試験を行うとともに、放電、発熱等に関して問題点を抽出する。

入力カプラーはクライオモジュール内の真空中にて設置されることとなるため、セ

ラミック窓等は断熱槽で覆い、なおかつ低温状態を保持することが重要であり、最

終的にはその状況下におけるセラミック窓の基本性能を評価する。

H. 小型1.3GHz高周波源開発 安定な高周波源であるクライストロンを低電圧駆動・三極管化・マルチビームク

ライストロンの技術を使って小型化設計を試みる。また、エネルギー回収型コレク

6

ターでさらに省エネルギー化を計った装置設計を行う。モジュレータ電源の小型化

も行い、システムの小型化、省エネルギー化を実現し、製品システム化がスムーズ

に行えるように高信頼性化を目指す。2009年度は試験装置の部品製作を行う。また、

2010年度に本試験装置を組み立て、必要な性能試験を行えるように準備する。そし

て2011年度に実用試験装置を製作する予定である。

I. X線検出装置の実用化開発 軟X線から硬X線検出装置の評価を行い、本課題装置に利用する場合の問題点を抽出

する。X線検出装置を試作して、X線測定実験を行い、どのような測定上の問題がある

かを整理する。2009年度は、軟X線検出装置の性能を調べる。

J. X 線の検出装置(時間分解及び空間分解)の設計及び試作を実施する。 具体的には、比較的低エネルギーの X線の計測システムを開発するための基礎的な

検討と、実験的な検証を実施する。一方スペクトロメータ開発の一環で、汎用性の高

いブラッグ反射を利用したシステムの予備的な試験を実施する。これらの結果を元に、

次年度以降に実施するエネルギー分割測定に必要な X線のフラックスの下限値の確認

を行うとともにエネルギー分解能等の評価方法について検討する。

I-1. X線検出システムの設計

I-2. 試作装置の作製

I-3. 検出試験

K. 電子ビーム・レーザ衝突技術の開発(システム統合化)とプロジェク

トの総合的推進 高周波電子源を使って、今までの300nC/300nsec電子ビーム生成実績を向上するため

に、新しい電子源を製作する。また、5MeV大強度電子ビームとレーザーパルスを高繰

り返しで衝突させて、レーザー逆コンプトン散乱で軟X線生成実験を行えるように装置

を改造する。2009年度に3次元4枚ミラーリング光蓄積装置を試作する。この光蓄積

装置で2010年度に生成軟X線を使った実用試験を行えるように、実験装置の改造を

進める。2008年~2010年間で電子ビーム・レーザー衝突実験によって、本提案課題装

置で将来必要となる安全システム・制御システム等の技術蓄積を行うために、2009年

度も基礎実験を行う。

プロジェクト全体の連携を密としつつ円滑に運営していくため、研究開発運営委員

会や技術検討会の開催等、参画各機関の連携・調整に当たる。特に、プロジェクト全

体の進捗状況を確認しつつ計画の合理化を検討し、必要に応じて調査或いは外部有識

者を招聘して意見を聞くなど、プロジェクトの推進に努力する。

2009年度から「高電圧DC電子源開発」の拡充計画として高安定高電圧電源開発を株

式会社日立ハイテクノロジーズが担当するので、日本原子力研究開発機構と日立ハイ

テクノロジーズ間の研究開発調整を高エネルギー加速器研究機構が行い、2011年度ま

でに500~750kV数十mA以上の電子ビーム生成実証試験を遂行できるように研究開発を

纏める。また、広島大学と研究協力機関大阪大学産業総合研究所が「高性能光L-band RF

Gun開発」を行う。これについてもL-band RF Gun性能実験設備を所有する高エネルギ

ー加速器研究機構が研究開発の調整と纏めを行う。

プロジェクトで得られた成果については、国内外において積極的に公表し、併せて

超伝導加速空洞やその周辺機器の最先端知見を得ることで、今後の展開に資する。

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3.実施体制と役割分担 業務主任者

役職・氏名 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設教授 浦川 順治

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構では、超伝導加速空洞開発および

小型高輝度光子ビーム源装置に関するシステム統合化研究開発を実施する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

①-A パルス超伝導加速

空洞技術の開発

①-B CW超伝導加速空洞技

術の開発

②電子ビーム・レーザー

衝突技術の開発(システ

ム統合化)

③X線検出装置の実用化

開発

④小型高信頼性L-band高周波源開発

⑤プロジェクトの総合的

推進

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、超伝導リニアック試

験棟(STF)

東カウンターホール

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、先端加速器試験棟

(ATF)

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、先端加速器試験棟

(ATF)

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、超伝導リニアック試

験棟(STF)

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、2号館4階次世代量

子ビームプロジェクト推

進室

加速器研究施設教授

早野 仁司

加速器研究施設教授

古屋 貴章

加速器研究施設准教授

照沼 信浩

素粒子原子核研究所教授

幅 淳二

加速器研究施設教授 福田 茂樹

加速器研究施設教授

浦川 順治

国立大学法人東京大学では、小型高輝度光子ビーム源装置の新フォトカソード開発

及び高周波超伝導空洞用入力カプラーの開発を実施する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

① 新フォトカソード開

②高周波超伝導空洞用入

力カプラーのためのセラ

ミック窓の開発

茨城県那珂郡東海村白方

白根2-22、工学系研究科原

子力専攻

千葉県柏市柏の葉5-1

-5

東京大学物性研究所

工学系研究科原子力専攻

教授 上坂 充

物性研究所

准教授 中村典雄

国立大学法人広島大学では、レーザー蓄積装置および大強度高品質電子源に関わる研

究開発を実施する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

①レーザー蓄積装置の開

東広島市鏡山1-3-1

広島大学大学院先端物質

科学研究科

大学院先端物質科学研究

科・准教授 高橋 徹

②大強度高品質電子源の

開発

東広島市鏡山1-3-1

広島大学大学院先端物質

科学研究科

大学院先端物質科学研究

科・教授 栗木雅夫

飯島北斗(平成 21 年 7 月 1

日から)

独立行政法人日本原子力研究開発機構では、直流高圧電子源に関わる研究開発を実

施する。また、直流高圧電子源と組み合わせて使用する CW 超伝導加速空洞について、

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構と連携して研究開発を実施する。

研 究 項 目 担当機関等 研究担当者

1.直流高圧電子源開発

(1) 直流高圧電子源の

の開発

(2) 直流高圧電子源と

組み合わせて使用する

CW 超伝導加速空洞の研

究開発

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

羽島良一

永井良治

西森信行

飯島北斗(平成 21年 6月 30

日まで)

沢村勝

株式会社日立ハイテクノロジーズでは、高電圧DC電子源に関わる研究開発を実施

する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

高電圧DC電子源開発 東京都港区西新橋一丁目

24番14号

株式会社日立ハイテクノ

ロジーズ、研究開発本部

主管技師・小瀬 洋一

学校法人早稲田大学では、X線発生総合試験において、次の項目について、高い精

度でX線のエネルギー及び角度分布等の計測を可能とする以下のシステムの開発を

実施する。

①汎用ブラッグ反射を用いたスペクトロメータシステム開発

②高分解能半導体 X線スペクトロメータ

③円筒面多層膜ミラーと二次元位置検出器を組み合わせた2次元スペクトロメータ

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

X線検出器の開発 東京都新宿区大久保3丁目

4番1号

学校法人 早稲田大学

理工学術院教授・鷲尾方一

4.委員会運営委員会等の活動2010 年 02 月 25 日 文部科学省「量子ビーム基盤技術開発プログラム」シンポジウム,

コンファレンススクエア エムプラス(東京)

技術検討会等 74 回

2009.08.26 第二回 X線検出検討会 KEK3 号館 425 号室

4 5

Page 9: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

7

3.実施体制と役割分担 業務主任者

役職・氏名 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設教授 浦川 順治

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構では、超伝導加速空洞開発および

小型高輝度光子ビーム源装置に関するシステム統合化研究開発を実施する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

①-A パルス超伝導加速

空洞技術の開発

①-B CW超伝導加速空洞技

術の開発

②電子ビーム・レーザー

衝突技術の開発(システ

ム統合化)

③X線検出装置の実用化

開発

④小型高信頼性L-band高周波源開発

⑤プロジェクトの総合的

推進

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、超伝導リニアック試

験棟(STF)

東カウンターホール

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、先端加速器試験棟

(ATF)

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、先端加速器試験棟

(ATF)

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、超伝導リニアック試

験棟(STF)

つくば市大穂1-1

高エネルギー加速器研究

機構、2号館4階次世代量

子ビームプロジェクト推

進室

加速器研究施設教授

早野 仁司

加速器研究施設教授

古屋 貴章

加速器研究施設准教授

照沼 信浩

素粒子原子核研究所教授

幅 淳二

加速器研究施設教授 福田 茂樹

加速器研究施設教授

浦川 順治

国立大学法人東京大学では、小型高輝度光子ビーム源装置の新フォトカソード開発

及び高周波超伝導空洞用入力カプラーの開発を実施する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

① 新フォトカソード開

②高周波超伝導空洞用入

力カプラーのためのセラ

ミック窓の開発

茨城県那珂郡東海村白方

白根2-22、工学系研究科原

子力専攻

千葉県柏市柏の葉5-1

-5

東京大学物性研究所

工学系研究科原子力専攻

教授 上坂 充

物性研究所

准教授 中村典雄

国立大学法人広島大学では、レーザー蓄積装置および大強度高品質電子源に関わる研

究開発を実施する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

①レーザー蓄積装置の開

東広島市鏡山1-3-1

広島大学大学院先端物質

科学研究科

大学院先端物質科学研究

科・准教授 高橋 徹

②大強度高品質電子源の

開発

東広島市鏡山1-3-1

広島大学大学院先端物質

科学研究科

大学院先端物質科学研究

科・教授 栗木雅夫

飯島北斗(平成 21 年 7 月 1

日から)

独立行政法人日本原子力研究開発機構では、直流高圧電子源に関わる研究開発を実

施する。また、直流高圧電子源と組み合わせて使用する CW 超伝導加速空洞について、

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構と連携して研究開発を実施する。

研 究 項 目 担当機関等 研究担当者

1.直流高圧電子源開発

(1) 直流高圧電子源の

の開発

(2) 直流高圧電子源と

組み合わせて使用する

CW 超伝導加速空洞の研

究開発

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

日本原子力研究開発機構

羽島良一

永井良治

西森信行

飯島北斗(平成 21年 6月 30

日まで)

沢村勝

株式会社日立ハイテクノロジーズでは、高電圧DC電子源に関わる研究開発を実施

する。

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

高電圧DC電子源開発 東京都港区西新橋一丁目

24番14号

株式会社日立ハイテクノ

ロジーズ、研究開発本部

主管技師・小瀬 洋一

学校法人早稲田大学では、X線発生総合試験において、次の項目について、高い精

度でX線のエネルギー及び角度分布等の計測を可能とする以下のシステムの開発を

実施する。

①汎用ブラッグ反射を用いたスペクトロメータシステム開発

②高分解能半導体 X線スペクトロメータ

③円筒面多層膜ミラーと二次元位置検出器を組み合わせた2次元スペクトロメータ

業 務 項 目 実 施 場 所 担 当 責 任 者

X線検出器の開発 東京都新宿区大久保3丁目

4番1号

学校法人 早稲田大学

理工学術院教授・鷲尾方一

4.委員会運営委員会等の活動2010 年 02 月 25 日 文部科学省「量子ビーム基盤技術開発プログラム」シンポジウム,

コンファレンススクエア エムプラス(東京)

技術検討会等 74 回

2009.08.26 第二回 X線検出検討会 KEK3 号館 425 号室

4 5

Page 10: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

10

2010.01.28 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.02.04 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.02.18 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.03.04 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.03.18 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.03.25 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

定例電子銃打ち合わせ

日時 会議名 場所

2009.04.27 第 12 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.05.25 第 13 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.06.29 第 14 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.08.05 第 15 回量子ビーム電子銃打ち合わせ 原子力科学研究所

2009.09.04 第 16 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.10.05 第 17 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.11.05 第 18 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.12.29 第 19 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK PF二階会議室

2010.02.08 第 20 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2010.03.15 第 21 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

定例 L-band RF 電子銃開発グループ会合

日時 会議名 場所

2009.04.24 第 9 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.06.01 第 10 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.07.06 第 11 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.08.03 第 12 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.09.04 第 13 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.10.13 第 14 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.11.10 第 15 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.12.15 第 16 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2010.01.27 第 17 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2010.03.03 第 18 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.12.14 第三回 X線検出検討会 KEK3 号館 425 号室

2009.07.21 空洞製作についての打ち合わせその一、KEK-STF 棟

2009.07.22 空洞製作についての打ち合わせその二、KEK 二号館 406 号室

2010.01.27 超伝導加速モジュールのコンセンサス打合せ KEK2 号館 406 号室

2009.06.16-17 4 鏡共振器開発キックオフミーティング 広島大学

2010.03.02 4 鏡共振器引き継ぎミーティング KEK-LC コンテナ

定例レーザー蓄積技術打ち合わせ

2009.09.15 量子ビームレーザー打ち合わせ KEK 2 号館 406 室

2009.10.15 量子ビームレーザー打ち合わせ 広島大学

2009.12.11 量子ビームレーザー打ち合わせ KEK 2 号館 406 室

2010.01.15 量子ビームレーザー打ち合わせ 広島大学

定例 LUCX Meeting

2009.04.02 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.09 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.16 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.23 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.30 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.05.14 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.05.21 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.05.28 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.04 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.11 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.18 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.25 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.02 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.09 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.17 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.23 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.30 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.08.13 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.08.27 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.09.03 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.09.17 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.09.24 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.01 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.08 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.22 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.29 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.05 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.12 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.19 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.26 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.12.03 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.12.10 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.12.17 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.01.07 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.01.14 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.01.21 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

6 7

Page 11: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

10

2010.01.28 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.02.04 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.02.18 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.03.04 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.03.18 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.03.25 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

定例電子銃打ち合わせ

日時 会議名 場所

2009.04.27 第 12 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.05.25 第 13 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.06.29 第 14 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.08.05 第 15 回量子ビーム電子銃打ち合わせ 原子力科学研究所

2009.09.04 第 16 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.10.05 第 17 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.11.05 第 18 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.12.29 第 19 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK PF二階会議室

2010.02.08 第 20 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2010.03.15 第 21 回量子ビーム電子銃打ち合わせ KEK2 号館 406 室

定例 L-band RF 電子銃開発グループ会合

日時 会議名 場所

2009.04.24 第 9 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.06.01 第 10 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.07.06 第 11 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.08.03 第 12 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.09.04 第 13 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.10.13 第 14 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.11.10 第 15 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.12.15 第 16 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2010.01.27 第 17 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2010.03.03 第 18 回 L-Band RF Gun 開発 G打ち合わせ KEK2 号館 406 室

2009.12.14 第三回 X線検出検討会 KEK3 号館 425 号室

2009.07.21 空洞製作についての打ち合わせその一、KEK-STF 棟

2009.07.22 空洞製作についての打ち合わせその二、KEK 二号館 406 号室

2010.01.27 超伝導加速モジュールのコンセンサス打合せ KEK2 号館 406 号室

2009.06.16-17 4 鏡共振器開発キックオフミーティング 広島大学

2010.03.02 4 鏡共振器引き継ぎミーティング KEK-LC コンテナ

定例レーザー蓄積技術打ち合わせ

2009.09.15 量子ビームレーザー打ち合わせ KEK 2 号館 406 室

2009.10.15 量子ビームレーザー打ち合わせ 広島大学

2009.12.11 量子ビームレーザー打ち合わせ KEK 2 号館 406 室

2010.01.15 量子ビームレーザー打ち合わせ 広島大学

定例 LUCX Meeting

2009.04.02 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.09 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.16 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.23 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.04.30 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.05.14 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.05.21 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.05.28 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.04 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.11 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.18 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.06.25 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.02 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.09 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.17 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.23 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.07.30 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.08.13 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.08.27 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.09.03 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.09.17 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.09.24 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.01 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.08 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.22 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.10.29 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.05 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.12 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.19 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.11.26 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.12.03 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.12.10 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2009.12.17 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.01.07 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.01.14 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

2010.01.21 小型X線源実験打ち合わせ(LUCX meeting)KEK-LC コンテナ

6 7

Page 12: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

11

5.平成21年度研究成果報告

A. 新フォトカソード:可視光カソード試運転 New Photocathode Development

概 要

東京大学 18MeV 電子線形加速器にインストールされている、カートリッジ式

フォトカソード高周波電子銃を用いて、可視光レーザー駆動の高輝度電子源の

開発を目指し、Na2KSb カソードのビーム試験を行った。266[nm]と 400[nm]の2

種類の励起波長に対して飽和電荷量及び、量子効率測定を行った。また、カー

トリッジ式交換システムを導入して以来、電子銃において、反射波の乱れ・ビ

ームエネルギーの低下等の問題が生じていた。そこで、冷却管つきの端板を、

電子銃加速空洞における電磁熱解析にもとづいて設計・製作し、インストール

を行った。その結果、反射波の改善、ビームエネルギーの向上、飽和電荷量の

増加等が見られ、電子銃の電磁熱由来の問題を、ほぼ解決することができたと

言える。

1.本研究の背景 フォトカソード高周波(RF)電子銃は、高周波を空洞に印加することにより、陰極表面に

約 100[MV/m]程度の高電場を発生する。この高電場により、電子源から放出された電子を速

やかに相対論的領域まで加速することができる。これによって、サブピコ秒からフェムト

秒の超短パルスかつ低エミッタンスの電子ビーム発生が可能である。

フォトカソード RF 電子銃は、駆動レーザーを共振空洞内のカソード面に入射して光電

子を発生させ、それを高周波電場(RF)で加速して電子ビームを発生させる。

フォトカソード励起用のレーザーとして、本研究施設では、0.3[TW]のチタンサファイ

アレーザー(基本波 800[nm])の3倍高調波(266[nm], 4.6[eV])を用いてきたが、3倍高調波

への変換効率は、本施設では約2%程度であり、レーザーを含めたシステムの安定化・小

型化の観点から、可視光領域である2倍高調波で駆動するようなフォトカソードの開発が

求められる。また、本プロジェクトにおける電子源の第一候補は GaAs であるが、高周波電

子銃において長時間運転可能なカソードを目指し、上坂班ではアンチモンベースのカソー

ドの開発を行う。

そこで、本研究では、可視光レーザーで駆動できる可能性のある Na2KSb に注目し、高

周波電子銃におけるビーム試験を行う。試験に際し、フォトカソード交換システム導入以

来、入力高周波パワーに対する反射波の乱れが生じていた。熱解析を通じて、新端板を設

計・製作し、電子銃にインストールを行った。最初に電子銃における電磁熱問題について

報告する。その後、Na2KSb の可視光及び紫外光におけるビーム特性試験の結果について、

報告する。

2.高周波電子銃の熱問題 Na2KSbカソードは高周波電子銃のような、開放系の高周波場における使用例が無い。そ

のため、高周波電子銃における挙動を確かめるため、特性試験を行う必要がある。しかし

18-Lにおいて、半導体カソードを使用するためのカートリッジ式交換システム導入以後、

以下のような問題点が生じている。

1、 高周波の反射波が0にならない・・・蓄積電力量が約50%

2、 加速管後のエネルギーが設計値22MeVより低い20.8MeVである・・・高周波電

12

子銃の電場が約70%

3、電荷量の飽和(レーザパワーを増やしても電荷量が増えない)が3.1nCと低い

この問題は高周波印加時、空洞内に流れる壁電流によって生じるジュール熱が原因と予

測できる。従って、高周波電子銃の熱計算を行い(図1)、冷却系の再構築を行う。

図1から分かるように、端板部分の温度上昇が大きく(11.421度)端板部分に冷却部が必

要なことがわかる。また、高周波印加による温度上昇が原因で、空洞容積が大きくなり、

共振周波数に156kHzのずれが生じている。現在18LのQ値は8500であるため、共振周波数の

半値半幅は165kHzである。従って、空洞内の蓄積電力が52%、空洞内電場強度が72%になっ

てしまっている。

3. 新端板設計 カートリッジ式交換システムを導入する際、交換システム接続部、および高周波電子銃

空洞接続部に強い負荷がかかるため、端板製作上全体的にSUSが多くなるよう設計された。

しかし、SUSは銅に比べ熱伝導率が小さいため、新端板に追加する冷却管の効果を十分に得

るためには、全体的に銅の割合が多くなるように設計する必要がある。図2は設計した新端

板の概念図である。全体的に銅の割合を増やしたことで、冷却管を端板の外壁に通す単純

な形で十分な冷却効果が期待できる。

図3に新端板の熱計算の結果を載せる。端板部分の温度上昇が3.536度と従来の端板に比

べ1/3に抑えられている。また、熱膨張による共振周波数のすれも31kHzに抑えられ、空洞

内の蓄積電力は97%、空洞内電場は98%とほぼ規定値に近い値が得られた。

図 1 高周波電子銃の熱計算 左:温度分布、右:熱膨張分布

C-2. 直流高圧電子源開発

Development of High-Voltage DC Electron Guns

概 要

8 9

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11

5.平成21年度研究成果報告

A. 新フォトカソード:可視光カソード試運転 New Photocathode Development

概 要

東京大学 18MeV 電子線形加速器にインストールされている、カートリッジ式

フォトカソード高周波電子銃を用いて、可視光レーザー駆動の高輝度電子源の

開発を目指し、Na2KSb カソードのビーム試験を行った。266[nm]と 400[nm]の2

種類の励起波長に対して飽和電荷量及び、量子効率測定を行った。また、カー

トリッジ式交換システムを導入して以来、電子銃において、反射波の乱れ・ビ

ームエネルギーの低下等の問題が生じていた。そこで、冷却管つきの端板を、

電子銃加速空洞における電磁熱解析にもとづいて設計・製作し、インストール

を行った。その結果、反射波の改善、ビームエネルギーの向上、飽和電荷量の

増加等が見られ、電子銃の電磁熱由来の問題を、ほぼ解決することができたと

言える。

1.本研究の背景 フォトカソード高周波(RF)電子銃は、高周波を空洞に印加することにより、陰極表面に

約 100[MV/m]程度の高電場を発生する。この高電場により、電子源から放出された電子を速

やかに相対論的領域まで加速することができる。これによって、サブピコ秒からフェムト

秒の超短パルスかつ低エミッタンスの電子ビーム発生が可能である。

フォトカソード RF 電子銃は、駆動レーザーを共振空洞内のカソード面に入射して光電

子を発生させ、それを高周波電場(RF)で加速して電子ビームを発生させる。

フォトカソード励起用のレーザーとして、本研究施設では、0.3[TW]のチタンサファイ

アレーザー(基本波 800[nm])の3倍高調波(266[nm], 4.6[eV])を用いてきたが、3倍高調波

への変換効率は、本施設では約2%程度であり、レーザーを含めたシステムの安定化・小

型化の観点から、可視光領域である2倍高調波で駆動するようなフォトカソードの開発が

求められる。また、本プロジェクトにおける電子源の第一候補は GaAs であるが、高周波電

子銃において長時間運転可能なカソードを目指し、上坂班ではアンチモンベースのカソー

ドの開発を行う。

そこで、本研究では、可視光レーザーで駆動できる可能性のある Na2KSb に注目し、高

周波電子銃におけるビーム試験を行う。試験に際し、フォトカソード交換システム導入以

来、入力高周波パワーに対する反射波の乱れが生じていた。熱解析を通じて、新端板を設

計・製作し、電子銃にインストールを行った。最初に電子銃における電磁熱問題について

報告する。その後、Na2KSb の可視光及び紫外光におけるビーム特性試験の結果について、

報告する。

2.高周波電子銃の熱問題 Na2KSbカソードは高周波電子銃のような、開放系の高周波場における使用例が無い。そ

のため、高周波電子銃における挙動を確かめるため、特性試験を行う必要がある。しかし

18-Lにおいて、半導体カソードを使用するためのカートリッジ式交換システム導入以後、

以下のような問題点が生じている。

1、 高周波の反射波が0にならない・・・蓄積電力量が約50%

2、 加速管後のエネルギーが設計値22MeVより低い20.8MeVである・・・高周波電

12

子銃の電場が約70%

3、電荷量の飽和(レーザパワーを増やしても電荷量が増えない)が3.1nCと低い

この問題は高周波印加時、空洞内に流れる壁電流によって生じるジュール熱が原因と予

測できる。従って、高周波電子銃の熱計算を行い(図1)、冷却系の再構築を行う。

図1から分かるように、端板部分の温度上昇が大きく(11.421度)端板部分に冷却部が必

要なことがわかる。また、高周波印加による温度上昇が原因で、空洞容積が大きくなり、

共振周波数に156kHzのずれが生じている。現在18LのQ値は8500であるため、共振周波数の

半値半幅は165kHzである。従って、空洞内の蓄積電力が52%、空洞内電場強度が72%になっ

てしまっている。

3. 新端板設計 カートリッジ式交換システムを導入する際、交換システム接続部、および高周波電子銃

空洞接続部に強い負荷がかかるため、端板製作上全体的にSUSが多くなるよう設計された。

しかし、SUSは銅に比べ熱伝導率が小さいため、新端板に追加する冷却管の効果を十分に得

るためには、全体的に銅の割合が多くなるように設計する必要がある。図2は設計した新端

板の概念図である。全体的に銅の割合を増やしたことで、冷却管を端板の外壁に通す単純

な形で十分な冷却効果が期待できる。

図3に新端板の熱計算の結果を載せる。端板部分の温度上昇が3.536度と従来の端板に比

べ1/3に抑えられている。また、熱膨張による共振周波数のすれも31kHzに抑えられ、空洞

内の蓄積電力は97%、空洞内電場は98%とほぼ規定値に近い値が得られた。

図 1 高周波電子銃の熱計算 左:温度分布、右:熱膨張分布

8 9

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13

4. 新端板を用いたビーム発生実験 図4は端板の違いによる反射波の比較である。新端板では、反射波が0近くまで減少して

おり、空洞内に十分電力が蓄積されていることが分かる。また、測定された電子ビームが

22MeV付近であったこともその事実を表している。

-100

-80

-60

-40

-20

0

20

-1 0 1 2 3 4

Time(μs)

Refle

ct W

ave

(mV)

図 4 新端板と旧端板での反射波

図 3 新端板を用いた高周波電子銃の熱計算 左:温度分布、右:熱膨張分布

旧端板波形

新端板波形

図 2 新端板概念図

14

5. Na2KSbのビーム試験

5.1 Na2KSbフォトカソード Na2KSbは半導体光陰極の一種であり、光電子増倍管などの光電面に用いられている。ギ

ャップエネルギーが1.0[eV]、価電子帯と真空順位の差(電子親和力)が1.0[eV]で、実効的

な仕事関数は2.0[eV]と、金属系光陰極やCs-Te光陰極と比べて非常に低いのが特徴であり、

Ti;Saレーザーの2倍高調波(400[nm], 3.1[eV])でも駆動できる。オフラインの試験におい

て500[nm]帯の入射光に対して10%以上の高い量子効率を有することが報告されている6)。

5.2 寿命測定 18L においては、光電効果による電子発生用の励起レーザーとして 0.3[TW]の Ti;Sa レー

ザー(800[nm]:1.5[eV])を用いている。従来の光陰極から電子を取り出すには3倍高調波

(266[nm]:4.6[eV])に波長を変換する必要があり、その変換効率は約 2%で、レーザーの大

型化や不安定化を招いている。そこで、レーザーの安定化と小型化という観点から、可視

光領域である 2倍高調波(400[nm]:3.1[eV])で動作できるようなフォトカソードの実用化が

望まれている。その1つの候補が Na2KSb であり Na2KSb 電子を真空に引き出すために必要な

エネルギーは 2.0eV から Ti;Sa レーザーの 2 倍高調波でも駆動できる。また、Cs を用いな

いことにより、Cs の蒸発による量子効率の劣化がなく、超時間の動作が期待できる。今回

は、レーザーのセットアップ上の都合から、266nm における Na2KSb の寿命測定を行った。

その結果を図4に示す。

電子銃周りの真空系は140[l/s]のイオンポンプと3台の400[l/s]NEGポンプからなるが、

RF印可時のイオンポンプの真空度は 1.2×10-9[Torr]、端板後方の真空度は 2.5×10-8[Torr]

であった。光陰極交換直後の量子効率として、約 1.2%を得た。また、0.1%の量子効率で約

2ヶ月の動作を確認した。

5.3 可視光・紫外光における、飽和電荷量測定

フォトカソードの劣化の主な要因としては、放電による陰極表面の損傷と、真空中の残

留ガスの陰極への表面吸着が考えられる。そこで、真空度の向上を図るために、電子銃ま

わりに、40[l/s]のイオンポンプを増設し、コンダクタンスが悪く、真空への負荷が大き

かったカソード交換機構の部分を、独立で引ける様にした。また、3つあるゲッターポン

図5.約3ヶ月にわたる量子効率の時間変化

10 11

Page 15: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

13

4. 新端板を用いたビーム発生実験 図4は端板の違いによる反射波の比較である。新端板では、反射波が0近くまで減少して

おり、空洞内に十分電力が蓄積されていることが分かる。また、測定された電子ビームが

22MeV付近であったこともその事実を表している。

-100

-80

-60

-40

-20

0

20

-1 0 1 2 3 4

Time(μs)

Refle

ct W

ave

(mV)

図 4 新端板と旧端板での反射波

図 3 新端板を用いた高周波電子銃の熱計算 左:温度分布、右:熱膨張分布

旧端板波形

新端板波形

図 2 新端板概念図

14

5. Na2KSbのビーム試験

5.1 Na2KSbフォトカソード Na2KSbは半導体光陰極の一種であり、光電子増倍管などの光電面に用いられている。ギ

ャップエネルギーが1.0[eV]、価電子帯と真空順位の差(電子親和力)が1.0[eV]で、実効的

な仕事関数は2.0[eV]と、金属系光陰極やCs-Te光陰極と比べて非常に低いのが特徴であり、

Ti;Saレーザーの2倍高調波(400[nm], 3.1[eV])でも駆動できる。オフラインの試験におい

て500[nm]帯の入射光に対して10%以上の高い量子効率を有することが報告されている6)。

5.2 寿命測定 18L においては、光電効果による電子発生用の励起レーザーとして 0.3[TW]の Ti;Sa レー

ザー(800[nm]:1.5[eV])を用いている。従来の光陰極から電子を取り出すには3倍高調波

(266[nm]:4.6[eV])に波長を変換する必要があり、その変換効率は約 2%で、レーザーの大

型化や不安定化を招いている。そこで、レーザーの安定化と小型化という観点から、可視

光領域である 2倍高調波(400[nm]:3.1[eV])で動作できるようなフォトカソードの実用化が

望まれている。その1つの候補が Na2KSb であり Na2KSb 電子を真空に引き出すために必要な

エネルギーは 2.0eV から Ti;Sa レーザーの 2 倍高調波でも駆動できる。また、Cs を用いな

いことにより、Cs の蒸発による量子効率の劣化がなく、超時間の動作が期待できる。今回

は、レーザーのセットアップ上の都合から、266nm における Na2KSb の寿命測定を行った。

その結果を図4に示す。

電子銃周りの真空系は140[l/s]のイオンポンプと3台の400[l/s]NEGポンプからなるが、

RF印可時のイオンポンプの真空度は 1.2×10-9[Torr]、端板後方の真空度は 2.5×10-8[Torr]

であった。光陰極交換直後の量子効率として、約 1.2%を得た。また、0.1%の量子効率で約

2ヶ月の動作を確認した。

5.3 可視光・紫外光における、飽和電荷量測定

フォトカソードの劣化の主な要因としては、放電による陰極表面の損傷と、真空中の残

留ガスの陰極への表面吸着が考えられる。そこで、真空度の向上を図るために、電子銃ま

わりに、40[l/s]のイオンポンプを増設し、コンダクタンスが悪く、真空への負荷が大き

かったカソード交換機構の部分を、独立で引ける様にした。また、3つあるゲッターポン

図5.約3ヶ月にわたる量子効率の時間変化

10 11

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15

プの再活性化も行った結果、端板裏において、常時 2×10-9[Torr]以下の真空度を確認し、

時には 9×10-10[Torr]に到達することもあった。

ポンプ増設の後、新しくカソードプラグを交換し、カソード挿入から約 22 時間後に、ビ

ーム試験を行った。紫外光(266[nm])及び可視光(400[nm])レーザーを用いて、レーザーパ

ワーを変化させ、電子銃出口での電荷量を測定した。その結果を図6に示す。

可視光による電荷量として2.1[nC]を、紫外光による電荷量として5.5[nC]を確認した。

正味の量子効率として、紫外光において0.23[%]、可視光において0.062[%]を得た。しかし

電子銃からとりだせる、最大の電荷量(飽和電荷量)の励起波長による依存性がみられる。

電子銃の共振空洞における加速電場強度は約100[MV/m]程度であり、電子銃として、少なく

とも5.5[nC]の電子バンチを電子銃出口まで輸送できるのであるが、可視光による電子励起

においては、紫外光より低い飽和電荷量となっている。これは、可視光による駆動におい

て、電子発生に対するなんらかの制限が加わっていることを示している。

6. 平成22年度の予定 高周波電子銃において、Na2KSbが可視光において駆動できることは確認できたが、紫外

光に比べて、引き出せる電荷量が低いことも明らかになった。可視光レーザーに対して、

紫外光と遜色ない電子発生を目指すために、陰極表面の劣化の主原因を探るため、酸素や

水素分圧に対する応答を検討し、劣化のメカニズムを調べる必要がある。現在、原子力機

構所有のMBE装置の立ち上げを行っており、ヒーターアセンブリの導入も完了した。来年度

は、原機構ERLグループと共同で、高周波電子銃において駆動可能なアンチモンベースのフ

ォトカソード開発を行う予定である。

開発スタッフ 責任者 : 上坂 充(東京大学大学院工学系研究科原子力専攻)

担当者 : 作美 明、上田 徹、神戸浩多(東京大学大学院工学系研究科原子力専攻)

図6. Na2KSbの電荷量測定。赤点が可視光を、緑点が紫外光による結果を示す。

16

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

学会での報告 神戸浩多、三好邦博、作美明、上田徹、上坂充、「Electromagnetic heat design of S-band

Linac」、第6回日本加速器学会年会2009、日本原子力機構、2009.8

神戸浩多、三好邦博、作美明、上田徹、上坂充、「フォトカソード高周波電子銃における

可視光駆動と熱問題」、日本原子力学会2009秋の年会、東北大学、2009.9

三好邦博、神戸浩多、作見明、上田徹、上坂充 「東京大学におけるNa2KSb光陰極の可視

光駆動試験」, 第6回日本加速器学会年会2009、日本原子力機構、2009.8

K.Miyoshi, K.Kambe, A.Sakumi,Y.Muroya,T.Ueda, M.Uesaka 「Commissioning of Na2K

Photocathode RFgun in S-band Linac」, Particle Accelerator Conference 09

12 13

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15

プの再活性化も行った結果、端板裏において、常時 2×10-9[Torr]以下の真空度を確認し、

時には 9×10-10[Torr]に到達することもあった。

ポンプ増設の後、新しくカソードプラグを交換し、カソード挿入から約 22 時間後に、ビ

ーム試験を行った。紫外光(266[nm])及び可視光(400[nm])レーザーを用いて、レーザーパ

ワーを変化させ、電子銃出口での電荷量を測定した。その結果を図6に示す。

可視光による電荷量として2.1[nC]を、紫外光による電荷量として5.5[nC]を確認した。

正味の量子効率として、紫外光において0.23[%]、可視光において0.062[%]を得た。しかし

電子銃からとりだせる、最大の電荷量(飽和電荷量)の励起波長による依存性がみられる。

電子銃の共振空洞における加速電場強度は約100[MV/m]程度であり、電子銃として、少なく

とも5.5[nC]の電子バンチを電子銃出口まで輸送できるのであるが、可視光による電子励起

においては、紫外光より低い飽和電荷量となっている。これは、可視光による駆動におい

て、電子発生に対するなんらかの制限が加わっていることを示している。

6. 平成22年度の予定 高周波電子銃において、Na2KSbが可視光において駆動できることは確認できたが、紫外

光に比べて、引き出せる電荷量が低いことも明らかになった。可視光レーザーに対して、

紫外光と遜色ない電子発生を目指すために、陰極表面の劣化の主原因を探るため、酸素や

水素分圧に対する応答を検討し、劣化のメカニズムを調べる必要がある。現在、原子力機

構所有のMBE装置の立ち上げを行っており、ヒーターアセンブリの導入も完了した。来年度

は、原機構ERLグループと共同で、高周波電子銃において駆動可能なアンチモンベースのフ

ォトカソード開発を行う予定である。

開発スタッフ 責任者 : 上坂 充(東京大学大学院工学系研究科原子力専攻)

担当者 : 作美 明、上田 徹、神戸浩多(東京大学大学院工学系研究科原子力専攻)

