平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2....

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経済産業省 御中 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野におけるアジア諸国との二国間 協力に関する調査) 報告書 2017 3

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経済産業省 御中

平成28年度化学物質安全対策

(化学物質管理分野におけるアジア諸国との二国間

協力に関する調査)

報告書

2017 年 3 月

Page 2: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN
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目 次

1. 調査概要 .............................................................................................................................. 1

1.1 目的 ............................................................................................................................ 1

1.2 調査内容 ..................................................................................................................... 1

1.2.1 化学物質管理制度に関する調査 ........................................................................... 1

1.2.2 ASEAN各国に対する企業活動の課題に関する調査 ............................................. 1

1.2.3 二国間協力文書に基づく政策対話等への対応 ..................................................... 2

1.2.4 ASEAN各国にGHS混合物分類判定システムを提供するに当たっての課題に関す

る調査 .................................................................................................................. 2

1.2.5 報告書の作成 ....................................................................................................... 2

2. 化学物質管理制度に関する調査 .......................................................................................... 3

2.1 ASEAN各国の化学物質管理制度の最新情報 .............................................................. 3

2.1.1 タイ ...................................................................................................................... 3

2.1.2 ベトナム ............................................................................................................ 13

2.1.3 インドネシア ..................................................................................................... 17

2.1.4 マレーシア ......................................................................................................... 23

2.1.5 ミャンマー ......................................................................................................... 29

2.1.6 フィリピン ......................................................................................................... 32

2.2 タイ政府の説明会からの情報収集 ............................................................................ 35

2.2.1 タイ政府の説明会概要 ....................................................................................... 35

2.2.2 官民ワークショップ ........................................................................................... 36

2.2.3 新規化学物質管理制度に関する意見交換会概要(参加報告) .......................... 37

2.2.4 既存制度の変更のポイント ................................................................................ 37

3. ASEAN各国に対する企業活動の課題に関する調査 ......................................................... 38

3.1 対象国のマクロ環境 ................................................................................................. 38

3.1.1 対象国の主要マクロ動向 ................................................................................... 38

3.1.2 我が国企業にとっての各国の事業環境の比較分析 ............................................ 52

3.2 我が国化学系企業の ASEAN展開の実態と課題の全体像 ........................................ 65

3.2.1 我が国企業における ASEAN展開の実態 ........................................................... 65

3.2.2 我が国化学系企業の ASEANおける事業展開の実態(タイを事例として) ..... 72

3.3 化学物質の輸出入や製造に係る手続きの詳細及びその現場での実態や課題及びその

関連課題に関する調査(タイを事例として) ......................................................... 77

3.3.1 我が国化学系企業のタイにおける化学物質の輸出入や製造に係る手続きの詳細

.......................................................................................................................... 77

3.3.2 我が国化学系企業における、タイ現地での課題とニーズ ................................. 80

3.4 我が国化学系企業における ASEAN展開に向けた課題と本事業の関係性 ............... 82

3.4.1 我が国化学系企業における ASEAN展開に向けた課題の全体像 ....................... 82

3.4.2 本事業の実施による、我が国化学系企業の ASEAN展開に与える効果 ............ 83

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4. 二国間協力文書に基づく政策対話等への対応................................................................... 84

4.1 タイとの二国間協力文書に基づく対応 ..................................................................... 84

4.1.1 全体まとめ ......................................................................................................... 84

4.1.2 ワークショップ&政府間対話の開催 .................................................................. 85

4.1.3 政策対話の開催 .................................................................................................. 89

4.2 ベトナムとの二国間協力文書に基づく対応 ............................................................. 90

4.2.1 政策対話の開催 .................................................................................................. 90

4.3 マレーシアとの協力の対応 ...................................................................................... 91

4.3.1 ワークショップの開催 ....................................................................................... 91

4.4 インドネシアとの協力の対応 ................................................................................... 93

4.4.1 ワークショップの開催 ....................................................................................... 93

5. ASEAN 各国に GHS混合物分類判定システムを提供するに当たっての課題に関する調査 ........................................................................................................................................ 95

5.1 ASEAN各国の GHS導入状況................................................................................... 95

5.1.1 ASEAN主要国における GHS導入状況 .............................................................. 95

5.2 混合物分類システムの展開可能性の検討 ................................................................. 98

5.2.1 ASEAN主要国に対する混合物分類システムの提供の意義 ................................ 98

5.2.2 ASEAN主要国に対する展開可能性 .................................................................... 99

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1

1. 調査概要

1.1 目的

2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」においては、「科学的

なリスク評価手法及びリスク管理手法を用いて、化学物質による人及び環境への悪影響を 2020年

までに最小化する」という目標が国際的に合意された(WSSD2020年目標)。

この合意事項を達成するために、各国は様々な取組を進めており、アジア地域においても、近

年、登録審査規制、表示規制、最終製品含有物質に関する規制等の化学物質規制が急速に導

入されつつある。

これらの取組がアジア各国で個別に進められ、異なる制度の化学物質管理がアジア各国で独

自に導入されると、アジア域内にサプライチェーンを構築している我が国企業にとって円滑な貿易

の支障となるおそれがある。また、WSSD2020年目標においては、「科学的なリスク評価手法及びリ

スク管理手法を用いた」化学物質管理を慫慂しているが、アジアで新たに導入される化学物質管

理が科学的なリスクに基づかないものとなるようなことになれば、アジア域内に進出している日系企

業にも不必要な負担を強いることになりかねない。そのため、アジア各国において導入されつつあ

る化学物質管理制度が WSSD2020年目標に根ざしたリスクベースの適正なものとなることを確保

するとともに、日本を含むアジア域内における制度の親和性を高めることが急務となっている。

本事業においては、アジア域内における化学物質管理制度の導入(施行と実際の運用)状況を

把握するとともに、化学物質管理に関する二国間協力文書を締結しているタイとベトナムの他、イ

ンドネシア、マレーシア等を対象として、化学物質管理に関する制度構築状況について調査すると

ともに、これらの国が、可能な範囲で日本の制度との親和性が高まることに繋がるよう考慮しつつ、

リスクベースの化学物質評価・管理基盤を早期に構築するために必要な支援を行うことを目的とし

た。また、今後の ASEAN 各国に対する支援を効果的・効率的に行うための調査を行った。

1.2 調査内容

1.2.1 化学物質管理制度に関する調査

ASEANを中心とするアジア諸国おける化学物質管理制度の最新の状況について、現地での説

明会への参加や文献、関係機関のウェブページ等による調査、現地の業界団体や企業へのイン

タビュー等を行った。

特に二国間協力文書を締結しているタイついては、タイ政府が開催する説明会等に参加し、タ

イの化学物質管理制度構築状況やその運用状況について実態の把握を行った。また、これらの結

果をふまえ、日系企業への影響について調査を行った。

1.2.2 ASEAN 各国に対する企業活動の課題に関する調査

我が国の企業がASEAN各国で企業活動を行う際の課題について調査を行った。具体的には、

ASEAN 各国のマクロ動向について概況を整理し、我が国企業の ASEAN 進出における環境分析

を通じて現状課題を概観した。その上で、化学物質の輸出入や製造に係る手続きの詳細及びそ

の現場での実態や課題について調査を行い、これらの結果を踏まえ、本事業の実施による、我が

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国化学系企業の ASEAN 展開に与える効果について整理した。

1.2.3 二国間協力文書に基づく政策対話等への対応

タイ、ベトナム各国との二国間協力文書に基づく政策対話(各国 1 回ずつ)及びワークショップ

(タイのみ計 4 回)等への対応を行った。

また、タイ、ベトナム以外の ASEAN 各国との二国間協力の強化に向けて、インドネシア、マレー

シアとの対話(各国 1 回ずつ)への対応を行った。

1.2.4 ASEAN 各国に GHS 混合物分類判定システムを提供するに当たっての課題に関する調査

平成 27 年度化学物質安全対策(化学物質管理分野におけるアジア諸国との二国間協力に関

する調査)において英語版の改修を行った同システムについて、今後、ASEAN 各国に提供あるい

は提供後のフォロー等を検討するために、各国の GHS の導入状況について整理し、今後の同シ

ステムの展開の可能性について検討を行った。

1.2.5 報告書の作成

上記調査結果を報告書としてとりまとめた。

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2. 化学物質管理制度に関する調査

2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報

本節では、ASEAN 各国における化学物質管理に関する主要法規制の概要を整理する。

2.1.1 タイ

(1) 主要化学物質関連法制度の概要、改正の動向等

タイにおける、化学物質管理に関わる法律は、主に以下の 2 つである。

表 2-1 タイの主要化学物質関連法制度

法規制名 概要

有害物質法

Hazardous Substance Control Act

発表年 1992年制定、2008年改正

主要

管轄部署

MOI(Ministry of Industry、工業省)の下部組織である

DIW(Department of Industrial Works、工場局)

その他:農業・協同組合省、厚生省、エネルギー省、科学技

術省、天然資源環境省、運輸省、国防省、内務省(第 5 条)

概要 生産、輸入、輸出、保管すべての活動において、有害物質の

管理を行う

工場法

Factory Act

発表年 1969年制定、1992年改正

主要

管轄部署

MOI(Ministry of Industry、工業省)の下部組織である

DIW((Department of Industrial Works、工場局)

概要

労働者の安全の確保と公害の防止であり、概ね 50馬力以上

の動力源の機械などを使用する工場はこの法律の規制対象

となる

出所)三菱総合研究所作成

以下、上記の 2 法について示す。

1) 有害物質法 Hazardous Substance Control Act

タイでは、複数の関連法規制で化学物質の取り扱いについて規定されているが、有害性を有す

るものについては有害物質法で取り扱いが規定されている。

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【概要】

表 2-2 有害物質法の基礎情報

化学物質の定

有害物質法には、化学物質の具体的な定義はない。

(「単一物質(Substance)」が「安定性を保持する目的の添加物や使用された工

程から発生する不純物を含む、自然状態あるいは全ての加工工程から得られ

た、化学元素及び化合物を意味する、ただし、分離してもその物質の安定性

や組成が変化しない溶媒は含まない。」と定義されている。)

有害物質の定

爆発物、可燃物、酸化剤及び過酸化物、毒性物質、感染性物質、放射性物

質、変異原性物質、腐食性物質、刺激性物質、及び化学物質であるかそれ以

外であるかを問わず、人、動物、植物、財産に危険を及ぼす他の物質

所管官庁 工業省、農業・協同組合省、保健省、エネルギー省、科学技術省、天

然資源環境省、運輸省、国防省、内務省(法第 5 条)

有害物質リスト

リスト 1:農業局(リスト 1.1 規制物質名、リスト 1.2 規制物質グループ名)

リスト 2:水産局(リスト 2.1 規制物質名、リスト 2.2 規制物質グループ名、リスト

2.3 規制製品名)

リスト 3:畜産振興局(リスト 3.1 規制物質名、リスト 3.2 規制物質グループ名)

リスト 4:食品医薬品局(リスト 4.1 規制物質名、リスト 4.2 規制物質グループ

名、リスト 4.3 規制製品名)

リスト 5:工場局(リスト 5.1 規制物質名、リスト 5.2 化学廃棄物、5.3 使用済み電

気・電子機器、リスト 5.4 その他物質グループ、リスト 5.5 化学兵器、リスト 5.6 そ

の他の有害性物質リストに該当しない、かつ 10 特性1に該当する物質)

リスト 6:エネルギー事業局(リスト 6.1 規制物質名)

(2017年 3 月時点)

出所)JETOC「東南アジア化学品規制の概要(第 65回講習会資料)」(2016年 3月)より三菱総合研究所

作成

1 10特性は下記である:

① 爆発性物質(Explosive)

② 可燃性物質(Flammable substance)

③ 酸化性物質または過酸化物(Oxidizing agent, or Peroxide)

④ 毒性物質 (Toxic substance)

⑤ 変異原性物質 (Mutagen)

⑥ 腐食性物質 (Corrosive)

⑦ 刺激性物質 (Irritant)

⑧ 発がん性物質 (Carcinogen)

⑨ 生殖毒性物質 (Toxic to reproductive organ)

⑩ 環境有害性物質 (Environmentally hazardous substance)

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有害物質法の主要内容について、下記のように示す。

表 2-3 有害物質法の概要

第 1 条~第 5 条 法名称、施行日、有害物質等の定義、責任大臣等の職務・権限等

第 1 章 有害物質委員会(第 6 条~第 14条):委員構成・任期、権限及び義務等

第 2 章

有害物質の管理(第 15条~第 56条):有害物質の分類、第 2 種・第 3 種、

第 4 種有害物質の規定、登録及び登録書の有効期間、ラベル表示、担当

官官の権限等

第 3 章 民事上の義務・責任(第 57条~第 69条):有害物質の製造・輸入・輸送・

保有・販売/納入等に係る事業者等の責務等

第 4 章 罰則(第 70条~第 89条)

附則 (第 90条~第 93条)

出所)JETOC「東南アジア化学品規制の概要(第 65回講習会資料)」(2016年 3月)より三菱総合研究所

作成

【法令改正の動向】

「工業省告示:工場局が所管する有害性物質リスト 5.6 の有害物質に係る製造または輸入につ

いての事実の届出 (仏暦 2558年(2015))」2では、混合物と純物質の定義が明確化された。

混合物は、相互に反応を起こさない二種類以上の純物質からなる混合物または溶媒である。

純物質は、自然界に存在しまたは製造工程で生成される単体または化合物である。また純物

質の安定性を維持させるために必要な添加物または製造工程で生成する不純物を含む。ただ

し、純物質の安定性または純物質の構造変化に影響することなく純物質と分離することができる

溶媒は含まない。

工業省告示:工場局が所管する有害性物質リスト 5.6の有害物質に係る製造または輸入についての事実の届出

(仏暦 2558年(2015)より抜粋)

現在、工場局は既存化学物質インベントリの作成作業を進めている。リスト 5.6 の届出有害物質

は、2015年 2 月の工業省告示により輸入後に届出をすることが義務づけられており、2016年末ま

でに届出された物質については、その届出内容が完全であれば、第一次既存化学物質インベント

リに収載される。3なお、第一次受付は 2016年末で終了したが、2017年 3 月時点で、継続的に受

付中であることが確認された4。

受付終了後、これに収載されていない化学物質は「新規化学物質」として取り扱われることとなっ

2 「工業省告示:工場局が所管する有害性物質リスト 5.6の有 害物質に係る製造または輸入についての事

実の届出 (仏暦 2558年(2015))」http://goope.akamaized.net/21561/160506121905-572c0d29b4787.pdf

(HS-TECH ENGINEERING Co.,Ltd) 3 2017年 3月日本ケミカルデータベース(株)ソリューションセミナー「アジアの法規制最新情報と対応

ソリューションのご紹介」資料 4 https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

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ている

また、工場局は、既存化学物質インベントリ

念物質(

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準

物質の

(CMR

解性で高い生体蓄積性

約規制

上記に加え、

い物質(新規物質)について、有害物質リスト

高懸念物質(

判定基準の記載は見当らない

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

また、

SVHC

能性がある。また、リスク評価結果は公開される可能性もある

出所)

合研究所

5 https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf6 20157 2015

ている5。

また、工場局は、既存化学物質インベントリ

念物質(SVHC)を指定

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準

の対象となる。①生産

CMR)物質(カテゴリ

解性で高い生体蓄積性

規制対象となる物質

上記に加え、工場局は、既存化学物質インベントリの作成後、

い物質(新規物質)について、有害物質リスト

高懸念物質(SVHC

判定基準の記載は見当らない

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

また、新規物質の中で、

SVHC とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

能性がある。また、リスク評価結果は公開される可能性もある

出所)2015年 8 月

合研究所作成

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

2015年 8 月 DIW

2015年 8 月 DIW

また、工場局は、既存化学物質インベントリ

)を指定する。SVHC

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準

対象となる。①生産量または輸入量

)物質(カテゴリ 1A または

解性で高い生体蓄積性(vPvB

対象となる物質6。

工場局は、既存化学物質インベントリの作成後、

い物質(新規物質)について、有害物質リスト

SVHC)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

判定基準の記載は見当らない

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

新規物質の中で、有害物質リスト

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

能性がある。また、リスク評価結果は公開される可能性もある

月 DIW 公聴会資料(

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

公聴会資料(

公聴会資料(

また、工場局は、既存化学物質インベントリ

SVHC の対象

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準

または輸入量

または 1B)、③難分解性

vPvB)物質、⑤以上と同等の懸念及び有害性を

工場局は、既存化学物質インベントリの作成後、

い物質(新規物質)について、有害物質リスト

)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

判定基準の記載は見当らない)。SVHC に指定された物質については、既存物質と同様に、関連

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

有害物質リスト

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

能性がある。また、リスク評価結果は公開される可能性もある

図 2-1 新規物質の管理スキーム

公聴会資料(http://php.diw.go.th/haz/wp

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

公聴会資料(http://php.diw.go.th/haz/wp

公聴会資料(http://php.diw.go.th/haz/wp

6

また、工場局は、既存化学物質インベントリから優先評価物質を選び、

対象となった物質

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準

または輸入量が 10 トンを超える

難分解性、生体蓄積性

)物質、⑤以上と同等の懸念及び有害性を

工場局は、既存化学物質インベントリの作成後、

い物質(新規物質)について、有害物質リスト 5.6 表に該当するものは、その登録情報に基づき、

)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

に指定された物質については、既存物質と同様に、関連

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

有害物質リスト 5.6 表に該当しない物質及び該当して登録されても

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

能性がある。また、リスク評価結果は公開される可能性もある

新規物質の管理スキーム

http://php.diw.go.th/haz/wp

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

http://php.diw.go.th/haz/wp-content/uploads/2015/03/chem.pdf

http://php.diw.go.th/haz/wp-content/uploads/

優先評価物質を選び、

物質に対しては、

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準

トンを超える、②発がん性、

生体蓄積性、毒性(

)物質、⑤以上と同等の懸念及び有害性を

工場局は、既存化学物質インベントリの作成後、同インベントリに収載されていな

表に該当するものは、その登録情報に基づき、

)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

に指定された物質については、既存物質と同様に、関連

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

表に該当しない物質及び該当して登録されても

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

能性がある。また、リスク評価結果は公開される可能性もある7。

新規物質の管理スキーム

http://php.diw.go.th/haz/wp-content/uploads/2015/03/chem.pdf

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

content/uploads/2015/03/chem.pdf

content/uploads/

優先評価物質を選び、さらに、

は、CRA(化学リ

に従いリスク評価を行い、リスク評価書を提出する。なお、以下の基準を満たす物質は、優先評価

②発がん性、変異原性

毒性(PBT)物質、④

)物質、⑤以上と同等の懸念及び有害性を有する

同インベントリに収載されていな

表に該当するものは、その登録情報に基づき、

)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

に指定された物質については、既存物質と同様に、関連

事業者に健康・環境面でのリスク評価報告書を提出させるとしている。

表に該当しない物質及び該当して登録されても

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

content/uploads/2015/03/chem.pdf

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

content/uploads/2015/03/chem.pdf

content/uploads/2015/03/chem.pdf

さらに、その中から高懸

(化学リスク評価)規則

物質は、優先評価

変異原性、生殖毒性

)物質、④極めて難分

有する物質、⑥国際条

同インベントリに収載されていな

表に該当するものは、その登録情報に基づき、

)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

に指定された物質については、既存物質と同様に、関連

表に該当しない物質及び該当して登録されても

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

content/uploads/2015/03/chem.pdf)より三菱総

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/updatedhazardsubstancelist5point6.pdf

content/uploads/2015/03/chem.pdf)

2015/03/chem.pdf)

その中から高懸

スク評価)規則

物質は、優先評価

生殖毒性

極めて難分

物質、⑥国際条

同インベントリに収載されていな

表に該当するものは、その登録情報に基づき、

)に該当するか否かを検討し、該当する場合は指定することとしている(ただし、

に指定された物質については、既存物質と同様に、関連

表に該当しない物質及び該当して登録されても

とされなかった物質については、事業者は簡易なリスク評価書を提出する義務が生じる可

三菱総

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その他、

メント情報の提供を要求

2) 工場法

【概要】

DIW

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

給先等を届け出ることとされている。

タイにおいて、工場は以下の

・第

・第

・第

第 3 群工場の内

告書の提出が義務付けられている

出所)

作成

8 2017

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf9Ministerial Regulation No.2 B.E. 2535 (1992)

その他、2017年

メント情報の提供を要求

工場法 Factory Act

【概要】

DIW が所管する

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

給先等を届け出ることとされている。

タイにおいて、工場は以下の

・第 1 群:許可を必要としない工場

・第 2 群:操業開始前に関係当局に届け出が必要な工場

・第 3 群:操業開始前に関係当局の許可が必要な工場

第 3 群工場のライセンスの有効期限は

群工場の内 12

告書の提出が義務付けられている

出所)JETRO資料(工場法英訳:

2017年 1 月 12日

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf

Ministerial Regulation No.2 B.E. 2535 (1992)

年 1月、DIW

メント情報の提供を要求する動きも見られた

Factory Act

する、工場における

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

給先等を届け出ることとされている。

タイにおいて、工場は以下の

群:許可を必要としない工場

群:操業開始前に関係当局に届け出が必要な工場

群:操業開始前に関係当局の許可が必要な工場

群工場のライセンスの有効期限は

12業種に該当する工場は、

告書の提出が義務付けられている

資料(工場法英訳:

日 DIW 通達

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf

Ministerial Regulation No.2 B.E. 2535 (1992)

は企業に対して、一部の民生用

する動きも見られた

における生産、輸入、輸出、保管すべての活動に

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

給先等を届け出ることとされている。

タイにおいて、工場は以下の 3 区分に分類されている。

群:許可を必要としない工場

群:操業開始前に関係当局に届け出が必要な工場

群:操業開始前に関係当局の許可が必要な工場

群工場のライセンスの有効期限は 5

業種に該当する工場は、

告書の提出が義務付けられている。

2-2 工場法の

資料(工場法英訳:https://www.jetro.go.jp/thailand/e_survey/factoryact.html

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf

Ministerial Regulation No.2 B.E. 2535 (1992) Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992)

7

は企業に対して、一部の民生用

する動きも見られた8。

生産、輸入、輸出、保管すべての活動に

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

区分に分類されている。

群:操業開始前に関係当局に届け出が必要な工場

群:操業開始前に関係当局の許可が必要な工場

5 年間である。省令第

業種に該当する工場は、5 年に 1 度、

工場法の登録・報告義務の体系整理

https://www.jetro.go.jp/thailand/e_survey/factoryact.html

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf

Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992)

は企業に対して、一部の民生用及び産業用化学物質のリスクマネジ

生産、輸入、輸出、保管すべての活動に

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

区分に分類されている。

群:操業開始前に関係当局に届け出が必要な工場

群:操業開始前に関係当局の許可が必要な工場

年間である。省令第 2 号

度、DIW 或いは管轄機関へのリスク分析報

登録・報告義務の体系整理

https://www.jetro.go.jp/thailand/e_survey/factoryact.html

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf

Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992)

産業用化学物質のリスクマネジ

生産、輸入、輸出、保管すべての活動に関する法制度で

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

号9では、安全生産を行うため、

或いは管轄機関へのリスク分析報

登録・報告義務の体系整理

https://www.jetro.go.jp/thailand/e_survey/factoryact.html)より

https://www.jetro.go.jp/ext_images/thailand/e_activity/pdf/moiNotiListHazNo3BE2559.pdf (

Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992)

産業用化学物質のリスクマネジ

関する法制度である。

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

では、安全生産を行うため、

或いは管轄機関へのリスク分析報

)より三菱総合研究所

(英訳)

Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992)

産業用化学物質のリスクマネジ

ある。

工場法では、操業開始時等に、原材料とその年間使用量、仕入先、製品とその年間生産量、供

では、安全生産を行うため、

或いは管轄機関へのリスク分析報

三菱総合研究所

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8

表 2-4 工場法第 8 条(6)における第 3 群工場のうち 12業種

� 動植物、動物性脂肪からの油抽出業(抽出工程で溶媒を用いる場合のみ)

� 化学物質、化学製品、有害物質の製造業

� 肥料、農業の製造業(硝酸アンモニウム、塩化カリウムを使わない有機肥料及び化学

肥料の製造を除く

� 合成樹脂、エラストマー、プラスチック、合成繊維の製造業(ガラス繊維を除く)

� 塗料、つや出し、ラッカー、コーキング、フィリング剤の製造(水性塗料を除く)

� マッチ、火薬、花火、カーボンブラックの製造業

� 石油精製

� 石油、石炭を用いた製品の製造業(アスファルトコンクリートを除く)

� ガスの製造、供給業(天然ガスを除く)

� ガス充填業

� アンモニアを冷媒として用いる冷蔵保管業

� 銃、弾薬、火薬、兵器、その他の凶器の製造、修理、改変、加工(付属品含む)

前述のリスク分析報告書10の対象事業者は、上記 12業種に該当する工場である。分析範囲は、

工場内及び周辺 500m 四方において、従業員や環境、地域住民、資産に及ぼす、爆発・火災・漏

洩のリスク(危険度と発生の可能性)である。

リスク分析報告書は、下記の内容により構成される。

・ 工場事業の概要 Description of factory business

・工場内及び周辺 500m 四方にある住宅区、学校、病院、寺、教育機関、交通ルート等を

地図に明記

・工場内及び周辺 500m四方において、従業員や環境、地域住民、資産に及ぼす、爆発・

火災・漏洩のリスクの危険度と発生可能性を報告

・1:100 の比率あるいは適切な比率で工場内の配置を示す。工場内の機械設備の設置、

原材料、燃料、化学品或いは有害物質、商品、社員寮、食堂の位置を報告。その他、工

場での火災や化学品漏洩を防止できる安全設備の提示

・フローチャートにより、生産プロセスを明記。その他、生産における温度、圧力、原材料及

び有害物質の毎年の平均使用量を報告

・工場の労働者数及び労働時間を報告

・その他(例:事故の件数、事故の調査報告、安全アセスメントレポート等)

・ 危険有害性の要約とリスクアセスメントの詳細 Detail of hazard identification and risk

assessment

・「危険有害性の要約」とは、工場操業における全てのプロセス(化学品と有害物質の受取

10【大臣告示】

・The Notification of MOI No. 3 B.E. 2542 : Safety working measure

・Notification of Ministry of Industry No. 4 :Safety Working Measure B.E. 2552 (2009)

