原子核科学研究センター - 東京大学cnsの概要と沿革...

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東京大学大学院理学系研究科

附属 原子核科学研究センターCenter for Nuclear Study (CNS)

Graduate School of Science, University of Tokyo

東京大学大学院理学系研究科

附属 原子核科学研究センターCenter for Nuclear StudyGraduate School of Science, University of Tokyo

本郷本部 〒113-0033 文京区本郷7-3-1TEL +81-3-3812-7886 FAX +81-3-5841-7642

和光分室 〒351-0198 和光市広沢2-1 独立行政法人 理化学研究所内TEL +81-48-464-4191 FAX +81-48-464-4554

http://www.cns.s.u-tokyo.ac.jp/

CNSCNS

N

CNS 本郷本部 CNS Hongo

丸ノ内線本郷三丁目Marunouchi SubwayHongo 3-Chome Station

春日通り Kasuga Street

警察署Police Office

交番PoliceStation

本郷通りHongo Street

理1号館Faculty of ScienceBldg. 1

東京大学本郷キャンパスUniv. of Tokyo

和光市 Wako-shi

CNS 和光CNS Wako

有楽町線Yu-rakuchoSubway

東武東上線Tobu-Tojo Line

山手線Yamanote Line

丸ノ内線Marunouchi Subway

池袋Ikebukuro

新宿Shinjuku

本郷三丁目Hongo 3-chome

CNS 本郷CNS Hongo

東京Tokyo

成田空港NaritaAirport

京成成田線Keisei Line

日暮里Nippori

東武東上線 / 有楽町線Tobu-Tojo line /Yu-rakucho Subway

池袋 Ikebukuro川越Kawagoe

郵便局Post Office

和光市駅Wako-shi Station

外環自動車道 和光 ICGaikan ExpresswayWako IC

国道254号(川越街道) Route 254

中学校School

本田技研HONDA

理化学研究所RIKEN

CNS 和光分室 CNS Wako

CNSの概要と沿革

原子核科学研究センター(CNS)は、1997年、東京大学における原子核科学の研究及び教育の推進のため、東京大学大学院理学系研究科附属の施設として発足しました。原子核物理学を中心として、加速器科学など周辺の応用分野を含む重イオン科学の研究を推進しています。特に、2000年の東京大学新キャンパス計画による移転後は、理化学研究所 (理研) 加速器施設との共同事業を中心に据えて、重イオン科学研究をより一層展開させてきました。また、米国ブルックヘブン研究所における高エネルギー重イオン衝突実験国際共同研究においても重要な一翼を担ってきました。

CNSには現在6つの研究グループがあり、イオン源、加速器、最先端検出器等のハードウェア開発を基盤として、実験・理論両面において重イオン科学の新たな局面を切り開くべく研究を推進しています。2006年稼動開始した理研RIビームファクトリ-では、主要な測定装置として世界一級の性能を持つSHARAQスペクトロメータの建設を進めています。

原子核科学研究センター沿革1997年 4月 東京大学大学院理学系研究科附属の施設として田無キャンパスに発足。

サイクロトロン施設を保有。1998年 4月 理研との間に「重イオン科学研究に関する協定」を締結。1999年12月 理研との共同研究のため、東京大学と理研との間に協定を締結。2000年 3月 東京大学新キャンパス計画により、分室を理研和光キャンパスに移転。2001年 4月 主要研究装置を理研加速器施設に設置。2001年 8月 理研和光キャンパス内に、3階建て総面積1200平米の実験準備 棟完成。2002年 4月 理論研究部を設置。2003年 4月 理研との「重イオン科学研究に関する協定」を更新。2004年 3月 スピン核物理共同研究のためロシア・ドブナ研究所と国際交流協定締結。2004年 4月 SHARAQプロジェクト開始。2005年 2月 CNS国際外部評価。2006年 4月 東大理研核物理国際プログラム発足(2006.6 覚書締結)。2007年 2月 第1回 NP-PAC 開催。2008年 4月 理研との「重イオン科学研究に関する協定」を更新。

重イオン物理学: CNSの目指すもの

自然界の物質質量の大部分を担っている原子核は、核力が支配する量子複合系です。

天然に存在する原子核は、陽子と中性子の数がバランスして共存する極低温の状態にあると考えられます。 極低温下では、系を特徴づける自由度は凍りついていて、その本質は隠されています。

