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6 2.調査内容 2.1 調査要綱 1)ボーリング調査 ボーリング調査は,機械ボーリングにより当該地の地盤構成や地下水の帯水状況の 確認を目的として実施した。 ① 調査地点 調査地点は,計画地内の既存構造物や埋設物等が存在しない安全な箇所とし,監督 員の立会い,確認を得た No.1,及び No.2 の2地点である。 なお,調査の手順としては,No.1 地点を先行調査し,No.2地点で予定した乱れの少 ない土試料の採取や原位置試験(現場透水試験,及び孔内水平載荷試験)の実施深度 の決定における参考情報とした。 なお,地盤高さは,3級基準点(No.3-22,H=3.254m)を基準高さとした水準測量よ り求めた。 ② 調査深度 本調査においては,標準貫入試験の値 50 以上の地層を連続して 6m以上の層厚を 確認するものとしてボーリング調査を実施した。 なお,No.1 地点は,耐震基盤面の確認のために,調査深度は 55m として,PS 検層用 の調査孔に仕上げた。 ③ ボーリング孔径,及び削孔方向 ボーリングは,表-2.1 に示した通り孔径φ116~66(mm)のノンコアボーリングとし, 削孔方向は鉛直下方とした。 表-2.1 工法・掘削深さ,及び孔径 ボーリング地点 掘削方法 掘削深さ(m) 孔径,又は試掘の場合の形状・寸法 1 RB 55 PS 検層用の調査孔としてφ86(mm) 2 RB 46 G.L.-2.3(m)まではφ116(mm),G.L.-12.0(m) まではφ86(mm),以深はφ66(mm) 工法凡例 RB:ロータリーボーリング OB:オーガーボーリング TB:試掘 CB:コアボーリング ④ 孔内水位の測定 孔内水位は,毎日作業開始前に測定し,測定日時を明らかとした。 ⑤ 調査孔の閉塞 ボーリング終了後は,モルタル注入によりボーリング孔を完全に閉塞した。 また,調査のために設置した施設は完全に撤去し,現場を清掃した。

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Page 1: 2.調査内容 2.1 調査要綱 - Soka試験方法は,JGS 1314-2012「単孔を利用した透水試験方法」に従い,非定常法に おける揚水法(回復法)の試験を行った。

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2.調査内容

2.1 調査要綱

1)ボーリング調査

ボーリング調査は,機械ボーリングにより当該地の地盤構成や地下水の帯水状況の

確認を目的として実施した。

① 調査地点

調査地点は,計画地内の既存構造物や埋設物等が存在しない安全な箇所とし,監督

員の立会い,確認を得た No.1,及び No.2 の2地点である。

なお,調査の手順としては,No.1 地点を先行調査し,No.2 地点で予定した乱れの少

ない土試料の採取や原位置試験(現場透水試験,及び孔内水平載荷試験)の実施深度

の決定における参考情報とした。

なお,地盤高さは,3級基準点(No.3-22,H=3.254m)を基準高さとした水準測量よ

り求めた。

② 調査深度

本調査においては,標準貫入試験のN値50以上の地層を連続して 6m以上の層厚を

確認するものとしてボーリング調査を実施した。

なお,No.1 地点は,耐震基盤面の確認のために,調査深度は55mとして,PS検層用

の調査孔に仕上げた。

③ ボーリング孔径,及び削孔方向

ボーリングは,表-2.1 に示した通り孔径φ116~66(mm)のノンコアボーリングとし,

削孔方向は鉛直下方とした。

表-2.1 工法・掘削深さ,及び孔径

ボーリング地点 掘削方法 掘削深さ(m) 孔径,又は試掘の場合の形状・寸法

1 RB 55 PS 検層用の調査孔としてφ86(mm)

2 RB 46 G.L.-2.3(m)まではφ116(mm),G.L.-12.0(m)

まではφ86(mm),以深はφ66(mm)

