3 メキシコとブラジルの成長戦略 - meti2002/02/03  · 通商白書 2014 185...

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メキシコとブラジルの成長戦略 ブラジルとメキシコは、1970 年代まで高成長を続 けたが、その後ハイパーインフレーションや債務危機、 通貨危機などを経験し、経済は大きく減速することと なった。これらの危機に直面する中で、両国が選択し た政策の方向性は極めて対照的である。両国の輸出上 位 10 品目の推移を見ると、1970 年代から 1980 年代 までは両国とも一次産品が中心であったが、1990 年 代以降は大きく異なっている(第Ⅱ-2-3-1 表)。すな わち、ブラジルにおいては、資源、農産物など一次産 品とその加工品を中心とした輸出構造が継続してお り、最近ではその傾向が更に強まってきている。これ に対して、メキシコにおいては、工業製品中心の財を 輸出する構造に大きく変貌している。また、ブラジル の GDP はメキシコよりも大きいが、輸出額はメキシ コの方が大きく、輸出額の対 GDP 比はブラジルの約 1 割に対してメキシコでは約 3 割となっている(第Ⅱ-2- 3-2図)。 以下では、経済危機を経験した両国がそれぞれどの ように乗り越え、その結果どのような経済構造を有す るに至ったのかについて見ていく。 備考:表の下の % の数字は輸出上位 10 品目の全輸出に占める割合。全額は 2011 年における両国の輸出額。 緑色は一次産品及びその加工品。黄色は工業製品。 資料:国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会 2013 年年次報告から作成。 ブラジルの主要輸出産品 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2011 1位 コーヒー34.6% 粗糖 11.4% コーヒー12.4% コーヒー9.2% 鉄鉱石 7.7% 鉄鉱石 5.5% 航空機 6.3% 鉄鉱石 6.2% 鉄鉱石 14.3% 鉄鉱石 16.3% 2位 鉄鉱石 7.7% 鉄鉱石 10.8% 鉄鉱石 7.7% 鉄鉱石 6.5% 大豆かす 5.3% 大豆かす 4.4% 鉄鉱石 5.5% 大豆 4.5% 原油 8.0% 原油 8.4% 3位 綿花 5.7% コーヒー10% 大豆かす 7.5% 石油製品 6.3% 果汁 4.8% コーヒー4.2% 大豆 4.0% 石油製品 4.1% 大豆 5.4% 大豆 6.4% 4位 粗糖 4.7% 大豆 8% 粗糖 4.7% 大豆かす 4.7% コーヒー3.5% 粗糖 3.1% 自動車 3.2% 自動車 3.7% 粗糖 4.6% 粗糖 4.5% 5位 とうもろこし 3.0% 果実・ナッツ 5.6% 石油製品 3.0% 果汁 3.1% 靴・同部材 3.5% 木材パルプ 3.1% 大豆かす 3.0% 原油 3.5% 鶏肉 2.6% 石油製品 3.7% 6位 カカオ 2.9% カカオ 2.6% 自動車 3.0% 靴・同部材 3.5% アルミニウム 3.0% 粗鋼 2.9% コーヒー2.8% 鶏肉 3.0% コーヒー2.6% コーヒー3.1% 7位 大豆かす 2.8% 石油製品 2.1% 大豆油 2.2% 大豆 3.0% 大豆 2.9% 自動車 2.9% 木材パルプ 2.8% 航空機 2.7% 鶏肉 3.1% 鶏肉 3.1% 8位 牛肉 2.6% 木材パルプ 1.9% 大豆 2.0% エンジン 2.5% エンジン 2.8% アルミニウム 2.7% 靴・同部材 2.5% 大豆かす 2.4% 大豆かす 2.3% 大豆かす 2.2% 9位 木材 2.5% 靴・同部材1.9% 靴・同部材1.9% 自動車2.4% 粗鋼 2.4% 自動車部品 2.6% 自動車部品 2.2% 通信機器部品 2.3% 木材パルプ 2.3% 木材パルプ 1.8% 10 位 コーヒー抽出液 1.6% 大豆油 1.8% 果汁 1.8% 大豆油 2.4% 石油製品 2.2% 果汁 2.4% アルミニウム 2.1% コーヒー2.1% 自動車 2.2% 自動車 1.7% 占有率 68.10% 56.10% 46.20% 43.60% 38.10% 33.80% 34.40% 34.50% 47.80% 50.90% 2,560 億ドル メキシコの主要輸出産品 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2011 1位 粗糖 7.7% 原油 15.3% 原油 60.9% 原油 57.2% 原油 33.9% 自動車 9.5% 自動車 9.9% 原油 13.2% 原油 12.0% 原油 14.1% 2位 綿花 7.0% コーヒー6.8% 天然ガス 4% 石油製品 7.4% 自動車 9.9% 原油 9.3% 原油 8.9% 自動車 6.3% 自動車 7.7% 自動車 7.6% 3位 コーヒー6.3% 綿花 6.1% コーヒー2.9% エンジン 7.1% エンジン 5.3% 絶縁ケーブル 4.3% 計算機 4.9% テレビ 4.8% テレビ 7.0% テレビ 5.4% 4位 海老蛸 5.5% 海老蛸 5.1% 海老蛸 2.6% コーヒー2.4% 石油製品 2.4% テレビ 3.7% 絶縁ケーブル 4.0% 自動車部品 4.6% 通信機器 6.1% 自動車部品 4.8% 5位 牛肉 3.6% 生鮮トマト 4.3% 銀 2.4% 銀 1.7% 生鮮野菜 1.7% エンジン 3.5% 通信機器 3.1% 計算機 4.3% 自動車部品 4.6% 計算機 4.7% 6位 生鮮トマト 3.0% 粗糖 4.1% 綿花 2.0% 海老蛸 1.6% 生鮮トマト 1.6% 自動車部品 2.8% テレビ 3.5% 通信機器 3.7% 計算機 4.5% 通信機器 4.5% 7位 石油製品 2.6% 銅 2.3% 石油製品 1.6% 自動車部品 1.1% 自動車部品 1.4% 電機部品 2.6% 自動車部品 3.5% 絶縁ケーブル 3.4% トラック 3.6% トラック 3.6% 8位 生牛 自動車部品 1.9% 自動車部品 1.3% 生牛 0.8% コーヒー1.4% 通信機器 2.6% 電機部品 3.1% トラック 3.3% 絶縁ケーブル 2.2% 金 2.3% 9位 鉛 2.3% 長石 1.9% 生鮮野菜 1.1% 生鮮トマト 0.8% 計算機 1.3% トラック 2.3% トラック 2.9% 電機部品 2.6% エンジン 2.0% 絶縁ケーブル 2.2% 10 位 長石 2.4% 鉛 1.6% 銅鉱石 1.1% ポリエチレン 0.7% 生牛 1.3% 発電機 2.2% 発電機 2.8% エンジン 2.2% 電機部品 2.1% エンジン 2.2% 占有率 43% 49.40% 79.90% 80.80% 60.20% 42.80% 47.50% 48.40% 51.80% 51.40% 3,495 億ドル -2-3-1 表 ブラジル及びメキシコの輸出構造 通商白書 2014 185 第3節 メキシコとブラジルの成長戦略

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  • メキシコとブラジルの成長戦略第3節

     ブラジルとメキシコは、1970 年代まで高成長を続けたが、その後ハイパーインフレーションや債務危機、通貨危機などを経験し、経済は大きく減速することとなった。これらの危機に直面する中で、両国が選択した政策の方向性は極めて対照的である。両国の輸出上位 10 品目の推移を見ると、1970 年代から 1980 年代までは両国とも一次産品が中心であったが、1990 年代以降は大きく異なっている(第Ⅱ-2-3-1 表)。すなわち、ブラジルにおいては、資源、農産物など一次産品とその加工品を中心とした輸出構造が継続しており、最近ではその傾向が更に強まってきている。これに対して、メキシコにおいては、工業製品中心の財を輸出する構造に大きく変貌している。また、ブラジルの GDP はメキシコよりも大きいが、輸出額はメキシ

    コの方が大きく、輸出額の対 GDP 比はブラジルの約1 割に対してメキシコでは約 3 割となっている(第Ⅱ-2-3-2 図)。 以下では、経済危機を経験した両国がそれぞれどのように乗り越え、その結果どのような経済構造を有するに至ったのかについて見ていく。

    備考:表の下の % の数字は輸出上位 10 品目の全輸出に占める割合。全額は 2011 年における両国の輸出額。   緑色は一次産品及びその加工品。黄色は工業製品。資料:国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会 2013 年年次報告から作成。

