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明倫短期大学学会 第 13 回学術大会 プログラム・抄録集 :2014 年 12 月 13 日(土) :明倫短期大学 6 号館第4・5講堂 大会長 :河野正司(明倫短期大学学長)

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明倫短期大学学会

第 13 回学術大会

プログラム・抄録集

会 期:2014年 12 月 13日(土)

会 場:明倫短期大学 6号館第4・5講堂

大会長:河野正司(明倫短期大学学長)

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1

明倫短期大学学会 第 13 回学術大会

会 期 : 平成 26年 12 月 13日(土)

会 場 : 明倫短期大学 6号館第4,5講堂

1. 開会・会長挨拶 9:10~ 9:20

2. 一般発表Ⅰ,Ⅱ 9:20~10:10

3. 一般発表Ⅲ,Ⅳ 10:30~11:30

4. 総会 11:40~11:55

5. 特別講演 13:00~14:30

学術大会プログラム

● 特別講演 ――――――――――― 13:00~14:30

座長 本間和代 先生(明倫短期大学歯科衛生士学科長)

『認知症・その予防と早期発見 ~噛むことと認知症予防との関連~』

講師 佐野英孝 先生(医療法人敬成会白根緑ヶ丘病院長・新潟市認知症疾患医療センター長)

● 一般発表 Ⅰ ――――――――――― 9:20~9:50

座長: 五十嵐 雅子 1. 設計確認用プレートを活用したノンメタルクラスプデンチャーの製作

○伊藤圭一,野村章子,佐野裕子 (明倫短期大学 歯科技工士学科)

2. 全顎部分歯列欠損症例における 3Dプリントモデルの形状評価 ○植木一範,河野正司 (明倫短期大学 歯科技工士学科)

3. 歯科用低エネルギー電子線照射装置の開発 ○野村章子,伊藤圭一,金谷 貢

1,佐野裕子,石川俊一

2

(明倫短期大学 歯科技工士学科,1新潟大学大学院医歯学総合研究科,

2東伸洋行株式会社)

● 一般発表 Ⅱ ――――――――――― 9:50~10:10

座長: 廣瀬 浩二

4. 歯科技工実習の評価基準の改訂

○丸山 満,中澤孝敏,伊藤圭一 (明倫短期大学 歯科技工士学科)

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2

5. 明倫短期大学歯科衛生士学科 2年生の iPad利用状況

― ICTツール導入による学生満足度 ― ○平澤明美,飛田滋,植木一範,中静久美子,森田知治 (明倫短期大学 ICTプロジェクト)

● 一般発表 Ⅲ ――――――――――― 10:30~11:00

座長: 渡邉 美幸 6. 新潟市立 R中学校における新たな歯科保健指導の取り組み

○天池千嘉子,木暮ミカ,平澤明美 (明倫短期大学 歯科衛生士学科)

7. 明倫短期大学と小学校の連携による総合学習の効果 ― 児童と保護者と先生が共に学ぶ教育プログラムの策定と実践 ― ○木暮ミカ,本間和代,計良倫子 (明倫短期大学 歯科衛生士学科)

8. 初年次における歯科衛生過程に基づく歯科保健指導の教育効果 ○本間和代 (明倫短期大学 歯科衛生士学科)

● 一般発表 Ⅳ ――――――――――― 11:00~11:30

座長: 山田 隆文

9. 明倫短期大学附属歯科診療所における訪問歯科診療同行実習の取り組み

○木口友美,本間和代,江川広子,平澤明美,渡邉美幸,小野真奈美,天池千嘉子,計良倫子 (明倫短期大学 歯科衛生士学科)

10. 小学校 3年生の歯肉炎および歯肉着色の傾向

○計良倫子,本間和代,小野真奈美,木暮ミカ (明倫短期大学 歯科衛生士学科)

11. 心とからだの健康リハビリテーションにおける 1症例

―下顎枝矢状分割術・舌縮小術後に発症した舌運動障害の機能回復― ○江川広子

1,野村章子

2,小林智美

3,谷口裕重

4

(明倫短期大学 1歯科衛生士学科,

2歯科技工士学科,

3附属歯科診療所,

4新潟大学医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション科)

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認知症・その予防と早期発見 ~噛むことと認知症予防との関連~

講師 佐野英孝 先生

(医療法人敬成会白根緑ヶ丘病院長・新潟市認知症疾患医療センター長)

佐野英孝先生 ご略歴

学歴および職歴

昭和 63 年 東京慈恵会医科大学卒業

昭和 63 年 医師免許証取得

平成 7 年 精神保健指定医取得

平成 10 年 医学博士取得

平成 10 年 白根緑ヶ丘病院副院長

平成 15 年 白根緑ヶ丘病院院長

認知症サポート医研修終了(平成 18 年 10 月 22 日)後は、

新潟県医師会の認知症サポート医研修の講師を歴任。

専門

老人性認知症疾患 睡眠障害

所属学会

日本精神神経学会 専門医制度研修医指導医資格

日本精神神経学会 専門医

日本睡眠学会 認定医

日本精神科病院協会 日精協認知症臨床専門医

認知症サポート医研修終了

特別講演

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4

設計確認用プレートを活用したノンメタルクラスプデンチャーの製作

○伊藤圭一,野村章子,佐野裕子

明倫短期大学 歯科技工士学科

keywords : ノンメタルクラスプデンチャー,装着感,維持力,設計

はじめに

本学附属歯科診療所では,患者が装着感と審美性を

優先し,歯科医師が適応症例と診断した場合,ポリカー

ボネート素材のレイニング樹脂 N®(東伸洋行)を用いて,

ノンメタルクラスプデンチャー による義歯治療を行って

いる 1).レイニング樹脂 Nの選択理由は,レジリエンス等

が優れている ことである 2).製作に際して,サベイングと

ブロックアウトは,樹脂製の維持部を適正な維持力で仕

上げるために重要な工程であり,慎重な作業が求められ

る.これまでの経験から,研究用模型上で最終形態をベ

ースプレートレジンを用いて実体化する方法を考案した

ので,臨床応用について報告する.

