主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 ·...

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O 0103 報告554 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想- 総合的な学習の時間の取組については,現在多くの課題が残されている。 その一つが,中央教育審議会答申(平成20年1月)で指摘されている「学 校教育全体で思考力・判断力・表現力等を育成するための各教科と総合的 な学習の時間との適切な役割分担と連携が必ずしも十分に図られていない こと」である。 思考力・判断力・表現力等の基盤となるものは言語能力であり,学習指 導要領(平成20年3月告示)においても言語活動の充実が重点に挙げられ ている。そして,その充実は,国語科を核として全ての教科等において求 められているのである。 そこで,言語活動の充実という視点から,総合的な学習の時間と各教科 等とを関連させ言語能力を育む学習を効果的に行うことで,総合的な学習 の時間における探究的な学習を充実させるための研究を進めた。 その結果,友だちやコミュニティティーチャー,地域の方と協同し,主 体的に学ぶ子どもの姿が見られた。

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Page 1: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

O 0 1 0 3

報告 554

主体的な学びを支える

総合的な学習の時間における言語能力の育成

-探究的な学習を実現する言語活動の構想-

総合的な学習の時間の取組については,現在多くの課題が残されている。

その一つが,中央教育審議会答申(平成20年1月)で指摘されている「学

校教育全体で思考力・判断力・表現力等を育成するための各教科と総合的

な学習の時間との適切な役割分担と連携が必ずしも十分に図られていない

こと」である。

思考力・判断力・表現力等の基盤となるものは言語能力であり,学習指

導要領(平成20年3月告示)においても言語活動の充実が重点に挙げられ

ている。そして,その充実は,国語科を核として全ての教科等において求

められているのである。

そこで,言語活動の充実という視点から,総合的な学習の時間と各教科

等とを関連させ言語能力を育む学習を効果的に行うことで,総合的な学習

の時間における探究的な学習を充実させるための研究を進めた。

その結果,友だちやコミュニティティーチャー,地域の方と協同し,主

体的に学ぶ子どもの姿が見られた。

Page 2: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

目 次

はじめに ···························· 1

第1章 主体的,探究的な「総合的な学習

の時間」の構想

第1節 「総合的な学習の時間」に求められ

ているもの

(1)「総合的な学習の時間」のめざすもの · 1

(2)学習指導要領改訂により「総合的な学

習の時間」に求められているもの ···· 4

第2節 「総合的な学習の時間」の現状と課題

(1)中央教育審議会答申にみる課題 ······ 5

(2)急務とされる課題 ·················· 6

第3節 言語能力と言語活動 ·············· 6

第2章 言語活動についての各教科等と「総

合的な学習の時間」との関連

第1節 学習指導要領において重視される言

語活動

(1)各教科等の言語活動 ················ 8

(2)「総合的な学習の時間」の言語活動 ·· 13

第2節 新しい教科書で取り上げられた言語

活動例 ························· 15

第3章 主体的,探究的な学習を実現する

言語活動の構想と実践

第1節 主体的,探究的な学習を実現する言

語活動の構想

(1)単元を見通して言語活動を位置付ける

································· 19

(2)各教科等と関連させて言語活動を位置

付ける ··························· 20

第2節 主体的,探究的な学習を実現する言

語活動の実践

(1)単元を見通して言語活動を位置付けた

第3学年「アンニョンハセヨ!韓国・

朝鮮」の実践 ····················· 21

(2)各教科等と関連させて言語活動を位置

付けた実践 ······················· 27

第4章 主体的,探究的な学習を充実させ

るために

第1節 研究の成果と課題

(1)各教科等と関連させて行う言語活動に

よる確かな学び ··················· 34

(2)探究の学習過程に位置付けた言語活動

による充実した学び ··············· 36

第2節 主体的,探究的な学習の具現化

(1)主体的な学習をめざして ··········· 37

(2)探究的な学習をめざして ··········· 38

おわりに ···························· 39

[付表] ···························· 40

<研 究 担 当> 進藤 弓枝 (京都市総合教育センター研究課研究員)

<研究協力校> 京都市立西院小学校

京都市立小栗栖小学校

<研究協力員> 片山 妙子 (京都市立西院小学校教諭)

葛山 賢 (京都市立小栗栖小学校教諭)

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小学校 総合的な学習の時間 1

はじめに

平成10年告示の学習指導要領で,『生きる力』

を育むことを目的として「総合的な学習の時間」

(以下「総合」)が創設されてから,今年で13年が

経つ。

この間,「総合」は多くの優れた実践を生み出

し,子どもたちに「多くの人と関わる力」「課題を

解決する力」「考える力」「表現する力」などを育

んできた。また,「総合」で培った様々な力や自己

肯定感,自己有用感,多くの魅力ある人との出会

いが,子どもたちに将来の夢を育み,生きる展望

を拓いてきた。

その一方で,「総合」の理念が十分に理解され

ず,「補習の時間」「行事の準備をする時間」とと

らえられている事例も少なくない。

平成23年度より,小学校で完全実施の学習指導

要領において,「総合」の時間数が中学年で35時間,

高学年で40時間削減された。この,時間数が削減

されたという事実だけをとってみると,「総合」が

軽視されたと受けとめられてしまうかもしれない。

しかし,今まで総則に含まれていた「総合」は,

今回の改訂において新たに第5章として独立し,

解説書も作成されたのである。

このことは,大変意義のあることである。なぜ

なら,章立てされたことで,趣旨や理念が改めて

周知徹底されることにつながるからである。また,

解説書が作成されたことによって,子どもや学校,

地域の実態を踏まえた全体計画や年間指導計画の

作成の重要性,具体的な手だてや手順,評価の在

り方が示された。これによって,各学校がこれま

での取組を見直すきっかけとなり,具体的に改善

を進めることが期待できる。

今回改訂された学習指導要領は,言語活動の充

実を重点に挙げている。国語科を核としながら,

社会科や算数科,理科など,全ての教科等におい

て言語活動の充実が求められているのである。そ

の中にあって,特に,自分たちで課題を見つけ,

計画を立て,課題を追究し,友だちと話し合い,

多様な方法で表現する「総合」は,生きた言語能

力を身に付ける上でもますます重要となってくる

であろう。

そこで,言語活動の充実という視点から,「総

合」と各教科等とを関連させ,言語能力を育む学

習を効果的に行っていくことで,「総合」において

探究的な学習が実現され,「総合」が一層充実して

いくと考えた。

第1章 主体的,探究的な「総合的な学習の

時間」の構想

第1節 「総合的な学習の時間」に求められてい

るもの

平成8年7月,中央教育審議会は,「21世紀を展

望した我が国の教育の在り方について(第一次

答申)」の中で,「[生きる力]が全人的な力である

ということを踏まえると,横断的・総合的な指導

を一層推進し得るような新たな手だてを講じて,

豊かに学習活動を展開していくことが極めて有効

であると考えられる」(1)と述べ,「総合」の必要

性を提言した。そして,この提言を受けて創設さ

れたのが「総合」である。

しかし,現在「総合」については,学校格差や

各校種での取組の重複を生み出したり,趣旨に反

する学習活動が行われたりといった,課題が指摘

される状況におかれている。こうした中,平成20

年3月に告示された学習指導要領において,「総合」

のとらえ方はどのように変わったのだろうか。そ

して,変わらず受け継がれているものは何なのだ

ろうか。

(1)「総合的な学習の時間」のめざすもの

表1-1は,平成10年と20年に告示された学習指

導要領を基に,「総合」のねらいと目標を比較した

ものである。

平成20年告示の学習指導要領では,新たに「総

合」の目標が設定された。従前の総則に示されて

いた三つの「総合」のねらいのうち,(1)(2)を

平成10年告示学習指導要領 平成20年告示学習指導要領

(1)自ら課題を見付け,自ら学

び,自ら考え,主体的に判断

し,よりよく問題を解決する

資質や能力を育てること。

(2)学び方やものの考え方を身

に付け,問題の解決や探究活

動に主体的,創造的に取り組

む態度を育て,自己の生き方

を考えることができるように

すること。

(3)各教科,道徳及び特別活動

で身に付けた知識や技能等を

相互に関連付け,学習や生活

において生かし,それらが総

合的に働くようにすること。

(2)

横断的・総合的な学習や探

究的な学習を通して,自ら課

題を見付け,自ら学び,自ら

考え,主体的に判断し,より

よく問題を解決する資質や能

力を育成するとともに,学び

方やものの考え方を身に付け,

問題の解決や探究活動に主体

的,創造的,協同的に取り組

む態度を育て,自己の生き方

を考えることができるように

する。 (3)

(下線は筆者によるもの)

表1-1 「総合」のねらい,目標の新旧比較

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小学校 総合的な学習の時間 2

中心に,「探究的な学習」「協同的」の文言が加え

られている。

今回の学習指導要領においては,教科で基礎

的・基本的な知識・技能の習得や活用を行うこと

を前提に,「総合」では,教科等の枠を超えた横断

的,総合的な課題について探究的な学習を行うこ

とを目標としている。そして,「自ら課題を見付け,

自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく

問題を解決する」資質や能力及び「(学び方やもの

の考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に)

主体的,創造的,協同的に取り組む」態度を育成

していくことを求めている。つまり,「総合」の「自

ら学び,自ら考える力などの『生きる力』を育む」

という理念は,何ら変わっていないのである。

そこで,「生きる力」とは,どのような資質や能

力をさすのかについて考えてみたい。

「生きる力」には,「自ら課題を見付け,自ら

考え,自ら課題を解決していく資質や能力」「豊か

な人間性」「たくましく生きるための健康や体力」

の三つの大きな要素がある。つまり,知・徳・体

が子どもの内面で総合化された全人的な力が「生

きる力」であるといえる。

しかし,嶋野が「知・徳・体は教育の不易であ

るが,そのことを今日的・未来的意味において捉

える必要がある。社会の急速な変化の中や,自己

実現という学習ニーズの拡大によって,知・徳・

体が新たな意味を持ちはじめている」(4)と述べて

いるように,社会の変化とともに,「生きる力」の

とらえ方が変化してきていることも事実である。

ここで,とらえ方がどのように変わったのかを確

かめておきたい。筆者は主として二つの点で変わ

ったと考える。

一点目は,平成19年に学校教育法が一部改正さ

れ,学力の主要3要素として「基礎的・基本的な知

識・技能の習得」「知識・技能を活用して課題を解

決するために必要な思考力・判断力・表現力等」

「学習意欲」が示されたことである。

二点目は,平成20年1月に出された「幼稚園,小

学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習

指導要領等の改善について(答申)」において,「将

来の職業や生活を見通して,社会において自立的

に生きる」「思考力・判断力・表現力等をはぐく

む」「言語の能力の重視や体験活動の充実を図る」

の三つの点が重視されるようになったことである。

「知識基盤社会」といわれる現在,今まで習得

してきた知識や情報,技能が,社会の進歩によっ

て,その有効性を失うことも大いにありうる。そ

のような中,筆者は「生きる力」を図1-1のような

ものと考える。

知・徳・体の三つが子どもの内面で総合化され

たものが「生きる力」であると述べたが,その「知」

の部分において,ただ物事を理解するだけではな

く,自分で判断し,筋道を立て,処理していく能

力が求められる。

つまり,整理し,体系化された「知識」を実社

会,実生活において生きて働く「知恵」に変えて

いかなければならないのである。そして,この全

人的な力は,これからの変化の激しい社会におい

て,自分で思考,判断し,問題を解決していく実践

的な力でなければならないと考える。

①主体的な学習

「総合」が創設された当初より,自ら課題を見

付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よ

りよく問題を解決する資質や能力を育てることが

「総合」のねらいとされていた。つまり,子ども

主体の学習が求められていたのである。

しかし,現実には,OECD教育局指標分析課長ア

ンドレア・シュライヒャーが「日本の子どもたち

は,学びのモチベーションが低い」(5)と述べるよ

うに,子どもの学習意欲の低さが指摘されている。

また,教師側の問題として,井上が「『自ら課題

を発見し,自ら学び,自ら解決する』ような授業,

『基礎基本を身に付けながら個性化を図る』授業,

といった授業イメージは,少なくとも今教壇に立

っている多くの教師は,具体的には描けないので

はないだろうか」(6)と述べるように,子ども主体

の授業ではなく,教師主導の授業が多く行われて

全人的な力 実践的な力

自分で課題を見つけ,自ら考え,自

ら問題を解決していく資質や能力 豊かな人間性

たくましく生きるための健康や体力

「知識」→「知恵」

情報を選択し,主体的に自

らの考えを築きあげる力

自らを律し,他人と協調し,

他人を思いやる心

美しいものや自然に感動する心

正義感 道徳心

社会貢献の精神

図1-1 筆者の考える『生きる力』

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小学校 総合的な学習の時間 3

きたことが挙げられる。

また,村川が「現行指導要領(旧)では,ともす

れば『主体性』が強調されすぎた」(7)と述べて

いるように,「主体性」の言葉が一人歩きし,何

でも子どもに任せてしまうのが主体的な学習であ

ると,誤ってとらえられてしまっていたという現

状もうかがえる。

②主体的な学習が成立するための条件

次に主体的な学習が成立するための条件につい

て考えてみたい。

無藤が「子どもが自ら学ぶためには,子どもに

その個性の成長が実感され,子どもにとっての世

界が広がることがあってこそである」(8)「教師が

子どもを放っておけば,自然に自由で主体的な活

動が生まれるというのではない」(9)と述べるよう

に,当事者である子どもが,その「有用性を実感

できること」「教師が適切な支援を行うこと」が

大切であると考える。

「有用性を実感する」とは,子どもが主体的に

学んで「楽しかった」「力がついた」と実感でき

るということである。子どもが有用性を実感した

とき,大きな自信をもつ。そして,「またやって

みたい。」「今度はもっとこうしてみたい。」と,

次への意欲が生まれるのである。

「適切な支援」とは,学習環境を整えるのはも

ちろんのこと,表1-2に表したような支援が大切で

ある。これは,無藤の考え(10)を基に筆者が考え

たものである。ここで大切なことは,教師が指導

すべきか,子どもの自発性を尊重すべきかといっ

た二者択一論にしないということである。そのど

ちらもが大切であり,いかにして両立させるかが

重要となってくる。

子ども主体の学びがいかに発展し広がるのか,

いかに深まるのかが問題であり,そのために教師

は,子どもに対して,ときに見守り,ときに示唆

を与えることが大切である。そしてそれらの支援

は,全ての子どもに一斉一律に行うものではなく,

一人一人の子どもの特性,学習状況に応じて行わ

れるものでなければならない。そのためには,子

ども一人一人をしっかり見取ることが大切である

ことはいうまでもない。

また,井上が「自ら司会をし,話合いを成立さ

せることは,自主的に学習する能力を育成するた

めにも不可欠なこと」(11)「教師主導を克服し,

子ども自ら学ぶことができるように,グループの

学習の方法,司会力,質問力,討論力などを取り

上げ,確実に定着させなければならない」(12)と

述べるように,子どもに基盤となる知識・技能に

加え,言語能力が備わっていることも必要な条件

である。

「基盤となる知識・技能・力」とは,例えば話

合いの方法であったり,司会の仕方であったり,

対話力であったりする。話合いの方法を知らない

子どもは,「○○についてグループで話し合って

みましょう。」と言われても,どうしてよいかわ

からず途方に暮れるであろう。これでは充実した

話合いにならないであろう。しかし,話合いの方

法が身に付いている子どもたちであれば,互いの

考えをしっかりと聞き,充実した話合いが行える

であろう。また,こうした話合い活動を行う中で,

更に話合いが充実する方法を身に付けていくと考

える。

適切な支援 具体的な教師の姿

見守る 子どもに寄り添い,没頭して活動する姿

を見守る。

伝える タイムスケジュール,約束だけでなく,

教師の思いや願いなども伝える。

示唆する 教師の立場から,反対する余地を残して

提案する。

引き出す 対話する中で,子どものしたいこと,言

いたいことをはっきりさせていく。

ほめる 子どもの行動を見取り,その中にあるよ

さをほめる。

意味付ける子どもの行動や発言,考えのよさを見つ

け,そのよさを意味付ける。

注意する

違反が生まれた背景を見極め,どこが,

なぜよくないのかをしっかりと伝える。

※熱心さのあまりの違反であるならば,その一

生懸命さは認めることも必要。

教える ねらいを達成させるために,意図をもっ

て指導する。

まわりに

広げる

一人の子どものよさや気付きをまわりに

伝え,そのよさを広げる。

関連付ける二つの事がら,二人の考えを結び付ける。

共通する点を挙げて,気付かせる。

一緒に

熱中する共感し,共に活動する。

表1-2 筆者の考える「適切な支援」

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小学校 総合的な学習の時間 4

(2) 学習指導要領改訂により「総合的な学習の

時間」に求められているもの

今回の「総合」の改訂のキーワードは,「探究」

「協同」「体験活動」の三つである。ここで三つの

キーワードについて整理しておきたい。

①探究的な学習

これまでに「総合」がめざしてきた「現代社会

の今日的課題の追究」「横断的・総合的な学習の実

践」「各学校の創意工夫を生かした教育活動の創

造」などの考えはそのまま継承し,「探究的な学習」

とすることが明示された。これまでも,「総合」

では,問題の解決や探究活動に主体的,創造的に

取り組む態度を育てることがねらいとされていた。

しかし,今回の改訂では,その趣旨を一層明確に

するという観点から,探究的な学習についても目

標に明確に位置付けられたのである。

「総合」における探究的な学習とは,どのよう

な学習なのであろうか。探究とは,物事の本質を

探って見極めようとする一連の知的営みであると

考える。「学習指導要領解説 総合的な学習の時間

編」によると,「問題解決的な活動が発展的に繰り

返されていく一連の学習活動のことである」(13)

と定義され,図1-2のように示されている。

この図によると,探究的な学習とは,一つの大

きなテーマの下に課題を解決する過程を繰り返す

ことであり,一つの課題を解決することでまた新

たな課題が生まれ,その課題に向かって粘り強く

解決していくという学習であると考えられる。そ

こには,①課題の設定 ②情報の収集 ③整理・分

析 ④まとめ・表現の四つのプロセスがあり,その

プロセスがスパイラル(螺旋状)に連続していく

のである。ここでいう①課題の設定とは,体験活

動を通して価値ある課題を設定することであり,

②情報収集とは,必要な情報を取り出したり集め

たりすることである。また,③整理・分析とは,

得られた情報を整理・分析したり,知識や経験と

結び付けたりすることである。そして,④まとめ・

表現とは,生み出された自分の考えをまとめ,表

現し,他者と交流したり協同して実践したりする

ことである。

探究的な学習が実現することで,例えば,「も

のの見方やとらえ方が豊かになり,取組がより主

体的になる」「身に付けた知識や技能を活用するこ

とで,その有用性を実感することができる」「自分

に力が付いたことを実感し,学習意欲が高まる」

など,子どもたちの学びはより充実したものにな

ると考える。そして,今まで概念としてとらえて

いた「もの」や「こと」に具体性が増し,より理

解が深まるのではないだろうか。

②協同的な学び

探究的な学習を行うためには,他者と協同して

問題を解決する学習活動を重視しなければならな

い。しかし,ここで留意しなければならないのは,

グループの形態を取り入れさえすれば,協同的な

学びが成立するというものではないということで

ある。協同的に学ぶとは,助け合い,学び合い,

高め合うことである。協同的に学ぶことで,自分

の役割と責任を自覚することができる。

ここで,協同的な学びの活動スタイルを二つ挙

げておく。

一点目は,多様な情報を収集し,異なる視点で

検討する活動である。見方や考え方の異なる多様

な情報を収集し,それを出し合い,整理・分析す

ることで,互いの考えの共通点や相違点を発見し

たり,関連性に気付いたりできるようになること

が重要である。そうすることで,課題が多面的に

検討され,自然や社会への認識も深まる。また,

異なる考えをもつ他者を尊重することにもつなが

る。協同的に学ぶことで,個人の学習の質が高め

られるとともに,集団としての学習の質も向上さ

せることができるのではないだろうか。

二点目は,他者と協力・交流して取り組む活動

である。ここでいう他者とは,共に学ぶ仲間だけ

ではなく,幅広くとらえておくことが重要である。

他学年,教師,地域の人,学習に関係のある大人

など,多様な人々も他者に含まれる。友だち同士

図1-2 探究的な学習における児童の学習の姿

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小学校 総合的な学習の時間 5

での学習は,一人ではできない活動を実現させた

り,相手意識や仲間意識を生んだりする。また,

地域の人や学習に関係のある大人などとの交流は,

社会参画への意識を目覚めさせる契機ともなる。

つまり,望ましい人間関係づくりを実践的に学ぶ

上でも,協同的な学びは重要である。

平成20年1月に出された中央教育審議会の「幼

稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学

校の学習指導要領等の改善について(答申)」は,

「自己との対話を重ねつつ,他者や社会,自然や

環境と共に生きる,積極的な『開かれた個』であ

ることが求められる」(14)ことを指摘している。

これは,他者と協力しながら身近な地域社会の

課題の解決に主体的に参画し,その発展に貢献し

ようとする態度を育むことが必要とされているか

らである。互いに考えを出し合い,自分とは違っ

た考えを受け入れながら,問題解決や探究的な活

動を協同して行う学習の積み重ねが大切となって

くる。

そして,この「開かれた個」の姿をめざすこと

は,自尊感情を高めることにもつながる。なぜな

ら,そうすることで他者とともに支え合って生き

ているという実感が生まれ,自分が社会の中では

なくてはならない大切な存在であることに気付き,

そこに自己有用感が育まれるからである。

③言語活動を生かした体験活動の充実

これまでと同様に,体験活動が重視されている。

日常生活や社会との関わりを重視するという点か

らも,体験活動は必要不可欠なものである。しか

し,「体験さえさせておけば,『総合』の学習は成

立する」という誤ったとらえ方ではなく,体験を

一人一人の子どもにとって意味のあるものにしな

ければならない。体験活動をすることによって,

学びが一層充実することが大切である。そのため

には,単元を構想する際,ねらいをはっきりさせ

て,付けたい力を明確にし,意図的に体験活動を

設定することが重要である。

以前から,生活科・「総合」では「体験と言葉」

が大切であるとよくいわれる。意味ある体験は豊

かな言葉を紡ぎ出す。体験して終わりではなく,

自己と対話し,体験したことの中から自分が必要

としている情報を取り出し,解釈し,熟考・評価

し,自分の言葉で表現し,伝え合う。この一連の

活動が大切となる。つまり,探究的な学習の過程

において,体験活動と言語活動を適切に位置付け

ることが重要なのである。

以上,今回の「総合」の改訂の三つのキーワー

ドについてみてきた。この「探究」「協同」「体験

活動」は,「総合」を充実させると同時に,一人一

人の子どもに『生きる力』を育む上でも,大切な

キーワードとなる。

第2節 「総合的な学習の時間」の現状と課題

「総合」が創設された当時,学校現場では「何

をすればよいのかわからない。」「どのように進め

たらよいのか困っている。」という声が多く聞かれ

た。また,「この学習は,体験さえさせておけばよ

い。」「とりあえず,地域の方に来ていただいて話

をしていただこう。」といった誤ったとらえ方も少

なからず見られた。そこで,「総合」の現状と現状

からみた課題について整理しておきたい。

(1)中央教育審議会答申にみる課題

平成20年1月に出された中央教育審議会の「幼稚

園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校

の学習指導要領等の改善について(答申)」に,以

下のように課題が指摘されている。

ここでの指摘をまとめてみると,「総合」の趣

旨・理念が正しく理解されず,間違ってとらえら

れてしまっているため,望ましい実践が行われて

いないということになるのではないだろうか。

・総合的な学習の時間の実施状況を見ると,大きな成

果を上げている学校がある一方,当初の趣旨・理念

が必ずしも十分に達成されていない状況も見られる。

また,小学校と中学校とで同様の学習活動を行うな

ど,学校種間の取組の重複も見られる。

・こうした状況を改善するため,総合的な学習の時間

のねらいを明確化するとともに,子どもたちに育て

たい力(身に付けさせたい力)や学習活動の示し方

について検討する必要がある。

・総合的な学習の時間においては,補充学習のような

専ら特定の教科の知識・技能の習得を図る教育が行

われたり,運動会の準備などと混同された実践が行

われたりしている例も見られる。そこで,関連する

教科内容との関係の整理,中学校の選択教科との関

係の整理,特別活動との関係の整理を行う必要があ

る。 (15)

