Ⅱ cap改革とフランス農業...Ⅱ cap改革とフランス農業...

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-19- Ⅱ CAP改革とフランス農業 (是永座長) 1.2003年CAP改革 のフランスにおける適用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 1) フランス型農業モデルの背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・ 21 2) 単一支払制度(SPS)のフランス ・モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 3) クロス ・コンプライアンスの具体化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 2.フランスにおける農村振興政策の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 1) CAD制 度の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 2) フランスにおけるLEADER制度の実態と意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・ 30

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Ⅱ CAP改革とフランス農業

(是永座長)

1.2003年CAP改革のフランスにおける適用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

1) フランス型農業モデルの背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

2) 単一支払制度(SPS)のフランス・モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

3) クロス・コンプライアンスの具体化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

2.フランスにおける農村振興政策の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

1) CAD制度の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

2) フランスにおけるLEADER制度の実態と意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

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Ⅱ CAP 改革とフランス農業

1.2003 年 CAP 改革のフランスにおける適用

フランス政府は、2004 年2月 18 日の閣議において、2003 年 CAP 改革のフランスにお

ける適用方針について、最大限に部分的デカップリング(生産リンク要素の存続)の条項

を活用すること、単一支払制度(SPS ;Single Payment Scheme)は 2006 年から実施する

ことなどを中心とする基本方針を決定した。各加盟国が生産リンク要素を選択できるため

に「アラカルト型」CAP とも形容された新しい CAP において、フランスは EU 規則で許

容される最大限1に生産リンク要素を存続させるとともに、2005 年からの単一支払制度の実

施国が 10 カ国と過半を占める中で、2006 年からの実施を決定した。 その後、EU レベルにおける単一支払制度の実施のための2つの欧州委員会規則(4月

21 日付)の制定を待って、ゲマール農業大臣は5月 18 日、フランスにおける単一支払制度

およびクロス・コンプライアンスの具体化に向けた構想を発表した。すなわち、EU 一律に

2005年初頭から実施されるクロス・コンプライアンスの具体化、2006年から実施される

単一支払制度の具体的仕組みの構想、さらにデカップリングにもかかわらず「フランス型

農業モデル」を確保するための法整備(農業近代化法の提案)などの方針が示された。 1) フランス型農業モデルの背景 (1) CAP 改革下のフランス農業の構造変化(長期的動向)

INRA 研究者グループによれば、1992 年 CAP 改革以降におけるフランス農業は急テン

ポの構造変化を経験しつつあり、その内実は大規模化、法人化、兼業化、専門化の4つの

傾向に要約される。最新の農業センサス期間である 1988-2000 年における構造変化をマル

コフ分析で 2009 年に延長するならば(過去の構造変化の規定要因が将来期間に変化しない

との前提)、2000-2009 年に農業構造は表1に見られるような目覚しい変化を遂げることに

なる。 農業経営数は2000年の66.3万から2009年に48.6万に減少と予想される(年平均3.39%、

1988-2000 年は 3.5%の減少)。同時に、規模拡大も進み、最大規模層(100UDE 以上)の

経営数比率が 11%から 17%へ、土地面積比率が 45.3%から 54.2%へ増大する。さらに、

法形態別農業経営の構成では、個人経営に比して農業法人経営の比率が増大を続けて、経

営数で 19%から 32%、面積比率で 49%から 65%へと増加する。農家兼業も世帯主夫妻の

レベルで見て、兼業率が 38%から 41%へと増加する(経営主配偶者の農外就業の増加を反

1 フランスの立場からは、フル・デカップリングの悪影響を抑制するための「最小限」を 2003 年 CAP 改革

の交渉結果に反映させたことになる。

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映)。

表1 フランス農業の構造変化(2009 年 INRA 推計) (1)経営規模別変化

経営数の構成比(%) 経済的規模の構成(%) 1988 年 2000 年 2009 年 1988 年 2000 年 2009 年

8UDE未満 41.0 34.0 24.7 5.6 2.1 1.0 8―16 16.9 9.5 8.0 9.4 2.6 1.6 16-40 27.8 20.1 20.7 33.8 12.8 9.8

40―100 12.0 25.4 29.5 33.2 37.3 33.4 100 以上 2.3 11.0 17.0 18.2 45.3 54.2 合計 100 100 100 100 100 100

