274号日勝峠(日高側)の復旧について...yusuke sato, ooki sato, fujioka hiroyuki...

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Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki 平成29年度 台風の影響により被災した 国道274号日勝峠(日高側)の復旧について ―被災から14か月での開通を可能にした 受発注者との協力体制― 室蘭開発建設部 日高道路事務所 工務課 ○佐藤 友祐 佐藤 大 藤岡 博之 平成28年8月17日~23日北海道で観測史上初の1週間に3個の台風、29日から前線 に伴う豪雨、31日未明にかけて接近した台風第10号により、国道274号日勝峠周辺では 局地的かつ猛烈な豪雨が発生した。この影響により河川が増水し、日高側では30箇所の甚大 な被害を受けた。本論文では、各種地形による災害特徴、復旧対策を述べるとともに、被災か 14か月での開通を可能にした受発注者との協力体制について述べる。 キーワード:自然災害、災害復旧、工期短縮 1. はじめに 国道274 号日勝峠は、道央と道東を結ぶ人流・物流の 要衝であり、両圏域の産業、生活、観光、文化などの社 会活動や、地域経済活動を支える重要な路線である。こ の日勝峠では、平成28 8 30 日から31 日の未明にかけ て、局地的かつ猛烈な豪雨が発生した。 その豪雨の影響で被災を受けた箇所数は日勝峠全体で 66 箇所、被災区間L=43.0km となった。その後、千呂露仮 橋の設置、啓開作業等、地域住民や復旧作業の動線を確 保するために工事を進め、平成29 3 31 日千栄地区通 行止め解除により、通行止め延長はL=36.1 kmとなった。 室蘭開発建設部側の被災箇所は30 箇所あり、被災分類 別では橋梁損傷 7 箇所、道路本体の欠損4 箇所、覆道損 3 箇所、その他損傷16 箇所であった。 室蘭開発建設部では、先の被災箇所に対して、新たに 平成29 年度災害復旧工事として、改良工事、舗装工事、 橋梁工事、電気通信工事を32 本の工事を発注し、『平成 29 年秋開通』の開通目標に向けて開始した。但し、進入 口が日高側の1 箇所であることよる車両混雑の懸念、同 工区で各種工事の工程が重複する懸念等、多岐に渡る問 題が予想された。また、大雨時に増水が懸念される河川 敷を施工ヤードとする工事や、山間部約15 km区間の携 帯電話不感地帯で作業を行う工事等、安全面での問題点 も発生した。 本論文では、各種地形による災害特徴、復旧対策を述 べるとともに、被災から14 か月での開通を可能にした受 発注者との協力体制について述べる。 2. 被災概要 被災要因を以下にまとめる。 ・国道274 号日勝峠では、8 17 日~8 23 日に上陸した 台風7 号、11 号、9 号にて、連続雨量100 150mm 3 到達。台風が北海道に1 週間で3 回上陸したのは気象庁 の統計開始以来初めて。 ・その後台風10 号の接近に伴い、8 28 日より連続雨量 488 mm、時間雨量55 / hを記録。 ・連続雨量488 mmは、過去最大220mm2 倍以上を上回 る観測値。観測史上最大を記録(図-1 )。 この雨の大部分は台風本体に伴う降雨ではなく、長 時間にわたり、東寄りの暖湿気が日高山脈にぶつかり 発達した雨雲に起因する地形性降雨。 ・日勝峠を源流とする河川が増水、土石流を伴い道路及 び橋梁が被災。 図-1 日勝峠テレメータデータ 別紙-2

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Page 1: 274号日勝峠(日高側)の復旧について...Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki 平成29年度 台風の影響により被災した 国道274号日勝峠(日高側)の復旧について

Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki

平成29年度

台風の影響により被災した 国道274号日勝峠(日高側)の復旧について

―被災から14か月での開通を可能にした 受発注者との協力体制―

室蘭開発建設部 日高道路事務所 工務課 ○佐藤 友祐

佐藤 大

藤岡 博之

平成28年8月17日~23日北海道で観測史上初の1週間に3個の台風、29日から前線

に伴う豪雨、31日未明にかけて接近した台風第10号により、国道274号日勝峠周辺では

局地的かつ猛烈な豪雨が発生した。この影響により河川が増水し、日高側では30箇所の甚大

な被害を受けた。本論文では、各種地形による災害特徴、復旧対策を述べるとともに、被災か

ら14か月での開通を可能にした受発注者との協力体制について述べる。

キーワード:自然災害、災害復旧、工期短縮

1. はじめに

国道274号日勝峠は、道央と道東を結ぶ人流・物流の

要衝であり、両圏域の産業、生活、観光、文化などの社

会活動や、地域経済活動を支える重要な路線である。こ

の日勝峠では、平成28年8月30日から31日の未明にかけ

て、局地的かつ猛烈な豪雨が発生した。 その豪雨の影響で被災を受けた箇所数は日勝峠全体で

66箇所、被災区間L=43.0kmとなった。その後、千呂露仮

橋の設置、啓開作業等、地域住民や復旧作業の動線を確

保するために工事を進め、平成29年3月31日千栄地区通

行止め解除により、通行止め延長はL=36.1kmとなった。 室蘭開発建設部側の被災箇所は30箇所あり、被災分類

別では橋梁損傷 7箇所、道路本体の欠損4箇所、覆道損

傷3箇所、その他損傷16箇所であった。 室蘭開発建設部では、先の被災箇所に対して、新たに

平成29年度災害復旧工事として、改良工事、舗装工事、

橋梁工事、電気通信工事を32本の工事を発注し、『平成

29年秋開通』の開通目標に向けて開始した。但し、進入

口が日高側の1箇所であることよる車両混雑の懸念、同

工区で各種工事の工程が重複する懸念等、多岐に渡る問

題が予想された。また、大雨時に増水が懸念される河川

敷を施工ヤードとする工事や、山間部約15km区間の携

帯電話不感地帯で作業を行う工事等、安全面での問題点

も発生した。 本論文では、各種地形による災害特徴、復旧対策を述

べるとともに、被災から14か月での開通を可能にした受

発注者との協力体制について述べる。

2. 被災概要

被災要因を以下にまとめる。 ・国道274号日勝峠では、8月17日~8月23日に上陸した

台風7号、11号、9号にて、連続雨量100~150mmに3度到達。台風が北海道に1週間で3回上陸したのは気象庁

の統計開始以来初めて。 ・その後台風10号の接近に伴い、8月28日より連続雨量

488mm、時間雨量55m/hを記録。 ・連続雨量488mmは、過去最大220mmを2倍以上を上回

る観測値。観測史上最大を記録(図-1)。 ・ この雨の大部分は台風本体に伴う降雨ではなく、長

時間にわたり、東寄りの暖湿気が日高山脈にぶつかり

発達した雨雲に起因する地形性降雨。 ・日勝峠を源流とする河川が増水、土石流を伴い道路及

び橋梁が被災。

図-1 日勝峠テレメータデータ

別紙-2

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Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki

橋 長 120900

8500

10100

計画高水位H.W.L.

至 札幌 至 帯広

750 750支 間  390001200支 間  390001200支 間  39000

A-1 P-1 P-2 A-2

被災時水位 D.H.W.L.

6000

EM

5400

6000

9900 6500

5400

EM EM EM

推定岩盤線

旧橋 83800

橋梁を伸長

流心方向に設置 護岸工(法枠ブロック)、護床工・水制工設置 基礎は岩盤層に根入れ

図-5 本復旧橋梁側面図

3. 代表的な被災状況と対策

当路線の被災は落橋、擁壁・覆道・盛土法面洗掘、土

石流横断、切土法面崩壊等、多種多様な災害が発生して

いる。以下に、代表的な被災状況と対策を説明する。

(1) 落橋(千呂露橋)