図6. Na2KSbの電荷量測定。赤点が可視光を、緑点が紫外光による結果を示す。

16

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

学会での報告 神戸浩多、三好邦博、作美明、上田徹、上坂充、「Electromagnetic heat design of S-band

Linac」、第6回日本加速器学会年会2009、日本原子力機構、2009.8

神戸浩多、三好邦博、作美明、上田徹、上坂充、「フォトカソード高周波電子銃における

可視光駆動と熱問題」、日本原子力学会2009秋の年会、東北大学、2009.9

三好邦博、神戸浩多、作見明、上田徹、上坂充 「東京大学におけるNa2KSb光陰極の可視

光駆動試験」, 第6回日本加速器学会年会2009、日本原子力機構、2009.8

K.Miyoshi, K.Kambe, A.Sakumi,Y.Muroya,T.Ueda, M.Uesaka 「Commissioning of Na2K

Photocathode RFgun in S-band Linac」, Particle Accelerator Conference 09

12 13

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17

B. 大強度高品質電子源開発 Development of High Brightness Electron Source

概 要

超伝導高周波加速技術を使った 5nm-0.025nm 波長領域の小型高輝度 X 線発生

装置の開発とその実用化に必要な基盤技術の確立を行うことが本事業の目的で

ある。小型 X 線発生装置ができれば大型放射光発生装置で行っているポストゲ

ノム次代の生命科学研究、超精密マイクロリソグラフィ、ナノ超微細構造研究

等が研究室レベルで行うことができる。目標は軟 X 線(250eV)から硬 X 線

(50keV) ま で の 高 品 質 光 子 ビ ー ム 生 成 に つ い て 、

1017photon/sec.mrad2.mm2.0.1%bw 以上のピーク輝度を小型装置で開発すること

である。本課題では本装置に必要な電子源として、光陰極 RF 電子銃および DC

電子銃用カソードの高度化を目指す。

1.はじめに X 線は医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。研究の進展は発生す

る X 線の輝度、時間構造、スペクトラムなどに制限されており、研究の裾野を広げるため

にも小型でかつ高輝度 X 線発生が可能な装置が望まれる。本研究は電子ビームとレーザー

とのコンプトン散乱により、短パルスでかつ準単色 X 線を幅広い波長領域で発生可能な小

型システム開発を目指すものである。本課題ではそのうち、システムで重要な役割を果た

す電子源である光電陰極 RF 電子銃および DC 電子銃開発を行う。システム全体の運転モー

ドとしてパルスモード(パルス長 1ms、繰返し 5Hz)と CW モード(連続運転)が仮定されてい

る。電子ビームの平均電流において、CW モードはパルスモードに比べ 600 倍程度と有利で

あるが、技術的にはより挑戦的であり、各々の運転モードにおける実証を段階的に行って

行く予定である。RF 電子銃と DC 電子銃は各々パルスモードと CW モードに最適な電子銃で

あり、段階的に開発および実証を行う。

2.光電陰極RF 電子銃開発 本課題では加速高周波との同期をとり、かつ 1ms という長いパルスでの運転を考慮し、

駆動周波数として L-band(1.3GHz)を選択した。現在、KEK、FNAL(Fermi National Laboratory,

米国)、大阪大学(研究協力機関)、広島大学が共同して、1.3GHz の L-band RF 電子銃開発

を進めている。FNAL で電子銃空洞の一次加工を行い、その後 KEK において周波数調整を行

った。周波数調整は空洞の一部に圧力を加え、変形させることにより行った。図 1 はチュ

ーニングの際の周波数変化を表したもので,縦軸が共振周波数、横軸はチューニングの回

数である。大気中での目標周波数 1300.16MHz(真空での周波数

図 1:RF 電子銃空洞の共振周波数のチューニング履歴

18

1300MHz に相当)に対して、最終的に 1300.19MHz と充分に近い周波数へと合わせ込むこ

とができた。その後、ロウ着けなど最終組み立て作業のため空洞はひとたび FNAL に輸送さ

れ、2009 年度 3月に完成した。

電子発生のためのフォトカソードには KEK-ATF 等の施設において S-band RF 電子銃での

実績を有する CsTe 陰極を用いる。本 L-band RF 電子銃のための CsTe 陰極システム、すな

わちカソード準備真空チャンバー、真空輸送系、ロードロックシステムは KEK において設

計および製作が進められ、すでにほぼ完成している。電子ビーム発生用のレーザーシステ

ムについては、KEK、JINR(Joint Institute for Nuclear Research, ロシア)、IAP(Institute

for Applied Physics, ロシア), 大阪大学、広島大学が共同で開発をすすめていたが、

システム全体がほぼ完成し、2009 年 12 月には KEK および広島大学の研究者が参加し、ロシ

アの IAP において性能試験が行われた。

表 1 は達成されたレーザー性能およびそれから予測されるビーム電流についてまとめた

ものである。Yb fiber レーザーオシレーターが 40.6MHz 繰り返しのモードロック動作によ

り種光となるパルス列を生成する。このパルス列を Pockels cell により繰り返し周波数

を 2.71MHz に落とした後、0.9ms パルスの切り出しをおこない、5Hz 繰り返しのマクロパ

ルス構造を生成する。切り出されたマクロパルスは Yb fiber プリアンプおよび Nd: YLF ア

ンプによりパルス内平均パワー80W 程度まで増幅され、さらに非線型結晶により四倍高調波

へと変換され、最終的に CsTe の光電効果に必要な 262nm の UV 光が得られる。実際に得ら

れた四倍高調波のレーザーはマイクロパルスあたり 1.9J, マクロパルス内平均パワーで

5.1W であり、CsTe 陰極の量子効率を 1%と仮定すれば、バンチあたり 3.8nC、平均ビーム電

流 10mA が得られる予定である。図 2に四倍高調波のパルス形状を示す。横軸に時間、縦軸

に四倍高調波のレーザーパワーを表しており、およそ 0.9ms のレーザーマクロパルスが得

られている。マクロパルス内のパワー変動は rms で3%未満であり、変動 3%以内という要

求仕様を満たしている。

コンポーネント 設計値

Yb fiber oscillator 40.6MHz, 50pJ, 2mW

Nd:YLF 出力(1047nm) 2.71MHz, 30J, 81W 四倍高調波(262nm) 2.71MHz, 1.9J, 5.1W

電子ビーム(1%量子効率) 2.71MHz, 3.8nC, 10mA

表 1. L-band RF 電子銃用レーザーと予想される電子ビームの性能

図 2. 四倍高調波の時間プロファイル。約 1ms 長のマクロパルス列が得られている。

1614 15

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17

B. 大強度高品質電子源開発 Development of High Brightness Electron Source

概 要

超伝導高周波加速技術を使った 5nm-0.025nm 波長領域の小型高輝度 X 線発生

装置の開発とその実用化に必要な基盤技術の確立を行うことが本事業の目的で

ある。小型 X 線発生装置ができれば大型放射光発生装置で行っているポストゲ

ノム次代の生命科学研究、超精密マイクロリソグラフィ、ナノ超微細構造研究

等が研究室レベルで行うことができる。目標は軟 X 線(250eV)から硬 X 線

(50keV) ま で の 高 品 質 光 子 ビ ー ム 生 成 に つ い て 、

1017photon/sec.mrad2.mm2.0.1%bw 以上のピーク輝度を小型装置で開発すること

である。本課題では本装置に必要な電子源として、光陰極 RF 電子銃および DC

電子銃用カソードの高度化を目指す。

1.はじめに X 線は医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。研究の進展は発生す

る X 線の輝度、時間構造、スペクトラムなどに制限されており、研究の裾野を広げるため

にも小型でかつ高輝度 X 線発生が可能な装置が望まれる。本研究は電子ビームとレーザー

とのコンプトン散乱により、短パルスでかつ準単色 X 線を幅広い波長領域で発生可能な小

型システム開発を目指すものである。本課題ではそのうち、システムで重要な役割を果た

す電子源である光電陰極 RF 電子銃および DC 電子銃開発を行う。システム全体の運転モー

ドとしてパルスモード(パルス長 1ms、繰返し 5Hz)と CW モード(連続運転)が仮定されてい

る。電子ビームの平均電流において、CW モードはパルスモードに比べ 600 倍程度と有利で

あるが、技術的にはより挑戦的であり、各々の運転モードにおける実証を段階的に行って

行く予定である。RF 電子銃と DC 電子銃は各々パルスモードと CW モードに最適な電子銃で

あり、段階的に開発および実証を行う。

2.光電陰極RF 電子銃開発 本課題では加速高周波との同期をとり、かつ 1ms という長いパルスでの運転を考慮し、

駆動周波数として L-band(1.3GHz)を選択した。現在、KEK、FNAL(Fermi National Laboratory,

米国)、大阪大学(研究協力機関)、広島大学が共同して、1.3GHz の L-band RF 電子銃開発

を進めている。FNAL で電子銃空洞の一次加工を行い、その後 KEK において周波数調整を行

った。周波数調整は空洞の一部に圧力を加え、変形させることにより行った。図 1 はチュ

ーニングの際の周波数変化を表したもので,縦軸が共振周波数、横軸はチューニングの回

数である。大気中での目標周波数 1300.16MHz(真空での周波数

図 1:RF 電子銃空洞の共振周波数のチューニング履歴

18

1300MHz に相当)に対して、最終的に 1300.19MHz と充分に近い周波数へと合わせ込むこ

とができた。その後、ロウ着けなど最終組み立て作業のため空洞はひとたび FNAL に輸送さ

れ、2009 年度 3月に完成した。

電子発生のためのフォトカソードには KEK-ATF 等の施設において S-band RF 電子銃での

実績を有する CsTe 陰極を用いる。本 L-band RF 電子銃のための CsTe 陰極システム、すな

わちカソード準備真空チャンバー、真空輸送系、ロードロックシステムは KEK において設

計および製作が進められ、すでにほぼ完成している。電子ビーム発生用のレーザーシステ

ムについては、KEK、JINR(Joint Institute for Nuclear Research, ロシア)、IAP(Institute

for Applied Physics, ロシア), 大阪大学、広島大学が共同で開発をすすめていたが、

システム全体がほぼ完成し、2009 年 12 月には KEK および広島大学の研究者が参加し、ロシ

アの IAP において性能試験が行われた。

表 1 は達成されたレーザー性能およびそれから予測されるビーム電流についてまとめた

ものである。Yb fiber レーザーオシレーターが 40.6MHz 繰り返しのモードロック動作によ

り種光となるパルス列を生成する。このパルス列を Pockels cell により繰り返し周波数

を 2.71MHz に落とした後、0.9ms パルスの切り出しをおこない、5Hz 繰り返しのマクロパ

ルス構造を生成する。切り出されたマクロパルスは Yb fiber プリアンプおよび Nd: YLF ア

ンプによりパルス内平均パワー80W 程度まで増幅され、さらに非線型結晶により四倍高調波

へと変換され、最終的に CsTe の光電効果に必要な 262nm の UV 光が得られる。実際に得ら

れた四倍高調波のレーザーはマイクロパルスあたり 1.9J, マクロパルス内平均パワーで

5.1W であり、CsTe 陰極の量子効率を 1%と仮定すれば、バンチあたり 3.8nC、平均ビーム電

流 10mA が得られる予定である。図 2に四倍高調波のパルス形状を示す。横軸に時間、縦軸

に四倍高調波のレーザーパワーを表しており、およそ 0.9ms のレーザーマクロパルスが得

られている。マクロパルス内のパワー変動は rms で3%未満であり、変動 3%以内という要

求仕様を満たしている。

コンポーネント 設計値

Yb fiber oscillator 40.6MHz, 50pJ, 2mW

Nd:YLF 出力(1047nm) 2.71MHz, 30J, 81W 四倍高調波(262nm) 2.71MHz, 1.9J, 5.1W

電子ビーム(1%量子効率) 2.71MHz, 3.8nC, 10mA

表 1. L-band RF 電子銃用レーザーと予想される電子ビームの性能

図 2. 四倍高調波の時間プロファイル。約 1ms 長のマクロパルス列が得られている。

1614 15

Page 20: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

19

3. D C 電子銃開発 RF 電子銃は常伝導高周波空洞内で電子ビームを発生させるため、大電流の電子ビームを

パルス的に発生させ、同時に高い電場で加速することができる優れたデバイスである。し

かし常伝導 RF 空洞を高電界で連続運転することは困難であり、準連続的ビーム発生に適し

ているとは言い難い。一方、DC 電子銃は加速電界は限られているが、準連続的にビームを

発生できることから、稼働率の上昇により、実質的な平均輝度の上昇が見込める。

本課題では KEK、原子力機構、名古屋大学、日立ハイテク、東京大学、広島大学などが

共同で、500kV というかつてない高電圧で DC 的に 100mA という大電流ビームを取り出す電

子銃を最終目標として開発を進めている。500kV 電子銃のための絶縁セラミック、放電およ

びそれによる損傷防止のためのガードリング電極、カソードサポートロッド、GaAs 陰極準

備室や電子銃本体部などの極高真空容器などを開発し、すでに多くのコンポーネントを製

作した。今年度はこれらを組み上げ、真空試験、高電圧印加試験をおこなった。電子銃本

体の結果の詳細については JAEA グループから報告される。

広島大学ではカソードテスト装置を用いて、 GaAs カソードの活性化および寿命試験を

継続している。現在のところ、ベース真空度は 5E-9Pa 程度、HeNe レーザー(波長 633nm)を

用いて、活性化直後の量子効率 10%程度を得ている。また 10-40W のレーザーパワーでビー

ムを引きだし、200 時間以上のカソード寿命を得ている。 また独自に極高真空の実証と、

それをもちいた長寿命カソード実証試験のために、化学研磨処理チタンチャンバー、チタ

ン容器クライオポンプなどを製作した。このシステムにおいて、クライオポンプのみによ

る排気によりすでに 1.0E-9Pa という高い真空度を得た。このシステムに NEG ポンプを加え

て、長寿命カソード実現の基盤技術としての極真空の実証をめざす。カソード活性化チャ

ンバーおよびロードロックチャンバーの製作はほぼ終了しており、本体の真空が確立した

段階で順次組込みを行う予定である。

GaAs のバルク結晶の仕事関数は 4.9eV であり、そのままでは光電効果を生じさせるのに

真空紫外の光が必要であるが、表面修飾により NEA 表面(Negative Electron Affinity, 真

空準位が伝導帯の最低準位よりも小さい状態)をつくることで、可視光での電子発生が可能

となる。この NEA 表面の特性により、価電子帯から伝導帯への遷移を選択的に行い、スピ

ン偏極やエネルギー広がりの極めて小さい電子ビームの生成が可能となる。このように高

品質の電子ビーム発生に NEA は重要な役割を果たしているが、一方でその脆弱性が寿命問

題として課題となっている。本研究では Zn-dope バルク GaAs 結晶を使用し、乾燥窒素中で

図3. 暗寿命を温度の関数としてあらわしたもの。

高温側で急激に寿命の低減が見られる。

20

の化学洗浄による表面酸化膜の除去と As リッチ面の生成、極高真空中での加熱洗浄による

GaAs 清浄面の作成、Cs と酸素の添加による NEA 活性化をおこない、様々な条件で寿命測定

をおこなった。測定に使用したレーザーは He-Ne(波長 633nm)である。活性化直後、10%程

度の量子効率が得られるが、時間あるいは引き出し電流が増えるに従い劣化していく。図 3

は暗寿命(引き出しビーム電流が極めて小さい状態での量子効率劣化の時定数)の温度依

存性を示したデータで、室温では 200 時間程度の寿命が得られているが、80℃程度まで加

熱すると、寿命は数時間まで減少することがわかった。実線は温度による脱離現象と真空

度できまる劣化の二成分を仮定してデータを再現したもので、室温付近では真空度による

劣化の成分が、高温部では熱脱離の効果が支配的であることを示している。ここから得ら

れる NEA 表面の活性化エネルギーはおよそ 1.1eV 程度である。このデータから、運転時間

として十分な数百時間以上の寿命を得るには、従来言われてきた真空度の向上のみならず、

温度を室温程度に保つことが重要であることがわかった。光陰極で 100mA 程度の平均電流

を得るには 10W 以上のレーザーを数 mm 径の小さいスポットに照射する必要があり、少なく

とも数十℃の温度上昇が予測される。このデータから高輝度電子源実現のためには、レー

ザーによる加熱の効果も考慮し、カソードの冷却構造を検討し、熱設計を行う必要がある

ことが明らかとなった。

4.開発スタッフ 責任者 : 栗木雅夫(広島大学先端物質科学研究科)

担当者 : 栗木雅夫(広島大学先端物質科学研究科)

飯島北斗(広島大学先端物質科学研究科)

5. 参考文献(2009 年度中の発表および掲載論文)

[1] Chie Shonaka, Masao Kuriki, Daisuke Kubo, Hiromi Okamoto, Hiroyuki Higaki,

Kiyokazu Ito, Masahiro Yamamoto, Taro Konomi, Shoji Okumi, Tsuyoshi Nakanishi, “A

study of Lifetime of GaAs Photocathode for High Brightness Electron Source”, Proc.

Of 23rd Particle Accelerator Conference(PAC09), Vancouver, Canada, MO6RFP069, 2009

[2] R. Hajima, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, M. Yamamoto, T. Muto, Y. Honda,

T. Miyajima, M. Kuriki, “DESIGN AND FABRICATION OF A 500-KV PHOTOCATHODE DC GUNFOR

ERL LIGHT SOURCES”, Proc. Of 23rd Particle Accelerator Conference(PAC09), Vancouver,

Canada, MO6RFP074, 2009

[3] 桑原真人、中西彊、奥見正治、金秀光、前多悠也、宇治原徹、竹田美和、山本将博、

本田洋介、河田洋、飯島北斗、西森信行、永井良治、羽島良一、栗木雅夫, “ERL 放射光源

用電子銃のためのフォトカソード開発”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、

8/5-7, WOPSB03, 2009

[4] 正中智慧、栗木雅夫、久保大輔、金田健一、岡本宏己、桧垣浩之、伊藤清 一、山本将

博、許斐太郎、奥見正治、中西彊, “GaAs 光カソード加熱によるダーク寿命の低下につい

ての研究”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA15, 2009

[5]柏木茂、加藤龍好、杉本直哉、古橋建一郎、寺沢賢和、森尾豊、磯山悟朗,杉山陽栄、

浦川順治,早野仁司,久保大輔、正中智慧、栗木雅夫、神戸浩多, “Lバンドフォトカソー

ド RF 電子銃の開発 II”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA12,

2009

[6]山本将博、金秀光、前多悠也、宇治原徹、竹田美和、栗木雅夫、正中智慧、久保大輔、

栗栖普揮、本田洋介、宮島司、内山隆司、武藤俊哉、松葉俊哉、坂中章吾、佐藤康太郎、

斎藤義男、本田融、小林幸則、河田洋、西森信行、永井良二、飯島北斗、羽島良一、桑原

真人、奥見正治、中西彊, “KEK における ERL 放射光源用 500kV 電子銃の開発計画”, 第

16 17

Page 21: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

19

3. D C 電子銃開発 RF 電子銃は常伝導高周波空洞内で電子ビームを発生させるため、大電流の電子ビームを

パルス的に発生させ、同時に高い電場で加速することができる優れたデバイスである。し

かし常伝導 RF 空洞を高電界で連続運転することは困難であり、準連続的ビーム発生に適し

ているとは言い難い。一方、DC 電子銃は加速電界は限られているが、準連続的にビームを

発生できることから、稼働率の上昇により、実質的な平均輝度の上昇が見込める。

本課題では KEK、原子力機構、名古屋大学、日立ハイテク、東京大学、広島大学などが

共同で、500kV というかつてない高電圧で DC 的に 100mA という大電流ビームを取り出す電

子銃を最終目標として開発を進めている。500kV 電子銃のための絶縁セラミック、放電およ

びそれによる損傷防止のためのガードリング電極、カソードサポートロッド、GaAs 陰極準

備室や電子銃本体部などの極高真空容器などを開発し、すでに多くのコンポーネントを製

作した。今年度はこれらを組み上げ、真空試験、高電圧印加試験をおこなった。電子銃本

体の結果の詳細については JAEA グループから報告される。

広島大学ではカソードテスト装置を用いて、 GaAs カソードの活性化および寿命試験を

継続している。現在のところ、ベース真空度は 5E-9Pa 程度、HeNe レーザー(波長 633nm)を

用いて、活性化直後の量子効率 10%程度を得ている。また 10-40W のレーザーパワーでビー

ムを引きだし、200 時間以上のカソード寿命を得ている。 また独自に極高真空の実証と、

それをもちいた長寿命カソード実証試験のために、化学研磨処理チタンチャンバー、チタ

ン容器クライオポンプなどを製作した。このシステムにおいて、クライオポンプのみによ

る排気によりすでに 1.0E-9Pa という高い真空度を得た。このシステムに NEG ポンプを加え

て、長寿命カソード実現の基盤技術としての極真空の実証をめざす。カソード活性化チャ

ンバーおよびロードロックチャンバーの製作はほぼ終了しており、本体の真空が確立した

段階で順次組込みを行う予定である。

GaAs のバルク結晶の仕事関数は 4.9eV であり、そのままでは光電効果を生じさせるのに

真空紫外の光が必要であるが、表面修飾により NEA 表面(Negative Electron Affinity, 真

空準位が伝導帯の最低準位よりも小さい状態)をつくることで、可視光での電子発生が可能

となる。この NEA 表面の特性により、価電子帯から伝導帯への遷移を選択的に行い、スピ

ン偏極やエネルギー広がりの極めて小さい電子ビームの生成が可能となる。このように高

品質の電子ビーム発生に NEA は重要な役割を果たしているが、一方でその脆弱性が寿命問

題として課題となっている。本研究では Zn-dope バルク GaAs 結晶を使用し、乾燥窒素中で

図3. 暗寿命を温度の関数としてあらわしたもの。

高温側で急激に寿命の低減が見られる。

20

の化学洗浄による表面酸化膜の除去と As リッチ面の生成、極高真空中での加熱洗浄による

GaAs 清浄面の作成、Cs と酸素の添加による NEA 活性化をおこない、様々な条件で寿命測定

をおこなった。測定に使用したレーザーは He-Ne(波長 633nm)である。活性化直後、10%程

度の量子効率が得られるが、時間あるいは引き出し電流が増えるに従い劣化していく。図 3

は暗寿命(引き出しビーム電流が極めて小さい状態での量子効率劣化の時定数)の温度依

存性を示したデータで、室温では 200 時間程度の寿命が得られているが、80℃程度まで加

熱すると、寿命は数時間まで減少することがわかった。実線は温度による脱離現象と真空

度できまる劣化の二成分を仮定してデータを再現したもので、室温付近では真空度による

劣化の成分が、高温部では熱脱離の効果が支配的であることを示している。ここから得ら

れる NEA 表面の活性化エネルギーはおよそ 1.1eV 程度である。このデータから、運転時間

として十分な数百時間以上の寿命を得るには、従来言われてきた真空度の向上のみならず、

温度を室温程度に保つことが重要であることがわかった。光陰極で 100mA 程度の平均電流

を得るには 10W 以上のレーザーを数 mm 径の小さいスポットに照射する必要があり、少なく

とも数十℃の温度上昇が予測される。このデータから高輝度電子源実現のためには、レー

ザーによる加熱の効果も考慮し、カソードの冷却構造を検討し、熱設計を行う必要がある

ことが明らかとなった。

4.開発スタッフ 責任者 : 栗木雅夫(広島大学先端物質科学研究科)

担当者 : 栗木雅夫(広島大学先端物質科学研究科)

飯島北斗(広島大学先端物質科学研究科)

5. 参考文献(2009 年度中の発表および掲載論文)

[1] Chie Shonaka, Masao Kuriki, Daisuke Kubo, Hiromi Okamoto, Hiroyuki Higaki,

Kiyokazu Ito, Masahiro Yamamoto, Taro Konomi, Shoji Okumi, Tsuyoshi Nakanishi, “A

study of Lifetime of GaAs Photocathode for High Brightness Electron Source”, Proc.

Of 23rd Particle Accelerator Conference(PAC09), Vancouver, Canada, MO6RFP069, 2009

[2] R. Hajima, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, M. Yamamoto, T. Muto, Y. Honda,

T. Miyajima, M. Kuriki, “DESIGN AND FABRICATION OF A 500-KV PHOTOCATHODE DC GUNFOR

ERL LIGHT SOURCES”, Proc. Of 23rd Particle Accelerator Conference(PAC09), Vancouver,

Canada, MO6RFP074, 2009

[3] 桑原真人、中西彊、奥見正治、金秀光、前多悠也、宇治原徹、竹田美和、山本将博、

本田洋介、河田洋、飯島北斗、西森信行、永井良治、羽島良一、栗木雅夫, “ERL 放射光源

用電子銃のためのフォトカソード開発”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、

8/5-7, WOPSB03, 2009

[4] 正中智慧、栗木雅夫、久保大輔、金田健一、岡本宏己、桧垣浩之、伊藤清 一、山本将

博、許斐太郎、奥見正治、中西彊, “GaAs 光カソード加熱によるダーク寿命の低下につい

ての研究”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA15, 2009

[5]柏木茂、加藤龍好、杉本直哉、古橋建一郎、寺沢賢和、森尾豊、磯山悟朗,杉山陽栄、

浦川順治,早野仁司,久保大輔、正中智慧、栗木雅夫、神戸浩多, “Lバンドフォトカソー

ド RF 電子銃の開発 II”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA12,

2009

[6]山本将博、金秀光、前多悠也、宇治原徹、竹田美和、栗木雅夫、正中智慧、久保大輔、

栗栖普揮、本田洋介、宮島司、内山隆司、武藤俊哉、松葉俊哉、坂中章吾、佐藤康太郎、

斎藤義男、本田融、小林幸則、河田洋、西森信行、永井良二、飯島北斗、羽島良一、桑原

真人、奥見正治、中西彊, “KEK における ERL 放射光源用 500kV 電子銃の開発計画”, 第

16 17

Page 22: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

21

六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA08, 2009

[7]S. Kashiwagi, R. Kato, Y. Morio, K. Furuhashi, Y. Terasawa, N. Sugimoto, G.

Isoyama,H. Hayano, H. Sugiyama, J. Urakawa, K. Watanabe,M. Kuriki, C. Shonaka and

D. Kubo, ” Development of a Photocathode RF Gun for an L-band Electron Linac”,

Proceedings of FEL2009 (Liverpool, UK), TUPC20, 2009

[8] N. Nishimori , R. Nagai, H. Iijima , R. Hajima, M. Yamamoto, T. Muto, Y. Honda,

T. Miyajima, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, “DEVELOPMENT OF A

500-KV PHOTO-CATHODE DC GUN FOR THE ERL LIGHT SOURCES IN JAPAN”, Proceedings of

FEL2009 (Liverpool, UK), TUPC17, 2009

[9]M. Kuriki, C. Shonaka, D. Kubo, H. Okamoto, H. Higaki, K. Ito,M. Yamamoto, T. Konomi,

S. Okumi, M. Kuwahara, T. Nakanishi, “Darklifetime degradation of GaAs cathode”,

Proceedings of Workshop on Ultrafast electron and photon beams (Xian, China), to

be published in Nucl. Instr. and Meth. A, 2009

22

C-1: 直流高電圧要素開発

Development of Advanced High-Voltage DC System

概 要

将来の小型高フラックス X 線源用要素技術開発のために、本プロジェクトに

よって直流高圧電子源の研究開発を進めている。日立ハイテクノロジーズのグ

ループは、平成 21年度より本プロジェクトに本格的に参画した。本プロジェク

トで開発する 500 kV DC 電子銃の高電圧導入部を小型化・高信頼化することを

目的に、高電圧試験装置を製作した。特に、本番の電子銃と同レベルの真空度

での評価を可能とするため、チタン製の真空容器を採用し、質量分析によって

真空の質と耐電圧の関係を解析可能な装置構成とした。

1.はじめに 電子源は高輝度光子源(コンプトン光源)の性能を決める重要な構成機器である。光子

源の輝度、フラックスを大きくするためには、電子ビームのエミッタンスを小さく、かつ、

平均電流を大きくしなければならない。日本原子力研究開発機構のグループは、このよう

な電子ビームの生成を目指して直流高圧電子源(DC 電子銃)の開発を行っている。われわ

れは、DC 電子銃の小型化・高信頼化に取り組んでいる。小型化・高信頼化のポイントは以

下の2点である。

(1) 導電性を制御した高耐電圧セラミックス管を採用し、電子付着起因の電位

分布変動よる絶縁破壊を回避する。

(2) 電子銃と高圧電源を高耐電圧ケーブルで接続することで、装置配置の自由

度を確保する。

日本原子力研究開発機構のグループが開発中の500kV DC 電子銃は、ガードリング

を採用しセラミックス管表面への電子付着を防止することで、従来の250kVから500

kVへと耐電圧を大幅に向上した。ただし、ガードリングは組み込みの煩雑性と表面積増大

に伴う真空排気性能の低下が懸念されている。近年開発が進んでいる導電性を制御した高

耐電圧セラミックスは、セラミックス表面の体積抵抗率を 107~12Ω・cm に制御することで、

電子付着による帯電の防止と 4.5kV/mm の沿面耐電圧を実現できている。ガードリング無し

でも耐電圧の安定化が期待でき、セラミックス管の形状を最適化して電界を均一化するこ

とで寸法を最小化できる。

これまでの DC 電子銃と Cockcroft-Walton 型の高電圧源はセラミックス管を介して直付

けした一体型構造が一般的であった。電子顕微鏡でも加速電圧400kV以上では一体型構

造が一般的であった。しかし、近年の1MV 超高圧電子顕微鏡では顕微鏡本体と高電圧源を

高耐電圧ケーブルで接続する方式が実現できている。このように優れたポテンシャルを有

する関連技術が存在するが、次世代光子源の DC 電子銃に採用するまでには多数の技術的な

課題を解決しなければならない。最先端のセラミックスメーカは単純形状の試験片におい

て体積抵抗率の高精度制御を実現している。しかし、高耐電圧セラミックス管への組立て

には、機械加工やロウ付けなどの接合技術、洗浄や加熱脱ガス処理技術の確立が必須であ

る。高耐電圧ケーブルでは特に端末部の構造と材質によって耐電圧が大きく変動する。従

って、実体系の高耐電圧セラミックス管の設計に先立って、部品レベル、処理レベルでの

耐電圧評価により詳細な基礎データを蓄積する必要がある。

今年度は、部品レベル、処理レベルでの耐電圧評価が可能な高電圧試験装置の設計と製

作を行った。これらの成果を以下に述べる。

18 19

Page 23: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

21

六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA08, 2009

[7]S. Kashiwagi, R. Kato, Y. Morio, K. Furuhashi, Y. Terasawa, N. Sugimoto, G.

Isoyama,H. Hayano, H. Sugiyama, J. Urakawa, K. Watanabe,M. Kuriki, C. Shonaka and

D. Kubo, ” Development of a Photocathode RF Gun for an L-band Electron Linac”,

Proceedings of FEL2009 (Liverpool, UK), TUPC20, 2009

[8] N. Nishimori , R. Nagai, H. Iijima , R. Hajima, M. Yamamoto, T. Muto, Y. Honda,

T. Miyajima, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, “DEVELOPMENT OF A

500-KV PHOTO-CATHODE DC GUN FOR THE ERL LIGHT SOURCES IN JAPAN”, Proceedings of

FEL2009 (Liverpool, UK), TUPC17, 2009

[9]M. Kuriki, C. Shonaka, D. Kubo, H. Okamoto, H. Higaki, K. Ito,M. Yamamoto, T. Konomi,

S. Okumi, M. Kuwahara, T. Nakanishi, “Darklifetime degradation of GaAs cathode”,

Proceedings of Workshop on Ultrafast electron and photon beams (Xian, China), to

be published in Nucl. Instr. and Meth. A, 2009

22

C-1: 直流高電圧要素開発

Development of Advanced High-Voltage DC System

概 要

将来の小型高フラックス X 線源用要素技術開発のために、本プロジェクトに

よって直流高圧電子源の研究開発を進めている。日立ハイテクノロジーズのグ

ループは、平成 21年度より本プロジェクトに本格的に参画した。本プロジェク

トで開発する 500 kV DC 電子銃の高電圧導入部を小型化・高信頼化することを

目的に、高電圧試験装置を製作した。特に、本番の電子銃と同レベルの真空度

での評価を可能とするため、チタン製の真空容器を採用し、質量分析によって

真空の質と耐電圧の関係を解析可能な装置構成とした。

1.はじめに 電子源は高輝度光子源(コンプトン光源)の性能を決める重要な構成機器である。光子

源の輝度、フラックスを大きくするためには、電子ビームのエミッタンスを小さく、かつ、

平均電流を大きくしなければならない。日本原子力研究開発機構のグループは、このよう

な電子ビームの生成を目指して直流高圧電子源(DC 電子銃)の開発を行っている。われわ

れは、DC 電子銃の小型化・高信頼化に取り組んでいる。小型化・高信頼化のポイントは以

下の2点である。

(1) 導電性を制御した高耐電圧セラミックス管を採用し、電子付着起因の電位

分布変動よる絶縁破壊を回避する。

(2) 電子銃と高圧電源を高耐電圧ケーブルで接続することで、装置配置の自由

度を確保する。

日本原子力研究開発機構のグループが開発中の500kV DC 電子銃は、ガードリング

を採用しセラミックス管表面への電子付着を防止することで、従来の250kVから500

kVへと耐電圧を大幅に向上した。ただし、ガードリングは組み込みの煩雑性と表面積増大

に伴う真空排気性能の低下が懸念されている。近年開発が進んでいる導電性を制御した高

耐電圧セラミックスは、セラミックス表面の体積抵抗率を 107~12Ω・cm に制御することで、

電子付着による帯電の防止と 4.5kV/mm の沿面耐電圧を実現できている。ガードリング無し

でも耐電圧の安定化が期待でき、セラミックス管の形状を最適化して電界を均一化するこ

とで寸法を最小化できる。

これまでの DC 電子銃と Cockcroft-Walton 型の高電圧源はセラミックス管を介して直付

けした一体型構造が一般的であった。電子顕微鏡でも加速電圧400kV以上では一体型構

造が一般的であった。しかし、近年の1MV 超高圧電子顕微鏡では顕微鏡本体と高電圧源を

高耐電圧ケーブルで接続する方式が実現できている。このように優れたポテンシャルを有

する関連技術が存在するが、次世代光子源の DC 電子銃に採用するまでには多数の技術的な

課題を解決しなければならない。最先端のセラミックスメーカは単純形状の試験片におい

て体積抵抗率の高精度制御を実現している。しかし、高耐電圧セラミックス管への組立て

には、機械加工やロウ付けなどの接合技術、洗浄や加熱脱ガス処理技術の確立が必須であ

る。高耐電圧ケーブルでは特に端末部の構造と材質によって耐電圧が大きく変動する。従

って、実体系の高耐電圧セラミックス管の設計に先立って、部品レベル、処理レベルでの

耐電圧評価により詳細な基礎データを蓄積する必要がある。

今年度は、部品レベル、処理レベルでの耐電圧評価が可能な高電圧試験装置の設計と製

作を行った。これらの成果を以下に述べる。

18 19

Page 24: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

23

2.高電圧試験装置 高電圧試験装置の概念図を図1に示す。Ti チャンバー、セラミックス管、真空計などの

真空部品は、日本原子力研究開発機構のグループが開発済みの250kV DC 電子銃に準拠

して設計した。DC 電子銃に近い真空条件で耐電圧試験することで、真空度の違いによる不

確定さを排除する。

直線導入機

TMP

DRP

全圧計

分圧計

セラミックス管高電圧電源

300kV

SF6

テストピース

フロリナート

IP

TiチャンバA

A

直線導入機

TMP

DRP

全圧計

分圧計

セラミックス管高電圧電源

300kV

SF6

テストピース

フロリナート

IP

TiチャンバA

A

図1 高電圧試験装置の概念図

Tiチャンバ

TMP

IP 分圧計(質量分析計)

Tiチャンバ

TMP

IP 分圧計(質量分析計)

図2 高電圧試験装置の外観

24

図2は実際の装置外観である。現在はセラミックス管を未装着状態で真空排気を進め

ており、図3の排気特性のように真空漏れがないことを確認した。図4の分圧データに

示すように常温での排気では質量数18の水と質量数2の水素が残留する予想通りの

状態であることが確認できた。今年度中に加熱脱ガス後の到達真空度 5×10-9Pa を達成

できる見通しである。

3.まとめ、次年度の予定 2009年度は、DC 電子銃の部品レベル、処理レベルでの耐電圧評価が可能な高電圧試

験装置を製作した。製作した高電圧試験装置は常温での真空排気試験まで実施した。次年

度は、セラミック管を装着し、300kVの電圧印加を確認した後、テストピースを装着し

て耐電圧試験を行う。これにより DC 電子銃の小型化・高信頼化設計・製造に不可欠な耐電

圧基礎データを取得する。さらに、耐電圧基礎データに基づいて、小型・高信頼500kV

1E-06

1E-05

1E-04

1E-03

0.1 1 10

排気時間 t (hr)

圧力

P (

Pa)

図3 常温での到達真空度

チタンチャンバ 初回排気時マススペクトル(8hr後)

1E-09

1E-08

1E-07

1E-06

1E-05

1E-04

0 50 100 150 200

質量数

圧力

P (

Pa

図4 分圧測定結果

20 21

Page 25: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

23

2.高電圧試験装置 高電圧試験装置の概念図を図1に示す。Ti チャンバー、セラミックス管、真空計などの

真空部品は、日本原子力研究開発機構のグループが開発済みの250kV DC 電子銃に準拠

して設計した。DC 電子銃に近い真空条件で耐電圧試験することで、真空度の違いによる不

確定さを排除する。

直線導入機

TMP

DRP

全圧計

分圧計

セラミックス管高電圧電源

300kV

SF6

テストピース

フロリナート

IP

TiチャンバA

A

直線導入機

TMP

DRP

全圧計

分圧計

セラミックス管高電圧電源

300kV

SF6

テストピース

フロリナート

IP

TiチャンバA

A

図1 高電圧試験装置の概念図

Tiチャンバ

TMP

IP 分圧計(質量分析計)

Tiチャンバ

TMP

IP 分圧計(質量分析計)

図2 高電圧試験装置の外観

24

図2は実際の装置外観である。現在はセラミックス管を未装着状態で真空排気を進め

ており、図3の排気特性のように真空漏れがないことを確認した。図4の分圧データに

示すように常温での排気では質量数18の水と質量数2の水素が残留する予想通りの

状態であることが確認できた。今年度中に加熱脱ガス後の到達真空度 5×10-9Pa を達成

できる見通しである。

3.まとめ、次年度の予定 2009年度は、DC 電子銃の部品レベル、処理レベルでの耐電圧評価が可能な高電圧試

験装置を製作した。製作した高電圧試験装置は常温での真空排気試験まで実施した。次年

度は、セラミック管を装着し、300kVの電圧印加を確認した後、テストピースを装着し

て耐電圧試験を行う。これにより DC 電子銃の小型化・高信頼化設計・製造に不可欠な耐電

圧基礎データを取得する。さらに、耐電圧基礎データに基づいて、小型・高信頼500kV

1E-06

1E-05

1E-04

1E-03

0.1 1 10

排気時間 t (hr)

圧力

P (

Pa)

図3 常温での到達真空度

チタンチャンバ 初回排気時マススペクトル(8hr後)

1E-09

1E-08

1E-07

1E-06

1E-05

1E-04

0 50 100 150 200

質量数

圧力

P (

Pa

図4 分圧測定結果

1E-06

1E-05

1E-04

1E-03

0.1 1 10

排気時間 t (hr)

圧力

P (

Pa)

図3 常温での到達真空度

チタンチャンバ 初回排気時マススペクトル(8hr後)

1E-09

1E-08

1E-07

1E-06

1E-05

1E-04

0 50 100 150 200

質量数

圧力

P (

Pa

図4 分圧測定結果

20 21

Page 26: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

25

高耐電圧セラミック管の概念設計を完了する予定である。

開発スタッフ 責任者 : 小瀬 洋一(日立ハイテクノロジーズ)

担当者 : 江見 恵子、橘内 浩之、石井 良一、佐藤 修、大橋 利幸

(日立ハイテクノロジーズ)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文) [1]. “耐電圧試験装置の開発進捗” 高輝度電子源検討会(2009 年 12 月, 高エネルギー加

速器研究機構), 小瀬洋一

26

C-2. 直流高圧電子源開発

Development of High-Voltage DC Electron Guns

概 要

将来の高輝度小型光子ビーム源の要素技術として、直流高圧電子源の研究開

発を進めている。直流高圧電子源の 500 kV 電子源の主要な開発要素である絶縁

セラミック管について、分割型セラミック管とガードリングを組み合わせた独

自の設計を採用し装置の製作を行った。高電圧試験の結果、光陰極直流電子源

として世界最高となる 500 kV の安定な電圧印加に成功した。 1.はじめに

超伝導加速による光子源において発生する光子(X 線)の輝度、強度を増大するには、

電子ビームを連続的に加速する運転モード(CW 運転)が望ましい。CW 運転を実現するには

超伝導加速器、電子源ともにパルス運転モードとは異なる性能の装置が必要である。われ

われは、CW 運転を実現する低エミッタンス大電流電子源として、半導体光陰極を備えた直

流高圧電子源(フォトカソード DC 電子銃)を採用し、開発を進めている。このタイプの電

子源を採用した理由は次の通りである。(1) フォトカソードはレーザーを半導体に照射し

て光電子を発生するので、モードロックレーザーからピコ秒の電子パルス列を直接生成し

超電導加速器へ入射できる。同時に低エミッタンス電子ビームの生成にも適している。(2)

RF 電子源(常伝導)では RF 空洞の発熱のために CW 運転が困難であるが、直流高圧電子源

は容易に CW運転を行うことができ、また直流電源の容量次第で大電流にも対応可能である。

図1に開発中の直流高圧電子源の構成を示す。空間電荷効果による電子ビームエミッタ

ンスの増大を抑止するためには、電子を高電界、高電圧で引き出す、すなわち、カソード

とアノードの間隔を短くする必要がある。このような理由により、絶縁セラミック管を貫

通するサポートロッドを使ってカソードを真空チェンバーの中央に設置している。サポー

トロッドはフォトカソードを備えた直流高圧電子源に特有の構造であり、一般的な直流加

速管(静電型イオン加速器など)には存在しない。

低エミッタンス大電流ビームの発生を目指した直流高圧電子源は、自由電子レーザー

(FEL)やエネルギー回収型リニアック(ERL)を目的として、これまで研究が行われてきたが、

350 kV の運転実績(米国ジェファーソン研)が最大電圧であった。高電圧化を阻む最大の

障害は、サポートロッドからの電界放出電子がセラミック管を破損する現象である。図2

(左)に示すように従来型のセラミック管ではサポートロッドから放出された電子がセラ

ミック管の内表面に直接到達する。この時、局所的に電子が集中すると放電によってセラ

ミックが割れる(クラック)または貫通孔が開く(パンチスルー)ことによりセラミック

管が使用不能になってしまう。

今年度は、別途製作したセラミック管、サポートロッド、ガードリングを装着して高電

圧印加試験を行い、直流高圧電子源の世界最高電圧 500 kV を達成した。さらに、陰極表面

洗浄装置、極高真空用排気装置、ビームダンプの製作を行い、電子ビーム引き出し試験に

着手した。これらの成果を以下に述べる。

2.直流電子源のための絶縁セラミック管の開発と高電圧印加試験

われわれは、電界放出電子によるセラミック管の破損が生じないよう、ガードリング付

きの分割セラミック管を採用し、最適設計を行った。このような構造を用いることにより、

サポートロッドからの電界放出電子がセラミック管に到達することがなくなる(図2(右)、

図3)。設計では、500 kV の電圧を印加した時に、サポートロッドとガードリングの表面

22 23

Page 27: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

25

高耐電圧セラミック管の概念設計を完了する予定である。

開発スタッフ 責任者 : 小瀬 洋一(日立ハイテクノロジーズ)

担当者 : 江見 恵子、橘内 浩之、石井 良一、佐藤 修、大橋 利幸

(日立ハイテクノロジーズ)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文) [1]. “耐電圧試験装置の開発進捗” 高輝度電子源検討会(2009 年 12 月, 高エネルギー加

速器研究機構), 小瀬洋一

26

C-2. 直流高圧電子源開発

Development of High-Voltage DC Electron Guns

概 要

将来の高輝度小型光子ビーム源の要素技術として、直流高圧電子源の研究開

発を進めている。直流高圧電子源の 500 kV 電子源の主要な開発要素である絶縁

セラミック管について、分割型セラミック管とガードリングを組み合わせた独

自の設計を採用し装置の製作を行った。高電圧試験の結果、光陰極直流電子源

として世界最高となる 500 kV の安定な電圧印加に成功した。 1.はじめに

超伝導加速による光子源において発生する光子(X 線)の輝度、強度を増大するには、

電子ビームを連続的に加速する運転モード(CW 運転)が望ましい。CW 運転を実現するには

超伝導加速器、電子源ともにパルス運転モードとは異なる性能の装置が必要である。われ

われは、CW 運転を実現する低エミッタンス大電流電子源として、半導体光陰極を備えた直

流高圧電子源(フォトカソード DC 電子銃)を採用し、開発を進めている。このタイプの電

子源を採用した理由は次の通りである。(1) フォトカソードはレーザーを半導体に照射し

て光電子を発生するので、モードロックレーザーからピコ秒の電子パルス列を直接生成し

超電導加速器へ入射できる。同時に低エミッタンス電子ビームの生成にも適している。(2)

RF 電子源(常伝導)では RF 空洞の発熱のために CW 運転が困難であるが、直流高圧電子源

は容易に CW運転を行うことができ、また直流電源の容量次第で大電流にも対応可能である。

図1に開発中の直流高圧電子源の構成を示す。空間電荷効果による電子ビームエミッタ

ンスの増大を抑止するためには、電子を高電界、高電圧で引き出す、すなわち、カソード

とアノードの間隔を短くする必要がある。このような理由により、絶縁セラミック管を貫

通するサポートロッドを使ってカソードを真空チェンバーの中央に設置している。サポー

トロッドはフォトカソードを備えた直流高圧電子源に特有の構造であり、一般的な直流加

速管(静電型イオン加速器など)には存在しない。

低エミッタンス大電流ビームの発生を目指した直流高圧電子源は、自由電子レーザー

(FEL)やエネルギー回収型リニアック(ERL)を目的として、これまで研究が行われてきたが、

350 kV の運転実績(米国ジェファーソン研)が最大電圧であった。高電圧化を阻む最大の

障害は、サポートロッドからの電界放出電子がセラミック管を破損する現象である。図2

(左)に示すように従来型のセラミック管ではサポートロッドから放出された電子がセラ

ミック管の内表面に直接到達する。この時、局所的に電子が集中すると放電によってセラ

ミックが割れる(クラック)または貫通孔が開く(パンチスルー)ことによりセラミック

管が使用不能になってしまう。

今年度は、別途製作したセラミック管、サポートロッド、ガードリングを装着して高電

圧印加試験を行い、直流高圧電子源の世界最高電圧 500 kV を達成した。さらに、陰極表面

洗浄装置、極高真空用排気装置、ビームダンプの製作を行い、電子ビーム引き出し試験に

着手した。これらの成果を以下に述べる。

2.直流電子源のための絶縁セラミック管の開発と高電圧印加試験

われわれは、電界放出電子によるセラミック管の破損が生じないよう、ガードリング付

きの分割セラミック管を採用し、最適設計を行った。このような構造を用いることにより、

サポートロッドからの電界放出電子がセラミック管に到達することがなくなる(図2(右)、

図3)。設計では、500 kV の電圧を印加した時に、サポートロッドとガードリングの表面

C-2. 直流高圧電子源開発

Development of High-Voltage DC Electron Guns

概 要

22 23

Page 28: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

27

電界が 10 MV/m 以下になるように、セラミックの口径、長さ、分割数、ガードリングの形

状を決定した。なお、過去に同様の分割セラミック管が JAEA の FEL 用熱陰極電子源(250 kV)、

名古屋大学の偏極電子源(200 kV)に採用され、良好な実績があったことも、本方式を採用

した根拠のひとつであった。製作した分割型セラミック管を図4に示す。

セラミック管の分割数、ガードリングの形状の最適化設計を行った結果、分割数を 10

段としガードリングの形状を決定した。セラミック管の各段の長さは 65 mm であり直径は

400 mm である。サポートロッドの直径は 101.6 mm でありガードリングの内直径はサポート

ロッドのほぼ 2.7 倍とした。静電場シミュレーションコード、POISSON による電場計算の結

果、ガードリングを順方向とした場合のガードリング表面とサポートロッド表面でのそれ

ぞれの最大電場は 6.83 MV/m と 8.34 MV/m であり、逆方向とした場合は 13.9 MV/m と

8.67 MV/m である。各段の分割抵抗は 500 MΩ とした。ガードリングの方向については順方

向の場合は各部分での電場を小さくでき、逆方向の場合の電場はやや大きくなるが X 線等

により放出される 2 次電子をガードリングで抑えることができる。セラミック管およびガ

ードリングは両方向の設置が可能な形状で製作されている。ガードリング、サポートロッ

ド、真空チャンバの材質はガス放出速度、2次電子放出係数、スパッタリン係数に配慮しす

べてチタン製とした。

高電圧電源、セラミック管は+0.2 MPa の SF6 ガス中で使用されることを前提に製作され

ており、高電圧印加試験はその SF6 ガス中で行った。排気速度 1 m3/s の磁気軸受け型ター

ボ分子ポンプによりセラミック管内部と真空チャンバ内の排気を行い、約 8 時間、最高温

度190℃のベーキングを行い3×10-8 Pa以下の真空度に到達した後に高電圧の印加を開始し

た。250 kV 程度から真空中での小さな放電が現れその後約 110 時間程度コンディショニン

グで 550 kV まで到達した(図5)。550 kV までのコンディショニングを完了した後、光子

源のユーザー運転を想定した 8時間連続の電圧印加試験を行った。8時間にわたり一度も放

電を生じることなく、連続運転試験をクリアーした(図6)。また、図7に示すビームダ

ンプ等の製作を行った。

28

図1:開発中の直流高圧電子源の構成。絶縁用のセラミック管の上端に負電位

(-500 kV)を印加する。カソード電極の中央にフォトカソードが装着され、正面

から照射されるレーザーによって光電子を発生し、アノード電極側に引き出され

る。

24 25

Page 29: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

27

電界が 10 MV/m 以下になるように、セラミックの口径、長さ、分割数、ガードリングの形

状を決定した。なお、過去に同様の分割セラミック管が JAEA の FEL 用熱陰極電子源(250 kV)、

名古屋大学の偏極電子源(200 kV)に採用され、良好な実績があったことも、本方式を採用

した根拠のひとつであった。製作した分割型セラミック管を図4に示す。

セラミック管の分割数、ガードリングの形状の最適化設計を行った結果、分割数を 10

段としガードリングの形状を決定した。セラミック管の各段の長さは 65 mm であり直径は

400 mm である。サポートロッドの直径は 101.6 mm でありガードリングの内直径はサポート

ロッドのほぼ 2.7 倍とした。静電場シミュレーションコード、POISSON による電場計算の結

果、ガードリングを順方向とした場合のガードリング表面とサポートロッド表面でのそれ

ぞれの最大電場は 6.83 MV/m と 8.34 MV/m であり、逆方向とした場合は 13.9 MV/m と

8.67 MV/m である。各段の分割抵抗は 500 MΩ とした。ガードリングの方向については順方

向の場合は各部分での電場を小さくでき、逆方向の場合の電場はやや大きくなるが X 線等

により放出される 2 次電子をガードリングで抑えることができる。セラミック管およびガ

ードリングは両方向の設置が可能な形状で製作されている。ガードリング、サポートロッ

ド、真空チャンバの材質はガス放出速度、2次電子放出係数、スパッタリン係数に配慮しす

べてチタン製とした。

高電圧電源、セラミック管は+0.2 MPa の SF6 ガス中で使用されることを前提に製作され

ており、高電圧印加試験はその SF6 ガス中で行った。排気速度 1 m3/s の磁気軸受け型ター

ボ分子ポンプによりセラミック管内部と真空チャンバ内の排気を行い、約 8 時間、最高温

度190℃のベーキングを行い3×10-8 Pa以下の真空度に到達した後に高電圧の印加を開始し

た。250 kV 程度から真空中での小さな放電が現れその後約 110 時間程度コンディショニン

グで 550 kV まで到達した(図5)。550 kV までのコンディショニングを完了した後、光子

源のユーザー運転を想定した 8時間連続の電圧印加試験を行った。8時間にわたり一度も放

電を生じることなく、連続運転試験をクリアーした(図6)。また、図7に示すビームダ

ンプ等の製作を行った。

28

図1:開発中の直流高圧電子源の構成。絶縁用のセラミック管の上端に負電位

(-500 kV)を印加する。カソード電極の中央にフォトカソードが装着され、正面

から照射されるレーザーによって光電子を発生し、アノード電極側に引き出され

る。

24 25

Page 30: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

29

図2:従来方式のセラミック管と本研究で採用したセラミック管。従来方式では電界放

出電子がセラミック内表面に到達しセラミックの破損を生じた。本研究では分割セラミ

ック管とガードリングを組み合わせることにより、電界放出電子によるセラミックの破

損を防ぐ構造とした。

図3: ガードリングにより、電界放出電子がセラミック管に衝突することを防ぐ。

図4: 絶縁タンク内に据えつけられた分割型セラミック管の様子。

30

図5: 550 kV までの高電圧コンディショニングの履歴。累計約 110 時間で 550kV ま

での電圧印加に成功した。

図6:光子源のユーザー運転を想定し 8時間連続で電圧を印加した際の印加電圧、負荷

電流、真空度、放射線量の様子である。これらの挙動から 8時間、無放電で安定に電圧

26 27

Page 31: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

29

図2:従来方式のセラミック管と本研究で採用したセラミック管。従来方式では電界放

出電子がセラミック内表面に到達しセラミックの破損を生じた。本研究では分割セラミ

ック管とガードリングを組み合わせることにより、電界放出電子によるセラミックの破

損を防ぐ構造とした。

図3: ガードリングにより、電界放出電子がセラミック管に衝突することを防ぐ。

図4: 絶縁タンク内に据えつけられた分割型セラミック管の様子。

30

図5: 550 kV までの高電圧コンディショニングの履歴。累計約 110 時間で 550kV ま

での電圧印加に成功した。

図6:光子源のユーザー運転を想定し 8時間連続で電圧を印加した際の印加電圧、負荷

電流、真空度、放射線量の様子である。これらの挙動から 8時間、無放電で安定に電圧

26 27

Page 32: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

31

を印加出来ていることが分かる。

図7:製作したビームダンプの写真。

3.まとめ、次年度の予定

2009 年度は、昨年までに製作した直流高圧電子源(DC 電子銃)の絶縁セラミック管、ガ

ードリング、サポートロッド、高電圧電源を組み合わせて、絶縁セラミック管の高電圧試

験を行った。高電圧コンディショニングでは 550 kV の電圧まで印加した。また、500 kV で

8 時間の無放電記録を得た。これは光陰極直流電子源として世界最高の電圧であると同時に、

フォトカソードと組み合わせて 0.1 mm-mrad のエミッタンスを持つ高輝度大電流電子ビー

ムを生成可能な性能である。来年度は、ビーム引き出し試験を進める予定である。

開発スタッフ 責任者 : 羽島 良一(日本原子力研究開発機構)

担当者 : 永井 良治、西森 信行、飯島 北斗(平成 21 年 6 月 30 日まで)(日

本原子力研究開発機構)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文)

[1] “JAEA/KEK Gun Status”, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, R. Hajima, M.