備考:UDE は経営規模単位(小麦換算 ha に相当)。経済的規模は MBS(標準粗マージン)ベースでのシ

ェア。

(2)法的形態別農業経営構成の変化 経営数の構成(%) 経済的規模の構成(%) 1988 年 2000 年 2009 年 1988 年 2000 年 2009 年 個人経営 93.4 81.0 67.9 78.7 51.3 35.5 GAEC 3.7 6.3 9.2 11.6 16.2 17.8 EARL 0.1 8.4 17.2 0.5 19.5 31.3 その他法人 2.8 4.3 5.8 9.2 13.0 15.4 合計 100 100 100 100 100 100 備考:GAEC は農業共同経営集団 EARL は有限責任農業経営。

(3)専兼業別農業経営構成の変化 経営数の構成(%) 経済的規模の構成(%) 1988 年 2000 年 2009 年 1988 年 2000 年 2009 年 専業経営 72.2 62.1 59.4 79.0 65.6 63.0 兼業経営 27.8 37.9 40.6 21.0 34.4 37.0 (経営者兼業) 17.9 19.4 18.8 8 9 9.5 (配偶者のみ) 9.9 18.5 21.8 13.0 25.4 27.5 合計 100 100 100 100 100 100 備考:専兼業別分類は経営主夫妻単位でみたもの。

出典:Butault J.P.,Delame N. « Réforme de la PAC, découplage et évolution des structures et des

systèmes de production agricole en France » INRA 1992 年 CAP 改革は WTO 農業協定への適合を目的としたが、生産リンク型の直接支払

が価格引下げを相殺するかたちで導入されたために、構造変化への影響はそれほど明白で

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はなかった。CAP 付随政策としての早期引退政策2によって零細経営の消滅が促進され、ま

た農業の将来への悲観論が強まり新規就農者の減少がみられた。しかし、耕作放棄を発生

させ、農用地の減少傾向を加速することはなかった。1963-2000 年の約 40 年間における農

用地面積の平均減少率は 0.23%であったが、1993 年以降のそれは 0.21%にとどまった。 (2)2003 年 CAP 改革の諸要素と予想される影響

フル・デカップリングは、直接援助と生産とのリンクがなくなるとともに、受給権の譲

渡を認めることなどにより、それ自体としては、農業の構造変化を加速させる性格がある。

多くの農業経営で直接援助額が農業経営所得に等しいかこれを上回る状態が見られる中で、

デカップリングは、自主的休耕制度の存続とあいまって、農業生産活動の放棄とこれを通

じる高齢者の引退や非農業就業への転換などを促すであろう。また譲渡可能な受給権の自

由市場の確立は売買や賃貸借を通じる移転を可能とし、それにともなう受給権の資産化は

新規参入農業者にとって、土地や経営資本と同様に農業参入に際しての負担の増加を意味

するであろう。 フル・デカップリングに立脚する単一支払制度制度は、上述のような構造変化を加速化

することにより、国土整備や環境保全の面で、ネガティヴな影響をもたらすことが、フラ

ンス農業界では広く危惧されている。このために、CAP 改革の中心部分である単一支払制

度がいわば WTO 体制の市場原理を貫徹させ、「市場の失敗」に基づく悪影響を与える可能

性があることを考慮して、部分的デカップリング条項、クロス・コンプライアンス、農村

振興政策によってかかる悪影響を補正する必要があると考えられている。 すなわち、まず、部分的デカップリング条項(生産リンク要素)の意義については、肉

用牛や羊・山羊の部門では、他の若干の加盟国と同様に生産リンク要素が地域農業の存続の

ために必要と判断し、それを適用することとした。しかし、普通畑作部門でも、フランス

は 25%の生産リンク要素を選択した。この点については、フル・デッカプリングの前提で

は、普通畑作を含む混合経営地帯において耕種作物面積の9%が任意休耕に移行すると分

析されており(INRA グループ)、25%の生産リンク要素の導入によってこの傾向を十分相

殺することができると判断したといわれる。こうして市場原理に基づく改革の影響と構造

変化のリズムを抑制しつつ、地域農業の維持や耕作放棄への対応を可能とする政策手法が

確保されていることが重要である。つぎに、クロス・コンプライアンスは、とりわけ「適

正農業環境条件」の基準の義務化によって、構造変化のネガティヴな影響を抑制し、環境

負荷の軽減や耕作放棄の抑制を可能とする。さらに、農村振興政策は上述のように、構造

政策(人的及び物的資本の強化)、資源・環境政策(条件不利地域政策、農業環境政策)、

農村経済発展政策(雇用、インフラ)、LEADER 方式の一般制度化によって、構造変化の

ネガティヴな影響を抑制し、農業の担い手確保、条件不利農業への支援、環境保全型農業、

2 フランスにおける早期引退政策の受益農業者数は、1992-2000 年で 67061 人を数えた。

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高付加価値農業、兼業農業など多様な農業システムの推進と、そのための分権的農政の確

