第3回 環境外部性の理論 - toyo universityyamaya/gakubukougi/1_3 kankyogaibusei.pdf ·...
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第3回第3回 環境外部性の理論環境外部性の理論
公共政策公共政策教材教材
外部性とは何か外部性とは何か
ある経済主体の活動が市場を経由しないである経済主体の活動が市場を経由しないで第三者に何らかの影響をあたえることを「外第三者に何らかの影響をあたえることを「外部性」という部性」という
その影響がプラスの場合→外部経済その影響がプラスの場合→外部経済
その影響がマイナスの場合→外部不経済その影響がマイナスの場合→外部不経済
「公害」は外部不経済の典型例「公害」は外部不経済の典型例
外部不経済の発生外部不経済の発生
SMC:社会的限界費用SMC:社会的限界費用S:供給曲線=PMC:私的限界費用S:供給曲線=PMC:私的限界費用D:需要曲線D:需要曲線 MEC:限界外部費用MEC:限界外部費用
O
F
G
P1
P2
E1
E2MEC
S
D
A
Q2 Q1
SMC価格
供給量
P
図の解説:図の解説:外部性が存在しないケース外部性が存在しないケース
公害企業の財に対する需要は、他の通常の財に公害企業の財に対する需要は、他の通常の財に対する需要と同様、限界効用逓減の仮定のもとで、対する需要と同様、限界効用逓減の仮定のもとで、右下がりの曲線Dで描ける右下がりの曲線Dで描ける
市場の供給曲線Sは、限界費用逓増の仮定のもと市場の供給曲線Sは、限界費用逓増の仮定のもとで、右上がりになるで、右上がりになる
両曲線の交点E両曲線の交点E11が均衡点となり、財の供給量Qが均衡点となり、財の供給量Q11
と価格Pと価格P11が決まるが決まる
供給量Q供給量Q11のもとで社会的余剰は最大で、資源配のもとで社会的余剰は最大で、資源配分はパレート最適である分はパレート最適である
図の解説:図の解説:外部不経済が発生するケース外部不経済が発生するケース
公害企業の生産活動により環境汚染が引き公害企業の生産活動により環境汚染が引き起こされると、企業の私的限界費用以外に起こされると、企業の私的限界費用以外に限界外部費用(限界汚染費用)が発生する。限界外部費用(限界汚染費用)が発生する。
社会が全体として財1単位に対して負担す社会が全体として財1単位に対して負担すべき限界費用は、私的限界費用を示す供給べき限界費用は、私的限界費用を示す供給曲線Sに限界外部費用MECを上乗せした曲線Sに限界外部費用MECを上乗せした社会的限界費用SMCである社会的限界費用SMCである
外部不経済を補整するアプローチ外部不経済を補整するアプローチ
■分権的な相互交渉によるもの■分権的な相互交渉によるもの
政府が介入しなくても、民間の自発的な交換取政府が介入しなくても、民間の自発的な交換取引によって外部性が内部化されるという主張引によって外部性が内部化されるという主張
コースの定理コースの定理
■政府の税・補助金政策によるもの■政府の税・補助金政策によるもの
税や補助金により外部性を内部化する政策税や補助金により外部性を内部化する政策
ピグー税ピグー税
ボーモル=オーツ税ボーモル=オーツ税
コースの定理の考え方コースの定理の考え方
環境の所有権、あるいは財産権を政府が適環境の所有権、あるいは財産権を政府が適切に設定することを前提として、交渉などに切に設定することを前提として、交渉などに要する取引費用がゼロならば、加害者(公要する取引費用がゼロならば、加害者(公害企業)と被害者(地元住民)など当事者間害企業)と被害者(地元住民)など当事者間の自発的な交渉により、最適な資源配分がの自発的な交渉により、最適な資源配分がもたらされるもたらされる
コースの定理コースの定理費用・純便益
O
A
MNB
B
C J
E
I
HMEC
F D X K G
MNB:限界純便益 MEC:限界外部費用
排出量
コースの定理の図解説コースの定理の図解説住民に環境利用権があるケース住民に環境利用権があるケース
地元住民に環境の利用権が与えられており、企業地元住民に環境の利用権が与えられており、企業の排出量は現在OFだが、増産を希望の排出量は現在OFだが、増産を希望そこで企業は住民と交渉し、補償を取り決めそこで企業は住民と交渉し、補償を取り決め交渉の結果、ODまで排出できるようになったとき、交渉の結果、ODまで排出できるようになったとき、住民の損害はCDF、企業の便益はABCFとなる住民の損害はCDF、企業の便益はABCFとなるしたがって、企業は住民に対して、住民の損害分したがって、企業は住民に対して、住民の損害分CDF以上、企業の便益ABCF以下の範囲で補償CDF以上、企業の便益ABCF以下の範囲で補償することで、双方が利益を得るすることで、双方が利益を得る双方の利益が得られる限り交渉すれば、排出量は双方の利益が得られる限り交渉すれば、排出量はパレート最適なOXとなるパレート最適なOXとなる