工法凡例 RB:ロータリーボーリング OB:オーガーボーリング

TB:試掘 CB:コアボーリング

④ 孔内水位の測定

孔内水位は,毎日作業開始前に測定し,測定日時を明らかとした。

⑤ 調査孔の閉塞

ボーリング終了後は,モルタル注入によりボーリング孔を完全に閉塞した。

また,調査のために設置した施設は完全に撤去し,現場を清掃した。

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2)標準貫入試験

標準貫入試験は,N値を実測し,各地層の硬軟を判定するとともに,採取した試料

は目視観察し,土質の識別を行い,土質標本として整理した。

① 試験深度

標準貫入試験は,深度 1mから他の原位置試験,及び乱れの少ない土試料の採取深度

を除く1m毎に行った。

② 試験方法

試験方法は,JIS A 1219:2013「標準貫入試験方法」に従って行った。

なお,ドライブハンマーの落下方法,及び記録方法は,自動落下法(つりあげ手動

型),及び野帳記録で実施した。

自動落下法 つりあげ手動型(半自動型)

落下方法 つりあげ自動型(全自動型)

手動落下法 トンビ法

コーンプーリー法

記録用具又は装置 自動記録装置

野 帳

図-2.1 落下,及び記録方法

3)孔内水平載荷試験

孔内水平載荷試験は,基礎工(杭基礎)の設計や仮設土留工等の設計資料となる

地盤の強度,及び変形特性を明らかとするために行った。

① 試験実施地点と深度

本試験は,No.1 地点の調査結果を参考としつつ,表-2.2 に示した位置で行った。

表-2.2 孔内水平載荷試験の位置,及び深度

ボーリング地点 試験深さ(G.L.-m) 対象土質 備 考

2 6.0 砂混じりシルト

9.3 砂質シルト

② 試験方法

試験方法は,JGS 1531-2012「地盤の指標値を求めるためのプレッシャーメータ試験

方法」に従い,載荷方式は低圧載荷とした。

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4)現場透水試験

現場透水試験は,地盤の透水性や平衡水位を確認するために行った。

① 試験実施地点と深度

現場透水試験は,建設工事で想定される掘削工の予定深度内に確認された砂質土層

を対象として,No.1 地点の調査結果を参考としつつ,表-2.3 に示した位置で行った。

② 試験方法

試験方法は,JGS 1314-2012「単孔を利用した透水試験方法」に従い,非定常法に

おける揚水法(回復法)の試験を行った。

表-2.3 現場透水試験の位置,及び深度

ボーリング地点 試験深さ(G.L.-m) 対象土質 試験種別 備 考

2 3.0~3.5 細砂 非定常法

揚水法(回復法)

5)速度検層(PS検層)

速度検層(PS検層)は,単一のボーリング孔を用いて,地盤内を伝播する弾性波(P

波,及び S波)の速度を測定するために実施した。

① 測定地点と深度

速度検層(PS検層)は,No.1 地点のボーリング孔を用いて,深度50m まで実施した。

② 測定方法

測定方法は,JGS 1122-2012「地盤の弾性波速度検層方法」に従い,孔内起震受信方

式(サスペンション法)で,測定は1m間隔とした。

表-2.4 速度検層(PS検層)の位置,及び深度

ボーリング地点 試験深さ(G.L.-m) 対象土質 試験種別 備 考

1 1.0~50.0 全層

孔内起震受信方

式(サスペンショ

ン法)