立を目指すのである。

2) 単一支払制度(SPS)のフランス・モデル

2004 年5月 18 日の基本政策審議会(CSO)に提出された農業省資料は、「2003 年 CAP改革のフランスにおける適用方法は、フランス農業モデルの存続を確保するものでなけれ

ばならない」と述べている3。長年、「ヨーロッパ農業モデル」を提唱してきたフランス農政

当局がいまや「フランス農業モデル」を強調したことが注目される。そのための手段は何

か。2003 年 CAP 改革の適用の面では、一方において上述のように生産リンク要素を最大

限に活用することであり、他方において、単一支払制度(SPS)をフランス独自の農業構造

政策の目標に沿って運用することである。SPS のフランス・モデルがはたして存在し得る

か現段階では必ずしも明確でないが、その構想を検討しよう。 (1)単一支払制度(SPS)の導入と受給権市場の形成

2006 年からの SPS の導入により、第1ピラー(価格市場政策分野)の直接援助は、「生

産リンク」部分(穀物 25%、肉用繁殖牛 100%、肉牛屠殺助成 40%、羊・山羊 50%)を控

除した残額がデカップルされた形(生産から切り離された形)で農業者に供与されること

となる。このデカップルされた援助額は、経営ごとに「歴史的基準」、すなわち 2000―2002年の平均援助額に基づき算定される。ここに「単一支払に対する受給権」(DPU:droits à payment unique)が生まれる。そして、この受給権は EU 規則上、譲渡可能であり、「受

給権市場」が必然的に発生する。 フランス農政当局は、この市場が完全な自由市場として機能し、農業構造や地域農業の

動向に望ましくない影響をもたらすことを危惧し、様々な規制手段を工夫しようとしてい

る。そして、この規制に向けた措置はすでに開始されているのである。2004 年5月 15 日

以降のすべての農地取引には、DPU 譲渡を含むか否かを明示させる措置が取られた。もっ

とも、DPU の譲渡は規制措置が実施される 2006 年5月 15 日に効果を発揮するが、契約の

法的安定性確保の視点からこの措置は取られた。 (2)受給権市場の規制と意義

2004 年5月段階に発表された受給権市場の規制に関する方針は次のとおりである。 農業者は DPU を受取るためには、それに対応する土地面積を保有しなければならない。 DPU は同一県内での取引のみが認められ、県外への譲渡は禁止される。 DPU 取引への課税制度

土地を伴わない DPU の取引には、投機抑制の目的のため 50%の課税を行う。

3 Dossier de prsse ≪ Modalites d’application de la reforme de la PAC-CSC du 18 mai 2004 ≫,MAAPAR.

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土地を伴う DPU の取引には、3%の課税を行う。ただし、青年農業者への譲渡は