    ブラジルの主要輸出産品

    1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 20111 位 コーヒー34.6% 粗糖 11.4% コーヒー12.4% コーヒー9.2% 鉄鉱石 7.7% 鉄鉱石 5.5% 航空機 6.3% 鉄鉱石 6.2% 鉄鉱石 14.3% 鉄鉱石 16.3%

    2 位 鉄鉱石 7.7% 鉄鉱石 10.8% 鉄鉱石 7.7% 鉄鉱石 6.5% 大豆かす 5.3% 大豆かす 4.4% 鉄鉱石 5.5% 大豆 4.5% 原油 8.0% 原油 8.4%

    3 位 綿花 5.7% コーヒー10% 大豆かす 7.5% 石油製品 6.3% 果汁 4.8% コーヒー4.2% 大豆 4.0% 石油製品 4.1% 大豆 5.4% 大豆 6.4%

    4 位 粗糖 4.7% 大豆 8% 粗糖 4.7% 大豆かす 4.7% コーヒー3.5% 粗糖 3.1% 自動車 3.2% 自動車 3.7% 粗糖 4.6% 粗糖 4.5%

    5 位 とうもろこし 3.0% 果実・ナッツ 5.6% 石油製品 3.0% 果汁 3.1% 靴・同部材 3.5% 木材パルプ 3.1% 大豆かす 3.0% 原油 3.5% 鶏肉 2.6% 石油製品 3.7%

    6 位 カカオ 2.9% カカオ 2.6% 自動車 3.0% 靴・同部材 3.5% アルミニウム 3.0% 粗鋼 2.9% コーヒー2.8% 鶏肉 3.0% コーヒー2.6% コーヒー3.1%

    7 位 大豆かす 2.8% 石油製品 2.1% 大豆油 2.2% 大豆 3.0% 大豆 2.9% 自動車 2.9% 木材パルプ 2.8% 航空機 2.7% 鶏肉 3.1% 鶏肉 3.1%

    8 位 牛肉 2.6% 木材パルプ 1.9% 大豆 2.0% エンジン 2.5% エンジン 2.8% アルミニウム 2.7% 靴・同部材 2.5% 大豆かす 2.4% 大豆かす 2.3% 大豆かす 2.2%

    9 位 木材 2.5% 靴・同部材 1.9% 靴・同部材 1.9% 自動車 2.4% 粗鋼 2.4% 自動車部品 2.6% 自動車部品 2.2% 通信機器部品 2.3% 木材パルプ 2.3% 木材パルプ 1.8%

    10 位 コーヒー抽出液 1.6% 大豆油 1.8% 果汁 1.8% 大豆油 2.4% 石油製品 2.2% 果汁 2.4% アルミニウム 2.1% コーヒー2.1% 自動車 2.2% 自動車 1.7%

    占有率 68.10% 56.10% 46.20% 43.60% 38.10% 33.80% 34.40% 34.50% 47.80% 50.90%

    2,560 億ドル

    メキシコの主要輸出産品

    1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 20111 位 粗糖 7.7% 原油 15.3% 原油 60.9% 原油 57.2% 原油 33.9% 自動車 9.5% 自動車 9.9% 原油 13.2% 原油 12.0% 原油 14.1%

    2 位 綿花 7.0% コーヒー6.8% 天然ガス 4% 石油製品 7.4% 自動車 9.9% 原油 9.3% 原油 8.9% 自動車 6.3% 自動車 7.7% 自動車 7.6%

    3 位 コーヒー6.3% 綿花 6.1% コーヒー2.9% エンジン 7.1% エンジン 5.3% 絶縁ケーブル 4.3% 計算機 4.9% テレビ 4.8% テレビ 7.0% テレビ 5.4%

    4 位 海老蛸 5.5% 海老蛸 5.1% 海老蛸 2.6% コーヒー2.4% 石油製品 2.4% テレビ 3.7% 絶縁ケーブル 4.0% 自動車部品 4.6% 通信機器 6.1% 自動車部品 4.8%

    5 位 牛肉 3.6% 生鮮トマト 4.3% 銀 2.4% 銀 1.7% 生鮮野菜 1.7% エンジン 3.5% 通信機器 3.1% 計算機 4.3% 自動車部品 4.6% 計算機 4.7%

    6 位 生鮮トマト 3.0% 粗糖 4.1% 綿花 2.0% 海老蛸 1.6% 生鮮トマト 1.6% 自動車部品 2.8% テレビ 3.5% 通信機器 3.7% 計算機 4.5% 通信機器 4.5%

    7 位 石油製品 2.6% 銅 2.3% 石油製品 1.6% 自動車部品 1.1% 自動車部品 1.4% 電機部品 2.6% 自動車部品 3.5% 絶縁ケーブル 3.4% トラック 3.6% トラック 3.6%

    8 位 生牛 自動車部品 1.9% 自動車部品 1.3% 生牛 0.8% コーヒー1.4% 通信機器 2.6% 電機部品 3.1% トラック 3.3% 絶縁ケーブル 2.2% 金 2.3%

    9 位 鉛 2.3% 長石 1.9% 生鮮野菜 1.1% 生鮮トマト 0.8% 計算機 1.3% トラック 2.3% トラック 2.9% 電機部品 2.6% エンジン 2.0% 絶縁ケーブル 2.2%

    10 位 長石 2.4% 鉛 1.6% 銅鉱石 1.1% ポリエチレン 0.7% 生牛 1.3% 発電機 2.2% 発電機 2.8% エンジン 2.2% 電機部品 2.1% エンジン 2.2%

    占有率 43% 49.40% 79.90% 80.80% 60.20% 42.80% 47.50% 48.40% 51.80% 51.40%

    3,495 億ドル

    第Ⅱ-2-3-1 表 ブラジル及びメキシコの輸出構造

    通商白書 2014 185

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 185 2014/08/05 14:40:49

  •  経済構造のぜい弱性が危機を招く要因となった過去の教訓を踏まえ、ブラジル、メキシコとも、経済ファンダメンタルズの強化に取り組み、危機に際しての政策対応能力を高めてきた。この結果、近年は、外部金融環境の急激な変化などにより動揺が生じる可能性はあるものの、第Ⅱ-2-3-3 表に示すように過去の経済

    危機時と比較してリスクへの耐性が強化されている。例えば、ブラジルのインフレ率は、現時点においても相対的に高い水準にあるが、ハイパーインフレーション時と比べてはるかに安定している。また、メキシコの経常収支も改善している。

    1.リスクへの耐性

    第Ⅱ-2-3-3 表 ブラジル及びメキシコの過去の危機時の経済指標との比較

    国名 /比較項目 ブラジル     メキシコ    

      1990 年 1999 年 2013 年 1982 年 1994 年 2013 年 *(1)経常収支(10 億ドル) - 3.8 - 25.3 - 81.4 - 5.9 - 29.7 - 1.6経常収支(GDP 比 %) - 0.8% - 4.3% - 3.6% - 2.7% - 5.6% - 0.5%インフレ率 年率平均(%) 2,948% 4.9% 6.4% 59.2% 7.0% 3.8%財政収支(GDP 比 %) 1990 年 1999 年 2013 年 1982 年 1994 年 2013 年

    - *(2) - 5.3% - 3.3% - 14.7% - 0.1% - 3.9%短期対外債務(対外貨準備高比)*(3) 1990 年 1999 年 2013 年 1982 年 1994 年 2013 年

    260% 75.4% 9.1% - 39.3% 22.6%米国とのスワップ協定 2008 年

    300 億ドル2008 年300 億ドル

    IMF からの融資枠(Flexible Credit Line) 730 億ドル   *(4)

    銀行自己資本比率(%)

    2001 年 2012 年 2001 年 2013 年 *(5)

    14.9% 16.7% 14.7% 16.6%備考( 1) ブラジルの 1990 年はハイパーインフレーションが最も激しかった年、1999 年はアジア通貨危機の年。メキシコの 1982 年は債務危機、1994 年は通貨

    危機の年(過去の経済危機と 2013 年時点との比較)。(2)財政収支に関するブラジルの 1990 年のデータは不明。(3)世銀及び各国中銀のデータに基づき計算。( 4) Flexible Credit Line は経済実績の良好な国を国際金融危機から保護するための融資枠制度。メキシコには総額 730 億ドルを設定。事前審査をパスすれ

    ば無条件に引き出し可能。メキシコがこれを引き出したことはないが事実上の外貨準備となり得る。2009 年に新設。2011 年に更新され、2012 年に総額 730 億ドル。ブラジルには過去には IMF からの融資等があったが既にパリクラブ債権も含め完済し、純債権国としての地位を得ている。

    (5)2013 年 3 月現在。2001 年のブラジル(ブラジル中央銀行からの数字)を除き、IMF Ⅳ条協議の資料から作成。資料:IMF、世銀、メキシコ中央銀行、ブラジル中央銀行から作成。

