計算論的学習理論入門 -pac学習とかvc次元とか-
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計算論的学習理論入門 PAC学習とかVC次元とか
Last update: 2013-06-23
Since: 2011-04-23
Yoshihiko Suhara
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v.0.1
計算論的学習理論の歴史
• 極限における同定 – 訓練データが無限個与えられた場合に学習可能なクラス (文法) を議論
• PAC学習 – 仮説集合𝐻の学習問題において,危険率𝛿で汎化誤差𝜖の予測器を学習するために必要な訓練データ数の下界を求める枠組み • [証明が入ります]
• VC理論 – PAC学習の枠組みを無限の仮説集合へ拡張 – マージン最大化により汎化誤差が抑えられることを証明 [ゴール]
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極限における同定
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極限における同定
• 主に文法学習を対象
• 帰納推論の成功基準 [Gold 67] – 無限の事例が与えられる (完全提示) 場合に完全学習可能な文法クラスを議論する研究分野
– 無限個だったら汎化する必要ないのでは? • 多項式時間など,収束の速さも同時に議論 • 文法の場合は全データを有限時間内に完全網羅することは不可能
• 正例と負例が十分にないと学習可能なクラスは少ない [Gold 67]
• 発展分野: 正例からの学習
– 負例がない場合の学習理論 – 負例がなくてもけっこう学習可能らしい
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PACモデル
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PACモデル [Valiant 84]
• 確率的近似学習 – PAC; Probably Approximately Correct (確率的に大体正しい)
– 仮説集合が有限における学習可能性を扱う枠組み
• 極限における学習においては完全学習 (汎化誤差0) を対象にしていた
• モチベーション: まぁまぁ良い学習をするためにどの程度学習データが必要かという枠組みで議論がしたい
6 (*) 余談だがPAC学習という名前をつけたのはValiant本人ではなくDana Angluin [Angluin 87]
補足: 仮説集合とは?
• 既に機械学習に対する理解があるのであれば,仮説 ≒分類モデルと理解すればよい
• 特徴空間と学習アルゴリズムによって仮説集合が決定 – 例) カープ判別問題
• 2次元のバイナリ特徴に対する決定木の場合,モデルの候補 (仮説集合) は24 = 16通り存在
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セリーグか? (𝒙𝟏)
チームカラーは赤か? (𝒙𝟐)
カープか
True True YES
True False NO
False True NO
False False NO False True
Fals
e
Tru
e
○ ×
× ×
𝑥1
𝑥2
+ -
仮説の一例
PAC学習の考え方
• PAC学習の考え方
–データは同じ分布から独立に取得されるものとする
• 分布の形は仮定していない (distribution free)
• ここがBayes的な方法と異なる
–汎化誤差が𝜖より大きい,かつ,ℓ個の訓練データに無矛盾な仮説を選択してしまう確率を𝛿以下に抑えたい
• 𝛿は仮説検定における危険率と同じと考えればよい
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定理
• 定理
–仮説集合𝐻において危険率𝛿以下で汎化誤差が高々𝜖の仮説を学習するために必要な訓練デー
タは1
𝜖log
𝐻
𝛿以上.すなわち,
1
𝜖log
𝐻
𝛿≤ ℓ
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仮説集合が決まれば,危険率𝛿と汎化誤差𝜖に対して必要な訓練データ数を評価できる 同様に,他を固定すれば汎化誤差や危険率の上界値を求めることができる
嬉しさのポイント
証明 (1/2)
• (1) 汎化誤差が𝜖より大きい場合,ℓ個の訓練データに対して全正解する確率は高々
1 − 𝜖 ℓ – ※ 誤差𝜖のときの確率で抑える
• (2) 𝐻 個の仮説集合のうち全ての仮説の汎化誤差が𝜖より大きい場合,訓練データに対して全正解する確率は高々
|𝐻| 1 − 𝜖 ℓ – 和事象の不等式 𝑃 𝐴 ∪ 𝐵 ≤ 𝑃 𝐴 + 𝑃(𝐵)を利用
• (3) 1 +𝑎
𝑥
𝑥< exp 𝑎 より,𝑥 = ℓ,𝑎 = −𝜖ℓとすると,
𝐻 1 − 𝜖 ℓ ≤ 𝐻 exp(−𝜖ℓ)
• 右辺の確率が危険率𝛿以下であればよい
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証明 (2/2)
• 前頁の結果より, 𝐻 exp(−𝜖ℓ) ≤ 𝛿
• 両辺の対数を取ると log |𝐻| − 𝜖ℓ ≤ log 𝛿
• 式を整理すると log |𝐻| − log 𝛿 ≤ 𝜖ℓ
1
𝜖log
𝐻
𝛿≤ ℓ
• よって,仮説集合𝐻において危険率𝛿以下で汎化誤差が高々𝜖の仮説を学習するために必要な訓練データは
1
𝜖log
𝐻
𝛿以上
– 𝐻「大」→ℓ「大」 – 𝜖「小」→ ℓ「大」 – 𝜎「小」→ℓ「大」
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補足: 1 +𝑎
𝑥
𝑥< exp 𝑎 の証明
• exp (𝑧)のマクローリン展開を行う
exp 𝑧 = 1 + 𝑧 +𝑧2
2!+
𝑧3
3!+ ⋯
•𝑧𝑖
𝑖!>
𝑧𝑖+1
(𝑖+1)! より,𝑧 ≠ 0の際,
exp 𝑧 > 1 + 𝑧
• 𝑧 =𝑎
𝑥 とおく
exp𝑎
𝑥> 1 +
𝑎
𝑥
•𝑎
𝑥≥ −1
𝑎
𝑥≠ 0 の際,両辺共に非負,両辺を𝑥乗すると
– 注: 𝑎
𝑥= −𝜖 0 < 𝜖 ≤ 1 とおいて利用するのでこれでよい
exp 𝑎 > 1 +𝑎
𝑥
𝑥
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簡単な例
• 先述のカープ判別問題
–仮説集合の大きさは16
