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Life Science Group Bio-Rad News Contents Research. Together. Vol.1 20125製品紹介 QX100 TM Droplet Digital TM PCRシステム 高速・かつ増幅効率の良いリアルタイムPCRに最適な試薬 SsoAdvanced TM SYBR ® Green Supermix お知らせ バイオ・ラッド 新技術セミナーのお知らせ 「遺伝子・タンパク定量法のブレークスルー」 特  集:遺伝子・タンパク質定量のブレークスルー デジタルPCRとは V3ウェスタンブロッティングワークフロー ~より定量性の高いウェスタンブロッティングデータの取得~ アプリケーションの紹介 200kDaの高分子タンパク質でも、 10分間で高効率な転写! プロテインA担体の代わりに陽イオン交換担体で抗体の精製を ProteOn XPR36システムによる ヒトイムノグロブリンG結合ペプチドのスクリーニング デジタルPCRはリアルタイムPCRと全くコンセプトが異なり、微小区画に断 片化されたサンプルDNAを限界希釈(各微小区画にDNA断片が1または0 となるような希釈)して分散させ、ターゲット遺伝子のPCR増幅を行います。 これによってターゲット遺伝子を含むサンプルDNA断片がある微小区画は 増幅シグナルがポジティブ、サンプルDNA断片が入っていないかサンプル DNA断片にターゲット遺伝子が含まれていない場合は増幅シグナルがネ ガティブ、となり、ポジティブの微小区画の数を直接カウントすることでサン プル中のターゲット遺伝子濃度を絶対的に測定します。 デジタルPCRの原理 デジタルPCRは従来のリアルタイムPCRに比べてはるかに高精度、高感 度に定量を行う新しい技術です。 定性のみの通常PCR、検量線による相対定量のリアルタイムPCRに対し て、絶対定量を行うデジタルPCRは第3世代のPCRと言われています。 デジタルPCR とは 緑線がターゲット遺伝子を含むDNA断片 リアルタイム PCR デジタル PCR サンプル 多数の DNA 断片が混在 している状態で PCR 0 10 20 30 40 RFU 10 4 10 3 10 2 10 30 25 20 15 1 2 3 4 5 6 Cq サイクル ログ開始量 SYBR ® Green: E = 98.7% サンプル 各微小区画に DNA 断片が 1 または 0 になるように希釈 (限界希釈) PCR 増幅 (飽和まで増幅可能) 増幅曲線から Cq 値(Ct 値)を設定 検量線から相対的なターゲット遺伝子濃度を算出 ポジティブな微小区画数を直接カウントしサンプル中のターゲット遺伝子濃度を算出

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Life Science Group

Bio-Rad News

Contents

Research. Together.

Vol.12012年5月

製品紹介

■ QX100TM Droplet DigitalTM PCRシステム ■ 高速・かつ増幅効率の良いリアルタイムPCRに最適な試薬 SsoAdvancedTM SYBR® Green Supermix

お知らせ

■ バイオ・ラッド 新技術セミナーのお知らせ 「遺伝子・タンパク定量法のブレークスルー」

特  集:遺伝子・タンパク質定量のブレークスルー

■ デジタルPCRとは ■ V3ウェスタンブロッティングワークフロー~より定量性の高いウェスタンブロッティングデータの取得~

アプリケーションの紹介

■ 200kDaの高分子タンパク質でも、10分間で高効率な転写! ■ プロテインA担体の代わりに陽イオン交換担体で抗体の精製を ■ ProteOn XPR36システムによる ヒトイムノグロブリンG結合ペプチドのスクリーニング

デジタルPCRはリアルタイムPCRと全くコンセプトが異なり、微小区画に断片化されたサンプルDNAを限界希釈(各微小区画にDNA断片が1または0となるような希釈)して分散させ、ターゲット遺伝子のPCR増幅を行います。これによってターゲット遺伝子を含むサンプルDNA断片がある微小区画は増幅シグナルがポジティブ、サンプルDNA断片が入っていないかサンプルDNA断片にターゲット遺伝子が含まれていない場合は増幅シグナルがネガティブ、となり、ポジティブの微小区画の数を直接カウントすることでサンプル中のターゲット遺伝子濃度を絶対的に測定します。

デジタルPCRの原理

デジタルPCRは従来のリアルタイムPCRに比べてはるかに高精度、高感度に定量を行う新しい技術です。定性のみの通常PCR、検量線による相対定量のリアルタイムPCRに対して、絶対定量を行うデジタルPCRは第3世代のPCRと言われています。

デジタルPCRとは

* 緑線がターゲット遺伝子を含むDNA断片

【リアルタイム PCR 】

【デジタル PCR 】

サンプル

多数のDNA断片が混在している状態で PCR

0 10 20 30 40

RFU

10 4

10 3

102

10

30

25

20

15

1 2 3 4 5 6

Cq

サイクル ログ開始量

— SYBR® Green: E = 98.7%

サンプル

各微小区画にDNA断片が 1または 0になるように希釈(限界希釈)

PCR増幅(飽和まで増幅可能)

増幅曲線から Cq値(Ct値)を設定 検量線から相対的なターゲット遺伝子濃度を算出

ポジティブな微小区画数を直接カウントし、サンプル中のターゲット遺伝子濃度を算出

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Bio-Rad News2

なぜ “デジタル” なのか?

デジタルPCRのデータは微小区画ごとにポジティブかネガティブかのどちらかになり、これをデジタル信号の1 / 0に見立てることによって “デジタル“ と呼ばれています。

デジタルPCRの利点

デジタルPCRはリアルタイムPCRに比べて、以下の利点があります。・ PCRの増幅効率に左右されない。(飽和するまで増幅が可能)・ 限界希釈を行うため、サンプル中のPCR阻害要因を軽減できる。・ PCR阻害要因の軽減と飽和するまでの増幅によって高い感度が得られる。・ ポジティブな微小区画数を直接カウントするため、定量精度が高い。・ 検量線を必要とせず、絶対的な定量を行える。

デジタルPCRにおけるターゲット遺伝子濃度算出:ポアソン分布の利用

デジタルPCRではサンプルの単位容量あたりにターゲット遺伝子が何コピー存在するかを算出しますが、限界希釈であっても微小区画あたりの断片数が1以上になる場合があります。これを補正するため、ポジティブの数と微小区画の数をポアソン分布にあてはめて最終濃度を算出します。

ポアソン分布の考え方 ポアソン分布は独立した事象の発生確率が一定の分布を示すことにもとづいていますが、デジタルPCRで考えると次のようになります。

サンプル中のターゲット遺伝子コピー数が多くなるほど、複数個のターゲットを含む微小区画も増加するので、これをポアソン分布で補正してコピー数を算出します。

1色による検出

2色による検出

ポジティブ = 10個 ポジティブ = 11個 = 左の 1.1倍濃度

デジタルPCRでの定量(リアルタイムPCRで2倍以下の差を識別することは現実的には難しい)

サンプルにターゲット遺伝子が10コピー含まれており、250個の微小区画に分割された場合

1つの微小区画に複数のターゲット遺伝子が含まれる確率は非常に低い

サンプルにターゲット遺伝子が250コピー含まれており、250個の微小区画に分割された場合

1つの微小区画に複数のターゲット遺伝子が含まれる場合が多くなるが、0個、1個、2個、3個、4個・・・ のターゲット遺伝子が含まれる確率は一定に近似できる。

ポジティブの微小区画数

ターゲットのコピー数

6000

5000

4000

3000

2000

1000

00 1000 2000 3000 4000 5000 6000

補正値

実測値

1つのドロップレットに複数個のターゲットが入る場合があるため、実際のポジティブな微小区画数はターゲットコピー数よりも少なくなる

ポアソン分布にもとづいて補正・算出

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3Bio-Rad Laboratories 2012

バイオ・ラッドのデジタルPCR : QX100TM Droplet DigitalTM PCRシステム

バイオ・ラッドのデジタルPCR、QX100 Droplet Digital PCR システムは次のような特長を備えた画期的な研究ツールです。

・ ドロップレット(エマルション)を微小区画とするシステム・ 1サンプル(1ウェル)あたり約20,000個のドロップレットを作製、

約 16,000個のドロップレット測定による高精度・高感度な遺伝子定量を実現

・ FAM, VIC 2色のTaqManアッセイによるマルチプレックス解析が可能

・ サンプル調製は従来のリアルタイムPCRとほぼ同じ(バッファーには専用試薬を使用)

・ 簡便な操作の機器、ソフトウェア

詳しくは p14 の製品紹介をご覧ください!

