東南アジアの医療機器市場における 進出機会 -...

73
東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜 株式会社アジア戦略アドバイザリー 20151120国際機関日本アセアンセンター主催 ASEAN医療ビジネスセミナー ASEAN の医療分野におけるニーズと課題

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Page 1: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

東南アジアの医療機器市場における

進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

株式会社アジア戦略アドバイザリー

2015年11月20日

国際機関日本アセアンセンター主催

ASEAN医療ビジネスセミナー

― ASEAN の医療分野におけるニーズと課題 ―

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目次

1

1. はじめに

2. 東南アジアの医療機器市場比較

3. タイの医療機器市場

4. ベトナムの医療機器市場

5. ミャンマーの医療機器市場

6. まとめ

別添資料A 医療関係補足資料

別添資料B 東南アジアのマクロ環境比較

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はじめに

Section 1

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3

東南アジア進出における、アドバイスの提供

– 海外進出企画立案

– M&Aアドバイザリー

– ファイナンスサポート

– プロジェクトマネジメント

東南アジア進出における業界調査

– 東南アジア主要各国現地ネットワークを生かした、現地実地調査及び調査レポートの作成

– 現地提携候補先企業の発掘、調査

杉田 浩一 (代表取締役)

– 弊社創業前は、15年間にわたり外資系投資銀行で、M&Aアドバイザリーをはじめとするコーポレート

ファイナンス業務に携わる。 直前までは、米系投資銀行のフーリハン・ローキーにて、在日副代表を務める。2000年から2009年まで、UBS証券会社投資銀行本部M&Aアドバイザリーチームに在籍。数多くのM&A案件にてアドバイザーを務める。

– ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス(LSE)経済学修士課程卒、カリフォルニア大学サンタバーバラ校物理学部及び生物学部卒。

– ダイヤモンド・オン・ラインにて、「海外戦略アドバイザー杉田浩一が徹底解説 ミャンマービジネス最前線」 (http://diamond.jp/category/s-myanmar2)を連載。

アジア戦略アドバイザリーの主な事業内容と代表者の紹介

東南アジア進出における、戦略立案及びM&Aアドバイザリーに特化した、独立系アドバイザリー会社

主な事業内容について

代表者の略歴

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テーマ

– 日系医療機器メーカーが、東南アジア市場でより市場シェアを確保していくにおいて何が必要なのか

ディスカッションの焦点

– 東南アジアの医療機器分野は、それ自体とても幅広いトピックの中で、今回は下記の考えに基づき、ディスカッションの対象国を絞っている

– 比較的市場規模が大きく、かつ今後も高い成長が見込める国

– その上で、日本社会における高年齢化と、それによる関連業界の発展に鑑み、そうした特性をより発揮しやすい国に注目

– 上記の観点から、タイ、ベトナムをメインの対象国にしている。それに加えてミャンマーを付随的に記載

ディスカッションの基本構成

– タイ、ベトナム、ミャンマーを中心とした東南アジアの医療市場の横軸比較から、相対的な位置づけについてご説明

– 各国において、以下の内容をご説明

– 其々の国における医療関連事業環境の特徴の整理

– 法的規制と進出時の留意点

– 進出における課題と論点

– まとめとして、東南アジアでの進出におけるキーポイントをご説明

本日のセミナーにおける主要テーマ

4

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東南アジアの医療機器市場比較

Section 2

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東南アジアの医療機器市場の比較: 市場規模

医療機器市場規模

(2014年)

1位:マレーシア

(≒1,800億円)

2位:タイ

(≒1,460億円)

3位:ベトナム

(≒900億円)

出所:Espicom World Medical Markets Fact Book 2014, forecasts to 2019

297 530

697 755

1,215

1,516

482

1,034

1,442 1,626

2,497

3,310

10.1%

14.3%

15.7% 16.6%

15.5%

16.9%

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

0%

5%

10%

15%

20%

フィリピン シンガポール インドネシア ベトナム タイ マレーシア

(US$ mn) (%) 医療機器市場規模と成長見通し 2014

2019予測

CAGR(%) (2014-2019)

医療機器市場は、今後高い成長が見込まれる市場

年平均成長率は、インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアで

いずれも、15%以上の高い成長率が見込まれている。

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7

東南アジアの医療機器市場の比較: 一人当り医療費

各国の国民一人当りの医療費は過去5年間で約5割増加

国民一人当り医療費は、シンガポールが突出。以下マレーシア、

タイに次ぐフィリピン、ベトナム、インドネシアはほぼ同水準。

出所:WHO Global Health Expenditure Database

14 107 111 122

264

423

0

500

1,000

1,500

(US$) 国民一人当り医療費

2008 2013

2,507

東南アジア各国の経済発展に伴い、一人当り医療費も増加傾向が継続。

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公立病院の特徴

患者対応: 一般的に、安い医療費、医師不足、長時間にわたる待ち時間

機器購入に関する管理体制:

一般的に、予算管理が厳しく、高額医療機器の導入には慎重な姿勢

医療機器の購入に際しては、入札制度を採用、回数は年に数回程度

予算管理は専門部署が、各専門医からの要望を反映しつつ、予算見合い

私立病院の特徴

患者対応: 一般的に、高額な自己負担、完全予約で待ち時間がない、設備が近代的で充実

機器購入に関する管理体制:

裕福層取り込みを狙っているため、差別化の為の設備投資に積極的姿勢

医療機器の購入は、適宜行われ、ドクターの裁量が大きい傾向

病院規模にもよるが、予算管理は専門部署又は担当者が、各専門医からの要望を柔軟に反映

東南アジアでは、一般的に公立病院と私立病院では、患者対応、医療機器購入に関する管理体制も大きく異なる。

公立・私立でアプローチ方法は大きく異なる。

8

東南アジアの医療機器市場比較: 病院数と公立・私立の特徴

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9

出所:World Population Prospects: The 2015 Revision

各国の65歳以上の全人口に占める割合

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050

世界

中国

インドネシア

日本

マレーシア

フィリピン

シンガポール

タイ

ベトナム

世界平均に比べて、アジアの一部の国の高齢化が急速に進む予想

2050年に最も高齢化割合が高くなると予想されるのはタイ(31%)

今後、急速に高齢化が進むのはベトナムと予想されている

東南アジアの中でも、急速に高齢化が進むタイ、ベトナムの医療関連市場に注目が集まる。

東南アジアでも高齢化の進み方のスピードは異なる

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タイの医療機器市場

Section 3

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タイの医療機器市場は東南アジアではマレーシアに次ぐ規模

– 2009年から2014年まで、平均年間成長率11.2%で成長してきた

–市場規模は、今後も2014年:12.15億ドル(約1,460億円)→2019

年:25億ドル(約3,000億円)へと、平均年間成長率15.5%での急速な拡大が見込まれている。 (医療専門調査会社Espicom調べ)

タイの医療機器市場の推移 分野別市場構成(2014年推定値)

タイ医療機器業界の特徴: 市場規模

タイの医療機器市場は着実に発展、今後も急速な発展が見込まれている。

出所:Espicom World Medical Markets Forecasts 2014 出所: Espicom World Medical Markets Fact Book

2014

消耗品

25%

画像診断

機器

25% 整形外科・

人工装具

10%

患者補助

6%

歯科製品

6%

その他

28%

714 756

942

1,098 1,154

1,215

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

2009 2010 2011 2012 2013 2014

(US$ m)

