2019年1月1日発行(1、4、7、10月の1日発行・...

Post on 20-Jul-2020

1 Views

Category:

Documents

0 Downloads

Preview:

Click to see full reader

TRANSCRIPT

  • vol.1163

    2019年1月1日発行(1、4、7、10月の1日発行・年 4回)通巻1163号 昭和 26 年11月24日 第三種郵便認可 ISSN1340︲6442

    2019.1

    ユネスコ世界寺子屋運動30周年新年あけましておめでとうございます。

    世界中のすべての人びとが、生活に最低限必要な文字の読み書きや

    計算能力(識字)を身に付けられるようにと国連が制定した「国際識字

    年」。その前年となる 1989 年に、ユネスコ世界寺子屋運動は始まった。

    経済的に豊かな者が貧しい者を助けるのではなく、同じ目線に立ち、と

    もに行動し、互いに学び合う。このコーアクション(Co-Action)精神に

    共鳴した全国のユネスコ協会や企業、団体、数え切れない支援者たち

    の想いが力となり、これまで世界 44 ヵ国 1 地域に 532 の寺子屋( CLC:

    Community Learning Center)を生み出し、約 130 万人の人びとに学び

    の場を届けてきた。

    世界にはいまも 7 億 5000 万人の非識字者(15 歳以上の 6 人に 1 人)が

    いる。また、11 人に 1 人の子どもが小学校に通えていない。UNESCO が

    目指す平和な未来。それは、「誰一人取り残さない」と謳う SDGs(持続

    可能な開発目標)の達成に欠かせない基本的人権が守られてこそ叶う。

    世界寺子屋運動の成果と今後の展望日本ユネスコ協会連盟理事 笹井 宏益特集 世界寺子屋運動カンボジア「アンコール寺子屋プロジェクト」の歩みとこれからTOPICS海外寺子屋事務所職員の来日レポート活動報告●アクサ ユネスコ協会 減災教育プログラム●ブロック・ユネスコ活動研究会報告●理事会・評議員会報告●西日本豪雨・北海道地震見舞金へのお礼●東日本大震災子ども支援募金●サイエンス・スクール●ユネスコ協会ESDパスポート体験発表会●ユネスコスクールSDGsアシストプロジェクト●世界寺子屋運動●世界遺産活動ユネスコ活動の広場お知らせ・募集

    1

    3

    5

    7

    1315

    CONTENTS

    カンボジア、トンレサップ湖畔のチョンクニア寺子屋に通う子どもたち

  •  1989年に世界寺子屋運動が始まってから来年で30年を迎える。この間、ベトナム、カンボジア、ネパール、アフガニスタンを中心に計532(2018年11月現在)の寺子屋が建設され、識字の普遍化をはじめ、地域の人びとの生活改善や社会開発に貢献してきた。この世界寺子屋運動30周年という記念の年を迎えるにあたって、運動の意義やこれまでの成果を振り返り、今後のさらなる発展に向けて、そのあり方を展望してみたい。

    世界寺子屋運動の意義と成果 世界寺子屋運動は、いうまでもなくノンフォーマル教育

    (NFE/学校外の組織的な教育活動のこと)による教育支援活動である。学校教育が、校舎や教室、教員、テキスト、統一的なカリキュラムといった教育的なリソースを利用して組織的・計画的に実施されるものであることと比べると、NFEでは、活動の目的、内容、方法、実施形態などはかなり自由に設計し得るものであり、そこで期待される成果も生活改善や地域づくりに直結している。いうなれば、NFEは、地域の生活実態に根ざしつつ、住民一人ひとりの力量の向上を図るとともに、それを通して人びとの生活を改善し、地域を内発的に発展させる原動力となるものである。 日本を含めて世界各国は、教育を受ける権利の実現と自国の経済社会を担う人材の育成を、学校教育を通して行ってきた。いわゆる「読み・書き・算盤」といった社会生活をおくる上で不可欠な能力(リテラシー)は、学校で学ぶものとされ、それらに加え、教養や専門的知識などを身に付けることで、さまざまな職に就き、豊かな社会生活をおくることが可能になるものと考えられてきた。いうなれば、学校教育は、人間が人間らしい生活をおくる上での基盤をつくる役割を担ってきたのである。 しかしながら、現実の世界には、貧困や紛争などさまざまな原因で学校に行けない子どもたちや大人たちがたくさん存在している。また、行政組織の未熟や人員・予算の不足などにより、学校教育の実施運営が困難になったり独善的になったりしている場合も見受けられる。さらには、P.ブルデューやP.フレイレなど学校教育制度そのものの不平等性や不合理性を指摘する専門家も少なくない。 いうまでもなく、学校に行けない(あるいは行けなかった)人びとにも「教育を受ける権利」はあるし「人間らしい生活を送る権利」もある。こうしたことを考えると、地域の実情やニーズを踏まえ、学校教育によらない、すなわちNFEの手法を体現することにより、これらの人びとの権利を実現することは極めて重要である。世界寺子屋運動は、ユネスコの

    理念のもとで、人びとの善意に基づいて「教育を受ける権利」の普遍化を目指す民間の教育支援運動であり、そこではNFEの手法が活用されている。NFEは本来、個々の住民や地域の状況に着目し、それらを踏まえつつ、さまざまな方法を駆使して教育活動を展開するという性格を有しており、その成果は、識字や生活技術にかかる能力を身に付けるだけでなく、貧困状態や差別的環境の改善を促し、他者理解や社会認識の深化を通して市民性の向上や多文化共生を促すものである。それはまた、個人の自立と社会参加を促しつつ、人びとの協働の輪を広げることで、よりよい地域を創るための原動力となるものである(図1 、図2及び図3参照)。

    世界寺子屋運動の成果と今後の展望

    カンボジアでは、昼間働く大人たちのため夜間に寺子屋が開かれている

    日本ユネスコ協会連盟理事 笹井 宏益

    図2 基礎教育を受けられないことによる人権侵害のサイクル

    図1 基礎教育を受けられないことによる貧困のサイクル

    ユネスコ 2019.11

  •  UNESCOによると、全世界で15歳以上の非識字者は約7億5000万人、学校に通えない子どもたち(6~14歳)は約2400万人いると推計されている(2018年)。このような状況を改善していくためには、途上国政府はもとより国際的な開発援助団体などが、真剣かつ継続的に取り組むことが必要となる。日本ユネスコ協会連盟による世界寺子屋運動は、この30年間、継続的に、そして各国政府や開発援助団体などと連携して、非識字の撲滅に向けて取り組んできた。ひとつ例を挙げよう。 日ユ協連は、2000年3月よりJICAと協力して、ベトナムのライチャウ省において「北部山岳地域成人識字振興計画」を実施し、寺子屋(コミュニティ学習センター/CLC)の普及に取り組んだ。ここでの成功から、北部山岳地域8省にもモデルCLCを設置することとなった(JICAとのパートナー事業)。これらの事業成果の影響で、ベトナム政府は、2015年までにベトナム国内の全てのコミューン(1万450地域)に寺子屋(CLC)を設置することを決め、EFA(Education For All=すべての人に教育を) のナショナル・アクションプランに盛り込むこととなった。 現在、ベトナムには1万を超える寺子屋が設置されているが、上記のケースは、いくつかの村で始められた寺子屋の活動が原型となり、ベトナム政府を動かし、最終的にはベトナム全土に寺子屋を広げることにつながった好例である。寺子屋の活動は、地域の非識字者に対して、識字能力の取得と生活改善という直接的な裨益効果を与えると同時に、各国政府や教育支援をしている関係者などに対しても、目に見えない大きなインパクトを与えてきたのである。

