土壌微生物と土の物理性
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土壌微生物と土の物理性
関 勝寿
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土壌微生物の影響をめぐって
• 1グラムの土壌中には、数億個体、 1万種類ほどの土壌微生物がいる。
• 土壌微生物の影響によって、土壌の透水性が低下するとされている。本当だろうか?なぜだろうか?
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Allison ( 1947) の透水性変化概念図
1. 土粒子の分散2. 封入空気の溶解3. 微生物の増殖や代謝生成物質による間隙の目詰まり(クロッギング)
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基質とエネルギー源を加えたときのクロッギング現象
Frankenberger et al. 1979
基質 : グルコースエネルギー源 : KNO3
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クロッギング現象の実際
• 畜産排水ため池の浸透速度低下• 井戸の揚水効率低下• 浄化槽の浄化効率低下• 用排水路の浸透抑制技術• クレイライナー• バイオレメディエーション (地質汚染浄化 )
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発表の概要
• クロッギング現象の解明長カラム実験短カラム実験
• クロッギング現象の温度依存性• 透過反応壁
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発表の概要
• クロッギング現象の解明長カラム実験短カラム実験
• クロッギング現象の温度依存性• 透過反応壁
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長カラム実験 (Seki et al. 1996)
土壌試料:関東ローム水田耕盤室温: 30℃
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測定項目
• 飽和透水係数(フラックスと間隙水圧から)
• グルコース濃度• 酸化還元電位• 微生物数(希釈平板法) 細菌:エッグアルブミン寒天培地 糸状菌:ローズベンガル寒天培地
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殺菌剤を流したときの透水係数変化
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グルコース溶液を流したときの透水係数変化
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微生物の分布
0
2
4
6
8
10
121.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08
(1g )微生物数 乾土あたり
(cm)
上端からの深さ
細菌糸状菌
糸状菌の増殖
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長カラム実験のまとめ
• 栄養水を流したときに表面 1cmに飽和透水係数が 100分の 1程度まで低下する層がある。
• 糸状菌が増殖することがその原因の1つとなっているようだ。
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発表の概要
• クロッギング現象の解明長カラム実験短カラム実験
• クロッギング現象の温度依存性• 透過反応壁
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短カラム実験 (Seki et al. 1998)
• カラム長を 1cmとして、表層 1cmで起きている現象を集中的に調べる。
• 細菌の増殖、糸状菌の増殖、微生物によるガス発生が、それぞれ単独で起きる時の透水係数の低下を見ることで、それぞれが透水係数低下に及ぼす影響を明らかにする。
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実験方法実験条件
土壌試料:関東ローム水田耕盤温度: 30℃溶液 1. グルコース 2. グルコース+細菌殺菌剤 3. グルコース+糸状菌殺菌剤
測定項目飽和透水係数気相率
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透水係数変化
1. 120日間で 100分の 1から1000分の 1程度にまで低下する
2. 低下速度は殺菌剤無添加と細菌殺菌剤がほぼ等しく、糸状菌殺菌剤添加が非常に速い(細菌と糸状菌の拮抗関係)
気相率変化
30%にまで上昇
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短カラム実験のまとめ
• クロッギングは、細菌と糸状菌の増殖が拮抗して起きる。
• 微生物により気相率 30%相当のガスが発生し、気泡による間隙の閉塞が透水係数を低下させた。
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発表の概要
• クロッギング現象の解明長カラム実験短カラム実験
• クロッギング現象の温度依存性• 透過反応壁
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温度依存性 (関ら , 2005)
1. 微生物の活性は温度条件に影響される。
2. 温度がバイオクロッギングに及ぼす影響は? 23℃と 1.5℃における浸透実験 (Guputa and Swartzendruber, 1962)
3. 浸透速度の季節変動夏 > 冬 (Constantz et al., 1994, Cerda, 1999, Basher and Ross, 2001)夏 < 冬 (Battikhi and Suleiman, 1999)
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研究の目的
温度条件がバイオクロッギングを原因とする透水係数低下に与える影響を明らかにすること
実験条件
温度 15,20,25,30℃
浸透期間 4、7、10日間連続浸透
供試土壌 豊浦砂 (ρd = 1.52 Mg m-3)
浸透溶液 100ppm グルコース水溶液