デジタルPCRでは微小区画数が多いほど定量精度が向上するデジタルPCRではポアソン分布にもとづいてターゲットのコピー数を算出しますが、その補正は微小区画数が多いほど精度が高くなり、ばらつきをおさえるには1サンプルあたり10,000区画以上が必要とされています。

微小区画数の違いによる精度の違い

デジタルPCRでのリプリケート(サンプルのN数)

同一実験内でサンプルのN数を増やすことはデータ精度の向上につながりますが、リアルタイムPCRではウェルごとの個別データとして別途に平均値をとる、などの処理となります。一方、デジタルPCRではウェルごとの個別データを単に平均化するだけではなく、それらのデータを統合(マージ)して微小区画数を増やし精度を向上させる、ということも可能です。

デジタルPCRのアプリケーション

デジタルPCRは特に以下のようなアプリケーションで、これまでのリアルタイムPCRでは困難であったレベルの高精度、高感度の解析を可能にします。・ CNV(Copy Number Variation)・ Rare mutation / Rare sequence 検出・ mRNA, miRNA 定量(高精度定量、低コピー数定量)・ Single cell など、微量サンプルでの定量

ランダムに200個の点(赤印)を打った場合に、枠内に点が入った区画をポジティブとしてカウントしポアソン補正による計算を行った場合の例。区画数が多いほど標準偏差、CV値が小さくなります。

コピー数

サンプル サンプル

ウェルごとのデータ(微小区画数 = 平均 16,000 / ウェル) マージしたデータ(微小区画数 = 平均 16,000 x 8 = 128,000)

(N = 8 によるデジタル PCRデータ)

0

1

2

3

4

5

6

7

0

1

2

3

4

5

6

7

コピー数

NA11994 NA18507 NA18502 NA19221 NA19205 NA18916 NA19108NA11994 NA18507 NA18502 NA19221 NA19205 NA18916 NA19108

20回繰り返して、ポアソン補正の平均、標準偏差、CV値を異なる区画数で比較

784 区画 16,900 区画

ポアソン補正平均(個) 200.96 199.73

標準偏差 6.42 1.11

CV値 3.19% 0.56%

784 区画              16,900 区画

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Bio-Rad News4

はじめに

ウェスタンブロッティングは、タンパク質電気泳動を行なっている研究者のおよそ9割が行なっている(バイオ・ラッド調べ)手法で、目的タンパク質の発現量の定性的・定量的評価や一部の修飾やプロセッシング状態をも調べられる、非常に強力で汎用性の高いタンパク質プロービング手法です。ウェスタンブロッティングでは、アクリルアミドゲルで分離したタンパク質をメンブレン(PVDF膜やニトロセルロース膜)に移動(転写)させ、より効率良く抗体が結合出来る状態にするとともに、様々な処理を行う上でのハンドリングをより容易にします。転写後は、タンパク質が転写された以外の部分へ抗体が非特異的に吸着することを防ぐ為にブロッキングを行い、その後、1次抗体を反応させます。多くの場合、2次抗体はホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)やアルカリフォスファターゼ(AP)などの酵素を共有結合させたポリクローナル抗体

が用いられ、それぞれにあった基質を作用させることで、膜上での発色による確認やX線フィルムやCCDカメラにより化学発光シグナル(ケミルミネッセンスシグナル、化学発光)を捉えて検出を行います。また、2次抗体に蛍光物質を共有結合させたものを用いることにより、蛍光検出を行うことができるようになり、また、2次抗体と蛍光物質の種類の組み合わせにより、複数のターゲットを抗体を再反応させることなく一度に検出することも可能です。一方、ウェスタンブロッティングでは多くのステップを経て最終的な検出シグナルを得るプロトコールの為、それぞれのステップでの操作が正確に、かつ再現性よく行われていなければ安定した結果を得ることができません(図1)。バンドの形がおかしい、いつも得られているシグナルや感度が得られない等、最後の検出の段階で判明する様々なトラブルを未然に防ぐためには、それぞれのステップや段階で確実に実験をすすめていく必要があります。また同時に、いくら注意してもサンプル由来の問題や修正出来なかった問題に対してもその対処方法を理解しておくことにより、より正確で、より比較可能なデータを再現性よく得ることができるようになります。ここでは、さまざまな例を通して、よりよいデータを取得していくためのTipsと応用例、そしてより高い定量性のあるデータを得るための「定量ウェスタン V3ワークフロー」についてご紹介します。

タンパク質スタンダード(マーカー)

タンパク質スタンダード(マーカー)はタンパク質電気泳動だけでなく、ウェスタンブロッティング実験においても非常に重要です。分子量評価が最も重要な役割ですが、色つきのスタンダードを用いることで、電気泳動の目安や泳動状態の確認にも利用できます。多くの電気泳動用スタンダードは未着色品や着色済み品ですが、ウェスタンブロッティングの検出、とくにケミルミネッセンス検出時にサンプルと同時に見ることができません。プレシジョンPlus WesternCスタンダードは、定評のあるプレシジョンスタンダードの・ シャープなバンド・ 覚えやすい分子量・ 色とバンド太さで瞬時に分子量がわかるという特長に加え、HRP検出時にサンプルと同時に検出できる特長を備えています。WesternCスタンダードの各分子量タンパク質に組み込まれているStrep-Tagに特異的に結合するStrepTactin-HRPを2次抗体反応時に加えるだけで、一度にサンプルもスタンダードも検出を行えるようになります(図2)。

V3ウェスタンブロッティングワークフロー~ より定量性の高いウェスタンブロッティングデータの取得 ~

MW Estimation or Quantitation

Electrophoresis of Samples

Criterion™ Gel System Precision Plus Protein WesternC Standards (on Gel)

Blot Transfer

Criterion Blotter and Membranes

Precision Plus Protein WesternC Standards (on Blot)

Immunodetection of Samples

Immun-Star WesternCChemiluminescent Kit

StrepTactin-HRPConjugate (for Detection)

Visualization of Blots

ChemiDoc XRS Imager Precision Plus Protein WesternC Standards (Chemiluminescent)

図1 ウェスタンブロッティング実験の流れ (Tech Note 5576)図2 SDS-PAGEとウェスタンブロッティングにおけるサンプルとスタンダードの同時検出

MW,kD 250

150

100 75

50

37

25 20 15 10

Actin

250

150

100 75

50

37

25 20 15 10

Gel(CBB染色像) Blot(ケミルミ検出)

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5Bio-Rad Laboratories 2012

また、スタンダードに含まれる各タンパク質の分子量はマススペクトロメトリー(MS)で確認されているため、より正確な分子量評価を行うことが可能です(図3、表1)。また、WesternCスタンダードは着色に使用している色素が可視光による励起で蛍光を発するように設計されており、蛍光検出や2波長での蛍光マルチプレックスウェスタンにも利用できます。(TechNote 5723)

電気泳動用ゲル

ウェスタンブロッティングでは、より効率良くタンパク質をメンブレンに移動させることも重要なファクターです。

TGXゲルシリーズは、バイオ・ラッド独自のケミストリーにより、ゲル中のタンパク質の移動が一般的なゲルに比べ速い特長があります。電気泳動時間が短縮できるメリットだけではなく、この特長はウェスタンブロッティング時の転写効率にも効果があります。電気泳動後、全く同じ条件で転写、および転写後の膜染色を行った結果、全体的な転写効率の上昇に加え、転写されにくいと言われる高分子量タンパク質の転写も効率良く行われています(図4)。よりウェスタンブロッティングに適した電気泳動用ゲルを用いることで、より多くのタンパク質を膜に移動させることが可能となります。

多サンプルをウェスタンブロッティングで比較する場合、より多くのウェル数が必要となります。ミニゲルの場合でも18ウェルなどの多ウェルフォーマットがありますが、その分ローディングできるサンプル量が犠牲となってしまいます。Criterion TGXゲルは泳動距離はミニゲルより少し長い程度に抑え横幅を広くすることで、ミニゲルとほぼ同様の泳動時間で最大26サンプルまで同時に泳動することが可能です。26ウェルフォーマットの場合でも、ウェル容量が15μl確保されていますので、必要なタンパク質量をしっかりとローディングすることが可能です。ミニゲルを2枚使用した場合は、それぞれのゲルにおいて、転写効率の誤

Actin

log MW

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Rf

3

2

1

0R2= 0.9953

ミニプロティアン TGXゲル

vs.

vs.

