japanese linguistics japanese アクセントとイントネーショ...

Post on 03-Aug-2020

9 Views

Category:

Documents

1 Downloads

Preview:

Click to see full reader

TRANSCRIPT

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

Description of Module

Subject Name Japanese

Paper Name 日本語学 (Japanese Linguistics)

Module Title アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

Module ID JPN-P02-M03

Quadrant 1 E-Text

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

アクセントとイントネーション

目的もくてき

:このモジュールでは,世界せ か い

の言語げ ん ご

のアクセントから見み

た日本語に ほ ん ご

(標準語ひょうじゅんご

)のア

クセントの特徴とくちょう

と型かた

,およびイントネーションについて解説かいせつ

する。

1. はじめに

多胡た ご

輝あきら

『頭あたま

の体操たいそう

』に次つぎ

のような面白おもしろ

いクイズがある(一部い ち ぶ

改変かいへん

)。

夫おっと

と妻つま

と娘むすめ

が,デパートへ買か

い物もの

に出で

かけた。妻つま

と娘むすめ

はセーター売場う り ば

へ,夫おっと

はゴルフコーナーに行い

った。娘むすめ

がセーターを試着しちゃく

しているところに夫おっと

がゴルフのド

ライバーを持も

ってやって来き

た。3 人にん

は同おな

じ言葉こ と ば

を言い

ったが,それぞれどのように言い

ただろうか。

夫おっと

「あったかい」

妻つま

「あったかい」

娘むすめ

「あったかい」

このクイズにはアクセントとイントネーションが関かか

わっている。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

2. アクセントの分類ぶんるい

2.1 強 弱きょうじゃく

アクセントと高低こうてい

アクセント

アクセント(accent)とは発音はつおん

される単語た ん ご

1 つ 1 つについて決き

まっている強つよ

さや高たか

のパターンのことである。英語え い ご

は 強 弱きょうじゃく

アクセント(ストレスアクセント,stress

accent)の言語げ ん ご

であり,アクセントが置お

かれた音節おんせつ

(syllable)は,アクセントが置お

かれ

ていない音節おんせつ

より強つよ

く,高たか

く,長なが

く,はっきりと発音はつおん

される。

(1) Jap.a.nése lán.guage pro.nun.ci.á.tion

※「.」(ドット)は音節おんせつ

の境界きょうかい

を示しめ

す。

日本語に ほ ん ご

は 強 弱きょうじゃく

アクセントではなく,高こう

低てい

アクセント(ピッチアクセント,pitch

accent)の言語げ ん ご

である。1 つ 1 つの単語た ん ご

に高たか

さや低ひく

さのパターンが決き

まっている(ちな

みに,古代こ だ い

インドのヴェーダ語ご

(Vedic)も高低こうてい

アクセントであった)。

(2) インド(HLL) にほん(LHL) アメリカ(LHHH)

※H(igh) は高こう

を,L(ow) は低てい

を表あらわ

す。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

2.2 声調せいちょう

高こう

低てい

アクセントでも 1 つの音節おんせつ

の中なか

で高たか

さが変化へ ん か

する言語げ ん ご

もある。中国語ちゅうごくご

には四声し せ い

という 4 つの声調せいちょう

(トーン,tone)があり,声調せいちょう

が違ちが

うと異こと

なる語ご

を意味い み

する。(3)

