スズキ株式会社 オートマチック・トランスミッションの構造・機...
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ス ズ キ 株 式 会 社
通称名 車 両 型 式 トランスミッション型式 エンジン型式 適 用 時 期 出 典 資 料
ワゴンR DBA-MH23SCBA-MH23S JF012E K6A 2008.9~ 新型車解説書(40-70K00)
整備編 (42-70K00)
オートマチック・トランスミッションの構造・機能及び故障診断
1 概 要
・ジヤトコ製JF012E型 電子制御CVTを採用した。CVTは走行条件に応じて低速域から高速域まで連続的に無段階で変速比を変化させる。これにより従来のA/Tと比べ変速ショックがないスムーズな走行を可能とした。・変速機構は,スチール・ベルト&プーリ(プライマリ・プーリ,セカンダリ・プーリ),プラネタリ・ギヤ・ユニット,湿式多板式クラッチ,湿式多板式ブレーキがそれぞれ1組ずつで構成されている。・オイル・ポンプはチェーンを介して駆動することにより入力軸とオフセットした位置への配置を可能とし,CVTのコンパクト化を実現した。なお,オイル・ポンプは容積効率の高い2ギヤ配列の外接ギヤ・ポンプを採用した。・トルク・コンバータを採用し,発進トルクの向上を図ると共に,トルク・コンバータ特有のクリープ現象により従来のA/T仕様から乗り換えた場合の違和感を低減させた。なお,トルク・コンバータはロックアップ機構付きとし,燃費の向上を図った。・CVTコントローラはECMと別体とし,制御データの通信にCAN通信を採用した。なお,CAN通信によるエンジン制御とCVT制御の協調制御により,車両の状態に合う優れた変速特性と低燃費を両立させた。・4WD仕様はトランスファと別体となっているため,CVT本体の構造は2WD仕様・4WD仕様共通である。(ただし,デファレンシャル部分は異なる。)・シフト・ポジションはマニュアル・モード非装備車がP,R,N,D,Lの5ポジション,マニュアル・モード装備車はP,R,N,Dの4ポジションに加えMレンジ(マニュアル・モード)を採用し,シフト・インジケータはコンビネーション・メータ中央部に配置した液晶ディスプレイにより表示し,視認性を向上した。なお,Dレンジ時でもパドル・シフト・スイッチを操作することで一時的マニュアル・モードに切り替わる。・マニュアル・モード装備車に,ステアリング・ホイールから手を離すことなくシフト・アップ/シフト・ダウンが可能なパドル・シフト・スイッチを採用した。なお,パドル・シフト・スイッチ(+)(シフト・アップ)がステアリング・ホイール右側,パドル・シフト・スイッチ(-)(シフト・ダウン)がステアリング・ホイール左側に配置した。・マニュアル・モードでは,走行中にパドル・シフト・スイッチ(+)(シフト・アップ)又は,パドル・シフト・スイッチ(-)(シフト・ダウン)を手前に引いて操作することにより,あらかじめ設定された1~7速の固定プーリ比を選択することが可能である。なお選択されているマニュアル・モード・ポジションはコンビネーション・メータの液晶ディスプレイに表示される。・マニュアル・モード非装備車に,S(スポーツ)モードを採用した。Sモード時は通常のDレンジより低めの変速比となり,降坂時に軽いエンジン・ブレーキ,登坂時に高めのエンジン回転を使用することにより登降
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坂に適した走行を可能とした。なお,Sモード・スイッチはモーメンタリ式とし,セレクト・レバーに装着した。
2 構造・機能
1) 構成部品の配置(図Ⅰ-1,2,3)
図Ⅰ-1 構成部品の配置
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図Ⅰ-2 システム・ブロック
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図Ⅰ-3 断面図
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2) 構成部品の構造・機能
⑴ プライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリ(図Ⅰ-4)
プライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリには,それぞれ傾斜面をもつシャフト(固定円錐面)と可動シーブ(軸方向に移動可能な可動円錐面)で構成されており,可動シーブの背面には油圧室(ピストン)が設けられている。可動シーブは,油圧室(ピストン)で発生する圧力によりシャフトの軸上をボール・スプラインを介してしゅう動し,プーリの溝幅を変える働きをしている。プライマリ・プーリは,可動シーブを油圧により軸方向に移動させることでプーリ溝の幅を変化させプーリ比(変速比)を無段階に可変制御している。一方,セカンダリ・プーリは可動シーブを油圧により軸方向に移動させることで動力伝達に必要なスチール・ベルトの張力を制御している。