    今後の展望 世界寺子屋運動は、例えば、治安情勢の悪化により計画通りに寺子屋の設置が進まないといったいくつかの課題はあるものの、大きな成果を挙げてきた。この背景には、将来に希望を見出せない人びとや、劣悪な状況下で生活している人びとの権利の実現を目指して、地域の人びととの対話や対等な関係づくり、協働作業の実施などに地道に取り組んできたことが、日本でこの運動を支えてくれている人たちをはじめ、多くの人たちの共感を呼び、協力の輪が広がっていったことがあるものと思われる。 NFEの原動力は、関係者のミッションの強さとボランタリーな実践にある。その点では、NFEによる支援は「点」的なものであり、政府ODAのような「面」的なスケール・メリットや経済効果は乏しい。しかしながら、一人ひとりの存在の在りようを真正面から見つめ、教育活動を通して一人ひとりの人生の基盤を創るという人権保障の発想は、NFEでなければ実現できないものである。 その一方で、NFEによる基礎教育が、貧困の撲滅のみならず、抑圧や束縛からの解放、差別や対立の克服といった多様な成果につながることはすでに述べたところである。図4を見ていただければわかるように、世界寺子屋運動は、目標4のみならず、目標1や目標5、目標8、目標10、目標16などにも貢献するものである。 「持てる者」が「持たざる者」を援助するという視点で教育支援をすることはもう古い。すべての人が有している天賦人権(基本的人権)の実現を目指す教育支援が求められているのである。こうした視点が、SDGsを実現するために何よりも必要である。

    笹井 宏益(ささい・ひろみ)1956年千葉県生まれ 。1980年に文部省(当時)に入省、生涯学習局地域学習活動推進室長などを経て'95年、北海道大学助教授。'98年から国立教育政策研究所に移り、2016年に退職。現在は玉川大学学術研究所教授。専門は社会教育学、教育政策論で、主な著書は『生涯学習のイノベーション』『成人教育は社会を変える』(いずれも玉川大学出版部)など。'99年から1年間モンゴル国文部省に教育政策顧問(JICA専門家)として派遣される。2015年より日ユ協連理事。世界寺子屋運動には、同運動の20周年委員会委員も務めるなど、10年以上にわたり関わっている。

    PROFILE

    目を輝かせて寺子屋で学ぶベトナムの子どもたち

    図4 SDGs(17の持続可能な開発目標)

    図3 基礎教育を受けられないことによる差別・対立のサイクル

    ユネスコ 2019.1 2

  •  1970年代のポル・ポト政権下で、知識人を中心に多くの尊い命が失われたカンボジア。悲しい歴史を乗り越え、'93年以降は国際社会の支援を受けて目覚ましい復興・経済発展に突き進む。その一方、農村部ではいまも貧困が解決されず、教育を受ける機会に恵まれない大人や子どもたちが取り残されている。 日本ユネスコ協会連盟では、そのような貧困の悪循環を教育によって断ち切ることを目指し、就学率・識字率が低く、疾病率も高いシェムリアップ州で、世界遺産「アンコール」周辺の農村地域におけるノンフォーマル教育活動「アンコール寺子屋プロジェクト」に取り組んでいる。プロジェクトの歩みを振り返る。 (事業部:宍戸 亮子)

    「アンコール寺子屋プロジェクト」の歩みとこれから

    第1期支援(1992年~2003年度)民家などを活用して3万6900人が学ぶ1992年に国連ボランティア計画(専門家の派遣)、UNESCOプノンペン事務所、日ユ協連(活動費全てを支出)の3者で、帰還難民が集中するバッタンバン州とシェムリアップ州で、識字教育・伝統工芸復興・初等教育からなる「Community�Temple�Learning�Center�(CTLC)プログラム」を構築し、1994年から実施した。学習センター(寺子屋)はシェムリアップ州に1軒、バッタンバン州に3軒が建設された。その後10年間でシェムリアップ州では約1万5100人、バッタンバン州で約1万7600人が識字者となり、約3300人が手工芸品の職業訓練を受けることができた。ウドンでの識字教育とバッタンバンでの初等教育を含めると、合計約3万6900人が学習機会を得たことになる。一定の成果を受け、当連盟は2000年、カウンターパートやカンボジア王国教育省の意向を踏まえつつ協議を重ね、プロジェクトの管理運営をシェムリアップ州およびバッタンバン州の教育局ノンフォーマル教育部に移譲した。

    第2期支援(初期:2006~2011年度)寺子屋を人びとの学びと成長の中心に2003年以降、教育省や州教育局で、各学習センターの活動を継続する十分な予算が確保できなかったことから、当連盟は「支援終了後には、地元の人びとにより寺子屋の管理や運営がされるよう人材育成を支援していくこと」を前提に支援継続を決定した。'06年に日ユ協連カンボジア事務所を設置し、寺子屋を活用した教育活動やコミュニティ開発活動「アンコール寺子屋プロジェクト」が始まり、現在に至る。プロジェクト目的に掲げられたのは、次の3つだ。

    ●国のモデルとなる寺子屋(CLC=Community Learning Center)の設立並びにノンフォーマル教育の提供

    ● 寺子屋を支える地域リーダーや教育局職員の養成● 日本人とカンボジア人の相互理解第2期開始後6年で寺子屋は9軒完成し、教育・収入向上・人材育成を含め約1万人以上が学んだ。各寺子屋では識字教育に加え、就学前児童を対象に幼稚園クラスも開始した。また、収入向上活動も多様化し、野菜栽培や家畜飼育などの農業技術訓練に加え、小口融資、米銀行、自助グループ、地域の天然資源を生かしたものづくり(手工芸)が普及した。技術を学んだ参加者が収入を上げ、子どもを学校に通わせられるようになり、寺子屋が貯蓄や活動費に生かせるようになるなど、学びを自立につなげる成功例も聞かれるようになった。寺子屋は,複合的な学びの場所として機能し、かつ、村人の

    オーナーシップ醸成を重視した。このように、「アンコール寺子屋プロジェクト」となって以降、「世界寺子屋運動」の歴史でも挑戦に満ちた取り組みが続いた。各地ユネスコ協会をはじめ、運動を支える多くの方々が現地を訪れるようにもなり、現在も日本とカンボジアの友好の懸け橋となっている。

