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=JASTPRO広報誌電子版のご案内= 裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。 411 2012- 2012- 12 12 今月号の内容 記事1. 貿易簡易化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会(AFACT) 第30回年次会議報告 …………………………………………………………………… 1 記事2. 平成24年度JASTPRO秋季セミナーを開催(開催結果報告) ………………………… 5 記事3. ◇連載◇ 貿易契約の諸問題(8) ………………………………………………………… 7 早稲田大学名誉教授 朝岡 良平 記事4. 国連CEFACTからのお知らせ ………………………………………………………… 19

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裏表紙にJASTPRO広報誌電子版のご案内を掲載しておりますので、ご参照下さい。

4112012-2012-1212

今月号の内容

 記事1. 貿易簡易化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会(AFACT)     第30回年次会議報告 …………………………………………………………………… 1

 記事2. 平成24年度JASTPRO秋季セミナーを開催(開催結果報告) ………………………… 5

 記事3. ◇連載◇ 貿易契約の諸問題(8) ………………………………………………………… 7       早稲田大学名誉教授 朝岡 良平

 記事4. 国連CEFACTからのお知らせ ………………………………………………………… 19

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記事1. 貿易簡易化と電子ビジネスのためのアジア太平洋協議会Asia Pacifi c Council for Trade Facilitation & Electronic Business(AFACT)

第30回年次会議報告

2012年11月19日(月)から22日(木)までの間、イランのテヘランで開催されました掲題会議について、下記のとおり報告します。 *AFACT概要につきましては http://www.jastpro.org/un/afact.html#004 をご参照ください。  また、各プレゼンテーションの資料は、後日イラン側事務局がAFACTのwebsiteに掲載の予定です。  (http://www.afact2012.mimt.gov.ir/)

1. 第30回AFACT年次会議について

     1.1 会議日程

11月19日 AM AFACT運営委員会      PM 分科会11月20日 AM 分科会     PM 運営委員会  11月21日 AM/PM 総会11月22日 EDICOM (AFACT会議主催国が同時開催するセミナー)

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1.2 会場 Parsian Azadi Hotel, Tehran City

1.3 総会参加国 7カ国  出席者40名

中華台北(5) 日本(4) 韓国(5) タイ(2) パキスタン(1) ベトナム(1) イラン(21)オブザーバとして ESCAP(1)

2. 議事内容2.1 【新規案件】Cross Industry Data Libraryの構築

Technology & Methodology Committee(以下TMC)から以下の報告があった。日本、韓国、台湾の自国語でのCCL(Core Component Library)構築ならびに利用状況を確認した。今後、日本がリードしてAFACT版ライブラリー登録簿(今回Cross Industory Data Library CIDL と命名)の提案を行ない、TMCとしてその具体的な提案内容の提示を待って審議することとなった。

2.2 【新規案件】SOA相互運用性ガイド(TMC報告)

       * SOA: 技術用語Service Oriented Architecture韓国から、同国が策定した政府利用目的のSOAフレームワークならびに設計ガイドラインの説明があり、アジア域内の共通フレームワークとしてAFACTに適用するかどうかの審議が行われた。今後、各国にて持ち帰り検討の上で、AFACTとしてのSOAフレームワークならびに設計ガイドライン策定プロジェクトに参加の有無を回答することとなった。

2.3 【新規案件】SLHプロジェクトの実証実験プロジェクト

Travel Tourism & Leisure Working Group(以下TT&L W/G)から以下報告があった。従来国連CEFACTで進めてきたSLH(小規模宿泊施設予約情報)プロジェクトにおける標準作成作業がほぼ完了したことを受けて、その実証実験を開始するプロジェクトが発足した。準備期間を経て実施は2014年1月を予定。参加国は日本、韓国、タイ、イラン(KISH自由区を含む)更にベトナム、台湾が参画を検討中である。

2.4 【新規案件】地域観光情報(Destination Travel Information DTI) (TT&L W/G報告)

国連CEFACTにおいて新たに立ち上げたプロジェクトであり、韓国をリーダとして韓国、日本、タイ(更にイランが検討中)にて国連CEFACTの三カ国ルールに基づく承認取得に向けて手続き中である。このプロジェクトはAFACT TT&L WGとしても支援をしていくこととなった。DTIプロジェクトは、将来上記SLHプロジェクトと連携することも視野に入れることとなった。

2.5 【新規案件】AFACT参加各国におけるシングルウィンドウ進捗状況にかかる情報の共有化

Communication Support Committeeから以下の報告があった。

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前回4月に開催されたKISH(キッシュ島、イラン)の中間会議における合意に基づき9月に質問書を作成し、各HODに送付した。既に中華台北・韓国・日本から回答があり、更に他の参加メンバー国からの回答を得た上でAFACTのWebsiteにて開示する予定である。

2.6 【新規案件】#メール プロジェクト(韓国HODからの報告ならびに提案)

韓国より、メールアドレス認証付きのメール(#メール)サービスの紹介が行われた。韓国においては、#メールサービサーの認定をNIPA(韓国情報通信産業振興院)が行う。総会では韓国より #メールサービス対象のプロジェクト提案が行われた。正式の提案文書は、後日、技術手法委員会(TMC)に提出される。

