第1 章アメリカにおける性表現が青少年に与える影響研究 本 ... ·...

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1 1 章アメリカにおける性表現が青少年に与える影響研究 本調査は、アメリカにおける露骨な性表現メディアを青少年が消費することに対する影響について どの様な研究があるかを結論づけずに多くの事例を挙げ、なおどのような法規制が存在するかを伝 えるものである。 目次 1. アメリカにおける性表現が青少年に与える影響についての研究....................................................... 1 a. 青少年とポルノグラフィーの定義................................................................................................ 1 b. 性的表現が青少年に与える影響のとらえ方全般........................................................................ 1 c. 具体的な研究資料と選定理由........................................................................................................ 2 1基本資料................................................................................................................................ 2 2補足資料................................................................................................................................ 3 d. 調査結果............................................................................................................................................ 4 1露骨な性表現資料へのアクセス媒体................................................................................ 4 2メディアにアクセスする時間............................................................................................ 4 3性表現.................................................................................................................................... 5 4性への姿勢と性表現.......................................................................................................... 10 e. 研究手法のサンプル...................................................................................................................... 11 f. 参考文献.......................................................................................................................................... 13 g. その他論文の紹介.......................................................................................................................... 14 1. アメリカにおける性表現が青少年に与える影響についての研究 a. 青少年とポルノグラフィーの定義 青少年 本調査が取り扱う研究資料では、一般的に 1218 歳までの若者を「青少年」と定義してい るが、研究ごとにその範囲は若干異なる。例えば、Owens, Behun, Manning & Reid2012)の研究は 10 歳の児童を含む一方、Braun-Courville & Rojas2009)の研究は 22 歳の青年を含んでいる。基本 的には、各研究は、11 歳以上~19 歳未満までの青少年を対象にしていた。 ポルノグラフィー ポルノグラフィーに関する 1986 年司法長官委員会報告(1986 Attorney General Commission on Pornography)は、「圧倒的に露骨な性表現かつ性的興奮を主たる目的としている」 資料をポルノグラフィーと定義している。本調査で取り上げる研究資料は、ポルノグラフィーにつ いてそれぞれ独自の表現をしているが、それらは司法長官委員会の広義の定義の範囲内に収まる。 そのため、本調査は当該委員会によるポルノグラフィーの定義に従う。 b. 性的表現が青少年に与える影響のとらえ方全般 本調査結果の概要として説明できることは、青少年がメディアによる露骨な性表現に触れることは、 青少年に与える影響はあるが、親やその他の影響により軽減されることがあるということである。 露骨な性表現に接触した青少年は、セックスを開始したり、オーラルセックスをしたり、セックス の前戯行為をする可能性が高くなる。同様に、露骨な性表現への接触は、青少年のセクシャルハラ スメント、性的攻撃性、危険な性行動に大きく影響する。露骨な性表現に接触した青少年は、ジェ

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第 1 章アメリカにおける性表現が青少年に与える影響研究 本調査は、アメリカにおける露骨な性表現メディアを青少年が消費することに対する影響について

どの様な研究があるかを結論づけずに多くの事例を挙げ、なおどのような法規制が存在するかを伝

えるものである。

目次

1. アメリカにおける性表現が青少年に与える影響についての研究....................................................... 1 a. 青少年とポルノグラフィーの定義 ................................................................................................ 1 b. 性的表現が青少年に与える影響のとらえ方全般 ........................................................................ 1 c. 具体的な研究資料と選定理由 ........................................................................................................ 2

(1) 基本資料 ................................................................................................................................ 2 (2) 補足資料 ................................................................................................................................ 3

d. 調査結果 ............................................................................................................................................ 4 (1) 露骨な性表現資料へのアクセス媒体 ................................................................................ 4 (2) メディアにアクセスする時間 ............................................................................................ 4 (3) 性表現 .................................................................................................................................... 5 (4) 性への姿勢と性表現 .......................................................................................................... 10

e. 研究手法のサンプル ...................................................................................................................... 11 f. 参考文献 .......................................................................................................................................... 13 g. その他論文の紹介 .......................................................................................................................... 14

1. アメリカにおける性表現が青少年に与える影響についての研究 a. 青少年とポルノグラフィーの定義 青少年 本調査が取り扱う研究資料では、一般的に 12~18 歳までの若者を「青少年」と定義してい

るが、研究ごとにその範囲は若干異なる。例えば、Owens, Behun, Manning & Reid(2012)の研究は

10 歳の児童を含む一方、Braun-Courville & Rojas(2009)の研究は 22 歳の青年を含んでいる。基本

的には、各研究は、11 歳以上~19 歳未満までの青少年を対象にしていた。 ポルノグラフィー ポルノグラフィーに関する 1986 年司法長官委員会報告(1986 Attorney General Commission on Pornography)は、「圧倒的に露骨な性表現かつ性的興奮を主たる目的としている」

資料をポルノグラフィーと定義している。本調査で取り上げる研究資料は、ポルノグラフィーにつ

いてそれぞれ独自の表現をしているが、それらは司法長官委員会の広義の定義の範囲内に収まる。

そのため、本調査は当該委員会によるポルノグラフィーの定義に従う。 b. 性的表現が青少年に与える影響のとらえ方全般 本調査結果の概要として説明できることは、青少年がメディアによる露骨な性表現に触れることは、

青少年に与える影響はあるが、親やその他の影響により軽減されることがあるということである。

露骨な性表現に接触した青少年は、セックスを開始したり、オーラルセックスをしたり、セックス

の前戯行為をする可能性が高くなる。同様に、露骨な性表現への接触は、青少年のセクシャルハラ

スメント、性的攻撃性、危険な性行動に大きく影響する。露骨な性表現に接触した青少年は、ジェ

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ンダーロールに対する否定的な意識を形成し、性規範に寛容になる可能性が高くなる。最後に、リ

スクに触れている特定の青少年は、無断欠席、嘘、盗みなどの、否定的な行為に加担する可能性が

高い。こうした影響に反して、接触によるリスクは、親のセックスへの反対、親の実践的なしつけ、

良い成績などの社会環境要因によって軽減される。これらの結果に関する詳細を以下に記述する。 c. 具体的な研究資料と選定理由 青少年とポルノグラフィーに関する研究資料は多数あるもののが、以下の資料が本調査の求める研

究概要、方法論、測定方法を反映していた。 (1) 基本資料 以下の基本資料は、性メディアと青少年の関係を直接取り扱っていたため、結果、方法論、測定方

法などについて調査を行った。 · Ashby, S.L., Arcari, C.M., & Edmonson, M.B. (2006). Television Viewing and Risk of Sexual

Initiation by Young Adolescents(早期青年期の青少年のテレビ視聴とセックス開始のリスク). Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine(アーカイブオブピディアトリクスアンドアドーレ

セントメディスン), 160(4) (第 160 巻-第 4 号):375-380. 本資料は、従来の研究が、テレビの視聴が最も暴力的な行動などの特定の行動に関係すると示す一

方で、テレビの視聴と性行動の関係を明確にしてこなかったことから選定した。幾つかの研究は、

青少年のテレビへの接触が性行動に影響を与えたかという問を取り上げていたが、縦断調査を行っ

ていたのはそのうちの 2 つだけであった。そこで、本研究資料では、早期青年期の青少年(16 歳以

下)が回答したテレビの視聴時間が、次年度のセックスの開始に関係しているかどうかを把握する

ために、全国的に代表制のある青少年のサンプルを用いた縦断調査の 2 次分析を行っている。その

際、親のテレビ番組に対する制限が、セックスの開始リスクと関係しているかどうかについても調

査していた。 · Brown, J.D., & L’Engle, K.L. (2009). X-Rated: Sexual Attitudes and Behaviors Associated With U.S.

Early Adolescents' Exposure to Sexually Explicit Media(アダルト指定:早期の青少年が露骨な性表

現メディアに接触することに関連した性的態度と性行動). Communication Research(コミュニ

ケーションリサーチ), 36(1) (第 36 巻‐第 1 号):129-151. 本資料は、露骨な性表現メディア(SEM:sexually explicit media)コンテンツへの早期の接触が、2年後の性的態度と性行動に与える影響について、経時的に評価していたことから選定した。青少年

の SEM へのアクセス増加が、彼らに否定的な影響を与えることが懸念される中、それらのコンテン

ツの近年の使用状況や影響について、特にアメリカにおいてはごく一部の研究でのみしか明らかに

されていない。また、ポルノグラフィーの影響研究の多くは、性的な関係や行動に関する是非につ

いての考え方を自ら形成し始め、その態度や行動に最も影響を受けやすい早期青年期の青少年を対

象にするのではなく、大学生や成人を含んでいる。一方、本研究資料は、アメリカの人口統計学的

に多様な早期青年期の青少年を対象にした SEM の使用パターンについて説明し、SEM コンテンツ

への早期接触と 2 年後の性的態度と性行動の関係について調査していた。 · Brown, J.D., L’Engle, K.L., Pardun, C.J., Guo, G., Kenneavy, K., & Jackson, C. (2006). Sexy Media

Matter: Exposure to Sexual Content in Music, Movies, Television and Magazines Predicts Black and White Adolescents’ Sexual Behavior(性メディアの問題:音楽、映画、テレビ、雑誌の性的なコン

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テンツへの接触と黒人と白人の青少年の性的行動の予測). Pediatrics(ピディアトリクス), 117(4) (第 117 巻‐第 4 号):1018-1027.