    第Ⅱ-2-3-2 図ブラジル及びメキシコの輸出額、対GDP比の推移

    資料:I BGE(ブラジル地理統計院)、INEGI(メキシコ統計地理情報院)、CEICデータベースから作成。

    0

    (10億ドル) (%)

    (年)

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    350

    400

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    35

    2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

    メキシコ輸出額対GDP比メキシコ輸出額

    ブラジル輸出額対GDP比ブラジル輸出額

    186 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 186 2014/08/05 14:40:50

  • ブラジルは、1940 年代以降、首都ブラジリアの建設などインフラ整備を積極的に行い成長を遂げたが、需要加熱と財政の悪化によりインフレを招いた(年平均 31%)。こうしたことを背景として、社会的な混乱が生じ、1964 年のクーデターにより軍事政権が発足した。 軍事政権の下、当初は緊縮政策が行われインフレも抑制されていたが、その後積極的な公共投資が行われ、「ブラジルの奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げた。しかし、二度にわたる石油危機に見舞われ、「失われた 10 年」と呼ばれる経済低迷を経験することとなった。1970 年代のインフレ率はおおむね 10~60%で推移した。 1985 年に民政に移管すると、ポピュリズム的な財政運営が行われ、インフレを更に昂進(こうしん)させることとなった。物価・賃金・為替レートを凍結するクルザード・プランなどの対策が講じられたが、その効果は限定的で、1980 年代末からハイパーインフレーションに突入し、1990 年には 2,948%のインフレ率となった。ハイパーインフレーションは、1994 年に米ドルとリンクさせるレアル・プランが導入されると劇的に沈静化し、1996 年には 16%までインフレ率が低下した。現在も他国と比べてやや高めの水準であるが、おおむね一桁台で推移している213。 このようなハイパーインフレーションの経験から、ブラジルでは、現在の金融政策もインフレ圧力に敏感に反応して行われている。政策金利を用いてインフレ率を目標値(4.5%± 2%)に誘導するインフレターゲット政策を行っているほか、財政規律の維持に努めようとしている。

    ブラジルのハイパーインフレーションの克服コラム

    10

    213二宮康史(2011)『ブラジル経済の基礎知識』、第 2 版、P2-P7 JETRO 近田亮平編(2013)『躍動するブラジル―新しい変容と挑戦』、P55-65 アジア経済研究所 IMF 「世界経済見通し」データベース 2014 年 4 月、ブラジル中央銀行

    通商白書 2014 187

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 187 2014/08/05 14:40:50

  • (1)対外経済政策 メキシコは、1982 年の債務危機を契機として、それまでの国内産業の保護・育成を目的とした輸入代替政策から自由貿易政策へと転換した。まず、1985 年に輸入ライセンス制の元にあった品目のうち 8 割を数量制限に移行させた。1986 年に GATT(現 WTO)に加盟し、加盟議定書等にしたがって、輸入数量制限品目を 1985 年初頭 83%あったのを 86 年には約 27%までに削減した。また、国際競争によってインフレーションを安定化させるとの観点から最高関税率を 20%まで引下げを行うなどの貿易の自由化を進めていった 214。他方、ブラジルは GATT(現 WTO)に 1948年に加盟しているが、メルコスール(1991 年署名、1995 年発効)とともに域内関税と域外関税を設定してきた。なお、世銀による適用関税率(単純平均ベース)を見ると 2003 年までは両国ともおおむね 15%台の平均関税率で推移してきたが、2010 年時点でメキシコが 2.8%、ブラジルが 7.2%になっている(第Ⅱ- 2-3-4 図)。一方、メキシコは 1994 年の NAFTA への加盟を始め、中南米諸国、欧州諸国、日本など 21の国と地域で 17 の FTA を締結するなど世界各国・地域との自由貿易網を積極的に構築し、各国との経済連携を強化していった。他方、ブラジルにおいては、国内産業の保護・育成が長く続き、経済連携の動きも

    基本的には南米諸国を中心としたものになっている(第Ⅱ-2-3-5 表)。 また、メキシコは、外資参入規制の緩和、民営化などの改革も進めた結果、対内直接投資も増加し、資源の輸出国から工業製品の製造・輸出拠点へと成長した(第Ⅱ-2-3-6 図)。ブラジルへの直接投資も近年増加している(第Ⅱ-2-3-7 図)。メキシコでは製造業に対する直接投資が特に伸びているのに対して、ブラジルではサービス業、鉱業、農業に対する直接投資が多くなっている。 ブラジルの製造業については、国際的な競争力を有する企業も存在するが、近年の資源需要の増加、資源価格の上昇などを背景として、輸出に占める一次産品の割合が上昇し、輸出に占める工業製品の割合は低下している。工業製品の輸出割合が低下した背景として、コモディティブームに伴う割高なレアルや 215、インフレ圧力への懸念から高水準で推移している政策金利・国内貸出金利が製造業の生産・輸出を下押ししていることも考えられる(第Ⅱ-2-3-8 図)216。

    2.成長戦略

    第Ⅱ-2-3-4 図 関税率の推移

    備考: メキシコのグラフデータで途切れている箇所はデータが無いことを意味する。単純平均。

    資料:世銀「WDI」から作成。

    0

    15105

    35302520

    4540

    50(%)

    2012

    1989

    1995

    1994

    1992

    1991

    1990

    1993

    1997

    1996

    1999

    1998

    2001

    2000

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    ブラジルメキシコOECD加盟国

    (年)

    214P. Aspe ( 1993 ) Economic Transformation the Mexican Way, The MIT Press, L.Agama, and C.A. McDaniel (2002) “The NAFTA Preference and U.S. -Mexico Trade” U.S. International Trade Commission

    215近田亮平編(2013)『躍動するブラジル―新しい変容と挑戦』、P72-75 アジア経済研究所 実質実効為替レート(第Ⅱ-2-3-9 図)を見るとメキシコの方が高い傾向にあるが、冒頭第Ⅱ-2-3-1 表で示した主要輸出産品の推移で分かるようにメキシコが 90 年代には工業製品を主力輸出産品にしていたのに対して、ブラジルが一次産品への依存が高い輸出構造であり、通貨高になると貿易をあまり必要としないサービスに依存する経済構造になり結果として消費にけん引される内需主導型経済になったと考えられる。

    216「第Ⅱ-2-3-10 図メキシコの政策金利とインフレ率の推移」比較参照。

    188 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 188 2014/08/05 14:40:51

  • 第Ⅱ-2-3-5 表 メキシコとブラジルの FTA 締結状況

    メキシコ ブラジルNAFTA:米国、カナダ(1994) メルコスール:アルゼンチン、コロンビア、ベネズエラ(1995)(注1) ウルグアイ、パラグアイ(注 5)(1991)コスタリカ(1995) (注2) チリ(メルコスール)(1996)ニカラグア(1998) ボリビア(メルコスール)(1996)チリ(1999) メキシコ(メルコスール・自動車協定)(2002)グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス(2001) ペルー(メルコスール)(2005)ウルグアイ(2004) アンデス共同体(コロンビア、エクアドル、グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、ホンジュラス、 ベネズエラ)(メルコスール)(注 6)(2005)ニカラグア(2011) キューバ(メルコスール)(2007)ペルー(2012) ウルグアイ(経済補完協定)(注 7)(2008、2011)イスラエル(2000) イスラエル(メルコスール)(2010)EFTA(欧州自由貿易連合):ノルウェー、スイス、アイスランド、 インド(メルコスール)(2009)リヒテンシュタイン(2001)  EU(2000)15 か国 (注3)  EU(2004)10 か国追加 ( 注4)  EU(2007)2 か国追加 ブルガリア、ルーマニア  EU(2013)1 か国追加 クロアチア  日本(2005)  太平洋同盟(2014 に署名・未発効)  (注 1)ベネズエラは 2006 年離脱(注 2) コスタリカ、ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスは 2011 年に単一の協定を締結。2013 年発効。従来の個別協定は失効してい

    る。(注3) ベルギー、デンマーク、ドイツ、ギリシア、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ポルト

    ガル、フィンランド、英国、スウェーデン(注 4)チェコ、エストニア、キプロス、ラトビア、リトアニア、ハンガリー、マルタ、ポーランド、スロベニア、スロバキア(注 5)パラグアイは前大統領の政策を巡り資格停止。現政権において会合の参加資格を得ている。(注 6)ベネズエラはメルコスール正式加盟に向けアンデス共同体を脱退。(注 7)メルコスール域内の自動車政策発効までの協定。(メルコスール) 1991 年域内関税撤廃を目標にしたアスシオン条約署名後、95 年に関税同盟として発足。自動車・同部品及び砂糖を除き域内関税はゼロ(た