測定は

1m間隔

6)常時微動測定

常時微動測定は,測定地点の地盤の振動特性である卓越振動数や増幅特性を明らか

とするために実施した。

① 測定地点と深度

測定は,No.1 地点付近の地表,及びボーリング孔内で実施した。

② 測定方法

測定方法は,「地盤調査の方法と解説,p.148~149,2013.」(公益社団法人 地盤工

学会)に従い実施した。

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表-2.5 常時微動測定の位置,及び深度

ボーリング地点 試験深さ(G.L.-m) 対象土質 試験種別 備 考

1 地表 全層

1秒計,5秒計,

10秒計

40.0 細砂 1秒計

7)試料の採取

室内土質試験に供するための試料の採取を行った。

① 試料の採取地点と深度

試料採取の実施地点,及び深度は,表-2.6 に示した通りである。

表-2.6 サンプリング実施地点,及び深度

ボーリング

地点

サンプリング

番号

試料の採取及び

土質試験の種別

採取深さ

(G.L.-m) 対象土質

1 1-1 乱した 2.15~2.45 シルト混じり細砂

1-2 乱した 4.15~4.45 シルト混じり細砂

2

2-1 乱れの少ない 2.3~3.6 細 砂

2-2 乱れの少ない 7.0~7.8 砂混じりシルト

2-3 乱した 10.15~10.45 シルト質細砂

2-4 乱れの少ない 12.0~12.8 シルト

② 採取方法

乱れの少ない土試料の採取方法は,粘性土は JGS 1221-2012「固定ピストン式シン

ウォールサンプラーによる土試料の採取方法」,砂質土はJGS 1223-2012「ロータリー

式三重管サンプラーによる土試料の採取方法」に従った。

なお,乱した土試料の採取は,標準貫入サンプラーによる。

表-2.7 基準化されたサンプラーの構造と適用地盤

サンプラーの種類

構 造

地 盤 の 種 類

粘 性 土 砂 質 土 砂 礫 岩 盤

軟 質 中くらい 硬 質 ゆるい 中くらい 密 な ゆるい 密 な

軟 岩 中硬岩 硬 岩N 値 の 目 安

0~ 4 4~ 8 8以上 10以下 10~30 30以上 30以下 30以上

固定ピ ストン式シン

ウォールサンプラー

エキステンションロッド式 単 管 ◎ ○ ○

水圧式 〃 ◎ ◎ ○

ロータリー式二重管サンプラー 二重管 ◎

ロータリー式三重管サンプラー 三重管 ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ○

ロータリー式スリーブ内蔵二重管サンプラー 二重管 ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ブロックサンプリング ― ◎ ◎ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○

◎:最適,○:適

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8)室内土質試験

室内土質試験は,当該計画地に分布する各地層の代表的な物理・力学特性を明らか

とするために行った。

① 試験実施地点と深度,数量

室内土質試験の実施地点,及び数量は,表-2.8 に示した通りである。

表-2.8 土質試験

ボーリン

グ地点

サンプリ

ング番号対象土質

物理的性質試験 力学的性質試験

土粒子

密度,

粒度

含水比,液

性・塑性限界,

湿潤密度

三軸

圧密

液状化

強度特性

動的変

形特性

1 1-1 シルト混じり細砂 ○

1-2 シルト混じり細砂 ○

2

2-1 細 砂 ○ ○ ○ ○

2-2 砂混じりシルト ○ ○ ○ ○

2-3 シルト質細砂 ○

2-4 シルト ○ ○ ○ ○

② 試験方法

試験方法は,日本工業規格(JIS),並びに地盤工学会基準(JGS)に従った。

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フートバルブ

三脚パイプやぐら スナッチブロック

ホイスティングスイベル

ウォータスイベル

デリバリホース

ポンプ

ドライブパイプ

ロッドホルダ

巻上げ機

伝動装置

変速装置

操縦装置

オイルタンク

セジメントチューブ

ケーシングパイプ

セジメントチューブ

カップリング

コアバーレル

コア

メタルクラウン

油圧ポンプ

原動機

スイベルヘッド

泥水

バック

2.2 調査方法

1)機械ボーリング

<目 的>

①地質構成の把握。

②原位置試験などに用いる試験孔の作成。

<掘削原理>

機械ボーリングは,原動機(ディーゼルエンジン)により駆動されるロッドを介し

て,コアバーレルの先端にとりつけたビットの回転と給水により,地盤を切り崩しな

がら掘孔を行うものである。

この際に発生する削りくず(スライム)は,孔壁保護と先端ビットの冷却を兼ねた

ベントナイト泥水の循環により孔外に排出した。

図-2.2に機械ボーリングの概略図を示す。

図-2.2 機械ボーリング概略図

(出典:全国地質調査業協会連合会『新版ボーリングポケットブック』,p.62,1993.)