本資料は、性メディア鑑賞習慣(SMD:Sexual Media Diet)が多いことが青少年の性行動に長期的

に影響を与えるかどうかという研究が、これまでわずかしか行われていなかったことから選定した。

これまでの研究は、テレビやミュージックビデオなどの特定のテレビ番組に特化したものが多く、

それ以外のメディアに関するものが少なかった。本資料は、青少年が頻繁に使用する 4 種類のメデ

ィアであるテレビ、音楽、映画、雑誌の性的コンテンツによる SMD が多いことが、アメリカの青

年期早期(12 歳~14 歳)の青少年の性行動にどのように影響するのかということを調査している。 (2) 補足資料 補足資料は、性メディアと青少年の部分的な関係が考慮されていたため、主に研究結果を中心に時

に測定方法も参考にした。 · Alexy, E.M., Burgess, A.W., & Prentky, R.A. (2009). Pornography Use as a Risk Marker for an

Aggressive Pattern of Behavior among Sexually Reactive Children and Adolescents(性的に敏感な児童

と青少年の行動の攻撃的なパターンのリスクマーカーとしてのポルノグラフィーの使用), Journal of American Psychiatric Nurses Association(ジャーナルオブアメリカンサイカトリックナ

ーシズアソーシエーション), 14(6):442-453.

· Braun-Courville, D.K., & Rojas, M. (2009). Exposure to Sexually Explicit Web Sites and Adolescent Sexual Attitudes and Behaviors(露骨な性表現ウェブサイトへの接触と青少年の性的姿勢と性行

動), Journal of Adolescent Health(ジャーナルオブアドーレセントヘルス), 45(第 45 巻):156-162.

· Lenhart, A. (2009). Teens and Sexting: How and Why Minor Teens Are Sending Sexually Suggestive Nude or Nearly Nude Images Via Text Messaging, Pew Research Center(十代とセクスティング:少

数の十代は、どのようにそしてどうして性的に裸体を連想させるあるいは裸体に近い画像をテ

キストメッセージを介して送るのか), Pew Internet & American Life Project(ピュー財団インター

ネットとアメリカ生活プロジェクト). http://ncdsv.org/images/PewInternet_TeensAndSexting_12-2009.pdf

· Owens, E.W., Behun, R.J., Manning, J.C., & Reid, R.C. (2012). The Impact of Internet Pornography on Adolescents: A Review of the Research(インターネットポルノグラフィーの青少年への影響:文

献調査), Sexual Addiction & Compulsivity(セクシャルアディクションアンドコンパルシビティ

-), 19(第 19 巻):99-122.

· Roberts, D.F., Foehr, U.G., Rideout, V. (2005) Generation M: Media in the lives of 8–18 year olds(M世代:8 歳~18 歳の生活の中でのメディア) . Menlo Park, CA: The Henry J. Kaiser Family Foundation(ヘンリーJ カイザー家族財団), http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED527859.pdf

· Shafer, A., Bobkowski, P., & Brown, J.D. (2013). Sexual Media Practice: How Adolescents Select, Engage with, and Are Affected by Social Media(性メディアの実践:ソーシャルメディアによって

青少年は、どのように選び、参加し、影響を受けるのか), In K.E. Dill (Ed.), The Oxford Handbook of Media Psychology(オックスフォードハンドブックオブメディアサイコロジー), (pp. 233 – 251). New York, NY: Oxford University Press(オックスフォード大学出版).

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· Ybarra, M.L., Mitchell, K.J., Hamburger, M., Diener-West, M., & Leaf, P.J. (2011). X-Rated Material and Perpetration of Sexually Aggressive Behavior among Children and Adolescents: Is There a Link?(児童や青少年におけるアダルト指定の情報と性的に攻撃的な行動:関係性はあるのか?), Aggressive Behavior(アグレッシブビヘイビャー), 37(第 37 巻):1-18.

· Ybarra, M.L. & Mitchell, K.J. (2005) . Exposure to Internet Pornography among Children and

Adolescents: A National Survey(児童と青少年のインターネットポルノグラフィーへの接触:全

国調査), CyberPsychology & Behavior(サイバーサイコロジーアンドビヘイビヤー), 8(5)(第 8 巻‐第 5 号):473-486.

d. 調査結果 (1) 露骨な性表現資料へのアクセス媒体 メディアによる露骨な性表現の中で、最もアクセスしやすいのはインターネットである。アメリカ

の世帯の約 75%は、インターネットにアクセスでき、青少年の約 93%はオンラインとつながってい

る(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 157)。Shafer, Bobkowski & Brown 2012(p. 228)は、ウェブサ

イトの約 40%が露骨な性表現の内容やポルノを含んでいると指摘している。 伝統的な情報源であるテレビや音楽を通しても、露骨な性表現に触れることができる。アメリカの

テレビに関する包括的な研究は、2/3 以上の番組がセックスを取り上げ、1/3 以上が性行動を含んで

いると指摘している(p. 228)。十代を主題にしたテレビ番組の 90%は性に関する内容を含んでい

る(p. 228)。 アメリカの青少年が露骨な性表現に通常触れるメディアの 1 つとして、ビデオゲームもあげられる。

ビデオゲームは、プレーヤーが性的な役割を担当することや性的な行動に参加することを可能にい

ている(p. 229)。 印刷物も、「ハスラー(Hustler)」「プレイボーイ(Playboy)」「ペントハウス(Penthouse)」な

どのアメリカの性産業雑誌を中心に、露骨な性表現資料として一般的に使用されている。 (2) メディアにアクセスする時間 アメリカの青少年は、1 週間のうち 1 日約 7.5 時間をテレビ、ビデオゲーム、音楽、インターネット

など、何らかのメディアに触れる時間に費やしている(Roberts, Foehr & Rideout 2005, p. 1)。この

数値は、アメリカの青少年が親と過ごす時間よりも多く(Shafer, Bobkowski & Brown 2012, p. 226)、

青少年が睡眠時間に費やす時間の次に長い(Roberts, Foehr & Rideout 2005, p. 1)。

· インターネット アメリカの 63%の青少年は毎日オンラインし、36%は 1 日数回オンライ

ンしている(Owens, Behun, Manning & Reid 2012, p. 100)

· テレビと映画 アメリカの青少年は通常 1 日 4.5 時間テレビを見ることに費やし、25 分映画

を見ることに費やしている(Roberts, Foehr & Rideout 2005, p. 2)

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· コンピューターとビデオゲーム アメリカの青少年は平均 2 時間 42 分をコンピューターと

ビデオゲームに費やしている(p. 2)

· 音楽 デジタル音楽プレーヤー、コンピューター、携帯電話の出現によって音楽を聴く時間

は増えている。アメリカの青少年は 1 日約 2 時間 31 分音楽を聴いている(Roberts, Foehr & Rideout 2005, p. 2)

· 雑誌やその他の印刷物 アメリカの青少年は 1 日およそ 38 分雑誌やその他の印刷物を見て

いる(p. 2)

· テキストメッセージ アメリカの青少年は毎日 1.5 時間をテキストメッセージに費やしてい

る(Shafer, Bobkowski & Brown 2012, p. 226)。青少年の 3 人に 1 人は 1 日 100 以上のメール

を送り、15%は 200 以上、あるいは、月に 6000 以上のメールを送っている。そのうち 4%は性に関するメール 1(主に裸の写真など)を送り、15%は性に関するメールを受信してい

る(Owens, Behun, Manning & Reid 2012, p. 103)。

多くの青少年は 2 つ以上のメディア媒体を同時に使用している(例えば、ネットサーフィンをして

いる間に音楽を聴くなど)。青少年が一度に 1 つ以上の媒体を使用していることを考慮すると、ア

メリカの青少年の 1 日 7.5 時間のメディア接触時間は、全ての媒体を加味すると 10時間 45 分にもの

ぼる(Roberts, Foehr & Rideout 2005, p. 2)。これは、過去 5 年間でメディアへの接触時間が、1 日お

よそ 2.25 時間増加したことを意味する(p. 2)。 (3) 性表現 研究資料は、露骨な性表現メディア(SEM:sexually explicit media)2への接触、つまり、映画、テ

レビ、雑誌、インターネットなどの一般的なメディア媒体を通したポルノグラフィーの消費は、青

1 性に関するメールを把握するために、回答者が以下の経験をしたかどうかを「はい」か「い

いえ」で答えられるような質問がされた(Lenhart 2009, App. p. 24)。 1)性的に裸体を連想させるあるいは裸体に近いあなた自身の写真あるいは映像を携帯

電話を使って誰かに送ったことがありますか? 2)性的に裸体を連想させるあるいは裸体に近い写真あるいは映像を携帯電話を通して

知っている人から受信したことはありますか? 2 青少年の露骨な性表現メディアへの接触に関して、研究者が測定してきた方法は数え切れな

い。それぞれの研究は、変数を測定するために特有のアプローチをとっている。正確な用語は

異なるが、それらの研究はメディア媒体の中心となっているインターネット、テレビ/映画、雑

誌の 3 つへの接触を測定するという目的を共有している。以下 2 つの事例を紹介する。 In Brown & L’Engle 2006(p. 138)は、回答者に以下の質問をすることで SEM を測っている

(回答者は「1 週間に 1 回以上」、「1 週間に 1 回程度」、「1 ヶ月に 1 回程度」、「数える程

度」、「一度もない」のいずれかに回答できる)。 1)「過去 12 ヶ月にどれくらいの頻度でアダルト映画を見ましたか?」 2)「過去 12 ヶ月にどれくらいの頻度で Playboy、Playgirl、Penthouse、Hustler などの雑