Yamamoto, T. Miyajima, T. Muto, Y. Honda, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi,

T. Nakanishi, The 45th Advanced ICFA Beam Dynamics Workshop on Energy

Recovery Linacs (ERL09), Ithaca, USA, June 2009.

[2] “ERL 放射光源用 500 kV DC 電子銃の光陰極準備システムと高電圧真空容器の開

発”, 西森信行, 永井良治, 羽島良一, 飯島北斗, 山本将博, 武藤俊哉, 本田洋

介, 宮島司, 栗木雅夫, 桑原真人, 奥見正冶, 中西彊, 第 6 回日本加速器学会年

会, 茨城, 2009 年 8 月

[3] “ERL 放射光源用 500 kV DC 電子銃の高電圧印加試験”, 永井良治, 西森信行,

羽島良一, 飯島北斗, 山本将博, 武藤俊哉, 本田洋介, 宮島司, 栗木雅夫, 桑原

真人, 奥見正冶, 中西彊, 第 6 回日本加速器学会年会, 茨城, 2009 年 8 月

[4] “Development of a 500-kV Photo-Cathode DC Gun for the ERL Light Sources

in Japan”, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, R. Hajima, M. Yamamoto, T.

32

Miyajima, T. Muto, Y. Honda, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi,

The 31st International Free Electron Laser Conference, Liverpool, UK, Aug.

2009.

[5] “次世代ERL放射光源のための500 kV光陰極電子銃の開発”, 西森信行,永井良

治, 飯島北斗, 山本将博, 武藤俊哉, 本田洋介, 宮島司, 栗木雅夫, 奥見正冶,

中西彊, 羽島良一, 日本原子力学会 2009 年秋の大会, 仙台, 2009 年 9 月

[6] “次世代放射光源のための 500 kV-DC 電子銃の光陰極準備・電子銃容器開発の現

状”, 西森信行, 羽島良一, 永井良治, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将

博, 桑原真人, 奥見正治, 中西彊, 栗木雅夫, 第 7 回高輝度高周波電子銃研究会、

仙台, 2009 年 11 月

[7] “ERL 放射光源のための低エミッタンス大電流電子銃の開発”, 羽島良一, 永

井良治, 西森信行, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将博, 桑原真人, 奥見

正治, 中西彊, 栗木雅夫, 日本放射光学会年会, 姫路, 2010 年 1 月

[8] “次世代光量子源用 500kVDC 電子銃の高電圧印加試験”, 永井良治, 西森信行,

羽島良一, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将博, 桑原真人, 奥見正治, 中

西彊, 栗木雅夫, 日本原子力学会 2010 年春の年会、水戸, 2010 年 3 月

[9] “次世代放射光源のための DC 電子銃光陰極準備・電子銃容器開発の現状”, 西

森信行, 永井良治, 羽島良一, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将博, 桑原

真人, 奥見正治, 中西彊, 栗木雅夫, 日本原子力学会 2010 年春の年会、水戸,

2010 年 3 月

[10] “エネルギー回収型リニアック次世代放射光源のための要素技術開発とコンパク

ト ERL の建設”, 羽島良一, 中村典雄, 坂中章悟, 小林幸則, 「加速器」Vol.6,

No.2, 149-157. 2009 年 7 月

[11] “High-voltage testing of a 500-kV dc photocathode electron gun”, R. Nagai,

R. Hajima, N. Nishimori, T. Muto, M. Yamamoto, Y. Honda, T. Miyajima, H.

Iijima, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, Review of Scientific

Instruments, 81, 033304 (2010)

28 29

Page 33: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

31

を印加出来ていることが分かる。

図7:製作したビームダンプの写真。

3.まとめ、次年度の予定

2009 年度は、昨年までに製作した直流高圧電子源(DC 電子銃)の絶縁セラミック管、ガ

ードリング、サポートロッド、高電圧電源を組み合わせて、絶縁セラミック管の高電圧試

験を行った。高電圧コンディショニングでは 550 kV の電圧まで印加した。また、500 kV で

8 時間の無放電記録を得た。これは光陰極直流電子源として世界最高の電圧であると同時に、

フォトカソードと組み合わせて 0.1 mm-mrad のエミッタンスを持つ高輝度大電流電子ビー

ムを生成可能な性能である。来年度は、ビーム引き出し試験を進める予定である。

開発スタッフ 責任者 : 羽島 良一(日本原子力研究開発機構)

担当者 : 永井 良治、西森 信行、飯島 北斗(平成 21 年 6 月 30 日まで)(日

本原子力研究開発機構)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文)

[1] “JAEA/KEK Gun Status”, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, R. Hajima, M.

Yamamoto, T. Miyajima, T. Muto, Y. Honda, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi,

T. Nakanishi, The 45th Advanced ICFA Beam Dynamics Workshop on Energy

Recovery Linacs (ERL09), Ithaca, USA, June 2009.

[2] “ERL 放射光源用 500 kV DC 電子銃の光陰極準備システムと高電圧真空容器の開

発”, 西森信行, 永井良治, 羽島良一, 飯島北斗, 山本将博, 武藤俊哉, 本田洋

介, 宮島司, 栗木雅夫, 桑原真人, 奥見正冶, 中西彊, 第 6 回日本加速器学会年

会, 茨城, 2009 年 8 月

[3] “ERL 放射光源用 500 kV DC 電子銃の高電圧印加試験”, 永井良治, 西森信行,

羽島良一, 飯島北斗, 山本将博, 武藤俊哉, 本田洋介, 宮島司, 栗木雅夫, 桑原

真人, 奥見正冶, 中西彊, 第 6 回日本加速器学会年会, 茨城, 2009 年 8 月

[4] “Development of a 500-kV Photo-Cathode DC Gun for the ERL Light Sources

in Japan”, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, R. Hajima, M. Yamamoto, T.

32

Miyajima, T. Muto, Y. Honda, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi,

The 31st International Free Electron Laser Conference, Liverpool, UK, Aug.

2009.

[5] “次世代ERL放射光源のための500 kV光陰極電子銃の開発”, 西森信行,永井良

治, 飯島北斗, 山本将博, 武藤俊哉, 本田洋介, 宮島司, 栗木雅夫, 奥見正冶,

中西彊, 羽島良一, 日本原子力学会 2009 年秋の大会, 仙台, 2009 年 9 月

[6] “次世代放射光源のための 500 kV-DC 電子銃の光陰極準備・電子銃容器開発の現

状”, 西森信行, 羽島良一, 永井良治, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将

博, 桑原真人, 奥見正治, 中西彊, 栗木雅夫, 第 7 回高輝度高周波電子銃研究会、

仙台, 2009 年 11 月

[7] “ERL 放射光源のための低エミッタンス大電流電子銃の開発”, 羽島良一, 永

井良治, 西森信行, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将博, 桑原真人, 奥見

正治, 中西彊, 栗木雅夫, 日本放射光学会年会, 姫路, 2010 年 1 月

[8] “次世代光量子源用 500kVDC 電子銃の高電圧印加試験”, 永井良治, 西森信行,

羽島良一, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将博, 桑原真人, 奥見正治, 中

西彊, 栗木雅夫, 日本原子力学会 2010 年春の年会、水戸, 2010 年 3 月

[9] “次世代放射光源のための DC 電子銃光陰極準備・電子銃容器開発の現状”, 西

森信行, 永井良治, 羽島良一, 飯島北斗, 本田洋介, 武藤俊哉, 山本将博, 桑原

真人, 奥見正治, 中西彊, 栗木雅夫, 日本原子力学会 2010 年春の年会、水戸,

2010 年 3 月

[10] “エネルギー回収型リニアック次世代放射光源のための要素技術開発とコンパク

ト ERL の建設”, 羽島良一, 中村典雄, 坂中章悟, 小林幸則, 「加速器」Vol.6,

No.2, 149-157. 2009 年 7 月

[11] “High-voltage testing of a 500-kV dc photocathode electron gun”, R. Nagai,

R. Hajima, N. Nishimori, T. Muto, M. Yamamoto, Y. Honda, T. Miyajima, H.

Iijima, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, Review of Scientific

Instruments, 81, 033304 (2010)

28 29

Page 34: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

34

2. HOM ダンパー材料の高周波特性の測定

低温試験装置は GM 冷凍機の先端にヒーターと温度計を取り付けた低温ステージを設置

し、断熱真空槽の中に設置する。測定材料を外径 7mm、内径 3mm のドーナッツ状に加工し、

専用の同軸ホルダーに収納して低温ステージに固定し、ネットワークアナライザを用いて

サンプルの透過率・反射率を測定し、誘電率・透磁率を求める。このとき低温ステージの

ヒーターを加熱・制御することによって低温ステージ上のサンプルの温度を変えながら測

定することができる。計8種類のフェライトとセラミックについて50MHz~10GHz、40K~280K

までの測定を行ったその結果の例を図1に示す。フェライト IB004 のように低温ほど透磁

率の虚数成分(高周波の吸収に関係する)が大きくなる素材が HOM ダンパーの高周波吸収

体として最適である。

HOM ダンパーとしてビームパイプを伝播してきた HOM をすべて吸収するのが理想である

が、現実の HOM ダンパーにおいては高周波吸収体の厚みや長さ、設置位置などによって反

射したり、透過したりする割合が変わる。そのため電磁波解析コードを用いて HOM ダンパ

ーにおける高周波吸収体のサイズや位置の最適化を行った。フェライトの長さおよび厚さ

を変えたときのフェライトの Q 値を図2に示す。フェライトが長くなるに連れて HOM の Q

値が減少していくが、フェライトの設置場所を変えたときのフェライトの Q 値が最小にな

る位置および値はほぼ同じになっている。また長くなるに連れて設置場所による変化も減

少していく。フェライトが 8cm 以上であればその差は 30%以下となる。次にフェライト厚さ

に関しては、厚くなるほど、フェライトの Q 値の最小値は小さくなるが、最大値と最小値

の差は反対に大きくなる。これは条件が合えば大きな吸収特性が得られるが、条件が外れ

た場合はあまり吸収されなくなることを意味する。フェライトが厚くなるとビームパイプ

を進行する HOM とのマッチングが悪くなって反射が増えるため、逆に損失が減るためと考

えられる。

0

2

4

6

8

10

0 50 100 150 200 250 300

IB0042GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

比透

磁率

(虚

数部

温度 (K)

0

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8

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0 50 100 150 200 250 300

Co2Z2GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

比透

磁率

(虚

数部

温度 (K) 図1 2 種類のフェライト(IB004、Co2Z)の比透磁率の虚数部の温度特性の測定結果。

2GHz から 10GHz の周波数範囲を表示。Co2Z(右)は低温になるにつれて比透磁率が小さく

なるのに対し、IB004(左)は低温ほど比透磁率が大きくなるため、HOM ダンパーの高周波

吸収体に適している。

33

C-3. CW 超伝導加速空洞研究開発

R&D on CW Superconducting Cavity

概要

将来の高輝度小型光子ビーム源の要素技術として、直流高圧電子源と組み合

わせて使用する CW 超伝導加速研究開発を進めている。今年度は、加速に有害な

高調波(HOM)を空洞から取り出した後に吸収するための HOM ダンパーの開発を

進めた。 1. はじめに

直流高圧電子源で発生する低エミッタンスかつ大電流の電子ビームを CW 超伝導主加速

器で安定に加速するためには、ビーム加速によって励起される空洞の高次モード

(Higher-Order Mode:HOM)が立ちにくい空洞が必要である。そのため昨年度は、HOM の Q

値の低い空洞を設計・製作した。超伝導空洞の空洞壁では HOM 損失がほとんどないため、

空洞内で励起された HOM はビームパイプを伝播させ、ビームパイプの途中にある高周波吸

収体を含む HOM ダンパーで吸収・減衰させる。そのため HOM ダンパーの性能が実際の空洞

の Q 値の大きさに影響する。超伝導空洞はクライオモジュールと呼ばれる真空断熱槽の中

に設置され、2K の低温に冷却される。そして HOM ダンパーは空洞間に配置されるため、空

洞と共にクライオモジュールの中に設置される。HOM ダンパーは HOM を吸収して発熱するた

め冷却が必要であるが、空洞の 2K 部分への熱侵入を減らすために、また冷却効率を考慮し

て液体窒素温度程度に冷却される。そのため HOM ダンパーで使用される高周波吸収体も低

温での使用になるため、広範囲の周波数での吸収特性に優れたものであるだけでなく、低

温においても十分な吸収特性を持つことが要求される。しかしこれまでの HOM ダンパーは

常温で用いられるタイプのものがほとんどであったため、フェライト、セラミックなどの

各種材料の高周波特性に対する低温温度特性を系統的に測定した例はない。そこで、われ

われは、GM 冷凍機を用いた低温試験装置を用いて、常温から 40K の低温にわたって複数種

類の高周波吸収体の誘電率、透磁率の周波数特性および温度特性を測定し、HOM ダンパーに

最適な高周波吸収体を選択した。

C-2. 直流高圧電子源開発

Development of High-Voltage DC Electron Guns

概 要

30 31

Page 35: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

34

2. HOM ダンパー材料の高周波特性の測定

低温試験装置は GM 冷凍機の先端にヒーターと温度計を取り付けた低温ステージを設置

し、断熱真空槽の中に設置する。測定材料を外径 7mm、内径 3mm のドーナッツ状に加工し、

専用の同軸ホルダーに収納して低温ステージに固定し、ネットワークアナライザを用いて

サンプルの透過率・反射率を測定し、誘電率・透磁率を求める。このとき低温ステージの

ヒーターを加熱・制御することによって低温ステージ上のサンプルの温度を変えながら測

定することができる。計8種類のフェライトとセラミックについて50MHz~10GHz、40K~280K

までの測定を行ったその結果の例を図1に示す。フェライト IB004 のように低温ほど透磁

率の虚数成分(高周波の吸収に関係する)が大きくなる素材が HOM ダンパーの高周波吸収

体として最適である。

HOM ダンパーとしてビームパイプを伝播してきた HOM をすべて吸収するのが理想である

が、現実の HOM ダンパーにおいては高周波吸収体の厚みや長さ、設置位置などによって反

射したり、透過したりする割合が変わる。そのため電磁波解析コードを用いて HOM ダンパ

ーにおける高周波吸収体のサイズや位置の最適化を行った。フェライトの長さおよび厚さ

を変えたときのフェライトの Q 値を図2に示す。フェライトが長くなるに連れて HOM の Q

値が減少していくが、フェライトの設置場所を変えたときのフェライトの Q 値が最小にな

る位置および値はほぼ同じになっている。また長くなるに連れて設置場所による変化も減

少していく。フェライトが 8cm 以上であればその差は 30%以下となる。次にフェライト厚さ

に関しては、厚くなるほど、フェライトの Q 値の最小値は小さくなるが、最大値と最小値

の差は反対に大きくなる。これは条件が合えば大きな吸収特性が得られるが、条件が外れ

た場合はあまり吸収されなくなることを意味する。フェライトが厚くなるとビームパイプ

を進行する HOM とのマッチングが悪くなって反射が増えるため、逆に損失が減るためと考

えられる。

0

2

4

6

8

10

0 50 100 150 200 250 300

IB0042GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

比透

磁率

(虚

数部

温度 (K)

0

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0 50 100 150 200 250 300

Co2Z2GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

比透

磁率

(虚

数部

温度 (K) 図1 2 種類のフェライト(IB004、Co2Z)の比透磁率の虚数部の温度特性の測定結果。

2GHz から 10GHz の周波数範囲を表示。Co2Z(右)は低温になるにつれて比透磁率が小さく

なるのに対し、IB004(左)は低温ほど比透磁率が大きくなるため、HOM ダンパーの高周波

吸収体に適している。

0

2

4

6

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0 50 100 150 200 250 300

IB0042GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

比透

磁率

(虚

数部

温度 (K)

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Co2Z2GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

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0 50 100 150 200 250 300

IB0042GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

比透

磁率

(虚

数部

温度 (K)

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0 50 100 150 200 250 300

Co2Z2GHz3GHz4GHz5GHz6GHz7GHz8GHz9GHz10GHz

33

C-3. CW 超伝導加速空洞研究開発

R&D on CW Superconducting Cavity

概要

将来の高輝度小型光子ビーム源の要素技術として、直流高圧電子源と組み合

わせて使用する CW 超伝導加速研究開発を進めている。今年度は、加速に有害な

高調波(HOM)を空洞から取り出した後に吸収するための HOM ダンパーの開発を

進めた。 1. はじめに

直流高圧電子源で発生する低エミッタンスかつ大電流の電子ビームを CW 超伝導主加速

器で安定に加速するためには、ビーム加速によって励起される空洞の高次モード

(Higher-Order Mode:HOM)が立ちにくい空洞が必要である。そのため昨年度は、HOM の Q

値の低い空洞を設計・製作した。超伝導空洞の空洞壁では HOM 損失がほとんどないため、

空洞内で励起された HOM はビームパイプを伝播させ、ビームパイプの途中にある高周波吸

収体を含む HOM ダンパーで吸収・減衰させる。そのため HOM ダンパーの性能が実際の空洞

の Q 値の大きさに影響する。超伝導空洞はクライオモジュールと呼ばれる真空断熱槽の中

に設置され、2K の低温に冷却される。そして HOM ダンパーは空洞間に配置されるため、空

洞と共にクライオモジュールの中に設置される。HOM ダンパーは HOM を吸収して発熱するた

め冷却が必要であるが、空洞の 2K 部分への熱侵入を減らすために、また冷却効率を考慮し

て液体窒素温度程度に冷却される。そのため HOM ダンパーで使用される高周波吸収体も低

温での使用になるため、広範囲の周波数での吸収特性に優れたものであるだけでなく、低

温においても十分な吸収特性を持つことが要求される。しかしこれまでの HOM ダンパーは

常温で用いられるタイプのものがほとんどであったため、フェライト、セラミックなどの

各種材料の高周波特性に対する低温温度特性を系統的に測定した例はない。そこで、われ

われは、GM 冷凍機を用いた低温試験装置を用いて、常温から 40K の低温にわたって複数種

類の高周波吸収体の誘電率、透磁率の周波数特性および温度特性を測定し、HOM ダンパーに

最適な高周波吸収体を選択した。

30 31

Page 36: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

35

3. HOM ダンパーの試作

測定結果をもとに HOM ダンパーの試作機の設計・製作を行った。フェライトの脱落を防

ぐため、フェライトと下地の金属との接合が強固な熱間等方加圧焼結法(Hot Isostatic

Pressing :HIP)によりフェライトを焼結させる方法を用いる。またフランジ接続の自由度

や熱収縮の余裕のためにベローズを用いるが、ベローズ前後のビームパイプの接続部分に

櫛歯が互いに噛み合った構造をしている櫛歯型 RF ブリッジを用いた。RF ブリッジは、機器

内部の隙間や空洞を埋めてバンチに伴う壁電流を滑らかに流すことで、HOM の発生を防ぎ、

またビームインピーダンスを下げる役割を持っている。従来、RF ブリッジには薄い金属製

のフィンガー型が用いられてきた。しかし、フィンガー型は隙間から漏れる HOM によって

機器が発熱し易く、フィンガースライド部の電気的接触の保証が難しいなどの問題があっ

た。これに対し、櫛歯型はフィンガー型の RF 接続に比べてインピーダンスが小さく、熱伝

導も小さいという利点がある。櫛歯型の中央部分にフェライトを焼結し、その冷却のため

に 80K アンカーを設けた。また両フランジには空洞への熱侵入を減らすために 4K アンカー

を設けた。HOM ダンパーの概略図を図3に示す。HOM ダンパーの冷却特性を調べるために図

4のようなフェライトなしの HOM ダンパー試作機を製作した。

0

50000

100000

150000

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35 40 45 50 55 60 65

フェライト長さ

5cm6cm7cm8cm9cm10cm11cm

フェ

ライ

トQ

エンドセル・アイリスからフェライトまでの距離 (cm)

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35 40 45 50 55 60 65

フェライト厚さ

1mm2mm3mm

4mm

5mm

フェ

ライ

トQ

エンドセル・アイリスからフェライトまでの距離 (cm)

図2 フェライトの長さ(左)、厚さ(右)によるフェライト Q 値の変化。(左)フェライ

トが長くなるにつれて、フェライト Q値が減少し、位置による変化も小さくなる。(右)

フェライトが厚くなるとフェライト Q 値の最小値は減少するが、最大値も増加し、フェ

ライト位置による影響が大きくなる。

36

3.まとめ、次年度の予定

直流高圧電子源と組み合わせて大電流を CW で加速するための超伝導加速空洞における

主要な要素機器である HOM ダンパーの開発を進めた。液体窒素温度で良好な高周波特性を

有するフェライト材料を選定し、HOM ダンパーの試作を行った。今後は、試作機の液体窒

素温度での冷却試験を行い、HOM ダンパーの伝熱特性などを測定する予定である。

図4 フェライトなし HOM ダンパー試作機

80Kアンカー

4Kアンカー

櫛歯型RFブリッジ

フェライト

ベローズ

80Kアンカー

4Kアンカー

櫛歯型RFブリッジ

フェライト

ベローズ

図3 HOMダンパー試作機の概略図

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フェライト長さ

5cm6cm7cm8cm9cm10cm11cm

フェライトQ値

エンドセル・アイリスからフェライトまでの距離 (cm)

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フェライト厚さ

1mm

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35 40 45 50 55 60 65

フェライト長さ

5cm6cm7cm8cm9cm10cm11cm

フェライトQ値

エンドセル・アイリスからフェライトまでの距離 (cm)

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40000

60000

80000

100000

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35 40 45 50 55 60 65

フェライト厚さ

1mm

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3. HOM ダンパーの試作

測定結果をもとに HOM ダンパーの試作機の設計・製作を行った。フェライトの脱落を防

ぐため、フェライトと下地の金属との接合が強固な熱間等方加圧焼結法(Hot Isostatic

Pressing :HIP)によりフェライトを焼結させる方法を用いる。またフランジ接続の自由度

や熱収縮の余裕のためにベローズを用いるが、ベローズ前後のビームパイプの接続部分に

櫛歯が互いに噛み合った構造をしている櫛歯型 RF ブリッジを用いた。RF ブリッジは、機器

内部の隙間や空洞を埋めてバンチに伴う壁電流を滑らかに流すことで、HOM の発生を防ぎ、

またビームインピーダンスを下げる役割を持っている。従来、RF ブリッジには薄い金属製

のフィンガー型が用いられてきた。しかし、フィンガー型は隙間から漏れる HOM によって

機器が発熱し易く、フィンガースライド部の電気的接触の保証が難しいなどの問題があっ

た。これに対し、櫛歯型はフィンガー型の RF 接続に比べてインピーダンスが小さく、熱伝

導も小さいという利点がある。櫛歯型の中央部分にフェライトを焼結し、その冷却のため

に 80K アンカーを設けた。また両フランジには空洞への熱侵入を減らすために 4K アンカー

を設けた。HOM ダンパーの概略図を図3に示す。HOM ダンパーの冷却特性を調べるために図

4のようなフェライトなしの HOM ダンパー試作機を製作した。

0

50000

100000

150000

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250000

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フェライト長さ

5cm6cm7cm8cm9cm10cm11cm

フェ

ライ

トQ

エンドセル・アイリスからフェライトまでの距離 (cm)

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35 40 45 50 55 60 65

フェライト厚さ

1mm2mm3mm

4mm

5mm

フェ

ライ

トQ

エンドセル・アイリスからフェライトまでの距離 (cm)

図2 フェライトの長さ(左)、厚さ(右)によるフェライト Q 値の変化。(左)フェライ

トが長くなるにつれて、フェライト Q値が減少し、位置による変化も小さくなる。(右)

フェライトが厚くなるとフェライト Q 値の最小値は減少するが、最大値も増加し、フェ

ライト位置による影響が大きくなる。

36

3.まとめ、次年度の予定

直流高圧電子源と組み合わせて大電流を CW で加速するための超伝導加速空洞における

主要な要素機器である HOM ダンパーの開発を進めた。液体窒素温度で良好な高周波特性を

有するフェライト材料を選定し、HOM ダンパーの試作を行った。今後は、試作機の液体窒

素温度での冷却試験を行い、HOM ダンパーの伝熱特性などを測定する予定である。

図4 フェライトなし HOM ダンパー試作機

80Kアンカー

4Kアンカー

櫛歯型RFブリッジ

フェライト

ベローズ

80Kアンカー

4Kアンカー

櫛歯型RFブリッジ

フェライト

ベローズ

図3 HOMダンパー試作機の概略図

32 33

Page 38: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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開発スタッフ 責任者 : 羽島 良一(日本原子力研究開発機構)

担当者 : 沢村 勝(日本原子力研究開発機構)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文)

[1] “KEK ERL HOM Absorber Development”, M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori, H. Sakai,

K. Shinoe, The 45th Advanced ICFA Beam Dynamics Workshop on Energy Recovery Linacs

(ERL09), Ithaca, USA, 2009 年 6 月

[2] “KEK ERL Cryomodule Development”, H. Sakai, T. Furuya, E. Kako, S. Noguchi,

S. Sakanaka, T. Shishido, T. Takahashi, K. Umemori, K. Watanabe, Y. Yamamoto, M.

Sawamura, K. Shinoe, The 45th Advanced ICFA Beam Dynamics Workshop on Energy Recovery

Linacs (ERL09), Ithaca, USA, 2009 年 6 月

[3] “ERL 用 HOM ダンパーの開発”, 沢村勝, 梅森建成, 古屋貴章, 阪井寛志, 篠江憲治,

第 6 回日本加速器学会年会, 茨城, 2009 年 8 月

[4] “ERL HOM Absorber Development”, M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori, H. Sakai,

K. Shinoe, 14th International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009)

2009 年 9 月

[5] “Development of Input Coupler for ERL Main Linac”, H. Sakai, A. Ishii, K. Umemori,

S. Sakanaka, M. Sawamura, K. Shinoe, T. Takahashi, N. Nakamura, T. Furuya, 14th

International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009), 2009 年 9 月

[6] “Status of 9-cell Superconducting Cavity Development for ERL Project in Japan”,

K. Umemori, T. Furuya, H. Sakai, T. Takahashi, K. Shinoe, M. Sawamura, 14th

International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009), 2009 年 9 月

[7] “Compact ERL Linac”, K. Umemori, T. Furuya, E. Kako, S. Noguchi, H. Sakai, T.

Shishido, T. Takahashi, K. Watanabe, Y. Yamamoto, K. Shinoe, M. Sawamura, 14th

International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009), 2009 年 9 月

[8] “ERL主加速器のためのモジュール開発の現状”, 梅森建成, 阪井寛志, 沢村勝, 篠江

憲治, 高橋毅, 古屋貴章, 日本放射光学会年会, 姫路, 2010 年 1 月

[9] “ERL 用 HOM ダンパーの冷却試験”, 沢村勝, 梅森建成, 古屋貴章, 阪井寛志, 篠江憲

治, 日本原子力学会 2010 年春の年会、水戸, 2010 年 3 月

[10]“エネルギー回収型リニアック次世代放射光源のための要素技術開発とコンパクト

ERL の建設”, 羽島良一, 中村典雄, 坂中章悟, 小林幸則,「加速器」Vol.6, No.2, 149-157.

2009 年 7 月

[11]“Eccentric fluted beam pipes to damp quadrupole higher order modes”, M. Sawamura,

T. Furuya, H. Sakai, T. Takahashi, K. Umemori, K. Shinoe. Physical Review Special

Topics – Accelerator and Beams, 13, 022003 (2010)

38

D. パルスレーザー蓄積装置開発 Development of Compact Laser Super-Cavity for High Flux X-ray

概 要

超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源における、パスルレーザー

蓄積装置開発を行っている。レーザー電子散乱による高輝度光子源の小型化の

ためには、パスルレーザーを共振器内に蓄積、集光し高効率でレーザー電子散

乱を起こすことが重要である。本課題は、そのための 4 鏡リング型共振器の開

発である。平成 21 年度は,4 鏡共振器の試作器を作成し,その特性の測定と計

算の比較から共振器の詳細設計に向けたデータを得た。これと平行して,

KEK-ATF 加速器における 2鏡共振器のパスル蓄積率の増大,それに伴う共振器制

御精度の向上と光子生成の実証による加速器運転下におけるレーザー蓄積共振

器動作技術開発を行った。

1. 平成21年度開発事業 本事業では、パスルレーザーを共振器内に蓄

積し、レーザーの強度を実効的に増大する技術

の開発を目的としている。レーザーと電子の散

乱頻度を上げ、生成するX線強度を増大するた

めには、レーザー蓄積共振器における蓄積率の

向上及び、共振器内のレーザー・電子衝突点に

おけるレーザーの集光を行う必要がある。この

2 項目を同時に達成するため、本事業に置いて

は、4 枚の鏡からなるリング型の共振器の開発

を行っている。平成 20 年度は,3次元 4鏡光共

振器を光学定盤上に構築しその基本特性の測

定を行った(図1)。その結果,3 次元構成の

4 鏡光共振器は,左右円偏向のレーザーを分離

して蓄積することができ,高速切り替え可能な

円偏向X線源の構築に非常に有用であること

を見いだした。また,実際の加速器運転下にお

けるレーザー共振器の制御とレーザー電子散

乱による光子生成技術の習得のため,KEK-ATF

に 2 鏡共振器を導入して光子生成実験を遂行

した。

21 年度は一体型 3 次元 4 鏡共振器を試作し

特性の実測や鏡の位置調整方法等の工学的観

点からの問題点の洗い出しなどを行った。また

ATF 実験では,高反射率の鏡の導入によるレー

ザー蓄積率の増大を測った。これらと平行して,

光共振器の高精度制御のためのデジタルフィードバックシステムの開発ベンチを準備し,

その開発に着手した。

3 次元 4 鏡共振器の試験

図 1 平成20年度に構築した3次元4鏡

共振器試験テストベンチ

図 2 平成 21年度に作成した3次元 4鏡共

振器試作器

34 35

Page 39: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

37

開発スタッフ 責任者 : 羽島 良一(日本原子力研究開発機構)

担当者 : 沢村 勝(日本原子力研究開発機構)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文)

[1] “KEK ERL HOM Absorber Development”, M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori, H. Sakai,

K. Shinoe, The 45th Advanced ICFA Beam Dynamics Workshop on Energy Recovery Linacs

(ERL09), Ithaca, USA, 2009 年 6 月

[2] “KEK ERL Cryomodule Development”, H. Sakai, T. Furuya, E. Kako, S. Noguchi,

S. Sakanaka, T. Shishido, T. Takahashi, K. Umemori, K. Watanabe, Y. Yamamoto, M.

Sawamura, K. Shinoe, The 45th Advanced ICFA Beam Dynamics Workshop on Energy Recovery

Linacs (ERL09), Ithaca, USA, 2009 年 6 月

[3] “ERL 用 HOM ダンパーの開発”, 沢村勝, 梅森建成, 古屋貴章, 阪井寛志, 篠江憲治,

第 6 回日本加速器学会年会, 茨城, 2009 年 8 月

[4] “ERL HOM Absorber Development”, M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori, H. Sakai,

K. Shinoe, 14th International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009)

2009 年 9 月

[5] “Development of Input Coupler for ERL Main Linac”, H. Sakai, A. Ishii, K. Umemori,

S. Sakanaka, M. Sawamura, K. Shinoe, T. Takahashi, N. Nakamura, T. Furuya, 14th

International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009), 2009 年 9 月

[6] “Status of 9-cell Superconducting Cavity Development for ERL Project in Japan”,

K. Umemori, T. Furuya, H. Sakai, T. Takahashi, K. Shinoe, M. Sawamura, 14th

International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009), 2009 年 9 月

[7] “Compact ERL Linac”, K. Umemori, T. Furuya, E. Kako, S. Noguchi, H. Sakai, T.

Shishido, T. Takahashi, K. Watanabe, Y. Yamamoto, K. Shinoe, M. Sawamura, 14th

International Conference on RF Superconductivity (SRF 2009), 2009 年 9 月

[8] “ERL主加速器のためのモジュール開発の現状”, 梅森建成, 阪井寛志, 沢村勝, 篠江

憲治, 高橋毅, 古屋貴章, 日本放射光学会年会, 姫路, 2010 年 1 月

[9] “ERL 用 HOM ダンパーの冷却試験”, 沢村勝, 梅森建成, 古屋貴章, 阪井寛志, 篠江憲

治, 日本原子力学会 2010 年春の年会、水戸, 2010 年 3 月

[10]“エネルギー回収型リニアック次世代放射光源のための要素技術開発とコンパクト

ERL の建設”, 羽島良一, 中村典雄, 坂中章悟, 小林幸則,「加速器」Vol.6, No.2, 149-157.

2009 年 7 月

[11]“Eccentric fluted beam pipes to damp quadrupole higher order modes”, M. Sawamura,

T. Furuya, H. Sakai, T. Takahashi, K. Umemori, K. Shinoe. Physical Review Special

Topics – Accelerator and Beams, 13, 022003 (2010)

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D. パルスレーザー蓄積装置開発 Development of Compact Laser Super-Cavity for High Flux X-ray

概 要

超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源における、パスルレーザー

蓄積装置開発を行っている。レーザー電子散乱による高輝度光子源の小型化の

ためには、パスルレーザーを共振器内に蓄積、集光し高効率でレーザー電子散

乱を起こすことが重要である。本課題は、そのための 4 鏡リング型共振器の開

発である。平成 21 年度は,4 鏡共振器の試作器を作成し,その特性の測定と計

算の比較から共振器の詳細設計に向けたデータを得た。これと平行して,

KEK-ATF 加速器における 2鏡共振器のパスル蓄積率の増大,それに伴う共振器制

御精度の向上と光子生成の実証による加速器運転下におけるレーザー蓄積共振

器動作技術開発を行った。

1. 平成21年度開発事業 本事業では、パスルレーザーを共振器内に蓄

積し、レーザーの強度を実効的に増大する技術

の開発を目的としている。レーザーと電子の散

乱頻度を上げ、生成するX線強度を増大するた

めには、レーザー蓄積共振器における蓄積率の

向上及び、共振器内のレーザー・電子衝突点に

おけるレーザーの集光を行う必要がある。この

2 項目を同時に達成するため、本事業に置いて

は、4 枚の鏡からなるリング型の共振器の開発

を行っている。平成 20 年度は,3次元 4鏡光共

振器を光学定盤上に構築しその基本特性の測

定を行った(図1)。その結果,3 次元構成の

4 鏡光共振器は,左右円偏向のレーザーを分離

して蓄積することができ,高速切り替え可能な

円偏向X線源の構築に非常に有用であること

を見いだした。また,実際の加速器運転下にお

けるレーザー共振器の制御とレーザー電子散

乱による光子生成技術の習得のため,KEK-ATF

に 2 鏡共振器を導入して光子生成実験を遂行

した。

21 年度は一体型 3 次元 4 鏡共振器を試作し

特性の実測や鏡の位置調整方法等の工学的観

点からの問題点の洗い出しなどを行った。また

ATF 実験では,高反射率の鏡の導入によるレー

ザー蓄積率の増大を測った。これらと平行して,

光共振器の高精度制御のためのデジタルフィードバックシステムの開発ベンチを準備し,

その開発に着手した。

3 次元 4 鏡共振器の試験

図 1 平成20年度に構築した3次元4鏡

共振器試験テストベンチ

図 2 平成 21年度に作成した3次元 4鏡共

振器試作器

34 35

Page 40: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

39

図2に本年度作成した3次

元 4 鏡光共振器の試作器を示

す。2 枚の平面鏡と 2 枚の集

光用凹面鏡から構成されるリ

ング型共振器である。図 3 は

4 枚の鏡の配置を示している。

レーザー伝搬経路上の鏡間距

離は 42cm,周長は,168cm で

ある。また,共振器の周長(す

なわちレーザーの共振条件)

を変えずに,鏡間の相対距離

を変更することができるよう

になっており,共鳴状態を維

持したまま,レーザーの集光

条件を変化させて,レーザー

光の伝搬や集光の状況を調べ

ることができる。

光共振器はその原理上,共

振器内部の光の状態を直接観

測することはできないため,

共振器外部における透過光測

定から内部状態を計算によっ

て推測する必要がある。その

ために,3 次元 4 鏡共振器内

及び透過光の伝搬計算の方法

を確立した。その過程に於い

て,3 次元共振器中では,光

の像が楕円形となり,楕円の

軸が回転しながら伝搬してい

ることが分かった。これ共振

器内の光が軌道角運動量をも

った状態を形成して伝搬して

いることを意味している。図

4,5 に共振器外部における透

過光測定のセットアップと光

の像の測定結果を示す。測定

結果と計算は良く一致してお

り,これをもとに共振器内に

図 3 3 次元 4 鏡共振器の光学系配置。本試作器では,

d1~d4 の設計値は 420mm。は共振器の周長を変えずに鏡

の相対位置を変える場合の変化量(本文参照)。

図 4 共振器からの透過光の測定セットアップ。共振器

からの透過光(赤線)を光センサー(PD)で測定する。

図 5 図4の装置によって測定した透過光の形状(左)

と=2mm における計算結果(右図)

図 6 共振器内の集光点近傍におけるレーザー光の形状。図 3中のパラメータ d=0.2mm の

場合。z=0 が集光点に対応しており,そこにおいて,楕円の長軸,短軸はそれぞれ約 37m,30m である。

40

おける光の伝搬を計算することの妥当性を示している。共振器内部のレーザー集光点近傍

における像の変化を図 6に示す。前述のように,4鏡共振器では,共振条件を維持したまま,

鏡の相対位置を変えることによって共振器内の集光点における集光状態を変えることがで

きるが,図はレーザーを小さく集光するようにした場合(=0.2mm)である。計算の結果,

集光点において,レーザーを強く集光すると,それに伴って,光の像がより扁平になるこ

とが分かった。また今回試作した共振器の構造では楕円の長軸約 37m,短軸約 30m が限界

であることが判明した。この限界は鏡の配置に依存することが分かっている。今回の試作

器では鏡間の距離が総て等しい配置になっているが,今後この計算を基に,より小さな集

光経を可能とする共振器の形状を探索する。

これらと平行して,より高精度の共振器制御のためのデジタルフィードバックシステム

の開発を目指して,FPGA によるプログラム可能な高速 AD-DA ボードを購入し,フィードバ

ックシステム開発に着手した。平成 22 年度はこの基本技術の開発を目指している。

レーザーと電子線によるγ線生成実

KEK-ATF において、パスルレーザー

と 2 鏡ファブリペロー型共振器を用い

たγ線生成実験を行い、実際の加速器

運転下における共振器の動作とレーザ

ー・電子散乱によるγ線生成の実証を

行った。

平成 20 年度は、反射率 99.6%の鏡

で共振器を構築し,入射レーザーの約

250 倍を蓄積することに成功したが,

本年度は一方の鏡を反射率 99.9%のも

のに交換した。これによってレーザー

強度の増大率を約 760 倍に向上するこ

とが可能となった。その反面,高い増

大率を達成するための共振器制御によ

り高い精度が必要となった。昨年度の

場合,共振状態の維持に必要な 2 鏡間

の距離の精度は 0.6nm 以下であった

が,増大率の向上にともなって,0.3nm

以下の精度が必要となった。その一方,

レーザーと加速器の電子との衝突のためには,レーザーパルスと電子バンチの間のタイミ

ングの制御も同時に行わなければならい。一般に,共振器の蓄積率維持のための高精度・

高速フィードバックとタイミングの制御は相反するが,共振器状態のモニター信号におけ

るノイズの低減やフィードバックシステム構成の改良によって,平均 760 倍の蓄積率を維

持した状態で2psのタイミングゆらぎを達成した。2psはレーザーのパルス長(5ps) および,

電子バンチ長(30ps)に比べて短く,レーザー電子衝突実験に十分な性能である。図8に今

回得られたガンマ線のスペクトルを示す。図は 1 個のレーザーパスルと 1 個の電子バンチ

の衝突によって得られたガンマ線のエネルギー分布をしめしており,平均 265MeV は 1 回の

衝突あたり,10.5 個の光子生成に対応する。

2. 平成 21 年度のまとめと 22 年度計画

図 7 KEK-ATF に導入された 2鏡共振器

図 8 レーザー・電子散乱において測定されたγ線

のエネルギー分布。

36 37

~

Page 41: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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図2に本年度作成した3次

