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1 45 回日本婦人科病理学会学術集会 2016 12 3 日(土) 学術集会長 湘南鎌倉総合病院 病理診断部 手島伸一 主題:子宮体部病変 会場:湘南鎌倉総合病院大会議室他 https://shonankamakura.or.jp 参加費: 3,000 円(昼弁当、懇親会費含む) 問い合わせ先:湘南鎌倉総合病院病理診断部 手島伸一 247-8533 鎌倉市岡本 1370-1 TEL 0467-46-1717 (9966) e-mail [email protected]

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第 45回日本婦人科病理学会学術集会

2016 年 12 月 3 日(土)

学術集会長

湘南鎌倉総合病院 病理診断部

手島伸一

主題:子宮体部病変

会場:湘南鎌倉総合病院大会議室他

https://shonankamakura.or.jp

参加費: 3,000円(昼弁当、懇親会費含む)

問い合わせ先:湘南鎌倉総合病院病理診断部 手島伸一

〒247-8533 鎌倉市岡本 1370-1

TEL 0467-46-1717 (9966)

e-mail [email protected]

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湘南鎌倉総合病院へのアクセス

https://shonankamakura.or.jp/access

をご覧ください。

最寄駅:JR東海道線大船駅

横浜駅から 15分

品川駅から約 35分

新横浜駅から約35分

羽田(京急)から48分~60分

JR 大船駅からは以下の通りです。

大船駅西口をご利用ください。

大船駅西口からの公共バス、タクシー(730円または820円)をご利用ください。

大船駅から当院までは徒歩20分-22分です。

大船駅と当院を結ぶシャトルバスがありますが、患者様専用ですので、ご利用は控えてく

ださい。

会場案内

当日は、病院業務は通常通り行われています。病院玄関の総合受付で日本婦人科病理

学会学術集会の学会受付をお尋ねください。

学会受付: 別館3 階講堂前

鏡検室: 別館1階第一会議室

理事会室: 別館1階第二会議室

講演会場: 別館3階講堂 (各階への移動はエレベーターが便利です)

懇親会場: 別館2階

荷物置き場:別館1階第一会議室あるいは第二会議室

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ご案内

・検討症例が 14 例と多数集まりましたので、受付開始、鏡検開始の時刻を早めて、9:00am

に開始します。同様に「鎌倉古都短時間めぐり」、「ランチョンセミナー」「症例検討」の時間

を若干早めました。

・検討症例 14例用の顕微鏡は14台用意しました。

・「鎌倉古都短時間めぐり」(当院マイクロバス利用のツアー)に多少の空きがありますので、

追加募集いたします。

行き返りのバス内で、当病理、武田宏太郎先生(鎌倉検定士、国連英検 A 級)の興味深い

ガイドがあります。参加費は無料です。(別に大仏入場料 200 円かかります)。弁当は当方

で用意します。10時 40分の時間厳守で出発しますのでツアー参加者は10分前には鏡検

室にお集まりください。渋滞がなければ、鶴岡八幡宮などにも廻る予定です。ツアー参加者

は出発前に午後の講演会場の席を確保します。

・参加費(3,000円)には、昼食(弁当)と懇親会費が含まれます。懇親会場は当院2階で

行い、1時間以内の予定です。ぜひご参加ください。

・大船駅西口からは公共バス、タクシー(730円または820円)をご利用ください。大船駅か

ら当院までは徒歩20分~22分です。

・午前の外来が混雑しています。病院の総合受付で学会の受付会場をお尋ねください。

受付と講演会場、休憩会場は別館3階、鏡検室と理事会室は別館1階、懇親会場は

別館2階です。

・講演の順が不揃いですが、「鎌倉古都短時間めぐり」が渋滞に巻き込まれた場合を考慮し

ているためです。

・講堂では原則として飲食が禁止されていますが、ランチョンセミナーで配付する弁当と飲

み物は許可されました。配付以外のコーヒー、お茶などの講堂への持ち込みはご遠慮くだ

さい。(講堂以外での飲食はご自由です。)

皆様のご参加をお待ち申し上げます。

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プログラム:

9:00~ 受付開始

9:00~13:00 鏡検

(11:00-11:50 理事会 会議室 2―鏡検室の隣)

・オプション 1: 10:40~12:52 鎌倉古都短時間めぐり

・オプション 2: 11:50~12:40 ランチョンセミナー

12:40~13:20 症例検討1

座長(長坂徹郎)

その他(卵巣)1 卵巣奇形腫由来の腹膜偽粘液腫と考えられる1例

工藤まどか(湘南鎌倉総合病院病理診断部)

その他(卵巣)2 セルトリ間質腫瘍に類似した類内膜腺癌の 1例

児玉寛子(順天堂大学練馬病院病理診断科)

