第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章...

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7 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 ■概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電 気出力46万kW)は国産第1号として昭和49年3月29日に営業運転を開始しました。さらに、平成元年2月10 日には2号機(電気出力82万kW)の営業運転も開始し、中国地方の電力安定供給に大きな役割を果たしてい ます。 発電所は、島根半島中央部の松江市鹿島町北部に位置し、日本海に面しています。残る三方は150m程度 の高さの山に囲まれています。 また、1,2号機の原子炉は、原子炉圧力容器の中で水を直接沸騰させて蒸気をつくる沸騰水型原子炉(B WR)と呼ばれる型式を採用しており、現在、国内で運転されている48基の原子力発電所の中で24基がこの 型式を採用(平成27年1月末現在、改良型沸騰水型原子炉 〔ABWR〕含む)しています。 なお、島根原子力発電所では3号機増設計画(電気出力137.3万kW、改良型沸騰水型原子炉〔ABWR〕) があり、建設工事が進められています。 所在地:島根県松江市鹿島町片句654-1 敷地面積:約183万m 2 (3号機建設に伴う用地取得及び一部売却分を含む) 従業員数:中国電力(株)島根原子力本部52名(兼務者1名含む) 島根原子力発電所511名 (平成27年1月末現在) 2号機 1号機 1号機 2号機 3号機 ・建設計画申し入れ 昭和41年11月17日 昭和55年 7月28日 平成 9年 3月12日 ・準備工事開始 昭和43年 7月 1日 昭和57年 3月 2日 平成16年 3月15日 ・電源開発調整審議会通過 昭和44年 5月23日 昭和56年 3月26日 平成12年 8月21日 ・原子炉設置(変更)許可 昭和44年11月13日 昭和58年 9月22日 平成17年 4月26日 ・工事計画認可 昭和45年 2月10日 昭和59年 2月24日 平成17年12月22日 ・建設工事着工 昭和45年 2月11日 昭和59年 7月10日 平成18年10月24日 ・営業運転開始 昭和49年 3月29日 平成元年 2月10日 未 定

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Page 1: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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第3章 島根原子力発電所の現況

第 3 章 島根原子力発電所の現況

■概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電気出力46万kW)は国産第1号として昭和49年3月29日に営業運転を開始しました。さらに、平成元年2月10日には2号機(電気出力82万kW)の営業運転も開始し、中国地方の電力安定供給に大きな役割を果たしています。 発電所は、島根半島中央部の松江市鹿島町北部に位置し、日本海に面しています。残る三方は150m程度の高さの山に囲まれています。 また、1,2号機の原子炉は、原子炉圧力容器の中で水を直接沸騰させて蒸気をつくる沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれる型式を採用しており、現在、国内で運転されている48基の原子力発電所の中で24基がこの型式を採用(平成27年1月末現在、改良型沸騰水型原子炉 〔ABWR〕含む)しています。 なお、島根原子力発電所では3号機増設計画(電気出力137.3万kW、改良型沸騰水型原子炉〔ABWR〕)があり、建設工事が進められています。

所在地:島根県松江市鹿島町片句654-1敷地面積:約183万m2 (3号機建設に伴う用地取得及び一部売却分を含む)従業員数:中国電力(株)島根原子力本部52名(兼務者1名含む) 島根原子力発電所511名  (平成27年1月末現在)

1号機 2号機 3号機

・建設計画申し入れ 昭和41年11月17日 昭和55年7月28日 平成9年3月12日

・準備工事開始 昭和43年7月1日 昭和57年3月2日 平成16年3月15日

・電源開発調整審議会通過 昭和44年5月23日 昭和56年3月26日 平成12年8月21日

・原子炉設置(変更)許可 昭和44年11月13日 昭和58年9月22日 平成17年4月26日

・工事計画認可 昭和45年2月10日 昭和59年2月24日 平成17年12月22日

・建設工事着工 昭和45年2月11日 昭和59年7月10日 平成18年10月24日

・営業運転開始 昭和49年3月29日 平成元年2月10日    未 定

第3章 島根原子力発電所の現況 ■概 要 島根原子力発電所は、日本で 5 番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に

建設され、1 号機(電気出力 46 万kW)は国産第1号として昭和 49 年 3 月 29 日に営業運

転を開始しました。さらに、平成元年 2 月 10 日には 2 号機(電気出力 82 万kW)の営業

運転も開始し、中国地方の電力安定供給に大きな役割を果たしています。 発電所は、島根半島中央部の松江市鹿島町北部に位置し、日本海に面しています。残る

三方は150m程度の高さの山に囲まれています。 また、1,2 号機の原子炉は、原子炉圧力容器の中で水を直接沸騰させて蒸気をつくる沸

騰水型原子炉(BWR)と呼ばれる型式を採用しており、現在、国内で運転されている 48基の原子力発電所の中で 24 基がこの型式を採用(平成 26 年 1 月末現在、改良型沸騰水型

原子炉 〔ABWR〕含む)しています。 なお、島根原子力発電所では 3 号機増設計画(電気出力 137.3 万kW、改良型沸騰水型

原子炉〔ABWR〕)があり、建設工事が進められています。 所在地:島根県松江市鹿島町片句 654-1 敷地面積:約 183 万 m2 (3号機建設に伴う用地取得及び一部売却分を含む) 従業員数:中国電力(株)島根原子力本部 48 名(兼務者 2 名含む)

島根原子力発電所 518 名(島根原子力建設所との兼務 203 名含む) (平成 26 年 1 月末現在)(協力会社社員除く)

2号機

1号機

1号機 2号機 3号機・建設計画申し入れ 昭和41年11月17日 昭和55年 7月28日 平成 9年 3月12日・準備工事開始 昭和43年 7月 1日 昭和57年 3月 2日 平成16年 3月15日・電源開発調整審議会通過 昭和44年 5月23日 昭和56年 3月26日 平成12年 8月21日・原子炉設置(変更)許可 昭和44年11月13日 昭和58年 9月22日 平成17年 4月26日・工事計画認可 昭和45年 2月10日 昭和59年 2月24日 平成17年12月22日・建設工事着工 昭和45年 2月11日 昭和59年 7月10日 平成18年10月24日・営業運転開始 昭和49年 3月29日 平成元年 2月10日 未 定

Page 2: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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●しまねの原子力

■設備概要

設 備 名 1 号 機 2 号 機 3 号 機(計画)定格電気出力 46万kW 82万kW 137.3万kW

原 子 炉

型式 沸騰水型(BWR) 同左 改良型沸騰水型(ABWR)定格熱出力 約138万kW 約244万kW 約393万kW

圧力 6.93MPa(70.7㎏/cm2g) 同左 約7.07MPa(72.1㎏/cm2g)温度 286℃ 同左 約287℃

燃料

燃料集合体 400体 560体 872体装荷量 ウラン重量約68t ウラン重量約97t ウラン重量約150t

取替燃料

種 類 9×9 燃料 同左 同左濃縮度 約3.6% 約3.7% 約3.8%

1回の取替量 全体の約1/5 全体の約1/4 全体の約1/4

制御棒

数量 97本 137本 205本

制御材 ボロンカーバイド又はハフニウム 同左 同左

スクラム速度 90%挿入時間5秒以下 75%挿入時間1.62秒以下 60%挿入時間1.44秒以下圧力容器

形状 鋼製たて置円筒形 同左 同左

寸法 内径 全高 厚さ 重量約4.8m,約19m,117mm,390t

内径 全高 厚さ 重量約5.6m,約21m, 137mm, 600t

内径 全高 厚さ 重量約7.1m,約21m,170mm,910t

原子炉再循環ポンプ 2,010kW×2台 4,540kW×2台 約830kW×10台

原子炉格納容器

ドライウェル

形状 フラスコ型(MARK-1) まほうびん型(MARK-1改良) 円筒型

寸法 内径 全高 厚さ約18m, 約32m, 16~50mm

内径 全高 厚さ約23m, 約37m, 24~70mm

内径  全高  厚さ約29m, 約36m, 2~6m

空間容積 約3,300m3 約7,900m3 約7,400m3

圧力抑制室

寸法 円環部中心線直径 円環内径約30m     約8.1m

円環部中心線直径 円環内径約38m     約9.4m

円高      内径約19m     約29m

保有水量 約1,800m3 約2,800m3 約3,600m3

新燃料貯蔵庫 容量 120体 195体 320体

燃料プール

容量 1,140体 3,518体 3,739体

寸法 縦×横×深さ約7m×約12m×約12m

縦×横×深さ14m×13.5m×約12m

縦×横×深さ17.9m×14m×約12m

タービン

種類 衝動くし形・4流排気再生復水式

衝動くし形・6流排気再生復水式

くし形・6流排気再生復水式(再熱式)