今後も高い成長が見込めるタイ医療機器業界

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タイの医療機器市場拡大が見込まれる背景

① 高齢化と人口増加

② 中間所得層の拡大

③ メディカル・ツーリズムに伴う外国人患者の増加

タイ医療機器業界の成長ドライバー

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① 高齢化と人口増加

2010年のタイの人口は6,912万人で、2035年に7,338万人でピークを迎える迄ゆるやかな増加を続ける見通し。

2010年に65歳以上の人口は704万人で全人口に占める割合は8.9%だが、2050年には1,875万人で30%にのぼる見込み

25年以内に今の日本(2014年の65歳以上の人口3,296万人、総人口に占める割合:25.9%)と同じような人口構成になる見通し。

タイと日本の全人口に占める65歳以上の割合 タイの人口ピラミッド

タイ医療機器業界の成長ドライバー

出所: UN, World Population Prospects: The 2015 Revision

0 1,000 2,000 3,000

01,0002,0003,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

タイでは、今後25年以内に、今の日本と同等水準の高齢化社会に突入する

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

日本 タイ

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② 中間所得層の増加

経済産業省「通商白書」(2011)によれば、1家計あたりの年間可処分所得が5,000ドル〜35,000ドル以下の層を「中間所得層」とする

上記の定義に当てはめると、タイの中間所得層は、2000年の2,000 万人強から 2020

年に5,000 万人弱へ、2.5倍も拡大する見込みである。

所得の増加に伴い、病院での診断や治療が可能となり、患者数の増加は新たな病院建設と医療機器の需要増加につながる見込みである。

また、経済発展に伴う所得増加により、生活習慣病も増加傾向

タイ医療機器業界の成長ドライバー

タイにおいては、中間所得層の厚みが今後も拡大。所得水準の上昇に伴い、医療に対する支出金額も増加が予想される。

14

1,390

2,635

2,069

2,986

4,220

4,707 4,916

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

(万人)

出所:経済産業省「通商白書2011」第3章 我が国経済の新しい海外展開に向けて

出所: WHO World Health Profile 2012

タイの中間所得層(可処分所得5,000〜3.5万ドル)

の推移 タイの主な死亡原因(2012年)

構成比(%) (千人)

1 虚血性心疾患 13.3% 68.8

2 脳梗塞 10.3% 51.8

3 下気道感染症 9.4% 46.8

4 道路損傷 5.0% 24.9

5 慢性閉塞性肺疾患

4.7% 23.6

6 HIV/AIDS 4.1% 20.7

7 糖尿病 4.1% 20.7

8 肝がん 3.8% 18.8

9 気管、気管支、肺がん

3.5% 17.4

10 腎臓疾患 2.5% 12.7

その他 39.3%

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③ メディカルツーリズム市場

シンガポールやマレーシア同様、タイも近隣諸国及び中東からの診断、治療を目的とする患者の誘致に熱心な病院が多く、競争関係にある。

特に私立病院は積極的設備投資を行っており、より良い診断や治療を提供するため、機械や周辺設備の充実に積極的である。

タイ公衆衛生省によると、タイを訪れた医療ツーリストは 2001 年の約 60 万人から

2012 年には 253 万人と、4倍以上も増加した。

タイで人気の医療サービスとしては、一般診療に加え、美容整形、性転換手術、歯の治療、整形外科、心臓手術等があげられる。

注: 日本が首位に来ているのは、駐在員が含まれるため

15

タイ医療機器業界の成長ドライバー

タイは、医療ツーリズムにおいて、周辺国からの有力な行先になっている。

今後、周辺国での所得水準の上昇に伴い、より利用者が高まることが予想されている。

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タイの病院市場の特徴

タイには公立病院1,027、私立病院321(合計1,348)に加えてクリニックが17,671ある(政府発表)。

医療水準や設備は、地域や公立・私立によって大きく異なる

特に、バンコク病院、サミティベート病院、バムルン病院の三大私立病院が外国人及び現地裕福層を対象とした、高額・高水準のサービスを提供。

タイのトップクラスの医師達は欧米に留学しており、馴染みのある欧米の医療機器を導入する傾向が強いため、そうした恩恵に浴さない日系企業は、苦戦を強いられる状況にある。

タイの病院の特徴

タイは、医療ツーリズムにおいて、周辺国からの有力な行先になっている。

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<私立病院>

患者対応: 高額な自己負担、完全予約で待ち時間がない、設備が近代的で充実

機器購入に関する体制:

全国321病院のうち、15病院が株式市場に上場しており、企業経営の精神、競争原理が働きやすい環境が整っている。

価格競争原理よりも、「良い機器があれば積極的に購入する」意向が顕著。

特に三大私立病院は、タイ及び海外からの裕福層取り込みを狙い、積極的設備投資が行われている。

医療機器の購入は、適宜行われ、ドクターの裁量が大きい傾向

病院規模にもよるが、予算管理は専門部署又は担当者が、各専門医からの要望を柔軟に反映

医療機器各社の医師に対する売り込みが非常に積極的。

高額医療機器の売り込み、積極的医師へのアプローチが有効。

株式会社化しているため、医療機器・設備の購入は別会社が管理していることもあり、各病院の体制把握、担当者との関係構築が必須。

タイ病院市場の特徴:私立病院

タイでは、私立病院が急速に発展しており、非常に設備投資にも積極的な傾向。

既に各国の医療機器メーカーも積極的アプローチを進めている。

製品特性により、ターゲットが私立か、公立かにより、異なるアプローチが求められる。

よりドクターの裁量が大きい私立病院

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私立サミティベート病院のコンファレンス会場 私立バムルン病院の病室

私立バムルン病院日本人専用デスク 私立病院内にはスターバックスもある

タイ病院市場の特徴: 充実した私立病院の設備風景

バンコクにあるハイエンドな私立病院は、基本的にホテルのような仕様

18

出所:J-ASAが訪問撮影

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<公立病院>

患者対応: 一般的に、安い医療費、医師不足、長時間にわたる待ち時間

機器購入に関する体制:

予算管理が厳しく、価格競争必須。年に数回の「入札」が基本。

予算管理は専門部署が、各専門医からの要望を反映しつつ、予算見合い

バンコク市内の大学病院、地方の中央病院は比較的設備も充実している。しかし、それ以外は、設備は極めて劣ると言われており、慢性的な医師・人材の不足により、長い待ち時間が指摘されるなど、患者対応は遅れ気味。

医療機器各社は、担当部門、医師へのアプローチを行うも、予算見合いとなる傾向。

しかし、公立病院数は全体の76%と圧倒的に多く、市場規模は大きい。

価格競争必須ながら、ボリューム優先機器では、市場は大きい。

アプローチにおいては、各病院の医師に加え、機器購入担当窓口、担当者との関係構築が必須。

タイ病院市場の特徴:公立病院

ドクター以外にも、購入窓口等との関係がより重要な公立病院 タイにおいて、数では公立病院のほうが76%と圧倒的に多く、一般住民向けの医療を担っている。

担当医のみでどの医療機器を納入するかの決定が出来ないため、機器購入担当窓口等をはじめ、より幅広いマーケティング活動が必要とされる。

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法的管理関係機関

各種医療機器の製造、輸入、販売の管理、許可業務を行うのは、保健省食品及び薬品管理員会(FDA: Food and Drug Administration)の医療機器管理部(MDCD: Medical

Devices Control Division)である。従って、医療機器を製造、輸入、販売しようとする場合、医療機器管理部に申請書類を提出する。

FDA が事業場所の適切性、規定どおりの機器を備えていること、製品の安全性を認めた

とき、医療機器の輸入、販売が許可される。

http://www.fda.moph.go.th/eng/index.stm

輸入に関する法律

タイへの医療機器輸入については、2008 年に制定された医療機器法(Medical Device

Act B.E. 2551 ( A.D. 2008 ))の規定、原則による。

輸入者は、 事業所を登録し、また、輸入する製品は、2008 年医療機器法(及び旧法である1988 年医療機器法)に基づいて発せられた保健省省令、公示に定められた管理基準を満たした品質を有していなければならない。なお、旧法である 1988 年医療機器法は、2008 年医療機器法によって廃止されたとはいえ、この旧法に基づいて発せられた保健省による省令、公示は、現行法に反しない限り、なおも有効とされる。

参考サイト:http://thailaws.com/law/t_laws/tlaw0458.pdf

タイ医療機器業界への参入: 法的規制

タイの医療機器業界は、後ほど述べるベトナムやミャンマーよりも、法的な透明性は総じて高いといえる

20

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バリューチェーンの構造

タイにおけるバリューチェーンの特徴

医療機器の輸入に際しては、輸入前に事業所の登録、製品の品質管理体制を整えることが必要となる。

事業所登録は、医療機器製造者、輸入者は、保健省食品及び薬品管理員会(Food

and Drug Administration) の許可取得後、製造、輸入手続きを行うことができる。

輸入・販売代理店は、各担当者が公立・私立病院へアプローチを行うが、特に医療機器採用を決定する部門やドクターへのアクセスが一つの差別化要因ともなっている。

販売代理店担当者は、こまめな医師へコンタクト、最新医療機器の紹介を通じて、試験採用をうながし、販売にこぎつける。

一部、私立病院は機器・設備の購入を一括管理する別会社を設立している。

タイ医療機器業界への参入: バリューチェーンとその特徴

タイにおいて、医療機器の輸入に際しては、事前に事業所の登録等を行う必要がある。

21

国内外

製造業者

(現地)輸入・

販売代理店

(一部二次代理店も)