図Ⅰ-4 プライマリ・プーリ及びセカンダリ・プーリ
⑵ スチール・ベルト(図Ⅰ-5)
スチール・ベルトは,多数のエレメントと積層されたスチール・バンド2本で構成されており,一般のゴム・ベルトなどが引っ張り作用で動力を伝達するのに対して,スチール・ベルトはエレメントの圧縮(押し出し)作用で動力が伝達される。エレメントが圧縮作用により動力伝達を行うためには,プーリの傾斜面との間に摩擦力が必要となる。摩擦力は,プーリ・ピストンに油圧が作用してプーリがエレメントを挟み込むときに,エレメントがプーリの傾斜面外側に押し出される力をスチール・バンドの張力で受け止めることにより発生する。つまり,エレメントが圧縮作用により動力伝達を行い,スチール・バンドが動力伝達に必要な摩擦力を維持
図Ⅰ-5 スチール・ベルト
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することで,スチール・ベルト全体で張力が分散して受け持たれているため,応力による変動が少なく,かつ耐久性に優れている。3) 制御内容
⑴ 変速制御
CVTコントローラは,アクセル開度,出力軸回転速度,シフト・ポジション,ストップ・ランプ・スイッチなどの各入力情報から,エンジン及びCVTの状態,走行状態及び運転者の操作状況を判定し,あらかじめ設定されている変速線図をもとに,各ソレノイドを制御している。イ 登降坂変速制御(図Ⅰ-6)
アクセル開度と車速などの関係からCVTコントローラが道路勾配を検出し,勾配に応じてプーリ比を通常よりも低速側へ変更することにより登坂路では登坂走行に適した駆動力を確保する。また,降坂路では適度なエンジン・ブレーキを発生させる。・登坂判定条件:車両の実際の加速度がCVTコントローラにあらかじめ設定された基準加速度より小さい
場合・降坂判定条件:車両の実際の加速度がCVTコントローラにあらかじめ設定された基準加速度より大きい
場合
図Ⅰ-6 登降坂変速制御
ロ リニア加速制御
キック・ダウン加速時の変速特性を専用に設定し,エンジン回転速度と車速の上昇を同期させ,よりリニアな加速感になるように制御する。また,加速状態からクルーズ状態への自動移行機能を持たせることでドライバビリティを向上している。⑵ ABS協調制御
ABS/ESPコントローラからABS作動信号が入力すると,CVTコントローラはABSの作動を妨げないようにプーリ比を通常よりも高速側でホールドする。また,タイヤがグリップを回復したときの急激なトルク変動がCVTへ伝達されると,セカンダリ・プーリ圧(ベルト挟圧)が不足してスチール・ベルトが保持できず,滑りが発生するためセカンダリ圧を高めに設定する。更に,タイヤからの入力トルクを緩和してスチール・ベルト及びプーリを保護するためにロックアップ・クラッチを解放する。⑶ Sモード制御(マニュアル・モード非装備車)
Sモード・スイッチを押し,SモードをON(許可)するとコンビネーション・メータ内の「Sモード」ランプが点灯し,Sモードとなる。これにより,変速制御をSモード専用のものに切り替えている。
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⑷ マニュアル・モード制御(マニュアル・モード装備車)(図Ⅰ-7)
CVTコントローラはMレンジ信号を検出すると,そのときのプーリ比を保持し,通常の変速制御からマニュアル・モード制御に切り替える。この状態からパドル・シフト・スイッチが操作されシフト・アップ・スイッチ/シフト・ダウン・スイッチのON信号が入力されると,この信号に基づき,信号が入力されるごとに1速ずつマニュアル・モード・ポジションを切り替える。
図Ⅰ-7 マニュアル・モード制御
イ シフト・アップ
マニュアル・モード制御中パドル・シフト・スイッチを操作し,シフト・アップ(+)操作を行うと,CVTコントローラはシフト・アップを実行(マニュアル・モード・ポジションを1速上げる)する。しかし,変速後の入力軸回転速度が規定値以下となる場合は,エンスト防止のためシフト・アップをキャンセルし,警告音の吹鳴を行う。ロ シフト・ダウン
マニュアル・モード制御中パドル・シフト・スイッチを操作し,シフト・ダウン(-)操作を行うと,CVTコントローラはシフト・ダウンを実行(マニュアル・モード・ポジションを1速下げる)する。しかし,変速後の入力軸回転速度が規定値以上となる場合は,エンジン保護のためシフト・ダウンをキャンセルし,警告音の吹鳴を行う。ハ 一時的マニュアル・モード制御
Dレンジ時,パドル・シフト・スイッチを操作すると通常の変速制御からマニュアル・モード制御に切り替える。⒜ 一時的マニュアル・モード制御条件
車速が規定値以上である。⒝ 一時的マニュアル・モード制御解除条件
以下のいずれかが成立時・車速が規定値以下である。・パドル・シフト・スイッチの非操作が一定時間以上及びアクセル開度が規定値外である。