誌を読みましたか?」 3)「どれくらいの頻度でコンピューターやインターネットの裸の女性や男性の画像を

見ますか?」

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少年の様々な性的姿勢と性行動に影響しうると示している(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 156)。

加えて、膨大な量の青少年の性メディア鑑賞習慣(SMD:Sexual Media Diet)3、つまり一般的なメ

ディア媒体における性コンテンツの使用割合も、同様に重要な関係を示唆している(Brown et al. 2006, p. 1022)。 性的経験

同様に、Ybarra et al. 2011(p. 5)は、回答者に以下の質問をすることで SEM を測っている(回

答者は「はい」か「いいえ」のいずれかに回答できる)。 1)「あなたは、セックスが主題となっているアダルト映画を友達の家、自分の家、あ

るいは映画館で見たことがありますか?」 2 )「プレイボーイのようなアダルト雑誌をセックスが主題となっていることを知りな

がら見たことがありますか?」 3 )「セックスが主題となっているアダルトウェブサイトを見たあるいは見に行ったこ

とがありますか?」 3 青少年の性メディア鑑賞習慣(SMD:Sexual Media Diet)を計算するために、研究者は以下

の式を適用している:

SMD = [性的コンテンツの視聴割合]*[平均メディア視聴頻度]

まず、研究者は回答者に、テレビ、自宅と映画館で見る映画、音楽、雑誌の 4 種類のメディア

における特定のメディアあるいは「媒体」の膨大なリストを提供した。回答者は、普段使用す

るメディア全てに丸をつけるよう指示された。その後研究者は、思春期の発達・恋愛関係・身

体の露出や裸体・性的ほのめかし・愛撫やキス・セックスについての描写や参考になる「媒

体」の要素を単位レベルで分析した。「単位」は、雑誌の中の文章・見出し・写真、歌詞のフ

レーズ、テレビ番組上区切れないシーケンス(平均 4.4 秒)、映画上区切れないシーケンス

(平均 6.4 秒)とした。研究者はこのデータを各回答者の性的コンテンツの視聴割合とメディ

ア視聴頻度を計算するために使用した。 1. 性的コンテンツの視聴割合:本変数を計算するために、回答者の性コンテンツ単位の総

数を合計した。その後、回答者がリストから選択した全てのメディアにおいて視聴した

単位の総数を合計した。最後に、性的コンテンツ単位を総視聴単位で割った。 2. 平均メディア視聴頻度:本変数を計算するために、回答者の 4 種類のメディアの合計平

均使用率を各種媒体の重み付けをして特定した。テレビと音楽の使用は、授業のある日

と週末、学年度と夏休み期間中の視聴時間;雑誌の使用は部数;映画鑑賞は映画館と家

で映画を見る頻度の回答を平均することで計算した。 これらのデータをもとに、性的コンテンツの視聴割合を回答者の平均メディア視聴頻度に掛け

ることで SMD が算出された(Brown et al. 2006, p. 1022)。

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· セックス 4 露骨な性表現メディアヘの接触頻度が高い男女の青少年は、セックスする確率

が高くなるだけでなく、セックスを開始する時期も早くなる。テレビを 1 日 2 時間以上 5見

る男児は、1 年以内にセックスを開始する可能性が高くなる(Ashby, Arcari & Edmonson 2006, p. 1)。アダルト映画を見て、性的に露骨な音楽を聴いて、アダルト雑誌を読んで、イ

ンターネットで裸の男性や女性の写真を見る男児は、露骨な性表現メディアに接触していな

い男児に比べて、3 倍セックスを経験している傾向にある。女児においては 1.5 倍セックス

を経験している傾向にある(Brown & L’Engle 2009, pp. 143-44)。 12 歳~14 歳の時に SMD が多い青少年は、場合によっては 14 歳~16 歳の時に 2.2 倍セック

スを経験している傾向にある(Brown et al. 2006, p. 1019)。研究対象となったアメリカの男

児において、SMD の 20%の増加は、50%のセックス開始リスクと関係していた。同じ男児

のうち、SMD への接触が上位にあるグループは、下位にあるグループと比べて、セックス

開始のリスクが 120%高い(Brown et al. 2006, p. 1024)。

· オーラルセックス 6 SEM への接触が高い男女の青少年は、オーラルセックスをする可能性

が高くなった。ベースライン調査時に、全ての種類の SEM を使用する男児はフォローアッ

プ調査時に 3 倍、女児は 2 倍、SEM を使用しない青少年に比べて、オーラルセックスをし

ている傾向にあった(Brown & L’Engle 2009, pp. 143-44)。

· 前戯性行動 7 SMD の多さは、青少年の前戯性行動との関係性が強い(Brown et al. 2006, p. 1024)。

危険な性行動 8 SEM を使用する者は、アナルセックス、性交中の薬物やアルコールの摂取などの

危険な性行動を行う傾向にある(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 159)。ある研究では、SEM に接

4 セックスの経験を把握するために、「はい」か「いいえ」のいずれかに回答できる「あなた

はセックス(男が陰茎を女性の膣にいれること)をしたことがありますか?」というような質

問が行われた(Ashby, Arcari & Edmonson 2006, p. 3)。 5 テレビを 1 日何時間見たかを計算するために、0-99 の値を自己申告する形式がとられた

(Ashby, Arcari & Edmonson 2006, p. 3)。 6 オーラルセックスをしたかどうかを把握するために、研究者は「これまでにオーラルセック

スをしたことがありますか?」という質問をした(回答者は「はい」か「いいえ」のいずれか

に回答できる)。オーラルセックスの定義は「男性の陰茎を女性が口で触れること、あるいは、

男性が女性の膣に口で触れること」とした(Brown & L’Engle 2009, pp. 137-38)。 7 前戯性行動の発生を計算するために、研究者は以下の質問を行った(回答者は「はい」か

「いいえ」のいずれかに回答できる)(Brown et al. 2006, p. 1022)。 あなたはこれまでに… 1)男性/女性の口に軽くキスをしたことがありますか? 2)男性/女性に舌を使ってキスをしたことがありますか? 3)男性に胸を触らせたことがありますか?女性の胸を触ったことがありますか? 4)男性に膣を触らせたことがありますか?女性の膣を触ったことがありますか? 5)オーラルセックスをしたことがありますか?

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触したと報告する青少年の 20%が性感染症を持っていることが報告されている(p. 159)。ポルノ

映画に接触している女児は、性交渉相手を多く持ち、クラミジア感染症に感染する傾向にある(p. 157)。 セクシャルハラスメント 9 SEM に接触した早期青年期の青少年は、中期青年期にセクシャルハラ

スメントを行う傾向にあると報告されている(Brown & L’Engle 2009, p. 143)。男児の SEM への接

触の増加は、ベースライン調査時の調整を行った後でも、2 年後のセクシャルハラスメント実施の

増加傾向を示した(p. 143)。 性的攻撃性 男児の大多数において、一般的に SEM への接触は性的な攻撃性の増加と無関係とし

ている(Ybarra & Mitchell 2005, p. 483)。しかし、ある研究では、過去 1 年の間に SEM に接触して

いる青少年は、接触していない青少年に比べて、その後 36 ヶ月の間で 6.5 倍性的攻撃性 10が高くな

8 危険な性行動への関与は、以下の 9 つの項目に回答者が関与したことがあるかどうかを複数

回答で聞くことで判断した。3 つ以上の項目への関与を「ハイリスク」とするリスクスコアを

研究者は作成した(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 158)。 1)早期のセックスの開始 2)複数の生涯の性交渉相手 3)3 ヶ月の間に 1 人以上の性交渉相手を持つ 4)最近のセックスにおけるコンドームの使用 5)性交渉時のアルコールやその他の薬物の使用 6)アナルセックス 7)性感染症歴 8)ウェブを通した性交渉の相手探し 9)買春

9 セクシャルハラスメントの実施は、回答者が過去 3 ヶ月間に参加した 7 つの活動(該当した

場合、複数回答あり)を通して評価した。活動は以下の通り(Brown & L’Engle 2009, p. 137)。 1)同級生の体、体重、服装についてネガティブな発言をした。 2)同級生に性的に触れたあるいは繕った。 3)同級生を性的に攻撃的な名前で追い込んだ。 4)同級生を性的に攻撃的な名前で呼んだ 。 5)同級生に対してあるいは同級生について性的に攻撃的なジョークを言った。 6)同級生の洋服を性的な方法で掴むあるいは引っ張った。 7)同級生をデートに強要した。

10 Ybarra et al.(2011)は、性的攻撃性を直接の性的暴力とテクノロジーベースのセクシャル

ハラスメントという 2 つのユニークなデータシステムから評価した。まず、直接の性的暴力を

測るために、回答者が「毎日/ほぼ毎日」「週 1~2 回」「年数回」「一度もない」と回答でき

る「キス、接触、あるいはその他の性的な行動を嫌がる人に何度行ったか?」という質問をし

た。次に、テクノロジーベースのセクシャルハラスメントを測るために、「毎日/ほぼ毎日」

「週 1~2 回」「年数回」「一度もない」と回答できるオンライン上と携帯電話のテキストメッ

セージ上での回答者の姿勢について以下の質問をした(Ybarra et al. 2011, pp. 4-5)。 あなたは今まで:

1)相手が望まないのにセックスについての話をしたことがありますか?

