─期待される教育委員会の役割─ -...

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キャリア教育の更なる充実のために ─ 期待される教育委員会の役割 ─ 文部科学省 国立教育政策研究所生徒指導研究センター 発行:平成 23 年 2 月 事業所 (企業) 経済団体 NPO 家庭 就労支援 諸機関 連携 連携 文部科学省 国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research 作成協力委員(職名は平成 23 年 2 月現在) 小笠原仁美 徳島県立総合教育センター指導主事 鹿嶋研之助 千葉商科大学教授 菅野 茂 仙台市教育委員会学校教育部長 小池楠男 大分県教育庁高校教育課指導主事 佐藤晴雄 日本大学文理学部教授 鈴木大介 千葉県教育庁教育振興部生涯学習課主査 西田健次郎 兵庫県教育委員会義務教育課主任指導主事 羽田 晃 福島市教育委員会学校教育課指導主事 平野善行 茨城県鹿行教育事務所学校教育課長 細野 裕 よこすかキャリア教育推進事業事務局キャリア教育推進コーディネーター 宮下和己 和歌山県立和歌山商業高等学校校長 (敬称略、五十音順) [編集・発行]生徒指導研究センター 平成 23 年 2 月 TEL.03-6733-6882FAX.03-6733-6967 http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div09-shido.html 文部科学省「進路指導・キャリア教育について」 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm 国立教育政策研究所生徒指導研究センター http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div09-shido.html 内閣府「青少年育成」 http://www8.cao.go.jp/youth/index.html 経済産業省「キャリア教育」 http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career- education/index.html 厚生労働省「若年者雇用対策」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha.html 厚生労働省「若者の人間力を高めるための国民運動」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/wakachalle/index.html 国の機関・事業等 URL 日本キャリア教育学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssce/ キャリア教育、進路指導、職業指導及びキャリア・カウンセリング等に関わる研究 と実践の充実・向上を図るために組織された学会です。「日本キャリア教育学会認定 キャリア・カウンセラー制度」を設け、養成研修も行っています。 日本キャリアデザイン学会 http://www.career-design.org/index.php 研究者、学生、実務家、専門家や関心のある市民が参加し、それぞれが自らの枠を越え、 共同して新しい学の形成に参画することを通じ、キャリアデザインの科学を提示す ることを目的として組織された学会です。 日本進路指導協会 http://www7.ocn.ne.jp/~shinro/ 進路指導の普及発展を目的として各種の研究会、研修会などの開催、進路指導に関 する関係諸団体との連絡提携のほか、機関誌の刊行などを行っています。 産業教育振興中央会 http://www.sansinchuoukai.or.jp/ 生徒や教員を対象とした産業教育の振興に資する活動をはじめとして、多くの企業・ 団体等と連携し、職場体験・インターンシップに関する研修プログラム例の開発や 受入企業等の紹介などを行っています。 日本商工会議所「全国の商工会議所一覧」 (検索機能付) http://www.cin.or.jp/cin-cgi/me_list99open.asp 全国商工会連合会「全国の商工会検索」 http://www.shokokai.or.jp/ キャリア教育を進めるにあたって地域の事業所との連携は必須です。連携推進の在 り方について、商工会議所(市)や商工会(町村)に相談することも有効な方策の 一つです。 労働政策研究・研修機構「キャリアマトリックス」 http://cmx.vrsys.net/TOP/ 約 500 職種の仕事内容を写真とともに解説しています。興味、価値観、スキルから 適職を探索したり、これまでの経歴を分析し、それから適職を調べることもできます。 関連機関・事業等 URL 中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo10/index.htm 平成 20 年 12 月 24 日の文部科学大臣からの諮問「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を受けて設置されました。平成 23 年 1 月にとりまとめら れた「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」も掲載されています。 『「キャリア教育」資料集 研究・報告・手引編』 〔平成 21 年度増補版〕-国立教育政策研究所- http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21career.shiryou/21career.shiryou.htm 小学校におけるキャリア教育推進のために「自分に気付き、未来を築くキャリア教育」 (パンフレット)-国立教育政策研究所- http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/syoukyari/shougakkou_panfu.htm 中学校におけるキャリア教育推進のために「自分と社会をつなぎ、未来を拓くキャリア教育」( パンフレット )-国立教育政策研究所- http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21chuugaku.career/chuugakkou.panfu.htm 高等学校におけるキャリア教育推進のために「自分を社会に生かし、自立を目指すキャリア教育」 (パンフレット)-国立教育政策研究所- http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21%20koukou.career/koukou.panfu.htm 『小学校キャリア教育の手引き』-文部科学省- http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/1293933.htm 『中学校キャリア教育の手引き』-文部科学省-(平成 23 年 3 月公表予定) 重要答申・文部科学省及び国立教育政策研究所作成の手引き・支援資料等 キャリア教育についてもっと知りたい場合には、以下のページにアクセスし、情報・資料等を参照してください。 重要資料 UR Lリスト

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Page 1: ─期待される教育委員会の役割─ - NIER...キャリア教育の更なる充実のために 期待される教育委員会の役割 文部科学省国立教育政策研究所生徒指導研究センター

キャリア教育の更なる充実のために─期待される教育委員会の役割─

文部科学省 国立教育政策研究所生徒指導研究センター発行:平成 23年 2月

高等学校

進学・

社会での活躍

中学校

小学校

縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

家庭

就労支援諸機関

縦の連携

横の連携

横の連携

文部科学省

国立教育政策研究所NationalInstituteforEducationalPolicyResearch

作成協力委員(職名は平成 23年2月現在)

小笠原仁美 徳島県立総合教育センター指導主事鹿嶋研之助 千葉商科大学教授菅野 茂 仙台市教育委員会学校教育部長小池楠男 大分県教育庁高校教育課指導主事佐藤晴雄 日本大学文理学部教授鈴木大介 千葉県教育庁教育振興部生涯学習課主査

西田健次郎 兵庫県教育委員会義務教育課主任指導主事羽田 晃 福島市教育委員会学校教育課指導主事平野善行 茨城県鹿行教育事務所学校教育課長細野 裕 よこすかキャリア教育推進事業事務局キャリア教育推進コーディネーター宮下和己 和歌山県立和歌山商業高等学校校長

(敬称略、五十音順)

[編集・発行]生徒指導研究センター 平成 23年 2月TEL.03-6733-6882�FAX.03-6733-6967http://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div09-shido.html

文部科学省「進路指導・キャリア教育について」http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm国立教育政策研究所生徒指導研究センターhttp://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div09-shido.html内閣府「青少年育成」http://www8.cao.go.jp/youth/index.html

経済産業省「キャリア教育」http://www.meti .go. jp/pol icy/economy/j inzai/career-education/index.html厚生労働省「若年者雇用対策」http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha.html厚生労働省「若者の人間力を高めるための国民運動」http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/wakachalle/index.html

国の機関・事業等URL

日本キャリア教育学会http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssce/キャリア教育、進路指導、職業指導及びキャリア・カウンセリング等に関わる研究と実践の充実・向上を図るために組織された学会です。「日本キャリア教育学会認定キャリア・カウンセラー制度」を設け、養成研修も行っています。

日本キャリアデザイン学会http://www.career-design.org/index.php研究者、学生、実務家、専門家や関心のある市民が参加し、それぞれが自らの枠を越え、共同して新しい学の形成に参画することを通じ、キャリアデザインの科学を提示することを目的として組織された学会です。

日本進路指導協会http://www7.ocn.ne.jp/~shinro/進路指導の普及発展を目的として各種の研究会、研修会などの開催、進路指導に関する関係諸団体との連絡提携のほか、機関誌の刊行などを行っています。

産業教育振興中央会http://www.sansinchuoukai.or.jp/生徒や教員を対象とした産業教育の振興に資する活動をはじめとして、多くの企業・団体等と連携し、職場体験・インターンシップに関する研修プログラム例の開発や受入企業等の紹介などを行っています。

