3d guidelines

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1 人に優しい3D普及のための 3DC安全ガイドライン 2009年12月10日改訂 国際ガイドラインISO IWA3準拠 Dコンソーシアム 安全ガイドライン部会

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1

人に優しい3D普及のための

3DC安全ガイドライン

2009年12月10日改訂国際ガイドラインISO IWA3準拠

3Dコンソーシアム

安全ガイドライン部会

2

3DC安全ガイドライン改定・一般公開にあたって

2008年11月 安全ガイドライン部会

本ガイドラインは、会員の便宜を図るべく2004年12月に策定されました。

当時、 3D映像に対するガイドラインで公的にオーソライズされたものは存在せず、(社)電子情報技術産業協会の試案があるのみでした。

2005年9月、関係者の努力が実を結び、国際標準化機構ISOより映像の安全性に関するガイドラインISO IWA3が策定公開されました。

2006年2月 ISO IWA3の立体関連部分を網羅し、内容も補強した内容に3DCガイドラインを改定しました。この作業より、信頼度が大幅に向上したものとなりました。

2008年11月 3DC安全ガイドラインの一般公開にあたり、内容をさらに充実させました。近年、立体関連規格の国際的活動が活発化していますので、安全に関わる部分について、今後も随時ガイドラインに反映させていきます。

3

3DCガイドラインの目的○違和感の無い快適な立体視の実現

3D使用による眼精疲労、不快感、不定愁訴軽減

○3D関連ビジネスの健全な発展

PL訴訟リスク軽減

背景○ディスプレイ、コンテンツ、利用方法が一体となった適切な

運用方法を示すガイドラインが人に優しい3D実現に不可欠

○国際標準化機構ISOによる映像の安全性に関するガイドライン

ISO IWA3(2005/09)に基づいた実践的ガイドラインが必要

概要(社)電子情報技術産業協会が1999年6月に発行した「3次元映像に関するガイドライン試案」と2005年9月に発表された国際標準化機構(ISO)による「映像の生体安全性ガイドラインIWA3」を参照して、実践的な3DC安全ガイドラインとしてまとめている。

4

【3DC安全ガイドラインの使用上の注意】

本ガイドラインは、国際標準化機構ISO IWA3「映像の生体安全性

に関するガイドライン」をベースにJEITA「3次元映像に関するガイド

ライン試案」を参考として、 関連プロジェクト、映像制作者、生体

影響研究者からのヒアリング結果を加味し、人に優しい3D実現の

ための指針をまとめたものである。

効果のある実用的な対策に絞ったため、すべてが網羅されている

わけではない。触れられていない点に関して、考慮が不要というわ

けではなく、 ISO IWA3「映像の生体安全性に関するガイドライン」

及びJEITA 「3次元映像に関するガイドライン試案」の熟読を推奨

する。

今後の研究進展に伴い、新たなる知見が見出される可能性が

あるので、専門家から常に最新情報を入手することが望まれる。

5

【3DC安全ガイドラインの特長】

ガイドラインは<GL-N>で表記、Nが通し番号 背景色が

内容 ○○○○○○ (が)望ましい。(を)推奨する。(は)避ける。

などで表現

解説 理由、運用方法などを記述

ガイドラインではないが、人に優しい3Dを実現する上で重要になる

基本知識を<Note-N>で表記、Nが通し番号、背景色が

両眼視差など、文章だけでは理解が難しいものについて、

図やアニメーションで解説している。

6

【人に優しい3Dの普及のための3DC安全ガイドラインについて】

ガイドラインの内容

GL- 1~11 3D表示装置利用に関わるガイドライン

3D利用時間、年齢、個人差、クロストーク、液晶シャッター、HMD、最適位置、

観察姿勢、左右反転映像など

GL-12~16 両眼視差の設定に関するガイドライン

融合限界、飛び出し量、引っ込み映像の限界視差、ディスプレイサイズ等

GL-17~19 3Dソフト制作に関わるガイドライン

ステレオのカメラ設定/設置、映像の処理

ガイドラインの活用のための基礎知識

Note-1 立体視の原理

Note-2~4 両眼視差を原理とする3Dディスプレイについて

Note-5 立体による眼精疲労について

Note-6~8 立体の利用について

Note-9~13 飛び出し量と両眼視差

Note-14~18 3D映像の制作について

①左右画像が入れ替わる逆視(GL-11)