    トンレサップ湖に浮かんでいたチョンクニア水上寺子屋。現在は陸地に固定されている

    おもちゃで遊ぶ幼稚園クラスの子どもたち

    収入向上のためにホテイアオイでバッグをつくる

    ユネスコ 2019.13

  • 第3期支援(現在:2012年度~)持続可能な寺子屋と質の高い教育を皆に●シェムリアップ州全12郡をカバー2012年以降も貧困度や識字のニーズの高い郊外に展開し、8軒の寺子屋が新たに完成した。'18年現在17軒の寺子屋がシェムリアップ州の全12郡に分布している。(図の赤枠内は'12~'17年度建設)各寺子屋では継続して教育・収入向上・人材育成に取り組み、'17年度までに約1万2000人以上が学び、スキルアップの機会を得た。

    ●3軒の寺子屋が支援を“卒業”17軒の寺子屋には、村の選挙で選ばれた住民による「寺子屋運営委員会」が組織される。委員が研修を受け、活動計画・実施・日本の募金からなる予算執行など、日々の運営をボランティアで担う。この積み重ねが実り、2006~'08年から活動するチョンクニア、コックスロック、プレイクロッチの3軒は、識字など「基礎教育ニーズの達成度」「自己資金(収入向上活動の成功度)」「運営委員会の運営能力」などの条件を満たし、'16年度から財政的支援を“卒業”して自立運営に移行した。今後、他の寺子屋もこれに続くことが期待される。

    ●「CLCモデル」の構築と現地政府との協働2014年、日ユ協連カンボジア事務所が「アンコール寺子屋プロジェクト」のノウハ

    ウと好事例を全面的に提供し、政府教育省が国の「CLC運営マニュアル」をまとめた。現地政府との良好な協力関係のもと、今後も現地ニーズを適切に把握してプロジェクトを実施し、将来的には「CLC自立運営の実現のモデル」の構築と提案を目指している。

    ●ノンフォーマル教育から公教育への橋渡し2012年、小学校を中途退学した10~16歳の子どもたちを対象に、小学校の学習内容を2年間に編成したカリキュラム「復学支援クラス」を開始した。修了すると、中学校に進学する資格が得られる仕組みだ。さらに'14年には、寺子屋からの中学校進学者を対象に「進学支援プログラム」を始めた。どちらも制服、学用品、自転車(修理代を含む)を支給。進学支援プログラムでは補習などの学習フォローも行い、中学校での中途退学を防ぐべく見守る。

    今後に向けて(2019年度~)日ユ協連とカンボジア政府教育省は、2019年度から'21年度の3年間について覚書を更新し、引き続き本プロジェクトによる教育環境の向上とコミュニティ開発に取り組む。カンボジア政府のSDGsでは「2030年までに非識字の解決、義務教育の完全普及」がうたわれるが、識字率74%(UNESCO)・中学校就学率55%(教育省)と道半ばであり、ノンフォーマル教育のアプローチが期待される。

    カンボジア政府に協力してまとめられた「CLC運営マニュアル」

    カンボジア寺子屋分布図

    2015年2月、教育省のナロン大臣を迎えてロハル寺子屋の開所式が行われた

    制服や自転車などを支給された復学支援クラスの子どもたち。左は日ユ協連カンボジア事務所のブッタ所長

    ユネスコ 2019.1 4

  • T O P I C S

     2018年9月5日(水)、ノン・ブッタ所長とソウム・サベット職員が来日し、東京、茨城県水戸市、滋賀県長浜市を訪問した。多くの会員や支援者に温かく迎えられ、交流を深めるとともに、2人はプロジェクトの進捗やこれまでの成果をビデオも交えながら伝え、世界寺子屋運動へのさらなる理解を求めた。 東京では公明新聞、電通、紀伊國屋書店、朝日生命保険相互会社、朝日生命ユネスコクラブ、ビーイングの各社を訪問し、「国際識字デーイベント」ではブッタ所長が『カンボジアにお

     2018年10月11日(木)から18日(木)、ヤマ・フェロジ所長が来日。厳しい治安状況により連盟職員が現地を訪問できないため、日本で事業の進捗を協議するための来日だった。 滞在中、宮城県塩竈市で行われた東北ブロック研究会に参加し、アフガニスタンに関するクイズを交えながら、現地の女性の状況、治安、世界寺子屋運動の活動や成果について報告会を行った。実際に現地の生の声を聴くことができ、多くの参加者から好評を博した。ヤマ所長はその後、エクスカーションにも参加し、塩竈神社や酒蔵への訪問など、塩竈の伝

    ける識字を巡る状況と支援の形』と題して講演した。水戸では関東ブロック研究会に出席し、連盟セミナーで発表を行った。ブッタ所長が9日(日)に帰国した後、サベット職員は長浜を訪問。長浜ユネスコ協会の案内のもと、市内の小中学校計3校での出前授業や市長表敬訪問を行い、新聞など複数の地域メディアにも取り上げられた。 12日(水)に帰国したサベット職員は今回が初来日で、活動が多くの方々に支えられていることを実感する充実した滞在となった。� (事業部:宍戸 亮子)

    統文化に触れることができた。 その後、名古屋を訪問し、名古屋国際センターで募金者や協力者、また若者向けの報告会を行ったほか、昼食会を通じて名古屋ユネスコ協会とも交流を深めることができた。また、電通においても現地の状況を報告する機会を持った。 ヤマ所長は、日本での滞在を通じて、地域ユネスコ協会の地道な活動を、より実感することができたようだった。

    (事業部:鴨志田 智也)

    紀伊國屋書店を訪問。右からサベット職員、ブッタ所長

    東北ブロック研究会で報告を行うヤマ所長

    関東ブロック研究会で発表するブッタ所長

    国の重要文化財である塩竈神社を参拝

    カンボジア事務所から

    アフガニスタン事務所から

    海外寺子屋事務所職員の来日レポート

    ユネスコ 2019.15

  • T O P I C S

    寺子屋学習者からのメッセージ

    私は14年間読むことも書くこともできず、自分の国の言葉ダリ語の文字さえもわかりませんでした。でもいまは読み書きができるようになって、世界が変わりました。支えてくださる皆さまに、ありがとうだけではとても表しきれないほど感謝しています。 (ザハルさん 15歳)

    生まれて初めて読み書きができるようになってとても嬉しいです。支援してくださる日本の皆さまに感謝しています。

    (ザイナブさん 13歳)

    読み書きを学ぶチャンスをくださり、ありがとうございます。私のような女性が一人でも多く増えるように、これからもご支援をお願いいたします。

    (サラさん 14歳)

    小学校は6年生まで進級できたのですが、1年半前に中途退学してしまいました。父を亡くしたので、母と6人の兄弟とで暮らし、収穫の時期は家族みんなで仕事します。勉強は大変なこともあるけれど、学ぶことが好きです。将来は先生になりたいです。 (ロイ・サランさん 14歳)

