3.1.3...

15
96 3.1.3 石川県被害を及ぼした地震と想定被害 3.1.3.1 石川県に被害を及ぼした主な地震 (地震調査研究推進本部地震調査委員会,2009 :日本の地震活動<第 2 版>) 1から原文を引用して示す。 歴史の資料で知られている主な被害地震は、金沢市から加賀市付近にかけての地域や能登半島、さら にはそれら地域の日本海沖合で発生してきました。 例えば、金沢市付近では、1799 年の M6.0 の地震(金沢地震とも呼ばれます)で、現在の金沢市を中心 に死者や家屋倒壊などの被害が生じました。 また、この時に地盤の液状化現象が多数発生したらしく、その痕跡も見つかっています。森本・富樫断 層帯のうち、森本断層(卯辰山の西から北北東へのびる活断層)の南西端付近において被害が著しかっ たことが知られていますが、この断層の活動と関係があるかどうかは分かっていません。 小松市周辺では、1725 年の地震(M6)や 1815 年の地震(M6)により、小松城の石垣などに被害が生じ ました。 明治以降では、 1930 年に、加賀市大聖寺付近で M6.3 の地震が発生し、震源域付近で被害が生じました。 3.1.25 石川県とその周辺の主な被害地震 (地震調査委員会,20091) による。

Upload: others

Post on 29-Dec-2019

5 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 96

    3.1.3 石川県被害を及ぼした地震と想定被害

    3.1.3.1 石川県に被害を及ぼした主な地震

    (地震調査研究推進本部地震調査委員会,2009:日本の地震活動<第 2版>)1)から原文を引用して示す。

    歴史の資料で知られている主な被害地震は、金沢市から加賀市付近にかけての地域や能登半島、さら

    にはそれら地域の日本海沖合で発生してきました。

    例えば、金沢市付近では、1799年の M6.0の地震(金沢地震とも呼ばれます)で、現在の金沢市を中心

    に死者や家屋倒壊などの被害が生じました。

    また、この時に地盤の液状化現象が多数発生したらしく、その痕跡も見つかっています。森本・富樫断

    層帯のうち、森本断層(卯辰山の西から北北東へのびる活断層)の南西端付近において被害が著しかっ

    たことが知られていますが、この断層の活動と関係があるかどうかは分かっていません。

    小松市周辺では、1725年の地震(M6)や 1815年の地震(M6)により、小松城の石垣などに被害が生じ

    ました。

    明治以降では、1930年に、加賀市大聖寺付近で M6.3の地震が発生し、震源域付近で被害が生じました。

    図 3.1.25 石川県とその周辺の主な被害地震

    (地震調査委員会,2009)1)による。

  • 97

    さらに、1952 年にその沖合で、大聖寺沖地震(M6.5)が発生し、県下全体で死者 7 名や家屋半壊などの

    被害が生じました。

    能登半島周辺では、1729 年に M6.6~7 の地震が発生し、能登半島先端付近で死者、家屋損壊や山崩れ

    などの被害が生じました。

    明治以降では、1892年の M6.4、1896年の M5.7、1933年の M6.0といった被害地震が発生しています。

    特に、1933年の地震では、県内鹿島郡で死者 3名、家屋倒壊などの被害が生じました。最近では、1993

    年に能登半島沖で M6.6の地震が発生し、珠洲市を中心に被害が生じました。なお、この地震で輪島の験

    潮場などにおいて小津波が観測されました(輪島では最大波高 26cm)。

    さらに、「平成 19年(2007年)能登半島地震」(M6.9)では輪島市で 1名が灯籠の下敷きになって亡く

    なるなど、輪島市や七尾市を中心に被害が出ました。

    1948年の福井地震(M7.1)や 1891年の濃尾地震(M8.0)などのように周辺の地域などで発生した地震

    によっても県内において被害を受けることがあります。

    特に、福井地震では、小松市や江沼郡(現在の加賀市・小松市)などを中心に死者 41名、家屋全壊 802

    戸などの被害が生じました。

    また、能登半島では、日本海東縁部の地震により、津波被害を受けることがあります。

    1833 年の庄内沖の地震(M7.7)に伴う津波で、死者や家屋の流出などの被害が生じたという記録があ

    ります。

    石川県では、南海トラフ沿いの巨大地震のなかで、紀伊半島沖から遠州灘、駿河湾が震源域になった

    場合、地震の揺れによる被害を受けています。1944 年の東南海地震(M7.9)では、県内で家屋全壊など

    の被害が生じました。

  • 98

    西暦(和歴) 地域(名称) マグニュチュード 主な被害

    1729年8月1日(享保14) 能登・佐渡 6.6~7.0

    珠洲郡、鳳至郡で死者5人、家屋全壊・同損壊791棟、輪島村で家屋全壊28棟。能登半島先端で被害が大きい。

    1799年6月29日(寛政11)