a) 発生のメカニズム

台風10号通過に伴う急激かつ多量の降雨による影響で

河川水位の上昇と流速増加し、湾曲部の河岸浸食が進

行、A1側に流向や川幅が大きく変化(図-2)。

河岸浸食に伴い、A1橋台背面の盛土が洗掘、後に橋台

が転倒。主桁は落橋と変形し、P1橋脚は変形と回転が

発生した(図-3)。

図-2 発生メカニズム その1

図-3 発生メカニズム その2

b) 迂回解消

国道機能の早期回復に向

けて、9月13日に1車線の

復旧作業用仮橋及び道路

の利用開始。これにより

迂回解消となり避難生活

が続く地域住民の安心が

確保される(写真-1)。

c) 応急復旧

応急復旧は迂回路を設け対面通行を可能な仮橋を設置。

仮橋は河川改修断面(北海道)に合わせて流下断面を

侵さないように橋長を設定。橋脚は、河川の流れを阻

害しよう流心方向に設置(図-4)。

これより3月31日千栄地区L=3.4km通行止め解除となる。

図-4 仮橋説明図

d) 本復旧

本復旧は橋長L=120.9m 3径間連結PCコンポ橋を採用。

橋梁は計画河川断面に合わせて伸長、流下断面を確保。

橋脚は、河川阻害しないように流心方向に設置。基礎

は岩盤を支持層とする杭基礎、さらに護岸工は速い流

速に耐えられる法枠ブロックとした

(表-1,図-5)。

本橋は現在施工中であり、来年度完成予定である。

表-1 橋梁諸元

①橋台背面 盛土洗掘

②橋台転倒

③主桁落橋

④橋脚変形・回転

⑤主桁変形

A1

P1P2 A2

M

NTT

M

619598

632442

M

M

RUPI工房物78

6183

622442

795527

622442

795903

622442

MM

駐車場(As)

795071

622442

798289

622442

案内板

ガードロープ

M

704925

622442

(植林)

(As)制 水 弁U30 0

(As)

千栄神社

立入禁止看板

鳥居

タンク

タンク

千栄生活館

M

ゴミ

幹栄千

157

(花)

(花)

日高登山研修所千栄コミニュティーセンター

北海道山岳連盟

空 空

石碑

記念碑

右岸

左岸

沙流川 被災時

河道ライン

至札幌 至帯広

A1 P1 P2 A2

被災前河道ライン

至札幌 至帯広

迂回路

橋脚

流心

至札幌 至帯広

橋脚

流心方向に設置

橋長 L=120.9m(支間長3@39.0m)

有効幅員 車道8.5m、歩道2.0m

設計荷重 B活荷重

上部工形式 3径間連結PCコンポ桁

下部工形式 逆T式橋台(場所打杭基礎)

壁式橋脚 (場所打杭基礎)

仮橋

復旧作業用仮橋(迂回路完成後撤去)

至帯広

至札幌

写真-1 復旧作業用仮橋

仮橋

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Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki

DHWL

計画 河床高 現況

河床高

天端はDHWL以上

逆T式擁壁

護床工(根固工)

(2) 擁壁洗掘・盛土法面洗掘(千栄擁壁)

豪雨による河川水位上昇と流速増加により河川の護岸

兼用擁壁は、底面の洗掘進行により不安定化し倒壊、

流出。それに伴い道路盛土は浸食を受け、幅員W=9.5m、

道路延長1,185mに渡り洗掘・流出した(図-6,7)。

対策工は、近隣の水衝部で安定性を確保していた逆T

式擁壁工を採用。擁壁延長は北海道の河川計画と整合

を図り、新設河川築堤と接合、擁壁天端は被災時流量

水位(DHWL)以上に設定。根入れは最深河床高より1

m根入れし、前面には洗掘防止対策として護床工を敷

設した(図-8)。

(3)覆道洗掘(清瀬第1~4覆道)