2.7 【継続案件】原産地証明書の電子化(eCOO W/G報告) 

現在、ECO(*)参加各国におけるeCOOプロジェクト推進については、パキスタンが2013年3月に第二回専門家会議をホスト国として開催する予定。*ECO : Economic Cooperation Organization 1979年に西・中央アジアで結成された地域連合体。メンバー

国は、アフガニスタン、アゼルバイジャン、イラン、カザフスタン、キルギス、パキスタン、タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、ウズベキスタンの10ヶ国。

イランとベトナム間、イランとパキスタン間でトライアルプロジェクトを進める予定で調整していたが、ベトナムとの間のプロジェクトについては、ベトナム側から正式通告によりプロジェクトが中止となった。荷動きが乏しいので効果が得られないということが理由である。今後イランは対パキスタン、対トルコとのeCOOトライアルプロジェクトを進める予定である。

2.8 【継続案件】AFACTを国連経済社会理事会(ECOSOC)認定のNGOとするための作業

事務局からイランのKISHに常設事務所として法人登記した旨報告があった。法人名はAsia Pacifi c Centre for Trade Facilitation and Electronic Business (APCFACT)。同法人はAFACT常設事務局関連業務をカバーする予定。ECOSOCからは、AFACTをNGOとして認定する条件として2年間の稼働実績が必要とのことであり、改めてECOSOCに申請する時期は、これから2年後となる旨事務局から報告があった。認定により中華台北がAFACTの立場で国連CEFACTの活動に参画可能となる。

2.9 【継続案件】ISO TC/154/UNTDED-JMA参画

AFACT議長 Zargar氏からAFACTとしてTC/154への参画はLiaison memberとして、またUNTDED-JMAへの参画は正式memberとして、それぞれのグループから承認を得た旨報告があった。

2.10 【審議事項】国連ECE勧告36号『シングルウィンドウ相互運用性確立』

勧告36号は、国連CEFACTの『貿易および運輸円滑化PDA(企画開発領域)』」にて審議中であるが、同PDAから当該勧告についてAFACT事務局に意見を求めているとの報告があった。

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事務局にてたたき台を作成し、各HODに発信して意見を収集し、その上で運営委員会にて審議の結果を国連CEFACTに発信することとなった。

2.11 【審議事項】新規ワーキンググループ設立

参加メンバー各国にとって興味を引くような項目について、新規W/Gを設立する必要があるとの問題提起があり、事務局から参加メンバー各国HODに対しアイデアの募集を働きかけその上で運営委員会にて審議することとなった。

2.12 【審議事項】空席のBDC(Business Domain Committee)議長職位の対応

BDC議長国であったマレーシアの担当者が、2010年度に異動したことにより議長職が空席となったままの状態が続いていたが、韓国よりJasmine Jang氏を推すとの提案があり、本総会にて承認された。

2.13【審議事項】2014年以降のホスト国未定の件

2013年のベトナム開催は決定済み。2014年以降のホスト国について事務局から改めてタイ、パキスタン、カンボジアに対して働きかけを行い早期に確定することになった。

2.14 【審議事項】現在の国連CEFACTアジアラポータの件

本年10月、現ラポータでありAFACTのタイHODであるAjin氏から、上層部の理解が得られず退任せざるを得ないとの非公式な通知が事務局にあった。ラポータ退任の意向が正式に表明された際には、AFACTとして後任候補者を年明け1月15日までに決定することとなった。

2.15 【審議事項】ESCAPとの連携強化

総会にてAFACT議長Zargar氏から、ESCAP Sangwon Lim氏をAFACT運営委員会のメンバーとして招請してはとの動議が出され、特に異論なく承認された。オブザーバとして総会に出席していたLim氏からはその方向でESCAP上層部に諮るとの発言があった。

2.16 【審議事項】第31回AFACT会議

ベトナムから下記が通知された。 中間会議  2013年4月に開催(予定)場所: Da Nang/Hue  総  会  2013年11月に開催(予定)場所: Ho Chi Minh City

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記事2. 平成24年度JASTPRO秋季セミナーを開催(開催結果報告)

(財)日本貿易関係手続簡易化協会(JASTPRO)は、貿易の円滑化と電子ビジネスのための国連センター(国連CEFACT)の我が国の窓口として、貿易手続きの簡素化や貿易取引の電子化の動向等に関する国内での普及・促進に向けた活動等を行っており、最近においてはアジアにも力点を置き、ASEANシングルウインドウに関する調査等独自の活動を展開しております。当協会は、この活動の一環として、毎年、春と秋の2回、その時々において話題性の高い内容を

テーマに選定しJASTPROセミナーを開催しており、去る、11月29日(木)13 : 30 ~ 16 : 10までの間、全国社会福祉協議会・灘尾ホール(千代田区霞が関)において、「出港前報告制度にかかるNACCSの対応」及び「ASEANシングルウインドウの進捗状況等」の二つをテーマに選定し「秋季セミナー」を開催しました。    前者は、我が国においては本年3月末に法改正等が行われ、2014年3月に実施される「出港前