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ニ 自動シフト・アップ/ダウン(図Ⅰ-8,9)
変速段を保持した状態で,加速により入力軸回転速度が規定の回転速度を超えた,又はCVT油温が高温となった場合には,エンジン及びCVT保護のため自動的にシフト・アップを行う。
図Ⅰ-8 自動シフト・アップ
変速段を保持した状態で,減速により入力軸回転速度が規定の回転速度を下回った場合は,エンスト防止のため自動的にシフト・ダウンを行う。なお,シフト・ダウンは1速ずつ段階的に行うのではなく,規定の入力軸回転速度を保つように連続的にプーリ比を変化させる。また,この状態からアクセル・ペダルを操作すると,このときのプーリ比を保持する。
図Ⅰ-9 自動シフト・ダウン
⑸ 高温時制御
冷却水温又はCVTフルード温度が高温になると,変速許可最大入力軸回転速度を通常時に対して引き下げ,入力軸回転速度を下げることでCVT及びエンジンを保護している。また,この際ECMにアイドル・アップ要求を行いアイドル・アップすることで,オイル・ポンプの吐出量を増加させ粘度低下による油量及び油圧不足を防止している。⑹ プライマリ圧制御
プライマリ圧制御は,出力軸回転センサ,セカンダリ圧センサの情報及びECMからのアクセル開度,エン
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ジン回転速度,ストップ・ランプ・スイッチ,CVT油温などの入力情報から運転状態に応じてプライマリ・プーリの油圧室(プライマリ・プーリ・ピストン)に掛かるプライマリ圧を最適に制御し,変速比をコントロールしている。また,各種入力情報をもとに最適な目標プライマリ圧(目標プーリ比)を算出し,入力軸回転速度及び出力軸回転速度から算出された実プーリ比との差を検出しながら補正量を演算し,プライマリ圧をフィードバック制御している。⑺ セカンダリ圧(ライン圧)制御
CVTコントローラは,エンジン・トルク情報及び変速比(プーリ比)をもとに,走行状態に応じた目標セカンダリ・プーリ作動油圧を算出する。これに,アクセル開度,シフト・ポジション,ストップ・ランプ・スイッチなどの情報を加え最適なセカンダリ・プーリ作動油圧となるようセカンダリ・ソレノイド制御電流値を算出し,動力伝達に必要なスチール・ベルトのクランプ力を制御している。また,セカンダリ圧センサから入力された実セカンダリ・プーリ作動油圧と目標セカンダリ・プーリ作動油圧が一致するように,セカンダリ・ソレノイドへの電流値を徐々に変化させ,最適なセカンダリ・プーリ作動油圧となるようにフィードバック制御している。⑻ フォワード・クラッチ圧及びリバース・ブレーキ圧制御
フォワード・クラッチ圧及びリバース・ブレーキ圧制御は,入力軸回転速度及びECMからのエンジン回転速度,スロットル開度,CVT油温などの入力情報から前進時にはフォワード・クラッチ,後退時にはリバース・ブレーキにかかる油圧特性を最適に設定し,デューティ・ソレノイドを制御してフォワード・クラッチ及びリバース・ブレーキをスムーズに締結/解放している。⑼ リバース・インヒビット制御
走行中(前進車速10km/h以上)にもかかわらずRレンジにセレクトした場合,リバースへの変速を禁止し,ニュートラルとすることでCVT内部を保護している。⑽ ロックアップ制御
車速,CVT油温,入力軸回転速度などの情報をもとに条件が整うと,CVTコントローラはON/OFFソレノイド及びデューティ・ソレノイドに信号を出力してトルク・コンバータ内のロックアップ・クラッチを締結させる。加速時は,従来のA/T車よりも,ロックアップ制御作動領域を低速域から作動するように拡大することで,伝達効率を向上させると共に,エンジン回転速度の上昇を抑えることで燃費の向上を図っている。また,減速時にもロックアップ制御作動領域を低速域から作動するように拡大することで,伝達効率を向上させると共に,フューエル・カット作動領域を拡大することで燃費の向上を図っている。なお,ロックアップ制御実行中においてCVTコントローラは,デューティ・ソレノイドへの電流値を徐々に変化させながら,ロックアップ・クラッチ締結圧が滑らかに上昇するように制御している。これにより,ロックアップ・クラッチは最初に半締結(スリップ)状態となり,後に完全締結(ロックアップ)状態となるため,締結時のショックが緩和される。イ ロックアップ制御実行条件
・Dレンジ又はL(M)レンジである。・入力軸回転速度及び車速が規定値以上である。・CVT油温及び水温が規定値以上である。ロ ロックアップ制御解除条件
・実行条件のいずれかが不成立時
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⑾ CAN通信機能
CVTコントローラは,ECMとCAN通信を行い,各種情報の伝達を行う。⑿ フェイルセーフ制御