日本商工会議所「全国の商工会議所一覧」(検索機能付)http://www.cin.or.jp/cin-cgi/me_list99open.asp全国商工会連合会「全国の商工会検索」http://www.shokokai.or.jp/キャリア教育を進めるにあたって地域の事業所との連携は必須です。連携推進の在り方について、商工会議所(市)や商工会(町村)に相談することも有効な方策の一つです。

労働政策研究・研修機構「キャリアマトリックス」http://cmx.vrsys.net/TOP/約 500職種の仕事内容を写真とともに解説しています。興味、価値観、スキルから適職を探索したり、これまでの経歴を分析し、それから適職を調べることもできます。

関連機関・事業等URL

中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo10/index.htm平成 20年 12月 24日の文部科学大臣からの諮問「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を受けて設置されました。平成 23年 1月にとりまとめられた「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」も掲載されています。

『「キャリア教育」資料集 研究・報告・手引編』〔平成 21年度増補版〕-国立教育政策研究所-http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21career.shiryou/21career.shiryou.htm

小学校におけるキャリア教育推進のために「自分に気付き、未来を築くキャリア教育」(パンフレット)-国立教育政策研究所-http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/syoukyari/shougakkou_panfu.htm中学校におけるキャリア教育推進のために「自分と社会をつなぎ、未来を拓くキャリア教育」( パンフレット )�-国立教育政策研究所-�http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21chuugaku.career/chuugakkou.panfu.htm高等学校におけるキャリア教育推進のために「自分を社会に生かし、自立を目指すキャリア教育」(パンフレット)-国立教育政策研究所-http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21%20koukou.career/koukou.panfu.htm

『小学校キャリア教育の手引き』-文部科学省-http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/1293933.htm『中学校キャリア教育の手引き』-文部科学省-(平成 23年 3月公表予定)

重要答申・文部科学省及び国立教育政策研究所作成の手引き・支援資料等

キャリア教育についてもっと知りたい場合には、以下のページにアクセスし、情報・資料等を参照してください。

重要資料URLリスト

Page 2: ─期待される教育委員会の役割─ - NIER...キャリア教育の更なる充実のために 期待される教育委員会の役割 文部科学省国立教育政策研究所生徒指導研究センター

2 キャリア教育の更なる充実のために

第3章 今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策(抜粋)

 子どもたちの勤労観や社会性を養い、将来の職

業や生き方についての自覚に資するよう、経済団

体、PTA、NPOなどの協力を得て、関係府省

の連携により、小学校段階からのキャリア教育を推

進する。

特に、中学校を中心とした職場体験活動や、普通科高等学校におけるキャリア

教育を推進する。

●教育振興基本計画(平成20年7月 閣議決定)

7.教育内容に関する主な改善事項(抜粋)

(7)社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項

 近年の産業・経済の構造的な変化や雇用の多様化・流動化等を背景として、

就職・進学を問わず子どもたちの進路をめぐる環境は大きく変化している。こ

のような変化の中で、

 将来子どもたちが直面するであろう様々な課題

に柔軟かつたくましく対応し、社会人・職業人と

して自立していくためには、子どもたち一人一人

の勤労観・職業観を育てるキャリア教育を充実する

必要がある。

 他方、特に、非正規雇用者が増加するといった雇用環境の変化や「大学全入

時代」が到来する中、

 子どもたちが将来に不安を感じたり、学校での学

習に自分の将来との関係で意義が見出せずに、学

習意欲が低下し、学習習慣が確立しないといった

状況が見られる。

 今後更に、子どもたちの発達の段階に応じて、

学校の教育活動全体を通した組織的・系統的なキャ

リア教育の充実に取り組む必要がある。

第6章 キャリア教育・職業教育の充実のための様々な連携の在り方(抜粋)

※「縦」の連携の重要性

 一人の人間の成長を考えた場合、小学校から中

学校、中学校から高等学校等の学校間の移行には

連続性があり、このような発達の段階に応じた体

系的なキャリア教育の充実を図るためには、学校

種間の円滑な連携・接続を図ることが重要である。

※「横」の連携の重要性

 教育基本法第13条においては、「学校、家庭及び

地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞ

れの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携

及び協力に努めるものとする」と定めるとともに、

教育振興基本計画においては、基本的考え方の一

つとして、「横」の連携、すなわち、教育に対する

社会全体の連携の強化を挙げている。

●�

中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育

の在り方について(答申)」(平成23年1月)

閣議決定を経た国の重要方針として、キャリア教育を推進することとなった。そこでは、家庭や地域社会との連携、小学校段階からの学年間・学校種間連携がカギとなる。Point

キャリア教育を充実する必要があると明言した。子どもたちの発達の段階に応じた組織的・系統的な取組が求められる。Point「縦」と「横」の連携が必要:教育委員会によ

る支援・指導が不可欠!Point

今日、日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しています。特に産業や経済の変容は雇用形態の多様化・流

動化にも直結し、子どもたちが将来に不安を感じ、学校での学習に自

分の将来との関係で意義が見いだせずに、学習意欲が低下し、学習習

慣が確立していないといった状況も指摘されています。

 このような中で、一人一人が「生きる力」を身に付け、しっかりとし

た勤労観・職業観を形成・確立し、将来直面するであろう様々な課題

に柔軟かつたくましく対応する力を高めることが重要な課題となってい

ます。社会的・職業的自立に必要な能力等を育成するため、キャリア

教育の視点に立ち、社会・職業との関連を重視しつつ、義務教育から

高等教育までの体系的な教育の改善・充実が必要です。

求められるキャ リア教育の充実。

キャリア教育の更なる充実のために 3

(教育の目標)

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲

げる目標を達成するよう行われるものとする。

(略)

個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創

造性を培い、自主及び自律の精神を養うととも

に、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重

んずる態度を養うこと。

三〜五(略)

●教育基本法の改正(平成18年12月)

第二十一条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法

律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標

を達成するよう行われるものとする。

学校内外における社会的活動を促進し、自主、

自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力

並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成

に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

二〜九(略)

職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重

んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択

する能力を養うこと。

●学校教育法の改正(平成19年6月)

7.教育内容に関する主な改善事項(抜粋)

(7)社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項

 近年の産業・経済の構造的な変化や雇用の多様化・流動化等を背景として、

就職・進学を問わず子どもたちの進路をめぐる環境は大きく変化している。こ

のような変化の中で、

 将来子どもたちが直面するであろう様々な課題

に柔軟かつたくましく対応し、社会人・職業人と

して自立していくためには、子どもたち一人一人

の勤労観・職業観を育てるキャリア教育を充実する

必要がある。

 他方、特に、非正規雇用者が増加するといった雇用環境の変化や「大学全入

時代」が到来する中、

 子どもたちが将来に不安を感じたり、学校での学

習に自分の将来との関係で意義が見出せずに、学

習意欲が低下し、学習習慣が確立しないといった

状況が見られる。

 今後更に、子どもたちの発達の段階に応じて、

学校の教育活動全体を通した組織的・系統的なキャ

リア教育の充実に取り組む必要がある。

●�

中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別

支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」

 (平成20年1月)

とりわけ第 10号は、改正前まで中学校の教育目標の一つであったが、今回、文言を全く変更しないまま、当該規定が「義務教育の目標」として位置付けられた。小学校段階からのキャリア教育の必要性を強く示している。Point

Point 「職業及び」という文言は、平成 18年の改正によって新たに加えられた。

高等学校

進学・

社会での活躍

中学校

小学校

縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

家庭

就労支援諸機関

教育委員会による活性化

縦の連携

横の連携

横の連携

 キャリア教育を十分に展開するためには、それぞれの学校におけ

るキャリア教育が「縦」「横」の連携によって支えられる必要があ

ります。児童生徒の発達の段階に応じた「縦」の連携──学年間・

学校種間の緊密な協力や円滑な接続──と、様々な教育力を生か

す「横」の連携──学校と家庭や地域・社会、企業、就労支援諸

機関、職能団体や労働組合等の関係機関、NPO等との協力や協同

──を活性化し、持続させるためには、地域の教育行政を担う都道

府県教育委員会・市町村教育委員会による支援とリーダーシップが

不可欠です。今こそ、教育委員会の更なる力が必要です!