    小学校を辞めてから、もう学校に戻ることはないと思っていました。両親はタイに出稼ぎに行き、私たち兄弟は祖父母と暮らしています。家では水汲みや食事づくりをします。寺子屋の復学支援クラスに2年通って卒業できたら、中学校に進めるので、最後まで頑張ります。(アン・ソムエンさん 13歳)

    from カンボジアFrom アフガニスタン

    ユネスコ 2019.1 6

  • 活 動 報 告活 動 報 告

    第 5 回 教員研修会日本各地(15道府県)の教員が、東日本大震災の被災地で、防災教育の重要性とその効果を多面的に学びました。■日  程:9月17日(月祝)、18日(火)、19日(水)■場  所:宮城県気仙沼市、仙台市、石巻市■参 加 者:助成校(小・中・高)20校の教員33名■主  催:日本ユネスコ協会連盟■協  力:アクサ生命保険株式会社■プログラム・コーディネーター:及川幸彦先生(東京大学海洋アライアンス海洋教育推進センター主幹研究員)■研修協力:気仙沼市教育委員会 気仙沼市立階上(はしかみ)小学校 気仙沼市立階上(はしかみ)中学校 特活)SEEDSAsia■後  援:文部科学省 (企画部:上岡 あい)

    「訓練」から「教育」へ、そして「生きる力」へ 及川先生の講義では、防災教育を単に避難訓練などの防災行事や活動として捉えるのでなく、子どもたちの資質・能力を育む「教育」であることを再認識し、子どもたちのいまと将来・未来のために必要な〝生きる力″を育むものであるべきだと伝えられた。また、新学習指導要領が目指す児童・生徒の能力・資質と、防災教育で育む能力・態度とが合致することや、ESDの理念や学習手法を防災教育に適用することで相乗効果が生まれることを学んだ。そして、防災教育は持続可能な社会の創り手を育成する主体的、対話的(協働的)で深い学びを生む教育であるという防災教育の新しい姿が提示され、参加者に大きな気づきを与えた。

    震災遺構を直に見て、ご遺族の生の声から学ぶ 石巻市立大川小学校では、津波で74名の児童と10名の教職員が犠牲になった。犠牲児童のご遺族が、悲しみ癒えぬ中、当時の状況や防災教育への思いを語ってくださった。

    被災地を感じ、犠牲者を想う 気仙沼市の杉之下地区で地元の方から当時の話を聞いた。海抜11メートルの市指定の一時避難場所だった高台に逃げ込んだ方々を含め、同集落で93名の住民が犠牲となり、その地の慰霊碑で手を合わせた。

    及川 幸彦先生(東京大学)減災教育の基礎と理論

    上田 和孝先生(SEEDS Asia アドバイザー)防災教育のネットワーク構築の方法

    熊谷 久恵先生(気仙沼市立面瀬小学校 教諭)防災教育カリキュラム開発

    齋藤 益男氏(気仙沼市教育長)震災当時の学校避難所対応と気仙沼市の防災教育

    佐々木 克敬先生(宮城県多賀城高校 校長)災害科学科を有する同校の先進実践

    気仙沼市立階上小学校の先生方防災教育の単元の構成や危機管理体制

    講義 現地視察理論・カリキュラム・先進事例 フィールドワーク①

    ユネスコ 2019.17

  • 活 動 報 告

    ● 理論と現場の両方を備えた「生きた研修」でした。

    ● 百聞は一見にしかず。現場に来なければわからないことがたくさんありました。心に刺さりました。

    ● 及川先生の講義や最先端の防災教育の事例から、教育の果たす役割を再認識できました。

    ● 被災地の学校で子どもたちの明るく前向きな姿、皆で力を合わせて防災に取り組む姿を見て感動しました。

    ● ESDの視点を防災教育の根幹としてとらえる大切さに気づけました。

    ● 町の教育行政や地域の方々にも呼びかけ、防災教育の再構築を図り命を守る教育をしていきたいです。

    ● 全国の先生と意見交換し、思いを共有し、つながりが持てたことは貴重な財産になりました。

    参 加 し た 先 生 の 声

    学びを実践につなぐために 講義とフィールドワークで学んだことを、日本各地の学校の防災教育にどう活かすかについてディスカッションした。教員間の意識の格差、地域との連携、カリキュラム開発、校内事情、継続性など、学校で防災教育を行う際の課題も共有した。

    参加教員の創造意欲を刺激した授業視察 気仙沼市立階上小学校での授業視察。5年生の「防災復興マップをつくろう」は、階上地区を4つのエリアに分け、自分の住むエリアの危険箇所や地形、避難道などを児童が調べ歩き、マップにまとめて発表する取り組みだ。中学生や地元住民からも意見を聞き、マップをブラッシュアップ。参加教員は、自校の授業に活かすため懸命にメモを取った。

    防災教育で育まれた力  階上中学校の生徒。生徒が主体になって企画・実施している防災教育の取り組みを全国の先生に伝えた。堂々と自分の考えを述べる姿からは、防災教育で育まれた主体性やコミュニケーション力、対応力の高さがうかがえた。

    生徒たちと意見交換 参加教員と中学生とが防災教育のあり方や課題について対話。大きな災害を経験した子どもたちからも学んだ。

    学校視察フィールドワーク②

    振り返り ワークショップ

    震災遺構となった石巻市立大川小学校旧校舎

    ユネスコ 2019.1 8

  • 活 動 報 告活 動 報 告

    図った「弘道館」に代表される藩校の存在とともに、寺子屋や私塾など民間人も主体的に教育の普及を図った江戸時代の教育について語った。分科会は、4分科会で8つの提案がなされ、熱い学びが生まれた。地元の方々からは、UNESCO無形文化遺産に登録されている「日立風流物」の素晴らしい人形芝居が披露された。青年については、鈴木郁香日ユ協連青年理事の主導で青年交流研修会が実施された。日ユ協連セミナーでは、専門家の笹井宏益日ユ協連理事(P1~2参照)の提言をもとに世界寺子屋運動への理解を深めた。 (企画部:上岡 あい)

    ■ 中部東ブロック・ユネスコ活動研究会9月29日(土)・30日(日)長野県諏訪市主管:諏訪ユネスコ協会

    鳥類研究者の山岸哲氏が、日本で一時絶滅してしまったコウノトリの復元に関して記念講演を行い、人と生物が共存していく意義を改めて考えさせられた。講演の後は、地元長野県を中心に展開している「信州ESDコンソーシアム」の報告や、2018年ユネスコスクールに登録された茅野市立永明小学校による「縄文科学習」、世界寺子屋運動に関する取り組みの発表が行われた。今回初めてブロ研を主管した諏訪ユネスコ協会の皆さまの温かなもてなしもあって、情報交流が盛んに行われた研究会となった。 (事業部:尼子 美博)

    ■ 中部西ブロック・ユネスコ活動研究会11月10日(土)・11日(日)富山県南砺市主管:南砺ユネスコ協会

    「ESDとSDGsの推進」をテーマに、九州大学の浅井孝司学術研究員が講演を行い、市民がESDへの気づきを得て実践し、SDGsへの取り組みを広げるリーダーシップを担うのは、ユネスコ協会であると位置づけた。県内の学校による事例発表では、未来遺産に登録された福野夜高祭りを持続可能にするための課題や、高校の文化祭で行ったSDGsの取り組みなどについて生徒たちが報告し、ESD、SDGsの理解を深める研究会となった。 (事業部:仁藤 里香)