(下線・波線は筆者によるものであり,下線は現状・

課題,波線は解決のための取組を示している。)

Page 8: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 6

これまで,「総合」は総則の中に位置付けられ

ており,解説書も作成されていなかった。当然の

ことながら教科書もない。このため,「総合」の趣

旨・理念が正しく理解されず,実践が伴わなかっ

たということである。

学習指導要領では配慮事項として,「(7)国際理

解に関する学習を行う際には,問題の解決や探究

活動に取り組むことを通して,諸外国の生活や文

化などを体験したり調査したりするなどの学習活

動が行われるようにすること」「(8)情報に関する

学習を行う際には,問題の解決や探究活動に取り

組むことを通して,情報を収集・整理・発信した

り,情報が日常生活や社会に与える影響を考えた

りするなどの学習活動が行われるようにすること」

(16)が挙げられている。しかし,探究活動との関

連で行わなければならないにもかかわらず,「総合」

の本来のねらいに沿わない活動が行われている実

態があるのではないかと懸念されている。

総時数の何時間分かが宿泊学習など学校行事の

準備に充てられていたり,国際理解の内容である

にもかかわらず外国語活動に充てられていたり,

コンピュータの基本操作に慣れる,ローマ字入力

を身に付けるといった情報のスキル的な学習が行

われていたりする場合もあるのではないだろうか。

(2)急務とされる課題

平成20年に出された答申では,次のような現状

も指摘されている。

なぜ,学校教育全体で思考力・判断力・表現力

等を育成するための,各教科等と「総合」との連

携が十分に行われていないのであろうか。

今までも,多くの教育者が各教科等との連携,

関連について提言している。

大内は「総合的な学習の時間で各教科・道徳・

特別活動で習得した知識や技能等を必要に応じて

取り出し,関連付け,学習や生活に生かし総合的

に働くようにすることが求められている」(18)と

述べている。

また,井上は国語科の視点から「国語科での指

導内容を各教科や総合的な学習の時間と関連付け

ることによって,国語科で育成すべき内容の再検

討が促されることになるだろう」(19)と述べ,国

語科で行われてきた言語活動を「総合」をはじめ

各教科等と関連付け,内容だけではなく力の関連

を踏まえて指導することを強調している。

しかし,これまで教育現場では,例えば,「総

合」で川の環境を学習する場合,理科の「流れる

水のはたらき」や「水中の生き物」の学習といっ

た内容と関連付けて単元を構想してきた。また,

町の伝統について学習する場合,社会科の「昔の

暮らし」といった内容と関連付けて単元を構想し

てきた。つまり,内容についての関連は行われて

きたが,知識や技能,力の関連については,あま

り考えられてこなかったというのが現状ではない

だろうか。

それは,「総合」の趣旨・理念が正しく理解さ

れなかったことに大きな原因がある。「総合」の内

容ばかりに目が行ってしまい,活動の方法や付け

たい力が曖昧なまま展開されていたためであると

考えられる。

また,各教科等と「総合」の役割分担,連携と

いう点から考えてみると,二つの問題点が浮かび

上がってくる。

一点目は,各教科等で行われている問題解決的

な学習のプロセスの連携が不十分な点である。そ

のため,各教科等の問題解決的な学習と「総合」

の探究的な学習のプロセスとが結び付いていない

のである。

二点目は,各教科等で付けたい言語能力や言語

活動の関連が不十分な点である。そのため,「総合」

の探究的な学習の基盤となる言語能力が明確にさ

れないままに学習が行われ,言語活動が充実して

いないなどのことが考えられる。

「総合」の趣旨・理念や付けたい力等について

は,今回新たに第5章として章立てされ,解説書

がつくられたことで,理解が深まるものと考えら

れる。そこで,各教科等と「総合」の知識や技能,

学習のプロセス,言語能力や言語活動の関連を明

らかにすることが急務であると考える。

第3節 言語能力と言語活動

第2節で述べた課題を解決するための糸口は,

「言語能力の育成」及び「言語活動の充実」であ

る。第3節では,「言語活動の充実」という視点か

各教科等で得た知識や技能等が学習や生活において

生かされ総合的に働くように,体験的な学習や問題解

決的な学習を重視する総合的な学習の時間を創設した

が,学校教育全体で思考力・判断力・表現力等を育成

するための各教科と総合的な学習の時間との適切な役

割分担と連携が必ずしも十分に図れていない。 (17)

(下線は筆者によるもの)

Page 9: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 7

ら,主体的,探究的な「総合」の学習が展開する

ための方策について考えてみる。

平成20年に出された中教審答申において,学習

指導要領のねらいの実現のための中核として「言

語活動の充実」が位置付けられた。

「言語活動」とは,文字どおり「言語」による

活動のことである。例えば,本を読んだり話を聞

いたりして理解することや,理解したことを基に

思考したり判断したりすること,学んだことを表

現することも,全て「言語活動」である。

「言語」とは,国語だけではなく外国語をさす

ことはもちろんのこと,数や式など学習において

用いられる記号全般のことも含む。つまり,知識・

技能を習得するのも,これらを活用し課題を解決

するために思考し,判断し,表現するのも全て言

語によって行われると言っても過言ではない。そ

してその活動の基盤となるものが,「言語に関する

能力」すなわち「言語能力」であると考える。

前述の答申において思考力・判断力・表現力等

の育成にとって不可欠な学習活動として以下の六

つの活動が示されている。

つまり,思考力・判断力・表現力等を育成する

ためには,各教科等において,知識・技能の習得

に加え,観察・実験やレポートの作成,発表・討

論,論述など,知識・技能を活用するといった言

語活動を充実させることが重要となる。

ここで留意しなければならないのは,「言語活動

を通して指導事項を指導する」ということである。

言い換えると,言語活動を重視ながらも,指導事

項の定着を図るようにしなければならないのであ

る。

言語活動を通して,各教科等の目標の実現,内

容の習得をめざす。そのことが,思考力・判断力・

表現力等を育成することにつながり,更には,『生

きる力』の育成という学習指導要領の理念実現に

つながると考える。このことを表したものが図1-3

「言語活動と生きる力との関係」である。

平成 19年 8

月に出された

言語力育成協

力者会議の資

料「言語力の

育成方策につ

いて(報告書)」

において,「7.

教科等を横断

した指導の充

実の考え方」

の中で「国語

科を中核としつ

つ,すべての教科等での言語の運用を通じて,論

理的思考力をはじめとした種々の能力を育成する

ための道筋を明確にしていくことが求められる。

その際,各教科等の特質を踏まえて取り組むこと

が重要である」(21)と述べられている。

これは,知的活動に関すること,感性・情緒等

に関すること,他者とのコミュニケーションに関

することを踏まえた上で,全ての教科等で言語活

動を充実させなければならないことを示している。

これを受け,平成20年に出された答申の「7.教育内

容に関する主な改善事項の(1)言語活動の充実」の

中では,「各教科等における言語活動の充実は,今

回の学習指導要領の改訂において各教科等を貫く

重要な改善の視点である」(22)と明記されている。

各教科等において言語活動を充実させていくた

めには,言語能力を育成する中核的な教科である

国語科の役割が極めて大きい。そこで,国語科で

「記録,要約,説明,論述といった言語活動」を

行う能力を培い,その能力を基本に各教科等にお

いては,「それぞれの教科等の知識・技能を活用

する学習活動を充実することが重要である」(23)

とし,その例として,「記録,報告,説明等の言

語活動」を挙げている。

筆者は,以前に読解科として,国語科と算数科,

理科で,言語活動の一つである「理由説明」を関

連させた学習を行っている。これは,「理由説明」

が,指導内容を連携しないまま,それぞれの教科

で行われているのではないかという現状を懸念し,

整理したいという考えからである。

各教科等において「理由説明」を求められる場

面は多くある。全国学力・学習状況調査のB問題,

いわゆる活用型の問題にも,多くの「理由説明」

の場面がある。そこで,国語科,算数科,理科の

教科で行われている「理由説明」の構造を読み取

生きる力の育成

思考力・判断力・表現力等の育成

言語能力の育成

言語活動の充実

各教科等の目標の実現・内容の習得

① 体験から感じ取ったことを表現する。

② 事実を正確に理解し伝達する。

③ 概念・法則・意図などを解釈し,説明したり活用

したりする。

④ 情報を分析・評価し,論述する。

⑤ 課題について,構想を立てて実践し,評価・改善

する。

⑥ 互いの考えを伝え合い,自らの考えや集団の考え

を発展させる。 (20)

図1-3 言語活動と生きる力との関係

Page 10: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 8

り比較することによって,各教科等において説明

の仕方にどのような特徴があるのかを探っていっ

たのである。

このように複数の教科を横断し,教科による特

徴をメタ認知し,教科によるわかりやすい説明の

仕方を身に付けることは,自分の考えを目的や意

図によって表現する能力を育てる上で大変有効で

あった。

次章では,言語能力を育む視点から,言語活動

についての各教科等と「総合」との関連を明らか

にしたい。

(1) 中央教育審議会『21世紀を展望した我が国の教育の在り方に

ついて(第一次答申)』1996.7 p.19

(2) 文部科学省『小学校学習指導要領』 1998.12 p.3

(3) 文部科学省『小学校学習指導要領』 2008.1 p.110

(4) 嶋野道弘『総合的な学習の時間~アプローチから実践へ~』

全国教育新聞社 2001.10 p.11

(5) アンドレア・シュライヒャー 『PISA調査でみる日本の教育の特

徴―生徒の学習到達度調査(PISA)調査結果からみた日本の教

育の現状について―』2009.12

(6) 井上一郎『確かな国語力をつける授業モデル第1巻「話すこ

と・聞くこと」「書くこと」編』明治図書 2004.4 p.3

(7) 村川雅弘「探究する力をつける総合的な学習」『新しい教育

課程と学校づくり 2確かな学力の育成』ぎょうせい 2008.10

p.164

(8) 無藤隆『自ら学ぶ子を育てる』金子書房 1998.1 p.98

(9) 前掲(8) p.44

(10)前掲(8) pp..75~81

(11)井上一郎『話す力・聞く力の基礎・基本』明治図書 2008.12

p.74

(12)前掲(11) p.107

(13)文部科学省『小学校学習指導要横領解説 総合的な学習の時

間編』2008.8 p.12

(14)中央教育審議会『幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特

別支援学校の学習指導要領の改善について(答申)』2008.1

p.9

(15)前掲(14) p.130

(16)前掲(3) p.111

(17)前掲(14) p.18

(18)大内美智子「総合的な学習の時間の改訂を学校はどう受けと

めたらよいか」『小学校新学習指導要領ポイントと授業づく

り 総合的な学習』東洋館出版社 2009.11 p.8

(19)井上一郎『誰もがつけたい説明力』明治図書 2005.5 p.17

(20)前掲(14) p.25

(21)言語力育成協力者会議(第8回)配布資料『言語力の育成方策

について(報告書案)』2007.8 pp..9~10

(22)前掲(14) p.53

(23)前掲(14) p.53

第2章 言語活動についての各教科等と「総

合的な学習の時間」との関連

第1節 学習指導要領において重視される言語活動

平成20年1月に出された答申において,「言語活

動の充実」は最も重視されている改善事項である

ことを第1章で述べた。ここでは,この答申を受

け,平成20年3月に告示された学習指導要領(以下

学習指導要領)において,「言語活動の充実」がど

のように扱われているかについてみていきたい。

これまで,それぞれの教科等において言語活動

をどのように進めていくかということについての

研究は多くされてきた。しかし,教科等を関連さ

せて言語活動を整理することはあまりされてこな

かったのではないだろうか。しかし,「総合」で各

教科等の言語活動と関連させ,効果的に言語活動

を行うためには,各教科等の言語活動を整理する

ことが重要であると考える。

(1)各教科等の言語活動

言語活動の中核を担うのは国語科であるが,国

語科だけで言語活動を行うのではなく,全ての教

科等で言語活動を行われなければならない。

学習指導要領においても,総則の「教育課程編

成の一般方針」で「生きる力を育む」ことを目標

に,思考力,判断力,表現力その他の能力を育む

とともに,主体的に学習に取り組む態度を養うた

めに言語活動の充実が示されている。

そもそも言語能力とは単にコミュニケーション

力だけをさすものではない。「言語を用いて思考し

ている」ととらえれば,言語能力そのものが思考

力であるといっても過言ではない。したがって言

語活動によって言語能力を育成するということは,

思考力を高めることにもつながっている。

今回の学習指導要領の改訂でも,国語科のみな

らず,あらゆる教科で言語活動の充実を強調して

いる点は,言語能力を「確かな学力」を支えるも

のとして位置付けているからである。「確かな学力」

を身に付け,変動の激しい社会の中で他者と関わ

るといった,まさに「生きる力」の育成に当たっ

ては,言語活動の充実が鍵を握っているのである。

次ページ表2-1は,井上が総則の「第4 指導計

画作成等に当たって配慮すべき事項」の中から言

語活動に関連する事項を整理したものを基に,筆

者が表にまとめたものである。この表を手がかり

に,各教科等の言語活動について整理する。

Page 11: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 9

(表中の下線は筆者によるもの)

①国語科における言語活動

国語科では,各領域において(1)に指導事項を,

(2)に言語活動例を位置付け,国語科の学習指導は,

言語活動を通して指導事項を指導することを明示

している。

国語科では,従来,話す,聞く,話し合う,書

く,読むといった言語活動によって学習が行われ

てきた。これらの活動の位置付けを,自ら学び課

題を解決する能力を育成するという観点から見直

し,音読や話合いといった言語活動を個別の活動

として並べるのではなく,単元を通して一貫した

言語活動として位置付けることが重要となる。特

に「C読むこと」においては,主題を読み取る,場

面や段落ごとに詳しく読むことを重視した指導を

見直したい。子ども自身が,目的を明確にして本

や文章を選んだり,目的に応じて内容を読んだり,

文章の構成をとらえたり,友だちと交流したりす

ることを具体化するために,単元を貫く言語活動

を位置付ける。例えば「私はこの本がお気に入り

だ。みんなにこの本のおもしろいところを紹介し

たい。みんなにもこの本のよさを知ってほしい。」

といった,子どもの主体的な思いを大切にするこ

とが求められる。そのために,シリーズで読む,

好きな作品を見つけて読む,同じ作者の作品を比

べて読むなどの活動を単元に位置付けることも必

要である。

また,表2-1の1(1)と深く関連して,各領域の(2)

に示された言語活動例は,例えば「書くこと」の

領域において,第1学年及び第2学年では「経験

したことを報告する文章(体験報告文)」,第3

学年及び第4学年では「調べて報告する文章(調

査報告文)」,第5学年及び第6学年では「活動

を報告した文章(活動報告文)」というように,

系統立てた指導が求められている。

こうした国語科の中で行われる単元を貫く言語

活動が,直接「総合」の「まとめ・表現」の学習

過程の中で生かされるのである。

②社会科における言語活動

学習指導要領の社会科の各学年の目標は,「調べ

たことや考えたことを表現する力を育てるように

すること」,「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」

の中に,「(略) 観察や調査・見学などの体験的な

活動やそれに基づく表現活動の一層の充実を図る

こと」(25)と明示している。

前回の学習指導要領では,社会科の各学年の目

標が「調べたことを表現する力を育てるようにす

総則に示された配慮すべき事項

各教科等で言

語活動が重視

される内容

1(1) 各教科等及び各学年相互間の関連を

図り,系統的,発展的な指導ができるよう

にすること。

各教科等,学

年相互間の関

連付け,系統

性の重視

(2) (略)2学年まとめて示した教科及び外

国語活動については,当該学年間を見通し

て,(略)効果的,段階的に指導するように

すること。

学年別の具体

(3) 各教科の各学年の指導内容について

は,そのまとめ方や重点の置き方に適切な

工夫を加え,効果的な指導ができるように

すること。

まとめ方の効

果的な指導

(4) 児童の実態等を考慮し,指導の効果を

高めるため,合科的・関連的な指導を進め

ること。

合科的・関連

的な指導

2(1) 各教科等の指導に当たっては,児童

の思考力,判断力,表現力等をはぐくむ観

点から,基礎的・基本的な知識及び技能の

活用を図る学習活動を重視するとともに,

言語に対する関心や理解を深め,言語に関

する能力の育成を図る上で必要な言語環境

を整え,児童の言語活動を充実すること。

知識・技能の

活用と言語活

(2) 各教科等の指導に当たっては,体験的

な学習や基礎的・基本的な知識及び技能を

活用した問題解決的な学習を重視するとと

もに,児童の興味・関心を生かし,自主的,

自発的な学習が促されるよう工夫すること。

問題解決的な

学 習 と 自 主

的・自発的な

学習

(4) 各教科等の指導に当たっては,児童が

学習の見通しを立てたり学習したことを振

り返ったりする活動を計画的に取り入れる

よう工夫すること。

児童による学

習計画と学習

の評価

(5) 各教科等の指導に当たっては,児童が

学習課題や活動を選択したり,自らの将来

について考えたりする機会を設けるなど工

夫すること。

児童による学

習課題や活動

の選択

(6) 各教科等の指導に当たっては,児童が

学習内容を確実に身に付けることができる

よう,学校や児童の実態に応じ,個別指導

やグループ別指導,繰り返し指導,学習内

容の習熟の程度に応じた指導,児童の興

味・関心等に応じた課題学習,補充的な学

習や発展的な学習などの学習活動を取り入

れた指導(略)個に応じた指導の充実を図

ること。

多様な言語活

動の工夫

(10) 学校図書館を計画的に利用しその機

能の活用を図り,児童の主体的,意欲的な

学習活動や読書活動を充実すること。

児童主体の学

習活動や読書

活動の充実

表2-1 学習指導要領総則 「第4 指導計画の作成等当た

って配慮すべき事項」における言語活動 (24)

Page 12: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 10

る」という記述であったものが,「調べたことや

考えたことを表現する力を育てるようにすること」

という記述に改められたのは,今まで以上に,説

明,論述,討論といった言語活動を通して考えた

り判断したりしたことを言語で表現することが求

められているということであろう。

ここで留意したいことは,教科調査官の澤井が,

「資料を使ってその説明を加えながら自分の意見

を発表したり,図に整理したものやイラストなど

を使いながら自分の考えを説明したりする表現活

動が多く見られる。これらは,言語を中心とした

表現活動であり,こうした活動のひとまとまりを

言語活動ととらえたい」(26)と述べるように,言

語を言葉だけでなく,広い意味でとらえなければ

ならないということである。このことが社会科と

しての特質であるといえる。

国語科と同様に,表2-1の1(1)と深く関連して,

調べたこと,考えたことを表現する際には,第3

学年及び第4学年は「調べたことや地域社会の社

会事象の特色や相互の関連などについて考えたこ

とを相手にもわかるように表現すること」(27),

第5学年では「調べたことや社会事象の意味につ

いて考えたことを根拠や解釈を示しながら図や文

章などで表現し説明すること」(28),第6学年で

は「調べたことや社会事象の意味について広い視

野から考えたことを根拠や解釈を示しながら図や

文章などで表現し説明すること」(29)というよう

に,系統立てた指導が求められている。

こうした社会科の言語活動は,「総合」の「まと

め・表現」の過程において,自分たちが収集した

資料を使って説明を加えたり,図や表に整理した

ものを使ったりして,自分の考えを発表する活動

につながっているのである。

③算数科における言語活動

学習指導要領の算数の「第3 指導計画の作成と

内容の取扱い」の中には,「2(2)思考力,判断力,

表現力等を育成するため,各学年の内容の指導に

当たっては,言葉,数,式,図,表,グラフを用

いて考えたり,説明したり,互いに自分の考えを

表現し合ったりするなどの学習活動を積極的に取

り入れるようにすること」(30)と明示されている。

各学年の内容に示されている算数的活動が言語

活動と関連している。例えば第3学年の「ア整数,

小数及び分数についての計算の意味や計算の仕方

を,具体物を用いたり,言葉,数,式,図を用い

たりして考え,説明する活動」(31)や,第5学年

の「エ三角形の三つの角の大きさの和が180°にな

ることを帰納的に考え,説明する活動(略)」(32)