【DIW regulation】

・The Regulation of DIW B.E. 2543 : Criteria for hazard identification, risk assessment, and establishment of risk

management planより抜粋

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9

り、貯蔵、移動、使用、搬送、商品生産、機械使用等)で発生可能性があるハザードを示

す。

・「リスクアセスメント」とは、火災、爆発及び化学品・有害物質の漏洩を引き起こす要因及

び状況の分析を示す。

・ リスクマネジメント計画の詳細 Detail of risk management plan

・工場で導入するリスク管理プログラム。(例:適切な設備の導入により操業中のハザード

発生確率を低減する等)

・ リスクとハザードのリストアップ List of risk and hazard

・ まとめ Summary

・調査、分析等により、ハイレベルリスク、対応可能なリスク、対応不可能なリスクを洗い出

すとともに、リスク回避と管理措置を提出

また、リスク分析報告書の作成は、3 人以上で作成することが決められている。

表 2-5工場法第 8 条(6)報告書におけるリスクアセスメント判断基準

発生可能性により、4つのレベルに分けられる。

1. 発生可能性が非常に低く、10年以上でも発生しない。

2. 発生可能性が低く、5~10年に1回発生する。

3. 発生可能性は普通で、1~5年間に1回発生する。

4. 発生可能性が高く、年2回以上発生する。

人間への影響度合いにより、4つのレベルに分けられる。

1. 低い(応急処置程度で済む小さな傷病)

2. 中程度(治療が必要な傷病)

3. 高い(重傷)

4. 極端に高い(障害が出る、死亡)

周辺住宅地域への影響度合いにより、4つのレベルに分けられる。

1. 低い(影響なし、或いは工場周辺の住宅地域に小さな影響を与える)

2. 中程度(工場周辺の住宅地域に影響を与えたが、まだ挽回できる)

3. 高い(工場周辺の住宅地域に与えた影響の回復に長期間かかる)

4. 極端に高い(工場周辺の広い住宅地域に多大な影響を与えるか、行政の手助けが必要)

環境への影響により、4つのレベルに分けられる。

1. 低い(環境に微小な影響を与えたが、コントロール可能な状態)

2. 中程度(環境に与えた影響は、短期間で回復可能)

3. 高い(環境に大きな影響を与え、回復に長期間必要)

4. 極端に高い(環境に非常に大きな影響を与え、回復に長期間かかるだけではなく、リソース確

保も必要)

資産への影響により、4つのレベルに分けられる

1. 低い(資産への影響なし、或いは微小な影響を与える)

2. 中程度(資産に中レベルの影響を与えるが、生産に支障なし)

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10

3. 高い(資産に大きな影響を与え、一部の操業が止まる)

4. 極端に高い(資産が多大な被害を受け、操業が全部停止)

発生可能性レベルと影響レベルの積の大きさにより、4つのレベルに分けられる

1. 小リスク

2. 許容可能なリスク

3. 高リスクでリスク低減の対応が必要

4. 許容不可能なリスクであり、操業停止し、直ちにリスク低減のための是正措置が必要

また、省令 311では、汚染物質管理について以下のように報告が義務付けられている。

表 2-6工場法第 8 条(7)による報告義務

省令3 対象事業者 報告・対応義務 下位規定

2項 ボイラーあるいは加圧された液

体あるいはガスを扱う工場

検査報告書及び安全試験報

告書

工業省官報に規定さ

れたフォーム、プロセ

スに従う (1 項)

3項 製造業、ボイラー修理業、加圧

液体かガスを熱伝導媒体とし

て使う装置を使う業者

生産、安全性に関する検査 同上

4項 官報において工業省が規定す

る環境への悪影響を及ぼす事

業者

汚染制御システムの効率性、

汚染物質の分析、 環境品質

検査

同上

官報(指定影響)

5項 放射性物質を扱う工場 放射性物質の種類、量、線

源、利用方法、保管プロセス

工業省官報に規定さ

れたフォーム、プロセ

スに従う(1 項)

6項 有害物質管理法に基づく有害

物質を製造、保管、利用する

工場

取り扱う有害物質のMSDS ―

対象事業所は、環境影響分析報告書の作成と合わせて、環境保護、排出削減、環境影響モニ

タリングを行う必要がある。

【法令改正の動向】

工場法の下位法として、工場敷地内の土壌及び地下水の汚染管理に関する対策省令

(Ministerial Regulation Soil and Groundwater Contamination Control in Factory Area B.E. 2559

(201612))が発表された(2016年 4 月 29日公布、同年 10月 26日施行)。同令によって指定された

12 業種(繊維、紙パルプ、化学、塗料、火薬・インク、石油精製、非鉄精錬、照明器具・絶縁材・電

11 Ministerial Regulation No.3 B.E. 2535 (1992) Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992) 12 http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2559/A/038/89.PDF

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11

池、塗装・めっき、廃棄物関係 3業種)13にわたるメーカーは、3年ごとに土壌・地下水調査を実施し、

その結果を報告することが義務付けられた。

2016 年 11 月に、前述の法令の補足として、土壌及び地下水の汚染管理の結果報告書作成と

汚染軽減対策提案報告関連の工業省告示が発表された。汚染基準、届出書式、検査結果報告

書式、汚染軽減対策の提案書様式等が公表された。

3) その他の法令

【概要】

有害物質を規制する法令としては、その他に、環境保全推進法、武器規制法、医薬品法、食品

法、肥料法、物品輸出入法、工業団地公社法などがある。

環境保全推進法は、天然資源環境省が所管する環境管理を目的とした規制法で、工場の大気、

水域、土壌等からの排出が規制されるものである。タイでは「第 4 次化学物質管理国家戦略計画

(2012 年~2021 年)」において化学物質管理の新たな包括的枠組みの創設を提言している。同計

画は、工業省をはじめとする関係省庁及び産業界から構成される化学物質管理国家戦略会議に

よって策定されたものであり、効果的な化学物質管理に基づく安全な環境・社会を 2021 年までに

実現することを目標として掲げている。

現在、同計画に基づき、既存の規制法を含めた化学物質管理制度の見直しが検討されていると

ころである。同計画では、以下の 3 点に焦点をあて、長期的な取り組みを掲げている。

・化学物質管理の完全な統合システムに向け、化学物質データベース、手法の開発

・化学物質管理に関するあらゆる部門の能力や役割の開発

・化学物質の危険リスクの低減

【法令改正の動向】

2016年 5 月、タイ工業団地公社(Industrial Estate Authority of Thailand, IEAT)は、新しい制度

を発表した。本制度によると、対象事業者は、製造工程の安全管理及び安全監査を実施する義務

がある。

対象事業者は、以下のいずれかの製造工程を伴う、IEAT が所管する工業団地内の事業者と

なっている。

① 任意の時期に、本規則末尾のリストに定める量以上の保有量がある危険性の高い有害化学

物質(137物質)に関する工程。

② 任意の時期に 4545kg又は 1万ポンド以上の保有量がある可燃性ガス又は可燃性液体に関

する工程。

本規則は、2021年に施行される予定であるが、一部の工業団地(例えば、マープタープット工業

団地、パーデーン工業団地など)における、2018年に実行される予定である。

「タイ工業団地公社委員会規則:仏暦 2559年(2016年)工業団地内における事業運営の基準、方法、条

件について(第 4号)」14より抜粋

13 https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/08/0d972f1764526173.html 14 原典:Regulation of the Council of Industrial Estate Authority of Thailand:Guideline and conditions for Business

Operation in Industrial Estate No. 4, B.E. 2559(2016) http://ieat.go.th/handbook/Program_IEAT/pages/en/Year/2559.html

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12

(2) リスク評価手法の導入状況

タイの化学物質管理政策は、ハザードベースからリスクベースへと移行しつつある。有害物質法

を通じ、適合した政策の導入が進んでいる。

例えば、前述の通り、2015年 8 月に行われた DIW 公聴会資料では、「既存化学物質インベント

リを作成後、SVHC を指定し、関係する事業者にリスク評価報告書を提出させることを想定している

SVHC とされた物質については、リスク評価結果に基づき、有害物質の種類を規制当局により検

討される予定である」と記載されていた。

(3) 国内向けデータベース・物質インベントリ構築状況等

工場局は、2016 年末までに届け出られた情報を元に第一次既存化学物質インベントリを作成

する予定(前述の通り、2017年以降も届け出の受付は行われている)で、2016年8月には、予備既

存化学物質インベントリ(Preliminary of Thailand National Chemical Inventory)が公開され、物質

名や CAS 番号で物質を検索することができるようになった。第一次既存化学物質インベントリは

2017年に作成される予定である。なお、タイの既存化学物質インベントリ検索システムは 2016年 8

月の公開以来、アクセスするとエラーメッセージが出る状態が続いていたが、2016 年末に、検索シ

ステムを新サーバーに移転し、アクセスアドレスを変更することで解決された。

また、インベントリ作成にあたり、多くの事業者が不完全なデータを提供したため、タイ政府側の

確認作業の遅延が発生しているとの声もある。そうした中、タイ政府は、2016年 11月に下記のとお

り、CBI 申請に関するいくつかの要件を指定した。

① CBI に当たる成分データの送付は、製造者又は該当製品の成分に関する責任者として製造

者から委任されたものが行うこと。なお、製品名が SDS 及び事業者が有害物質管理事務局

に提出済みの相談書に記された製品名と一致すること。また CAS Number 及び物質名を特

定して、構成が 100%になるように成分を届け出ること。CAS Number を持たない物質の場合

は、構造式及び物質名を表示すること。

② 製造業者が DIW に成分データを提供する際に、DIW が受付番号及び受付日を確認するた

めに、企業に対して、2 つの方法の何れの一つを取ってもらう。ア)輸入業者が提出した相談

書の最初のページのみのファイルを添付する。イ)相談する会社名並びに有害物質管理事

務局が発行した受付番号及び受付日を届ける。

③ 製造業者ではなく、輸入業者から CBI データを提供する場合、例え輸入業者がすでに CBI

プロセスをオンラインで申請し、DIW に相談を提出したとしても、CBI 審査に適用しない。

JETOC資料より抜粋15

15 http://php.diw.go.th/haz/wp-content/uploads/2016/11/CBI.pdf

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13

2.1.2 ベトナム

(1) 主要化学物質関連法制度の概要、改正の動向等

ベトナムにおける化学物質管理に関わる法律は、主に化学品法と環境保護法である。

表 2-7 ベトナムの主要化学物質関連法制度

法規制名 概要

化学品法

Law on Chemicals

発表年 2007年制定

主要

管轄部署

商工省(Ministry of Industry and Trade, MOIT)の下部組織

である化学品庁(以下、VINACHEMIA )。

なお、同法においては、VINACHEMIA は工業向けの化学

物質を所管。その他、医療省及び農業・農村開発省がそれ

ぞれ家庭用・医療用、農業関係の化学物質を所管。

概要 危険化学品の安全管理及び事故防止対策の強化のための

法律

環境保護法

Law on Environmental Protection

発表年 1993年制定、2003年、2014年改正

主要

管轄部署

天然資源環境省(Ministry of Natural Resource and

Environment)の下部組織である天然資源環境局

(Department of Natural Resource and Environment)

概要 各分野の環境汚染対策に係る理念、環境保全及び廃棄物

管理、気候変動対応等に関する規定を定める法律

1) 化学品法 Chemical Law (法律 No. 06/2007/QH12)

【概要】

2007 年、スウェーデン政府の協力の下、化学品法が公表された。同法は、商工省(Ministry of

Industry and Trade, 以下、MOIT)の下部組織である化学品庁(VINACHEMIA )が所管しており、

化学品の生産・経営の許可、製造輸入の申告、新規化学品の審査、事故対応など多岐にわたっ

て規定している。

また、ベトナムでは、GHS 分類の導入が進められており、化学品法の下位規則である「分類表

示について規定する商工省令 No.04/2012/TT-BTC」によって、単一物質は 2014 年 3 月 30 日、

混合物は 2016年 3 月 30日から、GHSに基づく分類及び SDSとラベル表示の作成が義務づけら

れた。

表 2-8 化学品法の基礎情報

化学物質の定

化学品(hóa chất)とは、天然もしくは人造の材料から人為的に採取または製

造された、元素、化合物または混合物を意味する(法第4条)。

また、物質(chất)とは、加工工程から発生する不純物や物理的・化学的性質

を安定させる目的の添加物を含む、元素及び化合物を意味する、ただし、分

離してもそのものの性質が変化しない溶媒は含まない(法第4条)。

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14

なお、放射性物質及び放射性廃棄物に関係する活動は化学品法の対象外

である(法第3 条)。

化学品の定義16

化学品のうち、以下の性質を持つものは危険化学品(hóa chất nguyhiểm)と称

される(法第4条):

危険化学品は、①物理的危害、②健康への危害、③環境への危害に分類さ

れる。(GHSの分類原則に従う以下の特性を1以上持つ化学品群):

① 16 分類

② 急性毒性、皮膚腐食性、皮膚刺激性、重篤な眼損傷性、眼刺激性、呼

吸器感作性、皮膚性感作性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒

性、授乳を介した影響、特定標的臓器毒性(単回ばく露)、特定標臓器

毒性(反復ばく露)、呼吸毒性

③ 水生環境に対する急性毒性、水生環境に対する慢性毒性

毒性化学品:

・上記危険性のうち、健康及び環境への危害のうち、1以上を有する危険化

学品

新規化学品:

・国家化学品リスト及び政府認可の国際的化学品リストに未収載の化学品

規制物質リスト 主要規制物質リストは、以下である17:

・別表Ⅰ:「条件付き生産・経営対象化学品リスト」 1055物質(CAS番号ベ

ース)

・政令付属書Ⅰ:「有害化学品リスト」130物質(CAS番号ベース)

・政令付属書Ⅱ:「販売制限化学品リスト」208物質(CAS番号ベース)

・政令付属書Ⅲ:「禁止化学品リスト」30物質(CAS番号ベース)

・政令付属書Ⅳ:「化学品事故防止・対応計画」を作成し、安全距離を確保

しなければならない危険化学品リスト」269物質(CAS番

号ベース)

・政令付属書Ⅴ:「申告しなければならない化学品リスト」130物質(CAS番号

ベース)

・政令付属書Ⅵ:「毒性化学品売買管理票を作成しなければならない毒性

化学品リスト」352物質(CAS番号ベース)

・政令付属書Ⅶ:「化学品事故防止・対応措置を作成しなければならない化

学品リスト」1484物質(CAS番号ベース)

第Ⅸ章 化学品取扱に関する国家管理責任(第 62条~第 68条):国家・工商部管理責

任等

第Ⅹ章 施行規定(第 69条~第 71条)

16 JETOC「東南アジア化学品規制の概要(第 65回講習会資料)」(2016年 3月)より三菱総合研究所作成 17 ASEAN-Japan Chemical Safety Database:http://www.ajcsd.org/chrip_search/html/AjcsdTop.html

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15

【法令改正の動向】

化学物質管理については、具体的なドラフトも公表され、現行の下位法の改正が進められてい

る。

2) 環境保護法

【概要】

環境保護法(2014年改正)( No. 55/2014/QH13)18では、化学物質管理に関連して以下の規定が

ある。なお、化学物質や毒性に関しての特段の定義はない。

毒性、残留性の高い化学物質、農薬、動物用医薬品が、環境中に拡散し、蓄積されると環境と

人間の健康に悪影響を及ぼすことから、法律の規定に従ってその登録と物品管理、監視、情報管

理、評価、リスク管理及び処理が行われなければならない。詳細は、天然資源環境大臣の主導の

下、商工大臣と農業農村開発大臣が協力して規定する。(第 78条)

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

3) その他

【概要】

その他、製造や使用面からの化学物質管理は、労働安全衛生法19(法 No. 84/2015/QH13、2015

年 6 月成立)、改正植物防護・防疫法(法 41/2013/QH13、2015 年 1 月施行)、食品衛生安全法

(添加物リストを規定)などに基づき行われている。

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

(2) リスク評価手法の導入状況

ベトナムでは、2015年 4 月~2018年 4 月にかけて、JICA プロジェクトとして VINACHEMIA を

カウンターパート機関とした『化学物質管理強化プロジェクト』が実施されている。同プロジェクトは、

化学物質のリスク評価を取り入れた工業化学物質管理制度の導入を目標としたものである20。具体

的な導入時期は不明であるが、将来的には、ベトナムにおいてもリスク評価手法の導入に向けた

検討がされると考えられる。

18 JETROによる仮訳:https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/vn/business/pdf/VN_20140623.pdf 19 JETROによる仮訳:https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/vn/business/pdf/84_2015_QH13.pdf 20 JICA ナレッジサイト(http://gwweb.jica.go.jp/KM/KM_Frame.nsf/NaviIndex?OpenNavigator)におけるプロ

ジェクト基本情報を参照した。

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16

(3) 国内向けデータベース・物質インベントリ構築状況等

ベトナムの化学品法における物質リストは以下のとおりである。

� 国家化学品リスト:2016年 9 月に一次ドラフト版公開

� 国際的化学品リスト(ベトナム政府により認められたリスト。現時点では存在しない)

� 規制物質リスト:政令 108/2008/ND-CP(政令 26/2011/ND-CP)の下に政令付属書Ⅰ~Ⅶのリ

ス ト が 規 定 さ れ て い る 。 ( 前 述 の 規 制 物 質 リ ス ト を ご 参 照 ) 。 そ の 他 に 工 商 部 部 令

(07/2013/TT-BCTで付属書 1 を規定)

2017年 3 月 13 日に、化学品法における国家化学物質インベントリの二次ドラフト版が公開され

た21。

同インベントリの整備に当たって、VINACHEMIA では 2015年 9 月~12月にかけて企業による

化学物質の使用実態を把握するため、使用している物質情報の届出を産業界に依頼した。それら

の届出情報を 2016年 9 月に国家化学品リストのドラフトとして公開した。このドラフトには、ベトナム

の既存化学物質 3,023種とその CAS 番号が収載されていたが、同ドラフトに収載されていない化

学品に対しても、2016 年 10 月 30 日を締切として、パブリックコメントによる追加募集を実施した。

合わせて、VINACHEMIA による企業へのヒアリングも行い、情報収集が行われ、得られた情報を

一次ドラフト版に反映させたものが前述の二次ドラフト版である。

21 http://vcerc.com/lay-y-kien-lan-2-cho-du-thao-dmhcqg/

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17

2.1.3 インドネシア

(1) 主要化学物質関連法制度の概要、改正の動向等

インドネシアにおいて化学物質管理のみを対象とした法はなく、環境林業省、工業省、商業省、

保健省、財務省等、複数の省がそれぞれの執行権限に基づき、化学品の規制を実施しており、複

雑な体系となっている。

このうち、環境林業省が所管する環境管理法(法 2009 年第 32 号)には危険及び有毒な物質

に係る規定も定められており、詳細はこの下位法にあたる危険及び有毒な物質の管理に関する政

令(政令 2001年第 74号)に規定されている。

現在、インドネシア政府は、包括的管理を行うための化学物質管理法の制定の検討を進めてい

るようであるが、2017年 3 月現在、承認に至っていない。

表 2-9 インドネシアの主要化学物質関連法制度

法規制名 概要

環境保護管理法

(Environmental Protection and Management Act)

発表年 1982年制定、1997年、2009年改正

主要

管轄部署

環境林業省(Ministry of Environment and Forestry)

概要 環境保護・管理のための基本法。事業活動に対する環境規

制、環境情報に関する国民の権利等を規定する法律。

1) 危険及び有毒な物質の管理に関する政令(政府法令 2001 年第 74 号)

【概要】

本政令は、環境管理法第 58 条に基づき、危険及び有毒な物質(B3、環境林業省所管)の輸出

入、生産、輸送、流通、保管、使用及び廃棄に関する管理を規定した包括的な法令である。有害

物質による環境や人の健康及び生命への影響やリスクの軽減と防止を目的としている。B3 の最少

化(minimization)、統合管理及び持続可能な開発原理がターゲットである22。

関連法規として、「環境保護及び管理に関するインドネシア共和国 2009年法律第 32号(以下、

法律 32/2009とする)」がある。同法は環境保護・管理のための基本法であり、1982年に制定され、

1997年と 2009年に改正された。事業活動に対する環境規制、環境情報に関する国民の権利等を

規定しており、B2(工業会社における危険及び有毒な物質の安全に関する大臣決定が対象とする

危険物質)、B3 廃棄物の管理についても言及している。

表 2-10 危険及び有毒な物質の管理に関する政令の基礎情報

化学物質の定

化学物質の定義は規定されていない。

本政令が対象とする危険及び有毒な物質(以下、B3)とは『性質、濃度、数量

により直接的・間接的に生活環境を汚染・破壊し、ヒトの健康・生存やその他全

22 「インドネシアにおける化学/有毒物質管理」http://chemical-net.env.go.jp/pdf/20140220_Seminar2_jpn.pdf

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18

ての生物を危険にさらす可能性のある物質』と定義されている(第 1 条)。

対象有害性 本政令が対象とする有害性は、爆発性、酸化性、可燃性(3 区分)、毒性23(3

区分)、危険性、腐食性、刺激性、環境有害性、発がん性、催奇形性及び変

異原性であり、それぞれの判定基準は不明確な点も多いが逐条解説24に示さ

れている。

除外物質 放射性物質、爆発物、鉱物・石油・ガス生産とそれらの加工品、食品・飲料・食

品添加物、家庭用医療用品・化粧品、医薬品、麻薬・向精神薬と前駆物質(常

習性のある物質を含む)、化学兵器・生物兵器は本政令の対象外とされる(第

3 条)。

所管官庁 環境林業省

規制物質リスト B3 物質(使用禁止物質リスト(付属書II表1)、使用制限物質リスト(付属書II

表2)、使用可能物質リスト(付属書I))

【法令改正の動向】

インドネシア法律第 32/2009号をベースに、本政令は 2014年に改正された。その際、化学物質

の分類が GHS分類の準拠へと変更された。

2) 危険及び有害な物質のシンボル及びラベル付けの方法に関する R.I 生活環境担当生活環境

担当国務大臣規則(環境大臣規則 2008 年第 3 号)

【概要】

危険及び有害な物質(B3)のシンボルとラベル付与の方法を定めた規則であり、これに

基づき、政府法令 74/2001の第 15条(2)の規制が運用される。

表 2-11 危険及び有害な物質のシンボル及びラベル付けの方法

に関する大臣規則の基礎情報

化学物質の定

化学物質の定義は規定されていない。本規則が対象とする危険及び有毒な

物質(以下、B3)とは『性質、濃度、数量により直接的・間接的に生活環境を汚

染・破壊し、ヒトの 健康・生存やその他全ての生物を危険にさらす可能性のあ

る物質』と定義されている(第 1 条)。

対象有害性 本規則が対象とする有害性には爆発性、酸化性、可燃性(3 区分)、毒性(3 区

分)、危険性、腐食性、刺激性、環境有害性、発がん性、催奇形性及び変異

原性に加え、高圧ガスなどその他の有害性が含まれる(第 2 条)。

除外物質 なし

所管官庁 環境林業省

規制物質リスト なし

23 半数致死量の程度により区分が分けられているため、全て急性毒性である。 24 Penjelasan Atas Peraturan Pemerintah Republik Indonesia Nomor 74 Tahun 2001 Tentang Pengelolaan Bahan Berbahaya Dan Beracun

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【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

3) 工業会社における危険及び有毒な物質の安全に関する工業大臣決定(工業大臣決定 1985

年第 148 号)

【概要】

B3を扱う工業会社に安全指針を作成することを義務つける大臣決定である。

表 2-12 工業会社における危険及び有毒な物質の安全に関する大臣決定の基礎情報

化学物質の定

化学物質の定義は規定されていない。本決定が対象とする危険な物質(以下、

B2)とは『物理化学的、毒性学的な性質に基づき、労働者、設備及び環境に対

して危険な単体または混合物』と定義されている(第 1 条)。

対象有害性 本規則が対象とする物質は、有毒性物質、爆発物、可燃性物質、酸化性・還元

性物質、爆発性・可燃性物質、高圧ガス、腐食性・刺激性物質、放射性物質、工

業大臣が定める B2 とされる(第 1 条)。

除外物質 なし

所管官庁 工業省

主な規制内容 工業会社が B2 を使用した結果生じる望ましくない事態が発生した場合における

工業会社の義務等を規定している。

規制物質リスト 【附属書:危険及び有毒な物質リスト】

対象となる物質には本附属書に収載される 90 物質(群)が含まれる。また、90 物

質とその危険性も記載されている。

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

4) 危険な物質の工業用の製造及び使用の監督に関する 2006 年インドネシア共和国工業大臣規

則第 24 号

【概要】

表 2-13 危険な物質の工業用の製造及び使用の監督に関する大臣規則の基礎情報

化学物質の定

化学物質の定義は規定されていない。本規則が対象とする危険な物質(以

下、B2)とは『単体であっても混合物であっても、直接的・間接的に健康と生活

環境に危害を及ぼす可能性のある物質』としている(第 1 条)。

対象有害性 本規則が対象とする有害性は、毒性、発がん性、催奇形性、変異原性、腐食

性及び刺激性とされる(第 1 条)。

除外物質 なし

所管官庁 工業省

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規制物質リスト 本規則の第 2 条に対象物質が示されている。対象物質はホルマリン、メタニ

ルイエローなど計 6 物質である。

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

5) 化学物質の分類及び表示に関する世界調和システムに関する 2009 年インドネシア共和国工

業大臣規則第 87 号及びそれを改正する 2013 年工業大臣規則第 23 号

【概要】

GHSに基づく分類、表示、SDS作成を行い、GHS登録を義務づける大臣規則である。旧

大臣規則(2009年第 87号大臣規則)は、UN GHSパープル・ブック第 2 版を参照したが、

新大臣規則(2013年第 23号大臣規則)は UN GHSパープル・ブック第 4版参照したもので

ある。

表 2-14 化学物質の分類及び表示に関する世界調和システム

に関する大臣規則の基礎情報

化学物質の定

化学物質とは、元素、単一化合物、固体、液体またはガス状の混合物等の物

質である(第 1 条第 8 項)。また、混合物とは互いに反応しない 2 以上の化合

物から構成される混合物、合金または溶液である(第 1 条第 10項)。

対象有害性 第 3 条に物理化学的有害性(16 種)、ヒト健康有害性(10 種)、環境有害性(3

種)が規定されている。

除外物質 医薬品、食品、化粧品の添加剤及び食品の残留農薬等となる単体または混

合物は例外とされる。

所管官庁 工業省

規制物質リスト なし(ただし GHS分類による全ての有害物質が対象範囲である)

