研究推進と人材育成のポジティブな関係を考えるフォーラム(岡本発表分)...
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例1: 荒井,1995 より抜粋・国立の講座制の研究室の場合は教員、博士・修士・卒研生など合計20~25名.
教員研究室の場合でも10~15名.(修士課程研究科の場合は5~7名)企業からの委託研究生、留学生、進学待機学生などもいる.
・博士のいる研究室では、たいてい博士の数に近い研究テーマが同時並行で走っており、助手と博士たちがサブチームのキャップをつとめ、教員(教授または助教授)がその複数のチームをとりまとめる。(工学系研究室のピラミッド組織)サブチームの構成は博士(または助手)1名、修士1名、卒研生1~2名.
研究室の教育・研究活動は専攻、教員個人の方針により異なる。サブチームの中では、教員の指導のもとに博士と修士がテーマを分担し、卒研生は博士のテーマの一部を担う。教育は研究室での実験や作業を通じて技能を修得するプロセスと、輪講とよばれる、原書講読・研究ディスカッションを通じて専門知識を修得するプロセスに分かれるが、教員の指導は研究室全体のゼミや学生個人による定期的な研究報告の際に行われる。学生が効率的に学習するには早く研究室の雰囲気に溶けこみ、いろいろな機会を通じて研究室の先輩からさまざまな専門知識、技能を教わり、身につけるのが一番である。学生たちは研究室へ所属した翌日から、一定の「勤務形態」にしたがって学習することを義務づけられる。勤務形態はそれこそ専攻分野や教員個人の方針によって多様だが、研究室のなかでは室員全員が一定のスケジュールを守るよう求められる。工学系であれば休日を除く毎日、朝から晩(ときには夜中)までを研究室で過ごすようになる。大学院の講義や演習には実験や輪講の合間にでかけ、研究室にもどってはまた実験にとりかかる。
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荒井克弘:専門職業教育としての大学院,市川昭午・喜多村和之編「現代の大学院教育」,玉川大学出版部,1995.
例2:川嶋・丸山,1999
日本の高等教育における講座制組織は重要な意義をもっている。講座は、教育、研究、予算配分、運営にとって基本的組織単位である。<略>入学時から、学生は講座主任教授や他のスタッフと密接に結びつくことになる。その関係は個人的である。通常教授の姓が講座名となっている。実際、講座は家族みたいなもので、教授は父親、助教授は母親、助手は兄や姉で、院生は末っ子である。兄弟のように、助手と院生はたがいに親密に結びつく。多くの院生が指摘するには、助手は、日常の討論を通じて研究テーマの選択に影響を及ぼす。問題が起こったときしばしば院生は助手に相談する。講座は家であり、院生の日常生活は、講座を中心に展開する。<略>これとは対照的に、とくに実験分野の物理学や工学の院生は、交流は継続的であり集団的である。実験は教授、助手、院生のチーム、または助教授、助手、院生のチームでなされる。教授、院生、ときには学部学生は、1日10時間以上ともに仕事をし、しばしば深夜にまで実験に従事することになる。院生は、ハードワークと協調の過程を経ることにより、勤勉性、時間厳守、問題解決能力、講座への忠誠心といった特性を養うことになる。これらの個人的特性は、企業が求めているものでもある。<略>対照的に工学の教員と院生の関係は、より家族主義的であるといえる。教授は家長として、スタッフや院生の研究を調整する。彼らは実験室で長時間共同研究に従事するので、工学教授は、院生の能力を評価でき、それに基づいて彼らにいろいろな企業を紹介するか、または博士課程へ進学させるか判断できる。
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川嶋太津夫・丸山文裕:日本の大学院教育―工学,物理学,経済学,歴史学―,バートン・クラーク編「大学院教育の研究」,東信堂,1999.
前置きが長くなりましたがここから我々の
研究紹介 概要:2009.7.8-8.10に全国の工学系研究室を調査
方法:科研費工学系分野に2009.4時点で複数年度採択された研究者が所属する研究室189に教員・学生用質問紙を郵送
結果:73研究室(約800名)が回答 内容:
研究室の実態 研究室の成果?
