8.心身の健康状態 (1)qol尺度による得点8.心身の健康状態...
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8.心身の健康状態
(1)QOL尺度による得点
子どもたちの心身の健康度・生活の満足度がどの程度か、QOL 尺度 24 項目について、それぞれ5段階で評価してもらった。各項目5点満点での平均値を示したのが、図 8-1-1 である。得点が高いほど、健康状態がよいことを示している(図 8-1-1 の★は否定的質問なので、点数を逆転させた)。
<友達>の中では「他の子どもたちに自分は好かれていると思った」が低く、<学校>の中
では、とくに中2で「授業は楽しかった」の得点が低かった。 QOL の合計得点と、6領域(調査票の問8、問9、問 10、問 11、問 12、問 13)ごとの平
均得点は、図 8-1-2 のとおりである。どの領域も小5より中2の得点の方が低かった。また、小5、中2とも6領域のうち、<自尊感情>が最も平均値が低かった。男女別では、小5では、
<家族>で女子の方が男子より高かった。中2では「QOL 得点」と<身体的健康>、<自尊感情>で、男子より女子の方が低かった(図 8-1-3、図 8-1-4)。
-50-
-
3.1
3.6
2.6
3.0
3.8
4.1
2.7
3.9
4.2
3.9
3.6
3.7
2.3
1.9
1.8
2.2
4.5
3.8
3.9
3.1
3.7
4.5
3.5
4.2
3.5
3.8
4.0
4.3
3.0
3.9
4.2
4.1
4.1
4.2
2.6
2.1
2.3
4.6
4.2
4.2
3.9
3.6
3.9
4.5
4.7
3.5
2.9
4.7
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5
★悪い点や悪い成績を取らないか心配していた
★自分の将来について心配していた
授業は楽しかった
学校の勉強はよくわかった(できた)
<学校>
★他の子どもたちと自分は違っているような気がした
友達と楽しく過ごした(いっしょにいろいろなことをした)
他の子どもたちに自分は好かれていると思った
友達と一緒に遊んだ
<友達>
★親にやりたいことをさせてもらえなかった
★家で家族とけんかしていた
家で気持ちよく過ごした
親と仲良くしていた(うまくやっていた)
<家族>
いいことをたくさん思いついた
自分に満足していた(自分が好きだ)
自分はなんでもできるような気がした
自分はすばらしい(よくやった)と思った(自信があった)
<自尊感情>
★びくびくしていた(怖かった)
★一人ぼっちのような気がした
★たいくつだった(つまらなかった)
楽しかったし、たくさん笑った
<情緒的Well-being>
元気いっぱいだった
★疲れてぐったりしたことがあった
★頭が痛かったり、お腹が痛かったりした
★病気かなと思ったことがあった
<身体的健康>
小5
中2
図 8-1-1 QOL 尺度各項目の平均点
-51-
-
図 8-1-2 小5・中2のQOL得点と6領域得点の平均値
74.6
37.3
79.2
68.5
60.5
80.5
71.365.7
51.8
70.0
85.6
69.1
26.3
67.3
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点 身体的健康 情緒的Well-
being
自尊感情 家族 友達 学校
得点
小5 中2
図 8-1-3 小5の男女別QOL得点と6領域得点の平均値
74.5
38.6
76.9
67.969.7
86.481.7
70.5 70.569.5
84.8
68.6
35.7
74.8
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点 身体的健康 情緒的Well-being
自尊感情 家族 ***
友達 学校
得点
男子 女子
-52-
-
図 8-1-4 中2の男女別QOL得点と6領域得点の平均値
69.4
31.0
71.4
52.7
59.3
79.9
71.266.0
51.0
61.8
81.1
65.565.5
21.9
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点
**
身体的健康
**
情緒的
Well-being
自尊感情
***
家族 友達 学校
得点
男子 女子
-53-
-
(2)心身の健康(QOL 得点)と睡眠
QOL 得点と、就寝時間・睡眠時間の関連をみたのが、図 8-2-1、図 8-2-2 である。小5では、「11 時半以降就寝」する子どもは、「11 時ごろまでに就寝」する子どもより、QOL 得点及び<友達>以外のすべての領域得点において、得点が低かった。中2では、そのような分け方では
差がでなかったので、平均睡眠時間の7時間以上睡眠をとっている子どもと、7時間未満の子
どもで比較した。中2も、QOL 得点及びすべての領域得点において、「睡眠7時間未満」の子どもは、「7時間以上」の子どもより得点が低かった。睡眠は身体的健康のみならず、情緒面、