    加賀(金沢地震とも呼ばれる)

    6.9±1/4

    金沢城下で家屋全壊26棟、能美・石川・河北郡で家屋 全壊964棟、死者は全体で21人。

    1833年12月7日(天保4) 羽前・羽後・越後・佐渡 7.7

    死者47人。

    1891年10月28日(明治24) (濃尾地震) 8

    家屋全壊25棟。

    1892年12月9日(明治25) 能登半島 6.4

    羽咋郡高浜町・火打谷村で家屋破損あり。堀松村末吉 で、死者11人、負傷者5人、家屋全壊2棟。(11日にも同程度の地震あり。)

    1933年9月21日(昭和8) 能登半島 6

    死 者 3人 、 負 傷 者 55人、住家全壊2棟。

    1944年12月7日(昭和18) (南東海地震) 7.9

    住家全壊3棟。

    1948年6月28日(昭和23) (福井地震) 7.1

    死者41人、負傷者453人、家屋全壊802棟。

    1952年3月7日(昭和27) (大聖寺沖地震) 6.5

    死者7人、負傷者8人。

    1961年8月19日(昭和36) (北美濃地震) 7

    死者4人、負傷者7人。

    2007年3月25日(平成19)

    (平成19年(2007年) 能登半島地震)

    6.9死者 1人、負傷者 338人、家屋全壊684棟。

    「日本の地震活動」/地震調査研究推進本部地震調査委員会編

    表 3.1.8 石川県に被害を及ぼした主な地震

    (地震調査委員会,2009)1)による。

  • 99

    3.1.3.2 石川県周辺の主要活断層で起こる地震

    (地震調査研究推進本部地震調査委員会,2009:日本の地震活動<第 2版>)1)から原文を引用して示す。

    石川県の主要な活断層は、能登半島に「邑知潟断層帯」と、その延長上に「森本・富樫断層帯」があ

    ります。また、富山、岐阜県との県境付近に「庄川断層帯」が、福井県との県境付近に「福井平野東縁

    断層帯」があります。 また、石川県周辺に震源域のある海溝型地震はありませんが、日本海東縁部や南海トラフ沿いで発生

    する地震で被害を受ける可能性もあります。

    マグニチュード地震発生確率(30年以内)

    7.9程度 ほぼ0%

    国府断層帯 7.2程度 ほぼ0%~5%

    高山断層帯 7.6程度 0.70%

    猪之鼻断層帯 7.1程度 不明

    7.7程度 ほぼ0%

    7.9程度 ほぼ0%

    主部(北部) 6.9程度 6%~11%

    主部(南部) 7.8程度 ほぼ0%

    佐見断層帯 7.2程度 不明

    白川断層帯 7.3程度 不明

    7.6程度 2%

    砺波平野断層帯(西部) 7.2程度 ほぼ0%~2%もしくはそれ以上

    砺波平野断層帯(東部) 7.0程度 0.04%~6%

    呉羽山断層帯 7.2程度 ほぼ0%~5%

    7.2程度 ほぼ0%~6%

    主部 7.6程度 ほぼ0%~0.07%

    西部 7.1程度 不明

    7.3程度 不明

    主部(北部) 7.6程度 ほぼ0%

    主部(中部) 6.6程度 不明

    主部(南部) 7.6程度 不明

    浦底-柳ケ瀬山断層帯 7.2程度 不明

    7.3程度 0.4%以上

    柳ケ瀬・関ヶ原断層帯

    魚津断層帯

    (算定基準日:2012年1月1日)

    阿寺断層帯

    邑知潟断層帯

    砺波平野断層帯・呉羽山断層帯

    森本・富樫断層帯

    福井平野東縁断層帯

    長良川上流断層帯

    地震

    内陸の活断層で発生する地震

    跡津川断層帯

    高山・大原断層帯

    牛首断層帯

    庄川断層帯

    「日本の地震活動」/地震調査研究推進本部地震調査委員会編

    表 3.1.9 石川県周辺の主要活断層で起こる地震

    (地震調査委員会,2009)1)による。

  • 100

    なお、石川県が今後 30年以内に震度 6弱以上の揺れに見舞われる確率は、図 3.1.26のとおりです。

    能登半島の丘陵や南部の山地に比べると、金沢平野や能登半島の平野部では、地盤増幅率が高く、確

    率・震度ともに大きくなります。

    図 3.1.26 今後 30年以内に震度 6以上の揺れに見舞われる確率(基準日:2009年 1月 1日)