公立・私立病院、

クリニック

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現地販売代理店

タイでは、国内に法人を持たない企業が製品販売許可を保持する事はできない。よって、代理店がライセンスホルダーとなり、後々の販路確保の為代理店選びが非常に重要となる。

代理店が関税の支払いやその他法令上の義務を負う事になるため、代理店が輸入・買取の形で販売を行う事が基本となり、資本力が問われる。(尚、製造業の場合は100%現地販売会社設立が可能)

多くの外資系(マルチナショナル)とローカル系代理店(ディストリビューター)が存在し、病院との重要なつなぎ役を果たしている。

タイにおいては機器の種類や特性にもよるが、病院からの代金回収には約90日(場合

によってはそれ以上かかるケースも)必要となるため、財務基盤が弱い傾向にあるローカル・ディストリビューターはこの間の資金繰りをする財務的体力が求められる。それ故、ローカル代理店の買取量が制限されるケースも聞かれた。

競合状況

既に多くの欧米系・多国籍医療機器企業及び日系企業が現地販社を有しており、これらの企業はタイを周辺国(カンボジア、ラオス、ミャンマー等)への販売戦略拠点としている。

タイ医療機器業界への参入: チャネル戦略上の留意点

タイ市場への販売において、現地販売代理店の役割は大きい。

販売代理店の差別化のポイントの一つとして、財務的体力も挙げられる

タイは、周辺諸国を含めての販売拠点となっている。

22

Page 24: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

タイの医師の中には、欧米への留学経験者が多いため、欧米の医療機器に対する馴染みや安心感が強い。

一方、日本の医療機器に関しては、漠然と品質が良いという印象は(他の機械類同様)あるものの、馴染みは薄い傾向がある。

まずは使ってもらう事から始まる

販売店の営業担当者の手腕が問われるところ

医師間の情報交換は、学会などでも積極的に行われ独自のネットワークが形成されている。積極的なネットワークへのアプローチが求められる。

医師の多くは英語を理解するものの、英語で円滑にコミニュケーションをとれる医師が多い訳ではない。やはり、タイ人医師にはタイ人が有効と考えられる。

タイ医療機器業界への参入: タイの医師に対するアプローチポイント・留意点

特に私立病院において、重要な購買決定権を持つ医師の多くは、欧米への留学経験者が多い。

その結果、その時に使って慣れている欧米系の医療機器を継続して使用する傾向が強い。

日本製品の良さが伝わる以前で、彼らの選択肢に入っていないケースも。

23

Page 25: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

日本の医療機器に対する評価:

– 総じて日本メーカー製品に対する評価は高い。中国製を入れてもすぐ壊れるなどトラブルが多いが、一方で日本企業が中国で生産したものは問題が少ないため、どこで生産したか以上に、日本企業が生産したかを見てくる。

日本企業の進出の遅れ:

– 一方で、このような全般的な日本製品に対する高いイメージにかかわらず、欧米医療機器メーカーの進出が先行している

– 加えて現地の医師や販売店からも、日本企業の売り込みの弱さが指摘される。欧米機器メーカーが他の(電子カルテなど)機器メーカーと連携してアプローチをしているケースも聞かれる。

– 現地のニーズに対して、それほど現場の状況を見ずに売り込んでくるケースが多いとのコメントも。

タイ進出に不可欠な体制:

– 医療機器メーカーがタイに進出するにあたり、不可欠なのは、メンテナンスやアフターケア体制である。売り切り商品と違い、精密な機械ほど、アフターケアが必要不可欠となりその体制が整わなければ、進出は難しい。

– 併せて、現地ニーズをしっかりくみ取り、それに応じた価格・性能の製品の提案が求められる

タイ医療機器業界への参入: 日本企業に対する評価と求められる事項

日本企業の製品に対するイメージは総じて高いものの、マーケティング戦略、フォローアップ体制の不十分さから、現地で十分な市場への浸透がなされていない

24

Page 26: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

ベトナムの医療機器市場

Section 4

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ベトナムの医療機器市場は東南アジアではタイに次ぐ規模

–市場規模:2014年:7.55億ドル(約906億円)→2019年には16億ドル(約1,900億円)へと急速な拡大が見込まれている。 (医療専門調査会社Espicom調べ)

ベトナムの医療機器市場の推移 分野別市場構成

ベトナム医療機器業界の特徴:市場規模

ベトナムの医療機器市場は着実に発展、今後も急速な発展が見込まれている。

出所:Espicom World Medical Markets Forecasts 2014 出所: Espicom World Medical Markets Fact Book

2014

459 520

561 599

645

755

0

100

200

300

400

500

600

700

800

2009 2010 2011 2012 2013 2014

(US$ m)

画像診断

機器

23%

消耗品

18%

患者補助

15%

整形外科・

人工装具

6%

歯科製品

5%

その他

33%

Page 28: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

27

ベトナムの医療機器市場拡大が見込まれる背景

① 経済発展に伴う所得の増加

② 人口増加と今後の急速な高齢化

③ 政府の国民皆保健を目指した取組み

ベトナム医療機器業界の成長ドライバー

Page 29: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

28

① 経済発展に伴う所得の増加

ベトナム経済は1990年以降、平均6.9%の高成長を維持し貧困国から脱して

低中所得国に加わったが、経済規模自体が依然小さい。ベトナム政府の公表によれば、2014年のGDPは1,860億米ドル超(約22兆4,600億円)だった。ただ、IMFやその他の機関も今後の5〜6%の継続的経済成長を見込んでいる。

2015年9月30日にハノイで開かれたベトナム世界投資フォーラムで、ブイ・クアン・ビン計画投資相は2015のGDP成長率は6.53%との見通しを示しており、2016年はこれを上回る6.7%になるとの予想を示した。

ベトナムの名目GDPと成長率の推移 ベトナムの中間所得層

(可処分所得5,000〜3.5万ドル)の推移

ベトナム医療機器業界の成長ドライバー

出所:IMF World Economic Outlook Database(Oct 2014) 出所: 経済産業省「通商白書2011」第3章 我が国経済の

新しい海外展開に向けて

156 171

188 205

219 239

259 281

5.2

5.4 5.5

5.6 5.7

5.8 5.9

6.0

4.8

5.0

5.2

5.4

5.6

5.8

6.0

6.2

0

50

100

150

200

250

300

2012 2013 E 2014 E 2015 E 2016 E 2017 E 2018 E 2019 E

(%)

名目GDP (USD Billion)

成長率

40 95 126 466

1,749

3,244

4,795

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020

(万人)

Page 30: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

29

② 人口増加と今後の急速な高齢化

国連の「世界人口予測(2012年改訂版)」によれば、2010年のベトナムの人口は8,900万人で、2050年には1,040万人近く迄増加する見込みで、日本に迫る見通しである。

国連推計によると、ベトナムの2010年の高齢化率(65歳以上の全人口に占める割合)は6.5%だが、世界史上いまだかつてない速度で高齢化していると言われている。高齢化率が7%から14%にまで倍加するのにフランスは115

年、スイスで70年であったのに対し、ベトナムはなんと15年から20年しかかからないと予測されている。

ベトナム、タイ、日本の人口予測 ベトナム、タイ、日本の65歳以上人口の割合

ベトナム医療機器業界の成長ドライバー

出典:UN, World Population Prospects: The 2015 Revision

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

(百万人) タイ ベトナム 日本

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

ベトナム: 65歳以上の割合

日本: 65歳以上の割合

タイ: 65歳以上の割合

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30

③ 政府の国民皆保健を目指した取組み

2005年から2014年の医療保険の加入率の推移をみると、順調な増加を示しており、2014 年の加入率は 71.6%に達した。

2000年の国連ミレニアムサミットにおいて、ベトナムはミレニアム開発目標として8つのゴールを掲げており、国民の公的医療保険加入率を2015 年迄に70%以上、2020年迄に80%以上にまで高める目標を掲げている。