出力 約46.6万kW 82万kW 約137.3万kW回転数 1,800回転/分 同左 同左

蒸気流量 2,450t/h 4,614t/h 約7,300t/h軸の長さ 約43m 約54m 約64m

復水器冷却管

寸法 外径   長さ2.54cm   14.5m

外径   長さ3.175cm  12.6m

外径   長さ2.858cm  17.79m

本数 32,840本 41,700本 63,864本冷却水(海水)量

水量 夏季 約30t/秒冬季約22t/秒 約60t/秒 約95t/秒

温度上昇 夏季:約7℃冬季:約9℃ 約7℃ 7℃以下

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タービン(1号機) 3号機外観

設 備 名 1 号 機 2 号 機 3 号 機(計画)

原子炉給水ポンプ 電動給水ポンプ3,850kW×3台

タービン駆動給水ポンプタービン出力6,550kW×2台電動給水ポンプ3,950kW×2台

タービン駆動給水ポンプタービン出力10,100kW×2台電動給水ポンプ6,550kW×2台

循環水ポンプ 1,300kW×3台 2,800kW×3台 約5,400kW×3台

発電機

種   類 3相交流同期式(水素冷却)同左 同左 出   力 52万kVA 87万kVA 153万kVA 電   圧 18,000V 15,500V 22,000V

主変圧器

種   類 屋外送油風冷式 同左 屋外導油風冷式二巻線式 容   量 49万kVA 84万kVA 147万kVA

電   圧 1次… 17,500V2次…220,000V

1次… 15,200V2次…220,000V

1次… 21,500V2次…500,000V

送  電  線

22万V  2回線(共用1ルート)※1 50万V  2回線

直径 34mm材質 低ロス形アルミ覆鋼心耐熱アルミ合金より線

直径 28.5mm材質 アルミ覆鋼心アル   ミより線

取 水 方 式 深層取水方式 同左 同左取  水  口 輪谷湾 同左 同左放 水 方 式 表層放水 水中放水 水中放水放  水  口 おど浜 発電所敷地前面の沖合 発電所敷地前面の沖合排 気 筒 の 高 さ 120m 120m 57m

主 な 特 徴

・国内の原子力機器メー カー(日立製作所)と の共同研究により建設 された国産第1号原子 力発電所

・改良型格納容器の採用・燃料取替の自動化・制御棒駆動の高速化・廃棄物のプラスチック固 化処理など

・改良型沸騰水型・原子炉内蔵型再循環ポン プの採用・改良型制御棒駆動機構の 採用・改良型中央制御盤の採用・鉄筋コンクリート製原子 炉格納容器の採用

※1  3号機増設工事に伴い、平成18年10月変更。

第3章 島根原子力発電所の現況

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●しまねの原子力

■沸騰水型原子力発電所のしくみ

■改良型沸騰水型原子力発電所のしくみ

■非常用炉心冷却系の概要 原子力発電所では、原子炉につながる配管が破断して冷却材である水が流出するような事故を想定し、原子炉を冷却するための非常用炉心冷却系(=ECCS)を設置しています。

(中国電力(株)作成資料)

(中国電力(株)作成資料)

蒸気乾燥器…原子炉で発生する蒸気の湿分を取り除く機器気水分離器…水分と蒸気を分離する機器

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 このECCSは、配管類のあらゆる破断に対して確実に炉心を冷却できるよう2系統以上設置されており、1系統の故障でも残りの系統で原子炉を冷却できる容量を持っています。 さらに、停電に備えて非常用ディーゼル発電機が2系統設置されています。非常用炉心冷却系(ECCS)[2号機] 原子炉の水位が低下した時などに自動的に原子炉に水を送り込むための設備で、次の4系統で構成されます。

①高圧炉心スプレイ系②低圧炉心スプレイ系③低圧注水系④自動減圧系(原子炉の蒸気を圧力抑制プール水の中に逃し、原子炉の圧力を下げます。)

※ 残留熱除去系…原子炉が停止した後に、炉心で発生する崩壊熱及び残留熱を除去・冷却するための系統。

(中国電力(株)作成資料)

第3章 島根原子力発電所の現況

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●しまねの原子力

■構造図

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■運転員の構成 島根原子力発電所では、下記構成により、5チーム2交替で発電所の運転・監視を行っています。

■原子力運転訓練シミュレータ 原子力発電所を安全に運転するためには、高度の知識・技能をもったオペレータ(運転員)が必要です。 中国電力(株)では原子力運転訓練シミュレータにより教育・訓練を実施し、オペレータの知識・技能の維持向上をはかっています。  シミュレータは、島根原子力発電所2号機の中央制御室とほぼ同一構成の制御盤を訓練室に配置して、原子炉、タービン、発電機の動きを電子計算機で模擬しています。このため、発電所の起動・停止操作、事故及び故障・トラブルに対しても、適切な対応ができるよう、実際の発電所で運転しているのと同じ臨場感をもって、繰返し訓練ができます。こうした教育訓練により、オペレータの資質を向上させ、原子力発電所の安全運転に寄与します。 また、平成21年9月に3号機用の運転訓練シミュレータが設置されました。3号機の中央制御盤は、1,2号機にはない大型表示盤を採用し、運転員が運転状況を一目で把握できるなどの特徴があります。

○原子力運転訓練シミュレータ施設の設備概要 (1)設置場所     深田運動公園内(島根県松江市鹿島町佐陀本郷) (2)設備概要    建物:鉄骨造2階建1棟(延べ床面積1,500㎡)    シミュレータ:島根原子力発電所2号機及び3号機と同じ構成の制御盤に原子炉・タービン・発電    機の動きをコンピューターで模擬する装置で、通常の起動・停止操作のほか通常では経験できない    ようなトラブルの模擬が可能です。

■運転員の構成 島根原子力発電所では、下記構成により、5チーム2交替で発電所の運転・監視を行っ

ています。 ■原子力運転訓練シミュレータ 原子力発電所を安全に運転するためには、高度の知識・技能をもったオペレータ(運転

員)が必要です。 中国電力(株)では原子力運転訓練シミュレータにより教育・訓練を実施し、オペレー

タの知識・技能の維持向上をはかっています。 シミュレータは、島根原子力発電所 2 号機の中央制御室とほぼ同一構成の制御盤を訓練

室に配置して、原子炉、タービン、発電機の動きを電子計算機で模擬しています。このた

め、発電所の起動・停止操作、事故及び故障・トラブルに対しても、適切な対応ができる

よう、実際の発電所で運転しているのと同じ臨場感をもって、繰返し訓練ができます。こ

うした教育訓練により、オペレータの資質を向上させ、原子力発電所の安全運転に寄与し

ます。 また、平成21年9月に3号機用の運転訓練シミュレータが設置されました。3号機の

中央制御盤は、1,2号機にはない大型表示盤を採用し、運転員が運転状況を一目で把握

できるなどの特徴があります。 ○原子力運転訓練シミュレータ施設の設備概要 (1)設置場所 深田運動公園内(島根県松江市鹿島町佐陀本郷) (2)設備概要

建物:鉄骨造2階建1棟(延べ床面積 1,500 ㎡) シミュレータ:島根原子力発電所2号機及び3号機と同じ構成の制御盤に原子

炉・タービン・発電機の動きをコンピューターで模擬する装置で、通常の起動・停

止操作のほか通常では経験できないようなトラブルの模擬が可能です。

  1,2号機の統括責任者

1号オペレータ(4名)