液晶シャッターメガネの同期がハズレ左右の映像が入れ替わる。

設置担当者への連絡不備で左右の映像が入れ替わっている。

②左右画像輝度差、色度差調整の不備(GL-2, GL-17,GL-18)

プロジェクター2台上映時の左右の輝度差、色度差調整されていない。

映像に左右画像サイズに不一致がある。上下ずれがある。

③表示画面サイズと飛び出し量調整が考えられていない。(Note-12, GL-12)

④奥行き方向で両眼間隔以上の視差がついている。 (GL-15,16)

⑤立体視適正位置(視聴座席の最適配慮)(GL-10)

⑥立体視できない人への配慮(約1割苦手の人が存在) (Note-8,12,13)

立体映像展示会等で評判を落とさないための

これだけは注意したい!チェック項目(2009年12月9日追加)

昨今、ハリウッドの立体映画が人気を博したことを契機として、展示会等で立体映像を体験する機会が多くなっています。しかし、残念ながら、設定が不備であったり、安全ガイドラインから外れた立体映像システムを提示し、見学者に不快感を与えているケースが尐なからず見受けられます。

運用上、見落とされがちな注意項目を下記に記述しました。( )内は対応ガイドラインとノート。

8

<Note-1>立体視の原理

①水晶体の焦点調節(accomodation)

②両眼の輻輳(convergence)

③両眼視差(binocular disparity)

④単眼運動視差(monocular movement parallax)

電車の車窓から景色を見たとき近いものほど早く

動いているように見える。

⑤物の大小 ⑥物の高低 ⑦物の重なり ⑧きめの粗密 ⑨形状

⑩明暗(陰影) ⑪コントラスト ⑫彩度 ⑭鮮明度⑬色相

近くにある物体を見るとき水晶体は厚くなる。

遠くにある物体を見るとき水晶体は薄くなる。

水晶体

右眼

左眼

物体

α

近くにある物体を見るとき輻輳角は大きくなる。α > β

遠くにある物体を見るとき輻輳角は小さくなる。α < β

右眼

左眼

物体

β

右眼

左眼

物体

右目と左目は6cm前後離れており、視点が

違う分、見える映像が異なる。

①~⑭を手がかり(CUE)に、人は立体や奥行きを感じる。

輻輳角 輻輳角

輻輳角

右眼に見える映像

左眼に見える映像

9

<Note-2> 本ガイドラインの対象とする3Dディスプレイについて

両眼視差は強力で、この原理を使えば簡単に立体視を実現できる。

市販されている立体表示装置の大半はこの原理に基づいている。

また、快適に立体映像を楽しむための研究例も豊富である。

そこで本ガイドラインは両眼視差の原理を用いた3D(立体)システムに

対象を絞ることにする。

また、正しい条件下で使用した場合、ハード的には特に問題ないことが

医学的に検証されている立体ディスプレイを対象とすることにする。

10

<Note-3>両眼視差の原理に基づく3Dディスプレイとは人の右目と左目は5~7cm離れた位置にある。そのため、それぞれの眼に入る映像は視点の違いの分だけ異なる。その違いは、被写体までの距離が近いと大きくなり、遠いと小さくなる。脳は、それを手がかりとして立体を知覚する。

一方、視点が異なる映像を右目と左目それぞれに独立に与えれば、奥行きを感じさせることができる。バリア等用い、右目左目に独立に映像を与えるようにしたのが両眼視差を利用した3Dディスプレイである。例えば、この原理のディスプレイに右目用左目用の画像が下図のように配置されていると、ディスプレイ面より前に飛び出した箱が立体として知覚できる。