報告制度」についてであり、その報告に際して重要な要素となるNACCSの対応に関して、輸出入・港湾関連情報処理センター㈱ 神例高章企画部長に、主としてサービスプロバイダーの役割について講演を頂きました。後者は、2015年の構築を目指すASEAN共同体構想での、「物品の自由な移動」を実現するため

のツールとして位置付けられている、ASEANシングルウインドウに関して、JASTPRO 渡邊浩吉シニアアドバイザーに、ASEAN全体の展望と各国で進めるNSW(ナショナル・シングルウインドウ)の進展についてそれぞれ講演を頂きました。当日は、180名(参加登録208名)を超える参加者を得て盛況のうちに開催することができ、また、各講師の説明に対しましても90%を超える方から「参考になった」との評価を頂きました。受講者からは質問が相次ぐなど、関係業界等の関心の高さを示すものとなりました。当日ご来場頂きました皆様に感謝を申し上げますとともに、今後とも当協会が主催するセミナーを含

め、各種事業に対しご理解とご協力を頂けますようお願いし、ここに秋季セミナーの開催報告をさせていただきます。

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《JASTPRO秋季セミナー 開催会場の様子》

《JASTPRO 渡邊浩吉シニアアドバイザー》《NACCS 神例高章企画部長》

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記事3. 貿易契約の諸問題(8)

                          早稲田大学名誉教授 朝岡 良平

8. 2002年規則の解説8.1 2002年規則に関する小冊子

「消費者物品の売買および関連する保証に関するEU指令」1(以下、EU指令)をイギリス国内法に導入するため、「2002年消費者物品の売買・供給に関する規則」2(以下、2002年規則)が制定されたことは、本誌で紹介しました。2002年規則の「規則5」により、1979年SGAに第5A編が追加され、消費者物品に瑕疵がある場合、消費者である買主の追加の権利として、新しい4つの救済方法が規定されました。イギリスの貿易産業省は、「2002年規則に関する小冊子」3(以下、小冊子)で、これらの救済方法に関する解説をしています。SGA第5A編を理解するために参考になる内容なので、本稿ではこの小冊子により関連する部分を紹介したいと思います。

8.2 2002年規則の適用範囲

8.2.1 消費者物品売買の当事者

2002年規則の適用対象となる当事者は、消費者としての買主です。一般に、消費者は、すべての記述、価格、その他「関連する状況」を考慮して、「満足される品質」を有する物品を求める権利があります。物品に欠陥(faulty)がある場合、消費者(買主)は、小売業者(売主)に対してのみ法律上の救済を請求することができます。消費者は、製造業者に対して直接、損害賠償を請求することはできません。消費者は、物品をクレジット・カードで購入した場合、または代金が100ポンド以上の場合には、クレジット・カード会社または金融会社に対して、物品に関連して提供された保証に基づいて、追加の権利を取得できます。

8.2.2 救済が得られない場合

「潜在的」(latent)または「固有の」(inherent)瑕疵といわれる欠陥が、物品の売買の際に存在する場合、消費者は、それを発見した時に苦情を申し立てることができます。ただし、次の場合には、法律上の救済を求めることはできません。(a) 物品が使い古されたものである場合、(b) 誤った使用または事故により物品が破損した場合、および

1  The Directive 1999/44/EC of the European Parliament and of the Council of 25 May 1999 on certain aspects of the sale of consumer goods and associated guarantees, OJ L171/12, 7.7.1999, pp. 12-16.

2  The Sale and Supply of Goods to Consumers Regulations 2002 (SI 2002/3045).3  The Department of Trade and Industry, A Brief Information of the Sale and Supply of Goods to Consumers Regulations 2002.

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(c) 消費者がその物品をもはや不要とする場合。同様に、消費者が売買の前に、その物品に欠陥があることを知っていた、または合理的な検査により、瑕疵が存在したことが立証された場合にも、消費者は法律上の救済を求めることはできません4。

8.3 消費者である買主の救済方法 

8.3.1 契約違反による救済方法

製品が売買時に欠陥があった場合、消費者はこの物品を小売業者に返還し、次の法的権利が認められます5。(a) 全額返還:これが売買後の合理的期間内であれば、全額を返還請求できます。合理的

期間の定義はありませんが、通常はごく短期間です。あるいは、(b) 合理的な金額の補償(または損害賠償):売買後6年までの期間内(スコットランドでは問

題が発見された後5年以内)の場合には、合理的な金額の補償または損害賠償を請求できます。

これは、すべての物品について6年間の救済が認められるという意味ではありません。売買時に欠陥があった物品について、救済を請求する期間を制限するものです6。

8.3.2 2002年規則による救済方法

2002年規則が発効した2003年3月31日以降、消費者は、次の救済方法を利用することができます。(a) 修理または取替え:小売業者は、修理または取替えに要する費用に大きな差がある場合

には、これを消費者に説明して、いずれかを選択することができます。しかし、いずれの救済方法も消費者に著しい不便をかけることなく履行されなければなりません。修理または取替えのいずれも実際に行うことができない場合は、消費者は次の救済方法を請求することができます7。 

(b) 代金の一部または全額返還:実際に、消費者は欠陥が発見されるまで、この物品を使用して、何らかの利益を享受したという理由で、全額返還を請求することは不合理であると考えられます。一部の金額を返還する場合、合理的な金額の評価方法が必要になります8。