河川水位上昇と流速の増加により清瀬覆道区間は、護

岸兼用擁壁を越流し、前面の盛土が流出。覆道の杭基

礎の露出、及び道路附帯施設が流出した

(図-9,10)。

対策工は、近隣の水衝部で安定性を確保していた逆T

式擁壁工を採用。擁壁延長は杭基礎が露出した範囲と

し既設擁壁と接合、擁壁天端は被災時流量水位

(DHWL)以上に設定。前面には洗掘防止対策として護

床工を敷設した(図-11)。

(4)盛土法面洗掘

河川の水衝部にある4段の道路盛土は、河川増水によ

りに盛土下部が浸食。それに伴い水衝部の拡大、河川

浸食の進行により、延長約100mの範囲で道路面を含む

4段盛土の全断面が崩壊した(図-12,13)。

図-8 対策工説明図

図-9 発生メカニズム図

図-11 対策工説明図

図-6 発生メカニズム図

図-12 盛土法面洗掘説明写真

水衝部 約100m

至札幌 至帯広 道路・盛土4段崩壊

図-7 擁壁崩壊説明写真

至札幌

至帯広

擁壁崩壊・盛土流出

CL

水衝部

図-10 覆道洗掘説明写真

沙流川

平水位

DHWL(被災時水位) DHWL

河床低下洗掘 倒壊

盛土流出

①被災前 ②増水・擁壁洗掘 ③擁壁倒壊・盛土浸食

DHWL DHWL

平水位

①被災前 ②増水・盛土浸食 ③覆道杭基礎露出

流出

道路境界

DHWL

護床工

逆T式擁壁 (杭が露出した範囲)

崩壊

至札幌 至帯広

擁壁崩壊・盛土流出・杭基礎露出

水衝部

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Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki

DHWL

水平排水層

護岸工

根固工

対策工は河川水衝部の浸食防止のため、護床工及び被

災時水位まで護岸工を敷設。盛土内の排水性向上のた

め水平排水層を設置した(図-14)。

(5)土石流出・盛土法面崩壊

沢からの土石流による横断管が閉塞に伴い排水機能が

低下、道路へ流出。それにより舗装、附属物が破損。

また沢からの流水は道路を越流し、盛土崩壊を導く要

因となった(図-15,16)。

対策工は沢に残存する土砂量や流木量を踏まえ、横断

管呑口部に崩壊土砂防止柵+鋼製自在枠の設置よる土

砂堆積スペースを確保。また流量計算に基づき横断管

の管径を変更した(図-17)。

(6)土石流出・覆道洗掘(三国の沢シェルター)

沢からの土石流により、沢埋め盛土に敷設している横

断管が閉塞。その影響で沢埋め盛土は洗掘、崩壊、流

出。その洗掘と崩壊の影響で、シェルター内の路面等

は陥没・流出し、道路が寸断された

(図-18,19)。

図-14 対策工説明図

図-13 被災のメカニズム図

図-15 被災のメカニズム図

図-17 対策工説明図

図-16 土石流説明写真 図-19 覆道洗掘説明写真(下流より撮影)

至札幌

至帯広

沙流川

土石流が発生した沢

流出経路

横断管閉塞

至帯広

至札幌

沢埋め 盛土洗掘・崩壊・流出

図-18 覆道内説明写真(終点側から起点側を撮影)

土石流が発生した沢

平常時

道路

DHWL(想定)

平常時

水衝部 盛土4段崩壊

被災時

河川浸食 拡大

水衝部拡大

平面図

断面図

土石流

横断管閉塞⇒排水機能低下

越流

発生した土石・流木が横断管呑口や道路に堆積

盛土崩壊

(閉塞)ヒューム管φ500 ⇒パイプカルバー トφ700

に変更

I=5%

崩壊土砂防止柵 + 鋼製自在枠工 H=5.0m

至札幌

CL

路面 陥没・流出

シェルター内

土石流が発生した沢

至帯広

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Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki

当箇所の対策工について以下に述べる(図-20)。

・シェルターは設置後40年以上経過し、劣化度が著し

い状況。今後の維持管理や施工性等を踏まえ、土石

流の影響を受けた区間のみならず、全区間を撤去と

した。

・土石流対策工は、沢に残存する土砂量や流木量を踏

まえ、横断管呑口部に崩壊土砂防止柵+鋼製自在枠の

設置よる土砂堆積スペースを確保。また流量計算に

基づき横断管の管径を変更した。

・防雪対策・交通安全対策として、新たに防雪柵、中

央分離帯を設置し、道路の左右及び中央分離帯には

デリニェータ等の安全施設を設置した。

・防雪対策については、継続して雪況調査を実施し、

路線の雪害状況、対策工の効果検証等を把握、その

結果を基に道路管理体制の検討を行う予定である。

4. 『平成29年秋頃』通行止め解除の目標とした

受発注者との協力体制

国道274号日勝峠室蘭側では、災害復旧関連工事を行

うにあたり、工事区間の出入口は日高側からの1箇所、

峠部の厳しい気象条件、他工事に必要な復旧作業用道路

確保のため狭隘スペースで切り回しながらの工事が必要

等、厳しい条件下であった。それでも一日も早い通行止

め解除を願う地域や、道路利用者及び道央圏と道東圏を

結ぶ人流や物流の大動脈の位置づけから、平成28年11月

29日に『平成29年秋開通』通行止め解除の目標が設定さ

れた。

室蘭開発建設部では、その目標を達成するために、以

下の3つのコンセプトを設定した。

①工事全体や各工事間で発生する問題点の早期解消

②厳しい自然条件での工事でも安心・安全なソフト対策

③通行止め区間の状況が容易に理解できる広報活動

本稿では上記3点の内、①をクリアするために実施し

た受発注者との協力体制について以下に述べる。

(1)現場での問題点を早期解消

a) 施工条件

被災区間約L=30km、被災箇所30箇所を工事する上で、

与えられた施工条件は以下である。

・平成29年度 日勝峠災害復旧関連工事は、改良工事17

件、舗装工事4件、橋梁工事6件、情報通信5件、被災

区間約30kmの間で合計32件の工事を実施。

・工事の本格作業は雪解けの5月上旬より着工。

・工事関係者及び建設車両の多数来場を想定。

実績として7月のピーク時には、入場者数(技術員+作

業員)が約13,000名/月、日最大は約500名、車両台数

(建設機械+ダンプ)は5700台/月、日最大は約250台。

・進入口は日高側の1箇所、工事区間が重複する工区、

全面通行止め、片側交互通行、夜間工事等、各区間の

進捗により道路状況が変化。

・北海道河川工事、林野工事、北電工事等も並行実施。

b) 現場での問題点を早期に解消する流れ

工事32件全体に関係する問題点や各工事の問題点に対

応するためには情報収集、情報共有、進捗管理、調整、

工事管理、情報伝達等を基本とする受発注者との協力体

制が必要であった。それらの流れを図-21に示す。

c) 早期に発注者が判断するための新たな試み

室蘭開発建設部では通行止め解除目標に対し、発注者

が早期に判断できる協力体制を形成するため、今回新た

な試みとして、発注者の補佐兼主体性ある立場で事業を

遂行する『復旧事業ppp』の業務を発注し、体制の強化

を図った(図-22)。

図-20 対策工説明写真(起点側より撮影)

崩壊土砂防止柵 +鋼製自在枠

横断管

デリニェータ

中央分離帯

三国の沢シェルターは全線撤去

至帯広

至札幌

図-22 災害復旧工事体制図

図-21 現場での問題点を早期に解消する流れ図

【現場】工事32 件全体に関係する問題点や各工事間の問題点が発生 ⇒効果性、効率性が著しく低下

情報収集・情報共有

発注者判断

情報共有・情報伝達

【現場】効果性、効率性向上

発注者が早期に判断できる協力体制が必要

協力体制の

形成が課題

進捗管理・調整・工事管理

情報整理

発注者

復旧事業 ppp

工事

(現場代理人)

R274日勝峠 災害復旧関連工事

推進協議会

一元的な 事業管理

他機関工事 (工区内)

:指示・確認 :調整・報告

:協議・報告 :協議・報告・調整

【凡例】

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Yusuke Sato, Ooki Sato, Fujioka Hiroyuki