材料および方法

設計確認用プレートの製作手順は,以下の 5工程であ

る.①研究用模型のサベイング,②ノンメタルクラスプデ

ンチャー最終形態の設計,③ワックスによるブロックアウト,

④ベースプレートレジンを研究用模型に圧接し,義歯形

態を付与する,⑤より精巧に製作するための技工ステッ

プとして,研究用模型の支台歯部分のベースプレートレ

ジンに熱可塑性樹脂のハイドロプラスティック®(TAK

Systems)を裏打ちし,適合性の向上と維持力を付与す

る.

治療経過

患者は 78 歳男性で,両側臼歯部に咬合支持があり,

上下顎に,一般的なメタルクラスプデンチャーが装着さ

れていた.上顎義歯床の修理箇所が何度も破折するた

め,上顎義歯を新製することになった.そこで,メタルクラ

スプデンチャー,金属床義歯,ノンメタルクラスプデンチ

ャーそれぞれの特徴と最終形態を記載した設計書を作

成して歯科医師とともに説明を行った.その一方で,ノン

メタルクラスプデンチャーの装着感や審美性については,

設計確認用プレートを用いて確認し,ノンメタルクラスプ

デンチャーの治療に患者の充分な理解と同意を得た.使

用中の義歯に比べて舌感が良く,咬合も安定感があると

いう感想が得られた.また,下顎義歯の新製も希望され

たことから,上下顎のノンメタルクラスプデンチャーを製

作した.

新義歯装着時,歯科医師による口腔内調整は不要であ

った.患者は,装着当日から食事が可能で,装着感,審

美面ともに良い回答が得られた.

まとめ

考案した設計確認用プレートは以下の点で有効であ

った.

1.研究用模型上において確認できた完成義歯の形態と

おおよその維持力の情報を設計時に反映することができ

た.

2.チーム歯科診療を行う歯科医師と歯科技工士が患者

と共にノンメタルクラスプデンチャーの装着イメージや口

腔内感覚を確認し,治療を進めることができた.

3.ノンメタルクラスプデンチャー症例において積極的な

情報提供ツールになった.

参考文献

1)野村章子,飛田滋,丸山 満ほか:ノンメタルクラスプ

義歯の短期的評価,明倫紀要,16(1):93-99,2013

2)佐野正枝,伊藤圭一,野村章子,河野正司:ノンクラス

プ義歯用熱可塑性樹脂の物性,歯産学誌,23(2):

28-34,2009

01

一般発表 Ⅰ

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全顎部分歯列欠損症例における 3Dプリントモデルの形状評価

○植木 一範, 河野 正司

明倫短期大学 歯科技工士学科

keywords : 歯科技工,デジタル印象,CAD/CAM,3D プリンター

はじめに

印象採得の難しい寝たきり高齢者に対して,口腔内

形状を低侵襲かつ高速にデジタルで印象採得できれば,

訪問歯科診療などで画期的なシステムとなり得る.近

年の三次元関連技術は急速な発展,普及を遂げており,

新しい形状計測技術やソフトウェアも開発されている.

本研究では,そうした新しい技術を用いた歯科臨床の

可能性を探り,光学式スキャナーと 3D プリンターを

応用した義歯製作法を検討している.今回は,部分歯

列欠損症例の全顎模型に対して,全顎デジタル印象デ

ータの作成と,3D プリントモデルの製作を行い,両

模型の形状に関して検討したので報告する.

方法

部分歯列欠損症例の被験者の口腔内で採得したアル

ジネート印象から製作した全顎模型に対し,光学式3D

スキャナー(カリダスジャパン社製DAVID SLS-2)

を用い,デジタル印象データをコンピュータ内に構築

した.スキャン方式は,ストラクチャライト方式(パ

ターン投影)を採用し,微細な対象物の 3D 形状をレ

ーザースキャン方式よりも正確かつ迅速に計測した.

プリントモデルは,3Dプリンター(MUTOH社製

3D MagiX MF-1000)に,デジタル印象データを出力

し作成した.本装置では,PLAフィラメントに対して

熱融解方式にて最小解像度 0.1mm にて積層造形を行

ことが可能であったが今回は0.3mmを採用した.

形状の評価では,プリントモデル上にて作成したレ

ジン義歯床を元模型に適用し,適合状態を調べた.評

価法は,義歯床内面にシリコーン印象材を築盛し,模

型に戻し,得られた印象材の厚さにて評価した.厚み

はシックネスゲージを用いて4カ所の臨床的特徴点で

10回ずつ計測し,厚みの最大値の平均を,適合評価値

とした.