元 4 鏡光共振器の試作器を示

す。2 枚の平面鏡と 2 枚の集

光用凹面鏡から構成されるリ

ング型共振器である。図 3 は

4 枚の鏡の配置を示している。

レーザー伝搬経路上の鏡間距

離は 42cm,周長は,168cm で

ある。また,共振器の周長(す

なわちレーザーの共振条件)

を変えずに,鏡間の相対距離

を変更することができるよう

になっており,共鳴状態を維

持したまま,レーザーの集光

条件を変化させて,レーザー

光の伝搬や集光の状況を調べ

ることができる。

光共振器はその原理上,共

振器内部の光の状態を直接観

測することはできないため,

共振器外部における透過光測

定から内部状態を計算によっ

て推測する必要がある。その

ために,3 次元 4 鏡共振器内

及び透過光の伝搬計算の方法

を確立した。その過程に於い

て,3 次元共振器中では,光

の像が楕円形となり,楕円の

軸が回転しながら伝搬してい

ることが分かった。これ共振

器内の光が軌道角運動量をも

った状態を形成して伝搬して

いることを意味している。図

4,5 に共振器外部における透

過光測定のセットアップと光

の像の測定結果を示す。測定

結果と計算は良く一致してお

り,これをもとに共振器内に

図 3 3 次元 4 鏡共振器の光学系配置。本試作器では,

d1~d4 の設計値は 420mm。は共振器の周長を変えずに鏡

の相対位置を変える場合の変化量(本文参照)。

図 4 共振器からの透過光の測定セットアップ。共振器

からの透過光(赤線)を光センサー(PD)で測定する。

図 5 図4の装置によって測定した透過光の形状(左)

と=2mm における計算結果(右図)

図 6 共振器内の集光点近傍におけるレーザー光の形状。図 3中のパラメータ d=0.2mm の

場合。z=0 が集光点に対応しており,そこにおいて,楕円の長軸,短軸はそれぞれ約 37m,30m である。

40

おける光の伝搬を計算することの妥当性を示している。共振器内部のレーザー集光点近傍

における像の変化を図 6に示す。前述のように,4鏡共振器では,共振条件を維持したまま,

鏡の相対位置を変えることによって共振器内の集光点における集光状態を変えることがで

きるが,図はレーザーを小さく集光するようにした場合(=0.2mm)である。計算の結果,

集光点において,レーザーを強く集光すると,それに伴って,光の像がより扁平になるこ

とが分かった。また今回試作した共振器の構造では楕円の長軸約 37m,短軸約 30m が限界

であることが判明した。この限界は鏡の配置に依存することが分かっている。今回の試作

器では鏡間の距離が総て等しい配置になっているが,今後この計算を基に,より小さな集

光経を可能とする共振器の形状を探索する。

これらと平行して,より高精度の共振器制御のためのデジタルフィードバックシステム

の開発を目指して,FPGA によるプログラム可能な高速 AD-DA ボードを購入し,フィードバ

ックシステム開発に着手した。平成 22 年度はこの基本技術の開発を目指している。

レーザーと電子線によるγ線生成実

KEK-ATF において、パスルレーザー

と 2 鏡ファブリペロー型共振器を用い

たγ線生成実験を行い、実際の加速器

運転下における共振器の動作とレーザ

ー・電子散乱によるγ線生成の実証を

行った。

平成 20 年度は、反射率 99.6%の鏡

で共振器を構築し,入射レーザーの約

250 倍を蓄積することに成功したが,

本年度は一方の鏡を反射率 99.9%のも

のに交換した。これによってレーザー

強度の増大率を約 760 倍に向上するこ

とが可能となった。その反面,高い増

大率を達成するための共振器制御によ

り高い精度が必要となった。昨年度の

場合,共振状態の維持に必要な 2 鏡間

の距離の精度は 0.6nm 以下であった

が,増大率の向上にともなって,0.3nm

以下の精度が必要となった。その一方,

レーザーと加速器の電子との衝突のためには,レーザーパルスと電子バンチの間のタイミ

ングの制御も同時に行わなければならい。一般に,共振器の蓄積率維持のための高精度・

高速フィードバックとタイミングの制御は相反するが,共振器状態のモニター信号におけ

るノイズの低減やフィードバックシステム構成の改良によって,平均 760 倍の蓄積率を維

持した状態で2psのタイミングゆらぎを達成した。2psはレーザーのパルス長(5ps) および,

電子バンチ長(30ps)に比べて短く,レーザー電子衝突実験に十分な性能である。図8に今

回得られたガンマ線のスペクトルを示す。図は 1 個のレーザーパスルと 1 個の電子バンチ

の衝突によって得られたガンマ線のエネルギー分布をしめしており,平均 265MeV は 1 回の

衝突あたり,10.5 個の光子生成に対応する。

2. 平成 21 年度のまとめと 22 年度計画

図 7 KEK-ATF に導入された 2鏡共振器

図 8 レーザー・電子散乱において測定されたγ線

のエネルギー分布。

36 37

Page 42: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

41

3 次元 4 鏡共振器開発

共振器の試作器による測定と計算の比較から,内部における光伝搬の計算方法を確立し

た。その結果をもとに以下の研究開発を目指す。

試作器の運用によって判明した鏡の位置制御などにおける工学上の改良。

レーザー・電子衝突の効率の観点から共振器内のレーザーの集光状態を最適化す

る 4鏡の構成設計

以上をもとにした 4鏡共振器の開発

高精度共振器制御システム開発

平成21年に購入した高速AD-DAボードをもとにデジタルフィードバックシステムの開発

を進める。また,共振器本体だけでなく,光学系全体の制御の効率化と高精度化をめざし

た,空間位相変調器をシステムに取り入れるための開発に着手する。

KEK-ATF における光子生成実験の推進

平成 21年度に高反射率鏡によるレーザー蓄積率の増大とそれによる生成光子強度の向

上に成功した。22 年はさらに蓄積率を増大させる。それによって,加速器運転条件下にお

ける共振器制御技術のさらなる向上と光子生成の実証をめざす。

また,協力して研究をすすめている,フランス線形加速器研究所のグループが独自に開

発した 4 鏡共振器を KEK-ATF に組み込むことを計画している。この作業を共同で行い。本

事業にその結果をフィードバックする。

3. 総括 責任者 高橋 徹(広島大学先端物質科学研究科)

担当者 本田洋介(高エネルギー加速器研究機構)

学会発表など 赤木智哉 KEK-ATF における ILC 偏極陽電子源の為のレーザー蓄積空洞を用いた高輝度ガ

ンマ線生成実験 第 6回日本加速器学会 2009 年 8 月

永田修司 高輝度偏極光子源の為の新型レーザー蓄積共振器の開発 I 日本物理学会

2009 年分科会 2009 年 9 月

三好修平 高輝度偏極光子源の為の新型レーザー蓄積共振器の開発 II 日本物理学会

2009 年分科会 2009 年 9 月

三好修平 KEK-ATF における ILC 偏極陽電子源の為のレーザー蓄積共振器を用いたガンマ

線生成実験 日本物理学会第 65 回年次大会 2010 年 3 月

赤木智哉 高輝度偏極光源の為の 4 枚鏡光蓄積共振器の開発 日本物理学会第 65 回年次

大会 2010 年 3 月

高橋 徹 Status of the Compton Experiment at the ATF TILC09

高橋 徹 Status of the Compton Experiment at the ATF Photon09

高橋 徹 4 Mirror Cavity R&D in Japan PoiPol2009

高橋 徹 Compton Experiment at the ATF“a status report” 2009 Linear Collider

Workshop of America

高橋 徹 Status of the optical resonant cavity development LCWS/ILC10

大森 恒彦 Compton experiment at ATF LCWS/ILC10

公表論文

S. Miyoshia, T Akagia, S. Arakib, Y. Funahashib, T. Hirosec, Y. Hondab, M. Kurikia,

X. Lid, T. Okugib, T. Omorib, G. Peid, K. Sakauec, H. Shimizub, T. Takahashia, N.

Terunumab, J. Urakawab, Y. Ushioa and M. Washioc “Photon generation by laser-Compton

scattering at the KEK-ATF”, arXiv:1002.3462v1, (Nuclear Instruments and Method 誌

42

に掲載受理 http://dx.doi.org/10.1016/j.nima.2010.03.075)

Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi, Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi,

Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi,

Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige Hirose, Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio,

Pei Guoxi, Li XiaoPing, et.al. “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using

an Optical Resonant Cavity at the KEK-ATF Electron Ring”, Journal of Physical Society

of Japan, Vol. 78, No.7, 074501-1 -- 074501-7 (2009)

38 39

Page 43: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

41

3 次元 4 鏡共振器開発

共振器の試作器による測定と計算の比較から,内部における光伝搬の計算方法を確立し

た。その結果をもとに以下の研究開発を目指す。

試作器の運用によって判明した鏡の位置制御などにおける工学上の改良。

レーザー・電子衝突の効率の観点から共振器内のレーザーの集光状態を最適化す

る 4鏡の構成設計

以上をもとにした 4鏡共振器の開発

高精度共振器制御システム開発

平成21年に購入した高速AD-DAボードをもとにデジタルフィードバックシステムの開発

を進める。また,共振器本体だけでなく,光学系全体の制御の効率化と高精度化をめざし

た,空間位相変調器をシステムに取り入れるための開発に着手する。

KEK-ATF における光子生成実験の推進

平成 21年度に高反射率鏡によるレーザー蓄積率の増大とそれによる生成光子強度の向

上に成功した。22 年はさらに蓄積率を増大させる。それによって,加速器運転条件下にお

ける共振器制御技術のさらなる向上と光子生成の実証をめざす。

また,協力して研究をすすめている,フランス線形加速器研究所のグループが独自に開

発した 4 鏡共振器を KEK-ATF に組み込むことを計画している。この作業を共同で行い。本

事業にその結果をフィードバックする。

3. 総括 責任者 高橋 徹(広島大学先端物質科学研究科)

担当者 本田洋介(高エネルギー加速器研究機構)

学会発表など 赤木智哉 KEK-ATF における ILC 偏極陽電子源の為のレーザー蓄積空洞を用いた高輝度ガ

ンマ線生成実験 第 6回日本加速器学会 2009 年 8 月

永田修司 高輝度偏極光子源の為の新型レーザー蓄積共振器の開発 I 日本物理学会

2009 年分科会 2009 年 9 月

三好修平 高輝度偏極光子源の為の新型レーザー蓄積共振器の開発 II 日本物理学会

2009 年分科会 2009 年 9 月

三好修平 KEK-ATF における ILC 偏極陽電子源の為のレーザー蓄積共振器を用いたガンマ

線生成実験 日本物理学会第 65 回年次大会 2010 年 3 月

赤木智哉 高輝度偏極光源の為の 4 枚鏡光蓄積共振器の開発 日本物理学会第 65 回年次

大会 2010 年 3 月

高橋 徹 Status of the Compton Experiment at the ATF TILC09

高橋 徹 Status of the Compton Experiment at the ATF Photon09

高橋 徹 4 Mirror Cavity R&D in Japan PoiPol2009

高橋 徹 Compton Experiment at the ATF“a status report” 2009 Linear Collider

Workshop of America

高橋 徹 Status of the optical resonant cavity development LCWS/ILC10

大森 恒彦 Compton experiment at ATF LCWS/ILC10

公表論文

S. Miyoshia, T Akagia, S. Arakib, Y. Funahashib, T. Hirosec, Y. Hondab, M. Kurikia,

X. Lid, T. Okugib, T. Omorib, G. Peid, K. Sakauec, H. Shimizub, T. Takahashia, N.

Terunumab, J. Urakawab, Y. Ushioa and M. Washioc “Photon generation by laser-Compton

scattering at the KEK-ATF”, arXiv:1002.3462v1, (Nuclear Instruments and Method 誌

42

に掲載受理 http://dx.doi.org/10.1016/j.nima.2010.03.075)

Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi, Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi,

Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi,

Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige Hirose, Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio,

Pei Guoxi, Li XiaoPing, et.al. “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using

an Optical Resonant Cavity at the KEK-ATF Electron Ring”, Journal of Physical Society

of Japan, Vol. 78, No.7, 074501-1 -- 074501-7 (2009)

38 39

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43

E. パルス超伝導加速空洞技術の開発 Development of superconducting cavity for pulsed operation

概 要

将来の小型高フラックス X 線源用要素技術開発のために、超低エミッタンス

ビームの加速に必要なパルス運転型の超伝導加速空洞の研究開発を進めている。

本計画では、1.3GHz 9 セル超伝導空洞 2 台からなるクライオモジュールを平成

23 年度完成を目指して開発する。超伝導加速空洞はビームのウェーク場の影響

を受けにくい大きなビームアパーチャーの空洞であり、なおかつ超伝導を利用

した高電界を出せるものである。大きなビームアパーチャーはビーム通過によ

る高調波モードの減衰にも有利である。実用化に必要な高電界化と高次モード

減衰の開発研究のため、HOM ダンパー付き2セル空胴および HOM ダンパー付9セ

ル加速空洞の製作と表面処理および縦型クライオスタットによる電界試験を行

なった。平成21年度の最も重要な成果は、HOM ダンパー付き2セル空胴および

HOM ダンパー付9セル加速空洞を縦型試験クライオスタットに装備して高電界

試験を行い、初期の性能を達成した事である。これは表面処理工程と空洞アセ

ンブリー工程に改善の効果があった事を示している。次年度の目標は、これら

の結果を組入れた実機の製作に取り掛かる予定である。

1.9セル超伝導空洞の開発 ビーム加速に使用する超伝導加速空洞は、加速効率を上げるために加速セルを多連化し

て、かつ HOM を減衰させる構造を持たせ、かつビーム通過アパーチャーを拡げてウェーク

場の影響を極小化するような加速構造とする設計である。材質は高純度のニオブ材を使用

し、成形はプレス加工、バルジ加工などにより行い、溶接部での不純物混合やボイドなど

を避けるため真空中での電子ビーム溶接により製作していく。高い加速勾配を得るために

さらに重要なのは RF 場がかかる空洞内面の平滑度と清浄度である。製造過程で平滑度を保

ち、傷や溶接スパッターボール、溶接ピットなどを生じさせない事が重要であり、製造後

の表面処理において電界放出を誘導するような異物やコンタミの付着を無くする事が重要

である。本開発では、このような9セル加速空洞を製作し、その機械強度測定や高周波特

性測定を行なって、製作誤差の評価と内面平滑度の評価を行う。さらに表面処理を行ない

その内面検査を行なって、表面処理の評価を行い、最終的に高電界試験を行う。図1に開

発中の9セル加速空洞の縦型高電界試験結果の1例を示す。この例では 37.8MV/m の高電界

まで加速電場を上げる事ができた事を示している。ニオブ材料と使用している高周波の周

波数および空洞形状で決まる限界値は 40MV/m 付近と推定されているが、それに近い性能ま

で到達している。

44

図1:9セル加速空洞 MHI-008 の縦測定結果

2. 2セル超伝導空洞の開発 より大電流の加速を行なう時の問題点はビーム加速に供する高周波大電力を空洞に供給

する必要がある事、また、その大電流により励起される HOM のパワーを効率よく取出す事

である。これを両立させるためには、HOM の引き出しを容易にする極小連結セルである2セ

ルを採用した。大電力を扱う事のできる入力カップラーを多数装備してより大電力を空洞

に供給できるようにし、効率よく HOM にカップルできる HOM ダンパーを数多く配置し、そ

れらをシンメトリーに配置してウェーク場の偏りをさける構造とした。図 2 に示した試作

空洞は入力カップラー2台と HOM 取出カプラーを 5台装着しているものである。本年度の開

発研究においてこのような2セル加速空洞の試作開発を行なった。

本年度に試作された2セル空洞を縦型クライオスタットに設置して高電界試験がおこな

われた。その結果を図3に示す。温度 2K での電界性能は 43.7MV/m まで到達し、初期の性

能目標 15MV/m を大きく上回った。Q 値が低く測定されているのは、この測定のためだけに

装着しているアンテナつきステンレス製端板の高周波ロスから発生しているもので、空洞

そのものの性能ではない。

図2:2セル加速空洞

40 41

Page 45: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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E. パルス超伝導加速空洞技術の開発 Development of superconducting cavity for pulsed operation

概 要

将来の小型高フラックス X 線源用要素技術開発のために、超低エミッタンス

ビームの加速に必要なパルス運転型の超伝導加速空洞の研究開発を進めている。

本計画では、1.3GHz 9 セル超伝導空洞 2 台からなるクライオモジュールを平成

23 年度完成を目指して開発する。超伝導加速空洞はビームのウェーク場の影響

を受けにくい大きなビームアパーチャーの空洞であり、なおかつ超伝導を利用

した高電界を出せるものである。大きなビームアパーチャーはビーム通過によ

る高調波モードの減衰にも有利である。実用化に必要な高電界化と高次モード

減衰の開発研究のため、HOM ダンパー付き2セル空胴および HOM ダンパー付9セ

ル加速空洞の製作と表面処理および縦型クライオスタットによる電界試験を行

なった。平成21年度の最も重要な成果は、HOM ダンパー付き2セル空胴および

HOM ダンパー付9セル加速空洞を縦型試験クライオスタットに装備して高電界

試験を行い、初期の性能を達成した事である。これは表面処理工程と空洞アセ

ンブリー工程に改善の効果があった事を示している。次年度の目標は、これら

の結果を組入れた実機の製作に取り掛かる予定である。

1.9セル超伝導空洞の開発 ビーム加速に使用する超伝導加速空洞は、加速効率を上げるために加速セルを多連化し

て、かつ HOM を減衰させる構造を持たせ、かつビーム通過アパーチャーを拡げてウェーク

場の影響を極小化するような加速構造とする設計である。材質は高純度のニオブ材を使用

し、成形はプレス加工、バルジ加工などにより行い、溶接部での不純物混合やボイドなど

を避けるため真空中での電子ビーム溶接により製作していく。高い加速勾配を得るために

さらに重要なのは RF 場がかかる空洞内面の平滑度と清浄度である。製造過程で平滑度を保

ち、傷や溶接スパッターボール、溶接ピットなどを生じさせない事が重要であり、製造後

の表面処理において電界放出を誘導するような異物やコンタミの付着を無くする事が重要

である。本開発では、このような9セル加速空洞を製作し、その機械強度測定や高周波特

性測定を行なって、製作誤差の評価と内面平滑度の評価を行う。さらに表面処理を行ない

その内面検査を行なって、表面処理の評価を行い、最終的に高電界試験を行う。図1に開

発中の9セル加速空洞の縦型高電界試験結果の1例を示す。この例では 37.8MV/m の高電界

まで加速電場を上げる事ができた事を示している。ニオブ材料と使用している高周波の周

波数および空洞形状で決まる限界値は 40MV/m 付近と推定されているが、それに近い性能ま

で到達している。

44

図1:9セル加速空洞 MHI-008 の縦測定結果

2. 2セル超伝導空洞の開発 より大電流の加速を行なう時の問題点はビーム加速に供する高周波大電力を空洞に供給

する必要がある事、また、その大電流により励起される HOM のパワーを効率よく取出す事

である。これを両立させるためには、HOM の引き出しを容易にする極小連結セルである2セ

ルを採用した。大電力を扱う事のできる入力カップラーを多数装備してより大電力を空洞

に供給できるようにし、効率よく HOM にカップルできる HOM ダンパーを数多く配置し、そ

れらをシンメトリーに配置してウェーク場の偏りをさける構造とした。図 2 に示した試作

空洞は入力カップラー2台と HOM 取出カプラーを 5台装着しているものである。本年度の開

発研究においてこのような2セル加速空洞の試作開発を行なった。

本年度に試作された2セル空洞を縦型クライオスタットに設置して高電界試験がおこな

われた。その結果を図3に示す。温度 2K での電界性能は 43.7MV/m まで到達し、初期の性

能目標 15MV/m を大きく上回った。Q 値が低く測定されているのは、この測定のためだけに

装着しているアンテナつきステンレス製端板の高周波ロスから発生しているもので、空洞

そのものの性能ではない。

図2:2セル加速空洞

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45

図3:2セル加速空洞の縦型高電界試験結果

4. 超伝導空洞の横置きクライオスタット試験 ビーム加速に必要な超伝導空洞のパルスRF運転においては、パルス幅1.5ms、繰り返し5

Hzのパルス運転を安定に行う必要がある。ビーム加速は0.5ms後から1.5msまでの間のフラ

ットトップ部で行い、この時に加速電界を一定に保持しなければならないが、実際には、

電磁界応力による空洞変形でローレンツ・デチューニングが起こり、時間とともに空洞共

振周波数が大きく変化して離調していき、その結果、加速電界もパルスの終端まで低下し

続ける。加速電界および空洞位相を一定に保持するために、このローレンツ・デチューニ

ングをピエゾチューナーにより補正し、さらに入射電力と入射高周波位相を制御するRFフ

ィードバックをONにして、ビーム加速ができる電場を供給できる事を実証しておく必要が

ある。

本開発研究の関連研究であるビーム加速のための試験として横置きクライオスタットに

装着した9セル超伝導空洞のパルスRF運転試験が準備中である。ここでは、各種のピエゾ

チューナーが試験される予定であり、かつ各種の性能の空洞8台のばらつきのある電界性

能のバランスをとって1台のRF源から大電力を供給する試験も行なわれる。図4にその組

立状況の写真を示す。ブレードチューナーとサクレー型チューナーのそれぞれにピエゾチ

ューナーを組込んでいるところである。21年度中は、横置きクライオスタットへの組付

け準備をおこなっていて、冷却して大電力試験を行なうのは22年度になる予定である。

46

図4:ブレードチューナーとサクレー型チューナーの空洞への取付を行なっているところ。

ピエゾチューナーの動作原理がそれぞれ異なっており、その性能比較により、よりよいチ

ューナーの開発を行なう事ができる。

5.総括 平成21年度の最も重要な成果は、9セル空洞と 2 セル空洞の試作を行い、縦型高電界

試験においてそれぞれ 37.8MV/m、43.7MV/m の高電界で運転したことである。また、加速器

運転時に必要となるローレンツ・デチューン補正の試験のために、各種のピエゾチューナ

ーを試験する横型クライオスタット高電界試験装置を組立中である。次年度の目標は、こ

れら試作した9セル空胴、2セル空胴をもとに実機の製作に取り掛かる予定である。

開発スタッフ 責任者 : 早野仁司(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 野口修一、加古永治、佐伯学行、山本康史、渡邊謙、宍戸寿郎、佐藤昌史(以

上 高エネルギー加速器研究機構)、KEK-STF Group(高エネルギー加速器研究機構)

参考文献 [1] 野口修一、加古永治 宍戸寿郎、渡辺 謙、仙入克也、「STF用ベースライン超伝導空

洞システムの開発」第2回日本加速器学会年会プロシーディング、鳥栖 (2005)

p194-196.

[2] 加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「STFベースライン超伝導空洞

用大電力高周波入力結合器」第3回日本加速器学会年会プロシーディング、仙台

(2006) p136-138.

46

図4:ブレードチューナーとサクレー型チューナーの空洞への取付を行なっているところ。

ピエゾチューナーの動作原理がそれぞれ異なっており、その性能比較により、よりよいチ

ューナーの開発を行なう事ができる。

5.総括 平成21年度の最も重要な成果は、9セル空洞と 2 セル空洞の試作を行い、縦型高電界

試験においてそれぞれ 37.8MV/m、43.7MV/m の高電界で運転したことである。また、加速器

運転時に必要となるローレンツ・デチューン補正の試験のために、各種のピエゾチューナ

ーを試験する横型クライオスタット高電界試験装置を組立中である。次年度の目標は、こ

れら試作した9セル空胴、2セル空胴をもとに実機の製作に取り掛かる予定である。

開発スタッフ 責任者 : 早野仁司(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 野口修一、加古永治、佐伯学行、山本康史、渡邊謙、宍戸寿郎、佐藤昌史(以

上 高エネルギー加速器研究機構)、KEK-STF Group(高エネルギー加速器研究機構)

参考文献 [1] 野口修一、加古永治 宍戸寿郎、渡辺 謙、仙入克也、「STF用ベースライン超伝導空

洞システムの開発」第2回日本加速器学会年会プロシーディング、鳥栖 (2005)

p194-196.

[2] 加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「STFベースライン超伝導空洞

用大電力高周波入力結合器」第3回日本加速器学会年会プロシーディング、仙台

(2006) p136-138.

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図3:2セル加速空洞の縦型高電界試験結果

4. 超伝導空洞の横置きクライオスタット試験 ビーム加速に必要な超伝導空洞のパルスRF運転においては、パルス幅1.5ms、繰り返し5

Hzのパルス運転を安定に行う必要がある。ビーム加速は0.5ms後から1.5msまでの間のフラ

ットトップ部で行い、この時に加速電界を一定に保持しなければならないが、実際には、

電磁界応力による空洞変形でローレンツ・デチューニングが起こり、時間とともに空洞共

振周波数が大きく変化して離調していき、その結果、加速電界もパルスの終端まで低下し

続ける。加速電界および空洞位相を一定に保持するために、このローレンツ・デチューニ

ングをピエゾチューナーにより補正し、さらに入射電力と入射高周波位相を制御するRFフ

ィードバックをONにして、ビーム加速ができる電場を供給できる事を実証しておく必要が

ある。

本開発研究の関連研究であるビーム加速のための試験として横置きクライオスタットに

装着した9セル超伝導空洞のパルスRF運転試験が準備中である。ここでは、各種のピエゾ

チューナーが試験される予定であり、かつ各種の性能の空洞8台のばらつきのある電界性

能のバランスをとって1台のRF源から大電力を供給する試験も行なわれる。図4にその組

立状況の写真を示す。ブレードチューナーとサクレー型チューナーのそれぞれにピエゾチ

ューナーを組込んでいるところである。21年度中は、横置きクライオスタットへの組付

け準備をおこなっていて、冷却して大電力試験を行なうのは22年度になる予定である。

46

図4:ブレードチューナーとサクレー型チューナーの空洞への取付を行なっているところ。

ピエゾチューナーの動作原理がそれぞれ異なっており、その性能比較により、よりよいチ

ューナーの開発を行なう事ができる。

5.総括 平成21年度の最も重要な成果は、9セル空洞と 2 セル空洞の試作を行い、縦型高電界

試験においてそれぞれ 37.8MV/m、43.7MV/m の高電界で運転したことである。また、加速器

運転時に必要となるローレンツ・デチューン補正の試験のために、各種のピエゾチューナ

ーを試験する横型クライオスタット高電界試験装置を組立中である。次年度の目標は、こ

れら試作した9セル空胴、2セル空胴をもとに実機の製作に取り掛かる予定である。

開発スタッフ 責任者 : 早野仁司(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 野口修一、加古永治、佐伯学行、山本康史、渡邊謙、宍戸寿郎、佐藤昌史(以

上 高エネルギー加速器研究機構)、KEK-STF Group(高エネルギー加速器研究機構)

参考文献 [1] 野口修一、加古永治 宍戸寿郎、渡辺 謙、仙入克也、「STF用ベースライン超伝導空

洞システムの開発」第2回日本加速器学会年会プロシーディング、鳥栖 (2005)

p194-196.

[2] 加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「STFベースライン超伝導空洞

用大電力高周波入力結合器」第3回日本加速器学会年会プロシーディング、仙台

(2006) p136-138.

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図4:ブレードチューナーとサクレー型チューナーの空洞への取付を行なっているところ。

ピエゾチューナーの動作原理がそれぞれ異なっており、その性能比較により、よりよいチ

ューナーの開発を行なう事ができる。

5.総括 平成21年度の最も重要な成果は、9セル空洞と 2 セル空洞の試作を行い、縦型高電界

試験においてそれぞれ 37.8MV/m、43.7MV/m の高電界で運転したことである。また、加速器

運転時に必要となるローレンツ・デチューン補正の試験のために、各種のピエゾチューナ

ーを試験する横型クライオスタット高電界試験装置を組立中である。次年度の目標は、こ

れら試作した9セル空胴、2セル空胴をもとに実機の製作に取り掛かる予定である。

開発スタッフ 責任者 : 早野仁司(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 野口修一、加古永治、佐伯学行、山本康史、渡邊謙、宍戸寿郎、佐藤昌史(以

上 高エネルギー加速器研究機構)、KEK-STF Group(高エネルギー加速器研究機構)

参考文献 [1] 野口修一、加古永治 宍戸寿郎、渡辺 謙、仙入克也、「STF用ベースライン超伝導空

洞システムの開発」第2回日本加速器学会年会プロシーディング、鳥栖 (2005)

p194-196.

[2] 加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「STFベースライン超伝導空洞

用大電力高周波入力結合器」第3回日本加速器学会年会プロシーディング、仙台

(2006) p136-138.

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Page 48: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

[3] 野口修一、梅森健成、加古永治、阪井寛志、宍戸寿郎、篠江憲治、早野仁司、山本康

史、渡辺 謙、文 成益、徐 慶金、「STFベースライン超伝導空洞システムの開発」

第3回日本加速器学会年会プロシーディング、仙台 (2006) p133-135.

[4] 宍戸寿郎、加古永治、野口修一、早野仁司、渡辺謙、「STFベースライン超伝導空洞に

おける加速モードの周波数調整」第3回日本加速器学会年会プロシーディング、仙台

(2006) p865-867.

[5] 渡辺 謙、加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、「ILCベースラインのための超

伝導空洞の高調波モードに関する研究」第3回日本加速器学会年会プロシーディング、

仙台 (2006) p877-879.

[6] 宍戸寿郎、梅森健成、加古永治、野口修一、早野仁司、山本康史、阪井寛志、篠江憲

治、渡辺 謙、「STFベースライン超伝導空洞における加速モードの周波数調整と性

能測定」第4回日本加速器学会年会プロシーディング、和光 (2007) p452-454.

[7] 渡辺 謙、加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、「ILC超伝導空洞のための高調

波モードに関する研究」第4回日本加速器学会年会プロシーディング、和光 (2007)

p457-459.

[8] 加古永治、野口修一、早野仁司、宍戸寿郎、佐藤昌史、渡辺 謙、山本康史、「STFに

おけるTESLA-like空洞のクライオモジュール試験」第5回日本加速器学会年会プロシ

ーディング、東広島 (2008) p209-211.

[9] 山本康史、加古永治、佐藤昌史、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「STFベ

ースライン空洞におけるローレンツデチューニングの観測とモデル計算との比較」第

5回日本加速器学会年会プロシーディング、東広島 (2008) p215-218.

[10] 山本康史、加古永治、佐藤昌史、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「KE

K-STFにおける超伝導空洞性能試験(縦測定)設備の構築」第5回日本加速器学会

年会プロシーディング、東広島 (2008) p888-891.

[11] 加古永治、「超伝導空洞の高周波設計」高エネルギー加速器セミナー OHO '06テキ

スト、 (2006) 7章 p1-29.

[12] 加古永治、佐藤昌史、宍戸寿郎、野口修一、羽鳥浩文、早野仁司、山本康史、渡辺 謙、

「STFにおけるTESLA-like空洞のクライオモジュール試験」加速器学会誌「加速器」

Vol. 5, No. 2, (2008) p117-126.

[13] 渡辺 謙、「超伝導9セル加速空洞の高次モードに関する研究」博士課程学位論文、

(2008) 総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科

[14] K. Watanabe, H. Hayano, S. Noguchi, E. Kako, T. Shishido, “Higher Order Mode

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[15] E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi, T. Shishido, K. Watanabe, Y. Yamamoto,

“Construction of the Baseline SC Cavity System for STF at KEK”, Proc. of PAC07,

Albuquerque, New Mexico, USA (2007) p2107-2109.

[16] K. Sennyu, H. Hara, M. Matsuoka, “Design and Fabrication of Superconducting

Cavities for STF”, Proc. of PAC07, Albuquerque, New Mexico, USA (2007)

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[17] E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi, N. Ohuchi, M. Sato, T. Shishido, K. Watanabe,

Y. Yamamoto, “Cryomodule Tests of the STF Baseline 9-cell Cavities at KEK”,

Proc. of EPAC2008, Genoa, Italy (2008) p868-870.

[18] Y. Yamamoto, H. Hayano, E. Kako, S. Noguchi, M. Sato, T. Shishido, K. Umemori,

K. Watanabe, H. Sakai, K. Shinoe, S.I. Moon, Q.J. Xu, “Cavity Diagnostic System

for the Vertical Test of the STF Baseline 9-cell Cavity at KEK”, Proc. of

EPAC2008, Genoa, Italy (2008) p643-645.

[19] K. Sennyu, H. Hara, M. Matsuoka, T. Yanagisawa, “Status of the Superconducting

Cavity Development for ILC at MHI”, Proc. of EPAC2008, Genoa, Italy (2008)

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[20] S. Noguchi, E. Kako, K. Watanabe, K. Sennyu, “STF Baseline Cavities and RF

Components”, Proc. of SRF2005, Ithaca, New York, USA (2005) ThP30.

[21] S. Noguchi, “Review of New Tuner Designs”, Proc. of SRF2007, Beijing, China

(2007) WE303.

[22] E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi, T. Shishido, K. Watanabe, Y. Yamamoto, “High

Power Input Couplers for the STF Baseline Cavity System at KEK”, Proc. of SRF2007,

Beijing, China (2007) TUP60.

[23] E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi, T. Shishido, K. Umemori, Y. Yamamoto, K. Watanabe,

H. Sakai, K. Shinoe, S.I. Moon, Q.J. Xu, “Vertical Test Results on the STF

Baseline 9-cell Cavities at KEK”, Proc. of SRF2007, Beijing, China (2007) WEP10.

[24] Y. Yamamoto, H. Hayano, E. Kako, S. Noguchi, T. Shishido, K. Umemori, H. Sakai,

K. Shinoe, S.I. Moon, K. Watanabe, Q.J. Xu, “Cavity Diagnostic System for the

Vertical Test of the Baseline SC Cavity in KEK-STF”, Proc. of SRF2007, Beijing,

China (2007) WEP13.

[25] K. Watanabe, S. Noguchi, E. Kako, T. Shishido, H. Hayano, “New HOM Coupler

Design for ILC Superconducting Cavity”, Nucl. Instr. & Meth. in Phys. Research

A 595 (2008) p299-31

[26] Y. Yamamoto, H. Hayano, E. Kako, T. Matsumoto, S. Michizono, T. Miura, S. Noguchi,

M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, “Experimental result of Lorentz detuning

in STF phase-1 at KEK-STF”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) TUPPO007.

[27] E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi, M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe and Y.

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Berlin, Germany (2009) TUPPO021.

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[29] K. Watanabe, S. Noguchi, E. Kako, T. Shishido, Y. Yamamoto, K. Umemori, M. Sato,

“SC cavity system for ERL injector at KEK”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany

(2009) TUPPO056.

[30] X. Zhao, R. L. Geng(JLAB), Y. Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki, T.

Saeki, M. Sawabe, K. Ueno, K. Watanabe(KEK) , “Surface characterization of

niobium samples electropolished together with real cavities”, Proc. of SRF2009,

Berlin, Germany (2009) TUPPO086.

[31] T. Saeki, Y. Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki, M. Sawabe, K. Ueno,

K. Watanabe(KEK) , C. Antonie, S. Berry, F. Eozenou, Y. Gasser, B.

Visentin(CEA-Saclay), P.V.Tyagi(GAUS), W. Clemens, R. L. Geng, R. Manus(JLAB),

“R&D for the post-EP process of superconducting RF cavity”, Proc. of SRF2009,

Berlin, Germany (2009) THPPO085.

[32] E. Kako, S. Noguchi, M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, Y. Yamamoto (KEK) ,

H. Jenhani(LAL-Orsay), T. X. Zhao(IHEP), “Advances and performance of input

couplers at KEK”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) THOBAU02.

[33] K. Umemori, T. Furuya, E. Kako, S. Noguchi, H. Sakai, M. Satoh, T. Shishido,

T. Takahashi, K. Watanabe, Y. Yamamoto (KEK) , K. Shinoe(ISSP-Tokyo), M.

Sawamura(JAEA), “Compact ERL Linac”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009)

FROAAU04.

44 45

Page 49: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

[3] 野口修一、梅森健成、加古永治、阪井寛志、宍戸寿郎、篠江憲治、早野仁司、山本康

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[4] 宍戸寿郎、加古永治、野口修一、早野仁司、渡辺謙、「STFベースライン超伝導空洞に

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[5] 渡辺 謙、加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、「ILCベースラインのための超

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[6] 宍戸寿郎、梅森健成、加古永治、野口修一、早野仁司、山本康史、阪井寛志、篠江憲

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[7] 渡辺 謙、加古永治、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、「ILC超伝導空洞のための高調

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[10] 山本康史、加古永治、佐藤昌史、宍戸寿郎、野口修一、早野仁司、渡辺 謙、「KE

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[11] 加古永治、「超伝導空洞の高周波設計」高エネルギー加速器セミナー OHO '06テキ

スト、 (2006) 7章 p1-29.

[12] 加古永治、佐藤昌史、宍戸寿郎、野口修一、羽鳥浩文、早野仁司、山本康史、渡辺 謙、

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[13] 渡辺 謙、「超伝導9セル加速空洞の高次モードに関する研究」博士課程学位論文、

(2008) 総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科

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[25] K. Watanabe, S. Noguchi, E. Kako, T. Shishido, H. Hayano, “New HOM Coupler

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[26] Y. Yamamoto, H. Hayano, E. Kako, T. Matsumoto, S. Michizono, T. Miura, S. Noguchi,

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in STF phase-1 at KEK-STF”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) TUPPO007.

[27] E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi, M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe and Y.

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[28] Y. Iwashita, H. Fujisawa, H. Tongu (Kyoto University), H. Hayano, K. Watanabe

and Y. Yamamoto(KEK), “R&D of nondestructive inspection systems for SRF

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[29] K. Watanabe, S. Noguchi, E. Kako, T. Shishido, Y. Yamamoto, K. Umemori, M. Sato,

“SC cavity system for ERL injector at KEK”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany

(2009) TUPPO056.

[30] X. Zhao, R. L. Geng(JLAB), Y. Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki, T.

Saeki, M. Sawabe, K. Ueno, K. Watanabe(KEK) , “Surface characterization of

niobium samples electropolished together with real cavities”, Proc. of SRF2009,

Berlin, Germany (2009) TUPPO086.

[31] T. Saeki, Y. Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki, M. Sawabe, K. Ueno,

K. Watanabe(KEK) , C. Antonie, S. Berry, F. Eozenou, Y. Gasser, B.

Visentin(CEA-Saclay), P.V.Tyagi(GAUS), W. Clemens, R. L. Geng, R. Manus(JLAB),

“R&D for the post-EP process of superconducting RF cavity”, Proc. of SRF2009,

Berlin, Germany (2009) THPPO085.

[32] E. Kako, S. Noguchi, M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, Y. Yamamoto (KEK) ,

H. Jenhani(LAL-Orsay), T. X. Zhao(IHEP), “Advances and performance of input

couplers at KEK”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) THOBAU02.

[33] K. Umemori, T. Furuya, E. Kako, S. Noguchi, H. Sakai, M. Satoh, T. Shishido,

T. Takahashi, K. Watanabe, Y. Yamamoto (KEK) , K. Shinoe(ISSP-Tokyo), M.

Sawamura(JAEA), “Compact ERL Linac”, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009)

FROAAU04.

