平成28年度産業経済研究委託事業 (企業のダイバーシティ経営 ... · 2017....

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平成28年度産業経済研究委託事業 (企業のダイバーシティ経営・人材戦略の在り方に関する調査) 報告書 平成29年3月 PwC あらた有限責任監査法人

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平成28年度産業経済研究委託事業

(企業のダイバーシティ経営・人材戦略の在り方に関する調査)

報告書

平成29年3月

PwC あらた有限責任監査法人

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2

目次

内容 ページ

1.はじめに 3

2.事業の実施内容 3

(1)検討会の実施 3

(2)調査研究の実施 5

3.終わりに 7

別紙資料

1. 人材獲得において日本企業が置かれている状況 (全11ページ)

2. 国籍・文化の多様性 (全6ページ)

3. 取締役会の多様性 (全10ページ)

4. 主な国際的なガイドライン (全5ページ)

5. 国内外企業の開示事例 (全9ページ)

6. その他、国内外の動向 (全4ページ)

7. 検討会の概要 (全4ページ)

免責事項

本文書は、貴省と当法人との間で平成28年6月24日に締結した「平成28年度産業経済研究委

託事業(企業のダイバーシティ経営・人材戦略の在り方に関する調査)に関する委託契約書」に基

づき作成されたものです。当法人は、本件業務以外の目的や貴省以外の第三者に本報告書が開

示された、あるいは本報告書を利用した場合、何らの契約上またはその他の責任を負いません。

本報告書の内容は、受託期間において、実施した作業を通じて入手した情報、仕様書、および貴

省の指示に基づいてのみ作成されています。当法人の業務は日本公認会計士協会その他会計

基準委員会によって制定された基準に従って監査、レビュー、証明、その他の保証をしたものでは

ありません。

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3

1.はじめに

企業が外部環境の変化に対応し、持続的な価値を生み出していくため、経営戦略と一体となっ

た人材戦略が不可欠である。多くの企業がグローバル化を主たる背景とした不確実なリスクの増加

等の外部環境の変化に対応できる経営戦略が求められている中、人材戦略自体も変革することが

必要である。

その観点から、ダイバーシティ経営は、多様な人材を適材適所に配置し、個々の人材の最適な

運用を図るとともに、人材戦略・組織の在り方・仕事の仕方の変革のきっかけになる。

かかる背景を踏まえ、本委託調査では、ダイバーシティ経営をきっかけとして、企業価値向上に

結びつく人的戦略(人材戦略)の在り方について、政府・産業界・資本市場・労働市場で構成され

る検討会における議論(実施項目(1))および調査研究(実施項目(2))を行った。

2.事業の実施内容

(1)検討会の実施

平成28年8月に「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ 2.0)の在り方に関す

る検討会」を立上げ、本委託調査期間中に、計 7 回の検討会を実施した。経済産業省の指示

のもと、機関投資家、企業、有識者等に対する座長および委員としての参加依頼や、インタビ

ュー等の各種アレンジと実施、また、検討会の設置・運営の支援を実施した。

実施要領

第1回検討会 平成28年8月19日(金) 13:00~15:00 参加者:計13人

第2回検討会 平成28年9月16日(金) 10:00~12:00 参加者:計12人

第3回検討会 平成28年10月21日(金) 14:00~16:00 参加者:計11人

第4回検討会 平成28年11月14日(月) 14:00~16:00 参加者:計13人

第5回検討会 平成28年12月13日(火) 14:00~16:00 参加者:計12人

第6回検討会 平成29年1月31日(火) 13:00~15:00 参加者:計11人

第7回検討会 平成29年3月10日(金) 14:00~16:00 参加者:計12人

(注記)参加者は代理を含む

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4

参加者

座長

北川哲雄(座長) 青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 教授

委員

井口譲二 ニッセイアセットマネジメント株式会社 株式運用部担当部長、

チーフ・コーポレート・ガバナンスオフィサー

魚谷雅彦 株式会社資生堂 代表取締役執行役員社長

大久保幸夫 株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 所長

クリスティーナ・アメージャン一橋大学大学院商学研究科 教授

小林千恵 日産自動車株式会社 ダイバーシティ ディベロップメント オフィス室長

迫田雷蔵 株式会社日立製作所 人財統括本部人事勤労本部長兼ダイバーシティ推進センタ長

杉原章郎 楽天株式会社 常務執行役員 Group Managing Executive Officer

高山与志子 ジェイ・ユーラス・アイアール株式会社 マネージング・ディレクター、取締役

戸矢博明 リム・アドバイザーズ マネージング・ディレクター

中野円佳 ジャーナリスト/株式会社チェンジウェーブ ダイバーシティ&インクルージョンデザイナー

松村はるみ 株式会社 LIXIL グループ 執行役専務 人事・総務担当

松本晃 カルビー株式会社 代表取締役会長兼 CEO

八木洋介 株式会社 LIXIL グループ執行役副社長 人事・総務担当(平成28年 11 月 21 日迄)

オブザーバー

公益社団法人経済同友会

一般社団法人日本経済団体連合会

株式会社日本取引所グループ

主な論点

検討会を通じて、企業がとるべきダイバーシティの考え方・取組について、ベストプラクティス企

業における特性を抽出し、ダイバーシティ経営の在り方について検討を行った。併せて、ダイバー

シティに関する情報提供及びステークホルダーからの評価の在り方についても検討を行った。

検討会の議題

第1回検討会

これまでのダイバーシティをどう評価するか

真に必要なダイバーシティ(ダイバーシティ 2.0)とは何か

何故、ダイバーシティ 2.0 に進めていないのか

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5

第2回検討会、第3回検討会

ダイバーシティ 2.0 を実現するためには、具体的に何を変える必要があるのか

上記の変革を実現する上で、直面する課題は何か、どうすればそれを克服できるのか

ダイバーシティ 1.0、または何ら取組みの必要性を感じていない企業に対し、ダイバーシテ

ィ 2.0 の必要性を、どのように訴求できるか

第4回検討会

外国人登用

• 「経営戦略との紐付け」について、具体的にどのような取組を行っていくべきか。

• 「全社的な環境・ルール整備」/「管理職の行動・意識改革」/「従業員の行動・

意識改革」について、具体的にどのような取組を行っていくべきか

海外投資家との意見交換

第5回検討会

外国人登用:第4回と同様の議題

外部コミュニケーション(労働市場):

• 多様な人材を惹きつけるために有効なコンテンツができているか

• コンテンツを労働市場に伝えるマーケティング・コミュニケーション戦略は何か

• 採用戦略と採用後の人材活用の一貫性がとれているか

外部コミュニケーション(資本市場):

