22年以降の観光関連産業の動向についての考察 -...

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産業活動分析(平成25年1~3月期) - 15 - 22年以降の観光関連産業の動向についての考察 観光関連産業は、我が国の少子高齢化が進展する中で、経済活性化の切り札として 期待を集める成長産業の一つである。 第3次産業活動指数の「観光関連産業」は、「鉄道旅客運送業」、「道路旅客運送業」、 「水運旅客運送業」、「航空旅客運送業」、「道路施設提供業」、「自動車レンタル業」、 「宿泊業」、「旅行業」、「公園、遊園地」を総合化した再編集系列 1 であり、観光関連産 業の実質的な活動水準の動向について、月次・四半期・年次ベースで、供給側から総 合的に捉えることができる指標である 2 (第1表)。 本稿では、第3次産業活動指数の「観光関連産業」を中心に、震災発生前の22年か ら足下(25年1~3月期)までの我が国の観光関連産業の動向を捉え、考察するととも に、同産業の今後の見通しについて触れてみることとしたい。 第1表 観光関連産業の内訳 分類名 ウェイト 内訳分類名 鉄道旅客運送業 146.6 鉄道旅客運送業(JR)(92.9)、鉄道旅客運送業(JRを除く)(53.7) 道路旅客運送業 103.7 バス業(40.7)、タクシー業(63.0) 水運旅客運送業 2.3 航空旅客運送業 25.1 国際航空旅客運送業(9.4)、国内航空旅客運送業(15.7) 道路施設提供業 70.6 自動車レンタル業 10.4 宿泊業 117.7 旅館(51.0)、ホテル(66.7) 旅行業 32.9 国内旅行(18.5)、海外旅行(14.2)、外人旅行(0.2) 公園、遊園地 11.6 観光関連産業 520.9 (注)( )内の数字はウェイト。第3次産業活動指数のウェイトは、基準年の「平成17年産業連関表 (確報)」(総務省)の付加価値額を基準として算定し、全体を 10,000.0 とする 1 万分比で表示 している。 資料:「第3次産業活動指数」 1 再編集系列とは、第3次産業活動指数の各分類名称に該当する末端系列を、大分類業種に依存する ことなく総合化した特掲分類である。 2 観光供給の動向をみる代表的な指標としては、観光庁の観光GDPが挙げられるが、現時点(6月5日) では、23年の値(8.2 兆円(名目GDPの 1.8%))が最新値となっている。一方、第3次産業活動指数の観 光関連産業は、観光GDPと対象範囲は異なるものの、速報性があり(月次ベースの値は当該月の翌々月 に公表)、観光関連産業の実質的な活動水準の動向について足下まで捉えることができる。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

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22年以降の観光関連産業の動向についての考察

観光関連産業は、我が国の少子高齢化が進展する中で、経済活性化の切り札として

期待を集める成長産業の一つである。

第3次産業活動指数の「観光関連産業」は、「鉄道旅客運送業」、「道路旅客運送業」、

「水運旅客運送業」、「航空旅客運送業」、「道路施設提供業」、「自動車レンタル業」、

「宿泊業」、「旅行業」、「公園、遊園地」を総合化した再編集系列 1であり、観光関連産

業の実質的な活動水準の動向について、月次・四半期・年次ベースで、供給側から総

合的に捉えることができる指標である 2(第1表)。

本稿では、第3次産業活動指数の「観光関連産業」を中心に、震災発生前の22年か

ら足下(25年1~3月期)までの我が国の観光関連産業の動向を捉え、考察するととも

に、同産業の今後の見通しについて触れてみることとしたい。

第1表 観光関連産業の内訳

分類名 ウェイト 内訳分類名

鉄道旅客運送業 146.6 鉄道旅客運送業(JR)(92.9)、鉄道旅客運送業(JRを除く)(53.7)

道路旅客運送業 103.7 バス業(40.7)、タクシー業(63.0)水運旅客運送業 2.3航空旅客運送業 25.1 国際航空旅客運送業(9.4)、国内航空旅客運送業(15.7)道路施設提供業 70.6自動車レンタル業 10.4

宿泊業 117.7 旅館(51.0)、ホテル(66.7)旅行業 32.9 国内旅行(18.5)、海外旅行(14.2)、外人旅行(0.2)

公園、遊園地 11.6

観光関連産業 計 520.9 (注)( )内の数字はウェイト。第3次産業活動指数のウェイトは、基準年の「平成17年産業連関表

(確報)」(総務省)の付加価値額を基準として算定し、全体を 10,000.0 とする 1 万分比で表示 している。

資料:「第3次産業活動指数」

1 再編集系列とは、第3次産業活動指数の各分類名称に該当する末端系列を、大分類業種に依存する

ことなく総合化した特掲分類である。 2 観光供給の動向をみる代表的な指標としては、観光庁の観光GDPが挙げられるが、現時点(6月5日)