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

6) その他の法令

【概要】

「危険な物質の調達、流通及び監視に関する R.I.商業大臣規則第 44/M-DAG/PER/9/2009

号」、「商品へのインドネシア語でのラベル付けの義務に関する R.I.商業大臣規則第

73/M-DAG/PER/9/2015号」、「作業場における危険な化学物質の管理に関する 1999年イン

ドネシア共和国労働大臣決定第 187 号」、「健康にとって危険な物質の安全に関する 1996

年保健大臣規則第 472号」、「危険な物質の調達、流通及び監督に関する 2009年インドネ

シア共和国商業大臣規則第 44号 12及びその一部を改正する 2011 年商業大臣規則第 23号」

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21

等がある。

【法令改正の動向】

工業省が中心となり化学品法の制定に係る検討を 2008年より進めている。化学品法の制定は、

ライフサイクルを考慮した化学物質の行政管理に繋がると期待されている。例えば、製造、使用、

在庫管理を工業省が、輸送を運輸省が、物流・貿易を商業省が、排出、廃棄を環境林業省が担当

する物である。

経済産業省及びインドネシア工業省との間で行われた二国間対話の際に、工業省より法案につ

いて以下の概要説明があった。なお、2017年 3 月現在、本法案は承認に至っていない。

表 2-15 化学品法案の概要

法の目的 ①コミュニケーション、②化学品の価値最大化、③リスクの低減、④産業界にお

けるグリーンケミストリーの推進

構成 第 1 章 定義

第 2 章 化学品管理

第 3 章 価値付与

第 4 章 化学品安全

第 5 章 調査と開発

第 6 章 行政

第 7 章 査察

第 8 章 罰則

第 9 章 附則

(2) リスク評価手法の導入状況

インドネシアの産業界は、リスクベースの化学物質管理を積極的に進めている。インドネシアに

おけるリスク評価は GPS(Global Product Strategy)の一部として事業者の自主的な取組として実施さ

れている25。

2013 年に、日本の(一社)日本化学工業協会の取組も参考として、インドネシア国内の企業約

10社から構成される「GPS Working Group」が設立され、2016年 10月現在、インドネシア版「ICCA

GPS Risk Assessment」及びインドネシア版「Verification Guidance」のドラフト作成を行っている。

(3) 国内向けデータベース・物質インベントリ構築状況等

20167年 3 月時点において、インドネシアに既存化学物質インベントリは存在しない。

また、データベースに関しては、環境林業省は 2001年政令 74号の登録及び通知制度を通じて

収集した化学物質名、輸入量、用途等の情報のデータベース化を検討している26。また、各省の化

25 インドネシア工業協会(FIKI)http://www.responsiblecare-indonesia.or.id/index.php?page=news&id=76 26 化学物質国際対応ネットワーク「東南アジアにおける化学物質管理の最新動向に関するセミナー(2015

年 2月 20日)講演 2」

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22

学物質データベースを統合する動きもある27。

また、工業省によれば、「工業に関する法律 2014年第 3 号」に定められている国家工業情報シ

ステム(SIINas:http://siinas.kemenperin.go.id)の開発に GHS のオンライン登録が結び付けられて

おり、2015年からの GHS登録の義務化に伴い、企業から化学物質の名称や分類結果が届出られ

るようになるとの事であった。

なお、2016年 8月の工業大臣規則第 67号に従い、工業省の技術見解書、推薦状、証明書、登

録証がすべてオンラインでの発行が可能となった28。こうした動きを勘案すると、今後、化学物質管

理にかかるその他の手続きや届出等のオンライン化が進む可能性もある。

27 「インドネシアにおける有害物質の管理 2015年」

http://chemical-net.env.go.jp/pdf/20150220_Seminar2_jpn.pdf 28 「インドネシア経済法令アップデート」http://www.indonesialink.net/indomalco/archives/keizai/201609/

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23

2.1.4 マレーシア

(1) 主要化学物質関連法制度の概要、改正の動向等

マレーシアには化学物質管理を広く規定する法は存在しないが、人的資源省所管により制定さ

れた「労働安全衛生法(1994年)」の下位法に当たる通称 CLASS規則が 2013年に 10月に公布さ

れ、これに基づき GHS への対応が行われている。その後、ICOP CHC(The Industry Code of

Practice on Chemical Classification and Hazard Communication)が 2014年 4 月に公表され、2015

年 4 月 17 日から GHSに基づく分類、表示、SDS作成と提供及び取扱い物質の年次報告が義務

化された。

また、天然資源環境省とデンマーク国際開発庁は、環境有害性物質(以下、EHS)に関して、環

境協力プログラムを推進し、その結果として 2008年に EHS戦略・行動計画が発表された。環境有

害性物質に関しては、環境質法の下で環境有害性物質届出・登録制度(Environmentally

Hazardous Substances Notification and Registration Scheme、EHSNR)がボランタリーに進められて

おり 2017年 3 月 27日現在の登録数は 1365企業(国内)、19企業(海外)、基本届出 1921件、詳

細届出 1181件である29。

表 2-16 マレーシアの主要化学物質関連法制度

法規制名 概要

労働安全衛生法

(Occupational

Safety and Health

Act)

発表年 1994年制定、2013年に CLASS規則を公表

主要

管轄部署

人的資源省(Ministry of Human Resources)の下部組織であ

る労働安全衛生局(Department of Occupational Safety and

Health)

概要 労働者の間の労働安全衛生の認識を促進し、及び奨励する

こと並びに効果的な安全衛生対策を持つ組織を創造するた

めの法律

環境品質法

(Environmental

Quality Act)

発表年 1974年制定、2012年改正

主要

管轄部署

天然資源環境省(Ministry of Natural Resources and the

Environment)の下部組織である環境局(Department of

Environment、以下 DOE)

概要 環境に関する基本的な規定を定める法律。個別の課題毎の

具体的・詳細な規定は政令等で行う。

2008年より、環境有害性物質届出・登録制度(EHSNR)がボ

ランタリーで運用開始

29 https://www.e-ehs.doe.gov.my/app/webroot/portal/statistics/

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24

1) 労働安全衛生(有害性化学品の分類表示及び安全性データシート)規則(CLASS30規則)

【概要】

CLASS 規則は、作業場所における有害性のある化学品の供給を管理するための法令で、

国連の世界調和システム(GHS)に基づき物質と混合物の分類、表示、SDS 作成と提供及

び年次報告を義務づけたものである。

表 2-17 CLASS規則の基礎情報

化学物質の定

義 物質とは天然物か製造工程より得られたかを問わず元素及びその化合物であ

り、安定性を保つために必要なあらゆる添加物及び使用される工程から生じる

あらゆる不純物を含むもの。ただし、物質の安定性に影響を及ぼさず、または

その組成を変えずに分離することのできるあらゆる溶剤を除く。また、互いに反

応しない2 以上の物質から構成される混合物または溶液であり合金を含む。

(第3条31)

対象有害性 ICOP第2 部「化学品の分類」において物理化学的有害性(16 種)、ヒト健康

有害性(13種)、環境有害性(3種)が規定されている。

除外物質32 [他の法規で管理される物]

・放射性物質(原子力エネルギー認可法)

・指定廃棄物(環境質規則(指定廃棄物))

・医薬品・化粧品(医薬化粧品規則)

[研究開発用化学品]

・科学的研究開発や試用目的の化学物質、成型品

[製造物]

・流体又は粒子以外の製造物

[特定化学品]

・農薬(農薬法)

・あらゆる貯蔵領域に貯蔵された輸出前の通過中の化学品。ただし、SDSの作

成と提供及びCBI届出は適用対象である

所管官庁 人的資源省

規制物質リスト ICOP第1部に収載の分類された229物質(強制分類)

30 Classification, Labelling and Safety Data Sheet of Hazardous Chemicals Regulations 31 REACH 規則第 3 条第 1 項及び 2 項に同じ。 32 JETOC「東南アジア化学品規制の概要(2016 年 3月)第 65回講演会資料」より三菱総合研究所作成

原典:http://www.federalgazette.agc.gov.my/outputp/pua_20131011_P%20U%20%20%28A%29%20310-peraturan-peraturan%20keselamatan%20dan%20kesihatan%20pekerjaan%20%28pengelasan%20pelabelan%20dan%20helaian%20data%20keselamatan%20bahan%20kimia%20berbahaya%29%202013.pdf?option=com_content&view=article&id=1704&Itemid=1388&lang=en

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25

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

2) 環境有害性物質届出・登録制度(EHSNR)

【概要】

EHSNRは、有害性物質の安全性等情報を任意に届出させる制度である。

表 2-18 EHSNRの基礎情報

化学物質の定

義 Environmentally Hazardous Substances (EHS)とは、GHS分類に従う危険有害

性区分に割当られる又は国際的な禁止リスト収載の物質。環境質法では、

EHSを「固体、半固体、液体、ガスや蒸気の状態かを問わず、2つ以上の物質

よりなる混合物であっても、また、あらゆる環境保護・保全・管理活動を意図し

た生体であったとしても、汚染を生じる原料を含むあらゆる天然または人工の

物質」と定義。

対象有害性 なし

除外物質 他法規(農薬法(1974)、毒物法(1952)、化学兵器条約法(2005))により、すで

に当局に情報が提出されている物質に適用されない。

所管官庁 天然資源環境省(MONRE-DOE)

規制物質リスト EHS reference list33およびCMR reference list34

本制度は、EU の REACHの思想の影響を受けている。最終的には、マレーシア国内で有

害化学物質のリスク評価を行うことを目指すものである。

EHSNRの届出手続きは、DOE のウェブサイト35にて行うことが可能であり、EHS該当物質で既

に EHS reference list もいくは CMR reference listに収載されている場合は基本届出(毎年 1月~6

月)、EHS該当物質でリストに未収載の場合には詳細届出をデータを添えて提出する。ハザード分

類が変更されるような新情報が入手可能な場合を除き、詳細な届出は 1 回のみである36。なお、現

在は、この届出は義務化されておらずボランタリーである。

対象となる製品は、EHSの成分が 1%以上、または CMR 物質が 0.1%以上のものである37。

33 https://www.e-ehs.doe.gov.my/public/references 34 https://www.e-ehs.doe.gov.my/public/references/index/filter:cmr 35 マレーシア天然資源環境省のウェブサイト:https://www.doe.gov.my/ 36 マレーシア天然資源環境省ウェブサイト

https://www.e-ehs.doe.gov.my/app/webroot/portal/about-ehs-n-r/?doing_wp_cron=1489586770.1242649555206298828125 37 「Guidance for the industry on The Notification and Registration Scheme of Environmentally Hazardous

Substances (EHS) in Malaysia」

https://www.e-ehs.doe.gov.my/files/GUIDANCE_FOR_THE_INDUSTRY_3_final.pdf

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26

【法令改正の動向】

DOEは、2015年 12月 10日に EHSNR草案を発表した。、2018年 3 月に届出システム改定及

び強化を行い、2018 年の秋を目処に実行に臨む予定である。実行に向けて、現在は環境質法の

草案が作成されている。MONREとしては、2020年を目処に「環境質法」の改定と関連規則の整備

を予定としている38。

表 2-19 EHSNR ロードマップ

時期 計画概要

2009年~2014年 ・EHSNRの確立時期

・事業者からボランタリーベースの情報提供を受けてイニシャルインベン

トリを構築する期間(事業者は引き続き届出・登録可能)。

2014年~2016年 ・収集された基礎データを基に、DOE は物質の評価を開始

・優先物質リストの基盤を確立

2016年~2018年 ・リスクアセスメント手法を決定

・環境に悪影響を与える物質の使用を制限する規制と管理方法を提案

2018年~ ・優先物質の管理手法(個々の物質の規制など)が導入される。

出所)https://www.e-ehs.doe.gov.my/files/GUIDANCE_FOR_THE_INDUSTRY_3_final.pdfより三菱総合研究

所作成

3) その他の法令

【概要】

マレーシアには、その他下記のとおり化学物質管理に関連する法制度が多岐にわたって存在

する。

・ 工場機械法

- 所管省庁:人的資源省

- 主な規制対象物質:鉛、アスベスト、鉱物ダスト等

・ 農薬法

- 所管省庁:農業農産物省

- 主な規制対象物質:殺虫剤等

・ 毒物法

- 所管省庁:保健省

- 主な規制対象物質:医薬品、化粧品

・ 原子力エネルギー法

- 所管省庁: 科学技術革新省

- 主な規制対象物質:放射性物質

38https://www.e-ehs.doe.gov.my/files/GUIDANCE_FOR_THE_INDUSTRY_3_final.pdf

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・ 石油安全対策法

- 所管省庁: 国内取引協同組合消費者省

- 主な規制対象物質:石油、石油製品

・ 化学兵器禁止条約法

- 所管省庁:外部省

- 主な規制対象物質: 化学兵器

【法令改正の動向】

特に動きは見られない。

(2) リスク評価手法の導入状況

前述の EHSNR ロードマップに沿って政府は 2016年~2018年の間に優先物質に対するリスク

アセスメント手法を定めることを予定している39。その際、国内での使用を規制するいくつかの管理

手法を導入することにより、環境に悪影響を及ぼす可能性のある物質の管理が行われる40。

リスク評価スキームにおいて検討される懸念物質は、GHS 分類結果等に基づいて優先付けが

行われ、GHS 分類結果では対応できない影響を有する懸念物質については年間使用量に基づ

いて優先付けされるとしている41。リスク評価スキームから得られる結果は、DOE をはじめとする他

の化学物質管理関連機関よってリスク低減戦略やリスク低減措置の実施に結びつけられる予定で

ある42。

(3) 国内向けデータベース・物質インベントリ構築状況等

DOSHは、CLASS規則に関連するデータ提出をオンラインで実施するため、化学品情報管理シ

ステム(Chemicals Information Management System、以下、CIMS)を構築し、公開している43。製造

者及び輸入者は、CIMS システム経由で DOSHに届出を行う。

届出対象は、GHSに基づく危険有害性に該当する物質及び混合物のうち、暦年で年間 1トン以

上の製品で、2015 年実績から届出が開始され、初回の自社製品のインベントリ提出期限は 2016

年 3 月 31日であった。

また、インベントリに必要な有害性化学品情報は、①製品の特定、②危険有害性化学品の名称

と組成、③製品の CLASS 規則分類、④輸入または供給された各危険有害性化学品の前年の実

績数量の 4 点となる。以後、毎年 3 月末に届出をする必要がある。

他方、前述の EHSNRを通じて得られた情報を基に、DOE はリスク評価を行う物質を選定し、優

39 Guidance for the industry on The Notification and Registration Scheme of Environmentally Hazardous Substances

(EHS) in Malaysia」 https://www.e-ehs.doe.gov.my/files/GUIDANCE_FOR_THE_INDUSTRY_3_final.pdf 40 「Guidance for the industry on The Notification and Registration Scheme of Environmentally Hazardous

Substances (EHS) in Malaysia」

https://www.e-ehs.doe.gov.my/files/GUIDANCE_FOR_THE_INDUSTRY_3_final.pdf 41 https://www.e-ehs.doe.gov.my/app/webroot/portal/about-ehs-n-r/ 42https://www.e-ehs.doe.gov.my/app/webroot/portal/about-ehs-n-r/

43 化学物質名、CAS RN またはIUPAC 名による物質検索が可能であり、物質ごとのGHS分類結果や規制

情報等が収載されている(http://cims.dosh.gov.my/)

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28

先物質についてリスク評価および管理を進めていく予定である。

なお、DOSHによる CIMS と DOE による EHSNRを統合することも検討されているが、現在は、

CLASS規則インベントリで CIMS に登録されたデータを DOE に提供し、DOE は EHSNRが必要

なデータの追加登録を求める等の案が検討されている44。

44 日本ケミカルデータベース(株)「ASEAN諸国の化学品規制最新動向」(2017年 3月 7日講演会)

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29

2.1.5 ミャンマー

(1) 主要化学物質関連法制度の概要、改正の動向等

ミャンマーにおける化学物質管理に関わる主要な法律は「化学品及び関連物質危険予防法」で

ある。工業省は同法により、化学品及び関連物質によって引き起こされる危険有害性からの人及

び環境の保護を含めて、総合的な化学品管理を行うことを目指している45。

表 2-20 ミャンマーの主要化学物質関連法制度

法規制名 概要

化学品及び

関連物質危害予防法

成立年 2013年 8 月

主要管轄部署 工業省

概要 化学品及び関連物質に関わる輸送、貯蔵、使用、

廃棄に関し規定

以下、「化学品及び関連物質危害予防法」について示す。

1) 化学品及び関連物質危害予防法 Prevention of Hazard from Chemical and Related

Substances Law

ミャンマーにおいて化学物質管理の中心となる法規制は「化学品及び関連物質危害予防

法:Prevention of Hazard from Chemical and Related Substances Law」(2013年 8月成立)であ

る。

【概要】

表 2-21化学品及び関連物質危害予防法の基礎情報46

化学物質の定

化学物質とは、「元素、化合物及び混合物であり、天然に存在しまたは人為的

に生み出され人類及び動物の健康または生命に有害となり、環境に負の影響

をもたらすものであり、技術的に元素、化合物及び混合物に化学変化を加える

ことで得られる煙やガス、液体、油、グリス及び固形廃棄物を含むもの」と定義

される(第 2 条)。

また、関連物質とは「有害になり得る派生物質」とされる(第 2 条)。

対象有害性 なし。

除外物質 なし。

所管官庁 工業省

規制物質リスト なし。ただし、下位法に制限物質及び禁止物質が規定されている。

【法令改正の動向】

工業省は、「化学品及び関連物質による危害の予防に関する法律」の詳細を定めた下位規則と

45 日本ケミカルデータベース(株)「ASEAN諸国の化学品規制最新動向」(2017年 3月 7日講演会) 46 http://files.chemicalwatch.com/myanmarlaw.pdf

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なる「化学品及び関連物質危害防止規則(Prevention of Hazard from Chemical and Related

Substances Rule/通知第 85/2015-2016号)」47を 2016年 1 月 12日に制定し、その後公布となった。

化学品及び関連物質危害防止規則は全19章83条及び付属書から構成される。構成内容は以

下の通り。

第 1 章:用語の定義

第 2 章:中央統括委員会の責任及び権利

第 3 章:中央監視委員会の責任及び権利

第 4 章:ライセンス、推薦状の申請及び交付

第 5 章:ライセンス取得者が従うべき事項

第 6 章:登録証の申請及び交付

第 7 章:諮問機関の構成

第 8 章:学術機関の構成及び同機関の義務

第 9 章:地方レベルの監視委員会の業務

第 10章:検査機関の業務及び権利

第 11章:安全対策

第 12章:事故防止及び減少のために従うべき事項

第 13章:輸送における遵守事項

第 14章:保管上の原則

第 15章:使用上の原則

第 16章:廃棄上の原則

第 17章:実験室における原則

第 18章:化学品及び関連物質に関する国際条約及び協定の遵守

第 19章:雑則

付属書 a: GHS絵表示

付属書 b:輸送絵表示

付属書 c:ラベル表示例(トルエン)

本規則は、化学品取り扱いに必要なライセンスや輸出入のための推薦状、化学品登録などの申請

方法を規定。また本規則は、GHS や SDS を含む安全対策についても規定しており、化学品の分

類及び表示については、GHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)を導入するこ

とが定められた。安全データシート(SDS)の書式は、国際標準と同様の 16 項目からなる書式を採

用。ライセンスや輸出入のための推薦状、化学品登録の手続きに際しては、SDS の添付申請が必

要。

47 http://www.industry.gov.mm/my/content/%E1%80%93%E1%80%AB%E1%80%90%E1%80%AF%E1%80%95%E1%80%85%E1%80%B9%E1%80%85%E1%80%8A%E1%80%BA%E1%80%B8%E1%80%94%E1%80%BE%E1%80%84%E1%80%BA%E1%80%B7-%E1%80%86%E1%80%80%E1%80%BA%E1%80%85%E1%80%95%E1%80%BA%E1%80%95%E1%80%85%E1%80%B9%E1%80%85%E1%80%8A%E1%80%BA%E1%80%B8%E1%80%99%E1%80%BB%E1%80%AC%E1%80%B8%E1%80%A1%E1%80%94%E1%80%B9%E1%80%90%E1%80%9B%E1%80%AC%E1%80%9A%E1%80%BA%E1%80%99%E1%80%BE-%E1%80%90%E1%80%AC%E1%80%B8%E1%80%86%E1%80%AE%E1%80%B8%E1%80%80%E1%80%AC%E1%80%80%E1%80%BD%E1%80%9A%E1%80%BA%E1%80%9B%E1%80%B1%E1%80%B8%E1%80%94%E1%80%8A%E1%80%BA%E1%80%B8%E1%80%A5%E1%80%95%E1%80%92%E1%80%B1%E1%80%99%E1%80%BB%E1%80%AC%E1%80%B8-prevention-hazard

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その他、制限禁止物質通知(Prohibited and Restricted Chemicals Notification)48がある。

2) その他

農薬法(農業灌漑省)、植物検疫法(農業灌漑省)、鉱山法(鉱業省)、労働衛生規則(工業省)、

水質汚濁大気汚染管理規則(工業省)、肥料法(農業灌漑省)、前駆物質管理法(内務省)、国家

麻薬法(保健省)、石油法(エネルギー省)、環境保護法(環境保護林業省)などが化学物質関連

法制度として存在する。これらの法律に関し、直近の法令改正動向に関する情報は得られなかっ

た。

(2) リスク評価手法の導入状況

2017 年 3 月時点において、ミャンマーに法制度上のリスク評価手法の存在は確認できていな

い。

(3) 国内向けデータベース・物質インベントリ構築状況等

2017年 3 月時点において、データベース開発に関わる情報はない。

ミャンマーにおける新規物質登録に関連する法律の情報は得られなかった。また、既存物質イ

ンベントリの構築に関し、「化学品及び関連物質危害予防法」において、国家化学物質及び関連

物質プロファイルの策定が規定されている。Central Leading Boardがプロファイルを発行することに

なっている。

その他、ミャンマー政府は「化学品及び関連物質危害防止規則」の発表とともに、①条件つき化

学品、②制限化学品、③禁止化学品の 3 種類化学品を公表した。

① 条件つき化学品に関する詳細は未公表だが、ミャンマー政府は有害/非有害の区別を行

うため、輸入品リストを作成した。これらの安全性情報を収集中であり、2017年 2 月末に、

工業用化学品のリストが公表され、計 216 物質が収録されているようであるが①との関連

は不明である。

② 制限化学品は、管理前駆体化学品、禁止物質とその他化学品の 3 種類により構成され

た。計 29物質がリストに入った。

③ 禁止化学品は、(a)残留性有機汚染物質 POPS(26 物質)、(b)禁止物質(CFC)、(c)PIC

農薬(26物質)、(d)化学兵器条約の表 1 化学物質(12物質)により構成された。

ミャンマー化学品及び関連物質による危害の予防に関する規則(通知第 85/2015-2016号)より抜粋

48 Central Leading Board on Prevention of Hazard from Chemical and Related Substances Notification No: 3/2016

「Issuing the List of Prohibited Chemical」

http://www.ajcsd.org/chrip_search/dt/pdf/Useful_materials/Myanmar/Issuing_the_List_of_Prohibited_Chemical.pdf Central Leading Board on Prevention of Hazard from Chemical and Related Substances Notification No: 3/2016

「Issuing the List of Restricted Chemical」

http://www.ajcsd.org/chrip_search/dt/pdf/Useful_materials/Myanmar/Issuing_the_List_of_Restricted_Chemical.pdf

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2.1.6 フィリピン

(1) 主要化学物質関連法制度の概要、改正の動向等

フィリピンの主な化学物質規制は環境・天然資源省(DENR)所管の「有害物質及び有害・

核廃棄物管理法(RA6969)」(1990年 10月公布)である。同法の運用は、その下位規定であ

る「RA6969 の施行規則(DAO29)」に基づいており、健康または環境に対するリスクや危害

をもたらす化学物質及び混合物の製造、輸入、使用、流通、販売、廃棄について、制限や禁

止等を規定している。

新規化学物質については、RA6969 に基づき「新規化学物質届出(PMPIN)」制度が施行さ

れており、事前届出審査が運用されている。

フィリピンは、東南アジアで唯一実際に運用中の新規物質届出制度を持つ国である。

表 2-22 フィリピンの主要化学物質関連法制度

法規制名 概要

毒性物質及び有害

性・核廃棄物管理

(Toxic Substances

and Hazardous and Nuclear Wastes

Control Act)

発表年 1990年制定

主要

管轄部署

環境・天然資源省(Department of Environment and Natural

Resources)の下部組織である環境管理局(Environmental

Management Bureau)

概要

不当なリスク及び健康や環境への危害が存在する化学物質

や混合物の製造、加工、販売、流通、使用、廃棄、輸入を規

制、制限または禁止する法律

1) 有害物質及び有害・核廃棄物管理法(RA6969)

【概要】

有害性物質及び核廃棄物に関する課題の拡大に伴い、それらの課題解決に対応するために

策定された法令である。同法は、有害物質と核廃棄物の輸入、製造、処理、流通、使用、輸

送、販売、保管、廃棄について管理、義務付けを規定し、それによって、有害物質によるリ

スクから公衆衛生と環境を保護することを目的としている。

表 2-23 有害物質及び有害・核廃棄物管理法の基礎情報

化学物質の定

義49

健康又は環境に不当なリスク又は危害を呈する化学物質及び混合物の取扱

等を監視及び規制することが、本法の目的の一つとして定義されている。

(第 4 条)。

対象有害性 発がん性、変異原性、催奇形性、感作性、急性及び慢性毒性、刺激性、環境

有害性等

49 http://119.92.161.2/portal/Portals/40/DAO%201992-29.pdf

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除外物質 PICCS(既存化学品及び化学物質インベントリ)に既に収載されている化学物