• 投資家の意思決定において、ダイバーシティはどのように位置づけられているか

• 投資家はダイバーシティについてどのような情報を評価するか

• そういった情報を届けるために、企業は情報発信・対話はどのように工夫すべきか

第6回検討会、第7回検討会

報告書案、ガイダンス案について

今後の実践に向けた取組について

(2)調査研究の実施

本委託調査においては、企業のダイバーシティ経営及び人材戦略の国内外企業の動向等

について、文献調査・デスクトップリサーチやインタビュー等に関する調査研究を実施した。

これら調査結果については、先述の「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ

2.0)の在り方に関する検討会」における議論の素材、また、参加者の方々による議論を深め

ていただくための呼び水として利用した。さらに、調査研究の奥行きを深める観点から、この

領域に豊富な経験と知見を有する投資家や企業等にヒアリングを実施した(投資家 計4社、

企業 計12社)。

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6

結果概要

調査の結果、主に以下のことが明らかになった(詳細は別紙資料を参照)。

① 人材獲得において日本企業が置かれている状況 <別紙資料1 参照>

- 現在、また将来的に見込まれる人材獲得面の課題、人材獲得競争の激化において日本

企業が直面する課題、企業経営者にとっての人材獲得の重要性や脅威、日本企業の人

材獲得力 等

② 国籍・文化の多様性 <別紙資料2 参照>

- 多様性が業績やパフォーマンスに与える効果、日本企業の異文化に対する受容性 等

③ 取締役会の多様性 <別紙資料3 参照>

- 取締役会の多様性に関する国際比較、取締役会の多様性とパフォーマンスの関係性、

取締役会の多様性を実現するための課題・チャレンジ 等

④ 主な国際的なガイドライン <別紙資料4 参照>

- 米国サステナビリティ会計基準審議会(SASB:Sustainability Accounting Standards

Board)によるダイバーシティに関する対話やエンゲージメントの実現に向けたガイドライ

ン、IIRCの統合フレームワークによるダイバーシティの考慮 等

⑤ 国内外企業の開示事例 <別紙資料5 参照>

- ダイバーシティ経営に関する「経営の姿勢」、「ロードマップや主要KPIの提示」、及び「ス

テークホルダーとの対話の量・質」に関する国内外企業の開示事例 等

⑥ その他、国内外の動向 <別紙資料6 参照>

- 国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)や我が国の年金積立金

管理運用独立行政法人(GPIF:Government Pension Investment Fund)による昨今のダ

イバーシティ経営に関する取組の動向

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7

3.終わりに

ダイバーシティをきっかけに各企業が直面する経営課題や、取組の実施を阻むボトルネックを

解消するために、取るべきアクションやポイントについて、「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」

として、競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ 2.0)の在り方に関する検討会よ

り提示された。各企業において、「ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン」が示すアクションや具

体的な取組事例を参照しながら、経営トップの強いリーダーシップにより、それぞれの経営戦

略に沿った具体的な行動を粘り強く実行し続けることが期待されている。

このような取組により、一部の特定な企業に限定された取組ではなく、ダイバーシティ経営に

取り組む企業の裾野を拡大し、より多くの企業がダイバーシティに関する取組を通じて経営力

を高め、人材戦略の変革にもつなげることで、ひいては我が国の産業界全体を巻き込んだ大

きな流れとなることが期待される。

本調査研究で提唱する「ダイバーシティ 2.0」は、一朝一夕には実現できず、手をこまねている

余裕はないと考えられる。もはや「ダイバーシティは本当に必要なのか」という議論に時間を費

やすのではなく、一刻も早く具体的な行動を起こし、実践フェーズへと移行すべきであり、今

後も、「ダイバーシティ 2.0 行動ガイドライン」の普及等を通じ、企業・産業界、投資家および

政府による具体的な取組が期待されている。

以上

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① 人材獲得において日本企業が置かれている状況

別紙資料1

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

1. 議論の原点~すべての企業において「雇い負け」が重要な課題となる日がやってくる~

2(出所) 総務省「国勢調査」及び「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計):出生中位・死亡中位推計」(各年10月1日現在人口)、

厚生労働省「人口動態統計」、公益社団法人 経済同友会「生産性革新に向けたダイバーシティの進化-グローバル、デジタル時代を勝ち抜くための KPI-」2016年7月6日

マイノリティの人材育成・登用(=量的確保)と、働き方改革による生産性の向上(=質的向上)の必要性

我が国の将来的な生産年齢人口は、1990年代以降減少を続け、2060年には生産年齢人口割合が約50%となると推定されている。急速な人口減少・少子高齢化が進む中で、労働力の量的確保と質的向上が早晩、重要な課題となることが予想される。

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

2. 日本企業が直面する人材獲得競争 [1/2]

3

多くの日本企業が人材不足に直面しており、人材の獲得が急務となっている。

その最大の原因の1つは、「人材獲得競争の激化」である。

(出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構 人材(人手)不足の現状等に関する調査(企業調査)及び働き方のあり方等に関する調査(労働者調査)結果

43%

39%

5%13%

不足

適当

過剰

無回答

問. 人材不足の原因(人材が「不足」している企業)

人材が不足している企業が多数を占める

67%

41%34%

24%17%

15% 14%10% 8% 7% 6% 7%

0%

25%

50%

人材が不足している原因として、「人材獲得競争の激化」が最も多い

企業に対する調査問. 人材の過不足状況

n=2,406社 n=1,253社

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

2. 日本企業が直面する人材獲得競争 [2/2]

4

「人材の獲得」がビジネス上の脅威の1つであると認識している企業の経営者は多い。

グローバルで見ても、日本企業の経営者の人材の獲得に対する懸念は強い。

(注記)回答者:世界各国の主要企業の最高経営責任者(CEO)1,322人、うち日本企業のCEOは162人(出所)PwC 第18回世界CEO意識調査 2015年 境界なき市場 競争への挑戦

58%63%

73%

48% 45%

93%

0%

25%

50%

75%

2013 2014 2015

経営者に対する調査問. 企業の成長を追求する上でのビジネス上の脅威は何か?

73%61% 60% 59% 58%

54% 53% 51% 47%

93%

67%63%

80% 79%

51% 50%

37%

48%

0%

25%

50%

75%

「人材の獲得」の面でビジネス上の脅威が存在する、と回答する企業が年々増加している

グローバル 日本 グローバル 日本n=1,322人

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

3. 人材獲得における課題 ”雇い負け” [1/3]

5

大卒以上の20~30代の外国人男女の就業意欲について見ると、米国系企業および欧州系企業と比して、日系企業で「進んで働きたい」と考えている人材が少ない。

(注記)回答者:12か国の大学卒以上で現在働いている20~39歳の男女(短大卒除く)(出所)リクルートワークス研究所 Global Career Survey(2012年)

海外における日系企業の人材獲得力外資系企業勤務意向(自国企業を除く)

31%

58% 59%

16%20%

40%

30% 31%36%

42%

29%

11% 10%

48%

38%

0%

25%

50%

日系企業 米国系企業 欧州系企業 中国系企業 韓国系企業

グローバル働いてもよい 働きたくない進んで働きたいn=7,285人

米国型企業および欧州系企業は「外国企業として進んで働きたい」と考えている外国人人材が多い

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

3. 人材獲得における課題 ”雇い負け” [2/3]