自尊感情、家族との関係、友達との関係、学校と関連しているといえる。 図 8-2-1 「就寝時間」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(小5)
75.8
38.4
80.3
69.464.5
82.4
73.069.9
64.469.9
86.2
70.0
31.3
68.8
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点 ***
身体的健康***
情緒的Well-being**
自尊感情 **
家族 ***
友達 学校 **
得点
11時ごろまでに就寝 n=872 11時半以降就寝 n=165
図 8-2-2 「睡眠時間」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(中2)
70.0
27.4
73.2
52.757.9
78.2
68.663.8
50.2
66.9
81.9
62.0
24.3
62.8
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点 ***
身体的健康***
情緒的Well-
being***
自尊感情 *
家族 **
友達 *
学校 *
得点
7時間以上 n=620 7時間未満 n=361
-54-
-
(3)心身の健康(QOL 得点)と朝食
QOL 得点と、「朝食を毎日食べているかどうか」の関連をみたのが、図 8-3-1、図 8-3-2 である。小5では、QOL 得点及びすべての領域において、中2では、QOL 得点及び<自尊感情>を除いたすべての領域において、「朝食を毎日食べている」子どもたちは、「ときどき食べない」
子どもたちや「ほとんど食べない」子どもたちより得点が高かった。朝食を毎日食べることは、
身体的健康のみならず、情緒面、家族との関係、友達との関係、学校と関連しているといえる。
図 8-3-1 「朝食摂取」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(小5)
38.4
31.3
68.8
60.9
69.7
29.4
58.8
71.1
86.680.9
69.970.4
75.670.6
80.5
63.362.4
53.0 53.154.857.1
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点 身体的健康 情緒的Well-being
自尊感情 家族 友達 学校
毎日食べる n=892 ときどき食べない n=107 ほとんど食べない n=17
*** *
**
***
*
******
**
**
***
**得点
図 8-3-2 「朝食摂取」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(中2)
61.8
81.7
26.7
67.3
53.056.0
77.2
24.8
65.060.7
47.3
62.3
72.4
20.2
67.5
55.2
68.773.0
61.0
47.654.1
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点 身体的健康 情緒的Well-being
自尊感情 家族 友達 学校
毎日食べる n=781 ときどき食べない n=140 ほとんど食べない n=53
***
*** *
***
*** *
***
***
**
**
得点
-55-
-
(4)心身の健康(QOL 得点)と毎日の生活の忙しさ
中2には、「毎日の生活の忙しさ」について質問したが、すでにみたように、塾や習い事の日
数や部活動の日数が多い子どもにおいては、「とても忙しい」、「わりと忙しい」と感じている割
合が高かった。この「とても忙しい」、「わりと忙しい」と回答した子どもたちを「忙しい群」、
その他を「一般群」として、QOL 得点を比較してみた(図 8-4-1)。 「忙しい群」は「一般群」よりも、「QOL 得点」及び<身体的健康>、<情緒的 Well-being>、<家族>において、得点が低くなっている。忙しさは、身体的健康のみならず、情緒面や家族と
の関係と関連している。しかし、<自尊感情>、<友達>、<学校>においては差が認められな
かった。
図 8-4-1 「毎日の生活の忙しさ」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(中2)
69.9
25.8
73.2
52.558.4
78.2
67.965.5
50.1
65.9
81.7
61.5
26.8
62.0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点***
身体的健康***
情緒的Well-being**
自尊感情 家族 **
友達 学校
得点
一般群 n=666 忙しい群 n=314