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る傾向にあると報告している(Ybarra et al. 2011, pp. 7, 11)。更に、暴力的な SEM11への接触は、性

的な攻撃性のレベルを著しく上げている。同じ縦断調査において、暴力的な SEM に接触している青

少年は、接触していない青年と比べて 24 倍性的に攻撃的な行動を持つ傾向にあるということが分か

っている(p. 11)。 ハイリスクな、あるいは「リスク因子を持っている」男児における、性的攻撃性の傾向は一定であ

る。ポルノグラフィーを盛んに見るハイリスクの男児は、ポルノグラフィーを見ない同級生と比べ

て、性的攻撃性のレベルが 4 倍高い(Ybarra & Mitchell 2005, p. 483)。更に、SEM を使用するハイ

リスクの青少年は、強制的あるいはみだらな性行動 12に参加する傾向にあると報告されている。陽

性ではないが SEM の使用をはっきりと報告した類似する青少年と比較した際、ハイリスクの青少年

は、膣への強要的な挿入(10.6% v. 2.5%)、膣への強制的な挿入(5% v. 1.9%)、肛門への強制的

な挿入(6.3% v. 3.8%)、その他の強制的な性行動(18.8% v. 10%)、動物との性交(5.6% v. 1.3%)

をする傾向にある(Alexy, Burgess & Prentky 2009, pp. 447-48)。 非行性と犯罪性 SEM に接触しているハイリスクの青少年は、不適切あるいは不法な非性的行動を

行う傾向にもある 13。Alexy, Burgess & Prentky 2009(p. 447)の研究は、SEM の使用を明確に報告し

2)相手が望まないのに体の特徴や性的な行為などの個人的な性的情報を聞いたことが

ありますか? 3)相手が望まないのに性的なことをオンラインで行えるか聞いたことがありますか? 4)相手が望まないのに性的なテキストメッセージを送ったことがありますか? 5)相手が望まないのに性的な画像のテキストメッセージを送ったことがありますか?

11 暴力的な SEM は、SEM への接触がある程度あると報告した回答者において、「はい」か

「いいえ」で答えることのできる、以下の質問がされた(Ybarra et al. 2011, p. 5)。 1)人の性的な場面で人が肉体的に傷つけられている映画をこれまでに見たことがあり

ますか? 2)人の性的な場面で人が肉体的に傷つけられている雑誌をこれまでに見たことがあり

ますか? 3)人の性的な場面で人が肉体的に傷つけられているアダルトウェブサイトを見に行っ

たこと、あるいは見たことがありますか? 12 強制的あるいはみだらな性行動を把握するために、研究者は「はい」か「いいえ」で答え

られる幾つかの行動を対象者がしたことがあるかどうかを対象者の親に質問した。それらの行

動とは、対象者が対象者よりも若い人に対して性的な触れ方、性器の接触、膣あるいは肛門へ

の強要的な挿入、性的な行動の強要、膣・肛門・異物への強制的な挿入、同年代の人や他人の

セックスのまね、他者のスカート/パンツを下げる、露骨な性的指示/おどし、性的に攻撃的な

発言、性的な絵/落書き、ひわいなジェスチャーや電話、他者の身体への暴行、同年代の人や他

人の露出やのぞき、動物とのセックスなどである(Alexy, Burgess & Prentky 2009, p. 446)。 13 不適切あるいは不法な非性的行動を把握するために、研究者は「はい」か「いいえ」で答

えられる幾つかの行動を対象者がしたことがあるかどうかを対象者の親に質問した。それらの

行動とは、放火、動物虐待、無断欠席、家出、嘘、言葉や身体的ないじめ、カンニング、盗み、

武器の使用、危険な行動などである(Alexy, Burgess & Prentky 2009, p. 446)。

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10

た陽性ではない類似の青少年と比較した際、ハイリスクの青少年が、無断欠席(24.4% v.15%)、嘘

(40% v. 26.9%)、窃盗(39.4% v. 27.5%)を著しくする傾向にあるとしている。 (4) 性への姿勢と性表現 ジェンダーロールへの姿勢 14 最初のインタビューにおいて SEM の接触頻度が高い女児は、2 年後

のジェンダーロールへの姿勢の低さが伺えた(Brown & L’Engle 2009, p. 142)。 寛容な性規範 15 最初のインタビュー時に、SEM への接触頻度が高い男児は、2 年後のより寛容な

性規範と関係していた(p. 142)。更に、長期の接触は、同級生に対する性活動への誇大な思い込み

や性的に寛容な姿勢を招く 16(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 159)。ある研究では、SEM への接

触がない青少年は性的な寛容性のスケールの 43%にあるのに対して、SEM への接触が 10 回以上あ

る青少年は 20 ポイント高くなった(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 160)。

14 ジェンダーロールへの姿勢を把握するために、研究者は回答者にジェンダーの適切な行動

について質問した。回答者は、以下の質問例に対して「強く反対する」「反対する」「賛成も

反対もしない」「賛成する」「強く賛成する」のいずれかに回答できる。 1)女の子がフットボールやホッケーなどの荒いスポーツをしたいと思うことはいいこ

とだ。 2)男性は常にセックスの準備をしていなければならない 3)男子が女子のようにふるまうことは気に食わない。

高い数値は、ジェンダーロール規範への進行を意味した(Brown & L’Engle 2009, p. 137)。 15 寛容な性規範を把握するために、回答者には「強く反対する」「反対する」「賛成も反対

もしない」「賛成する」「強く賛成する」のいずれかで回答できる以下のような質問が幾つか

与えられた。 1)結婚前にセックスをしてはならない。 2)愛し合っていれば結婚前にセックスしてもよい。

高い数値は、より寛容な性規範を意味した(Brown & L’Engle 2009, p. 137)。 16 性的に寛容な姿勢は、以下 10 の性への寛容性に対する質問を通して測定された。回答は、

1 が「強く反対する」で 5 が「強く賛成する」という 1~5 までの範囲で選択できた。調査にお

いて、回答者は最低 8 の質問に回答し、研究者は性的寛容性のスコアを出すためにその回答を

平均した(Braun-Courville & Rojas 2009, p. 158-59)。 1)私は複数の人とセックスをしたい 2)一人以上の人と性的な関係を継続してもいい 3)その人を好きでなくてもセックスを楽しむことができる 4)最高のセックスは条件のないものだ 5)もっと自由にセックスできれば人生の問題は少なくなる 6)お互いが同意すれば、セックスは単純な贈り物の交換であってもいい 7)一夜の関係は時々楽しい 8)セックスをする際、お互いに信頼しあっていなくてもいい 9)セックスが単なる 身体の緊張をほぐすためのものでもいい 10)カジュアルなセックスを受け入れられる

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11

内容の制限 17 青少年の親がテレビ番組を制限することは、青少年の早期のセックスの開始を軽減

させる傾向にある(Ashby, Arcari & Edmonson 2006, p. 1)。親のテレビ番組の制限不足は、セックス

に対する親の強い反対を報告した青少年の 1 年以内のセックスの開始と強く関係し、この関係は、

複数の影響を調整してもなお持続していた(p. 8)。 テレビの最小限の視聴 テレビの使用頻度の低さは、セックスの早期開始の可能性を低くさせる (p. 1)。テレビを 1 日 1 時間以下しか見ない青少年は、1 日 1~1.9 時間見る青少年と比べて、セッ

クスを開始する可能性が低く、またその青少年も 1 日 2 時間見る青少年と比べて、セックスを開始

する可能性が低い(p. 7)。 良い成績 18 幾つかの男児においては、良い成績と親のセックスへの強い反対があると性交のリス

クが更に減ることが分かった(Brown et al. 2006, p. 1024)。 e. 研究手法のサンプル

多くの研究は、コンピューター音声インタビュー装置の支援を受けた質問票調査とインタビュー調

査を通して行われている。参加者は全てボランティアだが、幾つかのケースでは、ボランティアへ

の支払いがされていた。以下は、本調査で取り上げた 2 つの縦断調査の研究方法の例であり、本調

査で取り上げられている他の研究にも採用されている方法論を網羅している。 Brown, J.D., & L’Engle, K.L. (2009). X-Rated: Sexual Attitudes and Behaviors Associated With U.S. Early Adolescents' Exposure to Sexually Explicit Media(アダルト指定:早期の青少年が露骨な性表現メ

ディアに接触することに関連した性的態度と性行動). 2001 年の秋に研究者は、包括的なメディア質問票と親の同意書を 7-8 年生の 5092 名を対象に郵送し、

そのうち 3261 名が質問票に回答した。研究者は、そこから対象者が在宅健康調査を完了させるため

に、1200 人の生徒の層化抽出を行い 2002 年の春と夏に 1074 名の生徒がベースラインの健康調査を

実施した。そのうち 95%(N=1017)の青少年は、2004 年の春に行われたフォローアップの在宅健康

調査にも参加した。研究者は、2002 年と 2004 年のいずれの調査においてもコンピューターの音声

インタビュー装置(Audio-Computer Assisted Self Interview:Audio-CASI)を使用した。これは、回答

者が個人のイヤホンを使用して質問票調査の電話に応対しつつ回答をノートパソコン上に入力する

方法により実施にした。ベースライン調査を埋めた 1074 名のうち 967 名が、(1)2002 年の春と夏

のベースライン調査と(2)2004 年の春のフォローアップ調査に参加し、(3)ベースライン調査に

おいて、映画、漫画、コンピューターの性的に露骨なコンテンツの使用に関する 3 つの質問に回答

した。この 967 名が Brown & L’Engle(2009)の研究対象者となった。全ての青少年には、最終結

果への選定の有無に関わらず、各健康調査への参加料として 20 ドル支払われた。 17 内容の制限を把握するために、回答者自身がテレビ番組の視聴を判断することを親が許可

しているかどうかについて質問した。「いいえ」の回答の場合「内容の規制がない」と判断さ

れ、「はい」の回答の場合「内容の規制がある」と判断された(Ashby, Arcari & Edmonson 2006, p. 3)。 18 回答者が良い成績を持っているかどうかを把握するために、最近受け取った成績表の結果

を自己申告してもらった。回答者は、1 を「A が中心」、7 を「D が中心」とした 1~7 の回答

を選択できた(Brown et al. 2006, p. 1023).