6

「日系企業で働きたくない」と回答者の男女比に目を向けると、各国とも共通して、男性よりも、女性の方が日系企業を敬遠している傾向が見られる。

海外における日系企業の人材獲得力「日系企業で働きたくない」と回答した外国人人材

グローバル 日本

60%

25%21%

13%16%

14%

8%

30%

21%

41%

23%

29%

62%

39%

26%

17%21%

16% 15%

38%36%

48%

32%

40%

0%

25%

50%

中国 韓国 インド タイ マレーシア インドネシア ベトナム 米国 ブラジル ドイツ ロシア 豪州

男性 女性n=7,285人(各国600人程度)

どの国においても、「日系企業で働きたくない」と答えた回答者は女性が男性よりも多い

(注記)回答者:12か国の大学卒以上で現在働いている20~39歳の男女(短大卒除く)(出所)リクルートワークス研究所 Global Career Survey(2012年)

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

3. 人材獲得における課題 ”雇い負け” [3/3]

7

経営者層の人材獲得力を「役員報酬」を指標に見てみると、外国企業と比べ、日本企業の報酬水準は低い。日本企業の役員報酬ランキングを見ても、高額の報酬を得ているのは、一部の外国人人材と創業家・創業者が中心となっている。

(出所)マーサー ジャパン、東京商工リサーチ

役員報酬ランキング(2015年3月期)

# 企業 氏名 国籍 報酬総額

1. オリックス 宮内義彦 日本 54.7億円

2. 三共 毒島秀行(創業家) 日本 21.8億円

3. ソフトバンク ロナルド・フィッシャー 米国 17.9億円

4. 岡三証券グループ 加藤精一(創業家) 日本 12.0億円

5. 日産自動車 カルロス・ゴーン 多重国籍 10.4億円

6.ユニバーサルエンターテイメント 岡田和生(創業者) 日本 9.5億円

7. 武田薬品工業 山田忠孝 日本、米国 9.1億円

8. 武田薬品工業 フランク・モリッヒ ドイツ 8.1億円

9. 日本調剤 三津原博(創業家) 日本 7.2億円

10. コメリ 捧賢一(創業家) 日本 6.7億円

外国人人材と創業家・創業者が多数を占めている

経営人材の獲得力時価総額上位企業のCEOの報酬

1.4

3.5

16.5

7.4 7.5

0

5

10

15

(億円)

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

4. 人材不足によって引き起こされる問題

8

人材が獲得できず、適切な人材が不足する事態となった場合、企業経営に対して様々な影響が及ぼされる。

(出所)独立行政法人労働政策研究・研修機構 人材(人手)不足の現状等に関する調査(企業調査)及び働き方のあり方等に関する調査(労働者調査)結果

14%

52%

26%

3%深刻な影響を及ぼしている

一定の影響を及ぼしている

影響が今後生じる恐れがある

無回答45% 42%

37% 37%

22%

10%8%

2%

0%

10%

20%

30%

40%

企業に対する調査問.人材不足が企業経営に及ぼしている影響(人材が「不足」している企業)

n=1,253社 n=1,156社

4%影響が今後も生じない

人材不足の企業の過半数が企業経営上の影響を感じている

人材不足により、企業経営に対して様々な悪影響が及ぼされる

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

5. ダイバーシティ経営を通じた人材獲得 [1/2]

9

ミレニアル世代の人材は、就職先を選定する際に、企業の「多様性や受容性の方針」を重要視しており、特に女性はこの傾向が顕著である。

男性74%

10%

5%

女性86%

9%5%

ミレニアル世代に対する調査問. 多様性・受容性の方針は就職先を決める上で重要か?

(注記)回答者:ミレニアル世代(1980年~1995年生まれ)の男性 1,349人、女性8,756人(出所)PwC ミレニアル世代の女性:新たな時代の人材(2015年)

ミレニアル世代の人材を獲得するため、多様性・受容性の方針が注目されている

男性に比べて、女性は多様性・受容性の方針をより重視している傾向がある

重要である どちらでもない 重要でない

n=8,756人 n=1,349人

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

5. ダイバーシティ経営を通じた人材獲得 [2/2]

10

ダイバーシティ経営を通じた多様性の受容によって得られた恩恵として、日本企業を含め、多くのグローバル企業が「人材の獲得」や「業績の向上」と回答した。

経営者に対する調査ダイバーシティ経営戦略の有無

64%13%

17%

6%

既に戦略がある

戦略はないが、採用する計画はある

戦略はなく、採用する計画もない

その他

経営者に対する調査(ダイバーシティ経営戦略を有する企業)

多様性の受容によって得られた恩恵は何か?

91% 85% 83%78% 78% 77% 76%

63%56%

86%76%

67% 65%

79%73% 80%

33%

58%

0%

25%

50%

75%

グローバル 日本 n=846社n=1,322社

(注記)回答者:世界各国の主要企業の最高経営責任者(CEO)1,322人、うち日本企業のCEOは162人(出所)PwC 第18回世界CEO意識調査 2015年 境界なき市場 競争への挑戦(2016年)

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①人材獲得において日本企業が置かれている状況

6. 多様な人材の獲得・定着に向けた課題

11

「多様性を唱えてはいるが、本質的な機会平等に繋がっているとは思わない」と考えている若手世代が多く、多様性に対する「疑念」が拡大している傾向が見られる。

2015 71%

16%

13%

2011 54%

26%

20%

ミレニアル世代に対する調査問. 多様性を謳うが、本質的な機会均等に繋がっていると思わない

(注記)回答者:ミレニアル世代(1980年~1995年生まれ)の男性 1,349人、女性8,756人(出所)PwC ミレニアル世代の女性:新たな時代の人材

多様性の取組みが機会均等に繋がっている、と認識されていない

多様性の取組みに対する「疑念」が強まっている

そう思う どちらでもない 思わない n=10,105人

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② 国籍・文化の多様性

別紙資料2

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②国籍・文化の多様性

1. ダイバーシティが業績に与える期待効果

13

多様性を含む企業は、そうでない企業と比べて、業種平均の業績よりも、優れた業績を達成する確率が高い傾向が見られる。

ジェンダーの多様性および文化面の多様性を含む企業は、それぞれ7%と15%ほど高い確率で、業種平均よりもすぐれた業績を達成する傾向が見られる。

47%

54%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

女性比率が低い 女性比率が高い

43%

58%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

文化的多様性が低い 文化的多様性が高い

外国人(文化)文化的多様性と業績

ジェンダー女性比率と業績

業種平均を超える確率(%)

下位25% 上位25% 下位25% 上位25%

業種平均を超える確率(%)