は [maː] という音節おんせつ

の例れい

である。

(3) ① mā「媽」(媽媽=お母かあ

さん) 最初さいしょ

から最後さ い ご

まで高たか

く平たい

らに(第だい

1 声せい

② má「麻」(麻あさ

,hemp) 中ちゅう

ぐらいの音おと

から一気い っ き

に上あ

げる(第だい

2 声せい

③ mǎ「馬」(馬うま

) 低ひく

く抑おさ

えてから上あ

げる(第だい

3 声せい

④ mà「罵」(罵ののし

る,叱しか

る) 高たか

い音おと

から低ひく

い音おと

に一気い っ き

に下さ

げる(第だい

4 声せい

(4) rìběn「日本」

(4) の例れい

からわかるように,声調せいちょう

は音節おんせつ

ごとに高たか

さのパターンが決き

まっている。このよ

うな言語げ ん ご

を声調せいちょう

言語げ ん ご

と言い

い,中国語ちゅうごくご

のほかタイ語ご

やベトナム語ご

も声調せいちょう

言語げ ん ご

である。イ

ンドの言語げ ん ご

ではパンジャービー語ご

の一部い ち ぶ

の音おん

に声調せいちょう

がある(高声調こうせいちょう

(high tone)と

低声調ていせいちょう

(low tone))。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

2.3 自由じ ゆ う

アクセントと固定こ て い

アクセント

英語え い ご

も日本語に ほ ん ご

もアクセントの位置い ち

は単語た ん ご

によって異こと

なり,どこにアクセントがある

かは予測よ そ く

不可能ふ か の う

である。したがって, 1 つ 1 つの単語た ん ご

についてアクセントの位置い ち

を覚おぼ

なければならない。このようなアクセントを自由じ ゆ う

アクセント(free accent)と呼よ

ぶ。

一方いっぽう

,単語た ん ご

のアクセントの位置い ち

が決き

まっている言語げ ん ご

もある。ドイツ語ご

(German)や

チェコ語ご

(Czech)は最初さいしょ

の音節おんせつ

,スペイン語ご

(Spanish)やイタリア語ご

(Italian)は

最後さ い ご

から 2 番目ば ん め

の音節おんせつ

,チュルク諸語し ょ ご

(Turkic languages)のキルギス語ご

(Kyrgyz)やタ

タール語ご

(Tatar)は最後さ い ご

の音節おんせつ

にアクセントが置お

かれる。このようなアクセントを

固定こ て い

アクセント(fixed accent)と呼よ

ぶ。

3. アクセントの機能き の う

アクセントには語ご

と語ご

を区別く べ つ

する機能き の う

がある。これをアクセントの弁別べんべつ

機能き の う

(distinctive function)と言い

う。

(5) あめ(雨)(HL) あめ(飴)(LH)

(6) はし(箸)が(HLL) はし(橋)が(LHL) はし(端)が(LHH)