主題(体部)1 稀な子宮体癌の一例

藤林 真理子(東京女子医科大学東医療センター病理診断科)

(鎌倉古都短時間めぐり参加者が症例検討に参列する際には討議を数分中断します)

13:20~13:56 症例検討2

座長 (佐藤勇一郎)

その他(卵巣)3 子宮内膜症性嚢胞に子宮内膜異型増殖症様所見を認めた一例

中嶋礼子(順天堂大学附属練馬病院病理診断科)

主題(体部)2 子宮体部腫瘍

名方保夫(愛仁会 千船病院 病理診断科)

主題(体部)3 子宮内膜粘液性癌の 1例

久保田 奈緒(久留米大学病理学講座)

13:56~14:56 主題に関する特別講演:

座長(三上芳喜)

「診断とフォローに難渋する子宮体部腫瘍(当院例を中心に)」

古屋充子(横浜市立大学病理学教室)

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事務連絡:14:56~15:06

総会:15:06~15:20

休憩:15:20~15:40

15:40~16:28 症例検討3

座長 (名方保夫)

その他(卵巣)4 67歳女性の多嚢胞性卵巣腫瘍

和田 幸子(新百合ヶ丘総合病院 病理診断科)

その他(卵巣)5 卵巣多嚢胞性病変の1例

野坂加苗(鳥取大学医学部付属病院 病理診断科・病理部)

主題(体部)4 子宮体下部に発生した類内膜腺癌の 1例

佐藤 勇一郎(宮崎大学医学部附属病院病理診断科・病理部)

主題(体部)5 子宮体部に発生した扁平上皮化生の著明なポリープ状腫瘤の一例

矢野光剛(埼玉医科大学国際医療センター病理診断科)

16:28~17:16

座長(笹島ゆう子)

主題(体部)6 腹水細胞診に悪性細胞が認められた異型内膜腺筋腫 (APAM)の一例

棟方哲(地方独立行政法人堺市立病院機構堺市立総合医療センター

病理診断科)

主題(体部)7 Diffuse uterine adenomatoid tumorの1例

前田大地(秋田大学大学院医学系研究科器官病態学講座)

主題(体部)8 原発巣の術前診断に苦慮した低悪性度子宮内膜間質肉腫(LGESS)

の一例

塚田貴史(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)

主題(体部)9 乳癌既往歴のある子宮体部悪性腫瘍の 1例

山田隆司(大阪医科大学病理学教室)

17:16 閉会

17:20~18:10懇親会

オプション1:古都鎌倉短時間めぐり(当院マイクロバス利用:参加費無料、弁当あり)

10:40~12:56: 病院発(10:40) ~鎌倉大仏~ロベルトコッホ来日記念碑~

江の島海岸ドライブ~病院着 (12:56)

オプション 2:ランチョンセミナー; 大沼一也(湘南鎌倉総合病院産婦人科)

11:50~12:40: 子宮内膜漿液性腺癌―It’s not so easy to make the diagnosis.

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ランチョンセミナー

子宮内膜漿液性腺癌―It’s not so easy to make the diagnosis.

大沼一也(湘南鎌倉総合病院産婦人科)

子宮内膜漿液性腺癌(以下SC)はaggressiveな腫瘍であり、卵巣漿液性腺癌に類似した特徴的組

織形態を呈し、容易に診断できるというHendricksonらの報告以降、我々の経験と知識の蓄積とと

もに、実際は SC がかなり形態的多様性を示すことがわかってきた。特に、SC の中には主に

glandular structureを示し、さらには典型的な高度核異型を示さず、一方、endometrioid carcinoma

(以下 EC)の中には papillary pattern を呈し、時に高度核異型を示す症例など、SC と EC(特に

FIGO1-2)との鑑別を要する悩ましい症例に直面し、形態診断の限界を経験する。Soslow らは SC

とECの特徴がoverlapするような例があり、「endometial carcinoma with ambiguous morphology」

という概念で、形態診断の限界を述べている。p53 はその鑑別に有用なマーカーであるが、単一マ

ーカーとしての限界は否めない。SCの形態学的多様性、形態診断の限界、ECとの鑑別における免

疫染色の活用を中心に演者らの検討・経験を踏まえて議論したい。また、子宮内膜生検組織という

限られた検体におけるSCの診断について、実際例を提示してdiscussionできればと思う。経験豊

富な皆様からご意見をいただければ幸いである。

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主題に関する特別講演

診断とフォローに難渋する子宮体部腫瘍(当院例を中心に)