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50

F. CW超伝導加速空洞技術の開発 Development of Superconducting Accelerating Cavity for CW Operation

概 要

本課題は小型 X 線発生装置の光源となる電子の加速に連続(CW)運転が可能な

超伝導空洞を適用することによって、X線輝度を飛躍的に向上させようとするも

のである。そこでは CW 運転が可能な空洞本体や高周波電力源、その電力を極低

温空洞へ伝送する入力結合器などが不可欠であり、それらの基本要素開発を続

けている。本年度はさらにそれらを集約するモジュール設計に着手した。

1.はじめに

X 線は医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。研究の進展は発生す

る X 線の輝度、時間構造、スペクトラムなどに制限されており、研究の裾野を広げるため

にも小型でかつ高輝度 X 線発生が可能な装置開発が進められている。本研究課題はさらに

その発展型として輝度を飛躍的に向上させることができる CW モード(連続運転)を考え、

そこで必要になる超伝導加速空洞を開発している。昨年度は CW ビームシステムの概念設計

の検討とともに、CW ビーム対応型高電界超伝導空洞試作機の性能測定ならびに入力結合器

の設計、システムに不可欠な大電力高周波源開発を行った。そこで本年度はそれらの基本

構成要素の開発を継続すると共に新たに高調波減衰器の設計を始め、さらにこれらを集約

する CW 空洞モジュール設計に着手した。

2.CW 方式の基幹技術

高電界を用いると短い加速空洞で十分な加速電圧が得られるが、電力や冷却の制限から

パルス運転になるため、平均電流値は小さく抑えられる。これに対しCW運転ではピーク

値は小さくても大きい平均電流値が得られるため、発生する放射光の輝度にも飛躍的な向

上が期待できる。図1にそのシステム概要を示す。電子銃からの CW ビームを 3MV 程度の入

射空洞で加速した上で 22MV の主空洞で加速する。そのビームを放射光光源として利用した

後は、再び主空洞に減速位相で入射しビームの運動エネルギーを回収することで、廃棄す

るビーム電力を一桁小さくすることが出来る。これらを構成する要素として技術の基幹と

なるものは CW 型の超伝導主加速空洞であり、さらに入射部には 300kW 級の CW 型高周波電

力源とその電力を伝える入力結合器および入射部加速空洞である。本課題はこれらの要素

技術の開発を行うものである。

51

図 1:次世代小型高輝度光子ビーム源の CW 稼働概念図

3. 空洞開発

3-1. 9 連型主空洞の開発

CW 型空洞として試作した 1.3GHz ニオブ空洞形状を図2に示す。高調波対策として大口

径ビームパイプ及び EFB と命名された偏心型モード変換部を取付け、これまでにない 4 極

モード対策を有する 9 連空洞になっている。この形状の問題はアイリス径を大きくしたこ

とによる電場の集中とそれに伴う電子放出の影響であり、試作 9 連空洞のここまでの最高

電場は 17MV/m である(図3)。その原因究明のために電子放出などの現象を正確に把握し

その場所を特定するための空洞診断技術の開発を積極的に進めてきた。

計測中の空洞外面に沿ってセンサー群を周回させる低温下での放射線観測(図4)は 8-9

セル間のアイリスでの電子放出を示唆した(図5)。昇温後の内部観察で該当箇所に図6

に見られる小突起が発見され、電子の軌道シミュレーションはこの場所が電子放出源であ

る可能性を示した。そのためこれを機械的に除去し、その効果を見るための低温測定を進

めている。

図2:CW 駆動型 9セル超伝導加速空洞形状

46 47

Page 51: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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F. CW超伝導加速空洞技術の開発 Development of Superconducting Accelerating Cavity for CW Operation

概 要

本課題は小型 X 線発生装置の光源となる電子の加速に連続(CW)運転が可能な

超伝導空洞を適用することによって、X線輝度を飛躍的に向上させようとするも

のである。そこでは CW 運転が可能な空洞本体や高周波電力源、その電力を極低

温空洞へ伝送する入力結合器などが不可欠であり、それらの基本要素開発を続

けている。本年度はさらにそれらを集約するモジュール設計に着手した。

1.はじめに

X 線は医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。研究の進展は発生す

る X 線の輝度、時間構造、スペクトラムなどに制限されており、研究の裾野を広げるため

にも小型でかつ高輝度 X 線発生が可能な装置開発が進められている。本研究課題はさらに

その発展型として輝度を飛躍的に向上させることができる CW モード(連続運転)を考え、

そこで必要になる超伝導加速空洞を開発している。昨年度は CW ビームシステムの概念設計

の検討とともに、CW ビーム対応型高電界超伝導空洞試作機の性能測定ならびに入力結合器

の設計、システムに不可欠な大電力高周波源開発を行った。そこで本年度はそれらの基本

構成要素の開発を継続すると共に新たに高調波減衰器の設計を始め、さらにこれらを集約

する CW 空洞モジュール設計に着手した。

2.CW 方式の基幹技術

高電界を用いると短い加速空洞で十分な加速電圧が得られるが、電力や冷却の制限から

パルス運転になるため、平均電流値は小さく抑えられる。これに対しCW運転ではピーク

値は小さくても大きい平均電流値が得られるため、発生する放射光の輝度にも飛躍的な向

上が期待できる。図1にそのシステム概要を示す。電子銃からの CW ビームを 3MV 程度の入

射空洞で加速した上で 22MV の主空洞で加速する。そのビームを放射光光源として利用した

後は、再び主空洞に減速位相で入射しビームの運動エネルギーを回収することで、廃棄す

るビーム電力を一桁小さくすることが出来る。これらを構成する要素として技術の基幹と

なるものは CW 型の超伝導主加速空洞であり、さらに入射部には 300kW 級の CW 型高周波電

力源とその電力を伝える入力結合器および入射部加速空洞である。本課題はこれらの要素

技術の開発を行うものである。

51

図 1:次世代小型高輝度光子ビーム源の CW 稼働概念図

3. 空洞開発

3-1. 9 連型主空洞の開発

CW 型空洞として試作した 1.3GHz ニオブ空洞形状を図2に示す。高調波対策として大口

径ビームパイプ及び EFB と命名された偏心型モード変換部を取付け、これまでにない 4 極

モード対策を有する 9 連空洞になっている。この形状の問題はアイリス径を大きくしたこ

とによる電場の集中とそれに伴う電子放出の影響であり、試作 9 連空洞のここまでの最高

電場は 17MV/m である(図3)。その原因究明のために電子放出などの現象を正確に把握し

その場所を特定するための空洞診断技術の開発を積極的に進めてきた。

計測中の空洞外面に沿ってセンサー群を周回させる低温下での放射線観測(図4)は 8-9

セル間のアイリスでの電子放出を示唆した(図5)。昇温後の内部観察で該当箇所に図6

に見られる小突起が発見され、電子の軌道シミュレーションはこの場所が電子放出源であ

る可能性を示した。そのためこれを機械的に除去し、その効果を見るための低温測定を進

めている。

図2:CW 駆動型 9セル超伝導加速空洞形状

46 47

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52

図3 9 連試作空洞の性能測定結果

図4 空洞診断装置

図5 9 連空洞の放射線分布。横軸は回転角

度。150 度の○印位置に図6の突起が発見され

た。

図6 8 セルと 9 セルの間のアイリス溶

接シ―ム脇に小突起が見つかった。

3-2. 入射空洞開発

入射空洞は加速電圧は低いがビームへ伝

送する高周波電力が大きいため、2本の入力

結合器を装備する 2 セル型超伝導空洞を採用

する(図7)。これによって結合器1本当た

りの負担を半減することが出来る。昨年度に

試作したこの形式の空洞について、今年度は

空洞単体での性能試験を実施し、40MV/m とい

う加速電場を得た。これは設計値の 15MV/m

を大きく上回る値である。現在は入力結合器

の電力試験を準備している。

図7:CW 型入射用 2セル超伝導空洞形状

53

4. 周辺部品の開発

主空洞の重要な要素として、入力結合器、高調波減衰器、周波数チューナーなどがあり、

それらの開発を行った。主空洞には 20kW 級の CW 電力が全反射状態で供給されるため、結

合度とともにセラミック窓やベローズの定在波に対する位置が冷却対策として重要な意味

を持つ。試作部品を使って冷却条件などの試験を進めていたが、ある定在波条件下では 4kW

でもセラミック窓が昇温・破損する事態が発生した。これは冷却対策として行った窓周辺

の寸法変更により、セラミック部に 1.3GHz の共振モードが出現したために生じた発熱が原

因であることが判明した。その対策としてセラミック厚みを 6.2mm から 5.4mm へ薄くした

改良窓を製作し、その共振周波数を 30MHz 上昇させた。現在はその電力試験の準備を進め

ている。高調波減衰器には、広帯域の確保と CW ビームによる 150W 高調波電力を考慮した

結果、フェライトを用いたビームライン型を採用することにした。フェライトは 70K に冷

却され、2K 空洞への熱侵入を減らすためにクシ歯型の RF コンタクト付きベローズで熱絶縁

される。このため 70K でのフェライトの減衰特性の計測を進めるとともにフェライトなし

のベローズ構造を試作し、切削油や製作手順などフェライトを保護する製作手法の確立、

両フランジ間の自由度計測、冷却方式の検証などの試験を続けている(図8)。周波数チ

ューナーには、粗調整用のスライドジャッキ、微調整用のピエゾ素子を併用した可動範囲

が 600kHz 級の周波数チューナーを採用し、その設計と試作を進めている。

図8 オフセットを計測中の試作ダンパ

ー(フェライトなし)。

5. モジュール設計

パルス駆動の超伝導空洞 1台当たりの2Kへの RF損失が 1W程度であるのに比して CW型

空洞は 40W になる。このため冷却能力の増強が必要であり、直径 300mm のヘリウムジャケ

ットに収納された 9 連空洞 2 台が上述の各要素とともにチタン枠に固定されるクライオス

タット構造の設計を進めている(図9)。本年度はその基本設計を完成し、材料強度や板

厚の設定およびそれに基づく空洞構造の機械強度、固有振動モードと補強の解析を行い、

強度保証と高圧ガス保安法対応のための資料作成を行った。また構造設計に必要な情報と

48 49

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図3 9 連試作空洞の性能測定結果

図4 空洞診断装置

図5 9 連空洞の放射線分布。横軸は回転角

度。150 度の○印位置に図6の突起が発見され

た。

図6 8 セルと 9 セルの間のアイリス溶

接シ―ム脇に小突起が見つかった。

3-2. 入射空洞開発

入射空洞は加速電圧は低いがビームへ伝

送する高周波電力が大きいため、2本の入力

結合器を装備する 2 セル型超伝導空洞を採用

する(図7)。これによって結合器1本当た

りの負担を半減することが出来る。昨年度に

試作したこの形式の空洞について、今年度は

空洞単体での性能試験を実施し、40MV/m とい

う加速電場を得た。これは設計値の 15MV/m

を大きく上回る値である。現在は入力結合器

の電力試験を準備している。

図7:CW 型入射用 2セル超伝導空洞形状

53

4. 周辺部品の開発

主空洞の重要な要素として、入力結合器、高調波減衰器、周波数チューナーなどがあり、

それらの開発を行った。主空洞には 20kW 級の CW 電力が全反射状態で供給されるため、結

合度とともにセラミック窓やベローズの定在波に対する位置が冷却対策として重要な意味

を持つ。試作部品を使って冷却条件などの試験を進めていたが、ある定在波条件下では 4kW

でもセラミック窓が昇温・破損する事態が発生した。これは冷却対策として行った窓周辺

の寸法変更により、セラミック部に 1.3GHz の共振モードが出現したために生じた発熱が原

因であることが判明した。その対策としてセラミック厚みを 6.2mm から 5.4mm へ薄くした

改良窓を製作し、その共振周波数を 30MHz 上昇させた。現在はその電力試験の準備を進め

ている。高調波減衰器には、広帯域の確保と CW ビームによる 150W 高調波電力を考慮した

結果、フェライトを用いたビームライン型を採用することにした。フェライトは 70K に冷

却され、2K 空洞への熱侵入を減らすためにクシ歯型の RF コンタクト付きベローズで熱絶縁

される。このため 70K でのフェライトの減衰特性の計測を進めるとともにフェライトなし

のベローズ構造を試作し、切削油や製作手順などフェライトを保護する製作手法の確立、

両フランジ間の自由度計測、冷却方式の検証などの試験を続けている(図8)。周波数チ

ューナーには、粗調整用のスライドジャッキ、微調整用のピエゾ素子を併用した可動範囲

が 600kHz 級の周波数チューナーを採用し、その設計と試作を進めている。

図8 オフセットを計測中の試作ダンパ

ー(フェライトなし)。

5. モジュール設計

パルス駆動の超伝導空洞 1台当たりの2Kへの RF損失が 1W程度であるのに比して CW型

空洞は 40W になる。このため冷却能力の増強が必要であり、直径 300mm のヘリウムジャケ

ットに収納された 9 連空洞 2 台が上述の各要素とともにチタン枠に固定されるクライオス

タット構造の設計を進めている(図9)。本年度はその基本設計を完成し、材料強度や板

厚の設定およびそれに基づく空洞構造の機械強度、固有振動モードと補強の解析を行い、

強度保証と高圧ガス保安法対応のための資料作成を行った。また構造設計に必要な情報と

48 49

Page 54: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

54

して、チタンフランジやガスケットの組合せ、チューナー用ロードセルや高周波コネクタ

ーなどの極低温への適応性や熱伝導率の実験計測などを進めている。

図9 CW ビームシステム主空洞モジュール

6. 300kW・CW 大電力マイクロ波源の完成と試験

平成 20 年度、クライストロンの要素部品の開発を行い、部品として①電子銃②入力及び

中間空洞③出力空洞及び出力回路④コレクター⑤外部アクセサリー(集束コイルや架台)

などが製作され、一部コールド試験での評価などを行った。引き続いて平成 21 年度ではそ

れらの部品を合体し真空管とし

ての完成(排気、ベーク、電圧エ

ージングを含む)に到った。この

完成したクライストロンと平成

20 年度製造完了した 1.3GHz帯

の CW、150kWサーキュレータを

用いて総合的な評価試験を行っ

た。本評価では、本来使用する大

電力直流電源の製作スケジュー

ル及び設置場所の問題から、次の

段階に譲り、平成 21 年度は予備

品として KEK にある仮電源で約

200kWのマイクロ波電力まで評

価した。但し製造元の東芝での検

収では必要な使用は全て満足し、

又効率も 60%以上という優秀な

図 10:300kW クライストロンの仕様と試験結果

(検収データ)

55

結果を確認した。図 10 にその時のデータを示す。

図 11 にクライストロンアセンブリ単体の写真と、KEK での評価試験のための据付時の写

真を示した。ここでは直流高電圧 44kV 印加して大電力マイクロ波電力 150kW までの試験を

行った。150kW 出力は仮電源での電

圧による制限と、サーキュレータ

の仕様が 150kW であることから決

めたものである。又その後位相測

定その他必要なデータを全て取り

終え、ひとまず 300kW 大電力クラ

イストロンの開発は成功裏に終了

した。今後は量子ビーム計画で必

要なCW超電導加速空洞の開発研究

のマイクロ波源として開発に供さ

れる。

7. 次年度へ向けて

上記結果を踏まえて22年度では

(1) 生産前 9連空洞試作機の完成と性能確認試験の実施。

(2) 主空洞モジュール用の本機部品の製作を開始する。

(3) 周辺部品開発としては、フェライト付きダンパーの試作を進めており、

次年度はそれを用いて 70K の低温試験を行う。また周波数チューナーについても、

極低温下での動作試験を実施する。

(4) CW クライストロンを使った高周波電力試験設備の整備。

(5)2セル入射空洞用入力電力結合器の電力試験を推進する。

開発スタッフ

責任者 : 古屋貴章(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 梅森健成、阪井寛志、坂中章悟、高橋毅(高エネルギー加速器研究

機構)

篠江憲治(東大物性研)、沢村勝(原科研)

発表文献等

1) H. Sakai, K. Umemori, S. Sakanaka, T. Takahashi, T. Furuya, A. Ishii, K. Shinoe,

N. Nakamura, M. Sawamura, “Development of Input Power Coupler for ERL Main Linac

in Japan”, Proc. of the SRF2009, Berlin, 2009.

図 11:写真右は KEK で据付。手前にサーキュレータ

がある。写真左はクライストロンアセンブリ単体の写

真。

50 51

Page 55: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

54

して、チタンフランジやガスケットの組合せ、チューナー用ロードセルや高周波コネクタ

ーなどの極低温への適応性や熱伝導率の実験計測などを進めている。

図9 CW ビームシステム主空洞モジュール

6. 300kW・CW 大電力マイクロ波源の完成と試験

平成 20 年度、クライストロンの要素部品の開発を行い、部品として①電子銃②入力及び

中間空洞③出力空洞及び出力回路④コレクター⑤外部アクセサリー(集束コイルや架台)

などが製作され、一部コールド試験での評価などを行った。引き続いて平成 21 年度ではそ

れらの部品を合体し真空管とし

ての完成(排気、ベーク、電圧エ

ージングを含む)に到った。この

完成したクライストロンと平成

20 年度製造完了した 1.3GHz帯

の CW、150kWサーキュレータを

用いて総合的な評価試験を行っ

た。本評価では、本来使用する大

電力直流電源の製作スケジュー

ル及び設置場所の問題から、次の

段階に譲り、平成 21 年度は予備

品として KEK にある仮電源で約

200kWのマイクロ波電力まで評

価した。但し製造元の東芝での検

収では必要な使用は全て満足し、

又効率も 60%以上という優秀な

図 10:300kW クライストロンの仕様と試験結果

(検収データ)

55

結果を確認した。図 10 にその時のデータを示す。

図 11 にクライストロンアセンブリ単体の写真と、KEK での評価試験のための据付時の写

真を示した。ここでは直流高電圧 44kV 印加して大電力マイクロ波電力 150kW までの試験を

行った。150kW 出力は仮電源での電

圧による制限と、サーキュレータ

の仕様が 150kW であることから決

めたものである。又その後位相測

定その他必要なデータを全て取り

終え、ひとまず 300kW 大電力クラ

イストロンの開発は成功裏に終了

した。今後は量子ビーム計画で必

要なCW超電導加速空洞の開発研究

のマイクロ波源として開発に供さ

れる。

7. 次年度へ向けて

上記結果を踏まえて22年度では

(1) 生産前 9連空洞試作機の完成と性能確認試験の実施。

(2) 主空洞モジュール用の本機部品の製作を開始する。

(3) 周辺部品開発としては、フェライト付きダンパーの試作を進めており、

次年度はそれを用いて 70K の低温試験を行う。また周波数チューナーについても、

極低温下での動作試験を実施する。

(4) CW クライストロンを使った高周波電力試験設備の整備。

(5)2セル入射空洞用入力電力結合器の電力試験を推進する。

開発スタッフ

責任者 : 古屋貴章(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 梅森健成、阪井寛志、坂中章悟、高橋毅(高エネルギー加速器研究

機構)

篠江憲治(東大物性研)、沢村勝(原科研)

発表文献等

1) H. Sakai, K. Umemori, S. Sakanaka, T. Takahashi, T. Furuya, A. Ishii, K. Shinoe,

N. Nakamura, M. Sawamura, “Development of Input Power Coupler for ERL Main Linac

in Japan”, Proc. of the SRF2009, Berlin, 2009.

図 11:写真右は KEK で据付。手前にサーキュレータ

がある。写真左はクライストロンアセンブリ単体の写

真。

50 51

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56

2) M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori ,H. Sakai, K. Shinoe, “ERL HOM Absorber

Development”, Proc. of the SRF2009, Berlin, 2009.

3) M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori ,H. Sakai, K. Shinoe, T. Takahashi, “Status

of 9-cell Superconducting cavity development for ERL project in Japan”, Proc.

of the SRF2009, Berlin, 2009.

4) K. Umemori,“Status of the Energy Recovery Linac Project in Japan”,

5) S. Fukuda、他、“RF SOURCE OF COMPACT ERL (cERL) IN KEK”、 第 6回日本加速器学

会年会、日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所、2009 年 8 月 5 日-7日.

57

G. 高周波超伝導空洞用入力カプラーの開発

Development of Input Coupler for CW Superconducting RF Cavity

概 要

昨年度の大電力試験において観測されたcold窓の急激な温度上昇は、共鳴周

波数が1.3GHz加速周波数に非常に近いダイポールモードが原因であることが高

周波シミュレーションによって示された。そのために、セラミック窓の厚みを

6.2mmから5.4mmに変更して共鳴周波数を30MHzほど高くする設計とし、その設計

をもとに改良cold窓が製作された。改良cold窓のローレベル測定の結果、共鳴

周波数がほぼ設計通りの周波数にあることが示された。また、cold窓の液体窒

素による冷却試験では、熱設計に大きな問題がないことが確認された。さらに、

warm窓を用いて真空下で大電力試験を行い、磁場がピークとなる定在波をwarm

窓に与えた時に20kWまでのパワーを投入することができた。

1.はじめに

本研究は1.3GHzCW型超伝導空洞用入力カプラーの開発である。CW型超伝導空洞はエネル

ギーを回収するものとし、加速勾配20MV/m運転時にQL=2×107、最大入力パワー20kWを基本

仕様とする入力カプラーを前年度に設計した。前年度にはまた、入力カプラーで重要なコ

ンポーネントである2種類のセラミック窓(cold窓とwarm窓)とベローズを試作し、テス

トスタンドを構築して大電力試験を行った。空冷によるベローズの温度上昇の抑制は概ね

良好であったが、セラミック窓の1つであるcold窓で急激な温度上昇が見られ、結果的に

cold窓のセラミックが割れることとなった(図1参照)。その後、窓単体の詳細なローレ

ベル測定を行い、セラミック窓の構造に起因する1.305GHzの吸収ピークが存在すること、

そしてそのピークが温度上昇により1.3GHzに近づいてくることが判明した(図2参照)。今

年度は、その原因究明を行った後、cold窓の設計を修正し、新たに改良cold窓を製作・試

験した。また、前年度製作した断熱槽内でcold窓の液体窒素温度下における冷却試験を行

った。さらに真空状態でwarm窓を用いた大電力試験を行い、warm窓での2次電子放出など

の測定を試みた。

52 53

Page 57: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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2) M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori ,H. Sakai, K. Shinoe, “ERL HOM Absorber

Development”, Proc. of the SRF2009, Berlin, 2009.

3) M. Sawamura, T. Furuya, K. Umemori ,H. Sakai, K. Shinoe, T. Takahashi, “Status

of 9-cell Superconducting cavity development for ERL project in Japan”, Proc.

of the SRF2009, Berlin, 2009.

4) K. Umemori,“Status of the Energy Recovery Linac Project in Japan”,

5) S. Fukuda、他、“RF SOURCE OF COMPACT ERL (cERL) IN KEK”、 第 6回日本加速器学

会年会、日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所、2009 年 8 月 5 日-7日.

57

G. 高周波超伝導空洞用入力カプラーの開発

Development of Input Coupler for CW Superconducting RF Cavity

概 要

昨年度の大電力試験において観測されたcold窓の急激な温度上昇は、共鳴周

波数が1.3GHz加速周波数に非常に近いダイポールモードが原因であることが高

周波シミュレーションによって示された。そのために、セラミック窓の厚みを

6.2mmから5.4mmに変更して共鳴周波数を30MHzほど高くする設計とし、その設計

をもとに改良cold窓が製作された。改良cold窓のローレベル測定の結果、共鳴

周波数がほぼ設計通りの周波数にあることが示された。また、cold窓の液体窒

素による冷却試験では、熱設計に大きな問題がないことが確認された。さらに、

warm窓を用いて真空下で大電力試験を行い、磁場がピークとなる定在波をwarm

窓に与えた時に20kWまでのパワーを投入することができた。

1.はじめに

本研究は1.3GHzCW型超伝導空洞用入力カプラーの開発である。CW型超伝導空洞はエネル

ギーを回収するものとし、加速勾配20MV/m運転時にQL=2×107、最大入力パワー20kWを基本

仕様とする入力カプラーを前年度に設計した。前年度にはまた、入力カプラーで重要なコ

ンポーネントである2種類のセラミック窓(cold窓とwarm窓)とベローズを試作し、テス

トスタンドを構築して大電力試験を行った。空冷によるベローズの温度上昇の抑制は概ね

良好であったが、セラミック窓の1つであるcold窓で急激な温度上昇が見られ、結果的に

cold窓のセラミックが割れることとなった(図1参照)。その後、窓単体の詳細なローレ

ベル測定を行い、セラミック窓の構造に起因する1.305GHzの吸収ピークが存在すること、

そしてそのピークが温度上昇により1.3GHzに近づいてくることが判明した(図2参照)。今

年度は、その原因究明を行った後、cold窓の設計を修正し、新たに改良cold窓を製作・試

験した。また、前年度製作した断熱槽内でcold窓の液体窒素温度下における冷却試験を行

った。さらに真空状態でwarm窓を用いた大電力試験を行い、warm窓での2次電子放出など

の測定を試みた。

52 53

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58

図1:大電力試験後の割れた cold 窓。 図2:温度に対する S21 の変化。1.305GHz 付近に

共鳴ピークが見られる。

2. cold 窓の改良

前年度の大電力試験後の cold 窓のローレベル測定で、1.3GHz 付近に共鳴ピークが存在

することが判明した。今年度はまず、HFSS および MW-Studio によるこの cold 窓の詳細な高

周波シミュレーションを行った。図3がその計算結果である。1.3GHz 付近にダイポールモ

ードの共鳴ピークがあることが分かった。Q値はおよそ 1×104程度であり、ローレベル測定

の結果に見られたピークに近いものであった。

この共鳴ピークはセラミック窓の誘電率、厚み、及び内導体、外導体の半径に依存する

ことが分かった。このピークがローレベル測定で見られる共鳴ピークである可能性が高い

ため、これらの依存パラメータの中で変えることが可能なセラミック窓の厚みに対して、

この共鳴周波数の依存性を計算で求めた。図4が、計算で求めたセラミック窓の共鳴周波

数とセラミック窓の厚みとの関係である。計算では厚みを 1mm 小さくすることでおよそ

39MHz 変化することが分かった。そこで改良 cold 窓のセラミック厚を前の設計値 6.2mm よ

りも 0.8mm 小さい 5.4mm とし、30MHz 程度周波数を上げる設計とした。図5が実際に製作し

た改良 cold 窓である。セラミック窓を薄くしたことによる機械的な影響は見つからず、真

空リークもなかった。改良 cold 窓の S-parameter を測定した結果を旧 cold 窓と比較して

図6に示す。HFSS の計算による周波数の変化が+31.2MHz に対し、周波数測定のピークの変

化が+30.0MHz となり、ほぼ設計通りにピークがずれていることが確認できた。

59

図3:セラミック窓に立つダイポールモード(計

算)。

図4:セラミック窓の共鳴周波数とセラ

ミック窓厚との関係(計算)。

図5:改良 cold 窓(写真)。 図6:改良前後の cold 窓のローレベル測定

結果。

3.cold 窓の液体窒素温度冷却テスト

カプラーは 2K 温度の空洞への入熱を減らすべく cold 窓は液体窒素温度である 80K の温

度定点に接続される。そこから cold 部の内導体等での発熱を吸収する必要がある。特に内

導体からの発熱は投入パワー10kW の定在波の状況下では、30W 程度の発熱が 80K の温度定

点に集中すると予想される。この発熱を cold 窓を通じてその外部にある 80K の温度定点か

ら吸収しようとしているが、発熱を設計通りに吸収できるかが一つの課題である。今年度

は前年度製作した断熱槽を用いて、液体窒素冷却時におけるセラミック窓の入熱が設計通

りであるかを確認した。

54 55

Page 59: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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図1:大電力試験後の割れた cold 窓。 図2:温度に対する S21 の変化。1.305GHz 付近に

共鳴ピークが見られる。

2. cold 窓の改良

前年度の大電力試験後の cold 窓のローレベル測定で、1.3GHz 付近に共鳴ピークが存在

することが判明した。今年度はまず、HFSS および MW-Studio によるこの cold 窓の詳細な高

周波シミュレーションを行った。図3がその計算結果である。1.3GHz 付近にダイポールモ

ードの共鳴ピークがあることが分かった。Q値はおよそ 1×104程度であり、ローレベル測定

の結果に見られたピークに近いものであった。

この共鳴ピークはセラミック窓の誘電率、厚み、及び内導体、外導体の半径に依存する

ことが分かった。このピークがローレベル測定で見られる共鳴ピークである可能性が高い

ため、これらの依存パラメータの中で変えることが可能なセラミック窓の厚みに対して、

この共鳴周波数の依存性を計算で求めた。図4が、計算で求めたセラミック窓の共鳴周波

数とセラミック窓の厚みとの関係である。計算では厚みを 1mm 小さくすることでおよそ

39MHz 変化することが分かった。そこで改良 cold 窓のセラミック厚を前の設計値 6.2mm よ

りも 0.8mm 小さい 5.4mm とし、30MHz 程度周波数を上げる設計とした。図5が実際に製作し

た改良 cold 窓である。セラミック窓を薄くしたことによる機械的な影響は見つからず、真

空リークもなかった。改良 cold 窓の S-parameter を測定した結果を旧 cold 窓と比較して

図6に示す。HFSS の計算による周波数の変化が+31.2MHz に対し、周波数測定のピークの変

化が+30.0MHz となり、ほぼ設計通りにピークがずれていることが確認できた。

59

図3:セラミック窓に立つダイポールモード(計

算)。

図4:セラミック窓の共鳴周波数とセラ

ミック窓厚との関係(計算)。

図5:改良 cold 窓(写真)。 図6:改良前後の cold 窓のローレベル測定

結果。

3.cold 窓の液体窒素温度冷却テスト

カプラーは 2K 温度の空洞への入熱を減らすべく cold 窓は液体窒素温度である 80K の温

度定点に接続される。そこから cold 部の内導体等での発熱を吸収する必要がある。特に内

導体からの発熱は投入パワー10kW の定在波の状況下では、30W 程度の発熱が 80K の温度定

点に集中すると予想される。この発熱を cold 窓を通じてその外部にある 80K の温度定点か

ら吸収しようとしているが、発熱を設計通りに吸収できるかが一つの課題である。今年度

は前年度製作した断熱槽を用いて、液体窒素冷却時におけるセラミック窓の入熱が設計通

りであるかを確認した。

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60

図7: 断熱槽に入れる前の冷却試験のセットアップ(右図)と液体窒素冷却時にヒーターを発熱

させた時の温度上昇を示したグラフ(左図)。

図7(右図)が冷却試験のためのセットアップである。断熱槽内につるされた液体窒素

溜めからブレード線を通じてセラミック窓を窒素温度まで冷却する。パワー投入時の発熱

を模擬するため、内導体にはヒーターが取り付けられている。内導体、セラミック窓外部

(外導体)の温度、ブレード線の温度、および液体窒素溜めの温度は熱電対により測定さ

れる。図7(左グラフ)は、一旦セラミック窓を断熱槽内にて液体窒素温度まで冷却した

後に、ヒーターで 31W のパワーを入れたときの温度上昇を示している。横軸は時間軸であ

るが、ヒーターにパワー投入後10時間程度でおよそ平衡状態になっている。cold 窓外部

が本来 80K の温度定点を模擬するのであるが、今回はブレード線の長さなどによって温度

定点が発熱時に温度上昇し、内導体は-95℃(178K)、外導体は-144℃(129K)の温度となった。

この測定された内外導体の温度差と熱計算の結果を表1に示す。計算ではセラミック材で

あるアルミナ(Al2O3)の熱伝導度として常温での値 31W/m/K を使用した。

内外導体の温度差

測定値 46.9℃

計算値 41.2℃

表1:31W投入時の内外導体の温度差

測定の温度差が計算値よりも1割ほど温度上昇が大きいものの、およそ計算と良い一致

を示していることが表1から分かる。この結果から、セラミック材の熱伝導度は液体窒素

温度時でもほぼ同じと考えられ、セラミック窓から内導体の発熱を吸収するという我々の

61

設計は現状では問題ないことが確認された。今後、クライオモジュールに組み込む際に適

切なブレード線の長さや個数を考慮し、カプラー設計に反映する予定である。

4.真空条件下での 20kW 大電力試験

前年度の大電力試験は真空条件下で行っていなかったので、今年度は割れずに残った

warm 窓に端板をつけて、その間を真空にして定在波にて大電力試験を行った。

図8:warm 窓大電力試験のセットアップ(図

は磁場ピークが warm 窓に立つ場合)。

図9:定在波の磁場ピークがセラミック窓に

立つ時の計算結果(HFSS)。

図8は大電力試験のセットアップである。図9のように warm 窓から端板までの距離を変

えて電場および磁場の分布を計算し、電場および磁場が warm 窓でピークになるように端板

の距離を決めた。電場ピークが立つ端板と磁場ピークが立つ端板の2種類を用意し、それ

ぞれの条件下で大電力試験を行った。まず磁場ピークが warm 窓に立つときの大電力試験を

行った。図10がその時のパワー投入の履歴である。最初、投入パワー14.5kW までは放電

や真空度悪化によるインターロックは作動しなかったが、14.5kW で放電用アークセンサー

(セラミック窓を直視している光センサ)が反応した。その後は、9kW 前後でも頻繁にアー

クセンサーによるインターロックが作動するとともに、それに伴う電子放出がセラミック

窓近傍のプローブから検出された。これはセラミック窓上での2次電子放出が原因と予想

される。この状態がしばらく続いた後に大きな真空度悪化によるインターロックが作動し

たが、その後は徐々に投入パワーを上げることができた。15kW で同じくアークセンサーに

よるインターロックの発生が頻発したが、大きな真空度悪化によるインターロックが働い

た後には投入パワーを上げることができ、最終的に 20kW までのパワーが投入できた。大電

力試験後にベローズとセラミック窓を観察したが、特に大きな割れやメッキの剥がれなど

なかった。放電プロセスを経た後には、磁場ピークで 20kW までの大電力に対して warm 窓

は問題なく動作することが分かった。

56 57

Page 61: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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図7: 断熱槽に入れる前の冷却試験のセットアップ(右図)と液体窒素冷却時にヒーターを発熱

させた時の温度上昇を示したグラフ(左図)。

図7(右図)が冷却試験のためのセットアップである。断熱槽内につるされた液体窒素

溜めからブレード線を通じてセラミック窓を窒素温度まで冷却する。パワー投入時の発熱

を模擬するため、内導体にはヒーターが取り付けられている。内導体、セラミック窓外部

(外導体)の温度、ブレード線の温度、および液体窒素溜めの温度は熱電対により測定さ

れる。図7(左グラフ)は、一旦セラミック窓を断熱槽内にて液体窒素温度まで冷却した

後に、ヒーターで 31W のパワーを入れたときの温度上昇を示している。横軸は時間軸であ

るが、ヒーターにパワー投入後10時間程度でおよそ平衡状態になっている。cold 窓外部

が本来 80K の温度定点を模擬するのであるが、今回はブレード線の長さなどによって温度

定点が発熱時に温度上昇し、内導体は-95℃(178K)、外導体は-144℃(129K)の温度となった。

この測定された内外導体の温度差と熱計算の結果を表1に示す。計算ではセラミック材で

あるアルミナ(Al2O3)の熱伝導度として常温での値 31W/m/K を使用した。

内外導体の温度差

測定値 46.9℃

計算値 41.2℃

表1:31W投入時の内外導体の温度差

測定の温度差が計算値よりも1割ほど温度上昇が大きいものの、およそ計算と良い一致

を示していることが表1から分かる。この結果から、セラミック材の熱伝導度は液体窒素

温度時でもほぼ同じと考えられ、セラミック窓から内導体の発熱を吸収するという我々の

61

設計は現状では問題ないことが確認された。今後、クライオモジュールに組み込む際に適

切なブレード線の長さや個数を考慮し、カプラー設計に反映する予定である。

4.真空条件下での 20kW 大電力試験

前年度の大電力試験は真空条件下で行っていなかったので、今年度は割れずに残った

warm 窓に端板をつけて、その間を真空にして定在波にて大電力試験を行った。

図8:warm 窓大電力試験のセットアップ(図

は磁場ピークが warm 窓に立つ場合)。

図9:定在波の磁場ピークがセラミック窓に

立つ時の計算結果(HFSS)。

図8は大電力試験のセットアップである。図9のように warm 窓から端板までの距離を変

えて電場および磁場の分布を計算し、電場および磁場が warm 窓でピークになるように端板

の距離を決めた。電場ピークが立つ端板と磁場ピークが立つ端板の2種類を用意し、それ

ぞれの条件下で大電力試験を行った。まず磁場ピークが warm 窓に立つときの大電力試験を

行った。図10がその時のパワー投入の履歴である。最初、投入パワー14.5kW までは放電

や真空度悪化によるインターロックは作動しなかったが、14.5kW で放電用アークセンサー

(セラミック窓を直視している光センサ)が反応した。その後は、9kW 前後でも頻繁にアー

クセンサーによるインターロックが作動するとともに、それに伴う電子放出がセラミック

窓近傍のプローブから検出された。これはセラミック窓上での2次電子放出が原因と予想

される。この状態がしばらく続いた後に大きな真空度悪化によるインターロックが作動し

たが、その後は徐々に投入パワーを上げることができた。15kW で同じくアークセンサーに

よるインターロックの発生が頻発したが、大きな真空度悪化によるインターロックが働い

た後には投入パワーを上げることができ、最終的に 20kW までのパワーが投入できた。大電

力試験後にベローズとセラミック窓を観察したが、特に大きな割れやメッキの剥がれなど

なかった。放電プロセスを経た後には、磁場ピークで 20kW までの大電力に対して warm 窓

は問題なく動作することが分かった。

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62

図10: 大電力試験で磁場ピークを warm 窓に立たせた時のパワー投入履歴。左図:

9kW-15kW までの履歴。右図:15kW-20kW までの履歴。赤は投入パワー(第一軸)を示し、

青は真空度(第二軸)を示している。

次に電場ピークでの大電力試験を行ったが、4kWパワー投入後に真空が大きく漏れ、最終

的にwarm窓が割れる結果となった。これは、図1に示したものと同様にダイポールモード

の共鳴ピークによる急激な発熱による割れであると考えられる。cold窓同様にwarm窓のセ

ラミック厚を変更することでこの発熱や割れを回避することができる。電場ピークによる

放電レベルの測定は改良cold窓による大電力試験にて行う予定である。

5.まとめ

前年度の大電力試験におけるcold窓の急激な発熱と割れは、予期せぬ共鳴ピークによる

もので、その周波数はセラミック窓に立つダイポールモードの周波数とほぼ一致すること

が詳細な高周波シミュレーションによってわかった。この共鳴ピークの周波数を1.3GHzか

ら遠ざけるために、セラミック窓の厚みを6.2mmから5.4mmに変更し、31MHzだけ共鳴周波数

をずらした改良cold窓を製作した。この改良cold窓のローレベル測定を行ったところ、旧

cold窓と改良cold窓の周波数は設計通りに約30MHz周波数がずれていることが確認された。

また、断熱槽を用いたcold窓の液体窒素温度での冷却試験を行い、温度分布の測定値が概

ね計算と一致する結果を得た。これにより熱設計に大きな問題がないことが確認できた。

さらに、warm窓を用いて真空下の大電力試験を行った。定在波の磁場ピークをwarm窓に立

てた状態では、9kWと15kW付近で2次電子放出によると思われる発光が頻発したものの、そ

の後は20kWまでパワーを投入することができた。それに対し、電場ピークでは4kW付近で真

空リークと同時に急激な温度上昇が起こり、セラミックの割れが起こった。これは、前年

度のcold窓のセラミックの割れと同じく、投入した1.3GHz高周波が共鳴ピークに当たって

セラミック窓の発熱で割れたものと予測される。今後は、共鳴ピークをずらした改良cold

63

窓にて電場ピークを立てた場合の大電力試験を行い、高周波設計の確認を行うことになる。

また、高周波設計と熱設計の方針を決定し、実機カプラーの設計・製作を行う。

開発スタッフ

責任者 : 中村典雄(東京大学物性研究所)

担当者 : 高木宏之、篠江憲治、渋谷孝、工藤博文、伊藤功(東京大学物性研究所)、

阪井寛志(高エネルギー加速器研究機構)

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

発表論文

[1] H. Sakai et al., “Development of input power coupler for ERL main linac in

Japan”, Proceedings of SRF2009, Berlin, Germany, 2009, pp.684-688.

[2] 阪井寛志 他、「ERL 主ライナックのための 1.3GHz 入力カプラーの開発」、 第6

回加速器学会プロシーディングス、東海、茨城 (2009)。

[3] H. Sakai et al.,“KEK ERL Cryomodule Development”, Proceedings of ERL2009,

Ithca, New York (2009).

[4] K. Umemori et al., “COMPACT ERL LINAC”, Proceedings of SRF2009, Berlin,

Germany, 2009, pp.896-901.

58 59

Page 63: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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図10: 大電力試験で磁場ピークを warm 窓に立たせた時のパワー投入履歴。左図:

9kW-15kW までの履歴。右図:15kW-20kW までの履歴。赤は投入パワー(第一軸)を示し、

青は真空度(第二軸)を示している。

次に電場ピークでの大電力試験を行ったが、4kWパワー投入後に真空が大きく漏れ、最終

的にwarm窓が割れる結果となった。これは、図1に示したものと同様にダイポールモード

の共鳴ピークによる急激な発熱による割れであると考えられる。cold窓同様にwarm窓のセ

ラミック厚を変更することでこの発熱や割れを回避することができる。電場ピークによる

放電レベルの測定は改良cold窓による大電力試験にて行う予定である。

5.まとめ

前年度の大電力試験におけるcold窓の急激な発熱と割れは、予期せぬ共鳴ピークによる

もので、その周波数はセラミック窓に立つダイポールモードの周波数とほぼ一致すること

が詳細な高周波シミュレーションによってわかった。この共鳴ピークの周波数を1.3GHzか

ら遠ざけるために、セラミック窓の厚みを6.2mmから5.4mmに変更し、31MHzだけ共鳴周波数

をずらした改良cold窓を製作した。この改良cold窓のローレベル測定を行ったところ、旧

cold窓と改良cold窓の周波数は設計通りに約30MHz周波数がずれていることが確認された。

また、断熱槽を用いたcold窓の液体窒素温度での冷却試験を行い、温度分布の測定値が概

ね計算と一致する結果を得た。これにより熱設計に大きな問題がないことが確認できた。

さらに、warm窓を用いて真空下の大電力試験を行った。定在波の磁場ピークをwarm窓に立

てた状態では、9kWと15kW付近で2次電子放出によると思われる発光が頻発したものの、そ

の後は20kWまでパワーを投入することができた。それに対し、電場ピークでは4kW付近で真

空リークと同時に急激な温度上昇が起こり、セラミックの割れが起こった。これは、前年

度のcold窓のセラミックの割れと同じく、投入した1.3GHz高周波が共鳴ピークに当たって

セラミック窓の発熱で割れたものと予測される。今後は、共鳴ピークをずらした改良cold

63

窓にて電場ピークを立てた場合の大電力試験を行い、高周波設計の確認を行うことになる。

また、高周波設計と熱設計の方針を決定し、実機カプラーの設計・製作を行う。

開発スタッフ

責任者 : 中村典雄(東京大学物性研究所)

担当者 : 高木宏之、篠江憲治、渋谷孝、工藤博文、伊藤功(東京大学物性研究所)、

阪井寛志(高エネルギー加速器研究機構)

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

発表論文

[1] H. Sakai et al., “Development of input power coupler for ERL main linac in

Japan”, Proceedings of SRF2009, Berlin, Germany, 2009, pp.684-688.

[2] 阪井寛志 他、「ERL 主ライナックのための 1.3GHz 入力カプラーの開発」、 第6

回加速器学会プロシーディングス、東海、茨城 (2009)。

[3] H. Sakai et al.,“KEK ERL Cryomodule Development”, Proceedings of ERL2009,

Ithca, New York (2009).

[4] K. Umemori et al., “COMPACT ERL LINAC”, Proceedings of SRF2009, Berlin,

Germany, 2009, pp.896-901.

