30 10 8 no.1154 qolが大幅改善 · 腎機能が低下し慢性腎...

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30 68 12 30 尿10 95 90 IgA 尿17 調22 寿15 19 23 16 50 40 調28 29 調名古屋徳洲会総合病院の 前田徹院長と村松世規事務 長は、新築移転から4年半 が経過した自院の現状につ いて報告した。村松事務長 は新築移転前に比べ1日当 たりの平均外来患者数(単 月)、1日当たりの平均入院患 者数(同)、救急搬送件数 (同)などが軒並み伸びている状況を説明、順調な推移を強調した。 前田院長も整形外科領域の手術件数が増えている状況を明かし、4 分の1を占める脊 せきつい 椎手術について解説した。 急患や医師・看護師確保の具体的な取り組みにも触れ、救急を 断らないために、医師が受け入れを拒否した場合、院長が最終判 断を下していることや、救急隊と密に連携を図っていることなどを 列挙。院長自ら研修医向けの説明会に積極的に参加したり、教育 システムのアピール、ケーキバイキングや球技大会などを設け看護 師の離職防止に努めたりしていることも紹介した。マーケティング 活動では医師が事務職員と同行し医療機関や消防署、企業などを 訪問。年1回、大規模セミナー開催やホームページの工夫、イベン トを通じて治療後の患者さんとも関係を築いていることも披露した。 最後に課題として①消化器内科医や神経内科医の確保、②療養 病棟の機能転換、④医療機器の充実――などを提示。前田院長は 今後も自由と積極性を重んじながら、職員の意欲とともに提供する サービスの質を高めることを誓った。 「腎移植の成績は飛躍的 に向上」と田邉院長 自院の状況と取り組みを説明する前田院長(左) と村松事務長 新築移転から4年半 経営の堅調アピール 名古屋徳洲会総合病院 尿腎移植 タンザニア 「現地医療者の自信につ ながったと思います」と 日髙部長 調38 41 42 がん治療への温熱療法 や高気圧酸素治療の併 用を説く成定センター長 が ん 命だけは平等だ 平成 30 10 8 日 月曜日│No. 1154

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Page 1: 30 10 8 No.1154 QOLが大幅改善 · 腎機能が低下し慢性腎 現状を紹介した。慢性透頭、透析医療や腎移植のひとつだ。田邉院長は冒人工透析と並ぶ同療法のう必要がある。腎移植は者さんは腎代替療法を行不全の状態になると、患

腎機能が低下し慢性腎

不全の状態になると、患

者さんは腎代替療法を行

う必要がある。腎移植は

人工透析と並ぶ同療法の

ひとつだ。田邉院長は冒

頭、透析医療や腎移植の

現状を紹介した。慢性透

析患者数は年

々増加し30万

人を超えてお

り、透析導入

の平均年齢は68歳(20

14年12月時点)と高齢

化が進展していることを

指摘。

「透析導入の主要原疾患

は、30年ほど前は慢性糸

球体腎炎が最多でしたが、

治療法が進歩して減少、

その後は糖尿病性腎症が

最も多くなっています。

さらに近年は徐々に腎硬

化症も増えています。一

方、生体腎移植と献腎移

植(心停止・脳死)を合

わせた腎移植件数は諸外

国と比べ伸びておらず、

年間約1600件という

のが現状です」

東京女子医大病院の腎

移植の成績にも言及。移

植から10年経過後のレシ

ピエント(臓器受給者)

の生存率は生体腎移植で

95%、献腎移植は90%と

なっており、「生存率、

生着率(移植した腎臓が

機能している割合)とも

に以前と比べ飛躍的に向

上しました」と話す。 

成績向上の要因として、

免疫抑制剤の進歩、拒絶

反応の克服、感染症の克

服、内科合併症の管理技

術の向上、IgA

腎症など

再発性疾患の予防・治療

――を挙げた。

続いて田邉院長は、ド

ナー(臓器提供者)とレ

シピエントの双方に行っ

ている検査や面談など腎

移植実施のための準備や

術式に加え、膀ぼ

胱こう

欠損に

対する膀胱拡大術を移植

前に実施した困難症例な

どを紹介。「人工透析を

受けていた女性でしたが、

膀胱拡大術と腎移植を行

った後、結婚・出産する

など、患者さん本人にと

ってのQOL(生活の質)