(出所)McKinsey & Company, Diversity Matters, 2015

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②国籍・文化の多様性

2. 文化的なダイバーシティが業務のパフォーマンスに与える影響

14

文化的な多様性を含むチームは、多様性を相互に認識・理解し、適切に管理すれば、単一文化のチームよりもパフォーマンスが高い傾向が見られた。

他方、多様性が十分に理解されず、適切に管理されない場合、反対の結果が見られた。

平均値 高い有効性低い有効性チームの有効性(Effectiveness)

文化的な多様性を含むチーム

単一文化のチーム

多様性が有効性を阻害する状況• 多様性の無視• 民族性をもとにメンバーを選考• 自己民族の中心主義• 文化的支配• 個人の目標を追求• 外部からのフィードバックなし

多様性が有効性を向上する状況• 多様性の認識• 仕事に関連する能力で

メンバーを選考• 相互の尊重• 等しい権限• 上位の目標を追求• 外部からのフィードバックあり

文化の多様性とパフォーマンス

(注記) Carol KovachによるUCLA Anderson School of Managementにおける調査に基づいてNancy J. Adlerが作成(出所) Nancy J. Adler, International Dimensions of Organizational Behavior, 2008

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②国籍・文化の多様性

3. 日本の異文化に対する受容性

15

日本と各国における異文化に対する受容性を見ると、日本は世界的に見て低い水準にとどまっている。

日本と海外の比較:異文化に対する受容性

78 76 73 7066 63 62 59 57 55 55 53

40

0

10

20

30

40

50

60

70

文化の受容性について、以下要素からスコアリング・ 社会の文化多様性 ・ 自国民の反応 ・ 官僚主義の程度・ 移民者の人口 ・ 人種差別 ・ 移民に関する政策・ 宗教に対する耐性 ・ 雇用者の受容性

社会の文化多様性 13位

自国民の反応 7位

官僚主義の程度 11位

移民者の人口 13位

人種差別 4位

移民に関する政策 13位

宗教に対する耐性 13位

雇用者の受容性 13位

日本の評価左記の13か国のうち、日本は「社会の文化的多様性」、「移民者の人口」、「移民に関する政策」、「宗教に対する耐性」、「雇用者の受容性」において、13位(もっともネガティブな評価)と評価されている。

(注記)Institute of Technology and Science のVijesh Jainによる異文化に対する受容性(Comfort with Foreign Cultures)に関する研究に基づく(出所)Vijesh Jain, Multinational Workplaces: War of Culturally Seasoned Minds, 2015

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②国籍・文化の多様性

4. 外国人人材による日本企業に対する評価 [1/2]

16

外国人は、日本企業における働き方や人事制度に多くの不満を抱えている。

外国人人材の不満(Top 10)

外国人人材の不満

1. 仕事の進め方が違う

2. 勤務時間が長い

3. 自分の意見をはっきり言えない

4. 日本人の同僚と給与に差がある

5. 日本人の同僚と待遇に差がある

6. 日本人の同僚と権限や責任に差がある

7. 日本人の同僚より昇進に差がある

8. 休日出勤を要求される

9. 日本人同士で固まる

10. 会議の数や時間が多い n=57人

(注記)「外国人就業者の働きにくい理由」に対する回答(出所)リクルートワークス研究所 日本人就業者と外国人就業者のとのギャップは何か, 2009

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②国籍・文化の多様性

4.外国人人材による日本企業に対する評価 [2/2]

17

日本企業の外国人人材は、「日本人は外国人人材に対して抵抗感を感じている」と思う層が多数を占め、特に「言語力」に抵抗感を感じている、という回答が多かった。

外国人人材からみた日本人

64%

32%

22%

13%11%

7% 6% 5%1% 2%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

よく感じていると思う、または、時々感じていると思う

感じていないと思う

80.3%

19.7%

n=233人 n=187人

日本人は外国人人材に対して抵抗感を感じていると思うか?

日本人が抵抗感を感じていると思うことは何か?

(注記)外国人就業者の抵抗感度合いから見た抵抗感の項目(出所)リクルートワークス研究所 日本人就業者と外国人就業者のとのギャップは何か, 2009

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③ 取締役会の多様性

別紙資料3

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③取締役会の多様性

1. 取締役会におけるダイバーシティの国内外比較 [1/3]

19

日本企業の女性比率は各レベルで海外に比べ低い水準にとどまっている。

特に取締役の女性比率は約2%にとどまり、海外に比べて差が極めて大きい。

2%

17%

22%

17%

0%

10%

20%

30%

40%

26%

40%

36% 36%

0%

10%

20%

30%

40%

8%

30%27%

31%

0%

10%

20%

30%

40%

日本と海外の比較:各レベルにおける女性数

取締役会の女性比率(Board)

日本企業の取締役女性比率は海外に比べて非常に低い(2%)

管理職の女性比率(Manager)

従業員の女性比率(Employee)

(注記)2016年3月時点における過去5年間の平均(出所)Global Quantitative Research, Morgan Stanley Research, 2016

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③取締役会の多様性

1. 取締役会におけるダイバーシティの国内外比較 [2/3]

20

日本企業の取締役会の規模は海外に比べて大きい(中央値は11人)ものの、そのうち女性取締役の人数は少ない。

(注記)2016年3月時点における過去5年間の平均(出所)Global Quantitative Research, Morgan Stanley Research, 2016

日本と海外の比較:取締役会における女性数の比較

欧州 9人

北米 10人

アジア(日本以外) 7人

日本 11人

各国の取締役会規模(取締役会人数の中央値)

取締役会の女性数※

日本企業の取締役の女性比率は海外に比べて低い

1人~ 2人~ 3人~ 4人~ 5人~

日本企業の取締役会の規模は最も大きい

企業の構成比率(%)

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③取締役会の多様性

1. 取締役会におけるダイバーシティの国内外比較 [3/3]

21

日本企業と海外企業の女性取締役比率の分布幅と中央値を見ると、それぞれ海外に比べて低い水準にとどまっている。

(注記)2014年時点の女性取締役比率、国・地域ごとの上位10%と下位10%を除外したレンジ(出所)Global Quantitative Research, Morgan Stanley Research, 2016

日本と海外の比較:女性取締役比率の分布

女性取締役比率の分布

中央値

女性取締役比率の分布(%)

欧州 アジア(日本以外) 北米 日本

日本企業は女性取締役比率の分布が低い水準で収まっている

中央値も10%を超える海外の水準を大きく下回っている

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③取締役会の多様性

2. 取締役会の多様化による経営に対する効果 [1/2]

22

取締役会におけるダイバーシティを実現することにより、企業が得られる主なベネフィットは以下のとおり。

(出所)ACCA(the Association of Chartered Certified Accountants) - “DIVERSIFYING THE BOARD – A STEP TOWARDS BETTER GOVERNANCE The Continued Need for Diversity in Fraud Research