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12

Ashby, S.L., Arcari, C.M., & Edmonson, M.B. (2006). Television Viewing and Risk of Sexual Initiation by Young Adolescents(早期青年期の青少年のテレビ視聴とセックス開始のリスク). 本研究は、1994 年~1996 年までに得られたデータの 2 次分析を含んでいた。オリジナルの調査は、

青少年の健康を測るという議会の指針を通して、National Longitudinal Survey of Adolescent Health ("Add Health")のもとで実施されたものである。データは 2 波に分けて収集された。 第 1 波は、1994 年 9 月から 1995 年 12 月にかけて、学校、親、学校管理者への質問票と、在宅イン

タビューを通して行われた。調査は、地域、都市性、学校の種類、人種の構成、学校の規模に応じ

て層化された 7~12 年生の生徒の健康に関する内容を含んだ。合計 20745 名の生徒が、学校での調

査と在宅インタビューを実施した。 第 2 波は、1996 年の 4 月~8 月にかけての在宅フォローアップインタビューと学校管理者への電話

インタビューを通して収集された。本調査は、セックスの開始などの繊細な質問を含んでいること

から、部分的に Confidential computer-assisted self-interviewing systemを通して収集された。調査は、9~12 年生の生徒の健康に関する内容を含んだ。第 1 波コホートの 16706 名の生徒がインタビューに

選ばれ、13568 名が調査を実施した。 本研究では、(1)第 1 波のインタビューにおいて 16 歳以下で、(2)ベースライン調査においてセ

ックスをしたことがないと報告し、(3)1 週間のテレビの視聴時間を報告し、(4)完全な共変量

データを持ったサンプル(N=5178)を抽出した。更に、人種を白人、黒人、ヒスパニックと回答し

たサンプル(N=4808)以外の人種の回答は、サンプルサイズが小さいため除外した。この 4808 名

が Ashby, Arcari & Edmonson(2006)の研究対象者となった。

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13

f. 参考文献   Alexy, E.M., Burgess, A.W., & Prentky, R.A. (2009). Pornography Use as a Risk Marker for an

Aggressive Pattern of Behavior among Sexually Reactive Children and Adolescents, Journal of American Psychiatric Nurses Association, 14(6):442-453.

  Ashby, S.L., Arcari, C.M., & Edmonson, M.B. (2006). Television Viewing and Risk of Sexual Initiation by Young Adolescents. Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine, 160(4):375-380.

  Braun-Courville, D.K., & Rojas, M. (2009) . Exposure to Sexually Explicit Web Sites and Adolescent Sexual Attitudes and Behaviors, Journal of Adolescent Health, 45:156-162.

  Brown, J.D., L’Engle, K.L., Pardun, C.J., Guo, G., Kenneavy, K., & Jackson, C. (2006). Sexy Media Matter: Exposure to Sexual Content in Music, Movies, Television and Magazines Predicts Black and White Adolescents’ Sexual Behavior. Pediatrics, 117(4):1018-1027.

  Brown, J.D., & L’Engle, K.L. (2009). X-Rated: Sexual Attitudes and Behaviors Associated With U.S. Early Adolescents' Exposure to Sexually Explicit Media. Communication Research, 36(1):129-151.

  Lenhart, A. (2009). Teens and Sexting: How and Why Minor Teens Are Sending Sexually Suggestive Nude or Nearly Nude Images Via Text Messaging, Pew Research Center, Pew Internet & American Life Project.

http://ncdsv.org/images/PewInternet_TeensAndSexting_12-2009.pdf

  Owens, E.W., Behun, R.J., Manning, J.C., & Reid, R.C. ( 2012) . The Impact of Internet Pornography on Adolescents: A Review of the Research, Sexual Addiction & Compulsivity, 19:99-122.

  Roberts, D.F., Foehr, U.G., Rideout, V. (2005) Generation M: Media in the lives of 8–18 year olds. Menlo Park, CA: The Henry J. Kaiser Family Foundation.

http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED527859.pdf

  Shafer, A., Bobkowski, P., & Brown, J.D. (2013). Sexual Media Practice: How Adolescents Select, Engage with, and Are Affected by Social Media In K.E. Dill (Ed.), The Oxford Handbook of Media Psychology, (pp. 233 – 251). New York, NY: Oxford University Press.

  Ybarra, M.L., Mitchell, K.J., Hamburger, M., Diener-West, M., & Leaf, P.J. (2011). X-Rated Material and Perpetration of Sexually Aggressive Behavior among Children and Adolescents: Is There a Link?, Aggressive Behavior, 37:1-18.

  Ybarra, M.L. & Mitchell, K.J. (2005). Exposure to Internet Pornography among Children and Adolescents: A National Survey, CyberPsychology & Behavior, 8(5):473-486.

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14

g. その他論文の紹介 1.

A. タイトル

(英・和訳)

Sexy Media Matter: Exposure to Sexual Content in Music, Movies,

Television and Magazines Predicts Black and White Adolescents’

Sexual Behavior

(性メディアの問題:音楽、映画、テレビ、雑誌の性的なコンテンツへ

の接触と黒人と白人の青少年の性的行動の予測)

B.著者名(および著者の

所属)

Jane D. Brown(ノースカロライナ大学、ジャーナリズム・マスコミュ

ニケーション学部教授:博士)

Kelly L. L’Engle(ノースカロライナ大学、ファミリーヘルスインタ

ーナショナル、アソシエートサイエンティスト:博士)

Carol J. Pardun(ノースカロライナ大学、ジャーナリズム・マスコミ

ュニケーション学部:修士、博士)

Guang Guo(ノースカロライナ大学、社会学部:博士)

Kristin Kenneavy(ノースカロライナ大学、社会学部:修士)

Christine Jackson(Pacific Institute for Research on Education:

修士、博士)

C.書誌情報(雑誌名、

巻、号、ページ数)、イ

ンパクト ファクター

Pediatrics(ピディアトリクス)、117(4)(第 117 巻‐第 4 号)、2006

年、1018-1027 ページ(ページ数:9)インパクトファクター:5.473

D.アブストラクト(論文

に記載されているものを

翻訳)

背景:マスメディアは、セックスの魅惑的な描写をすることで、十代の

妊娠や性感染症に加担しているという批判をしばしば受けている。しか

し、メディアの描写が青少年の性行動に実際影響を与えているかどうか

については、比較的少しのことしか分かっていない。

目的:早期青年期の青少年の 4 種類のマスメディア(テレビ、映画、音

楽、雑誌)の性的コンテンツへの接触が、中期青年期の性行動に影響を

与えるかどうかについて経時的に評価する。

研究計画:ノースカロライナ州中部にある 14 の中学校に通う 1017 名の

黒人と白人の青少年に対する在宅縦断調査が実施された。青少年は 12~

14 歳の時にベースラインのインタビュー調査を受け、2 年後にも調査を

受けた。各青少年の性メディア鑑賞習慣についての評価基準が作成され

た。青少年は、性行動を予測するための要因として知られているその他

の質問事項にも回答した。

評価方法:ベースライン調査と 2 年後の調査において、前戯的性行動

(キス・愛撫・オーラルセックス)とセックスの開始について評価し

た。

結果: 12~14 歳の時に性メディア鑑賞習慣がある上位五分位値の白人

青少年は、下位五分位値の白人青少年よりも、その他の関連要因を考慮

したとしても、14~16 歳の時にセックスを経験している傾向にあった。

この関係は黒人の青少年の場合、その他の関連要因を考慮すると統計学

的に有意ではなかった。

E.研究の目的(仮説も含

む)

性表現メディアへの接触が青少年の性行動に長期的な影響を与えるかど

うかについての研究は、青少年向けのメディアにおける露骨な性的コン

テンツの主流化に対する長年の懸念にも関わらず、比較的少しか行われ

ていない。テレビやミュージックビデオなどの特定のテレビ番組に特化

した研究は行われているが、テレビは早期青年期の青少年(11~14 歳)

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15

のメディアの視聴時間の 40%程度でしかない。本研究の目的は、青少年

が頻繁に使用する 4 種類のメディアであるテレビ、音楽、映画、雑誌の

性的コンテンツが黒人と白人の青少年の性行動に与える影響を調査する

ことである。中期青年期よりも前の高度な性行動やセックスの経験が健

康への悪影響に最も明確に関係することから、高年齢の青少年ではな

く、黒人と白人の青年期早期(12 歳~14 歳)の青少年のメディアの使

用パターンと性行動について考慮している。なお、性表現として、キ

ス、愛撫、オーラルセックス、およびセックスの経験が考慮されてい

る。

仮説:性メディア鑑賞習慣(SMD:Sexual Media Diets)が多い早期青年

期の青少年の方が、性メディア鑑賞習慣が少ない早期青年期の青少年よ

りも、中期青年期に高度な前戯やセックスをする傾向にある。

F.対象者の特性(性別、

年齢、所属、)