従来の『事業促進PPP』は大規模事業における調査設

計・用地取得から事業費管理・施工計画に至る事業マネ

ジメントであるが、今回採用した『復旧事業ppp』は災

害復旧事業の特性を踏まえ、短期的な供用目標を達成す

るための進捗管理・調整及び工事管理等を行うことを目

的とした。 d) 現場での問題点を早期解消した対応実績

(ⅰ)対応実績① 工事32件全体に関係する問題点は

発注者、R274日勝峠災害復旧関連工事推進協議会、復旧

事業pppからなる『日勝峠災害復旧関連工事間調整会

議』を8回開催、工事推進協議会は23回開催にて、解消

を図り、各工事間の問題点は関連する全て工事を緊急参

加させ、図-13の流れで早期解消を図った。

また毎週開催する工事推進協議会は、32社全ての参集

は調整が困難であるため、協議が成立しない可能性があ

った。そのため発注者側より「32社を5班に編成し各班

に班長を設置」を提案、事務局・班長を主体とした班体

制により情報伝達の確実性が確保され、効率的・効果的

な連絡体制が図れた。また工事業者間で行われる協議会

であったが復旧事業pppも参加させることにより、発注

者への報告・指示、工事業者への調整・伝達速度が向上

し、より効率的・効果的な形成となった(図-23)。

(ⅱ)対応実績② 改良工事、舗装工事、橋梁工事、

電気通信工事、その他機関工事等、情報として把握しな

ければならない項目が多岐に渡った。それらの把握を容

易にするために、工事推進協議会にてベースとなる統一

書式の週間工程計画表を作成し、検討や判断に必要な

資材搬出入計画、機械類搬出入計画、片側規制予定、夜

間作業予定、作業内容、技術者・作業員日人数、建設期

間・ダンプトラックの日台数等の2週間分の情報を、毎

週収集した。また他の機関工事はヒアリングを行い道路

使用率等の予定を把握、特にダンプ数が多い北海道発注

の河川工事は情報提供のお願いをした。

それら情報を復旧事業pppにて週間工程計画一覧(図-

24)に整理し、毎週の発注者週間工程会議にて情報共有

した。週間工程計画一覧は、横軸を測点、縦軸を日付と

し、各情報を一覧に収め、各工事の進捗状況、昼夜の渋

滞、片側通行、通行止めやそれに伴う他の工事への影響、

各種工事が輻輳する区間の作業の影響等、径日的かつ線

的に把握した。それにより遅延等のクリティカルとなる

工事区間を抽出し、工事間調整等の問題点解決に努めた。

また、常に通行止め区間の全体状況を把握することが

できたことにより、通行止め解除日の検討にも活用した。

5. おわりに

本復旧工事は本格的始動から約6ヵ月の間に被災区間

約L=30km、32工事がほぼ完了し、平成28年10月28日の開

通に至った。

今回開通目標を達成できた主な理由は、従来の工程管

理方法に加え、復旧事業pppを活用した新たな試み、早

期判断できる情報収集・共有・伝達等の工夫、32社との

コミュニケーションにより、受発注者が一丸となり協力体制を形

成した結果と考える。

また懸念されていた工事の安全面では、工事間調整会

議にて、各社安全対策を情報共有、下請けも含めた衛星

携帯電話の所在の周知、班内での気象情報ツールの共有

化等、災害現場での復旧工事であることを常に意識させ

る安全管理を徹底することにより、安全性が確保できた。

災害は今後も発生する可能性はある。災害復旧事業は

目標を達成するために、より多くの情報を早期に収集・

整理し解決することが重要であることから、今後は過去

の災害対応事例を踏まえ、かつ新たな試みを加える温故

知新の体制づくりの検討が不可欠であると考える。

最後に、復旧に関わった多くの関係者の苦労と努力に

対して敬意ならびに謝意を表します。

図-24 週間工程計画一覧図

図-23 工事推進協議会 情報連絡体制図

【対応策】

工事推進協議会(毎週開催)

1班 班長

5班班長

2班 班長

4班班長

3班班長

会長、副会長、事務局

ppp参加

1班工事

2班工事

3班工事

:報告・調整

4班工事

5班工事

発注者

32社を5班体制で編成

:報告 :指示 :調整・伝達

情報の確実性とスピードが向上

起点 終点

測点とリンクした工事名を表記。改良、舗装、橋梁、電気工事を併記し、どこで何の工事が行われているか把握

進捗率表記で工事状況を定量的に把握

延べ通過台数表記で渋滞の可能性を判断。現地調査にて、渋滞となる目安値を1000台/日に設定

片側通行、通行止めを表示。この規制と通過台数で終点側の影響を判断

改良・電気工事の作業を併記。輻輳することで作業に問題ないかを把握

日付 2週間

舗装工事(夜間)表記。 他工事で夜間工事を行う場合は調整