取締役会のダイバーシティがもたらすベネフィット

効果的な意思決定の実現

グループシンク(集団浅慮)の緩和 リスクに対する感度、管理・監視の強化 消費者に対する理解の向上 グローバル化に伴う多様なステークホルダーに対する理解の向上

人材プールの有効活用

社内で登用可能な人材を有効活用による経営人材不足の問題を緩和

企業に対する評価の向上

企業社会的責任の体現によるレピュテーションの向上 投資家による評価の向上、投資の呼び込み

不正の防止 多様化・複雑化する不正の発見・防止の実現

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③取締役会の多様性

2. 取締役会の多様化による経営に対する効果 [2/2]

23

取締役会におけるダイバーシティを実現する上で、企業が直面している主な課題やチャレンジは以下のとおり。

(出所)ACCA(the Association of Chartered Certified Accountants) - “DIVERSIFYING THE BOARD – A STEP TOWARDS BETTER GOVERNANCE IR Magazine

取締役会のダイバーシティを実現するための課題・チャレンジ

多様性に対する理解・関心の欠如

取締役会のダイバーシティがもたらしうるベネフィットが十分に社内社外ステークホルダーに十分に理解されていない、関心を持たれていないこと

潜在的な衝突 既存・マジョリティーの取締役会メンバーと、マイノリティーの取締役会メンバーの間に壁ができる、溶け込めない、潜在的な衝突が発生する可能性があること

トークニズム(Tokenism)

登用される人材自身および社内社外のステークホルダーが、社会や市場、ステークホルダーの関心や要求に対して表面的に応える為だけのトークンに過ぎないと評価されてしまうこと

登用基準・方法 従来型の取締役会メンバーの選定から登用までの基準や方法が変更されない限り、多様な人材の登用が実現しないこと

候補人材の不足 取締役会メンバー候補者となりうる人材がそもそも不足していること、従来型の候補者となりうるタイプの人材に比べて少ないこと

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③取締役会の多様性

3. 取締役会の多様化による企業価値・業績に対する効果 [1/4]

24

取締役会に女性が1名以上いる企業の株価は、そうでない企業(取締役会が男性のみ)の株価と比べて、高いパフォーマンスをあげている。

(注記)Global performance: companies market cap >USD 10 billion(出所)Credit Suisse、The CS Gender 3000: Women in Senior Management, 2014

取締役会に女性が1名以上いる企業の株価は、男性のみで取締役会が構成される企業の株価よりも高いパフォーマンスをあげている

取締役が男性のみ女性取締役が1名以上

2009 2010 2011 2012 2013 20142006 2007 2008

株価の推移:取締役会の構成別(時価総額100億USDの企業)

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③取締役会の多様性

3. 取締役会の多様化による企業価値・業績に対する効果 [2/4]

25

経営陣(Management)における女性比率が高い企業ほど、高いパフォーマンスをあげている。

(注記)Performance of companies tiered by female management participation(出所)Credit Suisse、The CS Gender 3000: Women in Senior Management, 2014

XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX、XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX、XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX、

2009 2010 2011 2012 2013 2014

経営陣に占める女性比率と株価のパフォーマンスが正比例に推移している。

50%以上33%以上、50%未満

25%以上、33%未満全ての企業

経営陣(Management)に占める女性比率

株価の推移:経営陣の女性比率別(時価総額100億USDの企業)

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③取締役会の多様性

3. 取締役会の多様化による企業価値・業績に対する効果 [3/4]

26

女性取締役が多いほど、ROE(株主資本利益率:Return on Equity)が高い傾向が見られる。

(注記)Sector neutral ratios: Return on Equity(出所)Credit Suisse、The CS Gender 3000: Women in Senior Management, 2014

取締役が男性のみ女性取締役が1名以上女性取締役が2名以上

2009 2010 2011 2012 20132005 2006 2007 2008 平均

ROE(株主資本利益率)と取締役会における女性比率

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③取締役会の多様性

3.取締役会の多様化による企業価値・業績に対する効果 [4/4]

27

女性取締役が多いほど、PBR(株価純資産倍率:Price Book-value Ratio)が高い傾向が見られる。

(注記)Sector neutral ratios: Price/book value(出所)Credit Suisse、The CS Gender 3000: Women in Senior Management, 2014

取締役が男性のみ女性取締役が1名以上女性取締役が2名以上

2009 2010 2011 2012 20132005 2006 2007 2008 平均

PBR(株価純資産倍率)と取締役会における女性比率

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④ 主な国際的なガイドライン

別紙資料4

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④主な国際的なガイドライン

1. SASBの取組 [1/3]

29

SASBは投資家(アセットオーナー、アセットマネージャー)に向け、投資先企業とのエンゲージメントにおけるガイドを公開した。ダイバーシティを含む人的資本に関するエンゲージメントの在り方を示している。

(出所)SASB “Engagement Guide for Asset Owners & Asset Managers”

エンゲージメントガイドによる主な記載事項企業と投資家との対話促進SASBが暫定基準を定めた計10産業セクター/計79業種 における企業の持続性に対する“マテリアリティ”が見込まれる領域に対して、投資家が投資先企業に対するエンゲージメントを通じて確認すべき項目をガイドとしてまとめた。

ダイバーシティに関するエンゲージメント事項の提示“ダイバーシティ”がマテリアル(持続可能性に影響する)となる領域に対して、エンゲージメント上のダイバーシティに関する確認項目を示している。

経営陣・従業員レベルで女性やマイノリティーの登用促進のため、投資先企業はどのようなイニシアティブを取っているか?

ジェンダー、人種、文化面の多様性を確保するため、投資先企業はどのような行動を内部で取っているか?

昇進・待遇面における従業員間の差別をなくすため、投資先企業はどのような規約を整備・採用しているか? 等

⇒該当業種、およびエンゲージメント内容は次スライドよりSASBによる暫定基準に則った

投資家によるエンゲージメントを促進

SASB“Engagement Guide for Asset Owners & Asset Managers”

主な記載事項

環境/Environment

社会資本/Social Capital

人的資本/Human Capital

• 人材の受容Employment Inclusion

• 人材の採用、受容、評価Employee Recruitment,Inclusion & Performance 等

リーダーシップ&ガバナンス/Leadership & Governance

その他考慮事項/Contextual Consideration

SASB:投資家に向けたエンゲージメント・ガイド

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④主な国際的なガイドライン

1. SASBの取組 [2/3]

30

“ダイバーシティ“に関するマテリアリティが業種上で確認される領域について、SASBはエンゲージメントを通じた企業の取組を把握することの重要性を示している。

(出所)SASB “Engagement Guide for Asset Owners & Asset Managers”

SASB エンゲージメント・ガイド:ダイバーシティに関するエンゲージメント事項の例(1/2)

金融

●アセットマネジメント&カストディサービス/Asset Management & Custody Activities金融商品の複雑化やテクノロジーの高度化に伴い、関連技能を持った有能な人材獲得に向けた競争が熾烈化する中、人材獲得力を維持するため、人材の多様性の確保が重要となる。