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2)標準貫入試験

<目 的>

①N値を実測し,原位置における土の硬軟や締まり具合の測定する。

②採取試料の観察し,土質判別を行う。

③室内土質試験(主に物理試験)のための試料とする。

表-2.9 N値と土の硬軟及び密実度(テルツァギ-ペックによる)

砂地盤の相対密度の表現法 粘性土地盤のコンシステンシーの表現法

N値 相対密度 N値 相対稠度

0~4 非常に緩い 0~2 非常に軟かい

4~10 緩 い 2~4 軟かい

10~30 中 位 4~8 中 位

30~50 密 な 8~15 硬 い

50 以上 非常に密な 15~30 非常に硬い

30 以上 固結した

(出典:地盤工学会『地盤調査の方法と解説』,p.305,p.308,2013.より抜粋,加筆)

<試験方法>

標準貫入試験は,JIS A 1219:2013「標準貫入試験方法」に基づき実施した。

試験は,質量63.5±0.5(kg)のドライブハンマーを76±1(cm)の高さから自由落下さ

せ,ロッド頭部にとりつけたアンビル(ノッキングブロック)を打撃し,ロッド先端

にとりつけた標準貫入試験用サンプラーを地盤に30(cm)打ち込むのに要する打撃回数

をN値として記録した。

測定を終了した後,地表にサンプラーを引き上げて採取試料の観察を行い,代表的

な試料をプラスチック容器に密封して土質標本とした。

なお,本調査では,落下高さの誤差の発生を防ぎ,打撃エネルギーの正確性を確保

するために,自動落下式のドライブハンマー(つりあげ手動型)を用いた。

また,測定結果の記録方法は野帳記録とした。

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図-2.3 標準貫入試験装置,及び器具の名称

(出典:地盤工学会『地盤調査の方法と解説』,p.295,2013.)

図-2.4 設計に用いるN値のためのSPTサンプラーの標準形状

(出典:地盤工学会『地盤調査の方法と解説』,p.284,2013.)

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3)孔内水平載荷試験

<目 的>

地盤の水平方向における載加荷重に対する地盤の変形量を測定する。

<試験方法>

孔内水平載荷試験は,JGS 1531-2012 に従い実施した。

現在,一般的に用いられている試験機は表-2.9 に示すとおりであり,地盤の強度に

応じて適宜利用されている。

本調査では,等分布載荷方式,1室構造,最大加圧力 2.5(MPa)の試験装置を使用し

た。

表-2.10 主な孔内水平載荷試験装置

装置名

測定管(載荷部分)

加圧方法

最 大

加圧力

(MPa)

変位量の測定法 載荷盤

直径

(mm)

長さ

(mm) 室構造

L L T 厚肉弾

性ゴム

筒 80

900(測定部

分は600) 1

ボンベ貯蔵

の窒素ガス 2.5

測定管流入量に

よる(地上測定)

プレシオメーター 厚肉弾

性ゴム

筒 56

500(測定部

分は200) 3

ボンベ貯蔵

の窒素ガス 5.0

測定管流入量に

よる(地上測定)

K K T 半円形

金属板

50~

250 250~600 -

管内多段式ピ

ストンジャッキ 5.0

測定管流入オイル体

積による(地上測定)

(出典:全国地質調査業協会連合会『ボーリングポケットブック』,p.203に加筆,1983.)