センサ,アクチュエータ系統に故障が発生した場合は,故障系統に応じてフェイルセーフ制御を行う。
3 点検・整備
1) ダイアグ・コードの表示・消去方法(図Ⅰ-10)
⑴ 表示方法
①イグニションをOFFにする。②Suzuki-SDTを運転席左足元付近にあるDLCに接続する。③イグニションをONにする。④Suzuki-SDTに表示される指示に従ってDTCの表示を行う。⑤終了時は,イグニションをOFF後,DLCからSuzuki-SDTを外す。注意 DTCが確認できない場合(Suzuki-SDTが車両と通
信できない場合)は,下記手順で点検を行うこと。
①Suzuki-SDT本体(通信ケーブル)②DLC電源,アース③CAN通信システムの異常(いずれかのシステムでCAN通信バスオフ異常が発生)
図Ⅰ-10 ダイアグ・コードの点検
⑵ 消去方法
①イグニションをOFFにする。②Suzuki-SDTを運転席左足元付近にあるDLCに接続する。③イグニションをONにする。④Suzuki-SDTに表示される指示に従ってDTCの消去を行う。⑤終了時は,イグニションをOFF後,DLCからSuzuki-SDTを外す。
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⑶ ダイアグ・コード一覧表
参考 ※1:D/C(ドライビング・サイクル)とはエンジンを始動してからイグニション・スイッチをOFFするまで
の間のこと。
・1D/C:1D/C中に異常を検出した場合に故障を確定し,トランスミッション警告灯を点灯させる。
・2D/C:1D/C中に異常を検出した場合,CVTコントローラに故障コード(未確定)を記憶し,連続した次の
D/Cも同じ故障コードを検出した場合に故障を確定し,トランスミッション警告灯を点灯させる。※2 ○:点灯 ×:消灯
DTC No. DTC名称 診断内容 D/C※1 ウォーニング※2
P0705 シフト・スイッチ系統異常 ECMから一定時間以上複数のシフト・ポジション情報が入力された。 1 ○
P0707 シフト・スイッチ系統Low異常 ECMから一定時間以上シフト・ポジション情報が入力されない。 2 ○
P0712 CVT油温センサ系統Low異常
ECMからのCVT油温情報(電圧)が一定時間以上診断下限電圧以下となっている。 1 ○
P0713 CVT油温センサ系統High異常
出力軸回転速度が一定時間以上規定値以上であるにもかかわらずECMからのCVT油温情報(電圧)が一定時間以上診断上限電圧以上となっている。
1 ○
P0717 入力軸回転センサ系統異常 エンジン回転速度及び出力軸回転速度が規定値以上であるにもかかわらず一定時間以上C09-7端子に信号が入力されない。 1 ○
P0722 出力軸回転センサ系統異常 エンジン回転速度及び入力軸回転速度が規定値以上であるにもかかわらず一定時間以上C09-6端子に信号が入力されない。 1 ○
P0841 セカンダリ圧制御系統特性異常
目標CVT油圧と実CVT油圧の差が一定時間以上規定値以上となっている。 2 ○
P0842 セカンダリ圧センサ系統Low異常 C09-4端子電圧が一定時間以上診断下限電圧以下となっている。 1 ○
P0843 セカンダリ圧センサ系統High異常 C09-4端子電圧が一定時間以上診断上限電圧以上となっている。 1 ○
P0962 セカンダリ・ソレノイド系統Low異常
セカンダリ・ソレノイド電流モニタ値(実電流)が一定時間以上診断上限電流以上となっている。又は,セカンダリ・ソレノイド電流値(指示電流)に対してセカンダリ・ソレノイド電流モニタ値(実電流)が一定時間以上規定値以上となっている。
1 ○
P0963 セカンダリ・ソレノイド系統High異常
セカンダリ・ソレノイド電流値(指示電流)が規定値以上であるにもかかわらずセカンダリ・ソレノイド電流モニタ値(実電流)が一定時間以上診断下限電流以下となっている。
1 ○
P0965 変速制御系統特性異常 出力軸回転速度と入力軸回転速度の差が一定時間以上規定値以上となっている。 2 ○
P0966 プライマリ・ソレノイド系統Low異常
プライマリ・ソレノイド電流モニタ値(実電流)が一定時間以上診断上限電流以上となっている。又は,プライマリ・ソレノイド電流値(指示電流)に対してプライマリ・ソレノイド電流モニタ値(実電流)が一定時間以上規定値以上となっている。
1 ○
P0967 プライマリ・ソレノイド系統High異常
プライマリ・ソレノイド電流値(指示電流)が規定値以上であるにもかかわらずプライマリ・ソレノイド電流モニタ値(実電流)が一定時間以上診断下限電流以下となっている。
1 ○
P1702 CVTコントローラ内部異常(メモリ・エラー) CVTコントローラ内部異常(メモリ・エラー)。 1 ×
P1703 CAN通信 ECMデータ異常
ECMから受信されるデータのうち下記のいずれかの異常信号が入力された。・車輪速度情報・エンジン・トルク情報・エンジン回転速度情報・アクセル開度情報・スロットル開度情報・水温情報
1 ×