Q. ジェンダー、人種、文化面の多様性を確保するため、投資先企業はどのような行動を内部で取っているか?

●投資銀行&ブローカレッジ/Investment Banking & Brokerage金融商品の複雑化やテクノロジーの高度化に伴い、関連技能を持った有能な人材獲得に向けた競争が熾烈化する中、人材獲得力を維持するため、人材の多様性の確保が重要となる。

Q. ジェンダー、人種、文化面の多様性を確保するため、投資先企業はどのような行動を内部で取っているか?

Q. 昇進・待遇面における従業員間の差別をなくすため、投資先企業はどのような規約を整備・採用しているか?

テクノロジー、およびコミュニケーション

●ハードウェア/Hardware

●インターネット メディア&サービス/Internet Media & Services知的集約化が進み、イノベーションのライフサイクルが短期化する環境において、関連技能を持った人材の需要の高まりに伴い、関連技能を持った有能な人材獲得に向けた競争が熾烈化および定着率が低下する中、とりわけ女性やマイノリティー属性の人材が低い水準にとどまっている。人材不足に対する対策および人材獲得力を維持するため、人材の多様性の確保が重要となる。

Q. ジェンダー、人種、文化面の多様性を確保するため、とりわけ経営層および技術者層に対して、投資先企業はどのような行動を内部で取っているか?

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④主な国際的なガイドライン

1. SASBの取組 [3/3]

31

“ダイバーシティ“に関するマテリアリティが業種上で確認される領域について、SASBはエンゲージメントを通じた企業の取組を把握することの重要性を示している。

(出所)SASB “Engagement Guide for Asset Owners & Asset Managers”

SASB エンゲージメント・ガイド:ダイバーシティに関するエンゲージメント事項の例(2/2)

サービス

●広告・マーケティング/Advertising & Marketing創造性やアイデアが競争力の源泉であり、より質の高いサービスを提供するため、このような特性を持った有能な人材獲得に向けた競争が熾烈化する中、人材獲得力を維持するため、また、多様化するオーディエンスに効率的・効果的にリーチするため、人材の多様性の確保が重要となる。

●プロフェッショナル・サービス/Professional Services人的資源が利益や競争力の源泉であり、経営陣レベルは多様性に乏しい企業が多い中、経営陣の多様性がより有能な人材の獲得のため重要である。また、従業員のエンゲージメント、フェアな待遇や昇進機会等が従業員レベルで実現することが重要である。

Q. 経営陣・従業員レベルで女性やマイノリティーの登用促進のため、投資先企業はどのようなイニシアティブを取っているか?

消費財(II)

●Eコマース/E-COMMERCE高い技能・能力を持った人材が限られる中、企業競争力の維持と市場シェアの拡大のため、そのような人材のリテンションが重要となる。同業界や周辺業界との人材獲得競争が熾烈化する中、多様性を実現することが長期的な株主価値を実現するために重要である。

Q. ジェンダー、人種、文化面の多様性を確保するため、とりわけ経営層および技術者層に対して、投資先企業はどのような行動を内部で取っているか?

●複合種目・特殊小売・流通/Multiline and Specialty Retailers & Distributors消費者とのコムニケーションし、多様かつ変化する嗜好に追いついていくことが重要である。女性やマイノリティーとこれまでマイノリティーとされた属性として女性やマイノリティーが多く、訴訟リスクやレピュテーションリスクを軽減するため、多様な人材に対する公正な処遇が重要である。

Q. 多様性を確保するため、とりわけ経営層に対して、投資先企業はどのような行動を内部で取っているか?

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④主な国際的なガイドライン

2. IIRCの取組

32

IIRCは人的資本等の各資本を用いた持続的な企業価値創造のフレームワークを示している。統合報告を通じて、企業から投資家に対して、非財務資本による価値創造ストーリーを示すフレームワークとして用いられている。

(出所)IIRC 統合報告フレームワーク

非財務資本による価値創造モデル人的資本を含む非財務資本を用いて、企業がどのように持続可能な企業価値を創造していくのか、そのフレームワークを示すモデル(オクトパスモデル)がIIRCより示されている。

近年、統合報告書(Integrated Report)を通じて、人的資本を含む非財務資本による企業価値創造ストーリーを示す際に用いられている。

人的資本の定義人的資本(Human Capital)は以下のように定義されている。------------------------------------------------------------人的資本:人々の能力、経験及びイノベーションへの意欲、例えば、

組織ガバナンス・フレームワーク、リスク管理アプローチ及び倫理的価値への同調と支持

組織の戦略を理解し、開発し、実践する能力

プロセス、商品及びサービスを改善するために必要なロイヤリティ及び意欲であり、先導し、管理し、協調するための能力を含む

IIRCによる企業価値創造モデル(オクトパスモデル)

非財務資本を用いた持続的な企業価値創造ストーリーを示すフレームワーク

IIRC:統合報告フレームワーク 価値創造プロセス

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⑤ 国内外企業の開示事例

別紙資料5

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⑤国内外企業の開示事例

1. 経営の姿勢 [1/2]

34

ケロッグはアニュアルレポートを通じて、投資家に対して、ダイバーシティの取組に対する経営トップ・経営陣のコミットメント、役割、説明責任について情報発信している。

(出所)2014-2015 Kellogg's Diversity and Inclusion Annual Report

経営トップ・経営陣によるコミットメント、役割・説明責任の開示経営者が自らダイバーシティの取組推進について、説明責任を課している。また、部門ごとに策定されるダイバーシティに関する行動計画について、経営者が共にレビューすることになっているほか、CEO自身もこれらの取組により密接に関与していくことを表明している。これにより、現場に経営者の意思が反映・伝達する仕組みになっている。

ケロッグの事例

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⑤国内外企業の開示事例

1. 経営の姿勢 [2/2]

35

プルデンシャルはIRサイトを通じて、ダイバーシティを経営戦略に織込み、ステークホルダーに対して価値を提供するコミットメントを、投資家に対して情報発信している。

(出所)Prudential、Our Commitment to Diversity

経営戦略におけるダイバーシティの位置づけに関する経営陣の考え方多様なニーズを持つクライアント獲得や多様性のある人材獲得において、経営陣がダイバーシティを経営戦略における重要事項であることを位置づけ、その追求に対する経営陣全体のコミットメントを署名とともに、IRサイトを通じて、資本市場に対して情報発信している。

プルデンシャルの事例

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⑤国内外企業の開示事例

2. ロードマップや主要KPIの提示 [1/4]

36

SAPは統合報告書を通じて、“女性の管理職登用”がどのように財務ファクター(売上、利益)や他の非財務ファクターに影響するかについて、情報発信している。

(出所)SAP, Integrated Report 2015

女性登用の効果管理職女性比率(Women in Manage-ment)の向上によって期待される財務・非財務ファクターに対する効果関係を独自のモデルによって示している。

財務ファクターに対する効果

売上の向上(Revenue) 利益の向上(Profit) カスタマーロイヤルティーの向上

(Customer Royalty)