では、23年の値(8.2 兆円(名目GDPの 1.8%))が最新値となっている。一方、第3次産業活動指数の観

光関連産業は、観光GDPと対象範囲は異なるものの、速報性があり(月次ベースの値は当該月の翌々月

に公表)、観光関連産業の実質的な活動水準の動向について足下まで捉えることができる。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

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(1) 観光関連産業の動向(概況)

第3次産業活動指数(17年=100、季節調整済)で、22年以降の「観光関連産業」

の動向をみると、22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6

月期はさらに落ち込んだ(第1図)。しかしながら、7~9月期にプラスに転じ、10~12月

期以降は震災発生前の水準を上回り推移している 3。

第1図 「観光関連産業」の推移

92

94

96

98

100

102

104

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

(17年=100、季節調整済)

(期/年)(年)

資料:「第3次産業活動指数」

「観光関連産業」を「旅行業」、「宿泊業」、「公園、遊園地」、「旅客運送業等 4」の4つ

の業種に分けたうえで、「観光関連産業」(原指数)の前年同期(年)比に対する業種別

寄与度の推移を見てみると、23年1~3月期は「旅客運送業等」、4~6月期は「宿泊

業」を中心に、4業種全てがマイナスに寄与した(第2図)。しかしながら、7~9月期に、

まず、「宿泊業」、「公園、遊園地」がプラス寄与に転じ、10~12月期には「旅行業」もプ

ラス寄与に転じたことから、「観光関連産業」の全体の伸びも10~12月期にプラスに転

じた。その後、24年1~3月期には「旅客運送業等」もプラス寄与に転じ、「観光関連産

業」全体は10~12月期までプラスの伸びを続けた。25年1~3月期は「公園、遊園地」

はプラス寄与となったが、「旅客運送業等」、「宿泊業」、「旅行業」はマイナス寄与に転じ

ている。

3 本稿では、22年10~12月期の値を「震災発生前の水準」とする。また、水準の評価は、ポイント差▲

0.6 以下が「下回っている」、同▲0.5~0.5 が「同程度」、0.6~10.0 が「上回っている」、10.1 以上が「大幅

に上回っている」とする。 4 「旅客運送業等」は、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、道路施

設提供業、自動車レンタル業を総合化した指数であり、本稿限りにおいて使用するものである。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

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第2図 「観光関連産業」 前年同期(年)比、伸び率寄与度の推移

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8 旅客運送業等 公園、遊園地 旅行業 宿泊業 観光関連産業

(17年=100、前年比、前年同期比、%、%ポイント)

(年) (期/年)

資料:「第3次産業活動指数」から作成。

(2) 観光関連産業の業種別動向及び背景等の考察

次に、観光関連産業の業種別の動向を第3次産業活動指数で捉えるとともに、関連

統計も用いながら背景等を考察してみたい。

観光関連産業の中で、「旅行業」が他のいずれの業種にも連動していると考えられる

ことから、以下では、まず、「旅行業」の動向を把握したうえで、「宿泊業」、「公園、遊園

地」、「旅客運送業等」の順に見ていくこととする。

① 「旅行業」

「旅行業」は、22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~

6月期はさらに落ち込んだ(第3図)。4~6月期の指数は 77.1 と比較可能な15年以

降で過去最低の水準となったが、7~9月期には大幅に上昇し、10~12月期以降は、

震災発生前の水準を上回り推移している。

「旅行業」の内訳をみると、「国内旅行」は、22年7~9月期以降低下し、震災の発

生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。4~6月期の指数は 86.3 と

比較可能な15年以降で過去最低の水準となったが、7~9月期には大幅に上昇し、

以降、震災発生前の水準を上回り上昇を続けた。24年7~9月期に再び低下したが、

10~12月期以降は上昇しており、25年1~3月期は震災発生前の水準を大幅に上

回っている。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

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「海外旅行」は、尖閣諸島を巡る状況の影響等を背景に、22年10~12月期に低

下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。7~9月期

以降は、円高の進行も追い風となり、上昇傾向で推移し続け、24年1~3月期以降は

震災発生前の水準を上回り上昇したが、再び日中間の緊張感が高まったこと等から、

7~9月期、10~12月期は低下した。25年1~3月期はプラスに転じたが、円安の進

行等を背景に大きくは伸びず、震災発生前の水準と同程度となっている。

「外人旅行」は、円高の進行や日中間の緊張感の高まり等を背景に、22年10~1

2月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに大きく落ち込

んだ。4~6月期の「外人旅行」の指数は 71.1 と比較可能な15年以降で過去最低の

水準となった。7~9月期には大幅に上昇し、24年4~6月期に震災発生前の水準を

上回ったが、円高の進行や再び日中間の緊張感が高まったこと等から、7~9月期、

10~12月期は低下した。25年1~3月期は、円安の進行が追い風となり、韓国や台

湾などアジアからの旅行者数が増えたこと等からプラスに転じ、震災発生前の水準を

大幅に上回っている。

第3図 「旅行業」の推移(17年=100、季節調整済)