    ■ 近畿ブロック研究会・ユネスコ活動研究会10月27日(土)・28日(日)滋賀県彦根市主管:彦根ユネスコ協会

    約200名が参加した。彦根ユネスコ協会の名誉会長で、井伊家18代目当主である井伊直岳氏が、明治維新における彦根藩について講演。また、城や城跡研究の第一人者である中井均氏が、彦根城の文化的な価値に関して講演を行った。2日目には、さらに200名の市民が加わり、日本中世史の研究家である小和田哲男氏が近江戦国史に関する講演を行うなど、歴史や文化を学ぶ貴重な機会となった。また、ユネスコスクールである城西小学校が、地域遺産学習として彦根城のガイド

    ■ 北海道ブロック・ユネスコ活動研究会10月14日(日)北海道札幌市主管:北海道ユネスコ連絡協議会

    「広げよう平和・共生の心~地域ユネスコ活動の活性化をめざして~」と題し、約70名が参加した。開会式冒頭、9月6日に起きた北海道胆振東部地震に対し会員から寄せられた見舞金を、鈴木佑司日ユ協連理事長が大津和子北海道ユネスコ連絡協議会会長に贈呈した。鈴木理事長による基調講演「民間ユネスコ運動~そのすべきこと、できること」のほか、小樽ユネスコ協会、北広島ユネスコ協会、札幌市立大通高校が活動事例発表を行った。今年度は、7月に函館で「第74回日本ユネスコ運動全国大会」が開催されたため、ブロ研は道ユ連が中心となって準備をし、札幌での半日開催であったが、内容の濃い、大変充実したプログラムとなった。

    (事業部:古澤 真理子)

    ■ 東北ブロック・ユネスコ活動研究会10月13日(土)・14日(日)宮城県塩竈市主管:塩釜ユネスコ協会

    塩竈市教育委員会教育部長の阿部光氏による「歴史を活かしたまちづくり」の講演や、市内の小中学校による地域伝承文化の活動発表があった。2019年に世界寺子屋運動が30周年を迎えるにあたり、秋田、東山、いわきの3協会をパネリストに迎えパネルディスカッションを行った。教育が原点であるという強い思いや、子どもたちにグローバルな視野での平和意識を伝えたいというパネリストの原動力が大変印象深かった。 (事業部:仁藤 里香)

    ■ 関東ブロック・ユネスコ活動研究会9月8日(土)・9日(日)茨城県水戸市主管:茨城県ユネスコ連絡協議会

    「つなげよう ともに語ろう 持続可能な社会を実現するために」をテーマに、290名の参加があった。茨城大学名誉教授の鈴木暎一氏が基調講演を行い、身分に関係なく人材育成を

    2018年度も全国9地区でブロック別ユネスコ活動研究会が行われ、各地で熱心な議論が行われた。日本ユネスコ協会連盟セミナーでは、2019年に30周年を迎える世界寺子屋運動を取り上げ、改めて理解を深めていただく機会となった。

    ブロック・ユネスコ活動研 究 会 報 告

    東日本大震災で流出したアマモを再生する活動について、塩竃第一小学校4年生が発表した

    ユネスコ 2019.19

  • 活 動 報 告

    を行っているという報告があり、大会終了後のエクスカーションでは同校の児童が城の各所に立ち、クイズを交えながら元気に彦根城の案内をしてくれた。 (事業部:尼子 美博)

    ■ 四国ブロック・ユネスコ活動研究会10月27日(土)・28日(日)愛媛県大洲市主管:大洲ユネスコ協会 

    西日本豪雨災害により一時は開催が危ぶまれたが、会員の尽力によって当初の予定通り開催された。京都府立大学の東昇准教授が、近世天草の地域遺産研究と潜伏キリシタン世界遺産登録への長い道のりについて講演を行った。また、内子町石畳の「村並み保存会」と「少彦名(すくなひこな)神社参籠(さんろう)殿(でん)修復実行委員会」が活動報告を行った。さらに、四国ブロックの3ユネスコ協会が「地域遺産を守り伝える活動」についてパネルディスカッションを行うなど、地域遺産の保全、継承活動を深く理解する研究会となった。

    (事業部:仁藤 里香)

    ■ 中国ブロック・ユネスコ活動研究会9月29日(土)・30日(日)※台風により29日のみ開催広島県廿日市市主管:宮島ユネスコ協会

    日本イコモス国内委員会委員長、西村幸夫氏が「世界遺産が目指すもの」をテーマに、世界遺産条約の仕組みと現状、武力紛争時の文化財保護など、多岐にわたる講演を行った。恒例のESD活動研究会団体顕彰では6団体が顕彰され、中でも、ユネスコスクールである周南市立和田中学校、廿日市市立宮島小学校が、地域内外でのボランティア活動や伝統文化の継

    承活動について活発な報告を行った。台風接近のため、1日のみの開催となったが、懇親会でも2日目プログラムの一部を実施、充実した研究会となった。 (事業部:仁藤 里香)

    ■ 九州ブロック・ユネスコ活動研究会11月10日(土)・11日(日)熊本県熊本市主管:熊本ユネスコ協会

    2016年の熊本地震に関して、熊本学園大学の橋本公雄氏が「子どもの災害ストレス緩和の運動遊びからスポーツ教育へ」、向井洋子氏が「無料塾の挑戦―SDGsに向けた復興人材の育成」と題して発表し、全国からの寄付を受けて日ユ協連が行った支援への感謝が述べられた。また、熊本ユネスコ協会が取り組むスリランカ子ども絵画交流事業や、熊本大学の留学生政策に関する発表があった。復旧の進む熊本城が見える会場で盛会のうちに終了した。 (企画部:井上 葵)

    第524回、525回理事会報告9月1日(土)東京都で第524回理事会が開催された。来

    年度全国大会方針は寺子屋運動30周年記念大会となる旨、全会一致で承認された。2018年6-8月事業報告と今後の日程(案)について、また今後の後援・共催事業について説明があり了承された。

    11月17日(土)東京都で第525回理事会が開催された。2018年度中間決算、2018年9-11月事業報告と今後の日程

    (案)について報告があり、今後の後援・共催事業について了承された。またSDGs高校生フォーラムへの協力依頼について説明があった。最後にファンドレイジングを担当する参与2名の紹介があった。

    第46回評議員会報告11月17日(土)東京都で開催。冒頭、今年発生した災害へ

    の各地ユ協のお見舞金対応への会長謝辞が伝えられた。地域代表青年代表理事会議から、全国大会の輪番制、構成団体会費の変更案、並びに機関誌のWEB掲載についての検討状況について報告があった。最後にSDGs高校生フォーラムへの寄付協力について説明があった。