図-2.5 低圧載荷 A型(LLT)の構成

(出典:関東地質調査業協会『ボーリング孔を利用する原位置試験についての技術マニュアル』,p.105,1995.)

420 ㎜

80 ㎜

(3)プローブ(重量 12 ㎏)

スタンドパイプ

12 ㎜φ×6 ㎜φ

6 ㎜×4 ㎜

ナイロンホース

圧力計 (2)圧力~容積計 10kgf/cm2

圧力計 又は

30kgf/cm2

水③

①プローブ

1350

500

タンク支持台

(1)圧力源

(窒素ガスボンベ,他の圧力源も使用

可)○最高充填圧 150kgf/cm2

○ボンベ耐圧内 250kgf/cm2

○ボンベ内容積 10~11○ボンベ圧 20kgf/cm2以下

で交換

1次圧 200kgf/cm2

2次圧 50kgf/cm2

レギュレーター

圧力計(プローブ圧)

140φ

(2)圧力~容積計

1000

①プローブを組み立てる。

②タンク支持台にタンクを立てる。

③タンクおよびプローブに注水する。

④タンクに圧力計を取り付ける。

⑤ボンベにレギュレータを取り付ける。

⑥ゴムホースでレギュレータとタンクを接続する。

⑦ナイロンパイプでタンクとプローブを接続する。

収納箱 99cm×41cm×28cm(ボンベ除く)

圧力計(ガス圧) (レギュレーター)1次側圧力計

2次側圧力計 調整コックボンベ開閉

コック

2次側コック

ボンベ

タンク

送水コック

排水

コック

ナイロンパイプ

(送水用)ナイロンパイプ

(排水用)

●斜線部は水で

充填されている。

●波線は加圧時の状態

を表しています。

(重量 25 ㎏)

(重量 16 ㎏)

接続順序

(a) 構成図(b) 圧力回路図

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4)現場透水試験

<目 的>

現場透水試験は,地盤の透水性を確認する目的で実施する。また,試験終了後には

平衡水位(翌朝水位)を確認する。

<試験方法>

現場透水試験は,JGS 1314-2012「単孔を利用した透水試験方法」に従い,非定常

法における揚水法(回復法)の試験を行った。

<試験結果の整理>

下記の式を用いて,直線勾配法により透水係数k(m/s)を求めた。

12

log2

log8

e)(2.3 2

ttL

dk

k : 透水係数 (m/s) de : 測定管の等価内径 (m) D : 試験区間(孔)の直径 (m) L : 試験区間の長さ (m) t : 経過時間 (s)

s : 平衡水位からの水位差 (m)

図-2.6 現場透水試験概要図と logs-t曲線

s2

s1

de

平衡水位

t=t2

t=t1

時間t(s)

水位差logs(cm)

t1 t2

s1

s2

初期の直線部分

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5)速度検層(PS検層)

(ⅰ)ダウンホールPS検層(板たたき法)