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DTC No. DTC名称 診断内容 D/C※1 ウォーニング※2
P1706 CAN通信送信データ異常 ECMがCVTコントローラの送信するCAN通信データの異常を検出。 1 ×
P1971 ストップ・ランプ・スイッチ系統異常
・規定速度以上で走行しているにもかかわらずECMからのストップ・ランプ・スイッチ情報が一定時間以上ONとなっている。
・ECMからのストップ・ランプ・スイッチ情報のON入力がないまま一定以上の減速を規定の回数以上検出した。
1 ×
P2757 ロックアップ・クラッチ制御系統特性異常
ロックアップしているにもかかわらずエンジン回転速度と入力軸回転速度の差が一定時間以上規定値以上となっている。 2 ○
P2763 デューティ・ソレノイド系統High異常
ソレノイド信号を出力していないにもかかわらずC09-13端子電圧が一定時間以上診断上限電圧以上となっている。 1 ○
P2764 デューティ・ソレノイド系統Low異常
ソレノイド信号をON出力しているにもかかわらずC09-13端子電圧が一定時間以上診断下限電圧以下となっている。 1 ○
P2769 ON/OFFソレノイド系統Low異常
ソレノイド信号をON出力しているにもかかわらずC09-12端子電圧が一定時間以上診断下限電圧以下となっている。 1 ○
P2770 ON/OFFソレノイド系統High異常
ソレノイド信号を出力していないにもかかわらずC09-12端子電圧が一定時間以上診断上限電圧以上となっている。 1 ○
U0073 CAN通信バスオフ異常 CAN通信情報を送受信できない。 1 ○U0100 CAN通信受信異常(ECM) ECMからのCAN通信情報が受信できない。 1 ○
U0121 CAN通信受信異常(ABS/ESP) ABS/ESPからのCAN通信情報が受信できない。 1 ○
U0140 CAN通信受信異常(BCM) BCMからのCAN通信情報が受信できない。 1 ○
2) 車載状態での点検
⑴ 目視点検
・以下の部品又はシステムを目視で点検する。点検項目
CVTフルード 量,漏れセレクト・ケーブル 取り付け,作動
エンジン・オイル量漏れ
冷却水量漏れ
バッテリ液量ターミナルの接続
配線のコネクタ 外れ,抵抗ヒューズ 溶断部品 取り付け,損傷ボルト 緩み
・エンジン始動が可能であれば以下の項目を点検する。点検項目
トランスミッション警告灯 作動チェック・エンジン・ランプ 作動チャージ・ランプ 作動油圧警告灯 作動低水温表示灯 作動水温警告灯 作動
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⑵ 基本点検
DTCが未検出で,“目視点検”で異常がない場合,CVT基本点検を行う。ステップ 点検 YES NO
①走行テスト1) 走行テストを実施する。テスト結果は良好か?
ステップ②へ。 “CVT症状別故障診断”を実施後,ステップ②へ。
②ストール・テスト1) ストール・テストを実施する。テスト結果は良好か?
ステップ③へ。“ストール・テスト判定基準”を参照し,不具合のある部品を修理又は交換する。
③タイム・ラグ・テスト1) タイム・ラグ・テストを実施する。テスト結果は良好か?
ステップ④へ。“タイム・ラグ・テスト判定基準”を参照し,不具合のある部品を修理又は交換する。
④
セカンダリ圧(ライン圧)テスト1) セカンダリ圧(ライン圧)テストを実施する。テスト結果は良好か?
ステップ⑤へ。“セカンダリ圧(ライン圧)テスト判定基準”を参照し,不具合のある部品を修理又は交換する。
⑤ 症状別故障診断不具合症状が発生したか?
“CVT症状別故障診断”を参照し,不具合のある部品を修理又は交換する。
終了。
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イ CVT症状別故障診断表
推 定 原 因
不 具 合 現 象
車載状態での点検(修理,部品交換) CVT Ass'y交換
エンジン系統
CVTフルード量調整不良
セカンダリ圧(ライン圧)標準値外
セレクト・ケーブル
電気系 油圧制御系 動力伝達系
CVTコントローラ
シフト・スイッチ(CAN通信)
Sモード・スイッチ
パドル・シフト・スイッチ
入力軸回転センサ
出力軸回転センサ
セカンダリ圧センサ
プライマリ・ソレノイド
セカンダリ・ソレノイド
デューティ・ソレノイド
ON/OFFソレノイド
CVT油温センサ(CAN通信)
バルブ・ボデー,コントロール・バルブ
オイル・ポンプ
トルク・コンバータ
プーリ,スチール・ベルト
フォワード・クラッチ
リバース・ブレーキ
ベアリング類
プラネタリ・ギヤ
リダクション・ギヤ
ファイナル,デファレンシャル・ギヤ
パーキング機構
走
行
不
良
D,L(M)レンジでエンジン回転速度が上がり発進不能 ● ● ● ● ● ● ▲ ● ● ● ● ● ● ● ● ●