    だし各国ごとに例外品目有り)。約 85% の品目に対して対外共通関税を設定している関係からブラジル単独で FTA を締結するのは困難。( )は発効年資料:JETRO サイト「WTO・他協定加盟状況」から作成。

    -2,000

    -1,500

    500

    0

    -500

    -1,000

    1,500

    1,000

    2,000(100 万ドル)

    (年)

    2012

    2013

    2000

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    第Ⅱ-2-3-6 図 メキシコへの対内直接投資(左)とメキシコへの日本からの直接投資(右)

    資料:INEGI(国立地理情報統計院)、CEIC データベースから作成。 備考:マイナスはメキシコからの引上げ超過資料:メキシコ経済省外国投資局から作成。

    -50

    50

    0

    250

    200

    150

    100

    350

    300

    400(億ドル)

    (年)

    2012

    2013

    2000

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    2009

    2010

    2011

    全体 農業 鉱業 製造業 電気・水道・ガス建設業 サービス

    通商白書 2014 189

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 189 2014/08/05 14:40:51

  • 第Ⅱ-2-3-7 図 ブラジルへの対内直接投資(左)とブラジルへの日本からの直接投資(右)

    資料:ブラジル中央銀行、CEIC データベースから作成。 資料:ブラジル中央銀行、CEIC データベースから作成。

    0

    (億ドル)

    2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    700

    800

    全体鉱業、農業製造サービス

    0.0

    (100万ドル)

    2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    第Ⅱ-2-3-8 図 ブラジルの国内貸出金利の推移(左)、政策金利とインフレ率の推移(右)

    資料:ブラジル中央銀行、CEIC データベースから作成。 資料: ブラジル中央銀行、IBGE(ブラジル地理統計院)、CEIC データベースから作成。

    0

    6

    4

    2

    8

    10

    12

    14

    16(%) インフレ率は 12 か月累計、インフレ率及び政策金利(%)

    3 4 51 2 6 7 8 9101112

    2011

    3 4 51 2 6 7 8 9101112

    2010

    3 4 51 2 6 7 8 9101112

    2009

    3 4 51 2 6 7 8 9101112

    2008

    321 4 5 6 7 8 9101112

    2012

    321 21 434 5 6 7 8 9101112

    2013 2014

    (年月)

    政策金利インフレ率

    11.00

    6.15

    0

    10

    5

    15

    20

    25

    30

    35(%)(p.a)

    (年月)

    3 4 5 6 7 8 9 10 11 122011

    321 4 5 6 7 8 9 10 11 122012

    321 214 5 6 7 8 9 10 11 122013 2014

    一般家計(個人)向け貸出法人向け運転資金(365 日以内)貸出

    第Ⅱ-2-3-10 図メキシコの政策金利とインフレ率の推移

    資料:メキシコ中央銀行、CEIC データベースから作成。

    101112 101112 101112 101112 101112 101112

    2014

    (%)インフレ率は前年同月比、政策金利は当月の値

    (年月)1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4

    2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    政策金利率インフレ率

    3.5

    3.5

    第Ⅱ-2-3-9 図ブラジルレアルとメキシコペソの実質実効為替レート

    備考:ブロードベース。資料:BIS(国際決済銀行)から作成。

    0

    40

    20

    60

    80

    100

    120

    140

    11201355 9911

    201255 9911

    201155 9911

    201055 9911

    200955 9911

    200855 9911

    200755 9911

    200655 9911

    200555 9911

    200455 9911

    200355 99

    メキシコブラジル

    (年月)

    (指数、2010 年=100)

    190 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 190 2014/08/05 14:40:52

  • (2)国内市場育成 メキシコ政府が行った調査によると、メキシコに所在する事業所の約 96%が従業員数 10 人以下の事業所となっている。製造業で見ると、10 人以下の事業所が約 93%、10 人以下の事業所の売上額は約 4.3%となっており、小規模事業所が多くなっている(第Ⅱ-2-3-11 図)217。 メキシコは、低賃金などコスト面での優位性から製造・輸出拠点へと成長する一方、所得格差の問題が指摘されている。メキシコ政府の家計調査による 10 段階の所得階層で見ると、上位 20%(Ⅸ及びⅩ)で所得総額の 5 割を占めている(第Ⅱ-2-3-12 表)。これは非正規雇用者(特にインフォーマルセクター218 の労働者)が多く存在していることが考えられる。 なお、所得階層意識について、AMAI(メキシコ市場・世論調査機関協会)によれば、自分は「中間層(中流

    の上、下)である」とする層が約 53%となっている(第Ⅱ-2-3-13 図)。 他方、ブラジルは、コモディティブームに伴う雇用(特に正規雇用)の確保、最低賃金の引上げ、低所得者層に対する「ボルサ・ファミリア」という貧困対策(子供に健康診断を受けさせ、就学させる義務を果たせば現金給付を受けることができる制度 219)などにより、「C 層」と分類される中間層に相当する人口が著しく増加し、人口の半数を超えるようになった。こうした中間層は、消費者信用の増加にも支えられて消費のけん引役となり、ブラジル経済は世界が注目する一大市場へと成長した(第Ⅱ-2-3-14 図、第Ⅱ-2-3-15図、第Ⅱ-2-3-16 図)。

    第Ⅱ-2-3-11 図 メキシコの全産業の事業規模と製造業の事業規模

    資料:INEGI(国立地理情報院) 2008 年経済センサスから作成。 資料:INEGI(国立地理情報院) 2008 年経済センサスから作成。

    資料:INEGI(国立地理情報院) 2008 年経済センサスから作成。

    10 人以下95.5%10 人以下95.5%10 人以下95.5%

    11-50 人3.6%

    51-250 人251 人以上

    10 人以下92.5%10 人以下92.5%10 人以下92.5%

    11-50 人5.1%

    51-250 人251 人以上

    10 人以下4.3%

    10 人以下4.3%

    10 人以下4.3%

    11-50 人6.6%

    11-50 人6.6%

    11-50 人6.6%

    51-250 人17.8%

    51-250 人17.8%

    51-250 人17.8%

    251 人以上71.3%

    251 人以上71.3%

    251 人以上71.3%

    217我が国の場合、従業員数 10 人未満の事業所は約 78%を占め、製造業で見ると約 69%(総務省・経済産業省「平成 24 年経済センサス―活動調査産業横断的集計」統計表データ)。

    218メキシコ当局の定義では「法人格を持たない家内工業的な性格を有するすべての活動主体」を指す。219GDP に対する支出規模に比して人々を貧困から救済したとの評価がある(F.V. Soares(2011))。ボルサ・ファミリアは 2013 年に ILO の

    関連非営利国際機関である ISSA(国際社会保障協会)から Award for Outstanding Achievement を受賞。

    通商白書 2014 191

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 191 2014/08/05 14:40:52

  • 第Ⅱ-2-3-12 表 メキシコの家計調査

    所得階層(度数分布)階層別平均所得(月額)推移 ( ペソ) 2012 年

    2006 2008 2010 2012     増減率標本の 10% 刻み 所得額 所得額 所得額 所得額 構成比 累積構成比 2006 年比 2008 年比 2010 年比

    I 2,599 2,379 2,211 2,332 1.8% 100% - 10.3% - 1.9% 5.5%II 4,502 4,153 3,891 3,931 3.1% 98.2% - 12.7% - 5.3% 1.0%III 5,927 5,597 5,204 5,245 4.1% 94.0% - 11.5% - 6.3% 0.8%IV 7,387 6,995 6,550 6,504 5.1% 88.9% - 11.9% - 7.0% - 0.7%V 9,024 8,543 7,991 7,971 6.3% 82.6% - 11.7% - 6.7% - 0.2%VI 10,870 10,500 9,686 9,621 7.6% 75.1% - 11.5% - 8.4% - 0.7%VII 13,452 13,127 11,868 11,857 9.3% 65.7% - 11.9% - 9.7% - 0.1%VIII 16,929 16,695 15,030 14,950 11.8% 54.0% - 11.7% - 10.5% - 0.5%IX 23,065 23,053 20,378 20,338 16.0% 38.0% - 11.8% - 11.8% - 0.2%X 51,095 51,842 42,438 44,334 34.9% 34.9% - 13.2% - 14.5% 4.5%平均総所得 (計) 14,566 14,288 12,525 12,708     - 12.8% - 11.1% 1.5%

    備考:所得階層は、世帯を所得の低い方から高い方へ並べ 10 等分したもの。構成比は各階層の所得合計が全家計所得に占める割合。資料:INEGI(国立統計地理情報院) ENIGH(家計調査)2012 から作成。