横浜市立大学医学部分子病理 古屋充子

2014 年に刊行されたWHO 分類第 4 版の婦人科腫瘍分類は今日の日常診療に浸透しつつあり, 腫瘍

取扱い規約も順次改訂されているが, その後も婦人科腫瘍概念の見直しにつながるようなランドマ

ーク的研究が続々と発表されている. 今回は子宮体部(上皮・間葉)腫瘍の中で, 比較的頻度の低い疾

患や希少腫瘍を取り上げる. 上皮腫瘍として漿液性子宮内膜上皮内癌(SEIC: serous endometrial

intraepithelial carcinoma)を, 間葉系腫瘍として子宮内膜間質腫瘍(EST: endometrial stromal tumor), 性索

間質様成分を有する子宮腫瘍 (UTROSCT: uterine tumor resembling ovarian sex cord tumor), 血管周囲

性類上皮細胞腫 (PEComa: perivascular epithelioid cell tumor)を, WHO分類に照らして概説する予定で

ある. SEIC は WHO 分類改訂に伴い漿液性癌や明細胞癌と同等の位置づけになった. 間葉系腫瘍で

は形態や免疫染色性に加えて, 融合遺伝子の同定が補助診断として広く用いられるようになり, 各

疾患の分子学的特徴が解かりやすくなった. 組織型確定後の治療においては, 希少疾患ゆえに定ま

った診療ガイドラインが存在せず, 特に転移再発例では難渋する. 演者がこの数年, 神奈川県内の

医療機関で経験した症例を提示しながら, 診療に苦慮した点や未解決の疑問点を独自目線で検討し,

参加者の皆様からも忌憚ないご意見を仰ぎたい.

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その他(卵巣)1

卵巣奇形腫由来の腹膜偽粘液腫と考えられる一例

工藤まどか1)、武田宏太郎1)、手島伸一1)

中野雅行2)、鈴木美奈子 3,4)

1.湘南鎌倉総合病院病理診断部

2.湘南藤沢徳洲会病院病理診断部

3.湘南藤沢徳洲会病院放射線科

4.藤沢市民病院放射線科

症例: 40代、女性 (湘南藤沢徳洲会病院症例)

G4P2 (経腟分娩×2、自然流産×1、人工中絶×1)

主訴は腹痛、腹部膨満感。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。

現病歴は 腹痛、腹部膨満感を主訴に当院内科受診し、腹部超音波検査で卵巣嚢胞性腫瘍を指摘さ

れ、婦人科対診。腹水細胞診の所見(Class 1)から悪性の可能性は低いと考え、腹腔鏡補助下右卵巣

摘出術を施行した。腹腔内に粘液性の多量の腹水がみられ、腹膜偽粘液腫の印象であった。右卵巣

腫瘍は奇形腫様。腹腔内洗浄し、明らかな粘液、腫瘍遺残なし。20日後に腹式単純子宮全摘術+左

付属器摘出術+大網切除術+骨盤リンパ節郭清術+虫垂切除術を施行。

病理: 右卵巣腫瘍は約5x4cmの奇形腫である。各構成成分に異型をみない。

腹膜偽粘液腫は950g。上部・下部消化管、虫垂に明らかな腫瘍性病変を認めないこと、奇形腫に腸

管上皮を認めること、腫瘍細胞が免疫組織化学的に腸型上皮に類する染色パターンを呈することか

ら、卵巣成熟奇形腫から発生した腹膜偽粘液腫と考えられた。

問題点: ①成熟奇形腫由来の腹膜偽粘液腫でよいか。

②腹膜偽粘液腫の良悪性について。

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その他(卵巣)2

セルトリ間質腫瘍に類似した類内膜腺癌の 1 例

順天堂大学練馬病院病理診断科1、順天堂大学練馬病院産婦人科2

児玉寛子 1、小倉加奈子1、坂口亜寿美1、松本俊治1、荻島大貴2

[背景]

セルトリ間質腫瘍とセルトリ間質腫瘍に類似した類内膜腺癌の鑑別は、HE 染色のみで時に困難な

ことがあり、免疫染色が有用である。通常類内膜腺癌では Inhibinαは陰性を示すが今回我々は、

Inhibinα弱陽性を示し、また、迅速診断時の肉眼所見もセルトリ間質腫瘍に類似した類内膜腺癌の

1例を経験したので、文献的考察を含め報告する。

[症例]

[現病歴]

72歳女性。今年5月に腹部膨満感を自覚し、7月に前医を受診し、CT にて腹腔内腫瘍を認め同月

当院受診となった。MRI および PET 施行し、骨盤内腔に径 23 ㎝大の充実成分と嚢胞成分の混在

する巨大腫瘤を認めた。充実成分に強い集積を認め卵巣癌の疑いと診断され、両側付属器切除術、

子宮全摘術および大網摘出術が施行された。

[病理所見]