ベトナムの保健加入者率の推移

ベトナム医療機器業界の成長ドライバー

出所: ベトナム保健省「Vietnam Health Statistics Yearbook 2012」、Introduction of Vietnam Social Security

28.0

45.0

58.0

66.0 68.8

71.6

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2005 2007 2009 2011 2013 2014

(%)

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31

ベトナムの病院市場の特徴

社会主義国家であるベトナムの医療サービス主体は政府・保健省が管轄する公立病院 (約14,000施設)が中心であり、私立病院(155施設)の数は圧倒的に少ない。

ベトナムでは、公的医療システムとして、レファラルシステムが導入されている。(次項詳細)

より高度な医療を受けるために都市部の公立中央病院に患者が集中す

るため、慢性的に中央病院には人が溢れ、複数の患者が1台のベッドを共有する状況。

都市部の公立中央病院で働く医師が、自前のクリニックを運営していたり、私立病院の医師を兼務している場合が多く、タイのように私立病院中心(私立病院間の兼務はあり)に移る医師は多くはない。医療機器販売における優先アプローチ先としては、公立病院が最大の市場と考えられる。

ベトナム病院市場の特徴

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32

レファーラルシステム

レファーラルシステムは、一般的には「患者紹介システム」や「病診連携システム」と呼ばれ、診療所(保健センター)などの低次医療施設では診療できない重症患者をより高度な医療設備と技術を有する高次医療施設(病院)へ紹介・搬送するためのシステムを指す(国際保険用語集より)。

地方の人々は最寄りの診療所などの低次元医療施設から、段階的に上級の病院へ紹介して貰うことが求められる。しかし、地方部では医師数の不足、レントゲン、超音波検査機などの医療設備が設置されていなかったり、得られる薬にも限界がある。

ベトナム国民の約7割は農村部で暮らしている。国民の約7割が現状医療保険に加入

しているが、たとえ医療保険証を所持していても、医療保険証取得時に定められた医療機関を通さずに、より上のレベルの病院を直接受診した場合、 上乗せ費用を払わなくてはならない。それでも都市部の大病院に行こうとする人々が多い。

ベトナムの医療提供体制

ベトナム病院市場の特徴

出所:各種資料を参考にJ-ASA作成

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33

<私立病院>

患者対応: 高額な自己負担、完全予約で待ち時間がない、設備が近代的で充実

機器購入に関する体制:

私立病院の数は155と依然限られており、規模も小さい所が多い。外資系の私立

病院はグローバル購入が基本となる。フランス系が中心となるが、ベトナムに購買担当者を置いているケースはまれで、シンガポールやその他の海外が管理しているケースが多いと言われている。

価格競争原理は働かず、「良い機器があれば積極的に購入する」意向が顕著。

医療機器の購入は、適宜行われ、ドクターの裁量が大きい傾向

病院規模にもよるが、予算管理は専門部署又は担当者が、各専門医からの要望を柔軟に反映

医療機器各社の医師に対する売り込みが積極的。

高額医療機器の売り込み、積極的医師へのアプローチが有効。

病棟の新設・増設の計画等ヒアリングでは聞かれる事が多いが、公式文書がないため、直接アプローチが有効。

ベトナム病院市場の特徴:私立病院と公立病院の違い

ベトナムでは、私立病院の設立が増加傾向、非常に設備投資にも積極的傾向だが、数がまだ少ない。

タイと同様に、製品特性により、ターゲットが私立か、公立かにより、異なるアプローチが求められる。

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34

<公立病院>

患者対応: 一般的に、安い医療費、医師不足、長時間にわたる待ち時間

機器購入に関する体制:

予算管理が厳しく、価格競争必須。年に数回の「入札」が基本で、現地新聞に告知される(ベトナム語のみ)。

予算管理は専門部署が、各専門医からの要望を反映しつつ予算見合いで決定。事前に保健省への申請・承認が求められる。

ハノイ、ホーチミン、フエなど都市部の中央病院は相対的に設備も医師も充実しているため、格差が大きい。しかし、それ以外は、設備は極めて劣る。

中央病院は慢性的に患者が溢れ、様々な機器が不足しているが、予算管理が厳しく、ODAを多く受けている病院の日本に対する期待は大きい。

公立病院数は全体の85%と圧倒的に多く、市場規模は大きい。

価格競争必須ながら、ボリューム優先機器では、市場は大きい。

各病院の医師に加え、機器購入担当窓口、担当者との関係構築が必須。

ODAで援助を受けている中央病院は、日本企業に対する期待が大きい。

ベトナム病院市場の特徴:私立病院と公立病院の違い

ベトナムでは、前掲の通り公立病院の比率が高い。タイ同様に、公立病院での予算管理は厳しく、より幅広い関係者へのアプローチが要求される。

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35

平均ベッド占有率

ベトナムの医療施設全体の平均のベッ トの占有率は2012年現在で122.67%(Vietnam Health Statistics Yearbook 2012)、一部の病院では200%を超える数値を挙げているそうである。一つのベッドを複数の人が共有しているという事である。

これが公立病院の実情である。これらも、改善の方向にはあると言われるものの、依然深刻な状況が続いている。一つのベッドを複数の患者が共有するということは、感染症などのリスクが高まるという事である。 (一方、ごく一部の私立病院は完全個室・設備の充実が先行している。)

(公立)チョーライ病院の待合室風景 (私立)Vinmec病院の受付風景

撮影: J-ASA

ベトナム病院市場の特徴:平均ベッド占有率

ベトナムの公立病院では一つのベッドを複数の人が共有するような状況となっている。

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公立病院の入札制度

– 公立病院の医療機器購入に関する法律は、2013年11月26日に発行された「入札法2013

(NO.43/2013/ QH13) 」、更に2014 年 6 月 26 日、請負業者の選定に関する入札法の一部条件の施行ガイダンスとなる政令(No. 63/2014/ND-CP )がある。

– 現地ヒアリングによれば、ベトナムの公立病院における入札は基本的に年1〜2回、新聞紙上に告示する事が保健省から義務付けられている。保健省の管轄下にある病院は、入札前に何の機器をどの程度の価格で購入予定であるか予算案を提出し、承認を得る必要があるが、予算管理は近年一段と厳しくなっているという。

法的管理関係機関

– 日本の厚生労働省に相当するのはベトナム保健省(Ministry of Health, MOH)である。その下に複数の部門があり、医薬品管理局(Drug Administration of Vietnam; DAV)、医療機器部(Department of Medical Equipment and Construction; DMEC)がある。

– 保健省内、Department of Medical Equipment and Health Works (DMEHW)が主に医療機器に関するガイドラインを作成し、輸入医療機器の許認可を行う。

– 更に、The Ministry of Science and Technology(MOST)が国内に新たに輸入される診断機器や診断機器の技術及び臨床試験を行う。

輸入に関する法律

– Circular 24/2011/TT-BYT: ベトナムにおける医療機器の輸入規制対象や輸入許可手続きを定めており、輸入許可は基本的に品目単位で取得する。附属書 1 に該当する製品、およびリストに該当しないが、新しい診療方法に使われ、ベトナムに初めて輸入される医療機器は、保健省の輸入許可を取得しなけれ ばならない。

– 許可申請機関はMinistry of Health (保健省)である。

ベトナム医療機器業界への参入: 法的規制

36

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需要決定要因

公立病院による医療機器の調達は、公的病院では入札が基本となり、私立病院は病院内での選定委員会における品質や価格評価に基づいて決定される。

ただ、現地ヒアリングによれば、公立では価格が重要ファクターとなるのに対し、私立では価格インセンティブがあまり重要視されているとは言えず、キーパーソン(ドクターや選定委員)の意思が大きく影響を与える傾向にあると言う。

ベトナムでは、依然私立病院の数は限られており、外資系の私立病院はグローバル購入が基本となる。フランス系が中心となるが、ベトナムに購買担当者を置いているケースはまれで、シンガポールやその他の海外が管理しているケースが多いと言われている。