立体像

右目像 左目像

飛び出し立体視

ディスプレイ面

立体像

右目像 左目像

飛び出し立体視

ディスプレイ面

ディスプレイ上の視差

β

α

視差角=βーα

一つの点の視差

左目 右目

11

立体像

右目像左目像

両眼視差角

引っ込み立体視

α

β

γ

視差角θ1 =β-γ

視差角θ2 =γ-α

α

β

γ

視差角θ3=βーγ

視差角θ4=γーαディスプレイ面

θ1

<ディスプレイ面>

θ2

<Note-4>両眼視差を利用した3Dディスプレイ

θ3

θ4

左図のように右目用左目用の画像を表示面に配

置するとディスプレイより後ろ側に物体が見える。

ディスプレイ上の一点を見たときの輻輳角(γ)と

両眼視差により決まる立体を見たときの輻輳角

(α、β)との差を視差角と呼ぶ。

ディスプレイ面での右目映像と左目映像の対応点

間の距離をディスプレイ上の視差と呼ぶ。

左目 右目

12

<Note-5>立体による眼精疲労、不快感の自覚症状と計測方法及び原因

立体がはっきり感じられても眼精疲労、不快感を訴える人がいる。(Note-8参照)

(1)立体観察による眼精疲労や不快感の自覚症状はつぎのようなものである。

目が疲れる、目が重い、二重に見える、目が乾く、頭が重い、頭が痛い、

肩こり、肩が痛い、背中が痛い、吐き気がする、めまい、酔う等

(2)眼精疲労や不快感に関する客観的測定法(他覚的評価)としては下記が行われている

が標準化された方法は、存在せず、研究途上である。以下が良く使われている。

融合限界頻度CFF 、視機能(調節機能、輻輳機能)、視覚誘発電位

自律神経系(瞳孔、心電、血圧)

(3)眼精疲労不快感等の原因として次のものがあげられる。

見えの不自然さ、不適切な視差の設定、 調節・輻輳の矛盾、映像の歪、箱庭効果 、

書割効果 、画枠歪 、垂直視差の有無 、運動視差の矛盾

左右像の幾何学的ずれ(特に上下)、左右像の光学的特性の差

本物とは異なる擬似の立体映像であることから、なんらかの違和感は避けられないが、

表示装置とコンテンツの注意深い設定により、それらを軽減することは可能である。

13

3Dの利用時間について

<GL-1>3Dの利用中、疲労、不快感等、異常を感じたら、

使用を中止することが望ましい。

不快な自覚症状は生体からの警告と考えるべきである。

異常を感じなくても、30~60分ごとに5~15分休むことが望ましい。

これは、3Dで固有ではなく2D映像利用の注意事項と変わらない。

解説

利用時間についてはVDTガイドラインが参考となる。http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/04/h0405-4.html

VDTガイドラインによれば「作業の種類」の「単純入力型」及び「拘束型」に該当する作業に従事する者については、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の

連続作業までの間に10分~15分の作業休止時間を設け、かつ、一連続作業時間

内において1回~2回程度の小休止を設けること。」とされている。

本ガイドラインを利用者に周知させることが望まれる。また、3D関連機器の取扱説明書への記述やイベントでの事前説明が推奨される。

このガイドラインの実行は子供では困難と考えられるので親の協力で回避することを推奨する。

14

<GL-2>3Dの利用中、2重に像が見えたら直ちに使用を中止し、

表示機器やソフトを適切に調整すべきである。

解説両眼視差を利用する立体機器は、利用者が右目と左目から入る視点の異なる2つの映像を脳の中で融合して始めて立体を感じさせることができる。装置の調整が不適切(左右の光軸のズレ、左右画像のサイズの違い、色や輝度の差、上下のズレ、左右の映像の光の混合=クロストークが大きいなど)があると2つの映像は融合せず2重像を感じ、眼精疲労などを引き起こす。

製品の取り扱い説明書をよく読んで、適切に設定し、利用すべきである。

また、融合限界を超える両眼視差をつけた場合も2重像を感じ、眼精疲労を起こす。

ガイドラインGLの12~16を参考にしてください。

15

(社)電子情報技術産業協会が1999年6月に発行した「3次元映像に関するガイドライン試案より抜粋

<GLー3>3D機器の取り扱い説明書に記載されている使用上の様々な注意事項や制限があれば遵守すべきである。年齢制限について特に記載がない場合は、下記に示すJEITAガイドラインを参考に運用することが望ましい。解説:視機能の発達段階(下図参照)に不適切な映像を与えることのないよう、特に注意が必要と考えられる。