加速器を用いて様々な重イオン同士を衝突させると、この凍てついた自由度を解き放つこと

ができます。CNSでは、原子核を特徴づける3つの自由度、アイソスピン自由度、スピン自由度、クォーク自由度に注目し、これらに特徴的な状態を重イオン衝突により生成する新しい手法を開発しています。開発した手法を駆使して原子核世界の本質の解明し、新しい物質像を構築することが我々の目指すところです。

陽子数と中性子数が極めてアンバランスな状態 → アイソスピン自由度の解放

核子のスピン偏極で特徴づけられた状態 → スピン自由度の解放

高速回転し様々な形をした状態

非常に高温でクォークやグルーオンが解放された状態 → クォーク自由度の解放

宇宙においては、これらの自由度が解放された高温の系が随所に見られます。そこでは活発な核反応過程が起こっており、宇宙の進化をドライブしています。宇宙における熱い核反応を実験室において調べることにより、超新星などの爆発現象やそれに伴い元素合成過程を明らかにすることも、われわれの重要な目標です。

このような重イオン科学研究を推進するために、大規模加速器施設内にCNS固有の先端的基幹装置を設置するとともに、国際的な拠点として、国内外の研究者との共同研究をすすめています。

また、物理学専攻の協力講座としての大学院教育や国際サマースクール等により、重イオン科学の次代を担う若手人材の育成をはかっています。

重イオン衝突の概念図

加速器開発グループ

運営協議会

運営委員会

センター長

理学系研究科長

宇宙核物理グループ

極限核構造グループ

クォーク物理グループ

スピン偏極グループ

理論部

CNSの組織

多様な原子核の世界 陽子数

中性子数

温度、エネルギー密度

宇宙における原子核反応- 元素の起源と宇宙の進化-

宇宙における原子核反応は、すべての元素の生成と莫大なエネルギー源として宇宙の進化に欠かせない要素です。素過程である核反応から宇宙を探る研究を進めています。特に、星の中心領域や超新星などの爆発過程で重要な高温高密度下の核反応を、CRIBから得られる短寿命不安定核ビームを用いて研究しています。

重イオン加速器

重イオンを用いた研究には、様々な種類、エネルギー、強度の重イオンビームが必要とされます。それぞれのイオンはそれぞれ特有の性質を持っており、その性質に従ってその実現方法は異なります。それらの性質を解明し、新しいイオン源や加速器を提案・創造することにより多様な原子核の研究が可能となります。

極限原子核構造

不安定核ビームを用いた核反応実験により、従来到達できなかった領域の原子核の研究が可能となりました。安定線から離れた領域で発現する中性子ハロー構造やクラスター形成による分子構造、新しい魔法数の出現機構など従来の原子核では見られない構造、性質の研究を進めています。また、高スピン高励起状態で予想される大きく変形した状態、洋ナシ型、バナナ型といったエキゾチックな形を持つ原子核の探索を行っています。

スピン偏極

湯川理論によると、核力はスピンの向きに強く依存する力であり、その結果、原子核の構造や反応ではスピン自由度が重要な役割を担います。原子核のスピンの向きが揃った物質 (偏極標的) や、原子核スピンの向きを精度良く測る装置 (偏極度計) を活用して原子核中でのスピン現象を研究しています。

r-過程

8Li   

 

 

11B12B . . .

ν

ν

νr-過程

高エネルギー重イオン衝突

クォークやグルーオンは、通常の環境では個別に取り出すことができない「閉じ込め」という不思議な性質を持っています。光速に近い速さの重い原子核同士の衝突によって造られる高温・高密度の極限状態において、クォークとグルーオンが自由に飛び回る新しい物質相、クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)が実現されると予想されています。 QGP状態の実現とその性質の解明を目指す実験研究を進めています。

中性子ハローハイパー変形

洋ナシ変形 バナナ変形

超変形

クラスター構造

反応粒子磁気分析器 (PA)荷電粒子の種類とエネルギーを高分解能で測定する装置です。

大強度重イオン源高磁場と14ギガヘルツのマイクロ波を用いて大強度の重イオンビームを生成します。

高性能AVFサイクロトロンサイクロトロン高周波加速システムに導入されたフラットトップシステムにより、ビーム強度とエネルギー分解能の向上に成功しました。

低エネルギー二次ビーム分離器 (CRIB) 核子あたり10MeV以下の低エネルギーRIビームを生成する装置で、インフライト方式を採用する本格的な装置としては世界で初めてのものです。