コースの定理の図解説コースの定理の図解説企業に環境利用権があるケース企業に環境利用権があるケース
企業が環境利用権を持つ場合、私的限界純便益企業が環境利用権を持つ場合、私的限界純便益がゼロになるまで排出するので、排出量はOGとながゼロになるまで排出するので、排出量はOGとなるるそこで、住民が排出量の削減を求めて企業と交渉そこで、住民が排出量の削減を求めて企業と交渉し、企業に対する補償を取り決めるし、企業に対する補償を取り決める交渉の結果、排出量がGKだけ削減されると、企交渉の結果、排出量がGKだけ削減されると、企業はJKGの損失を生じ、住民はHIJGの便益を得業はJKGの損失を生じ、住民はHIJGの便益を得ることになるることになるしたがって、住民はJKG以上、したがって、住民はJKG以上、HIJGHIJG以下の補償を以下の補償をすることによって、パレート最適なOXまで排出量をすることによって、パレート最適なOXまで排出量を削減することができる削減することができる
コースの定理の意義コースの定理の意義
分権的プロセスによる資源配分分権的プロセスによる資源配分
政府の役割は、初期時点で個々人の権利・政府の役割は、初期時点で個々人の権利・義務を定めておくことに限定され、その後は義務を定めておくことに限定され、その後はすべて経済主体間の交渉に委ねられるすべて経済主体間の交渉に委ねられる
↓↓
・小さな政府や分権の思想になじむ・小さな政府や分権の思想になじむ
・政府の失敗を回避できる・政府の失敗を回避できる
相互交渉が有効に機能するための相互交渉が有効に機能するための条件条件(コース定理の限界)(コース定理の限界)
1.外部性に関連する費用・便益関1.外部性に関連する費用・便益関係がある程度まで客観的に把握可係がある程度まで客観的に把握可能であること能であること
2.外部性と関連する経済主体の数2.外部性と関連する経済主体の数が限定されており、相互に交渉しが限定されており、相互に交渉しやすいことやすいこと
ピグーの課税・補助金政策ピグーの課税・補助金政策
A.C.PigouA.C.Pigouの提案の提案
外部不経済の内部化の手法として、課税・外部不経済の内部化の手法として、課税・補助金を用いる補助金を用いる
●ピグー税、ピグー的補助金とも呼ばれる●ピグー税、ピグー的補助金とも呼ばれる
環境税とは環境税とは
課税を通じて、市場メカニズムを利用して、課税を通じて、市場メカニズムを利用して、外部費用を価格に反映させて、汚染物質の外部費用を価格に反映させて、汚染物質の排出を抑制する経済的手法排出を抑制する経済的手法
価格=社会的限界費用価格=社会的限界費用
外部不経済外部不経済ととピグーピグー税税
O
F
G
P1
P2
E1
E2t
PMC
D
A
Q2 Q1
SMC価格
供給量
P
外部不経済外部不経済ととピグーピグー税税の図解説の図解説
外部不経済の内部化外部不経済の内部化を狙いとした課税においを狙いとした課税において社会的に望ましい税率tとは?て社会的に望ましい税率tとは?
社会的限界費用と私的限界費用の差社会的限界費用と私的限界費用の差
==限界外部費用AE限界外部費用AE11=t=t
ttの課税により、私的限界費用PMCは税率の課税により、私的限界費用PMCは税率ttだだけ上方にシフトして社会的限界費用SMCとけ上方にシフトして社会的限界費用SMCとなる(均衡点のEなる(均衡点のE11からEからE22へのシフト)へのシフト)
●新たな均衡点で、供給量はQ●新たな均衡点で、供給量はQ22に減少するに減少する
均衡点E均衡点E22での社会的余剰での社会的余剰
EE22で発生する社会的余剰:PGEで発生する社会的余剰:PGE22
で最大となるで最大となる
外部不経済が存在しない場合の供給量Q1を維持する外部不経済が存在しない場合の供給量Q1を維持すると供給過剰となり、と供給過剰となり、 E2E2E1Aだけ社会的余剰が減少E1Aだけ社会的余剰が減少
するする
ボーモル=オーツ税の考え方ボーモル=オーツ税の考え方
政策当局が把握可能な限られた情報の中政策当局が把握可能な限られた情報の中で、あらかじめ最適と考えられる環境水準をで、あらかじめ最適と考えられる環境水準を決定し、試行錯誤しながら最適な税率を導決定し、試行錯誤しながら最適な税率を導き出すアプローチき出すアプローチ
最適な環境水準に一致するまで税率の変最適な環境水準に一致するまで税率の変更を繰り返していくことにより、政策当局が更を繰り返していくことにより、政策当局が十分な情報を持つことなく排出企業に対して十分な情報を持つことなく排出企業に対して課税することを可能にする。課税することを可能にする。
ボーモル=オーツ税ボーモル=オーツ税
MAC:限界排出削減費用MAC:限界排出削減費用
課税水準
t
t3
t2
t1
XX2X1X3
MAC
↑
最適な環境水準
排出量
ボーモル=オーツ税の図解説ボーモル=オーツ税の図解説
(仮定)(仮定) 課税前の排出量OX課税前の排出量OX