近年、ベトナム国民所得の向上、経済発展に伴う生活習慣病も増加傾向にあるため、これまでにない高度医療に対応した医療サービスの需要動向に注意が必要と考えられる。

ベトナム医療機器業界への参入: 需要決定要因

37

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バリューチェーン

ベトナムにおけるバリューチェーンの特徴

ベトナムでは輸入医療機器に関して販売についての個別の登録制度は存在せず、輸入許 可を取得するだけでよい。ただし、医療機器の広告にあたっては、別途登録が必要となる。

輸入・販売代理店は、各担当者が公立・私立病院へアプローチを行うが、特に医療機器採用を決定する部門やドクターへのアクセスが一つの差別化要因ともなっている。

販売代理店担当者は、こまめな医師へコンタクト、最新医療機器の紹介を通じて、試験採用をうながし、販売にこぎつける。

一部、外資系私立病院は機器・設備の購入部署はシンガポールやその他の海外拠点が一括管理しているケースが多いと言われている。

ベトナム医療機器業界への参入: バリューチェーンとその特徴

タイと異なり、ベトナムでは、個別の登録制度は存在しない

38

国内外

製造業者

(現地)輸入・

販売代理店

(一部二次代理店も)

公立・私立病院、

クリニック

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現地販売代理店

ベトナムでは、輸入医療機器に関して販売についての個別の登録制度は存在せず「輸入許可を取得した事業者」が販売を行う事ができる。また、医療機器の広告にあたっては、別途登録が必要となる。

注意しなければいけないのは、ベトナムの法律の改正は非常に頻繁に行われ、ベトナム語版の発表後、英語版の公表が遅れ気味なため、適宜確認する必要がある。

幾つかの欧米系・多国籍医療機器企業及び日系企業が現地法人を設立しているが、相対的規模はタイに比べて小さい。現地資本の販売代理店は規模も相対的に小さい傾向があり、注意が必要である。

競合状況

競合状況や市場シェアなどのデータはないが、輸入が90%以上を占めるため、ほぼ輸入国割合が国別シェアとして捉えられよう。一般的に日本の機器は性能は良いが、価格が中国、韓国製に比べて数倍の値段がすると言われている。

特に公立病院は価格を原因とした参入障壁があるものの、私立病院はいずれも価格よりも先行投資として、性能がよい機械を導入したいというコメントが目立った。

一方、現地病院では、GE、シーメンスの大型機器が一括導入されているケースもあった。

ベトナム医療機器業界への参入: チャネル戦略上の留意点

39

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欧米への留学経験者が多いタイと比べると、相対的には留学経験者はそれ程多くない印象だが、留学医師は増加傾向にある。

日本企業の訪問には、積極的に対応してくれる印象が強い。

ただ、公立病院では欧米や低価格で積極的に売り込む中国・韓国勢との価格比較では、とにかく高額というコメントが多く価格競争は必須。

積極的に使ってもらう事が大事だが、

需要に見合った価格帯・機種の提案が求められる。

ODAで日本の機器導入も多く、学術交流による日本の大学病院での研修経験者も相対的に多い印象。日本の大学病院ルートの活用も有効と考えられる。

特に公立病院では、医師は英語を理解するものの、円滑にコミニュケーションをとれる医師は少ない。医療機器購入関係者は更に少ない。やはり、ベトナム人医師にはベトナム人担当者が有効と考えられる。

ベトナムの医師に対するアプローチポイント、留意点

40

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日本の医療機器に対する評価: 日本の積極的ODA等が功を奏し、総じて日本メーカー製品に対する評価は高い。ただ、一般的に価格が高いと言われている。特に予算を充分確保する事が難しいベトナムでは、安価な中国・韓国製との比較と成る場合、5倍近い価格差となる機械も多いという。

ベトナム進出に不可欠な体制: 日系メーカーに限らず(高度機器の場合)メンテナンス対応はタイやシンガポールから行う例もきかれ、メンテナンスを依頼しても数日かかる上、費用もかかる。充分な予算の確保が難しいベトナムの医療機関では、故障したまま放置される医療機器も多いと聞かれた。また、ODAで提供された高度医療機器も適切な利用環境が日本と同様に確保されている訳ではない。医療スタッフの知識と理解も不十分なため故障の原因となる事も多いと聞いた。

(公立)バクマイ病院内修理部門の風景 壊れたまま放置されている医療機器

ベトナム医療機器業界への参入: 日本メーカーに対する評価と課題

現地医療関係者とのミーティングメモより

41

撮影: J-ASA

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ミャンマーの医療機器市場

Section 5

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43

ミャンマーの医療環境は、ベトナム以上に遅れている

– ミャンマーの医療環境は、ベトナム以上に遅れている。従って、富裕者は、タイやシンガポールで医療を受ける。医療ツーリズムの患者供給先

–一方で、都市部では新たに病院の新築が進んでいたり、新規医療機器の購入が始まっていたり、変化のスピードが速い

ミャンマーの医療機器市場は、これから立ち上がる状況

–ようやく2011年の民政移管から、医療関連に対する改革が進み始めたが、まだ病院や医療機関には、十分な資金が回っていない状況。従って、ベトナム以上に、医療機器業界としての将来的なアップサイドは存在

市場としてのリスクは高い

–ようやく2011年の民政移管から、医療関連に対する改革が進み始めたが、

まだ病院や医療機関には、十分な資金が回っていない状況。従って、ベトナム以上に、医療機器業界としての将来的なアップサイドは存在

ミャンマー医療機器業界の特徴

ミャンマーの医療機器市場の立ち上がりはこれからの状況。今後も急速な発展が見込まれている。

ベトナム以上に市場としてのアップサイドがあるミャンマー

Page 45: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

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ミャンマーの医療機器市場拡大が見込まれる背景

① 経済発展に伴う所得の増加

② 医療環境の整備

③ 高齢化の進行

ミャンマー医療機器業界の成長ドライバー

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① 経済発展に伴う所得の増加

ミャンマー経済は、2011年以降の民政移管以降、経済改革が進んだものの経済規模自体が依然小さく、一人当たりGDPも1,200ドル程度と、今だASEANにおいて後発国。

2015年11月8日に行われた総選挙で、アウンサン・スーチー氏の率いる野党のNLDが勝利。今後、来月の3月のスムースな政権移管が実施されれば、さらなる成長が期待できる。

ミャンマーの名目GDPと成長率の推移

ミャンマー医療機器業界の成長ドライバー

出所:IMF World Economic Outlook Database(Oct 2015)

56 57 63 66

71 79

87 96

7.3

8.4 8.5 8.5 8.4 8.3

8.0 7.7

6.6

6.8

7.0

7.2

7.4

7.6

7.8

8.0

8.2

8.4

8.6

0

20

40

60

80

100

120

2012 2013 2014E 2015E 2016E 2017E 2018E 2019E

名目GDP (USD Billion) 成長率 (%)

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② 医療環境の整備の進行

ミャンマーの病院数は、近年増加傾向にある。現在ミャンマー政府も医療環境の改善を、国の優先政策に掲げており、医療環境整備を積極的に進める方向にある。

ミャンマーにおける公立医療機関(2014年)

ミャンマー医療機器業界の成長ドライバー

出所: ミャンマー保健省「Myanmar Health Statistics」、Health Facilities Development

1988-89 2008-09 2009-10 2010-11 2011-12 2012-13 2013-14

総合病院数(公営) 631 846 871 924 987 1,010 1,056

うち保健省管轄 617 820 844 897 921 944 988

うち他省管轄 14 26 27 27 66 66 68

病床数 25,309 38,249 39,060 43,789 54,503 55,305 56,748

1次、2次保健センター 64 86 86 86 87 87 87

母子保健センター 348 348 348 348 348 348 348

地域保健センター 1,337 1,481 1,504 1,558 1,565 1,635 1,684

学校保健チーム 80 80 80 80 80 80 80

伝統医学病院 2 14 14 14 14 16 16

伝統医学クリニック 89 237 237 237 237 237 243

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③ 高齢化の進行

国連の「世界人口予測(2015年改訂版)」によれば、2010年のミャンマーの人口は約5,000万人で、2050年には6,350万人近く迄増加する見込みで、タイを上回る見通しである。

国連推計によると、ミャンマーの2010年の高齢化率(65歳以上の全人口に占める割合)は5%だが、2050年まで緩やかにではあるが上昇し続け、約13.3%になる見通しである。