4 SGA第14条第2C項。5 SGA第13条、第14条、第15条、第48F条。6 本稿の8.6.3項を参照。7 EU指令第3条第3項。8 EU指令第3条第5項。

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8.3.3 欠陥の証明 

一般に、消費者には、売買時に物品に欠陥があったことを証明する責任はありません。たとえ消費者が直ちに全額返還または補償の支払を請求する場合でも、同じです。また、売買の日時から6ヵ月以上経過後に物品を返還する場合でも、消費者には欠陥を証明する責任はありません。ただ1つだけ例外があります。消費者が、売買の日時から起算して、最初の6ヵ月以内に物品を返還し、かつ修理または取替えを要求し、あるいはその後に、一部または全額の返還を請求する場合です。この場合でも、消費者はこの物品が売買時に欠陥があったことを証明する必要はありません。しかし、小売業者が消費者の要求を拒絶する場合、小売業者はこの物品が売買時に満足な状態であったことを証明しなければなりません9。

8.3.4 その他の場合における救済 

消費者は、物品の修理、取替え、代金の一部または全額返還という救済方法を次の場合でも請求することができます10。 (a) 小売業者による取付け(installation)が満足できるものでない場合、(b) 取付けの説明に欠陥がある場合、(c) 一般に、小売業者、製造業者、輸入業者または生産者により、広告またはラベル等に

表示されている「公開された意見表示」(public statements)に物品が適合していない場合、および

(e) 特別に委託して製造した物品に関連性のある欠陥がある場合。

8.4 EU指令第2条に関連する問題

8.4.1 不適合の意味

消費者が購入した物品について苦情を述べるとき、しばしば、「これは欠陥商品だ」と主張します。法律上、これは物品が「契約に適合していない」ことを意味します。もちろん、多くの消費者はこのような法律上の用語を使用することはありません。例えば、物品が売買の直後に動かなくなった場合、その物品は契約に適合しないということになります。実際には、売買の後、かなり時間が経過してから、例えば数年後になって、固有の瑕疵により、― すなわち、売買の時に、既に存在していたということで、― 動かなくなった場合に、物品が契約に適合しないとされます。また、物品は、小売業者が売買の前に消費者に与えた説明(記述)に合致しないときでも、契約に適合しないことになります。

8.4.2 適合性に関するEU指令の規定

EU指令は、第2条で契約への適合性について次のように定めています。

9 SGA第48A条第3項。本稿の8..6.5項を参照。10 EU指令第2条第5項。

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「第2条 契約への適合性第1項 売主は、売買契約に合致した物品を消費者に引渡さなければならない。第2項 消費者物品は、次の場合に、契約に合致したものとみなされる。(a) 売主による記述(description)に合致し、かつ売主が消費者に見本(sample)または

雛型(model)として提示した物品の品質を有する場合11、(b) 契約締結時に、消費者が売主に知らしめ、売主が了承した消費者の使用目的に適合

している場合12、(c) 同種の消費者物品に通常使用される目的に適合する場合13、(d) 同種の消費者物品について、一般的であり、かつ売主、製造者その他の代理人によっ

て、特に広告やラベルになされた「公開された意見表示」(public statement)を考慮して、消費者が合理的であると期待しうる品質と性能を有している場合14。

第 3項 契約締結時に、消費者が不適合を知っていた、または合理的に判断して、知らなかったとはいい得ない場合、または不適合が消費者により供給された材料に原因がある場合には、本条の目的のための不適合がないものとみなされる15。第 4項 売主は、次の場合に、上記の第2項(d)号に定める「公開された意見表示」に拘束されないものとする16。(a) 売主が当該意見表示を知らなかったこと、かつ知り得なかったことが合理的であること

を証明する場合、(b) 契約締結時までに、この意見表示が撤回されたことを証明する場合、(c) この消費者物品を購入する決定がこの意見表示に影響されたものでないことを証明す

る場合。第 5項 消費者物品の取付け(installment)が正確でなかったために生じた不適合は、その取付けが売買契約の一部であり、かつその取付け作業が売主により、または売主の責任の下で行われた場合には、物品の不適合と同等であるとみなされる。」

8.4.3 適合性に関するSGAの規定

EU指令は、契約への適合性について詳細な規定を設けていますが、1979年SGAには、次の場合に契約に適合する旨の規定があるので、2002年規則の「規則3」は、EU指令第2条の規定に基づいて、SGA第14条の一部を修正する規定を設けています。

11 SGA第13条および第15条。12 SGA第14条第2項。13 SGA第14条第2B項(a)号。14 SGA第14条第2D項。15 SGA第14条第2C項。16 SGA第14条第2E項。

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(a) 物品が契約に定め記述に合致する場合17、(b) 物品が満足される品質を有するものである ― すなわち、合理的な者が物品の記述、価

格(関係があるとき)、その他すべての関連する状況を考慮して、満足であるとみなすような基準を充たしている場合18。

SGA第14条第2B項は、本法の目的のために、物品の品質には、その状態(state and condition)を含み、かつ必要な場合には、次の要因を含むと定めています。(a) この種の物品が通常供給されるすべての目的への適合性、(b) 外観および仕上げ、(c) 僅かな瑕疵もないこと、(d) 安全性、および(e) 耐久性。物品は、売買時に小売業者に対して知らされていた特定の目的に合理的に適合しなければな