結果および考察

スキャンを行った元模型とプリントモデルについて,

図1に示すようにレジン義歯床の適合チェックにより

形状の確認を行ったところ,評価に用いたシリコーン

印象材の厚みの最大値は,口蓋隆起付近で平均1.15±

0.27mm と最大となり,硬口蓋付近で平均 0.55±

0.11mm と最小となった.つまり,形状的に隆起や曲

率の大きな箇所の再現性は低く,平面的やゆるやかな

曲面形状に関してはある程度の再現性が得られたとい

える.今回は,プリントモデルの積層ピッチを0.3mm

としたことや,CAD 上でのモデルの穴埋め処理によ

る形状差の改善を考えれば,もう1ランク高い適合を

得られるモデルを作成できると考えている.

臨床応用時には,義歯床をリライニングした後に咬

合採得等に適用する計画であるので,プリントモデル

は実際の口腔内よりすこし大きめに作成された方が好

ましいと言えるが,本システムでは,モデル形状の自

由な拡大縮小が可能であるので,今後は,最適な拡大

率などを算出していく予定である.また,今回の部分

歯列欠損症例の形状について,従来の CAD/CAM シ

ステムでは再現し難かったアンダーカット部まで製作

可能であることが確認されたため,今後複雑な症例等

についても適用を確認していきたいと思う.

図1 義歯床の適合チェックによる形状の評価

※ 本研究は,老年歯科医学研究所研究助成金により

遂行されていることを付記し,謝意を表す.

3Dプリントモデル上で作成したレジン義歯床

義歯床と元模型の適合チェック(シリコーン印象材)

02

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歯科用低エネルギー電子線照射装置の開発

野村章子,伊藤圭一,金谷 貢 1,佐野裕子,石川俊一 2

明倫短期大学歯科技工士学科,

1新潟大学大学院医歯学総合研究科生体組織再生工学分野,2東伸洋行株式会社

keywords : 低エネルギー電子線,小型電子線照射装置、樹脂残留モノマーの低減,高齢有病者

はじめに

高齢者や有病患者に安全な義歯を提供することは

重要な課題である.工業, 医療分野で利用されている

電子線照射は,樹脂の架橋反応等による表面改質や殺

菌の効果を有する.発表者らはこの性質に着目し, 低

エネルギーの電子線照射を歯科医療分野に応用するた

めに, 専用ステージをもつ小型の電子線照射装置

(EES-S-MJC01, HAMAMATSU PHOTONICS & MEIRIN

COLLEGE)を開発した. 今回は照射装置の特徴と残留モ

ノマー溶出量の低減効果について報告する.

方法および結果と考察

1. 小型低エネルギー電子線照射装置の特徴と性能

本装置の電子線は高エネルギー電子線に比べて対象

物の発熱が小さく, 樹脂表層でのエネルギー利用効率

が高く, また, 大きさは家庭用冷蔵庫程度である. 電

子線照射チャンバー内部の酸素濃度, 電子線の管電圧,

管電流, 照射距離とステージ移動速度はコンピュータ

で制御できる. コンピュータ・シミュレーション分析

により, PMMA樹脂に進入した電子線エネルギーは表面

から100 µmの深さで付与されていることがわかった.

2. 義歯専用ステージの設計

チャンバー内に取り付けた特殊な治具は照射対象の

義歯を30度まで傾斜, 100 rpmで回転, 上下・水平移動

できるように設計した. 義歯表面における吸収線量測

定では, ラジオクロミックリーダ(FWT Technologies)

を用いて, 酸素濃度2000 ppm(窒素雰囲気下), 管電圧

110 kV, 照射距離23.5 mm, 照射時間35 sの条件で, 咬

合面と粘膜面に照射した.

測定した吸収線量の分布は34.8 kGyから75.3 kGyの範

囲にあり, 測定部位による有意差があった(p<0.01

Two-way ANOVA)が, 義歯表面において30.0 kGy以上の

電子線を照射できることがわかった.

3. PMMA樹脂平板表層の改質

義歯床用レジン(Acron, GC)と義歯補修用レジン

(Rebase H, Dentsply-Sankin)の平板試料(10×10×1

(mm3))を製作した. 設定条件の電子線を試料両面に照

射後に, 蒸留水中に7日間保持して溶出MMAモノマー量

をガスクロマトグラフィー質量分析計(HP6890-200,

HP, GC-MAS)で測定した. 未照射に比べ, 電子線照射

した試料のMMAモノマー溶出量の平均値は, Acronの場

合が未照射時 0.17 µg/L, 照射時 0.05 µg/Lに減少し,

これらの間には有意差が認められた(p<0.01 Mann- W

hitney U). リベースHの場合は未照射時で 0.14 µg/L,

照射時で検出限界値(0.03 µg/L)以下となった. この

理由として,樹脂表層部で,①架橋により三次元網目

構造を形成したこと,②絡み合った主鎖が切断され,

生じた未結合手に残留モノマーが結合したことおよび

応力緩和によって最も安定な距離に分子鎖が接近して

高分子の高密度化を生じたこと等の改質を生じ, 試料

内部の残留モノマーが表層部を拡散(通過)しにくくな

ったことが考えられる.

まとめ

1. コンピュータ・シミュレーション分析により,

PMMA樹脂表層の 0~100 µmの深さにおいて電子線エネ

ルギーが付与されていた.

2. 義歯専用ステージの傾斜・回転・移動機構により,

義歯全面に適正な吸収線量の電子線が照射された.