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

また,アクセントには語ご

や句く

(phrase)のまとまりを示しめ

す機能き の う

がある。これを頂点ちょうてん

表示ひょうじ

機能き の う

(culminative function)と言い

う。

(7) 「きょうかいにいく。」

a 教会きょうかい

に行い

く。 b 今日き ょ う

,買か

いに行い

く。

(8) 「にわにわとりがいる。」

a 庭にわ

には鳥とり

がいる。 b 二羽に わ

鶏にわとり

がいる。

4. 音節おんせつ

と拍はく

音節おんせつ

(syllable)とは「母音ぼ い ん

を中心ちゅうしん

とした音おん

の集あつ

まり」である。(1) で挙あ

げた単語た ん ご

ついて言い

えば,Jap.a.nése は 3 音節おんせつ

,lán.guage は 2 音節おんせつ

,pro.nun.ci.á.tion は 5 音節おんせつ

であ

る。逆ぎゃく

に script や strength は母音ぼ い ん

が 1 つしかないので 1 音節おんせつ

である。この例れい

からわか

るように,英語え い ご

の音節おんせつ

構造こうぞう

は多様た よ う

で,strength [stréŋkθ] のような CCCVCCC(V は母音ぼ い ん

,C

は子音し い ん

を表あらわ

す)の構造こうぞう

も許ゆる

される。日本語に ほ ん ご

のように母音ぼ い ん

で終お

わる音節おんせつ

を開かい

音節おんせつ

(open

syllable: 例れい

は「さくら(sa.ku.ra)」「くだもの(ku.da.mo.no)」),英語え い ご

のように子音し い ん

で終お

わる音節おんせつ

を閉へい

音節おんせつ

(closed syllable: 例れい

は dog, book.shop)と言い

う。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

拍はく

(mora)は日本語に ほ ん ご

の音おん

の長なが

さを表あらわ

す時とき

に使つか

う単位た ん い

で, 1 つ 1 つの拍はく

はほぼ同おな

じ長なが

さで発音はつおん

される。のばす音おん

「ー」(長音ちょうおん

),小ちい

さい「ッ」(促音そくおん

),「ン」(撥音はつおん

も 1 拍ぱく

として数かぞ

える。

(9) 長音ちょうおん

を含ふく

む例れい

:ノート(3 拍ぱく

),きょうかしょ(4 拍ぱく

)きゅうりょうび(5 拍はく

促音そくおん

を含ふく

む例れい

:きっぷ(3 拍ぱく

),がっこう(4 拍ぱく

),フェイスブック(6 拍ぱく

撥音はつおん

を含ふく

む例れい

:かんじ(3 拍ぱく

),パソコン(4 拍ぱく

),のうりょくしけん(7 拍はく

※「〇ゃ」「〇ゅ」「〇ょ」などは 2 文字も じ

で 1 拍ぱく

として数かぞ

える。

「手紙て が み

」は音節おんせつ

(テ.ガ.ミ)で数かぞ

えても拍はく

(テ・ガ・ミ)で数かぞ

えても 3 で同おな

じだ

が,「新聞しんぶん

」は 2 音節おんせつ

(シン.ブン)・ 4 拍ぱく

(シ・ン・ブ・ン)で数かず

が異こと

なる。ほかに,

「救 急 車きゅうきゅうしゃ

」は 3 音節おんせつ

(キュー.キュー.シャ)・ 5 拍はく

(キュ・ー・キュ・ー・シャ),

「通とお

った」は 2 音節おんせつ

(トーッ.タ)・ 4 拍ぱく

(ト・ー・ッ・タ)である。

日本人にほんじん

にとっては音節おんせつ

より拍はく

の感覚かんかく

が生活せいかつ

に根付ね づ

いており,俳句は い く

や川柳せんりゅう

の「5・7・

5」,短歌た ん か

の「5・7・5・7・7」は拍はく

の数かず

を表あらわ

している。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

(10) 俳句は い く

の例れい

(小林こばやし

一茶い っ さ

[1763-1828]の俳句は い く

「やれ打う

つな 蝿はえ

が手て

をすり 足あし

をする」

意味い み

:これ,叩たた

いてはいけない。蝿はえ

が手て

を擦す

り合あ

わせ,足あし

を擦す

り合あ

わせて命乞いのちご

をしているではないか。

5. 日本語に ほ ん ご

のアクセントの特徴とくちょう

と型かた

2 節せつ

では日本語に ほ ん ご

が高低こうてい

アクセントであることを見み

た。ここでは日本語に ほ ん ご

のアクセント

(標 準 的ひょうじゅんてき

な東京とうきょう

のアクセント)の特徴とくちょう

と型かた

について見み

る。まず,アクセントの

特徴とくちょう

を 2 つ挙あ

げる。

① 1 拍目ぱ く め

と 2 拍目は く め

の高たか

さが異こと

なる。つまり,1 拍目ぱ く め

が高たか

ければ 2 拍目は く め

は低ひく

く,1 拍目ぱ く め

低ひく

ければ 2 拍目は く め

は高たか

い。

(11) はる(春)HL あき(秋)HL もみじ(紅葉)HLL

(12) なつ(夏)LH ふゆ(冬)LH さくら(桜)LHH

② 単語た ん ご

の中なか

では一度い ち ど

下さ

がったら二度に ど

と上あ

がらない。HLL(例れい

:ごはん(ご飯はん

))や LHL

(例れい

:たまご(卵たまご

))というパターンはあっても HLH というパターンはない。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