Rレンジでエンジン回転速度が上がり発進不能 ● ● ● ● ● ● ▲ ● ● ● ● ● ● ● ● ●
D,L(M),Rレンジでストール状態で発進しない ● ● ● ▲(同時固着)● ● ● ● ●
D,L(M)レンジで発進加速が不充分 ● ● ● ● ●
Rレンジで発進加速が不充分 ● ● ● ● ●
D,L(M)レンジで走行中,急にエンジン回転速度上昇 ● ● ▲ ● ● ● ● ● ● ● ●
Rレンジで走行中,急にエンジン回転速度上昇 ● ● ▲ ● ● ● ● ● ● ● ●
D,L(M),Rレンジで走行中,急にエンジン・ブレーキ作用 ● ● ● ● ▲
D,L(M)レンジで減速時,停止直前までロックアップ・クラッチ切れず ● ● ● ● ●
D,L(M),Rレンジで減速時,急にエンジン・ブレーキ作用 ● ● ● ● ▲
D,L(M)レンジで走行中,ロックアップ時にスリップ発生,又はロックアップ不能 ● ● ● ●
L(M)レンジで発進加速が不充分(Dレンジ固定状態) ● ●
Sモードで発進加速が不充分(Dレンジ固定状態) ● ●
Mレンジでパドル・シフト・スイッチを操作してもシフト・アップ又はシフト・ダウンしない ● ●
ショック・振動
D,L(M)レンジで発進時ショックが大きい ● ▲ ● ● ● ● ● ▲ ▲ ▲
Rレンジで発進時ショックが大きい ● ▲ ● ● ● ● ● ▲ ▲ ▲
D,L(M)レンジで走行中,ロックアップ時ショックが大きい ● ●
N→D,N→Rセレクト時ショックが大きい ● ● ● ● ● ● ●
D→L(M)セレクト時ショックが大きい ●
D,L(M)レンジで走行中に振動発生 ● ● ▲ ● ● ● ● ●
Rレンジで走行中に振動発生 ● ● ▲ ● ● ● ● ●
走行中に異音発生 ● ● ● ●
アイドリング時異音発生 ● ● ●
その他
D,L(M),Rレンジでスタータが作動する ● ●
D,L(M),Rレンジで停車中,エンストする ● ● ● ● ● ● ●
P,Nレンジでスタータが作動しない ● ●
Pレンジでパーキング・ロック作動しない ● ●
Pレンジからほかのレンジにセレクトしてもパーキング・ロック解除できず ● ●
P,Nレンジで停車中,エンストする ● ●
▲は不具合の可能性が薄いもの
ロ ストール・テスト判定基準
・ストール回転速度3100±200rpm(NA)3450±350rpm(ターボ)
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測定結果 推定原因
D,Rレンジともに基準値より低いスロットル・バルブが全開になっていないエンジン出力不良トルク・コンバータ不良
Dレンジが基準値より高いフォワード・クラッチ滑りバルブ・ボデー不良
Rレンジが基準値より高いリバース・ブレーキ滑りバルブ・ボデー不良
D,Rレンジともに基準値より高い
トルク・コンバータ不良ライン圧が低いスチール・ベルト不良プーリ不良バルブ・ボデー不良CVTコントローラ不良ハーネス・コネクタ不良
ハ タイム・ラグ・テスト判定基準
・タイム・ラグ基準値Nレンジ→Dレンジ:1.2秒以内Nレンジ→Rレンジ:1.3秒以内
測定結果 推定原因
Nレンジ→Dレンジのタイム・ラグが基準値より大きいフォワード・クラッチ滑りフォワード・クラッチ・ピストン・オイル・シール破損ライン圧が低い
Nレンジ→Rレンジのタイム・ラグが基準値より大きいリバース・ブレーキ滑りリバース・ブレーキ・ピストン・オイル・シール破損ライン圧が低い
ニ セカンダリ圧(ライン圧)テスト判定基準
・油圧基準値エンジン運転状態 Dレンジ Rレンジ
アイドリング 0.5~2.5MPa※
ストール 1.5~2.8MPa
※ストール直後は,油圧が高圧(約2.5MPa)になるがアイドリングで放置すると,低圧(約0.5MPa)に変化する。
・セカンダリ圧(ライン圧)判定基準測定結果 推定原因
D,Rレンジ共に基準値より高い コントロール・バルブの作動不良Dレンジが基準値より低い フォワード・クラッチ油圧回路のシール不良Rレンジが基準値より低い リバース・ブレーキ油圧回路のシール不良
D,Rレンジ共に基準値より低い
コントロール・バルブの作動不良オイル・ストレーナの目詰まりオイル・ポンプ不良プライマリ又はセカンダリ・プーリ油圧室回路のシール不良トルク・コンバータ油圧回路又はオイル・クーラ油圧回路のシール不良
3) 外部診断器の活用による点検・整備
オートマティック・トランスミッション(CVT)系統に不具合が発生し,外部診断器によりサービス・コードが出力された場合には,サービス・コード一覧表の項目に従って点検・整備方法を説明する。ここでは,
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以下に示すシフト・スイッチ系統異常,CVT油温センサ系統異常,セカンダリ圧センサを例として点検・整備方法を説明する。ⅰ) シフト・スイッチ系統異常①症状:CVTセレクタ・レバーを動かしてもシフト・インジケータの表示が変化しなくなる。トランスミッ