などが言語活動である。ここに三つの説明する活

動が記述されているように,算数科の説明の活動

には,事実の説明,方法の説明,理由の説明をす

る活動があることに留意したい。

また,算数科の言語活動は,表2-1の1(4)と深く

関連しており,説明する活動において,国語科で

身に付けた「はじめに」「次に」などの順序を表

す言葉や,「例えば」「なぜなら」「このように」

という具体例や理由,まとめを表す言葉を活用す

ることが大切である。

算数科の言語活動は,言葉による表現とともに,

数,式,図,表,グラフといった数学的な表現の

方法を用いることが特質であり,式を言葉,図,

表,グラフなどと関連付けて自分の考えを説明し

たり,伝え合ったりできるようになることが大切

である。

これらの言語活動は,「総合」の「整理・分析」

の過程で,図や表,グラフなどの数学的な表現の

方法を用いて整理し分析する活動や,「まとめ・

表現」などで自分の考えを説明するときの活動と

つながっているのである。

④理科における言語活動

学習指導要領の理科の「第3 指導計画の作成と

内容の取扱い」の中には,「1(2)観察・実験の結

果を整理し考察する学習活動や,科学的な言葉や

概念を使用して考えたり説明したりするなどの学

習活動が充実するよう配慮すること」(33)と明示

されている。理科の言語活動は,ここに示されて

いる「科学的な言葉や概念」を使用して考えたり

説明したりすることが特質である。

教科調査官の村山は,「理科においては,観察,

実験がきわめて重要な要素であり,その前後に言

語活動を位置づけることが考えられる」(34)と述

べている。これは,観察や実験に入る前の段階で

ある「予想や仮説を立てる場面」と,観察や実験

を行った後の段階である「考察,まとめの場面」

の二つの場面で言語活動を充実させなければなら

ないということである。「予想や仮説を立てる場

面」では,見出した問題に対して自分はどう考え

るのか,そして,その考えをどう表現するのかが

大切となる。また,「考察,まとめの場面」では,

観察や実験の結果を表やグラフに整理し,解釈し,

予想や仮説と関係付けながら考察を言語化し,ど

う表現するのかが大切となる。このとき,表2-1

Page 13: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 11

の1(1)と深く関連して,第3学年では「比較」,

第4学年では「関係付ける」,第5学年では「条

件に着目する」,第6学年では「推論する」とい

う,発達の段階に応じた思考操作を基に言語活動

を行うことが大切である。

これらの言語活動は,算数科の言語活動と同様,

「総合」の「整理・分析」「まとめ・表現」の過程

で行う言語活動とつながっている。

⑤生活科における言語活動

学習指導要領は,第1学年及び第2学年の「1

目標」の(4)に「身近な人々,社会及び自然に関す

る活動の楽しさを味わうとともに,それらを通し

て気付いたことや楽しかったことなどについて, 言

葉,絵,動作,劇化などの方法により表現し,考

えることができるようにする」(35)と示している。

また,今回の改訂では,「2 内容」には新たに(8)

「自分たちの生活や地域の出来事を身近な人々と

伝え合う活動を行い,身近な人々とかかわること

の楽しさが分かり,進んで交流することができる

ようにする」(36)が加えられた。ここで留意したい

のは,低学年の発達の特性を踏まえ,言葉だけで

はなく絵や動作,劇化などの多様な表現活動が重

視されているということである。

また,生活科で言語活動を充実させるためには,

指導者が言葉と体験とのつながりを意識すること

がポイントとなる。言葉と体験は図2-1に示すよう

に双方向の関係であると考える。

子どもは,見て,さわって,聞いてといった様々

な感覚を通して体験したことを実感し,言葉を豊

かにしていく。そして,多くの発見は喜びを生み,

その体験が充実する。

また,「きれいな葉っぱだな。」「見て,見て!赤

や黄色の葉っぱがあるよ。」「葉っぱの上を歩くと

かさかさ音がするよ。」「うわあ,葉っぱの上に寝

っ転がるとふかふかで気持ちがいいね。」「本当だ。

葉っぱのおふとんはあたたかいね。」といった豊か

な言葉は,友だち同士の交流を生み,体験を深め,

子どもたちの学びを充実させていくのである。

⑥音楽科,図画工作科における言語活動

音楽科では,学習指導要領の〔共通事項〕(1)

のアに,各学年とも「音楽を形づくっている要素

のうち次の(ア)及び(イ)を聴き取り,それらの働

きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取るこ

と」(37) と記述されている。各学年により多少の

違いはあるが,(ア)は,音色,リズム,速度,旋

律などの音楽を特徴付けている要素,(イ)は反復,

問いと答えなどの音楽の仕組みのことと説明され

ている(38)。また,各学年ともBの鑑賞のウにお

いて「楽曲を聴いて想像したことや感じ取ったこ

とを言葉で表すなどして(略)」(39)と示されてお

り,鑑賞の活動において言葉で表現するなどの活

動を位置付けている。

また,図画工作科では,学習指導要領のBの鑑

賞のイにおいて,第1学年及び第2学年では「感

じたことを話したり,友人の話を聞いたりするな

どして,形や色,表し方の面白さ,材料の感じな

どに気付くこと」(40),第3学年及び第4学年では

「感じたことや思ったことを話したり,友人と話

し合ったりするなどして,いろいろな表し方や材

料による感じの違いなどが分かること」(41),第5

学年及び第6学年では「感じたことや思ったこと

を話したり,友人と話し合ったりするなどして,

表し方の変化,表現の意図や特徴などをとらえる

こと」(42)と示されている。

音楽科,図画工作科はそれぞれ「音色,リズム,

速度,旋律」「形や色」などの教科独自の要素を

有しており,表現する際にはその要素による言葉

を使用するということが特色として挙げられる。

また,言葉による表現のほかに,体の動きや絵,

造形,音などで表現することも特色である。これ

らの学習は,表2-1の2(2)と深く関連しており,言

語活動として,言葉で表す,話す,聞く,話し合

う活動が内容に挙げられている。例えば,音楽や

美術作品のよさや面白さを表している音楽の要素

や造形要素と,それらの働きを説明する,どのよ

うに表現するかについて思いや意図を説明するな

どの場面を大切にする。そのことで,それぞれの

教科としての学習の質が高まると考える。

これらの言語活動は,「総合」での「情報の収

集」の過程で,音楽や絵画,芸術作品を通して情

報を収集するとき,音楽科や図画工作科で培った

鑑賞の能力は基盤となる。また,「まとめ・表現」

の過程で,作品のよさを説明したり自分の学びを

効果的に表現したりするときの言語活動とつなが

っている。

言 葉 体 験

実 感

豊かな言葉

充実した体験

喜 び

図2-1 言葉と体験の関係

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小学校 総合的な学習の時間 12

⑦家庭科における言語活動

学習指導要領の家庭の「第3 指導計画の作成と

内容の取扱い」の中に,「5(略)衣食住など生活の

中の様々な言葉を実感を伴って理解する学習活動

や,自分の生活における課題を解決するために言

葉や図表などを用いて生活をよりよくする方法を

考えたり,説明したりするなどの学習活動が充実

するよう配慮する(略)」(43)と記述されている。

前者の理解する学習活動では,今まで概念とし

て獲得していた言葉が,製作や調理などの実習を

行ったり観察したりして体験することで,驚きや

発見が生まれ,感動し,本当の意味を実感し,生

活の中で生きた言葉となるということである。例

えば「団らん」という言葉を「みんなが集まって

楽しく過ごすことである」と理解した子どもが,

自分で家族のために心を込めてお茶を淹れ,家族

全員が集まってお茶を飲みながら今日あったこと

を笑顔で話をしているときに幸せを実感し,「ああ,

こうしてみんなで楽しくお茶を飲みながら話をす

るこのような時間のことを『団らん』というのだ

な。」と自分の言葉で語れるようになるというこ

とである。

後者の,考えたり説明したりするなどの学習活

動は,例えば自分の生活の課題を解決するための

学習活動として「栄養を考えた食事」の学習を行

う場合,「日常の食生活を調べたり献立を立てて

みて問題点を挙げたりして課題をつかむ」「栄養

素を表に整理し,バランスの良い献立を考え,そ

れを発表し合う」「実際に作ってみる」など,連

続性を伴った学習活動が考えられる。

これらの学習活動は,表2-1の2(2)(4)(5)と深

く関連しており,ここで行われる言語活動は,実

践的・体験的な活動や問題解決的な学習,子どもの

主体的な学習を通して充実する。今まで概念とし

て獲得していた言葉について,体験を通して本当

の意味を理解し,自分の言葉に置き換えて確かに

表現する。これらの言語活動は「総合」の言語活

動そのものである。体験を通して一人一人がその

言葉の意味を確かにし,自分の言葉で語れるよう

になる活動は,「総合」でも大切にしたい言語活動

である。

⑧体育科における言語活動

学習指導要領は,「Eゲーム・ボール運動」の領

域において第3学年及び第4学年から「作戦を立

てる」こと,同じく「F表現運動」の領域において

も,第3学年及び第4学年から「練習や発表の仕

方を工夫できるようにする」と明示している。ま

た,「G保健」の領域においては,「第3 指導計画

の作成と内容の取扱い」の中に「2(6)保健の指導

に当たっては,知識を活用する学習活動を取り入

れるなどの指導方法の工夫を行うこと」(44)が新

しく示された。これは言語活動を充実させるため

の一つとして,表2-1の2(2)(4)に示されているよ

うに,身近な生活における課題や解決の方法を見

付けたり選んだりする活動や,見付けたことを説

明する活動を取り入れるということである。

例えば,「作戦を立てる」という活動において,

チームの仲間で自分たちのゲーム内容を分析し,

問題点などを見つけ,そこから勝つための作戦を

話し合うということである。こうした言語活動は,

「総合」の「情報の収集」や「整理・分析」の過

程において,情報の収集をする,情報の分析をす

る,話し合うという活動とつながっている。

⑨道徳における言語活動

学習指導要領の第3章道徳の「第3 指導計画の

作成と内容の取扱い」の中に,「3(4)自分の考え

を基に,書いたり話し合ったりするなどの表現す

る機会を充実し,自分とは異なる考えに接する中

で,自分の考えを深め,自らの成長を実感できる

よう工夫すること」(45)と記述されている。

教科調査官の赤堀は,「国語科で培われた言葉

に関わる基本的な能力を基本に,道徳の時間では,

資料や体験などから感じたこと,考えたことをま

とめ,発表し合い,討論や討議などにより自分と

異なる考えに接する」(46)と述べている。自分の

考えをまとめるために書く活動を設定することで,

自分と対話し,より自分の考えを深め確かにする

ことや,互いの考えを深め合うといった,他者理

解を図る上で話合い活動を重視しているのである。

これらの言語活動は,「総合」での話合い活動

と合致しており,関連して行うことで,より確か

に子どもたちに対話力が身に付くと考える。

⑩外国語活動における言語活動

学習指導要領の第4章外国語活動の「第1 目標」

は以下の通りである。

外国語を通じて,言語や文化について体験的に理解

を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする

態度の育成を図り,外国語の音声や基本的な表現に慣

れ親しませながら,コミュニケーション能力の素地を

養う。 (47)

(下線は筆者によるもの)

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小学校 総合的な学習の時間 13

ここで留意しなければならないことは,言語や

文化について体験的に理解を深めることも,積極

的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育

成することも,外国語の音声や基本的な表現に慣

れ親しませることも,全て「外国語を通じて」行

うということである。外国語活動については,高

学年で国際活動に関わる交流等を含む体験的なコ

ミュニケーション活動が考えられる。その場合,

問題の解決や探究活動に取り組むことを通して,

諸外国の生活や文化について調査するなどの学習

活動が考えられるが,これらの言語活動は,「総合」

の中で行われる言語活動と関連している。

⑪特別活動における言語活動

学習指導要領の第6章特別活動の「第1 目標」は

以下の通りである。

この目標を実現していくために,教科調査官の

杉田は,次の三つの言語活動を重視する必要があ

ると述べている。

①の言語活動については,国語科の「A話すこと・

聞くこと」の言語活動例の,第1学年及び第2学

年の「イ尋ねたり応答したり,グループで話し合

って考えを一つにまとめたりすること」(50),第3

学年及び第4学年の「イ学級全体で話し合って考

えをまとめたり,意見を述べ合ったりすること」(5

1)と深く関連している。また,②の話合い活動が

重視されるのは,今回の改訂で,目標の中に,新

たに「人間関係」と「自己の生き方についての考

えを深め,自己を生かす能力を養う」という文言

が加えられた結果であろう。道徳と同様に「総合」

の話合い活動と関連させて行うことで対話力が育

つと考える。

(2)「総合的な学習の時間」の言語活動

①総合的な学習の時間における言語活動

学習指導要領第5章総合的な学習の時間の「第3

指導計画の作成と内容の取扱い」に,言語活動に

ついて以下のように示されている。

第1章でも述べたように,探究のプロセスに体

験活動と言語活動を適切に位置付けることが重要

である。両者が互いに響き合いながら学習の質を

高めていくのである。これは生活科の考えとも合

致している。「言語により分析する」とは,例えば,

集めた情報をグラフ化して統計処理したり,共通

点と相違点で分類したり,時間軸に沿って並べた

りして言語化することである。「まとめたり表現し

たりする」とは,分析したことを文章やレポート

に書きまとめたりプレゼンテーションしたりする

ことである。このような活動を探究のプロセスの

中に適切に位置付けることが重要である。

また,探究の過程において問題を解決する場面

では,他者と協同して問題を解決する学習活動が

重要である。それは,情報を多様にするというこ

と,他者を尊重し自らの役割を自覚すること,交

流を広げたり深めたりすることという三つの点か

らである。

②言語活動についての各教科等と「総合的な学習

の時間」との関連

前項では,答申,学習指導要領,学習指導要領

解説を基に,各教科等における言語活動について

整理してきた。文言は教科によって様々ではある

が,体験したことや収集した情報を言語により分

析し,まとめて表現する活動が,全ての教科等に

適切に位置付けられていることがわかる。そして,

その活動には,各教科等を貫いて共通する思考操

作が発達の段階に応じて適切に位置付けられてい

ることも見逃してはならない。

例えば,学習指導要領には,次ページ左上のよ

うな記述が見られる。

望ましい集団活動を通して,心身の調和のとれた発

達と個性の伸長を図り,集団の一員としてよりよい生

活や人間関係を築こうとする自主的,実践的な態度を

育てるとともに,自己の生き方についての考えを深め,

自己を生かす能力を養う。 (48)

(下線は筆者によるもの)

①集団として意見をまとめる(集団決定をする)ため

の話合い活動

②自己の生き方について考えを見定める(自己決定を

する)ための話合い活動

③実践活動や体験活動を通して感じたり,気付いたり

したことを振り返り,まとめたり,発表し合ったり

する活動 (49)

2(2) 問題の解決や探究活動の過程においては,他者と

協同して問題を解決しようとする学習活動や,言

語により分析し,まとめたり表現したりするなど

の学習活動が行われるようにすること。

(3) 自然体験やボランティア活動などの社会体験,も

のづくり,生産活動などの体験活動,観察・実験,

見学や調査,発表や討論などの学習活動を積極的

に取り入れること。 (52)

(下線は筆者によるもの)

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小学校 総合的な学習の時間 14

「総合」においても,「育てようとする資質や能

力及び態度の設定」として,「中学年の児童では,

『解決への見通しをもって,事象を比較したり,

関係付けたりする』程度が適切であろう」(56)と

記述されている。

つまり,中学年においては,「相互関係を考える,

関係付ける」という思考操作が各教科等を通して

共通に位置付けられている。このことから,各教

科等の中で,子どもの発達段階に応じて,系統的

に思考操作を位置付けた言語活動を行うことが求

められている。

ここで,言語活動についての各教科等と「総合」

との関連について確かめておきたい。図2-2は文部

科学省から出された「言語活動の充実に関する基

本的な考え方」に示されている図である。

各教科等で言語活動を充実させていくためには,

国語科の役割が極めて大きく,発達段階に応じて

「記録,要約,説明,論述」といった言語活動を

通して言語能力を培うことが大切である。そして,

培った力を活かし,各教科等において「記録・報

告,説明,表現,記述,伝え合う,発表し合う,

議論する」などの言語活動を充実させて言語能力

を培うことが重要である。つまり,この図は国語

科が基盤となり,「総合」を含む他の教科等がその

上に並べられ,国語科と線で結ばれている構図と

なっている。

しかし,筆者はあえて「総合」を取り出し,次

ページ図2-3に示した教科等を包み込む構造図を提

案したい。言語活動を行う上で核となるのは国語

科であり,国語科が基盤となるという考えは図2-2

と同様である。しかし,「総合」は横断的・総合的

な学習であり,各教科等で身に付けた知識や技能

等を相互に関連付け,学習や生活に生かし,それ

らが児童の中で総合的に働くようにすることをね

らいとしている。この点から「総合」を取り出し

て各教科等を包括するものとして位置付けた。

また,答申に取り上げられている言語活動例は

八つであるが,全て,横断的・総合的な内容を扱

う「総合」においては,言語活動として取り上げ

られる可能性のあるものばかりであることも,「総

合」を取り出して位置付けた理由である。

各教科等で身に付けた知識や技能を相互に関連

付け,学習や生活に生かし,児童の中で総合的に

働くようにするためには,まず,各教科等での基

礎的・基本的な知識・技能の習得とともに,観察・

実験やレポートの作成,論述といった知識・技能

を活用する学習活動を充実させることが大切であ

る。こうすることによって,「総合」における各教

科等を横断,総合した課題解決的な学習や探究的

な学習も充実し,各教科等において知識・技能も

確実に定着していくと考える。

前項の「各教科等における言語活動」の中で,

「総合」との関連についても,探究のプロセスを

視点としていくつか例を挙げた。探究のプロセス

の「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」

においては,各教科等において顕著なものを例と

して挙げている。しかし,「課題の設定」について

は,各教科等においても問題解決的な学習を前提

としており,課題を設定するという学習活動は必

須の活動であるため,あえて例として述べていな

い。各教科等における言語活動そのものが「総合」

における言語活動となる。

【国語 第3学年及び第4学年 目標】

(3)目的に応じ,内容の中心をとらえたり段落相互の関

係を考えたりしながら読む能力を身に付けさせると

ともに(略) (53)

(下線は筆者によるもの)

【社会 第3学年及び第4学年 目標】

(3)地域における社会的事象を観察,調査するとともに,

地図や各種の具体的資料を効果的に活用し,地域社

会の社会的事象の特色や相互の関連などについて考

える力,調べたことや考えたことを表現する力を育

てるようにする (54)

(下線は筆者によるもの)

【理科 第4学年 目標】

(1)空気や水,物の状態の変化,電気による現象を力,

熱,電気の働きと関係付けながら調べ,(略)」 (55)

(下線は筆者によるもの)

図2-2 各教科等における言語活動の充実 (57)

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小学校 総合的な学習の時間 15

第2節 新しい教科書で取り上げられた言語活動例

新しい学習指導要領を受けて,平成23年4月か

ら使用されている教科書はどのように変わったの

だろうか。本市で採択された新しい教科書を基に,

どのような言語活動が取り上げられているかを調

査した。

教科書でまず気付くのは,学習過程が見開き2

ページにわたって示されている点であろう。国語

科では,第2学年の「上」の教科書から,単元の

中に〈がくしゅうのすすめかた〉〈活動のながれ〉

として示されている。

社会科,算数科,理科の教科書では,算数科の

第1学年の教科書を除き,全て「上」の教科書の

最初に「学習の進め方」(社会科,算数科)「理科

の学び方」(理科)として学習過程が示されている。

図2-4 教科書に示されている国語科・社会科・算数科・理科の学習過程

図2-3 各教科等における言語活動の充実

各教科等の目標を実現するための手だてとして

言語活動を充実

国 語

基本的な国語の力を定着させたり,言葉の美しさやリズムを体感させたりするとともに,

発達の段階に応じて,記録,要約,説明,論述といった言語活動を行う能力を培う。

社 会

算 数

家 庭

図画工作

音 楽

生 活

理 科

体 育

道 徳

外国語活動

特別活動

総合的な学習の時間

横断的・総合的な学習や探究的な学習

各教科等で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け,学習や生活

に生かし,それらが児童の中で総合的に働くようにする。

確かめよう・ふり返ろう

○学んだことをためしてみる

○ふり返る ・わかったこと・おもしろかったこと

・友達の考えのよかったところ・

・もっとやってみたいこと

いかす

○問題を解決し,

さらに学習を広げる

○感想をもつ

ふり返ろう ○生活に生かす

・分かったことを身の回りのことや自然にあて

はめてみる

○ふり返る

○伝える

発表・交流する

○感想や意見を述べ合う

○ふり返る

国 語

社 会

理 科

算 数

どんな問題かな

○学習のめあてをもつ

・わかっていること・求めていることを

はっきりさせる

自分で考えよう

○見通しをもって考える

・習ったことを使って・図を使って

○考えをわかりやすくまとめる ・求め方説明・理由説明・かき方説明

・まちがいの説明・同じことの説明

みんなで話し合おう

○わかりやすく発表する

○自分の考えと比べて聞く

○よい考えを取り入れる

○話し合ったことをまとめる

つかむ

○気付いたことを出し合って

学習問題をつくる

・気付いたこと・疑問に思ったこと

・調べてみたいこと

調べる

○調べてみたいことを決めて

調べる ・教科書・文献・調査・体験・インタビュー

(地図・グラフ・図・写真・ビデオ)

※学び方コーナー

まとめる

○調べたこと・考えたことを整理し

まとめる ・パンフレット・絵コンテ・新聞

・ホームページ・事典

見つけよう

○問題をみつける

・「不思議だ」「なぜだろう」をみつける

・これまでの経験から自分の考えをまとめる

○計画を立てる

・何を調べるか・どのようにすればよいか

調べよう

○調べ方を考える ・条件を整理する・結果を予想する

○調べる(観察・実験・調べる) ・比べながら・何が原因か考えながら

○記録する

・結果・気づいたこと

まとめよう

○まとめる

・調べた方法と結果を関係づける

○整理する

・表・グラフでわかりやすく

集める・課題を決める

○読む

○自分の課題をもつ

調べる

○調べたことをメモする

○メモを整理する

まとめる

○発表の内容を考える

○□□□を書く,作る

国語

社会

算数

理科

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小学校 総合的な学習の時間 16

前ページ図2-4は,4教科において教科書に示さ

れた学習過程をまとめたものである。これは,9

ページに示した表2-1の「学習指導要領総則 第4

指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項にお

ける言語活動」に示されている,2(2)の「問題解

決的な学習,自主的・自発的な学習」と(4)の「児

童による学習課題の設定及び学習計画と学習の評

価」とが深く関連しており,言語活動を強く意識

していると考える。また,その中には,「課題を見

つける・つくる」「計画を立てる」「まとめる」「伝

える」「話し合う」「振り返る」などの主体的な活

動が適切に位置付けられていることも意義深い。

ここで,国語科,社会科,算数科,理科の4教科

の第3学年と第5学年の教科書を取り上げ,言語

活動がどのように教科書に取り上げられているか

についてみていきたい。

①国語科の教科書における言語活動

はじめに,単元名とリード文に着目してみる。

表2-2に示した単元名とリード文は,いずれも第5

学年のものである。「話すこと・聞くこと」「書く

こと」「読むこと」の各領域から一つずつ挙げてい

るが,どれも言語活動がはっきりと単元名の中に

示されており,リード文にはどのように言語活動

を進めていけばよいのかが詳しく示されている。

また,巻末には「付録」と称し,「思ったこと

や感じたことを表す言葉」等が紹介され,語彙指

導が充実しており,子どもたちが自分の思いをよ

り豊かに表現できるようになっている。第6学年

の教科書には,「物事や考えをつなぐ言葉」を基に,

算数の問題の解き方を順序立ててわかりやすく説

明できるように,説明の手順が示されている。

40ページの[付表1]には,第3学年と第5学年の

国語科教科書に取り上げられている言語活動を整

理している。

②社会科の教科書における言語活動

各単元の最後に「学習のまとめ」が設置してあ

り,「ことば」に提示された単元の中で特に押さえ

ておきたいキーワードを活用して,学習を整理し

たり,自分の考えを説明したりする言語活動を例

示していることが特色として挙げられる。第3学

年と第5学年の社会科の教科書に取り上げられて

いる言語活動を整理した[付表2]を見ても,例示さ

れた言語活動は多様である。また,「学習のまとめ」

以外の学習過程上であっても,言語活動を軸に多

様な表現活動が示されている。

また,「学び方コーナー」では,学習場面に応じ

た学び方が具体的に示されており,発達段階に応

じて系統的に学習技能が身に付けられるようにな

っている。「学び方コーナー」には,大きく分けて,

○ア見る・聞く・ふれる,○イ読み取る,○ウ表す・伝

えるの三つの内容がある。表2-3は,内容ごとに取

り上げられている表現活動を整理したものである。

3・4年上 5年上・下

○ア見る・聞く・ふれる

・たんけんのやくそく

・しつもんのしかた

・見学の計画を立てる

・しらべる手がかりを

さがす

・見学のしかた

・古い道具を体けんする

・インタビューのしかた

・しらべる計画を立てる

・質問のしかた

・見学のしかた

・体験のしかた

○イ読み取る

・地図を読み取る

・ぼうグラフを読み取る

・地図帳・地球儀の活用

・図の読み取り方

・写真の読み取り方

・主題図を読み取る

・グラフを読み取る

○ウ表す・伝える

・地図を使ってまとめる

・年表をつくる

・カルタをつくる

・3コマまんが

・カレンダー

(作物ごよみ)