次つぎ

にアクセントの型かた

について述の

べる。日本語に ほ ん ご

のアクセントは,高こう

から低てい

への下さ

がり

目め

(アクセント核かく

(accent kernel)と言い

い, ̚ で表あらわ

す)がある起伏型きふくがた

とアクセント核かく

ない平板型へいばんがた

に大別たいべつ

される。起伏型きふくがた

はさらにアクセント核かく

が単語た ん ご

のどこにあるかによって,

頭あたま

高型だかがた

,中高型なかだかがた

,尾お

高型だかがた

に分わ

けられる(表ひょう

1 )。

表ひょう

1 アクセント型がた

の分類ぶんるい

アクセント核かく

がある

(起伏型きふくがた

アクセント核かく

が単語たんご

の始はじ

めの拍はく

にある(頭あたま

高型だかがた

アクセント核かく

が単語たんご

の途中とちゅう

にある(中高型なかだかがた

アクセント核かく

が単語たんご

の最後さ い ご

の拍はく

にある(尾お

高型だかがた

アクセント核かく

がない(平板型へいばんがた

それぞれの型かた

の具体例ぐたいれい

(3 拍語ぱ く ご

の場合ば あ い

)は次つぎ

の通とお

りである。

(13) a タ̚タタ(頭あたま

高型だかがた

)HLL 例れい

:ごはん(ご飯はん

b タタ̚タ(中高型なかだかがた

)LHL 例れい

:たまご(卵たまご

c タタタ̚(尾お

高型だかがた

)LHH 例れい

:さしみ(刺身さ し み

d タタタ(平板型へいばんがた

)LHH 例れい

:さかな(魚さかな

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

上うえ

で述の

べたアクセントの特徴とくちょう

①(1 拍目ぱ く め

と 2 拍目は く め

の高たか

さが異こと

なる)から,頭あたま

高型だかがた

以外い が い

の型かた

は 1 拍目ぱ く め

は低ひく

く,2 拍目は く め

は高たか

くなる(平板型へいばんがた

と言い

っても HHH ではなく,LHH で

ある)。尾お

高型だかがた

と平板型へいばんがた

は単語た ん ご

だけ発音はつおん

した場合ば あ い

は変か

わらないが,後うし

ろに助詞じ ょ し

の「が」

をつけると違ちが

いがはっきりする。尾お

高型だかがた

は「が」で下さ

がるが,平板型へいばんがた

は「が」をつけて

も下さ

がらない。(14) は「花はな

」(尾お

高型だかがた

)と「鼻はな

」(平板型へいばんがた

)の例れい

である。

(14) 単語た ん ご

だけ : a はな(花) b はな(鼻)

単語た ん ご

+「が」: a はな̚が(花が) b はなが(鼻が)

6. イントネーション

単語た ん ご

における音おと

の強 弱きょうじゃく

や高低こうてい

をアクセントと言い

うのに対たい

し,文ぶん

全体ぜんたい

(文末ぶんまつ

も含ふく

む)

に現あらわ

れる音おと

の高低こうてい

をイントネーション(intonation)と言い

う。アクセントは語ご

と語ご

区別く べ つ

や語ご

・句く

のまとまりを示しめ

すが,イントネーションは話はな

し手て

の発話は つ わ

意図い と

(utterance

intention)を表あらわ

す。

イントネーションにはたくさんの種類しゅるい

と分類ぶんるい

があるが,ここでは主おも

なものだけ取と

上あ

げる。上 昇 調じょうしょうちょう

(↑)は基本的きほんてき

に疑問文ぎもんぶん

で使つか

われるが,平叙へいじょ

文ぶん

(declarative sentence)

でも聞き

き手て

への注意ちゅうい

・配慮はいりょ

を表あらわ

す時とき

に使つか

われる。

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

(15) あの映画え い が

,もう見み

ましたか?↑(疑問ぎ も ん

(16) 外そと

,雨あめ

降ふ

ってますよ。↑(注意ちゅうい

・配慮はいりょ

下降調かこうちょう

(↓)は納得なっとく

や反語は ん ご

(rhetorical question)を表あらわ

す。

(17) なるほど。そういうことですか。↓(納得なっとく

(18) あのケチが金かね

を出だ

すもんか。↓(反語は ん ご

自然し ぜ ん

下降調かこうちょう

(→)は意識的いしきてき

に上 昇じょうしょう

も下降か こ う

もさせない場合ば あ い

で(文末ぶんまつ

に向む

かって自然し ぜ ん

に下降か こ う

する),平叙へいじょ

文ぶん

(断定だんてい

)で使つか

われる。

(19) これはいい本ほん

です。→(断定だんてい

Japanese Japanese Linguistics

アクセントとイントネーション (Accent and Intonation)

7. おわりに

「はじめに」で出だ

したクイズの答こた

えはわかっただろうか。答こた

えは次つぎ

の通とお

りである。

夫おっと

「あ̚ったかい?↑」(いいセーターがあったか,娘むすめ

に聞き

いている)

妻つま

「あっ,たか̚い!」(値札ね ふ だ

を見み

て,「あっ,高たか

い!」)

娘むすめ

「あったか̚い。」(セーターが「暖あたた

かい」)

キーワード:

アクセント 強 弱きょうじゃく

アクセント 高こう

低てい

アクセント 声調せいちょう

自由じ ゆ う

アクセント 固定こ て い

アク

セント 弁別べんべつ

機能き の う

頂点ちょうてん

表示ひょうじ

機能き の う

音節おんせつ

拍はく

長音ちょうおん

促音そくおん

撥音はつおん

アクセント核かく

起伏型きふくがた

頭あたま

高型だかがた

中高型なかだかがた

尾お

高型だかがた

平板型へいばんがた

イントネーション 発話は つ わ

意図い と

上 昇 調じょうしょうちょう

下降調かこうちょう

自然し ぜ ん

下降調かこうちょう

*******

top related