60

100

140

180

220

260

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

旅行業 国内旅行 海外旅行 外人旅行

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年)

資料:「第3次産業活動指数」

第3次産業活動指数の「旅行業」は、観光庁の「主要旅行業者の旅行取扱状況速

報」の旅行総取扱額を消費者物価指数により実質化して作成している。同調査では、

旅行のうち、募集型企画旅行(以下「パック旅行」という。)については、旅行取扱額と

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

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併せて、旅行取扱人数についても調査している。旅行全体の総取扱額とパック旅行

取扱額の動向は必ずしも一致していないが 5、参考までに、「国内旅行」、「海外旅

行」、「外国人旅行 6」のパック旅行の旅行取扱額、取扱人数、旅行単価の伸び率(前

年同期比、実質ベース)の推移を見てみると、震災発生後の旅行取扱額の落ち込み

には、主に取扱人数の減少が影響していたことがわかる(第4図)。各パック旅行の取

扱人数の減少幅は、23年7~9月期以降、縮小していき、「海外旅行」が10~12月

期、「国内旅行」、「外国人旅行」が24年1~3月期にプラスに転じた。旅行単価は、

「国内旅行」、「海外旅行」は回復傾向にあるが、「外国人旅行」はマイナスの伸びが

続いている。

5 旅行総取扱額に占めるパック旅行取扱額の比率(24年度)は、「国内旅行」が 23.4%、「海外旅行」が

32.9%、「外国人旅行」が 4.2%であり、旅行総取扱額の動向とは一致していないことに留意する必要があ

る。 6 観光庁では「外国人旅行」と表章している。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

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第4図 パック旅行の旅行取扱額、取扱人数、旅行単価の

伸び率の推移(前年同期比、実質ベース)

ⅰ)国内旅行

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

取扱人数 旅行単価 旅行取扱額

(期/年)

(前年同期比、%)

ⅱ)海外旅行

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20

25

30

35

取扱人数 旅行単価 旅行取扱額

(期/年)

(前年同期比、%)

ⅲ)外国人旅行

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 150

▲ 100

▲ 50

0

50

100

150

200

250

300

350

取扱人数 旅行単価 旅行取扱額

(期/年)

(前年同期比、%)

(注)1.グラフ毎にスケールが異なることに留意する必要がある。

2.旅行取扱額は消費者物価指数(パック旅行、外国パック旅行)で実質化。 3.単価は、実質化した旅行取扱額を取扱人数で除して算出。

資料:「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」(観光庁)、「消費者物価指数」(総務省)から作成。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 21 -

② 「宿泊業」

次に、「宿泊業」について見てみる。

「宿泊業」は、22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~

6月期はさらに落ち込んだ(第5図)。4~6月期の指数は 91.7 と比較可能な15年以

降で過去最低の水準となったが、7~9月期には大幅に上昇し、以降、震災発生前の

水準を上回り推移している。

「宿泊業」の内訳をみると、「ホテル」は、震災の発生により23年1~3月期、4~6月

期と落ち込んだ。しかしながら、7~9月期には、「国内旅行」の回復等を背景に大幅

に上昇し、24年1~3月期、4~6月期は、「外人旅行」も回復してきたこと等から、震

災発生前の水準を上回り上昇を続けた。7~9月期は再び低下したが、10~12月期

以降は上昇しており、震災発生前の水準を上回っている。なお、震災後の「ホテル」

の回復の背景には、被災地における復旧・復興の関係者及び被災者の需要、ビジネ

ス需要の回復等もあったことに留意する必要がある。

「旅館」は、「国内旅行」の回復、被災地における復旧・復興の関係者及び被災者

の需要等を背景に23年7~9月期に大幅に上昇した。しかしながら、10~12月期以

降は低下傾向で推移しており、25年1~3月期は震災発生前の水準を下回っている。

第5図 「宿泊業」の推移(17年=100、季節調整済)

60

70

80

90

100

110

120

130

140

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

宿泊業 旅館 ホテル

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年)

資料:「第3次産業活動指数」

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 22 -

③ 「公園、遊園地」

次に、「公園、遊園地」について見てみる。

「公園、遊園地」は、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期と大きく落ち込み、

4~6月期の指数は 78.1 と比較可能な15年以降で過去最低の水準となった(第6

図)。しかしながら、7~9月期には、正の相関がある「国内旅行」の回復等を背景に大

幅に上昇し、24年1~3月期、4~6月期は震災発生前の水準を上回り上昇を続けた

(第7図)。7~9月期、10~12月期は再び低下したが、25年1~3月期はプラスに転

じ、震災発生前の水準を大幅に上回っている。

第6図 「公園、遊園地」の推移(17年=100、季節調整済)

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年)

資料:「第3次産業活動指数」

第7図 「公園、遊園地」と「国内旅行」の関係(17年=100、季節調整済)

y = 1.0327x - 2.6402

R² = 0.6993

80

85

90

95

100

105

110

115

80 85 90 95 100 105 110

公園、遊園地

国内旅行

(17年=100、季節調整済)