※3コマまんが,カレン

ダーは,第3学年で使用

する副読本「わたしたち

の京都3・4年上」に取

り上げられた表現活動

・調べたことを表現する

・考えを出し合う

・考えを伝え合う

・違いを考える

・ノートにまとめる

・意見の書き方

・新聞にまとめる

・作品に表現する

単元名・リード文 指導事項[言語活動]

自分の考えをまとめて,討論をし

よう(話す・聞く)(書く)

集めた情報を整理し,関連づけて,

自分の考えをまとめよう。考え方の

にているところやちがうところから,

討論を深めよう。

話・聞(1)アオ[(2)イ]

書(1)アエ[(2)イ]

伝国(1)イ(カ)

活動を報告する文章を書こう

(書く)

計画したことと実際に活動したこと

を,事実にもとづいて,読む人に分

かるように報告しよう。

書(1)イウオカ

[(2)イ]

伝国(1)イ(キ)

伝記を読んで,自分の生き方につ

いて考えよう(読む)

「伝記」には,どのような特色があ

るのだろう。人物の生き方を,自分

と関連させながら読もう。

読(1)イウオカ[(2)ア]

書(1)カ

伝国(1)イ(キ)

表2-2 単元名及びリードと指導事項及び言語活動

表2-3 教科書に取り上げられた表現活動

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小学校 総合的な学習の時間 17

これらの表現活動は,9ページの表2-1に示され

ている2(1)の「知識・技能の活用と言語活動」と(6)

の「多様な言語活動の工夫」と深く関連しており,

言語活動を強く意識していることがうかがえる。

③算数科の教科書における言語活動

昨年度まで使用していた教科書と大きく違う点

は,「説明」する場面が大幅に増えたことである。

例えば,第5学年の教科書を比べてみると,上下

巻合わせて「説明しましょう」と記述されていた

場面が二つであったのに対し,新しい教科書では

かなり増えている。その上,「計算のしかたの説明」

から,「理由の説明」「考えの説明」など,第3学

年と第5学年の算数科教科書に取り上げられてい

る言語活動を整理した[付表3]に示したように,多

様な内容の説明が求められていることがわかる。

自分の考えをわかりやすく,言葉や数,式,図,

表,グラフを用いて説明することで,より理解が

深まると考える。

新しい教科書では,まず,モデルとなる説明の

仕方を提示したのち,新たな問題で説明をするこ

とで,説明の仕方を身に付けられるようにしてい

る。また,第5学年の図形領域「三角形・四角形

の角」で,内角の和が180°,360°になることを,

帰納的,演繹的に考えて説明する活動が学習指導

要領に示されている。帰納的に考えるというのは,

具体的な事物から一般的原理や法則を導き出す方

法であり,演繹的に考えるとは,原理,法則から

問題を解く方法である。しかし,小学生の子ども

には,帰納,演繹という言葉ではなく,「○アそれぞ

れの角をはかったり,切り取って1つの点に集めた

りして調べましょう。(帰納的)」「○イ四角形を三角

形に分けて調べましょう。(演繹的)」という二つ

の発問と,図2-5に示された演繹的説明モデル,右

上の解説の2通りの説明の方法があることを示して

いる。

また,第3学年に,国語科で学習した日記から

必要な情報を取り出して問題を解決する活動や,

第6学年に,環境問題をテーマにしたレポートを

より説得力のあるものにするために,算数を活用

し,目的にあった情報を集め,よりわかりやすく

処理して提示する活動が設定されている。更に第

5学年には,社会科で学習したグラフや表などの

資料から必要なものを選択し,問題解決する活動

が設定されている。

このように,他の教科や身の周りの生活と関連

させた算数的活動が取り入れられていることも,

言語活動を充実させる上で注目すべき点である。

④理科の教科書における言語活動

理科の学習でも,①「おや,へんだな。」「不思

議だな。」「どうしてなのだろう,調べてみたい。」

(問題発見)②「多分こうするとこうなるだろう。」

(予想・仮説)③「予想通り,…になったよ。」

(実験・観察→結果)④「この結果から~だとい

うことがわかるね。」(考察)⑤「身の回りにも生

かされているのだね。」(結論)といった,問題解

決の学習の流れが重視されている。その中でも,

教科調査官の村山が述べるように,②予想・仮説

を立てる場面と④考察する場面に,言語活動を適

切に位置付けることが重要である。そのため,教

科書には二つの工夫が見られる。

一つは,「理科の学び方」のページに,学年の

発達段階に応じて重点的に育てたい問題解決の能

力の鍵となる言葉を示していることである。第3

学年では「くらべながら…」,第4学年では「関

係づけながら…」,第5学年では「条件を整えて

…」,第6学年では「推論しながら…」というよ

うに,教科書全体を通してその考え方が意識でき

るような構成となっている。

もう一つは,②と④の場面に,話合い活動を設

定したり,手引となる情報を示したりしているこ

とである。自分たちの生活経験の中から根拠とな

るものを挙げたり,資料から探し出したり,友だ

ちの意見を聞いたりして,結果や方法の見通しを図2-5 教科書に示された演繹的に考えた説明のしかた(58)

教科書に示された帰納的,演繹的説明の解説

(59)

みらいさんの考えと説明

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小学校 総合的な学習の時間 18

もつ活動を大切にしている。また,実験・観察を

して,図に表したり,表やグラフにまとめたりし

た結果を予想や仮説と照らし合わせて,自分の言

葉で表現したり,友だちと話し合ったりする活動

を大切にしている。更に,記録の仕方については,

教科書の中でモデルを多く示しており,目的に合

わせて表現の方法を選択して活用できるようにな

っている。

そのほかに,他の教科同様,科学的な言葉を大

切にしており,単元の中で押さえておきたい言葉

は太字表記となっている。

また,今回の教科書から,新たに単元の終わり

に「ふりかえろう」「学んだことを生かそう」と

いう活動が設定されていることも,言語活動を意

識してのことであろう。特に,「学んだことを生

かそう」では,学んだことを基に,1年間の平均

気温を示し,オクラの種子の袋にある「発芽温度」

と「生育温度」の情報を与え,いつ種まきをすれ

ばよいかということについて,理由を挙げて説明

を求めるなど,単元で身に付けた知識を身の回り

の生活と関連させて,知識を知恵に変える活動が

行われるようになっている。

なお,[付表4]には,第3学年と第5学年の理

科教科書に取り上げられている言語活動を整理し

て表した。

以上,国語科,社会科,算数科,理科の4教科

において,教科書に取り上げられた言語活動を調

査し,整理した。表にまとめるのは,4教科の第

3学年と第5学年の2学年のみであるが,今回の

学習指導要領改訂を受けて,教科書も言語活動を

強く意識し作成されたことがわかる。今回は,話

合い活動についてはふれなかったが,どの教科に

おいても,グループでの話合い,学級全体での話

合いの場面が設定されていた。

「総合」における探究のプロセスである,①課

題の設定 ②情報の収集 ③整理・分析 ④まと

め・表現は,4教科の学習の過程と合致する。そ

して,その一つ一つのプロセスにおいて言語活動

を位置付けることは4教科と共通しており,④の

まとめ・表現で一連の言語活動を設定することも,

国語科や社会科と同じである。

また,各教科で示された言語活動例も,全て「総

合」でも取り上げられるものである。特に,今回,

単元で学んだことを,教科の枠を超え,他の教科,

他の学習活動の時間,生活の中で活用するという

提案が,各教科書の中で多く行われている。

特に「新しい国語」(東京書籍)の第3学年か

ら第6学年の「下」の教科書には,巻末に「『言

葉の力』を活用しよう」という見出しで,国語科

と「総合」との言語活動の関連について,「総合」

の単元を一例挙げて紹介している。同学年内での

関連しか挙げられていないが,国語科の教科書の

中に「総合」との言語活動の関連を示している意

義は大きい。

単元の中で,探究における四つのプロセスを意

識して,その各過程の中に各教科等で身に付けた

言語能力を基にした言語活動を位置付ける。この

ことが,主体的な学びをつくる上で重要であると

考える。

次章では,他教科等との関連を意識した「総合」

の言語活動の構想と実践について述べる。

(24) 井上一郎『学力向上プロジェクトシリーズ 新学習指導要

領対応 小学校国語科 言語活動例を生かした授業展開プ

ラン中学年』明治図書 2010.1 pp..13~14

(25) 前掲(3) p.41

(26) 澤井陽介「社会科における言語活動の充実とその具体化」

『初等教育資料No.874 』2011.6 p.20

(27) 文部科学省『学習指導要領解説 社会編』2008.6 p.24

(28) 前掲(27) p.60

(29) 前掲(27) p.88

(30) 前掲(3) p.60

(31) 前掲(3) p.50

(32) 前掲(3) p.56

(33) 前掲(3) p.70

(34) 村山哲哉「理科における言語活動の充実とその具体化」

『初等教育資料No.874 』2011.6 p.28

(35) 前掲(3) p.72

(36) 前掲(3) p.73

(37) 前掲(3) p.76,p.78,p.80

(38) 前掲(3) p.76,p.78,p.80

(39) 前掲(3) p.76,p.78,p.80

(40) 前掲(3) p.84

(41) 前掲(3) p.85

(42) 前掲(3) p.86

(43) 前掲(3) p.91

(44) 前掲(3) p.101

(45) 前掲(3) p.106

(46) 赤堀博行「道徳における言語活動の充実とその具体化」

『初等教育資料No.875』2011.7 p.19

(47) 前掲(3) p.107

(48) 前掲(3) p.112

(49) 杉田洋「特別活動における言語活動の充実とその具体化」

『初等教育資料No.875』2011.7 p.30

Page 21: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 19

(50) 文部科学省『学習指導要領解説 国語編』2008.8 p.32

(51) 前掲(50) p.54

(52) 前掲(3) p.111

(53) 前掲(3) p.21

(54) 前掲(3) p.34

(55) 前掲(3) p.63

(56) 前掲(13) p.61

(57) 文部科学省「言語活動の充実に関する指導事例集【小学校

版】のポイント」『言語活動の充実に関する基本的な考え

方』2010.12 p.220

(58)『わくわく算数5上』平成23年度用 株式会社新興出版社啓

林館 2011.2 pp..76~77

(59) 前掲(58) pp..76~77

第3章 主体的,探究的な学習を実現する言

語活動の構想と実践

第1節 主体的,探究的な学習を実現する言語活動の

構想

第2章では,思考力・判断力・表現力等を育成

するために,言語活動の充実が重要であることを

述べた。特に,「総合」では,各教科等の言語活動

と関連させ,効果的に言語活動を行うことが求め

られる。そのため,学習指導要領,教科書を基に

各教科等の言語活動を抽出し,「総合」の言語活動

との関連性について調査した。これらのことを踏

まえ,ここでは,主体的,探究的な学習を実現す

るために,どのような言語活動を,どのように位

置付け,学習を展開していけばよいのかについて

考えてみたい。

(1)単元を見通して言語活動を位置付ける

単元を構想するに当たって,まず大切にしなけ

ればならないことは,付けたい力を明確にするこ

とである。その上で,単元の中に言語活動や思考

操作を適切に位置付けることになる。単元の学習

過程は,第2章の第2節で述べたように,各教科

等において,子ども主体の問題解決的な学習のプ

ロセスをとることが望ましい。問題解決的な学習

のプロセスとは,「課題設定-学習計画-情報収集

-情報活用-解釈・熟考-評価」という一連の流

れであり,その中に「課題を見付ける(つくる)」

「計画を立てる」「まとめる」「伝える」「話し合う」

「振り返る」などの主体的な活動を位置付けるこ

とである。

「総合」においては,「課題の設定」「情報の収

集」「整理・分析」「まとめ・表現」の探究的な学

習のプロセスの中に,言語活動を意図的に設定す

ることが重要である。そして,分類したり比較し

たり関連付けたりする活動を通して,思考力・判

断力・表現力等が身に付けられるように単元を構

想していきたい。そのためには,国語科同様,イ

ンタビューや話合いといった言語活動を個別の活

動として並べるのではなく,単元を貫く言語活動

として位置付けていくことが重要である。

つまり,単元を通してどのような力を身に付け

させるのかを明らかにし,そのためにどのような

言語活動を行うと効果的であるかを考え,単元を

貫く言語活動を設定する。そして各プロセスの中

で行う言語活動を単元構想に位置付けていく。そ

のとき,既に身に付けている力は何なのか,その

活動はいつ(何年生),どこで(教科等,単元),

どのように学んだのかを確かめたり,その活動を

この単元ではどのように提示し,どのように展開

するのかを考えたりしなければならない。そして,

新たに付けたい力は何なのか,新たに行う言語活

動は他教科等の言語活動とどのような関連がある

のかを,内容と能力の両面から整理することが大

切となる。

そのために,現在本市で「総合」の単元におい

て作成されている単元構想図に,「探究的な学習の

過程」「言語活動」「思考操作」,そして「他教科等

との関連」の項目を新たに付け加えて示すことを

提案したい。一覧にして示すことで,指導者が次

のことを意識できるようになる。

指導者が意識することで,子どもたちは言語活

動をより効果的に行うことができるようになる。

つまり,指導者も子どもも,見通しをもって学習

を行うことができるため,子ども一人一人により

確かな力が付いていくのである。

子どもが見通しをもって進められるという意味

では,単元の学習過程同様,1時間の学習過程も明

らかにすることが大切である。「課題設定-情報収

集-情報活用-解釈・熟考-評価」という一連の

流れを1時間の学習の中にも位置付け,「一人学び」

① 探究的な学習になっているか。また,今行って

いる学習活動が探究の学習過程のどのプロセス

なのか。

② 単元を見通して,なぜ今この言語活動をしてい

るのか。

③ そのとき,どのような思考操作を行うのか。

④ 他教科との関連はどうなっているのか。

Page 22: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 20

「グループ交流」「全体交流」の学習形態を設定す

ることが大切である。

(2)各教科等と関連させて言語活動を位置付ける

①各教科等と関連させて行う言語活動

各教科等と関連させて行う言語活動には,次の

四つの形がある。

ⅰの各教科等で行われる言語活動を「総合」で

発展させて行うというのは,各教科等で身に付け

た能力を「総合」で働かせるということである。

例えば,問題解決的な学習の過程における課題設

定や,情報収集・情報活用の方法,表現の方法な

どを各教科等の言語活動を通して身に付け,その

方法を使って「総合」でも学習を展開するという

ことである。各教科等で得た知識や技能等が学習

や生活において生かされ,総合的に働くようにと

いう理念から「総合」が創設されたことからいえ

ば,このⅰが一番オーソドックスな形である。

ⅱの「総合」で行った言語活動を各教科等に生

かすというのは,探究的な学習の追究活動におい

て新たな知識,技能が必要となり,各教科等で学

習するよりも先に,「総合」で言語活動として行う

ことである。子どもが問題を解決するために自ら

知識や技能を求めているという点からみると,学

習する内容が実社会・実生活の中で生きて働くこ

とを実感しやすく,関心・意欲の面からみても有

効で定着しやすい。

ⅲの各教科等で行う言語活動と「総合」で行う

言語活動を並行させて行うというのは,各教科等

と「総合」の言語活動を同時期に行うということ

である。繰り返し行うことで,言語能力が定着す

るという利点がある。

ⅳの各教科等で行う言語活動と「総合」で行う

言語活動を統合させて行うというのは,例えば,

国語科の「話すこと・聞くこと」や「書くこと」

の単元で,単元を貫く言語活動を設定し,実際に

国語科の学習で,話合いをするときのテーマを「総

合」の内容にしたり,文章の構成や要素,表現の

工夫を見つけ,実際に書くのが「総合」で学んだ

内容にしたりという形である。これもⅲと同様,

教科等と「総合」で行う相乗効果が期待できる。

各教科等と関連させて言語活動を行うとき留意

しなければならないことは,言語活動が個々に行

われるのではなく,各教科等と「総合」が関連し

て一貫した活動が行われなければならないという

ことである。そのためには,前項で述べたように,

既習事項は何で,どのような技能を身に付けてい

るのかを,学年,教科の枠を超えて,指導者がし

っかりとつかんでおくことが大事である。

②各教科等の基盤となる司会力,対話力

グループ学習やクラス全体での交流に必要かつ

不可欠なものとなるのが,司会力,対話力である。

自分の考えをわかりやすく相手に伝える。相手の

話を要点を押さえて聞く。自分の考えと相手の考

えを比べて,共通点や相違点を考えたり,自分の

考えを深めたり広げたりする。そのためには,子

ども一人一人に,対話力,司会力を育成しなけれ

ばならない。では,これらの言語能力はどのよう

に育成すればよいのだろうか。

まず考えられるのは,話す・聞く活動,話合い

活動等の基礎・基本となる言語活動を充実させる

ことである。これらの言語活動は,国語科だけで

はなく,全ての教科等の中で意図的に行っていく

ことが大切であり,言語活動を繰り返し行うこと

で言語能力は定着していく。このとき留意しなけ

ればならないのは,これらの言語活動は,子ども

の発達段階に応じて系統立てて行わなければなら

ないということである。系統性を意識するとき,

基準となるのは国語科の学習指導要領である。中

学年の話す・聞く活動においては,第1学年及び

第2学年と,第3学年及び第4学年の「A話すこと・

聞くこと」の(2)内容の①指導事項を基に,どの

ようなことに気を付けたらよいかを整理したもの

を以下に示す。

ⅰ 各教科等で行われる言語活動を「総合」で発展

させて行う。

ⅱ 「総合」で行った言語活動を各教科等に生かす。

ⅲ 各教科等で行う言語活動と「総合」で行う言語

活動を並行させて行う。

ⅳ 各教科等で行う言語活動と「総合」で行う言語

活動とを統合させて行う。

〈話し方チェック〉

○みんなの方を向いているか。

○大きく口を開けているか。○大きい声で,はっきりと話

しているか。 ○ゆっくりと話しているか。 ○理由をあげているか。

・なぜかというと

○例をあげているか。 ・たとえば

○わかりやすく,工夫しているか。

・黒板や資料を指さして

〈聞き方チェック〉

○手はひざにおいて,姿勢をよくしているか。

○話している人の顔を見 ているか。 ○口は閉じているか。 ○うなずきながら聞いて

いるか。 ○自分の考えと比べなが

ら聞いているか。 ・同じ

・にている

・ちがう

Page 23: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 21

これらのチェック項目を基に,中学年版「話し

方・聞き方チェックシート」を作成し,一人一人

の子どもに持たせる。個人持ちにすることで,自

分が必要とするときに机から出して,自分の話し

方,聞き方についてチェックすることができると

いう利点や,常に話し方,聞き方の視点を意識す

ることができるという利点がある。

高学年においても同様に,第1学年及び第2学

年,第3学年及び第4学年,第5学年及び第6学

年の「A話すこと・聞くこと」の(2)内容の①指

導事項を基に,話し方,聞き方について整理した

ものを以下に示す。

また,司会についても同様に,指導事項を基に

して系統的に力を付けることが大切である。子ど

もの発達段階に合わせた言葉や内容を検討し,中

学年版と高学年版の「話合いマニュアルシート」

を作成する。シートには,「考えを一つにまとめる

話合い」(協議)と「考えを出し合う話合い」(討

論)の2通りの話合いの方法について,プロセスや

司会の言葉を示す。そして,グループ交流や全体

交流の司会の際に持たせることで,だれもが,ど

の時間であっても,自信をもって司会を務めるこ

とができるようにする。司会をすることで,子ど

もには,学習の主体者は自分たちであるという自

覚が生まれ,学習意欲が高まると同時に,司会力,

対話力だけでなく,話す力,聞く力も伸びていく

と考える。

このように,話す・聞く活動,話合い活動を全

ての教科等で行うことで,子どもたちの言語能力

は育成され,定着していくものと考える。

第2節 主体的,探究的な学習を実現する言語活

動の実践

第1節の構想を踏まえ,「総合」の学習が主体的,

探究的な学習となることをめざして,他教科等に

おける言語活動を関連させ行った授業の実践を報

告する。

(1)単元を見通して言語活動を位置付けた第3学

年「アンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」の実践

〈単元を構想する〉

「アンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」の単元を構

想するに当たって,はじめに,付けたい力を確認

した。表3-1に示したものが,この単元の付けたい

力とその評価規準である。

そして,子どもたちがこの単元の学習を終えた

とき,「韓国・朝鮮って魅力がいっぱいあるんだね。

お互いのよいところを大切にして,みんなで仲良

くしていきたいな。」と思えるように単元を構想し

た。そのために,まず,みんなの課題(中心課題)