① ダウンホールPS検層の原理

ダウンホールPS検層は,ボーリング地点における縦波(P波),及び横波(S波)の

速度分布を測定する。

ボーリング孔内に3成分受振器(上下方向1成分,水平方向2成分)を設置(圧着)し

た状態で,地表面より弾性波動を発生させ,孔中受振器でその波動を観測する。

一般に,地表面になんらかの衝撃を与えると地盤には圧縮変形,及びせん断変形,

あるいはねじり変形が生ずる。

圧縮変形は,縦波(粗密波)として地中を伝わり,せん断,あるいはねじり変形は,

横波(せん断波)として伝わる。

縦波は横波より伝播速度が大きく受振点に最初に到達するので,縦波をP波

(Primary Wave),横波をS波(Secondary Wave)と呼ぶ。

孔中受振器の設置深度を孔底から地表まで順次移動しながら地表面で発生させたP

波,S波を観測する。

各深度における測定の伝播時間と伝播距離の関係から,弾性波速度を算出すること

ができる。

観測の概念図は,下図の通りである。

図-2.7 PS検層測定概念図

測定器

窒素ボンベ

重錘ハンマー

起振源

波動

孔中受振器

地表受振器

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② 測定方法

(1)起振方法

S波起振

地表面に密着させた板を水平に打撃することにより,振動方向が水平な地表面と平

行した比較的単純なせん断波(S波)を発生させることができる。

この起振方法によりダウンホールPS検層は『板たたき法』とも呼ぶ。

また,打撃方向を板の左右双方から行うことにより,S波の振動方向が反転するこ

とを用いてP波との区別を明確にする。

実際の観測としては,測定孔口よりやや離した地表面に板(長さ 1.0m 程度,幅 40cm

程度)を設置し,板の両端を交互にカケヤで打撃する。

なお,板を平坦面に設置した後,スパイクを打設,さらに荷重をかけることにより

地面と板との圧着度を高めることに努める。

起振時の基準信号(Shot Mark)として,カケヤにトリガー発振器を取り付けて観測す

る。

一回の起振では,工事振動や交通振動による雑動に比べ信号のエネルギーが不足す

ることもある。

この場合,複数回の起振を行い,それらを加算する方式(スタッキング処理と呼ぶ)

を用いる。

P波起振

P波はあらゆる弾性波のうち最初に到達する粗密波である。

測定孔口よりやや離れた地表面に設置した杭をカケヤで垂直に打撃することにより,

P波を発生させる。

起振時の基準信号は,S波と同じようにカケヤに取り付けたトリガー発振器による

ものである。

P波の場合も複数回の起振を行い,それらを加算する方式(スタッキング処理)を用

いる。

(2)受振方法

孔中受振器は,3 成分(上下方向1成分,水平方向2成分)内蔵のものを使用し,ゴ

ムパッカーにより観測深度で,孔壁に圧着固定する。

定められた間隔で深度を移動し,起振・測定作業を繰り返し行う。

このため,起振波形が同一の条件を満たしているか,及びトリガー時刻のずれがな

いかを判断するために,孔口近傍の地表面に基準点としての受振器を設置し,毎回起

振される波形を常に収録し解析の際の参考とする。

トリガー時刻とは,カケヤに取り付けたトリガー発振器による起振の瞬間の時刻で

あり,この時刻信号を合図に測定装置はA/D変換(アナログの電圧波形をデジタル化

する)を開始し収録する。

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③ 解析方法

P波は,粗密波であるので媒体の方向と波の進行方向は一致しており,P波を縦波

と呼ぶこともある。

一方,S波はせん断波であるので媒体の振動方向と波の進行方向とは直交し,横波

とも呼ばれる。

PS検層測定時のP波,及びS波はほぼ鉛直下方へと伝播していくので,P波は上

下方向,S波は水平方向の振動成分を持っている。

そこで,受振器の波形のうちP波は上下成分の記録,S波は水平成分の記録を用い

る。

起振点で発生した波動が伝播して受振点に到達するまでの時間を記録から読み取り,

受振点深度を縦軸に初動到達時間を横軸にとってプロットする。

プロットしたものにボーリング柱状図等を参考にして,同一の傾きをもつ区間を設

定し,近似線を引いて走時曲線を作成する。

各区間の傾きが伝播速度となる。

波の到達時間は本来注目している波の立ち上がり時を読み取るが,S波の場合は,

波のピーク時刻を参考に読み取ることが多い。

起振点は孔口より距離を取っているため,実際の波動伝播経路は孔口から受振点ま

での距離よりも長くなる。

従って,プロットする前に,得られた波動到来時刻に対して距離補正を行う必要が

ある。

読み取り時間(初動到達時刻)の補正は,以下の係数を掛けることで行う。

観測孔(C) 起振点(B)

補正係数=(ACの距離)/(ABの距離)

ここで, A,B,Cは右図による位置である。 波動

受振点(A)