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64

H. 小型 1.3GHz 高周波源開発

Development of Compact Distributed RF Source

概 要

将来の小型高フラックス X 線源用要素技術開発のために、超低エミッタンス

ビームの加速に必要なパルス運転型の超伝導加速空洞の研究開発を進めている。

本計画では、1.3GHz 9 セル超伝導空洞 2 台からなるクライオモジュールを平成

23 年度に完成することを目指して開発する。 その超伝導加速空洞に大電力マ

イクロ波を供給するシステムが必要であるが、本研究では小型 1.3GHz高周波

源の開発をテーマとしている。今までの国際リニアコライダーなどの 1.3GHz・

超伝導加速器では大電力高周波源として、1本のクライストロンから 5MWや 10

MWと言った大電力高周波を発生してそれを多くの空洞に分配すると言う方式

を取っている。このシステムをとる背景としては、高周波源は電源、クライス

トロンを含めて高価なものであるので大きい電力のものを 1 台作り、それを分

配したほうが結局コスト的に安くなると言う考え方がある。一方で通常の用途

では 1.3GHz 9 セル超伝導空洞1台に必要な高周波電力は、超電導であるがゆえ

に空洞ロスは少なく、加速電界と加速電流の積だけで決まってしまう。例えば

本研究の場合の小型高フラックスX線源用加速器で空洞1台当たり300kW程度

の電力で十分である。従ってそのような小さい電力の高周波源を開発するほう

が従来の流れに比べて無駄が無いと言える。一方でそのようなものを空洞の台

数だけ製作すると、この高周波源は小型でもコスト的には高くなる。従って本

研究では、従来と異なった方式、すなわち電源(これは直流電源とパルスモジ

ュレータを含む)は共通として、高周波源であるクライストロンを空洞 1 台ま

たは 2 台に 1 台ずつ配して、結果として小型化分布型高周波システムを構築し

ようとするものである。

基本的な構成としては、モジュレーションアノード電極付きクライストロン

というものでマイクロ波を発生させる。空洞 2 台に付き 1 台のクライストロン

が使用される構成とする。パルス運転をする高周波はモジュレーションアノー

ドと呼ばれる3極管構造のグリッドのような部分でクライストロン内部の電流

を変調させて発生される。このモジューレーションアノード電極は単にポテン

シャルの変化を与えるだけであるから電力は食わない。電力は結局共通である

直流高圧電源で供給される。パルス電力を取った時に生ずる電圧降下分をバウ

ンサー回路などで保障するとコンデンサーバンクを小さく出来、又変調器も共

通化すると小型化されたシステムが構築される。次の発生した電力を空洞まで

分配するシステムであるが、これは 1.3GHz帯の導波管で分配されるが本件の

65

場合 2 空洞を考えているので、高性能の電力分配器が必要である。もしこの分

配器が高い方向性を持ち、各空洞からの反射が別の空洞へ行くことがなければ

非常にシンプルで小型化された電力分配系が実現される。このシステムは小型

高フラックス X 線源用加速器のみならず、従来大きい高周波源を用いて設計さ

れてきた国際リニアコライダーの高周波源へも応用することが可能で将来的な

応用性が高い研究テーマであると思われる。

1.モジュレーションアノード付きクライストロンの開発

概略で述べたように本研究で

はモジュレーションアノード付

きクライストロンが必須である。

2 空洞へ先頭パルス電力 750kW を

供給するとして、60%ぐらいの高

効率を仮定すると表1のような

仕様が必要である。本年度はこの

仕様を実現するためのクライス

トロンの設計から先ずはじめた。

図 1 にシミュレーション結果の 1

例を示した。特に通常のアノード

とカソード間の電位、モジュレー

ションアノードとカソード間の

電位の様子も図1に示してあるが、

これは電子銃の設計に対して重

要なものである。高周波のシミュ

レーションでも効率 60%到達で

きる設計が実現したので、これを

ベースにしてモジュレーション

アノード付きクライストロンの

製作に取り掛かった。設計と製造

の工程の時間的な制約のために平成21年度は本体の真空管化直前までの工程にとどめた。

平成 22 年度に残りの工程、すなわち排気ベークを行い、その後チップオフして真空管化す

る。その後電圧及び高周波のエージング(プロセッシング)を行い完成となる。図2に現在

製作中のモジュレーションアノード付きクライストロンの外観図を示す。

表 1 モジュレーションアノード付きクライストロン

の仕様、及び電源の仕様

60 61

Page 65: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

64

H. 小型 1.3GHz 高周波源開発

Development of Compact Distributed RF Source

概 要

将来の小型高フラックス X 線源用要素技術開発のために、超低エミッタンス

ビームの加速に必要なパルス運転型の超伝導加速空洞の研究開発を進めている。

本計画では、1.3GHz 9 セル超伝導空洞 2 台からなるクライオモジュールを平成

23 年度に完成することを目指して開発する。 その超伝導加速空洞に大電力マ

イクロ波を供給するシステムが必要であるが、本研究では小型 1.3GHz高周波

源の開発をテーマとしている。今までの国際リニアコライダーなどの 1.3GHz・

超伝導加速器では大電力高周波源として、1本のクライストロンから 5MWや 10

MWと言った大電力高周波を発生してそれを多くの空洞に分配すると言う方式

を取っている。このシステムをとる背景としては、高周波源は電源、クライス

トロンを含めて高価なものであるので大きい電力のものを 1 台作り、それを分

配したほうが結局コスト的に安くなると言う考え方がある。一方で通常の用途

では 1.3GHz 9 セル超伝導空洞1台に必要な高周波電力は、超電導であるがゆえ

に空洞ロスは少なく、加速電界と加速電流の積だけで決まってしまう。例えば

本研究の場合の小型高フラックスX線源用加速器で空洞1台当たり300kW程度

の電力で十分である。従ってそのような小さい電力の高周波源を開発するほう

が従来の流れに比べて無駄が無いと言える。一方でそのようなものを空洞の台

数だけ製作すると、この高周波源は小型でもコスト的には高くなる。従って本

研究では、従来と異なった方式、すなわち電源(これは直流電源とパルスモジ

ュレータを含む)は共通として、高周波源であるクライストロンを空洞 1 台ま

たは 2 台に 1 台ずつ配して、結果として小型化分布型高周波システムを構築し

ようとするものである。

基本的な構成としては、モジュレーションアノード電極付きクライストロン

というものでマイクロ波を発生させる。空洞 2 台に付き 1 台のクライストロン

が使用される構成とする。パルス運転をする高周波はモジュレーションアノー

ドと呼ばれる3極管構造のグリッドのような部分でクライストロン内部の電流

を変調させて発生される。このモジューレーションアノード電極は単にポテン

シャルの変化を与えるだけであるから電力は食わない。電力は結局共通である

直流高圧電源で供給される。パルス電力を取った時に生ずる電圧降下分をバウ

ンサー回路などで保障するとコンデンサーバンクを小さく出来、又変調器も共

通化すると小型化されたシステムが構築される。次の発生した電力を空洞まで

分配するシステムであるが、これは 1.3GHz帯の導波管で分配されるが本件の

65

場合 2 空洞を考えているので、高性能の電力分配器が必要である。もしこの分

配器が高い方向性を持ち、各空洞からの反射が別の空洞へ行くことがなければ

非常にシンプルで小型化された電力分配系が実現される。このシステムは小型

高フラックス X 線源用加速器のみならず、従来大きい高周波源を用いて設計さ

れてきた国際リニアコライダーの高周波源へも応用することが可能で将来的な

応用性が高い研究テーマであると思われる。

1.モジュレーションアノード付きクライストロンの開発

概略で述べたように本研究で

はモジュレーションアノード付

きクライストロンが必須である。

2 空洞へ先頭パルス電力 750kW を

供給するとして、60%ぐらいの高

効率を仮定すると表1のような

仕様が必要である。本年度はこの

仕様を実現するためのクライス

トロンの設計から先ずはじめた。

図 1 にシミュレーション結果の 1

例を示した。特に通常のアノード

とカソード間の電位、モジュレー

ションアノードとカソード間の

電位の様子も図1に示してあるが、

これは電子銃の設計に対して重

要なものである。高周波のシミュ

レーションでも効率 60%到達で

きる設計が実現したので、これを

ベースにしてモジュレーション

アノード付きクライストロンの

製作に取り掛かった。設計と製造

の工程の時間的な制約のために平成21年度は本体の真空管化直前までの工程にとどめた。

平成 22 年度に残りの工程、すなわち排気ベークを行い、その後チップオフして真空管化す

る。その後電圧及び高周波のエージング(プロセッシング)を行い完成となる。図2に現在

製作中のモジュレーションアノード付きクライストロンの外観図を示す。

表 1 モジュレーションアノード付きクライストロン

の仕様、及び電源の仕様

60 61

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66

図1 モジュレーションアノード付きクライストロンのシミュレーション結果

図2 クライストロンアセンブリの概観

67

2. 直流電源、及びモジュレーションアノード用モジュレータの開発

モジュレーションアノード付きクライストロンへ電力を供給するシステムは概略で述べ

たように直流電源とモジュレーションアノード変調器からなる。また直流電源の構成要素

として重要なものはスィッチング電源、コンデンサーバンク、保護回路としてのクローバ

回路(又は高速半導体SW遮断機)、バウンサー回路、及び複数負荷時に一方が故障した

際に各負荷を切り離す高圧SWなどがある。又モジュレーションアノード用変調器の場合

はパルス変調をかけるための高電圧半導体SWが重要な開発要素である。これらの電源に

関するブロックダイアグラムを図3に示す。平成 21 年度ではこの部分のうち、モジュレー

ションアノード用変調器の製作、直流電源の構成部品の購入などを行った。直流電源の完

成と総合運転は平成 22 年度を予定している。

3. 電力分配系の開発

電力分配系の概略は概要の所で示した。図4にその構成を示す。平成 21 年度では高い方

向性を持つマジックティー型電力分配器の開発を行った。

図 3 分布型高周波源の概念図

62 63

Page 67: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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図1 モジュレーションアノード付きクライストロンのシミュレーション結果

図2 クライストロンアセンブリの概観

67

2. 直流電源、及びモジュレーションアノード用モジュレータの開発

モジュレーションアノード付きクライストロンへ電力を供給するシステムは概略で述べ

たように直流電源とモジュレーションアノード変調器からなる。また直流電源の構成要素

として重要なものはスィッチング電源、コンデンサーバンク、保護回路としてのクローバ

回路(又は高速半導体SW遮断機)、バウンサー回路、及び複数負荷時に一方が故障した

際に各負荷を切り離す高圧SWなどがある。又モジュレーションアノード用変調器の場合

はパルス変調をかけるための高電圧半導体SWが重要な開発要素である。これらの電源に

関するブロックダイアグラムを図3に示す。平成 21 年度ではこの部分のうち、モジュレー

ションアノード用変調器の製作、直流電源の構成部品の購入などを行った。直流電源の完

成と総合運転は平成 22 年度を予定している。

3. 電力分配系の開発

電力分配系の概略は概要の所で示した。図4にその構成を示す。平成 21 年度では高い方

向性を持つマジックティー型電力分配器の開発を行った。

図 3 分布型高周波源の概念図

62 63

Page 68: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

68

開発スタッフ

責任者 : 福田茂樹(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 道園真一郎、明本光生、中島啓光、吉田光宏、松下英樹(以上 高エネルギ

ー加速器研究機構)

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

(1) S. Fukuda, “Proposal of RF New Scheme in ILC-Distributed RF System (DRFS),

Proceeding of Particle Accelerator Society Meeting of Japan, JAEA, Tokai, Japan,

August, p. 779, 2009.

(2) S. Fukuda, “DRFS in SB2009”, AAP Review, Oxford, January, 2010.

(3) S. Fukuda, “DRFS Equioment”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(4) S. Fukuda, “DRFS Development in HLRF”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(5) S. Fukuda, “S1 Global RF Preparation”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(6) M. Akemoto, “Power Supply for DRFS”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(7) S. Michizono, “DRFS LLRF System Configuration”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(8) S. Michizono, “S1 Global Study Plan”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

図4 分布型高周波源の高周波分配系

69

I. X線検出装置開発

Development of X-ray detectors 概要

量子ビームプロジェクトにより発生する X線のモニターばかりでなく今

後の X 線検出の分野でのブレイクスルーとなる高性能 X 線検出器の開発を

目指す。2009年度は、昨年度の予備的評価で有望であった GEM を応用

したガス検出器とSOIシリコンピクセル検出器についてさらに検討を深

めた。

GEM 型 検 出 器 は GEM(Gas Electron

Multiplier)と呼ばれる多孔両面銅箔ポリイミ

ドフォイルを使って放射線の電離信号をガス

増幅するもので、2次元の位置情報を保持でき

るという画期的な特長を有する。さらにこのフ

ォイルに金メッキを施すことにより、硬X線に

も感度のある検出器を構成することができる。

右図にその概念を示す。本年度は実際にこのよ

うな金メッキ加工の GEM の多層検出器を試作

してその、有効性についての検討を行った。評

価の一環として、管電圧 125kVのX線発生装置

を用いた透視イ

メージングを行

った(下左図)。

写真中央に置か

れた20センチ

厚のコンクリー

トブロックに埋

め込まれた鉄筋

が右下図に示す

ように明瞭に画像化できていることがわかる。

今年度までに、原理実証としての評価はほぼ終

了できたものと考えており、次年度より、大面

積で高速処理が可能なシステムの構築に向けて

開発を進める。

X線の微細イメージングの取り組みとしては引き続きSOI技術に基づくシリコンピク

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

図4 分布型高周波源の高周波分配系

64 65

Page 69: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

68

開発スタッフ

責任者 : 福田茂樹(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 道園真一郎、明本光生、中島啓光、吉田光宏、松下英樹(以上 高エネルギ

ー加速器研究機構)

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

(1) S. Fukuda, “Proposal of RF New Scheme in ILC-Distributed RF System (DRFS),

Proceeding of Particle Accelerator Society Meeting of Japan, JAEA, Tokai, Japan,

August, p. 779, 2009.

(2) S. Fukuda, “DRFS in SB2009”, AAP Review, Oxford, January, 2010.

(3) S. Fukuda, “DRFS Equioment”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(4) S. Fukuda, “DRFS Development in HLRF”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(5) S. Fukuda, “S1 Global RF Preparation”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(6) M. Akemoto, “Power Supply for DRFS”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(7) S. Michizono, “DRFS LLRF System Configuration”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

(8) S. Michizono, “S1 Global Study Plan”, LCWS2010, Beijing, March, 2010.

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

図4 分布型高周波源の高周波分配系

69

I. X線検出装置開発

Development of X-ray detectors 概要

量子ビームプロジェクトにより発生する X線のモニターばかりでなく今

後の X 線検出の分野でのブレイクスルーとなる高性能 X 線検出器の開発を

目指す。2009年度は、昨年度の予備的評価で有望であった GEM を応用

したガス検出器とSOIシリコンピクセル検出器についてさらに検討を深

めた。

GEM 型 検 出 器 は GEM(Gas Electron

Multiplier)と呼ばれる多孔両面銅箔ポリイミ

ドフォイルを使って放射線の電離信号をガス

増幅するもので、2次元の位置情報を保持でき

るという画期的な特長を有する。さらにこのフ

ォイルに金メッキを施すことにより、硬X線に

も感度のある検出器を構成することができる。

右図にその概念を示す。本年度は実際にこのよ

うな金メッキ加工の GEM の多層検出器を試作

してその、有効性についての検討を行った。評

価の一環として、管電圧 125kVのX線発生装置

を用いた透視イ

メージングを行

った(下左図)。

写真中央に置か

れた20センチ

厚のコンクリー

トブロックに埋

め込まれた鉄筋

が右下図に示す

ように明瞭に画像化できていることがわかる。

今年度までに、原理実証としての評価はほぼ終

了できたものと考えており、次年度より、大面

積で高速処理が可能なシステムの構築に向けて

開発を進める。

X線の微細イメージングの取り組みとしては引き続きSOI技術に基づくシリコンピク

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

Directional CouplerDummy Load

Magic Tee

図4 分布型高周波源の高周波分配系

C-2. 直流高圧電子源開発

Development of High-Voltage DC Electron Guns

概 要

64 65

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71

開発スタッフ

責任者 : 幅純二(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 宇野彰二、新井康夫、内田智久、三好敏喜、村上武、池本由希子(以上 高

エネルギー加速器研究機構)

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

“Development of Hard X−ray Detector with GEM” by Shoji Uno(KEK)

1st International Conference on Micro Pattern Gaseous Detectors, 12-15 June 2009, Kolympari,

Crete, Greece

1. 「GEM を用いた硬 X線検出器の開発」黒石将弘(信州大学)

日本物理学会 2009 年秋季大会 2009 年 9 月 10-13 日 甲南大学

2. “Development of New Type Gaseous Gamma Camera with GEM” by T.Koike (Tokyo

University of Science)

2009 IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Cnference, 23-31 October

2009, Orland, Florida, USA

3. “Developments of SOI Monolithic Pixel Detectors”, Y. Arai et al.

Technology and Instrumentation in Particle Physics 2009 in Tsukuba, Japan, 11-17

March, 2009, Preprint submitted to TIPP09, to be published in NIM A

4. “Silicon-on-insulator technology enables next-generation radiation image

sensors”, Yasuo Arai and Toshinobu Miyoshi, 5 August 2009, SPIE Newsroom. DOI:

10.1117/2.1200907.1725.

5. “Development of SOI Pixel Process Technology”, Y. Arai* et al.

7th International“Hiroshima”Symposium on Development and Applications of

Semiconductor Tracking Devices, International Conference Center Hiroshima,

Japan, Aug. 29-Sep.1, 2009, to be published in Nucl. Instr. and Meth. A.

6. “Reduction techniques of the back gate effect in the SOI Pixel Detector”, R.

Ichimiya, Y.Arai, K. Fukuda, I. Kurachi, N. Kuriyama, M. Ohno, M. Okihara, for

the SOI Pixel collaboration, Proceedings of Topical Workshop on Electronics for

Particle Physics (TWEPP-09), 21-25 Sep. 2009, CERN-2009-006, pp. 68-71

7. “New Techniques in SOI Pixel Detector”, Y. Arai, 2009 IEEE Nuclear Science

Symposium and Medical Imaging Conference, Orlando Florida, Oct. 25-31, 2009,

Conference Record,

8. “SOI pixel 検出器の TCAD による構造最適化”一宮亮、ほか 2009 年 9 月 11 日、日

本物理学会秋季大会(甲南大学)

9. “SOI pixel 検出器におけるバックゲート効果の埋め込み Pウェルによる抑制”、 瀬

賀智子ほか、2009 年 9 月 11 日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

70

セル検出器の可能性の評価・検証に取り組んだ。SOIピクセルの実現にとって、潜在的

な問題点はX線センサーとして機能する下側シリコン層を空乏化するために印可されるバ

イアス電圧が、上側回路層のデバイス(例えば

FETなど)の動作に影響を与える可能性(バ

ックゲート効果)である。

このバックゲート効果を抑制するための方

策として今年度検討が進められたのが、埋め込

みP型ウェル(Buried P Well: BPW)の導入で

ある。これは左図に示すようにSOI基盤の上

面から絶縁層下部を狙ってp型イオン

を打ち込むことで導電性のレイヤーを

そこに形成するものである。こうする

ことでこのレイヤーに任意の電位を外

部から与えることが可能となり、下側

シリコン層に与えられたバイアス電圧

によるバックゲート効果を遮蔽できる。

今年度は実際にBPWを打ち込んだテ

ストチップを作成し、その Id-Vgs特性を

BPWのないものと比較してみた。右

図上が、BPWのないFETの測定結

果であり、下側シリコンのバイアス電

圧が0V(黒点)では示された良好な

閾値カーブが、電圧を上げていくに従

って崩れていき、50V以上ではほと

んどトランジスターとして動作しない

ことを示している。一方BPWを施し

その電位を0Vに固定したチップでは

(右下図)バイアス電圧の印可による

FETの閾値カーブへの影響が完全に

抑制されていることが見て取れる。

このようにしてSOIシリコン検出器において、十分高いバイアス電圧を印可しながら

回路を正常動作できる見通しが立った。高いバイアス電圧の印可は厚い空乏層の形成を意

味するため、今回のBPW導入は高エネルギーX線に対するより高い検出効率の可能性を

拓いたことになり、その意義は極めて大きい。

この成果を踏まえて、来年度以降この SOI ピクセルによる高精細 X 線検出器の実用シス

テム実現に向けさらに開発研究を続けていく予定である。

66 67

Page 71: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

71

開発スタッフ

責任者 : 幅純二(高エネルギー加速器研究機構)

担当者 : 宇野彰二、新井康夫、内田智久、三好敏喜、村上武、池本由希子(以上 高

エネルギー加速器研究機構)

参考文献

2009 年度中の発表および掲載

“Development of Hard X−ray Detector with GEM” by Shoji Uno(KEK)

1st International Conference on Micro Pattern Gaseous Detectors, 12-15 June 2009, Kolympari,

Crete, Greece

1. 「GEM を用いた硬 X線検出器の開発」黒石将弘(信州大学)

日本物理学会 2009 年秋季大会 2009 年 9 月 10-13 日 甲南大学

2. “Development of New Type Gaseous Gamma Camera with GEM” by T.Koike (Tokyo

University of Science)

2009 IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging Cnference, 23-31 October

2009, Orland, Florida, USA

3. “Developments of SOI Monolithic Pixel Detectors”, Y. Arai et al.

Technology and Instrumentation in Particle Physics 2009 in Tsukuba, Japan, 11-17

March, 2009, Preprint submitted to TIPP09, to be published in NIM A

4. “Silicon-on-insulator technology enables next-generation radiation image

sensors”, Yasuo Arai and Toshinobu Miyoshi, 5 August 2009, SPIE Newsroom. DOI:

10.1117/2.1200907.1725.

5. “Development of SOI Pixel Process Technology”, Y. Arai* et al.

7th International“Hiroshima”Symposium on Development and Applications of

Semiconductor Tracking Devices, International Conference Center Hiroshima,

Japan, Aug. 29-Sep.1, 2009, to be published in Nucl. Instr. and Meth. A.

6. “Reduction techniques of the back gate effect in the SOI Pixel Detector”, R.

Ichimiya, Y.Arai, K. Fukuda, I. Kurachi, N. Kuriyama, M. Ohno, M. Okihara, for

the SOI Pixel collaboration, Proceedings of Topical Workshop on Electronics for

Particle Physics (TWEPP-09), 21-25 Sep. 2009, CERN-2009-006, pp. 68-71

7. “New Techniques in SOI Pixel Detector”, Y. Arai, 2009 IEEE Nuclear Science

Symposium and Medical Imaging Conference, Orlando Florida, Oct. 25-31, 2009,

Conference Record,

8. “SOI pixel 検出器の TCAD による構造最適化”一宮亮、ほか 2009 年 9 月 11 日、日

本物理学会秋季大会(甲南大学)

9. “SOI pixel 検出器におけるバックゲート効果の埋め込み Pウェルによる抑制”、 瀬

賀智子ほか、2009 年 9 月 11 日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

70

セル検出器の可能性の評価・検証に取り組んだ。SOIピクセルの実現にとって、潜在的

な問題点はX線センサーとして機能する下側シリコン層を空乏化するために印可されるバ

イアス電圧が、上側回路層のデバイス(例えば

FETなど)の動作に影響を与える可能性(バ

ックゲート効果)である。

このバックゲート効果を抑制するための方

策として今年度検討が進められたのが、埋め込

みP型ウェル(Buried P Well: BPW)の導入で

ある。これは左図に示すようにSOI基盤の上

面から絶縁層下部を狙ってp型イオン

を打ち込むことで導電性のレイヤーを

そこに形成するものである。こうする

ことでこのレイヤーに任意の電位を外

部から与えることが可能となり、下側

シリコン層に与えられたバイアス電圧

によるバックゲート効果を遮蔽できる。

今年度は実際にBPWを打ち込んだテ

ストチップを作成し、その Id-Vgs特性を

BPWのないものと比較してみた。右

図上が、BPWのないFETの測定結

果であり、下側シリコンのバイアス電

圧が0V(黒点)では示された良好な

閾値カーブが、電圧を上げていくに従

って崩れていき、50V以上ではほと

んどトランジスターとして動作しない

ことを示している。一方BPWを施し

その電位を0Vに固定したチップでは

(右下図)バイアス電圧の印可による

FETの閾値カーブへの影響が完全に

抑制されていることが見て取れる。

このようにしてSOIシリコン検出器において、十分高いバイアス電圧を印可しながら

回路を正常動作できる見通しが立った。高いバイアス電圧の印可は厚い空乏層の形成を意

味するため、今回のBPW導入は高エネルギーX線に対するより高い検出効率の可能性を

拓いたことになり、その意義は極めて大きい。

この成果を踏まえて、来年度以降この SOI ピクセルによる高精細 X 線検出器の実用シス

テム実現に向けさらに開発研究を続けていく予定である。

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Page 72: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

10. “CDS機能を備えた積分型SOI pixel 検出器の性能評価”、 池本由希子ほか、2009年

9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

11. “SOI 技術を用いた読出し一体型ピクセル検出器の開発(TCADによる放射線損傷の研

究)”、 河内山真美ほか、2009 年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学).

12. “X線照射による SOI MOS トランジスタ特性への影響の研究”、 小貫良行ほか、2009

年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

13. “SOI 技術を用いた ILC 衝突点ビームモニタ“ペアモニタ”の読み出し回路の開発'、

佐藤優太郎ほか、2009 年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

14. “大面積化を目指した計数型 X線 SOI イメージセンサー(CNTPIX3)”、 三好敏喜ほか、

2009 年 9 月 28日、日本物理学会秋季大会(熊本大学)

73

J. X線測定および利用研究

X-ray Measurement and Its Application Researches

概 要

超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発のために、X線検出器

開発および利用研究に向けた検討を行っている。レーザーコンプトン散乱によ

って生成される X 線に特化した特徴としては、散乱角が広いため大面積の撮像

が容易であること、線源サイズがレーザーもしくは電子ビームの大きさに一致

するため極限まで小さくすることが可能である点である。これらの特徴を評価

することを目的とし、本年度は位置読み出し型(撮像型)検出器の開発・評価

及びその試験用線源の構築を行った。次年度は引き続き位置読み出し型の検出

器の評価を行っていくとともに常伝導加速器を用いた軟 X 線検出試験を行って

いく予定である。

1. はじめに

本プロジェクトにおいて X 線を生成する手法は周知の通りレーザー光を高エネルギーの

電子ビームによって散乱する『レーザーコンプトン散乱法』である。レーザーコンプトン X

線の特徴としては、

① 小型な X線源が構築可能であること

② X 線の散乱角が広く大面積への照射に適していること

③ 線源サイズを極限まで小さくできること

④ X 線の偏光制御がレーザーの偏光制御によって容易に行えること

などが挙げられる。昨年度までの検出器開発としては、まずはレーザーコンプトン散乱に

よる X 線を検出することに特化していたが、今年度からは特に上記②③を評価するための

検出器開発及び試験用線源の構築を行っている。実際には撮像型の検出器により大面積の

照射試験を行うとともに、線源サイズが小さいという利点の検証のために、屈折コントラ

ストイメージングなどを試験する。その際の比較対象及び実機での試験の前段階評価とし

て電子ビームによる制動放射光を用いた準単色 X 線源の開発を行っている。それぞれにつ

いて以下章毎に報告する。

2. 密着露光撮像用フォトレジストの開発研究

本プロジェクトでは次年度に常伝導線形加速器とレーザー蓄積装置を用いた軟 X 線領域

の高輝度 X 線生成を行う予定である。その際に有力な撮像方法としては、密着露光型の撮

像が最もシンプルかつ高分解能が期待できる。密着露光型とは試料をフィルムなどに密着

させて設置し、X 線を照射することによって透過した X 線がフィルムを感光するという、X

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10. “CDS機能を備えた積分型SOI pixel 検出器の性能評価”、 池本由希子ほか、2009年

9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

11. “SOI 技術を用いた読出し一体型ピクセル検出器の開発(TCADによる放射線損傷の研

究)”、 河内山真美ほか、2009 年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学).

12. “X線照射による SOI MOS トランジスタ特性への影響の研究”、 小貫良行ほか、2009

年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

13. “SOI 技術を用いた ILC 衝突点ビームモニタ“ペアモニタ”の読み出し回路の開発'、

佐藤優太郎ほか、2009 年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

14. “大面積化を目指した計数型 X線 SOI イメージセンサー(CNTPIX3)”、 三好敏喜ほか、

2009 年 9 月 28日、日本物理学会秋季大会(熊本大学)

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J. X線測定および利用研究

X-ray Measurement and Its Application Researches

概 要

超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発のために、X線検出器

開発および利用研究に向けた検討を行っている。レーザーコンプトン散乱によ

って生成される X 線に特化した特徴としては、散乱角が広いため大面積の撮像

が容易であること、線源サイズがレーザーもしくは電子ビームの大きさに一致

するため極限まで小さくすることが可能である点である。これらの特徴を評価

することを目的とし、本年度は位置読み出し型(撮像型)検出器の開発・評価

及びその試験用線源の構築を行った。次年度は引き続き位置読み出し型の検出

器の評価を行っていくとともに常伝導加速器を用いた軟 X 線検出試験を行って

いく予定である。

1. はじめに

本プロジェクトにおいて X 線を生成する手法は周知の通りレーザー光を高エネルギーの

電子ビームによって散乱する『レーザーコンプトン散乱法』である。レーザーコンプトン X

線の特徴としては、

① 小型な X線源が構築可能であること

② X 線の散乱角が広く大面積への照射に適していること

③ 線源サイズを極限まで小さくできること

④ X 線の偏光制御がレーザーの偏光制御によって容易に行えること

などが挙げられる。昨年度までの検出器開発としては、まずはレーザーコンプトン散乱に

よる X 線を検出することに特化していたが、今年度からは特に上記②③を評価するための

検出器開発及び試験用線源の構築を行っている。実際には撮像型の検出器により大面積の

照射試験を行うとともに、線源サイズが小さいという利点の検証のために、屈折コントラ

ストイメージングなどを試験する。その際の比較対象及び実機での試験の前段階評価とし

て電子ビームによる制動放射光を用いた準単色 X 線源の開発を行っている。それぞれにつ

いて以下章毎に報告する。

2. 密着露光撮像用フォトレジストの開発研究

本プロジェクトでは次年度に常伝導線形加速器とレーザー蓄積装置を用いた軟 X 線領域

の高輝度 X 線生成を行う予定である。その際に有力な撮像方法としては、密着露光型の撮

像が最もシンプルかつ高分解能が期待できる。密着露光型とは試料をフィルムなどに密着

させて設置し、X 線を照射することによって透過した X 線がフィルムを感光するという、X

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74

線光学系などの必要ない手法である。このフィルムとしてレジストを用い、読み出しに

AFM(原子間力顕微鏡)を用いることによって高分解能な撮像が期待できる。通常このレジス

ト材としては PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)が用いられるが、PMMA は感光閾値が高く、

撮像に多大な時間を要するだけでなく、高分解能な撮像に必要な X 線強度も大きくなって

しまう。密着露光型の撮像の分解能は光子の統計雑音によって制限される。PMMA で 50nm 程

度の分解能を得るには約 4×1014photons/cm2の X 線強度が必要となる。この必要 X線強度を

下げるためには検出器の効率、つまり撮像器の感度を向上させる必要がある。我々は化学

増幅型 Deep-UV 用レジストを試験し、さらにその高感度化を行った。

まずは感光閾値の測定及び軟 X 線による感光の確認を、UV 光照射は水銀灯(中心波長

254nm)、軟 X 線照射は九州シンクロトロン光研究センターSAGA-LS 軟 X 線分光ライン BL12

を用いて行った。その結果を以下の図 1 に示す。レジストとしては東京応化製 Deep-UV 用

化学増幅型フォトレジスト TDUR-P722 を用いた。化学増幅型レジストを用いることによっ

て従来の PMMA よりも約 1~2桁の感度の向上が見られる。

(A)254nm における測定 (B)250eV 軟 X 線における測定 (C)400eV における測定

図 1:化学増幅型 Deep-UV 用レジストの感光閾値測定

(A)(B)(C)はそれぞれ 254nm の UV 光、250eV の軟 X線、400eV の軟 X線による感光閾値測

定の結果を示している。それぞれの閾値測定の結果は 2.6mJ/cm2、16mJ/cm2、2.1mJ/cm2であ

った。閾値が異なるのはレジストにおける光の吸収効率が光子エネルギーによって異なる

ためである。化学増幅型レジストを用いることによって PMMA で必要とされていた 4×

1014Photon/cm2に比べて約 1桁の感光閾値の感度の向上が確認された。予想された 2桁まで

は届かないが、レジストの感度や解像度は現像プロセスによっても大きく変化する。上記

はメーカー推奨の現像液・現像時間等の条件下で行った実験結果であり、今後現像プロセ

スの最適化を行っていくつもりである。

次にさらに本レジストを高感度化するために UV プレ照射法を開発し、試験した。UV プ

レ照射法の概念図を図 2 に示す。図 2 の右上及び図 1 の測定結果にも示されているように

レジスト材はある閾値以上において反応が開始され、撮像される。そこでより高感度化を

図るために閾値付近まで UV 光を用いて前もって照射しておき、その後軟 X線によって撮像

することにより、必要とされる X 線強度を極力抑えることが可能である。そのプロセスは

75

図 2 に示してある通りで、通常は露光を行い、PEB(Post Exposure Baking)で反応させて、

反応部分を溶解させる。それに対してプレ照射法ではまず水銀灯などの UV 光でプレ照射を

行い、PEB で一部反応させておき、その後本照射を行い、PEB/現像を行う。プレ照射の UV

光の強度を適当に選ぶことによって、閾値直前からの軟 X 線による本露光が可能となる。

250eV/400eV それぞれにおけるプレ照射法試験結果を図 3に示す。

図 2:UV プレ照射法概念図及びその現像プロセス

(A)250eV におけるプレ照射法試験 (B)400eV におけるプレ照射法試験

図 3:UV プレ照射法の実証試験結果

UV プレ照射を行っていない Blank のレジストに対して大幅に感光閾値が減少し、感度が

向上していることがわかる。今回の高感度化では 2 桁は届かないが 1 桁以上の高感度化が

確認でき、その感光閾値は 1×1013Photons/cm2程度(400eV)であった。次年度予定されてい

る軟 X線強度としては、パルスでの露光では十分でなく、分解能も 50nm を期待するのは厳

しいが、まずは X線の検出後に実証試験として行っていく予定である。

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Page 75: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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線光学系などの必要ない手法である。このフィルムとしてレジストを用い、読み出しに

AFM(原子間力顕微鏡)を用いることによって高分解能な撮像が期待できる。通常このレジス

ト材としては PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)が用いられるが、PMMA は感光閾値が高く、

撮像に多大な時間を要するだけでなく、高分解能な撮像に必要な X 線強度も大きくなって

しまう。密着露光型の撮像の分解能は光子の統計雑音によって制限される。PMMA で 50nm 程

度の分解能を得るには約 4×1014photons/cm2の X 線強度が必要となる。この必要 X線強度を

下げるためには検出器の効率、つまり撮像器の感度を向上させる必要がある。我々は化学

増幅型 Deep-UV 用レジストを試験し、さらにその高感度化を行った。

まずは感光閾値の測定及び軟 X 線による感光の確認を、UV 光照射は水銀灯(中心波長

254nm)、軟 X 線照射は九州シンクロトロン光研究センターSAGA-LS 軟 X 線分光ライン BL12

を用いて行った。その結果を以下の図 1 に示す。レジストとしては東京応化製 Deep-UV 用

化学増幅型フォトレジスト TDUR-P722 を用いた。化学増幅型レジストを用いることによっ

て従来の PMMA よりも約 1~2桁の感度の向上が見られる。

(A)254nm における測定 (B)250eV 軟 X 線における測定 (C)400eV における測定

図 1:化学増幅型 Deep-UV 用レジストの感光閾値測定

(A)(B)(C)はそれぞれ 254nm の UV 光、250eV の軟 X線、400eV の軟 X線による感光閾値測

定の結果を示している。それぞれの閾値測定の結果は 2.6mJ/cm2、16mJ/cm2、2.1mJ/cm2であ

った。閾値が異なるのはレジストにおける光の吸収効率が光子エネルギーによって異なる

ためである。化学増幅型レジストを用いることによって PMMA で必要とされていた 4×

1014Photon/cm2に比べて約 1桁の感光閾値の感度の向上が確認された。予想された 2桁まで

は届かないが、レジストの感度や解像度は現像プロセスによっても大きく変化する。上記

はメーカー推奨の現像液・現像時間等の条件下で行った実験結果であり、今後現像プロセ

スの最適化を行っていくつもりである。

次にさらに本レジストを高感度化するために UV プレ照射法を開発し、試験した。UV プ

レ照射法の概念図を図 2 に示す。図 2 の右上及び図 1 の測定結果にも示されているように

レジスト材はある閾値以上において反応が開始され、撮像される。そこでより高感度化を

図るために閾値付近まで UV 光を用いて前もって照射しておき、その後軟 X線によって撮像

することにより、必要とされる X 線強度を極力抑えることが可能である。そのプロセスは

75

図 2 に示してある通りで、通常は露光を行い、PEB(Post Exposure Baking)で反応させて、

反応部分を溶解させる。それに対してプレ照射法ではまず水銀灯などの UV 光でプレ照射を

行い、PEB で一部反応させておき、その後本照射を行い、PEB/現像を行う。プレ照射の UV

光の強度を適当に選ぶことによって、閾値直前からの軟 X 線による本露光が可能となる。

250eV/400eV それぞれにおけるプレ照射法試験結果を図 3に示す。

図 2:UV プレ照射法概念図及びその現像プロセス

(A)250eV におけるプレ照射法試験 (B)400eV におけるプレ照射法試験

図 3:UV プレ照射法の実証試験結果

UV プレ照射を行っていない Blank のレジストに対して大幅に感光閾値が減少し、感度が

向上していることがわかる。今回の高感度化では 2 桁は届かないが 1 桁以上の高感度化が

確認でき、その感光閾値は 1×1013Photons/cm2程度(400eV)であった。次年度予定されてい

る軟 X線強度としては、パルスでの露光では十分でなく、分解能も 50nm を期待するのは厳

しいが、まずは X線の検出後に実証試験として行っていく予定である。

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76

3. 高速ゲートイメージング機器

本プロジェクトの最終目標として挙げられている X 線のエネルギーは数 keV~数 10keV

程度と前節のレジストがターゲットとしている 1keV 以下の軟 X 線領域とは異なっている。

最終的には分解能も求める上で X 線レジストなどを検討する必要があるが、前述のような

高感度化の点で手軽に使用できる UV 光が利用できないことなど課題は残っている。

そこで昨年度の検出器の試験結果も踏まえ、位置読み出しの可能な蛍光面付

MCP(Micro-Channel Plate)と高速ゲート切り出しを行うイメージインテンシファイヤを組

み合わせたイメージング装置を立ち上げた。MCP は 2 次電子発生効率の高い材質に多数の小

さな穴を施した構造となっており、200μm 程度の位置分解能が期待できる。また、昨年度

の試験により加速器室環境化において最高の S/N が期待でき、かつ高速応答特性も持ち合

わせている。以上のような特徴から、実証試験に使用する検出器として最適と判断し、検

出システムの構築を進めている。検出器の構成を以下の図4に示す。

(A)検出システム概念図 (B)検出システム外観

図4:実証試験用 X線検出器システム

生成された X 線はチタン窓を通り検出器システムに導入される。軟 X 線にも対応できる

よう、真空を切ることなくビームラインに直接接続することも可能になっている。蛍光面

付き MCP としては F2225-31、イメージインテンシファイヤは C9016-23(ともに浜松フォト

ニクス社製)を採用している。蛍光面の有効径は 40mmφであり、②に挙げた特徴の確認のた

めに広い領域のイメージングに十分な広さを確保している。蛍光面の蛍光寿命は 200~

400ns であり、電子ビーム列の時間幅~1ms(実機)と~20μs(LUCX)に対して十分小さい。す

でに早稲田大学における電子加速器を用いて生成した制動放射光を用いて動作試験は終了

しており、現時点でも実機に設置して計測可能であるが、次節で述べる構築中の準単色線

源を用いてさらに試験を行っていく予定である。

77

4. 準単色 X 線源開発

レーザーコンプトン散乱 X線の特徴として前述した③線源サイズが極小化できる点が X

線像を取得する際に有効になる。レーザーコンプトン散乱 X線の線源サイズはレーザーも

しくは電子ビームサイズで決まるため、数μmのオーダーまで小さくすることができる。線

源サイズの小さい X線ビームを用いることによって、通常 X線で行われている吸収コント

ラストによるイメージングに加え、屈折コントラスト(試料による X線の屈折を利用し境界

を強調する手法)によるイメージングが可能となる。

この特徴を実証するため、及び撮像 X線検出器系の試験を行うために早稲田大学電子加

速器を用いた準単色 X線生成システムを構築した。その構成図を以下の図5に示す。加速

器によって生成された約 4MeV の電子ビームはチタン窓を通り真空中から取り出され、Bragg

反射板に入射する。本試験ではX線のエネルギー測定システムでも用いているHOPGを Bragg

反射板として採用している。HOPG に入射した電子ビームは HOPG 内で制動され、制動放射光

を生成する。その中で Bragg の条件を満たした X線が反射され、電子ビームと分けられる

といった構成である。実際に検出器に届く X線は電子ビームと反射

図5:準単色 X線生成システムの構成図

X 線コリメータの成す角度で決まるが、4MeV の電子から生成される制動放射光は広がり角

が大きいため、10%程度のエネルギー幅を持った X 線が検出器まで到達していると思われ

る。以下の図6に HOPG の角度に対する X線強度の測定結果を示す。

0

2 104

4 104

6 104

8 104

1 105

1.2 105

0 2 4 6 8

Tota

l X-r

ay E

nerg

y [k

eV/tr

ain/

mm

2 ]

HOPG Angle [deg]

図6:検出 X線強度の HOPG 角度依存

72 73

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3. 高速ゲートイメージング機器

本プロジェクトの最終目標として挙げられている X 線のエネルギーは数 keV~数 10keV

程度と前節のレジストがターゲットとしている 1keV 以下の軟 X 線領域とは異なっている。

最終的には分解能も求める上で X 線レジストなどを検討する必要があるが、前述のような

高感度化の点で手軽に使用できる UV 光が利用できないことなど課題は残っている。

そこで昨年度の検出器の試験結果も踏まえ、位置読み出しの可能な蛍光面付

MCP(Micro-Channel Plate)と高速ゲート切り出しを行うイメージインテンシファイヤを組

み合わせたイメージング装置を立ち上げた。MCP は 2 次電子発生効率の高い材質に多数の小

さな穴を施した構造となっており、200μm 程度の位置分解能が期待できる。また、昨年度

の試験により加速器室環境化において最高の S/N が期待でき、かつ高速応答特性も持ち合

わせている。以上のような特徴から、実証試験に使用する検出器として最適と判断し、検

出システムの構築を進めている。検出器の構成を以下の図4に示す。

(A)検出システム概念図 (B)検出システム外観

図4:実証試験用 X線検出器システム

生成された X 線はチタン窓を通り検出器システムに導入される。軟 X 線にも対応できる

よう、真空を切ることなくビームラインに直接接続することも可能になっている。蛍光面

付き MCP としては F2225-31、イメージインテンシファイヤは C9016-23(ともに浜松フォト

ニクス社製)を採用している。蛍光面の有効径は 40mmφであり、②に挙げた特徴の確認のた

めに広い領域のイメージングに十分な広さを確保している。蛍光面の蛍光寿命は 200~

400ns であり、電子ビーム列の時間幅~1ms(実機)と~20μs(LUCX)に対して十分小さい。す

でに早稲田大学における電子加速器を用いて生成した制動放射光を用いて動作試験は終了

しており、現時点でも実機に設置して計測可能であるが、次節で述べる構築中の準単色線

源を用いてさらに試験を行っていく予定である。

77

4. 準単色 X 線源開発

レーザーコンプトン散乱 X線の特徴として前述した③線源サイズが極小化できる点が X

線像を取得する際に有効になる。レーザーコンプトン散乱 X線の線源サイズはレーザーも

しくは電子ビームサイズで決まるため、数μmのオーダーまで小さくすることができる。線

源サイズの小さい X線ビームを用いることによって、通常 X線で行われている吸収コント

ラストによるイメージングに加え、屈折コントラスト(試料による X線の屈折を利用し境界

を強調する手法)によるイメージングが可能となる。

この特徴を実証するため、及び撮像 X線検出器系の試験を行うために早稲田大学電子加

速器を用いた準単色 X線生成システムを構築した。その構成図を以下の図5に示す。加速

器によって生成された約 4MeV の電子ビームはチタン窓を通り真空中から取り出され、Bragg

反射板に入射する。本試験ではX線のエネルギー測定システムでも用いているHOPGを Bragg

反射板として採用している。HOPG に入射した電子ビームは HOPG 内で制動され、制動放射光

を生成する。その中で Bragg の条件を満たした X線が反射され、電子ビームと分けられる

といった構成である。実際に検出器に届く X線は電子ビームと反射

図5:準単色 X線生成システムの構成図

X 線コリメータの成す角度で決まるが、4MeV の電子から生成される制動放射光は広がり角

が大きいため、10%程度のエネルギー幅を持った X 線が検出器まで到達していると思われ

る。以下の図6に HOPG の角度に対する X線強度の測定結果を示す。

0

2 104

4 104

6 104

8 104

1 105

1.2 105

0 2 4 6 8

Tota

l X-r

ay E

nerg

y [k

eV/tr

ain/

mm

2 ]

HOPG Angle [deg]

図6:検出 X線強度の HOPG 角度依存

0

2 104

4 104

6 104

8 104

1 105

1.2 105

0 2 4 6 8

To

tal

X-r

ay E

ner

gy

[keV

/tra

in/m

m2 ]

HOPG Angle [deg]

図6:検出 X線強度の HOPG 角度依存

72 73

Page 78: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

78

この測定は反射角度 7 度(Ex~30keV)でのセットアップで取得した結果である。実際に

HOPG の角度 3.5 度付近ピークが見られ、反射が行われており、かつ十分な強度が得られて

いることがわかる。しかしながら、いまだにベースバックグラウンドの寄与も大きく、さ

らなる改善が必要であるとともに、実際に Bragg 条件で選ばれた X 線のエネルギーが検出

されていることを確認する必要がある。この X 線源の線源サイズは電子ビームのサイズで

決まり、チタン窓直下に設置した電子ビームコリメータの径を変えることによって自由に

選択することが出来る。実際にこの X 線を用いて前節 X 線検出器を試験するとともに屈折

コントラストイメージング像を取得することによって、線源サイズによる屈折コントラス

トの強弱の確認及び実機での像との比較対象として用いることができると考えている。

5. 総括

昨年度研究開発を開始し、現在までに『X線の強度(時間方向強度分布)』『X線のエネル

ギー』『X線の強度分布(撮像)』が可能な X線検出装置を構築・開発した。X線の強度はシ

ンチレーション検出器・Si-PIN や Cd-Te などの半導体検出器を昨年度開発し、時間方向強

度分布は MCP を用いて検出できることを示した。X線のエネルギーは X線スペクトロメータ

ーとして HOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)を用いることで測定できる。X 線の

撮像システムとしては蛍光面付 MCP を用いた大面積撮像システムを立ち上げた。また、本

量子ビームプログラムでは前段試験として、軟 X 線領域の光子ビームの生成も来年度予定

されているため、軟 X 線用の検出器としてレジスト材を用いた撮像の研究開発も並行して

進めている。

来年度は今年度開発を行った準単色 X 線源において、線源サイズの比較的大きな X 線で

の像を取得し、実機での模擬とするとともに夏ごろから KEK-LUCX 加速器において予定され

ている軟 X 線生成試験に参加し、検出部を担当する予定である。また、昨年度末ごろより

本プログラム内で開発(レーザー蓄積装置グループ)されたレーザー円偏光の高速切換え手

法によって、X線の偏光計測の必要性が増している。上記研究項目と合わせ、偏光計測系に

関して検討を行っていく予定である。

開発スタッフ

責任者 : 鷲尾方一(早稲田大学)

担当者 : 鷲尾方一(早稲田大学)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文)

[1]“Observation of pulsed x-ray trains produced by laser-electron Compton

scatterings” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo

Higashi, Yosuke Honda, Tsunehiko Omori, Takashi Taniguchi, Nobuhiro Terunuma, Junji

79

Urakawa, Noboru Sasao, Rev. Sci. Instrum., 80(12) (2009) 123304 1-7.

[2]”Improvement of an S-band RF gun with a Cs2Te photocathode for the KEK-ATF” N.

Terunuma, A. Murata, M. Fukuda, K. Hirano, Y. Kamiya, T. Kii, M. Kuriki, R. Kuroda,

H. Ohgaki, K. Sakaue, M. Takano, T. Takatomi, J. Urakawa, M. Washio, Y. Yamazaki,

J. Yang, Nucl. Instrum. Meth. A613 (2010) 1-8.

[3] “Development of a Compact X-ray Source and Super-sensitization of Photo Resists

for Soft X-ray Imaging” T. Gowa, N. Fukutake, Y. Hama, K. Hizume, T. Kashino, S.

Kashiwagi, R. Kuroda, A. Masuda, A. Oshima, T. Saito, K. Sakaue, K. Shinohara, T.

Takahashi, T. Urakawa, K. Ushida and M. Washio, J. Photopolym Sci. Technol. 22(5)

(2009) 691-696.