2号機当直副長

2号オペレータ(4名)

1号機当直副長

当直長

外 観

2号機シミュレータ 3号機シミュレータ 外 観 2号機シミュレータ 3号機シミュレータ 外 観

第3章 島根原子力発電所の現況

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●しまねの原子力

■島根原子力発電所の耐震安全性評価 原子力安全委員会が、平成18年9月19日「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を改定したことから、稼働中または建設中の発電所についても新指針に照らした耐震安全性の評価(いわゆる耐震バックチェック)が進められました。 また、東京電力㈱福島第一原子力発電所事故後の平成24年1月27日、原子力安全・保安院が「平成23年東北地方太平洋沖地震から得られた地震動に関する知見を踏まえた原子力発電所等の耐震安全性評価に反映すべき事項(中間取りまとめ)について」により、活断層の連動性について再検討するよう指示を行ったことから、島根原子力発電所についてもあらためて指示に基づく評価が進められました。 平成24年9月19日に発足した原子力規制委員会において、実用発電用原子炉施設の地震・津波に関する基準の見直しが進められ、平成25年7月8日に新規制基準が施行されたことから、中国電力㈱は原子力規制委員会に対して新規制基準適合性確認申請を行い、あらためて新規制基準に基づく審査を受けることになりました。

(1)耐震バックチェック 平成18年9月19日、原子力安全委員会は「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を25年ぶりに改訂し、これを受けた原子力安全・保安院は、稼働中または建設中の発電所についても新指針に照らした耐震安全性の評価(いわゆる耐震バックチェック)を実施し、報告するよう原子力事業者等に指示しました。 これを受け、中国電力㈱は、平成18年10月18日に耐震安全性評価実施計画書を提出し、1,2号機及び3号機の評価作業を進めてきています。(中国電力(株)は、指針改訂以前の平成18年7月から改訂原案に照らした地質調査を開始) 平成19年7月20日、経済産業大臣から各電力会社に対し、新潟県中越沖地震(平成19年7月16日発生)から得られる知見を評価に適切に反映すること、また、可能な限り早期に評価を完了できるよう実施計画の見直しについて検討を行うよう指示が出され、これを受けた中国電力(株)は、平成19年8月20日、実施計画書見直しの報告を経済産業大臣に行いました。 この報告では、地質調査データの一層の精度向上のため、陸域におけるトレンチ調査、海域における海上音波探査等を実施し、これに伴い地質調査期間を約1年間延長する等の見直しが行われました。 中国電力(株)は、この実施計画に沿って地質調査や耐震安全性評価を行い、平成20年3月28日に1,2号機、平成21年9月25日に3号機の耐震安全性評価結果中間報告書を、平成23年1月21日には3号機の最終報告書を原子力安全・保安院に提出しました。 このうち1,2号機の中間報告書については、平成20年12月26日に原子力安全・保安院の評価、平成22年3月18日に原子力安全委員会の見解が示されました。

◎耐震安全性評価の流れ◎耐震安全性評価の流れ ◎評価対象施設 ◎地質調査の概要 中国電力㈱は平成 18 年7月から平成 20 年6月にかけて地質調査を実施し、耐震設計上

考慮する活断層(宍道断層)の長さを約 22kmと評価しました。 さらに、原子力安全委員会ワーキンググループからの提案、原子力安全委員会からの意

見を受けた追加調査として、それぞれ平成 21 年 10 月から 12 月にかけて佐陀本郷廻谷にお

けるボーリング調査と森山におけるボーリング調査・反射法地震探査が、平成 22 年7月か

ら8月にかけて敷地前面海域の海上音波探査が実施されました。

※1 耐震設計において基準とする地震動で、施設の供用期間中に極めてまれではあるが、

発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定して策定する。

※2 機器・建物・地盤等について重量や変形のしやすさ等を考慮し、地震時の

揺れを詳細に計算すること。

   評価対象施設は新耐震指針における耐震重要度分類「Sクラス」の

   施設、及び「Sクラス」の施設に波及的影響を生じさせるおそれの

   ある「Bクラス」「Cクラス」の施設。

機器・建物などの地震応答解析※2

地質調査

基準地震動※1の策定

耐震安全性評価

※1 2号機対象

屋外重要土木構造物

周辺斜面、津波

建物・構築物

原子炉冷却系統設備に係る土木構造物

施設等の内訳

原子炉格納施設、放射線管理設備、燃料設備、附帯設備

基礎地盤

原子炉建物、制御室建物、タービン建物、廃棄物処理建物※1、排気筒

地震随伴事象

機器・配管系 原子炉本体、計測制御系統設備、原子炉冷却系統設備

原子炉建物基礎地盤

対象設備等

調査項目

地形調査

地表地質調査

物理探査等

・直接、地層が確認できる箇所等を観察し、地質・地質構造や断層の有無について調査。

調査内容

・ボーリング調査※5[古浦、長海町、下宇部尾地区等]、トレンチ調査※6[下宇部尾地区等]、試料採取、分析等を実施。

・空中写真判読※1、航空レーザー測量※2の実施。

・活断層の位置・形状等を把握するため、物理探査※3(反射法地震探査※4等)を実施[古浦、長海町、下宇部尾地区]。

・地盤の安定性に関して、既存の調査結果に基づく評価の妥当性を確認するため、発電所敷地内においてボーリング調査等を実施。

・必要に応じて、はぎ取り調査、試料採取・分析を実施。

・海域において、海上音波探査※7を実施。

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◎評価対象施設

◎地質調査の概要 中国電力㈱は平成18年7月から平成20年6月にかけて地質調査を実施し、耐震設計上考慮する活断層(宍道断層)の長さを約22kmと評価しました。

 さらに、原子力安全委員会ワーキンググループからの提案、原子力安全委員会からの意見を受けた追加調査として、それぞれ平成21年10月から12月にかけて佐陀本郷廻谷におけるボーリング調査と森山におけるボーリング調査・反射法地震探査が、平成22年7月から8月にかけて敷地前面海域の海上音波探査が実施されました。