調査期間)

本研究は、アメリカ南東部の地方、郊外、都市の 14 の公立中学校の青

少年を対象にしている。回答者(N=1017)は、性別と人種で(黒人女児

262 名、黒人男児 264 名、白人女児 243 名、白人男児 248 名)に均等に

分けられた。対象となった青少年は、2002 年の春と夏(3 月~9 月)に

初めてインタビューを受けた時は平均 13.6 歳で、2004 年の春(6 月下

旬~9月)にフォローアップが行われた時は平均 15.6 歳であった。

G.方法論(実験、相関研

究、縦断研究、影響の自

己報告など)

+方法の概略

本研究は縦断研究である。2001 年の秋に研究者は、包括的なメディア質

問票と親の同意書を 7-8 年生の 5092 名を対象に郵送した。そのうち

3261 名が質問票に回答し返送した。研究者は、そこから対象者が在宅健

康調査を完了させるために、1200 人の生徒の層化抽出を行った。そし

て、2002 年の春と夏に 1074 名の生徒がベースラインの健康調査を完了

した。そのうち 95%(N=1017)の青少年は、2004 年の春に行われたフォ

ローアップの在宅健康調査を完了した。

H.影響を与える変数(性

表現に関する変数)+測

定方法

性メディア鑑賞習慣(SMD:Sexual Media Diets):研究者は、以下の式

を使って SMD が本研究に最も影響を与える変数であることを特定した。

SMD = [性的コンテンツの視聴割合]*[平均メディア視聴頻度]

研究者はまず回答者に、テレビ、自宅と映画館で見る映画、音楽、雑誌

の 4 種類のメディアにおける特定のメディアあるいは「媒体」の膨大な

リストを提供した。回答者は、普段使用するメディア全てに○をつける

よう指示された。その後、研究者は、思春期の発達・恋愛関係・身体の

露出や裸体・性的ほのめかし・愛撫やキス・セックスについての描写や

参考になる「媒体」の要素を単位レベルで分析した。「単位」は、雑誌

の中の文章・見出し・写真、歌詞のフレーズ、テレビ番組上区切れない

シーケンス(平均 4.4 秒)、映画上区切れないシーケンス(平均 6.4

秒)とした。研究者はこのデータを各回答者の性的コンテンツの視聴割

合とメディア視聴頻度を計算するために使用した。

1. 性的コンテンツの視聴割合:本変数を計算するために、回答者の性

コンテンツ単位の総数を合計した。その後、回答者がリストから選

択した全てのメディアにおいて視聴した単位の総数を合計した。最

後に、性的コンテンツ単位を総視聴単位で割った。

2. 平均メディア視聴頻度:本変数を計算するために、回答者の 4種類

のメディアの合計平均使用率を各種媒体の重み付けをして特定し

た。テレビと音楽の使用は、授業のある日と週末、学年度と夏休み

期間中の視聴時間;雑誌の使用は部数;映画鑑賞は映画館と家で映

画を見る頻度の回答を平均することで計算した。

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16

これらのデータをもとに、性的コンテンツの視聴割合を回答者の平均メ

ディア視聴頻度に掛けることで SMD が算出された。

人口統計学的変数と文脈上の共変量:年齢、人種、性別を超えて、以下

の内容が分析された:

1. 社会経済状況:回答者が学校で無料あるいは値引きされた朝食か昼

食を食べたか否か。

2. 両親の教育水準:父親と母親の教育レベルで高い方。

3. 思春期の状況:同級生の思春期の発達度合いとの比較。

4. 母親との関係:母親との関係の質

5. 親の実践的なしつけ:門限の設定、夕食を共にすること、CD の購入

の制限など親が実践している活動の数。

6. セックスに対する親の認識:青少年の時期にセックスをすることへ

の親の是認。

7. 宗教への参加:宗教儀式への参加頻度。

8. 信仰:宗教が重要だということへの同意。

9. 学校とのつながり:学校での幸福度、先生に面倒をみられている意

識、先生と良い関係を構築できていない状況。

10. 学業成績:最近受け取った通知表の内容。

11. 性規範への認識:セックスを経験している友達の数。

I.影響を受ける変数(対

象者の行動、態度(特に

異性に対する意識)パー

ソナリティ等)

1. 前戯性行動:青少年の前戯性行動を評価するために、多項目質問票

が使用された。調査では女児の回答者に対して、以下 5 つの性行動

に参加したかどうかを「はい」か「いいえ」で回答してもらった:

(1) 「男性の口に軽くキスをした」(2)「男性に舌を使ってキスを

した」(3)「男性に胸を触らせた」(4)「男性に膣を触らせた」(5)

「オーラルセックスをした」。男児には、上記質問事項を女性との関

係として質問した。

2. 最初のセックスの経験年齢:「これまでにセックスをしたことがあり

ますか?」と質問し、経験者には回数と最初にセックスを経験した

月と年を質問した。これらの回答をもとに、初めてセックスした年

齢を月齢も含めて調査した。

J.影響に関する結果の概

要(箇条書き)

1. 両変数にかかわらず、SMD は黒人の青少年の前戯行動には関連性が

みられなかった。SMD の五分位置(20%)の増加は、セックスの経験

リスクを 14%増加させていた。両変数がモデルに一度加算される

と、黒人の青少年の SMD とセックスの経験の関係は有意ではなくな

った。

2. セックスへの親の反対と信仰の高さは、白人の青少年の前戯性行動

と関係しなかった。白人の青少年においては、ベースライン調査時

の SMD がフォローアップ調査時の前戯性行動と強い関係にあった。

SMD の五分位置の増加は、セックスの経験リスクを 50%増加させて

いた。メディアの性的コンテンツへの接触が上位五分位置にある白

人の青少年は、リスクが 120%増加し、接触が下位五分位置にある

白人の青少年に比べて 2.2 倍セックスを経験している傾向にあっ

た。

K.その他の結果の概要

(箇条書き)

1. 黒人の青少年においては、思春期が早く始まった男児はセックスの

経験の増加リスクがみられ、年齢が高くなると前戯行動の増加リス

クがみられた。親の実践的なしつけや親の十代のセックスへの反対

は、セックスの経験リスクを下げていた。

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17

2. 白人の青少年においては、社会経済状況の低さのみが、セックスの

経験と関係していた。また、年齢の高さは、性行動の増加リスクと

関係していた。十代のセックスへの親の反対と良い学業成績は、セ

ックスの経験リスクを下げていた。同級生の寛容な性規範に対する

認識は、セックスの経験リスクを上げていた。

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18

2.

A. タイトル

(英・和訳)

X-Rated: Sexual Attitudes and Behaviors Associated With U.S.

Early Adolescents' Exposure to Sexually Explicit Media.

(アダルト指定:早期の青少年が露骨な性表現メディアに接触すること

に関連した性的態度と性行動)

B・著者名(および著者

の所属)

Jane D. Brown(ノースカロライナ大学、ジャーナリズム・マスコミュ

ニケーション学部教授:博士)

Kelly L. L’Engle, (ノースカロライナ大学、ファミリーヘルスイン

ターナショナル、アソシエートサイエンティスト:博士)

C・書誌情報(雑誌名、

巻、号、ページ数)、イ

ンパクト ファクター

Communication Research(コミュニケーションリサーチ)、 36(1)(第

36 巻‐第 1号)、2009 年、129-151 ページ(ページ数:22)インパクト

ファクター:2.493

D・アブストラクト(論

文に記載されているもの

を翻訳)

本研究は、青少年早期の多様なサンプル(ベースラインの平均年齢=

13.6 歳、N = 967)をもとに、アダルト雑誌・アダルト映画・インター

ネットにおける露骨な性表現コンテンツ(ポルノグラフィーや官能)の

使用と性的態度・性行動の関係について、予測調査を通して検討した。

2/3(66%)の男児と 1/3 以上(39%)の女児は、過去 1 年間で最低 1 つ

の露骨な性表現メディアに接触していた。コンテンツへの接触の高さ

は、ベースラインとして男児も女児も、黒人であること、年齢が高いこ

と、教育水準が低い両親を持つこと、低い社会経済状況にあること、興

奮への欲求が高いことと関連していた。縦断的解析によって、男児のコ

ンテンツへの早期の接触が、2 年後のジェンダーロールに対する意識の

低さ、性規範への寛容性の高さ、セクシャルハラスメントの実施、オー

ラルセックスとセックスの経験に関連することが分かった。また、女児

のコンテンツへの早期の接触が、その後のジェンダーロールに対する意

識の低さ、オーラルセックスとセックスの経験に関連することも分かっ

た。最後に、健全な性の社会化への示唆について議論した。

E・研究の目的(仮説も

含む)