16

<Note-6> 3Dの利用を控えて頂きたい人2D映像の場合と同様に、光過敏の既往症のある人、心臓に疾患のある人、

体調不良の人、睡眠不足の人、疲れた状態の人、酒気を帯びた人は

利用を控えるべきである。

<Note-7> 3Dの利用時間は、どれぐらいまで許されるか最大2時間まで視聴した時の視機能や脳の生理的変化を調べた研究がある。 2DのTVを同時間視聴したときに比較して、変わりなければ問題ないと判断する手法が使われる。ただし、結論をだす程の研究蓄積はない。

従って、<GLー1>の遵守が望まれる。

<Note-8> 個人差(両眼視差立体視の得手不得手)両眼視差を手がかりとした立体視について、見えにくい人、すぐ眼精疲労を起こす人が尐なからず(2割程度)存在するので無理な使用は避ける。

使用者の左右の眼の視力差、3D表示装置のクロストーク(*)の大きさ、両眼視差の不適切な設定などが見えにくさの原因となるのでガイドラインを参照し最適な設定が望まれる。*クロストーク(単位は%)

右目用の映像が左に、左目用の映像が右にもれてしまう割合。数値が大きいほど立体視がむづかしくなり、視差の大きい映像や高コントラスト映像では2重像が見えてしまう。

17

<GLー4>両眼視差を利用した立体表示装置では左右画像のクロストー

クができるだけ小さい装置の利用を推奨する。クロストーク: 右眼用の映像が左眼に、左眼用の映像が右眼にもれる割合(%)

解説: クロストークが大きいと2重像が見え、眼精疲労が引き起こされる。

小さいと快適な立体視が可能となり視差量も大きくとることが可能となる。

3Dディスプレイを導入するときの重要な評価要素となる。

S. Pastoor, ”Human factors of 3D images: Results of recent research at Heinrich-Hertz-Institut Berlin, Proceeding of IDW’95 3D-7,pp69-72(1995)

左図はドイツHHI研究所による実験結果で、クロストークの大きさ(縦軸)と2重像が感じられるコントラストの限界値及び視差の限界値が示されている。快適な3Dを得るためにはクロストークの小さなディスプレイを選ぶ必要があることが分かる。

両眼視差の単位=minarc = 分=1/60度

18

<GLー5>液晶シャッター方式や時分割方式立体表示装置では

フリッカーを軽減するためシャッタースピードは120Hz以上を推奨する。フリッカー: ディスプレイの画面のチラツキのこと。

液晶シャッターメガネ方式の3D装置では切り替え周波数が低いとチラツキを感じる。

解説:フリッカーの周波数が充分高ければ、チラツキは感じられなくなる。片眼60HZ以上で、ほとんど

気にならなくなる。液晶シャッターめがねでは、120Hz(片眼60Hz)以上の切り替えスピードを推奨する。

明るい画面ほどチラツキは感じやすい。フリッカーは視覚疲労の原因となり、場合によっては光感受性

発作を誘引する可能性が考えられるので特に注意が必要である。

50 70 11060 100 120(Hz)

フィールド周波数60Hzで時分割

した立体映像の融合範囲は

30-40分である。

(評価方法②)

両眼CFF値約55Hz

左右を交互に開閉した

場合のCFF値片眼のみ

に提示した場合より

約10%低下する。

(評価方法①)

110Hz以上

時分割方式のフィールド周波数は

両眼CFF値(55Hz)の2倍以上

であることが望ましい。

フィールド周波数120Hzで

時分割した立体映像の

融合範囲は40-60分である。

(評価方法②)