他社長期保存可能ゲル

ブロッティング後のメンブレン染色

ブロッティング後のゲル染色

図4 ミニプロティアンTGXゲルと他社長期保存可能ゲルとの転写効率比較

図3 WesternCスタンダードの分子量キャリブレーションカーブ(TechNote 5576)

表1 アクチンと27kDaタンパク質の分子量推定結果(MSと電気泳動的に求められた値の比較)(TechNote 5576)

ProteinSample

Actual MW(Mass Spectrometry)

Calculated MW(WesternC Standards)

Difference,%

Actin 42.49 43.77 3.0

27 kDa Protein 27.78 27.15 2.3

[高いブロッティング効率]

[ゲルからの抜けがいい]

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Bio-Rad News6

差、ブロッキングや抗体反応の誤差、検出の誤差が必ず生じます。26サンプルを1枚のゲルで泳動を行い(図5)、1枚の膜で反応や検出を行うことにより、さらに誤差の少ないデータを得ることができます。

膜への転写一般的により多くのタンパク質の転写を目的とし、より強い電場や長い時間転写を行うと、膜の中や膜の裏面、さらには膜を通過してしまうタンパク質も出てきてしまいます。このため、最も適切に検出できる転写条件(電圧や電流、時間、転写バッファー条件)を設定する必要があります。

転写条件の設定はウェスタンブロッティング実験において非常に重要なポイントの一つです。転写条件の中でも、転写バッファー組成は転写効率に非常に大きく影響します。転写バッファーの基本成分のうち、メタノールとSDSはその最も代表的な成分です。メタノールは膜とタンパク質の吸着効率を上げる役割とその反対にゲルを収縮させ、抜けにくくするマイナス効果があります。SDSは逆にゲルからタンパク質を抜けやすくする役割とタンパク質と膜の結合に対し阻害的に働きます(図6)。

トランスブロットTurboブロッティングシステムはバイオ・ラッドが開発した独自のバッファー組成により、より多くのタンパク質がゲルから膜に転写でき、さらにより多くのタンパク質が膜表面に吸着できるよう設計されています(図7)。トランスブロットTurboブロッティングシステムにより、ゲルの種類を問わず、短い転写時間でも転写効率の改善が見込まれますが、前述のTGXゲルを使用することで、さらなる転写効率の改善をすることが可能となります(図8)。

SDS メタノール

1 2 3 4 1 2 3 4

To w b i nバッファー(0.1%SDS含有)を用いて転写した場合

To w b i nバッファー(SDS無し)を用いて転写した場合

To w b i nバッファー(メタノール無し)を用いて転写した場合

To w b i nバッファー(メタノール含有)を用いて転写した場合

1 2 3 4 1 2 3 4

図6 転写におけるメタノールとSDSの影響

図5 Criterionゲル(26ウェル)による多サンプルの同時泳動

トランスブロットTurboでの転写(MIXEDプロトコール, 7分)

使用ゲル :ミニプロティアン TGXゲル 10%

一般的セミドライ方式での転写(15V, 30分)(バイオ・ラッド トランスブロットSDセル)

使用ゲル : A社 10%プレキャストゲル

1 2 3 4 5 6 7 8

転写後のゲル 転写済み膜

トランスブロットTurboでの転写(MIXEDプロトコール, 7分)

使用ゲル : A社 10%プレキャストゲル

1 2 3 4 5 6 7 8 1 2 3 4 5 6 7 8

転写後のゲル 転写済み膜

1 2 3 4 5 6 8 7 1 2 3 4 5 6 8 7

転写後のゲル 転写済み膜

1 2 3 4 5 6 7 8

図8 トランスブロットTurboブロッティングシステムとミニプロティアンTGXゲルの組み合わせによる、さらなる転写効率の改善各社の10%プレキャストゲルを推奨条件で泳動を行い、表記のプロトコールにて転写を行った。泳動後のゲル、および転写後のメンブレンはCBB染色を行い可視化した。(すべて同条件での染色・画像取り込み)

〈サンプル〉1: プレシジョンPlus All Blueスタンダード, 2: プレシジョンPlusスタンダード, 3: SDS-PAGEスタンダード (Low), 4: E.coliライセート, 5: IgG, 6: マグロ抽出物, 7: サケ抽出物, 8: エビ抽出物

図7 他社高速ブロッティングシステムとの比較着色済みタンパク質スタンダードを泳動し、共に7分プロトコールで転写。PVDFメンブレンは2枚重ねてセットし、タンパク質の通過の有無を確認した。

PV

DFメンブレン

2枚目    

   

1枚目

トランスブロット Turboシステム 他社 高速ブロッティングシステム

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7Bio-Rad Laboratories 2012

膜への転写時には、前述のCriterion TGXゲルのように横幅が大きくなればなるほど、特にセミドライ式(もしくはドライ式)ブロッティング装置での転写均一性は低下します。これは、電極間距離のばらつき(電極の歪み)やバッファーの偏りなどが原因です。トランスブロットTurboブロッティングシステムはセミドライ式でありながら、電極間距離をより一定に保てるカセット構造により、左右上下に渡り均一な転写パターンを得ることができます

(図9)。

ブロッキング・抗体反応

ブロッキングや抗体反応では、バックグランドが低く、特異的な検出ををより効率的に行う為に様々な調整が必要なステップです。以下に、ウェスタンブロッティングでよく見られるトラブルの例と改善点を示します(図10)。

これまで、各操作・ステップで生じるトラブルやそれらを未然に防ぐ方法やより効率的にウェスタンブロッティングを行う方法について述べてきましたが、これらではカバーできない部分があります。それは、ウェスタンブロッティングの定量性についてです。

より正確な定量性を確保する、V3定量ウェスタンワークフロー

ウェスタンブロッティングデータの問題点はデータの定量性です。ウェスタンブロッティングでは絶対定量は行えないため相対定量(比較定量)となるわけですが、その際、果たして得られたシグナルがターゲットのタンパク質

量を正確に反映しているか、言い換えれば、比較できる状態で電気泳動され、抗体反応できているか?という点が重要となってきます。

データ補正について

ウェスタンブロッティングで目的タンパク質のデータを得た場合、基本的にこれらのデータは補正、もしくは比較できる状態であったことの検証が必要となります。まず、タンパク質を抽出する細胞数や組織重量、タンパク質濃度などを確認し、等量となるように調製する場合が多いですが、実際に抽出できたタンパク質量が異なったり、同じ量の細胞や組織から同じ量のタンパク質が得られていない場合があります。多くの場合、こういったウェスタンブロッティングデータの正確性を担保するために用いられるのが、アクチンやチューブリン、GAPDHに代表されるハウスキーピングタンパク質(HKP)です。論文などでも、目的タンパク質シグナルの下にコントロールとしてHKPを検出したバンドを掲載してあります。しかしながら、近年、ローディングコントロールとしてこれらHKPを利用することに疑問を投げかける論文がいくつか発表されています。A. Dittmerらは、サンプル量の変化や検出時間によってはActinではその差をうまく捉えられないということを報告しています1)。また、R. FergusonらはGAPDHやアクチン、チューブリンといった代表的なHKPにおいておきるサンプルの状態変化に伴う量的変化を確認し、これらHKPのローディングコントロールとしての妥当性が低いことを報告しています2)。こういったことを背景に、最近では複数のHKPを用いてウェスタンブロッティングデータの検証を行うことが推奨されることもあり、さらなる手間や実験の複雑さが増してきています。またこれらの報告とは別に、HKPによるデータ確認やデータ補正よりもPonceauやCBBでの膜染色によるトータルタンパク質量による補正が有効であるという報告もなされています3), 4)。PonceauやCBBによる膜染色は、可逆的であり、かつ簡単ではありますが、操作ステップが増えるだけでなく、抗体反応への影響や、ダイナミックレンジの狭さ、染色誤差などの要因を含みます。

TGX Stain-Freeゲルは、電気泳動後、染色をすることなくUVを照射するだけでタンパク質を可視化でき、また、転写効率に影響を与えません。もちろんTGXゲルケミストリーなので、速い電気泳動、高い転写効率の特長はそのまま持ちあわせています。

バイオ・ラッドSDS-PAGEスタンダード(Broad)をCriterion TGXゲル4-20%で分離後、推奨プロトコール(7分)でニトロセルロースメンブレンに転写。転写後のメンブレンを蛍光染色し、VersaDoc4000MPシステムで各バンドを定量し、同一分子量バンドの定量値のバラツキ(CV値)を求めた。

トランスブロットTurboシステム 他社高速ブロッティングシステム

CV値:9% CV値:17%

図9 ブロッティング装置の違いによる転写均一性比較

□泳動に供したタンパク質量が多すぎる ⇒より少ない量のタンパク質を泳動する□2次抗体濃度が高すぎる ⇒2次抗体の希釈率を上げる□ブロッキング剤による抗原/抗体反応阻害 ⇒ブロッキング剤の変更を検討□基質溶液の反応時間が適切で無い ⇒推奨時間を確認する