<用語解説>※1 空中写真判読

※2 航空レーザー測量

※3 物理探査

※4 反射法地震探査

※5 ボーリング調査

※6 トレンチ調査

※7 海上音波探査

◎耐震安全性評価の流れ ◎評価対象施設 ◎地質調査の概要 中国電力㈱は平成 18 年7月から平成 20 年6月にかけて地質調査を実施し、耐震設計上

考慮する活断層(宍道断層)の長さを約 22kmと評価しました。 さらに、原子力安全委員会ワーキンググループからの提案、原子力安全委員会からの意

見を受けた追加調査として、それぞれ平成 21 年 10 月から 12 月にかけて佐陀本郷廻谷にお

けるボーリング調査と森山におけるボーリング調査・反射法地震探査が、平成 22 年7月か

ら8月にかけて敷地前面海域の海上音波探査が実施されました。

※1 耐震設計において基準とする地震動で、施設の供用期間中に極めてまれではあるが、

発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定して策定する。

※2 機器・建物・地盤等について重量や変形のしやすさ等を考慮し、地震時の

揺れを詳細に計算すること。

   評価対象施設は新耐震指針における耐震重要度分類「Sクラス」の

   施設、及び「Sクラス」の施設に波及的影響を生じさせるおそれの

   ある「Bクラス」「Cクラス」の施設。

機器・建物などの地震応答解析※2

地質調査

基準地震動※1の策定

耐震安全性評価

※1 2号機対象

屋外重要土木構造物

周辺斜面、津波

建物・構築物

原子炉冷却系統設備に係る土木構造物

施設等の内訳

原子炉格納施設、放射線管理設備、燃料設備、附帯設備

基礎地盤

原子炉建物、制御室建物、タービン建物、廃棄物処理建物※1、排気筒

地震随伴事象

機器・配管系 原子炉本体、計測制御系統設備、原子炉冷却系統設備

原子炉建物基礎地盤

対象設備等

調査項目

地形調査

地表地質調査

物理探査等

・直接、地層が確認できる箇所等を観察し、地質・地質構造や断層の有無について調査。

調査内容

・ボーリング調査※5[古浦、長海町、下宇部尾地区等]、トレンチ調査※6[下宇部尾地区等]、試料採取、分析等を実施。

・空中写真判読※1、航空レーザー測量※2の実施。

・活断層の位置・形状等を把握するため、物理探査※3(反射法地震探査※4等)を実施[古浦、長海町、下宇部尾地区]。

・地盤の安定性に関して、既存の調査結果に基づく評価の妥当性を確認するため、発電所敷地内においてボーリング調査等を実施。

・必要に応じて、はぎ取り調査、試料採取・分析を実施。

・海域において、海上音波探査※7を実施。

◎耐震安全性評価の流れ ◎評価対象施設 ◎地質調査の概要 中国電力㈱は平成 18 年7月から平成 20 年6月にかけて地質調査を実施し、耐震設計上

考慮する活断層(宍道断層)の長さを約 22kmと評価しました。 さらに、原子力安全委員会ワーキンググループからの提案、原子力安全委員会からの意

見を受けた追加調査として、それぞれ平成 21 年 10 月から 12 月にかけて佐陀本郷廻谷にお

けるボーリング調査と森山におけるボーリング調査・反射法地震探査が、平成 22 年7月か

ら8月にかけて敷地前面海域の海上音波探査が実施されました。

※1 耐震設計において基準とする地震動で、施設の供用期間中に極めてまれではあるが、

発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定して策定する。

※2 機器・建物・地盤等について重量や変形のしやすさ等を考慮し、地震時の

揺れを詳細に計算すること。

   評価対象施設は新耐震指針における耐震重要度分類「Sクラス」の

   施設、及び「Sクラス」の施設に波及的影響を生じさせるおそれの

   ある「Bクラス」「Cクラス」の施設。

機器・建物などの地震応答解析※2

地質調査

基準地震動※1の策定

耐震安全性評価

※1 2号機対象

屋外重要土木構造物

周辺斜面、津波

建物・構築物

原子炉冷却系統設備に係る土木構造物

施設等の内訳

原子炉格納施設、放射線管理設備、燃料設備、附帯設備

基礎地盤

原子炉建物、制御室建物、タービン建物、廃棄物処理建物※1、排気筒

地震随伴事象

機器・配管系 原子炉本体、計測制御系統設備、原子炉冷却系統設備

原子炉建物基礎地盤

対象設備等

調査項目

地形調査

地表地質調査

物理探査等

・直接、地層が確認できる箇所等を観察し、地質・地質構造や断層の有無について調査。

調査内容

・ボーリング調査※5[古浦、長海町、下宇部尾地区等]、トレンチ調査※6[下宇部尾地区等]、試料採取、分析等を実施。

・空中写真判読※1、航空レーザー測量※2の実施。

・活断層の位置・形状等を把握するため、物理探査※3(反射法地震探査※4等)を実施[古浦、長海町、下宇部尾地区]。

・地盤の安定性に関して、既存の調査結果に基づく評価の妥当性を確認するため、発電所敷地内においてボーリング調査等を実施。

・必要に応じて、はぎ取り調査、試料採取・分析を実施。

・海域において、海上音波探査※7を実施。

<用語解説>

◎耐震安全性評価 中国電力(株)は平成 20 年3月 28 日に1,2号機、平成 21 年9月 25 日に3号機の耐震

安全性評価結果中間報告書を、平成 23 年1月 21 日には3号機の最終報告書を原子力安全・

保安院に提出しました。 平成 24 年1月末現在、このうちの1,2号機の中間報告書については、原子力安全・保

安院及び原子力安全委員会による評価・見解が示されています。

※1 空中写真判読

2枚の写真を用いると立体的に見えるように撮影された航空写真を用いて、立体的に地形を観察し、

地形の微妙な起伏や食い違いを詳しく読み取り、断層運動の繰り返しによってできた地形を見つけ出

す手法。

※2 航空レーザー測量

航空機に搭載したレーザー式の距離計により、地上の標高や形状を調査する量方法。

※3 物理探査

地殻を構成する岩石の物理的な性質を利用して、地下の地質構造を調査する方法。

※4 反射法地震探査

人工の地震波を出し、地下からの反射波を受信して地下の構造を調査する方法。

※5 ボーリング調査

地表から地下に筒状の穴を掘り、地層を採取して地下の状態を調査する方法。

※6 トレンチ調査

活断層の過去の活動を詳しく知るために、断層線(面)を横切る方向に細長い溝を掘り、地層を露出

させて行われる調査。

※7 海上音波探査

船から海底に向けて音波を出し、海底からの反射波の記録を解析することにより海底の地質構造を調

査する方法。

トレンチの掘削 トレンチの掘削

第3章 島根原子力発電所の現況

……2枚の写真を用いると立体的に見えるように撮影された航空写真を用いて、立体的に地形を観察し、地形の微妙な起伏や食い違いを詳しく読み取り、断層運動の繰り返しによってできた地形を見つけ出す手法。

……航空機に搭載したレーザー式の距離計により、地上の標高や形状を調査する量方法。

……地殻を構成する岩石の物理的な性質を利用して、地下の地質構造を調査する方法。

……人工の地震波を出し、地下からの反射波を受信して地下の構造を調査する方法。

……地表から地下に筒状の穴を掘り、地層を採取して地下の状態を調査する方法。

……活断層の過去の活動を詳しく知るために、断層線(面)を横切る方向に細長い溝を掘り、地層を露出させて行われる調査。

……船から海底に向けて音波を出し、海底からの反射波の記録を解析することにより海底の地質構造を調査する方法。

Page 10: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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●しまねの原子力

◎耐震安全性評価 中国電力(株)は平成20年3月28日に1,2号機、平成21年9月25日に3号機の耐震安全性評価結果中間報告書を、平成23年1月21日には3号機の最終報告書を原子力安全・保安院に提出しました。 平成24年1月末現在、このうちの1,2号機の中間報告書については、原子力安全・保安院及び原子力安全委員会による評価・見解が示されています。

▼原子力安全・保安院による評価 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会の下に設置したサブグループにおいて検討し、独自の現地調査や海上音波探査も実施した上で、平成20年12月26日にその内容を妥当と評価しました。 ・耐震設計上考慮する活断層(宍道断層)の長さ約22kmの想定は妥当。 ・基準地震動Ssとして、当初設定した基準地震動(Ss-1)及び新潟県中越沖地震の知見から追加した基  準地震動(Ss-2)は妥当。 ・1,2号機の安全上重要な機能を有する主要な施設の耐震安全性評価は妥当。