「縦」と「横」の連携

求められるキャ リア教育の充実。

4 キャリア教育の更なる充実のために

●「4領域8能力」の課題 今日「4領域8能力」と広く呼ばれる「キャリア発達にかかわる諸能力(例)」(平成14年・国立教育政策研究所生徒指導研究センター)については、(1)高等学校までの想定にとどまっているため、生涯を通じて育成される能力という観点が薄く、社会人として実際に求められる能力との共通言語となっていない(2)提示されている能力は例示にもかかわらず、学校現場では固定的にとらえている場合が多い(3)領域や能力の説明について十分な理解がなされないまま、能力等の名称の語感や印象に依拠した実践が散見される。等の課題が指摘されてきました。

●「基礎的・汎用的能力」とは何か? 中央教育審議会では、「4領域 8能力」をめぐるこれらの問題を克服するため、就職の際に重視される能力や、その後に提唱された類似性の高い各種の能力論(内閣府「人間力」、経済産業省「社会人基礎力」、厚生労働省「就職基礎能力」など)とともに、改めて分析を加え、「分野や職種にかかわらず、社会的・職業的に自立するために必要な基盤となる能力」として再構成して提示することとしました。※Q2&A2参照 その結果得られたのが「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つから成る「基礎的・汎用的能力」です。右記では、それぞれの能力についての説明を答申から引用します。

●「キャリア」とは何か? 人は、他者や社会とのかかわりの中で、職業人、家庭人、地域社会の一員等、様々な役割を担いながら生きている。これらの役割は、生涯という時間的な流れの中で変化しつつ積み重なり、つながっていくものである。また、このような役割の中には、所属する集団や組織から与えられたものや日常生活の中で特に意識せず習慣的に行っているものもあるが、人はこれらを含めた様々な役割の関係や価値を自ら判断し、取捨選択や創造を重ねながら取り組んでいる。人は、このような自分の役割を果たして活動すること、つまり「働くこと」を通して、人や社会にかかわることになり、そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」となっていくものである。このように、人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ねが、「キャリア」の意味するところである。(答申第1章1(1)本文) また、このように、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程を「キャリア発達」という。(答申第1章1(1)脚注)

●新たな定義の必要性 中央教育審議会「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」(平成11年)では、キャリア教育を「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」であるとし、進路を選択することにより重点が置かれていると解釈された。また、キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書(平成 16年)では、キャリア教育を「『キャリア』概念に基づき『児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育』」ととらえ、「端的には」という限定付きながら「勤労観、職業観を育てる教育」としたこともあり、勤労観・職業観の育成のみに焦点が絞られてしまい、現時点においては社会的・職業的自立のために必要な能力の育成がやや軽視されてしまっていることが課題として生じている。(答申第1章1(1)脚注)※Q1&A1参照

一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育。

新 新キャリア教育の新たな定義

 平成 23年 1月、中央教育審議会は答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を公表しました。

 ここでは、本答申が提示した新たな方向性の説明に絞り、今後目指すべきキャリア教育の在り方の特質を整理します。

中教審が示すキャリア教育

新たな方向性

中央教育審議会答申が示すキャリア教育の姿

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キャリア教育の更なる充実のために 3

(教育の目標)

第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲

げる目標を達成するよう行われるものとする。

(略)

個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創

造性を培い、自主及び自律の精神を養うととも

に、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重

んずる態度を養うこと。

三〜五(略)

●教育基本法の改正(平成18年12月)

第二十一条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法

律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標

を達成するよう行われるものとする。

学校内外における社会的活動を促進し、自主、

自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力

並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成

に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。

二〜九(略)

職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重

んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択

する能力を養うこと。

●学校教育法の改正(平成19年6月)

7.教育内容に関する主な改善事項(抜粋)

(7)社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項

 近年の産業・経済の構造的な変化や雇用の多様化・流動化等を背景として、

就職・進学を問わず子どもたちの進路をめぐる環境は大きく変化している。こ

のような変化の中で、

 将来子どもたちが直面するであろう様々な課題

に柔軟かつたくましく対応し、社会人・職業人と

して自立していくためには、子どもたち一人一人

の勤労観・職業観を育てるキャリア教育を充実する

必要がある。

 他方、特に、非正規雇用者が増加するといった雇用環境の変化や「大学全入

時代」が到来する中、

 子どもたちが将来に不安を感じたり、学校での学

習に自分の将来との関係で意義が見出せずに、学

習意欲が低下し、学習習慣が確立しないといった

状況が見られる。

 今後更に、子どもたちの発達の段階に応じて、

学校の教育活動全体を通した組織的・系統的なキャ

リア教育の充実に取り組む必要がある。

●�

中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別

支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」

 (平成20年1月)

とりわけ第 10号は、改正前まで中学校の教育目標の一つであったが、今回、文言を全く変更しないまま、当該規定が「義務教育の目標」として位置付けられた。小学校段階からのキャリア教育の必要性を強く示している。Point

Point 「職業及び」という文言は、平成 18年の改正によって新たに加えられた。

高等学校

進学・

社会での活躍

中学校

小学校

縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

家庭

就労支援諸機関

教育委員会による活性化

縦の連携

横の連携

横の連携

 キャリア教育を十分に展開するためには、それぞれの学校におけ

るキャリア教育が「縦」「横」の連携によって支えられる必要があ

ります。児童生徒の発達の段階に応じた「縦」の連携──学年間・

学校種間の緊密な協力や円滑な接続──と、様々な教育力を生か

す「横」の連携──学校と家庭や地域・社会、企業、就労支援諸

機関、職能団体や労働組合等の関係機関、NPO等との協力や協同

──を活性化し、持続させるためには、地域の教育行政を担う都道

府県教育委員会・市町村教育委員会による支援とリーダーシップが

不可欠です。今こそ、教育委員会の更なる力が必要です!

「縦」と「横」の連携

求められるキャ リア教育の充実。

4 キャリア教育の更なる充実のために

●「4領域8能力」の課題 今日「4領域8能力」と広く呼ばれる「キャリア発達にかかわる諸能力(例)」(平成14年・国立教育政策研究所生徒指導研究センター)については、(1)高等学校までの想定にとどまっているため、生涯を通じて育成される能力という観点が薄く、社会人として実際に求められる能力との共通言語となっていない(2)提示されている能力は例示にもかかわらず、学校現場では固定的にとらえている場合が多い(3)領域や能力の説明について十分な理解がなされないまま、能力等の名称の語感や印象に依拠した実践が散見される。等の課題が指摘されてきました。

●「基礎的・汎用的能力」とは何か? 中央教育審議会では、「4領域 8能力」をめぐるこれらの問題を克服するため、就職の際に重視される能力や、その後に提唱された類似性の高い各種の能力論(内閣府「人間力」、経済産業省「社会人基礎力」、厚生労働省「就職基礎能力」など)とともに、改めて分析を加え、「分野や職種にかかわらず、社会的・職業的に自立するために必要な基盤となる能力」として再構成して提示することとしました。※Q2&A2参照 その結果得られたのが「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つから成る「基礎的・汎用的能力」です。右記では、それぞれの能力についての説明を答申から引用します。

●「キャリア」とは何か? 人は、他者や社会とのかかわりの中で、職業人、家庭人、地域社会の一員等、様々な役割を担いながら生きている。これらの役割は、生涯という時間的な流れの中で変化しつつ積み重なり、つながっていくものである。また、このような役割の中には、所属する集団や組織から与えられたものや日常生活の中で特に意識せず習慣的に行っているものもあるが、人はこれらを含めた様々な役割の関係や価値を自ら判断し、取捨選択や創造を重ねながら取り組んでいる。人は、このような自分の役割を果たして活動すること、つまり「働くこと」を通して、人や社会にかかわることになり、そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」となっていくものである。このように、人が、生涯の中で様々な役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ねが、「キャリア」の意味するところである。(答申第1章1(1)本文) また、このように、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程を「キャリア発達」という。(答申第1章1(1)脚注)