肉眼所見:腫瘍は25x21x7㎝大の黄白色、多結節状の弾性硬の充実成分でところどころ出血壊死に

陥っていた。割面では、部分的に壊死に伴い、嚢胞変性をきたす部分を認めた。

迅速診断所見:上記肉眼所見と組織像から、セルトリ間質腫瘍を疑うと診断している。

組織所見:背景に線維性間質の増生を伴い、強い異型を有した腺管構造あるいは策状構造を形成す

る腫瘍細胞が増生していた。迅速診断同様に、セルトリ間質腫瘍を考えたが、鑑別として類内膜腺

癌を挙げて免疫染色を施行した。免疫染色を施行した結果、 CAM5.2(++), EMA(+), ER(+), PR(+),

Inhibinα弱陽性,CEA は部分的に陽性であった。以上より形態と EMA が強陽性の結果を加味し、

セルトリ間質腫瘍に類似した類内膜腺癌(G2)と診断した。また本症例では脈管侵襲がかなり目立ち、

特に静脈侵襲が目立った。

[考察]

類内膜腺癌では精索の様な策状配列をとったり、管腔が小型化してセルトリ細胞のような管状構造

をとることもある。腫瘍細胞に近接する間質細胞が莢膜細胞あるいは黄体細胞のように腫大化する

と高~中分化のセルトリ間質腫瘍との鑑別が困難となる。このようなし病変に対しては、免疫組織

化学染色が有用であり、類内膜腺癌では、Inhibinα陰性、EMA陽性になるのに対し、セルトリ間

質腫瘍では、Inhibinα陽性、EMA陰性となる。

本症例では、腫瘍細胞に Inhibinαが弱陽性を示していたが、EMA強陽性の結果と細胞の形態から

類内膜腺癌と診断している。文献的考察を含め報告する。

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主題(体部)1

稀な子宮体癌の一例

東京女子医科大学東医療センター病理診断科

藤林 真理子

【症例】65歳、G31P、閉経50歳、1か月前からの不正出血で近医を受診し、EC smear、EM smear、

子宮頸部から突出した組織の組織診の全てが腺癌の診断であったため、当院を紹介された。 当科の子宮内膜組織診では「高悪性度の内膜腺癌で明細胞癌が疑われる」。前医で採取した標本は

持参していない。入院後まもなく腹式単純子宮全摘(右は準広汎)、両側付属器切除、大網部分切除、

骨盤・傍大動脈リンパ節廓清が行われ、さらに腹膜播種病変、腸管の漿膜面の腫瘤を含む腸管部分

切除が行われた。

【病理所見】体部~頚部の内腔に境界明瞭な約40(W)×60(L)×20(厚さ)mmの隆起病変を認めた。

表面は壊死性で割面は強い出血を示す。この部分の組織像は巨核・多核の大きな細胞が特徴であっ

たが、腫瘤の辺縁の非隆起性の部分に淡明な腫瘍細胞が充実性胞巣・腺管形成・嚢胞性腺管状に増

殖する内膜の病変が見られ、隆起部の組織像との移行を伺う所見もある。

両側付属器に転移を認めない。卵巣は22×11×9mm, 22×13×9mm大で、ほぼ萎縮状態であっ

た。

リンパ節転移は無い。腹膜や腸管の播種・転移巣の組織像は全て淡明な細胞の増殖を示していた。

【問題点】

大きな隆起性腫瘤の組織診断

非隆起部の内膜病変の組織診断

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その他(卵巣)3

子宮内膜症性嚢胞に子宮内膜異型増殖症様所見を認めた一例

中嶋礼子 1、小倉加奈子 1、坂口亜寿美 1、児玉寛子 1、松本俊治 1、荻島大貴 2

1順天堂大学附属練馬病院病理診断科、2同産婦人科

【症例】

症例は52歳1経妊1経産の女性。無症状であったが、2015年6月検診で8㎝大の左卵巣嚢腫を

指摘され、同年7月当院婦人科に紹介受診となった。MRIで右卵巣に26mm大、左卵巣に89mm

大の内膜症性嚢胞を疑われ、治療は行わず 2016 年 9 月に待機的に開腹下両側附属器切除術施行し

た。

【肉眼的所見】

右卵巣嚢胞は5x4x2㎝大、左卵巣嚢胞は9.5x6㎝大で、両側卵巣嚢胞内にタール状血液成分が認

められ、嚢胞壁は茶褐色調だった。内腔に充実性成分や肥厚はみられなかった。右卵管は右卵巣と

の境界が癒着により不明瞭だったが、両側卵管に異常所見は認めなかった。

【組織学的所見】

両側嚢胞内壁に出血やヘモジデリンを貪食した組織球集簇があり、内膜間質を伴った子宮内膜腺

を認め、両側内膜症性嚢胞と診断した。右嚢胞内壁に一部、核異型を伴った核小体の目立つ内膜腺

が、間質を伴い増生しており、子宮内膜異型増殖症のような所見を呈していた。

【考察】

卵巣癌に異型内膜症が併存する例は多数報告がみられるが、本症例のように卵巣に局所的に子

宮内膜異型増殖症様の組織のみ認める報告はない。診断名を含め、多くの先生方の意見をお聞きし

たい。

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主題(体部)2

子宮体部腫瘍

名方保夫1)、成田 萌2)、岡田十三2)