ション警告灯点灯(ダイアグ・コードP0707)②故障内容:シフト・スイッチ電源線断線③点検方法:外部診断器を使用する場合ⅱ) CVT油温センサ系統異常①症状:ドライバビリティの悪化。トランスミッション警告灯点灯(ダイアグ・コードP0713)②故障内容:CVT油温センサ信号断線③点検方法:外部診断器を使用する場合ⅲ) セカンダリ圧センサ系統異常①症状:マニュアル・モード装備車の場合,セカンダリ圧センサによる実圧フィードバックの停止及びマニュ
アル・モードに移行しなくなる。トランスミッション警告灯点灯(ダイアグ・コードP0842)②故障内容:セカンダリ圧センサ信号線断線③点検方法:外部診断器を使用する場合⑴ シフト・スイッチ系統異常(図Ⅰ-11)
図Ⅰ-11 シフト・スイッチ系統
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点検結果はOKか?YES⇒ ⒞へ。NO⇒ シフト・スイッチを調整する。
⒞ パラメータの点検2
①外部診断器のデータ・リストの各「レンジスイッチ」のパラメータを点検し不具合レンジを特定する。すべてOFFか?YES⇒ ⒟へ。NO⇒ ⒠へ。
⒟ シフト・スイッチ電源回路の点検
①C166コネクタを外し,イグニションをONにしてC166コネクタのRED/BLK端子~ボデー・アース間の電圧を点検する。電圧は約12V(バッテリ電圧)か?YES⇒ ⒡へ。
イ 症 状
フェイルセーフにより故障確定直前のシフト・レンジを保持するため,CVTセレクト・レバーを動かしてもシフト・インジケータの表示が変化しなくなる。また,トランスミッション警告灯点灯。(ダイアグ・コードP0707を検出)DTC No. DTC名称 診断内容P0707 シフト・スイッチ系統Low異常 ECMから一定時間以上シフト・ポジション情報が入力されない。
ロ 原因説明
ECMはシフト・スイッチの信号によりCVTセレクト・レバーのポジションを検出し,CAN通信でCVTセレクト・レバーのポジション情報をCVTコントローラに伝達するが,何らかの故障によりすべてのシフト・ポジション信号回路の電圧が0Vとなった場合,CVTコントローラはトランスミッション警告灯を点灯させフェイルセーフ制御※を行う。※:故障確定直前のシフト・レンジを保持
ハ 点検方法
外部診断器を接続しダイアグ・コードを確認する。⇒ダイアグ・コードP0707:シフト・スイッチ系統Low異常を検出以下の故障診断手順に従って,点検,整備を行う。⒜ パラメータの点検1
①外部診断器を使用してデータ・リストの各「レンジスイッチ」のパラメータを点検する。すべてのレンジにおいてセレクト・ポジションとデータ・リスト「レンジスイッチ」が一致しているか?YES⇒ 一時的な不具合。NO⇒ ⒝へ。
⒝ シフト・スイッチのニュートラル位置点検(図Ⅰ-12)
①CVTセレクト・レバーをNレンジにする。②ピン抜きなどを使用して,シフト・シャフト・レバーとシフト・スイッチのニュートラル位置が合っているか点検する。
図Ⅰ-12 シフト・スイッチのニュートラル位置点検
- -24- -24
スズキ
NO⇒ ・RED/BLK線の断線。 ・“BACK”ヒューズ切れ。(RED/BLK線又は信号線の地絡が考えられる。)
⒠ 信号線の断線点検
①C01コネクタを外す。②不具合レンジのあるC166コネクタ~C01コネクタ間の信号線の断線を点検する。点検結果はOKか?YES⇒ ⒡へ。NO⇒ 信号線の断線。
⒡ シフト・スイッチの単体点検(図Ⅰ-13)
①各ポジションでシフト・スイッチ・コネクタの導通が表のようになっているか点検する。
端子
シフト・ポジション
1 2 3 4 5 6 7 8 9
P ○――――――――――――○ ○――――――――――――○
R ○――――――――――――――――○
N ○――――――――○ ○――――――――――――○
D ○――――――――――――――――――――――――――――○
L(M) ○――――○
〈シフト・スイッチ導通表〉
図Ⅰ-13 シフト・スイッチの単体点検
点検結果はOKか?YES⇒ ・CVTコントローラ本体の不具合。 ・ECM本体の不具合。NO⇒ シフト・スイッチ本体の不具合。
- -25- -25
スズキ
⑵ CVT油温センサ系統異常(図Ⅰ-14)
図Ⅰ-14 CVT油温センサ系統異常
イ 症 状
フェイルセーフによりCVT油温を80℃として制御するため,CVTフルードが低温時のドライバビリィティが悪化する。また,トランスミッション警告灯点灯。(ダイアグ・コードP0713を検出)DTC No. DTC名称 診断内容
P0713 CVT油温センサ系統High異常 出力軸回転速度が一定時間以上規定値以上であるにもかかわらずECMからのCVT油温情報(電圧)が一定時間以上診断上限電圧以上となっている。
ロ 原因説明
