第23回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術集...

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誤嚥性肺炎を予防する ポジショニング 23回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術集会 スキルアップセミナー2 2017.9.16 会場 幕張メッセ 日本赤十字広島看護大学 迫田綾子(看護師) 医療法人誠佑記念病院 北出 貴則(理学療法士) ナーシングホーム気の里 田中 靖代(看護師)

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誤嚥性肺炎を予防するポジショニング

第23回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術集会

スキルアップセミナー2

2017.9.16会場 幕張メッセ

日本赤十字広島看護大学 迫田綾子(看護師)

医療法人誠佑記念病院 北出 貴則(理学療法士)

ナーシングホーム気の里 田中 靖代(看護師)

第23回日本摂食嚥下リハビリテーション学会

「ステップアップセミナー2」へ多数のご参加ありがとうございました。皆様のご要望にお応えし、資料一部をホームページへ掲載します。

資料は、自由にご使用下さって構いませんが、研修会開催時は伝承の状況把握をしたく、ご一報下さい。また資料使用の際は、「本セミナー」、または{POTT研究会」の明示をお願いします。セミナーの

参加者約700名、熱気とやる気に溢れた会場の雰囲気が伝わってきました。

北出貴則先生のシーティングは明日から使える技、田中靖代先生の「達人の技」は、スキルアップのゴール!です。演習サポーターの認定看護師は、まだ僅かですが全国で活動中ですので声をかけて下さい。日々研鑚を積みPOTTの伝承に努めて参ります。

お問い合わせは、日本赤十字広島看護大学 迫田綾子宛にお願いします。

連絡先 0829-20-2847

Eメール;[email protected](優先)

誤嚥性肺炎への対応

肺炎予防

肺炎発症時

誤嚥予防

誤嚥物喀出

誤嚥しても発症させない

早期発見

早期治療

再発予防

より安全な食事 姿勢唾液誤嚥・胃食道逆流対応

呼吸理学療法全身状態改善 ・脱水予防

肺炎症状の観察呼吸が早い、咳、痰

口腔ケア・リハビリ栄養状態改善 体力向上

抗生剤治療食事形態変更 不動にせず

原因を検討対策を検討 介護者含め

技術の変化の相 現象と意味Ⅰ 触れる ・対象に合わせてもらっている

親しむ(慣れる) ・環境を認識していない

Ⅱ 流れをつかむ ・集団の中にいることの認識

いろいろやってみる ・ケア行為の意識化

Ⅲ 感じる ・手ごたえや気持ち良さを知る

心が動く ・自分の身体の発見

Ⅳ 考える ・主体的意志的コミュニケーション

テクニックの発見 ・「行為-感覚の誕生を知る

試す(経験) (技術的行為の経験)

Ⅴ 理解する ・技術とは何かの追求

問う (相互性の経験)

ひたる

Ⅵ 創造する ・自己と技術の一体化

(アートの発見) ・自己発見、自己創造

修練する ・たゆまぬ努力

(身体・感覚の情清) ・無意識の領域

至福の経験 ・感覚、精神の鍛練

・自己を越えるものとの出会い

技術の基礎

技術の探求

技術の創造

ケアスキルの深化

藤岡完治他;臨床実習指導ワークブック,医学書院より一部改変

迫田北出

田中

5

F・ナイチンゲール 看護覚え書 食事より

「毎年何千人という患者が、食物が豊富にありながら、いわば餓死させられている。それは患者が食べられる方法について、注意の向け方が不足しているからである」

観察力 判断力 技術力が必要と!

現代も同じことが起こっている・・・誤嚥性肺炎 窒息 絶食 栄養不足

看護師は、ナイチンゲールの伝承者

“Nursing is doing”⇒私達はpositioningで

とも言っている! Nursing!です

1820年~1910年

食事時ポジショニングの現状POTT研修① まず、いつものリクライニング位30度

6つの修正点あり・・・・・

ベッドに寝ている状態のまま挙上必ずズレ発生、食べられない・・

写真は、本人やご家族の了解を得ています

ナースは30度が

取れない!まず、正確な体幹角度

計測!