●新たな定義の必要性 中央教育審議会「初等中等教育と高等教育との接続の改善について(答申)」(平成11年)では、キャリア教育を「望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」であるとし、進路を選択することにより重点が置かれていると解釈された。また、キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書(平成 16年)では、キャリア教育を「『キャリア』概念に基づき『児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度や能力を育てる教育』」ととらえ、「端的には」という限定付きながら「勤労観、職業観を育てる教育」としたこともあり、勤労観・職業観の育成のみに焦点が絞られてしまい、現時点においては社会的・職業的自立のために必要な能力の育成がやや軽視されてしまっていることが課題として生じている。(答申第1章1(1)脚注)※Q1&A1参照

一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育。

新 新キャリア教育の新たな定義

 平成 23年 1月、中央教育審議会は答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」を公表しました。

 ここでは、本答申が提示した新たな方向性の説明に絞り、今後目指すべきキャリア教育の在り方の特質を整理します。

中教審が示すキャリア教育

新たな方向性

中央教育審議会答申が示すキャリア教育の姿

キャリア教育の更なる充実のために 5

今後のキャリア教育の在り方をめぐる疑問にお答えします。

「4領域8能力」から「基礎的・汎用的能力」への転換はどのようにすればよいのですか ?

「基礎的・汎用的能力」への転換にあたっては、「4領域8能力」に基づくこれまでの実践を生かして移行していくことが大切です。その際、両者が共通して、それぞれの学校・地域等の実情や、各学校の児童生徒の実態を踏まえ、学校ごとに育成しようとする力の目標を定めることを前提としている点は、特に重要な視点となります。

Q2A2

中央教育審議会が今回提示したキャリア教育において「勤労観・職業観」は重視されないのでしょうか?

いいえ。今まで同様、重視されます。ただし、直接それらを育てるのではなく、「基礎的・汎用的能力」の育成を主軸とした体系的なキャリア教育を通して、一人一人の児童生徒が、勤労観・職業観をはじめとする価値観を形成・確立できるよう働きかけていくことが求められています。

Q1A1

自他の理解能力

コミュニケーション能力

人間関係形成能力

情報収集・探索能力

職業理解能力

情報活用能力

役割把握・認識能力

計画実行能力

将来設計能力

選択能力

課題解決能力

意思決定能力

人間関係形成・社会形成能力

自己理解・自己管理能力

課題対応能力

キャリアプランニング能力

●人間関係形成・社会形成能力「人間関係形成・社会形成能力」は、多様な他者の考えや立場を理解し、相手の意見を聴いて自分の考えを正確に伝えることができると

ともに、自分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他者と協力・協働して社会に参画し、今後の社会を積極的に形成するこ

とができる力である。

●自己理解・自己管理能力「自己理解・自己管理能力」は、自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」について、社会との相互関係を保ちつつ、今

後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同時に、自らの思考や感情を律し、かつ、今後の成長のために

進んで学ぼうとする力である。

●課題対応能力「課題対応能力」は、仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理し、解決することができる力である。

●キャリアプランニング能力「キャリアプランニング能力」は、「働くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々な立場や役割との関連を踏まえて「働くこと」を位

置付け、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選択・活用しながら、自ら主体的に判断してキャリアを形成していく力である。

※図中の破線は両者の関係性が相対的に見て弱いことを示している。

「4領域8能力」から「基礎的・汎用的能力」へ

基礎的・汎用的能力4領域8能力

Page 4: ─期待される教育委員会の役割─ - NIER...キャリア教育の更なる充実のために 期待される教育委員会の役割 文部科学省国立教育政策研究所生徒指導研究センター

6 キャリア教育の更なる充実のために

・�キャリア教育の意義や必要性あるいは指導内容・方法の理解について教職員間に差があるなど、教職員のキャリア教育に関する理解が必ずしも十分ではない。・�指導内容・方法が未開発で、夢や希望の育成といった指導に偏っている。・�学年や学校全体で取り組む組織・体制が未整備で、学級担任個々の取組になっている。

小学校

・�キャリア教育と進路指導との関連が図られておらず、本来の理念に反して出口指導に偏る傾向がある。・�多くの学校が職場体験に取り組んでいるが、その事前・事後の指導が不十分であり、体験活動に終始する傾向がある。・�学年ごとの優れた活動や指導方法等が学校全体の取組として、継承、改善されていない。

中学校

・�キャリア教育の意義や必要性の理解が不十分で、従前からの進学指導や就職指導に終始する学校が少なくない。・�キャリア教育の全体計画や各学年の年間指導計画などが立てられていない。・�ホームルーム活動等における指導内容・方法の開発が十分に行われていない。

高等学校

各学校種におけるキャリア教育の現状と課題各学校の現状はどうなっているのだろうか?

現状から見えてくる課題は何か?

 小学校・中学校・高等学校においては、児童生徒がそれぞれの発達の段階におけるキャリア発達上の課題を達成することができるよう、学校の教育活動全体を通じて、社会的・職業的自立に必要な基盤となる能力・態度の育成に計画的、組織的に取り組むことが期待されている。 教育委員会にあっては、各学校がキャリア教育の目標を立て、その実現のために指導内容・方法を工夫しながら、学校の教育活動全体を通じて、キャリア教育に取り組むよう指導・援助し、キャリア教育の推進を図ることが求められる。そのためには教育委員会が、各学校のキャリア教育の現状と課題の把握に努め、それに基づく改善方策等について適切な助言を行う必要がある。

教育活動をキャリア教育の視点でつなごう

各学校の取組の活性化!高等学校

進学・

社会での活躍

中学校縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

家庭

就労支援諸機関

小学校

縦の連携

横の連携

横の連携

の連携縦

教職員の意識にばらつきがみられる(キャリア教育の意義や必要性などが十分理解されていない)

指導計画を作成している学校が少ない(キャリア教育の目標、指導計画及び指導内容・方法が確立されていない)

推進組織・体制の構築が進んでいない(校内連携、学校種間及び家庭・地域との連携が不十分)

1現状

2課題

キャリア教育の更なる充実のために 7

・�キャリア教育を通して身に付けさせたい能力や態度を確認し、共通理解を図る。・�学級だけでなく、学年単位や学校の教育活動全体を見通し、計画を立てて取り組む。・�キャリア教育の担当者を決め、推進体制を作り、取り組む。

小学校

・�将来の生き方を視野に、キャリア教育の視点から進路指導の在り方を見直す。・�職場体験等の体験活動を重視しながら、各教科等との関連を図った系統的な取組を計画し推進する。・�学校全体で推進できる組織・体制を作り、3年間を見通した体系的な取組を進める。

中学校

・�キャリア教育の視点から、ホームルーム活動やこれまでの進学指導、就職指導の在り方を見直す。・�体系的な指導計画を立て、組織的・計画的なキャリア教育に取り組む。・�進路指導部(キャリア教育担当分掌)を中心に学年や担任等との連携を深め、関係機関との連携を図った指導体制を構築する。

高等学校

・�小学校段階からのキャリア教育の必要性を認識させるため、校内外の研修を推進する。・�キャリア教育に関連の深い教科等をもとに全体計画を立てるよう指導する。・�学級担任がすべての教科等を見渡しやすいという特性を生かしながら、キャリア教育の視点で教科等をつなぎ体系的に取り組む指導体制づくりを促進する。

小学校

・�キャリア発達における個人差を認識し、個々の生徒に応じた指導となるよう助言する。・�体験活動の指導では、事前・事後指導と直前・直後指導との指導目的を区別して、指導する。・�教科部会や生徒指導部会と連携した推進体制となるよう指導する。

中学校

・�教科の学習と社会的・職業的自立に必要な能力との関連を伝えるとともに、家庭・地域との連携を通じて、特色ある教育活動を展開するよう指導する。・�体験的な学習機会の計画的・系統的な提供を通して、進路を研究し、自己の適性の理解、将来設計の具体化を図らせる。・�校務分掌を有機的につないでキャリア教育に取り組む体制づくりを推進する。

高等学校

改善すべきことは何か?