①両眼CFF値

水平視野30°のもとで画面全体を

ON-OFF(輝度380、5.5cd/m2)させ

てCFF値を測定。

②融合範囲の測定

時分割立体視に必要なシャッタ周波数

ランダムドットパターンと方形パターン

をスライド写真にとり、これを立体視鏡

にセットし、液晶シャッターを用いて立

体視する。

液晶シャッターの駆動周波数を変えて

立体視が成立する最低周波数を測定

する。

下記データはJEITAガイドラインより抜粋

<GLー6>赤青メガネ方式(アナグリフ方式)は短時間の視聴が望ましい。

解説:低コストで手軽ではあるが右目と左目の映像の色の違いから、視野闘争が生じ疲れやすいとされる。

CFF: Critical Flicker-fusion frequency:臨界フリッカー融合周波数

19

<GLー7>両眼視差方式では表示面と両目を水平にした状態で

見るのが望ましい。

解説: 両眼が表示面に対して斜めになっていると、左右の眼に写る映像の上下の差異が

大きくなり、融合困難となり、眼精疲労を引き起こす。また、直線偏光を利用した偏光

メガネ方式では、傾けるとクロストークが大きくなり、眼精疲労を誘発する。

ただし、 HMDでは両眼に水平に正しく装着された状態が保たれれば、自由な姿勢で

見ることができる。

ディスプレイ表示面の画素配列に

平行な状態で観察する。

立体ディスプレイ

20

<GLー8>HMD、メガネ型ディスプレイでは、不適切な設計・製造工程により、左右の視軸・光軸の不一致や、左右画像のサイズや輝度・色の不一致がおこることがある。その結果、左右映像の融合が困難になり、不快感、疲労の原因となるので、最終製品での精度確保に

配慮すべきである。

<GLー9>HMD、メガネ型ディスプレイでは、利用者の瞳の中心が表示装置の射出瞳内に納まるようにして使用すべきである。射出瞳:接眼レンズを通して映像が正しく見える範囲

解説:射出瞳をはずれると、視軸・光軸の不一致、画像歪が起こり左右映像の融合

が困難になり不快感、疲労の原因となる。

接眼レンズ

眼球

正しく見えるのは眼を光の通り道

(射出瞳)にあわせたとき

光束

21

<GL-10>適正視点位置が限られる立体ディスプレイを用いる場合は、適正位置の確認手段をシステムが備えるのが望ましい。

解説:例えば2眼式バリア方式立体ディスプレイでは右目用左目用の映像からの光

は図のように交互に並ぶ。適正位置のズレは、左右逆転映像を観察の原因となる、違和感が生じ、視覚疲労を引き起こす。ユーザーはそれに気づかず使用する場合が多いので、適正位置かどうかの確認手段が必要である。

右眼

左眼立体

ディ

スプ

レイ

光の進む方向

22

<GL-11>左右の目に与えるべき映像が左右入れ替わってもユーザーは意外に気づかないものである。しかし、視覚疲労の原因となるので、システム提供者は左右逆転防止のため、確認手段をつけるのが望ましい。

解説:ディスプレイの設計範囲外で使用すると、左右逆転映像等不適切な映像が見え、眼

精疲労を引き起こす。また、適正位置で観察していてもソフトの操作ミスで左右逆転映像を見てしまうことが多々生じる。ユーザーはそれに気づかず使用する場合が多いので、なんらかの方法で左右の映像を正しく見ているかをチェックする手段を備えておくべきである

左右の映像が逆転すると凹凸が逆になるはずだが、映像には奥行きを表す

特長が両眼視差以外にも多くあるので、気がつかないことが多い。

左目用写真 右目用写真 左右逆転

23

右眼

左眼右目用映像

左目用映像

立体像

ディスプレイ

<Note-9> ディスプレイ上の視差と立体像の位置関係

両眼視差を利用した3D(立体)ディスプレイでは、光学的な方法で右目用の映像は右目だ

けに、左目用の映像は左目だけに見えるようにしてある。

下図のように右目用(赤で記述)左目用(黄で記述)を与えたとき視差と立体像の位置関係

は下図(アニメーション)のようになる。両眼視差の大きさが、立体感を作ることがわかる。

両眼視差

24

-350

-300

-250

-200

-150

-100

-50

0

表示

面か

らの

引っ

込み

量(m

m)

視差角と飛び出し量の関係(単位に注意)

0

50

100

150

200

250

300

350

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

視差(分)

表示

面か

らの

飛び

出し

量(m

m)