    「平成30年7月豪雨」・「北海道胆振東部地震」に寄せられた見舞金へのお礼とご報告

    2018年7月6日(金)~8日(日)に発生した「平成30年7月豪雨」で、被災状況が深刻だった3県(岡山・広島・愛媛)のユネスコ連絡協議会に対する見舞金を募ったところ、78のユネスコ協会・クラブ、6個人から、総額296万5350円をいただき、3等分した98万8450円を各県の連絡協議会に送金しました。また、9月6日(木)に発生した「北海道胆振東部地震」でも、81のユネスコ協会・クラブ、5個人から総額201万163円の見舞金をいただき、北海道ユネスコ連絡協議会へ送金しました。全て当該県における被災教育施設などへの義援金として役立てられました。詳細についてはユ協便

    (メール)で報告します。誠にありがとうございました。

    ブロ研参加者に彦根城のガイドをする城西小学校の生徒たち

    ESD活動研究会の団体顕彰では、6団体が宮島名物しゃもじの記念証を授与された

    ユネスコ 2019.1 10

  • 活 動 報 告活 動 報 告

    昨年10月から全国各地で「ユネスコ協会ESDパスポート」体験発表会が行われている。ESDパスポート参加校が、ボランティア活動を通して学んだことを発表し、学び合うものだ。岡山ユネスコ協会は10月26日(金)、岡山市教

    育委員会主催による「岡山子どもESDフォーラム」の一環として、体験発表会を開催。約70名の児童・生徒が参加した。公民館活動が活発な岡山では、公民館がボランティア活動を募集することが多く、学校外での活動がしやす

    い地域といえる。夏休みなど長期の休日を中心に、海岸清掃や自然環境の保護活動が行われており、ESDパスポート参加校の岡山市立千種小学校などがポスターセッションに参加した。

    (事業部:古澤 真理子)

    ユネスコ協会ESDパスポート体験発表会

    被災地の奨学生からお手紙が届きました。皆さまから寄せられた募金をもとに実施している奨学金は、日本ユネスコ協会連盟から奨学生の各ご家庭に直接支援しています。 (企画部:上岡 あい)

    東日本大震災 子ども支援募金 ユネスコ協会就学支援奨学金

    国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、ESD(持続可能な開発のための教育)が、質の高い教育に関する持続可能な開発目標に不可欠であると同時に、その他すべてのSDGsの実現のカギであることが確認された。

    第10回となる「ESDアシストプロジェクト」は、今年度より「SDGsアシストプロジェクト」と名称を改め、ユネスコスクールにおいて、SDGs達成に向け行われているESDの取り組みを応援する。引き続き、三菱UFJ銀行、三菱

    UFJフィナンシャル・グループのご協力を得て、1校あたり10万円を上限に助成する。応募について、詳しくは当連盟HPをご覧ください。締切は2019年1月31日(消印有効)。

    (事業部:古澤 真理子)

    「ユネスコスクールSDGsアシストプロジェクト」募集のお知らせ

    サイエンス・スクールは、MSD株式会社との協働事業として、「いのちと健康」をテーマとした、小学5、6年生対象の出前授業だ。子どもたちに生命や科学への興味を持ってほしいと、2011年度からESD(持続可能な開発のための教育)の一環として実施している。MSD社員が講師を務め、2018年度は、全国6校で実施した(北海道、福井県、高知県、島根県、佐賀県、埼玉県)。学校選定にあたっては、各地ユネスコ協会のご協力をいただいた。本年度からは、内容を一新する予定だ。ご期待ください。

    (事業部:古澤 真理子)

    サイエンス・スクール「いのちと健康」

    実験を行う福井大学教育学部附属義務教育学校の生徒たち

    ユネスコ 2019.111

  • 活 動 報 告 

    世界寺子屋運動

    2018 年 10 月 4 日、アンコール遺跡の学習会を実施した。参加者は、タヤック、ルエル、リエンダイ、トレイニョル、スラエン・スピアンの 5 つの寺子屋で復学支援クラスに通う子ども約 90 名。

    JST の代表チア・ノルさんが古代の建設方法や修復方法を説明した後、ナーガ・シンハ彫像修復プロジェクトの修復作業

    を見学した。修復チームのリーダー、ソピアックさんが説明をした後、修復作業をお手伝い。ハンマーの音で遺跡内部の状態を聞き分け、内部の密度が低いと思われる石材に注射器でポリマーを注入。このほか遺跡に付着した地衣類の除去を行った。 (企画部:青山 由仁子)

    音を聞き分け、注射器でポリマーを注入する

    世界遺産活動寺子屋から90名の子どもが体験学習

    fromネパール識字クラスが終わっても、まだまだ学びたい大人はたくさんいる。ネパール

    のカトマンズ近郊のクムヘスワール寺子屋では、民家の一室を借りて大人のための初等教育クラスを開催している。クラスは1日3時間で、週 6回。科目はネパール語、英語、社会、科学および理科と保健の5 教科だ。このクラスは5年間の初等教育を3年間に凝縮したもので、修了すると小学校終了の資格を得ることができる。子育てのほか、精肉店やホテルのヘルパーなどさまざまな仕事で忙しいなか、教室では30 人ほどの女性たちが熱心に授業を受けている。

    (事業部:鴨志田 智也)

    女性が学ぶ寺子屋

    生き生きとした表情で初等教育クラスに参加する女性たち

    fromミャンマー2018 年11月5日、佐賀ユネスコ協会から15 名がバゴー地方域スンピー村を

    訪問し、学習者と交流した。観光客がほとんど訪れない村で日本からの客を迎えるとあって、大勢の村人が集まり、この日のために用意した伝統音楽や踊りで歓迎した。佐賀ユ協からの参加者も、歌や折り紙の紹介、ミャンマーの踊りへの飛び入り参加などで場を盛り上げた。また、ミャンマーで平和や幸運の象徴として神聖視される「白い象」をモチーフにした「動く折り紙」を、子どもたち一人ひとりに贈った。学校を中途退学して働きながら学ぶ学習者たちにとって、励みになるひと時となった。 (事業部:宍戸 亮子)

    佐賀ユネスコ協会が寺子屋を訪問

    佐賀ユ協スタディツアーの参加者と、寺子屋で学ぶ子どもたち

    カンボジアの就学率は小学校で 90% を超える一方、中学校は約 55%にとどまる。寺子屋では中途退学の児童生徒のため、小学校卒業資格を得られる「復学支援クラス」、中学校進学後の学用品などを支援する「進学支援プログラム」を実施している。2012~13年度にリエンダイ寺子屋で学び、進学支援を受けてフン・セン・アンコールトム中学校を卒業したクロチ・タイさんが、2018 年11月高校生になった。「一度小学校を辞めた私が高校生になれる日が来るなんて、想像できませんでした。7 人兄弟姉妹の中で、私が初めて高校に行きます。卒業まで頑張ります」と目を輝かせた。 (事業部:宍戸 亮子)

    「復学支援クラス」1期生、中学を卒業して高校生にfromカンボジア

    高校に進学できる喜びを語るクロチ・タイさん(16 歳)