□転写時のゲルとメンブレンの間の空気 ⇒ゲル/メンブレンスタックを作成する際、空気を

挟まない/空気を抜くように十分に気をつける□抗体溶液・基質溶液の反応不足 ⇒十分な容量の溶液にメンブレンがしっかりと浸

かっている状態で反応させる□メンブレンが乾燥した ⇒特にPVDFなどは操作中に乾燥しないよう注意

する

部分的な白抜け白抜けしたバンド

□ブロッキング剤と抗体が反応 ⇒ブロッキング剤を変更□抗体が濃すぎる ⇒1次抗体や2次抗体を希釈して使用□抗体の非特異的吸着 ⇒ブロッキング溶液中で抗体反応□その他: ⇒Tween濃度を高める (0.05%→0.1%) ⇒洗浄時の洗浄バッファー量を増やす、

時間を伸ばす

□ゲル片がメンブレン上に付着 ⇒転写後、ゲル片の残りが無いことを確認する□ブロッキング剤の溶け残りが付着 ⇒特に粉末のブロッキング剤を溶解して使用する

場合はしっかりと溶かす ⇒あらかじめ溶液状になっているブロッキング剤

を使用する

ドット状の汚れ高いバックグラウンド

図10 ウェスタンブロッティングで見られる種々のトラブル

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Bio-Rad News8

染色感度はCBB以上で、非常に再現性高くタンパク質を定量することが可能です(TechNote 5782, 図12)。

Stain-Freeゲルで泳動しUVで可視化されたタンパク質(図13A)は膜に転写を行った後でもUVによる可視化が可能なため(図13B)、転写状態の確認や膜上に転写されたタンパク質の定量にも使用できます5)。

このStain-Freeゲルを利用した、V3定量ウェスタンワークフロー(次項)は、より質の高いウェスタンブロッティングのデータ取得を可能にします。

ウェスタンブロッティングを確実にする3つの「V」

Stain-Freeゲルを用いたV3ワークフローでは、ウェスタンブロッティングの一連の操作の間に、・ Visualization→電気泳動の成否の確認・ Verification→転写状態の確認・ Validation→データノーマライゼーションを行います。図14は実験ワークフローのイメージです。

UVUV UVUVNHNH

OH

トリハロ化合物トリハロ化合物

タンパク質のトリプトファンとゲル中のトリハロ化合物が反応する

蛍光

NHNH

OH

トリハロ化合物トリハロ化合物

修飾されたトリプトファンがUV 照射により蛍光を発する

NH2

COOH

Trp

ゲル中のタンパク質

NHNH

OH

トリハロ化合物トリハロ化合物

タンパク質中のトリプトファン残基とゲル中に含まれるトリハロ化合物

※エピトープ部位、もしくは近傍にトリプトファンを含む抗体によるウェスタンブロッティング検出では、 抗体反応に影響が出る場合があります。図11 Stain Free原理(イメージ図)

図14 V3定量ウェスタンブロッティングワークフローの流れ

1つ目のV:Visualization

染色せずにタンパク質をVisualize(可視化)して電気泳動状態を確認

Stain Freeゲルの利用

染色せずに転写状態をVeri�cation(確認)

2つ目のV:Veri�cation

トータルタンパク質量を利用したデータノーマライゼーション

3つ目のV:Validation

低蛍光メンブレンの利用

電気泳動 ブロッティング 検出 ノーマライゼーション

メンブレン上の総タンパク質 ウェスタン検出シグナル

メンブレン上の総タンパク質定量 ウェスタン検出シグナル定量1000 950 1100 1150 900 100 90 70 50 30

補正100/1000 90/950 70/1100 50/1150 30/900

100 : 95 : 64 : 43 : 33

UV UV転写

ブロッティングへ 抗体反応/検出へ

Stain FreeゲルのUVによるタンパク質検出

CBB染色によるタンパク質検出

図12 高い検出再現性(TechNote 5782)検出の後、β-ガラクトシダーゼのバンドを定量した。データは3枚のゲルで取得し、それぞれをプロットした。

35,000

30,000

25,000

20,000

15,000

10,000

5,000

0

1 10 100 1,000

1 10 100 1,000Log(Protein quantity, ng)

0.120

0.100

0.080

0.060

0.040

0.020

0.000

図13A : HeLa細胞ライセート(2.5〜80μg)をTGX Stain-Freeゲルで泳動し、ChemiDoc MPで可視化。B : Aの後、ニトロセルロース膜に転写し、ChemiDoc MPで可視化し、転写効率の確認を行った。

A B

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9Bio-Rad Laboratories 2012

Ryanらは、このV3定量ウェスタンワークフローとHKPによるデータ補正の差について、ヒトLCL(Lymphoblastoid Cell Line)細胞にガンマ線を照射したサンプルを用い、HKP自体の量の変動が見られること、およびStain-Freeゲルによるトータルタンパク量による補正が有効であることを報告しています。

ガンマ線照射をしていないLCL細胞と照射を行ったLCL細胞のライセートを泳動、ブロッティングし、ガンマ線照射による減少が報告されているMCM7タンパク質(DNA replication factor)とHKPであるGAPDHの量をウェスタンブロッティング(蛍光マルチプレックス法)で確認しました(図15、図16)。

これらデータを数値化し、GAPDHまたはトータルタンパク質量でMCM7の発現量のデータノーマライゼーションを行ったところ、GAPDHによる補正ではMCM7が約59%の、トータルタンパク質補正では約44%のダウンレギュレーションが認められることが算出されました。どちらも2次元電気泳動で見られた約50%のダウンレギュレーションに近い値として算出されましたが、統計的なデータとして、GAPDHの補正ではp値が<0.03であったのに対しトータルタンパク質量の補正では<0.008という非常に安定した正確性の高いデータであることがわかりました5)。

V3定量ウェスタンワークフローは・ 抗体のストリッピング/リプロービングなどの追加のステップを必要としない・ より正確なローディングコントロールを得ることができる・ より正確なウェスタンデータ補正ができるより質の高いウェスタンブロッティングデータを得ることができる新しいワークフローです。(TechNote 6088)

引用論文1) Angela Dittmer and Jurgen Dittmer, β-actin is not a reliable loading

control in Western blot analysis, Electrophoresis 27, 2844-2845. (2006)

2) Roisean E. Ferguson et al., Housekeeping proteins: A preliminary study illustrating some limitations as useful references in protein expression studies, Proteomics 5, 566-571.(2005)

3) Georgina M. Aldridge et al., The use of total protein stains as loading controls: An alternative to high-abundance single-protein controls in semi-quantitative immunoblotting, J Neuroscience Methods 172, 250-254.(2008)

4) Isabel Romero-Calvo et al., Reversible Ponceau staining as a loading control alternative to actin in Western Blots., Analytical Biochemistry 401, 318-320.(2010)

5) Ryan Short and Anton Posch, Stain-Free Approach for Western Blotting., Genetic Engineering & Biotechnology News, Vol.31 Number 20 November 15,(2011)

Bio-Rad関連資料1) Molecular Weight Estimation and Qauntitation of Protein Samples

Using Precision Plus Protein WesternC Standards, the Immun-Star WesternC Chemiluminesence Detection Kit, and the ChemiDoc SRS Imaging System(TechNote 5576)

2) Increase Western Blot Throughput with Multiplex Fluorescent Detection (TechNote 5723)

3) In-Gel Protein Quantitation Using the Criterion Stain Free Gel Imaging System (TechNote 5782)

4) Bio-Rad V3 Wentern Blotting Workflow Brochure Rev B (Bulletin 6088)

Ordering Informationカタログ番号 品名 価格161-0376 プレシジョンPlus WesternC スタンダード 250μl, 50回分 ¥19,600161-0385*¹ プレシジョンPlus WesternC プロテインパック 50回分 ¥26,000456-XXXX*² ミニプロティアンTGXゲル, ミニプロティアンTGX Stain Freeゲル 567-XXXX*² Criterion TGXゲル, Criterion TGX Stain Freeゲル 170-4150J1 トランスブロットTurbo with PVDF(ミニ) ¥280,000170-8280J1 ChemiDoc MP ImageLab PCシステム ¥5,250,000

A A B B A A B B

図15 LCL細胞ライセートを30μg/laneでStain-Freeゲルで電気泳動後、膜に転写し、泳動の状態と転写状態を確認した。A :γ線非照射、B :γ線照射

図16 減少が報告されているMCM7は本実験においてもガンマ線照射により発現量の減少が認められた。また、HKPであるGAPDHにおいてはガンマ線照射サンプルで検出シグナル値のばらつきが見られた。

* LCL, irradiated°LCL, control sample

A A A B A A A B

MCM7

GAPDH

*1 WesternCスタンダード(250μl)とStrepTactin-HRP(125μl)のセット*2 製品ラインアップ、価格についてはウェブサイトをご参照ください。