※各資料については、それぞれのサイトからPDFをダウンロードできます。(裏表紙参照)

教育委員会による指導のポイント!

小学校におけるキャリア教育推進のために「自分に気付き、未来を築くキャリア教育」

小学校

小学校「キャリア教育の手引き」

小学校

中学校におけるキャリア教育推進のために「自分と社会をつなぎ、未来を拓くキャリア教育」�

中学校

中学校「キャリア教育の手引き」�

中学校

高等学校におけるキャリア教育推進のために「自分を社会に生かし、自立を目指すキャリア教育」

高等学校更なる

活性化のために!

既にある資料も活用しよう!

教職員の意識改革のために・�すべての教職員にキャリア教育を正しく理解させ、その意義と必要性を十分に認識させたうえで、日常の教育活動の中で、具体に実践できる力を高めるための研修を充実させる。

指導計画の立案のために・各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動等をキャリア教育の視点で関連付けるよう見直す。・子どもの実態に応じて身に付けさせたい力等を明確にし、その育成方法の具体を示す。

推進組織・体制の構築のために・校務分掌で担当者の役割を明確にして、学校全体で取り組む推進体制を構築する。

3改善

4指導のポイント

Page 5: ─期待される教育委員会の役割─ - NIER...キャリア教育の更なる充実のために 期待される教育委員会の役割 文部科学省国立教育政策研究所生徒指導研究センター

キャリア教育の更なる充実のために 7

・�キャリア教育を通して身に付けさせたい能力や態度を確認し、共通理解を図る。・�学級だけでなく、学年単位や学校の教育活動全体を見通し、計画を立てて取り組む。・�キャリア教育の担当者を決め、推進体制を作り、取り組む。

小学校

・�将来の生き方を視野に、キャリア教育の視点から進路指導の在り方を見直す。・�職場体験等の体験活動を重視しながら、各教科等との関連を図った系統的な取組を計画し推進する。・�学校全体で推進できる組織・体制を作り、3年間を見通した体系的な取組を進める。

中学校

・�キャリア教育の視点から、ホームルーム活動やこれまでの進学指導、就職指導の在り方を見直す。

・�体系的な指導計画を立て、組織的・計画的なキャリア教育に取り組む。

・�進路指導部(キャリア教育担当分掌)を中心に学年や担任等との連携を深め、関係機関との連携を図った指導体制を構築する。

高等学校

・�小学校段階からのキャリア教育の必要性を認識させるため、校内外の研修を推進する。・�キャリア教育に関連の深い教科等をもとに全体計画を立てるよう指導する。・�学級担任がすべての教科等を見渡しやすいという特性を生かしながら、キャリア教育の視点で教科等をつなぎ体系的に取り組む指導体制づくりを促進する。

小学校

・�キャリア発達における個人差を認識し、個々の生徒に応じた指導となるよう助言する。・�体験活動の指導では、事前・事後指導と直前・直後指導との指導目的を区別して、指導する。・�教科部会や生徒指導部会と連携した推進体制となるよう指導する。

中学校

・�教科の学習と社会的・職業的自立に必要な能力との関連を伝えるとともに、家庭・地域との連携を通じて、特色ある教育活動を展開するよう指導する。・�体験的な学習機会の計画的・系統的な提供を通して、進路を研究し、自己の適性の理解、将来設計の具体化を図らせる。・�校務分掌を有機的につないでキャリア教育に取り組む体制づくりを推進する。

高等学校

改善すべきことは何か?

※各資料については、それぞれのサイトからPDFをダウンロードできます。(裏表紙参照)

教育委員会による指導のポイント!

小学校におけるキャリア教育推進のために「自分に気付き、未来を築くキャリア教育」

小学校

小学校「キャリア教育の手引き」

小学校

中学校におけるキャリア教育推進のために「自分と社会をつなぎ、未来を拓くキャリア教育」�

中学校

中学校「キャリア教育の手引き」�

中学校

高等学校におけるキャリア教育推進のために「自分を社会に生かし、自立を目指すキャリア教育」

高等学校更なる

活性化のために!

既にある資料も活用しよう!

教職員の意識改革のために・�すべての教職員にキャリア教育を正しく理解させ、その意義と必要性を十分に認識させたうえで、日常の教育活動の中で、具体に実践できる力を高めるための研修を充実させる。

指導計画の立案のために・各教科、道徳、総合的な学習の時間、特別活動等をキャリア教育の視点で関連付けるよう見直す。・子どもの実態に応じて身に付けさせたい力等を明確にし、その育成方法の具体を示す。

推進組織・体制の構築のために・校務分掌で担当者の役割を明確にして、学校全体で取り組む推進体制を構築する。

3改善

4指導のポイント

社会・

上級学校へ

8 キャリア教育の更なる充実のために

小学校

高等学校

「わたしのキャリアノート」は、児童生徒にキャリア教育に関する学習内容等を学年ごとに1枚にまとめさせるものです。児童生徒はキャリア教育の年間指導計画や学習資料等の関連資料も併せて、1冊のファイルとして蓄積し、上級学校へ持ち上がります。

実践事例

http://www.pref.hiroshima.lg.jp/kyouiku/hotline/06senior/2nd/career/02-0%20note.htmlホームページ

広島県教育委員会

わたしのキャリアノート─夢のスケッチブック─

教育委員会が積極的にリードしよう!

 キャリア教育は、一人の人間の成長にかかわるものであり、それを考えた場合、小学校6年、中学校・高等学校各3年における学年間の移行や、小学校から中学校、中学校から高等学校などの学校種間の移行には連続性を保つことが重要です。このような発達の段階に応じた体系的なキャリア教育の充実を図るためには、学年間、学校種間の円滑な連携・接続を図り一貫した取組を実現させることが必要不可欠です。そのためには、教育委員会のリーダーシップが必須です。

一貫した取組で社会的自立を支援しよう

学年間・学校種間の連携!高等学校

進学・

社会での活躍

中学校縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

家庭

就労支援諸機関

小学校

縦の連携

横の連携

横の連携

の連携縦

○�各学校が各学年・各学校におけるキャリア発達の特性や、異なる学校種の活動についての理解を深め、その理解を前提とした系統性のある指導計画を作成できるようにすること。

○�各学校が児童生徒一人一人の発達の状況を的確に把握し、それに対するきめ細やかな支援を行うために、児童生徒のキャリア発達に対する情報を、次の学年や学校に確実に引き継いでいけるようにすること。○学校種間の連携が円滑に進むようにすること。

目指すべき方向

【具体的方策(例)】◉教育委員会主催の研修会、キャリア教育担当者会の開催◉学校種間の情報交換会の設定・支援◉�先進例の紹介、プログラム例等の提示、『手引き』『ガイドブック』等の編集、指導カリキュラムの作成◉�教育委員会内の密接な連携(義務教育担当と高校教育担当等)◉�中学校・高等学校の連携について、都道府県教育委員会と市町村教育委員会との連携・調整の強化◉�学校種を超えたポートフォリオの継続的活用(記録を累積し、その記録を子ども自身が持って進学する方式など)

社会・

上級学校へ

キャリア教育の更なる充実のために 9

中学校  小学校では、学級担任が基本的に全教科等の指導をしていることから、個々の

担任教師のキャリア教育に対する認識の程度や経験の違いが学級ごとの取組の差を生むことがあります。また、児童の成長・発達が著しいことも考慮する必要があります。そのため、教師一人一人がキャリア教育の理解を深め、児童の発達の段階に応じた6年間を見通す取組を行うことが必要です。

○学校としてのキャリア教育の目標(育成する能力や態度)の設定。○�児童の発達の段階(低・中・高学年)に応じ、キャリア教育の目標に即した全体計画の作成と校内での連携・推進。

○校内キャリア教育研修会の実施。

小学校における学年間連携大切にしたい視点

具体的な手立て

 中学校では教科担任制によるため、個々の教師のキャリア教育と教科指導との関係の捉え方に差が生じてしまうことが考えられます。また、学年単位での取組が多く、学年を超えた情報や資源の共有等に非効率な面が生じることがあります。そのため、進路指導主事等を中心とした指導組織・体制を確立して、学年間の連携を密にして継続的、発展的に取組を進めることが必要です。