(17年=100、季節調整済)

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

公園、遊園地 国内旅行

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年) (注)右グラフは15年1~3月期から25年1~3月期の値をプロットして作成。 資料:「第3次産業活動指数」

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 23 -

第3次産業活動指数の「公園、遊園地」は、特定サービス産業動態統計の「遊園

地・テーマパーク」の入場者数に基づき作成している。以下では、参考までに、特定

サービス産業動態統計で、「遊園地・テーマパーク」の入場者数、売上高の推移等を

見てみることとする。

まず、「遊園地・テーマパーク」の入場者数及び伸び率(前年同期(年)比)の推移

をみると、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期は大幅に低下したが、7~9

月期以降は回復傾向で推移している(第8図)。年ベースでみると、24年は 7,162 万

人と前年比 12.6%増加しており、震災発生前の前々年と比較しても 2.8%増加してい

る。

第8図 「遊園地・テーマパーク」入場者数及び伸び率(前年同期(年)比)の推移

6,970

6,362

7,162

1,402 1,617

2,097 1,854

1,149 1,201

2,130 1,881

1,479 1,605

2,216 1,862

1,533

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

(万人)

(年) (期/年)

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

(前年比、前年同期比、%)

(年) (期/年)

資料:「特定サービス産業動態統計」

次に、「遊園地・テーマパーク」の売上高及び伸び率(前年同期(年)比)の推移を

みると、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期は大幅に低下したが、7~9月

期以降は回復傾向で推移している(第9図)。年ベースでみると、24年は 5,004 億円

と前年比 16.3%増加、前々年比 8.2%増加している。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 24 -

第9図 「遊園地・テーマパーク」売上高及び

伸び率(前年同期(年)比)の推移

4,626

4,302

5,004

952 1,044 1,279 1,351

769 732

1,361 1,439

1,054 1,111

1,395 1,443

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ

22 23 24

(億円)

(年) (期/年)

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

60

(前年比、前年同期比、%)

(年)(期/年)

資料:「特定サービス産業動態統計」

最後に、「遊園地・テーマパーク」の売上高を消費者物価指数で実質化したうえで、

入場者数、1人当たり売上高の伸び率(前年同期(年)比)の推移を見てみると、震災

発生後の売上高の落ち込みには、主に入場者数の減少が影響していたことがわかる

(第10図)。「遊園地・テーマパーク」の入場者数は23年7~9月期、1人当たり売上

高は24年1~3月期にプラスに転じ、売上高全体は23年7~9月期以降、回復傾向

で推移している。

第10図 「遊園地・テーマパーク」売上高、入場者数、1人当たり売上高の

伸び率の推移(前年同期(年)比、実質ベース)

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

60

1人当たり売上高 入場者数 売上高

(前年比、前年同期比、%)

(年)(期/年)

(注) 1.売上高は消費者物価指数(テーマパーク入場料)で実質化。 2.1人当たり売上高は、実質化した売上高を入場者数で除して算出。 資料:「特定サービス産業動態統計」、「消費者物価指数」(総務省)から作成。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 25 -

④ 「旅客運送業等」

次に、「旅客運送業等」について見てみる。

「旅客運送業等」は、22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月

期にさらに落ち込んだ(第11図)。1~3月期の指数は 96.7 と比較可能な15年以降

で過去最低の水準となったが、4~6月期にはプラスに転じ、その後も「旅行業」の回

復等を背景に上昇を続けた。24年7~9期は再び低下したが、10~12月期以降は

上昇しており、25年1~3月期は震災発生前の水準を上回っている。

第11図 旅客運送業等の推移(17年=100、季節調整済)

60

70

80

90

100

110

120

130

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

旅客運送業等 鉄道旅客運送業 道路旅客運送業 水運旅客運送業

航空旅客運送業 道路施設提供業 自動車レンタル業

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年)