ECMはCVT油温センサの信号によりCVTフルードの温度を検出し,CAN通信でCVTフルードの油温情報(電圧)をCVTコントローラに伝達するが,何らかの故障によりCVT油温情報(電圧)が診断電圧以上になった場合,CVTコントローラは,トランスミッション警告灯を点灯させフェイルセーフ制御※を行う。※:CVT油温を80℃として制御する
ハ 点検方法
外部診断器を接続しダイアグ・コードを確認する。⇒ダイアグ・コードP0713:CVT油温センサ系統High異常を検出以下の故障診断手順に従って,点検,整備を行う。⒜ パラメータの点検
①外部診断器を使用してデータ・リスト「CVT油温」のパラメータを点検する。-30℃以下か?YES⇒ ⒝へ。NO⇒ 一時的な不具合。
- -26- -26
スズキ
⒝ CVT油温センサ信号回路の点検
①C142コネクタを外し,C142コネクタのPNK/BLK端子とWHT/BLK端子を短絡して外部診断器データ・リスト「CVT油温」のパラメータを点検する。-30℃以下か?YES⇒ ⒞へ。NO⇒ CVT油温センサ本体(CVT本体)の不具合。
⒞ CVT油温センサ信号線の断線点検
①C01コネクタのPNK/BLK端子~WHT/BLK端子間を短絡し,外部診断器データ・リスト「CVT油温」のパラメータを点検する。-30℃以下か?YES⇒ ・CVTコントローラ本体の不具合。 ・ECM本体の不具合。NO⇒ PNK/BLK線又はWHT/BLK線の断線。
⑶ セカンダリ圧センサ系統異常(図Ⅰ-15)
図Ⅰ-15 セカンダリ圧センサ系統異常
イ 症 状
・マニュアル・モード装備車の場合,フェイルセーフによりセカンダリ圧センサによる実圧フィードバックの停止及びマニュアル・モードに移行しなくなる。また,トランスミッション警告灯点灯(ダイアグ・コードP0842を検出)
・マニュアル・モード非装備車の場合,フェイルセーフによりセカンダリ圧センサによる実圧フィードバックの停止。また,トランスミッション警告灯点灯(ダイアグコードP0842を検出)DTC No. DTC名称 診断内容P0842 セカンダリ圧センサ系統Low異常 C09-4端子電圧が一定時間以上診断下限電圧以下となっている。
ロ 原因説明
CVTコントローラは,セカンダリ圧センサの信号によりセカンダリ・プーリの作動油圧(セカンダリ圧)を検出するが,何らかの故障によりC09-04端子電圧が診断下限電圧以下になった場合,CVTコントローラは,トランスミッション警告灯を点灯させフェイルセーフ制御※を行う。※:マニュアル・モード装備車の場合,セカンダリ圧センサによる実圧フィードバックの停止及びマニュアル・モー
- -27- -27
スズキ
ド制御を禁止する。
※:マニュアル・モード非装備車の場合,セカンダリ圧センサによる実圧フィードバックを停止する。
ハ 点検方法
外部診断器を接続しダイアグ・コードを確認する。⇒ダイアグ・コードP0842:セカンダリ圧センサ系統Low異常を検出以下の故障診断手順に従って,点検,整備を行う。⒜ パラメータの点検
①外部診断器を使用してデータ・リスト「セカンダリ圧」のパラメータを点検する。0MPa以下か?YES⇒ ⒝へ。NO⇒ 一時的な不具合。
⒝ セカンダリ圧センサ電源回路の点検
①C54コネクタを外す。②イグニションをONにして,C54コネクタのRED端子~エンジン・アース間の電圧を点検する。電圧は約5Vか?YES⇒ ⒞へ。NO⇒ ・RED線の断線又は地絡。 ・CVTコントローラ本体の不具合。⒞ セカンダリ圧センサ信号線の断線/地絡点検
①C09コネクタを外し,RED/WHT線の断線及び地絡を点検する。点検結果はOKか?YES⇒ ⒟へ。NO⇒ RED/WHT線の断線又は地絡。
⒟ セカンダリ圧センサの点検(図Ⅰ-16)
①実走行(目安として市街地を5km以上)して,外部診断器データ・リストの「CVT油温」のパラメータが65℃になるまで暖機する。②セカンダリ圧(ライン圧)テストを行い,ゲージの圧力値と外部診断器の「セカンダリ圧」のパラメータがほぼ同じ値になることを点検する。特殊工具(A):09925-36310(B):09915-75810点検結果はOKか?YES⇒ CVTコントローラ本体の不具合。NO⇒ セカンダリ圧センサの不具合。
図Ⅰ-16 セカンダリ圧(ライン圧)テスト
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スズキ
参考
〈電圧計による点検〉(図Ⅰ-17)
①実走行(目安として市街地を5km以上)して,暖機する。②C54コネクタを外す。③セカンダリ圧センサ・コネクタとC54コネクタの1,2,3端子間を図のように接続し,セカンダリ圧センサ・コネクタの2端子~ボデー・アース間に電圧計を接続する。
図Ⅰ-17 セカンダリ圧センサの点検
④エンジンを始動し,Nレンジの状態でブレーキを踏み込み,アイドル時の電圧値を点検する。セカンダリ圧センサ基準値:0.8~0.9V(油圧約0.5MPa)点検結果はOKか?YES⇒ CVTコントローラ本体の不具合。NO⇒ セカンダリ圧センサの不具合。