3. PMMA樹脂から溶出するMMAモノマー量は, 低エネル

ギー電子線照射により減少した.

03

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7

歯科技工実習の評価基準の改訂

○丸山 満,中澤孝敏,伊藤圭一

明倫短期大学 歯科技工士学科

keywords : ルーブリック,歯科技工実習,有床義歯技工学

はじめに

歯科技工士学科の専門教育科目は,歯科技工に関す

る技術と知識の修得のため、講義科目に比べて実習科

目の授業時間数が多く組まれている.一昨年,技工技

術の学習到達度を評価するため,ルーブリックによる

評価基準を策定した.その評価基準(以下:旧評価基

準)を用いて,有床義歯技工学実習を担当する3名の

教員が,上下全部床義歯を評価した.評価は可能であ

ったが,教員間で評価値に差が見られた.そのため,

評価項目の見直しと各項目の到達目標を教員間で再検

討する必要性を認めた 1).

そこで,旧評価基準を基に評価基準を改訂し(以後:

新評価基準),実習課題を評価した.さらに2つの評価

基準を比較した結果を報告する.

対象および方法

・課題について

全部床義歯の人工歯排列から歯肉形成を対象とした.

・評価基準の項目について

旧評価基準の 4 分類 18 項目を基に、新基準は項目

の要点整理し,4分類6項目とした.

・評価方法について

各項目について3名の実習担当教員が評価を行った.

評価結果は旧評価基準と同様に,Aが最も高評価で技

術レベルが高く4点,次いでB:3点,C:2点,D:

1点,不合格:0点の5段階に点数化した.

・2つの評価基準の検討

教員の評価結果が“2”以上の差がある項目は評価

結果にばらつきがあると規定し,評価基準全体および

各項目について評価の差を比較検討した.

結果および考察

旧評価基準を基に作成した新評価基準は,評価項目

を18から6項目に集約化した.各項目は,「どこまで

技術到達しているのか」評価可能となるように段階的

に整理し,さらに適切な図を配置することでより具体

性を向上させた.

評価の結果,到達度の明確化および目標設定の容易

さという結果も得られた.

教員の評価結果のばらつきも旧評価基準の 48.7%

に対し新評価基準は15.0%と,ばらつきの収束も見ら

れ,適切な評価に繋がった.

項目別の比較は,旧評価基準で差が見られた項目も

教員間の評価の差に収束がみられ適切な評価ができた

といえる.

まとめ

新評価基準で教員間の評価の差も収束したことから,

適切な評価ができた.評価基準の作成に肝要な概念は,

評価者間に個人差が生じず,適切な評価ができること

が肝要といえる.

今後も,更に検討を重ね,質の高い教育を目指して

いきたい.

参考文献

1) 丸山満,中澤孝敏,佐々木聡,野村章子,有床義歯技

工実習における評価基準案について,明倫歯誌,16,

86-92,2013

04

一般発表 Ⅱ

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8

明倫短期大学歯科衛生士学科 2年生の iPad利用状況

― ICTツール導入による学生満足度 ―

○平澤明美,飛田 滋,植木一範,中静久美子,森田知治

明倫短期大学 ICTプロジェクト

keywords : iPad,歯科衛生士,ICT 教育,学生満足度

はじめに

平成 25年度より ICT ツールを段階的に教材に導入

することにより,教育の効率化と学生の満足度を向上

させ,かつ学生・大学の経済的負担を軽減する目的で,

ICT プロジェクトが新設された.プロジェクト進行中

の平成26年2月に文部科学省の私立大学等教育研究活

性化設備整備事業に採択され,現歯科衛生士学科 2年

生47名にiPad Airを1台貸与し,26年4月より一部

学科目において,PDFデータと iTune U 動画のコンテ

ンツを配信し教育の効率化を目指した.

前期授業が終了した時点で利用状況と学生の満足度

を調査した.

図1 実習時の iPad使用風景

対象および方法

対象:明倫短期大学歯科衛生士学科 2年生47名

方法:質問紙調査法による無記名・選択式 7項目,自

由記載 2項目の調査を平成 26年9月に実施した.

結果および考察

1.iPadの講義時の有用性

口腔外科学・歯科麻酔学や歯周病予防処置実習Ⅱな

どの科目でiPadに教材を配布した.調査した47名中,

十分に役立った 25 名(53.2%),少しは役立った 18 名

(38.3%)で,ほとんどどの学生が有用であったと答えた.

(図 2)どちらともいえない 3名(6.4%),役に立たな

い1名(2.1%)の理由として,配布データがわかりづら

い,繰り返しみられないなどを上げていた.

2.iPadの実習時の有用性

歯周病予防処置実習Ⅱや歯科診療補助実習Ⅱなどの

科目でデモンストレーションの動画などを配信した.

十分に役立った 28 名(59.6%),少しは役立った 15 名

(31.9%)で,どちらともいえない 4名(8.5%)で,役に立

たないはいなかった.(図 3)役に立った理由として,

繰り返しみる事ができた 38名(80.8%),学外でもみる

事ができた22名(46.8%)であった.

図2 iPadの講義時の有用性 図3 iPadの実習時の有用性

3.講義・実習以外の iPad利用

調査した45名中,利用項目としては授業予定の確認

45名(100%),ゲームや SNSなど33名(73.3%)の個人的

な利用もしていた.また,利用時間は昼休みを含む休

憩時間,夕方(放課後〜20時),夜間(20〜23時)の時間

帯に半数の学生が利用していた.