として「韓国・朝鮮の『みりょく』をさぐろう」

を指導者側で仮に設定し,その課題がもてるよう

な「ふれる」「つかむ」の活動を考えた。このとき

留意したのは,子どもたちが「国際理解」「韓国・

朝鮮」について第1,2学年ではどのような内容

付けたい力 評価規準

課題発見力

身近な人や自

然,社会に興

味・関心をも

ち,これから学

習したい課題

を発見する力

体験を通し,疑問に思ったこ

とや興味をもったことから,

自分の課題を発見している。

課題追究力

課題について,

追究方法を考

え,情報を収集

したり選択し

たりして,課題

を追究する力

様々な方法で情報を収集し,

必要な内容を整理・分析した

り,評価したりして課題を追

究している。

記述力

自分の考えを,

相手意識をも

って効果的に

表現する力

自分の考えを身近な人に伝え

るために,目的や相手を意識

して,文章を書いたり,絵や

図,写真,表などで表現した

りしている。

コミュニケ

ーション力

自分の考えを

伝えたり,相手

の考えを聞い

たりして,自分

の考えを広げ

たり深めたり

する力

自分の考えを身近な人にわか

るように表現の方法を工夫し

て伝えたり,相手の考えを受

けとめたりして,自分の考え

を広げたり深めたりしている。

活用力

学んだことを

自分の生活や

学習,社会に生

かす力

学んだことを広めたり,自分

の生活や学習,社会に生かし

たりしている。

〈話し方チェック〉

○みんなの方を向いてい

るか。

○大きな声で,最後までは

っきりと話しているか。

○理由・根拠をはっきりさ

せているか。

・自分の経験から

・友だちの意見から

・テキストから

(文章・さし絵・グラフ…)

○わかりやすく,工夫して

いるか。

・ショー アンド テル

・黒板や資料を使って

・具体例をあげながら

〈聞き方チェック〉

○姿勢をよくしているか。

○話している人の顔を見

ているか。

○友だちの考えを大切に

しているか。

・うなずきながら

○自分の考えと比べなが

ら聞いているか。

・同じ・似ている・少し違う

○自分の立場をはっきりさ

せながら聞いているか。

・賛成・反対 なっとく

・ここがわからない

・くわしく知りたい

○友だちのすばらしいとこ

ろを見つけながら聞い

ているか。

表3-1 付けたい力とその評価規準

Page 24: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 22

を学習しているのかということを把握した上で,

単元を構成することである。

右ページ図3-1は,従来ある「アンニョンハセ

ヨ!韓国・朝鮮」の単元構想図に,「学習活動と探

究の学習過程」と「考えられる言語活動,思考操

作及び各教科等との関連」を一覧にして示したも

のである。

単元を構想するに当たって留意したのは,次の

四つの事項である。

①については,図3-1の「学習活動と探究の学

習過程」の欄に,情報の収集-情報の収集-整理・

分析-課題の設定-情報の収集…と順に示したよ

うに,情報を収集し,その情報を取り出し,整理・

分析することで,新たな課題が生まれ,その課題

を解決するために更に情報を収集するという問題

解決的な活動が,発展的に繰り返されていくよう

に学習活動を位置付けた。

②③については,友だちと交流したりコミュニ

ティティーチャーと活動したりする場面や,実際

に見たり,聞いたり,やってみたりする場面を多

く設定することを意識した。例えば,韓国の方に

来ていただいてチャンゴの演奏や生活の様子をき

く,ハングル文字を教えてもらって自分の名前を

書いてみる,みんなで協力してチヂミを作って食

べるなどの活動を設定した。特に③の体験活動を

設定することについては,体験をしただけで終わ

ってしまうことのないように,意図的に体験を重

ねるようにした。学習において,出会いの場面は

非常に重要である。そのため,最初の体験を十分

に吟味し,子どもたちに驚きや感動を与えられる

であろう「韓国・朝鮮の音楽を聴こう」の活動か

らスタートすることにした。その後,「もっと韓国・

朝鮮のことを知ろう」と,衣装のこと,くらしの

ことについてお話を聞き,実際にハングル文字を

教えてもらう活動,「韓国・朝鮮の食べ物『チヂミ』

を作ろう」の活動と,順番に三つの活動を重ねる

ようにした。

このように三つの体験を重ねることで,音楽,

衣装,くらし,文字,食べ物などのいくつかの視

点で韓国・朝鮮をみることができるという利点,

それぞれの体験から見つけたこと,感じたことが

比較できるという利点があると考えたからである。

また,この三つの活動の重ね方を「見る・聴く」

→「聞く・一緒にやってみる」→「自分たちでや

ってみる」という順番にすることで,学習が進む

につれて子どもと韓国・朝鮮との関わりが深まる

ようにした。

④については,まず,探究の「まとめ・表現」

のプロセスにおいてどのような表現をすればよい

か考え,見つけた魅力を「パンフレットに表して

交流する」という活動を,単元を貫く言語活動と

して設定した。これは,同時期に社会科の「わた

したちのくらしとはたらく人びと」の「1商店の

はたらき」で,見つけたスーパーマーケットの秘

密をパンフレットにまとめて発表するという活動

があり,これと並行させて行うことで,より力が

定着すると考えたからである。

また,②の「協同的な学びを設定すること」や

③の「体験活動を設定すること」とつなげて,体

験をしたことをメモする,体験をした後ワークシ

ートに感想や学んだことを書く,キーワードにま

とめる,グループで交流する,全体で交流する,

振り返るという活動を単元の中に位置付けた。

特に,グループで交流して,情報を整理・分析

する場面では,毎回,ウェビングマップ(マイン

ドマップ,カルタ)の手法を取り入れることにし

た。これは,グループの中で一人一人の子どもが

自分の考えを発言しやすい,友だちの考えを自分

の考えと比較して聞きやすい,それぞれの考えを

関連させやすいなどの効果があると考えたからで

ある。

〈授業を展開する〉

◇ふれる 韓国・朝鮮の文化と出会おう

◇つかむ もっと韓国・朝鮮のことを知ろう

学習課題をつくろう

事前に,子どもたちに,これまでどのような学

習をしてきたのかを振り返らせた。「1今までに,

世界のどの国のことを学習したのか」「2韓国・朝

鮮について知っていることは何か」について振り

返り,知っていることを付箋に一枚ずつ書いて,

グループごとにウェビングマップに表した後,ク

ラスで24ページ図3-2のような1枚のウェビングマ

① 探究の過程「課題の設定」「情報の収集」「整理・

分析」「まとめ・表現」の四つのプロセスを経る

こと

② 協同的な学びを設定すること

・他者(友だち,コミュニティティーチャーなど)

と協力して学ぶ。

③ 体験活動を設定すること

・見る,聞く,やってみる。

・体験活動を意図的に重ねる。

④ 言語活動を位置付けること

Page 25: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 23

第3学年

アンニョンハセヨ!

韓国・朝鮮

(18時間)

えら

れる

言語

活動

(○・

)思考

操作

元構

想図

各教

科等

との

関連

(⇆)

○記

・ウ

ェビ

ング

マッ

プに

書く

社会

観察

・鑑

賞・

記録

・質

問・

感想

メモ

する

・感

想を

書く

→国

語・

社会

キー

ワー

ドに

整理

する

科・

算数

交流

(グ

ルー

プ)

・キ

ーワ

ード

をも

とに

ウェ

ビン

マッ

プに

整理

する

○発

表・

交流

(全

体)

ウェ

ビン

グマ

ップ

に整

理す

る。

整理

した

ウェ

ビン

グマ

ップ

から

析し

,課

題を

つく

る。

観察

・記

録・

質問

メモ

する

○観

察・

記録

・質

・メ

モす

る。

感想

・交

流(

グル

ープ

・感

想を

書く

・キ

ーワ

ード

にま

とめ

る。

キー

ワー

ドを

もと

にウ

ェビ

ング

ップ

に整

理す

る。

発表

・交

流(

全体

・感

想を

発表

する

・整

理し

たウ

ェビ

ング

マッ

プか

分析

し,

課題

をつ

くる

○観

察・

体験

・記

録・

質問

←国

・メ

モす

る。

感想

・交

流(

グル

ープ

・感

想を

書く

・キ

ーワ

ード

をも

とに

ウェ

ビン

←社

マッ

プに

整理

する

○発

表・

交流

(全

体)

感想

を発

表す

る。

整理

した

ウェ

ビン

グマ

ップ

から

析し

,「み

りょ

く」

をま

とめ

る。

読み

取る

地図

やグ

ラフ

から

読み

取り

自分

の考

えを

まと

める

○パ

ンフ

レッ

トづ

くり

キャ

ッチ

コピ

ーを

つけ

る。

交流

(全

体)

紹介

する

・聞

・感

想を

言う

・振

り返

る。

交流

・発

表(

全体

・振

り返

る。

仲間

分け

仲間

分け

関連

付け

今まで

の学習

を振り

返る

1h

韓国

・朝

鮮の

音楽

を聴

こう

(新し

い文

化にふ

れる

) 2

感想を

交流す

る 1

韓国・

朝鮮の

衣装に

つい

て知ろ

韓国

・朝

鮮の

くら

しに

つい

て知

ろう

(食・

住・言葉・ハング

ル文

字・遊

など

) 1h

感想を

書く

1h

感想を

交流す

る 1

課題づ

くり

1h

韓国

・朝

鮮の

食べ

物「

チヂ

ミ」

を作

ろう

2h

感想を

書く・

交流す

0.5h

自分

の考

えた

グル

ープ

で活

動す

2h

感想を

書く・

交流す

0.5h

今まで

の活動

の感想

を整

理し,分析

る 1

疑問を

解決す

る 1

パン

フレ

ット

にキ

ャッ

チコ

ピー

をつ

けよう

1h

パンフ

レット

の交流

をし

よう

マダン

を開こ

情報の収集

情報の収集

情報の収集

情報の収集

情報の収集

整理・分析

課題の設定

整理・分析

整理・分析

整理・分析

まとめ・表

まとめ・表

まとめ・表現

課題の設定

課題の設定

韓国

・朝

鮮に

つい

て知

って

いる

こと

を出

し合

おう

韓国

・朝

鮮の

音楽

を聴

こう

国・

朝鮮

の音

楽は

,は

く力

ある

な。

自分

でも

演奏

して

みた

いな

日本

にも

よく

似た

形の

楽器

があ

るよ

きれ

いな

衣装

だな

ふ れ る 4 時 間

韓国

・朝

鮮の

衣装

につ

いて

知ろ

韓国

・朝

鮮の

くら

しに

つい

て知

ろう

つ か む 4 時 間

韓国

・朝

鮮の食

べ物

「チ

ヂミ

」を

作ろ

む か う 7 時 間

言葉

・昔

音楽

遊び

日本

の着

物の

よう

には

なや

かだ

ね。

日本

にも

似た

遊び

があ

るよ

色々

な音

があ

って

楽し

いな

ハン

グル

文字

駅で

見た

よ。

生 か す 3 時 間

パンフレットの交流会をしよう

みん

なに

伝え

るこ

とが

でき

てよ

かっ

たな

見て

・聞

いて

・や

って

みて

韓国

・朝

鮮の

「み

りょ

く」

をさ

ぐろ

これ

から

も韓

国・

朝鮮

の人

と仲

良く

した

いな

ほか

の国

の「

りょ

く」

も知

たい

な。

もっ

と韓

国・

朝鮮

の「

みり

ょく

」が

見つ

かっ

たよ

学習

活動

究の

学習

過程

韓国

・朝

鮮の

こと

をも

っと

知り

たい

もっ

と韓

国・朝

鮮の

こと

を知

ろう

きれい

すてき

おもし

ろそう

ちがう

やって

みたい

似てい

もっ

と韓

国・

朝鮮

のこ

とを

知り

たい

たくさんの「みりょく」が見つかったね

みりょくが

なぜ日本と似ているところが多いのかな

みりょくが

見つけた「みりょく」を周りの人に伝えたいな

見つ

けた「

みり

ょく

」を

伝え

よう

国・

朝鮮

のこ

とを

知ろ

マダンを開こう

○ パ ン フ レ ッ ト づ く り

図3-1 「アンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」単元構想,探究の学習過程及び言語活動関連図

Page 26: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 24

ップにまとめた。

そして,最初

の「韓国・朝鮮

の音楽を聴こう」

の体験活動に入

った。図3-3はそ

のときの様子で

ある。韓国・朝

鮮の美しい衣装

を着たコミュニ

ティティーチャ

ーがチャンゴを

鳴らしながら登

場したとき,子

どもたちの目は

そのコミュニテ

ィティーチャー

に釘付けになっ

た。バチを持っ

た手がとても速く動く。踊ると衣装の裾が広がり,

胸のリボンが一緒に揺れる。迫力のあるチャンゴ

の音が体育館中に響き渡る。子どもたちは,息を

のんで演奏を聴いていた。そして,コミュニティ

ティーチャーに教えてもらって,自分たちもチャ

ンゴとプを演奏してみた。振り返りで,「○○先生

の手がとっても速く動いてカッコよかった!」「チ

ャンゴの音が本当に雨の音みたいですごかった。」

などの感想や,「ケンガリの音が雷の音に似ている

と言っていたから,聴いてみたいな。」「私もきれ

いな服(チマチョゴリ)を着てみたい。」など,多

くの子どもから「もっと韓国・朝鮮のことが知り

たい。」という思いが出された。明るく楽しく韓国・

朝鮮の文化と出会わせることで,子どもたちはこ

れからの学習を楽しみにするようになった。

次の活動「もっと韓国・朝鮮のことを知ろう」

でも,もう一人の韓国のコミュニティティーチャ

ーに来ていただいて,韓国・朝鮮の衣装やくらし

(住まい,食べ物,遊びなど)について話を聞い

たり,自分たちが知りたいこと(流行りのスポー

ツや遊び)を質問したり,ハングル文字を教えて

もらって自分の名刺をつくったりした。活動の内

容が,見る,聴く,教えてもらうという内容から,

質問に答えてもらう,実際に自分で活動するとい

う内容に変わったことで,韓国・朝鮮に対してよ

り親しみをもって学習を進めることができた。

体験活動の後には,必ず,わかったこと,思っ

たことを文章で書きとめるようにした。図3-4は,

わかったことを一つにつ

き一枚の付箋に書いてい

る様子である。

次に,書いた付箋を基

に,わかったこと,感想

をグループで交流した。

図3-5はその様子である。

はじめは,慣れない交流

に戸惑いを見せていた子

どもたちであるが,回を

重ねるうちに,同じ言葉

を書いた付箋を重ねた

り,場所を動かしたりし

ながら,カテゴリー別に

整理していった。交流す

ることで,整理して自分

の考えをより確かにした

り,自分の気付かなかっ

たことに気付いて,自分

の考えを広げたりするこ

とができた。

そして,図3-6に示し

たように,グループで交

流して一つにまとめたウ

ェビングマップを使って

学級全体で交流した。ウェビングマップを見て,

「食べ物のことがたくさんわかったけれど,遊び

のことが少ないからもっと知りたい。」「トックや

チヂミを作ってみたい。」など,整理したデータを

分析し,感想を出し合うことができた。また,は

じめに作ったウェビングマップと,活動をした後

自分たちが作ったウェビングマップとを比較する

ことで,自分たちの韓国・朝鮮に対する知識が広

がったことに驚いていた。

これらの活動を基に,みんなの課題(中心課題)

をつくった。今までの活動から一番心に残ってい

ることを一人一人が書き,グループで交流した後,

学級全体で交流した。活動して楽しかったこと,

韓国・朝鮮にはたくさんのすごいことがあること,

遊びをもっと知りたい,食べたいなどやってみた

いことがたくさんあることなどの感想が出された。

そして,これらの感想から「やってみて韓国・朝

鮮の『みりょく』をさぐろう」というみんなの課

題(中心課題)を作った。このとき,「みりょく」

という言葉については,指導者が,子どもたちか

ら出された言葉の「楽しい」や「すごい」を使っ

て,「このように,『楽しい』や『すごい』など,

図3-6 全体交流の様子

図3-5 グループ交流の様子

図3-4 一人学びの様子

図3-3 体験活動の様子

図3-2 既習知識を整理した

ウェビングマップ

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小学校 総合的な学習の時間 25

みんなが『いいな』と思うことを『みりょく』と

言います。ほかにどんなことが『みりょく』だと

思いますか。」と尋ね,子どもたちからキーワード

を出させた。子どもたちが挙げた

キーワードは,左の九つである。

言葉について共通理解し,キー

ワードとして「みりょく」の視点

を挙げたことで,子どもたちは,

以後の活動において,キーワード

を意識して課題を追究することが

できた。

◇むかう 韓国・朝鮮の「みりょく」をさぐろう

「やってみて韓国・朝鮮の『みりょく』をさぐ

ろう」を課題に追究活動をスタートさせた。初め

に,「チヂミ作り」を共通体験として行った。レシ

ピを基に,栄養士の先生から調理実習のときの身

支度の整え方,包丁の持ち方,運び方,切り方,

ガスコンロの使い方などを教えていただいて,グ

ループで協力して作っていった。出来上がったチ

ヂミを食べる子どもたちの顔は満面の笑顔であっ

た。この後,自分たちの見つけた「みりょく」に

ついて,一人学び,グループ交流,全体交流を行

った。「おいしい:生地がもっちりしている。中が

ふんわりしていて外がパリッとしている。野菜の

味が濃い。」「きれい:葱の緑色とこんがり焼けた

きつね色。」「いいにおい:ゴマ油の香ばしいにお

い。ホットケーキみたいな甘そうなにおい。」だけ

ではなく,交流することで,新たなキーワード「か

んたん:作り方が簡単だから作りやすい。時間が

かからない。」ということも見つけられた。

次は,子どもたちの興味関心に合わせて[音楽]

[遊び][言葉・むかし話][いしょう]の四つのグル

ープから一つを子どもに選択させ,グループでの

追究活動を行った。図3-7から図3-10はその活動の

様子である。

[音楽]

韓国・朝鮮の楽器,

チャンゴやプ,ケンガ

リを演奏したり,合奏

したりして「みりょく」

を探っていった。

[遊び]

韓国・朝鮮の遊び,

ユンノリ,ペンイなど

のルールを調べたり,

遊んだりして「みりょ

く」を探っていった。

[言葉・むかし話]

身の回りで使われて

いるハングル文字を探

したり,韓国・朝鮮の

むかし話を読んだり,

動物の鳴き声を調べた

りして「みりょく」を

探っていった。

[いしょう]