質及び混合物、実験目的または研究開発目的のためにのみ少量生産される

もの、健康と環境に不当なリスクを呈さないであろう化学物質及び混合物、他

の化学物質の混合物の製造または加工の際の化学反応の結果として存在す

るものなどのような、一時的に存在し、ヒトまたは環境ばく露がない化学物質及

び混合物等は PIPMN 免除。(第 11 条)他の法律により規制される化学物質。

(DAO29 第 22条)

所管官庁 環境・天然資源省 環境管理局

規制物質リスト 既存化学物質リスト:PICCS201150

規制物質リスト:PCL(優先化学品リスト)51、CCO(化学品管理令)52

PICCS(既存化学物質インベントリ)に収載されていない新規化学物質を製造・輸入する場合、

事前に届出(PMPIN)を行い、審査を受けることが求められている。この審査を受けた後

に製造・輸入許可が下りる。また、製造・輸入開始後には製造・輸入開始届出(NOC)を

提出する必要がある。

【法令改正の動向】

① 少量輸入(SQI)に関して、下記のように法令改正が行われた。

・2015年 1月 12日に、memorandum circular No.002(Series of 2015)公告が発表された。

SQIは最大 3回しか認められないことを決め、その後は本申請である PMPINを申請し

なければならない。

・2016年 8月 10日に、memorandum circular No.011(Series of 2016)公告が発表された。

SQIの最大回数が 5 回に変更された。

・それ以上加工されない製品の輸入に対する SQI申請が免除される。

出所)EMB 通知公文(英語版)http://119.92.161.2/embgovph/Portals/40/MC%202016-011.pdf

その他、以下の法令改正がある。

② CCO(化学品管理令)の登録と管理の厳格化

③ PICCS Certificationの無効化。従って、「Memorandum Circular No.2014-001」で規定されて

いる PICCS Certification関連条文が廃止となる。

(2) リスク評価手法の導入状況

フィリピンでは、環境に不当なリスクをもたらすことが懸念される物質を PCL(優先化

学品リスト)に収載して公表している(5年ごとに更新される。DAO29 第 19条)。同物質

を製造、輸入、使用する際には化学物質管理計画やリスク評価等が求められる。

50 http://119.92.161.2/internal/CasREgistry.aspx 51 http://119.92.161.2/portal/Portals/0/Cache/DAO%202005-27.pdf 52 http://119.92.161.2/embgovph/chemical/LawsandPolicies.aspx

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表 2-24 PCL(優先化学品リスト)の概要53

選定基準 一次クライテリア

・難分解性(半減期 50日超)

・毒性(急性致死性、慢性/亜致死性毒性、催奇形性、発がん性)

・生体内蓄積ポテンシャル

二次クライテリア

・ばく露ポテンシャル

・化学品の製造及び使用量

遵守要件 ・有害廃棄物及び化学物質を登録し、DENRの ID 番号を取得

・毎年報告書(PCL書式)を提出

(3) 国内向けデータベース・物質インベントリ構築状況等

既存化学物質リストとしては、RA6969に準拠する PICCS(フィリピン化学品及び化学物質イ

ンベントリ)がある。また、RA6969及び DAO29施行のための手引きとして「化学品管理令(CCO、

Chemical control Order DAO2004-08)」が策定され、水銀とその化合物、オゾン層破壊物質な

どの禁止物質群について規定されている。

① PICCS(Philippine Inventory of Chemicals and Chemical Substances)フィリピン化学品及

び化学物質インベントリ

� PICCSには、公開の部分と非公開の部分がある。フィリピンで製造、使用及び輸

入された物質として 1993年末までに申請された物質とその後製造前及び輸入前

届出(PMPIN)され製造・輸入開始届出(NOC)が提出された新規物質により構

成されている。公開の部分は、EMB ウェブサイトから検索可能である54。

� 化学物質インベントリとはフィリピンにおいて使用、売買、配布、輸入、所有、

製造、貯蔵、輸出、取扱もしくは輸送されているすべての既存化学物質のリスト

である。インベントリに収載されている化学物質は産業界によって上市されてい

る物質となる。

� 第一版は 1995年に、それ以降はそれぞれ 2000 年、2002 年、2005 年、2008 年

及び 2011年に DENR-EMB によって発行された。

� 現在、約 48,000物質を収載(CAS番号ベースでは約 23,000物質)

② CCO(Chemical Control Order DAO2004-08)化学品管理令

DENR-EMB によって、公衆衛生や職場及び環境に対する重大なリスクが懸念され、

優先化学品として規制、段階的廃止あるいは禁止物質として認定された物質に対して、

使用、製造、輸入、輸出、輸送、処理、保管、保有、卸売の各段階において制限や禁

止することを規定する法令である。ここで、公衆の健康、作業場及び環境に対して不

当なリスクを呈する恐れがあると判定されたら、優先化学品リストに収載されること

となる。

53 http://119.92.161.2/portal/Portals/40/DAO%201992-29.pdf 54 http://119.92.161.2/internal/CasREgistry.aspx

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また、フィリピンにおける GHS 対応としては、環境省の DAO2015-09と労働省の

DOLE DO No.136-14の二つの法令がある。

① DAO2015-09において、段階的に GHSを導入することとされ、2016年には最初

にリスト化された化学品管理命令(CCO)及び優先化学品リスト(PCL)の化学

品で包含される単一物質及び化合物を、2017 年には高量の毒性化学品を、2018

年には IATA 及び IMDG の危険物リストに基づく毒性化学品を、2019年には混

合物を、それぞれ GHS適用期限として掲げている。

② また労働現場における GHS対応法令として DOLE DO No.136-14が 2014年 12月

より施行されており、2015年 3 月 16日より職場で取り扱う物質及び混合物につ

いて GHSに基づく分類、表示、SDS作成等が義務づけられている。

2.2 タイ政府の説明会からの情報収集

2.2.1 タイ政府の説明会概要

タイ政府は 2016年9月 7日に、「Dangerous Goods Risk Management 2016 :Are you a risk lover?」

という公開説明会を開催した。当説明会にて、工場局有害物質管理部部長ソムシースワンジャラッ

ト氏はタイ国・有害物質法に係る輸入・輸出・所持におけるリスクマネジメントについて講演を行った。

当説明会では、主に下記の点について紹介された。

① 1992年に行われたタイ有害物質法の法令改正

国内に物品を持ち込みかつ国内から持ち出す一連の行為である「通過(トランジット)」の

文言を削除した。第 84/1条の罰則を追加し、第 51 条又は第 51/1条に違反する者は、6 カ

月以下の懲役又は 50,000バーツ以下の罰金又は両方に処する。

その他、第 71条:第 21 条、第 22 条 3 段、第 41 条又は第 43 条 2 段の規定を遵守し

ない者は、6 カ月以下の懲役又は 50,000 バーツ以下の罰金又は両方に処する。

第 74 条: 第 43 条 1 段に違反する者は 10 年以下の懲役又は 1,000,000 バーツ以下

の罰金又は両方に処する。また第 43 条 1 段の違反行為が、有害物質の輸入者・輸出者・

所持者の過失による場合は、800,000 バーツ以下の罰金を処する。

なお、化学物質が混合物である場合、レジン(Cation resin)を国内へ輸入した際、その混

合物に有害物質のフェノール(Phenol)が含まれていることを知らずに輸入してしまった場合

は、第 4 種の有害物質を知らずに輸入したとみなされ、発見されれば過失により第 74 条が

適用され、800,000バーツの罰金が処される。

② 有害物質法に該当しないが、商務省の規制に遵守する必要がある各種物質等

主に、プラスチック屑の国内輸入基準、クロロホルム(有害物質法の管理下のみにするため、

商務省告示(化学薬品として取り扱うという内容)の廃止待ち)カフェイン(有害物質法に非

該当)等が挙げられる。

③ 有害物質法における、10 種類の性質の分類(リスト 5.6 関連)と、有害物質の分類(製造・輸

入・輸出・所持の許可)

④ タイ有害物質法における罰則規定

有害物質第 2 種を規定の様式で申告しない場合は 100,000バーツ以下の罰金を処する。

罰金制度は同じ違反について 4 回までとし、5 回目の違反は提訴となる。

工場局、農業研究局、食品医薬品局、漁業局、畜産局、エネルギー事業局の 6つの管理当

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局が同じ許可原則を使用してそれぞれ有害物質の規制・管理をしている。

許可申請願書及びライセンスは統一される予定。現在は工場局での試行過程にあり、実施

はまだである。

⑤ 有害物質の登録

有害物質の登録が免除される物質は、塩酸、硫酸、水酸化アンモニウムの 3 物質である。

また、1992年の省令は有害物質第 2 種に対して、どのように手続きしなければならないかを

具体的に規定しておらず、2012年の省令で具体的な手続きが規定されている。有害物質及

び化学品の輸送について、工場局は陸上交通局の取り決めに沿って手続きを修正し、資料

も同じものを使用できるようにした。

⑥ ボーチョー(安全に保管するための専任責任者)の設置の義務化(2008年)

ボーチョー資格試験は、学士課程で化学カリキュラムを8単位以上取得して卒業した者か実

務経験の証明が必要。また、有害物質の保管についても、2007年に手引きを、2008年に規

定を設けた。

⑦ 混合物のラベル貼り付け義務化

2017年 3 月より工場局の規制対象混合物については、GHSに基づく分類及びラベルの貼

付等が義務づけられる。

⑧ 化学品に関する工場局へのオンライン問合せ

工場局がオンラインで物質の確認を行うサービスの一環であり、“コンサルテーション”とも呼

ばれている。返答結果をプリントアウトして各種申請時等に使用可能である。回答期間の日

数は決められておらず、工場局は回答に向け最善の努力を行うとしている。

2.2.2 官民ワークショップ

2016年 6 月 14 日に、バンコクで日本とタイ両国の政府と工業会が参加し、日タイ化学物質管

理制度に関する官民ワークショップが開催された。主としてタイの進捗を確認すると共に、日本を含

む諸外国の制度を紹介してタイ側の課題を抽出・共有することが目的であった。

タイ政府側より、リスト 5.6に関する説明がなされた。リスト 5.6について、製造者及び輸入者は、

告示に示された 10種類のプロパティに該当し、年間取扱量が 1 トン超の化学物質または混合物を

届け出る必要がある。年間取扱量が年間 1 トン以下でも届け出ても良い。リスト 5.6の除外項目は、

他の法律等で規制されている化学物質(例:化粧品は食品医薬品局(FDA)の所管、ただし化粧品

の原料はリスト 5.6の対象となる。)。届出の内容は、トレードネーム、CAS 番号で、組成を 100%開

示する必要は無い。また、一度届け出れば、再届出は不要。100%開示したくない場合は CBI 手

続きを利用する。

その後、日本側より、化審法(CSCL)の執行に係る経験を紹介し、タイにおける新規物質規制

に対する提言を行った。日本側は、化審法の新規化学物質に関する事前審査制度の仕組み及び

手続きや CSCLの運用体制と実施等について紹介。タイ側からは、日本における新規化学物質の

届出試験のやり方、不純物と混合物の審査、ポリマーの定義と審査基準、インベントリと、それらの

欧米との相違点、官民の役割分担等について質問がなされた。

また、日本側より、欧州、中国等を初めとするその他各国における化学物質管理システムにつ

いて紹介を行った。

最後に、タイ側より、有害物質法に係る化学物質管理における暫定的フレームワークが共有さ

れた。タイの既存化学物質予備インベントリ(Preliminary Inventory) は当時 6 月に公表する予定

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であり、申告の締切日は 2016年 12月 31日である。これが最初の既存化学物質インベントリ(First

Inventory)となる。将来的にはリスクアセスメント/マネジメントを実施し、評価、分類、認可等がなさ

れたものは、DIW の管理リストに入ってくる。なお、今後、タイにおける新規化学品について、どの

ような原則で管理するのか、方向性を公表する予定とのことである。

2.2.3 新規化学物質管理制度に関する意見交換会概要(参加報告)

化学物質管理制度が新しくなること等により、現地日系企業の不安及び新制度に対する疑問点

があると考えられる。意見交換会は、お互いに情報共有する場として官民ワークショップの翌日に

現地日系企業と官民ワークショップ参加者との間で設けられた。

意見交換会では、「リスト 5.6」の最新情報について確認できた。2015年 8 月以後、「リスト 5.6」に

関する正式な告示が出ておらず、現状が見えない状況にある。また、「リスト5.6」の登録は、2016年

末に締切り予定であり、万が一間に合わない場合の対処方法等について確認された。

上記のインベントリ登録について、CBI の兼ね合いで登録していない日系企業はある。日系企

業としては、機密保持の部分が担保されていないことに懸念している。ただし、タイ側の認識と日本

側の認識においてギャップがあり、CBI に関し、今後のさらなる調整及び意見交換が必要である。

日本側は、タイ政府に、登録に当たりいろいろな選択肢が選べるよう要望している。

また、CAS 番号がない物質の登録が難しいようで、CAS 番号のない製品の商売を継続するため

の手続について確認された。実際、リスト 5.6では CAS 番号がなければ登録できないが、コンサル

テーション手続で登録できる。タイ側も、本インベントリを、CAS 番号がない場合でも扱えるようなイ

ンベントリにしたい意思を示している。

本意見交換会により、タイの現行化学物質管理制度に対する理解が深められた。また、今後の

両国政府の相互理解を深め、よりよい協力関係を構築することが図られた。

2.2.4 既存制度の変更のポイント

最も注目されている変更点は、既存の規制化学物質リストに収載されていない物質を取り扱う「リ

スト 5.6」である。化学物質管理を新たな枠組みで推進する第 4次化学物質管理計画では、中期的

に規制範囲と管理対象(有害物質以外も対象)が拡大される。規制物質リストに加えて、これまでの

規制物質リストに未収載でリスト 5.6の 10の特性に該当する物質の届出の報告事項があり、インベ

ントリ作成作業を行っている。当インベントリの登録手続きについて、2016 年末まで第一次登録を

終えた。

その他、罰則制度がより細かく規定されたこと、各情報における所管省庁の役割が明確化された

こと、オンライン問い合わせ等の手段を採用し事業者側とのコミュニケーションの円滑化を図ってい

ることなどが特長として挙げられる。

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3. ASEAN 各国に対する企業活動の課題に関する調査

3.1 対象国のマクロ環境

3.1.1 対象国の主要マクロ動向

(1) 対象国の基礎情報

ASEAN は、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレ

ーシア、ミャンマー、ラオスの全 10 か国から構成される地域協力機構であり、1967年にタイ、インド

ネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの 5 か国(原加盟国)から発足した。その後、ブルネ

イ(1984年)、ベトナム(1995年)、ラオスとミャンマー(1997年)、カンボジア(1999年)の 5 か国(新

加盟国)が順次加盟し、現在の 10か国となった。

調査対象 6 か国の基本情報を以下に示す。

表 3-1 基本情報

タイ ベトナム インドネシア マレーシア ミャンマー フィリピン

人口(2015年) 6,883万人 9,167万人 25,546万人 3,118万人 5,184万人 10,215万人

首都 バンコク ハノイ ジャカルタ クアラルンプール ネーピードー マニラ

最大都市 人口

852万人

(バンコク)

798万人

(ホーチミン)

1,018万人

(ジャカルタ)

173万人

(クアラルンプール)

520万人

(ヤンゴン)

1,279万人

(マニラ)

国土面積 51万 km2

(日本の約 1.4倍)

33万 km2

(日本の約 0.9倍)

192万 km2

(日本の約 5.1倍)

33万 km2

(日本の約 0.9倍)

67万 km2

(日本の約 1.8倍)

30万 km2

(日本の約 0.8倍)

一人当たり GDP(2015年)

5,742USドル 2,088USドル 3,362USドル 9,500USドル 1,212USドル 2,862USドル

民族構成 主にタイ族

他、華人、マレー族

主にキン族(越人)

他、53少数民族

マレー系

(ジャワ、スンダ等

約 300種族)

マレー系、

中華系、

インド系

主にビルマ族、

シャン族、

カレン族、

ラカイン族等

マレー系

その他中華系、

スペイン系及びこれ

らとの混血

他、少数民族

宗教 上座部仏教、

イスラム教、

キリスト教

仏教、

その他カトリック、

カオダイ教、

ホアハオ教等

イスラム教、キリスト

教、ヒンドゥー教他

イスラム教、仏教、ヒ

ンドゥー教、キリスト

教等

仏教、

キリスト教、

イスラム教、

ヒンドゥー教等

カトリック教、

イスラム教等

元首・首相

ワチラーロンコーン

国王

プラユット・ジャンオ

ーチャー首相

チャン・ダイ・クアン

大統領(国家主席)

ジョコ・ウィドド

大統領 ムハンマド 5 世

テイン・チョウ大統

(国家最高顧問:ア

ウン・サン・スー・チ

ー)

ロドリゴ・ドゥテルテ

大統領

通貨 バーツ

(1JPY=0.33THB)

ドン

(1JPY=213.86VND

ルピア

(1JPY=125.23IDR)

リンギット

(1JPY=0.04MYR)

チャット

(1JPY=12.47MMK)

ペソ

(1JPY=0.47PHP)

言語 タイ語 ベトナム語、

他に少数民族語 インドネシア語

マレー語、英語、

中国語、タミル語

ミャンマー語、

シャン語、

カレン語、英語等多

フィリピノ語、英語、

セブアノ語等

注)一人当たり GDP(2015年)は推計値、元首・首相は 2017年 3 月時点、通貨は 2016年 11月時点

出所)JETRO(首都、最大都市人口(ミャンマーのみ国連人口年鑑)、国土面積、宗教、元首・首相、言語)、外務省

(民族構成)、IMF(人口、一人当たり GDP)、Bloomberg(通貨)より三菱総合研究所作成

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39

ASEAN 諸国において、マレーシアとタイの人件費水準が比較的高い。一方で、後発国であるミ

ャンマーやベトナム等において、人件費水準はまだ低く、100USD台に留まっている。ただし、今後

は経済発展に伴い人件費の高騰も起こり得る。

表 3-2 各国の賃金と賃金増加率

2015年の月額賃金

(USドル (製造業、

ワーカー(一般工職))

2011~2015年の

賃金増加率

クアラルンプール

(マレーシア) 418 122%

バンコク

(タイ) 363 127%

マニラ

(フィリピン) 268 82%

ジャカルタ

(インドネシア) 252 121%

ハノイ

(ベトナム) 173 156%

ヤンゴン

(ミャンマー) 127 187%

出所)JETROより三菱総合研究所作成

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40

(2) 各対象国の主要マクロ動向

【タイ】

1) 基本情報

タイ(正式名称:タイ王国)はバンコクを首都とする人口約 6,883万人の立憲君主制国家である。

13 世紀のスコータイ王朝より基礎が築かれ、アユタヤ王朝、トンプリー王朝を経て現在のチャックリ

ー王朝に至る。1932 年に起きた無血革命(立憲革命)により、絶対君主制の王族政治から立憲君

主制の議会政治へ移行した。近年では反政府デモが拡大し混乱が生じる中、2014 年に軍事クー

デターが発生、軍を中心とする「国家平和秩序維持評議会(NCPO)」が全統治権の掌握を宣言。

2016 年 8 月には NCPO は民生復帰に向け、国民投票により新憲法法案が可決された。同年 10

月、プーミポン・アドゥンラヤデート(プミポン)国王が崩御、ワチラーロンコーン皇太子が国王に即位

した。

表 3-3 基本情報

首都 バンコク

人口 6,883万人(2015年)

国土面積 51万 km2(日本の約 1.4倍)

名目 GDP 3,952億 USドル(2015年)

一人当たり GDP 5,742USドル(2015年)

言語 タイ語

宗教 上座部仏教(95%)、イスラム教(4%)、キリスト教(0.6%)等

民族構成 主にタイ族、他に華人、マレー族等

通貨 バーツ(THB)

為替レート 1JPY=0.33THB(2016年 11月)

出所)JETRO、外務省、IMF、Bloombergより三菱総合研究所作成

2) 人口

IMF データによると、人口は 7000万人弱で、人口増加率は ASEAN 諸国の中ではかなり低く、

将来的に人口減少が予想される。都市化率は 50%。労働年齢人口は 66%である。ASEAN 諸国

の中では、老年人口率が高めである。

3) 政治体制

表 3-4 政治体制・内政

政体 立憲君主制

元首 (ワチラーロンコーン)ラーマ 10世

議会 国家立法議会(220名)

・首相 プラユット・ジャンオーチャー

出所)外務省、Bloombergより三菱総合研究所作成

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4) 経済動向

近年、タイの

成長率の振れ幅が大きいことが読み取れる。

はリーマンショックの影響、

るデモの影響である

出所)

一人当たり

だ、2014

出所)

経済動向

近年、タイの GDP

成長率の振れ幅が大きいことが読み取れる。

はリーマンショックの影響、

るデモの影響である

)IMF WEO より三菱総合研究所

一人当たり GDP

2014年以降の経済成長の減速と人口増加で減少がみられる。

)IMF WEO より三菱総合研究所

GDP成長率は、

成長率の振れ幅が大きいことが読み取れる。

はリーマンショックの影響、2011

るデモの影響であると考えられる

より三菱総合研究所

GDP を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

年以降の経済成長の減速と人口増加で減少がみられる。

より三菱総合研究所

成長率は、ASEAN 主要国の中では、比較的低調である。

成長率の振れ幅が大きいことが読み取れる。

2011年は大洪水によるもの、

と考えられる。

図 3-1

より三菱総合研究所作成

を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

年以降の経済成長の減速と人口増加で減少がみられる。

図 3-2 一人当たりの

より三菱総合研究所作成

41

主要国の中では、比較的低調である。

成長率の振れ幅が大きいことが読み取れる。GDP成長率が大幅に下がった原因としては、

年は大洪水によるもの、

GDP成長率の推移

を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

年以降の経済成長の減速と人口増加で減少がみられる。

一人当たりの GDP

主要国の中では、比較的低調である。

成長率が大幅に下がった原因としては、

年は大洪水によるもの、2014年は政治情勢の不安定化とそれによ

成長率の推移

を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

年以降の経済成長の減速と人口増加で減少がみられる。

GDPと人口の推移

主要国の中では、比較的低調である。2009

成長率が大幅に下がった原因としては、

年は政治情勢の不安定化とそれによ

を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

と人口の推移

2009年以降、

成長率が大幅に下がった原因としては、2009

年は政治情勢の不安定化とそれによ

を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

年以降、GDP

2009年

年は政治情勢の不安定化とそれによ

を見たとき、年によって低下する年もあるものの、堅調な伸びを見せている。た

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42

【ベトナム】

1) 基本情報

ベトナム(正式名称:ベトナム社会主義共和国)はハノイを首都とする人口約 9,167 万人の社会

主義国家である。北部は長年中国王朝の配下にあったが、10 世紀に独立、以後は王朝の支配が

続くが、19世紀にフランスの統治下となった。独立戦争が起き 1954年に休戦協定が結ばれるが南

北に分断。アメリカの介入あったが、1973 年にアメリカ軍が撤退。1976 年に南北統一となり、国名

がベトナム社会主義共和国となった。

表 3-5 基本情報

首都 ハノイ

人口 9,167万人(2015年)

国土面積 33万 km2(日本の約 0.9倍)

名目 GDP 1,914億 USドル(2015年)

一人当たり GDP 2,088USドル(2015年)

言語 ベトナム語、他に少数民族語

宗教 仏教(80%)、その他カトリック、カオダイ教、ホアハオ教等

民族構成 主にキン族(越人)(86%)、他に 53少数民族

通貨 ドン(VND)

為替レート 1JPY=213.86VND(2016年 11月)

出所)JETRO、外務省、IMF、Bloombergより三菱総合研究所作成

2) 人口

国連データによると、人口は 1 億人弱で、今後も人口増加が見込まれ、2020年代には人口が 1

億を突破すると推定される。人口密度も 1 キロ平方メートル当たり 300 人と比較的多い。都市化率

は 34%。

3) 政治体制

表 3-6 政治体制・内政

政体 社会主義共和国

元首 チャン・ダイ・クアン国家主席

議会 院制(定数 500名)、任期 5 年(但し 2007年~2011年の第 12 期国会

は 4 年)、中選挙区、選挙権満 18歳以上、被選挙権満 21歳以上

・首相 グエン・スアン・フック

出所)外務省より三菱総合研究所作成

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4) 経済動向

2000

み取れる。

出所)

安定的な経済成長により、人口増加とともに、一人当たり

当たり

出所)

経済動向

2000 年以降は、おおむね

み取れる。

)IMF WEO より三菱総合研究所

安定的な経済成長により、人口増加とともに、一人当たり

当たり GDPも、2000

)IMF WEO より三菱総合研究所

1,000

2,000

3,000

年以降は、おおむね

より三菱総合研究所

安定的な経済成長により、人口増加とともに、一人当たり

2000年と比較すると約

より三菱総合研究所

0

1,000

2,000

3,000

(USドル)

年以降は、おおむね 5%以上を維持しており、安定的な経済成長を達成していることが読

図 3-3

より三菱総合研究所作成

安定的な経済成長により、人口増加とともに、一人当たり

年と比較すると約 5 倍に

図 3-4 一人当たりの

より三菱総合研究所作成

一人当たりGDP

43

%以上を維持しており、安定的な経済成長を達成していることが読

GDP成長率の推移

安定的な経済成長により、人口増加とともに、一人当たり

倍にまで伸びた。

一人当たりの GDP

GDP(左軸)

%以上を維持しており、安定的な経済成長を達成していることが読

成長率の推移

安定的な経済成長により、人口増加とともに、一人当たり GDPも安定的に伸びてきている。一人

伸びた。

GDPと人口の推移

人口(右軸)

%以上を維持しており、安定的な経済成長を達成していることが読

も安定的に伸びてきている。一人

と人口の推移

人口(右軸)(百万人)

(年)

%以上を維持しており、安定的な経済成長を達成していることが読

も安定的に伸びてきている。一人

70

75

80

85

90

95

(百万人)

(年)