が大きく改善しました」

と症例を振り返った。

また、ドナーとレシピ

エントのABO血液型の

適合群と不適合群で治療

成績を比較した研究成果

をふまえ、「血液型が異

なっていても、適合群と

遜そん

色しょくな

い成績を得ていま

す」と解説。高齢者の腎

移植にも触れ、「高齢の

レシピエントも腎移植を

受けたほうが生存率はよ

く、期待予後が1・8年

以上ある場合は腎移植を

受けることが望ましいと

考えます」とまとめた。

この後、話題をAIに

移し、医療分野での応用

例として①画像分類、②

トリアージ(治療優先順

位決定)、③医療機器デ

ータの解析と制御、④が

んの個別化医療への応用、

⑤患者分類(患者さんの

状態の逐次的な変化の予

測など)、⑥医療行為の

分類(治療法・処置の選

択など)――などを列挙。

田邉院長によると、米

国FDA(食品医薬品局)

はすでに皮膚画像からの

メラノーマ(悪性黒色腫)

の診断、脳CT(コンピ

ュータ断層撮影)画像か

らの脳梗塞の診断、手首

のX線透視画像からの骨

折の診断、糖尿病性網膜

症の診断に関し、医師の

介入なしにAIによるス

クリーニング診断を認可

しているという。

田邉院長は、産学官が

連携し今後、“AIホス

ピタル”のモデル病院を

目指すことを明かした。

腎移植患者さんの診断や

治療にもAIを積極的に

活用する計画だ。

「複雑な診断、治療過程

をAIにより解析し、ビ

ッグデータを用いること

で、最も適切な診断と治

療法を提供することがで

きます」と期待をあらわ

にした。

同大学の医師や看護師な

どが日本で研修を受ける

一方、徳洲会と東京女子

医大のスタッフが、手術

室やICU(集中治療室)

の準備、患者選定に必要

な検査の指導などのため

数回にわたって現地を訪

れた。

1例目の実施に向け17

年7月に移植候補の選定

を開始。最終的に1組の

ドナー(臓器提供者)と

レシピエント(臓器受給

者)の候補が残り、1例

目の患者さんが決定した。

倫理的な問題がないこ

とや、移植後に拒絶反応

が起こらないことを調べ

るためのリンパ球クロス

マッチ検査などで陰性を

確認し、タンザニアの保

健省職員や弁護士などで

構成する委員会から移植

実施の許可を得て、3月

22日に手術を実施。タン

ザニアの医療者が取り組

んだ初の腎移植となった。

湘南鎌倉総合病院(神

奈川県)腎移植内科の日

髙寿美部長は「タンザニ

アにおける腎移植」をテ

ーマに講演した。これま

で徳洲会グループは、透

析機器を寄贈したり現地

医療者を日本に招いて研

修を行ったりし、アフリ

カ各国で透析センターの

開設・運営をサポートし

てきた。

2016年にはタンザ

ニアで、現地医療者によ

る腎移植実施の支援プロ

ジェクトをスタート。腎

移植の実績が豊富な東京

女子医科大学の協力を得

ながら推進し、タンザニ

アの首都にあるベンジャ

ミン・ムカパ病院で、今

年3月に1例目、8月に

2〜4例目の腎移植を実

施した。日髙部長は腎移

植内科医として同プロジ

ェクトを支えてきた。

日髙部長は「徳洲会は

これまでアフリカ15カ国

に対し161台の透析機

器を寄贈し、19カ国・23

チームの透析研修を受け

入れてきました。また当

院スタッフが指導に訪問

したのは9カ国に上りま

す」などとアフリカへの

透析支援の概要を紹介。

続いて、タンザニアで

の腎移植プロジェクトの

経過に言及。ドドマ大学

からの要請を引き受け、

腎移植プロジェクトを開

始したのが16年。その後、

レシピエントは50歳代男

性で、その40歳代の妹が

ドナー。

「現地の外科医が血管の

吻ふんごう合

を行うなど実際の移

植術を経験できたことは

大きな自信につながった

と思います」と日髙部長

は意義を強調する。それ

から約5カ月後の8月28

日に2例目、29日に3、

4例目を実施。

「当初は1〜2例を想定

していましたが、今回を

逃すと数カ月待たなけれ

ばならなくなるため、ド

ドマ大学のスタッフは3

例目の実施を強く望んで

いました。3例とも検査

で問題がないことを確認

できましたので、免疫抑

制剤を投与し、それぞれ

手術を行いました」と日

髙部長。

いずれの患者さんも腎

機能を示すクレアチニン

値が安定して推移するな

ど経過は順調だ。

名古屋徳洲会総合病院の前田徹院長と村松世規事務長は、新築移転から4年半が経過した自院の現状について報告した。村松事務長は新築移転前に比べ1日当たりの平均外来患者数(単月)、1日当たりの平均入院患者数(同)、救急搬送件数

