第5回 化審法の運用とその概要第5回 化審法の運用とその概要...

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第5回 化審法の運用とその概要 独立行政法人 製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター 佐藤 維麿 1 NITE講座「化学物質に関するリスク評価とリスク管理の基礎知識」 2018年11月1日 これまろ

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第5回 化審法の運用とその概要

独立行政法人 製品評価技術基盤機構

化学物質管理センター 佐藤 維麿

1

NITE講座「化学物質に関するリスク評価とリスク管理の基礎知識」 2018年11月1日

これまろ

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目次

1. 化審法制定の背景

2. 化審法の管理の範囲の広がり

3. 新規化学物質の事前審査制度

4. 化審法のリスク評価

5. 化審法のリスク管理

2

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1. 化審法制定の背景

2. 化審法の管理の範囲の広がり

3. 新規化学物質の事前審査制度

4. 化審法のリスク評価

5. 化審法のリスク管理

3

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化審法の位置付け

4

化審法:化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律

廃棄物処理法等

水銀汚染防止法

農薬取締法

農薬取締法

医薬品医療機器等法

食品衛生法

農薬取締法

暴露

有毒性 労働環境 消費者 環境経由

排出・ストック汚染 廃棄

人の健康への影響

急性

毒性

長期

毒性

生活環境(動植物を含む)への影響

オゾン層

破壊性

地球温暖化

労働安全衛生法

有害家庭用品規制法

建築基準法

毒 劇 法

大気汚染防止法

水質汚濁防止法

土壌汚染対策法

オゾン層保護法

フロン排出抑制法

化学兵器転用 化学兵器禁止法

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化審法制定前の化学物質の安全問題

1.危険性を認識しやすい問題

・ 毒性、劇性:毒物劇物営業取締規則(明治45年)

毒物及び劇物取締法(昭和25年)

・ 爆発の危険性:火薬類取締法(昭和25年)

高圧ガス保安法(昭和26年)

・ 産業中毒:労働基準法(昭和22年)

労働安全衛生法(昭和47年)

5

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化審法制定前の化学物質の安全問題

2.危険性を認識しにくい問題

2-1 意図的な摂取・暴露

・ 食品添加物:食品衛生法(昭和22年)

・ 医薬品:薬機法(昭和35年)

・ 食品への残留農薬:農薬取締法(昭和23年)

・ 家庭用品:行政指導

有害家庭用品規制法(昭和48年)

6

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化審法制定前の化学物質の安全問題

2.危険性を認識しにくい問題

2-2 意図せざる摂取・暴露

2-2-1 「裏口」からの環境汚染問題

工場排水、煙突等から有害な化学物質が排出されることにより環境を汚染

・ 公害問題:水質汚濁防止法(昭和45年)

大気汚染防止法(昭和43年)

廃棄物処理法(昭和45年)など

7

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化審法制定前の化学物質の安全問題

2.危険性を認識しにくい問題

2-2 意図せざる摂取・暴露

2-2-1 「表口」からの環境汚染問題

意図的に製造される化学物質による環境汚染

・ 環境への残留農薬問題:農薬取締法の一部改正 (昭和45年)

・ PCB問題:化審法制定へ(昭和47年)

8

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PCB問題

• カネミ油症事件:食用油製造設備から熱媒体が米ぬか油に混入(昭和43年)

• 環境汚染問題:様々な媒体から検出(昭和41年~)

• PCB汚染の経路として環境に残留し、動物等の体内に蓄積・濃縮され、食物連鎖が起こっていることが示唆された。

9

物質 ポリ塩化ビフェニル

性質 酸、アルカリ、熱に安定 電気絶縁性、接着性、伸展性が良好

用途 トランス、コンデンサーの絶縁油、熱媒体、感圧紙、塗料等

数量 約5万5千トンが国内に供給

ClClm n

m=1~5, n=0~5

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PCB問題

• どの法律で規制するか?