1) 愛仁会 千船病院 病理診断科

2) 同 産科婦人科

症例;40歳代後半女性 G3P3

2015年 4月、不正性器出血があり、筋腫分娩との診断

で近医にて経過観察していたが同症状増強のため本院紹介

受診。膣腔内に4-5cmの腫瘤を確認、筋腫分娩の診断で、

12月18日にTCR-M施行。切除標本組織で、low-grade

endometrial stromal sarcoma(LESS)。大阪府立成人病セ

ンターで、PET-CT にて両肺多発性転移を指摘。2016年

4 月28日に、再び本院にて子宮全摘出および両側附属器

切除術を施行。

問題点)基本的にLESSに相当する像と考えられるが

上皮様配列(?)が散見されETSCLE(endometrial

Stromal tumors with sex cord-like elementsとの鑑別。

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主題(体部)3

子宮内膜粘液性癌の1 例

久留米大学病理学講座 久保田 奈緒(発表者)、眞田 咲子(共同演者)

【症例】80 代、2経妊 2経産、閉経 49 歳。帯下異常を主訴に前医を受診した。内診にて粘液状の

帯下を認め、経腹エコーでは子宮内膜不整と貯留像を認めた。子宮内膜細胞診にてAdenocarcinoma

疑いの診断であり、子宮体癌の診断となり当院を紹介受診となった。子宮内膜吸引組織診で

Endometrioid carcinoma, mucinous differentiation G1の診断であった。類内膜癌 Stage Ⅲaの

診断となり子宮内膜単純子宮全摘出術、両側付属器摘出術、骨盤リンパ節生検が施行された。

【病理所見】肉眼的には、明らかな腫瘤はみられなかった。組織学的には子宮体部を主座に、頸部

から内膜にかけて粘液上皮化生がみられ、これより癌化を呈する粘液性癌を認めた。腫瘍細胞は高

円柱状で、細胞質内に粘液を有し、房状あるいは乳頭状に増殖していた。また、間質反応を伴って

筋層全体に浸潤し、漿膜を超えて漿膜面に露出していた。免疫染色では、MUC6 +, MUC5ac +,

MUC2 focally +, p16 -, p53 wild type, vimentin -であり、胃腸形質を有する粘液性癌が考えられた。

その他、両側付属器に特記事項は認められなかった。

【考察】内膜由来の粘液性癌とは異なる発生機序が示唆され、生物学的挙動としては頸部の胃腸型

粘液性癌と同等の高悪性度の腫瘍と考えられた。

【問題点】診断について。

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その他(卵巣)4

67 歳女性の多嚢胞性卵巣腫瘍

新百合ヶ丘総合病院 病理診断科

和田 幸子、 福永 眞治

慈恵医大柏病院 病院病理部

柳沢 春華

【症例】67歳女性、0経妊0経産

【既往歴】高血圧、高脂血症、緑内障で治療中

【現病歴】1ヶ月前より下腹部膨満感あり近医受診、卵巣腫瘍指摘をされ紹介受診。エコーにて左

卵巣に14cm大の多房性腫瘍を認め、充実成分は乏しかった。ホルモン症状は認めてい

ない。臨床的に粘液性境界悪性腫瘍が疑われ、左付属器摘出術及び大網部分切除術が施

行された。術後2か月、経過良好。

【肉眼像】左卵巣:約14cm大、割面は多房性でmucinous cystic tumor 様であった。内容は粘液

ではなく、黄色漿液性であった。

左卵管、大網:著変なし

【組織像】大小多数の嚢胞の形成がみられ、その周囲にはほぼ均一な類円形細胞の充実性、濾胞状

の増殖がみられた。一部散在性に充実成分がみられ、異型の乏しい類円形細胞の管状増

殖とその周囲に黄体化細胞の小集簇が観察された。腫瘍は卵巣に限局し、卵管、大網に

は腫瘍はみられなかった。

【問題点】組織診断(新WHO分類診断では?)