資料:「第3次産業活動指数」から作成。

「旅客運送業等」の内訳をみると、「鉄道旅客運送業」は、震災の発生により23年1

~3月期に落ち込んだが、4~6月期にはプラスに転じ、その後も「国内旅行」の回復、

ビジネス需要の回復等を背景に上昇傾向で推移した。高速道路の上限料金制(休日

1,000 円)の廃止等も回復の追い風となった。24年4~6月期以降は震災発生前の水

準を上回り上昇している。

「道路旅客運送業」は22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月

期にさらに落ち込んだ。1~3月期の指数は 84.4 と比較可能な15年以降で過去最

低の水準となったが、4~6月期にはプラスに転じた。その後も「国内旅行」の回復、ビ

ジネス需要の回復等を背景に上昇傾向で推移し、24年1~3月期に震災発生前の

水準を上回ったが、4~6月期、7~9月期は再び低下した。10~12月期以降は上

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 26 -

昇しており、25年1~3月期は、震災発生前の水準を上回っている。

「水運旅客運送業」は、22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3

月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。4~6月期の指数は 65.0 と比較可能な15年以

降で過去最低の水準となった。「国内旅行」の回復等を背景に、7~9月期にはプラス

に転じ、10~12月期から24年4~6月期にかけては震災発生前の水準と同程度で

推移していたが、7~9月期に再び低下した。10~12月期以降は上昇しているが、

震災発生前の水準は下回っている。

「航空旅客運送業」は、22年4~6月期から23年4~6月期にかけて低下し、4~6

月期の指数は 71.7 と比較可能な15年以降で過去最低の水準となった。しかしながら、

7~9月期以降は上昇傾向で推移し、24年1~3月期以降は格安航空会社(LCC)の

新規就航も追い風となり、震災発生前の水準を上回り推移している。「航空旅客運送

業」は、「旅客運送業等」の中でも、22年以降の変化幅が最も大きかった。

内訳をみると、「国際航空旅客運送業」は、22年4~6月期から23年4~6月期に

かけて大幅に低下したが、背景には正の相関がある「海外旅行」と同様、尖閣諸島を

巡る状況の影響、震災発生等があった(第12図、第13図)。7~9月期以降は上昇傾

向で推移し、10~12月期以降は震災発生前の水準を上回り上昇を続けたが、再び

日中間の緊張感が高まったこと等から、24年7~9月期、10~12月期は低下した。2

5年1~3月期はプラスに転じており、震災発生前の水準は上回っている。

「国内航空旅客運送業」は22年7~9月期に低下し、震災の発生により、23年1~

3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ(第12図)。4~6月期の指数は 77.2 と比較可

能な15年以降で過去最低の水準となったが、7~9月以降は上昇傾向で推移してお

り、24年4~6月期以降は震災発生前の水準を上回っている。

第12図 航空旅客運送業の推移(17年=100、季節調整済)

60

65

70

75

80

85

90

95

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

航空旅客運送業 国際航空旅客運送業 国内航空旅客運送業

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年) 資料:「第3次産業活動指数」

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 27 -

第13図 国際航空旅客運送業と海外旅行の関係(17年=100、季節調整済)

y = 0.8535x + 14.576

R² = 0.8188

40

50

60

70

80

90

100

110

120

40 60 80 100 120

国際航空旅客運送業

海外旅行

(17年=100、季節調整済)

(17年=100、季節調整済)

60

65

70

75

80

85

90

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

国際航空旅客運送業 海外旅行

(17年=100、季節調整済)

(年) (期/年)

(注)右グラフは15年1~3月期から25年1~3月期の値をプロットして作成。 資料:「第3次産業活動指数」

「道路施設提供業」は、高速道路の無料化社会実験の実施等により、22年7~9月

期、10~12月期は高水準で推移していた(前掲第11図)。しかしながら、23年1~3

月期に低下し、その後は、震災発生前の水準を下回る形で、一進一退で推移してい

る。

「自動車レンタル業」は、22年4~6月期から24年1~3月期にかけて上昇傾向で

推移したが、23年1~3月期以降は、震災の発生により、被災3県(岩手県、宮城県、

福島県)を中心とした需要増があったことに留意する必要がある。24年4~6月期以

降は低下傾向にあるが、震災発生前の水準は上回っている。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 28 -

(3) 観光関連産業の今後の見通し

先に見たとおり、第3次産業活動指数(17年=100、季節調整済)の「観光関連産

業」は、震災発生後の落ち込みから持ち直し、23年10~12月期以降は、震災発生前

の水準を上回り推移している。観光関連産業活動はこれからどのように推移していくの

か、以下では今後の見通しについて触れてみたい。

まず、内閣府の「景気ウォッチャー調査」から、観光関連産業に関係が深いと考えら

れる「旅行・交通関連」と「レジャー施設関連」のうち、現状判断DI(3か月前と比較した

景気の現状判断)と先行き判断DI(2~3か月先の景気判断)を見てみると、25年2月以

降は、「旅行・交通関連」の現状判断、先行き判断、「レジャー施設関連」の現状判断、

先行き判断全ての DI が、景気が良い・悪いの分かれ目となる 50 を超えて推移しており、

短期的には上昇傾向で推移する見通しとなっている(第14図)。

25年2月以降の景気判断理由を見てみると、「アベノミクスの好影響か、富裕層が動

き、欧州や米国向けの旅行が動いている。株高が続けば、心理的にも客が動きやすくな

る。」、「円安の影響によって、海外旅行から国内旅行へシフトすることが予想される。」

等のコメントが掲げられている。

第14図 観光関連産業関係の現状・先行き判断DIの推移

0

10

20

30

40

50

60

70

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4

22 23 24 25

旅行・交通関連(現状判断・方向性)

旅行・交通関連(先行き判断・方向性)

レジャー施設関連(現状判断・方向性)

レジャー施設関連(先行き判断・方向性)

(月/年)

(DI)

資料:「景気ウォッチャー調査」(内閣府)