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Bio-Rad News10

タンパク質をメンブレン上に転写する技術は、これまで長い歴史がありますが、技術の根本はそれほど変わってはいません。タンパク質を電気的に転写するためには、主に、タンク式とセミドライ式の二つの手法が使われています。タンク式ブロッティングはバッファータンクにサンドイッチを沈めるタイプで、幅広い条件が設定できるため、高い効率で転写が可能です。セミドライ式の転写では、ろ紙にバッファーをしみこませて、電極板で直接サンドイッチするため、高速に転写が行える半面、イオン供給量が制限されるため、転写効率にも制限がありました。

トランスブロットTurbo転写システムは、タンク式転写の高い効率と、セミドライ式の簡便さを求めて開発されたシステムです。プレパックされた”転写パック”を用いればバッファーやメンブレンの調製の手間も必要なく、転写時間は3-10分で完了します。

抗体精製の一般的な方法は、初めにプロテインAまたはGによりアフィニティ精製を行います。さらに純度を上げる場合は、イオン交換やCHT(セラミックハイドロキシアパタイト)などを組み合わせて2-3ステップかけることもあります。プロテインA/Gでの精製は酸性条件下での溶出を行うため、溶出中に抗体の凝集や変性など、抗体活性に悪影響を及ぼしてしまう恐れがあります。

今回、陽イオン交換担体のNuvia Sを用いることで、pHが4.5-5のマイルドな条件下でのモノクローナル抗体の精製を可能にすることを示しました。下図のAは、CHO細胞培養からのモノクローナル抗体をNuvia Sで精製し

下記はHeLa細胞抽出液中のミオシンタンパク質(200kDa)の免疫ウェスタン検出の画像です。赤枠で記したトランスブロットTurboシステムでの転写には、”HIGH MW”プロトコール(1.3A, 25V, 10分間)を用いています。タンパク質の転写効率には、タンパク質固有の分子量や電荷など複数の要因が影響しており、一般的には高分子ほど転写効率が低下する傾向にありますが、トランスブロットTurboシステムは、タンク式ブロッティング(30V定電圧)のオーバーナイト転写よりも高い転写効率でした。それぞれの転写方法における条件など詳しい情報はTechNote 6148をご確認ください。

たときのクロマトグラムです。2段階のステップワイズ溶出で、2ステップ目で抗体を溶出しています。図Aのフラクションのうち、バッファーBで洗浄したフラクション番号2-9をSDS-PAGEとMALDI-TOF MSで確認の結果、脱落した抗体のL鎖の分解物が回収されていることが分かり、バッファーCで溶出して回収したフラクション番号11-15には分解していない抗体が回収されていることがわかりました(図B)。また、SEC-HPLCでの分析の結果でもフラクション番号11-15には分解または凝集した抗体が含まれていないことが確認されました(図C)。詳細はTechNote 5984でご確認ください。

アプリケーションの紹介…ウェスタンブロッティング200kDaの高分子タンパク質でも、10分間で高効率な転写!

アプリケーションの紹介…クロマトグラフィープロテインA担体の代わりに陽イオン交換担体で抗体の精製を

3.50

3.00

2.50

2.00

1.50

1.00

0.50

0.00

-0.50

350

300

250

200

150

100

50

0

-50

30 60 90 12 13 14 15 16

Time, min

AU

Con

duct

ivity

, mS

/cm

0.01

0.008

0.006

0.004

0.002

0

Time, min

250

190

10075

50

37

2520150

AU

2 3 4 5 6 7 8 9

Buffer B washfractions

Buffer C elution pooled fractions

11-15M

Flow through

Buffer Bwash

Buffer Celution

1N NaOHstrip

12 3 4 5 6 7 8 9 1011121314151617 18

UV(タンパク質)Conductivity(塩濃度)

図A 図B

図C

TechNote 6148 : Transfer of High Molecular Weight Proteins to Membranes: A Comparison of Transfer Efficiency Between Blotting Systems

TechNote 5984 : Nuvia S Media: A High-Capacity Cation Exchanger for Process Purification of Monoclonal Antibodies

Trans-Blot Turbo System

Trans-Blot SD System

Tank Blotting(60min)

Tank Blotting(overnight)iBlot System

詳細はTechNote 6148をご参照ください。

詳細はTechNote 5984をご参照ください。

6148 検 索

5984 検 索

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11Bio-Rad Laboratories 2012

Introduction

ヒトイムノグロブリンG(hIgG)は、血清中で最も主要なイムノグロブリンであり、生体防御システムの中枢である免疫反応において中心的な役割を演じているだけでなく、近年では、抗体医薬の発展に伴い、主要なフォーマットとして、重要視されているタンパク質である。このhIgGの精製には、S. aureus由来のProtein Aを用いたアフィニティカラムが多く用いられてきた。しかし、抗体医薬精製に用いるProtein Aの調製には、エンドトキシンや高い抗原性を有するProtein A自身の精製抗体中への混入の問題から、新しい抗体の精製システムの開発が待たれている。我々は、ペプチドを用いた新たな精製システムの構築を目標に、T7バクテリオファージを用いたランダムペプチドライブラリからのスクリーニングにより、抗体結合ペプチドのデザイン研究を行ってきた。ProteOn XPR36タンパク質相互作用アレイシステムは、6種の標的物質

(リガンド)に対する6種のサンプル(アナライト)間の36の相互作用を一回のインジェクションで測定する表面プラズモン共鳴(SPR)解析システムであり、リガンドのセンサーチップへの固定化を除けば、この36相互作用を30分以内で測定するハイスループット型の分析機器である(図1)。本稿では、T7ファージディスプレイ技術を用いて構築されたペプチドライブラリ(T7ファージライブラリやファージクローンの単離方法については、参考文献を参照願いたい)から、バイオパンニングという手法によって得られる活性ファージクローンのスクリーニング、並びに得られたクローン由来の合成ペプチドと抗体との相互作用解析を、ProteOn XPR36システムを用いて効率的に行った結果を報告する。最後に、ここで得られたペプチドの応用例として、SPRセンサーチップ上へのヒト抗体の簡便な固定化により、抗原抗体反応を測定した例を紹介したい。

実験①:T7ファージペプチドライブラリからのヒト抗体結合性T7ファージクローンのスクリーニング

ヒトIgG抗体に対して高い親和性を有する結合ペプチドを得るために、我々は2つのCysによるジスルフィド結合で環状化したランダムペプチドライブラリ(X3CX7-8CX3)をT7ファージディスプレイシステム(T7select10-3ベクター, Novagen)を用いて構築し、バイオパンニングと呼ばれる手法を用いてヒト抗体に結合するT7ファージクローンを単離した。この1次ライブラリから得られた抗体結合ペプチドは、特異的にヒト抗体へ結合するものの親和性が低かったため、保存性の高かった3箇所のアミノ酸残基を残しその他をランダム配列にした2次ライブラリを構築し、再度バイオパンニングによる高親和性の結合ファージの単離を試みた。得られたクローンのスクリーニングは一般的にELISAによって行うことが多いが、ここでは、クローン化したT7ファージを大腸菌に感染させ、溶菌後の上清に含まれるT7ファージをアナライトとして、そのままProteOn XPR36で測定する方法を用いた。Sulfo-NHSとEDCにより活性化したGLMセンサーチップ(カルボキシル基を有するセンサーチップ)に、10mM酢酸緩衝液(pH5.0)に5μg/mlの濃度で溶解した、hIgG1(Trastuzumab:ハーセプチンとTocilizumab:MRA)、ヤギIgG、ウサギIgG、マウスIgGを5分間のインジェクションにより固定化し(抗体の固定化量は、2,000-6,000RU)、1Mエタノールアミン(pH8.5)でブロッキングした。T7ファージクローンを大腸菌に感染させ、溶菌後の培養上清を0.22μmのフィルターで濾過後、直接ProteOn XPR36にアプライし、相互作用解析を実施した。

❶リガンドとの固定

❷アナライトインジェクション

1

2

3

4

5

6

1 2 3 4 5 6

・活性化ー EDAC/sulfo-NHS

・リガンドインジェクション

・非活性化ー ethanolamine

Step1:リガンドとの固定

Step2:アナライトインジェクション(30μl/min)

ヒトlgG1(ハーセプチン)ヒトlgG1(MRA)

BlankヤギlgG1ウサギlgG1マウスlgG1

培養上清A培養上清B培養上清C培養上清D培養上清E

Buffer

=抗 体

=ファージ

Step1:リガンドとの固定

Step2:アナライトインジェクション(50μl/min)

ペプチドAペプチドB

BlankペプチドCペプチドDペプチドE

ヒトlgG1(ハーセプチン)0nMヒトlgG1(ハーセプチン)6.3nMヒトlgG1(ハーセプチン)12.5nMヒトlgG1(ハーセプチン)25nMヒトlgG1(ハーセプチン)50nMヒトlgG1(ハーセプチン)100nM