視距離70cm

視距離60cm

視距離50cm

視距離40cm

<Note-10> 両眼視差角と視距離、飛び出し量の関係(視距離が短い場合)立体関係の研究論文では両眼視差は角度(分)で表されることが多い。

飛び出しなどの絶対量は視距離に大きく依存する。

25

視差角と飛び出し量の関係

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

視差(分)

表示

面か

らの

飛び

出し

量(m

m)

視距離500cm

視距離250cm

視距離100cm

視距離50cm

-5000

-4500

-4000

-3500

-3000

-2500

-2000

-1500

-1000

-500

0

表示

面か

らの

引っ

込み

量(m

m)

<Note-11>視距離と両眼視差角、飛び出し量の関係(視距離が長い場合)視覚関係の研究論文の両眼視差は角度(分)で表されることが多い。

26

<Note-12>飛び出し量、引っ込み量(両眼視差)の調整について

視差を大きくすると飛び出し量や引っ込み量が大きくなり、利用者に驚きを与えることができるが、実際は融合限界というものがあり、視差をある程度以上に大きくすると、右目と左目の画像が融合せず、2重像がみえてしまい、立体視はできなくなる。

また、

ディスプレイの後方に表示する場合は、ディスプレイ上で両眼瞳孔間隔を超える視差をつけることはできない。両眼は左右には開かないからである。

表示するディスプレイの最大サイズを想定して両眼視差を設定する必要があることに

特に注意すべきである。

さらに、

両眼視差による立体視の得意の人、苦手な人、できない人が現実に存在する。

また、長時間見ても平気な人、すぐに疲れてしまう人もいる。

視差が大きいほど、この傾向は強くなる。

制作側は、驚き感を演出するため、両眼視差を過大にする傾向があるが、大きな視

差は必要最小限にとどめるべきである。

見やすい3Dコンテンツ作成の基本は試行錯誤による丹念な調整である。

27

<GLー12>快適に見られる奥行き範囲を超えてコンテンツを表示しないこと。理由:両眼視差による立体では、ディスプレイ面とは異なるところに物体を知覚する。一方、ピントはディスプレイ面に合うが、この乖離が大きいと、視覚疲労、不快感を生じるとされる。立体を「快適に」楽しむには奥行き(飛び出し、引っ込み)範囲、すなわち視差範囲を制限する必要がある。過度の視差は2重像を生じさせ、視覚疲労の原因となる。両眼視差を最大でも融合範囲内に収めることが重要である。次ページの結果と下記グラフより融合限界は最大2度程度、快適範囲は60分以下が目安である。

融合範囲

視差飛び出し量

距離cm引っ込み量

距離cm 飛び出し量グラフ 測定値(測定法)

35分 2.35 2.67 快適な立体視

40分 2.67 3.09 明確な立体視:主観評価

60分 3.88 4.81 融合限界

70分 4.45 5.73 不快感を生じる限界

80分 5.01 6.69 明確な立体視:主観評価

1.5度 5.55 7.68 融合限界

2度 7.07 10.94 融合限界

3度 9.75 19.02 融合限界

3度 9.75 19.02 融合限界

3度 9.75 19.02 融合限界

4度 12.02 30.15 融合限界

6度 15.68 72.68 融合限界

6度 15.68 72.68 融合限界

7度 17.18 121.79 融合限界

眼幅65mm、視距離40cmで飛び出し量を算出した結果

-100.00 -80.00 -60.00 -40.00 -20.00 0.00 20.00

鑑賞者位置

映像表示位置

飛び出し量(cm)

視距離 40cm

瞳孔間距離

65mm

融合限界17.18cm

不快でない立体視快適立体視2.36cm

表示面

快適立体視2.67cm

不快でない立体視5.73cm

融合限界121.8cm

参考文献

1) M.Wopking: "Viewing comfort with stereoscopic pictures",

Journal of the SID, 3, 3, pp.101-103 (1995)

2) K.N. Ogle: "On the limits of stereoscopic vision", J. of

experimental psychology, vol.44, 253-259 (1952)

3) 3次元映像の基礎、泉武博監修、NHK技研編(1995)