    第Ⅱ-2-3-13 図 所得階層意識

    備考: 「あなたは富裕層ですか、中流層ですか、貧困層ですか?」の意識調査。

    資料:AMAI(メキシコ市場・世論調査機関協会)から作成。

    0

    105

    15202530

    4035

    4550(%)

    (年)2013201220112010200920082007

    中流の上 中流の下 貧困層富裕層

    第Ⅱ-2-3-14 図 ブラジルの最低賃金(左図)と正規雇用者数の推移(右図)

    資料:ブラジル労働雇用省、CEIC データベースから作成。 資料:ブラジル労働雇用省、CEIC データベースから作成。

    200111 990

    300

    400

    500

    600

    700

    800

    200

    100

    (レアル)

    2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 201355 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11 9955 11

    20142014 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 201320142014220

    5

    10

    15

    20

    25(100万人)

    66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22 66 1010 22

    192 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 192 2014/08/05 14:40:53

  • (3)貿易構造 メキシコは、世界各国・地域と FTA を締結しているが、巨大消費市場の米国に隣接している優位性からも、米国経済との結びつきが強く、メキシコの輸出の79%を米国が占めている。また、近年は中南米諸国への玄関口としても注目されている(第Ⅱ-2-3-17 図)。 米国の主要輸入相手国・地域を見ると、米国にとって最大の輸入相手国は中国で 19%、メキシコは 12%となっている(第Ⅱ-2-3-18 図)。 メキシコと中国の米国への輸出上位 10 品目を見ると、5 品目で競合しており、そのうち 3 品目は上位 1位から 3 位までを占めている(第Ⅱ-2-3-19 表)。近年、メキシコは、米国経済から影響を受けやすい構造を緩和すべく、輸出先の多角化を模索している(第Ⅱ-2-3-20 図)。

     これに対して、ブラジルでは、中国など新興国における一次産品需要が飛躍的に増大したため、特に中国向けの輸出が増加し、2009 年には中国が最大の輸出相手国となり、主要輸出品目も鉄鉱石、大豆、原油といった一次産品が占めるようになった(第Ⅱ-2-3-21図)220。 特に 2008 年から 2010 年に中国向け輸出が急速に伸び、それに伴いブラジルの GDP 成長率も急回復した。減税策 221 などの効果もあったと見られるが、中国からの旺盛な需要がブラジル経済をけん引したものと考えられる。ブラジルの輸出依存度は GDP に対して高くはないが、中国経済や国際商品価格の動向から影響を受けやすい構造となっている(第Ⅱ-2-3-22 図、第Ⅱ-2-3-23 図)。

    第Ⅱ-2-3-15 図ボルサ・ファミリア(普及家族数・GDP比支出規模)

    資料:ブラジル社会開発飢餓撲滅省(MDS)から作成。

    ボルサファミリア支出のGDP比(右軸)家族数(万)左軸

    0

    (100 万家族) (%)

    (年)

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0.25

    0.3

    0.35

    0.4

    0.45

    2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

    第Ⅱ-2-3-16 図ブラジルの所得階層別人口割合の推移

    備考: 2014 年の値(各グラフの一番右端の数字)は推計値。残りの数字は2011 年の値。

    資料: FGV(ジェットゥリオ・ヴァルガス経済財団) 「New Middle Class Prospects in Brazil」から作成。

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60(%)

    (年)20142001 2011201020092006200420032002 2005 20082007

    C 層 D/E 層A/B 層

    8.31

    11.7615.5

    38.64

    55.0556.5

    53.62

    33.19

    28.0

    第Ⅱ-2-3-17 図 メキシコの輸出相手国

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    米国78.8%米国78.8%米国78.8%

    日本0.6%日本0.6%日本0.6% 2013 年総額 3801 億ドル2013 年総額 3801 億ドル2013 年総額 3801 億ドルインド

    0.9%インド0.9%インド0.9%

    ドイツ1.0%ドイツ1.0%ドイツ1.0%ブラジル

    1.3%ブラジル1.3%ブラジル1.3%

    コロンビア1.4%

    コロンビア1.4%

    コロンビア1.4%中国

    1.7%中国1.7%中国1.7%

    スペイン1.9%スペイン1.9%スペイン1.9%カナダ2.8%カナダ2.8%カナダ2.8%

    その他9.6%その他9.6%その他9.6%

    第Ⅱ-2-3-18 図2013 年時点の米国の主要輸入国・地域

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    EU18%EU18%EU18%

    中国19%中国19%中国19%

    カナダ15%カナダ15%カナダ15%

    メキシコ12%メキシコ12%メキシコ12%

    日本6%日本6%日本6%

    韓国3%

    その他27%その他27%その他27%

    220欧州の国を EU としてみると EU が 1 位だが中国とは僅差。221自動車に対する工業製品税(IPI)減税。

    通商白書 2014 193

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 193 2014/08/05 14:40:54

  • 第Ⅱ-2-3-19 表 米国の中国とメキシコからの輸入品

    中国からの輸入総額 440,448 シェア% メキシコからの輸入総額 280,529 シェア%

    電気機械(HS85) テレビ、携帯電話など 117,535 26.7% 輸送用機器(HS87) 自動車など 59,588 21.2%

    一般機械(HS84) パソコンなど 100,450 22.8% 電気機械(HS85) テレビ、携帯電話など 57,394 20.5%

    家具(HS94) 24,134 5.5% 一般機械(HS84) パソコンなど 42,688 15.2%

    玩具(H95) 21,686 4.9% 鉱物性燃料(HS27) 原油など 34,781 12.4%

    靴・履き物(HS64) 17,016 3.9% 精密機器(HS90) 医療用機器など 10,713 3.8%

    衣料品(HS61) セーターなどニット製品 15,577 3.5% 家具(HS94) 8,533 3.0%

    衣料品(HS62) ニット以外の女性用衣料品等 14,905 3.4% 貴金属(HS71) 金など 7,107 2.5%

    プラスチック製品等(HS39) 12,922 2.9% 野菜類(HS07) トマト・キュウリ等 5,021 1.8%

    輸送用機器(HS87) 自動車等 9,824 2.2% プラスチック製品(HS39) 4,070 1.5%

    精密機器(HS90) 9,524 2.2% 果物類(HS08) 3,695 1.3%

    資料:Global Trade Atlas から作成。 備考: メキシコからの輸入については特殊分類品目(HS98)を除いた。

    第Ⅱ-2-3-20 図 メキシコの輸出における米国依存度

    資料:メキシコ中央銀行、CEIC データベースから作成。

    0

    (10億ドル) (%)

    (年)

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    350

    400

    50

    55

    60

    65

    70

    75

    80

    85

    90

    95

    2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

    米国向け輸出 依存度

    第Ⅱ-2-3-21 図 ブラジルの輸出品の推移と輸出先の動向

    資料:ブラジル開発商工省から作成。 資料:Global Trade Atlas から作成。

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300(10億ドル)

    2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)

    その他工業製品半製品原材料

    01997 200219991998 2000 20042001 20052003 2006 2007 (年)20132008 2009 2010 2011 2012

    米国日本

    中国

    5101520253035404550(10億ドル)

    194 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 194 2014/08/05 14:40:54

  • (4)今後の課題 メキシコ、ブラジルとも、経済危機などを契機として改革を進めることとなった。メキシコは、1982 年の債務危機、1994 年の通貨危機などを経て、自由化・民営化といった構造改革を進めるとともに、米国と隣接する優位性を最大限いかしつつ、対外開放政策を積極的に進めることにより、製造・輸出拠点として成長を遂げた。これに対して、ブラジルは、対内直接投資を積極的に受け入れる一方、国内産業の育成と中間層の拡大を通じて国内市場を成長させ、さらに近年では資源輸出によって貿易黒字を維持しつつ発展してきた。それぞれ独自の成長戦略を展開してきているが、課題も多い。 メキシコについては、所得格差の問題やエネルギー分野などにおける構造改革が課題である。この点、ペニャ・ニエト大統領の構造改革への取組に期待が高まっており、これまでの取組に対して市場からも一定

    の評価を得ている(第Ⅱ-2-3-24 表)。 一方、一般に中南米諸国の貯蓄率は、アジア新興国と比べて低いとされるが、特にブラジルは中南米諸国の中でも貯蓄率が低い。貯蓄率を高めて投資を促進し、「ブラジルコスト」のひとつであるインフラの整備を進め、インフレを抑制していくことが必要である(第Ⅱ-2-3-25 表)。 ブラジルは、国内市場の成長に伴い輸入が増加し、経常収支の赤字が続いていることで、外部金融環境の変化の影響を受けやすくなっている。また、米国格付