(同)などが軒並み伸びている状況を説明、順調な推移を強調した。前田院長も整形外科領域の手術件数が増えている状況を明かし、4分の1を占める脊

せ き つ い

椎手術について解説した。急患や医師・看護師確保の具体的な取り組みにも触れ、救急を

断らないために、医師が受け入れを拒否した場合、院長が最終判断を下していることや、救急隊と密に連携を図っていることなどを列挙。院長自ら研修医向けの説明会に積極的に参加したり、教育システムのアピール、ケーキバイキングや球技大会などを設け看護師の離職防止に努めたりしていることも紹介した。マーケティング活動では医師が事務職員と同行し医療機関や消防署、企業などを訪問。年1回、大規模セミナー開催やホームページの工夫、イベントを通じて治療後の患者さんとも関係を築いていることも披露した。

最後に課題として①消化器内科医や神経内科医の確保、②療養病棟の機能転換、④医療機器の充実――などを提示。前田院長は今後も自由と積極性を重んじながら、職員の意欲とともに提供するサービスの質を高めることを誓った。

「腎移植の成績は飛躍的に向上」と田邉院長

自院の状況と取り組みを説明する前田院長(左)と村松事務長

新築移転から4年半経営の堅調アピール 名古屋徳洲会総合病院

東京女子医科大学病院の田邉一成・院長兼泌尿器科主任教授は9月度の徳洲会医

療経営戦略セミナーで「腎移植の最前線とAIホスピタル」をテーマに講演を行っ

た。同院は年間約230件の腎移植を行う日本で最も症例数の多い施設で、田邉

院長自身、これまで多数の腎移植術を手がけてきた。腎移植の実際や成績向上の

要因などに加え、同院が医療へのAI(人工知能)活用を推進する方針であるこ

とから、AI医療の展望なども語った。

QOLが大幅改善

田邉・東京女子医大

病院院長兼主任教授

診療にAI活用計画

腎 移 植

タンザニア

「現地医療者の自信につながったと思います」と日髙部長

化学療法や放射線治療

と組み合わせて施行し、

実際に改善した症例を提

示。がんの種類により差

があるものの、さまざま

なタイプのがんで効果が

あると説いた。最後に「温

熱療法を既存のがん治療

に加えることで、“懐

ふところの

深い治療”ができる」と

し、治療の手立てがなく

行き場に困っている患者

さんを救える可能性を示

唆。「より広く知っても

らえる努力を地道に継続

したい」と締めくくった。

感効果を得られると強調

した。

こうした根拠を示すも

のとして、ハイパーサー

ミアの生物学的理論を示

すさまざまな論文や、エ

ビデンスレベルIの臨床

研究の結果を提示。ハイ

パーサーミアの単独治療

では、頭頚け

部がんのリン

パ節転移や乳がんの局所

再発など表在性腫瘍に効

果があり、放射線治療で

は、とくに照射直後の加

温に増感作用があるとア

ピールした。

が、正常な組織は血管が

拡張し血流量が増して熱

を逃がすため、加温され

にくいことなどを説明し

た。これらの特性をふま

え、ハイパーサーミアに

は直接的な殺細胞効果の

ほか、腫瘍内の温度を高

温にできれば放射線治療

との併用効果を得ること

ができ、腫瘍内が38〜41

℃程度になることで、薬

剤の細胞内への取り込み

を増加させ、同時に熱に

より、細胞の修復機能が

阻害され、抗がん剤の増

がん治療を展開。

ハイパーサーミアの生

物学的根拠や作用するメ

カニズムについて、がん

細胞は42・5℃以上にな

ると、細胞膜の損傷やタ

ンパク質の変性により、

生存率が急速に低下する

福岡徳洲会病院がん集

学的治療センターの成定

宏之センター長は「福岡

徳洲会がん集学的治療セ

ンターでのがん治療」と

題し講演した。まず自院

の状況について説明。4

月に開始したがん細胞を

高周波で温め死滅させる

ハイパーサーミア(温熱

療法)に、従前の高気圧

酸素治療、化学療法、放

射線治療を組み合わせ、

がん治療への温熱療法や高気圧酸素治療の併用を説く成定センター長

成定・福岡徳洲会

病院センター長

メリット解説

温熱療法を併用

が ん

日髙・湘南鎌倉

総合病院部長

現地医療者を支援

腎移植の経過報告

徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❸ 平成 30 年 10 月8 日 月曜日 │ No.1154