無税とし、県農業計画(PAD)にもとづく上限面積を超える規模拡大については

10%の課税とする。 新規参入する農業者および過去5年以内の参入農業者で、青年農業者就農助成制

度の基準を充たす者への DPU の譲渡は無税とする。 3年間使用されない DPU は自動的に全国留保制度に返還される(つまり 100%の

課税)。 全国留保(Réserve Nationale)制度

受給権から当初一律(3%以内)の徴収を行い、全国留保を設ける。さらに、上

記の課税により補足される。 全国留保から新規就農者に対して無償で受給権が供与される。残余の受給権は、

集団的な農村振興プログラムなどに仕向けられる。 こうした受給権市場の規制は、牛乳割当制度における「生産権」市場の規制と似ている。

それらの市場規制は、生産権や受給権が土地から完全に分離して独自の商品価値を獲得す

ることを阻止する。制度としてはますます複雑化するが、農政目的との関連で一定のメリ

ットがあることは否定できない。生産割当制が少なくとも短期的に地域農業を維持する側

面を持つのと同様に、受給権の規制は、青年農業者に対する優遇措置、県外取引の禁止、

地域的、集団的な農村振興プログラムへの優先配分などを通じて、農業構造政策や地域農

業政策の目的に寄与する側面を持つことができる。 3) クロス・コンプライアンスの具体化

2003 年 CAP 改革の一環として、CAP による農業者への援助は、経営者倫理や環境保全

に関する要件の遵守を条件として供与されるという公共政策の原則が確立され、次のよう

な制度が設置される4。 経営者倫理に関する要件は、具体的には法令に適応した経営管理を求めるもので、①公

衆衛生及び動植物衛生、②環境、③動物愛護の3分野にわたる 18 の EU 法に基づく義

務からなる(2005 年初頭から8法、2006 年初頭から7法、2007 年初頭から3法と順

次適用される)。 環境保全に関する要件として「適正農業環境条件」が新たに制定されることなり、具体

的には、土壌流出、土壌有機物、土壌構造、生態系保全の4分野について、加盟国によ

り基準が制定される。 農業者の個人的事由によりその条件が充たされない場合、ペナルティが課される。その

程度は、不注意による違反の場合は5%以内(繰り返された場合 15%以内)の削減、故

4 前掲拙稿、「2003 年 CAP 改革」を参照。

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意による違反の場合は 20%以上の削減または完全な不払いとする。こうして減額または

不払いとされた金額の25%は加盟国が留保することができる。 さて、クロス・コンプライアンスは、フランスにおいても、2005 年初頭から適用が開始

された。それは、単一支払制度が適用されなくても、従来からの生産リンク型支払にも適

用されるからである。しかし、クロス・コンプライアンスは、具体的には極めて複雑な制

度であり、準備が遅れているようである。 実施のためのデクレ(政令)5は、2004 年 12 月 29 日の官報に公布されたが、これに基

づく省令は遅れて 2005 年に持ちこされた6。今後、省令が公布されたあと、県条例で詳細

が決定される。また、2004 年 12 月には、農業者にとっての新たな義務内容を詳しく説明

する「農業者手帳」(Livret I et II)7が全農業者に対して送付された。 この新制度の中で、特に注目を集めているのが、「適正農業環境条件」(BCAE : Bonnes

conditions agricoles et environnementales)の制定である。現時点では最終的な決定にい

たっていない部分もあるが、基本的部分は 2004 年5月以後、基本政策審議会で審議されて

きた。EU 規則で定める4分野との関連で、表2に示すような9施策が検討された。 表2「適性農業環境条件」施策と分野(EU 規則)との関連

土壌流失 土壌有機物 土壌構造 生態系保全 施策1:経営内環境緑地の設置 X X 施策2:麦藁等の焼却禁止 X 施策3:作物体系の多様性確保 X X 施策4:灌漑用取水に関する規律 X 施策5:土地保全の一般規則 X 施策6:耕種作物用地の保全規則 X 施策7:休耕地の保全規則 X X 施策8:草地の保全規則 X X 施策9:非作付地の保全規則 X X 出典:Dossier de presse ≪ Modalites d’application de la reforme de la PAC-CSC du 18 mai

2004 ≫,MAAPAR

注:Xは各施策の該当分野

最終的には、上記のデクレにより、農事法典の改正の形でフランス法制に導入された。

紙面の制約から詳しく立ち入ることはできないので、簡単に項目だけを紹介しよう。

5 Decret No.2004-1429 du 23 decembre 2004 relatif aux exigences reglementaires en matiere de gestion

des exploitations et aux bonnes conditions agricoles et rnvironnementales. JORF 29 decembre 2004. 6 「環境緑地の導入」(農事法典第 R615-10 条)及び「作物体系の多様性」(第 R615-12 条)の細則を定め

る省令(2005 年1月 12 日付)は、2005 年 1 月 19 日官報に発表された。 7 MAAPAR,La Nouvelle Politique Commune(PAC)-Conditionalite 2005,Livret I et II, Decembre 2004.