まとめ

大多数の学生が iPadの利用による講義・実習に満足

しており,1 学年時からの使用を希望する意見もあっ

た.今後,iPad利用の教育的効果を判断するための検

討を開始するとともに,配布教材の数的増加と質的向

上を図って行きたい.

05

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9

新潟市立 R中学校における新たな歯科保健指導の取り組み

○天池千嘉子,木暮ミカ,平澤明美

明倫短期大学 歯科衛生士学科

keywords : 学校歯科検診,歯科保健指導

はじめに

学校保健法施行法規則の一部改定により健康診断の

考え方や方法が変更され、保健指導などの事後措置も

充実させることとなった。本学は前身の歯友会歯科技

術専門学校より、新潟市立R中学校において学校歯科

保健活動を継続して取り組んできた。平成 26年度、R

中学校は「新潟県よい歯の学校」優秀校として表彰さ

れ一定の効果をあげてきた。学校歯科医が変更となっ

た本年度のR中学校において実施している歯科保健活

動について紹介する。

対象および方法

対象:新潟市立 R 中学校全校生徒(1 年生:19 名、2

年生:24名、3年生:26名)計69名である。

方法:平成26年度学校歯科医による学校歯科検診時に

上下顎前歯部唇側の口腔内写真撮影を実施し、歯科検

診結果、口腔内写真をもとに個別の歯科検診結果票を

作成した。10月中旬に記名式で、お口に関するアンケ

ート(口の中の悩み、歯磨き習慣など)実施した。

歯科検診・口腔内写真・アンケート結果をもとに 11

月に学年毎に歯科保健指導を実施した。

結果および考察

歯科検診の結果はう蝕有病者率が 20.3%(25年度新

潟市平均33.9%)、1人平均う蝕歯数0.47本(同 0.9

本)、歯肉有所見者率(G0、G)23.2%(同 21.2%)

で歯列有所見率 39.1%(同16.2%)であった。

また、お口に関するアンケート結果では、お口の中

の悩みが「ある」と回答したのは、1 年生が 21%、2

年生が36%、3年生が54%で学年があがるにつれ、増

加した。内容は全学年で歯並びが 12名、歯の色・着色

が9名、歯肉の腫れが 4名、口の乾きが1名となった。

さらにブラッシング習慣においては各学年朝食、昼食

後のブラッシング率が高く、夕食後、就寝前のブラッ

シング率が低くかった。補助清掃用具使用状況におい

ては 1年生が 5%、2年生が 23%、3年生が 12%の者

が使用していると回答した。2、3年生は前年度に歯科

保健指導を行っているにも関わらず、低い結果となっ

た。

図1 補助清掃用具使用状況

まとめ

歯科検診の結果から現在の口腔内の状態を個々の中

学生に具体的に知らせる必要があるが、それを口腔内

写真や歯の検診結果票等を活用することによって理解

を深めることができた。また口腔清掃習慣や生活習慣

にも気を配る保健指導を行うことにより、中学生の保

健行動の変容の動機につながることから、今後も継続

的・体系的に歯科保健指導などを実施して行くことが

重要である。

謝辞

本研究に関してご理解、協力いただきました R中学

校の校長先生、養護教諭の先生に厚く感謝いたします。

06

一般発表 Ⅲ

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10

明倫短期大学と小学校の連携による総合学習の効果

― 児童と保護者と先生が共に学ぶ教育プログラムの策定と実践 ―

○木暮ミカ,本間和代,計良倫子

明倫短期大学 歯科衛生士学科

keywords : 総合的な学習の時間,プリシード・プロシードモデル,学校歯科保健教育,齲蝕・歯肉炎予防プログラム

はじめに

今回、新潟市立真砂小学校より、3 年生の「総合的

な学習の時間」で歯の健康について学んでいかせたい

とのことで協力依頼があり,「よい歯にしようプロジェ

クト」と銘打ち、学習企画段階から参画し,平成 16 年

より著者が真砂小学校の学校歯科医に就任したことを

契機に実施している,プリシード・プロシードモデルに

基づいた積極的な齲蝕・歯肉炎予防プログラム 1-3)の一

部に組み込み,3 学年における齲歯未処置歯数,歯垢,歯

肉の状態改善を目指した.本報ではこのプログラムの

内容とその展開および予防・改善効果について検討し

た.

対象および方法

対象:新潟市立真砂小学校 3 年生 2 クラス 67 名(男

子34名,女子33名)

期間:平成25年6月から11月

方法:平成 16 年から実施しているプリシード・プロ

シードモデルに基づいた指導重視型プログラムと,児

童が自ら歯科に関する課題を見つけ,あくまでも自己

解決していくよう周囲がサポートする援助重視型プロ

グラムを結合させ, 「総合的な学習の時間」において

実施した.教育効果はプログラム実施前後の齲歯未処

置歯数,歯垢の状態,歯肉の状態から評価した.

結果および考察

全ての項目においてプログラム実施前後で減少傾向

を示し(p<0.001),改善がみられた.また,学習課題のテ

ーマにブラッシング方法を選択した児童は歯垢,歯肉

の状態の改善傾向が顕著に見られたことより,齲蝕・歯

肉炎の改善と維持は,ブラッシングの自発的な学習と

より強い関連性が示唆された.