▼原子力安全委員会の見解 耐震安全性評価特別委員会のワーキンググループで、原子力安全・保安院や中国電力㈱から説明を聴取するなどの方法により、33回にわたって審議が行われ、保安院からの評価報告受領以降に行われた基準地震動の一部見直し(※1)や、特別委員会の検討過程で判明した、使用する解析プログラムの違いによる地震動評価結果への影響についても検討が行われました。 その結果、中国電力㈱が最終報告までに以下の事項について対応するのが適当との意見を付けた上で、平成22年3月18日、原子力安全委員会は、原子力安全・保安院の評価報告は基本的には問題ないとの見解を示しました。・上記の解析プログラムに関して、より保守的な地震動を与えるプログラムBにより耐震安全性評価を実

施すること。・ワーキンググループでの説明資料に、解析条件や結果等の世代管理が適切でなかったことに伴う誤りが

あったことについて、不適合管理、再発防止対策等を見直した結果について報告すること。・F-Ⅲ断層~F-Ⅳ断層間や敷地側海域の構造の評価等について更なる検討を実施すること。

(※1)「耐震バックチェックにおいて地震動評価を行う際の応力降下量の取扱いについて」(平成21年4月24日、経済産業省原子力安全・保安院通知)により、断層モデルを用いた手法の地震動評価における応力降下量(短周期レベル1.5倍)の取扱いが示されたことに基づき、基準地震動Ss-2の見直しが行われたもの。

<用語解説>

◎耐震安全性評価 中国電力(株)は平成 20 年3月 28 日に1,2号機、平成 21 年9月 25 日に3号機の耐震

安全性評価結果中間報告書を、平成 23 年1月 21 日には3号機の最終報告書を原子力安全・

保安院に提出しました。 平成 24 年1月末現在、このうちの1,2号機の中間報告書については、原子力安全・保

安院及び原子力安全委員会による評価・見解が示されています。

※1 空中写真判読

2枚の写真を用いると立体的に見えるように撮影された航空写真を用いて、立体的に地形を観察し、

地形の微妙な起伏や食い違いを詳しく読み取り、断層運動の繰り返しによってできた地形を見つけ出

す手法。

※2 航空レーザー測量

航空機に搭載したレーザー式の距離計により、地上の標高や形状を調査する量方法。

※3 物理探査

地殻を構成する岩石の物理的な性質を利用して、地下の地質構造を調査する方法。

※4 反射法地震探査

人工の地震波を出し、地下からの反射波を受信して地下の構造を調査する方法。

※5 ボーリング調査

地表から地下に筒状の穴を掘り、地層を採取して地下の状態を調査する方法。

※6 トレンチ調査

活断層の過去の活動を詳しく知るために、断層線(面)を横切る方向に細長い溝を掘り、地層を露出

させて行われる調査。

※7 海上音波探査

船から海底に向けて音波を出し、海底からの反射波の記録を解析することにより海底の地質構造を調

査する方法。

トレンチの掘削

Page 11: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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 また、原子力安全委員会は、中国電力(株)が用いたのとは別の強震動予測手法によって評価した地震動や、宍道断層を22kmより延ばしたケース(30km、34km、38kmの3パターン)の地震動を基準地震動と比較することにより、中国電力㈱の策定した基準地震動がどの程度の安全性(安全余裕)を有しているかの確認も行いました。

≪3号機最終報告書(平成23年1月21日提出)のポイント(中間報告からの主な変更事項、追加事項)≫ ・平成22年3月18日の原子力安全委員会の意見を反映。 ・追加で地質調査を行うなど、耐震設計上考慮する活断層の評価を一部見直し。 ・基準地震動Ss-2を見直し。 ・安全上重要な機能を有する全ての施設等(中間報告時は主要8施設)について耐震安全性評価を行い、   その安全機能が保持されていることを確認。 ・津波に対する安全性評価等を行い、原子炉施設の安全性に問題のないことを確認。

(2)福島第一原子力発電所事故以降の動き◎活断層の連動性の評価 原子力安全・保安院は、平成24年1月27日付け「平成23年東北地方太平洋沖地震から得られた地震動に関する知見を踏まえた原子力発電所等の耐震安全性評価に反映すべき事項(中間取りまとめ)について」により、活断層の連動性について再検討するよう指示を行いました。 中国電力(株)は、島根原子力発電所の敷地周辺の主要な活断層の連動の可能性について検討し,平成24年2月29日にその結果を国へ報告しました。 平成24年3月28日および4月23日に開催された地震・津波に関する意見聴取会において、国は次のとおり見解を示しました。 ・宍道断層と鳥取沖西部断層については連動を考慮する必要はない ・鳥取沖西部断層を西側に延長した評価が必要  (中国電力(株)は33kmを37kmに延長して再評価を行い、平成24年3月28日に意見聴取会で報告) ・島根原子力発電所の前面海域に位置する「F-Ⅲ,F-ⅣおよびFK-2断層」の連動を考慮すべき

 中国電力(株)は、海域の3つの活断層の連動と断層傾斜(発電所側)を考慮するとともに、さらに不確かさ(応力降下量※2 1.5倍等)を考慮した地震動評価を実施した結果、地震動は概ね基準地震動Ss-1に包絡されることを確認しましたが、一部の周期で基準地震動Ss-1を上回ることから、新たな基準地震動Ss-3を追加設定することを、平成24年6月19日に国に報告しました。 さらに平成24年8月28日、中国電力(株)は、1,2,3号機について、新たに設定した基準地震動Ss-3による耐震安全性評価を行い、国に報告しました。 ・主要8施設(原子炉建物、原子炉圧力容器、炉心支持構造物、残留熱除去ポンプ、残留熱除去系配管、  主蒸気系配管、原子炉格納容器、制御棒)については、その安全機能が保持されることを確認した。 ・主要8施設以外の施設については、基準地震動Ss-3とSs-1との比較等から耐震安全性評価への影響は軽

・平成 22 年3月 18 日の原子力安全委員会の意見を反映。 ・追加で地質調査を行うなど、耐震設計上考慮する活断層の評価を一部見直し。 ・基準地震動 Ss-2 を見直し。 ・安全上重要な機能を有する全ての施設等(中間報告時は主要8施設)について耐震安

全性評価を行い、その安全機能が保持されていることを確認。 ・津波に対する安全性評価等を行い、原子炉施設の安全性に問題のないことを確認。 (2)福島第一原子力発電所事故以降の動き ◎活断層の連動性の評価

原子力安全・保安院は、平成 24 年 1 月 27 日付け「平成 23 年東北地方太平洋沖地震から

得られた地震動に関する知見を踏まえた原子力発電所等の耐震安全性評価に反映すべき事

項(中間取りまとめ)について」により、活断層の連動性について再検討するよう指示を

行いました。 中国電力(株)は、島根原子力発電所の敷地周辺の主要な活断層の連動の可能性について検

討し,平成 24 年 2 月 29 日にその結果を国へ報告しました。 平成 24 年 3 月 28 日および 4 月 23 日に開催された地震・津波に関する意見聴取会におい

て、国は次のとおり見解を示しました。 ・宍道断層と鳥取沖西部断層については連動を考慮する必要はない ・鳥取沖西部断層を西側に延長した評価が必要 (中国電力(株)は 33km を 37km に延長して再評価を行い、平成 24 年 3 月 28 日に意見

聴取会で報告) ・島根原子力発電所の前面海域に位置する「F-Ⅲ,F-ⅣおよびFK-2断層」の連動

を考慮すべき 中国電力(株)は、海域の 3 つの活断層の連動と断層傾斜(発電所側)を考慮するとともに、

さらに不確かさ(応力降下量※11.5 倍等)を考慮した地震動評価を実施した結果、地震動

は概ね基準地震動 Ss-1 に包絡されることを確認しましたが、一部の周期で基準地震動 Ss-1を上回ることから、新たな基準地震動 Ss-3 を追加設定することを、平成 24 年 6 月 19 日に