=抗 体

=ファージ

6x6の測定フォーマット

図1 ProteOn XPR36分子間相互作用解析システムの原理と特長(左)SPR(表面プラズモン共鳴)技術を用いてチップ表面に固定したリガンドへのアナライトの相互作用を検出します。(右)同時に6種類のリガンドを固定化することができます。固定したリガンドに直交するよう6種類のアナライトを流すことができます。これにより36種類の相互作用反応を同時に測定することができます。

ProteOn XPR36システムによるヒトイムノグロブリンG結合ペプチドのスクリーニング鹿児島大学大学院理工学研究科 生命化学専攻 畠中 孝彰、 伊東 祐二

アナライトフロー リガンドとの組合

センサーチップ

検出器入射光

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Bio-Rad News12

ファージをインジェクトした際の典型的なセンサーグラムを図2(B)に、解離反応測定直後(255秒後)での結合由来のリスポンス(RU値)を10個のクローンについて比較した結果を図2(A)に示す。このように、結合活性の強弱がRU値の差で評価できることから、ProteOn XPR36によって結合性ファージのスクリーニングが十分行えることがわかった。ProteOn XPR36の測定は、最大6サンプルの相互作用測定が再生も含めて1回15分で終わるため、例えば30クローンの結合活性のスクリーニングも、リアルタイムで迅速に(90分以内)で行うことが出来ることも大きなメリットである。

実験②:ヒト抗体結合性合成ペプチドとヒト抗体との反応速度論的相互作用解析

このようにして得られたT7ファージクローンの提示するペプチドの配列情報を元に、N末端にビオチン化PEO4を付加した合成ペプチド(A-D)を合成し、分子内ジスルフィド結合を形成後精製し、NeutroAvidinが固定化されたNLCセンサーチップに50uMの濃度(HBS-EP緩衝液, pH7.4)で、5分間インジェクションすることで固定化を行った(ペプチドの固定化量は、500-1,500RU)。一方、コントロールセルには、HBS-EP緩衝液に溶解した50uM Biotin溶液を流した。測定は、HBS-EP緩衝液に6.3-100nMになるように調製したhIgG(ハーセプチン)をアナライトとしてインジェクトし、反応をモニターした(結合反応時間:180秒、解離反応時間:600秒)。結果を図3に示す。この解析から得られたペプチドA-Dの解離定数(Kd)、

反応速度定数(Kon/Koff)を表1に示した。強いもので見かけのKd値が、0.4nMのペプチドを同定することが出来た。このように、1回の分析

(30分以内)で6種のリガンドに対するアナライトの速度論的パラメータ(表1)を一度に取得できることは、ProteOn XPR36の大きな魅力である。このようなマルチアフィニティ解析を他社の4セルモニターによるシステムで解析する場合、実際に分析は可能であるが、繰り返しの再生も含め数時間を必要とする。また、再生によって固定化したリガンドが変性するようなケースや、希釈溶液中でアナライトが容器へ吸着してしまう事が心配されるような場合では、1回のインジェクトで定数算出に必要な測定が終了できる本システムは特に有用である。また、ProteOn Manager中の解析ソフトを使えば、多くの測定データをほぼ自動的に処理し、必要なパラメータを算出してくれるので、パラメータ解析に時間がかかるといった苦労は少ない。ここで、結合解析において注意を要する問題点について触れておきたい。図3のケースでは、ペプチドをセンサーチップに固定化して、抗体をアナライトとしてインジェクトし反応を観察した。この測定で得られた結合パラメータの信頼性を確認するためによく行われるのが、リガンドとアナライトを入れ替えて分析する方法である。図4に、5種類の抗体(hIgG:ハーセプチン、MRA、ヤギ IgG、ウサギ IgG、マウス IgG)をセンサーチップに固定化し、63-1,000nMのペプチドA-Eをインジェクトして、反応をモニターした結果を示した。用いたペプチドは分子量が2,000-2,500であったが結合解析には十分なレスポンスが見られた。得られた解離定数・反応速度定数を表2に示した。得られたパラメータは、興味深いことに、例えばペプチドAの場合、表1では、Kdが0.4nMであったが、表2では、8.6nMと約20分の1に親和性が低下していた。ペプチドBやCでも同様な低下が得られた。この原因として考えられるのは、表1(図3)の系の場合、チップ表面に高濃度に固定化

図3 チップに固定化した5種類の合成ペプチド(A-E)とhIgG(ハーセプチン)との相互作用センサーグラム

表1 チップに固定化した5種類の合成ペプチド(A-E)とhIgG(ハーセプチン)間の解離定数・反応速度定数

図4 チップに固定化したhIgGと合成ペプチド(A-E)間の相互作用センサーグラム(上段)とペプチドCの平衡結合解析(下段)下段:固定化した3種の抗体(ハーセプチン、MRA、ウサギIgG)に対するペプチドCの結合を、ProteOn Manager上の平衡解析プログラムで解析した(縦軸:結合平衡後のリスポンス値(RUeq)、横軸:ペプチド濃度)

6x6の測定フォーマット

Step1:リガンドとの固定

Step2:アナライトインジェクション(30μl/min)

ヒトlgG1(ハーセプチン)ヒトlgG1(MRA)

BlankヤギlgG1ウサギlgG1マウスlgG1

ペプチドA(30-1,000nM)ペプチドB(30-1,000nM)ペプチドC(30-1,000nM)ペプチドD(30-1,000nM)ペプチドE(30-1,000nM)

Buffer

=抗 体

=ファージ

ペプチド K on K off Kd(nM)ペプチドA 1.4 E+5 5.8 E-5 0.4ペプチドB 1.1 E+5 1.9 E-4 1.8ペプチドC 1.3 E+5 8.9 E-3 68ペプチドD 6.3 E+4 0.08 1320ペプチドE 1.1 E+4 0.02 2260

Herceptin

MRA

Rabbit IgG

A

C

E

B

D

A

C

E

B

D

図2 ProteOn XPR36によるヒト抗体結合ファージクローンのスクリーニング(A)非結合性クローン(左)と結合性クローン(右)の典型的な相互作用センサーグラムと(B)10種類

のファージクローンにおける結合に由来するSPRレスポンス(RU)の比較

140012001000800600400200

0A B

n.d. n.d.C D E

phage clone

RU

F G H I J

(A)

(B)

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13Bio-Rad Laboratories 2012

表2 チップに固定化したhIgG(ハーセプチン)と5種類の合成ペプチド(A-E)間の結合の速度論的パラメータ

6x6の測定フォーマット

図6 ヒト抗体ペプチドによってキャプチャーした抗体と抗原との結合解析

したペプチドと抗体で2価の結合が可能であること(アビディティ効果と有効濃度効果)、また、移動相を流れている抗体は固定相のペプチドと一旦解離しても再結合しやすく(再結合効果)、これにより見かけの結合力が高くなったと考えられる。このようなケースの場合、結合力の弱いほうのパラメータが1対1の結合によるものと考えるのが一般的である。図4で用いた方法によって、5種類の抗体(ヒトIgG抗体2種、ウサギIgG、マウスIgG、ヤギIgG)に対するペプチドA-Eの結合反応をモニターした結果を図5に示す。これは、異なる濃度のペプチド溶液の6回のインジェクションによる216のセンサーグラムを重ね合わせたものである(トータルの分析時間は約2時間)。この結果から、最も結合力の高かったペプチドAは、2種のヒト抗体医薬(hIgG)とKd値:8.6nM、11nMで結合し、ウサギのIgGともKd値:43nMで結合することがわかった。このようなマルチアフィニティ解析は、抗体クローンのスクリーニング・交差反応性の評価や変異体の結合解析、エピトープマッピングにも大いに威力を発揮すると思われる。

図5 チップに固定化した5種類の抗体と5種類の合成ペプチド間のマルチアフィニティ解析結果(216相互作用センサーグラムを重ね合わせたもの)