    村人の結婚式♡at 寺子屋2018 年1月に完成したミルバチャコット寺子屋では、新しい建物でさまざま

    な活動が行われている。世界寺子屋運動による支援を通じては、識字クラスが7クラス(175人対象)、職業訓練が2クラス実施されている。このほかに、政府やNGOの支援による活動や、住民による独自の活動も展開されている。2018 年 9月には「国際識字デー」のイベントを政府とNGOとで共催し、50 人の女性がエンパワーメントについて話し合った。住民の結婚式が寺子屋の建物で行われることもあり、寺子屋の敷地で参加者への食事を用意する光景も見られる。

    (事業部:鴨志田 智也) 寺子屋での結婚式のため料理を用意する人びと

    fromアフガニスタン

    fromカンボジア

    ユネスコ 2019.1 12

  • 活 動 報 告活 動 報 告活 動 報 告Open space for UNESCO activities

    ユネスコ活動の広場 皆さまからのお便りをお待ちしています。出前授業で世界寺子屋運動へ協力する動機を育てる●いわきユネスコ協会(福島県)

    いわきユネスコ協会では、“目的と世界状況の周知から、世界寺子屋運動へ協力しようとする心を育てる”を指針とした出前授業を行い、ユネスコ活動や寺子屋について子どもたちに知ってもらい、「書きそんじハガキ回収」へとつなげている。全体授業では、UNESCOについてや、なぜ寺子屋が必要かについて伝えるとともに、各教室での話し合い活動として、書きそんじハガキがどのような仕組みで支援となるか、自分たちに何ができるかなどの授業を行っている。2018年は市内小学校15校、6学年に実施した。

    【子どもたちの感想】○戦争から幸せは生まれない。○ユネスコとユニセフの違いが分かった。○書きそんじハガキ1枚の成果にびっくり。○ボランティア活動に参加したいと思った。○未使用切手の回収を頑張りたい。しっかりとしたプロセスの出前授業をす

    ることで、子どもたちは世界寺子屋運動を日常の活動としてとらえ、活動への意欲につながっている。ハガキの回収枚数は年々増え、昨年度は6489枚で、計30万9600円の支援となった。また関連事業として平和作文コンクールを実施し、作文集に世界寺子屋運動について掲載。一般市民や企業の方も参加する青少年と平和のシンポジウムでは、協会として取り組む寺子屋運動の紹介も行っている。今後の取り組みとして、この活動がより効果的に実施できる仕組みと、書きそんじハガキ回収枚数を上げるコツ(秘訣)を考え、さらなる寺子屋運動の発展に努めていきたい。

    アフガニスタン寺子屋に寄り添う支援を14年●秋田ユネスコ協会(秋田県)

    2004年よりアフガニスタン寺子屋支援として、主に書きそんじハガキ回収の呼びかけと募金活動を続けている。年2回発行の会報「あきたUNESCO」や展示会など、さまざまな事業の中で常に呼びかけを行い、秋田市

    内3ヵ所の市民活動支援施設などに回収箱を設置、ハガキを投函してもらう仕組みをつくった。活動に賛同していただいた個人には、直接秋田ユネスコ協会事務局あるいはユネスコ会員まで届けていただき、活動自体に参加してもらっている。募金活動は毎年1月下旬の2日間、秋田駅自由通路「ぽぽろーど」での街頭募金を行い、書きそんじハガキの回収も一緒に受け付けている。ユネスコスクールを中心とした高校生、会員に関係のある学校の生徒、大学生のボランティアがチラシの配布と募金を行い、継続的な青少年活動として地域に根付いている。

    今後の課題として、アフガニスタンの情勢は寺子屋キャラバンなどでだいぶ把握できるようになったが、まだ政情への不安がある。そのため、会員の間にもアフガニスタン支援の積極論と消極論があり、また会員全体の理解が十分でないので市民への働きかけも消極的になっている。政情の安定した地域へのスタディツアーが可能になれば、もっと理解が深まり活動も広がると期待している。

    今年で30周年を迎える世界寺子屋運動。今回は、この運動に関した活動をする2ユネスコ協会を紹介する。

    高校生ボランティアによる募金活動

    ユネスコ 2019.113

  •  日本ユネスコ協会連盟は歴代会長を民間人が務める組織で、会員の皆さま(維持会員、賛助会員、個人会員、構成団体会員)からいただく会費と、全国の皆さまから寄せられる募金で支えられています。今号では、維持会員としてユネスコ世界寺子屋運動を中心にクリエイティブとコミュニケーションの力を活用した社会貢献活動を展開するとともに、電通グループ全体の社員のご支援も得て、書きそんじハガキ・キャンペーンにご協力いただいている株式会社電通の取り組みを紹介します。

    株式会社電通並びに電通グループによる社会貢献活動 電通はこれまで世界寺子屋運動に募金を寄せるだけでなく、現地を訪問し、社の強みを生かした社会貢献活動を多面的に展開してきました。2003年のくるりんぱ/テラちゃんロゴ提供、2007 年の団体ロゴ提供、2009 年は寺子屋 20 周年事業への

    ご協力、さらには書きそんじハガキ・キャンペーンのイメージキャラクターとして、ハガキをモチーフにした「書きそんジロー」、切手の「貼りそんジロー」、プリペイドカードの「使いそんジロー」を交えた「タンス遺産3兄弟」を誕生させました。キャラクターを取り入れた広報動画なども無償でご提供いただき、

    “チーム電通”として一丸となり、書きそんじハガキをはじめタンス遺産の回収にご協力いただいています。2013年より書きそんじハガキ・キャンペーンのグッズデザインに加え、ハガキの回収協力を電通グループ全社員に呼びかけ、回収枚数は5年連続企業No.1を記録。今年は、世界寺子屋運動30周年事業でも多面的にご協力いただきます。

    株式会社電通 総務局 社会貢献部 片島 康彦 部長より 弊社は、生業である「コミュニケーション」を社会貢献活動の核にする方針の下、そのベースとなる「識字率」向上を図るユネスコ世界寺子屋運動の趣旨に賛同し、今年で14年間書きそんじハガキ・キャンペーンなど、広報・PR面でサポートを続けてきました。 今年の夏、初めてネパールの寺子屋を訪問する機会を得、貧しくて子どもが学校に通えない状況、通っていても家事の手伝いなどにより途中で諦めざるを得ない子どもがいる状況、カースト制度の影響で大人になるまで読み書きすら学ぶ機会を得られなかった女性が大勢いる状況などを目の当りにし、改めて寺子屋運動の果たす役割の大きさを実感しました。 今後は、この活動をより多くの日本人に知ってもらい、寺子屋サポーターを増やし、一人でも多くのアジアの人びとの生活の質向上に役立てるよう、社として微力ながらお手伝いしていきたいと考えています。2018 年 10 月、電通本社を訪ね、鈴木佑司日ユ協連理事長から遠谷