    (地震調査委員会,2009)1)による。

  • 101

    3.1.3.3 主要断層帯による地震の石川県への影響

    図 3.1.27~図 3.1.33は(J-SHIS(独)防災科学技術研究所:地震ハザードステーション)2)による。

    (1) 想定震度

    1) 邑知潟断層帯

    地震時に断層が大きくずれ動くアスペリティに含まれる氷見市、砺波市(破壊開始点)および小矢部市

    や高岡市で「震度 7」が予測され、金沢市や富山市および邑知潟沿いなどを含む石川・富山両県の平野部

    の広い範囲で「震度 6強~6弱」が予測されている。

    2) 森本・富樫断層帯

    図 3.1.27 邑知潟断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。

    図 3.1.28 森本・富樫断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。

  • 102

    地震時に断層が大きくずれ動くアスペリティに近い金沢市で「震度 6 強」が予測され、周辺の白山市、かほく市および小矢部市、砺波市などで「震度 6 弱」が予測されている。

    3) 庄川断層帯

    震源域に近い能美市や石川・富山・岐阜の県境に近い山間部で、「震度 6 弱」が予測され、加賀地方の

    沿岸部や砺波市~高岡市の平野部で、「震度 5 強」が予測されている。

    4) 砺波平野西部断層帯

    図 3.1.29 庄川断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。

    図 3.1.30 砺波平野西部断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。

  • 103

    地震時に断層が大きくずれ動くアスペリティに含まれ、破壊開始点でもある金沢市で「震度 7」が予測

    され、周辺の白山市、かほく市および小矢部市、砺波市などで「震度 6強」、富山市や氷見市などで「震

    度 6弱」が予測されている。

    5) 呉羽山断層帯

    地震時に断層が大きくずれ動くアスペリティに含まれ、破壊開始点でもある富山市や高岡市で「震度 7」

    が予測され、氷見市、小矢部市および砺波市などで「震度 6 強~6 弱」、金沢市などで「震度 5 強」が予測されている。

    6) 福井平野東縁断層帯

    図 3.1.31 呉羽山断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。

    図 3.1.32 福井平野東縁断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。

  • 104

    震源域に近い加賀市や福井県境付近で、「震度 7」が予測され、加賀地方の沿岸部で、「震度 6強~5強」

    が予測されている。

    (2) 被災人口

    石川県周辺へ影響を与える「邑知潟断層帯」、「森本・富樫断層帯」、「庄川断層帯」、「砺波平野西部断

    層帯」、「呉羽山断層帯」、「福井平野東縁断層帯」の主要断層帯による地震について、被災人口としては、

    次のような影響を受けることが予測されている。図 3.1.33に邑知潟断層帯による地震での被災人口の分

    布を示す。

    金沢市や富山市、高岡市などの人口の多い市街地では、「100~500人」規模の影響を受けるが、これ以

    外の地域では、「1~10 人」および「10~100 人」規模の影響を受け、その範囲は石川・富山両県内の可

    住地域のほぼ全域に及ぶ。

    図 3.1.33 邑知潟断層帯による被災人口 (地震ハザードステーション)2)による。

  • 105

    3.1.3.4 津波シミュレーションの結果

    石川県では、平成 7年度に津波による浸水想定区域図を作成している。平成 23年東北地方太平洋沖地

    震による津波被害を踏まえ、津波に対する新たな知見・考え方のもと、県の地域防災計画をはじめ、津

    波対策の検討や市町の津波ハザードマップの作成のため、津波浸水想定区域図の見直しを行い、平成 24

    年 4月に公表した。

    (1) 想定波源

    既存調査結果等から、石川県周辺の波源を想定し、石川県に大きな影響をもたらすと考えられる4 つ

    の波源(断層)を絞り込んだ。

    図 3.1.34 想定波源図

    (石川県,平成 24 年 3 月,平成 23 年度石川県津波浸水想定調査報告書)5)による。

  • 106

    (2) 津波解析

    1) 解析ケース

    解析は、県内市町の津波ハザードマップ作成に資するものとなることから、住民への最大限の危険を

    示すといった観点から、「①構造物が無く津波浸水範囲が最大となるケース」で解析を行っている。

    また、河川遡上を考慮するため「②構造物による津波阻害効果を反映したケース」の解析も行ってい

    る。

    ①構造物なし位置づけ 津波浸水範囲が最大となるケース

    海岸護岸 背後地に直接津波が押し寄せた場合の被害を想定する。

    防波堤 津波が港内へ直接押し寄せた場合の被害を想定する。

    河川堤防 河川に流入した津波が背後地へ直接浸水する場合の被害を想定する。