図-2.8 振源補正概念図

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図-2.9 サスペンションPS検層測定概念図

ウエイト&バッテリー

ドライバー

振源

上部受振器

ヘッドレデューサ(プリアンプ)

下部受振器

フィルターチューブ

測定孔

波動

ウインチ 測定器

(ⅱ)サスペンションPS検層

① サスペンションPS検層の原理

サスペンションPS検層は,ボーリング地点の縦波(P波),及び横波(S波)の速

度分布を測定するものであり,漂遊型の発振器と受振器を一連のプローブに組み込み,

ボーリング孔内の各深度で区間伝播時間を測定するものである。

なお,従来の地表起振,孔内受振方式のPS検層に対しては作業効率の面で大きく改

善され,PS検層の適用範囲を拡大した方法といえる。

サスペンションPS検層の測定概念図を以下に示す。

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図-2.10 間接起振型振源

コイル

電源 孔壁

波動 波動

孔内水

図-2.11 漂遊型受振器

孔壁

Pセンサー

プリアンプ

Sセンサー

波動波動

孔内水

② 起振方法

起振方法の概要は,図-2.10 の間接起振型振源に示すように,孔内のゾンデに内蔵

された円筒型に電磁ハンマーが孔軸に対して直交方向に振動することにより起振する。

電磁ハンマーとは,永久磁石によって作られた磁界(空隙部)中にコイルを巻いた

円筒状の鉄芯を置き,コイルに電流を流すことにより,鉄芯を駆動する(一般のスピ

ーカーと同じ原理)。

電流を流す向きを変えることのより,打撃の向きを反転することができる。

孔内は水で満たされているものとし鉄芯が孔軸に直交方向へ動く状態を考える。

いま,鉄芯に急に力が加わると,進行方向の水は押され,逆の側の水は引き込まれ

負の圧力が生ずる。

この考えは,水の孔内での流動を考慮していない場合であるが,この孔内水の動き

があるときでも,鉄芯の動きが急激であれば,ハンマー周辺の水を加速度運動させる

ことになり,やはり正負の圧力分布が生ずる。

この圧力分布が周囲の地盤に伝達され,地盤を変形させることになる。

③ 受振方法

孔内の受振器を孔壁に圧着することなく,単に孔内に吊り下げるだけで,P波,S

波を受振することができる。

受振装置部分の密度が水の密度に近い場合,受振器の動きは地動にほぼ等しくなる。

図-2.11 の漂遊型受振器に示されるようにP波,S波を受振するセンサーは水と同

等の比重の筒に配されている。

実際の測定孔では,水と多少比重の異なる孔内水に満たされた状態にあり,孔内水

を介して記録波形を受振することになる。

ただし,受振部と起振部が連結されているため,両者の間にフィルターチューブと

呼ぶゴム製のパイプを介在させ,発振振動を抑えている。

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④ 解析方法

測定した記録波形は,デジタル値として収録されている。

これを室内に持ち帰り,S波とP波に分けて読み取り作業をおこなう。

起振器は受振器の下方にフィルターチューブを挟んであり,2つの受振器の間隔は

1mであるので,上方,下方の受振波形を並べて対応する位相の時間を読み取り,1

mを両者の時間差で割ることにより,2点間の区間伝播速度値が計算できる。

測定深度としては,1m間隔に配置された上・下2つの受振器の中間を深度として

いるので,算出される速度値,Vp,及び Vsは,測定深度の上・下0.5m間の平均値を

意味している。

⑤ 弾性定数の算出

PS検層の結果から,P波速度(Vp),及びS波速度(Vs)が判明する。

これより,各地層の動的弾性定数が求められる。

その算出式は,次の通りである。

ポアソン比 1/2

2)/(2

2

sp

sp

VV

VV

剛 性 率 2

Sd VG 〔kN/m2〕 ρ:密度 〔t/m3〕

ヤ ン グ 率 )1(2 dd GE 〔kN/m2〕

Vp:P波速度〔m/s〕 Vs:S波速度〔m/s〕