ミャンマー、ベトナム、タイ、日本の人口予測 同4国の65歳以上人口の割合

ミャンマー医療機器業界の成長ドライバー

出典:UN, World Population Prospects: The 2015 Revision

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

日本 ベトナム タイ ミャンマー

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

日本 ベトナム タイ ミャンマー

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ミャンマーの病院市場の特徴

2012年以降外資のクリニック設置を認め始めたが、規制緩和の結果、増加しているが、内容が施設の増加に追いついていない。

国民一人当たりの医師数比較においては、ミャンマーは近隣諸国と比べてもそれほど少なくない。一方で、コ・メディカルといわれる看護師等のサポートスタッフの数が、医師の数と比較して少なく、その結果現場での対応能力に支障をきたしている。従って、新しい医療機器等を入れても、使用現場でのメンテナンスがなされていない等の状況になりがち。

より高度な医療を受けるために都市部の市立病院や公立の大病院に患

者が集中するため、慢性的に大病院には人が溢れ、ベトナム同様に複数の患者が1台のベッドを共有する状況。

ベトナム同様に、都市部の公立中央病院で働く医師が、自前のクリニックを運営していたり、私立病院の医師を兼務している場合が多く、タイのように私立病院中心(私立病院間の兼務はあり)に移る医師は多くはない。

ミャンマーの病院の特徴

ミャンマーの病院は、ベトナムの状況に類似しているが、それ以上に今後の改善の余地が大きい。

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関連する主要な法律

ミャンマーにおいて、外資進出における主要な法律は、外国投資法と国営企業法。国営企業法には、医薬品や医療機器、医療サービスについて特段記載はされていないので、主に見るべきは外国投資法になる。

外国投資法関連記載事項

外国投資法においては、下記に上げるようないくつかの規制項目がある。

I. 禁止される経済活動(10分野)

II. 内国資本のみが従事できる分野(25分野)

III.ミャンマー国民との合弁事業の形態においてのみ許可される分野(30

分野)

更に、特別な条件の下で許可される経済活動が規定しており、これは以下の2 つにさらに分けられている

IV.関係省庁の承認があり、合弁であれば許可される分野(43分野)

V. 一定の条件を満たし、合弁であれば許可される分野(21分野)

ミャンマー医療機器業界への参入: 法的規制

49

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外国投資法関連記載事項(続き)

Ⅰ.の禁止される経済活動分野(10分野)においては、直接医療関連に該当する記述は見当たらない。

Ⅱ.内国資本のみが従事できる分野(25分野)について、 製造業の中には下記の記載がある。

– 2 伝統薬の製造

– 5 原産の(伝統的な)薬草の栽培

それとは別に、サービス業のくくりの中で、下記の5つの分野が関連する可能性がある。「伝統薬」や「伝統医療」等の分野が 特に規制されている点が特徴。これは、文字通り古来現地に 伝わる薬や治療法で、薬草や食事療法等も含む医療行為を指す。

– 1.専門医による伝統的な民間の病院

– 2.伝統薬の原材料取引

– 3.伝統薬の研究分析事業

– 4.救急サービス

– 5.高齢者医療センターの設立

ミャンマー医療機器業界への参入: 法的規制

50

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外国投資法関連記載事項(続き)

Ⅲ. ミャンマー国民との合弁事業の形態においてのみ許可される分野(30分野)に

おいては、ミャンマーの外国投資法は、国内産業を保護しようとする目的から、特定の業種については合弁に よってのみ認められる分野を30業種制定。医療関連に係わる事業としては下記の記載がある。

外国投資法で記載されていないものが規制対象外であると必ずしも言い切れない点については留意。記載されている内容以上に保守的に解釈されるケースは、他の業種においても散見されるため、具体的な内容については関連する行政機関に確認することが必要。

ミャンマー医療機器業界への参入: 法的規制

51

6. 保険省 (The Ministry of Health)

(1) 私立病院

(2) 個人診療所

(3) 民間の診断サービス

(4) 民間の医薬品製造

(5) ワクチン、診断器具並びにスクリーニングおよび検査キットの研究

(6) 民間の医療保健施設および訓練学校

(7) 伝統的な医薬品原材料の売買

(8) 伝統的な薬草の栽培および生産

(9) 伝統薬の研究および研究所

(10) 伝統薬の製造

(11) 伝統薬の病院

Page 53: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

高度医療機器の中古品横行

CTスキャン・MRI等の高度医療機器は、患者に対するアピールとしてミャ

ンマーの医療機関で需要が大きいが、初期費用が高く、新品で導入できる医療機関は非常に限定的。そうした中で、中古医療機器が横行。

やはり安全面・利用面での問題が多く、手術中に天井に吊るしている手術機器が落下した事故や、手術中に中古の機器が止まり、生命維持ができず死亡した事故等も。その影響で 2014年10月頃から2015年4月にかけて、一時期高度医療機器の中古は輸入禁止になっていた。

だが、このような禁止措置がとられても、それでも措置に対する抜け穴を

使って中古の医療機器が流入。今回の輸入 禁止措置は、あくまで中古品

の購入に対して行われていたもので、寄付での入手という形態は、禁止対象外であったため、そうした形態で、継続して中古の医療機器が市場に流通。

現在では上記の措置は解除されたが、同様の事故が起これば再開する可能性も。そうなれば、おそらくまた「寄付ルート」を通じて流入が継続する。

ミャンマー医療機器業界への参入: 参入の際の留意点

52

Page 54: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

高度医療機器販売のあり方

新品市場においては、その後のメンテナンス費用も込みで販売価格に織り込んで売るという販売形態も。日本で6,000万円ほどの新品MRIを2億円ほどで売り、その

後のメンテナンスや修理を全て無料にするというケースなど。しかし、初期投資額が大きく、価格面で厳しいため、依然として違法の中古品を購入し、メンテナンス会社のエンジニアに賄賂を渡してメンテナンスしてもらっている病院も多い。

販売側も、送料・通関・保険・設置費用・初期的なメンテナンス費用等の観点からどうしても初期コスト自体が高くなるのに対し、あまりにも故障が多く、そうしたモデルでは利益率が良くないという問題。

それを受けて、最近はメーカーによる1年保証に切り替わり、1年経過以降は別途メ

ンテナンス契約を結ぶ方式にシフト。それでもなお、メンテナンス契約を結びたがらない病院が多く、それがさらなる故障の原因に。

そうした中で、一部の日本の医療機器メーカーは、日本では売れない型落ちの高度医療機器を無料で入れて、メンテナンスによって事業化することを画策。だが、既に高度医療機器で進出している企業では、メンテナンスを行える人材が不足しておりサービスに遅れが出ているという話も。高度医療機器におけるポイントはしっかりとした保守点検体制。

ミャンマー医療機器業界への参入: 参入の際の留意点

53

Page 55: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

高度医療機器に比べると健闘しているディスポーザブル系

高度医療機器に比べると注射器・カテーテル等のディスポーザブル系や、レントゲン等で日本は健闘。アフターサービスに非常に力を入れてミャンマーに重点的に力を割いて成功している企業もある。それでも全体で 見ると進出が本格化していないのは、法整備や慣行蓄積による確実性の確保について懸念が残っているため。

進出における課題

医療機器の販売について主導権を握っているのは代理店。現時点では圧倒的な1

強が存在するわけではなく、基本的には横並びで複数存在しているのが現状。そのため複数のメーカー が1つの代理店に頼らざるを得ないという状況はまだ発生し

ていない。逆に、代理店からしても医師たちの需要に応じて様々なメーカーの機器を取り扱おうという姿勢なので、メーカー側の要望で独占契約を結ぶのは難しい。故に他の東南アジア諸国で見られるような、代理店との独占販売契約関係でのトラブル事例はまだ蓄積していないが、今後生じる可能性は十分ある。