食べ物見えず

食事時のポジショニングの目的

1)体幹を安定して支持させる身体を安定させることで、全身で食事をする構えをつくりだす。食欲を促し、生理機能を活発化させ、消化吸収を促進させる。

2)嚥下障害を改善するための代償法とするポジショニング(姿勢を調整)することで、咽頭腔の位置と形態を変え、食物の流れを変えて誤嚥を防ぐ。

3)胃食道逆流を防止する等のリスク管理胃からの逆流を防止するポジショニングを行い、誤嚥を予防する。

日本摂食・嚥下リハビリテーション学会

食事の自立食事の楽しみ食事時間の短縮

実践結果⇒A総合病院ポジショニングモデル H23 ゴール

QOL1)食塊の送り込みをしやすくする。

2)誤嚥を軽減、防止する。

唾液・食物

ないのなら、創ろう! 臨床知!研究経緯 文科省科学省研究費助成事業学術研究助成(基盤C)平成21~24年 誤嚥性肺炎を予防するための食事時の

ポジショニ ング教育モデルの構築平成24~27年 誤嚥を予防する食事支援のためのポジショニング

教育スキームの汎用化平成27~30年 誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承

ホームページ

POTT(ぽっと)プログラムポジショニングで(PO) 食べる(T)よろこびを伝える(T)

1.適切なリクライニング位を確認し、声かけする・臀部下縁をベッド可動軸より上に移動・両脇にクッションを密着させる・足底をクッションに接地させる

2.ベッドを挙上 し、除圧をする・順序:①足↑ ②上体↑足↓段階的に調整・背抜き、尻抜き、足抜き⇒気持ち良い手当て

3 頭頸部を軽く前屈させる(4横指程度)・姿勢全体を観察する⇒ 安楽姿勢

⇒体幹の傾き、圧迫、緊張有無

4 テーブルを配置、両上肢を安定させる・上肢が動きやすいようサポートする・ 見える位置へ食器類を置く

5 食事を見える位置へ置く・目線があう介助位置とする・舌正中にスプーンを入れる

6 食事中の観察・姿勢の崩れや変化⇒修正

・食べ方、飲み方、誤嚥の有無

7 食後のポジショニング・ベッド 足上げ⇒上体下げ⇒段階的に調整

・ベッド挙上15度程度、背抜き、腰抜き、足抜き・ねぎらいの言葉

使い方:研修前、研修直後、練習後に□へ、評価点を入れましょう評価;3=できる 2=ほぼできる 1=少しできる 0=できない

POTTスキルチェック (ベッド上)

評価

実施前 点

1回目 点

2回目 点

実施 年 月 日

氏名

① ②

正中

ベット可動軸

背抜き 足抜き

頸部チェック4横指

食事介助

上肢の安定

作成 POTT研究会

評価20点以上:合格!

19~14点:もう少し!13点以下:練習!

評価・チャレンジメモ

食事 口腔ケア 評価間接・直接訓練も必要

生活の連続性

0

5

10

15

20

25

30

度数

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

ヒストグラム

0

10

20

30

40

50

60

度数

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22

ヒストグラム

9施設研究参加者177名研

修前

3カ月後

目標値

【効果・影響】◎教えることでスキルアップ◎看護の見直し・楽しさ◎誤嚥予防で医療費削減か◎姿勢が安定、崩れがなくなった◎食事時間の短縮◎食欲、食事量の増加◎食事中の表情が良くなる◎むせの減少

研修前後ポジショニングスキルの変化

***

P<0.001

平均14.7

平均19.1

組織(看護部)、チームと共同開始はコアナースのいる病棟から個人伝承計画とスキルチェックPOTT実施時間 4.2~10分

迫田綾子:誤嚥を予防する食事支援のためのポジショニング教育スキームの汎用化. 平成24年~26年度科学研究費助成事業研修成果報告書.2015.

摂食嚥下と姿勢の関連先行期食物を認知し食べる構えをつくる

準備期食べ物を口に入れ咀嚼・食塊形成

口腔期舌や頬を使い食塊を口から咽頭へ送り込む

咽頭期食塊を食道へ送り込む

食道期蠕動運動により胃へ送り込む

ポジショニング

食べられる姿勢全身緊張緩和 呼吸自立支援見る、匂う、触れる

口唇・舌・顎の動き↑正面向き 舌位置

開閉口 唾液 咀嚼

介助位置舌中央にスプーン接地舌根の後方運動

誤嚥予防・嚥下力↑頭頸部軽度前屈口唇閉鎖 舌口蓋閉鎖足底接地喉頭挙上 喉頭閉鎖

残留・逆流予防リクライニング位胸部 呼吸運動

嚥下前誤嚥

嚥下中誤嚥

嚥下後誤嚥

体験;ポジショニングと舌変化

1.今の姿勢で、食べられる?舌の位置?

上顎&下顎前歯?