%以上を維持しており、安定的な経済成長を達成していることが読

も安定的に伸びてきている。一人

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44

【インドネシア】

1) 基本情報

インドネシア(正式名称:インドネシア共和国)はジャガルタを首都とする人口約 25,546万人の大

統領責任内閣の共和制国家である。7 世紀には王国が勃興、8 世紀にはボロブドゥール寺院を建

立したシャイレンドラ王朝を経て、その後いくつかの王国が勃興したが、1799 年オランダの直接統

治下となった。1942 年独立を宣言、オランダとの間で独立戦争がおこった。1949 年ハーグ協定に

よりインドネシア共和国として正式に独立を果たす。初代スカルノ大統領の後を継いだスハルト大

統領の政権は 30年続いたが、1998年のアジア通貨危機を契機に、改革運動が拡大し、同政権は

崩壊。2004年に大統領直接選挙制度を導入するなど民主化の道を歩み始めた。

表 3-7 基本情報

首都 ジャカルタ

人口 25,546万人(2015年)

国土面積 192万 km2(日本の約 5.1倍)

名目 GDP 8,589億 USドル(2015年)

一人当たり GDP 3,362USドル(2015年)

言語 インドネシア語

宗教 イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教他

民族構成 マレー系(ジャワ、スンダ等約 300種族)

通貨 ルピア(IDR)

為替レート 1JPY=125.23IDR(2016年 11月)

出所)JETRO、外務省、IMF、Bloombergより三菱総合研究所作成

2) 人口

国連データによると、人口は、2億 5000万人であり、ASEANの中では最大の人口を保有する国

であり、今後も人口は増加し、3 億人を超えることが推定される。

3) 政治体制

表 3-8 政治体制・内政

政体 大統領制、共和制

元首 ジョコ・ウィドド大統領

議会 国会と地方代表議会

国会(DPR):定数 560名(任期 5 年)

地方代表議会(DPD):定数 132名(任期 5 年)

・ジョコ・ウィドド大統領

出所)外務省より三菱総合研究所作成

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4) 経済動向

2000

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

出所)

一人当たりの

加が

出所)

経済動向

2000年代以降、

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

)IMF WEO より三菱総合研究所

一人当たりの GDP

加が GDP成長を上回った

)IMF WEO より三菱総合研究所

年代以降、GDP成長率は、

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

より三菱総合研究所

GDPは、2000

成長を上回ったため、若干の減少がみられる。

より三菱総合研究所

成長率は、5%前後で順調に推移している。ほかの国同様、

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

図 3-5

より三菱総合研究所作成

2000年から 2012

め、若干の減少がみられる。

図 3-6 一人当たりの

より三菱総合研究所作成

45

%前後で順調に推移している。ほかの国同様、

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

GDP成長率の推移

2012年までは、順調に伸びてきた。

め、若干の減少がみられる。

一人当たりの GDP

%前後で順調に推移している。ほかの国同様、

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

成長率の推移

年までは、順調に伸びてきた。

め、若干の減少がみられる。

GDPと人口の推移

%前後で順調に推移している。ほかの国同様、

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

年までは、順調に伸びてきた。2013年以降は、人口増

と人口の推移

%前後で順調に推移している。ほかの国同様、2009年にはリ

ーマンショックの影響がみられるが、減少幅が少なく、その後成長率は回復している。

2013年以降は、人口増

年にはリ

年以降は、人口増

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【マレーシア】

1) 基本情報

マレーシア(正式名称:)はクアラルンプールを首都とする人口約 3,118万人の議会制民主主義

の立憲君主制国家である。15 世紀初めにはマラッカ王国が成立したが、16 世紀に入るとポルトガ

ル、その後は英国の支配化となった。1948年英国保護領としてマラヤ連邦を形成、1957年に平和

的に独立し、1963年にはマレーシアが成立。1965年にはシンガポールがマレーシアから分離独立

した。

表 3-9 基本情報

首都 クアラルンプール

人口 3,118万人(2015年)

国土面積 33万 km2(日本の約 0.9倍)

名目 GDP 2,962億 USドル(2015年)

一人当たり GDP 9,500USドル(2015年)

言語 マレー語、英語、中国語、タミル語

宗教 イスラム教、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教等

民族構成 マレー系(67%)、中華系(25%)、インド系(7%)

通貨 リンギット(MYR)

為替レート 1JPY=0.04MYR(2016年 11月)

出所)JETRO、外務省、IMF、Bloombergより三菱総合研究所作成

2) 人口

IMF データによると、現在 3000 万人程度の人口で、今後も人口増加が続くと予想されている。

都市化率が 75%と ASEAN の中では高めである。

3) 政治体制

表 3-10 政治体制・内政

政体 立憲君主制

元首 ムハンマド 5 世

議会 二院制

上院:70議席、任期 3 年。44名は国王任命、26名は州議会指名。

下院:222議席、任期 5 年。直接選挙(小選挙区制)

・首相 ナジブ・ラザク

出所)外務省、マレーシアオンラインより三菱総合研究所作成

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4) 経済動向

タイと同様、

すべきなのは、

きているのも特徴である。

出所)

マレーシアは、一人当たり

高い国である。

出所)

経済動向

タイと同様、GDP

すべきなのは、2001

きているのも特徴である。

)IMF WEO より三菱総合研究所

マレーシアは、一人当たり

高い国である。

)IMF WEO より三菱総合研究所

GDP の振れ幅が大きい。

2001年の IT バブル崩壊であろう。ただ、それ以外の年は、安定して

きているのも特徴である。

より三菱総合研究所

マレーシアは、一人当たり GDP

より三菱総合研究所

の振れ幅が大きい。2009

バブル崩壊であろう。ただ、それ以外の年は、安定して

図 3-7

より三菱総合研究所作成

GDPが約 10,000US

図 3-8 一人当たりの

より三菱総合研究所作成

47

2009 年の減少は他国同様リーマンショックであるが、特筆

バブル崩壊であろう。ただ、それ以外の年は、安定して

GDP成長率の推移

10,000USドルと、

一人当たりの GDP

年の減少は他国同様リーマンショックであるが、特筆

バブル崩壊であろう。ただ、それ以外の年は、安定して

成長率の推移

ドルと、ASEAN の中ではシンガポールに次いで

GDPと人口の推移

年の減少は他国同様リーマンショックであるが、特筆

バブル崩壊であろう。ただ、それ以外の年は、安定して

の中ではシンガポールに次いで

と人口の推移

年の減少は他国同様リーマンショックであるが、特筆

バブル崩壊であろう。ただ、それ以外の年は、安定して 5%を維持して

の中ではシンガポールに次いで

年の減少は他国同様リーマンショックであるが、特筆

%を維持して

の中ではシンガポールに次いで

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48

【ミャンマー】

1) 基本情報

ミャンマー(正式名称:ミャンマー連邦共和国)はネーピードーを首都とする共和制国家である。

11 世紀半ばに最初の統一王朝・バガン王朝が成立。19 世紀には英国領となるが、1948年にビル

マ連邦として独立を果たす。1962年に軍事クーデターにより社会主義政権が樹立。1988年にデモ

により社会主義政権が崩壊、1990 年にはビルマ独立の主導者アウン・サン将軍の娘のアウンサン

スーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したが、政権を移譲されなかった。2010 年にスー

チー氏の自宅軟禁が解除され、また新憲法に基づく総選挙が実施。2011 年テイン・セイン大統領

による新政府が発足、国名もミャンマー連邦共和国に変更し、民政移管を果たす。2016 年には

NLD による新たな政権運営が始まった。

表 3-11 基本情報

首都 ネーピードー

人口 5,184万人(2015年)

国土面積 67万 km2(日本の約 1.8倍)

名目 GDP 628億 USドル(2015年)

一人当たり GDP 1,212USドル(2015年)

言語 ミャンマー語、シャン語、カレン語、英語等多数

宗教 仏教(89%)、キリスト教(5%)、イスラム教(4%)、ヒンドゥー教

(1%)等

民族構成 主にビルマ族(70%)、シャン族(9%)、カレン族(7%)、ラカイ

ン族(4%)等

通貨 チャット(MMK )

為替レート 1JPY=12.47MMK(2016年 11月)

出所)JETRO、外務省、IMF、Bloombergより三菱総合研究所作成

2) 人口

IMF データによると、人口は 5000 万人程度。人口増加率は、0.8%と高くはない。都市化率は

34%と、都市化が進んでいない。医療衛生水準の低さから、5 歳以下の死亡率が 60%とかなり高

いことが特徴。

3) 政治体制

表 3-12 政治体制・内政

政体 大統領制、共和制

元首 ティン・チョウ大統領

議会 二院制

上院(民族代表院) 定数 224(選挙議席 168,軍人代表議席 56)

下院(国民代表院) 定数 440(選挙議席 330,軍人代表議席 110)

・元首 ティン・チョウ大統領

出所)外務省より三菱総合研究所作成

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4) 経済動向

他の

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

2011

出所)

一人当たり

成長とともに、伸びを見せたが、その後は鈍化している。

出所)

【フィリピン】

1) 基本情報

フィリピン

経済動向

他の ASEAN 諸国に比べて、かなり特殊な

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

2011年の文民政権成立で、海外からの投資が伸び、高い経済成長率を誇る。

)IMF WEO より三菱総合研究所

一人当たり GDP

成長とともに、伸びを見せたが、その後は鈍化している。

)IMF WEO より三菱総合研究所

【フィリピン】

基本情報

フィリピン(正式名称:フィリピン共和国)は

諸国に比べて、かなり特殊な

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

年の文民政権成立で、海外からの投資が伸び、高い経済成長率を誇る。

より三菱総合研究所

GDPは、他の ASEAN

成長とともに、伸びを見せたが、その後は鈍化している。

より三菱総合研究所

(正式名称:フィリピン共和国)は

諸国に比べて、かなり特殊な

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

年の文民政権成立で、海外からの投資が伸び、高い経済成長率を誇る。

図 3-9

より三菱総合研究所作成

ASEAN諸国と比較すると、かなりの低水準である。

成長とともに、伸びを見せたが、その後は鈍化している。

図 3-10 一人当たりの

より三菱総合研究所作成

(正式名称:フィリピン共和国)は

49

諸国に比べて、かなり特殊な GDP 成長率の推移をたどっている。

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

年の文民政権成立で、海外からの投資が伸び、高い経済成長率を誇る。

GDP成長率の推移

諸国と比較すると、かなりの低水準である。

成長とともに、伸びを見せたが、その後は鈍化している。

一人当たりの GDP

(正式名称:フィリピン共和国)はマニラ首都圏

成長率の推移をたどっている。

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

年の文民政権成立で、海外からの投資が伸び、高い経済成長率を誇る。

成長率の推移

諸国と比較すると、かなりの低水準である。

成長とともに、伸びを見せたが、その後は鈍化している。

GDPと人口の推移

マニラ首都圏を首都とする人口約

成長率の推移をたどっている。

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

年の文民政権成立で、海外からの投資が伸び、高い経済成長率を誇る。

諸国と比較すると、かなりの低水準である。2000

と人口の推移

を首都とする人口約 10,215

成長率の推移をたどっている。2000年代前半

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

2000年代は、経済

10,215万人の立憲

年代前半

は、天然ガス輸出がその経済成長率を支えたが、リーマンショックで一時低下がみられた。その後、

年代は、経済

万人の立憲

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50

共和制国家である。16 世紀にスペインの統治下となり、19 世紀には米国の統治下となった。1946

年にフィリピン共和国として独立を果たす。

表 3-13 基本情報

首都 マニラ首都圏

人口 10,215万人(2015年)

国土面積 30万 km2(日本の 0.8倍)

名目 GDP 2,924億 USドル(2015年)

一人当たり GDP 2,862USドル(2015年)

言語 フィリピノ語、英語、セブアノ語等

宗教 カトリック教(82.9%)、イスラム教(5.1%)等

民族構成 マレー系、その他中華系、スペイン系及びこれらとの混血並

びに少数民族

通貨 ペソ(PHP)

為替レート 1JPY=0.47PHP(2016年 11月)

出所)JETRO、外務省、IMF、Bloombergより三菱総合研究所作成

2) 人口

IMF データによると、人口が 1 億人を超えており、人口増加率も高く、今後も人口増加が見込ま

れる。若年人口率(15歳以下)が 32%と高く、労働年齢人口が 61%となっている。

3) 政治体制

表 3-14 政治体制・内政

政体 立憲共和制

元首 ロドリゴ・ドゥテルテ大統領

議会 二院制

上院 24議席(任期 6 年、連続三選禁止。)

下院 297議席(任期 3 年、連続四選禁止。)

・副大統領 レニ・ロブレド

出所)外務省より三菱総合研究所作成

4) 経済動向

2000年代は、GDP成長率が 5%程度で、ASEAN諸国の中では、比較的低調であったが、近年

はアキノ政権により、経済成長が鈍化してきた他国に比べ、比較的好調といえる。2011年の下落は、

外需低迷や、前年の高成長の反動で低下した。

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出所)

一人当たり

出所)

)IMF WEO より三菱総合研究所

一人当たり GDP

)IMF WEO より三菱総合研究所

より三菱総合研究所

GDPの伸びは、比較的少ないものの、安定的な成長が達成されてきた。

より三菱総合研究所

図 3-11

より三菱総合研究所作成

の伸びは、比較的少ないものの、安定的な成長が達成されてきた。

図 3-12 一人当たりの

より三菱総合研究所作成

51

11 GDP成長率の推移

の伸びは、比較的少ないものの、安定的な成長が達成されてきた。

一人当たりの GDP

成長率の推移

の伸びは、比較的少ないものの、安定的な成長が達成されてきた。

GDPと人口の推移

の伸びは、比較的少ないものの、安定的な成長が達成されてきた。

と人口の推移

の伸びは、比較的少ないものの、安定的な成長が達成されてきた。

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52

3.1.2 我が国企業にとっての各国の事業環境の比較分析

(1) 各国の事業環境

【タイ】

1) 貿易動向

ASEAN 進出化学企業ビジネスハンドブック55によると、主要な輸出品目は、「自動車・同部品」、

「コンピュータ・同部品」となる。また、産業の規模がある程度の水準にある品目は、「精製燃料」、

「宝石・宝飾品」、「エチレンポリマー」などの「化学製品」、「ゴム製品」となる。また対内直接投資で

は、業種別にみると「機械・金属加工」、「電子・電気機器」、「化学・紙」が高い割合となる。

日本との対タイ貿易収支をみると、2009年~2012年まで一貫して日本側の黒字が続いている。

2012年の時点では、日本側からみると、タイは輸出先としては第 5 位、輸入先としては第 12位とな

り、日本の欧州最大の貿易国であるドイツへの輸出額の約 2 倍、輸入額ではほぼ同規模となる。

表 3-15 日本の対タイ貿易

(単位:億円)

2009 2010 2011 2012

輸出 20,697 29,937 29,885 34,889

輸入 14,952 18,400 19,532 18,857

収支 5,745 11,537 10,354 16,032

出所)ARC レポートより三菱総合研究所作成

2) 貿易管理制度

JETROによると貿易に関する主な協定加盟状況と貿易管理制度は以下の通り。

表 3-16 WTO・他協定加盟状況

WTO・他協定 WTO(世界貿易機関)、APEC(アジア太平洋経済協力会

議)、FTA(ASEAN 地域及び非 ASEAN 地域の自由貿易

協定)、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟

二国間協定 オーストラリア、インド、日本、米国、バーレーン、ペルー、

ニュージーランド、欧州自由貿易連合、EU、チリ、パキス

タン、トルコ

出所)JETROより三菱総合研究所作成

表 3-17 主な貿易管理制度

管轄官庁 商務省外国貿易局

輸入 品目規制 輸出入管理法(B.E. 2522(1979))の関係規則により、輸入

規制を行っている

55 化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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53

地域規制 北朝鮮、イラン、コートジボワール、リビア、ソマリア、エリト

リア

関連法 1. 関税法

2. 輸出入管理法

3. 輸入が増加した品目に対してのセーフガード措置

4. 国際条約に関する商務省告示

5. その他規制

輸出 品目規制 輸出入管理法(B.E.2522(1979))に基づく関係細則によ

り、輸出規制品目を指定している

地域規制 エリトリア、リベリア、ソマリア、コンゴ(旧ザイール)、北朝

鮮、イラン、スーダン、コートジボワール及びリビアに対す

るすべての種類の武器及び関連機器の輸出を禁止(法

令に基づき一部例外あり)

関連法 1. 関税法

2. 輸出入管理法

出所)JETROより三菱総合研究所作成

3) 港湾

タイには主に 2 つの港がある。56

レムチャバン港:バンコクから 110キロメートルに位置する大水深港で、取扱いの 80%以上のコン

テナを取り扱っている。

バンコク港:河川港で、水深 5~8 メートルのため大型船は入港できない。また、市街地に近く、

後背地の拡張余地が少ない。

56化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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54

【ベトナム】

1) 貿易動向

ASEAN 進出化学企業ビジネスハンドブックによると、主要な輸出品目は、「電話機・同部品」、

「縫製品」、「コンピュータ電子製品・同品」、「履物」となる。また、対内直接投資では、業種別にみ

ると「加工・製造」と「不動産」が高い割合となる。

日本との対ベトナム貿易収支をみると、2009 年~2014 年まで一貫して日本側の赤字が続いて

おり、2010年以降拡大している。

表 3-18 日本の対ベトナム貿易

(単位:100万円)

2009 2010 2011 2012 2013 2014

輸出 607,826 715,559 763,796 857,308 1,029,449 1,252,797

輸入 649,003 715,711 919,857 1203,415 1,388,963 1,630,722

収支 △41,178 △152 △156,062 △346,107 △359,514 △377,925

出所)ARC レポートより三菱総合研究所作成

2) 貿易管理制度

JETROによると貿易に関する主な協定加盟状況と貿易管理制度は以下の通り。

表 3-19 WTO・他協定加盟状況

WTO・他協定 WTO、APEC、ASEAN、(TPP)、FTA、VN-EAEU FTA

(ベトナム・ユーラシア経済連合自由貿易協定)加盟

二国間協定 日本、米国、チリ、韓国

他 33カ国と通商協定、14カ国と投資協定締結

出所)JETROより三菱総合研究所作成

表 3-20 主な貿易管理制度

管轄官庁 商工省(MOIT)

CITES(通称ワシントン条約)に関する一部特定の品目に

ついては、農業農村開発省

輸入 品目規制 政令 187/2013/ND-CPに規定

地域規制 なし

関連法 食品安全法等

輸出 品目規制 政令 187/2013/ND-CPに規定

地域規制 なし

関連法 食品安全法等

出所)JETROより三菱総合研究所作成

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55

3) 港湾

ベトナムにおける、コンテナの取り扱いは、北部で 3 分の 1、南部が 3 分の 2 となる。57

北部最大の港は、ハノイ市の東に位置するハイフォン港となる。ただし、水深が浅く、大型船は

入港できないため、他の港での接続が必要となる。ハイフォン河川港沖合では、日本の ODA によ

り埋め立て造成中のコンテナ港となるラックフェン港は、水深が 14メートルあり 8,000TEU型の大型

コンテナ船の入港も可能になる。

南部では、カットライ港からカイメップ・チーパイ港へ比重が移りつつある。

57化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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56

【インドネシア】

1) 貿易動向

ASEAN 進出化学企業ビジネスハンドブックによると、主要な輸出品目は、「動物性油脂」、「鉱

物性燃料」、「電気機器・部品」、「ガス」となる。また、対内直接投資では、業種別にみると「農業」、

「鉱業」、「食品」、「化学・医薬品」、「金属・機械・電機」、「輸送機器」、「運輸・通信・倉庫業」が高

い割合となる。

日本との対インドネシア貿易収支をみると、2013年に輸出が最高金額となったが、一貫して日本

側の赤字が続いている。

表 3-21 日本の対インドネシア貿易

(単位:100万円)

2010 2011 2012 2013 2014 2015

輸出 1,394,459 1,412,232 1,618,682 1,661,795 1,560,452 1,396,293

輸入 2,476,179 2,715,956 2,576,391 2,812,987 2,390,346 2,390,346

収支 △1,081,720 △1,303,724 △957,709 △1,151,192 △1,155,106 △994,053

出所)ARC レポートより三菱総合研究所作成

2) 貿易管理制度

JETROによると貿易に関する主な協定加盟状況と貿易管理制度は以下の通り。

表 3-22 WTO・他協定加盟状況

WTO・他協定 WTO、APEC、ASEAN、OIC(イスラム諸国会議機構)、

FTA 加盟

二国間協定 日本等

出所)JETROより三菱総合研究所作成

表 3-23 主な貿易管理制度

管轄官庁 1. 工業省(産業全般)

2. 商業省(通商・貿易)

3. 財務省関税総局(関税)

4. 農業検疫庁(検疫制度)

輸入 品目規制 工業商業大臣決定 1997年第 230号等より規制あり

地域規制 品目により輸入港を限定

関連法 1. 1995年法律第 10号通関法

2. 輸入一般規定

3. バタムのシングルドキュメント通関

4. オンラインによる輸出入許認可供与

5. 商業法

6. 国内流通規程 等

輸出 品目規制 工業商業大臣決定 1997年第 230号等より規制あり

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57

地域規制 品目により輸出港を限定

関連法 1. 通関法 1995年法律第 10号

2. 輸出一般規定

3. 商業法

4. 輸出 FOB/CFR価額の保険料とフレート等

出所)JETROより三菱総合研究所作成

3) 港湾

ジャカルタ中心部から 20 キロメートルに位置するタンジュンプリオク港でインドネシア全体のコン

テナの半分以上を扱っている。が、既に取扱い能力を超えている。港湾内とアクセス道路の渋滞が

問題となっている。58

取扱能力増強のために北カリバル港、チラマヤ新港で拡張計画が進んでいる。

58化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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58

【マレーシア】

1) 貿易動向

ASEAN 進出化学企業ビジネスハンドブックによると、主要な輸出品目は、「電気・電子製品」、

「パーム油・同製品」、「液化天然ガス」、「石油製品」となる。また、対内直接投資では、業種別にみ

ると「鉱業」、「製造業」、「サービス業(特に金融・保険業)」が高い割合となる。

日本との対マレーシア貿易収支をみると、2010 年~2014 年まで一貫して日本側の赤字が続い

ており、年々拡大している。

表 3-24 日本の対マレーシア貿易

(単位:100万円)

2010 2011 2012 2013 2014

輸出 1,544,630 1,496,147 1,412,733 1,487,244 1,496,673

輸入 1,987,447 2,425,671 2,621,314 2,901,248 3,086,670

収支 △442,817 △929,524 △1,208,581 △1,414,004 △1,589,997

出所)ARC レポートより三菱総合研究所作成

2) 貿易管理制度

JETROによると貿易に関する主な協定加盟状況と貿易管理制度は以下の通り。

表 3-25 WTO・他協定加盟状況

WTO・他協定 WTO、APEC、ASEAN、FTA 加盟

二国間協定 日本、パキスタン、ニュージーランド、チリ、インド、オースト

ラリア、トルコ

韓国、米国、カタール、EU とは協議中

出所)JETROより三菱総合研究所作成

表 3-26 主な貿易管理制度

管轄官庁 国際貿易産業省、税関局

2013年、政府機関への問合わせ等窓口「1 Malaysia One

Call Centre」(1MOCC)を設置

輸入 品目規制 1967年関税法にて規定

地域規制 インドネシアは木材、イスラエルは全品について、輸入ラ

イセンスが必要

関連法 1967 年関税法、ワシントン条約に基づいた関連法、2010

年戦略貿易法等

輸出 品目規制 1967年関税法及び 2012年関税(輸出禁止)令

地域規制 イスラエルは全品について、輸出ライセンスが必要

関連法 1967年関税法

出所)JETROより三菱総合研究所作成

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59

3) 港湾

マレーシアにおける、ポートクラン、ペナン港、ジョホール港、タンジュン・ペラパス港と 4 つのコン

テナ港がある。59

コンテナ取扱量は世界ランクでポートクラン 13 位、タンジュン・ペラパス港が 18 位と上位に位置

する。タンジュン・ペラパス港は、マースクやエバーグリーンがハブ港として利用。

59化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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【ミャンマー】

1) 貿易動向

ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブックによると、主要な輸出品目は、「天然ガス」、「豆類」、

「縫製品」、「翡翠」となる。「天然ガス」と「縫製品」が近年伸びてきている。また、対内直接投資では、

業種別にみると「石油・ガス」、「輸送・通信業」、「製造業」、「不動産開発」が高い割合となる。近年

の傾向をみると、「輸送・通信業」、「製造業」が期待できる。

日本との対ミャンマー貿易収支をみると、2012年以降は日本側の黒字が続いている。2012年は

政府の中古車輸入規制の大幅な緩和が輸送用機器輸出の追い風となり黒字となった。

表 3-27 日本の対ミャンマー貿易

(単位:100万円)

2008 2010 2011 2012 2013 2014

輸出 19,498 22,927 40,046 100,350 103,181 125,893

輸入 32,663 33,789 46,981 53,624 74,065 91,037

収支 △13,165 △10,861 △6,935 46,726 29,116 34,856

出所)ARC レポートより三菱総合研究所作成

2) 貿易管理制度

JETROによると貿易に関する主な協定加盟状況と貿易管理制度は以下の通り。

表 3-28 WTO・他協定加盟状況

WTO・他協定 WTO、ASEAN、BIMSTEC(ベンガル湾多分野技術・経

済協力イニシアチブ)加盟

二国間協定 日本

出所)JETROより三菱総合研究所作成

表 3-29 主な貿易管理制度

管轄官庁 商業省貿易局、商業・消費者局

輸入 品目規制 2013年 2 月 4 日付商業省大臣官房通達第 8 号/2013、税

関法等により規制あり

地域規制 国際連合安全保障理事会決議及び世界貿易機関

(WTO)合意に基づく制裁対象国

関連法 輸出入法及び同法に基づく商業省命令、通達等

輸出 品目規制 12品目(分類)とチーク含む「丸太」木材

地域規制 国際連合安全保障理事会決議及び世界貿易機関

(WTO)合意に基づく制裁対象国

関連法 輸出入法及び同法に基づく商業省命令、通達等

出所)JETROより三菱総合研究所作成

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61

3) 港湾

ミャンマー全国輸出入貨物の 80~90%をヤンゴン港で扱っている。60

ヤンゴン港は河口から 32キロメートル遡った場所に位置し、河川港のため、入港できる船の大き

さに制限がある。そのため、シンガポール接続のフィーダーに頼らざるを得ない状況で、大水深港

の開発が課題となる。

60化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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62