※規模や滞在時間等、基本的なデータも.
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誰と何をしているか、研究室内の場にどんな機能があるか、研究テーマをどうやって決めるか、指導・指示のスタイルは??
成長実感満足度研究業績
分析準備:尺度構成
そして研究室の実態との相関を分析.結果は…
知識
研究遂行能力
学術コミュニケーション能力
研究姿勢
自分の研究
研究室メンバー
指導教員の研究指導
研究室生活
何らかの研究業績をあげる
査読無しより査読有りの研究業績をあげる9
成長実感
満足度
業績
膨大になるので省略します(スミマセン).
一例としては
◆研究姿勢の成長実感
|相関
◆研究室内の他者との関わりや、研究室全体で構成員の状況等を共有しながら研究を進めるプロセス
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b SE β・主成分:同級生とは研究よりも授業やインフォーマルな活動を一緒に行う 0.40 0.09 0.43
・主成分:新しい視点から研究を見直すことはゼミよりもゼミ以外で行う 0.50 0.11 0.52
・主成分:研究の方向性の検討・調整は学生個人が主体となって行わないよりは学生個人が主体となって行う
-.028 0.09 -0.30
・主成分:研究の進捗報告はゼミよりもゼミ以外で行う -0.35 0.12 -0.34
・主成分:専門図書・論文は研究室の誰かと一緒に読む 0.29 0.09 0.31
・学年が上がるにつれてより多くのことを考慮して研究テーマを決める 0.40 0.15 0.26
注:第1段階R2=0.62,第2段階ΔR2=0.06,第3段階ΔR2=0.15 有意水準5%
膨大になるので省略します(スミマセン).
一例としては
◆指導教員の研究指導への満足度
|相関
◆学生の研究に教員が関与する場面の存在が重要。
直接の研究指導に限らない部分が、学生が研究を進めるのに適した環境かどうかも関連。
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b SE β・主成分:研究のノウハウやコツを研究室外よりも研究室内で知る 0.40 0.09 0.42
・主成分:新しい視点から研究を見直すことは教員主導の場ではなく学生が主体となる場で行う
-0.31 0.10 -0.32
・主成分:個人的な研究相談は研究室の同級生よりも教員・上級生・下級生にする
0.21 0.09 0.22
・主成分:専門図書・論文は研究室の学生同士よりも教員-学生で一緒に読む
0.25 0.10 0.26
・主成分:研究の役に立つ知識は大学生活の中で得られないよりも大学生活の中で得られる
0.21 0.10 0.21
注:第1段階R2=0.45,第2段階ΔR2=0.01,第3段階ΔR2=0.25 有意水準5%
膨大になるので省略します(スミマセン).
一例としては
◆修士が何らかの業績をあげる
|相関
◆研究を研究室内の小グループや学生で進める体制が重要。研究室での研究の枠組みや方向性の確立も関連。
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b SE β・ゼミの実施回数/年 -0.01 0.00 -0.25・主成分:学生の研究テーマは教員主導で、学生の特性や能力が考慮されて決められるよりも学生主体で、研究室や自分の他の研究、社会的ニーズを考慮して決める
-0.35 0.09 -0.39
・主成分:新しい視点から研究を見直すことは大学外よりも学内・研究室内で行う
-0.28 0.10 -0.28
・主成分:個人的な研究相談は同じ大学・異なる研究科の誰かにする 0.20 0.10 0.22
・主成分:メンバー間の情報・アイデア共有はグループミーティングよりもゼミで行う
-0.23 0.10 -0.25
・主成分:調査・実験・演習の実施は研究室の学生同士よりも教員-学生で行う -0.22 0.10 -0.25
注:第1段階R2=0.11,第2段階ΔR2=0.27,第3段階ΔR2=0.27 有意水準5%