りません。ただし、小売業者が売買時に物品がその特定の目的に適合していたことを証明する場合はこの限りでありません。(事 例1)例えば、「このレコード・プレイヤーは、33、45よび78回転のディスクに使用できます」という説明があったので、購入しました。しかし、製造が不適切であったか、あるいは設計に欠陥があったか、いずれかの理由で、このプレイヤーがうまく動かない場合、これは記述(説明)に合致しないということになります19。

(事 例2)蒸し焼き用鍋(dish)は「オーブンに使用可能」であると消費者に説明されましたが、蒸し焼き鍋料理を作るため、通常の状態で使用しているときに、突然、粉々に割れました。この場合、販売時の説明に誤りがあり、これは契約に適合しないということになります20。

8.4.4 満足される品質

1979年SGAは、売主が営業として物品を売買する場合には、契約に基づいて供給される物品が「満足される品質」である旨の黙示条項が存在すると規定しています21。また、物品の記述、価格(関連がある場合)、およびその他すべての関連する状況を考慮して、合理的な者が満足すると考える標準を物品が充たしている場合に、その物品は「満足される品質」のものであると規定しています22。

17  SGA第13条。18  SGA第14条第2A項。19  SGA第13条。20  同上。21  SGA第14条第2項。22 SGA第14条第2A項。

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(事 例1)満足される品質であるためには、物品は、通常の人たちが売買時にその物品に適用される記述、価格、その他すべての関連する状況を考慮して、満足であると考える基準を有するものでなければなりません。例えば、新しい靴を購入したとき、通常の状態でこの靴を履いて歩いた場合に、わずか数日で靴底が剥がれると誰も想像しません。この場合、この靴は満足される品質を有しなかったということになります23。

(事 例2)他方、10年間使用した中古車を購入するとき、その年式と走行距離を考慮して、その自動車がどの程度の性能で使えるかを考えることはあっても、誰も新車と同様の性能を期待することはないでしょう。この場合、この中古車の価格、使用年数、走行距離、外観の状態などを考慮して、購買者が満足する品質のものであるか否かが問題になります24。

8.4.5 特定目的への適合 

物品が特定目的に適合することを消費者が要求した場合、あるいは小売業者がこれを承知した場合には、たとえこの物品が通常、その目的のために供給されることがなくても、小売業者がこの要求を承諾したときは、その物品は特定目的に合理的に適合しなければなりません25。この物品が消費者の求める特定の要件に適合することについて、小売業者が確信できないときは、将来の損害賠償請求に対して自分を保護するために、例えば、物品受領書にその旨を明記しておかなければなりません。(事 例)消費者は、このソフトウェアは通常アップル・コンピュータに使用されるものであるが、他の

PCにも互換性があるという店員の説明により、ソフトウェアを購入しましたが、実際には使用できませんでした。この場合、このソフトウェアは、契約に適合しないことになります。互換性を有する特定のPCについて説明がなく、ただこのソフトウェアは互換性を有するであろうという自分の推測で購入した場合には、消費者は苦情を申し立てることができません。

8.4.6 「公開された意見表示」 

2002年規則は、消費者売買について新たな要件を規定しています。これにより、1979年SGA第14条の第2C項の後に、第2D項~第2F項が挿入されました。買主が消費者として売買する場合、またはスコットランドにおいては、売買契約が消費者契約である場合、第2A項に定める「関連する状況」には、売主である小売業者のほか、製造業者、生産者、輸入者などが広告やラベル等に物品の特性について述べた「公開された意見表示」(public statements)が実際に正確なものであり、小売業者が消費者と締結した契約の一部を構成する旨を2002年規則は定めています。ただし、小売業者が次のことを証明するときは、この意見表示に対する

23 SGA第14条第2A項。24 SGA第14条第2B項。25 SGA第14条第3項。

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責任はなく、また消費者は小売業者に救済を求める権利がありません26。(a) 小売業者がその意見表示を知らなかったという確実な理由、(b) 売買契約を結ぶ前に、この意見表示がすでに公開の場から撤回されたこと、または(c) 契約締結に際して、消費者がこの意見表示に影響されることがなかったこと。(事 例)製造業者が英国内で販売する同社のジェット・スキーについて、これが無鉛燃料で走行できる旨の広告を出していましたが、実際に無鉛燃料では動きませんでした。この場合、消費者は小売業者に救済を要求することができます。しかし、小売業者が、製造業者の広告について知らなかったという確実な理由を証明できる場合、消費者は、広告に示された物品の特性について、小売業者に救済を請求することができません。小売業者が知らなかったことを合理的に証明した例として、製造業者が外国または地方の広告に誤って表示した意見が考えられます。小売業者は広告の内容がすでに訂正されたと主張するけれども、その訂正記事が一般に知られていない業界誌に掲載されただけであることが証明された場合には、消費者を納得させることのできる証明にはなりません。消費者の注意を喚起できる有力な刊行物であることを要します。