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 29 -

「景気ウォッチャー調査」のコメントにも見られるように、旅行については、昨年末以降

の株価上昇による消費者心理の好転、資産効果等を背景に、25年に入ってから、高額

商品の売上が伸びているとの報道が見受けられる 7。そこで、「株価」及び「賃金」を説明

変数、「パック旅行費(国内及び海外、以下同じ。)」を被説明変数とした旅行消費関数

を推計して見てみると、「パック旅行費」消費支出は、「株価」が 1%上昇(下落)すると

0.23%増加(減少)、「賃金」が 1%増加(減少)すると 2.76%増加(減少)するという結果

が得られた 8(第15図)。

「パック旅行費」における「株価」、「賃金」に対する支出弾性値は、消費支出全体より

高く、余暇活動における旅行の潜在需要は大きい(第16図、第2表)。為替の動向等、

他の様々な要因を踏まえる必要はあるものの、今後、「株価」、「賃金」が上昇していけば、

25年の「パック旅行費」消費支出が増加し、「旅行業(国内旅行及び海外旅行)」が伸び

ていく可能性がある。

7 「アベノミクス家計を動かす」(日本経済新聞朝刊、24年2月22日)等。 8 株価、賃金の他、消費者マインドを説明変数に加えることを試みたが、統計学的に有意な値が得られな

かった。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 30 -

第15図 「パック旅行費」消費支出の要因分解

3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24▲ 20

▲ 15

▲ 10

▲ 5

0

5

10

15

20株価要因 賃金要因 旅行消費支出推計値 旅行消費支出実績値

(前年比、%)

(年)

(注)1.推計式は以下のとおり。 Ln パック旅行費=-4.15+0.23×ln 日経平均株価指数+2.76×ln 賃金指数(現金給与総額)

(-2.18)(4.12) (6.16) カッコ内はt値、修正済決定係数=0.82、D.W.比=1.13、推計期間:平成2~24年

2.二人以上世帯のうち勤労者世帯(農林漁家世帯を除く)を使用。 資料:「家計調査」(総務省)、「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)、日経平均株価指数から作成。

第16図 消費支出(全体)の要因分解

3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

5株価要因 賃金要因 消費支出(全体)推計値 消費支出(全体)実績値

(前年比、%)

(年) (注)1.推計式は以下のとおり。

Ln 消費支出=11.12+0.04×ln 日経平均株価指数+0.79×ln 賃金指数(現金給与総額) (24.00)(3.21) (7.20)

カッコ内はt値、修正済決定係数=0.83、D.W.比=1.01、推計期間:平成2~24年 2.二人以上世帯のうち勤労者世帯(農林漁家世帯を除く)を使用。 3.第15図とスケールが異なることに留意する必要がある。

資料:「家計調査」(総務省)、「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)、日経平均株価指数から作成。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 31 -

第2表 旅行の潜在需要(24年)

順位 全体 % 男性 % 女性 %

1 海外旅行 34.0 海外旅行 32.2 海外旅行 35.82 国内観光旅行 21.3 国内観光旅行 21.9 国内観光旅行 20.73 ピクニック、ハイキング、野外散歩 12.3 オートキャンプ 11.3 ピクニック、ハイキング、野外散歩 13.74 催し物、博覧会 11.1 ピクニック、ハイキング、野外散歩 10.8 観劇 12.95 観劇 10.5 登山 10.6 催し物、博覧会 12.2

(注)「潜在需要」は、参加希望率から現在の参加率の差をとったものであり、現在実現していないが、

将来参加してみたいという願望を表すものである。 資料:「レジャー白書2012」(公益財団法人日本生産性本部)

また、足下で大きく伸びている「外人旅行」に関して、日本政府観光局(JNTO)の訪

日外客数及び伸び率(前年同期(年)比)の推移を見てみると、24年1~3月期以降は

プラスの伸びを続けている(第17図)。需要側の統計である、観光庁の「訪日外国人消

費動向調査」で、訪日外国人旅行者の日本への再訪意向を見てみると、24年は「必ず

来たい」(57.8%)、「来たい」(34.9%)の合計が 92.7%を占めており、22年以降、年々

増加傾向にある(第18図)。

今後、海外景気や政治情勢、為替等が安定的に推移していけば、外国人の旅行需

要が拡大し、「旅行業(外人旅行)」も伸びていく可能性がある。

第17図 訪日外客数及び伸び率(前年同期(年)比)の推移

861

622

837

202 219 240

201 175

109

165 174 191 213 228

204 226

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

(年) (期/年)

(万人)

22 23 24 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ

22 23 24 25

▲ 60

▲ 40

▲ 20

0

20

40

60

80

100

120

(年) (期/年)

(前年比、前年同期比、%)

(注)25年1~3月期は推計値。 資料:「訪日外客数」(日本政府観光局(JNTO))