    第Ⅱ-2-3-24 表 メキシコとブラジルの外貨建国債格付

      ブラジル 見通し メキシコ 見通し

    S&P BBB - 安定的 BBB + ポジティブ

    Moody’s Baa2 ポジティブ A3 安定的

    Fitch BBB 安定的 BBB+ 安定的2014 年 3 月 25 日現在

    中国23%中国23%中国23%

    米国20%米国20%米国20%

    EU19%EU19%EU19%

    インド9%インド9%インド9%

    ASEAN104%

    ASEAN104%

    ASEAN104%

    その他25%その他25%その他25%

    中国75%中国75%中国75%

    EU12%EU12%EU12%

    日本2%日本2%日本2%台湾

    2%台湾2%台湾2%

    ASEAN104%

    ASEAN104%

    ASEAN104% その他5%

    その他5%その他5%

    中国47%中国47%中国47%

    EU21%EU21%EU21%

    日本9%日本9%日本9%

    韓国5%韓国5%韓国5%

    ASEAN103%

    ASEAN103%

    ASEAN103%

    その他15%その他15%その他15%

    第Ⅱ-2-3-23 図 ブラジルの鉄鉱石、大豆、原油の輸出先(2013 年)

    鉄鉱石 原油大豆

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    EU2720%EU2720%EU2720%

    中国19%中国19%中国19%

    米国10%米国10%米国10%

    アルゼンチン8%

    アルゼンチン8%

    アルゼンチン8%

    日本3%日本3%日本3%

    ベネズエラ2%

    ベネズエラ2%

    ベネズエラ2%

    韓国2%韓国2%韓国2%

    その他36%その他36%その他36%

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    25

    20

    15

    10

    30(10億ドル) (%)

    2000 200520022001 2003 20072004 20082006 2009201020112012 (年)2013

    中国 EU27 米国 日本輸出金額

    第Ⅱ-2-3-22 図 ブラジルの輸出相手国(2013 年)と推移

    資料:Global Trade Atlas から作成。 資料:Global Trade Atlas から作成。

    通商白書 2014 195

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 195 2014/08/05 14:40:55

  • 機関によりブラジル国債の外貨建て長期債の格付が引き下げられたが、財政規律を維持することができるかどうかも注目される(第Ⅱ-2-3-26 図)。

     また、ブラジルでは、近年、家計の負債比率は上昇している一方、民間銀行の貸出残高が伸び悩んでいる(第Ⅱ-2-3-27 図)。中間層の負債は、主要中南米諸国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、メキシコ)の平均値を超えており、民間による資本形成が進んでいないとも指摘されている 222。ブラジルでは、近年、中間層が出現し、その旺盛な消費意欲によって、例えば自動車の国内販売台数がドイツを抜いて世界 4 位となるなど、国内市場が大きく成長してきた。ブラジルは、こうした大きな国内市場を有していること、多様な資源に恵まれている点で、メキシコと比較し限定的な対外開放路線を歩むことが可能であった面もあると考えられるが、対外経済関係も含め、国内消費がけん引する内需主導型経済の持続可能性をどのように確保していくのか注目される。

    第Ⅱ-2-3-25 表 国内総貯蓄率(アジア新興国との比較)

      2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013ブラジル 17.8 18.0 18.4 19.0 16.3 18.0 17.6 15.1 14.7チリ 23.5 25.3 24.7 22.3 22.4 24.1 22.5 21.6 20.5コロンビア 18.9 20.5 20.1 20.7 20.4 19.1 20.9 20.4 20.9メキシコ 21.3 22.7 22.0 22.6 22.0 21.7 21.2 22.0 20.4インド 33.5 34.7 36.8 32.0 33.7 33.8 31.4 30.0 32.7インドネシア 25.6 28.0 26.5 27.8 33.0 33.0 33.1 32.0 30.4タイ 27.1 29.4 32.8 29.9 29.5 29.1 27.8 29.3 28.5マレーシア 36.8 38.8 38.8 38.5 33.4 34.2 34.9 31.9 30.1単位(%)資料:IMF 「WEO,April 2014」から作成。

    第Ⅱ-2-3-26 図ブラジルのプライマリーバランス対GDP比の推移と目標値

    備考:数字は実績値。(プライマリーバランスの GDP 比)資料:OECD、ブラジル中央銀行から作成。

    (%)

    (年)0.0

    0.5

    1.0

    1.5

    2.0

    2.5

    3.0

    3.5

    4.0

    2007 2008 2009 2010 2011 2012 20132004 2005 2006

    ターゲットプライマリーバランスGDP比

    3.31 3.42

    2.00

    2.70

    3.11

    2.38

    1.90

    3.72 3.79

    3.20

    第Ⅱ-2-3-27 図 ブラジルの家計の債務負担(左図)及びブラジルの銀行貸出し残高のGDP比推移(右図)

    資料:ブラジル中央銀行時系列統計データサービスから作成。

    資料: ブラジル中央銀行時系列統計データベース、CEIC データベースから作成。

    0

    10

    20

    30

    40

    50

    60(%)

    (年月)200455 99 1111

    200555 99 11

    200655 99 11

    200755 99 11

    200855 99 11

    200955 99 11

    201055 99 11

    201155 99 11

    201255 99 11

    201355 99

    民間銀行合計

    公的部門

    民間銀行の与信態度の厳格化と公的部門の補填。

    0

    15105

    35302520

    4540

    50(%)

    (年月)

    01/2005

    05/2005

    09/2005

    01/2006

    05/2006

    09/2006

    01/2007

    05/2007

    09/2007

    01/2008

    05/2008

    09/2008

    01/2009

    05/2009

    09/2009

    01/2010

    05/2010

    09/2010

    01/2011

    05/2011

    09/2011

    01/2012

    05/2012

    09/2012

    01/2013

    05/2013

    09/2013

    01/2014

    月間所得に対する債務比率 うち金利負担率年間所得に対する債務比率

    222Ferreia, Francisco H G., Julian Messina, Jamale Rigolini, Luis-Felipe Lōpez-Calva, Maria Ana Lugo and Renos Vakis (2013) “Economic Mobility and The Rise of The Latin American Middle Class” World Bank

    196 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 196 2014/08/05 14:40:56

  • 一般に、資源産出国は一次産品価格の影響を受けやすいという点でぜい弱であると指摘されるが、ロシアと豪州は、どちらも資源産出国であるものの、リーマン・ショック後の世界経済情勢悪化の影響には差異が見られた。本コラムでは、両国の資源依存の態様や違いを明らかにし、両国政府の取組について紹介する。

    (1)ロシア① 資源依存の現状 ロシアの実質 GDP 成長率の動きを需要項目別に見ると、リーマン・ショック前の高成長率を支えたのは個人消費であったことが分かる。しかし、リーマン・ショック直後には個人消費、総固定資本形成、輸出、在庫が全てマイナス成長となり、2009 年第 2 四半期では、▲ 10%と大幅なマイナス成長となった。その後、2010 年第 1 四半期にはプラス成長へと回復し、それ以降、おおむね 4%前後の経済成長で推移しており、個人消費及び輸出が継続的なプラス成長へ寄与している。特に、輸出増加の背景を見ると、原油価格(WTI)の上昇が要因であると考えられる(コラム第 11-1 図)。

    資源産出国の経済構造と資源依存低下のための取組―ロシア、豪州―コラム

    11

    コラム第 11-1 図 ロシアの実質GDP成長率(寄与度分解)

    備考:2008 年を基準年とした実質値。資料:Federal State Statistics Service、CEIC データベースから作成。

    2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年期)

    -25

    0510152025

    -5-10-15-20

    (前年同期比、%、%ポイント)

    Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4Q1 Q2 Q3 Q4

    GDP 成長率在庫輸入輸出総固定資本形成政府消費個人消費

    通商白書 2014 197

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 197 2014/08/05 14:40:56

  •  2013 年の輸出を品目別に見ると、石油、石油ガス、石炭といった鉱物性燃料品が約 6 割(1,862 億ドル)を占めており、ロシアの輸出は資源品目に大きく依存している。逆に輸入は、一般機械、自動車、電気機械など工業品が約 4 割(1,256 億ドル)を占めている(コラム第 11-2 図、コラム第 11-3 図)。

     貿易相手国については輸出の約 5 割、輸入の約 4 割を欧州が占めており、その割合は、おおむね一定レベルで推移している。ロシアの貿易相手国は、欧州域内の国に大きな偏りはないものの、その大部分を欧州諸国が占めている。このため、ロシアの貿易動向は欧州経済の影響を受けやすいことが分かる(コラム第 11-4 図、コラム第 11-5 図)。