労働基準法?⇒労働者の健康を保護する観点のみ

毒物及び劇物取締法?⇒PCBの急性毒性は弱い

10

化審法制定(昭和48年)

行政指導で対応

従来の法律では対応不可

⇒ PCBだけでは無く、第2のPCB問題の発生を

未然に防止する画期的な制度

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化審法制定時の諸外国の動向

• スウェーデンのPCB規制法(昭和46年)

輸入、製造、販売は国の許可が必要

PCBのみに限られた規制

• OECDにおけるPCB規制(昭和47年)

トランス等の特定用途以外への使用禁止

できるだけPCBの代替品に転換

• 米国の有害物質規制法:TSCA(昭和47年)

PCBのような環境を経由して人体汚染を生ずるケースの製造、

使用等を規制するために化学物質の審査を行い有害物質を規制する法案提出するも廃案

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⇒ 日本の化審法が第2のPCB問題の未然防止まで考えた世界で最初の立法措置

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化審法の位置付け 認識しやすい問題 認識しにくい問題

意図的に摂取・暴露 意図せざる摂取・暴露

表口 裏口

廃棄物処理法等

水銀汚染防止法

農薬取締法

農薬取締法

医薬品医療機器等法

食品衛生法

農薬取締法

暴露 有毒性

労働環境 消費者 環境経由 排出・ストック汚染 廃棄

人の健康への影響

急性

毒性

長期

毒性

生活環境(動植物を含む)への影響

オゾン層

破壊性

地球温暖化

労働安全衛生法

有害家庭用品規制法

建築基準法

毒 劇 法

大気汚染防止法

水質汚濁防止法

土壌汚染対策法

オゾン層保護法

フロン排出抑制法

化学兵器転用 化学兵器禁止法

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化審法の化学物質

元素又は化合物に化学反応を起こさせる

ことにより得られる化合物

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・元素、天然物

一般用途(工業用)

・一般工業化学品

特定用途

【食品衛生法】 食品、添加物、容器包装、

おもちゃ、洗浄剤

【農薬取締法】 農薬

【肥料取締法】 普通肥料

【飼料安全法】 飼料、飼料添加物

【薬 機 法】 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、

再生医療等製品

【放射線障害防止法】 放射性物質

【毒物及び劇物取締法】 特定毒物

【覚せい剤取締法】 覚せい剤、覚せい剤原料

【麻薬及び向精神薬取締法】 麻薬

化審法上の化学物質

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【運用通知】化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の運用について

製品 化合物

化審法上の製品

• 化審法施行令(政令)で定められた製品

– 「化合物」とはせず、法第24条(製品の輸入の制限)、第28条(基準適合義務)・・・により対処する。

– PCB:潤滑油、接着剤、塗料、熱媒体、コンデンサー等

• 化審法施行令で定められていないものであり、次の➀又は②に該当するもの

➀ 固有の商品形状を有するものであって、その使用中に組成や形状が変化しないもの。

② 小分けされ、表示等の最小限の変更により店頭等で販売されうる形態の混合物

– 「化合物」とはせず、「製品」として扱い、その他の関連法令等により対処する。

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1. 化審法制定の背景

2. 化審法の管理の範囲の広がり

3. 新規化学物質の事前審査制度

4. 化審法のリスク評価

5. 化審法のリスク管理

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管理の範囲の広がり

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分解性 蓄積性 人健康 生態

影響 難分解 良分解 高蓄積 低蓄積 長期 毒性

長期毒性の疑い

昭和48年 ○ ○ ○

昭和61年 改正

○ ○ ○ ○ ○

平成15年 改正

○ ○ ○ ○ ○ ○

平成21年 改正

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

○:新たに追加された項目

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昭和48年法の管理範囲

【目的】

PCB類似の化学物質による人の健康被害の発生を未然に防止すること

【管理対象】

・ 「難分解性」「高蓄積性」「人への長期毒性」

⇒ 「特定化学物質」に指定し管理

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PCBの構造(一般式)