また、現地医師の知識不足からくる問題も多い。レントゲンやCTで放射線の被ばく

量が国際基準を大幅に超えたり、酸素ボンベのメンテナンスが行き届いていないためカビが繁殖しかえって使わない方が良かったりなど。

進出においては、代理店・医師等、現地のプレイヤーを教育していく姿勢が重要。

ミャンマー医療機器業界への参入: 参入の際の留意点

54

Page 56: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

まとめ

Section 6

Page 57: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

大きく環境が異なる新興国市場では、市場特性合わせた戦略的アプローチが必要不可欠である。

① 市場に併せた製品・アプローチ

公立病院: 予算に限りが有り入札が基本と成る為、厳しい価格競争が予想される。

▶ ︎需要に合わせた価格帯、機種の提案

▶ ︎初期投資を抑え、メンテナンスと組み合わせた契約形態の提案

▶ ︎現地語を話せるスタッフからの医師や購入担当者への積極的アプローチ

私立病院: 基本的に富裕層を対象としており、価格インセンティブが働かない傾向。

▶ ︎ 高額機器にも興味があり、他の機器とも組み合わせた積極的紹介

▶ ︎︎ 初期投資を抑え、メンテナンスと組み合わせた契約形態の提案

▶ ︎︎ 現地語を話せるスタッフからの医師や購入担当者への積極的アプローチ

まとめ

56

Page 58: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

② 異なる医療水準と市場動向

タイ: 医療水準も高く、私立病院はホテル並みの施設を完備する体制

。公立病院も高齢化対応、海外からの患者受け入れ体制充実に積極的。

▶ ︎ 医療関連の精密機器に限らず、周辺施設機器、介護機器の需要が見込まれる

▶ ︎ 日本に比べ、介護機器自体を知らない人が多いため、積極的アプローチが必要

ベトナム: 一部の私立病院は高度医療機器の投入、施設の充実をはかる

が、数は少ない。主体は公立病院であり、医療水準・設備ともに圧倒的にタイを下回る。ただ、日本のODAなどにより、日本の大

学病院との連携も多い。日本の医療機器の認知度は高く、欧米メーカーとシェアは拮抗。

▶ ︎ 日本と異なる環境をまず、見る必要がある。

▶ ︎ 日本企業の視察、売り込みには非常に積極的に対応。

▶ ︎ 日本の大学病院ルートからのアプローチも有効。

まとめ

57

Page 59: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

ミャンマー: 規制緩和の結果、施設数は増加しているが、設備が追いついてい状況。中古機が横行し、メンテナンス体制も揃っていない。

▶ ︎現状に合わせた、低価格・高機能機種の紹介

▶ ︎初期投資を抑え、メンテナンスと組合せた契約形態の提案

▶ ︎︎ 現地語を話せるスタッフからの医師や購入担当者への積極的アプローチ

③共通する課題

日本企業・製品への高い好感度を有している一方、価格が高いという認識・印象が非常に強い。

▶ ︎高価格に値する「製品価値」を売り込む努力が不可欠。

▶ ︎市場に合わせた価格帯・機種の把握が必要。

▶ ︎メンテナンスによる、ライフサイクルコストの根気強い説明

メンテナンス人材の不足

▶ ︎人材確保・育成が不可欠

現地代理店の活用

▶ ︎病院医師への積極的アプローチ、継続的なニーズ把握が必要

まとめ

58

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医療関係補足資料

別添資料 A

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60

東南アジア主要各国基礎データ

基礎データ 日本 インドネシア マレーシア フィリピン シンガポール タイ ベトナム ミャンマー

人口(数千) 127,144 249,866 29,717 98,394 5,412 67,010 91,680 53,259

15歳以下の人口割合 (%) 13 29 26 34 16 18 23 25

60歳以上の人口割合 (%) 32 8 9 6 16 15 10 8

年齢の中央値(歳) 46 28 27 23 38 37 30 29

都市部に住む人口の割合 (%) 93 52 73 45 100 48 32 33

合計特殊出生率(人、女性一人当り) 1.4 2.3 2.0 3.0 1.3 1.4 1.7 1.9

出生数(単位:千人) 1,062 4,691 525 2,404 54 687 1,424 916.5

死亡者数(単位:千人) 1,212.6 1561.2 150.0 582.7 24.2 506.8 527.9 445

出生登録率 (%) 100 67 >90 90 >90 99 95 72.0

一人当たりの国民総所得(PPP $) 37,630 9,260 22,460 7,820 76,850 13,510 5,030 na

WHOの地域分類 Western Pacific South-East Asia Western Pacific Western Pacific Western Pacific South-EastAsia Western Pacific South-East Asia

世界銀行所得分類 High Lower middle Upper middle Lower middle High Upper middle Lower middle Low

平均余命 (歳) 日本 インドネシア マレーシア フィリピン シンガポール タイ ベトナム ミャンマー

出生時 84 71 74 69 83 75 76 66

60歳時 26 18 19 17 25 21 22 17

健康余命 75 62 64 60 76 66 66 57

出所: WHO World Health Profile 2013

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現地ヒアリングによれば、日本の介護関連機器では介護用ベッド、車椅子等の評価が高く、パラマウントベッドの進出が近年では注目される事例として挙げられる。既に、同社は2010

年11月にバンコクに販売会社を設立しており、タイの三大私立病院であるバンコク病院やサミティベート病院に納入もスタートしている。

加えて、欧米人に比べて日本人に近いタイ人の骨格、細やかな操作性において、日本メーカーの車椅子の評価が高いとの話があった。一方で、車椅子の日本の大手3社(日進医療機器、松永製作所、カワムラサイクル)の中で、タイに販売会社を設立しているのは、松永製作所のみである。大手3社はいずれも中国で車椅子の生産を行っている。

介護ビジネス:リエイ

株式会社リエイは、2003年7月にタイ(バンコク)に現地法人を設立し、同年 7 月には、現地病院が経営する准看護師養成学校と提携してタイ人介護人材を2003年~2005年迄の 3 年間で 60 名輩出した。同時並行で日本人を対象に介護付サービスアパートメント運営(ロングステイ事業) を行ったものの、日本の経済低迷とアジア諸国の環境変化等により2007年に中止し、介護サービスの対象顧客を日本人から現地高齢者にシフトした。

2011年10月に新たに Thai Riei Co., Ltd.を設立。介護施設の運営と訪問介護サービスを主事業としており、タイ人介護士に日本的介護を教育し、タイ人高齢者を対象にサービスを提供している。

2014年、タイの大手財閥であるSAHAグループの中核会社の一角ブティック・ニューシティー(BTNC)が創設する専門学校「Thanara Acadamy」内にHealth Careコース(介護士育成)を2014年に開講予定。

タイ: 介護業界向け機器需要が増加傾向

車椅子は約8割を中国から輸入している。

61

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車椅子の輸入推移 車椅子の輸入国割合(2014年)

車椅子の中国からの輸入額の推移

2014年7月、手動型車いすの大手メーカ

ーの松永製作所は、タイのバンコクに販売子会社を設立。車いす業界でタイに販売子会社を設立したのは同社が初めて。商品面でも基本機能や品質を保持しながらコストを抑えたアジアモデルを開発し、年内にも現地市場に投入する、とある。実際、現地ヒアリングでも販売は好調との声が聞かれた。

タイ: 車椅子の例(1)

車椅子は約8割を中国から輸入している。

尚、2014年の輸入額は医療機器全体が、内需の減速やデモ・暴動の影響などから一時的に落ち込んだと伝えられているが、需要は堅調とのコメントがあった。

62

0.9 1.0

1.7

2.9 2.4

3.1

4.2

4.8 5.2

4.9

0

1

2

3

4

5

6

-20

0

20

40

60

80

100

2005 2007 2009 2011 2013

(US$ millio

n) (%) 輸入額(右軸)

前年比伸び率(左軸)

中国

77%

米国

6%

台湾

5%

ドイツ

4%

韓国

3%

その他

5%

0.4 0.7

1.2

2.1 2.0

2.5

3.1

3.9 3.9 3.8

0

1

2

3

4

5

-20

0

20

40

60

80

100

2005 2007 2009 2011 2013

(US$ millio

n) (%) 輸入額(右軸)

前年比伸び率(左軸)

出所:Uncomtrade data

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車椅子(機械式駆動機構を有しないもの) (HS:871310)の輸入推移と内訳(2014年)

車椅子(機械式駆動機構を有するもの) (HS:871390)の輸入推移と内訳(2014年)

タイ: 車椅子の例(2)

63

0.7 0.8 1.0

2.0

1.4

2.2 2.5

3.1 3.0 3.0

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

-40

0

40

80

120

160

2005 2007 2009 2011 2013

(US$ millio

n) (%) 輸入額(右軸)

前年比伸び率(左軸)

中国

80%

台湾

7%

韓国

5%

米国

4%

ドイツ

3%

その他

1%

0.2 0.3

0.7 0.9 1.0

0.8

1.7 1.7

2.3

1.9

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

-40

0

40

80

120

160

200

2005 2007 2009 2011 2013

(US$ millio

n) (%) 輸入額(右軸)

前年比伸び率(左軸)

中国

71%

米国

9%

日本

7%

ドイツ

6%

台湾

2%

その他

5%

出所:Uncomtrade data

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日本の医療機器メーカーの最大の顧客である公立病院に対し、これまでの日本政府による病院建設、技術指導、機材提供などの実績は数多い。一例として、「Vietnam-Japan G.I.