基幹装置

エネルギー分解能(ドップラー補正後) 8 keV (FWHM)

全検出効率(εΩ) 5 %

1 MeVのγ線に対する性能

性能表 Specifications84 - 98 cm110Z2/A MeV30 %5.6 msr1/8500

軌道半径

最高エネルギー

分析エネルギー範囲

立体角

運動量分解能(F1)運動量分散(F2)

SHARAQスペクトロメータ高分解能SHARAQスペクトロメータは、原子核科学研究センターの次世代の基幹装置です。その建設は、東大酒 井グループ及び理化学研究所と共同で推進しており、2009年春に完成の予定です。

新世代不安定核ビーム施設であるRIビームファクトリー(RIBF)が稼動を開始し、日本の原子核物理学研究は新たな飛躍の時期を迎えています。RIBFでは、千分の一秒にも満たない極めて短時間しか存在できない不安定原子核を大強度のビーム(RIビーム)として取り出すことができ、 SHARAQはそのRIビームによる反応の詳細分析を可能とします。

RIBFから得られるRIビームを最大限に活用し、不安定原子核の未知なる姿を明らかにすべく様々な研究が計画されています。

原子核科学研究センターは理化学研究所のRIBF加速器施設内に様々な装置を設置し、それらを軸に研究を進めています。

ゲルマニウム検出器アレイ (GRAPE)光速の30-50%で運動している原子核から放出されるγ線のエネルギーを高分解能・高効率で測定する装置です。

比較的容易に移動可能な機構を持つため、特定の実験室に恒常的に設置されずに、研究目的に応じて、色々な基幹装置と組み合わせて使用することが可能です。

教育CNSは物理学専攻の協力講座として大学院教育に携わっています。最先端の大規模実験装置を用いた最先端の研究を通じて大学院生を教育することによって、高度な専門知識を備え、国際的な共同研究をリードする人材育成に努めています。2008年54月現在、16人の大学院生 (博士課程9人、修士課程7人)が在籍しています。

また、物理学専攻が3年生を対象として開講している学生実験のうち、「原子核散乱」はCNSのCRIBを用いて行われています。学部学生が日常目にしない加速器や大型実験装置に触れる機会は、貴重な経験だと言えるでしょう。

2006年度から、駒場の1年生を対象に「全学体験ゼミナール」に取り組んでいます。「見えない原子核や素粒子を見る」といったテーマで、実際に最先端の検出器を自ら組み立てて宇宙線等を測定してもらう等、実習に重きを置いたカリキュラムを組み、原子核・素粒子分野の物理に興味を持ってもらうことをゼミナールの狙いとしています。

理論部の主催で2002年から始まった国際サマースクールは、重イオン分野の若手研究者に良質な講義を提供することを目的としています。例年国内外の一流研究者に講義をお願いしています。修士学生からシニア研究者に渡る100人近くの参加者が集います。アジアの近隣諸国を初めとした世界各地からも十数名の学生の参加があり、講義のみならず、日本の学生との交流やCNSの施設見学を楽しんでいます。

原子核理論研究

大型並列計算機による原子核構造量子シミュレーション計算

中性子と陽子を構成要素とする多体系である原子核を量子力学により、大型計算機を駆使して解明しています。1個から200個位の中性子と陽子が、強い相互作用(核力)により互いに引力や斥力を働

かせつつ全体としてまとまっている原子核を、それらの構成要素のレベルから出発して記述し、量子多体系特有の存在形態や運動を探り、核力の知られざる姿を明らかにすることを目指しています。実際に行うのは殻模型計算です。

東大グループが提唱・発展させてきた「モンテカルロ殻模型」により、以前には不可能とされてきた大きなシステム(重い原子核)に対しても実行しています。それらにより、不安定原子核における「通常の魔法数の消滅と新しい魔法数の出現、及びそのメカニズム」、「三角形の原子核」などの成果を出しています。