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その他(卵巣)5

卵巣多嚢胞性病変の1 例

鳥取大学医学部付属病院 病理診断科・病理部 野坂加苗 梅北善久

同 女性診療科 野中道子 佐藤慎也 大石徹郎 原田省

【症例】85歳女性.腹部膨満感を主訴に受診,単純CTで腹部腫瘤を指摘された.高血圧,糖尿病,

不整脈,胆石症の既往あり,悪性腫瘍の既往無し.家族歴に特記事項無し.画像上は壁に造影効果

を示す多嚢胞性の片側卵巣病変で,複雑な構造が一部に見られ,境界悪性病変疑い.男性化徴候は

明らかではないが,高齢女性に散見される程度の髭は生えているとのこと.

【病理所見】13.5cm の多嚢胞性病変で,大型の嚢胞の壁の一部から小型の嚢胞が集簇した病変が

突出していた.内容液は古血性の色調を示す粘液であった.組織学的には好酸性の立方状~円柱状

の上皮で覆われた嚢胞で,しばしば厚い間質を軸とした乳頭状構造が散見された.上皮は時に有毛

性で,核は円形~卵円形で異型に乏しく均一であった.少数の核分裂像が散見された.嚢胞壁には

出血と組織球の集簇があり,内膜症も疑われたが,ベルリン青陰性で,慢性出血は否定的と考えた.

免疫染色では,嚢胞上皮はCD10, CA125にびまん性に陽性で,その他CK7, ER, PgR, PAX-8, EMA,

CAM5.2に陽性だった.WT-1及びVimentinは部分陽性を示した.CK20は陰性であった.

【考察】腫瘍性増殖を思わせる領域に加え過形成的な構築が散見される病変で,由来不明,さらに

腫瘍か非腫瘍性増殖性疾患かも判断に苦慮した.2003 年 AJSP の論文で,婦人科領域において

CD10はmesonephric remnantsに常に陽性,Müllerian epitheliaに基本的に陰性と報告されてお

り,これを根拠に,さらに上皮の性状(好酸性,有毛性)も踏まえた上で rete ovarii由来の病変と

考えた.

【問題点】由来,悪性度共に判定に苦慮している病変です.臨床側も治療方針の決定に難渋してお

り,テーマ外ではありますが,この場を借りて先生方のご意見を賜りたく提示させて頂きます.

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主題(体部)4

子宮体下部に発生した類内膜腺癌の 1例

佐藤 勇一郎 1)、盛口 清香 1)、前川 和也 2)、中村 恵理子 2)、魏 峻洸 2)、山下 篤 2)、

鮫島 浩 3)、浅田 祐士郎 2)

1)宮崎大学医学部附属病院病理診断科・病理部

2)宮崎大学医学部病理学講座構造機能病態学分野

3)宮崎大学医学部産婦人科

(症例)43歳 女性 2G2P

(既往歴)40歳時左下肢の悪性黒色腫の手術、48歳時甲状腺癌(乳頭癌)で手術

(家族歴)特記すべき事項なし

(病歴)

2004年 悪性黒色腫の化学療法中に腹部CTで子宮筋腫指摘(6cm大)。特に症状はなく経

過観察されていた。

2006年 下腹部の違和感、不正出血が出現、内膜組織生検で類内膜腺癌(G1)を診断。

単純子宮摘出術、両側卵巣摘出術施行。その後当院産婦人科で経過観察。

2013年 排便障害、腹痛があり、腹部CTで4cm大の腫瘍と、多数の結節病変を認めた。

手術をすすめられたが、本人の人工肛門に対する拒否感があり、化学療法施行。

2014年 直腸転移巣の腫瘍摘出術施行。

2015年 多発肝転移

2016年 永眠(子宮体部癌術後12年)

肉眼所見:腫瘍は子宮底部(峡部)に1.5x1cm大、やや外方性発育を示していた。

組織像:管状構造を示す腺癌の像で、扁平上皮化成がやや高度であった。わずかな浸潤が

みられた。

問題点:本例を子宮峡部癌としてよいか?組織学的に予後不良を示唆する像がみられるか?

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主題(体部)5

子宮体部に発生した扁平上皮化生の著明なポリープ状腫瘤の一例

埼玉医科大学国際医療センター病理診断科

矢野光剛,加藤智美,鎌倉靖夫,吉田沙織,榊 美佳,藤野 節,永田耕治,

新井栄一,長谷部孝裕,安田政実

【症例】84 歳,4 経妊3経産,主訴は不正性器出血.経腟超音波で子宮内腔に5×4 cm

の充実性腫瘤を指摘された.造影MRIおよびPET-CTでは,良性腫瘍を推定するが,

悪性の可能性も否定できない所見であった.内膜細胞診は class IIIで,異型の乏しい

扁平上皮細胞と配列の乱れた細胞集塊を認めた.内膜組織診でも異型の乏しい扁平上

皮を認めたが,悪性所見はみられなかった.臨床的に子宮体癌もしくは肉腫の疑いで,

単純子宮全摘術と両側付属器摘出術が施行された.