[4]“Development of Compact Coherent EUV Source Based on Laser Compton Scattering”

S. Kashiwagi, R. Kato, G. Isoyama, K. Sakaue, A. Masuda, T. Nomoto, T. Gowa, M. Washio,

R. Kuroda and J. Urakawa, Radiat. Phys. Chem. 78 (2009) 1112-1115.

[5] “Stabilization of a Non-Planar Optical Cavity using its Polarization Property”

Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Junji Urakawa,

Kazuyuki Sakaue, Hiroshi Sakai, Noboru Sasao, Optics Communications, Vol. 282, (2009)

3108-3112.

[6] “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using an Optical Resonant Cavity

at the KEK-ATF Electron Ring” Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi,

Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa,

Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige, Hirose,

Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, Journal of the Physical

Society of Japan, Vol.78 No.7. (2009) 074501.

[7] “Design of a mode separated RF photo cahode gun” Abhay Deshpande, Sakae Araki,

Masafumi Fukuda, Kazuyuki Sakaue, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Noboru Sasao,

Masakazu Washio, Nucl. Instrum. Meth., A600, (2009) 361-366.

[8] “FEMTO-SECOND PROFILE MONIITOR USING PULSED LASER STORAGE IN AN OPTICAL CAVITY”

K. Sakaue, M. Washio, S. Araki, M. Fukuda, Y. Higashi, Y. Honda, T. Taniguchi, T.

Terunuma, J. Urakawa, N. Sasao, Proceedings of Free Electron Laser Conference 2009,

TUPC23 (2009)

[9] “3-Dimensional Beam Profile Monitor Based on a Pulse Storage in an Optical Cavity

for Multi-bunch Electron Beam” K. Sakaue, M. Washio, N. Sasao, S. Araki, M. Fukuda,

Y. Honda, Y. Higashi, T. Taniguchi, N. Terunuma, J. Urakawa, Proceedings of Particle

Accelerator Conference 2009, WE3GRC04 (2009)

74 75

Page 79: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

78

この測定は反射角度 7 度(Ex~30keV)でのセットアップで取得した結果である。実際に

HOPG の角度 3.5 度付近ピークが見られ、反射が行われており、かつ十分な強度が得られて

いることがわかる。しかしながら、いまだにベースバックグラウンドの寄与も大きく、さ

らなる改善が必要であるとともに、実際に Bragg 条件で選ばれた X 線のエネルギーが検出

されていることを確認する必要がある。この X 線源の線源サイズは電子ビームのサイズで

決まり、チタン窓直下に設置した電子ビームコリメータの径を変えることによって自由に

選択することが出来る。実際にこの X 線を用いて前節 X 線検出器を試験するとともに屈折

コントラストイメージング像を取得することによって、線源サイズによる屈折コントラス

トの強弱の確認及び実機での像との比較対象として用いることができると考えている。

5. 総括

昨年度研究開発を開始し、現在までに『X線の強度(時間方向強度分布)』『X線のエネル

ギー』『X線の強度分布(撮像)』が可能な X線検出装置を構築・開発した。X線の強度はシ

ンチレーション検出器・Si-PIN や Cd-Te などの半導体検出器を昨年度開発し、時間方向強

度分布は MCP を用いて検出できることを示した。X線のエネルギーは X線スペクトロメータ

ーとして HOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)を用いることで測定できる。X 線の

撮像システムとしては蛍光面付 MCP を用いた大面積撮像システムを立ち上げた。また、本

量子ビームプログラムでは前段試験として、軟 X 線領域の光子ビームの生成も来年度予定

されているため、軟 X 線用の検出器としてレジスト材を用いた撮像の研究開発も並行して

進めている。

来年度は今年度開発を行った準単色 X 線源において、線源サイズの比較的大きな X 線で

の像を取得し、実機での模擬とするとともに夏ごろから KEK-LUCX 加速器において予定され

ている軟 X 線生成試験に参加し、検出部を担当する予定である。また、昨年度末ごろより

本プログラム内で開発(レーザー蓄積装置グループ)されたレーザー円偏光の高速切換え手

法によって、X線の偏光計測の必要性が増している。上記研究項目と合わせ、偏光計測系に

関して検討を行っていく予定である。

開発スタッフ

責任者 : 鷲尾方一(早稲田大学)

担当者 : 鷲尾方一(早稲田大学)

参考文献(2009年度中の発表および掲載論文)

[1]“Observation of pulsed x-ray trains produced by laser-electron Compton

scatterings” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo

Higashi, Yosuke Honda, Tsunehiko Omori, Takashi Taniguchi, Nobuhiro Terunuma, Junji

79

Urakawa, Noboru Sasao, Rev. Sci. Instrum., 80(12) (2009) 123304 1-7.

[2]”Improvement of an S-band RF gun with a Cs2Te photocathode for the KEK-ATF” N.

Terunuma, A. Murata, M. Fukuda, K. Hirano, Y. Kamiya, T. Kii, M. Kuriki, R. Kuroda,

H. Ohgaki, K. Sakaue, M. Takano, T. Takatomi, J. Urakawa, M. Washio, Y. Yamazaki,

J. Yang, Nucl. Instrum. Meth. A613 (2010) 1-8.

[3] “Development of a Compact X-ray Source and Super-sensitization of Photo Resists

for Soft X-ray Imaging” T. Gowa, N. Fukutake, Y. Hama, K. Hizume, T. Kashino, S.

Kashiwagi, R. Kuroda, A. Masuda, A. Oshima, T. Saito, K. Sakaue, K. Shinohara, T.

Takahashi, T. Urakawa, K. Ushida and M. Washio, J. Photopolym Sci. Technol. 22(5)

(2009) 691-696.

[4]“Development of Compact Coherent EUV Source Based on Laser Compton Scattering”

S. Kashiwagi, R. Kato, G. Isoyama, K. Sakaue, A. Masuda, T. Nomoto, T. Gowa, M. Washio,

R. Kuroda and J. Urakawa, Radiat. Phys. Chem. 78 (2009) 1112-1115.

[5] “Stabilization of a Non-Planar Optical Cavity using its Polarization Property”

Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Junji Urakawa,

Kazuyuki Sakaue, Hiroshi Sakai, Noboru Sasao, Optics Communications, Vol. 282, (2009)

3108-3112.

[6] “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using an Optical Resonant Cavity

at the KEK-ATF Electron Ring” Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi,

Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa,

Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige, Hirose,

Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, Journal of the Physical

Society of Japan, Vol.78 No.7. (2009) 074501.

[7] “Design of a mode separated RF photo cahode gun” Abhay Deshpande, Sakae Araki,

Masafumi Fukuda, Kazuyuki Sakaue, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Noboru Sasao,

Masakazu Washio, Nucl. Instrum. Meth., A600, (2009) 361-366.

[8] “FEMTO-SECOND PROFILE MONIITOR USING PULSED LASER STORAGE IN AN OPTICAL CAVITY”

K. Sakaue, M. Washio, S. Araki, M. Fukuda, Y. Higashi, Y. Honda, T. Taniguchi, T.

Terunuma, J. Urakawa, N. Sasao, Proceedings of Free Electron Laser Conference 2009,

TUPC23 (2009)

[9] “3-Dimensional Beam Profile Monitor Based on a Pulse Storage in an Optical Cavity

for Multi-bunch Electron Beam” K. Sakaue, M. Washio, N. Sasao, S. Araki, M. Fukuda,

Y. Honda, Y. Higashi, T. Taniguchi, N. Terunuma, J. Urakawa, Proceedings of Particle

Accelerator Conference 2009, WE3GRC04 (2009)

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Page 80: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

80

[10]”Present Status of a Multi-Bunch Electron Beam Linac Baced on Cs-Te Photo-Cathode

RF-Gun at Waseda University” Tatsuya Suzuki, Junji Urakawa, Shigeru Kashiwagi, Yuta

Kato, Ryunosuke Kuroda, Kazuyuki Sakaue, Toshikazu Takatomi, Nobuhiro Terunuma,

Hitoshi Hayano, Tatsuki Fujino, Akihiko Masuda, Aki Murata, Masakazu Washio, Particle

Accelerator Conference 2009, MO6RFP102 (2009)

[11]”Improvement of Compact Pico-Second and Nano-second Pulse radiolysis system at

Waseda University” A. Fujita, Y. Hama, Y. Hosaka, T. Nomoto, K. Sakaue, M. Washio,

S. Kashiwagi, R. Kuroda, K. Ushida, Particle Accelerator Conference 2009, TU6PFP027,

(2009)

[12] “Development of laser pulse storage in an optical super-cavity for a compact

X-ray source based on laser-Compton scattering” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio,

Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo Higashi, Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Takashi

Taniguchi, Junji Urakawa, Noboru Sasao, International Conference on Ultra-short

Electron and Photon Beams, (2009)

[13]「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃におけるビーム物理研究」鈴木達也, 浦川順治,

柏木茂, 加藤雄太, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩, 早野仁司, 藤野達樹,

村田亜希, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[14]「KEK 小型電子加速器におけるレーザー蓄積装置を用いた小型 X線源(LUCX)の開発(7)」

坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 笹尾登, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田洋介,

武藤俊哉, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[15]「早稲田大学 RF 電子銃加速器システムの現状と今後の展望」坂上和之, 青木達朗, 鈴

木達也, 藤田晃宏, 別當良介, 保坂勇志, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾, 方一, 浦川順治,

照沼信浩, 早野仁司, 柏木茂, 黒田隆之助, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[16]「レーザー蓄積装置を用いたレーザーコンプトン散乱 X 線生成試験及び今後の展望」

坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田洋介, 笹尾登,

鷲尾方一, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[17]「早稲田大学 Cs-Te フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成シ

ステムの開発」鈴木達也、浦川順治、柏木茂、黒田隆乃助、坂上和之、高富俊和、照沼信

浩、早野仁司、横瀬潤一郎、横山悠久、鷲尾方一, 第 6 回日本加速器学会年会, 2009 年 8

[18]「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成システム

の開発」鈴木達也, 浦川順治, 柏木茂, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩, 早

野仁司, 増田明彦, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研究

会, 2009 年 11 月

[19]「KEK 小型電子加速器における RF 電子銃開発及びその利用研究」坂上和之, Abhay

Deshpande, 荒木栄, Alexander Aryshev, 浦川順治, 笹尾登, 清水洋孝, 高富俊和, 照沼信

81

浩, 福田将史, 本田洋介, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研究会, 2009 年 11 月 “

76 77

Page 81: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

80

[10]”Present Status of a Multi-Bunch Electron Beam Linac Baced on Cs-Te Photo-Cathode

RF-Gun at Waseda University” Tatsuya Suzuki, Junji Urakawa, Shigeru Kashiwagi, Yuta

Kato, Ryunosuke Kuroda, Kazuyuki Sakaue, Toshikazu Takatomi, Nobuhiro Terunuma,

Hitoshi Hayano, Tatsuki Fujino, Akihiko Masuda, Aki Murata, Masakazu Washio, Particle

Accelerator Conference 2009, MO6RFP102 (2009)

[11]”Improvement of Compact Pico-Second and Nano-second Pulse radiolysis system at

Waseda University” A. Fujita, Y. Hama, Y. Hosaka, T. Nomoto, K. Sakaue, M. Washio,

S. Kashiwagi, R. Kuroda, K. Ushida, Particle Accelerator Conference 2009, TU6PFP027,

(2009)

[12] “Development of laser pulse storage in an optical super-cavity for a compact

X-ray source based on laser-Compton scattering” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio,

Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo Higashi, Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Takashi

Taniguchi, Junji Urakawa, Noboru Sasao, International Conference on Ultra-short

Electron and Photon Beams, (2009)

[13]「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃におけるビーム物理研究」鈴木達也, 浦川順治,

柏木茂, 加藤雄太, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩, 早野仁司, 藤野達樹,

村田亜希, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[14]「KEK 小型電子加速器におけるレーザー蓄積装置を用いた小型 X線源(LUCX)の開発(7)」

坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 笹尾登, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田洋介,

武藤俊哉, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[15]「早稲田大学 RF 電子銃加速器システムの現状と今後の展望」坂上和之, 青木達朗, 鈴

木達也, 藤田晃宏, 別當良介, 保坂勇志, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾, 方一, 浦川順治,

照沼信浩, 早野仁司, 柏木茂, 黒田隆之助, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[16]「レーザー蓄積装置を用いたレーザーコンプトン散乱 X 線生成試験及び今後の展望」

坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田洋介, 笹尾登,

鷲尾方一, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[17]「早稲田大学 Cs-Te フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成シ

ステムの開発」鈴木達也、浦川順治、柏木茂、黒田隆乃助、坂上和之、高富俊和、照沼信

浩、早野仁司、横瀬潤一郎、横山悠久、鷲尾方一, 第 6 回日本加速器学会年会, 2009 年 8

[18]「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成システム

の開発」鈴木達也, 浦川順治, 柏木茂, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩, 早

野仁司, 増田明彦, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研究

会, 2009 年 11 月

[19]「KEK 小型電子加速器における RF 電子銃開発及びその利用研究」坂上和之, Abhay

Deshpande, 荒木栄, Alexander Aryshev, 浦川順治, 笹尾登, 清水洋孝, 高富俊和, 照沼信

81

浩, 福田将史, 本田洋介, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研究会, 2009 年 11 月

76 77

Page 82: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

82

K. 電子ビーム・レーザ衝突技術の開発(システム統合化)

とプロジェクトの総合的推進 Development of Technique for Collision between Electron and Laser

Beams and Project System Integration 概 要

超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発のために、レーザー

蓄積装置と常伝導の加速器を用いた X 線の生成試験および利用研究に向けた検

討を行っている。本年度はレーザー蓄積装置と高エネルギー加速器研究機構・

先端加速器試験棟内に設置したマルチバンチ電子ビーム生成加速器(LUCX)の改

造を行い、レーザーコンプトン散乱 X 線生成の強度を 2x105 photons/sec から

108 photons/sec 以上に増強できるように準備できた。2010 年度中に軟X線領域

で応用実験に関する試験運転が可能になるようにマルチバンチ電子ビーム生成

実験を行い、100 bunches/pulse から 300 bunches/pulse 運転まで電子ビーム強

度を上げることが可能になった。

1. はじめに

X線は医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。特に高輝度高品質な X

線は先端的な計測などに利用され多大な成果をあげている。しかしながらこのような高輝

度な X 線は現状、大型放射光施設から得ており利用が限られている。本プロジェクトでは

このような高輝度 X 線ビームを小型な施設によって生成することを目標とする。実機では

超伝導加速空胴によって加速された電子バンチを用いるがその前段階として常伝導加速器

から得られるマルチバンチ電子ビームとレーザー蓄積装置を用いることで原理実証試験を

行い、今後の本プロジェクトの指針とするべく研究を進めている。この実証試験において

得られた知見は加速器やレーザー蓄積装置、トータルとしての X 線生成システム構成に至

る全ての分野で指針となる重要なものである。

2. マルチパルス X 線生成実証試験と改造

2008 年度、常伝導線形加速器とレーザー蓄積装置を用いた X線生成実証試験は高エネル

ギー加速器研究機構、先端加速器試験棟内に設置された小型加速器(LUCX)にて行った。以

下の図 1にその構成図、図 2に衝突点付近のレイアウト図を示す。

図 1:LUCX 加速器構成図

83

旧 LUCX 加速器は電子源であるフ

ォトカソード RF 電子銃と 3m の線形

加速管から構成され、ビームエネル

ギー約40MeVの 100Bunches/Trainマ

ルチバンチビームを生成可能であっ

た。レーザー蓄積装置との相互作用

点は 2 つの四極電磁石によって収束

された位置に設置されており、その

後電子ビームは偏向電磁石で地面方

向にダンプされ、生成した X線は Be

窓を通して大気中に取り出された。

図 2:衝突点付近の構成図

まずマルチパルス X 線実証試験として以下の図 3 に示されるシンチレーション検出器を

用いて測定を行った。シンチレータとしては厚さ 150μm の LYSO(Lu2(1-x)Y2xSiO5:Ce)を用い

ており、シンチレーション光を光電

子増倍管によって増幅して検出した。

このシンチレータの厚さは低エネル

ギーの光子を効率よく検出できるよ

う計算機シミュレーションによって

最適化した。シンチレーション検出

器の直前には鉛コリメータを設置し、

生成 X線の中心部分のみを切り出して検出する構成になっている。

図 3:シンチレーション検出器構成図

78 79

Page 83: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

82

K. 電子ビーム・レーザ衝突技術の開発(システム統合化)

とプロジェクトの総合的推進 Development of Technique for Collision between Electron and Laser

Beams and Project System Integration 概 要

超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発のために、レーザー

蓄積装置と常伝導の加速器を用いた X 線の生成試験および利用研究に向けた検

討を行っている。本年度はレーザー蓄積装置と高エネルギー加速器研究機構・

先端加速器試験棟内に設置したマルチバンチ電子ビーム生成加速器(LUCX)の改

造を行い、レーザーコンプトン散乱 X 線生成の強度を 2x105 photons/sec から

108 photons/sec 以上に増強できるように準備できた。2010 年度中に軟X線領域

で応用実験に関する試験運転が可能になるようにマルチバンチ電子ビーム生成

実験を行い、100 bunches/pulse から 300 bunches/pulse 運転まで電子ビーム強

度を上げることが可能になった。

1. はじめに

X線は医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。特に高輝度高品質な X

線は先端的な計測などに利用され多大な成果をあげている。しかしながらこのような高輝

度な X 線は現状、大型放射光施設から得ており利用が限られている。本プロジェクトでは

このような高輝度 X 線ビームを小型な施設によって生成することを目標とする。実機では

超伝導加速空胴によって加速された電子バンチを用いるがその前段階として常伝導加速器

から得られるマルチバンチ電子ビームとレーザー蓄積装置を用いることで原理実証試験を

行い、今後の本プロジェクトの指針とするべく研究を進めている。この実証試験において

得られた知見は加速器やレーザー蓄積装置、トータルとしての X 線生成システム構成に至

る全ての分野で指針となる重要なものである。

2. マルチパルス X 線生成実証試験と改造

2008 年度、常伝導線形加速器とレーザー蓄積装置を用いた X線生成実証試験は高エネル

ギー加速器研究機構、先端加速器試験棟内に設置された小型加速器(LUCX)にて行った。以

下の図 1にその構成図、図 2に衝突点付近のレイアウト図を示す。

図 1:LUCX 加速器構成図

83

旧 LUCX 加速器は電子源であるフ

ォトカソード RF 電子銃と 3m の線形

加速管から構成され、ビームエネル

ギー約40MeVの 100Bunches/Trainマ

ルチバンチビームを生成可能であっ

た。レーザー蓄積装置との相互作用

点は 2 つの四極電磁石によって収束

された位置に設置されており、その

後電子ビームは偏向電磁石で地面方

向にダンプされ、生成した X線は Be

窓を通して大気中に取り出された。

図 2:衝突点付近の構成図

まずマルチパルス X 線実証試験として以下の図 3 に示されるシンチレーション検出器を

用いて測定を行った。シンチレータとしては厚さ 150μm の LYSO(Lu2(1-x)Y2xSiO5:Ce)を用い

ており、シンチレーション光を光電

子増倍管によって増幅して検出した。

このシンチレータの厚さは低エネル

ギーの光子を効率よく検出できるよ

う計算機シミュレーションによって

最適化した。シンチレーション検出

器の直前には鉛コリメータを設置し、

生成 X線の中心部分のみを切り出して検出する構成になっている。

図 3:シンチレーション検出器構成図

78 79

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84

これによって検出された X線の信号を以下の図 4・5に示す。

図 4:衝突タイミングプロット 図 5:衝突レーザ強度依存プロット

図 4のタイミングプロットは衝突レーザーのタイミングをスキャンした際のバックグラ

ウンドを差し引いたプロットで、衝突が達成していないタイミングではゼロを示し、実際

に衝突が達成されている際には最大約 1500Counts の信号が得られている。この時間幅はレ

ーザーと電子ビームの時間幅に依存しており、約 7.5ps(rms)と予想通りの値が得られてい

る。また、図 5は実際に X線の強度がレーザー強度に対して線形に変化していることを示

している。これらの図 4・5より実際にこの X線がレーザーコンプトン散乱によって生成さ

れたものであると確認できた。

以上の 2008 年度の実験結果から 108 photons/sec 以上のX線強度を得るには、S-band 高

周波源を 1台から独立な 2台システムに変更して、ビームエネルギー約 50MeV の 100

bunches/train (2nC/bunch)マルチバンチ電子ビーム生成を可能にする必要がある。図 6は

改造後のRF Systemを

示す。図 7は

2nC/bunch の Beam

Loadingを補正した場

合の旧システムと改

造後のシステムの計

算結果である。また、

衝突点における電子

ビームサイズを小さ

く(直径で 30m in

sigma以下)して、beam

background を減らすために、RF Gun 電子源の直後に光電子励起用レーザーパルス入射のた

めのシケーンとコリメータが入れられる装置改造を行うことにした。さらにビーム試験に

基づいた多くの知見から改造装置は図 8に示されるものになった。2010 年 3 月に RF System

を除いて、装置改造が完成したので、1台の高周波源で運転を再開して 6月までに放射線安

全確認審査を受ける状況になった。電子ビームサイズで 16 倍、電子ビーム強度で 5倍、レ

ーザー強度で 20倍にすることによってX線強度が三桁上がるように要素技術開発を進めて

図 6 高周波電力系の改造、2010.10 完成予定。左が旧システム、

右が改造後の RF システム。

85

いる。

3. 新高周波電子源の設計・製作と性能測定結果

新高周波電子源空洞

設計を行い、空洞製作を

開始した。設計では無負

荷 Q 値を 15%程度上げか

つ 0-mode と-mode の周

波数差を 8.6MHz まで拡

げることができた。電子

ビームの品質が十分に

良ければ、ビームダンプ

までに発生するビーム

ロスを少なくでき、放射

線管理申請変更により

10C、5.6sec、5.0MeV

ビーム生成加速も認め

られるようにできる可

能性がある。

2009 年秋までに行っ

た新高周波電子源の性能測定結果は設計値と同等の性能を示し、測定エミッタンスは旧高

周波電子源の 1/3 以下にできた。また、簡単に 300 bunches/pulse 電子ビームも行えた。

図9は新高周波電子源の写真と 300 bunches/pulse を beam dump まで輸送した時の 300

bunches のビームエネルギー測定結果である。高周波電子源空洞内の最高加速電界は

図 7 100 bunches/pulse (2nC/bunch) beam loading 補正、

旧システムでは 23MeV までしか加速できない。改造後は 50MeV

まで加速できる。

図 8 上が改造後の LUCX、下が旧 LUCX。

80 81

Page 85: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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これによって検出された X線の信号を以下の図 4・5に示す。

図 4:衝突タイミングプロット 図 5:衝突レーザ強度依存プロット

図 4のタイミングプロットは衝突レーザーのタイミングをスキャンした際のバックグラ

ウンドを差し引いたプロットで、衝突が達成していないタイミングではゼロを示し、実際

に衝突が達成されている際には最大約 1500Counts の信号が得られている。この時間幅はレ

ーザーと電子ビームの時間幅に依存しており、約 7.5ps(rms)と予想通りの値が得られてい

る。また、図 5は実際に X線の強度がレーザー強度に対して線形に変化していることを示

している。これらの図 4・5より実際にこの X線がレーザーコンプトン散乱によって生成さ

れたものであると確認できた。

以上の 2008 年度の実験結果から 108 photons/sec 以上のX線強度を得るには、S-band 高

周波源を 1台から独立な 2台システムに変更して、ビームエネルギー約 50MeV の 100

bunches/train (2nC/bunch)マルチバンチ電子ビーム生成を可能にする必要がある。図 6は

改造後のRF Systemを

示す。図 7は

2nC/bunch の Beam

Loadingを補正した場

合の旧システムと改

造後のシステムの計

算結果である。また、

衝突点における電子

ビームサイズを小さ

く(直径で 30m in

sigma以下)して、beam

background を減らすために、RF Gun 電子源の直後に光電子励起用レーザーパルス入射のた

めのシケーンとコリメータが入れられる装置改造を行うことにした。さらにビーム試験に

基づいた多くの知見から改造装置は図 8に示されるものになった。2010 年 3 月に RF System

を除いて、装置改造が完成したので、1台の高周波源で運転を再開して 6月までに放射線安

全確認審査を受ける状況になった。電子ビームサイズで 16 倍、電子ビーム強度で 5倍、レ

ーザー強度で 20倍にすることによってX線強度が三桁上がるように要素技術開発を進めて

図 6 高周波電力系の改造、2010.10 完成予定。左が旧システム、

右が改造後の RF システム。

85

いる。

3. 新高周波電子源の設計・製作と性能測定結果

新高周波電子源空洞

設計を行い、空洞製作を

開始した。設計では無負

荷 Q 値を 15%程度上げか

つ 0-mode と-mode の周

波数差を 8.6MHz まで拡

げることができた。電子

ビームの品質が十分に

良ければ、ビームダンプ

までに発生するビーム

ロスを少なくでき、放射

線管理申請変更により

10C、5.6sec、5.0MeV

ビーム生成加速も認め

られるようにできる可

能性がある。

2009 年秋までに行っ

た新高周波電子源の性能測定結果は設計値と同等の性能を示し、測定エミッタンスは旧高

周波電子源の 1/3 以下にできた。また、簡単に 300 bunches/pulse 電子ビームも行えた。

図9は新高周波電子源の写真と 300 bunches/pulse を beam dump まで輸送した時の 300

bunches のビームエネルギー測定結果である。高周波電子源空洞内の最高加速電界は

図 7 100 bunches/pulse (2nC/bunch) beam loading 補正、

旧システムでは 23MeV までしか加速できない。改造後は 50MeV

まで加速できる。

図 8 上が改造後の LUCX、下が旧 LUCX。

80 81

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87

調整することで合わせている。また、レーザーパルスの位置をムーバー架台で動かすこと

によって電子ビームに合わせている。衝突点でビームプロファイルの互いの位置をラフに

合わせた後、X線信号が最大になるよう微調整する。位置合わせ精度はミクロン以下である

ので、電子ビームサイズが 10umになっても問題ない。

今後、今までの 2枚ミラー共振器から 4枚ミラー共振器に変えて LUCXでの X線生成実験

を行い、この共振器での衝突技術の蓄積を行う。また、パルスレーザーによる 3D-4ミラー

共振器の実用化と周回発振型レーザー蓄積法の実用化を強力に進める。さらに、光高周波

電子源ビーム生成のシミュレーションにより大強度電子ビーム生成が 20µsecパルス運転で

可能であることを示したので、超伝導加速空洞製作技術が確立する前に、5MeV-10µC 電子ビ

ームによる高輝度軟X線生成実証実験を進める。これにより、電子ビームとレーザーパル

ス衝突に関する技術を本番の実証実験前に確立することを目指す。同時に、高輝度軟X線

の利用実証試験も行うことになる。

5. プロジェクトの総合的推進 高周波電子源を使って、今までの300nC/300nsec電子ビーム生成実績を向上するために、

新しい電子源を製作してきた。また、5MeV大強度電子ビームとレーザーパルスを高繰り返

しで衝突させて、レーザー逆コンプトン散乱で軟X線生成実験を行えるように装置を改造し

た。2009年度に3次元4枚ミラーリング光蓄積装置を試作して、新光蓄積装置で2010年度

に生成軟X線を使った実用試験を行えるように、実験装置の改造を進めている。2008年

~2010年間で電子ビーム・レーザー衝突実験によって、本提案課題装置で将来必要となる

安全システム・制御システム等の技術蓄積を行うために、2010年度も基礎実験を行う。

本基盤技術開発研究では、実証試験装置を 2011年秋までに完成させて、2012年夏まで

の高輝度X線生成実験によって性能を実証することになる。必要とする要素技術開発の進

捗状況を確認しながら、実証試験装置の詳細設計および装置製作を進めている。本プロジ

ェクト関係者のコミュニケーションと要素技術に関する技術検討会は非常に重要である。

以下に示す報告会、多くの技術検討会および先端技術に関する公開を積極的に推進してい

る。

外部有識者を含む先端加速器推進室報告会で本計画について報告した。技術検討会等の

開催は参画各機関を含めて 73回行い、小型高輝度光子ビーム源開発室(KEK-2号館 4階 406

号室)を作った。プロジェクトで得られた成果を発信するための Webページを公開した。

プロジェクト Webページ:http://kocbeam.kek.jp/index.html。高輝度光子ビーム源開発

室ニュースを四半期毎に配布している。

プロジェクト全体の連携を密としつつ円滑に運営していくため、研究開発運営委員会や

技術検討会の開催等、参画各機関の連携・調整に当たいる。特に、プロジェクト全体の進

捗状況を確認しつつ計画の合理化を検討し、必要に応じて調査或いは外部有識者を招聘し

て意見を聞くなど、プロジェクトの推進に努力している。

2009年度から「高電圧DC電子源開発」の拡充計画として高安定高電圧電源開発を株式会

社日立ハイテクノロジーズが担当しているので、日本原子力研究開発機構と日立ハイテク

ノロジーズ間の研究開発調整を高エネルギー加速器研究機構が行い、2011年度までに500~

750kV数十mA以上の電子ビーム生成実証試験を遂行できるように研究開発を調整してる。ま

86

120MV/m 以上で安定に運転できた。

4. 総括

2008 年度のX線生成

実験では、マルチバンチ

加速に対して以下のよ

うな重要な知見が得ら

れていた。図 10 はパル

ス毎に X 線を検出しつ

つ衝突タイミング依存

の測定を行った結果で

あ る 。 Y 軸 の Bunch

Number は値が小さいほ

ど前方のバンチを用い

て生成した X 線である

ことを示している。図

10 から見て取れるよう

にバンチ毎に最適な衝

突タイミングがシフト

していることがわかる。

これはマルチバンチビ

ーム加速の際のビームローディング補正が不十分であったためにバンチ間隔にずれが生じ、

引き起こされた現象である。実機ではさら

に長いトレインを用いるため、この効果は

さらに顕著になり高精度のビームローディ

ング補正が必須である。

LUCX において、レーザーパルス蓄積装置

に蓄積したレーザーパルスと 3000 バンチ

以上のマルチバンチ電子ビームとの衝突に

よる X 線生成実験を行い、この高精度衝突

技術の開発と蓄積を進める。2008 年度の実

験では、ビームサイズ、パルス長がそれぞ

れ 30um、10ps のレーザーパルスと 60um、

20ps の電子ビームとの衝突を行い、衝突タ

イミングを 1ps の精度で、また衝突位置を数 um の精度で合わせることで X線の生成に成功

し、基本的な衝突技術は確立されている。衝突タイミングはビームとの同期信号の位相を

図 10:パルス毎のタイミング依存

図 9 新高周波電子源写真と 300 bunches のエネルギー測定結

果、energy spread: 0.75%, bunch charge: 0.53nC, total

charge: 160nC, beam energy: 5.25MeV。

82 83

Page 87: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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調整することで合わせている。また、レーザーパルスの位置をムーバー架台で動かすこと

によって電子ビームに合わせている。衝突点でビームプロファイルの互いの位置をラフに

合わせた後、X線信号が最大になるよう微調整する。位置合わせ精度はミクロン以下である

ので、電子ビームサイズが 10umになっても問題ない。

今後、今までの 2枚ミラー共振器から 4枚ミラー共振器に変えて LUCXでの X線生成実験

を行い、この共振器での衝突技術の蓄積を行う。また、パルスレーザーによる 3D-4ミラー

共振器の実用化と周回発振型レーザー蓄積法の実用化を強力に進める。さらに、光高周波

電子源ビーム生成のシミュレーションにより大強度電子ビーム生成が 20µsecパルス運転で

可能であることを示したので、超伝導加速空洞製作技術が確立する前に、5MeV-10µC 電子ビ

ームによる高輝度軟X線生成実証実験を進める。これにより、電子ビームとレーザーパル

ス衝突に関する技術を本番の実証実験前に確立することを目指す。同時に、高輝度軟X線

の利用実証試験も行うことになる。

5. プロジェクトの総合的推進 高周波電子源を使って、今までの300nC/300nsec電子ビーム生成実績を向上するために、

新しい電子源を製作してきた。また、5MeV大強度電子ビームとレーザーパルスを高繰り返

しで衝突させて、レーザー逆コンプトン散乱で軟X線生成実験を行えるように装置を改造し

た。2009年度に3次元4枚ミラーリング光蓄積装置を試作して、新光蓄積装置で2010年度

に生成軟X線を使った実用試験を行えるように、実験装置の改造を進めている。2008年

~2010年間で電子ビーム・レーザー衝突実験によって、本提案課題装置で将来必要となる

安全システム・制御システム等の技術蓄積を行うために、2010年度も基礎実験を行う。

本基盤技術開発研究では、実証試験装置を 2011年秋までに完成させて、2012年夏まで

の高輝度X線生成実験によって性能を実証することになる。必要とする要素技術開発の進

捗状況を確認しながら、実証試験装置の詳細設計および装置製作を進めている。本プロジ

ェクト関係者のコミュニケーションと要素技術に関する技術検討会は非常に重要である。

以下に示す報告会、多くの技術検討会および先端技術に関する公開を積極的に推進してい

る。

外部有識者を含む先端加速器推進室報告会で本計画について報告した。技術検討会等の

開催は参画各機関を含めて 73回行い、小型高輝度光子ビーム源開発室(KEK-2号館 4階 406

号室)を作った。プロジェクトで得られた成果を発信するための Webページを公開した。

プロジェクト Webページ:http://kocbeam.kek.jp/index.html。高輝度光子ビーム源開発

室ニュースを四半期毎に配布している。

プロジェクト全体の連携を密としつつ円滑に運営していくため、研究開発運営委員会や

技術検討会の開催等、参画各機関の連携・調整に当たいる。特に、プロジェクト全体の進

捗状況を確認しつつ計画の合理化を検討し、必要に応じて調査或いは外部有識者を招聘し

て意見を聞くなど、プロジェクトの推進に努力している。

2009年度から「高電圧DC電子源開発」の拡充計画として高安定高電圧電源開発を株式会

社日立ハイテクノロジーズが担当しているので、日本原子力研究開発機構と日立ハイテク

ノロジーズ間の研究開発調整を高エネルギー加速器研究機構が行い、2011年度までに500~

750kV数十mA以上の電子ビーム生成実証試験を遂行できるように研究開発を調整してる。ま

86

120MV/m 以上で安定に運転できた。

4. 総括

2008 年度のX線生成

実験では、マルチバンチ

加速に対して以下のよ

うな重要な知見が得ら

れていた。図 10 はパル

ス毎に X 線を検出しつ

つ衝突タイミング依存

の測定を行った結果で

あ る 。 Y 軸 の Bunch

Number は値が小さいほ

ど前方のバンチを用い

て生成した X 線である

ことを示している。図

10 から見て取れるよう

にバンチ毎に最適な衝

突タイミングがシフト

していることがわかる。

これはマルチバンチビ

ーム加速の際のビームローディング補正が不十分であったためにバンチ間隔にずれが生じ、

引き起こされた現象である。実機ではさら

に長いトレインを用いるため、この効果は

さらに顕著になり高精度のビームローディ

ング補正が必須である。

LUCX において、レーザーパルス蓄積装置

に蓄積したレーザーパルスと 3000 バンチ

以上のマルチバンチ電子ビームとの衝突に

よる X 線生成実験を行い、この高精度衝突

技術の開発と蓄積を進める。2008 年度の実

験では、ビームサイズ、パルス長がそれぞ

れ 30um、10ps のレーザーパルスと 60um、

20ps の電子ビームとの衝突を行い、衝突タ

イミングを 1ps の精度で、また衝突位置を数 um の精度で合わせることで X線の生成に成功

し、基本的な衝突技術は確立されている。衝突タイミングはビームとの同期信号の位相を

図 10:パルス毎のタイミング依存

図 9 新高周波電子源写真と 300 bunches のエネルギー測定結

果、energy spread: 0.75%, bunch charge: 0.53nC, total

charge: 160nC, beam energy: 5.25MeV。

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Page 88: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

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た、広島大学と研究協力機関大阪大学産業総合研究所が「高性能光L-band RF Gun開発」を

進めている。これについてもL-band RF Gun性能実験設備を所有する高エネルギー加速器研

究機構が研究開発の調整と統合を行っている。さらに、2009年度から新しく福田グループ

が小型高周波源開発を行うことになった。2011年度秋からの統合実証実験に向けて順調に

基盤技術開発が進んでいる。

プロジェクトで得られた成果については、国内外において積極的に公表し、併せて超伝

導加速空洞やその周辺機器の最先端知見を得ることで、今後の展開に資するよう調整して

いる。

6. 参考文献

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Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, et.al. “Photon Generation by Laser-Compton

Scattering Using an Optical Resonant Cavity at the KEK-ATF Electron Ring”, Journal

of Physical Society of Japan, Vol. 78, No.7, 074501-1 -- 074501-7 (2009)

[16].“Development of Hard X−ray Detector with GEM”by Shoji Un o(KEK)

1st International Conference on Micro Pattern Gaseous Detectors, 12-15 June 2009,

Kolympari, Crete, Greece

[17]. 「GEM を用いた硬 X線検出器の開発」黒石将弘(信州大学)

日本物理学会 2009 年秋季大会 2009 年 9 月 10-13 日 甲南大学

[18].“Development of New Type Gaseous Gamma Camera with GEM”by T.Koike (Tokyo

University of Science), 2009 IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging

Cnference, 23-31 October 2009, Orland, Florida, USA

[20].“Developments of SOI Monolithic Pixel Detectors”, Y. Arai et al.

Technology and Instrumentation in Particle Physics 2009 in Tsukuba, Japan, 11-17 March,

84 85

Page 89: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

88

た、広島大学と研究協力機関大阪大学産業総合研究所が「高性能光L-band RF Gun開発」を

進めている。これについてもL-band RF Gun性能実験設備を所有する高エネルギー加速器研

究機構が研究開発の調整と統合を行っている。さらに、2009年度から新しく福田グループ

が小型高周波源開発を行うことになった。2011年度秋からの統合実証実験に向けて順調に

基盤技術開発が進んでいる。

プロジェクトで得られた成果については、国内外において積極的に公表し、併せて超伝

導加速空洞やその周辺機器の最先端知見を得ることで、今後の展開に資するよう調整して

いる。

6. 参考文献

[1]. R. Hajima, N. Nishimori, R. Nagai, H. Iijima, M. Yamamoto, T. Muto, Y. Honda,

T. Miyajima, M. Kuriki, “DESIGN AND FABRICATION OF A 500-KV PHOTOCATHODE DC GUNFOR

ERL LIGHT SOURCES”, Proc. Of 23rd Particle Accelerator Conference(PAC09), Vancouver,

Canada, MO6RFP074, 2009

[2]. 桑原真人、中西彊、奥見正治、金秀光、前多悠也、宇治原徹、竹田美和、山本将博、

本田洋介、河田洋、飯島北斗、西森信行、永井良治、羽島良一、栗木雅夫, “ERL 放射光源

用電子銃のためのフォトカソード開発”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、

8/5-7, WOPSB03, 2009

[3]. 正中智慧、栗木雅夫、久保大輔、金田健一、岡本宏己、桧垣浩之、伊藤清 一、山本

将博、許斐太郎、奥見正治、中西彊, “GaAs 光カソード加熱によるダーク寿命の低下につ

いての研究”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA15, 2009

[4]. 柏木茂、加藤龍好、杉本直哉、古橋建一郎、寺沢賢和、森尾豊、磯山悟朗,杉山陽栄、

浦川順治,早野仁司,久保大輔、正中智慧、栗木雅夫、神戸浩多, “Lバンドフォトカソー

ド RF 電子銃の開発 II”, 第六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA12,

2009

[5]. 山本将博、金秀光、前多悠也、宇治原徹、竹田美和、栗木雅夫、正中智慧、久保大輔、

栗栖普揮、本田洋介、宮島司、内山隆司、武藤俊哉、松葉俊哉、坂中章吾、佐藤康太郎、

斎藤義男、本田融、小林幸則、河田洋、西森信行、永井良二、飯島北斗、羽島良一、桑原

真人、奥見正治、中西彊, “KEK における ERL 放射光源用 500kV 電子銃の開発計画”, 第

六回加速器学会年会、日本原子力開発機構、8/5-7, FPPSA08, 2009

[6]. S. Kashiwagi, R. Kato, Y. Morio, K. Furuhashi, Y. Terasawa, N. Sugimoto, G.

Isoyama,H. Hayano, H. Sugiyama, J. Urakawa, K. Watanabe,M. Kuriki, C. Shonaka and

D. Kubo, ” Development of a Photocathode RF Gun for an L-band Electron Linac”,

Proceedings of FEL2009 (Liverpool, UK), TUPC20, 2009

[7]. N. Nishimori , R. Nagai, H. Iijima , R. Hajima, M. Yamamoto, T. Muto, Y. Honda,

T. Miyajima, M. Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, “DEVELOPMENT OF A

500-KV PHOTO-CATHODE DC GUN FOR THE ERL LIGHT SOURCES IN JAPAN”, Proceedings of

FEL2009 (Liverpool, UK), TUPC17, 2009

[8]. M. Kuriki, C. Shonaka, D. Kubo, H. Okamoto, H. Higaki, K. Ito,M. Yamamoto, T.

Konomi, S. Okumi, M. Kuwahara, T. Nakanishi, “Darklifetime degradation of GaAs

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China), to be published in Nucl. Instr. and Meth. A, 2009

[9]. 赤木智哉 KEK-ATF における ILC 偏極陽電子源の為のレーザー蓄積空洞を用いた高輝

度ガンマ線生成実験 第 6回日本加速器学会 2009 年 8 月

[10]. 永田修司 高輝度偏極光子源の為の新型レーザー蓄積共振器の開発 I 日本物理学

会 2009 年分科会 2009 年 9 月

[11]. 三好修平 高輝度偏極光子源の為の新型レーザー蓄積共振器の開発 II 日本物理学

会 2009 年分科会 2009 年 9 月

[12]. 三好修平 KEK-ATFにおけるILC偏極陽電子源の為のレーザー蓄積共振器を用いたガ

ンマ線生成実験 日本物理学会第 65 回年次大会 2010 年 3 月

[13]. 赤木智哉 高輝度偏極光源の為の 4枚鏡光蓄積共振器の開発 日本物理学会第 65回

年次大会 2010 年 3 月

[14]. S. Miyoshia, T Akagia, S. Arakib, Y. Funahashib, T. Hirosec, Y. Hondab, M.

Kurikia, X. Lid, T. Okugib, T. Omorib, G. Peid, K. Sakauec, H. Shimizub, T. Takahashia,

N. Terunumab, J. Urakawab, Y. Ushioa and M. Washioc “ Photon generation by

laser-Compton scattering at the KEK-ATF”, arXiv:1002.3462v1, (Nuclear Instruments

and Method 誌に掲載受理 http://dx.doi.org/10.1016/j.nima.2010.03.075)

[15]. Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi, Yosuke Honda, Toshiyuki

Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Masao Kuriki, Shuhei

Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige Hirose, Kazuyuki Sakaue, Masakazu

Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, et.al. “Photon Generation by Laser-Compton

Scattering Using an Optical Resonant Cavity at the KEK-ATF Electron Ring”, Journal

of Physical Society of Japan, Vol. 78, No.7, 074501-1 -- 074501-7 (2009)

[16].“Development of Hard X−ray Detector with GEM”by Shoji Un o(KEK)

1st International Conference on Micro Pattern Gaseous Detectors, 12-15 June 2009,

Kolympari, Crete, Greece

[17]. 「GEM を用いた硬 X線検出器の開発」黒石将弘(信州大学)

日本物理学会 2009 年秋季大会 2009 年 9 月 10-13 日 甲南大学

[18].“Development of New Type Gaseous Gamma Camera with GEM”by T.Koike (Tokyo

University of Science), 2009 IEEE Nuclear Science Symposium & Medical Imaging

Cnference, 23-31 October 2009, Orland, Florida, USA

[20].“Developments of SOI Monolithic Pixel Detectors”, Y. Arai et al.

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84 85

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90

2009, Preprint submitted to TIPP09, to be published in NIM A

[21]. “Silicon-on-insulator technology enables next-generation radiation image

sensors”, Yasuo Arai and Toshinobu Miyoshi, 5 August 2009, SPIE Newsroom. DOI:

10.1117/2.1200907.1725.

[22]. “Development of SOI Pixel Process Technology”, Y. Arai* et al.

