クラウドファンディング

13

Click here to load reader

Upload: masakazu-masujima

Post on 13-Jun-2015

2.765 views

Category:

Documents


2 download

TRANSCRIPT

Page 1: クラウドファンディング

クラウドファンディングの出現と展開

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto

July 27, 2012

MASAKAZU MASUJIMA

Page 2: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto

クラウドファンディングは、直接金融型ソーシャル・ファイナンスの一類型

ソーシャル・ファイナンス

間接金融型

直接金融型

(コミュニティ・ファイナンス)

マイクロ・ファイナンス

無尽/マイクロ・インシュランス等

貸付

出資

寄付/購入

(P2Pレンディング)

(クラウドファンディング)

(クラウドファンディング)

体系的位置づけ

Page 3: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto

直接金融型ソーシャル・ファイナンス出現の背景にはIT技術の進歩

による人々の新たなネットワーク化と小口取引費用の低下がある。

<P2Pレンディング出現の背景>

(伝統的貸付)

金融

仲介

機関

小口預託

資金

需要

信用創造/情報生産

モニタリング

ウェ

ブ・プ

ラッ

トフ

ォー

資金

需要

(P2Pレンディング)

ウェブ情報開示

アルゴリズムレーティング

レピュテーション

小口直接貸付

情報生産コスト、モニタリングコスト等小口では負担できない(フリーライドが生じる)コストをIT技術で低減

出現の背景①

Page 4: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto

<クラウドファンディング出現の背景>

(伝統的ファンドレイズ)

資金

需要

マーケティング(説得)

寄付/購入(投資)

(クラウドファンディング)資

金需

要者

共感

共感

共感共

ストーリー

寄付/購入(投資)

個別又はマスへの説得・マーケティングに替えてSNSで組成されたネットワークを活用した共感の伝播

出現の背景②

メデ

ィア

メデ

ィア

Page 5: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto

クラウドファンディングはソーシャル性を活用して資金拠出者の対価性(資本コスト)を下げる傾向がある。

資金拠出が共感に基づく場合、共感の根拠となる資金需要者と資金需要に関するストーリーが真実である限り、資金拠出者が拠出に際して求める給付(対価)は、共感に基づかない拠出よりも小さいことが許される可能性がある。

※共感による補償(給付受領)

知り合いからのお勧め(「いいね」)による拠出インセンティブ、資金受領者に対する信用の補完が発生する可能性がある。

成立の前提として、①資金需要者自身及び資金需要に対する正しい情報開示と、②不公正な行為の排除(公正なプラットフォーム運営、資金拠出者の拠出判断を歪める行為の禁止)が不可欠

市場規律と同じ

特徴とその前提

Page 6: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & MatsumotoJOBS Act におけるクラウドファンディング①

Jumpstart Our Business Startups Act (JOBS Act) Title Ⅲは、投資型クラウドファンディングの募集規制、取扱者の規制を緩和。

非上場企業が一般投資家に登録なく少額募集することを許容。

SECの規則制定期限は2012年12月31日。

クラウドファンディングを含めた12ヶ月内の証券発行総額は$1MMを上限。

※ クラウドファンディングを用いると前後の他の私募を統合して金額制限に服する。

1個人投資家あたり12ヶ月内に発行できる証券の額は以下の上限に服する。

- 年収・純資産が$100,000未満の投資家:$2,000又は年収・純資産の5%のうち大きな方

- 年収・純資産が$100,000以上の投資家:$100,000を上限に、年収・純資産の10%

発行者は、SEC・自主規制機関の登録を受けたブローカー又は「ファンディング・ポータル」を通じて販売しなければならない。

Page 7: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & MatsumotoJOBS Act におけるクラウドファンディング②

取扱者は発行者情報やリスクの開示などSECが定める行為規制に服する。

発行者は、発行に際し及び年次で、募集規模に応じて財務情報をSECと投資家に開示する義務のほか、SECの規則に定める開示と行為規制に服する。

- $100,000以下の募集:税務申告書、未監査財務諸表(社長宣誓付)

- $100,000ー$500,000の募集:独立公認会計士によるレビューを経た財務諸表

- $500,000超の募集:監査済み財務諸表

発行者、ブローカー、ファンディング・ポータルの不適格者要件をSEC規則で定める。

投資家向け開示の重大な誤り、不開示に対しては、投資家から発行者への損害賠償(Section12(a)(2)類似)