    コラム第 11-2 図 ロシアの輸出品目

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    0

    (100 万ドル)

    50,000

    100,000

    150,000

    200,000

    250,000

    1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

    石油及び歴青油石油ガスその他のガス状炭化水素石炭及び練炭アルミニウム鉄又は非合金鋼の半製品木材小麦及びメスリン肥料成分ニッケル窒素肥料

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    石油ガスその他のガス状炭化水素22%

    鉄鋼6%

    肥料3%

    その他14%

    石油及び歴青油37%

    石油ガスその他のガス状炭化水素22%石炭及び練炭

    4%

    鉄鋼6%

    肥料3%

    アルミニウム、製品3%

    木材及び製品、木炭2%

    一般機械2%

    穀物2%

    銅及びその製品2%

    その他14%

    石油及び歴青油37%

    有機化学品1%

    ニッケル及びその製品1%

    輸出(2013)2,901 億ドル

    対 EU27 主要輸出品-石油及び歴青油(47.7%)-石油ガスその他のガス状炭化水素(25.7%)-石炭及び練炭(3%)-ニッケル(2.2%)-鉄又は非合金鋼の半製品(1.5%)

    コラム第 11-3 図 ロシアの輸入品目

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    0

    (100 万ドル)

    1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

    一般機械自動車電気機械医療用品プラスチック及びその製品精密機器鉄鋼製品食用の果実及びナット肉、食用くず肉鉄鋼

    20,00040,00060,00080,000

    100,000120,000140,000160,000180,000200,000

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    一般機械18.7%

    自動車13.3%

    電気機械11.8%

    その他36.1%

    医療用品5.0%

    輸入(2013)

    2,870 億ドル

    対 EU27 主要輸入品-一般機械(21%)-自動車(14.1%)-医療用品(8.9% )-電気機械(8.4%)-プラスチック及びそ

    の製品(4.3%)

    一般機械18.7%

    自動車13.3%

    電気機械11.8%

    その他36.1%

    医療用品5.0%

    精密機器2.8%

    鉄鋼製品2.6%

    肉、食用くず肉2.1%

    鉄鋼1.8%

    プラスチック及びその製品3.6%

    食用の果実及びナット2.2%

    198 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 198 2014/08/05 14:40:57

  •  続いて、原油価格の変動がロシア経済に与える影響について見ていく。ロシアの国家予算の内訳を見ると、歳入のうち約 5 割が石油、天然ガス関連であることが分かる。他の一次産品輸出国と比較しても、ロシアの歳入に占める資源関連の割合は特に高い(コラム第 11-6 表)。

    コラム第 11-6 表 ロシアの国家予算(歳入)の内訳(2013 年 1-12 月)

    備考:マレーシア、インドネシア、メキシコについては3年後方移動平均値。インドネシアは 2010 年~2012 年の3年後方移動平均値。資料:Economic expert group (http://www.eeg.ru/pages/148). から作成。

    ロシア マレーシア インドネシア メキシコ

     

    2012 年 (1-12 月 ) 2013 年 (1-12 月 ) 2011~2013 年

    予算(10 億ルーブル ) 比率 (%)

    予算(10 億ルーブル ) 比率 (%) 比率 (%)

    石油、天然ガス関連 6,453.2 50.2% 6534 50.2% 18.0% 21.7% 33.3%

    歳入 12,853.7   13,019.9        

    コラム第 11-4 図 ロシアの輸出国

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    53% 52% 55% 60% 53% 51%49%

    50%54%

    57%53%

    57%

    55%

    57%54%

    53%

    53%

    0

    (100 万ドル)

    1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

    EU27トルコウクライナ中国日本米国韓国スイス台湾ウズベキスタン

    50,000

    100,000

    150,000

    200,000

    250,000

    300,000

    350,000

    400,000

    53% 52% 55% 60% 53% 51%49%

    50%54%

    57%53%

    57%

    55%

    57%54%

    53%

    53%

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    EU2753%

    その他13.2%

    トルコ8.1%

    ウクライナ7.5%

    中国5.7%

    日本3.3%

    輸出(2013)2,901 億ドル

    対 EU27 のうち主要輸出国-オランダ(12.8%)-イタリア(7.3%)-ドイツ(7%)-英国(4.2%)-ラトビア(3.5%)

    EU2753%

    その他13.2%

    トルコ8.1%

    ウクライナ7.5%

    中国5.7%

    ウズベキスタン1%

    台湾1.5%

    スイス1.7%韓国2.2%米国2.7%

    日本3.3%

    コラム第 11-5 図 ロシアの輸入国

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    48% 48% 47% 44% 47% 50%48% 46%

    44%44%

    43%

    42%

    43%

    40%

    43%43% 43%

    0

    (100 万ドル)

    1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

    EU27中国米国ウクライナ日本韓国トルコブラジルインドスイス

    50,000

    100,000

    150,000

    200,000

    250,000

    300,000

    48% 48% 47% 44% 47% 50%48% 46%

    44%44%

    43%

    42%

    43%

    40%

    43%43% 43%

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    EU2743.2%

    中国18%

    米国5.6%

    ウクライナ5.2%

    日本4.6%

    その他14.2%

    輸入(2013)2,870 億ドル

    対 EU27 のうち主要輸入国-ドイツ(12.4%)-イタリア(4.8%)-フランス(4.2%)-英国(2.7%)-ポーランド(2.7%)

    EU2743.2%

    中国18%

    米国5.6%

    ウクライナ5.2%

    日本4.6%韓国

    3.4%

    トルコ2.5%

    ブラジル1.2%

    インド1%

    スイス1%

    その他14.2%

    通商白書 2014 199

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 199 2014/08/05 14:40:58

  •  原油価格(WTI)と財政収支の動きについて見ると、原油価格の動きに連動して、ロシアの財政収入は増加しており、ロシア財政は原油価格の動きに影響を受けやすいことが分かる(コラム第 11-7 図)。

     輸出の約 6 割を資源が占めるロシアにおいて、原油価格の上昇は貿易黒字増加による経常収支黒字及び内需を拡大させ景気を支える原動力となっている。2008 年には 100 ドル / バレルの大台を超えたものの、2009 年にはリーマン・ショックの影響から原油価格が暴落し、ロシアの貿易黒字も縮小した。その後、原油価格はリーマン・ショック直前のレベルまで回復している(コラム第 11-8 図)。

     原油価格は、株価指数にも大きな影響を与えている。リーマン・ショックにより原油価格が急落すると、それに連動するかのようにロシア株価も下落したが、原油価格が再び上昇に転じると、ロシア株価も回復している(コラム第 11-9 図)。

    コラム第 11-7 図 原油価格(WTI)とロシアの財政収支

    資料: Ministry of Finance of the Russian Federation, CEIC データベースから作成。

    原油価格(WTI)(右軸)財政収入 財政支出

    (10 億ルーブル) (ドル/バレル)

    -15,000

    -10,000

    -5,000

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)-120

    -80

    -40

    0

    40

    80

    120

    コラム第 11-8 図 原油価格(WTI)とロシアの貿易収支

    資料:IMF、CEIC データベースから作成。

    原油価格(WTI)(右軸)貿易収支

    (100 万ドル) (ドル/バレル)

    20,000

    40,000

    60,000

    80,000

    100,000

    120,000

    140,000

    160,000

    180,000

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)0

    200 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 200 2014/08/05 14:40:59

  •  ロシアの製造業の対内投資動向を見ると、対内投資額の半分を製造業及び鉱業が占めている。製造業は 2009 年に一旦落ち込んだものの、その後は増加傾向にあることが分かる(コラム第 11-10 図)。

    ② 政府の取組 ロシア政府は国内外からの投資を促進し、2015 年には GDP25%以上、2018 年には GDP27%以上の総投資を実現すること、2018 年までに労働生産性を 2011 年比で 1.5 倍に拡大すること、2020 年までに2,500 万人の雇用を創出することを目標 223 に掲げている。これらの取組によって、資源価格の市場変動に依存しないロシア経済の体制づくりを目指していると考えられる。

    (2)豪州① 資源依存の現状 豪州の実質 GDP 成長率を需要項目別に見ると、2013 年はそれまで大きくプラスに寄与していた総固定資本形成がマイナスに寄与する一方で、個人消費、輸出の増加が実質 GDP 成長率上昇に寄与している(コラム第 11-11 図)。

    2232012 年 5 月 7 日付けの長期経済計画に関する大統領令の中でプーチン大統領の掲げた目標。

    コラム第 11-9 図 原油価格(WTI)とロシア株価指数の推移

    資料:CEIC、IMF Primary Commodity Prices Data Base から作成。

    (年月)

