3章 出力係数 の回帰式作成手順 · step.1 基本 データ および excel...
TRANSCRIPT
3章 出力係数の回帰式作成手順
3-1 出力係数の測定法
Sc は空中出力係数であり、ミニファントム法あるいはビルドアップ
キャップ法による測定を実施する. RTPS メーカーによっては TMR を使用する場合、Sc についてはビルドアップキャップ法での測定値
を要求するものもあるが、ここではすべての Sc 測定についてミニファ
ントム法を推奨する.
Sc p の測定は、十分に散乱体のある状態(大きな水ファントム)で
実施しなければならない.
Sp は直接測定することが難しいことから、全散乱係数(以下、Scp )と Sc を使って次式より求める.
c
cpp S
SS =
出力係数の測定で注意しなければならことは、測定結果が基準深でのものでなければならない点である.TMR では基準照射野(10cm*10cm)の最大線量深、TPR は通常 10cm となる.
基準深の違いによる Sp の変化例を下記に示す、ここで示した例では最大 10% 以上の差がある.
TMR の場合、通常測定は 10cm 深で実施、各照射野サイズの 10cm 深における TMR を使用して、基準深
(最大線量深)の値に変換してから処理をおこなう. 基準深での出力測定を実施することで、測定結果の妥
当性を判断することも可能である. TPR は通常基準深が 10cm であるので、測定値をそのまま利用する.
3-2 出力係数の回帰式作成
出力係数は、全散乱係数(Sc,p )を、コリメータ散乱係数(Sc )とファントム散乱係数(Sp )に分離し、下記に
示すような回帰多項式を、Sc Sp それぞれについて作成する. ここでは4次の多項式になっているが、実際
の次数の選択は、次数を変化させ最もフィッティングの良いものを選択する.
012
23
34
4c )(S acacacacac ++++=
012
23
34
4p )(S ararararar ++++=
Sc ( c ) : 任意の等価正方形照射野の1辺 c でのコリメータ散乱係数
Sp (r ) : 任意の等価円形照射野の半径 r でのファントム散乱係数
01234 ,,,, aaaaa : 各多項式における、それぞれの係数
ただし上記コリメータ散乱係数:Sc 算出多項式は、第3段 MLC タイプの場合であり、上絞りまたは下絞りが
MLC のタイプでは、等価円形照射野の半径 r を利用するようになる.
012
23
34
4c )(S ararararar ++++=
出力係数の回帰多項式作成処理のポイントは
1.基本データが基準深での測定結果であること.2.シャドウトレイ使用と第3MLC タイプの場合、Sc は正方形照射野の1辺の長さを変数として処理する.3.上絞りおよび下絞りが MLC タイプの場合、Sc は等価円形照射野の半径を変数として処理する.4.Sp は等価円形照射野の半径を変数として処理する.5.Sc p は MU 数の計算には直接利用しない.
では実際の作業に移ろう.
Step.1 基本データおよび Excel シートの準備
下図に示すような出力係数表を作成する(サンプル Excel ファイル参照).
Sp は Sc と Scp から計算で求めるので、 セル B13 に =B12/B11 を入力、Sp の列に入力した計算式をコピー
する.
測定値の準備が整った、次の step に進もう.
Step.2 出力係数の近似多項式作成
はじめに Sp の近似多項式を作成する.
半径と Sc のデータ領域を選択、TMR のときと同じ要領で、グラフウィザードから散布図のグラフを作成する.注)Sp の近似式を求める準備だが、グラフ作成の都合上、指定するのは Sc のデータ領域である.
グラフエリアをクリックしてグラフのデータ領域が枠に囲まれるようにして、Sc のデータ領域を Sp の行に移
動させる.
出力係数における回帰式作成のポイントとして、このサンプルでは正方形の 1 辺が 4cm までしかないが、
実際の回帰式では、さらに小さな照射野まで出力係数が算出できることが望ましい. そこで小照射野の精
度が確保できることを確認するために、作成する回帰式では負の数まで計算を実施、負の数でもグラフの
形状が、ピックテイル状等のようにならない、滑らかな変化を示すことが重要である.
負の数まで回帰式作成の準備としてグラフ表示を変更
する.グラフの X 軸目盛をクリックし、X/数値軸 を表示
させてから、ダブルクリック.
軸の書式設定 ウィンドウが開く.目盛を選択し、“最小
値” を -10 に変更することで、右下図のように X 軸
(半径)が -10 に拡大した.
Y 軸目盛を変更する、Y 軸を選択しY軸の書式設定を表示させる.例として Y/数値軸目盛を下図に示す値
に変更することで、広い領域を表示する見やすいグラフとなった.
TMR の時と同様に近似多項式を作成する.
TMR のときとの違いは、後方補外を 10 に設定した点である.またグラフ上に表示された多項式を、小数
点以下6桁の指数で表示させることも忘れない.
近似多項式の次数はまずは3次くらいから始めてみよう. その後、次数を変化させ最適なものを選択する.
次数を変更するには近似曲線上を右クリック、“近似曲線の書式設定(O)”を選択、ウィンドウを表示させる.
ここで次数を変化させて検証する.
下図は3次と4次の近似結果であるが評価は難しい.”R2”は4次の方が良好であるが、赤丸で示す負の領
域の変化が少ない(直線に近い)3次の方が望ましい.ここではとりあえず3次の多項式を採用する.
表示された近似多項式をコピーして、回帰計算式 Sp の所に貼り付けておく.
次に Sc の回帰式作成に移る.
新しく辺と半径の行を指定して、Sp の時と同じようにグラフを作成する.
半径のデータ領域を Sc のデータ領域に移動させる.
グラフが変化したのを確認し、Sp と同じようにグラフの表示エリアを変更、近似式を追加する.
Sp と同様に3次から始めてみよう.
さらに評価しやすいように、後方補外を 15 に変更してみよう.
ここでは最終的に5次の近似多項式を採用することとした.
作成した式を回帰計算式 Sc のところにコピーしておく.
MU値計算には利用しないが、Scp の近似式も作成してみよう.
次に、実際に多項式の結果に問題がないことを確認するために、回帰計算式を完成させ確認をする.
誤差を確認するために、TMR と同様に下記の式で誤差を求め比較する.
( ) 100×−= 測定値測定値)算出値(%誤差
ここで示した例では、正方形の 1 辺が 4cm までしかないが、実際の回帰式では、さらに小さな照射野まで出
力係数が算出できることが望ましい. 小照射野でも信頼できる測定が可能な小型検出器の測定器を利用
して全散乱係数を測定、小照射野の精度が確保できるようにする.
参考資料
下記に示す出力係数例は、深さ 10cm のもので、TPR で基準深が 10cm の場合に利用するデータである.
基準深 10cm での 各出力係数の変化