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 32 -

第18図 訪日外国人旅行者 日本への再訪意向の推移

49.7

58.2

57.8

38.3

33.7

34.9

7.0

4.6

4.3

4.9

3.5

3.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

22年

23年

24年

必ず来たい 来たい やや来たい 何ともいえない・来たくない

資料:「訪日外国人消費動向調査」(観光庁)

(4) まとめ

今回のトピックでは、我が国の少子高齢化が進展する中で、経済活性化の切り札とし

て期待を集める成長産業の一つである「観光関連産業」を取り上げ、第3次産業活動指

数等を用い、分析を行った。

第3表は、22年以降の観光関連産業の動向を捉え、考察した結果をまとめたもので

ある。第3次産業活動指数(17年=100、季節調整済)の「観光関連産業」は、震災発

生後の落ち込みから持ち直し、23年10~12月期以降は、震災発生前の水準を上回り

推移している。業種別でみても、他の観光関連業種と連動していると考えられる「旅行

業」を中心に、多くの業種が、足下では震災発生前の水準を上回っている。

内閣府の「景気ウォッチャー調査」から、観光関連産業に関係がある「旅行・交通関

連」と「レジャー施設関連」の現状判断DIと先行き判断DIをみると、短期的には上昇す

る見通しである。同調査の景気判断理由の中に、「・・・株高が続けば、心理的にも客が

動きやすくなる。」といったコメントが見られること、また、旅行に関しては、昨年末以降の

株価上昇による消費者心理の好転、資産効果等を背景に、25年に入ってから、高額商

品の売上が伸びているといった報道が見受けられることから、「株価」及び「賃金」を説明

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 33 -

変数、「パック旅行費(国内及び海外)」を被説明変数とした旅行消費関数を推計すると、

「パック旅行費」消費支出は、「株価」が 1%上昇(下落)すると 0.23%増加(減少)、「賃

金」が 1%増加(減少)すると 2.76%増加(減少)するという結果が得られた。「パック旅行

費」における「株価」、「賃金」に対する支出弾性値は、消費支出全体より高く、余暇活動

における旅行の潜在需要は大きい。為替の動向等、他の様々な要因を踏まえる必要は

あるものの、今後、「株価」、「賃金」が上昇していけば、25年の「パック旅行費」消費支

出が増加し、観光関連産業の中心となる「旅行業(国内旅行及び海外旅行)」が伸びて

いく可能性がある。

一方、日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数の伸び率(前年同期比)の推移をみる

と、24年1~3月期以降、プラスの伸びを続けており、観光庁の「訪日外国人消費動向

調査」によれば、訪日外国人旅行者の日本への再訪意向は高まっている。今後、海外

景気や政治情勢、為替等が安定的に推移していけば、「旅行業(外人旅行)」も伸びて

いく可能性がある。

「観光関連産業」は、今後も「旅行業」を中心に伸びていくことが期待される。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 34 -

第3表 22年以降の観光関連産業活動の動向及び考察

第3次産業活動指数(17年=100、季節調整済)他

ポイント差 水準

観光関連産業 1.0 上回っている22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。しかしながら、7~9月期にプラスに転じ、10~12月期以降は震災発生前の水準を上回り推移。

 旅行業 5.2 上回っている22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。しかしながら、7~9月期には大幅に上昇し、10~12月期以降は震災発生前の水準を上回り推移。

  国内旅行 10.7大幅に

上回っている

・22年7~9月以降低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。しかしながら、7~9月期には大幅に上昇し、以降、震災発生前の水準を上回り上昇。24年7~9月期に再び低下したが、10~12月期以降は上昇。・パック旅行取扱額(実質ベース)の震災後の落ち込みには、主に取扱人数の減少が影響。

  海外旅行 ▲0.5 同程度

・尖閣諸島を巡る状況の影響等を背景に22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。しかしながら、7~9月期以降は、円高の進行も追い風となり、上昇傾向で推移。24年1~3月期以降、震災発生前の水準を上回り上昇したが、再び日中間の緊張感が高まったこと等から24年7~9月期、10~12月期は低下。・25年1~3月期はプラスに転じるも、円安の進行等を背景に伸び幅小。・パック旅行取扱額(実質ベース)の震災後の落ち込みには、主に取扱人数の減少が影響。

  外人旅行 92.0大幅に

上回っている

・円高の進行や日中間の緊張感の高まり等を背景に22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに大きく落ち込んだ。7~9月期には大幅に上昇し、24年4~6月期に震災発生前の水準を上回ったが、円高の進行や再び日中間の緊張感が高まったこと等から24年7~9月期、10~12月期は低下。・25年1~3月期は、円安の進行が追い風となり、韓国や台湾などアジアからの旅行者数が増えたこと等から大幅上昇。・パック旅行取扱額(実質ベース)の震災後の落ち込みには、主に取扱人数の減少が影響。旅行単価はマイナスの伸びが続く。

 宿泊業 4.8 上回っている22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。しかしながら、7~9月期には大幅に上昇し、以降、震災発生前の水準を上回り推移。