非財務ファクターに対する効果

売上の向上(Revenue) 就職先ランキングの向上

(Employer Ranking) ビジネス・ヘルス・カルチャー指数

(BHCI: Business Health CultureIndex)

SAPの事例

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⑤国内外企業の開示事例

2. ロードマップや主要KPIの提示 [2/4]

37

SAPは管理職の女性登用が、財務・非財務ファクターとどのように相互作用を及ぼし合うか、仮説や研究結果を含めた相互の関係性を投資家に対して示している。

(出所)SAP, Integrated Report 2015

SAPの事例

管理職の女性登用による効果管理職の女性登用 >> BHCIの向上管理職層のジェンダーバランスの改善により、多様性がより尊重される職場環境が実現され、BHCI(ビジネス・ヘルス・カルチャー指数)の向上に繋がる。

管理職の女性登用 >> 就職先ランキングの向上女性登用など多様性が尊重される職場環境を実現することにより、就職先ランキングの指標であるレピュテーション向上に繋がる。

管理職の女性登用 >> 売上の向上管理職の女性比率が高いほど、財務パフォーマンスが高いという研究結果があり、管理職の女性登用の促進が売上の向上に繋が

る。

管理職の女性登用 >> カスタマーロイヤルティーの向上ダイバーシティの取組が直接的に顧客満足度の向上にポジティブな影響をもたらすという研究結果があり、管理職の女性登用の促進がカスタマーロイヤルティーの向上に繋がる。

管理職の女性登用 >> 利益率の向上管理職の女性比率が高いほど、売上高EBIT率等が高いという研究結果があり、管理職の女性登用の促進が利益率の向上に繋がる。

人材育成 >> 管理職の女性登用SAP内部の人材プールを加味すれば、人材育成や内部登用の促進により、管理職の女性登用の促進に繋がる。就職先ランキングの向上 >> 管理職の女性登用就職先ランキングが高いほど、管理職の候補者となりうる女性人材を含め、有能な人材の獲得に繋がる。

BHCIの向上 >> 管理職の女性登用

BHCI(ビジネス・ヘルス・カルチャー指数)の向上により、女性人材が働きやすい職場環境が実現され、より管理職ポジションを志向する女性の増加に繋がる。

管理職の女性登用に資する取組

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⑤国内外企業の開示事例

2. ロードマップや主要KPIの提示 [3/4]

38

中外製薬はダイバーシティマネジメントの取組内容、進捗、更なる取組方針について、ロードマップとして、アニュアルレポート上で投資家はじめ対外的に情報発信している。

(出所)中外製薬、アニュアルレポート2015

中外製薬の事例

ダイバーシティを通じた“生産性の向上”と“企業価値の向上”に向けたロードマップジェンダー(性別)、シニア(世代)、ナショナリティ(国籍)といった属性に関するダイバーシティの推進に向けたロードマップをアニュアルレポート上で示している。各年、属性ごとのテーマを設定し、その取組内容、進捗、更なる取組方針を整理し、投資家に対して発信している。

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⑤国内外企業の開示事例

2. ロードマップや主要KPIの提示 [4/4]

39

ROCHEは投資家に向けたエクイティ・ストーリー(Equity Story)において、企業のサステナビリティ実現に向けた指標として、キーポジションの女性比率を開示している。

(出所)ROCHE, Equity Story

ROCHEの事例

エクイティ・ストーリーとダイバーシティの紐づけ資本市場から資金調達した資金を、ROCHEがどのような戦略において、どのように活用していくのかについて、投資家に対して説明している。

ROCHEはサステナビリティの文脈でダイバーシティを絡めている。

サステナビリティに関する指標としての情報発信ROCHEのエクイティ・ストーリー上で、企業のサステナビリティの追求、および実現に向けた主要指標の1つとして、「主要リーダーシップポジションの女性比率(Women in key leadershippositions)」の数値を示している。

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⑤国内外企業の開示事例

3. ステークホルダーとの対話の量・質 [1/2]

40

オムロンは投資家はじめ、ステークホルダーとの対話を重視する考え方を示し、各ステークホルダーとの対話の取組内容と実績を公開している。

(出所)オムロン統合レポート2016

オムロンの事例

対話の取組状況の開示

オムロンは統合レポートにおいて、株主・投資家と対話の実績について開示を行っている。対話の取組状況に関する情報として、以下が開示されている。

●株主総会 ・・・来場株主数、議決権行使率

●機関投資家との対話・・・対話実施述べ社数

●個人投資家との対話・・・イベント実施数、参加者数

対話姿勢の表明

オムロンにとっての多様なステークホルダーに対して、対話を通じた相互理解を深めていく姿勢が表明されている。統合レポート上は、ステークホルダーとして、株主、投資家、顧客、仕入先、地域社会、および従業員との対話状況が開示されている、

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⑤国内外企業の開示事例

3. ステークホルダーとの対話の量・質 [2/2]

41

ユニリーバは人権レポートを通じて、ジェンダーバランスがとれた組織体制の実現を通じて、長期戦略を遂行していくことを資本市場に対して情報発信している。

(出所)Unilever Human Rights Report 2015

ユニリーバの事例

多様性を反映した組織体制の追求

家庭における消費・出費の意思決定に関わり、自社製品の購買層の多くを占める女性を登用することの経営戦略上の重要性を示している。

このジェンダーバランスが取れた組織体制の実現が、長期の成長戦略(Our long-term growth strategy)を実施する上で重要(Crucial、Critical)であることが資本市場に対して発信されている。

多様な市場へのアクセス

女性が活躍できるよう、ジェンダーバランスが取れた組織体制(Agender-balanced organization)を実現し、組織全体としての創造力やイノベーション創出力に繋げ、さらに幅広い消費者セグメントに対するアクセスすることを目指している。

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⑥ その他、国内外の動向

別紙資料6

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⑥その他、国内外の動向

1. 国連責任投資原則(PRI)の動向 [1/2]

43

PRIの署名数は欧米の投資家や企業を中心に年々増加を続けている。2016年4月末時点で署名数は1,500に達しており、今後も署名数も増加を続ける見込み。

(出所)UNPRI, Signatories to the Principles for Responsible Investment

100

263 362

531

719 800

1,070 1,188

1,260 1,380

1,500

0

500

1,000

1,500# 国・地域 署名数 比率

1.米国 254 社 17%2.英国 215 社 15%3.フランス 142 社 10%4.豪州 118 社 8%5.オランダ 88 社 6%6.カナダ 75 社 5%7.スイス 66 社 4%8.ドイツ 59 社 4%9.ブラジル 57 社 4%

10.南アフリカ 53 社 4%11.スウェーデン 50 社 3%12.日本 40 社 3%

PRI署名数の国・地域別の構成

2016年2月末時点

PRI署名数の動向

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⑥その他、国内外の動向

1. 国連責任投資原則(PRI)の動向 [2/2]