本研究の目的は、露骨な性表現メディア(SEM:sexually explicit

media)コンテンツへの早期の接触が、2 年後の性的態度と性行動に与え

る影響について、経時的に評価することである。青少年の SEM へのアク

セス増加が、彼らに否定的な影響を与えることが懸念される中、研究者

はそれらのコンテンツの近年の使用状況や影響について、特にアメリカ

において比較的少ししか知らない。台湾、スウェーデン、オランダで

は、特に男児に関する迅速かつ頻繁に使用できる記録をしているが、コ

ンテンツへの接触による態度と行動の両方の影響評価を縦断的に行った

研究はない。ポルノグラフィーの影響研究の多くは、性的な関係や行動

に関する是非についての考え方を自ら形成し始め、その態度や行動に最

も影響を受けやすい早期青年期の青少年を対象にするのではなく、大学

生や成人を含んでいる。そこで、本研究は、アメリカの人口統計学的に

多様な早期青年期の青少年を対象にした SEM の使用パターンについて説

明し、SEM コンテンツへの早期接触と 2 年後の性的態度と性行動の関係

について調査する。

1. 仮説 1: 早期青年期に SEM に接触することは、後期青年期のジェン

ダーロールに対する意識の低さと性規範への寛容性の高さに関係す

るのか。

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19

2. 仮説 2: 早期青年期に SEM に接触することは、特に男児の後期青年

期のセクシャルハラスメントの実施に関係するのか。

3. 仮説 3: 早期青年期に SEM に接触することは、男児と女児の後期青

年期のオーラルセックスや早期のセックスへの可能性が高いことに

関係するのか。

F・対象者の特性(性

別、年齢、所属、)

調査期間)

本研究は、アメリカ南東部の地方、郊外、都市の 14 の公立中学校の青

少年を対象にしている。回答者(N=967)は、性別(男 483 名、女 484

名)と人種(白人 478 名、黒人 489 名)に均等に分けられた。対象とな

った青少年は、2002 年の春と夏に初めてインタビューを受けた時は平均

13.6 歳で、2004 年の春(6 月下旬~9 月)にフォローアップが行われた

時は平均 15.6 歳であった。

G・方法論(実験、相関

研究、縦断研究、影響の

自己報告など)

+方法の概略

本研究は縦断的研究である。2001 年の秋に研究者は、包括的なメディア

質問票と親の同意書を 7-8 年生の 5092 名を対象に郵送した。そのうち

3261 名が質問票に回答し返送した。研究者は、そこから対象者が在宅健

康調査を完了させるために、1200 人の生徒の層化抽出を行った。そし

て、2002 年の春と夏に 1074 名の生徒がベースラインの健康調査を完了

した。そのうち 95%(N=1017)の青少年は、2004 年の春に行われたフォ

ローアップの在宅健康調査を完了した。このうち 967 名が、2002 年の春

と夏のベースライン調査と 2004 年の春のフォローアップ調査に参加

し、ベースライン調査において、映画、漫画、コンピュータの性的に露

骨なコンテンツの使用に関する 3つの質問に回答した。

H・影響を与える変数

(性表現に関する変数)

+測定方法

露骨な性表現メディア(SEM:sexually explicit media )

質問:「過去 12 ヶ月にどれくらいの頻度でアダルト映画を見ました

か?」「過去 12 ヶ月にどれくらいの頻度で Playboy、Playgirl、

Penthouse、Hustler などの雑誌を読みましたか?」「どれくらいの頻度

でコンピュータやインターネットの裸の女性や男性の画像を見ます

か?」(回答者は上記 3 つの質問に対して、1 週間に 1 回以上、1 週間に

1 回程度、1 ヶ月に 1 回程度、数える程度、一度もない、のいずれかに

回答できる。)

制御変数:

1. 興奮欲求:本変数は、衝動性と興奮欲求を合わせた 5 項目の測定尺

度を設定し「強く賛成しない」から「強く賛成する」というリッカ

ート尺度の 5 件法を用いて評価した。5 項目の測定尺度は以下の通

り「私はたとえ規則に違反するとしても新しい興奮を体験すること

が好きだ」「私は怖いことをすることが好きだ」「私は最も楽しいこ

となら何でもする」「私は心地良く感じることなら何でもする」「私

は面白くて予測できない友達が好きだ」。

2. 社会経済状況:「あなたは、今年学校で無料あるいは値引きされた朝

食か昼食を食べましたか?」

3. 両親の教育水準:父親と母親の高等教育レベル

4. 思春期の状況:「あなたは、自分の身体の発達が同じ年の他の女児

(男児)よりも早いあるいは遅いと思いますか?」

I・影響を受ける変数

(対象者の行動、態度

(特に異性に対する意

識)パーソナリティ等)

1. 性規範への寛容性:本変数は、ベースライン調査及びフォローアッ

プ調査において、回答者が思う適切な性的行動に関する問を通して

評価した。質問例は、「結婚前にセックスをしてはならない」や「愛

し合っていれば結婚前にセックスしてもよい」など。

2. ジェンダーロールに対する意識:本尺度は、ベースライン調査では

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20

10 項目、フォローアップ調査では 7 項目の適切なジェンダーロール

についての質問を通して評価した。質問例は、「女の子がフットボー

ルやホッケーなどの荒いスポーツをしたいと思うことはいいことで

すか?」「男性は常にセックスの準備をしていなければならない」

「男の子が女の子のようにふるまうことは気に食わない」など。

3. セクシャルハラスメントの実施:本尺度は、過去 3 ヶ月間に参加し

た 7 つの活動(該当した場合)を通して評価した。活動は以下の通

り「同級生の体、体重、服装についてネガティブな発言をした」「同

級生に性的に触れたあるいは繕った」「同級生を性的に攻撃的な名前

で追い込んだ」「同級生を性的に攻撃的な名前で呼んだ」「同級生に

対してあるいは同級生について性的に攻撃的なジョークを言った」

「同級生の洋服を性的な方法で掴むあるいは引っ張った」「同級生を

デートに強要した」。

4. オーラルセックス:本尺度は、ベースライン調査及びフォローアッ

プ調査において、回答者に「これまでにオーラルセックスをしたこ

とがありますか?」という質問をすることで評価した。オーラルセ

ックスの定義は「男性の陰茎を女性が口で触れること、あるいは、

男性が女性の膣に口で触れること」として回答者に与えられた。

5. セックス:本尺度は、ベースライン調査及びフォローアップ調査に

おいて、回答者に「これまでにセックス(つまり、男性のペニスを

女性の膣に入れること)をしたことがありますか?」と質問するこ

とで評価した。

J・影響に関する結果の

概要(箇条書き)

1. 性規範への寛容性: ベースライン調査時の SEM への接触頻度の高さ

は、人口統計学の変数、興奮欲求、ベースライン調査時の性規範を

調整した後でも、男児の間で、2 年後の性規範への寛容性と関連し

ていた。SEM の使用は、女児の性規範への寛容性に関する回帰モデ

ルに対して、有意な予測因子はなかった。

2. ジェンダーロールに対する意識:SEM の使用は、男児のジェンダー

ロールに対する意識に関するフォローアップ調査において、有意な

予測因子はなかった。女児の間では、ベースライン調査時における

SEM の使用頻度の高さは、ベースラインの調整をした後でも、2年後

のジェンダーロールに対する意識の低さを示していた。

3. セクシャルハラスメントの実施:SEM の使用は、男児のセクシャル

ハラスメントに関係していたが、女児には関係していなかった。ベ

ースライン調査時の SEM への接触頻度の高さは、ベースラインの調

整をした後でも、男児の 2 年後のセクシャルハラスメントの実施頻

度の増加に関係していた。女児の間では、少量だが有意なゼロ次相

関が SEM の使用とセクシャルハラスメントの間で現れたが、回帰分

析においてベースライン調整が考慮された際、関連の有意性はなく

なった。

4. オーラルセックス:

a. ベースライン調査時における男児の SEM への接触頻度の高さは、

2 年後のオーラルセックスの経験と関係があった。ベースライン調

査時に 3 種類の SEM を使用していた男児は、SEM を使用していない

男児に比べて、フォローアップ調査時に 3 倍オーラルセックスを経

験している傾向にあった(59% vs. 20%)。

b. ベースライン調査時にセックスをしていない女児は、SEM の使用

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21

がオーラルセックスの経験を増加させている可能性が高いことが、

フォローアップ調査時に示された。ベースライン調査時に 3 種類の

SEM を使用していた女児は、SEM を使用していない女児に比べて、フ

ォローアップ調査時に 1.5 倍オーラルセックスを経験している傾向

にあった(27% vs. 19%)。

5. セックス:

a. ベースライン調査時に SEM への接触が高かった男児は、2 年後に

セックスを経験している傾向にあった。ベースライン調査時に 3 種

類の SEM を使用していた男児は、SEM を使用していない男児に比べ

て、フォローアップ調査時に 9.5 倍セックスを経験している傾向に

あった(38% vs. 4%)。

b. ベースライン調査時にセックスを経験していなかった女児は、

SEM の使用がセックスの経験を増加させている可能性が高いことが

フォローアップ調査時に示された。ベースライン調査時に 3 種類の

SEM を使用していた女児は、SEM を使用していない女児に比べて、フ

ォローアップ調査時に 9 倍セックスを経験している傾向にあった

(36% vs. 4%)。

K・その他の結果の概要

(箇条書き)

SEM の使用は、白人に比べて黒人の青少年、十代の前半よりも十代の後

半の青少年、社会経済レベルの低い十代、教育水準の低い両親を持った

青少年、興奮を求める青少年において頻度が高かった。

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22

3.

A. タイトル

(英・和訳)

Television Viewing and Risk of Sexual Initiation by Young

Adolescents.