  ホテル 9.9 上回っている

  旅館 ▲0.6 下回っている

分類名

第3次産業活動指数(17年=100、季節調整済)

震災発生前(22年10~12月期)と足下(25年1~3月期)の比較 震災発生前の22年から足下(25年1~3月期)までの動向及び考察

・「ホテル」は震災の発生により23年1~3月期、4~6月期と落ち込んだ。しかしながら、7~9月期には「国内旅行」の回復等を背景に大幅に上昇。24年1~3月期、4~6月期は「外人旅行」も回復してきたこと等から、震災発生前の水準を上回り上昇。7~9月期は再び低下したが、10~12月期以降は上昇。・「旅館」は「国内旅行」の回復等を背景に23年7~9月期に大幅に上昇。しかしながら、10~12月期以降は低下傾向。・震災後の回復の背景には、「国内旅行」、「外人旅行」の回復に加え、被災地における復旧・復興の関係者及び被災者の需要、ビジネス需要の回復等もあったことに留意。

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産業活動分析(平成25年1~3月期)

- 35 -

 公園、遊園地 11.8大幅に

上回っている

・震災の発生により23年1~3月期、4~6月期と大きく落ち込んだ。しかしながら、7~9月期には、正の相関がある「国内旅行」の回復等を背景に大幅に上昇。24年1~3月期、4~6月期は震災発生前の水準を上回り上昇。7~9月期、10~12月期は再び低下したが、25年1~3月期は上昇。・特定サービス産業動態統計によれば、24年の「遊園地・テーマパーク」の入場者数及び売上高は、前年比、前々年比ともに上昇。・「遊園地・テーマパーク」の売上高(実質ベース)の震災後の落ち込みには、主に入場者数の減少が影響。

 旅客運送業等 1.0 上回っている

22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期にさらに落ち込んだ。しかしながら、4~6月期にはプラスに転じ、その後も「旅行業」の回復等を背景に上昇。24年7~9月期は再び低下したが、10~12月期以降は上昇。

  鉄道旅客運送業 1.9 上回っている

・震災の発生により23年1~3月期に落ち込んだが、4~6月期にはプラスに転じ、その後も「国内旅行」の回復、ビジネス需要の回復等を背景に上昇傾向で推移。24年4~6月期以降は震災発生前の水準を上回り上昇。・高速道路の上限料金制(休日1,000円)の廃止等も回復の追い風に。

  道路旅客運送業 0.6 上回っている

22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期にさらに落ち込んだ。しかしながら、4~6月期にはプラスに転じ、その後も「国内旅行」の回復、ビジネス需要の回復等を背景に上昇傾向で推移。24年1~3月期に震災発生前の水準を上回ったが、4~6月期、7~9月期と再び低下。10~12月期以降は上昇。

  水運旅客運送業 ▲0.8 下回っている

22年10~12月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。「国内旅行」の回復等を背景に、7~9月期にはプラスに転じ、10~12月期から24年4~6月期にかけて震災発生前の水準と同程度で推移していたが、7~9月期に再び低下。10~12月以降は上昇しているが、震災発生前の水準を下回る形で推移。

  航空旅客運送業 5.3 上回っている

・22年4~6月期から23年4~6月期にかけて低下。7~9月期以降は上昇傾向で推移。24年1~3月期以降は格安航空会社(LCC)の新規就航等も追い風となり、震災発生前の水準を上回り推移。・22年以降の変化幅が「旅客運送業等」の中で最も大きい。

   国際航空旅客運送業 5.4 上回っている

22年4~6月期から23年4~6月期にかけて大幅に低下。背景には、正の相関がある「海外旅行」と同様、尖閣諸島を巡る状況の影響、震災発生等があった。7~9月期以降は上昇傾向で推移し、10~12月期以降は震災発生前の水準を上回り上昇。しかしながら、再び日中間の緊張感が高まったことから24年7~9月期、10~12月期は低下。25年1~3月期は上昇。

   国内航空旅客運送業 5.3 上回っている22年7~9月期に低下し、震災の発生により23年1~3月期、4~6月期はさらに落ち込んだ。しかしながら、7~9月期以降は上昇傾向で推移しており、24年4~6月期以降は震災発生前の水準を上回り推移。

  道路施設提供業 ▲2.6 下回っている・震災の発生により23年1~3月期に低下し、その後は一進一退で推移。・高速道路の無料化社会実験の実施等により、22年7~9月期、10~12月期は高水準で推移していたことに留意。

  自動車レンタル業 5.5 上回っている22年4~6月期から24年1~3月期にかけて上昇傾向で推移。23年1~3月期以降は、震災の発生により、被災3県(岩手県、宮城県、福島県)を中心とした需要増があったことに留意。24年4~6月期以降は低下傾向。

(注)水準の評価は、ポイント差▲0.6 以下が「下回っている」、同▲0.5~0.5 が「同程度」、0.6~10.0 が 「上回っている」、10.1 以上が「大幅に上回っている」としている。

資料:「第3次産業活動指数」等から作成。