本で衣装のことを調

べたり,実際に着てみ

たり,さわって工夫を

調べたりして「みりょ

く」を探っていった。

[言葉・むかし話]グ

ループでは,むかし話

を読んで「日本の『お

むすびころりん』と似ているね。」「このお話は,

『ふるやのもり』と似ているよ。」と,日本と似て

いるところが多いことに気付いて教え合ったり,

逆に同じ動物なのに,鳴き声が韓国・朝鮮と日本

では違ったように聞こえることを知って面白がっ

たりしていた。これらの学習を通して,違いを認

め,お互いを知り合うことが大切であるというこ

とにも少し気付いたようであった。

たくさんの「みりょく」を見つけた子どもたち

から,「他のグループの友だちにも『みりょく』を

教えてあげたいな。」「1・2年生にも教えてあげ

たいよ。」「ぼくは,お母さんに教えてあげたい。」

という声が上がった。そこで指導者が「どうやっ

て『みりょく』を伝えますか。」と問いかけると,

子どもたちから「パンフレットを作って伝えたい。」

とすぐに答えが返ってきた。ちょうど社会科でス

ーパーマーケットの『ひみつ』をパンフレットで

表す学習をしている時期であったので,子どもた

ちはパンフレットを思い浮かべたのだと思われる。

社会科でパンフレット作りを学んだところであっ

たので,子どもたちは,すぐにパンフレット作り

に取り掛かることができた。パンフレット作りに

ついては33ページの(2)項ⅲでくわしく報告する。

◇生かす みつけた「み

りょく」を伝えよう

子どもたちは,以前「発

表名人10か条」で,発表

の仕方を身に付けていた

ので,図3-11のように,

パンフレットを見せなが

・すごい

・楽しい

・かわいい

・かっこいい

・すてき

・おもしろい

・きれい

・うれしい

・おいしい

図3-10 [いしょう]活動の様子

図3-9 [言葉・むかし話] 活動の様子

図3-11 交流の様子 図3-8 [遊び]活動の様子

図3-7 [音楽]活動の様子

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小学校 総合的な学習の時間 26

ら,大きな声で自信をもって発表していた。楽器

を演奏したり,絵本を見せたり,チマチョゴリを

着てみせたりして,自分の見つけた「みりょく」

をわかりやすく伝えようと工夫して発表している

様子も見られた。また,友だちの質問に堂々と答

える姿が印象的であった。聞く側も,聞く視点を

はっきりさせ,感想を言うときの話型を示してい

たので,自分の見つけた「みりょく」と比べなが

ら発表を聞き,感想を言

うことができた。また,

図3-12に示したように,

「みりょく」カードを提

示して発表するようにし

たことで,話す側も聞く

側も「みりょく」を意識

することができた。

この後,交流会で見つ

けた「みりょく」を学級

全体で交流した。図3-13

は,そのときの様子であ

る。「わたしは『いしょう』

グループの発表を聞い

て,きれいというみりょ

くを見つけました。チマ

チョゴリを見せてもらったら,本当に刺繍がきれ

いでした。私も着てみたくなりました。」「○○さ

んの発表を聞いて,ペンイがおもしろそうだと思

いました。日本のこまと似ています。ぼくも回し

てみたいです。」「わたしは,動物の鳴き声が日本

と違うのがおもしろいと思いました。」など,新た

に知った「みりょく」を嬉しそうに発表していた。

多くの子どもから「やってみたい。」という声が上

がったため,「他のグループの活動もやってみます

か。」と指導者が投げかけると,子どもたちの中か

ら歓声が上がった。そこ

で,学級活動の時間を利

用してマダンを開くこと

にした。図3-14のように,

子どもたちは,友だちと

一緒に遊びや音楽などを

楽しむことができた。

最後に,単元の振り返りをした。子どもたちか

らは,「この勉強は終わるけど,もっと本やインタ

ーネットでみりょくを調べて,ほかの人にも教え

てあげたい。」「もっと言葉をおぼえて,韓国・朝

鮮の人と友だちになりたい。」「韓国・朝鮮に行っ

てみたい。」「もし韓国・朝鮮の人が転校してきた

ら,日本のことを教えてあげて,韓国・朝鮮のこ

とを教えてもらいたい。」などの感想が出された。

〈成果と課題〉

○学習スタイルの提示

毎時間の学習過程を「課題設定-情報収集-情

報活用-解釈・熟考-評価」とし,子どもたちに

は,「めあてのかくにん」「一人学び」「グループ交

流」「全体交流」「ふり返り」「まとめ」と提示した。

この学習のスタイルは,毎時間黒板にも掲示する

ことで,子どもたちが見通しをもって学習できる

ようになった。また,毎時間使うワークシートの

最後に,図3-15のような振り返り欄を設定し,今

日学んだことを書き留めたり,今日の活動につい

て振り返ったり,次への課題を考えたりできるよ

うにした。このことで,子どもたちは自分の学び

を自己評価し,次の時間のめあてをもてるように

なった。

今回,学習スタイルが定着したことで,他教科

でもこのスタイルが定着しつつあり,子どもが見

通しをもって学習できるようになってきている。

○単元を見通し,思考操作を助ける掲示物

9月から12月まで4か月に渡って展開した学習で

あるが,思いが途切れることなく,子どもたちは

最後まで意欲的に取り組むことができた。これは,

図3-16に示すよう

な学習のあしあと

を教室の後ろに掲

示しておいたこと

で,子どもたちが

いつも学習を振り

返ることができた

ためである。また,

学習のはじめに,

この掲示物を使って振り返ったり,考えを整理し

たりすることができたため,学習を進める上で大

きな支援となった。ほかにも,「みりょく」のキー

ワードや,学んだことを整理した次ページ図3-17

のようなウェビングマップを掲示することで,思

考操作を助けることができた。特に24ページの図

3-2と図3-17のウェビングマップを並べて掲示する

図3-15 全体交流の様子

図3-14 マダンの様子

なぜなら,

今日の学習は だからです。

音楽がしっかりきけた。 ◎ ○ △

楽しく体けんができた。 ◎ ○ △

ぎもんに思ったことをしつもんできた。 ◎ ○ △

感そうが言えた。 ◎ ○ △

これからやってみたいこと

図3-15 ワークシートの振り返り欄

図3-16 学習のあしあとをまと めた掲示物

図3-13 全体交流の様子

図3-12 「みりょく」カー ドを使って交流し

ている様子

みりょくカード

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小学校 総合的な学習の時間 27

ことで,既習知識

の量と学習してか

らの知識の量とを

比較することがで

きた。このことで

自分たちの学びが

広がってきたこと

を視覚的にもとら

えることができた。

○体験活動を通して学ぶ

体験をしただけで終わってしまうことがないよ

うに,体験活動の後には必ず感想や学んだことを

書く,キーワードとして残す,それをグループや

学級全体で交流する活動を必ず位置付けた。この

ことで,問題解決的な活動が発展的に繰り返され

ていき,子どもたちの意欲が途切れることなく,

追究活動を充実させることができた。

また,「見る・聴く」→「話を聞く・一緒にや

ってみる」→「自分たちでやってみる」という順

番で体験活動を意図的に重ねたことで,子どもた

ちの韓国・朝鮮に対する意識が,学習が進むにつ

れて自分のものとなっていった。子どもたちが活

動を重ねるに従って,より一層積極的になってい

く様子を見て,指導者も体験を意図的に重ねるこ

との大切さを実感することができた。

○言葉にこだわる 語彙をふやす

学んだことを付箋に書くことで,言葉にこだわ

ることができるようになってきた。また,「みりょ

く」については,どのようなことが「みりょく」

なのかを定義し,キーワードを子どもと一緒に挙

げたことで,子どもたちもキーワードを手がかり

に追究活動を意欲的に行うことができた。また,

追究活動において,学習の最後には,最初に挙げ

たキーワード以外にも,自分の言葉で「みりょく」

について語れるようになった子どもがいた。

●全員の子どもが話す・聞く,話し合う,書くこ

とができるようになるために

話す・聞く,書くことが苦手な子どもへの支援

として,話すときには話型を,聞くときには聞く

視点を,書くときには文章の構成を示した。この

ことで,自信をもって話したり,書いたりできる

子どもが増えてきた。また,授業の振り返りの際

にも顔に表情を書かせて,なぜにこにこなのか,

なぜしょんぼりなのか,理由を書くことを繰り返

すうちに,そのよさに気付き,自分の考えを話す

ときには「なぜなら・・・」と,理由を添えて話

せるようになってきている。

また,今回は話し合うときに付箋を使って考え

を整理する方法を取り入れたことで,自分の考え

と友だちの考えとを比べながら聞いたり,出てき

た考えを分類したり,分類したものに名前を付け

たりできるようになってきた。ウェビングマップ

については30ページ(2)項ⅱで詳しく報告する。

子どもたちの振り返りにおける自己評価で,「発表

する力」がついたと答えた子どもが26人中13人,「話

し合う力」がついたと答えた子どもが15人いた。

しかし,書くことを苦手と思っている子どもに

とっては課題が残った。例えば字数制限をして100

字で書くという活動である。マス目を設けたため,

100字を意識して書こうとはするが,100字に足ら

なければ同じ内容を繰り返す,100字を超えてしま

ったら大切な内容であっても削除してしまうとい

う姿が見られた。100字に大切なことを要約しなけ

ればならないという意識が弱かったためである。

なぜ100字にしなければならないのかの意味付け,

どうすれば100字にまとめられるのかの細かな支援

が必要であった。今後,他の教科等において字数

を制限して書くという活動を行う際に,付箋など

を利用して細かなステップで指導していくことが

必要である。

(2)各教科等と関連させて言語活動を位置付けた

実践

①各教科等と関連させて行う言語活動

ⅰ各教科等で行われる言語活動を「総合」で発展

させて行う

〔 第3学年「生活向上」〕発表名人10か条

国語科「話し合って決めよう」から発展

社会科で,調べた校区のことを友だちと交流す

る。「総合」で,学んだことを全校のみんなに発表

するなど,相手に自分の考えや学んだことを伝え

ることは,国語科のみならず,どの教科等におい

ても,なくてはならない活動である。そこで,国

語の時間に「発表名人になるための極意をみつけ

よう」という学習課題で,二つの映像を視聴し,

比較することを通して,よりよい発表の仕方を見

つける授業を行った。

事前に,学習指導要領を基に次ページに示した

ように上手な発表の仕方を整理し,上手な発表と

そうでない発表のAB2種類の映像を作成しておい

た。本時の学習では,まず,めあてと学習の流れ

を確認した。次に,AB2種類の映像を視聴して,

上手な発表の仕方を見つけた。このとき,見つけ

た上手な発表のポイントとその理由を,姿勢・立

図3-17 学んだことを整理した ウェビングマップ

Page 30: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 28

っている位置・声の大

きさ・速さ・表情・発

表している様子(その

ほかに気付いたこと)

のポイントを示した表

に,Aの映像とBの映

像とを比較しながらワ

ークシートに書くこと

で,自分の考えを整理

できるようにした。図

3-18は,ワークシート

に自分の考えを整理し

ている様子である。そ

して,そのポイントを

グループで交流した。

図3-19のように,ポイ

ントを付箋に書いて,

その付箋を見せながら

交流した。同じポイン

トが出たら「私も○○

さんと同じで,笑顔が

ポイントだと思いまし

た。どうしてかという

と…」と言いながら付

箋を重ねていくように

した。このように付箋

を活用することで,友

だちの考えと自分の考

えとを比べて聞くこと

ができるようになった

だけではなく,出た考

えの整理の仕方や話合

いのスタイルも少しず

つ身に付いていった。

その後,グループで

まとめたものを,図3-

20のように,クラス全

体で交流し,「発表名

人10か条」を作成した。そして最後に,学習の振

り返りとして,学んだことを150字から200字程度

にまとめた。この学習の後,子どもたちの作成し

た「発表名人10か条」をカードにして一人一人に

配布し,いつでも取り出して見られるようにした。

図3-21はカードを見て練習しているところである。

「総合」の「おなかすっきり排便向上」の学習

の生かす場面で,全校の前で自分たちの学んだこ

と,考えた生活向上メニューを発表する際に,こ

の「発表名人10か条」

を使って発表の練習

をした。子どもたちに

は,「自分たちが作っ

た10か条」という思い

があるため,意欲をも

って練習していた。本

番でも図3-22のように,自信をもって堂々と発表

する姿が印象的であった。子どもたちの発表は,

他学年の担任からも好評で,「とてもわかりやすか

った。」「今までの発表に比べてとても上手であっ

た。」などの感想が聞かれた。また,子どもたち自

身も成就感をもっており,25人中,「とてもよく頑

張れた」「頑張れた」と回答した子どもが,姿勢・

動作については21人,大事な言葉を強調する,相

手を見るについては18人,速さ・間,声の大きさ

については17人いた。また,「カードが役に立ちま

したか」の問いには,20人の子どもが「とても役

立った」「役立った」と回答した。担任に話を聞く

と,この学習以降,自己肯定感が高まり,挨拶の

声や授業中の発表の声が大きくなるなどの効果も

出ているようである。

〔第5学年「スチューデントシティ」〕活動報告書

国語科「4活動を報告する文章を書こう」から発展

各教科等の年間指導計画を照らし合わせたとき,

国語科に活動報告書を書く単元があった。そこで,

この活動を「総合」の「スチューデントシティ」

の学習に発展させ,

単元を貫く言語活動

として位置付けるこ

とにした。国語科の

「活動を報告する文

章を書こう」の単元

の流れは左に示した

通りである。

子どもたちは,第

1学年から体験報告

文,調査報告文など,

報告文を書く経験を

してきている。そこで,どのような力が付いてい

るのかを,子ども自身が確かめた上で学習をスタ

ートした。

学習課題を設定した後,活動報告書を書くため

にはどのような学習活動をすればよいかを考え,

それを順番に並べ変え,学習計画を立てた。その

後,モデル文を基に,文章構成をとらえたり,表

・姿勢よく立つ。

・立つ場所を考える。

・大きく口を開けて話す。

・ 大きな声ではっきり話す。

・わかりやすい早さで話す。

・笑顔で話す。

・相手を見て話す。

・ていねいな言葉を使う。

・大事な言葉や部分を強調

する。

・ポイントを指して話す。

「4活動を報告する文章を書こう」

1 報告文に関する既習事項を振り

返る。

2 学習課題を設定する。

3 学習計画を立てる。

4 モデル文を基に活動報告書の文

章の構成をとらえる。

5 モデル文を基に表現の工夫をみ

つける。

6 活動報告書を書く題材を集める。

7 活動報告書を書く。

8 推敲する。

9 清書する。

10 読み合う。

図3-22 発表の様子

図3-21 カードを見て練習を している様子

図3-18 一人学びの様子

図3-19 グループ交流の様子

図3-20 全体交流の様子

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小学校 総合的な学習の時間 29

現の工夫を見つけたりした。これらの活動は全て,

第3学年同様,「課題設定-情報収集-情報活用-

解釈・熟考-評価」の過程を基本とし,子どもた

ちには,「課題の確認」「一人学び」「グループ交流」

「全体交流」「振り返り」「まとめ」と提示し,学

習を進めていった。

一人一人が,部活動,委員会などの中からテー

マを選び,書く材料を集めた。そして,「表にまと

める方法」と「ウェビングマップにまとめる方法」

のどちらかを選択し,情報を整理していった。図3

-23は,そのとき整理の方法を示したワークシート

の一部である。

次に,整理した材料を基に

活動報告書を書いた。そして,

書けた活動報告書を推敲し,

同じテーマで書いている者同

士で読み合い,図3-24のよう

にアドバイスし合った。この

とき,子どもたちが見つけた

文章構成,表現の工夫を基に,「書き方」「内容」「文

章のきまり」「表現のきまり」の四つの視点から作

成した「推敲チェックシート」を配布し,それを

手がかりに推敲した。誤字脱字,改行の仕方,文

末表現だけではなく,内容についてもアドバイス

し合うことで,よりよい活動報告書を完成させた。

子どもたちは学習を振り返って,モデル文を基に

文章構成や表現の工夫を読み取ることの大切さに

気付いたことや,学習計画を立てる力,推敲する

力が付いたこと,更に文章を書く力や司会する力

を付けていきたいということを書いていた。

この後,「総合」の単元「スチューデントシティ

学習」の活動も,国語科で学んだ活動報告書を使

って,家の人に報告しようということになった。

国語科の学習で書く手順が身に付いていたため,

子どもたちは,同じワークシートを使い,書くた

めの材料を集め,整理し,主体的に書き進めてい

くことができた。中には,国語科での反省点を生

かして,よりわかりやすい活動報告書を書こうと

「推敲チェックシート」を取り出してチェックす

る姿も見られた。

〔第5学年「西院企画室」〕インタビュー・アンケート

国語科 第3学年「5話し合って決めよう(インタ

ビュー)」・第4学年「3調べたことを報告する文章

を書こう(アンケート)」から発展

「よりよい西院のまちをつくろう」をテーマに

した単元「西院企画室」は,子どもたちが西院の

お店を調査し,よりよいお店にするための企画を

考えるという内容である。これはスチューデント

シティでの学習を受けて取り組む単元であり,そ

こで学んだことを生かし,子どもたちにプレゼン

テーション力を付けたいという指導者の思いが込

められた単元である。

よりよいお店にするためには,まず,西院のお

店の「今」を知ると同時に,西院に住む人々のお

店に対する意識や思い・願いを知らなければなら

ない。そのためには,まちの人にインタビューを

したり,アンケートをとったりする言語活動が必

要不可欠である。そこで,単元の「情報の収集」

の過程の中に「インタビュー」「アンケート」を位

置付けることにした。

「インタビュー」「アンケート」は,第3学年及

び第4学年の「A話すこと・聞くこと」の②言語活

動例のア,「B書くこと」の①指導事項のアに示さ

れている言語活動である。そこで,第3学年,第

4学年で子どもたちはどのように学んできたのか

を確かめ,図3-25のように整理した。

そして,それを基にワークシートを作成し,子

どもたちに配布した。子どもたちは,ワークシー

図3-24 アドバイス し合う様子

アンケートの手順

・何について?

・誰に? 年齢,男女・・・

・どのような形式で? 記述式,選択式,ミックス式

・質問は短く,わかりやすく

・答えやすい質問からきいていく

・後でどのようにまとめるかを,前もって考えておく

1 質問することを決める

2 アンケート用紙をつくる

3 アンケートを配り,回収する

4 アンケート結果を整理する

5 整理した結果から読み取る

・その場で答えてもらう方法

・期限を決めて回収する方法

※質問の内容によって,回収方法はかわってくる。

・表やグラフにすると分かりやすい。

※知らせたい内容によって,集計の仕方や表す時の順番,形を

変えるとよい。

個人

グループ

学級全体

課題の設定 情報の収集 整理・分析 まとめ・表現

多くの人に同じ質問をして,答えてもらう方法。

利 点

・調べたい内容について,どのような答えがあるのか,全体にどのような答えが多いのかを知

ることができます。

回収方法 (2 通り)

○直接渡して,その場で答えてもらい,回収する方法

(相手の反応がよくわかる)

○アンケート用紙を置いておいたり,配ったりして,期限を決めて答えてもらい,提出しても

らう方法

(全部回収はできないかもしれないが,不特定多数の人に答えてもらえる)

形 式 (3通り)

○記述式 (答えを文章で書きこむもの)

○選択式 (用意された答えの中から選ぶもの)

1 つだけを選択する場合,2つ3つと数を決めて選ぶ場合,いくつ選んでもいい場合がある。

○ミックス式 (記述式,選択式の 2 つを組み合わせたもの)

メモ用紙

(付箋)

画用紙

サインペン

図3-25 アンケートの学習内容(一部)

図3-23 表とウェビングマップによる整理の方法例

活動報告書

②活 動 計 画

③活 動 報 告

⑤今 後 の 活 動

④活動して考えたこと

①リード文

新聞係

4月 5月

7月

6月

4月

7月

6月 5月

年間3回発行

題材決定 取材の準備

取材活動 記事作

新聞発

題材「朝食」 に決定

準備 取材

アンケート インタビュー

よかったこと 反省したこと

割り付け 各自の記

発行でき

たこと

題材を「朝食」にしたこと アンケート

特集記事の

決め方

取材の準備は 5月に延期

次号もみんなに読んでもらえるように関心の高い事がらを特集したい。

クラスや一人一人の生活をよりよくするための提案を発信したい。

⑤ ④ ③ ②

活動して考えたこと

次号もみんなに読んでもらえるように、関心の高い事がらを特集し

たい。

クラスや一人一人の生活をよりよくするための提案を発信したい。

よかったこと

発行できたこと。

題材を「朝食」にしたこと。→関心が高い

反省したこと

特集記事の決め方

アンケート

四月―題材「朝食」に決定。取材の準備は五月に延期。

五月―準備と取材二つ

アンケートとインタビュー(引用)。

六月―割り付け。各自の記事。新聞完成。

七月―反省会。打ち合わせ。

年間

三回

発行

四月―題材決定。取材の準備。

五月―取材活動

六月―記事作成。新聞発行。

七月―反省会。

何について書くか(

①リード文

年間三回新聞を発行する計画を立て、六月に「おおぞら」第一号を発行した。

特集記事の題材は「朝食」で、アンケートやインタビューも行って記事にした。

かべ新聞にしてろう下にはり出した。

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小学校 総合的な学習の時間 30

トを手がかりに,インタビューの仕方やアンケー

トのとり方を振り返り,まずは,西院のお店につ

いて,まちの人にアンケートをとることにした。

何のために(目的),だれに(対象),何を聞くのか(内

容),どのようにアンケートをとるのか(方法)を

意識してアンケートを作成することができた。ま

た,アンケートを集計するときには,以前算数科

で学習した表やグラフを使って整理したり,ラン

キングを確かめたりして,どのようなお店にお客

さんが集まるのかについて,いくつかのアンケー

ト結果を結び付けて考察することができた。

また,お店の人にインタビューを行い,お店の

人の思いや願いも聞くことができた。インタビュ

ーでは,アポイントメントをとるところから始ま

り,質問の内容を考えてインタビューする,イン

タビューの結果を考察するという一連の活動を子

どもたちだけで進めることができた。

図3-26は実際にインタビ

ューしているところである。

友だちと協力し合い,相手

の目を見てしっかりと話を

聞いてメモをとる姿が印象

的であった。

今回のアンケート・イン

タビュー活動を通して,子どもたちは,国語科で

学んだことが実生活,実社会で活用できることを

実感したようである。

ⅱ「総合」で行った言語活動を各教科等に生かす

〔第5学年「西院企画室」〕企画書

国語科「本は友達(提案書)」に生かす

お店の企画を考え,提案するためには,企画書

を書く必要がある。そこで,企画書を書くための

手順,企画書の構成についてみんなで考えていっ

た。指導者は,事前に国語科で学習する単元「本

は友達」の中にある教材「わたしたちの『図書館

改造』提案」を読み,提案書を書くための手順,

構成について把握しておいた。

そして,図3-27のワークシートを基に,グルー

プで企画書を作成していくことにした。

全員で課題を確認し合い,現状をとらえるとこ

ろからスタートした。現状をとらえるために三つ

の活動を行った。はじめに,お店の見学をして,

工夫されていること,気を付けておられること,

お客さんの様子などをつかんだ。次に,お客さん

のニーズを知るためにアンケートをとった。そし

て,お店の人の思いや願いを知るためにインタビ

ューをした。この三つの活動から収集した情報を

グループで整理し,企画書のテーマを考えた。A

グループでは,次のような話合いが行われた。

この後,お店のよいところを順番に挙げていき,

テーマと企画内容が話し合われた。

どのグループも,自分たちが集めた情報をうま

く活用し,お店の課題やよさ,お客さんの意識等

を関連させてテーマを設定していた。企画の内容

図3-26 インタビュ ーする様子

総合的な学習の時間 まいちゃれんじ 5 年

月 日 ( )

-企画書を作成しよう①-

企画書とは,計画の全体を書いたもののことです。

「よりよい西院のまちをつくろう」

お客さんの思い・願い お店の人の思い・願い

企画 予想される企画の効果

チラシ・ポスターを

つくる

5年 組

課題を確かめる

現状をとらえる

アイデアを練る

お客さんの

思い・願い

お店の人の

思い・願い

アンケート・インタビュー アンケート・インタビュー

お店の様子

テーマ

見 学

そのために・・・

イベントを

計画する

ディスプレイを

考える

商品を

開発する

文章で・イラストで。 実際に作ってみる。 イラストで。 イラストで。

見本を作ってみる。

(もけい)