まとめ

学童期の齲蝕・歯肉炎予防プログラムについて,指導

重視型プログラムと援助重視型プログラムを結合させ,

「総合的な学習の時間」において実施したところ,次の

事が明らかになった.

1.従来の指導重視型プログラムだけではなく, 児童の

知的好奇心から生まれる自発的な学習行動を支援する

援助重視型プログラムを結合させたことにより, 齲歯

未処置歯数,歯垢の状態,歯肉の状態は有意に改善傾向

を示した.

2.齲蝕・歯肉予防は,学習援助型による児童本人の行

動変容と自学による知識の獲得の方が,指導型より有

効であることが示唆された.

参考文献

1) 木暮ミカ,本間和代,他: 学校歯科保健におけるプ

リシード・プロシードモデルを活用した齲蝕・歯肉炎

予防事業の成果.明倫短期大学紀要 16(1): 47-53,

2013

2) 小野真奈美,本間和代,木暮ミカ,他:小学生の朝

食・間食の摂取状況および肥満児童等の実態—プリシー

ド・プロシードモデルを応用した行動・環境診断—.明

倫短期大学紀要 16(1): 58-59, 2013

07

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11

初年次における歯科衛生過程に基づく歯科保健指導の教育効果

○本間 和代

明倫短期大学 歯科衛生士学科

keywords :初年次教育,歯科衛生過程,教育効果

はじめに

歯科衛生士業務に必要な「歯科衛生過程」の概念を

理解させるための初年次教育の試みについて、本学会

第12回学術大会において報告した。平成25年8月(夏

期休暇)の取組みから6か月の期間を経て、26年3

月(春期休暇)にその教育効果と歯科衛生士を目指し

た学習意欲の向上を知ることを目的に、同一被験者を

対象に歯科衛生過程に基づく歯科保健指導の取組みを

再度試みたので報告する。

対象および方法

対象:本学歯科衛生士学科 1 年 47 名(被験者を変更

した者を除く)である。

方法:春期休暇中に、初回と同一の家族を被験者とし

て,歯科衛生過程に基づく歯科保健指導を実施

し、学生の各過程の取組みに対する変化や理解

度および被験者の受け止め方や口腔内問題点の

改善状況について調べた。

結果および考察

1.歯科衛生アセスメントの変化

歯科衛生アセスメントにより抽出された口腔の問題

点は図 1に示す通り、1回目に多かった歯石沈着や歯

垢・食渣、歯列不正が減少し、歯肉炎や歯の着色・沈

着および歯磨き状態が増加した。これは、6 か月間で

知識・技術が多く身に付いたことにより、口腔内を観

察する観点や技術が異なったためと考えられる。

2.歯科衛生過程の理解度の変化

歯科衛生過程の理解度については、1回目は二分の

一理解した者が多かったが、2 回目は三分の二理解し

た者が増加した。全部理解に至った者はいなかった。

初年次には難しい課題であっても、講義だけでなく実

際に反復体験させることによって理解を深めることが

できたと考えられる。

図 1 アセスメントで抽出された口腔の問題点の変化

3.学生および被験者(家族)の変化

学生は知識・技術が蓄積された分、保健指導への意

欲が増し、内容・手法に工夫を凝らし、指導効果をあ

げるための努力が見られ、口腔状態が改善されたこと

に喜びを感じた。また、殆どの家族は前回以上に協力

的で、自らの口腔に関心をもち進んで口腔清掃に取組

んだ。6 か月後の再実施は学生や家族のやる気が起き

ないのではないかと心配したが、その意に反し、非常

に多くの学びと効果がみられた。

まとめ

6 か月間の学習成果に基づく歯科保健指導を通して、

被験者および学生の歯・口腔の健康に関する意識が向

上すると同時に、歯科衛生過程の概念に基づく業務の

遂行手法を習得し、家族も学生の取組みに理解と協力

を示し、歯科衛生士教育の一端を理解するのに役だっ

た。また、家族を被験者とした本取組みは良好な家族

関係構築の一助に繋がったと思われる。

(人)

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明倫短期大学附属歯科診療所における訪問歯科診療同行実習の取り組み

○木口友美,本間和代,江川広子,平澤明美,渡邉美幸,小野真奈美,天池千嘉子,計良倫子

明倫短期大学 歯科衛生士学科

keywords : 臨地・臨床実習,訪問歯科診療,取り組み

はじめに

わが国は超高齢社会となり,居宅や施設で生活して

いる要介護高齢者が増えてきた.それに伴い訪問歯科

診療のニーズも高まっている.そこで,本学は訪問歯

科診療に対応できる歯科衛生士を養成するため,平成

9 年より,本学附属歯科診療所の訪問歯科診療同行実

習を開始し,平成 22 年からは全員が本実習に参加す

るようになった.今後さらに実習効果を高めるため,

その現状と学生の意識について調査し,今後の課題を

検討した.

対象および方法

対象:本学歯科衛生士学科3年女子67人

(平均年齢:20.2±1.3歳)

方法:調査は平成25年10月から26年5月までの

8ヶ月間の実習について行った.内容は,訪問歯科

診療同行実習の回数・実習先・実習内容・わかった

こと・役立ったこと・困ったこと及び感想である.

質問紙調査は配紙法で行った.