【病理所見】肉眼的に,体部内腔に突出する6×5×5 cm大のポリープ状腫瘤を認め

た.組織学的には,広範な硝子変性を伴う線維性結合織がみられ,その表層や内部に

扁平上皮化生の目立つ腺上皮を認めた.間質の細胞には異型や核分裂像はみられず,

免疫組織化学的に平滑筋や筋線維芽細胞への分化は認めなかった.背景の内膜にも扁

平上皮化生を認めた.また,両側卵管の拡張がみられ,一部に扁平上皮化生を伴う卵

管上皮の増生と著明な炎症細胞浸潤がみられた.

【問題点】1. 腺線維(adenofibroma)という診断は妥当か.2. 鑑別すべき腫瘍は.3. 術

前の予測は可能であったか.4. 卵管病変をどう考えるか.

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主題(体部)6

腹水細胞診に悪性細胞が認められた異型内膜腺筋腫 (APAM)の一例

地方独立行政法人堺市立病院機構堺市立総合医療センター病理診断科 1、産婦人科 2

棟方哲 1、岩本督徳 1、山本敏也 2

抄録:【症例】46 歳女性、未経妊。過多月経を主訴に近医を受診し、多発筋腫を指摘

され当院を紹介された。経膣超音波検査にて筋層内、漿膜下筋腫を認めたほか、粘膜

下にも 37×27mm の筋腫を認めた。内膜吸引組織診にて癒合した異型腺管と扁平上皮

化生を認めたが、同時に平滑筋も認められたため、APAM も否定できないながら、

endometrioid adenocarcinoma (G1)の疑いとした。MRIにても子宮体癌が疑われたため、

手術となった。術中の腹腔洗浄細胞診で腺癌が疑われる細胞が認められ、また術中迅

速組織診でも筋層浸潤が疑われたため、単純子宮全摘術+両側付属器切除術+骨盤リ

ンパ節郭清術+大網部分切除術が行われた。【病理所見】永久標本では子宮体下部に

ポリープ状の腫瘤を認め、この部分では異型腺管と平滑筋の増生を伴い、筋層浸潤が

認められないことからAPAM と考えられた。子宮内膜を含め、子宮、大網、リンパ節

などに悪性所見は認められなかった。【考察】術前の内膜組織診にて endometrioid

adenocarcinoma (G1)と思われる部分があり、術中細胞診も陽性のため、類内膜腺癌を

合併した APAM と考えられた。【問題点】①術前の内膜組織診断は、endometrioid

adenocarcinoma (G1)で良いのか?その場合には、永久標本での組織診断との整合性は

どう考えるか?②術前、術後ともAPAM の診断ということであれば、術中細胞診に出

現した異型腺細胞はどう考えるか?

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主題(体部)7

Diffuse uterine adenomatoid tumor の 1 例

前田大地,1 田村大輔,1,2 沖村聖人,1 後藤明輝1

1 秋田大学大学院医学系研究科器官病態学講座

2 秋田大学医学部産婦人科

【症例】44歳, 2G1P. 24年前にSLEと診断され, ステロイド, シクロスポリンを継続的に内服して

きた. 9年前より子宮筋腫を指摘されている. 2年間には58mm大, 41mm大, 33㎜大の筋層内筋腫

が確認され, 子宮は超手拳大となっていた. その後, 子宮腫瘤は増大し続け, 最終的に子宮が臍高

にまで及んだため, 子宮全摘の方針となった.

【病理所見】子宮は 14.1x9.1x8.5cm 大と腫大しており, 体部筋層内に径 5.0cm 大までの白色調の

結節性病変が多数認められた. それぞれの境界はやや不明瞭で, 子宮の壁全体が多結節癒合状を呈

していた. 組織学的には子宮体部筋層のほぼ全域に広がるadenomatoid tumorを認めた.

【考察】Diffuse uterine adenomatoid tumorは比較的稀な病態で, これまでの症例報告では, 免疫

抑制状態の患者に好発するとされている. しかし, adenomatoid tumor (diffuseなものに限らず)と

免疫抑制治療の関係について詳細な検討を行った症例対照研究はない. 我々は本症例を契機に, 369

例の子宮全摘例を対象とした研究を行い, adenomatoid tumorが免疫抑制治療と密接な関係を示す

腫瘍であることをつかんだので, その成果を含めて報告する.