ClClm n

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昭和61年改正法の管理範囲

【目的】

昭和48年法で規制の対象とならない化学物質による環境汚染への対応

※ 継続的にさらされることにより人への長期毒性を有する。

【管理対象の追加】

・ 「難分解性」「低蓄積性」「人への長期毒性」

⇒ 「第二種特定化学物質」に指定し管理

・ 「難分解性」「低蓄積性」「人への長期毒性の疑い」

⇒ 「指定化学物質」に指定し管理

※ 旧「特定化学物質」⇒「第一種特定化学物質」

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トリクロロエチレン 金属洗浄に用いられていた塩素系有機溶剤

テトラクロロエチレン 洗浄力が強いためクリーニング業等で使用

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平成15年改正法の管理範囲

【目的】

➀ 従来の人の健康被害の防止のための制度に加え、動植物への影響に着目した制度を導入すること。

・ 欧米は動植物への影響の観点が含まれている。

・ 国内の他法令との調和

【管理対象の追加】

・ 「難分解性」「高蓄積性」「高次捕食動物への長期毒性」

⇒ 「第一種特定化学物質」に指定し管理

・ 「難分解性」「低蓄積性」「動植物の生息又は生育に支障を及ぼすおそれ」

⇒ 「第三種監視化学物質」に指定し管理

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平成15年改正法の管理範囲

【目的】

② 「難分解性」「高蓄積性」の物質について長期毒性の有無が不明な物質を法的な監視の下に置くこと。

【管理対象の追加】

・ 「難分解性」「高蓄積性」「人への長期毒性不明」

⇒ 「第一種監視化学物質」に指定し管理

※ 旧「指定化学物質」⇒「第二種監視化学物質」

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(参考)WSSD:2020年目標

○ 2002年に開催されたWSSD(地球サミット2002)

「予防的取組方法に留意しつつ、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価手順と科学的根拠に基づくリスク管理手順を用いて、化学物質が、人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法で、使用、生産されることを2020年までに達成する」

○ WSSD目標への対応の最重要論点

化学物質固有の危険性のみに着目したハザードベース管理から、人や環境への排出量(暴露量)を考慮したリスクベース管理へのシフト。

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平成21年改正法の管理範囲

【目的】

➀ 上市後のすべての化学物質を対象として、リスク評価を優先的に行うべき物質を絞り込み、リスク評価を実施する体系を構築

※ 従来は有害性が判明している物質のみが管理対象。

② 分解される量を上回る量が環境中に放出されれば環境中に残留し得るため「良分解性」の物質も対象とする。

【管理対象の追加】

・ 「一般化学物質」「優先評価化学物質」の創設

・ 「第二種監視化学物質」「第三種監視化学物質」の廃止

※ 「第一種監視化学物質」⇒「監視化学物質」

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平成21年改正法の物質区分

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分解性 蓄積性 人健康 生態影響

難分解 良分解 高蓄積 低蓄積 長期毒性 長期毒性の疑い

高次捕 食動物

生活環境動植物

動植物 一般

第一種特定化学物質 (33物質)

○ × ○ × ○ - - - -

○ × ○ × - - ○ - -

監視化学物質 (38物質)

○ × ○ × 不明 - 不明 - -

第二種特定化学物質※ (23物質)

- - × ○ ○ - - - -

- - × ○ - - - ○ -

優先評価化学物質※

(208物質)

- - × ○ 不明 ○ - - -

- - × ○ - - - 不明 ○

※ 第二種特定化学物質及び優先評価化学物質は暴露の状況も考慮

物質数:平成30年4月2日時点

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【参考】平成29年改正法の概要

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特定一般化学物質について

新たな区分として「特定一般化学物質」、「特定新規化学物質」が追加されます。

少量新規化学物質、低生産量新規化学物質について

少量新規化学物質、低生産量新規化学物質の数量の考え方が製造・輸入量ベースから環境排出量ベースに変わります。(届出者毎の申出数量はこれまでどおり1tが上限です。)