原子核殻模型計算における対角化すべき行列の次元の増大 (論文の発行年に対して表示)。東大グループによるモンテカルロ殻模型計算により、計算可能次元数が飛躍的に伸び、従来不可能であった重い原子核への適用が可能となりました。

全学体験ゼミナール(2007年度)

駒場1年生を対象にしたゼミナール。2007年度は7名が参加し、自ら検出器を製作し、それを用いて目に見えない粒子の測定を体験しました。

技術開発

先端的な実験研究を進めるためには、先端的な測定装置や加速器技術が必要となります。原子核科学研究センターでは、物理研究と並行して新しい検出器、偏極イオン標的、イオン源、フラットトップ加速技術などの技術開発を進めています。前ページで示した基幹設備の多くもそのような技術開発の結果生み出されたものですし、更に新しい技術が試みられています。

左の図(上)は、原子核科学研究センターが中心となって開発した偏極陽子固体標的と呼ばれるもので、固体中の陽子スピンの向きを揃える装置です。世界で最も高い温度(100K)、低い磁場(0.1テスラ以下)で動作する極めてユニークなものです。

左の図(下)は、理研等と共同開発している新しいガス検出器GEM(ガス電子増幅器)に用いられる規則的に穴の開いた絶縁体フォイルです。

国際サマースクール (CISS07)

共同研究

CNSは、国内外の多くの機関と活発な研究交流を行っています。

CRIBを始めとするCNSの基幹設備を用いた共同研究は、理研仁科センターとの共催によるPAC(プログラム採択委員会)において審議され、採択されたものが実行されます。

米国ブルックヘブン国立研究所をはじめとする国内外の加速器施設における国際共同実験も精力的に推進しています。

高エネルギー重イオン衝突実験

国際共同研究原子核科学研究センターは、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)の重イオン衝突型加速器RHICにおけるPHENIX実験に参加し、新しい物質相クォーク・グルーオン・プラズマ(QGP)に関する研究を推進しています。また、2007年からは欧州CERN研究所LHC加速器のALICE実験に参加し、RHICの20倍以上の衝突エネルギーで実現が期待されるより温度の高い状態の研究を始めようとしています

CNS

オーストラリア国立大学

サンパウロ大学

ブルックヘブン国立研究所

トライアンフ研究所

ハンガリー原子核研究所

ボッフム大学

ソウル国立大学韓国中央大学エイハ女子大学

ウプサラ大学王立工科大学

蘭州現代物理研究所

ベトナム原子核科学研究所

ドブナ研究所グローニンゲン大学

国内共同研究機関

理研 法政大学 九州大学JAEA 山形大学 放医研KEK 東工大 東北大学筑波大 京都大学 広島大学天文台 長崎総科大 大阪大学埼玉大学 早稲田大学

ハイデルベルグ大学

ワイツマン科学研究所

基幹装置CRIBでの共同実験

CNSの特色ある基幹装置CRIBを用いた研究は、原子核物理学や宇宙核物理学の分野における国際共同研究として、大きく展開されています。

ユバスキラ大学

CERN欧州原子核研究機構

GANIL

ローレンス・バークレー国立研究所

アルゴンヌ国立研究所ノートルダム大学

ミシガン州立大学

TORIJIN国際プログラム(Todai-RIKEN Joint International Program for Exotic Nuclei)

東京大学と理化学研究所は、不安定核に関係する物理を国際的に推進するために、東大-理研共同核物理国際プログラム(TORIJIN)を平成18年に発足させました。東京大学では理学系研究科のプログラムですが、原子核科学研究センターはこれに全面的に協力しています。米国エネルギー省のJUSTIPENプロジェクトによる米国研究者訪問の受入れをTORIJINで行っています。TORIJINの海外派遣を支えているのが、日本学術振興会の先端研究拠点事業「エキゾチックフェムトシステム研究国際ネットワーク」です。平成18年に開始、日本全国の研究者のコアとなって、米、独、仏、伊、フィンランド、ノルウェーと研究会や共同研究を進め、学生のスクール派遣なども行っています。(左の写真はTORIJINとJUSTIPENの部屋の看板です。)

北京原子能科学研究院 マクマスター大学

カターニア大学&INFN

重イオン物理、加速器、検出器等についての国際会議・シンポジウムの開催も精力的におこなっています。

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