いったん知見を簡単にまとめると研究を小さな単位で効率的に進める体制とともに、各構成員の研究について全体の共有機会で位置づけ・意味を理解させ、研究の価値観や知識、技能を伝えると良い。
明示的な指導・指示、形式化された知識・ノウハウの伝達への依存より、研究室の相互関係の中の研究・学習活動を支える機能(知識・技能や精神面で)が好ましい。
研究室の活動を新たな視点で見直し、構成員が自分の不十分または優れた点を認識できるような、外との関係を持つべき。
新たに加わる学生の興味・関心と、現在の研究を調整して、学生が能動的に研究に取り組み、また、研究室としても研究活動の幅を広げられるようにするべき。 13
結果2調査対象の研究室を、以下の
10項目を基準に3タイプに分類。
知識の成長実感研究遂行能力の成長実感学術コミュニケーション能力の成長実感研究姿勢の成長実感自分の研究への満足度研究室メンバーへの満足度指導教員の研究指導への満足度研究室生活への満足度何らかの研究業績をあげる査読無しより査読有りの研究業績をあげる
結果は… 14
タイプ1:研究業績追求型
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特徴
・学生の研究室滞在時間/日が短い。(2)・研究室メンバーへの満足度が低い。(2)・教授・准教授・講師と一緒に活動しない。(2)・昼食・夕食は研究室の学生同士でする。(2)・修士は査読有りの研究業績をあげる。(2)(3)・メンバーの情報・アイデア共有はゼミよりも
グループミーティングで行う。(2) (3)・研究遂行能力の成長実感が高い。(3)・修士は何らかの研究業績をあげる。(3)
学生の滞在時間は短いが修士が研究業績をあげる。教員よりは学生と、全体よりはグループで活動。
該当研究室は14 ()は有意差(5%水準)があった比較対象のグループ。画像はイメージ
タイプ2:個人成長志向型
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滞在時間が長く、自分の研究、メンバーへの満足度も成長実感も高いが研究業績は芳しくない(査読有りではない)。学生より教員と、グループより全体で活動。
特徴
・学生の研究室滞在時間/日が長い。(1)(3)・研究室メンバーへの満足度が高い。(1)(3)・教授・准教授・講師と一緒に活動する。(1) (3)・昼食・夕食は研究室の教員-学生でする。(1)・修士は査読無しの研究業績をあげる。(1)(3)・メンバーの情報・アイデア共有は
グループミーティングよりもゼミで行う。(1)・調査・実験・演習の実施は研究室の誰かと一緒に行う。(3)・ゼミ及び学会発表の準備は教員-学生か上級生-下級生で行う。(3)・論文の執筆に関する具体的な作業は教員-学生で行う。(3)・知識、研究姿勢、研究遂行能力、学術
コミュニケーション能力の成長実感が高い。(3)・研究室の予算規模が大きい。(3)・自分の研究への満足度が高い。(3)・修士は何らかの研究業績をあげる。(3)
該当研究室は18 ()は有意差(5%水準)があった比較対象のグループ。画像はイメージ
タイプ3:不活発型
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特徴
・研究遂行能力の成長実感点が低い。(1)・修士は何らかの研究業績をあげない。(1) (2)・修士は査読無しの研究業績をあげる。(1)・メンバーの情報・アイデア共有は
グループミーティングよりもゼミで行う。(1)・研究室の予算規模が小さい。(2)・知識、研究遂行能力、学術コミュニケーション能力、
研究姿勢の成長実感が低い。(2)・自分の研究への満足度が低い。(2)・調査・実験・演習の実施は研究室の人と一緒に行わない。(2)・ゼミ及び学会発表の準備は同級生同士で行う。(2)・論文の執筆に関する具体的な作業は学生同士で行う。(2)・教授・准教授・講師と一緒に活動しない。(2)・研究室メンバーへの満足度が低い。(2)・修士は査読有りの研究業績をあげる。(2)
該当研究室は35 ()は有意差(5%水準)があった比較対象のグループ。画像はイメージ
成長実感が低く、研究業績も芳しくない(査読有りではない) 。研究室の活動実態があまりなく、特に教員との関わりが尐ない。