○学校としてのキャリア教育の目標(育成する能力や態度)の設定。○�小学校からの系統性をもち、職場体験活動を軸とした3年間の学習や、教科学習等とのつながりに一貫性をもたせた全体計画の作成と校内での連携・推進。○校内キャリア教育研修会の実施。

中学校における学年間連携大切にしたい視点

具体的な手立て

 高等学校では、卒業直後の多様な進路選択を視野に入れた指導が中心となり、いわゆる「出口指導」に偏ってしまうことがあります。将来社会人として自立できることを目指し、入学から卒業までの各学年において将来の社会参画を具体的に見据え、その実現に向けた学習・活動を積み重ねられるよう指導・援助することが求められます。また、学科の特徴や生徒の実態に応じ、学校全体で系統的なキャリア教育を推進する意識を高めていくことが必要です。

○学校としてのキャリア教育の目標(育成する能力や態度)の設定。○�小・中学校からの引継ぎを生かした体系的で一貫したキャリア教育全体計画の作成と校内連携・推進。○進学・就労に向けたインターンシップの充実。○校内キャリア教育研修会の実施。

高等学校における学年間連携大切にしたい視点

具体的な手立て

 キャリア教育では、小・中・高等学校の12年間にわたる継続的・発展的な取組が期待されています。例えば、小学校の職場見学、中学校での5日間の職場体験、高等学校の就業体験(インターンシップ)は、児童生徒のキャリア発達を促す大きな成果が期待できる教育活動です。しかし、学校種間の連携がないまま系統性、発展性を欠いた取組として実施されれば、それらは、児童生徒にとっては新鮮さに欠け、かつ目的意識の低い活動、受入事業所等にとっては負担感が募る活動となってしまいます。 そこで、キャリア教育の推進にあたっては、学校種間で相互の取組の理解を深める機会・場の設定、児童生徒の学習・活動の記録等を引き継ぐ校種間の連携システムを作ることが必要です。後者としては、下記の “実践事例 ”のように、小学校から中学校へ、また中学校から高等学校へと、児童生徒一人一人のキャリア形成に関する学習・活動内容やその成果等に関する記録を作成し、それを引き継いで指導に生かすといった工夫が考えられます。

○�異なる学校種の教職員が集まる研究会等を活用し、相互の情報交換、キャリア発達認識の共有、指導内容の系統的、発展的な接続を図る。○�上級学校への入学前に、学校間連絡会等で、個々の児童生徒のキャリア発達に関する引き継ぎを行う。○�中学校区ごとの、小学校・中学校キャリア教育担当者連絡会等を定期的に開催する。○�中学校の職場体験発表会等へ学区内小学校高学年児童が参加する。○ポートフォリオの継続的活用を図る。

学校種間連携が重要です。大切にしたい視点

具体的な手立て

●�ノートは、児童生徒が小・中・高等学校等へと進学していく過程で、学年ごとにキャリア教育に関する学習を1枚にまとめさせ、上級学校に持ち上がらせましょう。

●�ノート以外に個々の児童生徒のキャリア教育に関する学習の資料もあわせて上級学校へ持ち上がらせましょう。

●�ノートは、学校の児童生徒の状況により修正し、活用しましょう。

高等学校、高等部

●●小学校わたしの

キャリアノート

氏名

●●中学校わたしの

キャリアノート

氏名

●●高校わたしの

キャリアノート

氏名

高等学校、高等部中学校、中学部小学校、小学部

中学校、中学部

●●小学校わたしの

キャリアノート

氏名

●●中学校わたしの

キャリアノート

氏名

中学校、中学部小学校、小学部

小学校、小学部

●●小学校わたしの

キャリアノート

氏名

小学校、小学部 持ち上がる

持ち上がる

活用イメージ

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10 キャリア教育の更なる充実のために

小学校就学前

家 庭

地 域●地域の企業等へのキャリア教育の広報啓発活動●地元経済団体との連携や経済団体所管課との協同による、 体験受入企業等の開拓●学校と事業所・地域との連絡・調整(コーディネート)ができる人材の確保

キャリア教育における家庭・地域の役割

“ 将来の夢 ”などについての家庭での会話や家事の手伝いなどを通して、将来の夢や希望をはぐくむとともに、集団生活に参加しようとする意欲・態度を養う。

基本的な生活習慣の確立(早寝、早起き、朝ご飯、挨拶等)、家事手伝いなど家庭での役割分担、学校教育への協力・参加

地域の行事への参加や職場見学など学校を中心とする地域とのかかわりを通して、自分と地域とのつながりについて理解を得させる。

まち探検、自然体験、農業体験、町内会・子ども会活動、地域清掃、環境活動、職場見学受入、職業人の出前授業等

隣近所や地域の人々との触れ合いや交流などを通して、人や物事とかかわることの楽しさや喜びを味わわせる。

子ども会活動、地域の諸行事、子どもたちが安心して遊べる場の整備

 キャリア教育は、一人一人の生き方にかかわる教育であり、児童生徒が様々な体験をし、多くの人と触れ合うことを通じて、生き方について考えるようにすることが大切です。そのため、学校がキャリア教育を進めるに当たっては、児童生徒がそのような機会・場を得られるよう、家庭や地域の理解を得て、連携・協力を図ることが不可欠です。家庭は子どもたちのキャリア発達を支え、自立を促す重要な場であり、地域はいわばキャリア発達のゆりかごです。家庭や地域の大人の積極的な協力を得ることにより、キャリア教育の充実が図られます。このようなことを踏まえ、教育委員会は、学校と家庭・地域との連携が円滑かつ、効果的に行われるように積極的に支援することが必要です。

縦の連携

高等学校

進学・

社会での活躍

中学校縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

横の連携

横の連携

家庭

就労支援諸機関

小学校

みんなでキャリア教育を支え、進めよう

家庭や地域との連携!

の連携横

─ POINT ─教育委員会内の連携とともに

知事・市町村長部局との協力が必要!

子どもとの触れ合いや家庭での様々な体験を大切にして、人や物事に積極的にかかわろうとする意欲・態度を養う。

会話やスキンシップ、家事の手伝いと感謝・賞賛、生活習慣の形成、友達との遊び

キャリア教育の更なる充実のために 11

実践事例

具体的な活動例

9:30� 挨拶、イベント等11:15� 昼食バイキング13:00� 本日の説明14:30� 名刺交換15:00� クイズ大会

製造業A社

15:00� オリエンテーション15:05� 名刺交換15:10� 仕事内容説明15:40� 作業所説明17:15� 子どもと帰宅

建設業B社

15:00� 記念撮影、知事挨拶15:40� 県庁施設等の見学16:50� 職場見学17:30� 子どもと帰宅

千葉県庁

http://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/zigyou/kyaria/kodomosankan.htmlホームページ

◯�普段どんなところでどんな人と働いているかを見せることができてよかった。◯�実際に職場を見ることで、働くことの具体的なイメージがわいたようです。

◯いつもと違うお父さんが見られてよかった。◯名刺づくりやクイズ大会が面白かった。◯お父さんがどんなことをしているかわかりました。

中学校

学校 社会・上級学校へ

高等学校

家 庭

地 域

家庭での役割の理解と遂行、保護者や身近な大人の職業等の理解を通して、社会の一員としての自覚を高めるとともに、将来の生き方や進路への希望をはぐくむ。

家庭での役割分担、自分自身の生活の管理、職場体験や保護者などの仕事に関する会話、将来設計や進路希望についてのアドバイス、学校教育への協力・参加

社会の一員としての自覚と参画、保護者や身近な大人の生き方(キャリア)の理解を通して、将来の生き方と当面する進路の明確化とその実現への努力を援助する。

家庭の一員としてふさわしい役割分担・遂行、将来の生き方に関する希望とその実現のための学校生活や進路計画についての話し合いや励まし

職場体験や地域の行事への参加などを通して、地域の一員としての自覚を得させるとともに、将来の生き方、進路を考えさせる契機とさせる。

農業体験、ジュニアリーダー活動、地域ボランティア活動、職業人の出前授業、職業調べ、5日間の職場体験受入れ、マナー講話、大学探検等

インターンシップや地域の行事への責任ある参加など異年齢の人々との交流や社会参画の機会を通して、地域の一員としての自覚を高めさせるとともに、リーダーシップやコミュニケーション能力を養わせる。