-56-
-
(5)心身の健康(QOL 得点)と話を聞いてもらえるかどうか
子どもが「父母に話を聞いてもらえるかどうか」は、すでにみたように、自分の将来の可能
性や明るさと関連していた。「話を聞いてもらえるかどうか」と QOL 得点との関連をみたのが図 8-5-1、図 8-5-2 である。小5、中2とも、QOL 得点及びすべての領域得点において、「聞いてもらえる群」の方が、「聞いてもらえない群」より得点の平均値が高かった。話を聞いてもら
えることは、子どもの心身の健康度・生活の満足度を高めるといえる。
図 8-5-1 「話を聞いてもらえる」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(小5)
76.0
38.6
82.2
69.8
56.2
73.3
55.7 59.0 59.1
71.4
87.1
70.8
26.5
64.3
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点
***
身体的健康
***
情緒的Well-
being***
自尊感情
***
家族
***
友達
***
学校
***
得点
聞いてもらえる群 n=927 聞いてもらえない群 n=117
図 8-5-2 「話を聞いてもらえる」群別 QOL 得点と6領域得点の平均値(中2)
68.9
27.2
76.1
52.951.8
69.9
52.257.5
42.3
68.0
83.1
62.7
22.8
61.3
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点
***
身体的健康
***
情緒的Well-
being***
自尊感情
*
家族
***
友達
***
学校
***
得点
聞いてもらえる群 n=791 聞いてもらえない群 n=191
-57-
-
(6)心身の健康(QOL 得点)と家族で付き合いのある人の有無
すでにみたように、家族で付き合いのある近所の人がいるかどうかは、自分の将来が明るい
と思うかどうかと関連していた。「家族で付き合いのある近所の人」の有無と QOL 得点との関連をみたのが、図 8-6-1、図 8-6-2 である。小5では、QOL 得点及び<身体的健康>を除いたすべての領域における得点の平均値が、中2では、QOL 得点及び<学校>を除いたすべての領域における得点の平均値が、家族で付き合いのある近所の人が「いない」子どもよりも、「いる」
子どもの方が高かった。近所に家族での付き合いがある人がいることは、身体的健康(中2)、
情緒面、自尊感情、家族との関係、友達との関係、学校(小5)と関連しているといえる。 図 8-6-1 「家族での付き合いのある近所の人」の有無別 QOL 得点と6領域得点の平均値(小5)
74.9
38.2
80.2
69.063.3
79.873.0
61.9 62.9
71.2
86.3
70.0
30.6
72.4
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点
***
身体的健康 情緒的Well-
being***
自尊感情
**
家族
***
友達
***
学校
**
得点
家族で付き合いのある人がいる n=890 いない n=137
図 8-6-2 「家族での付き合いがある近所の人」の有無別 QOL 得点と6領域得点の平均値(中2)
68.2
27.6
72.3
52.556.0
75.568.1
58.1
49.6
67.8
81.8
61.7
20.8
63.9
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
QOL得点
***
身体的健康
**
情緒的Well-
being***
自尊感情
**
家族
*
友達
***
学校
得点
家族で付き合いのある人がいる n=780 いない n=196
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-
(7)イライラや集中力
QOL 項目以外に、イライラや集中力等に関する精神状態について、同様に5段階評価してもらった。各項目ごとの平均点は図 8-7-1 のようである。得点が高いほど、健康状態がよいことを示している(図 8-7-1 の★は否定的質問なので、点数を逆転させた)。「昼間に眠たかったこと」は、とくに中2で、点数が低くなっている。
「イライラすること」と「生活の忙しさ」の関連をみると、「とても忙しい」、「わりと忙しい」
と回答した子どもに、「イライラすること」が「いつもだった」、「よくあった」が 35%と高かった(図 8-7-2)。 「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」と、他の質問項目との関連をみたのが、図 8-7-3
から図 8-7-7 である。悩みがある子ども、自分の将来が明るいと思わない子ども、家で嫌なことがある子ども、父母に自分の話を聞いてもらえない子ども、放課後や休日に一緒に遊ぶ友達