    ②構造物あり構造物による津波阻害効果を反映したケース

    河川遡上が最大となるケース

    海岸護岸 背後地盤高以上の海岸構造物による津波阻害を反映する。

    防波堤 津波回折の影響を反映する。

    河川堤防津波による河川遡上を表現する(河川の水位上昇が堤防高まで可能な状態とする)。

    位置づけ

    2) 解析結果

    図3.1.34に示す4つの想定波源について、「①構造物なし」、「②構造物あり」の2ケースについて解析し

    た県内各自治体の平均津波高さを表3.1.10に示す。

    表3.1.11、表3.1.12に県内各地点の、最大津波高、最大浸水標高、最大浸水深、第一波到達時間を示

    す。

    表 3.1.10 自治体平均津波高

    (石川県,平成 24 年 3 月,平成 23 年度石川県津波浸水想定調査報告書)5)による。

  • 107

    表 3.1.11 地域における波源別最大値(①構造物なし)

    (石川県,平成 24 年 3 月,平成 23 年度石川県津波浸水想定調査報告書)5)による。

  • 108

    表 3.1.12 地域における波源別最大値(②構造物あり)

    (石川県,平成 24 年 3 月,平成 23 年度石川県津波浸水想定調査報告書)5)による。

  • 109

    図 3.1.35および図 3.1.36は、4つの想定地震のシミュレーションの結果を重ね合わせ、最も危険なケ

    ースを示したものである。

    図 3.1.35 石川県津波浸水想定区域図(加 賀)

    (石川県,平成 24 年 3 月,平成 23 年度石川県津波浸水想定調査報告書)5)による。

  • 110

    図 3.1.36 石川県津波浸水想定区域図(能 登)

    (石川県,平成 24 年 3 月,平成 23 年度石川県津波浸水想定調査報告書)5)による。

    3-1.pdf3.1.3.3 主要断層帯による地震の石川県への影響2) 森本・富樫断層帯3) 庄川断層帯4) 砺波平野西部断層帯5) 呉羽山断層帯6) 福井平野東縁断層帯図3.1.31 呉羽山断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.32 福井平野東縁断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。3.1.3.4 津波シミュレーションの結果1) 解析ケース2) 解析結果3.1.4.3 主要断層帯による地震の福井県への影響(1) 想定震度1) 福井平野東縁断層帯(主部)2) 福井平野東縁断層帯(西部)図3.1.39 福井平野東縁断層帯(主部)による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.40 福井平野東縁断層帯(西部)による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。4) 柳ケ瀬・関ヶ原断層帯(主部北部)図3.1.41 濃尾断層帯主部根尾谷断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.42 柳ケ瀬・関ヶ原断層帯(主部北部)による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。5) 野坂断層帯6) 湖北山地断層帯(北西部)図3.1.43 野坂断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.44 湖北山地断層帯(北西部)による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。7) 三方断層帯8) 花折断層帯(北部)図3.1.45 三方断層帯による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.46 花折断層帯(北部)による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。9) 琵琶湖西岸断層帯(北部)図3.1.47 琵琶湖西岸断層帯(北部)による想定震度 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.48 福井平野東縁断層帯(主部)による被災人口 (地震ハザードステーション)2)による。図3.1.49 三方断層帯による被災人口 (地震ハザードステーション)2)による。3.1.5.1 国土交通省3.1.5.3 文部科学省(1)新潟県(3)石川県(4)福井県①施設・建物の特性による課題②地理・地形・地質の特性による課題各自治体における自然的条件による災害発生要因は、排除しにくいものである。その特性を十分理解し、事前の対策・備えを十分行い、災害の拡大を抑制する必要がある。③人口・産業の特性による課題3.1.7.1  施設・建物の特性による課題(1)建物の耐震化(2)家具の固定(4)土木構造物や文化財の耐震化3.1.7.3 人口・産業の特性による課題(1)地域防災力の向上(2)自主防災組織・消防団の活性化(3)災害時要援護者の支援(4)女性に配慮した防災対策の充実(5)避難所の確保・整備(6)備蓄物資の整備(7)港湾・漁港の活用北陸4県には、多数の港湾・漁港があり、これらの施設を災害時に活用できるように整備することによって、災害応急対策の実施に際して大きな力となる可能性がある。