一般化学物質、優先評価化学

物質及び監視化学物質について

一般化学物質、優先評価化学物質及び監視化学物質の製造数量等の届出内容がかわります。

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1. 化審法制定の背景

2. 化審法の管理の範囲の広がり

3. 新規化学物質の事前審査制度

4. 化審法のリスク評価

5. 化審法のリスク管理

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新規化学物質の事前審査

○ 我が国において新たに製造又は輸入される化学物質(新規化学物質)については、厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境

大臣に対して届出を行い、審査が終了し判定結果の通知を受けるまでの間、製造・輸入が制限される。

〈評価項目〉

(1). 自然的作用による化学的変化を生じにくいものであるかどうか(分解性)

(2). 生物の体内に蓄積されやすいものであるかどうか(蓄積性)

(3). 継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれのあるものであるかどうか(人健康影響)

(4). 動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがあるものであるかどうか(生態への影響)

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新規化学物質とは

「新規化学物質」とは、以下の化学物質以外の化学物質

➀既存化学物質名簿に記載されている化学物質

化審法制定時(昭和48年)に業として製造され、又は輸入されていた化学物質

②第一種特定化学物質

③第二種特定化学物質

④優先評価化学物質(取り消されたものを含む。)

⑤公示された新規化学物質

⑥旧第二種監視化学物質、旧第三種監視化学物質

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新規化学物質の判定及びスクリーニング評価

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判定※ 特性 判定後

第1号 難分解性かつ高蓄積性かつ人健康又は生態への影響のおそれあり

第一種特定化学物質

製造・輸入不可

第2号 難分解性かつ人健康影響の疑いありより毒性が強い場合

より毒性が強い場合特定新規化学物質と判定

製造・輸入可能 第3号 難分解性かつ生態影響のおそれあり

第4号 難分解性かつ人健康影響の疑いあり・生態影響のおそれあり

第5号 疑いなし又は良分解性

第6号 第1~5号のいずれに該当するか不明 追加の試験成績を提出し、再判定

※ 判定と同時に、判定に用いた有害性情報と、製造・輸入の予定数量及び用途情報を用いて優先評価化学物質に該当するか判断するためのスクリーニング評価を実施し、リスクが十分に低いと判断できない場合に「優先評価化学物質」に区分。

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新規化学物質の事前審査制度の特例

• 低生産量新規化学物質の確認制度

「難分解性」かつ「高蓄積性でない」と判定されたものであって、年間の環境への排出量が全国で10t以下であることの確認を受けたもの。

• 少量新規化学物質の確認制度

年間の環境排出量が全国で1t以下であることの確認を受けたもの。

• 中間物等の確認制度

【中間物】当該中間物が他の化学物質になるまでの間において環境汚染防止措置が講じられていると確認を受けたもの。

【閉鎖系用途】新規化学物質を施設又は設備の外へ排出されるおそれがない方法で使用するためのものとして製造し、又は輸入する場合であって、その廃棄までの間において環境汚染防止措置が講じられていると確認を受けたもの。

【輸出専用品】輸出に係る仕向地が省令で定める特定の地域であり、かつ、輸出されるまでの間において環境汚染防止措置が講じられていると確認を受けたもの。

• 低懸念高分子化合物の確認制度

酸やアルカリへの安定性、各種溶媒への溶解性、分子量のサイズ等の一定の基準を満たすと確認を受けたもの。

• 試験研究用途・試薬

試験研究のためや試薬として新規化学物質を製造・輸入するもの。

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1. 化審法制定の背景

2. 化審法の管理の範囲の広がり

3. 新規化学物質の事前審査制度

4. 化審法のリスク評価

5. 化審法のリスク管理

30

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化審法の体系

31

上市

事前審査

一般化学物質

優先評価化学物質

第二種特定化学物質 人健康影響・生態影響のリスクあり

第一種特定化学物質 難分解・高蓄積・人への長期毒性又は高次捕食動物への長期毒性あり

監視化学物質 難分解・高蓄積・毒性不明

少量新規 (年間環境排出量1トン以下)