結果および考察

学生の訪問歯科診療同行実習の回数は5回の者が最

も多く 16 人(24%)で,次に 3 回または 4 回の 11

人(16%)と続いた.訪問診療日と実習日との関係で

実習先に偏りがでたと思われる。また、居宅に比べ介

護保健施設等が多かったのは,施設からの要望が多く,

契約数が増えたためと考えられる。

実習先は延べ人数で,介護老人福祉施設(3 施設)

が74人(31.2%)と最も多く,各種老人ホーム(6施

設),居宅・高齢者向け住宅,介護老人保健施設(2施

設)と続いた.介護保健施設との契約が多い関係から,

高齢者向け住宅を除く居宅が少ない結果となっている.

実習内容は,歯科介護が62人(93%),義歯修理・

調整が61人(91%),義歯作製が52人(78%),う蝕

処置が48人(72%),歯周治療が47人(70%)の他,

クラウン・ブリッジ作製,外科処置,歯内療法であっ

た.実習内容として歯科介護が多かったのは,他のロ

ーテーションにおいてその手法を習得していることか

ら,学生が直ぐに対応できる内容であったためと思わ

れる.

実習でわかったこと・役立ったことは,高齢者との

コミュニケーションの取り方・気配り,訪問歯科診療

の方法・歯科診療補助・事前準備,歯科介護の大切さ

などであった.また,困ったことは,歯科診療補助に

関することや意思疎通困難者への対応,事前準備など

であった.実習の感想としては,貴重な体験,訪問歯

科診療の必要性・重要性,限られた環境での治療の困

難さ,忘れ物厳禁など多くの気付き等が挙げられた.

歯科診療所とは異なる環境での診療方法や訪問歯科診

療の必要性・重要性を知ることができたと述べている

ことは,高齢社会を支える歯科医療従事者を目指す者

として,大きな気付きであり,実習の成果と考える.

また,今後の課題として,事前準備や歯科診療補助

に直接関与する回数を増やし,歯科診療所における実

習との違いを学び,実力をつけていくことが重要であ

ると考える

まとめ

訪問歯科診療同行実習は,1人あたり平均5±2.9回で

あった。実習内容は,歯科介護,義歯修理・調整・作

製,う蝕処置,歯周治療は70%以上の学生が桂家印し

ていた。訪問歯科診療同行実習は,訪問歯科診療の必

要性・重要性を認識させるのに有効であった。

09

一般発表 Ⅳ

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小学校 3年生の歯肉炎および歯肉着色の傾向

○計良倫子,本間和代,小野真奈美,木暮ミカ

明倫短期大学 歯科衛生士学科

keywords : 小学校 3 年生,歯肉炎,歯肉着色

はじめに

新潟県の小学校3年生の一人平均う蝕歯数は年々減

少しているが,歯肉炎症傾向(GO および G 者率)は増

減を繰り返している.我々は,新潟市立M小学校の全

児童に対し,毎年歯科保健指導を実施してきており,

特に3年生については「総合的な学習」への支援依頼

を受け,児童の口腔内の状況の情報提供やブラッシン

グ指導等を行ってきている.指導を行う中で,児童た

ちの歯肉炎症状況に加え,歯肉着色が多いことに注目

した.そこで今回,過去3年間の,歯肉炎症と歯肉着

色の傾向について検討したので報告する.

対象および方法

対象:新潟市立 M 小学校 3 年生(平成 24 年度生:58

名,25年度生:62名,26年度生66名)

方法:平成 24 年 5 月,25 年 6 月,26 年 5 月に,児

童らの口腔内正面観を撮影した.この口腔内写真より,

歯肉炎症の有無および歯肉の着色度を判定した.判定

基準は炎症なし:0,炎症あり:1とし,上下顎別に炎

症部位数の合計を個人の固定値とした.また,上下顎

それぞれの部位別炎症数についても調査した.着色の判

定は,上下顎前歯部唇面の歯肉を着色なし:0,薄い着

色:1,濃い着色:2の3段階とした.

結果および考察

1.歯肉炎症部位数

平成 24 年度生では,上下顎共に 3 部位の者が最も

多くそれぞれ,29.8%,42.1%であった.25年度生で

は,上顎は炎症なしおよび 1 部位が最も多く 29.0%,

下顎では 5 部位が 27.4%で最も多かった.26 年度生

では上顎は炎症なしが最も多く36.4%,下顎では3部

位が最も多く30.0%であった.どの年度共,上顎に比

べ下顎の炎症部位数が多かったことから,児童らにと

って下顎よりも上顎の方が,ブラッシングがしやすか

ったと思われる.

2.部位別歯肉炎症数

平成 24 年度生・25 年度生共に,31-41(下顎中切歯

間)に炎症のある者が最も多く,それぞれ 96.5%,

90.3%であった.26年度生では,31-41および41-42(下

顎右側中切歯・側切歯間)に炎症のある者が最も多く

69.7%であった.下顎前歯部唇面は他の部位に比べる

と歯肉が薄く,炎症が起こりやすいと考えられる.

3.歯肉着色度

平成24年度生では,歯肉に着色のない者は22.8%,

25年度生では19.4%,26年度生では28.8%であった.

どの年度共,歯肉に着色のない者は少なくほとんどの

者に着色が見られた.歯肉着色の原因には,受動喫煙

の他,髪や皮膚の色,口呼吸等が考えられるが,今回

はその詳細については調査していない.今後は,歯肉

着色とその様々な要因との関係について調査・検討し

ていく必要があると思われる.