※工夫している点をくわしく説明する。

おすすめポイント

テーマ,お客さんやお店の人の思いや願いに合っているか。

予想される

企画の効果

季節や 行事を参考に

する。

他のお店の取組を参考にす

る。

流行を

参考にする

お客さんの 立場に立って

図3-27 企画書作成のためのワークシート

C1: アンケート結果を整理したグラフを見ると,○○

の名前はたくさんの人に知られているんだけど,

買いに行くと言う人の数が少ないね。

C2: 本当だ。○○は,ほとんどの人が知っているのに,

買いに行くと答えている人は5人しかいないよ。

どうしてかな。

C3: 場所に原因があるんじゃないかな。○○は,駅か

ら離れているから,わかりにくいのかな。

C4: そういえば,少し離れているものね。せっかくお

いしいキムチを売っているのにもったいないね。

C5: 有名なのはキムチだけど,ほかにも韓国・朝鮮の

ラーメンやかっぱえびせんも売っていたよ。

C6: お店の人が韓国・朝鮮の専門店だって言っていた

ものね。

C7: みんな,専門店だなんて思っていないのかもしれ

ないね。もっと○○のいいところを知らせたらお

客さんが来るんじゃないかな。

C8: ほかにどんないいところがあるかな。

Page 33: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 31

としては,商品開発,ポスター,ポップ,レシピ

集,ポイントカードなどが考えられていた。

考えた企画をお店に届ける前に,お互いの企画

を聞いてアドバイスをし合う「企画審査会」を開

いた。図3-28はそのとき

の様子である。お店は違

うが,他のグループの企

画を聞いてアドバイスし

たり,友だちからアドバ

イスをもらったりするこ

とにより,自分たちの企

画を新たな視点で見直すことができればと考えた

ためである。

企画審査会では,「商品開発をするなら,商品

のイメージ図を書くとわかりやすいと思います。」

「ポスターの字をもっと大きく目立たせた方がい

いと思います。」「企画を説明するときには,『~的

な』とか『~感じで』ではなく,もっとはっきり

言い切る方がいいと思います。」など,企画の内容

だけでなく,説明の仕方についてもアドバイスし

合うことができた。

企画審査会の後,グループの時間を設定し,も

らったアドバイスを基に「増やす」「減らす」「変

える」の視点で,よりよい企画になるように企画

を練った。他のグループの企画からヒントをもら

い,魚のおいしい食べ方を紹介しようとレシピを

作ることにしたグループ。アドバイスを基に新商

品の名前を変えたグループ。ポスターを目立たせ

るためにレイアウトを変えたグループ。どのグル

ープも意欲的に活動していた。

企画審査会を開く前は,「自分たちががんばって

考えた企画を評価されるのは嫌だ。」と言っていた

子どもも, 審査会が終わったときには,「友だち

のアドバイスをもとに企画を練り直せてよかった。

お店の人の立場に立ってアドバイスしたら,いい

企画に変わってきたのでよかったと思う。」と感想

を発表していた。今まで,話合いの場面では,相

手の考えに賛成する意見が多く,まちがいを指摘

する意見が出にくかった。しかし,審査会を開い

たことで,友だちの考えにアドバイスすることは

相手を大切にすることにつながることに気付き,

クリティカルに考えることの大切さを実感したよ

うである。

この後,図3-29のように,練り直した企画を持

ってそれぞれのお店を訪問した。事前に友だちを

相手に企画の説明をしたので,自信をもって話す

ことができたようである。一度で通った企画もあ

れば,お店の人から出さ

れた要望を受けて更に練

り直した企画もあった。

数日後には,それぞれ

のグループがお店に持ち

込んだ最終企画を実行し

ていただいた。図3-30は,

ある和菓子店で,子ども

たちが考案した新商品が

お店のガラスケースに並

んでいる様子である。ま

た,その商品を宣伝する

図3-31のようなポスター

も店頭に貼られた。

子どもたちは,家族の

人と一緒に買いに出かけ

たり,商品の売れ行きを尋

ねに出かけたりしていた。

お店の方に聞くと,新商

品は好評で,近くのお料

理屋さんのデザートにも

使われたようである。

この後,自分たちの企画の検証を行い,全校に

向けて報告会を開く予定である。

今回「総合」で取り入れた企画書については,

国語科の単元「本は友達」の中で学習する提案書

に生かしていけるものであると考える。

〔第3学年「アンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」〕

ウェビングマップ

各教科等の学習に生かす

ウェビングマップは,自分の考えを広げるとき

によく使われる手法である。国語科の教科書にも,

イメージを広げたり関係を整理したりするときの

ツールとして登場する。このウェビングマップを

「総合」の「整理・分析」の場面で活用できない

ものかと考えた。

次ページ図3-32は,ウェビングマップを使い,

観察・見学・鑑賞など体験活動で集めた情報をカ

ードに書き出し,グループや学級全体で,一つの

テーマについてまとまりごとに分類していく手順

を示したものである。

このウェビングマップを用いた言語活動を,「ア

ンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」の単元の「整理・

分析」の話合いの場面で繰り返し行うようにした。

次ページ図3-33は,ウェビングマップを使って

交流している様子である。子どもたちは,これま

図3-28 企画審査会の 様子

図3-29 企画を説明す る様子

図3-30 商品開発をし た「和風モチ」

図3-31 お店に貼られ たポスター

Page 34: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 32

でに国語科の単元

「話し合って決めよ

う」の「発表名人に

なるための極意を見

つけよう」で,情報

を書いたカードを出

しながら交流し,同

じ物を書いたカード

を重ねることを経験

していた。そこで,

カードを分類し,ま

とまりごとにタイト

ルをつけて,関係す

る物を線で結び,ウ

ェビングマップを完

成させる活動を子ど

もたちに新しく提案した。図3-34は子どもたちが

作ったウェビングマップである。

はじめは戸惑う子どもも多かったが,話合いの

場面で繰り返し行ったり,指導者も板書をすると

きにウェビングマップの手法を取り入れたりする

ことで,次第にやり方にも慣れ,主体的に交流が

進められるようになった。また,自分たちの作っ

たマップを見て,「衣装のことが少ないから,もっ

と衣装のことを調べたい。」「日本の言葉と言い方

が似ている言葉が五つも見つかったよ。もっと知

りたいな。」などの感想が出された。

話合いの場面でウェビングマップを用いる利点

は,以下の四つである。

この言語活動は,「総合」だけではなく,どの

学習にも取り入れることができる活動である。こ

のようにウェビングマップを使うことで,子ども

たちにとって友だちの考えと比べる,分類する,

関連付けるなどの思考の助けとなるのである。

また,子どもたちにウェビングマップの手法が

定着したため,思わぬ波及効果もあった。社会科

でスーパーマーケットの見学に行ったとき,「種類

ごとに分けられている」「パックにつめられている」

「大きい文字で書いてある」「物の場所を教えてく

れる」の四つの

サービスを見つ

けたことを,ウ

ェビングマップ

を使って図3-35

のようにメモを

する子どもが現

れたことである。

ⅲ各教科等で行う言語活動と「総合」で行う言語

活動を並行させて行う

〔第3学年「アンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」〕

パンフレット交流会

社会科「商店のはたらき」と並行

各教科等の年間計画を照らし合わせてみたとき,

社会科の「商店のはたらき」で調べてわかったこ

とを絵や図,文章などで表現する時期と,「総合」

の「アンニョンハセヨ!韓国・朝鮮」で「まとめ・

表現」をする時期がちょうど同じであった。そこ

で,社会科と「総合」で同じ言語活動をすること

によって,子どもたちに一つの表現方法をしっか

りと身に付けさせたいと考え,「パンフレットを作

り,交流会を開いて発表する」という言語活動を

設定した。

パンフレット作りをするに当たって,どのよう

なことを指導すればよいかを次ページ図3-36のよ

うに整理し,パンフレット作りを進めた。

○ グループや学級で集めた多様で,大量な情報を整

理することができる。

○ 自分たちでカードを操作して分類していくので,

子どもが主体的に活動できる。

○ 友だちの情報と自分の情報を比べながら聞くこと

ができる。

○ 可視化することで,どのような情報が,どれだけ

集められたのかがわかりやすい。

図3-35 子どもが書いた見学メモ

韓国・朝鮮 韓国・朝鮮 アンニョン ハセヨ

ハングル文字

1 2

ビビンバ

チョゴリ チャンゴ

キムチ 韓国のり

韓国・朝鮮

ビビンバ

アンニョン ハセヨ ハングル文字

チョゴリ キムチ 韓国のり

チャンゴ

韓国・朝鮮

食べ物

文字・言葉

着 物

音 楽

ビビンバ

アンニョン ハセヨ ハングル文字

チョゴリ

チャンゴ

キムチ 韓国のり

・事前に,集めた情報を個人でカード(できれば付箋)

に書き出しておく。

※情報は短くキーワードにまとめて書くようにする。

1枚のカードに一つの情報を書く。

1 真ん中に,テーマを書く。

2 テーマの周りにカードを順番に出していく。

(同じ内容のカードがあれば,重ねて置く。)

3 置かれたカードを見て,カードを動かし仲間分けを

する。

4 まとまりごとにタイトルをつけて,線で結ぶ。

5 できたウェビングマップを見て,気付いたこと,課

題を出し合う。

図3-32 ウェビングマップの手順

図3-34 子どもたちが作ったウェビングマップ

図3-33 ウェビングマップを 使って交流する様子

Page 35: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 33

事前に,形や色,レイアウトを工夫している実

物や,以前子どもが作ったものを見せることで,

パンフレットに対するイメージを全員にもたせて

から活動をスタートした。

はじめに,どのようなことを,だれに伝えるの

かを確かめた。社会科では,「スーパーマーケット

にたくさんお客さんが来る『ひみつ』」を学校のみ

んなに伝えることを目的にすることにした。

次に,「ひみつ」として伝えたい内容を整理し

て文章に書いた。今回は,「ひみつ」の数を四つに

限定し,その「ひみつ」を100字程度にまとめるこ

とにした。100字程度にまとめることで,内容が精

選できて,読む人に伝わりやすくなると考えたか

らである。このとき,一文を短くする,大切な言

葉を使う,一つ一つの「ひみつ」に見出しを付け

ることを条件として提示した。見出しは工夫して

付けられたが,100字にまとめるのに子どもたちは

苦戦していたようである。

そして,四つの「ひみつ」の文章や写真,絵,

図のレイアウトを考えた。図3-37のような図を示

したことで,一人一人が工夫してパンフレットを

作ることができた。また,写真や絵,図,表など

にはキャプションも入れるとよいことも知らせた。

子どもたちは,イラストを入れたり,色を工夫

したり,楽しみながら作っていった。最後に出来

上がったパンフレットにキャッチコピーをつけた。

社会科のスーパーマーケットの「ひみつ」パン

フレットを作った後,「総合」の韓国・朝鮮の「み

りょく」パンフレットも作ることになり,同じ手

順で進めていった。社会科でパンフレットを作っ

たばかりの子どもたちは,前回の反省を生かして,

見出しの字を

色を変えたり

して,より見

やすい,工夫

されたパンフ

レットを作っ

ていた。中に

は,これまで

に身に付けた

ウェビングマ

ップを使って

表現している

子どももいた。

そして,そ

のパンフレッ

トを使って交

流会を開いた。どの子どもも自分の作ったパンフ

レットを大切そうに開いて,友だちに見せながら,

図3-38のように「みりょ

く」を発表していた。パ

ンフレットに書いていな

い質問に対しても,今ま

での活動を基に,自分の

言葉で自信をもって答え

る姿が印象的であった。

②各教科等の基盤となる司会力,対話力を育てる

〔第5学年 国語科「活動を報告する文章を書こ

う」・「総合」「西院企画室」ほか〕

主体的な学びを保障するためにも,一人一人の

子どもに司会力,対話力を育成することが大切で

あることは前にも述べた。そのために,学習形態

も一人学び,グループ交流,全体交流など,多様

になるように工夫した。1時間の学習過程も「課題

の確認」「一人学び」「グループ交流」「全体交流」

「振り返り」「まとめ」を基本とし,必ず話合い活

動を取り入れることにした。このとき,できるだ

け子どもが司会・進行を担当し,子どもたちで学

習を進めていけるようにしたいと考えた。そのた

めの支援として,「話し方チェックシート」「聞き

方チェックシート」「話合いマニュアルシート」を

作成した。

次ページ図3-39はチェックシートである。21ペ

ージに示した高学年の話し方・聞き方チェック項

目を基に,「話し方チェックシート」には,話すと

きのポイント「5W1Hを意識する」「順序を意識す

図3-37 パンフレットのレイアウト例

パンフレット作りの手順

・誰に,何を伝えるパンフレットなのかを明らかにする。

・伝えたい内容を「見出し」をつけてカードに書く。

・伝えたい内容一つにつき,一枚のカードを使う。

・優先順位を決める。 3 伝えたい内容を整理して,説明を書く

・パンフレットの形式を考える。

紙の大きさ,二つ折り?三つ折り?観音開き?

・優先順位を考えて,レイアウトを考える。

説明の文章・写真・イラスト・図表などの位置は?

内容 方法 か

・見出しの文字は大きく,色も考えて。

・字のまちがいがないか,確かめる。

2 資料を集める

1 パンフレットをつくる目的を確かめる

5 絵を書いたり,カードをはったりして完成させる

・どんな資料が必要か考える。

・取材をする。

本で調べる。インターネットで調べる。

見学に行く

インタビューする。

アンケートをとる。

4 レイアウトを考える

個人

グループ

学級全体

課題の設定 情報の収集 整理・分析 まとめ・表現

調べて分かったことを整理し,自分の考えをまとめる一つの方法。

ポイント

・相手意識 だれに伝えるのか

・目的意識 何を伝えるのか

・レイアウトの工夫・・・パンフレットの形式(二つ折り,三つ折り,観音開き・・・)

優先順位

文章や図・表・写真の分量(基本,文章 30%,図,表,写真 70%)

(文章は一文を短く,かんたんに。)

・表現の工夫・・・・・・見出しの工夫

字の大きさ,色

・キャッチコピーの工夫・「見てみたい!」と思ってもらえるように。

身の回りに,ユニークなパンフレットがたくさんあります。

子どもたちに見本として見せると,イメージがもてます。

一度,パンフレットを集めてみてください。

画用紙

色鉛筆

(カラーペン)

はさみ・のり

図3-36 パンフレットの学習内容(一部)

【パンフレットの形式の例】

二つおり 三つおり かんのんびらき

ようこそ!

カスターナへ

ひみつが いっぱい

ひみつ2

ひみつ1

ひみつ3

ひみつ4

写真

写真

分かったこと 考えたこと

表紙に,

絵や図を書くと分かり

やすいですよ。 キャッチコピー

お店の名前

【パンフレットのレイアウトの例】

○字の大きさ

太さ

あ あ あ あ ○言葉がと中で,きれないようにしましょう。

れい)

くふう しよう!

開いてみると・・・

なぜ調べたの

か・・・

お店を

のぞいてみよう!

小栗栖小学校 3 年○○○○

・おすすめのパ

ンは,・・・

・おすすめのパン

は,・・・

れい)

自分の名前

図3-38 交流会の様子

Page 36: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 34

る」や話型を,「聞き方チェックシート」には,聞

くときのポイントを加えた。そして,2枚のシート

を両面刷りにし,ラミネート加工をして子どもた

ちに配布した。

指導者の話によると,現在も子どもたちは,こ

のシートを時々取り出しては自分の話し方,聞き

方をチェックしているようである。このように話

し方や聞き方のポイントを示すことで,子どもた

ちは,相手のことを意識して話したり,思考を働

かせて聞いたりできるようになると考える。

また,「話合いマニュアルシート」には,図3-40

のように話合いのプロセスや司会の言葉を示し,

「考えを一つにまとめる話合い」(協議)と「考え

を出し合う話合い」(討論)のマニュアルを両面刷

りにした。そして,話し方,聞き方チェックシー

トと同様,常に使えるようにラミネート加工をし

て司会の子どもに持たせるようにした。「西院企画

室」の学習で初めて使用したが,司会の子どもは,

「話合いマニュアルシート」を見ながら一生懸命

話合いを進めていた。はじめのうちは,シートの

言葉をただ読むだけであっても,回を重ねるうち

にシートの内容を消化して自分の言葉で進められ

るようになっていってくれることを願っている。

現在,子どもたちは,「総合」だけではなく,

国語科や社会科,道徳,学級活動の時間にもこの

シートを活用しているようである。次のような子

どもの姿が見られるようになったと,指導者より

報告を受けた。

このような子どもの姿は,主体的に学ぶ姿であ

る。全ての教科等で話合い活動を行うことで,対

話力,司会力が育まれ,子どもたち一人一人に確

かな学力が付いてくるのである。

第4章 主体的,探究的な学習を充実させる

ために

第1節 研究の成果と課題

(1)各教科等と関連させて行う言語活動による

確かな学び

平成15年12月の前学習指導要領の一部改正によ

り「総合」のねらいに付け加えられた「各教科,

道徳及び特別活動で身に付けた知識や技能等を相

互に関連付け,学習や生活において生かし,それ

らが総合的に働くようにすること」(60)が,現行の

学習指導要領では目標から外され,配慮事項とし

て位置付けられるにとどまった。しかし,「総合」

の時間数が大幅に削減されたこと,国語科のみな

らず,あらゆる教科で言語活動の充実が強調され

たことから考えると,「各教科等で身に付けた知識

や技能等を相互に関連付け,総合的に働く力は,

■ しせいをよくして

■ 話している人の顔を見て

■ 友達の考えを大切にして うなずきながら

■ 自分の考えと比べながら 同じ・似ている・少し違う ○○は同じだけれど,○○が少し違う

■ 自分の立場をはっきりさせながら 賛成・反対 なっとく ここが分からない くわしく知りたい

■ 友達のすばらしいところを 見つけながら

なるほど!

つまり

たとえば

なぜ?

『なるほど,~なのだな。』 『なぜ,そう考えたのかな。』

『つまり,~ということだな。』 『たとえば,どんなことかな。』

『○○については分かったけれど,○○についてもう一度ききたいな』

■ みんなの方を向いて ■ 大きな声で,

最後まではっきりと ■ 理由・根拠をはっきりさせて

自分の経験から 友達の意見から テキストから

(文章・さし絵・グラフ…) ■ 分かりやすく,工夫して

ショー アンド テル 黒板や資料を使って 具体例をあげながら

W Hを 意識して

「わたしは~だと思います。なぜかと言うと~だからです。」

「理由は○つあります。一つ目は, 二つ目は,」

「○○さんの考えを聞いて,~だということが分かりました。」

「○○さんの考えもいいのですが,わたしは~だと思います。

なぜなら・・・」

い つ

ど こ で

だ れ が

何 を

な ぜ

どのように

はじめに・まず

次 に

そ し て

だ か ら

順序を意識して

・国語の単元「自分の考えをまとめて,討論会をしよう」

において,意見が出なくなって話合いが停滞してしま

ったとき,話合いをなんとか進めようとシートを取り

出して調べる姿

・社会科や道徳の時間の全体交流の場面で,自分の意見

を一方的に話すのではなく,友だちの意見を受けて「○

○さんと似ているのですが…」「○○さんとちょっと

違って…」とつなげて話す姿

・自分の考えを話した後,「私の考えと似ている考えを

聞かせてください。」と意見をうながす姿

図3-40 話合いマニュアルシート(高学年用) ※イラストは,出町書房のものを使用

はじめのあいさつ

立つ

「これからグループで交流を始めます。司会をする○○です。よろしくお願いします。」

「記録をする○○です。よろしくお願いします。」

「タイムキーパーの○○です。よろしくお願いします。」 礼をしてすわる

交流する内容・時間の確認

これから,「 」について交流し,考えを一つにまとめたいと思います。

時間は○分です。

□分で話し合い,△分でまとめをしたいと思います。

・反対の考えの人はいませんか。

・考えが 2 つに分かれていますが,どちらの考えの方がいいでしょうか。

・○○さんと□□さんの考えを合わせて,・・・・・というようにしてもいいですか。

・まだ考えを言っていない人は積極的に発表してください。

まとめ

私たちのグループでは,・・・・という考えにまとまりました。いいですか。

終わりのあいさつ

立つ

「これで,グループ交流を終わります。」 礼をしてすわる

もし,時間があまったら・・・

今日の交流についてお互いの評価をする。

目を見て笑顔で話せたかな?

司会はわかりやすく進行できたかな?

わかりやすく考えを発表していたのはだれかな?

なぜそう考えたのですか?

たとえばどんなことですか?

○○さんが言いたいのは,

・・・ということですね。

図3-39 話し方,聞き方チェックシート(高学年用) ※イラストは,出町書房のものを使用

Page 37: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 35

全ての子どもに付けていかなければならない大切

な力である」と考える。そこで,言語活動の充実

という視点から研究を進めてきた。

村川が,各教科等と「総合」の関係を「引き出

し」に例えている(61)。教科学習では,教師の計

画的な指導の下に知識や技能,体験の「引き出し」

を作る。「総合」は,教科学習で身に付けた知識や

技能,体験の「引き出し」の中から関連するもの

を取り出し,つなげて活用するというのである。

この考えは,「総合」の探究のプロセスである,課

題を設定したり,課題を解決するために情報を収

集したり,集めた情報を整理・分析したり,まと

めたり,それを表現して発信したりする過程にお

いて,各教科等で身に付けた言語能力の中から必

要な能力を取り出して総合的に活用することが重

要であるという筆者の考えと共通するものである。

①成果

今回の実践を通して,筆者は改めてこの思いを

強くすることができた。各教科等で個々に言語活

動を行うよりも,指導者が教科の枠を超え,相互

の関連を意識して一貫した言語活動を行う方が,

子どもたちにより確かな力を付けることができる

と確信したからである。これは,第3学年の「発

表名人10か条」「ウェビングマップ」「パンフレッ

ト交流会」,第5学年の「活動報告書」「アンケー

ト・インタビュー」などの実践のときの,子ども

が一生懸命活動する様子からも明らかである。

国語科で行った言語活動を「総合」で発展させ

た第3学年の「発表名人10か条」の実践を例に考

えてみる。国語科で作成した「発表名人10か条」

を活用して「総合」の発表の練習を行うことは,

子どもたちにプレゼンテーション能力を付けるの

に有効であった。子どもにとって「発表する」と

いう活動に,国語科,「総合」という区別はない。

ただ自分の考えを相手にわかりやすく伝えたいと

いう思いがあるだけである。指導者が,教科の枠

を超え,国語科で身に付けた知識・技能を「総合」

でも活用することで,子どもたちは戸惑うことな

く一貫した言語活動を行うことができた。国語科

でも「総合」でも同じ「発表名人10か条」を基に

一貫した発表練習を行うことで,子どもたちにプ

レゼンテーション能力が育成されていった。物理

的な点においても,改めて発表のポイントを指導

する時間を設定しなくても,子どもたちが主体的

に練習を進めることができたため,短時間で発表

の練習を行うことができた。また,パンフレット

作りや活動報告書を書く活動においても,前回の

反省点を生かして,子どもたちが更に工夫するよ

うになったり,新たに身に付けた方法を使って表

現するようになったりした。そして何よりも,国

語科で学んだことを「総合」で活用することで,

国語科で学んだことが実生活,実社会の中で役立

つことを子ども自身が実感することもできた。つ

まり,国語科と「総合」の言語活動とを関連させ

て行う方が,子どもたちにとって充実した活動と

なったのである。今回,子どもたちがメタ認知し

た発表の仕方は,これからの学習においても大い

に役立つものとなろう。

ほかに,社会科の学習と並行させて行った「パ

ンフレット交流会」の実践においても同様の効果

があった。社会科でていねいにパンフレット作り

について学んだことは,「総合」で韓国・朝鮮の「み

りょく」を紹介するパンフレット作りの際に有効

であった。パンフレット作りの手順が身に付いて

いたことでスムーズに活動に入ることができたの

である。また,前

回のパンフレット

作りの経験を生か

し,更に工夫して

パンフレットを作

ることができた。

図4-1の社会科のパ

ンフレットと図4-2

の「総合」のパン

フレットは同じ子

どもが作ったもの

である。この2枚を

比較してみると,

「総合」のパンフ

レットの方が紹介

の文章が洗練され,

「伝えたいこと」が

より明確であったり,絵や写真を効果的に使って

いたり,レイアウトが工夫されていたりと,より

よいパンフレットに仕上がっていることがわかる。

今回の学習で,子どもたちは,学んだことをま

とめるための方法としてパンフレットが効果的で

あることをメタ認知した。これからの学習や日常

の生活で学んだことをまとめようとするとき,子

どもたちには,パンフレットを使って表現するこ

とが一つの選択肢となるであろう。今回,子ども

たちはパンフレット作りのポイントを身に付けた

図4-1 「ようこそ!ひみつが いっぱい○○○○○」 パンフレット

図4-2 「私も着たよ きれい なチマチョゴリ」パン フレット

Page 38: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 36

わけであるが,相手意識・目的意識をもつ,説明

の文章は簡潔に一文を短く・100字程度で書く,見

出しを工夫するなどのポイントは,新聞やポスタ

ーなど他の表現の方法にも該当するものである。

パンフレット作りを通して身に付けた表現のポイ

ントは,今後,ほかの方法で表現するときにも役

立つのである。つまり,学んだことをパンフレッ

トにして紹介するという言語活動を同時期に繰り

返し行ったことで,子どもたちには,パンフレッ

ト作りの方法が定着したと同時に,表現方法も身

に付いたのである。

②課題

ここで考えておかなければならないことは,村

川のいう「引き出し」をいかに系統的に増やして

いくかということである。

一つの単元の中に新しい言語活動をたくさん設

定すると,確かに一度に「引き出し」を増やすこ

とができる。しかし,単元の目標の実現や内容の

習得がおろそかになったり,計画よりも時間がか

かったりという弊害も生まれる。実際,今回の実

践においても,新しい言語活動を数多く設定した

ために,45分間の授業が伸びてしまったというこ

とが多々あった。

第1章でも述べたが,言語活動はあくまで手だ

てであって,言語活動の充実が目的ではないので

ある。決して,はじめに言語活動ありきではない。

よりよい目標の実現や内容の習得に向けて,6年間

の中で系統立てて言語能力を育成していかなけれ

ばならない。例えば,対話力や司会力を身に付け

るために,今回「話し方・聞き方チェックシート」

「話合いマニュアルシート」を中学年用と高学年

用を作成したように,各学年の発達段階に応じて

系統的に指導することが求められる。指導者が子

どもたちの既習の活動を把握して,その基盤の上

に新しい言語活動を設定することが大切となる。

今回の実践の中で,各教科等と関連させて行っ

た言語活動を一覧にまとめたものが表4-1である。

この表を見ると,関連する教科に偏りがみられる

ことも課題として挙げられる。

言語活動を行う上で核となるのが国語科である

ため,国語科と関連する言語活動が多くなってし

まったのは当然のことである。しかし,理科や体

育科,あるいは道徳や学級活動における言語活動

との関連についても考えていかなければならない

と考えている。全ての教科等と「総合」の言語活

動をうまく関連させ,子どもたちに「生きる力」

とそれぞれの教科等で身に付けるべき学力の両方

をバランスよく育てていくことが求められる。

(2)探究の学習過程に位置付けた言語活動によ

る充実した学び

学習指導要領に示されたねらいの中に,「横断

的・総合的な学習や探究的な学習を通して」(62)

