褐色細胞腫の新規診断法「血中遊離メタネフリン測 …pheochromocytoma:...
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2019年 3 月 26 日
報道関係者各位
国立大学法人 筑波大学
セティ・メディカルラボ株式会社
褐色細胞腫の新規診断法「血中遊離メタネフリン測定」の臨床での測定が可能に
~早期診断・早期治療・患者の負担軽減へ大きく寄与~
研究成果のポイント
1. 褐色細胞腫の新規診断法『血中遊離メタネフリン測定』注 1)の有効性が臨床研究によって裏付
けられました。
2. その成果を基に、同検査法が保険収載(保険適用と価格の決定)されました。
3. 本症の早期診断・早期治療・患者様負担軽減につながるものとして大いに期待されます。
国立大学法人筑波大学 医学医療系 竹越一博教授らの研究グループが臨床研究を実施した、
希少疾患である褐色細胞腫の新しい検査法「血中遊離メタネフリン測定法」が保険収載され、臨
床では 2019 年 4 月以降に測定が可能となります。
褐色細胞腫は、主に腎臓の上にある副腎という小さな臓器から発生する稀な腫瘍です。診断が
遅れると発作的な高血圧による急死を始めとして、心不全や動脈硬化、心筋梗塞、脳血管障害と
いった長期的な合併症を引き起こすことも知られており、早期診断・早期治療がことのほか重要
となります。しかし従来の方法注 2)では診断が困難でした。
それに代わる血中遊離メタネフリン測定法は従来法に比べて腫瘍の状態をより正確に把握でき
ると言われており、竹越教授が研究責任者として実施した医師主導臨床研究でそれが裏付けられ
ました。
本検査法は採血で済みかつ見逃しの少ないことから、従来法では診断が困難であった本症の早
期診断・早期治療・患者様負担軽減につながるものとして大いに期待されます。
研究の背景
褐色細胞腫とは、主に腎臓の上にある副腎という小さな臓器から発生する稀な腫瘍です。褐色細胞腫
では、血圧上昇に深く関わるホルモンであるカテコールアミンが過剰に産生されることになるため、高
血圧を呈するようになり、血圧が非常に変動しやすくなります。具体的な症状としては頭痛・動悸・吐
き気・異常な発汗・不安感などといった多彩な症状が現れます。
本症の診断が遅れると発作的な高血圧による急死を始めとして、心不全や動脈硬化、心筋梗塞、脳血
管障害といった長期的な合併症を引き起こすことも知られており、早期診断・早期治療がことのほか重
要となります。ただし、きわめて稀であることに加えて特徴的な症状に欠けること、また診断の決め手
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になるカテコールアミンの過剰の証明のためには入院して蓄尿した検体が必要なことから、検査が煩雑
で、患者や医療機関の負担も大きいことが指摘されていました。
褐色細胞腫が産生するカテコールアミンが分解されてできるメタネフリンは、カテコールアミンより
安定なホルモンとして知られています。血液中のメタネフリンは、代謝の過程で硫酸抱合されて腎臓か
ら尿中に排泄されるため、畜尿した検体では遊離型と抱合型を含めた総メタネフリンが測定されます。
しかし、褐色細胞腫が産生してできるのは遊離型のメタネフリンであり、血中の遊離メタネフリンの大
部分が腫瘍由来です。このことから、血中遊離メタネフリンの測定は、従来法に比べて腫瘍の状態をよ
り正確に把握できると言われています。
欧米では本症の診断に、1回の採血で済みかつ見逃しの少ない血中遊離メタネフリン測定法が広く普
及しています。実際、米国内分泌学会の褐色細胞腫ガイドラインにおいても生化学的な検査法として第
一に推奨されています(参考文献 1)。他方、わが国では褐色細胞腫診断で同検査法は、認知されてお
らず保険収載されていないのが問題でした。
研究内容と成果
本研究グループが実施した「血中遊離メタネフリン測定法」の臨床性能試験では、褐色細胞腫の診断
における感度・特異度共に良好な結果が得られました(参考文献 2)。そのため、2018 年 8 月に発行さ
れた『褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン 2018』(編集:一般社団法人 日本内分泌学
会、日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診療指針の作成」委員会)において、「褐色細胞
腫・パラガングリオーマの診療アルゴリズム」のスクリーニング及び機能診断の中に、血中遊離メタネ
フリン・ノルメタネフリンの記載に至りました(参考文献 3)。
血中遊離メタネフリン・ノルメタネフリン測定キット(製品名:2-MET Plasma・ELISA キット
「SML」)の体外診断用医薬品製造販売承認をセティ・メディカルラボ株式会社が取得し、2019 年 1 月
1日には、本検査法が保険収載されました。臨床では 2019 年 4 月以降に測定が可能となります。
今後の展開
本測定法を用いることで、従来法では診断が困難であった本症の早期診断・早期治療につながるもの
として、大いに期待されます。
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参考図
図:(上) COMT を介したアドレナリン、ノルアドレナリンからの代謝経路
(下)褐色細胞腫診断における尿中メタネフリン測定法と血中遊離メタネフリン測定法の比較
(参考文献 4 より引用)
用語解説
注1 血中遊離メタネフリン測定法
厳密には血中遊離メタネフリンを測定すること。ただし、一般的には、血中遊離メタネフリン(M)測定
のみならず同ノルメタネフリン(NM)測定を含んでの‘総称’として用いる事が多い。本稿では後者、す
なわち血中遊離 M + 同 NM 測定の意味で用いる。
注2 従来法
以下の測定法と定義する。すなわち、血中遊離メタネフリン 2分画測定法以外の以前からの測定法で、
すべて保険収載されている。血中カテコ−ルアミン(CA)3分画、尿中カテコ−ルアミン(CA)3分画、
尿中メタネフリン 2分画、バニリルマンデル酸。
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参考文献
1. Lenders JW, Duh QY, Eisenhofer G, Gimenez-Roqueplo AP, Grebe SK, Murad MH, Naruse M,
Pacak K, Young WF Jr; Endocrine Society.Pheochromocytoma and paraganglioma: an
endocrine society clinical practice guideline.J Clin Endocrinol Metab. 2014
Jun;99(6):1915-42.
2. Tanaka Y, 以下 23 名略, Takekoshi K. Plasma free metanephrines in the diagnosis of
pheochromocytoma: diagnostic accuracy and strategies for Japanese patients. Endocr J
61(7):667-673, 2014
3. 日本内分泌学会「悪性褐色細胞腫の実態調査と診断指針の作成」委員会編
褐色細胞腫・パラガングリオーマ診療ガイドライン 2018 診断と治療社。
4. 竹越一博 「血中遊離メタネフリン測定法について」、内分泌・糖尿病・代謝内科、47(6):491-
495,2018
問合わせ先
竹越 一博 (たけこし かずひろ)
筑波大学 医学医療系 教授
〒305-8572 茨城県つくば市天王台 1-1-1
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