    信幸代表取締役・執行委員(CSR 委員長)に感謝状を贈呈

    会員の皆さまのページ会員の皆さまのページ会員の皆さまのページ

    維持会員朝日ライフアセットマネジメント株式会社代表取締役社長:本間 義昭 当社は、日本で先駆的に社会的責任投資に着目したファンドを運用し、その信託報酬の一部の寄付を通じた社会貢献に取り組んでいます。貴連盟の活動の一助となるよう努めてまいりたいと思います。

    株式会社セーフティ 代表取締役社長:山口 道男 弊社は車両運行事業などを通じて、安全・安心と真心のサービスを提供する企業として、地域・社会の発展のために、日本ユネスコ協会連盟の目指す平和で文化的な社会づくりに社会貢献活動として入会させていただきます。

    株式会社ブロードリンク 代表取締役社長:榊 彰一 当社の企業理念は「活業」。これは、いまある人・モノの力を活かし、つなげることにより人・社会・地球をより豊かにすることです。この理念のもと、日本ユネスコ協会連盟の維持会員として今後、ご協力させていただきます。

    西武信用金庫 理事長:落合 寛司 当金庫は、地域のお客さまとのつながりを深め、ともに発展するという理念で業務運営を行っており、このたびとしまユネスコ協会を通じ、平和で文化的な社会づくりを目指す日ユ協連に協力させていただくこととなりました。

    賛助会員特定非営利活動法人 としまNPO推進協議会

    新規加入のご紹介

    ユネスコ 2019.1 14

  • 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟は、UNESCO憲章の精神に共鳴した人びとによって1947年、世界にさきがけ仙台で始まった、民間ユネスコ運動の日本における連合体です。現在全国に280のユネスコ協会があります。会長:大橋洋治 副会長:佐々木毅・野口昇・林美紀子・引地瑠美子 理事長:鈴木佑司

    2019年1月1日発行 通巻第1163号 第3種郵便物認可(1、4、7、10月の1日発行・年4回) ●発行/公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟 東京00150︲9︲56030 ●購読料1000円(1年・送料込)〒150︲0013 東京都渋谷区恵比寿1︲3︲1 朝日生命恵比寿ビル12階 TEL 03(5424)1121 FAX 03(5424)1126 発行人:鈴木 佑司 再生紙を利用しています

    日本ユネスコ協会連盟からのお知らせ

    うな経験が積めることを嬉しく思います。ここでの経験を忘れず、今後に活かしていきたいと思います。

    御茶の水美術専門学校デザイン・アート科3年並木 梓 広報資料の作成を通して、ユネスコ活動への理

    解と関心をより深められ、デザイン職を目指す身として実践的な経験ができました。今後に活かせるよう尽力したいと思います。

    個人会員 第4回勉強会&懇親会を開催 2018年10月11日(木)、個人会員世話人会の主催で、セルビア大使館で「セルビアの夕べ 音楽と世界平和」を開催しました。個人会員を中心に70名が集う盛大な会となりました。 会は前セルビア特命全権大使夫人の角崎悦子氏の講演やヴァイオリン、ピアノ演奏、そしてグリシッチ大使のサプライズの贈り物となったギターとのデュオ演奏など大変充実した内容で、セルビアと日本との深いつながりとともにセルビア文化の豊かさを感じることができました。 これからもユネスコ精神に則り、音楽や食文化、他国の歴史と伝統を学ぶ機会を通じて会員間の相互理解と親睦を育み、新たな会員の輪を広げてまいりたいと思います。

    (個人会員世話人会代表:炭谷 宇紀子)

    らもの」プロジェクトの一環として、三菱UFJ環境財団との共催で、子どもたちに絵を通して自然に親しみ、自然の美しさ、大切さを知ってもらうことを目的に実施しています。今回は全国から2万3066点の応募があり、10月26日(金)に審査会で最優秀賞9点、優秀賞34点、入選385点が決定しました。そのうち、わたしが守りたい身近な自然部門「日本ユネスコ協会連盟賞」には、渡邉旭さん(埼玉県川越市立福原小学校5年)が決定しました。

    世界寺子屋運動30周年ロゴが完成! ユネスコ世界寺子屋運動30周年を記念して、表紙にも記載されている記念ロゴができました。地域のユネスコ協会・クラブの皆さまにもご活用いただけます。名刺、会報誌、チラシ、ホームページなどでぜひご利 用 く だ さ い。データご希望の方は事務局まで問い合わせを。●問合せ:広報

    インターン・ボランティア紹介【インターン】

    上智大学総合グローバル学部3年武内 友里恵 2月ごろまで実習の予定です。所属する渋谷ユ

    ネスコ協会での学びを生かし、多様な経験からユネスコへの理解が深まりました。今後も文化芸術や教育で平和をつくるという夢へ邁進します。

    【ボランティア】御茶の水美術専門学校デザイン・アート科3年鈴木 沙弥香 広報資料作成のお手伝いをしています。ユネス

    コ活動への理解が深まり、学生でこのよ

    書きそんじハガキ・キャンペーン2019  前 回 のキャンペーンでは、96万枚以上のハ ガ キ を含む「タンス遺産」が集まり(約4516万 円に相当)、4軒の寺子屋が完成(アフガニスタン1軒、カンボジア1軒、ネパール2軒)。5000人以上の人びとが識字クラスや小学校クラスのほか、さまざまな職業訓練を受けることができました。皆さまのご支援に感謝申し上げます。世界寺子屋運動30周年を記念する今回のキャンペーンでは、100万枚のハガキ回収を目標にしており、アフガニスタン、カンボジアおよびネパールで3軒の寺子屋を設立し、新規のミャンマーを含め6000人以上に学習の機会を提供することを目指しています。 グッズのデザインについては、色をピンクから青に変更し、ユネスコ協会から要望が多かったポスターのサイズをA3に変更しました。ぜひご活用ください。なお、昨年度の封筒型チラシの在庫もありますので、そちらもイベントなどでご活用いただけます。 会員の皆さまのさらなるご協力をよろしくお願い申し上げます。

    第43回「みどりの絵コンクール」受賞者決定 標記コンクールは「守ろう地球のたか

    お知らせ

    日本ユネスコ協会連盟賞「夏の不老川」

    渡邉 旭(わたなべ あさひ)埼玉県川越市立福原小学校5年

    2019

    1月19日 第526回理事会、第47回評議員会、新年懇親会2月22・23日 アクサ ユネスコ協会 減災教育プログラム 活動報告会3月9日 第527回理事会3月23日~29日 高校生向けESD国際交流プログラム派遣3月26日~29日 SDGs高校生フォーラム3月下旬 寺子屋運動支援者向けカンボジアスタディツアー

    今後の主催事業日程

    機関誌「ユネスコ」のWEB配信をスタート 2018年度総会での決定を受けて、2019年度から機関誌「ユネスコ」のWEB配信が始まります。これとともに経過期間を経て印刷版の機関誌を廃止していく予定です。2019年度には、年に2回(4月号、7月号)印刷版を送付し、また10月号と2020年1月号はWEBのみでの配信となります。ご不便をおかけしますが、ご了承の程よろしくお願いいたします。

top related