–危険率 𝛿 = 0.01,汎化誤差 𝜖 = 0.1とすると, 1
0.1log
8
0.01= 32.04 < 33
– 33個の訓練データが必要
• そんないらんがな
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定理の証明からわかるとおり,ひじょーに安全サイドに倒した 汎化誤差の評価をしているため,実用面から考えると
え??? な値になってしまう
その他の話題
• 多項式PAC学習
• Bayes-PAC学習
• など
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VC理論
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Vladimir Vapnik 神
• 統計論的学習理論,VC理論の教祖,SVMの産みの親 – VC = Vapnik-Cherbonenkis
• AT&T Labs → NEC Lab. America
ご尊顔 聖典
PACモデルの問題点
• 従来のPACモデルでは有限の仮説集合しか扱うことができなかった
• 我々が普段使う手法の仮説集合は無限集合 – 例) N次元実数空間における線形識別モデルの仮説は無限個
• このままでは無限集合であるような学習手法についてPAC学習の枠組みで汎化性能を評価できない
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PACモデルの無限集合への拡張
• 無限の仮説集合の大きさを表すVC次元という考え方を導入
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VC次元の直感的な理解
• 仮説集合のVC次元 = 仮説集合に含まれる仮説が細分 (shatter) できる点の数 – shatter とは,任意の2クラスに分類できること
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直線によって任意の3点をshatterできる 直線では4点をshatterできない
これより,2次元特徴空間における線形識別器のVC次元は3次元
VC次元に基づく汎化誤差の評価
• 以下の定理が成立
–汎化誤差𝜖,危険率𝛿,データ数ℓ,VC次元𝑑 とする
𝜖 ≤2
ℓ𝑑 log
2𝑒ℓ
𝑑+ log
2
𝛿
–仮説集合の大きさ𝐻がVC次元𝑑に変わっただけでPAC学習と同じノリ
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無限の仮説集合に対してもPAC学習と 同じ考え方が適用可能になった
線形識別モデルのVC次元は?
• N次元特徴空間の線形識別モデルのVC次元はN+1
• あれ? 次元が増えるとVC次元も増えてしまう –理論的に保証される汎化性能が途端に悪くなってしまう • 全然うれしくない!
–でも経験的にはそんなことはない! どうすればいいの?
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便利!ただ問題
• 特徴次元が増加するとVC次元も増加
• 次元の呪いを克服していない
• カーネル利用により,高次元空間での線形識別学習は,やはりVC次元も高次元になってしまうのだろうか...
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次元の呪いよさらば
• 汎化誤差に対して以下の定理が成り立つ
𝜖 ≤2
ℓ
64𝑅2
𝛾2log
𝑒ℓ𝛾
4𝑅log
128ℓ𝑅2
𝛾2+ log
4
𝛿
– ただし,ℓ >2
𝜖,
64R2
𝛾2 < ℓ とする
• 式の中からVC次元が消え,マージンの大きさ𝛾とデータ点を含む超球の半径𝑅で汎化誤差を抑えている – i.e., VC次元をマージンサイズと超球の半径で表現
– 次元の呪いよサヨウナラ!
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※ 天下り的ですみません
マージン最大化がうれしい理由
• マージン最大化により,実行VC次元の大きさを抑えていると解釈できる
• 言い換えると
–マージンサイズによって仮説空間の複雑さをおさえることが可能になり,
–より少ない訓練データでよりよい汎化性能を得ることができる
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※ 個人解釈が入っているので誤りのおそれがあります
まとめ
• 計算論的学習理論の歴史
• 極限における同定
• PACモデル – PACモデルのうれしさ
–定理の証明
• VC理論 – VC理論のうれしさ
– VC次元
–マージン最大化のモチベーション
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References
• [Gold 67] E. M. Gold, “Language identification in the limit”, Information and Control, 10, pp.447-474, 1967.
• [Valiant 84] L. G. Valiant, “A theory of the learnable”, Communications of the Association for Computing Machinery, 27, pp.1134-1142, 1984.
• [Angluin 87] D. Angluin, “Learning regular sets from queries and counter-examples”, Information and Computaion, 75, pp.87-106, 1987.
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参考文献
• 榊原康文, 小林聡, 横森貴. 計算論的学習. 培風館 (2001).
• Philip D. Laird(著), 横森貴(訳). 例からの学習ー計算論的学習理論ー. オーム社 (1992).
• Nello Cristianini, John Shawe-Taylor(著), 大北剛(訳), サポートベクターマシン入門, 共立出版 (2005).
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おしまい
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