有機農産物栄養成分分析 に関する...
Post on 09-Jul-2020
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有機農産物栄養成分分析に関する考察
今治市有機農業推進協議会では、地域有機農業推進事業の一環として、地元産有機農産物の栄養成
分分析を実施した。
1.分析の目的
地元産有機農産物の栄養価を把握し、一般野菜等と比較することによって、有機農産物の販売促
進や普及啓発につなげることを目的とする。
2.分析の対象
①地元産有機にんじんと地元産慣行にんじんの栄養比較
②地元産有機レタスと工場レタスとの栄養比較
3.分析時期
①にんじん…平成21年12月
②レ タ ス…平成22年 3月
4.分析機関
①にんじん…財団法人日本食品分析センター
②レ タ ス…財団法人食品分析開発センターSUNATEC
5.分析項目
項目 項目
基礎成分 水分 ビタミン類 ナイアシン
たんぱく質 葉酸
脂質 パントテン酸
灰分 ミネラル類 ナトリウム
炭水化物 カリウム
エネルギー カルシウム
食物繊維 マグネシウム
ビタミン類 ビタミンA リン
ビタミンB1 鉄
ビタミンB2 亜鉛
ビタミンB6 銅
ビタミンC マンガン
ビタミンE 硝酸イオン
ビタミンK *レタスのみ実施
6.有機野菜の栽培の特徴
①にんじん…鶏糞堆肥主体。有機栽培 10年以上②レ タ ス…EMボカシ主体。有機栽培4年目
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7.考察
今回、有機野菜の栄養成分分析を実施するにあたり、地元産の慣行野菜と工場野菜との成分比較に
加えて、「三訂日本食品標準成分表(1964年)」「五訂増補食品成分表(2005年)」との比較を行うこととした。
(1)「三訂成分表(1964年)」と「五訂増補成分表(2005年)」との比較について1964 年に刊行された「三訂日本食品標準成分表」と 2005 年に刊行された「五訂増補食品成分
表」の比較を行うと、1964 年当時と検出方法が異なっている項目もあり単純に比較することができない項目もあるのだが、「にんじん」、「レタス」ともに多くの項目で含有量が減っていること
がわかる。特に、無機質は、にんじん、レタス共にすべての項目で 1964年を下回っている。にんじんでは、たんぱく質、脂質、ナトリウム、鉄の4項目が半分以下にまで落ちている一方、
ビタミンA(レチノール当量)は2倍近くに増加しているほか、ナイアシンが 16%増加している。
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レタスは、にんじんとは異なりビタミンA(レチノール当量)が 1964年当時の 5.6%しかなく、ナトリウムも 6.7 %と、急激に減少している。脂質とビタミンB2についても半分以下となっている。レタスについては、水分が微増しているのみで、その他の項目は同程度か減少となってい
る。
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(2)地元産慣行にんじんと「五訂増補成分表(2005年)」との比較について次に、今治産慣行にんじんと、五訂増補成分表の栄養価を比較したところ、今治産は標準より
も、栄養価が低いものが多いことがわかる。特に、ミネラルやビタミン、食物繊維ではその差が
大きい。
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(3)工場野菜(レタス)と「五訂増補成分表(2005年)」との比較について工場生産されたレタスと、五訂増補版とを比較したところ、工場野菜は、多くの項目で栄養価
が高いことがわかる。特に、カリウム、マンガン、カロテン、ビタミンC、ビタミンKは突出し
ている。栄養価まで計算され、生産されていると推測される。それは、硝酸イオンの値が高いこ
とからも、肥料を多く施用していることがわかる。
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(4)地元産有機野菜と「五訂増補成分表(2005年)」との比較についてさらに、地元産有機にんじんと、五訂増補成分表とを比較してみると、栄養価が高い項目もあ
るが、地元産慣行にんじんと同様に、標準よりも下回っている項目が多いことがわかる。ナトリ
ウム、亜鉛、マンガンについては、半分以下となっているが、逆に、2倍以上に上回っている項
目はない。
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同じように、地元産有機レタスと五訂増補成分表とを比較してみると、ミネラルは標準と同等
かそれ以上の含有であるが、ビタミン類では、ビタミンCとK以外のすべての項目で標準を下回
っている。特に、ビタミンA(標準の 38%)とビタミンE(標準の 33%)の差が大きい。
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(4)地元産にんじんと地元産有機にんじんとの比較について
地元産にんじんと、地元産有機にんじんの栄養価を比較したところ、全体的に有機にんじんの
ほうが栄養価が高いことがわかる。特に、ミネラルやビタミン類などの栄養価が上回っている。
その中でも、カリウム、鉄は約2倍。銅は3倍になっている。
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(5)工場産レタスと地元産有機レタスの比較について
レタスは、ほぼすべての項目において(特
に、ミネラル類やビタミン類の微量要素)有
機野菜が工場野菜の値を大きく下回ってい
る。特にマンガン、ビタミンA、ビタミンK
ではその差が大きく、工場野菜の 15 %程度しかない。
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8.まとめ
1964 年に刊行された「三訂日本食品標準成分表」から 2005 年に刊行された「五訂増補食品成分表」までの栄養成分の比較を行うと、野菜に含まれる栄養素は減少傾向にあることが見受けられる。
今治産慣行にんじんと、五訂増補成分表の栄養価を比較したところ、今治産は標準よりも、ミネ
ラル類やビタミン類、食物繊維などの微量要素で栄養価が低いものが多いという結果がでた。
また、今治産有機野菜と五訂増補成分表との比較においても、成分表を上回っている項目もある
が、下回る項目が多くなっている。特にビタミン類でその傾向が大きい。
しかし、五訂増補食品成分表は、2001 年刊行の「五訂食品成分表」の分析結果がもとになっており、約 10年前の分析結果との比較になる。そのため、単純に今治産野菜の栄養価が低いとはいえず、10年前とでは、全体的に野菜の栄養素が減少しているということも考えられる。
一方、おなじ年におなじ地域で栽培された有機にんじんと慣行にんじんとの比較では、全体的に
有機にんじんの方が栄養価が高く、特にミネラル類やビタミン類で上回る項目が多くなっている。
さらに、工場野菜については、想像以上に栄養価が高い。硝酸イオン値が高いことからも、栄養
価を計算され、高濃度の養液栽培がなされていることがわかる。
今回の栄養成分分析は、有機野菜、慣行野菜、工場野菜ともに、不特定多数の検体を調査したの
ではなく定点検査であり、品目も限られているため、今回の検査結果が一般的な地元産有機野菜す
べてに当てはまるわけではないので、今後も機会があれば調査を実施していきたい。
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