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農業経営における環境緑地の導入(農事法典第 R615-10 条):エロージョンや土壌・水

の汚染防止のために、直接支払の対象となる耕種作物・休閑面積の3%に相当する「環

境緑地」(couvert environnemental)を経営用地内に設置することを義務づける。優先

的に流水路に沿って設置され、幅5メートル以上などの条件が定められている。 農用地に有機物を還元するため作物残滓(麦わらなど)の経営内での焼却の禁止(農事

法典第 R615-11 条):穀物・油糧作物・蛋白作物に適用。米は除外。 作付体系の多様性の確保(農事法典第 R615-12 条):普通畑作経営では、最低3作物又

は2作物群(famille de culture)を含む体系を維持すること(作物又は作物群の最低比

率5%)。単作経営については、冬期における被覆植生や保全作業を実施すること。 灌漑農業者の遵守義務(農事法典第 R615-13):耕種部門の灌漑面積に基づく援助を申

請する農業者について取水量の証明及び評価方式の義務化 農地の最低限の保全規則の遵守(農事法典第 R615-14 条):農用地を耕種、草地、休閑

地、非生産地(デッカプル支払のもとでの非耕作農用地、2006 年から適用)の4つの

カテゴリーに区別して、最低限の保全基準を制定。(県条例で実施)。 永年草地の比率の維持(農事法典第 R615-15 条):農用地全体における永年草地比率の

低下を回避するために、必要な場合、草地の耕地への転換を規制。 こうした「適正農業環境基準」の農業者による遵守義務は、それを遵守しない場合に適

用される第 1 ピラーの直接援助額の削減ないし停止というペナルティによって実現される。

故意による違反を除けば、5%以下の比較的僅かな削減であるが、しかしながら、ペナル

ティ・システムの導入は重要な意味を持つであろう。それは第2ピラー(農村振興政策)

における農業環境政策がプレミアム(助成金)の支払であったのとは対照的である。クロ

ス・コンプライアンスによって、CAP における環境問題へのアプローチはいまや「アメ」

と「ムチ」の2つの手段を持つにいたったのであり、いわゆる汚染者負担原則(PPP)の

実現に一歩前進したといえるかもしれない。 以上、2003 年 CAP 改革のフランスへの適用のための準備状況をみてきたが、こうした

政府の方針について、フランスの代表的農業職能団体である FNSEA(農業経営者組合全国

連合)は、導入されようとしている単一支払制度が「ウルトラ・リベラリズムと極度の複

雑性を魔法を使って組み合わせようとしている」と揶揄する一方、クロス・コンプライサ

ンスが農業経営にもたらす「管理」の強化を批判している8。フランス・モデルの「単一支

払制度」がはたしてフランス農業者に受け入れらるかどうかを見定めるには、今しばらく

の時間が必要である。

8 FNSEA, « Réforme de la PAC :les masques tombent », communiue de presse,18 mai 2004.

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2.フランスにおける農村振興政策の推進 1) CAD 制度の推進 (1)CTE 制度から CAD 制度へ

1999 年フランス農業基本法で制定された「経営に関する国土契約」(CTE)は、2003 年

から「持続農業契約」(CAD)と名称を変更したが、基本的に CTE と同様の性格を持つフ

ランス独自の農業環境政策である。CAD 制度の概要は次のとおり9。 CAD 契約:県知事と農業者との契約関係で、期間は通常5年間である。CAD 契約は、

県知事が定める標準契約に基づき締結される。 標準契約:2つのタイプがある。すなわち、県内全域を対象とする全県標準契約(有機

農業、稀少家畜品種保護など)と県内の小地域を対象とする地域標準契約である。CAD制度としては後者が中心であり、これは地域の様々な集団的取り組みを考慮して策定さ

れる。 集団的取り組み:CAD 制度における集団的な取り組みは、農協等の生産者団体、ワイ

ン、高級チーズなど部門別組織、ゾーニング方式を含む各種公共政策(硝酸塩汚染防止、

自然環境保護、農業振興など)など様々である。小地域レベルでの様々な政策・制度を

反映できることが特長とされている。 地域標準契約の内容:地域の取り組みと特性を考慮して、農業環境施策の州カタログの

枠内で、農業環境政策の主要課題、各課題に対応した施策の内容、さらに農業者の約束

の明細および援助額の基準などを定める。 CAD 契約の2つの要素:CAD 契約は環境事項を必ず含まれなければならないが、経済

事項は必要に応じて含められる(選択事項)。経済事項に関する援助は、EU 農村振興規

則の構造政策メニュー(とくに投資助成)や非投資的支出への助成(経営分析や CAD素案作成)が中心である。

県農政審議会の役割:標準契約や個別 CAD 契約は、各種行政分野の代表、農業団体、

環境組織、消費者組織などの代表からなる県農政審議会で検討され、知事が最終的に決

定する。 (2)CTE と CAD の相違点

CTEの場合に比して、CADは農業環境政策を優先目的とすることが明確にされた。CTEは環境事項と経済事項の双方を含むのでならなければならなかったが、CAD は環境事