(早期青年期の青少年のテレビ視聴とセックス開始のリスク)

B・著者名(および著者

の所属)

Sarah L. Ashby(ウィスコンシン大学医学公衆衛生科・一般小児科青年

期医学部・小児科学科:医学士、修士)

M. Bruce Edmonson(ウィスコンシン大学医学公衆衛生科・一般小児科

青年期医学部・小児科学科:医学士、医学博士)

Christine M. Acari(ウィスコンシン大学医学公衆衛生科・公衆衛生科

学部:公衆衛生学修士、医学博士)

C・書誌情報(雑誌名、

巻、号、ページ数)、イ

ンパクト ファクター

Archives of Pediatrics and Adolescent Medicine(アーカイブオブピ

ディアトリクスアンドアドーレセントメディスン)、160(4)(第 160 巻

-第 4 号)、2006 年、375-380 ページ(ページ数:5)インパクトファク

ター:5.73

D・アブストラクト(論

文に記載されているもの

を翻訳)

目的:早期青年期の青少年のセックス開始リスクとテレビの視聴が関係

しているかどうかを把握すること。

研究計画:1994 年~1996 年までに得られたデータの 2次分析。

参加者:ベースライン調査のインタビュー時にセックスを経験していな

いと報告した 16 歳以下の 4808 名の生徒。

テレビへの接触状況:回答された日々のテレビ視聴頻度を「高い」か

「低い」に分類したものと、テレビ番組の視聴に対する親の制限を接触

状況とした。

主な測定方法:潜在的交絡因子で調整された 1 年後のフォローアップ調

査時のセックス開始のオッズ比。

結果:2414 名(48.8%)の生徒は、ベースライン調査時にテレビを 2 時

間以上視聴していた。1 年後のフォローアップ調査時までに、791 名

(15.6%)の生徒が、セックスをしていた。セックスの開始は、テレビ

の使用率の高さ、テレビ番組に対する親の規制の不足と関係していた。

多くの生徒は(73.8%)、親のセックスへの強い反対を報告していた;そ

のうちのセックスの開始率は 12.5%で、彼らのリスクはテレビの使用率

の高さとテレビ番組に対する親の規制の不足にそれぞれ独立して関係し

ていた。親のセックスへの強い反対を報告しなかった青少年のセックス

の開始率は早かったが(24.1%)、テレビの使用とは関係していなかっ

た。

まとめ:親のセックスへの強い反対を報告した早期青年期の青少年のう

ち、1 日 2 時間以上テレビを視聴していることとテレビ番組に対する親

の規制が不足していることは、それぞれ 1 年以内にセックスを開始させ

るリスクと関係していた。

E・研究の目的(仮説も

含む)

本研究の目的は、テレビの視聴が、早期青年期の青少年のセックス開始

リスクと関係しているかどうかを把握することである。従来の研究は、

テレビの視聴が最も暴力的な行動など特定の行動に関係していることを

示してきた一方で、テレビの視聴と性行動の関係を明確に示すことは出

来ていなかった。更に、幾つかの研究は、青少年のテレビへの接触が性

行動に影響したかという問を取り上げたが、そのうち 2 つだけが縦断調

査であった。そこで本研究では、早期青年期の青少年(16 歳以下)が回

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23

答したテレビの視聴時間が、次年度のセックスの開始に関係しているか

どうかを把握するために、全国的に代表制のある青少年のサンプルを用

いた縦断調査の 2 次分析を行った。その際、親のテレビ番組に対する規

制がセックスの開始リスクと関係しているかどうかについても調査し

た。

仮説:青少年は(1)テレビの視聴が長く(2)テレビ番組に対する親の

規制が不足していると、1 年以内にセックスを開始する可能性が高くな

る。

F・対象者の特性(性

別、年齢、所属、)

調査期間)

本研究は、ベースライン調査時にセックスを開始していない 16 歳以下

の生徒 4808 名の全国的に代表制のあるサンプルを対象にした。青少年

は、性別で均等に分けられたが(女児 2682 名、男児 2126 名)、白人

(N=3178)は、黒人(N=912)やヒスパニック(N=718)よりも多かっ

た。

G・方法論(実験、相関

研究、縦断研究、影響の

自己報告など)

+方法の概略

本研究は、1994 年~1996 年までに得られたデータの 2 次分析を含む縦

断調査である。オリジナルの調査は、青少年の健康を測るという議会の

指針を通して、National Longitudinal Survey of Adolescent Health

("Add Health")のもとで実施されたものである。データは 2 波に分け

て収集された。

第 1波は、1994 年 9 月から 1995 年 12 月にかけて、学校、親、学校管理

者への質問票と、在宅インタビューを通して行われた。調査は、地域、

都市性、学校の種類、人種の構成、学校の規模に応じて層化された 7~

12 年生の生徒の健康に関する内容を含んだ。合計 20,745 名の生徒が、

学校での調査と在宅インタビューを完了した。

第 2 波は、1996 年の 4 月~8 月にかけての在宅フォローアップインタビ

ューと学校管理者への電話インタビューを通して収集された。本調査

は、セックスの開始などの繊細な質問を含んでいることから、部分的に

Confidential computer-assisted self-interviewing system を通して

収集された。調査は、9~12 年生の生徒の健康に関する内容を含んだ。

第 1 波コホートの 16,706 名の生徒がインタビューに選ばれ、13,568 名

が調査を完了した。

本研究では、第 1 波のインタビューにおいて 16 歳以下で、ベースライ

ン調査においてセックスをしたことがないと報告し、1 週間のテレビの

視聴時間を報告した完全な共変量データを持ったサンプル(N=5178)を

抽出した。更に、人種を白人、黒人、ヒスパニックと回答したサンプル

(N=4808)以外の人種の回答は、サンプルサイズが小さいため除外し

た。

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24

H・影響を与える変数

(性表現に関する変数)

+測定方法

1 日にテレビを視聴する時間:生徒は、1 週間にテレビを見る時間(0-

99)を回答した。研究者は、1 日 2 時間以下を低い、1 日 2 時間以上を

高いに分けた。この境界は、American Academy of Pediatrics の子供の

テレビの接触時間の推奨限度に沿っている。

制御変数:

1. 親の監視:生徒は、自身がテレビ番組の視聴を判断することを両親

が許可しているかどうかについて回答した。いいえと回答した生徒

は「内容の規制」があると判断された。

2. 親の存在:生徒は、学校に行く前、放課後、就寝時間に母親あるい

は父親が居た頻度について回答した。「時々」「ほとんどいない」「い

ない」のいずれかを回答した場合、「家での親の存在が薄い」という

二分変数が設定された。

3. 性交渉の許容:生徒は、母親が彼らの年代でセックスをすることを

是認するか否かについて回答した。強い反対と回答した生徒を「強

い反対」のカテゴリーに入れ、その他の回答は「親の強い反対を認

識していない」カテゴリーに入れた。

4. 鬱: 生徒へのベースライン調査には、Center for Epidemiological

Studies の鬱スケールの設問を取り入れた。研究者は 19 の回答をま

とめ、スケールの上位四分位にあるものを「鬱」と定義した。

5. 自尊心:生徒へのベースライン調査には、改良版 Rosenberg Self-

Esteem Inventory からの設問を取り入れた。研究者は 10 項目中 6

項目をまとめ、半分以下のスコアのものを「低い自尊心」と定義し

た。

6. 宗教の重要性:生徒は、信仰の重要性について 5件法に沿って回答

した。「とても重要」と回答した生徒は、当該カテゴリーに入れ、そ

の他の回答は「信仰が低い」というカテゴリーに入れた。

7. 教育への願望:生徒は、自身が大学に行く可能性について 5件法に

沿って回答した。「とても可能性が高い」と回答した生徒は、当該カ

テゴリーに入れ、その他の回答は「大学に進学する可能性が低い」

というカテゴリーに入れた。

8. 処女(童貞)の誓約:生徒は、セックスを行わない誓約をしたか否

かについて「はい」「いいえ」で回答した。

9. 知力:知力は Add Health Picture Vocabulary Test によって評価し

た。

10. 思春期の状況:生徒の思春期の段階についての自己認識。

11. 母親の教育:多くの場合、生徒と同居している母親や母親代わりと

なる人が、自身の教育レベルを「高校未満」「高校」「高校以上」「大

学以上」で評価したが、幾つかのケースでは生徒が回答した。

I・影響を受ける変数

(対象者の行動、態度

(特に異性に対する意

識)パーソナリティ等)

ベースライン調査の 1 年後に行ったフォローアップ調査において、セッ

クス(膣と陰茎による性交)を開始したかどうかを回答した生徒(本研

究は、テレビの視聴、親の監視、社会経済状況が、青少年の性交渉の開

始に与える影響について検討した)。

J・影響に関する結果の

概要(箇条書き)

テレビを 1 日 2 時間以上視聴する生徒は、1 年以内によりセックスを開

始する傾向にあった。

K・その他の結果の概要

(箇条書き)

1. 親のセックスへの強い反対を報告し、テレビを 2 時間以上視聴し、

テレビの内容に関する制限を受けていないと回答した生徒は、セッ

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クスの開始率が最も高くなった。

2. 親のセックスへの強い反対を報告し、親からのテレビ番組に関する

制限を受けていないと回答した生徒は、1 年以内にセックスを開始

することと強い関係があった。

3. セックスの開始は、ベースライン調査時の年齢の高さ、黒人である

こと、母親が高等学校卒業以下であること、信仰が浅いこと、より

鬱であることに独立して関係していた。

4. 親のセックスへの強い反対以外を報告した生徒の 1 年以内のセック

スの開始は、ベースライン調査時の年齢の高さと黒人であることに

独立して関係していた。