高濃縮でなく低生産 (年間環境排出量10トン以下)

中間物等 (政令で定める用途)

低懸念高分子化合物

・製造・輸入許可制(必要不可欠用途以外は禁止) ・政令指定製品の輸入禁止

・回収等措置命令 等

○上市前の事前審査、上市後の継続的な管理及び規制により、化学物質による環境汚染を防止。

・製造・輸入実績数量、詳細用途等の届出義務

・ 製造・輸入(予定及び実績)数量、用途等の届出

・ 必要に応じて予定数量の変更命令

・ 取扱についての技術指針

・ 政令指定製品の表示 等

・ 製造・輸入実績数量・詳細用途別出荷量等の届出

・ 有害性調査指示

・ 情報伝達の努力義務

・ 製造・輸入実績数量、用途等の届出

事前確認等

国がリスク評価

有害性や使

用状況等を

詳細に把握

環境中への

放出を抑制

使用状況等を

大まかに把握

環境中への

放出を回避

使用状況

等を詳細

に把握

新規化学物質

確認を受けた物質 継続性

の確認

・ 立ち入り検査

・ 毎年度の確認 等

特定一般化学物質

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リスク評価・管理対象物質の範囲が拡大

32

有害性等の情報収集→リスク評価→リスク管理 の加速化

審査・判定により ・難分解性

・長期毒性のうたがい と判定された物質

「優先評価化学物質」:優先的にリスク評価を行う必要がある化学物質

• 人の健康または生活環境動植物への長期毒性を有するかどうか不明

• 人の健康または生活環境動植物の生息・生育へのリスクがないとは認められない

• リスク評価のために性状に関する情報を収集し、使用等の状況を把握する

良分解性物質も対象に

判定を経ていない既存化学物質も対象に

毒性が不明の物質も対象に

改正前

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改正化審法における化学物質のリスク評価の流れ

33

スクリーニング評価 (一般化学物質が対象)

リスク評価(二次)

長期毒性があれば、リスクが懸念される化学物質

リスク評価(一次)Ⅰ~Ⅲ

優先評価化学物質に指定

(環境中への残留の程度等からリスクが十分に低いと言えない化学物質)

有害性調査指示 (製造・輸入事業者に長期毒性試験の実施を指示)

第二種特定化学物質 (必要により、製造・輸入数量を調整)

リスクが懸念される化学物質

絞り込み

物質数 評価の

精度

簡易

詳細

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34

スクリーニング評価の考え方

暴露 有害性 リスク =

リスクの指標でリスク評価を行う優先度を付与

強弱のクラス

を付ける

大小のクラス

を付ける

有害性が強く、暴露が大きいほど

リスクが懸念される度合いが大きい

「リスク評価を行う優先度が高い」 優先評価化学物質

×

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35

スクリーニング評価の優先度マトリックス➀

有害性クラス

強 弱

1 2 3 4 外

暴露クラス

1 高 高 高 高

2 高 高 高 中

3 高 高 中 中

4 高 中 中 低

5 中 中 低 低

外 クラス外

一般化学物質

優先評価化学物質

一般化学物質

更にリスク評価を行う

必要がある化学物質に

分類

現状と変更なし

リスク評価

(一次)へ

事業者からの届出情報(製造・輸入量、用途)等から予測した排出量を用いて暴露クラスを、収集された有害性情報に基づき有害性クラスを付与する。

各クラスを優先度マトリックスに当てはめ、優先度「高」のものを優先評価化学物質相当と判定する。

リスクが十分に低いと判断できない

リスクが十分に低いと判断できる

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36

スクリーニング評価の優先度マトリックス②

性状の情報 人健康の評価の場合 生態の評価の場合

•反復投与毒性試験データ •生殖発生毒性試験データ •変異原性分類/判定結果 •発がん性の分類結果

•水生生物(藻類、ミジンコ、魚類)の毒性試験データ

製造数量等 の届出情報

分解性の情報 •難分解性/良分解性の判定結果

全国総排出量 (推計値)