項のみでよく、経済事項は必要に応じて含めるものとされた。 CTE に比して、CAD の予算制度は大幅に改正された。予算面の限界と公平性に配慮し

9 『のびゆく農業』951 号「フランスの持続農業契約(CAD)制度」、農政調査委員会を参照。

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2003年末 2004年5月1日 2004年9月1日 内、有機農業イル・ド・フランス 0 24 54 7

シャンパーニュ=アルデヌ 16 102 198 12ピカルディ 22 66 133 4

オート・ノルマンディ 0 81 160 9サントル 0 148 362 45

バス・ノルマンディ 21 70 272 20ブルゴーニュ 0 46 127 52

ノール=パドカレ 0 101 298 4ロレーヌ 0 14 95 8アルサス 0 94 351 23

フランシュ・コンテ 0 114 253 15ペイ・ド・ロワール 3 447 866 109

ブルターニュ 0 63 225 30ポワトゥ・シャラント 94 254 508 43

アキテーヌ 34 50 206 49ミディ・ピレネ 11 55 322 55

リムザン 0 114 220 26ローヌ・アルプ 23 190 575 87オーヴェルニュ 0 79 340 13

ラングドック・ルシヨン 0 30 159 52PACA 3 88 210 19コルス 0 0 0 0

海外諸県 9 30 227 7フランス全体 236 2260 6161 689

表3 CADの契約数

出典:フランス農業省備考:PACAはプロヴァンス・アルプ・コートダジュール。

て、各県における CAD 契約の平均援助額を 27,000 ユーロ以下とするなど、財政的規律

が強化された。 CTE に比して、CAD は農業環境政策の課題数が絞り込まれ、また、経済事項を欠く場

合も認められ、それだけ簡素化されたといえる。

(3)EU 農村振興規則との関連

CAD 制度は、EU 農業振興規則に基づく制度である。欧州委員会の承認を受けた国別農

村振興計画(PDRN)とこれに付属した全国レベルの農業環境施策のカタログ、並びに、

「州総括表」(synthèse régionale)と呼ばれる州レベルのカタログにもとづき実施され

る。 CAD による農業環境政策は、EU 農業環境政策のルールに従い実施されている。環境約

束への見返りに支払われる環境支払は、全面的に EU ルールに従い、単に通常適正農法

を遵守するだけでなくこれを「上回る約束」を農業者との間の契約として確定し、通常

適正農法に相当するレファレンス・レベルを基準に「所得減少」と「追加費用」の要素

を相殺する意味を持つ(その他に 20%以内のインセンティヴ要素が妥当な根拠のある場

合加算される)。 (4)CAD の実施状況

CAD 契約の状況

は表3のとおりで

ある。2004 年 9 月

1 日現在で 6161 契

約に達した10。フラ

ンス西部(ペイ・

ド・ルワール及びポ

ワトゥ・シャラン

ト)及び南東部(ロ

ーヌアルプ)の比重

が高い。

10 CAD 発足時の見通しでは、契約数は 2003 年に 5000 件、2004、2005、2006 の各年に 15000 件とされたが、

実績はそれを相当下回っている(フランス農業省情報)。

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2) フランスにおける LEADER 制度の実態と意義11 農村振興政策の「方法」に関する EU 制度である Leader 制度は、フランスにおいて積極

的な効果をもったと評価される12。フランスでは、ローカル(小地域)レベルの公権力(特

に農村部のコミューン)の政策能力に大きな限界がある一方で、中央集権的な性格の強い

部門(農業、環境、雇用等々)別政策当局の影響力が極めて強い。このために、小地域レ

ベルの効果的な地域振興政策の推進のために、政策ニーズの把握におけるボトム・アップ

の方式、多部門的性格の振興政策を可能とするパーナーシップ態勢などを主内容とする

LEADER には大きな関心がもたれてきた。そこで、フランスにおける LEADER の実施状

況について紹介しよう。 (1)フランスにおける LEADER+の実施態勢(図1参照)