8.4.7 使い古された物品 

物品は故障なくいつまでも使用できるものではありません。物品は普通に使用しても壊れることがあります。したがって、消費者は使い古した物品について売主(小売業者)に責任を負わせることはできません。物品の欠陥が後日発見されたとしても、売買時に、欠陥が存在したこと、または、物品について誤った記述(または説明)があったこと、あるいは、物品が最初から満足できる品質のものでなかったと思わせるような耐久性に欠けていたことが、救済の請求に必要とされます。(事 例)セントラル・ヒーティング・システムが稼動しなくなりました。このシステムのポンプに原因がありますが、購入してからすでに4年経過しており、平均使用年数が過ぎている場合、この故障は物品に固有の瑕疵(すなわち、潜在的に売買時に存在していた瑕疵)ではなく、通常の使用による耐用期間の終了によるものです。関連業界団体がこの種のポンプの耐用期間を平均4年であると報告している場合には、正にこのポンプはその寿命が尽きたことを意味します。けれども、通常の使用にもかかわらず、予想される耐用期間の半分位でこのポンプが動かなくなった場合には、このポンプに潜在的な瑕疵が存在していたか、あるいは、SGAの規定する「満足される品質」の基準を充たすような十分に耐えられる原料を使用しなかったために故障が生じたのか、消費者はその理由を販売元に問い合わせることができます。

8.4.8 耐久性

耐久性(durability)は難かしい概念ですが、上記の「使い古した物品」で示したように、物

26  SGA第14条第2D項および第2E項。

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品が契約に適合するものであるか否かを評価する際に考慮される要因の1つです27。いずれの物品にも限定された耐用年数があるので、物品の耐久性を考慮するときに、その耐用年数を常に銘記することが必要です。また、耐久性を考える時に、次の要因が含まれます。

● 価格(例えば、200ポンドのタイヤは、50ポンドのタイヤよりも長く使用できると期待されます。)● 不適切な使用(例えば、1万平方メートルの土地の草を刈り取るのに小型草刈機を使用するのは不適切です。)

● 高価な製品が、思い切ったコスト削減のために、安価な低品質の部品を代用して作成された場合、その製品は耐久性のテストに合格しないことが考えられます。

8.5 EU指令第3条に関連する問題

8.5.1 物品の拒絶

EU指令第3条は、消費者である買主の権利として、4つの救済方法を規定しています。同条の規定に基づいて、2002年規則の「規則5」は、1979年SGAに第5A編を追加する規定を設けています。物品に瑕疵がある場合、「合理的な期間」内に、消費者はこの物品を拒絶して、支払った代金の返還を要求することができます。1979年SGAには、「合理的な期間」の定義はありませんが、消費者は、物品が満足される品質のものであるか否かを検査するために合理的な期間が与えられなければなりません。実際には、裁判所はケース・バイ・ケースで判断しています。裁判所は公正な見解を得るために、例えば、消費者が売買直後に入院したため、直ちに物品を検査できなかったといったような、すべての関連する要因を考慮して、合理的な期間であるか否かを判断します。消費者が物品を拒絶する権利を行使する場合、彼はその旨を直ちに小売業者に通知しなけ

ればなりません。消費者は物品を小売業者に返送する義務はありませんが、小売業者が物品を回収できるようにしておかなければなりません。しかし、多くの場合、消費者は物品を返還して、積極的に小売業者に対して自分の苦情が正当なものであることを納得させ、速やかに解決しようとする傾向がみられます。

8.5.2 損害賠償の要求  

長年使用されているもう1つの救済方法は、消費者が物品を拒絶する権利がない場合、またはこれを選択しない場合に、損害賠償という補償を要求することです。損害賠償による補償は、現実損害(actual loss)に相当するもので、普通は(同じ年数を使用した物品の)修理または取替えの費用に等しい金額です。また、消費者は、欠陥のある物品が供給されたことにより生じる直接費用および間接費用を請求することができます。これには、例えば、物品の運送費用が含まれます。場合によっては、消費者はこの欠陥商品を第三者に修理させたとき、その費用を契

27 SGA第14条第2B項(e)号。

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約違反に対する補償として小売業者に請求することができます。しかし、売買時から相当の期間が経過しとき、これらの費用を証明するのが困難なため、この救済方法はあまり勧められません。物品に関する保証(guarantee)に基づいて、クレームをするのが最も容易な方法です。(事 例)購入してから4年経過した置時計が、固有の瑕疵により故障した場合、消費者は、その修理に要する費用または同じ型の4年経過した置時計(もちろん、順調に動いている)を購入する費用を請求することができます。

8.5.3 修理または取替え 

長年にわたり、小売業者は、欠陥のある物品の修理または取替えを自主的に行ってきました。このような救済方法に対して、2002年規則により法律上の地位が与えられました。言い換えると、2003年3月31日以降、購入した物品が契約に不適合である場合、消費者は2002年規則に基づいて物品の修理または取替えを要求することができます。(事 例)購入してから5年になるピアノに固有の瑕疵があることが発見された場合、この消費者は、修理を他の業者に依頼するための費用を請求する代わりに、小売業者にこのピアノの修理を要求することができます。あるいは、小売業者が新品および中古のピアノを取扱っている場合、この方法に代えて、5年使用したピアノと同じ種類または類似した中古のピアノが見つかれば、これと取替えてもらうことができます。