【フィリピン】

1) 貿易動向

ASEAN 進出化学企業ビジネスハンドブックによると、主要な輸出品目は、「集積回路」、「木材・

同製品」、「自動データ処理機械」となる。また、対内直接投資では、業種別にみると「製造業」、

「管理・支援活動」、「不動産」、「建設」、「情報・通信」が伸びている。

日本との対フィリピン貿易収支をみると、2015 年に輸出入あわせて約 2.2 兆円となり、前年より

4.7%増加となった。2014年赤字であったが 2015年に黒字に戻している。

表 3-30 日本の対フィリピン貿易

(単位:100万円)

2010 2011 2012 2013 2014 2015

輸出 968,784 894,085 945,776 944,458 1,046,058 1,148,077

輸入 697,781 712,066 745,480 901,123 1,076,327 1,073,825

収支 274,003 182,019 200,296 433,335 △30,269 74,252

出所)ARC レポートより三菱総合研究所作成

2) 貿易管理制度

JETROによると貿易に関する主な協定加盟状況と貿易管理制度は以下の通り。

表 3-31 WTO・他協定加盟状況

WTO・他協定 WTO、ASEAN 加盟

他国間協定(ASEAN、日本、中国、韓国、オーストラリア・

ニュージーランド、インド、EFTA 等)

二国間協定 日本、米国

出所)JETROより三菱総合研究所作成

表 3-32 主な貿易管理制度

管轄官庁 貿易産業省(貿易政策の策定)

環境自然資源省(ワシントン条約について)

農業省植物産業局、動物産業局(動植物の検疫証明書

発行)

輸入 品目規制 関税法により規制

地域規制 一部の社会主義国からの輸入は、貿易産業省及び国際

貿易公社の承認が必要

関連法 セーフガード法、アンチダンピング法、相殺関税法、戦略

取引管理法、右ハンドル車輸入禁止法等

輸出 品目規制 関税局回状(Customs Memorandum Circular)第 64-2014

号にて規制あり

地域規制 なし

関連法 輸出促進法(共和国法第 7844号)

出所)JETROより三菱総合研究所作成

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63

3) 港湾

ASEAN 進出化学企業ビジネスハンドブックによると、近年の経済の好調を背景に貨物が急増し

ている。マニラ市内のトラック走行規制などがマニラ港の混雑に拍車をかけている。バタンガス港及

びスービック港に寄港地をかえる船社もいる。61

61化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

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64

(2) 各国の事業環境比較

上記の貿易動向以外、各対象国における主なインフラの整備状況について、タイとマレーシア

は、比較的先行していて、その他の 4 か国はまだ発展途上であることが明白である。しかしながら、

前述のとおり、今後の成長市場として各国からの支援を基にインフラ整備が急ピッチで進められて

おり、ASEAN 域内貿易の活発化も相まって、ASEAN 域内におけるインフラ整備も加速することが

期待される。

化学産業について、各国の「輸出」及び「投資」品目により、タイとインドネシアは化学品産業に

重点を置いていると言える。

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3.2 我が国化学系企業の

3.2.1

我が国企業にとって、成長面での

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

を図る企業も増えており、

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

られている。一方で、ラオス、カンボジア、ミャンマー(

ポテンシャルが高く、今後、我

(1) 一般的な展開プロセス

このように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

事業部署や現地法人が実施する場合が多い。

出所)

(2) ASEAN

ASEAN

我が国化学系企業の

3.2.1 我が国企業における

我が国企業にとって、成長面での

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

を図る企業も増えており、

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

られている。一方で、ラオス、カンボジア、ミャンマー(

ポテンシャルが高く、今後、我

一般的な展開プロセス

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

事業部署や現地法人が実施する場合が多い。

図 3-13

)三菱総合研究所

ASEAN に進出している日系企業の特徴

ASEAN に進出している日系企業の状況をみると、以下の通りである。

表 3-33 にあるように、

我が国化学系企業の ASEAN

我が国企業における ASEAN

我が国企業にとって、成長面での

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

を図る企業も増えており、ASEAN5

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

られている。一方で、ラオス、カンボジア、ミャンマー(

ポテンシャルが高く、今後、我が国企業の進出拡大が期待されている。

一般的な展開プロセス

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

事業部署や現地法人が実施する場合が多い。

我が国企業における

三菱総合研究所作成

に進出している日系企業の特徴

に進出している日系企業の状況をみると、以下の通りである。

にあるように、ASEAN

ASEAN 展開の実態と課題の全体像

ASEAN 展開の実態

我が国企業にとって、成長面でのポテンシャルの高い

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

ASEAN5(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の中進国

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

られている。一方で、ラオス、カンボジア、ミャンマー(

が国企業の進出拡大が期待されている。

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

事業部署や現地法人が実施する場合が多い。

我が国企業における ASEAN

に進出している日系企業の特徴

に進出している日系企業の状況をみると、以下の通りである。

ASEAN 地域に進出している日系企業は総数

65

展開の実態と課題の全体像

の実態

ポテンシャルの高い

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の中進国

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

られている。一方で、ラオス、カンボジア、ミャンマー(CLM

が国企業の進出拡大が期待されている。

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

事業部署や現地法人が実施する場合が多い。

ASEAN 展開の一般的なプロセス(参入判断まで)

に進出している日系企業の特徴

に進出している日系企業の状況をみると、以下の通りである。

地域に進出している日系企業は総数

展開の実態と課題の全体像

ポテンシャルの高い ASEAN 諸国への進出は、海外戦略上、

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の中進国

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

CLM 諸国)といった後発開発途上国は成長

が国企業の進出拡大が期待されている。

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

展開の一般的なプロセス(参入判断まで)

に進出している日系企業の状況をみると、以下の通りである。

地域に進出している日系企業は総数

諸国への進出は、海外戦略上、

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の中進国

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

諸国)といった後発開発途上国は成長

が国企業の進出拡大が期待されている。

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

展開の一般的なプロセス(参入判断まで)

に進出している日系企業の状況をみると、以下の通りである。

地域に進出している日系企業は総数 1 万社弱で、世界全体の

諸国への進出は、海外戦略上、

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の中進国

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

諸国)といった後発開発途上国は成長

のように日本国内の市場が成熟する中で、多くの企業が成長戦略の重要な柱として、ASEAN

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

展開の一般的なプロセス(参入判断まで)

万社弱で、世界全体の

諸国への進出は、海外戦略上、

極めて重要である。既にタイには、日系メーカーを中心とした自動車産業が根付き、化学系企業を

含むサプライヤー企業の多くが進出を果たしている。また、インフラ整備が進むベトナムへの進出

(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム)の中進国

は直近成長率の鈍化がみられるものの、我が国企業にとって今後とも重要な市場として位置付け

諸国)といった後発開発途上国は成長

ASEAN

市場への参入を進めている又は進めようとしているが、この参入判断(事業化判断)までの展開プ

ロセスは一般的には以下の通りである。なお、対象国の選定~事業化判断までは経営企画部署の

ような全社部署が、参入判断後の具体的な事業計画の立案~現地拠点設立~事業運営は海外

万社弱で、世界全体の

Page 70: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

13.6%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

ている割合が高いが、図

徴的である。一方で、業種別にみると、

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

出所)

出所)

中東アフリカ

アジア

総数

大洋州北⽶中⽶・カリブ南⽶⻄欧中・東欧、旧ソ連

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

ている割合が高いが、図

徴的である。一方で、業種別にみると、

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

)外務省「海外在留邦人数調査統計」より

)外務省「海外在留邦人数調査統計」より

ASEANASEAN以外

アフリカ

アジア

大洋州

中⽶・カリブ

中・東欧、旧ソ連

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

ている割合が高いが、図 3-14

徴的である。一方で、業種別にみると、

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

表 3-33

外務省「海外在留邦人数調査統計」より

図 3-14 ASEAN

外務省「海外在留邦人数調査統計」より

総数71,1299,658

ASEAN以外 40,3251,3158,6491,1301,3785,7731,458

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

14 にあるように、経年でみると現地法人企業の数が増えているのが特

徴的である。一方で、業種別にみると、図 3

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

地域別進出企業数(

外務省「海外在留邦人数調査統計」より三菱総合研究所

ASEAN 地域における法人種類別進出企業数の推移

外務省「海外在留邦人数調査統計」より三菱総合研究所

総数 シェア71,1299,658

40,3251,3158,6491,1301,3785,7731,458

756687

66

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

にあるように、経年でみると現地法人企業の数が増えているのが特

3-15 にあるように、製造業が圧倒的に多いが、近年、周

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

地域別進出企業数(2015

三菱総合研究所作成

地域における法人種類別進出企業数の推移

三菱総合研究所作成

シェア100.0%13.6%56.7%1.8%

12.2%1.6%1.9%8.1%2.0%1.1%1.0%

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

にあるように、経年でみると現地法人企業の数が増えているのが特

にあるように、製造業が圧倒的に多いが、近年、周

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

2015年 10月 1

作成

地域における法人種類別進出企業数の推移

作成

本邦企業4,6651,1371,149

8347986

110728337368188

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

にあるように、経年でみると現地法人企業の数が増えているのが特

にあるように、製造業が圧倒的に多いが、近年、周

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

1 日現在)

地域における法人種類別進出企業数の推移

現地法人企業33,2777,4597,9521,2207,5951,0381,2544,8251,090

371473

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

にあるように、経年でみると現地法人企業の数が増えているのが特

にあるように、製造業が圧倒的に多いが、近年、周

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

地域における法人種類別進出企業数の推移

現地法人企業 その他33,277 33,1877,459 1,0627,952 31,2241,2207,5951,0381,2544,8251,090

371473

単位:社

%を占めている。また、その法人種類別の内訳をみると、他の地域と比べ、本邦企業が進出し

にあるように、経年でみると現地法人企業の数が増えているのが特

にあるように、製造業が圧倒的に多いが、近年、周

辺の中堅・中小のサービス業系企業の進出が増えており、製造業に次ぐ進出数となっている。

その他33,1871,062

31,22412

5756

14220311726

単位:社

Page 71: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

出所)

次に、

フィリピン、マレーシア、シンガポールにおける進出企業数が

類でみると、図

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

みると、図

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

)外務省「海外在留邦人数調査統計

次に、ASEAN

フィリピン、マレーシア、シンガポールにおける進出企業数が

類でみると、図 3-17

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

みると、図 3-18 にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

図 3-15

海外在留邦人数調査統計

域内の各国の状況をみると、図

フィリピン、マレーシア、シンガポールにおける進出企業数が

17にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

15 業種別進出企業数(

海外在留邦人数調査統計」より三菱総合研究所

域内の各国の状況をみると、図

フィリピン、マレーシア、シンガポールにおける進出企業数が

にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

67

業種別進出企業数(ASEAN

三菱総合研究所作成

域内の各国の状況をみると、図 3-16

フィリピン、マレーシア、シンガポールにおける進出企業数が

にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

ASEAN 全体:2015

作成

16 にあるように、タイ、インドネシア、ベトナム、

フィリピン、マレーシア、シンガポールにおける進出企業数が 1000

にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

2015年)

にあるように、タイ、インドネシア、ベトナム、

1000 社を超えている。また、法人種

にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

発開発途上国では、農業、林業といった一次産業や建設業の割合が高い。

にあるように、タイ、インドネシア、ベトナム、

社を超えている。また、法人種

にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

にあるように、タイ、インドネシア、ベトナム、

社を超えている。また、法人種

にあるように、ミャンマー、ブルネイで本邦企業の割合が高く、タイのように既に

日系企業の進出が進んでいる国では現地法人企業の割合が高くなっている。一方で、業種別に

にあるように、全般的に製造業の割合が高いものの、ミャンマーやラオスのように後

Page 72: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

出所)

出所)

)外務省「海外在留邦人数調査統計

)外務省「海外在留邦人数調査統計

図 3-16

海外在留邦人数調査統計

図 3-17 国別法人種類別進出企業数(

海外在留邦人数調査統計

16 国別進出企業数(

海外在留邦人数調査統計」より三菱総合研究所

国別法人種類別進出企業数(

海外在留邦人数調査統計」より三菱総合研究所

68

国別進出企業数(2015

三菱総合研究所作成

国別法人種類別進出企業数(

三菱総合研究所作成

2015年 10月 1 日現在)

作成

国別法人種類別進出企業数(2015年 10

作成

日現在)

10月 1 日現在)

日現在)

Page 73: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

出所)

(3) ASEAN

日系企業の

(図中の

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。

みると、

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

表 3-34

た ASEAN

いることがわかる。

)外務省「海外在留邦人数調査統計

ASEAN 展開の今後の見通し

日系企業の ASEAN

(図中の ASEAN5

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。

みると、図3.-20にあるように、ベトナムについて

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

34にあるように、

ASEAN 地域の国々がトップ

いることがわかる。

図 3-18 国別業種別進出企業数(

海外在留邦人数調査統計

展開の今後の見通し

ASEAN 展開の今後の見通しについてみると、図

ASEAN5 及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。

にあるように、ベトナムについて

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

にあるように、近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

地域の国々がトップ

いることがわかる。

国別業種別進出企業数(

海外在留邦人数調査統計」より三菱総合研究所

展開の今後の見通し

展開の今後の見通しについてみると、図

及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。

にあるように、ベトナムについて

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

地域の国々がトップ 5 を占めており、依然として日系企業の進出先として有望視

69

国別業種別進出企業数(2015

三菱総合研究所作成

展開の今後の見通しについてみると、図

及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。

にあるように、ベトナムについて「強化・拡大する」と回答した企業が

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

を占めており、依然として日系企業の進出先として有望視

2015年 10月

作成

展開の今後の見通しについてみると、図 3-

及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。

「強化・拡大する」と回答した企業が

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

を占めており、依然として日系企業の進出先として有望視

月 1 日現在)

-19 にあるように、

及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

企業が「強化・拡大する」と回答しており、依然として拡大傾向にある。ASEAN 地域内の各国別で

「強化・拡大する」と回答した企業が

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

を占めており、依然として日系企業の進出先として有望視

にあるように、ASEAN

及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

地域内の各国別で

「強化・拡大する」と回答した企業が70%以上と高く、

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

を占めており、依然として日系企業の進出先として有望視されて

ASEAN 地域

及びその他アジア・大洋州の一部)は若干減少がみられるものの、半数以上の

地域内の各国別で

%以上と高く、

次いでミャンマー、インドネシアとなっている。また、今後の中期有望事業展開国についてみると、

近年、インドの存在感が増しているものの、インドネシア、タイ、ベトナムといっ

されて

Page 74: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

出所)

出所)

)国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より

)国際協力銀行「

図 3-19

力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より

図 3-20 中期的海外事業展開見通しの推移(

国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告

中期的海外事業展開見通しの推移(地域別)

力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より

中期的海外事業展開見通しの推移(

わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告

70

中期的海外事業展開見通しの推移(地域別)

力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より

中期的海外事業展開見通しの推移(

わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告

中期的海外事業展開見通しの推移(地域別)

力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より

中期的海外事業展開見通しの推移(ASEAN

わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より

中期的海外事業展開見通しの推移(地域別)

力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より三菱総合研究所

ASEAN:2016年)

より三菱総合研究所

三菱総合研究所作成

年)

三菱総合研究所作成

Page 75: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

71

表 3-34 中期的有望事業展開先ランキング TOP10

出所)国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より三菱総合研究所作成

(4) ASEAN 展開の課題

前述のように、日系企業の ASEAN展開は今後も拡大傾向にあるが、一方で、展開にあたり課題

もあげられている。図 3-21 は中期的有望事業展開先上位 10 か国の課題を示したものであるが、

ASEAN 諸国の課題として大きいのが「法制の運用が不透明(3 か国)」「管理職クラスの人材確保

が困難(2か国)」「労働コストの上昇(2か国)」「他社との厳しい競争(2か国)」「インフラが未整備(3

か国)」となっている。

2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

1位 中国 インドネシア インド インド インド

2位 インド インド インドネシア インドネシア中国 中国

3位 インドネシア タイ 中国 インドネシア

4位 タイ 中国 タイ タイ ベトナム

5位 ベトナム ベトナム ベトナム ベトナム タイ

6位 ブラジル ブラジル メキシコ メキシコ メキシコ

7位 メキシコ メキシコ ブラジル ⽶国 ⽶国

8位 ロシア ミャンマー ⽶国 フィリピン フィリピン

9位 ⽶国 ロシア ロシア ブラジル ミャンマー

10位 ミャンマー ⽶国 ミャンマー ミャンマー ブラジル

Page 76: 平成28年度化学物質安全対策 (化学物質管理分野 …3 2. 化学物質管理制度に関する調査 2.1 ASEAN 各国の化学物質管理制度の最新情報 本節では、ASEAN

72

図 3-21 中期的有望事業展開先上位 10か国の課題

出所)国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」より三菱総合研究所作成

3.2.2 我が国化学系企業の ASEAN おける事業展開の実態(タイを事例として)

(1) 我が国化学系企業のタイにおける事業展開の位置づけ

我が国化学系企業の ASEAN 進出の歴史を辿ると、1960年代から、東レが紡績事業でタイに進

出し、1970年代から、三菱ケミカルがタイで製造販売事業を展開し始めた。さらに、1980~19990年

代に入り、新市場獲得、輸出拠点確保等のため、東南アジアを中心に直接投資を増やした。現在、

化学産業の貿易額は増加を続けており、特に有機化学品やプラスチック品等の石化誘導品、肥料、

塗料、化粧品等の化学品のタイから日本への輸出は格段に増えている。

現在、タイに進出している企業は約 70社となっている。そのうち、製造業は約 40社、販売拠点を

持つ企業は約 40 社、運輸・倉庫業は 5 社である。62我が国企業の多くが ASEAN に進出し、現地

で生産活動をはじめとする経済活動に従事している。中国経済減速の影響及び人件費高騰の影

響で、中国集中の海外投資から「China Plus One」への動きが見られる。その中、巨大市場を抱え

ている ASEAN は我が国企業にとって存在感が益々高まっている。

タイは、ASEANの中心国であり、政局の不安や人件費の上昇等の課題を抱えているが、堅実な

62 化学工業日報社(2017)「ASEAN進出化学企業ビジネスハンドブック」

50%以上 30%以上

1位インド

2位中国

3位インドネシア

4位ベトナム

5位タイ

6位メキシコ

7位⽶国

8位フィリピン

9位ミャンマー

10位ブラジル

1.法制が未整備 16.0% 10.7% 17.8% 18.9% 2.5% 6.1% 0.0% 14.3% 55.3% 23.5%2.法制の運⽤が不透明 35.4% 50.8% 36.8% 35.6% 13.2% 16.5% 1.6% 23.8% 38.3% 29.4%3.徴税システムが複雑 32.5% 12.8% 10.5% 6.1% 5.8% 6.1% 0.0% 9.5% 6.4% 20.6%4.税制の運⽤が不透明 25.9% 23.5% 18.4% 19.7% 4.1% 10.4% 0.0% 14.3% 8.5% 20.6%5.課税強化 13.2% 24.6% 13.2% 7.6% 8.3% 4.3% 11.1% 11.9% 4.3% 14.7%6.外資規制 15.1% 26.2% 19.7% 8.3% 15.7% 2.6% 1.6% 21.4% 27.7% 14.7%7.投資許認可⼿続きが煩雑・不透明 17.0% 14.4% 17.8% 16.7% 7.4% 7.0% 0.0% 14.3% 23.4% 8.8%8.知的財産権の保護が不⼗分 8.0% 45.5% 9.2% 6.1% 6.6% 2.6% 0.0% 9.5% 14.9% 5.9%9.為替規制・送⾦規制 14.6% 31.0% 17.8% 7.6% 3.3% 1.7% 0.0% 9.5% 19.1% 14.7%10.輸入規制・通関⼿続き 12.7% 18.2% 15.1% 8.3% 6.6% 6.1% 3.2% 11.9% 21.3% 14.7%11.技術系人材の確保が困難 11.8% 17.1% 13.8% 18.9% 28.1% 24.3% 11.1% 21.4% 25.5% 5.9%12.管理職クラスの人材確保が困難 15.6% 16.0% 21.7% 31.1% 28.1% 34.8% 19.0% 33.3% 25.5% 14.7%13.労働コストの上昇 20.3% 68.3% 34.9% 27.3% 48.3% 28.7% 14.3% 9.5% 12.8% 17.6%14.労務問題 21.2% 23.0% 16.4% 10.6% 6.6% 8.7% 7.9% 2.4% 2.1% 8.8%15.他社との厳しい競争 34.9% 55.1% 39.5% 27.3% 43.8% 18.3% 74.6% 26.2% 21.3% 35.3%16.代⾦回収が困難 13.7% 19.8% 5.3% 3.8% 2.5% 3.5% 0.0% 2.4% 12.8% 8.8%17.資⾦調達が困難 6.1% 3.7% 3.9% 3.8% 0.8% 1.7% 1.6% 4.8% 12.8% 5.9%18.地場裾野産業が未発達 11.8% 1.6% 7.2% 12.1% 4.1% 7.8% 0.0% 26.2% 27.7% 8.8%19.通貨・物価の安定感がない 9.4% 6.4% 16.4% 9.8% 3.3% 13.9% 0.0% 7.1% 19.1% 38.2%20.インフラが未整備 51.4% 6.4% 28.3% 31.1% 9.1% 14.8% 0.0% 35.7% 59.8% 29.4%21.治安・社会情勢が不安 28.8% 20.9% 31.6% 7.6% 24.0% 58.3% 1.6% 28.6% 25.5% 61.8%22.投資先国の情報不⾜ 12.7% 1.1% 4.6% 9.1% 6.6% 9.6% 3.2% 7.1% 31.9% 14.7%

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発展スピードを保っている。今後のポテンシャルが高いと見られる。

今回の現地インタビュー及び文献調査を通し、我が国化学系企業がタイにおいて事業を展開す

る理由及び位置づけは以下の通りである。

まず、インフラが整備されている点が多数上げられた。タイは、ASEAN 各国の中で先発国であり、

インフラ整備の状況は他国より進んでいる。各工業団地から空港と港へのアクセスが良く、電気、

水道やインターネット等のインフラも整備されている。

さらに、日系自動車産業がタイへ進出してから 40 年以上経ているため、製造業用のインフラ及

びサプライチェーンがかなり整っている。化学系企業にとっても進出しやすい環境が整備されてい

る。原材料の現地調達も比較的容易な環境である。現地調達不可の原材料は、現地にある日系

商社や貿易会社を通じて入手可能となっている。

前述の通り、タイには既に多数の日系企業が進出しており、他国よりも新たに進出しやすい環境

が醸成されている。バンコク商工会議所(JCC)提供のデータによると、同会の日系企業会員数は

年々増加し、2016年末時点で 1,707社となった。その中、化学系企業の数は 101社となり、全進出

企業の約 6%を占めている。また、在タイ邦人数は、2014年末で、7 万人弱であり、現地駐在員にと

っては、住みやすい環境が整っている。

図 3-22 JCC会員数推移

出所)JCC公表データより三菱総合研究所作成

また、タイはその進出時に、優遇政策が多く整備されている点も高く評価されている。タイ政府は、

外資投資を誘致するため、タイ投資委員会(The Board of Investment of Thailand、BOI)などの厚

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い恩典政策を多数打ち出している。例えば、最大で 8 年間の法人所得税の免除、機械や設備の

輸入税の減免等、税制面及び非税制面でも数多くのメリットがある。

図 3-23 タイの新恩典制度について

出所)JCC公表資料より抜粋

このような中、直近では、タイの BOI 恩典政策について、大きな変化が起きている。従

来、地域統括事業本部(ROH)、国際調達事務所(IPO)、国際調達センター(IPC)、財

務センター(TC)といった拠点の性質ごとに投資奨励制度があったが、BOI 新投資奨励制

度として国際地域統括本部(IHQ)、国際貿易センター(ITC)としての拠点機能に対する

優遇制度として制定された。

IHQ は、最低海外 1か国にある関連会社や支店を監督する、タイの法律に基づき設立さ

れた企業で、また最低資本金 10百万バーツ、タイ国内または海外の関連会社や支店にサー

ビスを提供している関連会社や支店が最低でも海外 1つ以上の国に存在すること、BOI の定

める事業範囲を有すること、一年間に最低 15百万バーツのタイ国内向け事業支出があるこ

とといった全ての条件を満たす企業に対して、15会計期間中、法人所得税、配当源泉税、

利息源泉税、個人所得税、特定事業税、機械設備の輸入税等の一部または全額免除を受けら

れるといった税的恩典や、外国人の過半数出資可、外国人の土地所有可、奨励事業に従事す

る外国人技術者・専門家の就労許可等の非税的恩典が受けられる制度である。

ITC は、海外の法律に基づき設立された法人に対する、商品、原材料、部品の購入・販売、

ならびに貿易に関連するサービスを提供するためにタイの法律に基づき設立された企業で

あり、最低資本金 10百万バーツ、一年間に最低 15百万バーツのタイ国内向け事業支出があ

るといった全ての条件を満たす企業に対して、15会計期間中、法人所得税、配当源泉税、

個人所得税、機械設備の輸入税、輸出用製品に使用される原材料・必要材料の輸入関税等免

除といった税的恩典や、IHQ と同様の非税的恩典を受けられる制度である。

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一方で、タイは ASEAN の中では人口の伸びが少ないため、人件費が上がっていることや言語