7th International “Hiroshima” Symposium on Development and Applications of

Semiconductor Tracking Devices, International Conference Center Hiroshima, Japan,

Aug. 29-Sep.1, 2009, to be published in Nucl. Instr. and Meth. A.

[23]. “Reduction techniques of the back gate effect in the SOI Pixel Detector”, R.

Ichimiya, Y.Arai, K. Fukuda, I. Kurachi, N. Kuriyama, M. Ohno, M. Okihara, for the

SOI Pixel collaboration, Proceedings of Topical Workshop on Electronics for Particle

Physics (TWEPP-09), 21-25 Sep. 2009, CERN-2009-006, pp. 68-71

[24]. “New Techniques in SOI Pixel Detector”, Y. Arai, 2009 IEEE Nuclear Science

Symposium and Medical Imaging Conference, Orlando Florida, Oct. 25-31, 2009,

Conference Record,

[25]. “SOI pixel 検出器の TCAD による構造最適化“一宮亮、ほか 2009 年 9 月 11 日、

日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[26]. “SOI pixel 検出器におけるバックゲート効果の埋め込み Pウェルによる抑制”、 瀬

賀智子ほか、2009年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[27]. ”CDS機能を備えた積分型 SOI pixel 検出器の性能評価”、 池本由希子ほか、2009

年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[28]. ”SOI技術を用いた読出し一体型ピクセル検出器の開発(TCADによる放射線損傷の

研究)”、 河内山真美ほか、2009年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学).

[29]. ”X線照射による SOI MOS トランジスタ特性への影響の研究”、 小貫良行ほか、2009

年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[30]. ”SOI技術を用いた ILC衝突点ビームモニタ“ペアモニタ”の読み出し回路の開発'、

佐藤優太郎ほか、2009年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[31]. ”大面積化を目指した計数型 X線 SOIイメージセンサー(CNTPIX3)”、 三好敏喜ほ

か、2009年 9月 28日、日本物理学会秋季大会(熊本大学)

[32]. “Observation of pulsed x-ray trains produced by laser-electron Compton

scatterings” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo

Higashi, Yosuke Honda, Tsunehiko Omori, Takashi Taniguchi, Nobuhiro Terunuma, Junji

Urakawa, Noboru Sasao, Rev. Sci. Instrum., 80(12) (2009) 123304 1-7.

[33]. ”Improvement of an S-band RF gun with a Cs2Te photocathode for the KEK-ATF”

N. Terunuma, A. Murata, M. Fukuda, K. Hirano, Y. Kamiya, T. Kii, M. Kuriki, R. Kuroda,

H. Ohgaki, K. Sakaue, M. Takano, T. Takatomi, J. Urakawa, M. Washio, Y. Yamazaki,

91

J. Yang, Nucl. Instrum. Meth. A613 (2010) 1-8.

[34]. “Development of a Compact X-ray Source and Super-sensitization of Photo Resists

for Soft X-ray Imaging” T. Gowa, N. Fukutake, Y. Hama, K. Hizume, T. Kashino, S.

Kashiwagi, R. Kuroda, A. Masuda, A. Oshima, T. Saito, K. Sakaue, K. Shinohara, T.

Takahashi, T. Urakawa, K. Ushida and M. Washio, J. Photopolym Sci. Technol. 22(5)

(2009) 691-696.

[35]. “Development of Compact Coherent EUV Source Based on Laser Compton Scattering”

S. Kashiwagi, R. Kato, G. Isoyama, K. Sakaue, A. Masuda, T. Nomoto, T. Gowa, M. Washio,

R. Kuroda and J. Urakawa, Radiat. Phys. Chem. 78 (2009) 1112-1115.

[36]. “Stabilization of a Non-Planar Optical Cavity using its Polarization

Property” Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Junji

Urakawa, Kazuyuki Sakaue, Hiroshi Sakai, Noboru Sasao, Optics Communications, Vol.

282, (2009) 3108-3112.

[37]. “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using an Optical Resonant

Cavity at the KEK-ATF Electron Ring” Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato

Funahashi, Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji

Urakawa, Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige,

Hirose, Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, Journal of the

Physical Society of Japan, Vol.78 No.7. (2009) 074501.

[38]. “Design of a mode separated RF photo cahode gun” Abhay Deshpande, Sakae Araki,

Masafumi Fukuda, Kazuyuki Sakaue, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Noboru Sasao,

Masakazu Washio, Nucl. Instrum. Meth., A600, (2009) 361-366.

[39]. “FEMTO-SECOND PROFILE MONIITOR USING PULSED LASER STORAGE IN AN OPTICAL

CAVITY” K. Sakaue, M. Washio, S. Araki, M. Fukuda, Y. Higashi, Y. Honda, T. Taniguchi,

T. Terunuma, J. Urakawa, N. Sasao, Proceedings of Free Electron Laser Conference 2009,

TUPC23 (2009)

[40]. “3-Dimensional Beam Profile Monitor Based on a Pulse Storage in an Optical

Cavity for Multi-bunch Electron Beam” K. Sakaue, M. Washio, N. Sasao, S. Araki, M.

Fukuda, Y. Honda, Y. Higashi, T. Taniguchi, N. Terunuma, J. Urakawa, Proceedings of

Particle Accelerator Conference 2009, WE3GRC04 (2009)

[41]. ”Present Status of a Multi-Bunch Electron Beam Linac Baced on Cs-Te

Photo-Cathode RF-Gun at Waseda University” Tatsuya Suzuki, Junji Urakawa, Shigeru

Kashiwagi, Yuta Kato, Ryunosuke Kuroda, Kazuyuki Sakaue, Toshikazu Takatomi, Nobuhiro

Terunuma, Hitoshi Hayano, Tatsuki Fujino, Akihiko Masuda, Aki Murata, Masakazu Washio,

Particle Accelerator Conference 2009, MO6RFP102 (2009)

86 87

Page 91: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

90

2009, Preprint submitted to TIPP09, to be published in NIM A

[21]. “Silicon-on-insulator technology enables next-generation radiation image

sensors”, Yasuo Arai and Toshinobu Miyoshi, 5 August 2009, SPIE Newsroom. DOI:

10.1117/2.1200907.1725.

[22]. “Development of SOI Pixel Process Technology”, Y. Arai* et al.

7th International “Hiroshima” Symposium on Development and Applications of

Semiconductor Tracking Devices, International Conference Center Hiroshima, Japan,

Aug. 29-Sep.1, 2009, to be published in Nucl. Instr. and Meth. A.

[23]. “Reduction techniques of the back gate effect in the SOI Pixel Detector”, R.

Ichimiya, Y.Arai, K. Fukuda, I. Kurachi, N. Kuriyama, M. Ohno, M. Okihara, for the

SOI Pixel collaboration, Proceedings of Topical Workshop on Electronics for Particle

Physics (TWEPP-09), 21-25 Sep. 2009, CERN-2009-006, pp. 68-71

[24]. “New Techniques in SOI Pixel Detector”, Y. Arai, 2009 IEEE Nuclear Science

Symposium and Medical Imaging Conference, Orlando Florida, Oct. 25-31, 2009,

Conference Record,

[25]. “SOI pixel 検出器の TCAD による構造最適化“一宮亮、ほか 2009 年 9 月 11 日、

日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[26]. “SOI pixel 検出器におけるバックゲート効果の埋め込み Pウェルによる抑制”、 瀬

賀智子ほか、2009年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[27]. ”CDS機能を備えた積分型 SOI pixel 検出器の性能評価”、 池本由希子ほか、2009

年 9 月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[28]. ”SOI技術を用いた読出し一体型ピクセル検出器の開発(TCADによる放射線損傷の

研究)”、 河内山真美ほか、2009年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学).

[29]. ”X線照射による SOI MOS トランジスタ特性への影響の研究”、 小貫良行ほか、2009

年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[30]. ”SOI技術を用いた ILC衝突点ビームモニタ“ペアモニタ”の読み出し回路の開発'、

佐藤優太郎ほか、2009年 9月 11日、日本物理学会秋季大会(甲南大学)

[31]. ”大面積化を目指した計数型 X線 SOIイメージセンサー(CNTPIX3)”、 三好敏喜ほ

か、2009年 9月 28日、日本物理学会秋季大会(熊本大学)

[32]. “Observation of pulsed x-ray trains produced by laser-electron Compton

scatterings” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo

Higashi, Yosuke Honda, Tsunehiko Omori, Takashi Taniguchi, Nobuhiro Terunuma, Junji

Urakawa, Noboru Sasao, Rev. Sci. Instrum., 80(12) (2009) 123304 1-7.

[33]. ”Improvement of an S-band RF gun with a Cs2Te photocathode for the KEK-ATF”

N. Terunuma, A. Murata, M. Fukuda, K. Hirano, Y. Kamiya, T. Kii, M. Kuriki, R. Kuroda,

H. Ohgaki, K. Sakaue, M. Takano, T. Takatomi, J. Urakawa, M. Washio, Y. Yamazaki,

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J. Yang, Nucl. Instrum. Meth. A613 (2010) 1-8.

[34]. “Development of a Compact X-ray Source and Super-sensitization of Photo Resists

for Soft X-ray Imaging” T. Gowa, N. Fukutake, Y. Hama, K. Hizume, T. Kashino, S.

Kashiwagi, R. Kuroda, A. Masuda, A. Oshima, T. Saito, K. Sakaue, K. Shinohara, T.

Takahashi, T. Urakawa, K. Ushida and M. Washio, J. Photopolym Sci. Technol. 22(5)

(2009) 691-696.

[35]. “Development of Compact Coherent EUV Source Based on Laser Compton Scattering”

S. Kashiwagi, R. Kato, G. Isoyama, K. Sakaue, A. Masuda, T. Nomoto, T. Gowa, M. Washio,

R. Kuroda and J. Urakawa, Radiat. Phys. Chem. 78 (2009) 1112-1115.

[36]. “Stabilization of a Non-Planar Optical Cavity using its Polarization

Property” Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Junji

Urakawa, Kazuyuki Sakaue, Hiroshi Sakai, Noboru Sasao, Optics Communications, Vol.

282, (2009) 3108-3112.

[37]. “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using an Optical Resonant

Cavity at the KEK-ATF Electron Ring” Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato

Funahashi, Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji

Urakawa, Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige,

Hirose, Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, Journal of the

Physical Society of Japan, Vol.78 No.7. (2009) 074501.

[38]. “Design of a mode separated RF photo cahode gun” Abhay Deshpande, Sakae Araki,

Masafumi Fukuda, Kazuyuki Sakaue, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa, Noboru Sasao,

Masakazu Washio, Nucl. Instrum. Meth., A600, (2009) 361-366.

[39]. “FEMTO-SECOND PROFILE MONIITOR USING PULSED LASER STORAGE IN AN OPTICAL

CAVITY” K. Sakaue, M. Washio, S. Araki, M. Fukuda, Y. Higashi, Y. Honda, T. Taniguchi,

T. Terunuma, J. Urakawa, N. Sasao, Proceedings of Free Electron Laser Conference 2009,

TUPC23 (2009)

[40]. “3-Dimensional Beam Profile Monitor Based on a Pulse Storage in an Optical

Cavity for Multi-bunch Electron Beam” K. Sakaue, M. Washio, N. Sasao, S. Araki, M.

Fukuda, Y. Honda, Y. Higashi, T. Taniguchi, N. Terunuma, J. Urakawa, Proceedings of

Particle Accelerator Conference 2009, WE3GRC04 (2009)

[41]. ”Present Status of a Multi-Bunch Electron Beam Linac Baced on Cs-Te

Photo-Cathode RF-Gun at Waseda University” Tatsuya Suzuki, Junji Urakawa, Shigeru

Kashiwagi, Yuta Kato, Ryunosuke Kuroda, Kazuyuki Sakaue, Toshikazu Takatomi, Nobuhiro

Terunuma, Hitoshi Hayano, Tatsuki Fujino, Akihiko Masuda, Aki Murata, Masakazu Washio,

Particle Accelerator Conference 2009, MO6RFP102 (2009)

86 87

Page 92: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

92

[42]. ”Improvement of Compact Pico-Second and Nano-second Pulse radiolysis system

at Waseda University” A. Fujita, Y. Hama, Y. Hosaka, T. Nomoto, K. Sakaue, M. Washio,

S. Kashiwagi, R. Kuroda, K. Ushida, Particle Accelerator Conference 2009, TU6PFP027,

(2009)

[43]. “Development of laser pulse storage in an optical super-cavity for a compact

X-ray source based on laser-Compton scattering” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio,

Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo Higashi, Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Takashi

Taniguchi, Junji Urakawa, Noboru Sasao, International Conference on Ultra-short

Electron and Photon Beams, (2009)

[44]. 「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃におけるビーム物理研究」鈴木達也, 浦川順

治,柏木茂, 加藤雄太, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩, 早野仁司, 藤野達

樹,村田亜希, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[45]. 「KEK 小型電子加速器におけるレーザー蓄積装置を用いた小型 X 線源(LUCX)の開発

(7)」坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 笹尾登, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田

洋介, 武藤俊哉, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[46]. 「早稲田大学 RF電子銃加速器システムの現状と今後の展望」坂上和之, 青木達朗, 鈴

木達也, 藤田晃宏, 別當良介, 保坂勇志, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾, 方一, 浦川順治,

照沼信浩, 早野仁司, 柏木茂, 黒田隆之助, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[47]. 「レーザー蓄積装置を用いたレーザーコンプトン散乱 X線生成試験及び今後の展望」

坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田洋介, 笹尾登,

鷲尾方一, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[48]. 「早稲田大学 Cs-Te フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成

システムの開発」鈴木達也、浦川順治、柏木茂、黒田隆乃助、坂上和之、高富俊和、照沼

信浩、早野仁司、横瀬潤一郎、横山悠久、鷲尾方一, 第 6 回日本加速器学会年会, 2009 年

8 月

[49]. 「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成システ

ムの開発」鈴木達也, 浦川順治, 柏木茂, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩,

早野仁司, 増田明彦, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研

究会, 2009 年 11 月

[50]. 「KEK 小型電子加速器における RF 電子銃開発及びその利用研究」坂上和之, Abhay

Deshpande, 荒木栄, Alexander Aryshev, 浦川順治, 笹尾登, 清水洋孝, 高富俊和, 照沼

信浩, 福田将史, 本田洋介, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研究会, 2009 年 11 月

93

7. 成果の外部への発表

学会等における口頭・ポスター発表

発表した成果(発表題

目、口頭・ポスター発

表の別)

発表者氏

発表した場所(学会

等名) 発表した時期

国内・

外の別

Status of the Compton

Experiment at the ATF

(口頭)

高橋 徹つくば市、エポカル

(TILC09) 2009 年 4 月 18 日 国内

招待講演、Development

of CW Laser Wire in

Storage Ring and

Pulsed Laser Wire(口

頭)

本田洋介 Vancouver, Hyatt

Hotel (PAC09) 2009 年5月6日 国外

Simulations of Mode

Separated RF Photo

Cathode Gun(ポスタ

ー)

Abhay

Deshpande

その他

Vancouver, Hyatt

Hotel (PAC09)

2009 年5月4日

~7日 国外

Micron Size

Laser-Wire System at

the ATF Extraction

Line, Recent Results

and ATF-II Upgrade(ポ

スター)

Alexander

Aryshev

その他

Vancouver, Hyatt

Hotel (PAC09)

2009 年5月4日

~7日 国外

Regional report ASIA

(口頭) 早野仁司

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

STF cryomodule tset

(口頭) 加古永治

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

Cavity and package

production for

KEK-STF(口頭)

野口修一 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

Surface study by

using sample plate(口

頭)

佐伯学行 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

KEK-STF cryomodule

assembly report(口

頭)

大内徳人 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

88 89

Page 93: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

92

[42]. ”Improvement of Compact Pico-Second and Nano-second Pulse radiolysis system

at Waseda University” A. Fujita, Y. Hama, Y. Hosaka, T. Nomoto, K. Sakaue, M. Washio,

S. Kashiwagi, R. Kuroda, K. Ushida, Particle Accelerator Conference 2009, TU6PFP027,

(2009)

[43]. “Development of laser pulse storage in an optical super-cavity for a compact

X-ray source based on laser-Compton scattering” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio,

Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo Higashi, Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Takashi

Taniguchi, Junji Urakawa, Noboru Sasao, International Conference on Ultra-short

Electron and Photon Beams, (2009)

[44]. 「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃におけるビーム物理研究」鈴木達也, 浦川順

治,柏木茂, 加藤雄太, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩, 早野仁司, 藤野達

樹,村田亜希, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[45]. 「KEK 小型電子加速器におけるレーザー蓄積装置を用いた小型 X 線源(LUCX)の開発

(7)」坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 笹尾登, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田

洋介, 武藤俊哉, 鷲尾方一, 日本物理学会 第 64 回年次大会, 2009 年 3 月

[46]. 「早稲田大学 RF電子銃加速器システムの現状と今後の展望」坂上和之, 青木達朗, 鈴

木達也, 藤田晃宏, 別當良介, 保坂勇志, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾, 方一, 浦川順治,

照沼信浩, 早野仁司, 柏木茂, 黒田隆之助, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[47]. 「レーザー蓄積装置を用いたレーザーコンプトン散乱 X線生成試験及び今後の展望」

坂上和之, 荒木栄, 浦川順治, 谷口敬, 照沼信浩, 東保男, 福田将史, 本田洋介, 笹尾登,

鷲尾方一, 第 6 回加速器学会年会 2009 年 8 月

[48]. 「早稲田大学 Cs-Te フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成

システムの開発」鈴木達也、浦川順治、柏木茂、黒田隆乃助、坂上和之、高富俊和、照沼

信浩、早野仁司、横瀬潤一郎、横山悠久、鷲尾方一, 第 6 回日本加速器学会年会, 2009 年

8 月

[49]. 「早稲田大学フォトカソード RF 電子銃を用いたマルチバンチ電子ビーム生成システ

ムの開発」鈴木達也, 浦川順治, 柏木茂, 黒田隆之助, 坂上和之, 高富俊和, 照沼信浩,

早野仁司, 増田明彦, 横瀬潤一郎, 横山悠久, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研

究会, 2009 年 11 月

[50]. 「KEK 小型電子加速器における RF 電子銃開発及びその利用研究」坂上和之, Abhay

Deshpande, 荒木栄, Alexander Aryshev, 浦川順治, 笹尾登, 清水洋孝, 高富俊和, 照沼

信浩, 福田将史, 本田洋介, 鷲尾方一, 第 7 回高輝度・高周波電子銃研究会, 2009 年 11 月

93

7. 成果の外部への発表

学会等における口頭・ポスター発表

発表した成果(発表題

目、口頭・ポスター発

表の別)

発表者氏

発表した場所(学会

等名) 発表した時期

国内・

外の別

Status of the Compton

Experiment at the ATF

(口頭)

高橋 徹つくば市、エポカル

(TILC09) 2009 年 4 月 18 日 国内

招待講演、Development

of CW Laser Wire in

Storage Ring and

Pulsed Laser Wire(口

頭)

本田洋介 Vancouver, Hyatt

Hotel (PAC09) 2009 年5月6日 国外

Simulations of Mode

Separated RF Photo

Cathode Gun(ポスタ

ー)

Abhay

Deshpande

その他

Vancouver, Hyatt

Hotel (PAC09)

2009 年5月4日

~7日 国外

Micron Size

Laser-Wire System at

the ATF Extraction

Line, Recent Results

and ATF-II Upgrade(ポ

スター)

Alexander

Aryshev

その他

Vancouver, Hyatt

Hotel (PAC09)

2009 年5月4日

~7日 国外

Regional report ASIA

(口頭) 早野仁司

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

STF cryomodule tset

(口頭) 加古永治

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

Cavity and package

production for

KEK-STF(口頭)

野口修一 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

Surface study by

using sample plate(口

頭)

佐伯学行 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

KEK-STF cryomodule

assembly report(口

頭)

大内徳人 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

88 89

Page 94: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

94

STF cryomodule test

plan(口頭) 大内徳人

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

STF T-mao results(口

頭) 山本康史

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

Recent inspection

results by

Kyoto-camera(口頭)

渡邉謙 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

STF new-EP

commissioning(口頭) 上野健治

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

4 Mirror Cavity R&D in

Japan (口頭) 高橋 徹

Lyon, IPNL

(PoiPol2009)

2009 年 6 月 23 日

~26 日 国外

早稲田大学 Cs-Te フォ

トカソード RF 電子銃

を用いたマルチバンチ

電子ビーム生成システ

ムの開発(ポスター)

鈴木達也

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

レーザー蓄積装置を用

いたレーザーコンプト

ン散乱 X線生成試験及

び今後の展望(ポスタ

ー)

坂上和之

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

KEK-ATF ダンピング

リングにおける

Laser-Wire システム

による Beam Size 及

び Emittance 測定と

その改良(ポスター)

清水洋孝

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

周回発振型光蓄積装置

によるレーザーコンプ

トン光源用レーザー標

的の提案(ポスター)

本田洋介

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

KEK-ATF における ILC

偏極陽電子源の為の光

蓄積共振器を用いた高

輝度ガンマ線生成実験

赤木智哉

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

95

II(ポスター)

L バンドフォトカソー

ド RF 電子銃の開発

(II)(ポスター)

柏木 茂

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

S-BAND COMPACT X-RAY

SOURCE WITH Pi/2 MODE

ELECTRON LINAC(ポス

ター)

Abhay

Deshpande

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

KEK 小型電子加速器

(LUCX)の将来計画(ポ

スター)

福田将史

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

招待講演 Development

for Compact X-ray

Source based on

Compton Scattering

using 1.3GHz

Superconducting RF

Accelerating Linac

and New Laser Storage

Cavity(口頭)

浦川順治

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

Development of a

laser pulse storage

technique in an

optical super-cavity

for a compact X-ray

source based on

laser-Compton

scattering(ポスター)

坂上和之

その他

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

Upgrade of the

accelerator for the

Laser Undulator

Compact X-ray source

(LUCX)(ポスター)

福田将史

その他

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

90 91

Page 95: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

94

STF cryomodule test

plan(口頭) 大内徳人

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

STF T-mao results(口

頭) 山本康史

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

Recent inspection

results by

Kyoto-camera(口頭)

渡邉謙 Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

STF new-EP

commissioning(口頭) 上野健治

Orsay, TTC

Meeting, France

2009 年 6 月 16 日

~19 日 国外

4 Mirror Cavity R&D in

Japan (口頭) 高橋 徹

Lyon, IPNL

(PoiPol2009)

2009 年 6 月 23 日

~26 日 国外

早稲田大学 Cs-Te フォ

トカソード RF 電子銃

を用いたマルチバンチ

電子ビーム生成システ

ムの開発(ポスター)

鈴木達也

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

レーザー蓄積装置を用

いたレーザーコンプト

ン散乱 X線生成試験及

び今後の展望(ポスタ

ー)

坂上和之

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

KEK-ATF ダンピング

リングにおける

Laser-Wire システム

による Beam Size 及

び Emittance 測定と

その改良(ポスター)

清水洋孝

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

周回発振型光蓄積装置

によるレーザーコンプ

トン光源用レーザー標

的の提案(ポスター)

本田洋介

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

KEK-ATF における ILC

偏極陽電子源の為の光

蓄積共振器を用いた高

輝度ガンマ線生成実験

赤木智哉

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

95

II(ポスター)

L バンドフォトカソー

ド RF 電子銃の開発

(II)(ポスター)

柏木 茂

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

S-BAND COMPACT X-RAY

SOURCE WITH Pi/2 MODE

ELECTRON LINAC(ポス

ター)

Abhay

Deshpande

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

KEK 小型電子加速器

(LUCX)の将来計画(ポ

スター)

福田将史

その他

日本原子力研究開

発機構(第 6回日本

加速器学会)

2009年8月5日~

7日 国内

招待講演 Development

for Compact X-ray

Source based on

Compton Scattering

using 1.3GHz

Superconducting RF

Accelerating Linac

and New Laser Storage

Cavity(口頭)

浦川順治

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

Development of a

laser pulse storage

technique in an

optical super-cavity

for a compact X-ray

source based on

laser-Compton

scattering(ポスター)

坂上和之

その他

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

Upgrade of the

accelerator for the

Laser Undulator

Compact X-ray source

(LUCX)(ポスター)

福田将史

その他

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

90 91

Page 96: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

96

招待講演 High quality

and high current

electron source based

on a Cs-Te

photo-cathode RF-gun

(口頭)

鷲尾方一

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

高輝度偏極光子源の為

の新型レーザー蓄積共

振器の開発 I(口頭)

三好修平

その他

甲南大学(日本物理

学)

2009 年 9 月 10 日

~13 日 国内

高輝度偏極光子源の為

の新型レーザー蓄積共

振器の開発 II(口頭)

永田修司

その他

甲南大学(日本物理

学)

2009 年 9 月 10 日

~13 日 国内

KEK 小型電子加速器に

おけるレーザー蓄積装

置を用いた小型 X線源

(LUCX)の開発(8)(口

頭)

福田将史

その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

Ce-Te フォトカソード

RF-Gunを用いたマルチ

バンチ電子ビーム生成

システムの開発(口頭)

横瀬潤一

郎その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

フォトカソードRF-Gun

におけるマルチバンチ

電子ビームの RF 振幅

変調法を用いたエネル

ギー補正に関する研究

(口頭)

横山悠久

その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

高輝度偏極光源の為の

4枚鏡光蓄積共振器の

開発(口頭)

赤木智哉

その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

超伝導加速による次世

代小型高輝度光子ビー

ム源の開発(口頭)

浦川順治

茨城大学(日本原子

力学会年会、企画セ

ッション)

2010 年 3 月 26 日

~28 日 国内

97

学会誌・雑誌等における論文掲載

[1]. “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using an Optical Resonant Cavity

at the KEK-ATF Electron Ring” Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi,

Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa,

Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige, Hirose,

Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, Journal of the Physical

Society of Japan, Vol.78, No.7, (2009) 074501-1 ~ 074501-7.

[2]. “Stabilization of a Non-Planar Optical Cavity using its Polarization Property”

Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Junji Urakawa,

Kazuyuki Sakaue, Hiroshi Sakai, Noboru Sasao, Optics Communications, Vol. 282, (2009)

3108-3112.

[3]. “Experimental result of Lorentz detuning in STF phase-1 at KEK-STF”, Y.

Yamamoto, H. Hayano, E. Kako, T. Matsumoto, S. Michizono, T. Miura, S. Noguchi, M.

Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) TUPPO007.

[4]. “Cryomodule tests of the STF phase-1 at KEK”,E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi,

M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe and Y. Yamamoto, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany

(2009) TUPPO021.

[5]. “R&D of nondestructive inspection systems for SRF cavities”,Y. Iwashita, H.

Fujisawa, H. Tongu (Kyoto University), H. Hayano, K. Watanabe and Y. Yamamoto(KEK),

Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) TUPPO040.

[6]. “Surface characterization of niobium samples electropolished together with real

cavities”, X. Zhao, R. L. Geng(JLAB), Y. Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki,

T. Saeki, M. Sawabe, K. Ueno, K. Watanabe(KEK) , Proc. of SRF2009, Berlin, Germany

(2009) TUPPO086.

[7]. “R&D for the post-EP process of superconducting RF cavity”, T. Saeki, Y.

Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki, M. Sawabe, K. Ueno, K. Watanabe(KEK) ,

C. Antonie, S. Berry, F. Eozenou, Y. Gasser, B. Visentin(CEA-Saclay), P.V.Tyagi(GAUS),

W. Clemens, R. L. Geng, R. Manus(JLAB), Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009)

THPPO085.

[8]. “Advances and performance of input couplers at KEK”, E. Kako, S. Noguchi, M.

Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, Y. Yamamoto (KEK) , H. Jenhani(LAL-Orsay), T. X.

Zhao(IHEP), Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) THOBAU02.

[9]. “Silicon-on-insulator technology enables next-generation radiation image

sensors”, Yasuo Arai and Toshinobu Miyoshi, 5 August 2009, SPIE Newsroom. DOI:

10.1117/2.1200907.1725.

[10]. “New Techniques in SOI Pixel Detector”, Y. Arai, 2009 IEEE Nuclear Science

96

招待講演 High quality

and high current

electron source based

on a Cs-Te photo-

cathode RF-gun(口頭)

92 93

Page 97: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

96

招待講演 High quality

and high current

electron source based

on a Cs-Te

photo-cathode RF-gun

(口頭)

鷲尾方一

西安(ICFA

Workshop on

Ultra-Short

electron/photon

beams)

2009年9月7日~

10 日 国外

高輝度偏極光子源の為

の新型レーザー蓄積共

振器の開発 I(口頭)

三好修平

その他

甲南大学(日本物理

学)

2009 年 9 月 10 日

~13 日 国内

高輝度偏極光子源の為

の新型レーザー蓄積共

振器の開発 II(口頭)

永田修司

その他

甲南大学(日本物理

学)

2009 年 9 月 10 日

~13 日 国内

KEK 小型電子加速器に

おけるレーザー蓄積装

置を用いた小型 X線源

(LUCX)の開発(8)(口

頭)

福田将史

その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

Ce-Te フォトカソード

RF-Gunを用いたマルチ

バンチ電子ビーム生成

システムの開発(口頭)

横瀬潤一

郎その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

フォトカソードRF-Gun

におけるマルチバンチ

電子ビームの RF 振幅

変調法を用いたエネル

ギー補正に関する研究

(口頭)

横山悠久

その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

高輝度偏極光源の為の

4枚鏡光蓄積共振器の

開発(口頭)

赤木智哉

その他

岡山大学(日本物理

学会)

2010 年 3 月 20 日

~23 日 国内

超伝導加速による次世

代小型高輝度光子ビー

ム源の開発(口頭)

浦川順治

茨城大学(日本原子

力学会年会、企画セ

ッション)

2010 年 3 月 26 日

~28 日 国内

97

学会誌・雑誌等における論文掲載

[1]. “Photon Generation by Laser-Compton Scattering Using an Optical Resonant Cavity

at the KEK-ATF Electron Ring” Hirotaka Shimizu, Sakae Araki, Yoshisato Funahashi,

Yosuke Honda, Toshiyuki Okugi, Tsunehiko Omori, Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa,

Masao Kuriki, Shuhei Miyoshi, Tohru Takahashi, Yasuaki Ushio, Tachishige, Hirose,

Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Pei Guoxi, Li XiaoPing, Journal of the Physical

Society of Japan, Vol.78, No.7, (2009) 074501-1 ~ 074501-7.

[2]. “Stabilization of a Non-Planar Optical Cavity using its Polarization Property”

Yosuke Honda, Hirotaka Shimizu, Masafumi Fukuda, Tsunehiko Omori, Junji Urakawa,

Kazuyuki Sakaue, Hiroshi Sakai, Noboru Sasao, Optics Communications, Vol. 282, (2009)

3108-3112.

[3]. “Experimental result of Lorentz detuning in STF phase-1 at KEK-STF”, Y.

Yamamoto, H. Hayano, E. Kako, T. Matsumoto, S. Michizono, T. Miura, S. Noguchi, M.

Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) TUPPO007.

[4]. “Cryomodule tests of the STF phase-1 at KEK”,E. Kako, H. Hayano, S. Noguchi,

M. Satoh, T. Shishido, K. Watanabe and Y. Yamamoto, Proc. of SRF2009, Berlin, Germany

(2009) TUPPO021.

[5]. “R&D of nondestructive inspection systems for SRF cavities”,Y. Iwashita, H.

Fujisawa, H. Tongu (Kyoto University), H. Hayano, K. Watanabe and Y. Yamamoto(KEK),

Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) TUPPO040.

[6]. “Surface characterization of niobium samples electropolished together with real

cavities”, X. Zhao, R. L. Geng(JLAB), Y. Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki,

T. Saeki, M. Sawabe, K. Ueno, K. Watanabe(KEK) , Proc. of SRF2009, Berlin, Germany

(2009) TUPPO086.

[7]. “R&D for the post-EP process of superconducting RF cavity”, T. Saeki, Y.

Funahashi, H. Hayano, S. Kato, M. Nishiwaki, M. Sawabe, K. Ueno, K. Watanabe(KEK) ,

C. Antonie, S. Berry, F. Eozenou, Y. Gasser, B. Visentin(CEA-Saclay), P.V.Tyagi(GAUS),

W. Clemens, R. L. Geng, R. Manus(JLAB), Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009)

THPPO085.

[8]. “Advances and performance of input couplers at KEK”, E. Kako, S. Noguchi, M.

Satoh, T. Shishido, K. Watanabe, Y. Yamamoto (KEK) , H. Jenhani(LAL-Orsay), T. X.

Zhao(IHEP), Proc. of SRF2009, Berlin, Germany (2009) THOBAU02.

[9]. “Silicon-on-insulator technology enables next-generation radiation image

sensors”, Yasuo Arai and Toshinobu Miyoshi, 5 August 2009, SPIE Newsroom. DOI:

10.1117/2.1200907.1725.

[10]. “New Techniques in SOI Pixel Detector”, Y. Arai, 2009 IEEE Nuclear Science

92 93

Page 98: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

98

Symposium and Medical Imaging Conference, Orlando Florida, Oct. 25-31, 2009,

Conference Record,

[11]. “100-femtosecond MeV electron source for ultrafast electron diffraction”

Jinfeng Yang, Koichi Kan, Nobuyasu Naruse, Yoichi Yoshida, Katsumi Tanimura, Junji

Urakawa /dx.doi.org/10.1016/j.radphyschem.2009.05.009,

[12]. “Development of Compact Coherent EUV Source Based on Laser Compton Scattering”

S. Kashiwagi, R. Kato, G. Isoyama, K. Sakaue, A. Masuda, T. Nomoto, T. Gowa, M. Washio,

R. Kuroda and J. Urakawa, Radiat. Phys. Chem. 78 (2009) 1112-1115.

[13]. “Observation of pulsed x-ray trains produced by laser-electron Compton

scatterings” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo

Higashi, Yosuke Honda, Tsunehiko Omori, Takashi Taniguchi, Nobuhiro Terunuma, Junji

Urakawa, Noboru Sasao, Rev. Sci. Instrum., 80(12) (2009) 123304 1-7.

[14]. “Development of a Compact X-ray Source and Super-sensitization of Photo Resists

for Soft X-ray Imaging” T. Gowa, N. Fukutake, Y. Hama, K. Hizume, T. Kashino, S.

Kashiwagi, R. Kuroda, A. Masuda, A. Oshima, T. Saito, K. Sakaue, K. Shinohara, T.

Takahashi, T. Urakawa, K. Ushida and M. Washio, J. Photopolym Sci. Technol. 22(5)

(2009) 691-696.

[15]. “High-voltage testing of a 500-kV dc photocathode electron gun”, R. Nagai,

R. Hajima, N. Nishimori, T. Muto, M. Yamamoto, Y. Honda, T. Miyajima, H. Iijima, M.

Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, Review of Scientific Instruments, 81,

033304 (2010)

[16]. “Eccentric fluted beam pipes to damp quadrupole higher order modes”, M.

Sawamura, T. Furuya, H. Sakai, T. Takahashi, K. Umemori, K. Shinoe. Physical Review

Special Topics – Accelerator and Beams, 13, 022003 (2010)

[17]. “Improvement of an S-band RF gun with a Cs2Te photocathode for the KEK-ATF”

N. Terunuma, A. Murata, M. Fukuda, K. Hirano, Y. Kamiya, T. Kii, M. Kuriki, R. Kuroda,

H. Ohgaki, K. Sakaue, M. Takano, T. Takatomi, J. Urakawa, M. Washio, Y. Yamazaki,

J. Yang, Nucl. Instrum. Meth. A613 (2010) 1-8.

[18]. “Photon generation by laser-Compton scattering at the KEK-ATF”, S. Miyoshi,

T. Akagia, S. Arakib, Y. Funahashib, T. Hirosec, Y. Hondab, M. Kurikia, X. Lid, T.

Okugib, T. Omorib, G. Peid, K. Sakauec, H. Shimizub, T. Takahashia, N. Terunumab,

J. Urakawab, Y. Ushioa and M. Washioc, arXiv:1002.3462v1, (Nuclear Instruments and

Method 誌に掲載受理 http://dx.doi.org/10.1016/j.nima.2010.03.075)

99

掲載した論文(発表題目) 発表者氏

発表した場所(学

会誌・雑誌等名)

発表した

時期

内・

外の

Photon Generation by

Laser-Compton Scattering Using

an Optical Resonant Cavity at

the KEK-ATF Electron Ring

Hirotaka

Shimizu,

et al.

Journal of the

Physical Society

of Japan

2009 年 4

月掲載 国外

Stabilization of a non-planar

optical cavity using its

polarization property

Y. Honda,

et al.

Optics

Comminications

2009 年 5

月掲載 国外

Experimental result of Lorentz

detuning in STF phase-1 at

KEK-STF

Y.

Yamamoto

, et al.

Proc. of SRF20092009年 7

月掲載 国外

Cryomodule tests of the STF

phase-1 at KEK

E. Kako,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

R&D of nondestructive

inspection systems for SRF

cavities

Y.

Iwashita

, et al.

Proc. of SRF20092009年 7

月掲載 国外

Surface characterization of

niobium samples

electropolished together with

real cavities

X. Zhao,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

R&D for the post-EP process of

superconducting RF cavity

T. Saeki,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

Advances and performance of

input couplers at KEK

E. Kako,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

Silicon-on-insulator

technology enables

next-generation radiation

image sensors

Y. Arai,

et al.

SPIE Newsroom.

DOI:

10.1117/2.12009

07.1725.

2009 年 8

月掲載 国外

94 95

Page 99: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

98

Symposium and Medical Imaging Conference, Orlando Florida, Oct. 25-31, 2009,

Conference Record,

[11]. “100-femtosecond MeV electron source for ultrafast electron diffraction”

Jinfeng Yang, Koichi Kan, Nobuyasu Naruse, Yoichi Yoshida, Katsumi Tanimura, Junji

Urakawa /dx.doi.org/10.1016/j.radphyschem.2009.05.009,

[12]. “Development of Compact Coherent EUV Source Based on Laser Compton Scattering”

S. Kashiwagi, R. Kato, G. Isoyama, K. Sakaue, A. Masuda, T. Nomoto, T. Gowa, M. Washio,

R. Kuroda and J. Urakawa, Radiat. Phys. Chem. 78 (2009) 1112-1115.

[13]. “Observation of pulsed x-ray trains produced by laser-electron Compton

scatterings” Kazuyuki Sakaue, Masakazu Washio, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yasuo

Higashi, Yosuke Honda, Tsunehiko Omori, Takashi Taniguchi, Nobuhiro Terunuma, Junji

Urakawa, Noboru Sasao, Rev. Sci. Instrum., 80(12) (2009) 123304 1-7.

[14]. “Development of a Compact X-ray Source and Super-sensitization of Photo Resists

for Soft X-ray Imaging” T. Gowa, N. Fukutake, Y. Hama, K. Hizume, T. Kashino, S.

Kashiwagi, R. Kuroda, A. Masuda, A. Oshima, T. Saito, K. Sakaue, K. Shinohara, T.

Takahashi, T. Urakawa, K. Ushida and M. Washio, J. Photopolym Sci. Technol. 22(5)

(2009) 691-696.

[15]. “High-voltage testing of a 500-kV dc photocathode electron gun”, R. Nagai,

R. Hajima, N. Nishimori, T. Muto, M. Yamamoto, Y. Honda, T. Miyajima, H. Iijima, M.

Kuriki, M. Kuwahara, S. Okumi, T. Nakanishi, Review of Scientific Instruments, 81,

033304 (2010)

[16]. “Eccentric fluted beam pipes to damp quadrupole higher order modes”, M.

Sawamura, T. Furuya, H. Sakai, T. Takahashi, K. Umemori, K. Shinoe. Physical Review

Special Topics – Accelerator and Beams, 13, 022003 (2010)

[17]. “Improvement of an S-band RF gun with a Cs2Te photocathode for the KEK-ATF”

N. Terunuma, A. Murata, M. Fukuda, K. Hirano, Y. Kamiya, T. Kii, M. Kuriki, R. Kuroda,

H. Ohgaki, K. Sakaue, M. Takano, T. Takatomi, J. Urakawa, M. Washio, Y. Yamazaki,

J. Yang, Nucl. Instrum. Meth. A613 (2010) 1-8.

[18]. “Photon generation by laser-Compton scattering at the KEK-ATF”, S. Miyoshi,

T. Akagia, S. Arakib, Y. Funahashib, T. Hirosec, Y. Hondab, M. Kurikia, X. Lid, T.

Okugib, T. Omorib, G. Peid, K. Sakauec, H. Shimizub, T. Takahashia, N. Terunumab,

J. Urakawab, Y. Ushioa and M. Washioc, arXiv:1002.3462v1, (Nuclear Instruments and

Method 誌に掲載受理 http://dx.doi.org/10.1016/j.nima.2010.03.075)

99

掲載した論文(発表題目) 発表者氏

発表した場所(学

会誌・雑誌等名)

発表した

時期

内・

外の

Photon Generation by

Laser-Compton Scattering Using

an Optical Resonant Cavity at

the KEK-ATF Electron Ring

Hirotaka

Shimizu,

et al.

Journal of the

Physical Society

of Japan

2009 年 4

月掲載 国外

Stabilization of a non-planar

optical cavity using its

polarization property

Y. Honda,

et al.

Optics

Comminications

2009 年 5

月掲載 国外

Experimental result of Lorentz

detuning in STF phase-1 at

KEK-STF

Y.

Yamamoto

, et al.

Proc. of SRF20092009年 7

月掲載 国外

Cryomodule tests of the STF

phase-1 at KEK

E. Kako,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

R&D of nondestructive

inspection systems for SRF

cavities

Y.

Iwashita

, et al.

Proc. of SRF20092009年 7

月掲載 国外

Surface characterization of

niobium samples

electropolished together with

real cavities

X. Zhao,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

R&D for the post-EP process of

superconducting RF cavity

T. Saeki,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

Advances and performance of

input couplers at KEK

E. Kako,

et al. Proc. of SRF2009

2009年 7

月掲載 国外

Silicon-on-insulator

technology enables

next-generation radiation

image sensors

Y. Arai,

et al.

SPIE Newsroom.

DOI:

10.1117/2.12009

07.1725.

2009 年 8

月掲載 国外

Y.

Iwashita,

et al.

Y.

Yamamoto,

et al.

94 95

Page 100: 平成21年度成果報告書 · 2015. 9. 3. · 平成21年度成果報告書 委託業務成果報告書 量子ビーム基盤技術開発プログラム 「超伝導加速による次世代小型高輝度光子ビーム源の開発」

100

New Techniques in SOI Pixel

Detector

Y. Arai,

et al.

IEEE Nuclear

Science

Symposium and

Medical Imaging

Conference

2009 年 10

月掲載 国外

100-femtosecond MeV electron

source for ultra fast electron

diffraction

Jinfeng

Yang,

et al.

Radiation

Physics and

Chemistry

2009 年 11

月掲載 国外

Development of Compact Coherent

EUV Source Based on Laser

Compton Scattering

S.

Kashiwag

i, et al.

Radiation

Physics and

Chemistry

2009 年 11

月掲載 国外

Observation of pulsed x-ray

trains produced by

laser-electron Compton

scatterings

K.Sakaue

, et al.

Rev. Sci.

Instrum., 80(12)

(2009) 123304

1-7.

2009 年 12

月掲載 国外

Development of a Compact X-ray

Source and Super-sensitization

of Photo Resists for Soft X-ray

Imaging

T. Gowa,

et al.

J. Photopolym

Sci. Technol.

2009 年 12

月掲載 国外

High-voltage testing of a

500-kV dc photocathode electron

gun

R. Nagai,

et al.

Review of

Scientific

Instruments

2010 年 1

月掲載 国外

Eccentric fluted beam pipes to

damp quadrupole higher order

modes

M.

Sawamura

, et al.

Physical Review

Special Topics –

Accelerator and

Beams

2010 年 1

月掲載 国外

Improvement of an S-band RF gun

with a Cs2Te photocathode for

the KEK-ATF

N.

Terunuma

, et al.

Nucl. Instrum.

Meth.

2010 年 2

月掲載 国外

Photon generation by

laser-Compton scattering at the

KEK-ATF

S.

Miyoshi,

et al.

Nucl. Instrum.

Meth.

2010 年 3

月掲載 国外

S.

Kashiwagi,

et al.

K.Sakaue,

et al.

M.

Sawamura,

et al.

N.

Terunuma,

et al.

96