がいない子どもに、「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」が「よくあった」「いつもだっ
た」の割合が高かった。これらの事柄とイライラ・怒りの精神状態は、関連しているといえる。 図 8-7-1 イライラや集中力に関する各項目の平均点
2.5
3.4
3.8
3.4
3.5
3.6
3.9
4.1
3.8
4.0
0 1 2 3 4 5
★昼間に眠たかったこと
★何かに集中できないこと
★だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと
★イライラすること
★何もやる気がしないこと
小5
中2
図 8-7-2 「イライラすること」と「生活の忙しさ」の関連(中2)
21.9
11.8
36.4
24.9
20.1
28.1
15.6
22.4
6.0
12.8
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ぜんぜんなかった たまにあった ときどきあった よくあった いつもだった
***
とても忙しい・わりと忙しいn=313
ぜんぜん忙しくない~少し忙しいn=668
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-
図 8-7-3 「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」と「悩みの有無」の関連
58.6
38.1
68.5
47.4
20.0
22.8
18.6
13.9
14.4
8.4
12.4
17.5
10.3
7.2
11.3
16.9
4.5
3.9
2.3
3.0
0% 20% 40% 60% 80% 100%
悩みなし
中2 悩みあり
悩みなし
小5 悩みあり
ぜんぜんなかった
たまにあった
ときどきあった
よくあった
いつもだった
***
***
図 8-7-4 「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」と「将来の明るさ」の関連
48.7
35.8
62.3
38.5
21.2
23.5
21.7
14.3
13.8
9.7
10.1
11.4
17.7
6.4
10.9
9.2
18.8
17.4
4.4
4.2
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ぜんぜんなかった
たまにあった
ときどきあった
よくあった
いつもだった
***
***
小5 将来明るいと思わない群
将来明るいと思う群
中2 将来明るいと思わない群
将来明るいと思う群
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-
図 8-7-5 「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」と「家で嫌なことの有無」の関連
図 8-7-6 「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」と「話を聞いてもらえるか」の関連
51.5
31.1
37.8
31.0
21.9
21.9
24.2
16.6
12.7
16.9
14.2
14.9
10.9
18.2
14.7
16.0
11.9
9.1
21.5
3
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ぜんぜんなかった
たまにあった
ときどきあった
よくあった
いつもだった
***
***
小5 家で嫌なことが ある
ない
中2 家で嫌なことが ある
ない
47.9
34.4
61.5
39.7
22.9
17.5
11.2
14.1
15.3
9.5
14.7
11.7
17.5
5.7
13.8
15.3
20.6
18.4 4.9
3.4
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ぜんぜんなかった
たまにあった
ときどきあった
よくあった
いつもだった
***
***
小5 話を聞いてもらえない群
聞いてもらえる群
中2 話を聞いてもらえない群
聞いてもらえる群
-61-
-
図 8-7-7 「だれかに怒りをぶつけたいと思ったこと」と「一緒に遊ぶ友達の有無」の関連
48.2
29.5
60.1
44.3
21.4
26.8
17.9
15.1
14.6
8.5
10.3
11.3
12.8
18.3
6.0
14.2
5
16.9
15.1
5.7
0% 20% 40% 60% 80% 100%
ぜんぜんなかった
たまにあった
ときどきあった
よくあった
いつもだった
***
***
小5 一緒に遊ぶ友達が
いない
いる
中2 一緒に遊ぶ友達が
いない
いる
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