4) 矢野澄男: 両眼融合可能な視差の範囲、

信学論J75-d-2,10,pp1720-1728(1991)

5) 長田昌次郎: 両眼式立体画像における両眼融合限界の画角及び

視距離依存特性, テレビジョン学会誌43, 3 , pp.276-281 (1989 )

6) 長田昌次郎: 両眼視融合機能に及ぼす画像条件、

信学技報 資料番号MBE91-116 (1991)

28

Crossed

VFSL disparity log deg arc

50% 3.0584% 2.04

Freq

uen

cy

Cum

ulativ

efreq

uen

cyratio

innorm

aldistrib

utio

npap

erax

is

84% -1.8450% -3.34

Uncrossed

Crossed

<Note-13> 融合限界の研究例(400名)提示条件による差や個人差が大きいので、視差は抑え目にするのが快適なコンテンツを作るコツである。

The results showed the depth range of this display matched to human vision

インタービジョン 長田氏の資料より

Distributions of population of (VFSL) of disparity for young 392 sub.19-40.mean21

Normal Cumulative frequency ratio with fitted model distributions

29

<GLー13>融合限界に近い飛び出しは必要最小限、短時間の提示に留めるのが望ましい。

解説:調節と輻輳の不一致が顕著になり、大きい飛び出しは眼精疲労を引き起すとされる。融合限界は個人差が大きいので不特定多数の人を視聴者とする場合は、大きな飛び出しの提示頻度は必要最小限にすべきである。大きな飛び出しは立体の魅力であり、効果的場面で使うのが望まれる。

輻輳角α度

右目

左目

右目用映像

左目用映像

輻輳角β度

視差角=|αーβ|度

ディスプレイ上の視差

30

<GLー14>コンテンツ作成時には、立体表示するディスプレイのサイズと視距離を念頭に融合限界を考えながら飛び出し量を設計する必要がある。理由:通常3Dコンテンツはディスプレイ上の左右距離差で飛び出し量が決まるので視距離が一定ならば表示サイズが大きくなるほど飛び出しが大きくなり、融合限界を超える恐れがある。想定より小さなディスプレイに表示するときは飛び出しも小さくなるので問題はない。

右目用映像左目用映像

視差角=|α1ーβ|(度)

輻輳角α2度

右目左目

輻輳角β度

輻輳角α1が拡大視差拡大飛び出し大

右目左目

輻輳角β度

輻輳角α3が減尐視差減尐飛び出し小

右目左目

輻輳角β度

視距離が同じでディスプレイサイズが大きくなった場合

右目用映像左目用映像右目用映像左目用映像

ディスプレイ上の視差

視距離が同じでディスプレイサイズが小さくなった場合

視差角=|α2ーβ|度 視差角=|α3ーβ|度> >

ディスプレイ

立体像

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<GLー15>ディスプレイ後方に表示される引き込み映像の場合、ディスプレイ上で両眼幅(子供まで考えると5cm)をこえる視差はつけてはならない。理由:人の目は外側には開かないので融合せず、眼精疲労を引き起こす。

右目

左目

右目用映像

左目用映像ディスプレイ

5cmを越えないように 眼幅は5~7cm

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<GLー16>ディスプレイの後方へ表示している場合、想定したサイズより大きなディスプレイに表示すると限界値5cmを越え、右目と左目が開散方向となる恐れがあるので特に注意が必要である。これは視距離に関らず成り立つ。

ディスプレイ

右目左目

右目用映像左目用映像

右目

左目

右目用映像左目用映像

ディスプレイ

ディスプレイサイズを大きくすると右目と左目が開散方向になることがある。

表示面で奥行きの視差が5cmを

越えると子供では開散方向になる。

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右カメラ

左カメラ右眼用映像

左眼用映像

立体物

仮想スクリーン

<Note-14>立体物の位置と左右カメラ映像(視差)の関係立体映像を撮影するにはカメラを2台使うことが一般的である。左右のカメラを一定の間隔を広げ図のように設置し、撮影すると図Bのような画像が得られる。左右画像の共通部分を重ねたとき、立体物の像が水平方向にずれているのがわかる。これが両眼視差の一つである。