の制限が大きい等のデメリットもあげられた。

我が国化学系企業のタイ現地法人によると、化学物質管理に関連するタイの各種法規制への

対応は、基本的に現地法人が責任を持って実施することが多い。また、日系企業として、タイの環

境安全面の規制等をクリアしている上に、日本の基準も満たしていることが多い。

タイにおける事業展開の位置づけについては、ASEAN のハブとなる立地を活かし、生産と輸出

を狙う企業が多数存在している。また、タイと周辺各国のマーケット狙いの企業も存在している。

タイは、インドシナ半島の中心に位置し、地理的には有利なため、製造拠点及び輸出拠点として

の地位をますます確立している。タイで生産された製品は、ASEAN 域内に関税ゼロで輸出できる。

また、裾野産業が整備されていることで、化学系企業にとって必要となるインフラ及びサプライチェ

ーンが整備されており、製造拠点として最適な地域の一つと見られている。国際協力銀行「わが国

製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、3割近くの企業が、タイの第三国輸出拠

点としての有用性について評価している。第三国輸出拠点としての評価は、フィリピンが 18.8%、イ

ンドネシアが 12.2%、ミャンマーが 6.1%に留まっている。これは他国にはあまりない、タイ特有の魅

力と言える。

そして、成長の著しいタイ市場を狙い、タイに進出した企業も多数存在している。タイの人口は、

7,000万人弱である。また、1 人当たり GDPは 6,000USドル弱で、ASEAN の中では高レベルであ

る。国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、タイに現地法

人を持つ企業の半分以上が、現地マーケットの今後の成長性について有望であると回答し、現地

マーケットの現状規模についても、4 割近くの企業が満足している。タイのさらなる発展に伴い、化

学製品への需要がさらに拡大すると見られている。内需が大きいタイマーケット以外、タイをハブに

し、周辺各国を狙うことも視野に入れている企業が存在する。

直近では、タイ周辺の近隣諸国に、労働集約的な工程を移転する日系企業が増えてきている。

「タイプラスワン」という方針に基づき、ASEAN 全域単位に ASEAN 戦略を構築する動きである。

タイ政府は、「中所得国の罠」から抜け出し、資本集約型経済に転換するように取り組んでいる。

タイは、各種恩典政策等を通し、自国を ASEAN の地域統括、物流統括、研究開発拠点といった、

より付加価値の高い位置を確立しようとしている。

(2) タイにおける事業展開の課題

前述の通り、タイは将来性がある市場であり、マーケットとして今後の成長が期待されている。ま

た、産業集積があり、進出しやすい土壌が醸成されていること等から、多くの企業から有望進出国

として挙げられている。

ただし、他の ASEAN 諸国の急速な発展に伴い、タイにおける事業の展開について、様々な課

題も存在している。

国際協力銀行「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、他の ASEAN

諸国の中でも、インドネシア、ベトナム、フィリピン、ミャンマーについては、現地マーケットの今後の

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成長性について、タイより高く評価されている。特にミャンマーとフィリピンは、支持率が右肩上がり

に上昇しており、2016年度はミャンマーが 83.7%、フィリピンが 77.1%となっている。

また、半分程度の企業が、労働コストの上昇と他社との厳しい競争を、タイに事業進出する上で

の課題としている(前述の図 3-21参照)。労働コストは、2010年~2012年で急激に上昇している。

同じく労働コストが上昇しているベトナムとインドネシアの状況と比べても、インドネシアが前年から

微減の34.9%、ベトナムは前年から減の27.3%となり、両国ともタイよりは低い上昇率となっている。

その他、3 割程度の企業が、現地における技術系人材・管理職クラスの人材の確保が課題であ

ると考えている。

24%の企業が、治安・社会情勢を懸念点としている。この項目の数値は、2010 年・2014 年の 2

点をピークとし、上下している。

また、化学系企業特有の課題について、我が国化学系企業の日本本社海外事業統括部署によ

ると、各国現地の実態を明確に把握できていないといった課題が多く挙げられた。多くの企業で、

現地法人が責任を持って化学物質管理規制の対応を行う一方、日本本社との情報交換が十分で

ないとの情報もあり、日本本社として、グローバルレベルでの化学物質管理及び迅速な現地法人

支援ができていないといった課題が伺えた。

日系企業から見た、中期的有望事業展開先について、国際協力銀行の同調査報告によると(前

述の表 3-34参照)、中期的(今後 3 年程度)有望事業展開先国・地域としての支持率は、タイはベ

トナムに抜かれ 30.7%で 5 位となっている。インドが 40.4%で、1 位となっており、インドネシアは前

年から下がり 38.8%で中国に差をつけられ 3 位、ベトナムは、支持率は下がり 27.5%になったもの

の順位は上げ 4 位、フィリピンは順位を維持し 11.5%で 8 位、ミャンマーは 7.9%で 1 つ順位を上

げ 9 位となっている。

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3.3 化学物質の輸出入や製造に係る手続きの詳細及びその現場での実態や課題及びその関

連課題に関する調査(タイを事例として)

3.3.1 我が国化学系企業のタイにおける化学物質の輸出入や製造に係る手続きの詳細

タイでは、工場法、環境保全法を含む、化学物質管理に関わる重要な法制度が数十年前に制

定され、時の流れとともに、改正がなされてきている。これらの法令改正に伴い、化学物質の輸出

や製造における、企業として履行すべき手続きも変化している。

工場の操業に関する基本法である工場法を例にとると、現在、企業には、①操業許可の申請、

②安全性確保・監督に関する各種申告、③事故発生時の届出、④工場移転、機械移送時の申請、

⑤事業中止・事業移譲時の事前申告の 5 種類が義務付けられている。

前述の通り、①操業許可の申請として、第 3 群工場、かつタイ政府指定の 12業種に該当する企

業は「リスク分析報告書」を提出する義務がある。さらに、ライセンス取得のみならず、ライセンスを

延長する際(5 年に一度)にも、DIW(工業省)或いは管轄機関へのリスク分析報告書の提出が義

務付けられている。

上記以外の工場は、タイ政府提供の様式をベースに、通常の操業許可申請及びライセンス更新

の申請が必要となっている。

例えば、工場の操業許可ライセンスを更新するためには、「Ror.Ngor.3/1」の提出が必要となる。

以下は「Ror.Ngor.3/1」様式の中で、記載が求められる項目の一覧である。第 1、2群の工場及び第

3 群工場かつ指定 12業種以外の工場は、下記の情報をタイ政府に提出しなければならない。

表 3-35 工場操業許可ライセンス更新に係る提供情報一覧

申請項目 細目(一覧表)

1.工場の建造物の面積 -

2.工場人員の内訳員数 -

3.生産に使われる素材(原料)の

細目(一覧表)

<以下、一覧表形式で、次の各項目の▼を記入>

▼連続番号 / 生産に使われる素材(原料) / 年間使用数量

4.製品及び副産物の細目

(一覧表)

<以下、一覧表形式で、次の各項目の▼を記入>

▼連続番号 / 製品及び副産物の種類 / 製品の名称また

は商標(Trademark) / 年間使用数量

5.生産順(配列)による <以下、一覧表形式で、次の各項目の▼を記入>

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設備機械類の細目(一覧表) ▼連続番号 / 名称、大きさ、製作者、及び製作国 / 適用

(用途) / 機械(設備)当たり能力:馬力、相対馬力 / 総数 /

総能力 / 備考(注記)

注記:溶鉱炉、電弧(アーク)溶接装置、等といった直接に

馬力でない機械装置の能力は、相対馬力で明記されるも

のとする。

6.生産に直接的に使用する、機

械装置意外の用具類及び装置

の細目(一覧表)

<以下、一覧表形式で、次の各項目の▼を記入>

▼連続番号 / 名称、大きさ、製作者、及び製作国 / 適用

(用途) / 数量 / 備考(注記)

7.工場(周囲)環境の管理(策)

に関する事項

【水汚染処理システム】

(1)システムの種類

(2)廃水の量、現在 立方メートル/日

(3)監視システム

3.1~3.4 制限

【大気汚染処置システム】

(1)システムの名

(2)汚染物の種類(塵埃、臭気、酸性気化物質、化学気化物

質、等)

2.1~2.4

(3)監視システム

3.1~3.4 制限

出所)「タイ工場法、就業規則作成要領」ハロータイランド・ビジネスレポート より三菱総合研究所作成

また、2016年に新しく公表された大臣告示63に従い、

① ボイラーあるいは加圧された液体あるいはガスを扱う工場、

② 製造業、ボイラー修理業、加圧液体かガスを熱伝導媒体として使う装置を使う業者、

③ 官報において工業省が規定する環境への悪影響を及ぼす事業者

上記 3 種類の事業者は、汚染物質管理を徹底化するため、汚染物質排出に関する報告をしな

63 「Preparation of report on type and amount of pollutants discharged from a factory」(2016年 1月施行))E2558

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ければならない。

汚染物質報告義務の詳細は、以下の通りである。報告しなければならない汚染物質の定義は、

省令 No2(BE2525)、14条及び 16条に規定される水及び大気への汚染物質の種類と量である。ま

た、環境影響分析報告書は、環境保全推進法(Enhancement and Conservation of National

Environmental Quality Law)に規定される技術評価委員会の承認を得たものである。

表 3-36 汚染物質報告に係る報告事項

項目 概要

対象

事業者

事業所は、環境影響分析報告書の作成と合わせて環境保護、排出削減、環境影響モニ

タリングを行うこと

データ

取得

①M:Measurement 大臣告示に規定される基準で分析、算出される汚染物質の種

類と量

②C:Calculation

国際的に認められた以下の3つの方法に沿って算出される汚

染物質の種類と量

• 汚染物質の排出係数(Emission Factors)

• 化学工学計算(Engineering Calculation)

• 物質収支(Mass Balance)

報告

プロセス

• DIW の官報に定める様式で、DIW に電子媒体で提出すること

• 報告のタイミングは以下のとおり

� 1 月~6 月のデータを対象 ⇒9 月 1 日までに提出

� 7 月~12月のデータを対象 ⇒翌 3 月 1 日までに提出

• 汚染物質の種類と量に関する報告書について、その写しを 3 年間保管し、検査が

必要な際にはすぐに提出できるようにしておくこと

• 5.1 項に規定される報告書は工場運営者あるいはその代理人及び環境保護管理

者の承認を得ること

出所)省令「Ministerial Regulation No.3 B.E. 2535 (1992)Issued pursuant to the Factory Act B.E.2535 (1992)」 大臣告示「Type or category of factory required to prepare a report of type and quantity of pollutants dicharged from a factory B.E.2553(2010)」 大臣告示「Preparation of report on type and amount pf pollutants discharged from a factory B.E.2558(2015)」

より三菱総合研究所作成

また、工業省は 2016年 4 月 29 日、工場敷地内の土壌・地下水汚染に関して、定期的な土壌・

地下水に関する調査の実施や報告を義務付ける新規則「工業エリアにおける土壌・地下水汚染に

関する規則」を公布した。

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表 3-37 汚染物質報告に係る報告事項

項目 概要

対象 事業者

繊維、紙パルプ、化学、塗料、火薬・インク、石油精製、非鉄精錬、照明器具・絶縁材・電

池、塗装・めっき、廃棄物関係 3 業種の計 12業種

調査の 実施

新規設立企業

• 1 回目調査:工場操業開始前に初回の土壌・地下水調査を実施し、

その結果を DIW に提出し確認を得る • 2 回目調査:操業開始後 180日以内に実施し、調査後 120日以内に

DIW へ調査結果を提出する • 3 回目以降:土壌(3 年ごと)、地下水(毎年)の調査を定期的に実施

し、120日以内に DIW へ調査結果を提出する

既存企業

• 1 回目調査:省令施行後 180日以内(2017年 4 月末まで)に初回調

査を実施し、調査後 180日以内に DIW へ調査結果を提出する • 2回目調査:初回調査の実施後 180日以内に実施し、DIW へ調査結

果を提出する • 3 回目以降:土壌(3 年ごと)、地下水(毎年)の調査を定期的に実施

し、120日以内に DIW へ調査結果を提出する 出所)JETROより三菱総合研究所作成

上記の例のように、工場運営にあたり、企業は様々な情報を提供しなければならない。企業にと

って、タイにおける円滑な事業展開のためには、これらの義務に対して迅速かつ正確な対応を取

ることが必要となっている。

3.3.2 我が国化学系企業における、タイ現地での課題とニーズ

前述の通り、タイは、インフラ整備が良好で進出しやすい等の優位性を持っている。一方、

ASEAN の中では人口の伸びが少ないため、人件費が上がっていることや言語の制限が大きい等

のデメリットもある。さらに、政策の定義が不明確で混乱を招き、輸出入のトラブルに直面した企業

も存在しているとの情報もある。

本事業で実施した日系現地法人のインタビューにおいて、各現地法人は、既存物質のイベント

リー登録に着実に取り組み中であることが確認できた。既存化学物質の登録作業を自社にて、ウェ

ブサイトからの届け出をする企業が多い。全ての項目をウェブサイトで入力し、その内容に問題が

なければ、HSCB から 1 日以内で受理通知が送られてくる。化学物質管理に関連する各種法規制

への対応や生産管理全般は基本的に、現地法人が責任を持って実施する。また、現地語での対

応など、対応の円滑化を図るため、タイ人の担当者が従事している(ただし、本事業でインタビュー

を行った企業の事例)。

現地化学系企業へのインタビュー調査を通じ、主に下記の課題が存在していることがわかった。

① 人件費の向上による単位労働コストの上昇

2011 年以後、タイでは賃金が上昇傾向となっている。2016 年時点の最低賃金は、9,000バ

ーツ/月であり、10 年前の約 2 倍となっている。労働需要の拡大が要因の一つである。その

他、ASEAN の中では、タイの少子高齢化が比較的進んでいる。これを背景に 若年層の労

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働供給が不足している。現在、タイの工場では、実際の労働者の一部はミャンマーやラオス

出身である。労働力問題への対処として、政府の施策が必要だが、現時点では、まだ相応

な政策が施行されていない。

② 人材確保及び人材マネジメント

現地インタビューでは、人材確保及び人材マネジメントの大変さも重要な課題であることが

浮き彫りになった。化学物質管理に対応できる高度人材の育成は、シンガポール等と比べ

遅れている。また、企業間の高度人材に対する激しい争奪戦が存在している。このため、日

系化学企業における現地高度人材の定着率が低いという実態もみられた。よって、今後、地

域物流調達拠点等としての役割を担うための人材確保と育成が喫緊の課題となっている。

③ 新規政策の導入による作業負荷の増加の懸念

在タイ日系化学企業の中、ISO14001 取得し、ISO14001 の要求事項に基づく化学物

質に関わるリスクアセスメントを行っている業者は多数存在する。今後、工場法等の

改正により新たにリスク評価が導入されることになった場合、既存評価との重複作業になる

恐れがあり、企業側の負荷増大が懸念される。さらに、土壌汚染等に関連する条文の追加

により、処理装置等の強制新規導入の懸念があり、企業にとっては負担となる。

また、有害物質法の対応において他国で実施済みのテストデータをタイのリスク評価におい

ても流用できるようにしてほしい、といった要望もみられた。

④ 政策に対する「解釈の不明確さ」によるトラブル

工場法や有害物質管理法等の各種法律で使用されている法律用語が難しく、かつ表現が

曖昧な部分があり、タイ人の現地スタッフでも明確に説明できない場合が多い。政府側に確

認しても、担当官により、法律に対する解釈も異なる。結果、企業側の担当者が何度もバン

コク郊外から DIW に出向くことになり、時間のロスが発生している。

⑤ CBI

ほとんどの企業は、既存化学物質として HSCB(有害物質管理部)のデータベースに登録す

る場合、タイ政府が要求している 100%組成開示について、抵抗感を持っている。

CBI 問題について、中堅商社が最も対応に苦慮しているようである。実際、100%開示問題

により、輸出入時商品が税関にて通関拒否された商社も存在している。通関拒否の詳細理

由を税関に尋ねると、明確な根拠を示さない場合も存在する。

CBI 情報の漏洩抑止対策について、検討の要望がみられた。

⑥ タイ政府とのコミュニケーションの課題等

タイ政府が新政策を発表する際、事前に各業界の関係を招き、意見交流会を開催すること

がある。ただし、現地日系企業は、関連の交流会に関する情報を入手できていないケース

が多い。また、タイ政府のセミナーが工場局本庁舎(バンコク都内)で開催される場合が多い

が、日系化学企業は、バンコク郊外の工業団地に立地していることが多く、セミナー参加以

外にも、輸出入トラブル解決や問い合わせ等のため、頻繁に遠地から通わないといけない。

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3.4 我が国化学系企業における ASEAN 展開に向けた課題と本事業の関係性

3.4.1 我が国化学系企業における ASEAN 展開に向けた課題の全体像

前述 3.2 及び 3.3 をふまえると、我が国化学系企業における ASEAN 展開に向けた課題は、以

下のように整理できる。

各展開ステップに応じて、課題の内容も変わってくるが、特に「地域別の事業管理、拠点管理」

のステップになると、進出予定の対象地域、対象国の法規制の状況把握や対応が必要となり、進

出後は、化学物質管理担当部署によるグローバルレベルでの化学物質管理支援、現地法人によ

る事業運営上の対応が課題となる。

表 3-38 我が国化学系企業における ASEAN 展開に向けたステップと課題

出所)三菱総合研究所作成

ステップ 担当部署 実施内容 課題(仮説)

全社成長戦略の策定

経営企画部署

・将来の外部環境動向分析・将来のありたい姿の検討・目標設定・ターゲット顧客(国内外)の検討・提供価値(事業ドメイン)の検討・リソースの検討

・外部環境認識(特にグローバルレベルでの将来動向の認識)の客観性・ターゲット顧客の具体化・顧客視点での提供価値の明確化・最適な事業ポートフォリオの設計

海外戦略(アジア戦略)の策定

経営企画部署又は海外事業統括部署

・有望地域、有望国(アジア諸国の位置づけ)の評価、選定・有望国の事業環境分析・ビジネスモデルの検討・有望国での事業シナリオ策定・参入(事業化)検討

・有望国の事業環境評価(市場環境、競合環境等)・対象国に適したビジネスモデルの設計・事業拡大と撤退の両面のシナリオ策定

地域別の事業管理、拠点管理

海外事業統括部署

・海外(地域・国)事業計画の策定・現地の体制構築(現地法人設立、現地パートナー企業の連携等)・事業管理、拠点管理

・新規進出国の法規制状況の把握・現地拠点の法規制対応状況の把握

グローバルレベルでの化学物質管理

化学物質管理担当部署

・グローバルレベルでの化学物質管理方針、計画の策定・化学物質管理に係る関係省庁、顧客、取引先、地域住民等への対応(主に国内)・各国の現地法人の化学物質管理に関する管理、支援・リスク評価の実施

・グローバルレベルの化学物質管理方針と各国個別対応のギャップ・各国の化学物質管理に係る法規制の実態把握・現地拠点における化学物質管理の支援(リスク評価、各種手続き等)

アジア各国での事業運営

現地法人

・各種法規制対応・事業運営(製造、販売等)・人材登用、育成

・現地法規制対応(情報収集、各種申請や届出等)・現地取引先との円滑な関係構築・維持・現地人材の登用、育成

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83

3.4.2 本事業の実施による、我が国化学系企業の ASEAN 展開に与える効果

本事業では、二国間協力を通じて、相手国の化学物質管理制度が日本の制度と親和性が高ま

ることに繋がるよう考慮しつつ、リスクベースの化学物質評価・管理基盤を早期に構築するために

必要な支援を行うことを目的としている。

この目的を実現することにより、本事業は、間接的にではあるが、前述の我が国化学系企業の

ASEAN 展開の課題解決に以下のような効果を与えることが期待される。

図 3-21 本事業の実施による我が国化学系企業の ASEAN 展開に与える効果

出所)三菱総合研究所作成

� リスクベースの化学物質評価・管理に関する我が国の取組みに関する情報提供

� リスクベースの化学物質評価・管理の人材育成や制度構築に関する⽀援

本事業の内容

� 相⼿国におけるリスクベースの化学物質評価・管理基盤(制度)の構築

� 相⼿国の化学物質管理制度と⽇本の化学物質管理制度との親和性の向上

直接的な効果(本事業の目的)

間接的な効果(ASEAN展開の課題解決)

地域別の事業管理、拠点管理

� 新規進出国の法規制状況の把握

� 現地拠点の法規制対応状況の把握

グローバルレベルでの化学物質管理

� グローバルレベルの化学物質管理⽅針と各国個別対応のギャップ

� 各国の化学物質管理に係る法規制の実態把握

� 現地拠点における化学物質管理の⽀援(リスク評価、各種⼿続き等)

アジア各国での事業運営

� 現地法規制対応(情報収集、各種申請や届出等)

� 現地取引先との円滑な関係構築・維持

� 現地人材の登⽤、育成

� 法規制の透明化による管理円滑化

� 法規制対応の標準化による管理効率化

� 法規制対応ギャップの解消による円滑な化学物質管理⽀援

� 管理コストの低減

� 法規制対応の円滑化、効率化

� 取引の円滑化� 人材育成の容易化

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4. 二国間協力文書に基づく政策対話等への対応

4.1 タイとの二国間協力文書に基づく対応

4.1.1 全体まとめ

日本とタイの二国間協力文書に基づくワークショップ及び政策対話における、主な成果を以下

に示す。

表 4-1 ワークショップ等及び政策対話の全体まとめ(タイ)

主要アジェンダ

2016年 4 月 19日~

4 月 20日

[第 6 回ワークショップ]

・前回ワークショップの確認

・法規制改定(工場法)に関する情報共有【タイ】

・化審法のスクリーニング評価における情報処理方法の紹介【日本】

・ケーススターディ結果の紹介【タイ】

・曝露及びリスクレベルの計算方法等紹介【日本】

2016年 8 月 30日~

9 月 2 日

[政府間ミーティング]

・化審法の概要及び化審法における混合物、ポリマー及び不純物の取り扱い

等を紹介【日本】

・化審法における CBI の申請手続き及びインベントリを紹介【日本】

・タイの有害物質法の現状と今後の改正に関する考えを紹介【タイ】

[第 7 回ワークショップ]

・第 6 回ワークショップの確認

・現行の工場法について紹介【タイ】

・工場法の改正ポイントを紹介【タイ】

・3 年間(2016-2018年)のアクションプランの紹介【タイ】

・上記アクションプランに関する協力の可能性についてコメント【日本】

2016年 11 月 23 日

~11月 24日

[政府間ミーティング]

・8 月の政府間ミーティングの振り返り及びフォローアップを行った

・化審法のスクリーニング評価とリスク評価を紹介【日本】

・タイの有害物質法の現状及び改正に関する進捗状況の共有【タイ】

2017年 1 月 11日

~1月 12日

[第 8 回ワークショップ]

・第 7 回ワークショップの確認

・工場法の改正に関する進捗状況を紹介【タイ】

・タイの 3 年間(2016-2018年)のアクションプランについて協力可能な部分を

紹介【日本】

・化審法における、データ届出関連の各種規定及び手続きを紹介【日本】

・ASEAN 各国の化学物質リスク評価の状況を紹介【日本】

・今後のスケジュールについて意見交換

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[政策対話]

・MOC における今までの活動の振り返り

・今後の予定について意見交換

・ミニッツの確認と修正

・署名式の開催

4.1.2 ワークショップ&政府間対話の開催

(1) 第 6 回ワークショップの開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 4 月 19日(火)~ 20日(水)

・ 場所:タイ工業省工場局(以下、DIW) Meeting room no. 505

・ 参加者:

[タイ側]

DIW10 名

[日本側]

経済産業省(以下、METI)2 名

(独)製品評価技術基盤機構(以下、NITE)3 名

(株)三菱総合研究所(以下、MRI)3 名

【結果概要】

・ 前回(第 5 回)ワークショップの振り返りを行った。

・ タイ側より、現況を正確に把握するために情報提出義務を工場法の下位法(省令)で課したい

と考えていることが示された。

・ 日本側より、化審法スクリーニング評価における情報処理(エクセル管理)方法の紹介を行っ

た。

- 化審法スクリーニング評価において有害性情報・暴露情報等の入力、算出、クラス付

けまでのデータの処理方法の紹介を行った。

- 製造数量等届出で得られた情報から曝露クラスを付与する方法を、エクセルを用いて

示した。

・ タイ側より、case study report(トルエンとベンゼンのスクリーニング・リスク評価の結果と不明点)

の紹介を行った。

・ 日本側より、タイ側の要望に応じてベンゼン及びトルエンの曝露とリスクレベルの計算過程と

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結果を次の 2 手法を用いて紹介を行った。

- Simple Air Model(化審法リスク評価一次IIのうち大気への放出のみを考慮)

- PRAS-NITE(化審法リスク評価一次IIのうち全環境媒体への放出を考慮)

・ 日本側から、化審法リスク評価の技術ガイダンス第 V 章(曝露評価)の英訳ができ次第、タイ

側に提供することを提案した。

・ タイ側は第 2 期 MOC に基づく成果を出すために、3 年後のあるべき姿を見据えて、時間軸を

定めていきたいと表明。次回の WS までにタイ側が案を作成してメールベースで互いに検討

することに合意した。

(2) 政府間ミーティングの開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 8 月 30日(火)~8 月 31日(水)

・ 場所:タイ DIW, Meeting room no. 504

・ 参加者:

[タイ側]

DIW 10名

[日本側]

METI2 名、NITE3 名、MRI3 名

【結果概要】

・ 日本側から、日本化審法の概要の紹介を行った。

・ 日本側から、化審法における混合物、ポリマー及び不純物の扱い等の紹介を行った。

・ 日本側から、化審法における CBI の申請手続きの紹介を行った。

・ 日本側から、インベントリの紹介を行った。

・ タイ側から、タイの有害物質法の現状と今後の改正に関する考えの紹介を行った。

(3) 第 7 回ワークショップの開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 9 月 1 日(木)~9 月 2 日(金)

・ 場所:タイ DIW, Meeting room no. 505

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・ 参加者:

[タイ側]

DIW10 名

[日本側]

METI2 名、NITE3 名、MRI3 名

【結果概要】

・ 第 6 回ワークショップの振り返りを行った。

・ タイ側から、現行の工場法について以下の紹介を行った。

- 条文(1 条~68条)。

- 工場法の目的(工場の安全管理)。

- 工場法の対象範囲(工場を汚染源とする環境汚染)。

- 事業者の義務(建設前/運営前の申請、リスク分析報告書の提出等)。

・ タイ側から、工場法の改正ポイントの紹介を行った。

・ タイ側から、第 2 期 MOC に基づく成果を出すために作成した 3 年間(2016-2018年)のアク

ションプランの案を提示。また、タイ側から本アクションプランの背景と内容の紹介を行った。

・ 日本側から、上記アクションプランに関する協力の可能性についてコメントした。

(4) 政府間ミーティングの開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 11月 23日(水)~11月 24日(木)

・ 場所:タイ DIW, Meeting room no. 505

・ 参加者:

[タイ側]

DIW15 名

[日本側]

METI2 名、NITE3 名、MRI3 名

【結果概要】

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・ 8 月の政府間ミーティングの振り返り及びフォローアップを行った。

- 日本側から、ポリマーの追加説明を行った。

・ 日本側から、化審法スクリーニング評価とリスク評価について紹介した。

- スクリーニング評価手法の概要紹介を行った。

- スクリーニング評価の事例紹介を行った。

- リスク評価手法の概要説明を行った。

・ タイ側から、有害物質法の現状紹介及び改正進捗について共有された。

(5) 第 8 回ワークショップの開催

【開催概要】

・ 日時:2017年 1 月 11日(水)