実験③:ヒト抗体結合ペプチドの応用例最後に、得られたヒト抗体結合ペプチドの応用例について紹介したい。得られたヒト抗体結合ペプチドAは、上述したように、高い特異性を持ってhIgGに結合するため、このペプチドを固定化したカラムによるヒト抗体の精製や酵素標識したペプチドによる抗体の検出にも応用が可能である。ここでは、このペプチドを固定化したセンサーチップを用いて、ヒト抗体を簡便にキャプチャーし、その上で抗体・抗原間の親和性を評価した結果を示す。具体的には、NLCセンサーチップにビオチン化ヒト抗体結合ペプチドを固定化し、ハーセプチンをインジェクトして抗体をキャプチャーした後、抗原であるHer2タンパク質を濃度を変えてインジェクトした。このセンサーグラムから得られた抗原抗体反応の結合のKd値は0.9nMで、直接ハーセプチンを共有結合でGLMセンサーチップに固定化してHer2抗原との結合解析を行った場合とほぼ同じ値が得られた(Kd=1.3nM)。このペプチドを介したキャプチャー法のメリットとして、1)抗体のチップへの固定化(キャプチャー)が極めて短時間に簡便に(試薬による活性化を必要とせず)行えること、2)このペプチドはFcを認識するため、抗体の固定化ステップでの抗体の不活性化(抗原結合部位のブロック)の心配がないこと、3)抗体キャプチャーに従来用いられている抗ヒトFc抗体やプロテインAなどとは異なり、再生ステップでのキャプチャーリガンドの劣化が起こりにくく、繰り返しの

(再生)使用が可能なことが挙げられる。

終わりに

ProteOn XPR36は、抗体医薬開発のための抗体クローンのスクリーニングなどにももちろん大きな威力を発揮するが、ここでは、T7ファージライブラリを用いたヒト抗体に対する低分子ペプチドのデザインを例に有用性を示した。このシステムは、様々な標的分子に対するペプチドあるいは低分子リガンドの探索にも応用が可能である。今後は、このような手法を用いて新たな医薬品のリード構造を見出せるような研究にも取り組んで行きたい。

参考文献1. Sakamoto, K., Ito, Y., Mori, T. & Sugimura, K. Interaction of human

lactoferrin with cell adhesion molecules through RGD motif elucidated by lactoferrin-binding epitopes. The Journal of biological chemistry 281, 24472-24478 (2006).

2. Kotaro Sakamoto, Yuji Ito. et al Discovery and characterization of a peptide motif that specifically recognizes a non-native conformation of human IgG induced by acidic pH conditions. The Journal of biological chemistry, 284, 9986-9993 (2009)

3. 伊東祐二,坂元孝太郎,前田政敏,村岡賢,杉村和久, ファージディスプレイによる分子デザイン―抗体から低分子ペプチドまで―, 生物物理48(5),294-298(2008)

Step1:リガンドとの固定

Step2:アナライトインジェクション(30μl/min)

ビオチン化ペプチド→ヒトlgG1(ハーセプチン)ビオチン化ペプチド→ヒトlgG1(ハーセプチン)ビオチン化ペプチド→ヒトlgG1(ハーセプチン)ビオチン化ペプチド→ヒトlgG1(ハーセプチン)ビオチン化ペプチド→ヒトlgG1(ハーセプチン)ビオチン化ペプチド→ヒトlgG1(ハーセプチン)

Her2(nM)Her2(nM)Her2(nM)Her2(nM)Her2(nM)

Buffer

=抗 体

=ペプチド

=抗 原

ペプチド 抗体 K on Kd off Kd(nM) 備考ペプチドA Herceptin 6.3 E+5 5.4 E-3 8.6ペプチドB Herceptin 2.6 E+5 5.6 E-3 21.4

ペプチドC Herceptin2.5 E+5 0.06 227

— — 150*平衡値解析

ペプチドD Herceptin — — 600ペプチドE Herceptin n.d. n.d. n.d. *測定不能

A

C

E

B

D

Herceptin(抗体)のインジェクション

HerceptinーHer2の結合解析

Her2(抗原)のインジェクション 再生処理

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Bio-Rad News14

定量PCRの革命!

QX100™ Droplet Digital™ PCRシステム (ddPCR™) は、非常に高い精度と感度で絶対定量を行うことにより、遺伝子疾患・がん・感染症などの研究を大きく加速させる第3世代のPCRです。1コピーの解像度で解析することが可能なため、 CNV (コピー数多型) 解析、Rare sequence検出、遺伝子発現解析等のアプリケーションに威力を発揮します。

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絶対定量でありPCR効率の影響が無いため、1.1倍の希釈系列を±10%の誤差で測定することができます。

特長② : 高感度 0.001%の1塩基変異を検出可能

20,000個と数多くのドロップレットに分割し、S/ N比(signal to noise ratio)が非常に高い状態で絶対定量を行うため、0.001%の変異検出が可能になります。

QX100TM Droplet DigitalTM PCRシステム

図1 QX100 Droplet Digital PCRシステム ワークフロー0 : サンプルをTaqManケミストリーを用いるリアルタイムPCRと同様の手法で調製します。1 : QX100 Droplet Generatorを用いて各サンプルにつき20,000個のドロップレットを作製します。2 : PCRによりドロップレット内のターゲット遺伝子を増幅します。3 : QX100 Droplet Readerを用いて2色 (FAM, VIC) の蛍光検出系によりドロップレットを測定します。4 : dqPCRソフトウェアによりポジティブ/ネガティブのドロップレットの数を測定し、サンプルの濃度

を算出します。

Ordering Informationカタログ番号 品名 価格186-3001JA QX100 Droplet Digital PCRシステム ¥14,500,000186-3001J1 QX100 Droplet Digital PCRシステム C1000 Touchサーマルサイクラー付 ¥15,300,000186-3002JA QX100 Droplet Generatorシステム ¥3,500,000186-3003JA QX100 Droplet Readerシステム ¥11,500,000186-3007JA 専用解析用ノートPC ¥700,000

Mea

sure

d co

ncen

trat

ion,

cop

ies/

reac

tion

1,000,000

100,000

10,000

1,000

100100 1,000 10,000 100,000 1,000,000

Target concentration, copies/reaction

R2 = 0.99862

Target (FAM) Reference (VIC)

A

BM

easu

red

conc

entr

atio

n,co

pie

s/re

actio

n

30,000

25,000

20,000

15,000

10,00010,000 15,000 20,000 25,000 30,000

Target concentration, copies/reaction

R2 = 0.99772

0

1

2

3

4

サンプル調製

ドロップレット作製

データ分析

ドロップレット蛍光測定*

PCR

Droplet Generator

Thermal Cycler

Droplet Reader

Software

12,000

10,000

8,000

6,000

4,000

2,000

0

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000

Rare Sequence↓

図2 1.1倍希釈系列の定量結果A : 5オーダーの濃度を測定可能。(2倍希釈系列を使用) B : 1.1倍希釈系列でも±10%の誤差で濃度測定が可能。エラーバーは95%のCl(ポアソンの信頼区間)を示す。(N=8) レファレンス遺伝子(■)の濃度 : 19,000コピー/反応 ターゲット遺伝子(■):S.aureus DNA, レファレンス遺伝子(■):human gDNA

図3 BRAF V600Eをターゲットとした変異検出結果TaqManプローブを用いたduplex PCRにより変異検出を行った。FAM probeのターゲット遺伝子:BRAF V600E,  VIC probeのターゲット遺伝子:wildtype

FAM

inte

nsity

, AU

VIC intensity, AU

*TaqManケミストリーを使用

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15Bio-Rad Laboratories 2012

高速・かつ増幅効率の良いリアルタイムPCRに最適な試薬SsoAdvancedTM SYBR® Green Supermix

SsoAdvanced SYBR Green Supermixは、現在お使いのSYBRプロトコールを使用し、高速かつ増幅効率の良いリアルタイムPCRを実現できる画期的な製品であり、発売開始後大変多くのお客様にご好評を戴いております。

特長① : 高速

SsoAdvanced SYBR Green Supermixには、バイオ・ラッドの特許技術Sso7d融合ポリメラーゼ(図1)が使用されています。Sso7dはDNA結合タンパク質のため、PCR中に鋳型DNAに強固に結合し、伸長反応の間、DNAポリメラーゼが鋳型DNAから脱落することを防ぎます。このため、PCR中に鋳型DNAからの脱落と再会合を繰り返して伸長反応が進む一般的なポリメラーゼよりも、高速に増幅することが可能となっています。

特長② : 増幅効率が良い

鋳型DNAと強固に結合するSso7dテクノロジーにより、反応系中に含まれる阻害剤の影響が最小限に抑えられるため、効率の良い増幅が可能です。他社製品と比較しても同濃度での蛍光の立ち上がりが早く、また良好な増幅効率を示しています(図2)。更に、非特異産物も見られません (図3)。

特長③ : SYBRプロトコール最適化の必要なし

今まで実験系を構築する際には、反応条件の再検討が不可欠でした。しかし今まで数多くの研究者から、条件検討のために貴重な研究時間を削ることは避けたいとの声を伺ってきました。SsoAdvanced SYBR Green Supermixでは面倒な再検討を不要にするため、Fast/標準プロトコールの両方に対応いたしました。例えば、SsoAdvanced SYBR Green SupermixのFast /標準プロトコールの比較データを見ると、シグナルの立ち上がり、増幅効率、直線性に大きな差は生じていません (図3)。この様にSsoAdvanced SYBR Green Supermixでは、どのようなプロトコールでも安定して、増幅効率が良い反応を実現することができます。