地域ボランティア活動、職業人の出前授業、キャリアカウンセリング支援、インターンシップ受入れ、社会人との意見交換、マネジメント講話、専門学校、大学との連携等

千葉県教育委員会

子ども参観日を実施千葉県教育委員会では、子どもたちが保護者や大人の働く姿を見たり、家庭で仕事の話をすることで、働くことの大切さについて知る、「子ども参観日」を実施しています。平成21年度は民間企業15社と10の公的機関が参加しました。

●キャリア教育に関する啓発活動(地域広報誌等の活用)●子育て支援事業へのキャリア教育の視点導入(子育て事業担当課との連携)●PTA連絡協議会との協同

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キャリア教育の更なる充実のために 11

実践事例

具体的な活動例

9:30� 挨拶、イベント等11:15� 昼食バイキング13:00� 本日の説明14:30� 名刺交換15:00� クイズ大会

製造業A社

15:00� オリエンテーション15:05� 名刺交換15:10� 仕事内容説明15:40� 作業所説明17:15� 子どもと帰宅

建設業B社

15:00� 記念撮影、知事挨拶15:40� 県庁施設等の見学16:50� 職場見学17:30� 子どもと帰宅

千葉県庁

http://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/zigyou/kyaria/kodomosankan.htmlホームページ

◯�普段どんなところでどんな人と働いているかを見せることができてよかった。◯�実際に職場を見ることで、働くことの具体的なイメージがわいたようです。

◯いつもと違うお父さんが見られてよかった。◯名刺づくりやクイズ大会が面白かった。◯お父さんがどんなことをしているかわかりました。

中学校

学校 社会・上級学校へ

高等学校

家 庭

地 域

家庭での役割の理解と遂行、保護者や身近な大人の職業等の理解を通して、社会の一員としての自覚を高めるとともに、将来の生き方や進路への希望をはぐくむ。

家庭での役割分担、自分自身の生活の管理、職場体験や保護者などの仕事に関する会話、将来設計や進路希望についてのアドバイス、学校教育への協力・参加

社会の一員としての自覚と参画、保護者や身近な大人の生き方(キャリア)の理解を通して、将来の生き方と当面する進路の明確化とその実現への努力を援助する。

家庭の一員としてふさわしい役割分担・遂行、将来の生き方に関する希望とその実現のための学校生活や進路計画についての話し合いや励まし

職場体験や地域の行事への参加などを通して、地域の一員としての自覚を得させるとともに、将来の生き方、進路を考えさせる契機とさせる。

農業体験、ジュニアリーダー活動、地域ボランティア活動、職業人の出前授業、職業調べ、5日間の職場体験受入れ、マナー講話、大学探検等

インターンシップや地域の行事への責任ある参加など異年齢の人々との交流や社会参画の機会を通して、地域の一員としての自覚を高めさせるとともに、リーダーシップやコミュニケーション能力を養わせる。

地域ボランティア活動、職業人の出前授業、キャリアカウンセリング支援、インターンシップ受入れ、社会人との意見交換、マネジメント講話、専門学校、大学との連携等

千葉県教育委員会

子ども参観日を実施千葉県教育委員会では、子どもたちが保護者や大人の働く姿を見たり、家庭で仕事の話をすることで、働くことの大切さについて知る、「子ども参観日」を実施しています。平成21年度は民間企業15社と10の公的機関が参加しました。

●キャリア教育に関する啓発活動(地域広報誌等の活用)●子育て支援事業へのキャリア教育の視点導入(子育て事業担当課との連携)●PTA連絡協議会との協同

12 キャリア教育の更なる充実のために

□ キャリア教育における体験活動の明確な位置付け□ キャリア教育推進担当の位置付け□ 教職員の研修の設定(管理職・中堅教員・10年経験者研修等の年次研修で実施)□ 学校と事業所等との連絡・調整(コーディネート)ができる人材の確保

□ 知事・市町村長部局や他課・関係機関との連携□ 商工会議所、経済団体、PTA、校長会、自治会等の関係機関、NPO等の協力を得て推進協議会を設置□ 推進協議会を定期的に開催□ 学校単位の協議会の設置に向けた支援□ 体験先事業所のデータバンクづくり□ 社会人講師や協力ボランティア等の人材バンクづくり□ 体験先事業所との調整

□ 体験活動の時期や活動の様子などの地域への広報□ アンケート調査などを実施し、次年度への改善・計画策定に反映

教育委員会のための チェックリスト(例)!

キャリア教育における体験活動の推進方策を明確にしよう!

システムを構築しよう!

活発な広報や情報を提供し、活動の輪を広めていこう!

 地域で体験活動を円滑に実施するためには、学校が事業所等との積極的な連携を図り、地域の教育資源を有効に活用することが必要です。 市町村教育委員会は、体験活動を実施するためのより具体的な協議や情報交換、体験先の開拓を行う場などの効果的なシステムづくりに積極的に取り組むことが求められます。このようなシステムづくりのためには、教育委員会は中心的な役割を果たし、都道府県教育委員会と緊密な連携の下、学校に指導・助言を行い、コーディネーターとしての役割を積極的に果たすことが必要です。

体験活動を通してキャリア教育を充実させよう

事業所等との連携!の連携横

縦の連携

高等学校

進学・

社会での活躍

中学校縦の連携

事業所(企業)

経済団体NPO

横の連携

横の連携

家庭

就労支援諸機関

小学校

気になるデータ学校側からの支援依頼がない

情報が不足、やり方がわからない

企業側の負担が大き過ぎる

企業のメリットがない、少ない

教育効果が不明である

教育に企業が関わる必要はない

その他

出典: 東京商工会議所 教育問題委員会 「企業による教育支援活動に関する調査集計結果」(平成 22年)0% 10% 20% 30% 40%

39.4%36.2%

33.0%25.7%

21.1%1.4%

21.6%

企業が教育支援活動を実施していない理由(複数回答)

企業が教育支援活動を実施していない理由として、「学校側から支援依頼がない」、「情報が不足、やり方がわからない」という回答が多く挙げられています。学校の声を企業にとどけ、相互理解を深めるための連絡・調整が必要です。

多くの学校にとって「体験先の開拓」は大きな課題。果して企業側は?

キャリア教育の更なる充実のために 13

事業所の声

実践事例

キャリア教育推進協議会の構成 組織図 具体的な活動内容

1��MTT(マイタウンティーチャー=横須賀に働く大人はすべて子どもたちの先生)の派遣

2�職場体験先の事業所を開拓する支援

3�「よこすかキャリア教育応援団」の増強と��� 拡大

4�キャリア教育プログラム作成のアドバイス

5�MTTのプログラム作成のアドバイス

6�事業所の職場体験受入れのコーディネート

横須賀商工会議所

横須賀市教育委員会

横須賀市(都市政策研究所)

よこすかキャリア教育推進事業事務局コーディネーター(商工会議所内)

よこすかキャリア教育推進事業プロジェクト

横須賀市キャリア教育推進協議会

市長部局 ・政策推進部政策担当課長 ・子ども育成部 子ども青少年支援課長経済団体 ・商工会議所事務局長教育委員会 ・教育研究所長 ・学校教育課長学校 ・小学校校長代表 ・中学校校長代表 ・高等学校校長代表

事務局 ・学校教育課

横須賀市・横須賀市教育委員会・横須賀商工会議所が共に手を携え、平成20年4月に「よこすかキャリア教育推進事業」をスタート。横須賀商工会議所(産業界)に事務局を設置し、横須賀市(行政)・横須賀市教育委員会(教育界)と連携したプロジェクトを核としています。

横須賀市教育委員会

地域連携で応援するキャリア教育!