国に報告しました。 さらに平成 24 年 8 月 28 日、中国電力(株)は、1,2,3号機について、新たに設定した

第3章 島根原子力発電所の現況

Page 12: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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●しまねの原子力

  微であり耐震安全性評価上問題ないと考えている。

 原子力安全・保安院から主要8施設以外の施設についても定量的な評価を行い、その結果を報告するよう指示されたことから、中国電力(株)は詳細な評価を実施してきました。

(※1)応力降下量…断層が破壊する直前まで断層面に応力が蓄積されており、断層破壊によってその応力が解放される。その応力の解放量を「応力降下量」という。

◎敷地内の破砕帯の評価 原子力安全・保安院は、平成24年7月3日に全原発の敷地内破砕帯の現状評価の整理を指示しました。中国電力(株)は、平成24年8月10日に敷地内の破砕帯(シーム(※1))の活動性についての調査結果を、国に報告しました。 平成24年9月7日、国は、このシームは現時点で活動性が問題になるものではないとの見解を示しました。 敷地内の破砕帯の評価についても、中国電力㈱は原子力規制委員会に対して新規制基準適合確認申請を行い、あらためて新規制基準に基づく審査を受けることになります。

(※1)シームとは、粘土質の薄い弱層のこと。島根原子力発電所の敷地内のシームは、地層を切っている断層とは異なり地層と並行に分布し、破砕部をほとんど伴わず、厚さが薄い(3cm程度以下)ことから、古い時代(新第三紀中新世(約2300万年前~約500万年前))の褶曲構造の形成に伴って生成されたと考えられる。

(3)新たな知見を踏まえた基準地震動の追加設定 原子力発電所の耐震安全性評価に用いる基準地震動は、敷地周辺の活断層等を考慮して評価する「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」と、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震の観測記録を考慮して評価する「震源を特定せず策定する地震動」の双方を考慮して策定する必要があります。 平成25年12月、電力中央研究所において、「震源を特定せず策定する地震動」の新たな知見として、2004年北海道留萌支庁南部地震における観測地震動を基に解析した岩盤上の地震動がとりまとめられ、中国電力(株)は、その応答スペクトルが従来設定していた基準地震動(Ss-1 ~ 3)の応答スペクトルを一部の周期で上回ることから、これをSs-4として追加設定しました。

(4)新規制基準適合性確認審査の状況 平成25年12月25日、中国電力(株)が原子力規制委員会に対して2号機の新規制基準適合確認申請を行ったことから、活断層・地震動評価について、あらためて原子力規制委員会において新規制基準に基づく審査が行われています。 宍道断層について、中国電力は従来の評価のとおり、断層の長さを22㎞として申請を行い、この評価に対して、原子力規制委員会は、審査会合などで、断層の長さや他の活断層との連動を精査するため、断層端部付近のデータ拡充を行うよう指摘がありました。 この指摘を踏まえ、中国電力は、平成26年6月から、宍道断層に追加地質調査を実施(ボーリング、トレンチ調査、音波探査等)し、その後、平成27年2月には原子力規制委員会による現地調査が行われ、現在も審査が行われているところです。 また、海域の活断層についても、審査会合などにおいてデータの拡充について指摘があり、中国電力は平成26年5月から海域の追加調査(音波探査等)を実施しています。

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【経 緯】年月日 内容

H18. 9.19 原子力安全委員会が耐震設計審査指針を改訂

H18. 9.20 国(原子力安全・保安院)から電力各社に対し、新耐震指針に照らした耐震安全性の評価を実施するよう指示

H19. 7.16 新潟県中越沖地震発生H19. 7.20 国が電力各社に対し、中越沖地震を踏まえた対応を指示H20. 3.28 中国電力が1, 2号機の耐震安全性評価の中間報告を提出

H20.12.26国が中国電力の耐震安全性評価中間報告の評価を取りまとめ

(島根原子力発電所に係る地質・地質構造、基準地震動及び施設の耐震安全性については妥当と評価)

H21. 1. 8 国は評価結果を原子力安全委員会に報告H21. 7.27 原子力安全委員会WG3が現地調査を実施

H21. 9. 7 WG3が宍道断層の追加調査を提案 同時に中国電力から調査計画(森山地点、廻谷地点)を説明して WG3は了承

H21.12. 8 中国電力は、追加調査結果をWG3へ報告

H21.12.22

東端付近森山地点:後期更新世以降の断層活動は認められなかった西端付近廻谷地点:断層の活動性は低いと考えられるWG3は、追加調査の結果、宍道断層の長さ22kmを妥当とした原子力安全保安院の評価は妥当と判断

H22. 3.15 WG3で耐震安全性に関して原子力安全・保安院の判断に基本的には問題はないとする「検討のまとめ」がとりまとめられた

H22. 3.16 原子力安全委員会耐震安全性評価特別委員会において見解としてとりまとめられたH22. 3.18 原子力安全委員会において耐震安全性評価特別委員会の「見解」を了承H23. 1.21 3号機の耐震安全性評価結果書(最終報告)を原子力安全・保安院へ提出H24. 1.27 国が活断層の連動性についての再検討を指示H24. 2.29 中国電力が国へ「新たな連動性を考慮する必要がある活断層はない。」と報告H24. 3.28 国が見解

H24. 4.23

宍道断層と鳥取沖西部断層については連動を考慮する必要はない鳥取沖西部断層を西側に延長した評価が必要(※中国電力は33kmを37kmに延長して再評価し、報告)海域の3つの活断層は連動を考慮すべき

H24. 6.19 中国電力が国へ「海域の3つの活断層の連動を考慮した地震動評価を実施した結果、新たな基準地震動Ss-3の設定」を報告

H24. 7. 3 国が全原発の敷地内破砕帯の現状評価の整理を指示

H24. 8.10 中国電力が国に「島根原発敷地内の破砕帯(シーム)は少なくとも後期更新世以降に活動したものではない。」と報告

H24. 8.28中国電力が国へ基準地震動Ss-3による耐震安全性評価の結果を報告・主要8施設については安全機能確保を確認・それ以外の施設については影響は軽微(定性的評価)

H24. 9. 7

国が見解・島根原発敷地内の破砕帯(シーム)は現時点で活動性が問題になるものではない・主要8施設以外について基準地震動Ss-3による耐震安全性の定量的評価を実施して、結果を報告することを求める

H25. 7. 8 実用発電用原子炉施設に係る新規制基準施行H25.12.10 中国電力が「震源を特定せず策定する地震動」として、基準地震動Ss-4を設定H25.12.25 中国電力が原子力規制委員会へ2号機の新規制基準適合性確認を申請H26. 5.14 原子力規制委員会の審査会合での指摘を踏まえ、中国電力が海域の追加調査を実施H26. 6.10 原子力規制委員会の審査会合での指摘を踏まえ、中国電力が宍道断層の追加調査を実施