スクリーニング評価で取り扱う情報

有害性クラス

強 弱

1 2 3 4 外

暴露クラス

1 高 高 高 高

2 高 高 高 中

3 高 高 中 中

4 高 中 中 低

5 中 中 低 低

外 クラス外

暴露 クラス

全国総排出量 (推計値)

1 10,000㌧超

2 10,000㌧以下 1,000㌧超

3 1,000㌧以下 100㌧超

4 100㌧以下 10㌧超

5 10㌧以下 1㌧超

外 1㌧以下

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一般化学物質の届出制度

一般化学物質を製造し、又は輸入した者は、一般化学物質ごとに毎年度、主に以下の事項を経済産業大臣に届け出なければならない。

(届出期間:4月1日~6月30日※) ※電子届出は7月31日

• 化学物質名称: 既存化学物質名簿等の官報に掲載された名称

(例:メタン)

• 官報整理番号: 官報で化学物質名称に付与されている番号

(例:2-1)

• その他の番号: CAS番号(例:74-82-8)

• 製造数量: 前年度1年間の製造数量

• 輸入数量: 前年度1年間の輸入数量

• 用途ごとの出荷数量: 前年度1年間の用途ごとの出荷数量

• 出荷に係る用途番号: 化学物質用途分類表の中の用途番号

(2桁の数字)から記載(約50分類)

37

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38

~一般化学物質の届出様式~1/2 旧 新

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39

~一般化学物質の届出様式~2/2 旧 新

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スクリーニング評価用の排出係数

40 届出された用途別の出荷数量に排出係数をかけて排出量を推計

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人健康に係る有害性の項目

41

有害性の項目 収集する有害性データ

一般毒性 一般毒性に係る有害影響及びその無毒性量等の定量的毒性値

生殖発生毒性 生殖発生毒性に係る有害影響及びその無毒性量等の定量的毒性値

変異原性 変異原性試験の陽性/陰性等の試験結果 (ヒト生殖細胞変異原性についてはGHS 分類結果を含む)

発がん性 ヒトの発がん性に係る定性的データ

情報源 ・ 審査・判定情報(新規化学物質の審査情報、既存化学物質点検情報) ・ 各種の既存情報 ( PRTR対象物質の選定に用いた各種の有害性情報、Japanチャレンジの情報、 HPV点検の情報、IARCの発がん性カテゴリー等 ) ・ 信頼性の基準を満たしている情報を利用 ・ 国による情報収集に加えて、事業者にも有害性情報の提供をお願いしている。

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有害性評価値及びその導出に用いる不確実係数

D: 有害性評価値=NO(A)EL等/不確実係数積 (mg/kg/day)

NOEL: No Observed Effect Level(無影響量)

NOAEL: No Observed Adverse Effect Level(無毒性量)

LOEL: Lowest Observed Effect Level(最小影響量)

LOAEL: Lowest Observed Adverse Effect Level(最小毒性量)

42

一般毒性の場合

種間差 10

個体差 10

試験期間 90日未満 6

90日以上12ヶ月未満 2

12ヶ月以上 1

LO(A)EL採用 10

影響の重大性 1~10

生殖発生毒性の場合

種間差 10

個体差 10

LO(A)EL採用 10

試験の質/影響の重大性 10

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人健康に係る有害性クラスの区切り

43

強 有害性 弱 有害性の

項目 1 2 3 4 クラス外

一般毒性 D≤0.005

GHS区分1

0.005<D ≤0.05

GHS区分2 0.05<D≤0.5 D>0.5

生殖発生

毒性 D≤0.005 0.005<D

≤0.05 0.05<D≤0.5 D>0.5

変異原性 GHS区分

1A

発がん性 GHS区分

1A GHS区分 1B, 2 GHS区分外

D: 有害性評価値=NOEL等/不確実係数積 (mg/kg/day)