・ 場所:タイ DIW, Meeting room no. 505

・ 参加者:

[タイ側]

DIW7 名、FT1名

[日本側]

METI2 名、NITE3 名、MRI2 名

【結果概要】

・ 第 7 回ワークショップの振り返りを行った。

・ タイ側から、工場法の法令改正進捗状況を紹介。法令改正に従い、下位省令の改正も進ん

でいることについて共有された。

・ 3 年間(2016-2018年)のアクションプランについて、日本側のコメントを提示した。日本側とし

て協力可能な部分を紹介した。

・ 日本側から、化審法における、データ届出関連の各種規定及び手続きの紹介を行った。

・ 日本側から、ASEAN 全体の化学物質リスク評価の状況の紹介を行った。

・ 今後のスケジュールについて意見交換し、詳しい調整はメールベースで検討することに合意

した。

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4.1.3 政策対話の開催

【開催概要】

・ 日時:2017年 1 月 12日(木)

・ 場所:タイ DIW, Meeting room no. 505

・ 参加者(敬称略):

[タイ側]

DIW8 名

[日本側]

METI3 名、NITE3 名、MRI2 名

【結果概要】

・ MOC における、今までの以下の活動の振り返りを行った。

- タイ化学物質管理に関する第四次国家戦略実行支援。

- タイの第四次国家戦略に関わるタイの法律やガイダンスの改定に関する協力。

- キャパビルに関する協力(JCIA とタイ FTI によるで 3 つの種類のキャパビル)

- その他の活動についてレビュー。

・ 今後の予定について意見交換を行った

- タイ側から、Safety Thailandの活動について紹介した。

・ ミニッツの確認と修正を行った。

・ 署名式を行った。

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4.2 ベトナムとの二国間協力文書に基づく対応

4.2.1 政策対話の開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 10月 31日(月)

・ 場所:ベトナム商工省化学品庁(以下、VINACHEMIA )会議室

・ 参加者:

[ベトナム側]

VINACHEMIA 15 名

[日本側]

METI3 名、NITE3 名、MRI2 名、国際協力機構(以下、JICA)2 名、(株)エックス都市研究

所 2 名

【結果概要】

・ MOC における、今までの活動の振り返りを行った。

- 昨年の政策対話以降の取組みとして、JICA からベトナム国化学物質管理強化プロジェ

クトの概要について説明を行った。また、これに続いてJICA専門チームより、JICAプロジ

ェクトの詳細な概要、進捗状況、課題について説明を行った。

- 日本側より、規制化学品の見直し等、NSW (National Single Window)を除く手続きの変

更については 11月末までに情報提供を依頼した。

- また、同様に日本側より、NSW で化学品法の輸入申告を受け付けるようになるのであれ

ば、NSW に、化学品法の目的を達成するために必要なデータが集められるような項目を

入れることを依頼した。

・ ミニッツの確認と修正。

- 日本側より、VINACHEMIA が化審法のインベントリをベトナム化学品法の国際インベン

トリとして取り込むことは化学品法の履行のみならず、ベトナムの産業発展にも寄与すると

いう考えを示した。

・ 署名式を行った。

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4.3 マレーシアとの協力の対応

4.3.1 ワークショップの開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 9 月 27日(火)~9 月 28日(水)

・ 場所:経済産業省本館会議室(西 8 会議室)

・ 参加者:

[マレーシア側]

国際貿易産業省(MITI ) 2 名、

天然資源・環境省(MoNRE) 1 名

保健省(MOH) 1 名

国内取引消費行政省(MDTCC) 1 名

運輸省(MOT) 1 名

人材省労働安全衛生部(DOSH) 2 名

天然・資源環境省環境局(DOE) 1 名

農業省(DOA) 1 名

化学工業協議会(CICM)1 名

マレーシア国民大学(UKM)1 名

[日本側]

METI9 名、NITE7 名、MRI3 名、日本ケミカルデータベース(株)(以下、JCDB)3 名、

(同)ハトケミジャパン(以下、Hatochemi)1 名、(一社)日本化学工業協会(以下、JCIA)2 名

【結果概要】

・ 日本及びマレーシアにおける化学物質管理制度の紹介を行った。

- 日本側より、化審法の概要として、制度の背景及び趣旨、リスクベース管理やスクリー

ニング評価の考え方について説明を行った。併せて、chemSHERPAについての紹介

を行った。

- マレーシア側より、GHS 分類の歴史や管轄当局の役割、CLASS 規則 2013 の概要、

化学品情報管理システム(CIMS)、ICOP CLASS 2014、CLASS導入後の 2016年時

点の評価の概要等について紹介を行った。

・ 日本及びマレーシアにおける GHS導入状況の紹介を行った。

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- 日本側より、GHS 導入に関する取組み、関係省庁の所管する関連法令(化管法、安

衛法、毒劇法)の概要、SDSやラベルの概要(要求事項、記載内容等)、SDSやラベル

に関する普及活動、安衛法の改正等について説明を行った。

- マレーシア側から、GHSの実施における歴史、NCCGHSの役割や関係当局等につい

て説明を行った。その後、関係する各当局から現在の取組みについて紹介を行った。

具体的には、農薬等の規制、陸送関係の規制、消費財に対する規制、産業界におけ

る取組みについて紹介がなされた。

- 両国による紹介を踏まえて、GHS 導入にあたり直面している課題及び GHS 導入のた

めの取組みを中心に議論がなされた。

・ 日本及びマレーシアにおける GHS導入支援のための実用ツールの紹介を行った。

- 経済産業省による化学物質管理システムの構築の取組み状況について紹介を行っ

た。

- 日本側から、GHS 混合物分類システムの概要(機能紹介、利用手順、インストール方

法等)について紹介を行った。紹介の際に、参照用 GHS 分類結果や GHS 分類判定

マニュアルも紹介し、同システムのデモンストレーションを実施した。

- マレーシア側から、混合物のウェブベース GHS分類システムの紹介を行った。

・ 日本及びマレーシアにおけるリスクアセスメント及びリスクマネジメントの現状の共有がなされ

た。

- 日本側より、化審法におけるリスク評価の概要、スクリーニング方法、リスク評価の進捗

について紹介を行った。

- マレーシア側から、USECHH規則の概要、CHRA システム、近年の DOSH の取組み

(SoHELP)等の紹介を行った。

・ 化学物質データベース及び申告・登録システムの現状と今後の予定について情報共有がな

された。

- 日本側より、日本における各種化学物質データベースの概要、(NITE-CHRIP、

J-CHECK、GHS 等)について説明を行った。また、届出システムの構成、届出支援シ

ステムの画面イメージ、算出方法等について説明を行った。

- 合わせて、日本側より、ASEAN 諸国との多国間協力(ASEAN – Japan Chemical

Safety Database (AJCSD))について、紹介を行った。

- マレーシア側より、化学物質インベントリ CIMS の概要及び環境省のオンライン届け出

システム EHS NRに関する紹介を行った。

・ 化学物質管理、GHS、リスクアセスメントやケミカルデータベース等の分野を含め、日本とマレ

ーシアの今後のさらなる協力についてディスカッションを行った。

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4.4 インドネシアとの協力の対応

4.4.1 ワークショップの開催

【開催概要】

・ 日時:2016年 10月 27日(木)

・ 場所:インドネシア工業省(以下、MOI)、 Gatut Kaca Meeting Room

・ 参加者:

[インドネシア側]

MOI 9 名

インドネシア化学工業協会(FIKI) 3 名

インドネシア・レスポンシブル・ケア協会(RCI) 2 名

[日本側]

METI2 名、NITE2 名、MRI2 名

【結果概要】

・ 日本側より、ベトナムでの JICA プロジェクト内でのインベントリ構築の状況の紹介を行った。

・ インドネシア側より、インドネシアのインベントリ及び包括法案の進捗の紹介を行った。

- 既存の化学物質に関する法律は輸入、職場安全性、輸出の 3 種類である。

- SIINas(国家産業情報システム)というシステムがあり、国内の全ての化学物質の情報

が管理されている。

- 包括法案(Draft of Chemical Substance Act)は今年中に国会に提出予定である。

・ インドネシア側より、インドネシアにおける GHSの適用状況の紹介を行った。

- 単一物質の GHS分類適用は既に義務化されており、混合物の分類適用期限は 2016年

12月末である。

- ただし、輸入と国内生産品の内、SMEは GHS適用義務から免除される。

- 農薬は GHS適用が必要だが、報告の形式は WHO 形式で行う。

- 消費者製品については GHSの適用規定がまだない。

- SIINasでの報告数は現段階で 14社、混合物 65種類、単一物質 136種類となっている。

・ 日本側より、化審法とスクリーニング評価について紹介を行った。

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・ インドネシア側より、Responsible Care Indonesia からみたリスク評価プログラムについて紹介

を行った。

- インドネシアには数千社の化学企業が存在し、その 4 割は川上、6 割は川中~川下で

ある。

- 化学物質管理のセミナーの開催などを通して、リスク評価などの普及活動を実施して

いる。

- インドネシアにはリスク評価・管理に関する法令がないが、産業界では 2011年より GPS

リスク評価ワークショップを(一社)日本化学工業協会と開催し、2013年には GPSワー

キンググループを立ち上げた。

・ 日本側から、インドネシア政府が出席していなかったASEAN-Japan Chemical Safety Database

に関する Technical Working Group(2016年 4 月)の結果を紹介し、ユーザーアンケート及び

パンフレットについても紹介を行った。

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5. ASEAN 各国に GHS 混合物分類判定システムを提供するに当たっての課題に関

する調査

5.1 ASEAN 各国の GHS 導入状況

ASEAN 主要国では、GHS が導入されており、単一物質についてはすでに各国において分類・

表示の義務化がなされている。混合物に対しては、義務化の進捗が各国によって異なっており、各

国事情に応じて日本からの協力内容を検討することが必要である。

5.1.1 ASEAN 主要国における GHS 導入状況

ASEAN 主要国における GHSの導入状況を以下に示す。

(1) タイにおける GHS 導入状況

GHS については、工業省を中心とする国家有害物質委員会 GHS 小委員会によって対象物質

の検討等が進められ、2008 年 7 月に工業省令第 24 号の改正により施行された。

GHS 分類の実施は、2013 年に単一物質を対象に義務化され、混合物については工業省所管

物質について 2017年 3 月 13日から義務化された。保健省など他の省庁所管の物質についても、

順次義務化が進められている。分類及び表示は GHS改訂第 3 版に準じている。

GHS の導入、普及に向けて、タイ政府はドイツとのプロジェクトで「危険有害製品・物質の安全な

管理に関するマニュアル」(タイ語版)及び「Guideline Safe Storage of Dangerous Goods and

Dangerous Substances」(英語版)「Hazardous Material 1 課程「学生用」トレーニング・マニュアル」

等を作成している。

また、工業省工場局では、525 物質の分類結果を同局ホームページにて公開し、情報提供を行

っている64。

(2) ベトナムにおける GHS 導入状況

ベトナムでは、化学品法によって、化学物質の製造・輸入者は使用や市場販売の前に GHS に

沿って分類することを規定している。同法の下位法令である「分類表示について規定する商工省

令 No.04/2012/TT-BCT」によって、単一物質は 2014 年 3 月 30日、混合物は 2016年 3 月 30「日

から、GHSに基づく分類及び SDSとラベル表示の作成が義務づけられた。分類及び表示は GHS

改訂第 3 版に準じている。

商工省化学品庁(VINACHEMIA )では、GHS に関するセミナーを開催し、産業界への理解促

進を図っている。また、2015年には、日本から GHS混合物分類システム(越語版)及び分類マニュ

アルを提供しており、VINACHEMIA は同庁のホームページでの公開を通じて無償で提供してい

る65。

また、VINACHEMIA の化学物質データベース・化学事故他対応サポートセンターは、同センタ

64 http://ghs.diw.go.th:8080/GHSThaiUser/jsp/search.jsp 65 http://www.vinachemia.gov.vn/default.aspx?page=news&do=detail&category_id=22&id=298

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96

ーのホームページで参考となる SDSを公開している。66

(3) インドネシアにおける GHS 導入状況

インドネシアでは、政府法令 74/2001 の下位規則「工業大臣規則 23/2013」によって、単一物質

は 2013 年 4 月 12 日、混合物は 2016 年 12 月 31 日から中小企業を除き、GHS に基づく分類

及び GHSに基づく SDS とラベル表示の作成が義務づけられた。分類及び表示は GHS改訂第 4

版に準じている。

単一物質での義務化の際には産業界による対応が困難であったことなどから、当初予定の義務

化時期が延期されるなど様々な課題に直面した経緯もあり、インドネシア工業省では化学業界団

体を通じて産業界に対するセミナーや情報提供を行い、GHS の普及を図っている。また、環境生

活省は、一般消費者向けに GHS解説のパンフレットを作成して広く普及促進を図っている。

また、日本から GHS混合物分類システム(英語版)を提供しており、工業省は同省のホームペー

ジで同システムについて紹介し67、SIINasにアップロードしている。

(4) マレーシアにおける GHS 導入状況

マレーシアでは、「Occupational Safety & Health Act の下位法である Chemicals Classification,

Labeling and SDS of Hazardous Chemicals Regulations 2013 (CLASS 規則)」によって、2015年 4

月 17日以降、単一物質及び混合物に対する GHS 分類結果の提出が義務付けられた。分類及び

表示は GHS改訂第 3 版に準じている。

GHS の普及に向けて、天然資源環境省環境局(DOE)による工業会向けガイダンスや、人材省

労働安全衛生局(DOSH)による CLASS 規則の Q&A 集等が作成発行されている。また、DOSH

は、職場で取り扱う化学品のラベル表示が CLASS2013に遵守しているかをチェックするためのチ

ェックリスト「ELSA (Express Labelling Self-Assessment)」68と、職場で取り扱う化学品の SDS が

CLASS2013 に遵守しているかをチェックするためのチェックリスト「 ESSA (Express SDS

Self-Assessment)」を発行、公開している。

本調査において実施したマレーシアとの会合において、マレーシアでは約 230物質の分類を行

い、強制分類として規定している。一方で、マレーシアには(一社)日本化学工業会や中央労働災

害防止協会のように GHS 分類について産業界等への育成を実施する公的組織がなく、また、政

府関係者、アカデミア、専門家から構成される GHS 分類を担当する組織があるが、こうした組織が

法令に基づく公的なものではないなどの課題がある。現状、DOSH が認定する機関を通じて GHS

制度の普及を図ることが検討されている。

(5) フィリピンにおける GHS 導入状況

フィリピンでは、2009年に、関連省庁及び化学工業協会によって構成される国内 GHS対応委員

会によって、関係省庁の役割等を明確化した Joint Administration Orderが承認された。関係省庁

は同文書に基づき GHS対応の省令を制定することとなっている。

これを受けて、2014 年 3 月に労働雇用省(DOLE)によって「職場における GHS 実施命令

66 http://vcerc.com/category/thu-vien/phieu-an-toan-hoa-chat/ 67 http://kemenperin.go.id/ghs 68 http://www.dosh.gov.my/index.php/en/list-of-documents/osh-info/chemical-management-1/2214-elsa-user-manual/file

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97

(DOLE Order 2014)」が公布され、2015年 3 月から職場における工業用物質の GHS分類及び表

示が義務付けられた。分類及び表示は GHS改訂第 3 版に準じている。

環境天然資源省(DENR の EMB)においても、フィリピン国内において製造・販売・使用・貯蔵・

輸送される全ての有害化学品を対象としてラベル及び SDS の義務付けを規定しており、その際、

「GHS Review Committee」の承認を受けることを義務付けている。

2016 年には CCO(化学品管理令対象物質)及び優先化学物質(PCL)が義務され、今後、2017

年から以下のように段階的に義務化が進む予定である。

� 2017年:高生産量有害化学物質

� 2018年:国際航空運送協会(IATA )の危険物リストや国際海上危険物規定(IMDG コード)

の対象となっている有害化学品

� 2019年:混合物

(6) ミャンマーにおける GHS 導入状況

ミャンマーでは、2016年 1 月 12 日に「2013年化学品及び関連物質による危害の予防に関する

法律」の下位規則となる「化学品及び関連物質による危害の予防に関する規則(通知第

85/2015-2016号)」が工業省によって規定された。同規則によって、GHS 及び SDS が義務付けら

れている。ミャンマー政府はこれまでに 40 物質の分類を行い、ASEAN Japan Chemical Safety

Database (AJCSD)に提供公表している。

また、産業界においても、ミャンマー工業会が業界誌「Chemical Digest」に参考として GHS分類

を掲載している。

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5.2 混合物分類システムの展開可能性の検討

5.2.1 ASEAN 主要国に対する混合物分類システムの提供の意義

我が国 GHS混合物分類システムの提供は、ASEAN諸国における GHSの導入や産業界あ

るいは政府機関での分類業務の効率化に貢献できるものである。もし ASEAN諸国において

同システムの利用が許容されれば、特に、日本企業にとっては、自国での分類との整合を図

ることが可能となり、業務効率化や GHS分類結果の正確性の担保、あるいは現地での法令

順守の観点からもメリットは大きく、当該国での日本企業の企業活動の円滑化に寄与する。

こうした点を鑑み、同システムの提供価値は、下記のような各国事情に基づき整理できる。

また、各国事情に応じて、対応の優先度も異なってくると思われる。

表 5-1 GHS混合物分類システムの展開方法の整理

展開の意義 優先度

現地でのGHS導入状況

GHS導入済み

混合物義務化

(タイ、ベトナム、

マレーシア、ミャ

ンマー)

現状の課題を把握した上で、GHS 分類の

効率化、精緻化、普及促進ツールとしての

提供することが可能。

<課題の例>

� 義務化されているものの現地企業の

対応が進まない

� 政府の分類結果の正確性を確保した

い、等

(導入直後の

場合)

(導入済み)

単一物質のみ義務

化(混合物義務化

時期が明確)

(フィリピン)

混合物分類に対する理解を深め、混合物導

入の円滑化に向けて提供することが可能。

<活用例>

� 混合物分類に関する産業界への説明

時の使用

� 政府関係者による混合物分類結果の

検証ツールとして使用

GHS未導入※

義務化時期が明確 単一物質分類の導入と同時期に混合物分

類についての理解を促進することで、GHS

そのものの導入の円滑化が可能

義務化時期が未定 政府及び産業界の GHSに対する理解を促

進し、GHS 導入に係る現地政府による支

援策等の制度設計の検討に資することが

可能。

※なお、ASEAN 主要国においては該当国はない。

出所)三菱総合研究所作成

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5.2.2 ASEAN 主要国に対する展開可能性

本節では、ASEAN 主要国に対する今後の GHS 混合物分類システムの提供等を通じた協

力支援の可能性について検討を行った。

(1) タイに対する GHS 混合物分類システムの展開

タイに対しては、2014年10月に工業省に対して GHS 混合物分類システムを提供し、デモンスト

レーションを行った。その際、動作不良等の課題が明確化され、2015 年に動作確認等のフォロー

アップを行っている。

タイでは混合物における GHS分類が義務化された直後であり、制度に対する正しい理解と普及

が課題となっている。すでに提供しているシステムの改修版を活用し、混合物の GHS 分類の業務

効率化を産業界に訴求することで、GHSの普及や分類結果の精緻化を図ることが可能である。

(2) ベトナムに対する GHS 混合物分類システムの展開

ベトナムに対しては、同国の化学物質管理政策の円滑な運用に資するため、2014年に GHS混

合物分類システムをベトナム語に訳し、分類マニュアルと合わせて提供した。また、VINACHEMIA

主催の産業界向けセミナーにおいて、本システムの紹介を行い、産業界への理解促進の支援を

行っている。

ベトナムでは、VINACHEMIA がホームページに同システムを掲載し産業界に対して無償提供

を行っている。同国では、混合物の GHS義務化から 1年が経過しており、今後は、同システムの産

業界による活用状況や VINACHEMIA への問い合わせ状況等を把握し、同システムの普及を通じ

て、GHSの普及・定着化や精度の向上を図ることが考えられる。

(3) インドネシアに対する GHS 混合物分類システムの展開

インドネシアに対しては、2014 年 8 月に工業省(MOI)に対して GHS 混合物分類システムの

デモンストレーションを行い、その後、英語版のシステムを提供した。提供は、混合物の分類とラベ

ル作成の課題に直面しているインドネシア側からの要請に基づくものである。

インドネシアに関しては、タイと同様に GHS の義務化が緒に就いたばかりであり、制度に対する

正しい理解と普及が課題と考えらえる。すでに提供しているシステムの活用を促し、混合物の GHS

分類の業務効率化を産業界に訴求するのと合わせて、インドネシア政府に対しても、政府が抱える

課題について把握しながら、日本における同システムの活用を紹介することで、提供したシステム

の利用を促すことが重要である。

(4) マレーシアに対する GHS 混合物分類システムの展開

マレーシアに対しては、2016 年に、ベトナム向けに改修したツールをベースに、マレーシア向け

の改修を行い提供した。

マレーシアでは単一物質及び混合物の GHS の義務化がなされているが、前述のとおり産業界

への育成を担う機関や組織が存在しておらず、産業での GHS 分類の普及あるいは精度向上に向

けた支援を強化することが考えられる。

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(5) フィリピンに対する GHS 混合物分類システムの展開

フィリピンにおいては、職場における工業用物質の GHS分類及び表示が義務付けられているが、

2019 年予定の混合物の義務化まではまだ時間を要する。一方で、現時点では単一物質対応とな

るものの、今後の混合物の義務化の円滑な導入に向けて、GHS 混合物分類システムを提供するこ

とは有用である。特に、同システムは単一物質の登録・管理が可能となっており、企業に対する

GHS分類に対する育成ツールとしても活用可能であると考えられる。

(6) ミャンマーに対する GHS 混合物分類システムの展開

ミャンマーでは GHS分類の義務化が開始されて間もなく、かつ、政府による分類もまだ

途上にあると考えられる。また、日本から GHS混合物分類システムの提供はなされていな

い。

同国との化学物質管理制度整備に関する二国間協力については、今後の日系企業の進出増

加に伴い進展してゆくことが期待されるが、その際、GHS の普及促進も視野に入れるもの

と思われる。一方で、すでに現地において GHSが導入されていることを鑑み、GHS混合物

分類システムの提供を通じたミャンマー政府による産業界への支援メニューの充実化は、今

後の日系企業の同国への進出に向けて有意義なものと考えらえる。

上記のとおり、各国に対しては、GHS 混合物分類システムの提供あるいは提供後のフォ

ローアップは、各国政府、各国産業界及び日系企業のいずれに対しても有益と考えられる。

また、すでに混合物の義務化がなされている国においても、産業界における GHSの普及・

定着、精度向上は喫緊の課題と考えられ、これらの課題に対しても GHS混合物分類システ

ムの活用を提案、促進することは意義がある。

すなわち、各国における GHS導入状況や運用状況を勘案し、まずは混合物の義務化がさ

れて間もないタイ及びインドネシアに対する産業界への理解促進の一環として、また、今後

の混合物分類の義務化に向けた制度整備段階にあるフィリピンに対する制度設計の支援と

して、さらに、義務化された後の運用フェーズにあるベトナム及びミャンマーに対する運用

の効率化や分類結果の精緻化の一環として、GHS 混合物分類システムの活用を引き続き提

案してゆくことは、意義があるものと考えられる。

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頁 図表番号/脚注番号4 脚注1

5 脚注2

5 脚注3

5 脚注4

6 脚注5

6 脚注6

6 脚注7

7 脚注8

7 脚注9

8 脚注10

10 脚注11

10 脚注12

11 脚注13

11 脚注14

12 脚注15

13 表2-8

14 脚注17

15 脚注18

15 脚注19

15 脚注20

16 脚注21

17 脚注22

18 脚注23

18 脚注24

21 脚注25

21 脚注26

22 脚注27

22 脚注28

23 脚注29

24 脚注30

24 脚注31

24 脚注32

25 脚注33

25 脚注34

25 脚注35

25 脚注36

25 脚注37

26 脚注38

化学品法の基礎情報

二次利用未承諾リスト

化学物質管理分野におけるアジア諸国との二国間協力に関する調査

平成28年度化学物質安全対策

株式会社三菱総合研究所

タイトル

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27 脚注39

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29 脚注45

29 脚注46

30 脚注47

31 脚注48

32 脚注49

33 脚注50

33 脚注51

33 脚注52

34 脚注53

34 脚注5438 表3-139 表3-240 表3-340 表3-442 表3-542 表3-644 表3-744 表3-846 表3-946 表3-1048 表3-1148 表3-1250 表3-1350 表3-1452 表3-1552 表3-1652 表3-1752 脚注5553 脚注5654 表3-1854 表3-1954 表3-2055 脚注5756 表3-2156 表3-2256 表3-2357 脚注5858 表3-2458 表3-2558 表3-2659 脚注5960 表3-2760 表3-2860 表3-29

主な貿易管理制度

日本の対ミャンマー貿易WTO・他協定加盟状況主な貿易管理制度

日本の対インドネシア貿WTO・他協定加盟状況主な貿易管理制度

日本の対マレーシア貿易WTO・他協定加盟状況

主な貿易管理制度

日本の対ベトナム貿易WTO・他協定加盟状況主な貿易管理制度

政治体制・内政基本情報政治体制・内政日本の対タイ貿易WTO・他協定加盟状況

政治体制・内政基本情報政治体制・内政基本情報政治体制・内政基本情報

基本情報各国の賃金と賃金増加率基本情報政治体制・内政基本情報

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61 脚注6062 表3-3062 表3-3162 表3-3263 脚注6166 表3-3371 表3-3472 脚注6272 図3-2173 図3-2274 図3-2378 脚注6377 表3-3579 表3-3680 表3-37 汚染物質報告に係る報告事項(続き)

中期的有望事業展開先ランキングTOP10JCC会員数推移タイの新恩典制度について

工場操業許可ライセンス更新に係る提供情報一覧汚染物質報告に係る報告事項

日本の対フィリピン貿易WTO・他協定加盟状況主な貿易管理制度

地域別進出企業数(2015年10月1日現在)中期的有望事業展開先ランキングTOP10