まとめ

歯肉炎症部位数では,年度ごとに違いが見られたが,

上顎に比べ下顎に炎症が多く,特に,下顎前歯部に炎

症のある者が多かった.小学校3年生は,混合歯列期

のためブラッシングが生き届かない部位も多く見られ

る.今後は,歯ブラシ以外の補助用具等も加え,児童

それぞれに合わせたブラッシング指導に力を入れてい

く必要がある.また,歯肉の着色については,児童・

保護者・学校の同意を得たうえで,その原因について

検討する必要があると思われる.

参考文献

1)三浦梢他,小児の歯肉のメラニン色素沈着に関する

研究,小児歯誌,49(1):11-19,2001

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心とからだの健康リハビリテーションの 1症例

―下顎枝矢状分割術・舌縮小術後に発症した舌運動障害の機能回復―

○江川広子 1,野村章子 2,小林智美 3,谷口裕重 4

明倫短期大学 1歯科衛生士学科,2歯科技工士学科, 3附属歯科診療所,4新潟大学医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション科

keywords : 心とからだの健康リハ,下顎枝矢状分割術・舌縮小術後の後遺症,機能回復

はじめに

患者の病歴は,下顎前突症で歯科矯正治療をおこな

っていたが,開口および下顎前突症状が増加してきた

ため,下顎枝矢状分割術・舌縮小術が施行されている.

術後に,下顎の痺れと重い感覚,舌を前方に出すこと

が困難となり,現在は滑舌が悪く,仕事にも支障をき

たしているとの相談があった.舌右側下唇・オトガイ

領域の知覚神経麻痺の診断がなされた. そこで,舌運

動障害を回復するリハビリテーションプログラムを作

成し実施したところ,舌の動きもよくなり痺れ感が減

少されたので報告する.

症例

1.対象

53歳女性.仕事は接客と事務管理でADL・IADLは自

立している.

2. 心とからだの健康リハビリテーションのプロセス

口腔機能のアセスメント調査ならびにスクリーニン

グテストを実施し,そこから得た情報で問題点を把

握・明確にし,訓練計画立案,指導・実施,再評価の

一連のプロセスを実施した1).

1)口腔機能の評価:アセスメント,スクリーニング

(1)運動機能(ブクブクうがいテスト,音節交互反復運

動測定,口唇閉鎖力測定)

(2)嚥下機能(反復唾液嚥下テスト)

2)問題点の把握・明確化:術後に発症した下唇・オト

ガイ部の痺れ,舌運動の障害

3)訓練計画立案:目標の設定,訓練の介入

(1)下唇・オトガイ部の痺れと重い感覚が減少し,舌を

前方に出すことができスムースに会話ができること

を設定した(目標の設定).

(2)頸部・肩部の筋ストレッチ,口唇・頬舌の筋刺激訓

練,構音訓練等を組み入れた(訓練の介入)2).

4)指導・実施:初診開始から約月1回の間隔で訓練を

実施した.また,次の来院までの期間は自宅での訓練

を勧めた.

5)評価:初診日から8カ月が経過している.目標に達

成できたか否かを患者の反応をもとに①全面・②部

分・③未達成で判定した.

初回は主訴の状況を把握し口腔周囲筋の筋ストレッ

チ,舌筋への刺激訓練,音節交互反復運動等を順次行

った.患者は来院を重ねる毎に口腔周囲筋の強化なら

びに,舌の動きがよくなり,診療所での訓練が楽しみ

になったと表情豊かに応えてくれた.これらの状況か

ら訓練前に設定した目標の達成度は,全面達成したこ

とが伺えた.

まとめ

患者は,術後の後遺症に26年間悩み続けてコミュニ

ケーションをとることに抵抗を感じていたが,訓練を

継続していくことで口腔機能が徐々に向上していくこ

との喜びを感じている.今後は高齢者の介護予防手技

だけでなく,年齢問わず歯科領域に障害を抱える患者

に対して,口腔機能の維持回復に対応できる,機能訓

練等を実施していくことが必要であると考える.

参考文献

1)佐藤陽子,他:歯科衛生ケアプロセス,医歯薬出版,

56-67,2007

2)山田好秋,向井美恵,他:歯科衛生士のための摂食嚥

下リハビリテーション,医歯薬出版,138-151,2013

図1 音節交互反復運動測定器

「健口くん」

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MEMO

~ ご 案 内 ~

Ⅰ.参加者の方へ

1.受 付: 当日 9時 00分より

明倫短期大学6号館4階エレベーターホールにて受付致します.

2.大会参加費: 聴講は無料です。

3.会員年会費: 正会員 3,000円,準会員 1,000円,学生会員は無料

4.入 会: 当日,新入会を受付致します.

Ⅱ.演者の方へ

・ 次演者の方は講演 10 分前までに「次演者席」に着席下さい.

・ 一般発表の時間は8分,質疑応答は2分です.

時間厳守および座長の指示に従い円滑にわかりやすく発表を行って下さい.

・ パソコン用液晶プロジェクターは 1台です.

Ⅲ.座長の先生方へ

・ 次座長席に,担当セッション開始 10分前までに着席下さい.

・ 時間厳守にて円滑な進行をお願い致します.

明倫短期大学学会事務局

〒950-2086 新潟市西区真砂 3-16-10

TEL: 025-232-6351 FAX: 025-232-6335

E-mail: [email protected]

URL: http://society.meirin-c.ac.jp/