まとめ

SsoAdvanced SYBR Green Supermixは、条件検討に時間をかけることなく、Sso7dテクノロジーの特長である、高速かつ増幅効率の良いリアルタイムPCRを実現できます。この機会に是非ご活用ください。

Ordering Informationカタログ番号 品名 価格 保存 172-5260 SsoAdvanced SYBR Green Supermix 2ml (20μl×200反応) ¥25,000 -20℃172-5261 SsoAdvanced SYBR Green Supermix 5ml (20μl×500反応) ¥55,000 -20℃172-5261B02 SsoAdvanced SYBR Green Supermix 10ml (20μl×1,000反応) ¥98,000 -20℃172-5261B05 SsoAdvanced SYBR Green Supermix 25ml (20μl×2,500反応) ¥230,000 -20℃172-5261B10 SsoAdvanced SYBR Green Supermix 50ml (20μl×5,000反応) ¥450,000 -20℃

図2 SsoAdvancedとL社製品の、L社推奨プロトコールにおける比較L社 Fastプロトコール用製品:Efficiency = 93.7%, R2= 1,000、SsoAdvanced SYBR Green Supermix:Efficiency = 99.6%, R2= 0.99920ng~2pgのHuman cDNAに対してβ-actin遺伝子の検出を行った。解析にはCFX96リアルタイムPCR解析システムを用いた。プロトコール : 熱変性 95℃ 20秒、熱変性/アニーリング・伸長反応 95℃ 3秒/60℃ 30秒、40サイクル

図3 SsoAdvancedのFastプロトコール/標準プロトコールにおける比較Fastプロトコール :Efficiency = 98.4%, R2= 1.000標準プロトコール :Efficiency = 98.9%, R2= 0.99920ng~2pgのHuman cDNAに対してβ-actin遺伝子の検出を行った。解析にはCFX96リアルタイムPCR解析システムを用いた。プロトコールは、下表を参照。SsoAdvanced SYBR Green Supermixは、 異 なるプ ロトコールでも安定して、増幅効率が良い反応を実現できる

103

104

105

0 10 20Cycles

30 40

RFU

103

104

105

RFU

Ef�ciency=98.9%R2=0.999

Temperature, Celsuis

-d(R

FU) /

dT

Fastプロトコール

標準プロトコール

Ef�ciency=98.4%R2=1.000

2,500

2,000

1,500

1,000

500

065 70 75 80

Temperature, Celsuis85 90 95

-d(R

FU) /

dT

85 90 95

2,000

1,500

1,000

500

温度・保持時間サイクル数

初期熱変性 熱変性/アニーリング・伸長反応Fastプロトコール 95℃ 30秒 95℃ 1秒/60℃ 1秒 40サイクル標準プロトコール 95℃ 3分 95℃ 10秒/60℃ 30秒 40サイクル

適合機種

CFX96, CFX96 Touch, CFX384, CFX384 Touch, CFX Connect, MiniOpticon, MyiQ2, iQ5, iCycler iQ, MyiQ, Opticon, Opticon2, Chromo4Life Technologies, StepOne, StepOne Plus, Roche LightCycler480Eppendorf Mastercycler ep realplex, QIAGEN (Corbett) Rotor-Gene Q, Takara Dice Real Time System

Sso7dPolymerase

図1 Sso7d融合DNAポリメラーゼ

105

104

103

0 10 20Cycles

RFU

30 40

Ef�ciency=93.7%Ef�ciency=99.6%

L社 Fast プロトコール用製品 SsoAdvanced SYBR Green Supermix

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www.bio-rad.com 本   社 〒140-0002 東京都品川区東品川 2-2-24 天王洲セントラルタワー TEL:03-6361-7000 FAX:03-5463-8480大阪営業所 〒532-0025 大阪市淀川区新北野 1-14-11 第一生命ビル TEL:06-6308-6568 FAX:06-6308-3064福岡営業所 〒812-0013 福岡市博多区博多駅東 2-5-28 TEL:092-475-4856 FAX:092-475-4858

* 学術的お問い合わせは TEL:03-6404-0331 FAX:03-6404-0334

*価格 ( 税抜き)、仕様などは予告無く変更することがありますので、ご了承ください。*価格は 2012 年 5月現在のもので、メーカー希望小売価格(税別)です。※本カタログに記載されている会社名、商品名は各社の商標または登録商標です。

取扱店

C10428 1204A

バイオ・ラッド ラボラトリーズ 株式会社ライフサイエンス事業部

デジタルPCR

デジタルPCRは従来のリアルタイムPCRに比べてはるかに高精度、高感度に定量を行う新しい技術です。定性のみの通常PCR、検量線による相対定量のリアルタイムPCRに対して、絶対定量を行うデジタルPCRは第3世代のPCRと言われています。この新世代の核酸定量法はCNVやRare Sequence検出、微量遺伝子の定量を可能にする新技術です。セミナーでは実験データ等を交え新世代定量法をご説明いたします。

定量ウェスタン V3ワークフロー

電気泳動⇒ブロッティング⇒検出の一連の流れにおいて、より簡便かつ正確な「定量」にフォーカスしたバイオ・ラッドがお薦めする「V3ワークフロー」です。

「V3ワークフロー」は電気泳動後の確認「Visual ize」、転写後の確認「Verify」、検出後はハウスキーピングタンパク質ではなく、トータルタンパク質量によるノーマライズを行う「Validate」の3つのVから成り立ちます。電気泳動・ブロッティングの各ステップで画像化して確認することにより、より確かな分析を実現します。また検出時には総タンパク質量によるノーマライズを行うことにより、ハウスキーピングタンパク質でのノーマライズに比べてバラつきのない正確な定量を可能とします。バイオ・ラッドでは、この簡便かつ正確な定量ワークフロー“V3”をスムーズに行っていただける製品群と共に、実験データを交えてV3ワークフローをご紹介致します。

遺伝子・タンパク質定量の最新技術セミナーに是非ご期待ください。

バイオ・ラッド 新技術セミナーのお知らせ「遺伝子・タンパク質定量法のブレークスルー」

バイオ・ラッドから「定量」をテーマにしたセミナーをお届けします。

遺伝子やタンパク質の「定量」は、生命科学を研究する上で非常に重要なステップであり、より確かな定量技術・定量法は、より正しい解釈・発見につながります。バイオ・ラッドではこのたび、より高精度で高感度な遺伝子定量技術の「デジタルPCR」、そしてより正確で簡便なウェスタンブロッティング「定量ウェスタンV3ワークフロー」により、これまでにない新しい「定量」を提案します。是非この機会に、最新技術、最新定量法による新しい遺伝子・タンパク質定量ソリューションを手に入れてください。

プログラム概要「遺伝子・タンパク質定量法のブレークスルー」

デジタルPCRは・高精度な絶対定量が可能・微量遺伝子を高感度に検出可能

定量ウェスタンでタンパク質定量を・ノーマライズによる正確な定量が可能・トータルタンパク質量でHKPよりも簡単にデータ補正が可能

■参加費 無料

QX100 Droplet Digital PCRシステム

ムPCRに比べてはるかに高精度

QX100 Droplet Digital PCRシステム

Visualize電気泳動の確認

V

Verify転写の確認

V

トータルタンパク質の定量および目的バンドの定量によるノーマライズ

Protein of interest probed withAlexa Fluor 649

Validate

V電気泳動 ブロッティング 検出

ご参加の申し込み方法はウェブをご参照ください。申込書をダウンロードしてFaxでお送りいただくか、オンラインでもお申し込みいただけます。その他、セミナーの最新情報はバイオ・ラッドのウェブサイト

「ニュース&イベント」をご参照ください。http://www.bio-rad.com

エ リ ア 日  程 会  場 定 員

東 京 6/19(火) 東京国際フォーラム東京都千代田区丸の内3-5-1 TEL. 03-5221-9000

60名

大 阪 6/27(水) 千里ライフサイエンスセンター大阪府豊中市新千里東町1-4-2 TEL.03-6873-2010

50名

京 都 7/4(水) 京都リサーチパーク京都府京都市下京区中堂寺南町134 TEL.075-322-7888

50名

名 古 屋 7/11(水) ウインクあいち愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38 TEL.052-571-6131

40名

仙 台 7/18(水) ハーネル仙台宮城県仙台市青葉区本町2-12-7 TEL.022-222-1121

50名

福 岡 7/25(水) 八重洲博多ビル福岡県福岡市博多区博多駅東2-18-30 TEL.092-472-2889

40名

札 幌 8/1(水) ACU [アキュ]北海道札幌市中央区北4西5 TEL.011-272-3838

30名