44

2016年9月、PRIは株式投資、セルサイド・リサーチおよび運用委託先選定におけるESGの組込み手法について、実践的な手法を示したガイド(A Practical Guide To ESG Integration For Equity Investing)を公表した。

(出所)UN-PRI, A Practical Guide To ESG Integration For Equity Investing

株式投資におけるESGの組込みPRIはESGを考慮した投資を行う機関投資家による投資分析手法を調査し、各投資手法(ファンダメンタルズ運用、クオンツ運用、スマート・ベータ運用、パッシブ運用))におけるESGの組込み手法について、ケーススタディーを用いつつ、実践手法をまとめている。

ESGのマテリアリティが公正価値に与える影響を評価

労働基準が売上や割引率に与える影響を評価

ファンダメンタルズ評価におけるダイバーシティの考慮

ESG格付けとリターンやボラティリティを紐付ける 等

セルサイドや運用委託先の選定における活用セルサイド・リサーチにおける業績予測およびバリュエーションについても、ESGを組込む実践方法と具体的事例が同ガイドにおいてまとめられている。

また、外部の運用委託先を選定におけるESGに関するインタビュー事項、選定基準、モニタンリング手法等についても、同様に実践方法と具体的事例をまとめている。 A Practical Guide To ESG Integration For Equity Investing

クオンツ運用に関する取組事例の紹介

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⑥その他、国内外の動向

2. 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の動向

45

PRIの署名投資先企業における ESG(環境・社会・ガバナンス)を適切に考慮することは、

「被保険者のために中長期的な投資リターンの拡大を図る」ための基礎となる「企業価値の向上や持続的成長」に資するという考え方を明確にするため、2015年9月、国連責任投資原則(PRI)に署名したことを発表

合わせて、国内株式や外国株式の運用受託機関に対しては PRI の署名状況について報告を求め、署名していない場合には、その理由を説明するよう求める姿勢を表明

PRIの署名

ESG指数作成に向けた公募2016年7月、ESG 要素を考慮した国内株式のパッシブ運用の実現可能性を探

るため、ESG の効果により、中長期的なリスク低減や超過収益に繋がることが期待される指数の公募を開始、現在選定中

ESG指数の作成

企業・アセットオーナーフォーラムの設立オムロン株式会社、エーザイ株式会社および日産自動車株式会社を含む複数の

企業から「アセットオーナーであるGPIFと企業との間の継続的且つ建設的な意見交換の場」設立が提案され、被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図ることを目的として、インベストメントチェーンを一層活性化させるべく、「企業・アセットオーナーフォーラム」を設立

対話の促進に向けたフォーラムの設立

(出所)年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

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⑦ 検討会の概要

別紙資料7

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⑦検討会の概要

1. 実施概要

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実施概要 競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会

実施要領

第1回検討会 平成28年8月19日(金) 13:00~15:00 参加者:計13人

第2回検討会 平成28年9月16日(金) 10:00~12:00 参加者:計12人

第3回検討会 平成28年10月21日(金)14:00~16:00 参加者:計11人

第4回検討会 平成28年11月14日(月)14:00~16:00 参加者:計13人

第5回検討会 平成28年12月13日(火)14:00~16:00 参加者:計12人

第6回検討会 平成29年1月31日(火) 13:00~15:00 参加者:計11人

第7回検討会 平成29年3月10日(金) 14:00~16:00 参加者:計12人

主な議題

検討会を通じて、企業がとるべきダイバーシティの考え方・取組について、ベストプラクティス企業における特性を抽出し、ダイバーシティ経営の在り方について検討を行った。

併せて、ダイバーシティに関する情報提供及びステークホルダーからの評価の在り方についても検討を行った。

研究会の名称競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会Study Group for Ideal Approaches to Diversity Management (Diversity 2.0) as a Competitive Strategy

参加者 機関投資家(アセットオーナー、アセットマネージャー)、企業、有識者、公的機関等の幅広いステークホルダーより座長・委員としてご参加を頂いた(参加者名簿は次頁を参照)。

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⑦検討会の概要

2. 参加者名簿

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参加者名簿 (50音順、敬称略)

参加者名簿

座長 北川哲雄 青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科 教授

委員 井口譲二 ニッセイアセットマネジメント株式会社 株式運用部担当部長、チーフ・コーポレート・ガバナンスオフィサー

魚谷雅彦 株式会社資生堂 代表取締役執行役員社長

大久保幸夫 株式会社リクルートホールディングス リクルートワークス研究所 所長

クリスティーナ・ 一橋大学大学院商学研究科 教授アメージャン

小林千恵 日産自動車株式会社 ダイバーシティ ディベロップメントオフィス室長

迫田雷蔵 株式会社日立製作所 人財統括本部人事勤労本部長兼ダイバーシティ推進センタ長

杉原章郎 楽天株式会社 常務執行役員 Group Managing Executive Officer

高山与志子 ジェイ・ユーラス・アイアール株式会社 マネージング・ディレクター、取締役

戸矢博明 リム・アドバイザーズ マネージング・ディレクター

中野円佳 ジャーナリスト/株式会社チェンジウェーブ ダイバーシティ&インクルージョンデザイナー

松村はるみ 株式会社 LIXIL グループ 執行役専務 人事・総務担当

松本晃 カルビー株式会社 代表取締役会長兼 CEO

八木洋介 株式会社 LIXIL グループ執行役副社長 人事・総務担当(平成28年11月21日迄)

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⑦検討会の概要

3. 検討会における議題

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議題

議題

第1回 これまでのダイバーシティをどう評価するか 真に必要なダイバーシティ(ダイバーシティ2.0)とは何か 何故、ダイバーシティ2.0に進めていないのか

第2回、第3回 ダイバーシティ2.0を実現するためには、具体的に何を変える必要があるのか 上記の変革を実現する上で、直面する課題は何か、どうすればそれを克服できるのか ダイバーシティ1.0、または何ら取組みの必要性を感じていない企業に対し、ダイバーシティ2.0の必

要性を、どのように訴求できるか

第4回 外国人登用

• 「経営戦略との紐付け」について、具体的にどのような取組を行っていくべきか。• 「全社的な環境・ルール整備」/「管理職の行動・意識改革」/「従業員の行動・意識改

革」について、具体的にどのような取組を行っていくべきか 海外投資家との意見交換

第5回 外国人登用:第4回と同様の議題 外部コミュニケーション(労働市場):

• 多様な人材を惹きつけるために有効なコンテンツができているか• コンテンツを労働市場に伝えるマーケティング・コミュニケーション戦略は何か• 採用戦略と採用後の人材活用の一貫性がとれているか

外部コミュニケーション(資本市場):• 投資家の意思決定において、ダイバーシティはどのように位置づけられているか• 投資家はダイバーシティについてどのような情報を評価するか• そういった情報を届けるために、企業は情報発信・対話はどのように工夫すべきか

第6回、第7回 報告書案、ガイダンス案について 今後の実践に向けた取組について