という文言がある。この「横断的・総合的な学習」

は「総合」の学習内容を,「探究的な学習」は「総

合」の学習方法をさしている。そして,この二つ

をつなぐ助詞の「や」は並列助詞であり,orでは

なくandの意味である。つまり,「『総合』は,学習

内容が横断的・総合的な学習内容かつ探究的な学

習方法でなければならない」のである。

探究的な学習とは,問題解決的な活動が発展的

に繰り返されていく学習活動のことであり,一つ

の課題を解決することでまた新たな課題が生まれ,

その課題に向かって粘り強く解決していくという

活動が繰り返されるということである。この探究

的な学習が行われることが「総合」の絶対条件で

あるならば,探究的な学習のスタイルが「総合」

において実現されなければならない。

①成果

今回,探究的な学習を実現するために,探究の

学習過程「課題の設定」「情報の収集」「整理・分

析」「まとめ・表現」の中に意図的に言語活動を設

定したことは有効であった。協同的な学びを設定

したり,体験活動を充実させたり,掲示物を準備

したりといったことも有効であったが,何より,

適切な言語活動をそれぞれの学習過程に設定した

ことで,子どもたちの学びが深まり,学習が充実

していったのである。これは,単元を通して実践

教科等 活動の内容(学 年) 総合的な学習の時間

学年 単 元 探究の プロセス 言語活動

国語科

話すこと・聞くこと(3・4) 5 「西院企画室」 情報の収集

インタビュー

アンケート

話すこと・聞くこと(3) 3 「生活向上」 まとめ・表現 発表名人 10か条

書くこと(5)

「活動報告書」 5

「スチューデント

シティ」 まとめ・表現 活動報告書

書くこと(5)

「提案書」 5 「西院企画室」 まとめ・表現 企画書

社会科

自分たちが収集した資料を使

って説明を加える。図や表に整

理したものを使って自分の考

えを発表する活動

3 「アンニョンハセ

ヨ!韓国・朝鮮」 まとめ・表現 パンフレット交流

5 「西院企画室」 まとめ・表現 企画書

観察・調査・見学などの体験的

活動 5 「西院企画室」 情報の収集 店の調査活動

算数科

図,表,グラフなどの数学的表

現の方法を用いて整理・分析す

る活動

5 「西院企画室」 整理・分析 アンケート集計

音楽科

(音楽,絵,立体を通して情報

を収集するとき,音楽科,図画

工作科で培った鑑賞能力が基

盤)

3 「アンニョンハセ

ヨ!韓国・朝鮮」 情報の収集

韓国・朝鮮の音楽を

聴こう

図画工作科色,レイアウトの工夫

多様な表現方法を身に付ける

3 「アンニョンハセ

ヨ!韓国・朝鮮」 まとめ・表現パンフレット作り

5 「西院企画室」 ポスター作りなど

家庭科 体験をとおして身に付けた言

葉について自分の言葉で語る 3 「アンニョンハセ

ヨ!韓国・朝鮮」 まとめ・表現

「みりょく」を自分

の言葉で語る

表4-1 各教科等と関連させて行った言語活動一覧

Page 39: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 37

した第3学年の単元「アンニョンハセヨ!韓国・

朝鮮」の学習での子どもたちの意識の変容からも

明らかである。以下にその変容について述べる。

「情報の収集」では,情報を収集するための体

験活動のとき「メモをする」活動を,後に「学ん

だことや感想を書く」という言語活動を設定した。

これにより,メモをする力や記述力が身に付くだ

けでなく,韓国・朝鮮についての新しい発見や「み

りょく」を落とさず収集することができた。情報

を数多く収集できたことで,次の「整理・分析」

の活動が充実したものになったことは言うまでも

ない。

「整理・分析」「課題の設定」では,必ず,グ

ループや全体で交流する活動と収集した情報をウ

ェビングマップで整理する活動を合わせて設定し

た。これにより,対話力が身に付くだけでなく,

自分たちの集めた韓国・朝鮮についての知識や「み

りょく」をわかりやすく整理し,分析することが

できた。今回は,特に,ウェビングマップという

手法を取り入れたことで,整理した情報を可視化

することができ,どのような情報が,どれだけ収

集できたかがわかりやすく,新たに知りたいこと,

やってみたいことを明らかにすることができた。

そのため,活動を重ねるごとに,子どもたちの韓

国・朝鮮に対する意識が「なるほど,すごいな。」

から,「やってみたいな。」「もっと知りたい。」「仲

良くなりたい。」へと親しみをもったものに変容し

ていった。また,グループや全体で交流すること

で,自分とは違った「みりょく」を知り,その「み

りょく」を確かめようという新たな課題が生まれ,

活動が充実していった。

「まとめ・表現」では,パンフレットにまとめ,

交流会を開いて伝えるという言語活動を設定した。

これにより,記述力や説明力,プレゼンテーショ

ン力が身に付くだけでなく,自分が見つけた「み

りょく」を相手にわかりやすく伝えることができ

た。また,交流会を開いたことで,他のグループ

の活動にも興味をもち,何人もの子どもから「自

分の見つけた『みりょく』以外の『みりょく』も

確かめたい。」「もっと言葉を覚えたい。」「この勉

強は終わるけれど,韓国・朝鮮についてこれから

も調べていきたい。」という感想が出された。この

ように,学習が終わっても子どもたちの追究しよ

うという思いが続くというのは,まさに探究的な

学びになっているといえるのではないだろうか。

今回,単元を見通して言語活動を位置付けるた

めに,23ページ図3-1のように単元構想図に探究の

学習過程及び言語活動関連図を加えた新しい単元

構想図を提案した。このことも,探究的な学習を

実現する上で有効であった。一覧にすることで単

元のゴールを指導者がイメージでき,ゴールに向

かい言語活動を探究の学習過程の中に位置付け,

それぞれのプロセスにおいてどのような言語活動

を設定すれば,より効果的かを意識することがで

きたからである。指導者から,この新しい図を基

に学習を進めることで,「単元を見通すことができ

た。」「言語活動の全体のバランス,いつ,どのよ

うな言語活動を何のために行うのかが意識でき

た。」「この言語活動でどのような力が身に付くの

か考えることができた。」という感想をいただいた。

②課題

一方,「この図が大切であることもわかるし,

作ると便利なこともわかるが,一から作るとなる

と大変である。」という感想も聞かれた。これが学

校現場の正直な思いであろう。単元構想図を作成

するだけでもかなりの時間がかかる。その上,探

究の学習過程に合わせて言語活動を設定するとな

ると,かかる時間はそれ以上である。

この図が学校現場で活用されるようになるため

には,もっと簡単に図が作成できるようにするこ

とが求められる。そのためには,「課題の設定」「情

報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の各過

程でどのような言語活動を行えばよいのかを一覧

にし,その一覧を基に言語活動が選択できるよう

にするとよいのではないだろうか。一覧表にはで

きるだけ多くの言語活動を集め,子どもの実態,

単元の目標,内容に合わせて,より効果的な言語

活動が選択できるようにすることが大切である。

第2節 主体的,探究的な学習の具現化

(1)主体的な学習をめざして

子ども主体の学習が成立するためには,次ペー

ジ図4-3に示したように,子どもに「各教科等の学

習で培う言語能力」「各教科等で身に付けた知識・

技能」「学習に対する意欲」の三つの要素がなくて

はならない。「各教科等の学習で培う言語能力」は,

話す,聞く,話し合う,書く,読むといった全て

の教科等で行われる言語活動によって身に付いて

いく。「各教科等で身に付けた知識・技能」「学習

に対する意欲」は,有用感を感じることで身に付

いていく。子ども自身の興味・関心に基づく課題

Page 40: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 38

や身近な地域の課題を扱う「総合」では有用感を

実感しやすい。実社会,実生活に関する問題を解

決する過程で,各教科等で身に付けた知識・技能

を活用することを通して,子どもは各教科等での

学びの有用性を実感するのである。例えば,第3

学年の子どもが学習したことを全校の前で発信す

る。そのとき,「わかりやすかったよ。」「大きい声

でしっかり発表できたね。」と多くの人から言葉を

かけられることで,国語科での学習が役に立った

ことや発表の仕方が身に付いたことを実感するの

である。そして,発表の仕方をメタ認知すると同

時に,自信が生まれ,主体的に活用できるように

なっていくのである。

ここで,指導者が言語活動の関連を意識するこ

とで,教科の力が「総合」のどの部分で生かされ

ているかを子どもたちがメタ認知することができ

るための二つのステップを示しておきたい。

◇ステップ1[単元構想・単元計画で把握する]

1各教科等の年間指導計画と照らし合わせて,

いつ,どのような言語活動を行うのかを把握

する。

2「総合」の単元において,どのような言語活

動を行うのかを考える。

3各教科等と「総合」の言語活動の関連の可能

性を検討する。

このとき,教科の枠を超えるだけではなく学年

の枠も超えて関連を意識したい。そのためには,

その言語活動は,いつ(何年生),どこで(教科,単

元),どのように学習したものなのか(内容)をし

っかりと把握しておくことが大切である。現在子

どもたちがどのような知識,技能を身に付けてい

るのかを指導者が把握することで,子どもたち自

身にも自覚させることができる。そして,今回は

できなかったことであるが,それらは小学校6年間

だけではなく,小,中学校の9年間という大きなく

くりの中で行うことができようになることが望ま

しい。学習指導要領解説国語編には巻末に付録4

として,9年間を見通した各学年の目標及び内容の

系統表が載せられているが,全ての教科等で9年間

を見通し,単元を構想することが大切なのである。

◇ステップ2[教師の適切な支援で気付かせる]

学年,教科の枠を超えて言語活動を設定するた

め,指導計画や教科書を基に,学習内容を把握し

ておくことで,指導者が子どもたちに適切な言葉

かけができる。例えば,「4年生のとき算数で学習

したグラフを使うと,集めた資料がわかりやすく

整理できますね。」と示唆したり,「なるほど,国

語でみんながつくった『発表名人10か条』を使っ

て練習すると,上手に発表できるようになります

ね。」と子どもの行動を意味付け,周りに広げたり

することで,各教科等の学習が「総合」で活用で

きることを子どもに気付かせることができるので

ある。

また,「みなさんの『生活向上』の発表が上手

だったと他学年の先生がほめてくださっていまし

た。大事な言葉を大きくゆっくり言ったり,動作

を入れたりして発表していたので,とてもわかり

やすかったそうです。国語で作った『発表名人10

か条』は「総合」でも大活躍ですね。これからも

発表するときに使うといいですね。」などと,活動

の後,具体的にどこが,どのようによかったかを

意味付けることで,子どもたちに自己肯定感が育

まれるのと同時に,教科の学習で身に付けた知識

や技能が具体的な場面で役立つことにも気付かせ

ることができる。

このように,指導者の適切な支援によって子ど

もたちは自分の学びをメタ認知することができる。

そして,そのメタ認知が主体的な学びを実現する

ことになるのである。

(2)探究的な学習をめざして

探究的な学習が実現することで,課題発見力,

課題追究力,コミュニケーション能力,プレゼン

テーション能力などの力が育成されるだけではな

く,主体的な学びが成立する上で大切となる有用

感,学習に対する意欲も高まる。そのためには,

どのような手順で「総合」の単元を構想すればよ

いのかについて整理しておきたい。

次ページ図4-4に示したように,まず,各学校で

作成されている「総合」の全体計画に示された「目

標及び内容,育てようとする資質や能力及び態度,

図4-3 主体的な学習の成立条件

メタ認知 自己肯定感

学習形態の工夫

話 す

聞 く

話し合う

読 む

書 く

子ども主体の学習

各教科等の学習で培う言語能力

各教科等で身に付けた 知識・技能

単元構想・単元計画 教師の適切な支

有用感

学習に対する意欲

言語活動

自己肯定感 メ タ 認 知

Page 41: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 39

指導方法,評価の計画」や「指導計画」,「地域や

学校の特性」「子どもの実態及びめざす子ども像」

を基に,この単元で付けたい力,目標,学習内容

を明確にする。

そして,それらを基に単元を構想する。このと

き四つの点に留意する。一つは,探究のプロセス

「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まと

め・表現」の四つの過程で,問題解決的な活動が

発展的に繰り返されていくようにすることである。

次に,協同的な学びとなるように,友だちや地域

の人や学習に関係のある大人と関わり合うことの

できる場面を設定することである。また,実際に

見る,聞く,やってみるなどの体験活動を設定す

ることも大切である。意味ある体験を意図的に重

ねることで,子どもの学びを豊かにすることがで

きる。そして,体験活動を行う際には,必ず,メ

モをする,感想を書く,感想を交流するなどの言

語活動を体験活動とつなげて設定することも大切

となってくる。

最後に,構想した単元の中の「課題の設定」「情

報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」の各過

程に言語活動を位置付ける。ここで忘れてはなら

ないのは,言語活動を行うのが目的ではないとい

うことである。言語活動を行うことで,子どもた

ちが,より充実した探究的な学習が行えるように

するのである。そのためには,各教科等との関連

を図ることが大切となる。そのとき,既に身に付

けている力は何なのか,その活動はいつ(何年生),

どこで(教科等,単元),どのように学んでいるの

かを確かめ,この単元ではどのように提示し,ど

のように展開するのかを考えることが求められる。

そして同時に,この単元で付けたい新しい力は何

なのか,新たに行う言語活動は,他教科等の言語

活動とどのような関連があるのかを,内容と能力

の面から整理しておくことも求められる。

教科等において言語活動を充実し,確かな言語

能力が育成されてこそ,「総合」でその能力を活用

することができるのである。

探究的な学習を実現し,子どもたちの学びをよ

り充実させ,一人一人の子どもに「生きる力」を

育んでいくことが大切である。

(60) 前掲(2) p.3

(61) 村川雅弘「総合学習・引き出し論」『学校図書館第594号』

全国学校図書館協議会 2000.4 pp..56~57

(62) 前掲(3) p.110

おわりに

井上の著書『教師のプライド』に次のような一

節がある。「教育は,新しい時代の子どもを創り出

す仕事である。しかも,将来子どもたちが社会の

中核となって活躍する何十年後かに役立つものを

提供するのである。教育は,未来からやってくる。

だから,教師は,子どもたちに未来への贈り物を

しなければならない」(63)

新しい学習指導要領が小学校において完全実施

となった今年度,子どもたちに「生きる力」を育

むため,言語活動の充実という視点から,主体的,

探究的な「総合」の実現をめざし研究を進めた。

「生きる力」は,教えられて身に付くものでは

ない。だからといって,放っておいて身に付くも

のでもない。また,「生きる力」は「総合」だけで

育まれるものでもない。子どもが「知りたい」「学

びたい」「伝えたい」と思い,主体的に学習に向か

うとき,初めて「生きる力」が育まれていく。だ

からこそ,それぞれの教科等での言語活動を充実

させ,互いに関連し合うことが大切なのである。

いま,目の前にいる子どもたちが,10年後,20

年後に社会で生き生きと活動する姿を思い描き,

一人一人の子どもが主体的に学ぶ姿をめざし,今

後も研究を進めていきたい。

最後に,本研究の趣旨を理解し,実践授業に御

協力いただいた,京都市立西院小学校及び京都市

立小栗栖小学校の研究協力員の先生,教職員の皆

様に,心から感謝の意を表したい。

(63) 井上一郎『教師のプライド』東洋館出版社 2009.8 p.16

付けたい力

単元の目標

学習内容

を明確にする

全体計画

子どもの実態

めざす子ども像

指導計画

単元を構想する

・探究のプロセス

・協同的な学び

・体験活動

・言語活動

地 域や 学校の特性

探究のプロセスに言

語活動を位置付ける

「課題の設定」

「情報の収集」

「整理・分析」

「まとめ・表現」

各教科等

における

言語活動

図4-4 単元構想に言語活動を位置付け探究的な学習を

実現するための手順

Page 42: 主体的な学びを支える 総合的な学習の時間における言語能力の育成 · 総合的な学習の時間における言語能力の育成 -探究的な学習を実現する言語活動の構想-

小学校 総合的な学習の時間 40

[付表1]国語科 第3学年と第5学年の教科書に おける言語活動

第3学年 国 第5学年○国語辞典

○事典

○図鑑

○物語

○説明文

(科学読み物)

○詩

テキスト

○国語辞典

○漢字辞典

○新聞

○物語

○説明文

○伝記

○詩

○調べるた

めに読む

○予想して読む

○比べて読む

○想像を広

げて読む

○結び付け

て読む

○自分ごとと

して読む

○音読する

○かんばん

○報告

(出来事・調査)

○説明

(本・出来事・

活動・様子)

○引用

○手紙

(お礼)

○日記

○物語

○感想文

○調査報告文

(調査・文献)

○紹介文

○かるた

○推敲

○スピーチ

○交流会

○詩集

読書・表現活動

○調べるた

めに読む

○予想して

読む

○比べて読む

○想像を広

げて読む

○関連付け

て読む

○自分ごとと

して読む

○音読する

○関係図

○メモ

○説明

(様子・理由)

○インタビュー

○資料を提示

して話す

○報告

○引用

○要約

○意見文

○体験報告文

○説明文

○物語

○感想文

○活動報告文

○推薦文

○提案書

○推敲

○スピーチ

○朗読

○討論

[付表2]社会科 第3学年と第5学年の教科書に

おける言語活動

[付表3]算数科 第3学年と第5学年の教科書に

おける言語活動 第3学年 算 第5学年

○文章

○日記

○お話

○図

○グラフ

○表

テキスト

○文章

○図

○パンフレット

○広告・チラシ

○グラフ

○表

○予想して読む

○確かめなが

ら読む

○比べて読む

○感想

○計算のしか

たの説明

○求め方の説明

○理由の説明

○考え方の説明

○間違いの説明

○お話づくり

○問題づくり

○グラフに表す

○表に表す

○発表

読書・表現活動

○予想して

読む

○確かめな

がら読む

○比べて読む

○感想

○表に表す

○観察・記録

○問題づくり

○求め方の

説明

○考え方の

説明

○かき方の

説明

○計算のしか

たの説明

○比べ方の

説明

○調べ方の

説明

○見つけ方

の説明

○間違いの

説明

○同じにな

る説明

○理由の説明

○関係の説明

○発表

[付表4]理科 第3学年と第5学年の教科書に おける言語活動

第3学年 社 第5学年○地図

○絵地図

○航空写真

○写真

○ガイドブック

○パンフレット

○チラシ・広告

○インターネット

○ウエブサイト

○国語辞典 テキスト

○地図

○地球儀

○立体地形図

○写真

○ビデオ

○統計資

(表・グラ

フ・図)

○パンフレット

○カタログ

○チラシ

○新聞

○インタビュー

○ホームページ

○手紙

○電子メール

○予想して読む

○比べて読む

○関連付けな

がら読む

○白地図にま

とめる

○手紙

(小見出し)

○アンケート

○インタビュー

(質問カード)

○見学メモ

○紹介カード

○観察・記録

(お客さんカ

ード・お店や

さんカード)

(メモ)

○グラフにま

とめる

○表にまとめる

○3コマまんが

○説明

○レポート

○キャッチコピー

○紹介地図

○パンフレット

○ポスター

○仕事マップ

○年表

○新聞

(キャプシ

ョン)

○郷土カルタ

○紹介

○カレンダー

(こよみ)

読書・表現活動

○予想して

読む

○比べて読む

○関連付け

て読む

○白地図に

まとめる

○ノートに

まとめる

○クイズの

問題作り

○見学・記録

○感想文

○説明

○キャッチコピー

○リーフレット

○事典

○農作業暦

○摸式図

○年表

○紹介文

○提案する

○パンフレット

○新聞

○絵コンテ

(テレビ番

組作り)

○ホームペ

ージ作り

○作品

第3学年 理 第5学年○図鑑

○インターネット

○実験結果

○自然事象

(植物・昆虫

の成長) テキスト

○教科書

○図鑑

○インターネット

○参考書

○ビデオ

○実験結果

○気象情報

○自然事象

(天気,植物・

メダカ・人の

成長)

○比べて読む

○関係付けて

読む

○共通点・差異

点を見つけな

がら読む

○観察・記録

○観察カード

○実験・記録

○考察

○グラフに表す

○表に表す

○紹介・説明

○育ち方説明

○理由説明

○図鑑作り

○おもちゃ作り

○レポート

○ポスター

○発表

読書・表現活動

○比べて読む

○関係付け

て読む

○共通点・差

異 点 を 見

つ け な が

ら読む

○条件に着

目して読む

○予想・仮説

○観察・記録

○実験・記録

○調べたこと

をまとめる

○グラフに

表す

○表に表す

○考察

○理由説明

○育ち方・変

化の説明

○はたらき

の説明

○共通点の

説明

○考え方・方

法の説明

○おもちゃ

作り

○レポート

○ポスター

○発表

注) で囲んである言語活動は,単元を貫く言語活動 を示している。

「国語 三上 わかば」「国語 三下 あおぞら」 「国語 五 銀河」光村図書出版株式会社 2011.2

注)第3学年においては副読本の「わたしたちの京都」に示された言語活動も含む。 で囲んである言語活動は,「学習のまとめ」で行う言語活動を示している。「新しい社会」3・4上,5上,5下 東京書籍株式会社 2011.2 「平成23年度版 わたしたちの京都」3・44年上 2011.4

注)「わくわく算数」3上,3下,5上,5下 株式会社新興出版社啓林館 2011.2

注)「たのしい理科」3年,5年-1,5年-2 大日本図書株式会社 2011.2