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主題(体部)8

原発巣の術前診断に苦慮した低悪性度子宮内膜間質肉腫(LGESS)の

一例

国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科 1)、病理・臨床検査科 2)、帝京大学医学部附属病院

病理診断科 3)

塚田貴史 1)、渡邊麗子 2)、橋本大輝 2)、吉田裕 2)、笹島ゆう子 3)、高橋健太 1)、池田俊一 1)、

加藤友康 1)

【症例】30歳代後半、3経妊2経産

【現病歴】左側腹部痛にて施行したCT にて、左腎近傍後腹膜腫瘍を指摘された。悪性を疑う画像

所見なかったため、経過フォローとなった。1年半後のCT で造影効果が出現。左水腎症・卵巣静

脈血栓も同時期に出現したため、婦人科系腫瘍由来を念頭に精査されたが、婦人科としての治療適

応は無いと判断された。本人の希望で当院泌尿器科受診。放射線補助下後腹膜腫瘍針生検を施行し

たところ、低悪性度子宮内膜間質肉腫(LGESS)と診断され、当科で手術(後腹膜腫瘍摘出術、

左腎臓摘出術、腹式単純子宮全摘術、両側付属器摘出術、後腹膜リンパ節郭清術、大網部分摘出術)

が施行された。

腫瘍は下腸管膜動脈起始部に位置し、小鶏卵大で可動性は認められたが、左尿管を巻き込み、S

状結腸、腸腰筋筋膜と癒着していた。術後は補助療法なく、血栓症予防と下肢の浮腫対策を主とし

た外来経過観察となっている。術後半年以上が経過したが、現時点で明らかな再発兆候は認めてい

ない。

【病理組織所見】子宮は9.5×8.0×4㎝、底部漿膜下に直径7㎜大、10㎜大の腫瘤形成を認め、術中

迅速でこれらは共に紡錘形腫瘍と診断され、LGESSに矛盾しないものであった。固定後標本では、

腫瘍は漿膜直下~筋層に分け入るように不規則に分布し、一部は内膜に病変が及び、脈管侵襲像も

認められた。密な紡錘形細胞増殖領域内に上皮成分が混在しており、背景像もあわせて考えるに腺

筋症を伝わる進展様式があると思われた。後腹膜腫瘍は6.0×4.3×3.8cm大、左卵巣動静脈・左尿管・

左腎と一塊で摘出された。尿管と癒着していたが粘膜面への腫瘍進展はなく、左腎への直接浸潤も

なかった。大網に数㎜大から顕微鏡的サイズまでの播種病変を複数、また傍大動脈リンパ節(中b2)

にも転移が認められた。

【問題点】

組織所見は典型と考えられるも、診断に至るまで時間を要した症例であり、マクロ所見を含めて提

示する。

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主題(体部)9

乳癌既往歴のある子宮体部悪性腫瘍の 1例

大阪医科大学病理学教室 1)、産婦人科学教室 2)

山田隆司 1)、服部公亮 1)、里見英俊 1)、廣瀬善信 1)、田中良道 2)、恒遠啓示 2)、寺井義

人 2)、大道正英 2)

【症 例】

患 者:38歳、女性、2回経妊・2回経産

月経歴:初経 16歳、周期30日型・整

既往歴:28歳:甲状腺全摘(線維腺腫)でチラージン内服中

34歳:左乳癌(乳頭腺管癌)で手術、化学療法、放射線治療、TAMを内服

現病歴:3 年前より下腹部痛と血尿が持続し、GnRH 療法で症状が劇的に改善したこ

とより子宮内膜症(右尿管~膀胱)の診断となった。内膜症の根治術目的で、2 年前

に腹式両側付属器摘出術施行したが、強固な癒着のため子宮は摘出できなかった。そ

の後外来にて経過観察されていたが、子宮頸部細胞診で陽性(adeno)、内膜細胞診が陽

性であり子宮体癌が強く疑われた。血中腫瘍マーカー値は、CA 125: 14.7 U/ml (基準

値<35.0), CA 19-9: 5.9 U/ml (基準値<37.0), CEA: <0.5 ng/ml (基準値<5.0)と正常範囲

だった。腹式子宮全摘術、直腸部分切除術、大網部分切除術が施行され、術中腹水迅

速細胞診・子宮体部迅速組織診で悪性は判明したが、組織型・原発臓器の推定は困難

であった。

【病理所見】

子宮の大部分が腫瘍に置換されており、漿膜側にも病巣がみられた。組織学的には、

壊死を伴った異型細胞の充実性増殖で、癌と肉腫の鑑別も困難であった。免疫染色で

は、腫瘍細胞において、AE1AE3,CK7, CK20, EMA, vimentin, , chromogranin A, α

SMA, desmin, caldesmon, myogenin, HMB-45, CD31, CD34, factorⅧ, D2-40,

CD10, GCDFP-15, mammaglobin, ER, PgR が陰性、p53, synaptophysinが陽性、

CD56 が部分的に陽性で、Ki-67(MIB-1) index は 80%だったことから、子宮原発の

malignant tumor with neuroendocrine features と考えた。

【問題点】

1、組織型は何か?

2、原発臓器は子宮か乳腺か