顎(水平位・中心咬合位) 咀嚼へ

2.姿勢の崩れと舌の変化前後 左右

3.顎・胸部の間隔4.スプーン介助、舌正中に

介助位置は?

技術は、見える、触れる、感じることから深化!

体験)崩れた姿勢で食べる

①座骨を前に滑らして、食べる②前屈位置で食べる③感じる

食べやすさ、舌・顎・嚥下上肢、胸部、満足感?疲労感?・・・

④通常姿勢で食べる摂食嚥下の変化

技術は、見える、触れる、感じることから深化!

ゼリースプーン

正中へ修正

準備物品①上肢用ピロー2②足底用ピロー③足底接地用シート④バスタオル1⑤小タオル1⑥角度計

ベッド可動軸より上へ、ヒップライン上

④ ⑤

両足=肩幅足裏=軽く接地

体幹ピローピッタリ接地

ベッド上ポジショニングの実際

リクライニング位30度の

スキル声かけ↓

足上げ↓

上体上げ足下げ

角度確認↓

背・尻・足抜き↓

頭部調整↓

全体姿勢の確認↓

配膳(テーブル)

ベッド上ポジショニングの実際

POTTシートフラップ付きカバー開発(モルテン販売)

嚥下力を維持・向上、足底接地の工夫

バスタオルを膝下へ敷き込む⇒安定(下肢の体重を使う)

進化

頭頸部の角度調整と安定のスキル

頭の下端巻タオル

枕の下馬蹄形タオル乳様突起上部

マットレス下

背抜き・尻抜き・足抜きのスキル

背面の圧迫除去は、姿勢の安定、緊張緩和、各器官の動きを活発にする⇒患者体験が一番!

背中(片側:首ー腰部)手を当て、上から下へ滑らす

臀部を片方ずつ少し浮かす。両手挿入もあり

下肢背面に手を当て、踵まで滑らす(足を上げすぎない)

背抜き・足抜きの効果!

ズレで約2倍の圧発生・仙骨圧迫・尻張り付き

圧抜き⇒苦痛緩和活動性向上

💛TE-ARTE手当て!触れるケア皮膚から脊椎⇒脊椎⇒脳

情報伝達;C触覚繊維触覚は感情と直結!温かさ!

⇒快刺激 オキシトシン・・・

⇒不快刺激 ストレス・・・プライベートゾーンは不可

皮膚感覚刺激

1秒間に20cmの速度では、交感神経が高まり覚醒度が上がる

めざめ快適スキル

1秒間に5cmの速度では、副交感神経機能が高まる

ゆったり安楽スキル

患者の状態により使いわけ!

1)ディビット・J・rリンデン.触れることの科学.河出書房.2017. 2)山口創:人は皮膚から癒される.草思社.2017

食後のポジショニング

リクライニング位15度程度で止める⇒胃食道逆流防止

全身状態観察 呼吸状態 疲労食事量・内容 時間

口腔内、咽頭の食物残留確認 ⇒下膳口腔ケア ブラッシング 義歯洗浄等

ポジショニングの目安

*口腔ケア時は、誤嚥予防のためさらに頭頸部を前屈させる

自立度 角度 対象 ポイント 食形態

嚥下評価時 頭頸部4横指 嚥下訓練食

自力摂取困難 足底接地 嚥下調整食1

座位困難 食事は見える位置へ

自力摂取 意欲を引き出す

一部介助 自立支援

上肢サポート

60度以上 座位可能 見守り

頸部ほぼ安定 体幹ズレ注意 嚥下調整食4

(車)いす 食具工夫 普通食へ

全介助

一部介助

自立

30度

45度 咀嚼能力評価

POTT(ぽっと)プログラムの技術伝承

私達の願い②今日を明日へつなぐ!スキルチェック活用!体験的研修会!

私達の願い①

ポジショニングで、食べる喜びを支え合い、

誤嚥予防に貢献できる人を、地域に増やす

個人伝承

チーム伝承

組織的伝承

伝承モデル

参考図書等

迫田綾子編集:誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケア.三輪書店,東京,2013.

老年看護技術 第3版/メヂカルフレンド社/泉キヨ子看護基礎教育用 摂食嚥下ケアと口腔ケアを詳細に(迫田・金)

迫田綾子;ポジショニング食べる喜びを伝えるPOTTプログラムの技術伝承.看護教育.2016.10月号

関連論文

摂食嚥下障害ケア特集 お勧めです!⇒POTTプログラムも紹介⇒