フランスは 1 本のナショナル・プログラムで実施している(LeaderII では州プログラ

ム)。対象地域は全国土(LeaderII では目的1及び5b 地域に限定された)。 プログラムの全体的調整は DATAR(国土整備地域対策本部)、管理及び支払業務は

CNASEA(農業経営構造整備全国センター)が担当する。 小地域レベルの推進主体である GAL(地域行動集団)の選定は、州の機構(州知事と

州議会議長の共同権限)によって行われる。 GAL の選定は、対象地域単位の条件を充たす小地域からの GAL の募集を行い、州機構

が応募集団の中から選定する。ついで全国レベルで共通基準にもとづき最終的選定。

11 ここの記述は、2004 年 11 月の CANASEA 訪問時におけるローラン・ハメル(Roland Hamel)氏の教示に

負うところが大きい。 12 フランス独自の政策評価制度にもとづく農村開発政策評価報告(Les politiques de developpement

rural,Rapport de l’instance d’evaluation presidee par Daniel Perrin,La documentation

Francaise,2003)および EU 評価制度に基づく LEADER 評価報告(Ex-post Evaluation of the Coomunity

Initiative Leader II,Final Report,2003,”Geographical report France”)はいずれも、フランスにお

ける地域振興政策(特にペイ制度)との補完関係のもとで、Leader I-II が分権的システムの導入の面で

積極的効果をもったことを評価している。Leader+については、EU 規則による中間評価(Evaluation a

mi-parcours du programme Leader+,2003,CNASEA)が同様の評価をしている。

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図1 フランスにおける LEADER 制度の実施機構

(1)全体図 (国レベル) (州レベル) (GAL の選定) (ローカル・レベル) (2)プログラムの管理機構 (EU レベル) (国レベル) (ローカル・レベル) GAL GAL GAL (最終受益者) A B C D A B C D A B C D

欧州委員会農業総局

CNASEA(管理当局)

財務省 DATAR (総合調整)

CNASEA (管理・支払)

州レベル 各省出先機関

州政府 (州議会議長)

GAL (地域行動集団)

最終受益者

県レベル 各省出先機関

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(2)GAL の選定と対象区域の特色(図2参照)

パイロット的性格を目指しての絞込み:2001 年9月の第 1 回選定で 106 の応募集団の

中から 53 が選ばれ、2002 年 3 月の第 2 回選定で 118 の応募集団の中から 87 が選ばれ、

合計 140 の GAL が選定された。選定される GAL の数は、前世代の LEADER II では

180 であったが、LEADER+では 140 に絞り込まれた(欧州委員会はパイロット的性

格を強化するため、100 程度に絞ることを要求したが、最終的に 140 となった)。 対象区域の社会経済的特徴 ➢ 140 の GAL の対象区域の平均規模は人口 5 万人(97%の GAL は1―10 万人の範

囲内)。農村的性格が強いが、概して小都市を含み、都市・農村交流の可能性のある

地域。 ➢ フランス本土の 20 州、79 県が関与。フランス本土の国土面積の 40%、人口の 13%

(有資格地域人口の 37%)が関与。 ➢ 人口密度が低い:36 人/km3 (フランス平均 108 人) ➢ 高齢化の進行:75 歳以上人口比率 10.3%(7.7%) ➢ 人口変動(1990-99 年):総人口 1.2%増加(3.4%)、社会的要因(移動)2.4%増

加(0.1%) ➢ 産業構造:就業人口で農業 11%(所得で 4%)、工業 21%(18%)、建設業 7%(6%)、

第三次部門 61%(72%)。 対象区域の農村振興戦略:EU の定める支援対象3分野の中の第1分野(振興戦略)に

ついて、EU とフランス政府は6つのテーマを設定した。GAL は応募に際して、これら

のテーマの中から一つを選択して、対象区域で実施しようとする具体的な地域振興戦略

を提示し、受理されなければならない。その内容は表4に示されるが、「自然的文化的

資産の利用増進」が最も多く、その他のテーマは分散している。

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図2 フランスにおける LEADER+実施地区(2000-2006 年)

GAL数 GAL 人口 EU資金実数 % % %

(1)新しいノウハウ・新技術の活用 15 11 12 12(2)生活の質の改善 16 12 11 12(3)地域産品の利用増進 17 13 13 12(4)自然資源・文化資産の利用増進 56 41 40 41(5)新規地域行為者・企業の誘致 19 14 14 14(6)若年者及び女性に向けた活動 13 14 10 9