Page 8: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto(参考)取扱者の規制

ブローカー及びファンディング・ポータルは、SECと自主規制機関への登録が必要

SECが適切と認めるリスク開示と投資家向け啓蒙事項の開示

以下の事項を投資家から確認しなければならない。

- 投資家向け啓蒙事項を読んだこと

- 投資が全損するリスクがあることを理解している旨の確認

- (i)新興企業への投資リスクの程度、(ii)流動性リスク、(iii)その他SECが適切と認める事項を理解している旨を示す質問への回答

取締役、執行役、⑳%以上株主の履歴、犯歴確認等SECが定める詐欺リスクを減らすための措置を講じなければならない。

発行者に求められる投資家への開示を募集の21日以上前から開始しなければならない。

目標募集額が集まらなければ払込は実施されず、それまでの間は投資約束の撤回を許容しなければならない(all or nothing)。

投資家の個人情報保護のための措置見込投資家に関する情報提供者に対する利益供与の禁止

発行者の経済的利益に対するブローカー、ファンディング・ポータルの取締役、執行役、パートナー等への参加禁止 等

Page 9: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto(参考)発行者の規制

SECに以下の事項を届出のうえ、投資家にも提供

- 会社の基本情報(会社名、住所等)- 取締役、執行役、20%株主の氏名

- 発行者の事業計画

- 以下の財務情報又は財務諸表

(i)募集額$100,000以下:社長による真正性・完全性証明

(ii)募集額$100,000-$500,000:独立会計士によるレビュー

(iii)募集額$500,000超:監査

- 資金使途

発行者による広告禁止(ブローカー、ファンディングポータルへの通知は可)

- 目標募集額、募集期限、目標募集額の達成状況の定期的報告

- 最終価額、開示事項を発行前に書面開示、投資家に対する撤回機会の付与- 会社の所有者、株主構成 等

プロモーターへの報酬開示

SECへの年次報告書の提出、事業報告・財務諸表の投資家への提供

その他投資家保護、公益の観点からSECが定める規則の遵守

Page 10: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumotoシリコンバレーのベンチャー実務を踏まえた検討

現行のシリコンバレーのベンチャー実務を念頭に置いた場合、利用範囲は限定的との意見も。但し、イノベーション発生の可能性を軽視してはならない。

シリコンバレーのスタートアップ企業は、$1,000,000程度の「少額」であれば、VC等既存の資金提供者から比較的容易に調達可能。

VCから調達できない事業を行う会社による資金調達の道を開く可能性

- 夢はあるが事業の不確実性が高い

- 事業モデル確立まで長期間を要する(ファンドの償還期間と合わない)

レモン市場(VCから調達できない低質企業の調達の場)としないための工夫が必要

- 営利性の度合いが強くない(スケールしない)

VCによるスクリーニングを経ていない分、エグジット到達の可能性はVC投資を受けるスタートアップ企業より低くなるのではないか。

Page 11: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto日本への示唆①

投資型クラウドファンディングのプラットフォームの事業性を検証できれば、寄付/購入型を補完する第三のクラウドファンディング市場

を立ち上げることができる可能性

上限1億円の調達で10%手数料と仮定した場合、クラウドファンディングのプラットフォーム運営は、第一種金融商品取引業者の事業として成立するか?

SEC規則並みの発行者の開示内容と行為規制、プラットフォーマーの行為規制を、最低限、日証協ルールとして定める必要。

「交渉相手のいない発行」となることから、発行する株式の内容、発行価額につき何らかの規律が必要なのではないか。

株式以外の証券(特に集団投資スキーム)の取扱い等については、SECの投資契約に関する動向を注目か。

* 通常行われるVCとの交渉がなく、資本市場の評価にも晒されない

Page 12: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumoto日本への示唆②

市場規律の公正と適切な投資条件設定を確保できる準公的プラットフォーマーが存在すれば、VCがカバーできないシードステージの中規模資金調達の実現に道を開く可能性

我が国ベンチャー企業の資本政策上の構造問題として、資金需要が強いシードステージの資本供給の決定的不足が挙げられる。

反社会的勢力排除の仕組み、株主管理コストの低減策(無議決権株式等)の検討が必要

(経済産業省委託調査事業「平成23年度ベンチャー企業等における資本政策に関する調査報告書」)

発行者の適切なデューデリジェンス、バリュエーションを含む投資条件の適切な設定を確保する準公的プラットフォーマーの存在が前提

シードステージで1億円を上限として調達ができれば、次のVC調達ステージ、政策金融活用ステージまでつなぐことができる可能性

Page 13: クラウドファンディング

©2012 Masa Masujima all rights reserved

Mori Hamada & Matsumotoご質問等

(連絡先)増 島 雅 和

[email protected]

(注) 本プレゼンテーションの内容は個人としての見解であり、所属する組織の見解を代表するもの

ではありません。