実践事例

トライやる・ウィークは、兵庫県の公立中学校2年生全員を対象とした1週間の体験活動である。県と市町が設置した「推進協議会」などの支援の下、地域の中で子どもたちが育てられる。初年度が平成10年で、これまでに10年以上の歴史がある。

兵庫県教育委員会

事業所等との連携による「トライやる・ウィーク」の効果

5.8%53.0% 37.1%

14.2% 57.1% 24.3%

地 域 12.7% 53.9% 28.7%

トライやる・ウィークの地域での評価

受入先

0% 20% 40% 60% 80% 100%

地 域

40.0% 54.2%

37.6% 57.5%

地域の活性化に関して大きな成果があった

受入先

0% 20% 40% 60% 80%

学 校

そう思うどちらかといえば、そう思わない

どちらかといえば、そう思うよい どちらかといえばよい

出所:兵庫県教育委員会『地域に学ぶ「トライやる・ウィーク」10 年目の評価検証(報告)』より

100%

事業所の声

地域の声

http://www.yokosukacareer.comホームページ

 中学生に実際に自分たちの仕事を見てもらい、仕事にかかわってもらうことは、普段の仕事を見直す機会にもなり、また、社会貢献ができるという喜びにつながっています。大人として、子どもたちに何を伝えることができるか、働くことの大変さと誇りを感じてもらえればと思います。

�普段、なかなか接する機会がない中学生と実際に触れあうと、中学生の良さを感じます。意外と素朴で素直。学校の外に出て、地域でもっと活躍してほしいと感じます。特にこれから地域を支える若い人たちには、どんどん活躍してもらいたいです。

・子どもの理解・地域で子ども育成の機運向上・地域の活性化

地域への波及効果・�教育への参画を通しての社会貢献・�将来に向けた産業界を担う人材育成・職場の活性化・児童生徒や学校教育への理解・地域、学校との交流の深化・指導に当たる社員の意識の向上・�地域における事業所の認知度の向上・技術、技能の伝承

事業所への波及効果

http://www.hyogo-c.ed.jp/~gimu-bo/tryyaru/tryyaru1.htmホームページ

実践事例を参考に更なる連携を!

Page 8: ─期待される教育委員会の役割─ - NIER...キャリア教育の更なる充実のために 期待される教育委員会の役割 文部科学省国立教育政策研究所生徒指導研究センター

14 キャリア教育の更なる充実のために

キャリア教育 推進協議会 (仮 称)

教育委員会学校教育担当部局生涯学習担当部局 等

知事・市町村長部局商工労働担当部局青少年担当部局 等

小学校

中学校

高等学校

進学・

社会での活躍

事業所(企業)

経済団体・NPO 大学・研究機関

就労支援諸機関

家庭 地域社会

■学校間・異校種間の連携⃝�一人の人間の成長を考えれば、学校間の移行には連続性があることから、発達の段階に応じた学校種間の円滑な連携・接続は重要。⃝�各学校は、体系的な指導計画の作成や一人一人のキャリア発達の情報を次の学校段階に引き継いでいくことが必要。

■家庭・保護者との連携⃝�家庭は、子どもの成長・発達を支え、自立を促す重要な場。働くことに対する保護者の考え方は、子どものキャリアの発達に大きな影響があり、家庭における働きかけは重要。⃝�各学校は、家庭・保護者との共通理解を図り、学校から保護者に積極的に働きかけることで、保護者による自らの社会人・職業人としての経験等をいかした学校の教育活動への協力を期待。

■地域・社会との連携⃝�仕事や職業を認識するためには、実感を持った理解が必要。社会人・職業人としての豊富な知識や経験を持った多くの方による学校の教育活動への参画が不可欠。⃝�各学校は、目的や期待する効果等を明確にし、外部に任せきりにすることにならないよう教職員が主体的にかかわることが必要。

■産業界等との連携⃝�産業界等との連携では、調整に課題がある場合が多いが、経済界や校長会など関係機関の協力を得た協議会の設置や、学校と企業等との調整(コーディネート)を図る人材の配置などの取組の推進を期待。⃝�協力する企業等に対する顕彰等により、学校に協力しやすい環境づくりを進めていくことが必要。

※中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月)より要約。

・�各教育委員会がキャリア教育推進のための施策を立案、実施する。そのため、キャリア教育担当の指導主事を養成、配置する。・�教育委員会事務局と教員研修を担う教育センター等との連携を密にし、当該センター等のキャリア教育に関する研修を施策の一環に位置付けて計画的に実施する。・�施策の立案・実施にあたっては、12年間にわたる一貫したキャリア教育推進のため、義務教育担当と高校教育担当との連絡・調整を密にし、その一体化を図る。

中教審答申が求める多様な連携

 キャリア教育を十分に展開するためには、学校が家庭や地域・社会、企業、職能団体や労働組合等の関係機関、NPO等との連携が必要不可欠です。そのため、教育委員会は学校を支援する協議会などの設置や、学校や企業等のコーディネートを行う仕組みづくりや人材の確保が必要となります。

キャリア教育を総合的に推進しよう

教育委員会が連携の環境づくりを!

●連携を進める上での教育委員会における課題

教育委員会は、知事・市町村長部局と協力して、縦横の連携の機能を持った組織(キャリア教育推進協議会など)を設ける。

キャリア教育の更なる充実のために 15

                視点 4

                  視点 3

               視点 2

       視点 1

キャリア教育 推進協議会 (仮 称)

教育委員会学校教育担当部局生涯学習担当部局 等

知事・市町村長部局商工労働担当部局青少年担当部局 等

小学校

中学校

高等学校

進学・

社会での活躍

事業所(企業)

経済団体・NPO 大学・研究機関

就労支援諸機関

家庭 地域社会

それぞれの地域の特性を生かした連携を進めよう❶各学校や地域社会がこれまで実践してきたことについての情報を集め、分析し、現状を把握する。❷それぞれの学校や団体・組織が別個に行ってきたことを「連携」の視点からとらえ直し、連携協力に向けた情報交換の場を設ける。

実際に「動ける」連携推進組織を設置しよう❶キャリア教育推進のための連携の核となる組織(例えば、キャリア教育推進協議会など)を設置する。❷当該組織の形骸化を避ける恒常的な工夫と、学校と地域との実質的な連絡・調整 (コーディネート)ができる人材の確保を心掛ける。

教育委員会だけの孤軍奮闘はやめよう❶組織の設置や連携の推進にあたっては、教育委員会内部の連携(例えば、学校教育課と生涯学習課との連携)はもちろん、商工労働担当課などの知事・市町村長部局との連携も不可欠であることを念頭に置く。❷地域における多様なキャリア教育推進団体・組織と、教育委員会との役割分担を前提としたネットワークの維持・拡充に努める。

PDCA サイクルに基づく継続をめざそう❶それぞれの取組における成果(アウトカム)の検証を奨励し、キャリア教育推進協議会などを通じてその改善を目指した支援を提供する。❷PDCAサイクルに基づきキャリア教育推進のための全体的なネット

ワークの改善を図る。

 中途退学等により学校教育を離れてしまった若者の中には、未就業の状態が長期化する者や、非正規雇用の職に就いている者が少なくないと言われています。各高等学校等において、中途退学者

等への可能な限りの支援を行うことや、高等学校等を卒業できないおそれがある生徒に対して、個々の生徒の特性等を十分に踏まえた、適切な教科・科目の履修指導及びインターンシップの実施等、キャリア教育の取組

の充実が求められています。教育委員会においては、労働関係部局やハローワーク、「地域・若者サポートステーション」等の若者の職業的自立を支援する機関等との連携を図り、社会的・職業的自立に向けた総合的な支援を推進することが必要です。

教育委員会の更なるリーダーシップが期待されています!

●求められる中途退学者等のための支援

●キャリア教育推進・充実に向けた方針や役割の明確化

●これまでの実践上の課題や、地域の実情等を踏まえた現実的な推進計画の策定

●地域の多様な組織・団体との連絡調整

●具体的な推進プログラムの立案●多様な広報・啓発活動