(この図はスライドショーで見るとアニメーションになります。)

フィルム上の両眼視差

右カメラの映像左カメラの映像

図A

図B

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右カメラの映像

左カメラの映像

<Note-15> カメラ間隔を狭めると視差は小さくなる。(この図はスライドショーで見るとアニメーションになります。)

視差 立体物

右カメラ

左カメラ

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<GLー17>2つのカメラで左右映像を撮る場合、そのカメラは特性が同じでなければならない。また、それぞれのカメラは光軸が平行且つ縦ずれのないように設置しなければならない。解説 2つのカメラの特性は同じものを用い、視差以外の左右カメラ撮影映像の差異をできるだけ小さくしなければならない。また、人間の目は、左右画像の縦ずれに対して非常に敏感で、わずかなずれでも眼精疲労の原因になる。そのため、上下の光軸を平行にするだけでなく、左右のカメラ(仮想含む)を平行に置く必要がある。輻輳をつける方法もあるが、構図の設定等に制約があり、他の文献(*)を参考にされたい。(*)例えば、宮川宏、他:2眼式立体画像撮像カメラの輻輳角効果についての一考察、映像メディア学会技術報告HIR2001-68, pp.69-73(2001)

• カメラが並行でないと... ここに上下のズレが生じる

○× 撮影時輻輳はつけない。

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<GLー18>複数のカメラで左右映像を撮る場合、すべてのカメラのシャッターは同期して動くことが必要である。ムービーの場合はビデオ信号も同期していなければならない。解説:人間の目は、左右画像の縦ずれに対して非常に敏感で、わずかなずれでも眼精疲労の原因になる。被写体が上下方向に動いている場合、撮影のタイミングが異なると左右の映像に縦方向のズレが生じてしまう。

左右方向に動いている物体を撮影した場合でも、視差に誤差が生じたり、被写体の形状が変化して左右映像の融合が困難になる。

シャッターを同時に押せば

縦ズレは生じない。

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<Note-16> 平行に設置された2つのカメラで左右画像を撮影した場合、左右カメラ画像の共通部分が視差を持つ画像として使える。その他の領域は立体視には寄与しないのでデータを捨てるのが望ましい。

すなわち、右のカメラで撮った画像の右端を切り、

左のカメラで撮った画像の左端を切りとって利用する。

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<GLー19>画面の端近くには、画面より前に見える物体を表示しない。理由:ディスプレイの端近辺にいくほど、大きな視差は付けにくくなり、立体表示が困難とな

る。立体表示が可能な範囲でも、画枠の前方に表示すると端の部分で違和感が生じ

不快感、視覚疲労の原因となる。後ろ側への表示では違和感は尐ない。

フレームの奥が

見えないのは自然

フレームの前なのに

見えないのは不自然

フレームの前には表示できない。

ここで、目が混乱を起こす

○ ×

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録 画

左右画像切り出し

画像(左フレーム)

3D画像化

3D表示

画像(右フレーム)

3D実写の作成手順

BMPファイル BMPファイル

BMPファイル

カメラセッティング

<Note-17> 3D実写映像の作成手順と両眼視差の設定

キャプチャリング

:3Dcom社 3DアダプタNu-View等

:ビデオキャプチャソフト(市販ソフト)等

:左右切り出しソフト (シャープオリジナルソフト)

:画像表示ソフトSusie (フリーウェア)等

:3D合成ソフト (シャープオリジナルソフト)

奥行き制御には

左右カメラの設置間隔

を調整する必要がある。

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モデリング

カラーリング

テクスチャーマッピング

ライティング

アニメーティング

レンダリング(左フレーム)

3D画像化

3D表示

テクスチャー作成

レンダリング(右フレーム)

3DCGの作成手順

BMPファイルBMPファイル

BMPファイル

<Note-18> 3DCGの作成手順 と視差の設定

:2D画像ソフトPhotoshop等

:3Dデザインソフト:3Dモデルデータベース Infografica社 等

:3D合成ソフト (シャープオリジナルソフト)

:画像表示ソフトSusie (フリーウェア)等

奥行き制御には

左右の仮想カメラの距離

を調整する必要がある。