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6)常時微動測定

① 測定方法

測定は,地表面に地表用微動計(1秒計,5秒計,10秒計)を設置,測定孔に孔中用

微動計(1秒計)を設置(圧着)して行う。

微動計(受振器)には,3成分(水平方向2成分,上下方向1成分)内蔵の速度型受振

器を使用する。

地表受振器の設置に際しては,地盤表面の平坦な場所を選び,受振器を水平に設置

する。

観測は,変位波形,速度波形をそれぞれ20分間程度観測し,データ収録装置に収録

する。

観測中は,LCD 画面により波形を確認し,正常な観測が行われていることを確認す

る。

図-2.13 に,常時微動測定の測定概念図を示す。

図-2.13 常時微動測定概念図

孔中用微動計(3成分)

圧着用シリンダー

エアー・ホース

ケーブル

窒素ボンベ

記録装置

地表用微動計(3成分)

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② 解析方法

現地で収録した波形記録のうち,比較的地表面付近の雑振動が少ない時間帯を選び出

し,変位波形及び速度波形からそれぞれ4096point(1秒計の場合),8192point(5秒計),

16384point(10 秒計)の解析を行った。

以下に,解析波形のサンプリングと図-2.14 に解析のフローを示す。

解 析 条 件

サンプリング間隔(Δt): 0.01 秒

サンプリング数 ( N ): 4096point,8192point,16384point

解 析 時 間 長 ( T ): 約 40秒, 約 81秒, 約 163秒

解 析 周 期 ( 秒 ): 0.05~10秒, 0.05~10秒, 0.1~50秒

データ収録時に収録器内でA/D 変換

ハニング・ウインドウをかける

サイクル : 5

図-2.14 常時微動解析フロー

地盤振動

(変位・速度波形)

デジタルデータ

(変位・速度データ)

A/D変換

各波形図

データ

ウインドウ

高速フーリエ変換

( FFT)

フーリエスペクトル

スペクトル

ウインドウ

各スペクトル図

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7)乱れの少ない試料の採取

<目 的>

室内土質試験に供する試料の採取を目的として行う。

<採取方法>

乱れの少ない土試料の採取は,粘性土は JGS 1221-2012「固定ピストン式シンウォ

ールサンプラーによる土試料の採取方法」,砂質土はJGS 1223-2012「ロータリー式三

重管サンプラーによる土試料の採取方法」に従い実施した。

採取した試料はサンプリングチューブ両端をパラフィンにより密封して,振動を与

えないように速やかに試験室に運搬した。

図-2.7 水圧式サンプラー,及びロータリー式三重管サンプラーの構造

(出典:地盤工学会『地盤調査の方法と解説』,p.230,p.246,2013.)

8)室内土質試験

<目 的>

室内土質試験は,当該計画地の地盤の詳細な物理,並びに力学特性を得ることを目

的とする。

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<試験方法>

室内土質試験は,日本工業規格(JIS),地盤工学会基準(JGS)に基づき,表-2.10

に示した項目を実施した。

表-2.10 室内土質試験項目

試験分類 規格,基準名 規格,基準番号

室内土質試験

物理試験

土粒子の密度試験方法 JIS A 1202:2009

土の含水比試験方法 JIS A 1203:2009

土の粒度試験方法 JIS A 1204:2009

土の液性・塑性限界試験 JIS A 1205:2009

土の湿潤密度試験 JIS A 1225:2009

力学試験

土の非圧密非排水(UU)

三軸圧縮試験方法 JGS 0521-2009

土の段階載荷による圧密試験 JIS A 1217:2009

土の繰返し非排水三軸試験 JGS 0541-2009

地盤材料の変形特性を求める

ための繰返し三軸試験 JGS 0542-2009