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2010 年 11 月 30 日

アジア大会・ドラゴンボート国際審判員としての報告書

日本ドラゴンボート協会

副理事長 菖蒲 誠

2010 年 11 月 18 日(木)から 11 月 20 日(日)にかけて、中国・広州で開催されたアジア大会のド

ラゴンボート競技運営に関して、アジアオリンピック評議会(Olympic Council of Asia)並びにアジア

ドラゴンボート連盟(Asian Dragon Boat Federation)より指名を受け、チーフ・アンパイア(Chief Umpire)としてレース運営に関わってきましたので、その内容について報告致します。

1.ドラゴンボート競技

ドラゴンボート競技は今回初めてアジア大会の一種目としてアジア ・ オリンピック評議会より承認さ

れ、中国・広州・増城市(Zengcheng city)の Zengcheng Dragon Boat Lake にて開催されました。

参加国は中国、香港、インドネシア、ミャンマー、韓国、シンガポール、マカオ、中華台北、イラン、

タイランド、 そして日本の 11 カ国・地域で、 種目は男子、 女子のみ、 距離はそれぞれ 1000m、 500m、

そして 250m、の3競技で行われました。我々国際審判員 8 名は 11 月 15 日に現地入りし、準備を始

めました。

2.大会審判員(International Technical Official & National Technical Official)

香港、インドネシア、フィリピン、マレーシア、中華台北、マカオ、そして日本から選抜された合

計 8 名の国際審判員(International Technical Officials)が大会運営に関わるポジションの責任者と

なり、中国の国内審判員(National Technical Officials)約 100 名と共に大会を運営しました。私は

水路審判の責任者(Chief Umpire)の仕事を与えられ、インドネシアからの女性審判員と 29 名の国

内審判員と共に大会運営に従事しました。

3.大会スケジュール 11 月 15 日(月):国際審判員は全員、広州・増城市の大会会場近くのホテルに集合。 11 月 16 日(火):午前中、国際審判員、国内審判員との合同ミーティング

午後、大会会場下見 11 月 17 日(水):午前中、大会会場にてそれぞれのポジションの準備状況確認、大会

運営の予行演習

午後、各国チームマネジャー会議(注意事項説明、競技種目毎の

グループ分け抽選) 11 月 18 日(木):1000m 競技、男子、女子 11 月 19 日(金):500m 競技、男子、女子 11 月 20 日(土):250m 競技、男子、女子 11 月 21 日(日):国際審判員帰国

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4.ドラゴン・ボート・スペック

ボートメーカーは中国・スウィフト・インターナショナル(祥瑞・Swift International)で、世界ド

ラゴンボート連盟(International Dragon Boat Federation)規格のボートと異なるスペックで製造さ

れた木造船であり、ファイバーグラスを主材とするドラゴンボート製作の世界的潮流とは逆行する為、

多くのチームが懸念していました。しかし、存外ボートの評判もよく、実際のレース運営には懸念した

程の影響はなかったと思われます。

スタンダード・ボートスペック

全長(龍頭、龍尾を含む):18.4m

ボート長 :15.5m ボート幅 :1.1m 〈ボート中央部〉

ボート重量 :約 350kgs

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5.レース結果

11 月 18 日(木)1000m、

男子:金 -インドネシア:00:03:32.016 銀 -ミャンマー :00:03:34:542 銅 -韓国 :00:03:37:254

日本:8 位 :00:03:51:588 女子:金 -中国 :00:04:03:706

銀 -インドネシア:00:04:14:590 銅 -タイランド :00:04:18:292

11 月 19 日(金)500m 男子:金 -インドネシア:00:01:44:606

銀 -ミャンマー :00:01:45:622 銅 -中国 :00:01:46:480

日本:7 位 :00:01:51:611 女子:金 -中国 :00:02:00:667

銀 -インドネシア:00:02:02:875 銅 -タイランド :00:02:06:271

11 月 20 日(土)250m 男子:金 -インドネシア:00:00:48:681

銀 -ミャンマー :00:00:49:401 銅 -中国 :00:00:49:467

日本:6 位 :00:00:52:947 女子:金 -中国 :00:00:59:320

銀 -インドネシア:00:00:59:458 銅 -タイランド :00:01:02:008

5.総評 2008 年にインドネシア・バリで開催された「第一回アジア・ビーチ・ゲーム大会(The First Asian

Beach Games)」において、ミャンマーの圧倒的な強さが印象にあった為、今回のアジア大会でも最も

金メダルに近いのはミャンマーであろうというのが大方の一致した予想でした。しかし、いざ蓋を開

けてみると予想を覆して男女ともにインドネシアの強さの目立つ大会でした。私はチーフ・アンパイア

(水路審判長)として各レーススタート直後からドラゴンボートの後方をアンパイアボートで追走して

いましたが、何よりも上位チームのピッチの速さ、そしてピッチの速さにも拘わらず水をしっかりと捉

える技術の優れていることが目に焼きつきました。日本チームはタイム的に見ると上位チームとの差は

それほど大きくなく大健闘だと言えますが、ピッチ漕法とストローク漕法の中間的な漕ぎ方という印象

を受けました。ピッチを上げ、しかも水をしっかりと捉えるには体力強化が大きな課題と言えます。イ

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ンドネシア、ミャンマー、タイランド等は軍人を特訓する形で強化を図っているようで、オリンピック

競技の中で一競技としては最大人数を抱えるドラゴンボート技の練習環境の違いをどのように乗り越え

るか、というのは一般的な民主国家の大きな課題でもあると思われます。

大会運営に関しては、国際審判員が各部署の責任者を務め、どちらかというと中国国内審判員は指示

に従うという形になっていましたが、国際、国内審判に関わりなく非常に相互協力的であり、ドラゴン

ボート競技関係者の懐の深さを再確認出来た次第です。ほとんどの中国国内審判員は英語でのコミュニ

ケーションが出来ず、筆談等に頼らざるを得ない場面が多かったのですが、お互いにドラゴンボート競

技運営には熟知しているという積極的事情もあり、大会運営には支障は無かったと言えます。

大会会場は、ドラゴンボート専用という説明でしたが、これほどの立派な大会施設をドラゴンボート

専用に出来るということは、現在の経済的な中国パワーを誇示する代表的な示威表現であると同時に、

中国政府が伝統スポーツとしてドラゴンボート競技をいかに重要視しているかという証でもあります。

今回のドラゴンボート競技運営に関してはあらゆる点で大成功だったと思います。この実績を土台にし

て、今後アジア大会においてドラゴンボート競技が正式種目として採用されるよう、各国ドラゴンボー

ト協会、アジアドラゴンボート連盟、そして世界ドラゴンボート連盟の更なる努力が必要であると思い

ました

6.関連写真

国際審判員ミーティング後 マネジャーミーティング、グループ分け

審判員ブリーフィング 審判塔(Judge Tower)

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VIP Lounge & 観客席 審判塔内部

審判艇 スターター・ポンツーン

水路審判メンバー チーフ・アンパイア

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国際・国内審判員(大会終了後会場にて)

以上

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