H27.2.5 ~ 6 原子力規制委員会が宍道断層等の現地調査を実施

第3章 島根原子力発電所の現況

Page 14: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

20

●しまねの原子力

■島根原子力発電所の耐震裕度向上工事◎島根原子力発電所1,2号機の耐震裕度向上工事 中国電力㈱は耐震設計審査指針の改訂目的を踏まえ、平成19年度から自主的に1,2号機の耐震裕度向上工事を実施しました。 工事期間:平成19年5月~平成24年度 工事内容:(1)定期検査期間中に実施する工事 ・配管支持構造物の増設、改造工事 ・電路類支持構造物の増設、改造工事 など      (2)定期検査期間外に実施する工事 ・原子炉建物天井クレーン改造工事 ・燃料取替機改造工事        など ◎島根原子力発電所2,3号機の耐震裕度向上工事 中国電力は、東京電力㈱福島第一原子力発電所事故を踏まえて、排気筒について耐震安全性を確保していることを確認しましたが、原子炉建物至近に位置する大きな構造物であることから、耐震裕度向上工事を実施しています。              (2号機:平成26年度内完了予定、3号機:平成25年度完了) ■島根原子力発電所での津波への対策 施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波(設計想定津波)を想定し、数値シミュレーションにより求めた水位上昇に対して敷地や護岸の高さに余裕を持たせるなどの対策がとられています。  しかしながら、東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故では、東京電力㈱が行った設計想定を大きく超える津波が発電所に襲来した事実があり、島根原子力発電所でも、全国の原子力発電所と同様、設計の想定を超える津波が襲来した場合でも炉心損傷などの重大な事故に至らないよう、津波に対する対策の強化が行われています。  中国電力(株)は、「F-3,F-4およびFK-2断層」の連動を考慮した津波について評価を行い,発電所護岸における最高水位は、1・2号機施設護岸で海抜6.0m、3号機施設護岸で海抜8.7mとなり、これまでの評価(海抜5.7m)を上回るが、1・2号機の敷地高さ、3号機の防波壁高さをそれぞれ下回ることから、原子炉施設が津波による被害を受けるおそれがないとする結果を、平成24年6月19日に原子力安全・保安院へ報告しました。   新規制基準では、地震のほか、地震以外の要因及びこれらの組合せによるものも検討し、不確かさを考慮して数値解析を実施するとともに、行政機関及び地方自治体による津波評価について検討を行った上で、既往最大を上回るレベルの基準津波を策定することになりました。

■島根原子力発電所の耐震裕度向上工事 ◎島根原子力発電所1,2 号機の耐震裕度向上工事 中国電力㈱は耐震設計審査指針の改訂目的を踏まえ、平成 19 年度から自主的に1,2号機

の耐震裕度向上工事を実施しました。 工事期間:平成 19 年5月~平成 24 年度 工事内容:(1)定期検査期間中に実施する工事

・配管支持構造物の増設、改造工事 ・電路類支持構造物の増設、改造工事 など

(2)定期検査期間外に実施する工事 ・原子炉建物天井クレーン改造工事 ・燃料取替機改造工事 など

◎島根原子力発電所2,3号機の耐震裕度向上工事 中国電力は、東京電力㈱福島第一原子力発電所事故を踏まえて、排気筒について耐震安

全性を確保していることを確認しましたが、原子炉建物至近に位置する大きな構造物であ

ることから、耐震裕度向上工事を実施しています。 (2号機:平成 26 年度内完了予定、3号機:平成25年度完了)

■島根原子力発電所での津波への対策 施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波(設計想定津波)

を想定し、数値シミュレーションにより求めた水位上昇に対して敷地や護岸の高さに余裕

を持たせるなどの対策がとられています。 しかしながら、東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故では、東京電力㈱が行った設計

想定を大きく超える津波が発電所に襲来した事実があり、島根原子力発電所でも、全国の

原子力発電所と同様、設計の想定を超える津波が襲来した場合でも炉心損傷などの重大な

2号機 3号機

天井クレーンガーダに設置した耐震補強板 天井クレーンガーダに設置した耐震補強板

■島根原子力発電所の耐震裕度向上工事 ◎島根原子力発電所1,2 号機の耐震裕度向上工事 中国電力㈱は耐震設計審査指針の改訂目的を踏まえ、平成 19 年度から自主的に1,2号機

の耐震裕度向上工事を実施しました。 工事期間:平成 19 年5月~平成 24 年度 工事内容:(1)定期検査期間中に実施する工事

・配管支持構造物の増設、改造工事 ・電路類支持構造物の増設、改造工事 など

(2)定期検査期間外に実施する工事 ・原子炉建物天井クレーン改造工事 ・燃料取替機改造工事 など

◎島根原子力発電所2,3号機の耐震裕度向上工事 中国電力は、東京電力㈱福島第一原子力発電所事故を踏まえて、排気筒について耐震安

全性を確保していることを確認しましたが、原子炉建物至近に位置する大きな構造物であ

ることから、耐震裕度向上工事を実施しています。 (2号機:平成 26 年度内完了予定、3号機:平成25年度完了)

■島根原子力発電所での津波への対策 施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波(設計想定津波)

を想定し、数値シミュレーションにより求めた水位上昇に対して敷地や護岸の高さに余裕

を持たせるなどの対策がとられています。 しかしながら、東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故では、東京電力㈱が行った設計

想定を大きく超える津波が発電所に襲来した事実があり、島根原子力発電所でも、全国の

原子力発電所と同様、設計の想定を超える津波が襲来した場合でも炉心損傷などの重大な

2号機 3号機

天井クレーンガーダに設置した耐震補強板

Page 15: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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 中国電力(株)は、新規制基準を踏まえて基準津波を検討し、安全側の評価を実施する観点から、平成24年に鳥取県が日本海東縁部に想定した地震に伴う津波を基準津波として選定しました。基準津波による敷地における最高水位※は、施設護岸で海抜9.5mで、津波対策として設置した海抜15mの防波壁の高さを下回ると評価されています。また、取水槽内の最低水位※は、海抜-7.2mで、2号機の原子炉補機海水ポンプの長尺化工事の実施により取水可能水位(海抜-8.32m)を上回り、津波に伴う引き波に対しての取水に問題はないと評価されています。  平成25年12月25日、中国電力(株)が原子力規制委員会に対して2号機の新規制基準適合確認申請を行ったことから、津波の評価についても、あらためて原子力規制委員会において新規制基準に基づく審査が行われています。

    平成27年2月末時点

■島根原子力発電所での地震時の対応 ◎島根原子力発電所の対応

・原子炉建物基礎マット上の地震計が10ガル※以上の揺れを感知すると、中国電力(株)では一斉パトロールを実施し、プラントの状態把握を行います。

・原子炉建物基礎マット上の地震計が水平方向140ガル以上または垂直方向70ガル以上の揺れを感知すると、原子炉は自動的に停止します。

◎島根県の対応・松江市で観測された最大の震度が震度3以上の場合、島根原子力発電所から県に連絡が入ります。・震度4以上の場合、県では連絡を受け直ちに住民広報を実施します。

(参考)平成12年鳥取県西部地震での地震動 地震発生日時:平成12年10月6日  震央位置:鳥取県西部  マグニチュード:7. 3

事故に至らないよう、津波に対する対策の強化が行われています。 中国電力(株)は、「F-3,F-4 および FK-2 断層」の連動を考慮した津波について評価を行

い,発電所護岸における最高水位は、1・2 号機施設護岸で海抜 6.0m、3 号機施設護岸で海

抜 8.7m となり、これまでの評価(海抜 5.7m)を上回るが、1・2 号機の敷地高さ、3 号機の防

波壁高さをそれぞれ下回ることから、原子炉施設が津波による被害を受けるおそれがない

とする結果を、平成 24 年 6 月 19 日に原子力安全・保安院へ報告しました。 新規制基準では、地震のほか、地震以外の要因及びこれらの組合せによるものも検討し、