最適な課税水準での排出量X最適な課税水準での排出量X11
(試行錯誤から最適税率へ到達)(試行錯誤から最適税率へ到達)
税率t税率t22の課税→排出量Xの課税→排出量X22で過大で過大
税率t税率t33の課税→排出量Xの課税→排出量X33で過少で過少
最終的に、排出量がX1となる税率t1を導出最終的に、排出量がX1となる税率t1を導出
環境税における二重の配当環境税における二重の配当double dividenddouble dividend
環境税のメリットの二面性環境税のメリットの二面性
①課税により、外部費用を内部化し、環境を改善す①課税により、外部費用を内部化し、環境を改善する効果があるる効果がある
②新たな税収が生み出される。それを、既存の間接②新たな税収が生み出される。それを、既存の間接税や所得税などの減税にまわせば財や労働市場、税や所得税などの減税にまわせば財や労働市場、消費などの社会的余剰の損失を減少させる効果消費などの社会的余剰の損失を減少させる効果がある。あるいは、環境負荷軽減のための補助金がある。あるいは、環境負荷軽減のための補助金とすることで、環境税と組み合わせて環境改善効とすることで、環境税と組み合わせて環境改善効果をさらに高めることもできる。果をさらに高めることもできる。
外部費用内部外部費用内部化化のための補助金のための補助金
外部経済を内部化するための補助金外部経済を内部化するための補助金
(ピグー的補助金)(ピグー的補助金)
社会的にみて便益を生み出す活動の奨励を目的社会的にみて便益を生み出す活動の奨励を目的
として給付として給付
外部不経済を内部化するための補助金外部不経済を内部化するための補助金
外部不経済を発生させる財やサービスの生産量を外部不経済を発生させる財やサービスの生産量を
削減することに対して排出企業に給付削減することに対して排出企業に給付
外部経済外部経済とピグー的補助金とピグー的補助金
O
F
G
P1
P2
E1
E2
SMC
D
供給量
A
B
Q2Q1
PMC
価格
P
外部経済とピグー的補助金の図解説外部経済とピグー的補助金の図解説
外部経済が発生しているとき、SMCはPM外部経済が発生しているとき、SMCはPMCの下方に位置するCの下方に位置する
このとき、PMCとSMCの差である単位あたこのとき、PMCとSMCの差である単位あたりEりE11Bの補助金を与えることによって、均衡Bの補助金を与えることによって、均衡点はSMCと需要曲線Dの交点E点はSMCと需要曲線Dの交点E22となる。となる。
外部経済をもたらす財・サービスの価格は、外部経済をもたらす財・サービスの価格は、PP11からPからP22へ下がり、供給量はQへ下がり、供給量はQ11からQからQ22へへ増加し、社会的余剰も最大になる。増加し、社会的余剰も最大になる。
直接規制の内部化メカニズム直接規制の内部化メカニズム
政府が法律によって最適な環境水準を定め、政府が法律によって最適な環境水準を定め、その水準を遵守しなかった経済主体に対しその水準を遵守しなかった経済主体に対して、何らかの制裁や処罰を与える政策手法て、何らかの制裁や処罰を与える政策手法
直接的なコントロールにより、経済的手法よ直接的なコントロールにより、経済的手法よりも迅速かつ確実に環境汚染防止の効果をりも迅速かつ確実に環境汚染防止の効果を上げることを狙いとする上げることを狙いとする
外部不経済外部不経済と直接規制と直接規制
O
F
G
P1
P2
E1
E2
Q2 Q1
PMC
D
供給量
A
B
SMC価格
PPMCr
PMCr:規制後の私的限界費用
↑
規制基準
外部不経済外部不経済と直接規制と直接規制の図解説の図解説
(想定)公害企業による環境汚染を防止するため、政(想定)公害企業による環境汚染を防止するため、政策当局が生産量を総量規制策当局が生産量を総量規制
規制前の均衡点E規制前の均衡点E11で、供給量Qで、供給量Q11、価格P、価格P11
そこで、政策当局は社会的余剰が最大となる供給量そこで、政策当局は社会的余剰が最大となる供給量QQ22を超えないように規制を超えないように規制
規制後のPMCは、規制前のPMCから供給量Q規制後のPMCは、規制前のPMCから供給量Q22ののところでPMCrのように垂直に上昇し、価格はPところでPMCrのように垂直に上昇し、価格はP11
から需要曲線Dとの交点Eから需要曲線Dとの交点E22に対応するPに対応するP22へ上昇へ上昇
直接規制の評価直接規制の評価
直接規制においても、公害企業の財の供給直接規制においても、公害企業の財の供給量や汚染物質の排出量を最適水準まで減量や汚染物質の排出量を最適水準まで減らすことができ、環境税や補助金と同じ効果らすことができ、環境税や補助金と同じ効果が期待できるが期待できる
しかし、ピグー税と同様に、政策当局が外部しかし、ピグー税と同様に、政策当局が外部費用を的確に把握しなければ、社会的余剰費用を的確に把握しなければ、社会的余剰を最大化できないという問題があるを最大化できないという問題がある