合計 136 100 100 100

表4  LEADER+のテーマ別にみたGALの内訳

出典:CNASEA備考:テーマ(1)から(4)までは欧州委員会、(5)と(6)はフランス政府が定めたテーマ。

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(3)フランスにおける LEADE 制度の特徴

対象区域の条件:フランス独自の地域振興(développement local)政策との整合性が

重視される13。具体的には、図3に示されるようにペイ(pays)14の区画が確立してい

る場合、財政手段を欠くペイ制度による地域振興にとって、LEADER による財政支援

は魅力的である。DATAR 資料によれば、140 の GAL のうち 62 は完全にペイと対象地

域が重複し、25 はペイの一部を形成し、16 は複数のペイを含む関係にある。また、14%の GAL は州自然公園と重複する。

財政負担の構造:EU 資金は公的資金全体の 50%以内とされるほか、国内の公的資金は、

国以外に地方自治体(州、県、コミューン)の拠出を得なければならず、特に多数の零

細コミューンから小額の、象徴的な意味しかない拠出を確保する必要がある。さらに、

民間資金が、事業計画を有する最終受益者などから集められる(表5)。こうした多様

な財源を動員できることが LEADER 制度に対する評価を高める所以であり、各種地方

自治体と民間からの資金を確保する手腕が GAL に求められるようである。 GAL の役割と性格:LEADER 制度は、グラス・ルーツの運動を基礎にボトッム・アッ

プ方式で地域振興を実施する制度といわれる。しかし、ボトム・レベルを担う GAL の

役割や性格はかなり複雑である。 GAL は、数十人の地域行動者(地方自治体議員、社会経済的職能団体代表、環境・

文化・市民組織代表、民間企業代表など)を構成員とする地域振興の推進組織であ

る(民間比率が 50%以上)。しかし、公法上の法人格(自治体集団)または私法上

ではアソシアシオン以上の公益的な法人格を持たねばならない。 GAL は、数十のコミューンを含む対象区域において、特定の共通テーマに関連す

る様々なプロジェクトを選定・推進し、監視・評価する。また多部門間パートナー

シップを確保する責任を負う。 GAL は公的資金の支出について会計責任能力をもつことが要件とされる。 GAL の構成メンバーのうち、代表と推進担当者の役割が大きいが、特に代表は高

い専門的能力を要する。

13 国土整備環境省の定めた LEDER+の実施手引き(“Appel à candidature » , »guide pratique Leader+ »DATAR,2001)による。そこでは、ペイとの整合性は、必要条件ではないが、優先的に配慮され

る方針が示されている。 14 ペイは一般的には国や故郷などを意味する言葉であるが、ここでは小地域レベルでの地域振興

(développement local)政策の単位区域をいう(1995 年法制化、州による承認手続き)。歴史的背景と地

域連帯意識の存在を考慮しつつ、環境政策の視点からの河川などの流域や、雇用政策の視点からの都市部

とその通勤圏などに着目して、区域が設定される。

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図3 ペイの区域指定の状況(2004 年9月現在)

EU資金 33%フランス公的資金 42%フランス民間資金 14%

計 100%

国 18%州 21%県 27%

コミューン・同集団 26%その他 8%

計 100%

備考:GAL当りEU資金は146万ユーロ

(1)Leader+経費の負担関係

(2)フランス公的資金の内訳

表5 LEADER+の財政負担

出所:CNASEA

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(4)結び:フランスの分権的政策システムの課題 一方における中央集権的国家組織(国を代表する州知事、県知事、郡副知事、中央省庁

の州・県レベルの出先機関)、他方における弱体な地方自治体(特に農村部における零細コ

ミューン体制の存続、コミューン集団の権限・財政面での限界)という背景のもとで、フラ

ンスにおける地方分権的な農業・農村政策の確立は、他の EU 諸国に比して遅れている。 将来における EU レベルでの LEADER のメインストリーミング化の推進は、農村振興政

策全般においてボトム・アップと多部門間パートナーシップの原則を浸透させるであろう。

フランス農政における CTE・CAD 制度も、同様の原則の適用を目指しつつ、小地域(テリ

トリー)を基礎とする施策の組み立てを重視しはじめている。こうして LEADER 制度はフ

ランス農業・農村政策の分野に1つの重要な革新を導入しつつあり、その長期的な影響が注

目される。 (2005 年1月)