不確かさを考慮して数値解析を実施するとともに、行政機関及び地方自治体による津波評

価について検討を行った上で、既往最大を上回るレベルの基準津波を策定することになり

ました。 中国電力(株)は、新規制基準を踏まえて基準津波を検討し、安全側の評価を実施する観点

から、平成 24 年に鳥取県が日本海東縁部に想定した地震に伴う津波を基準津波として選定

しました。基準津波による敷地における最高水位※は、施設護岸で海抜 9.5mで、津波対策

として設置した海抜 15mの防波壁の高さを下回ると評価されています。また、取水槽内の

最低水位※は、海抜-7.2mで、2号機の原子炉補機海水ポンプの長尺化工事の実施により取

水可能水位(海抜-8.32m)を上回り、津波に伴う引き波に対しての取水に問題はないと評

価されています。 平成 27 年2月末時点

■島根原子力発電所での地震時の対応 ◎島根原子力発電所の対応 ・原子炉建物基礎マット上の地震計が 10 ガル※以上の揺れを感知すると、中国電力(株)で

は一斉パトロールを実施し、プラントの状態把握を行います。 ・原子炉建物基礎マット上の地震計が水平方向 140 ガル以上または垂直方向 70 ガル以上の

揺れを感知すると、原子炉は自動的に停止します。 ◎島根県の対応 ・松江市で観測された最大の震度が震度3以上の場合、島根原子力発電所から県に連絡

号機波源

海抜9.5m 海抜9.1m

海抜6.3m 海抜9.2m

1,2号機 3号機

日本海東縁部

敷地前面海域

※いずれも津波高さに断層活動による地盤変動量を考慮した水位

施設護岸での最高水位※

施設護岸での最高水位※

号機波源 1,2号機 3号機

日本海東縁部 海抜9.5m 海抜9.1m敷地前面海域 海抜6.3m 海抜9.2m

※いずれも津波高さに断層活動による地盤変動量を考慮した水位

観測地点 震央からの距離 測点 最大加速度

島根原子力発電所約45km 1号機原子炉建物基礎マット上 29ガル

約45km 2号機原子炉建物基礎マット上 34ガル

旧鹿島町役場 約45km 地 表 109ガル ※ガル=加速度の単位(cm/sec2)で、地震の揺れの強さを数値として表現したものです。

第3章 島根原子力発電所の現況

Page 16: 第3章 島根原子力発電所の現況 3 島根原子力発電所の現況 · 7 第3章 島根原子力発電所の現況 第3章 島根原子力発電所の現況 概 要 島根原子力発電所は、日本で5番目の原子力発電所として、島根県松江市鹿島町片句に建設され、1号機(電

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●しまねの原子力

■日本の原子力発電所の運転・建設状況(実用発電用原子炉施設 2015年2月時点)

設置者 発電所名(設備番号) 所在地 炉型 許可出力(万kw) 運転開始年月日

運転中

日本原子力発電㈱〃〃

東海第二敦賀(1号) 〃 (2号)

茨城県東海村福井県敦賀市 〃  〃

BWR〃

PWR

110.035.7116.0

78.11.2870. 3.1487. 2.17

北 海 道 電 力㈱〃〃

泊(1号)〃(2号)〃(3号)

北海道泊村 〃  〃 〃  〃

〃〃〃

57.957.991.2

89. 6.2291. 4.12

2009.12.22東 北 電 力㈱

〃〃〃

女川原子力(1号)  〃   (2号)  〃   (3号)東通原子力(1号)

宮城県女川町、石巻市 〃  〃   〃 〃  〃   〃青森県東通村

〃〃〃

52.482.582.5110.0

84. 6. 195. 7.28

2002. 1.302005.12. 8

東 京 電 力㈱〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

福島第二原子力(1号)   〃    (2号)   〃    (3号)   〃    (4号)柏崎刈羽原子力(1号)   〃    (2号)   〃    (3号)   〃    (4号)   〃    (5号)   〃    (6号)   〃    (7号)

福島県富岡町、楢葉町 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃新潟県柏崎市、刈羽村 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃

BWR

〃〃〃〃〃〃〃〃

ABWR〃

110.0110.0110.0110.0110.0110.0110.0110.0110.0135.6135.6

82. 4.2084. 2. 385. 6.2187. 8.2585. 9.1890. 9.2893. 8.1194. 8.1190. 4.1096.11. 797. 7. 2

中 部 電 力㈱〃〃

浜岡原子力(3号)  〃   (4号)  〃   (5号)

静岡県御前崎市 〃   〃 〃   〃

BWR〃

ABWR

110.0113.7138.0

87. 8.2893. 9. 3

2005. 1.18北 陸 電 力㈱

〃志賀原子力(1号)   〃   (2号)

石川県志賀町 〃  〃

BWRABWR

54.0120.6

93. 7.302006. 3.15

関 西 電 力㈱〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

美浜(1号) 〃 (2号) 〃 (3号)高浜(1号) 〃 (2号) 〃 (3号) 〃 (4号)大飯(1号) 〃 (2号) 〃 (3号) 〃 (4号

福井県美浜町 〃  〃 〃  〃 〃 高浜町 〃  〃 〃  〃 〃  〃 〃 おおい町 〃   〃 〃   〃 〃   〃

PWR〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

34.050.082.682.682.687.087.0117.5117.5118.0118.0

70.11.2872. 7.2576.12. 174.11.1475.11.1485. 1.1785. 6. 579. 3.2779.12. 591.12.1893. 2. 2

中 国 電 力㈱〃

島根原子力(1号)  〃   (2号)

島根県松江市 〃  〃

BWR〃

46.082.0

74. 3.2989. 2.10

四 国 電 力㈱〃〃

伊方(1号) 〃 (2号) 〃 (3号)

愛媛県伊方町 〃  〃 〃  〃

PWR〃〃

56.656.689.0

77. 9.3082. 3.1994.12.15

九 州 電 力㈱〃〃〃〃〃

玄海原子力(1号)  〃   (2号)  〃   (3号)  〃   (4号)川内原子力(1号)  〃   (2号)

佐賀県玄海町 〃  〃 〃  〃 〃  〃鹿児島県薩摩川内市 〃    〃

〃〃〃〃〃〃

55.955.9118.0118.089.089.0

75.10.1581. 3.3094. 3.1897. 7.2584. 7. 485.11.28

小 計 (48基) 4415.1

建設中

東 京 電 力㈱中 国 電 力㈱電 源 開 発㈱

東通原子力(1号)島根原子力(3号)大間原子力

青森県東通村島根県松江市青森県大間町

ABWR〃〃

138.5137.3138.3

未  定〃〃

小 計 (3基) 414.1

着 工準備中

日本原子力発電㈱〃

東 北 電 力㈱東 京 電 力㈱中 部 電 力㈱中 国 電 力㈱

〃九 州 電 力㈱

敦賀(3号) 〃 (4号)東通原子力(2号)  〃   (2号)浜岡原子力(6号)上関原子力(1号)  〃   (2号)川内原子力(3号)

福井県敦賀市 〃  〃青森県東通村 〃  〃静岡県御前崎市山口県上関町 〃  〃鹿児島県薩摩川内市

APWR〃

ABWR〃〃〃〃

APWR

153.8153.8138.5138.5140級137.3137.3159.0

未  定〃〃〃〃〃〃〃

小 計 (8基) 1158.2合 計 (59基) 5987.4

廃 止措置中

日本原子力発電㈱中 部 電 力㈱

〃東 京 電 力㈱

〃〃〃〃〃

東海浜岡原子力(1号)  〃   (2号)福島第一原子力(1号)   〃    (2号)   〃    (3号)   〃    (4号)   〃    (5号)   〃    (6号)

茨城県東海村静岡県御前崎市 〃   〃福島県大熊町、双葉町 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃 〃  〃   〃

GCRBWR〃〃〃〃〃〃〃

16.654.084.046.078.478.478.478.4110.0

66. 7.25~98. 3.31(終了)76. 3.31~09. 1.30(終了)78.11.29~09. 1.30(終了)71. 3.26~12. 4.19(終了)74. 7.18~12. 4.19(終了)76. 3.27~12. 4.19(終了)78.10.12~12. 4.19(終了)78. 4.18~14. 1.31(終了)79.10.24~14. 1.31(終了)

※BWR:沸騰水型軽水炉、PWR:加圧水型軽水炉、ABWR:改良型沸騰水型軽水炉、APWR:改良型加圧水型軽水炉、 GCR:ガス冷却炉