8.5.4 「合理的期間」と「著しい不便」 

修理および取替えは、「合理的期間」内に、かつ消費者に「著しい不便」を与えることなく行われなければなりません。もしこれが不可能であるときは、消費者は他の救済方法を選択できます。小売業者は、物品の運送費用などを含む、修理または取替えに要する一切の費用を負担しなければなりません。苦情はケース・バイ・ケースで、すべての関連する状況を考慮して処理されますが、関連する状況には、次のものが含まれます。(a) 物品の特性、(b) 物品が購入された目的、(c) 特定の顧客にとって、その物品の重要性。(事 例1)「合理的期間」を定義することは難しいことですが、ここでは、特に、物品を拒絶するための「合理的期間」とします。例えば、ウェディング・ドレスの修理の場合、結婚式までの日数が重要で、この短期間にその修理が可能であるか否かが主要な決定要因となります。修理ができないときは、むしろ取替えが安全かつ確実な方法です。

(事 例2)電気ドリルの修理の場合には、ウェディング・ドレスと異なり、修理に要する日数はそれほど重要でないでしょう。また、修理の間、手動ドリルを使用する可能性が生じることも考慮しておく必要があります。

(事 例3)電気冷蔵庫の修理の場合、これは日常生活にとって重要な家庭用品なので、代替品

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がないと困りますが、救済の一部として、修理期間中、貸出し用の代替品を利用することができるので、「著しい不便」の問題を避けることができます。

8.5.5 「不相当な費用」 

小売業者は、代替品と取替えることが不相当(disproportionate)な費用がかかる場合、修理という救済方法を選ぶことができます。あるいは、その逆の場合もあります。ある救済方法が他の救済方法と比較して、不合理な費用を小売業者に負担させる場合、これは不相当であるとみなされます。これを判断する際に、物品が契約に適合した場合に、その物品が有したであろう価額、不適合の程度、および他の救済方法が消費者に著しい不便をかけることなく行うことができるか否かという点などが考慮されます。(事 例1)4年間使用したテーブルは僅か50ポンドの価値しかありませんが、これを修理すると、

修理代が75ポンドになると仮定します。この場合、小売業者は修理を断って、例えば、4年間使用したのと同じようなテーブルを在庫品の中から探すか、あるいは、迅速に他から入手して、これを代替品として提供することができます。小売業者が、代替品の在庫がなく、また迅速に他から入手することができないときは、修理および取替えという救済手段を断って、代金の一部を返還するという救済を提案できます。

(事 例2)注文したズボンの縫い方に問題がある場合、この欠陥を合理的期間内に、かつ消費者に不便を与えることなく修理が可能であるときは、顧客は取替えを要求することができません。

8.5.6 代金の一部または全額の返還

修理または取替えが実際的でない場合、2002年規則は、消費者の支払った代金から、その一部または全部を減額(すなわち、返還)するという救済方法を規定しています。全部または一部の返済を考慮する際に、消費者が、購入してから補償を要求する時までの間に、この物品から得たであろう利益を計算する必要があります。(事 例)脱水機(spin dryer)を4年前に購入した時、価格が99ポンドであったと仮定します。その平均耐用年数の3分の2が経過したところで、固有の瑕疵が発見されました。小売業者は、この脱水機の平均耐用年数がまだ3分の1残っているので、消費者が代金から減額を求める場合の金額は大体33ポンドが適切であると判断するかも知れません。しかし、一般に、物品は均等に減価するのではなく、購入後2,3年で急激に減価するという事実も考慮されるでしょう。他方、欠陥のある物品を購入した消費者は、この物品を購入した時から救済を要求する時まで、常にトラブルに悩まされてきたので、この間に、正常な物品から享受し得たであろう恩恵を全く得ることができなかった場合、小売業者は代金の全額返還を要求されることがあります。

8.5.7 非消費者によるクレーム 

2002年規則の「規則2」は、「消費者」とは、その業務・営業・職業とは無関係な目的のために、

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本規則が適用される契約の当事者となるすべての自然人を意味すると定義しています。したがって、非消費者は、2002年規則に定める4つの救済方法(すなわち、修理、取替え、代金の一部または全部の返還)を要求することができません。(事 例)階段に取り付ける「いす型の家庭用昇降機」(stairlift)を、コーヒーショップや介護施設に設置した場合、購入者は、消費者のふりをして小売業者に対して、2002年規則に基づく修理または取替えを請求することができません。このようなクレームは直ちに拒絶されます。この場合には。通常のB to B による物品売買契約に基づいて紛争の処理が行われます。

8.6 その他の問題

8.6.1 領収書  

消費者が救済を求める場合、小売業者は、消費者がこの物品を自分の店で、何時購入したかを確認する権利があります。この場合、購入時の領収書(sales receipt)はこれを証明する1つの方法です。あるいは、売買の内容を詳細に記載したクレジット・カードの明細書も同様の機能を有します。領収書は法律による要件ではありませんが、消費者は、後日必要になることを考えて、領収書を大切に保存しておくことが大切です。