    0

    500

    1,000

    1,500

    2,000

    2,500

    3,000

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 201311 66 1111 11 66 1111 11 66 1111 11 66 111111 66 1111 11 66 1111 11 66 1111 11 66 111111 66 1111 11 66 1111 11 66 111111 66 1111 11 66 1111 11 66 111111 66 1111 11 66 1111 11 66 1111 11 66 1111

    (ドル / バレル)(RTS 指数、1995 年 1 月=100)

    原油価格(WTI)97.90

    原油価格(WTI)97.90

    株価指数(RTS) 1442.730

    株価指数(RTS) 1442.730

    株価指数(RTS)原油価格(WTI)(右軸)

    0

    5,000

    10,000

    15,000

    20,000

    25,000

    30,000

    2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(年)

    鉱業 製造業 全体その他

    (100 万ドル)

    コラム第 11-10 図 ロシアの製造業の対内投資動向(フローとストック)

    資料:Federal State Statistics Service から作成。

    通商白書 2014 201

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 201 2014/08/05 14:40:59

  •  豪州の輸出を時系列、品目別に見ると 2008 年以降、鉄鋼、石炭といった資源品目の輸出が特に増加傾向にあることが分かる。また 2008 年と 2013 年の輸出品目別割合を比較すると、2008 年には石炭(20.4%)、鉄鋼(13.6%)と約 3 割を占めていたが、2013 年には鉄鋼(26.5%)、石炭(15.2%)と資源品目が占める割合が増加しており、豪州の輸出は資源品目への依存度を高めていることが分かる(コラム第 11-12 図、コラム第 11-13 図、コラム第 11-14 図)。

    0

    2

    4

    6

    8

    10(前年同期比、%、%ポイント)

    -6

    -4

    -2

    2008 2009 2010 2011 2012 2013

    Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q1 Q2 Q3Q4 Q4

    誤差在庫政府支出

    GDP成長率輸入輸出総固定資本形成

    (年期)

    個人消費

    資料:Australian Bureau of Statistics、CEIC データベースから作成。

    コラム第 11-11 図 豪州の実質GDP成長率(寄与度分解)

    コラム第 11-12 図 豪州の輸出品目別構成の推移

    0

    80,000

    60,000

    40,000

    120,000

    100,000

    140,000

    160,000

    180,000(100 万ドル)

    20,000

    1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 20132012

    鉄鉱石炭液化ガス類金石油及び歴青油小麦類化学製品銅鉱冷凍牛肉アルミニウムの塊

    (年)

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    202 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 202 2014/08/05 14:41:00

  •  なお、輸入品目について見ると、原油、乗用車、石油及び歴青油が約 2 割を占めており、シェアに大きな変化は見られない(コラム第 11-15 図、コラム第 11-16 図、コラム第 11-17 図)。

    コラム第 11-13 図豪州の輸出品目別構成 2008 年

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    鉄鉱13.6%

    石炭20.4%

    金6.5%

    その他39.5%

    豪州輸出1,865 億ドル

    鉄鉱13.6%

    石炭20.4%

    金6.5%

    石油及び歴青油4.8%

    銅鉱1.8%

    冷凍牛肉1.3%

    その他39.5%

    液化ガス類4.6%

    小麦類1.7%

    化学製品2.9%

    コラム第 11-14 図豪州の輸出品目別構成 2013 年

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    鉄鉱26.5%

    石炭15.2%

    金5.3%

    その他33.5%

    豪州輸出2,527 億ドル

    鉄鉱26.5%

    石炭15.2%

    金5.3%

    石油及び歴青油3.4%

    銅鉱2%

    冷凍牛肉1.4%

    その他33.5%

    液化ガス類6%小麦類

    2.4%

    化学製品2.1%

    コラム第 11-15 図 豪州の輸入品目別構成の推移

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    0

    40,000

    30,000

    20,000

    60,000

    50,000

    70,000

    80,000

    90,000

    100,000(100 万ドル)

    10,000

    1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 20132012

    原油乗用自動車石油及び歴青油(除原油)医薬品電話機自動データ処理機械貨物自動車金液化ガスゴム製の空気タイヤ

    (年)

    通商白書 2014 203

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 203 2014/08/05 14:41:01

  •  輸出品目における資源の依存の高まりが、中国一国への輸出増加によって起こっていることが豪州の特徴といえる。2013 年の豪州の輸出国別を見ると、中国(36%)を筆頭に、日本(18%)、韓国(7.3%)と北東アジア諸国が約 6 割を占めている。輸入国を見ても対中国への輸入割合が大きい(コラム第11-18 図、コラム第 11-19 図)。

    コラム第 11-16 図豪州の輸入品目別構成 2008 年

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    乗用自動車6.7%

    金4.3%

    その他62.1%

    原油8.1%

    豪州輸入1,909 億ドル

    乗用自動車6.7%

    電話機2.1%

    金4.3%

    その他62.1%

    原油8.1% 石油及び歴青油

    (除原油)6.7%医薬品3%

    自動データ処理機械2.6%

    貨物自動車2.8%

    液化ガス0.8%

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    コラム第 11-17 図豪州の輸入品目別構成 2013 年

    乗用自動車7.6%

    その他59.8%

    原油8.4%

    医薬品3.2%

    豪州輸入2,327 億ドル

    乗用自動車7.6%

    電話機3.0%

    金1.9%

    その他59.8%

    原油8.4%

    石油及び歴青油(除原油)7.6%

    医薬品3.2%

    自動データ処理機械2.9%

    貨物自動車2.6%

    液化ガス1.2%

    コラム第 11-18 図 豪州の輸出国

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    0

    (100 万ドル)

    1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

    中国日本韓国インド米国ニュージーランド台湾シンガポールマレーシアタイ

    50,000

    100,000

    150,000

    200,000

    250,000

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    中国36%

    日本18%

    韓国7.3%

    インド3.7%

    その他20.0%

    輸出(2013)2,527 億ドル

    中国36%

    日本18%

    韓国7.3%

    インド3.7%

    米国3.5%

    ニュージーランド2.8%

    台湾2.8%

    シンガポール2.1%

    マレーシア2%

    タイ1.9%

    その他20.0%

    コラム第 11-19 図 豪州の輸入国

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    0

    (100 万ドル)

    1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 (年)

    中国米国日本シンガポールドイツタイ韓国マレーシアニュージーランド英国

    20,00040,00060,00080,000

    100,000120,000140,000160,000180,000200,000

    資料:Global Trade Atlas から作成。

    中国19.5%

    米国10.2%

    日本7.9%

    ドイツ4.7%

    タイ4.7%

    その他33.8%

    輸入(2013)2,327 億ドル

    中国19.5%

    米国10.2%

    日本7.9%

    シンガポール5.4%

    ドイツ4.7%

    タイ4.7%

    韓国4.2%

    ニュージーランド3.1%

    その他33.8%

    マレーシア3.9%

    英国2.6%

    204 2014 White Paper on International Economy and Trade

    第2章 新興国等の経済ファンダメンタルズの変化と成長戦略

    CW6_A6372D223_M.indd 204 2014/08/05 14:41:02

  • 224Australian Government(2012), “Australia in the Asian Century” White paper 2012 October

     中国名目 GDP と豪州の資源(鉄鉱石、石炭)輸出額の動きを見ると、2000 年代に中国名目 GDP の伸びとおおむね対応するかたちで、豪州の資源(鉄鉱石、石炭)輸出額が上昇している。2012 年にその動きが変わったものの、2000 年代を通じて中国の GDP が上昇すると、中国の輸入が増加し、豪州の資源輸出増加につながったことが示唆される。中国の成長率が鈍化する中、今後の輸出の大幅な伸びは期待しにくい(コラム第 11-20 図)。

    ② 政府の取組 豪州政府は、東アジア諸国との経済連携を進める方針を示している224。これは、資源のみならず、農産品も含めた豪州産品の輸出促進に資するものであり、資源の需要変動による国内経済への影響を低減することにもつながると考えられる。

    コラム第 11-20 図 中国名目GDPと豪州の資源(鉄鉱石、石炭)輸出額比較

    資料:Global Trade Atlas、OECD から作成。

    0

    1,000,000

    2,000,000

    3,000,000

    5,000,000

    7,000,000

    9,000,000

    8,000,000

    6,000,000

    4,000,000

    0

    10,000

    (年)1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

    20,000

    30,000

    50,000

    70,000

    90,000

    80,000

    60,000

    40,000

    (100 万ドル) (100 万ドル)

    中国名目GDP豪州の資源(鉄鉱石+石炭)(右軸)

    通商白書 2014 205

    第3節メキシコとブラジルの成長戦略

    第2章

    第Ⅱ部

    CW6_A6372D223_M.indd 205 2014/08/05 14:41:02