フラックス 2.55 ×10-5 m s-1
装置図
透水係数の変化
-6
-5
-4
-3
0 2 4 6 8 10
Time (days)
Log
[Ks
(m s-1
)]
15℃20℃25℃30℃
温度と透水係数変化速度の関係
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浸透期間と上層の有機物量
0
1
2
3
4
0 2 4 6 8 10Time (days)
Loss
on
igni
tion
(mg
g-1)
15℃20℃25℃30℃
26
y = 119.09e-2.7306x
0.001
0.01
0.1
1
0 1 2 3 4 5
Loss on ignition (mg g-1)
Rel
ativ
e hy
drau
lic c
ondu
ctiv
ity
有機物量と相対透水係数との関係
27
0
10
20
30
40
0 2 4 6 8 10Time (days)
Numb
er of
bacte
ria x
105 g-1
sand 15℃
20℃25℃30℃
0
10
20
30
40
0 2 4 6 8 10Time (days)
Numb
er of
fungi
x 104 g-1
sand
15℃20℃25℃30℃
細菌 糸状菌
浸透期間とカラム上層の微生物数
7日間連続浸透における微生物数
0
5
10
15
20
25
30
35
15 20 25 30Temperature (℃)
Num
bers
×10
5 / g d
ry sa
nd
上層中層下層
細菌
0
10
20
30
40
15 20 25 30
Temperature (℃)
Num
bers
×10
4 /g
dry
sand
上層
中層
下層
糸状菌
温度依存性について分かったこと
1. クロッギングを原因とする土壌の透水性低下は温度依存性があり、 25℃で透水係数低下速度が最大となった。
2. 有機物量の増加は 25℃で最大となり、有機物増加量と透水係数低下の間には相関が見られた。
3. 細菌数の増加は 30℃で最大となった。 糸状菌数の増加は 25℃で最大となり、透水係数低下と同様の傾向を示した。
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発表の概要
• クロッギング現象の解明長カラム実験短カラム実験
• クロッギング現象の温度依存性• 透過反応壁
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しかし、微生物が集積した部位に水が流れにくくなる現象 (クロッギング) が、浄化効率に重要な影響をあたえる可能性がある。
帯水層
汚染地下水
透過反応壁
Nutrient injection well
汚染サイトの下流に栄養を注入することで微生物活動を促進したバイオバリアーを作り、汚染物を自然の勾配で通過させることで分解、除去する。
地下水勾配
透過反応壁 (Seki et al., 投稿中 )
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研究の目的
透過反応壁により透水性が下がる領域が発生した時に生じる、 2 次元的な流れを明らかにする。
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実験の概要
カラムに試料を充填して、屋内透水実験を行った。
乾燥密度 1.59g/cm3
恒温条件 20℃
試料:ガラスビーズ
飽和条件
平均粒径: 0.1mm
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実験装置水の進行方向
マノメーター
3 列 x5 箇所 =15 箇所
中列
右列
左列
Tracer well 右、中、左
バッファ バッファ
内容積:20cm×10cm×1cm
Nutrient well 右、中、左
2次元カラム
カラムの蓋
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実験手順
黒ぼく土 1 gを 10mlの水に入れて細菌を抽出した物
カラムを 24時間静置後に透水を開始した。
栄養を与えた場所 動水勾配 実験期間
実験 A 1 箇所 Nutrient well 右 0.30 19日間
実験 B 3 箇所 Nutrient well 右中左
0.24 19日間
栄養水と 1: 9で混ぜ合わせて注入。
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実験方法
流れの方向
Nutrient wellの 3 箇所から栄養を流しながら、カラム全体に透水を行なった。
バイオバリアー
測定項目:フラックス、全水頭:1日1回測定 生菌数:実験期間終了後、希釈平板法
トレーサー試験:トレーサー (ブリリアントブルー FCF) を流して流路と流速を調べた
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間隙フラックス= 5.62x10-3 (cm/s)
栄養をあたえる前のトレーサー移動の様子
およそ 4分間隔の写真
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バイオバリアーはそれぞれ約1 cm 幅
8.8日目のトレーサー移動の様子
およそ 4分間隔の写真
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バイオバリアー内の流れバイオバリアー間の bypass flow
8.80日目のトレーサー移動の様子
およそ 4分間隔の写真
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トレーサー試験による流速の測定
Time(s)
Distance from
inlet (cm
)
0
5
10
15
20
0 1000 2000 3000
bypass flow
flow in barrier
Flow in barrier
bypass flow
7.83x10-3 (cm/s)
1.53x10-3 (cm/s)
4.68x10-3 (cm/s)
2.33x10-3 (cm/s)
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生菌数の測定
実験終了後、生菌数を確認した試料の位置
③②
①
1.25x105
2.99x106
①
3.57x106
6.38x107
②
1.83x104
3.93x105
③細菌生菌数 1)
糸状菌生菌数1)1) 単位はコロニー数 /1g乾土