8.6.2 貸方票   

返品や代金の値引などの証として、売主が買主に貸方票(credit note)を発行することがあります。消費者が上述の救済を求めた場合に、消費者は貸方票を受領する必要はありません。また、消費者が全く救済権を持たない場合でも、貸方票が発行されることがあります。小売業者は、消費者の考えが変わることがあり得るので、これを消費者に発行することが望ましいと思われます。貸方票はあくまでも任意のものです。小売業者はこれを発行する義務がなく、また消費者もこれを受領する義務がありません。しかし、両当事者にとって、これが役立つことがあります。これには、通常、取引条件が記載されています。

8.6.3 制限期間   

イングランド、ウェールズおよび北アイルランドでは、損害賠償の出訴期限は6年です。また、スコットランドでは、問題が発見された時から5年です。制限期間の満了後は、1980年制限法28により、裁判所に提訴することはできません。これは物品の耐久性の要件ではなく、取引に関連して生じる請求を法的手段に訴えて実現できる期間を意味します。(事 例)消費者は、物品が契約に不適合であることを主張して、売買後6年まで、小売業者に

対する苦情を裁判所に提訴することができます。しかし、売買後5年ないし6年になると、低価格商品の耐用年数は残り少なくなります。例えば、5ポンドの腕時計は500ポンドの腕時計

28  The Limitation Act 1980.

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より耐用年数が短いでしょう。制限年数の終わりに近いところで提訴するのは、歓迎されないかもしれません。同様に、腕時計の電池が切れて、時計が止まった場合、その腕時計をかなり長く使用したとしても、その時計が契約に適合しないというクレームの事由にはなりません。

8.6.4 2年間の保証神話 

2002年規則は「2年間の保証」というものを規定していません。これは、EU指令第5条第1項の「制限期間は引渡後2年間より短い期間でないものとする」旨の規定から生じたと思われる神話です。イギリスにおける制限期間(limitation period)は法的手続を開始する時期を制限するものです。これは保証期間(guarantee period)とは全く異なります。また、これは、EU加盟国すべてにおいて、上記の4つの救済について最低2年間の制限期限を定めていることを意味するものでありません。また、消費者はほとんどこの期間内に物品が契約に適合しないことを証明しなければならないので、この期間を「保証」と称することはできません。

8.6.5 挙証責任  

紛争の場合、物品が契約に合致しないことを証明するのは、通常、消費者の責任です。これは、消費者が合理的期間内に物品を拒絶するか、または損害賠償を請求する場合に確立したものです。しかし、2002年規則は、消費者が売買後最初の6ヵ月以内に修理、取替え、代金の一部返還または全額返還を請求するときは、小売業者は、訴訟において当該物品が契約に適合する旨を証明する責任があります。これは「逆挙証責任」(reversed burden of proof)と呼ばれています。しかし、6ヵ月以後は、売買時に物品に瑕疵があった旨を立証するのは消費者の責任です。最初の6ヵ月が経過した後で消費者が救済を要求する場合は、最初の6ヵ月以内に物品に瑕疵が存在したことを証明する責任は消費者にあります。物品に瑕疵があることを発見した日時を証明するのは、消費者にとって困難ですが、簡単な解決策は、物品の瑕疵を発見した場合、消費者は速やかにその旨を小売業者に通知することです。買主が、物品の瑕疵を発見した時から合理的な期間内に売主に対して瑕疵について明示した通知を与えない場合、買主はこれを理由に救済を請求する権利を失うことがあります29。

(続)

29 1980年国際物品売買契約に関する国連条約の第39条を参照。

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記事4. 国連CEFACTからのお知らせ

4.1 2012年11月26日

国連EDIFACTデイレクトリの2012年後期版(D12.B)が機関承認され、下記のwebsiteのページで閲覧可能となりました。

http://www.unece.org/tradewelcome/areas-of-work/un-centre-for-trade-facilitation-and-e-business-uncefact/outputs/standards/unedifact/directories/download.html

4.2 2012年11月16日

国連欧州経済委員会(UNECE)と欧州電気通信標準化機構(*ETSI)は、電気通信の分野で覚書を締結しました。これにより両者は、例えば、電子的署名、XML形式の書類やメッセジの安全性、情報通信や放送と言った双方に関心ある分野で、技術開発における重複を避けつつ、更なる標準化に向けて相互に協力していくこととなりました。

*ETSI:ソフィア・アンチポリス(フランス)を拠点として、欧州における情報・通信関係の標準化を進めている機関

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JASTPRO 第38巻 第9号 通巻第411号

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平成24年12月25日発行 JASTPRO刊12-10

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s輸出入関係手続きに関係する業界団体等

s輸出入関係手続きに〔国内物流〕関係する情報源と用語集

s国際空港の公式ページ

s国際貿易港の公式ページ

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s貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化活動を行なっている海外組織・団体

s貿易振興・簡易化や電子商取引の標準化に関係する国際機関

sその他の組織・機関

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当協会の広報誌は、2007年4月より印刷版に加え電子版(PDF)を、ご希望の皆様方に提供して

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致しました。

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までに次の内容を下記のアドレスにお知らせくださいますようお願いいたします。

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   業務第三部長 石垣 充

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