Endoscopy Center (ベトナム・日本内視鏡センター)がバクマイ病院にある。これは名古屋大学とベトナム政府が連携したもので、富士フィルムの内視鏡、その他日本の機器が採用されている。

ただ、現地医師から聞かれたのは、ODAで供与された高度医療機器もメンテナンスが行き届かなかったり、使用方法の理解が不十分なために充分な性能が発揮されていない例も多いと言われている。

ベトナム: ODAの実績

64

近年の日本のベトナム 有償資金協力案件の概要

チョーライ日越友好病院整備計画

E/N署名 平成27年度

供与限度額(億円) 286.12

供与条件 金利(%) 本体部分:0.1

コンサルタント部分:0.01

償還期間(年)/ うち据置期間(年)

40/10

調達条件 日本タイド

事業概要 ベトナム南部のホーチミン市において新たな総合病院を建設するものです。

裨益効果 この協力は,ベトナム中央レベルの病院の過負荷軽減,高度医療・予防医療の推進等を通じてベトナム国内の保健医療体制の整備を図り,もって脆弱性への対応に寄与します。

地方病院医療開発計画(第二期)

E/N署名 平成23年度

供与限度額(億円) 86.93

供与条件 金利(%) 本体部分:0.2

コンサルタント部分:0.01

償還期間(年)/ うち据置期間(年)

40/10

日本タイド 日本タイド

事業概要 ベトナム全国から選定された医療サービス強化の緊急度が高い10の省レベルの病院における医療機材の整備及び人材育成による総合的な能力強化を図るものです。

裨益効果 本計画によって,対象となる省の地域医療システムの改善を図ることで,地域住民の健康増進に寄与します。

出所: 外務省 ODA(Official Development Assistance: 政府開発援助)

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東南アジアのマクロ環境比較

別添資料B

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66

マクロ面での比較: 一人当たり名目GDP

各国の経済状況が、どの程度の発展段階にあるかによって、どのような業界がこれから優勢になるかが見えてくる

一人当たり名目GDP(USD): 2014年推定値

• シンガポールに次ぐマレーシアは、日本と同等の所得水準に基づくサービス業等の進出の可能性が高い

• ミャンマー、カンボジア、ベトナムは、低い人件費を活かした製造拠点としての魅力が高いが、インフラの整備面がボトルネックに

Source::IMF World Economic Outlook Database(Oct 2015)

1,081 1,162 1,228 1,608 1,693

2,051

2,862 3,524 3,574

5,896

7,572

11,049

0

3,000

6,000

9,000

12,000

15,000

(USD) 36,222

56,287

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67

マクロ面での比較: GDP規模及び成長率

経済規模比較は、市場のスケール感を見るためにまずは確認が必要

加えてその成長率の比較も、今後の事業の成長性を占う意味では併せて確認すべき点

名目GDP(USD bn): 2014年推定値 実質GDP成長率(%): 2014年推定値

• 現状の経済規模では、東南アジアではインドネシアがUSD889bnと、頭一つ抜けた存在

• タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンは、2位集団を形成

• ベトナム、ミャンマー、カンボジアがそれに続く

• 成長率では、カンボジア、ミャンマーが7%以上の成長率で1位集団を形成

• 域内では、タイが最も成長率が低い

Source::IMF World Economic Outlook Database(Oct 2015) Source::IMF World Economic Outlook Database(Apr 2015)

12 17 63

184 186

285 308 338 405

889

0

200

400

600

800

1,000

1,200

(USD bn) 2,051 2,602

-0.1 0.9

2.9

5.0 6.0 6.0 6.1 6.3

7.0 7.3 7.3 7.4 8.5

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.02014E

2011-2013平均値

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68

マクロ面での比較: インフレ率 失業率

経済の過熱感を見るためにも、インフレ水準は極めて重要

賃金水準の今後の上昇の可能性を見るには、併せて失業率水準も見ていきたい

インフレ率 (年平均、%): 2014年推定値 失業率 (%): 2014年推定値

• 東南アジアでは、インドネシアのインフレ率が近年上昇

• 最近の賃金上昇が著しいミャンマーがそれに続く

• シンガポール、タイのインフレ率が低い

• 一方で、フィリピンの失業率は依然として高水準。賃金上昇圧力を抑制するため、低インフレの要因に

• タイの現状の失業率水準は、実質完全雇用状態であり、その段階でインフレ率を1.9%に抑え込んでいるのは留意すべき点

Source::IMF World Economic Outlook Database(Oct 2015) Source::IMF World Economic Outlook Database(Oct 2015)

1.0 1.9 2.0

2.7 3.1 3.9 4.1 4.2

5.5 5.9 5.9 6.4

7.0

-2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0(%) 2014E

2011-2013平均値

0.8

2.0 2.5

2.9

3.6 4.0 4.1

6.1

6.8

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

(%) 2014E

2011-2013平均値

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69

マクロ面での比較: 人口ボーナス期間

今後のアジア各国での経済成長や、労働力の供給を見る観点から、人口ボーナス期間がいつごろまで続くのかは非常に重要なポイントになる

タイ、シンガポールは既に人口ボーナス期間を終了しており、間もなくマレーシア、ベトナムも終了へ。

一方、最も長く人口ボーナスの期間が続くのはフィリピン。

アジア各国の人口ボーナス期間

• タイ、シンガポールにおいては、人口ボーナス期間は終了

• ベトナム、マレーシアにおいても2020年には終了が予定されている

• 一方で、アジア主要国で最も人口ボーナス期間が今後続くのは、フィリピン

注:人口ボーナス時期は従属人口指数が低下を続ける期間。5年毎の数字で計測。2008年以降は日本経済研究センター予測

出典:日本経済研究センター「人口が変えるアジア」2007年および小峰隆夫『人口負荷社会』日本経済新聞社、和光大学総合文化研究所年報)

40

45

45

45

50

50

50

55

60

75

65

1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050

日本

香港

シンガポール

タイ

中国

韓国

ベトナム

マレーシア

インドネシア

フィリピン

インド

Page 71: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

70

0 2,000 4,000 6,000

02,0004,0006,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

中国 インド

人口比較(2015年予測)

日本

出典:UN, World Population Prospects: The 2012 Revision(June 2013)

マクロ面での比較 人口ピラミッドの比較

1,400 1,289

257

126 103 94 67 54 30 16 7 5 0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

China India Indonesia Japan Philippines Viet Nam Thailand Myanmar Malaysia Cambodia Lao People'sDemocratic

Republic

Singapore

(百万人)

0 30,000 60,000

030,00060,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

0 20,000 40,000 60,000

020,00040,00060,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

Page 72: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

71

0 5,000 10,000 15,000

05,00010,00015,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

0 500 1,000 1,500

05001,0001,500

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

0 1,000 2,000 3,000

01,0002,0003,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

0 2,000 4,000 6,000

02,0004,0006,000

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

インドネシア マレーシア

タイ ベトナム

出典:UN, World Population Prospects: The 2012 Revision(June 2013)

マクロ面での比較 人口ピラミッドの比較

人口ピラミッドは、今後の市場動向を見る上でも重要

日本同様、既に高齢化がスタートしているのは、タイ。間もなく、高齢化を迎えるのはベトナムである。

シンガポール

0 100 200 300

0100200300

0-4

10-14

20-24

30-34

40-44

50-54

60-64

70-74

80-84

90-94

男性 女性

Page 73: 東南アジアの医療機器市場における 進出機会 - ASEAN東南アジアの医療機器市場における 進出機会 〜タイ、ベトナム、ミャンマーを中心に〜

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