・GHS区分1B,2 ・化審法「強い陽性」 ・化管法「クラス1」 ・強弱不明の陽性

化審法の変異原性試験のいずれかで陽性

化審法の変異原性試験のいずれも陽性

• GHS区分外

•化審法の変異原性試験のいずれも陰性

• in vivo試験で陰性

4つの有害性の項目ごとに独立で有害性クラス付けを行い、最もきびしい

(クラスの数字の小さい)クラスを有害性クラスとする。

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有害性クラスに当てはめ

生態に係る有害性クラスの付け方

44

慢性毒性 データ?

不確実係数積

あり 急性毒性 データ?

PNECに外挿

なし

あり

再調査等 なし

PNEC:無影響濃度(mg/L) =最小毒性値/不確実係数積

用いる有害性データ

藻類・甲殻類(ミジンコ)・魚類の慢性毒性データ及び急性毒性データ

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PNEC導出に用いる不確実係数

45

採用する毒性値 種間外挿のUF

急性から慢性への

UF(ACR)

室内試験から野外へのUF

不確実係数積 UFs

3つの栄養段階の慢性毒性試験結果がある場合の 最小のNOEC

- - 10 10

2つの栄養段階の慢性毒性試験結果がある場合の 小さいほうのNOEC

5 - 10 50

1つの栄養段階の慢性毒性試験結果がある場合の NOEC

10 - 10 100

3つの栄養段階の急性毒性L(E)C50がある場合の 最小のL(E)C50

- ACR 10 10×ACR

慢性毒性試験結果が欠けている栄養段階の急性毒性値が揃わない場合の小さいほうのL(E)C50

10 ACR 10 100×ACR

ACR

藻類 20

ミジンコ アミン類 100

アミン類以外 10

魚類 100

UF(Uncertainty factor):不確実係数

PNEC(Predicted No Effect Concentration)

: 無影響濃度(mg/L)=最小毒性値/不確実係数積

NOEC(No Observed Effect Concentration):無影響濃度

LC50(Median Lethal Concentration): 半数致死濃度

EC50(Median Effect Concentration): 半数影響濃度

ACR(Acute Chronic Ratio):急性慢性毒性比

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強 有害性 弱

生態に係る有害性クラスの区切り

46

1 2 3 4 クラス外

基準 PNEC

≦0.001

0.001<

PNEC

≦0.01

0.01<

PNEC

≦0.1

0.1<

PNEC

≦1

PNEC

>1

GHS 区分慢性※ 1 区分慢性※2 区分慢性※3 区分外

判定基準

三監相当 三監相当ではない

PNEC: 無影響濃度(mg/L)=最小毒性値/不確実係数積

※ 慢性区分は急性データからも分類可

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208物質が優先評価化学物質に指定されている。(平成30年4月2日時点)

平成22年度 (平成23年1

月 審議会)

平成23年度 (平成24年1

月 審議会)

平成24年度 (平成24年7

月 審議会)

平成25年度 (平成25年7

月 審議会)

平成26年度 (平成26年11

月 審議会)

平成27年度 (平成27年10

月 審議会)

平成28年度 (平成28年10

月 審議会)

平成29年度 (平成29年11

月 審議会)

人健康

生態 人健康

生態 人健康

生態 人健康

生態 人健康

生態 人健康

生態 人健康

生態 人健康

生態

評価対象の物質区分

旧二監

旧三監

一般化学物質の一部

届出のあった全ての一般化学物質

暴露情報 平成21年度 実績

平成22年度実績 平成23年度 実績

平成24年度 実績

平成25年度 実績

平成26年度 実績

平成27年度 実績

有害性情報

二監・三監の判定基準

OECD/HPV 判根拠等

国が保有している・収集した情報で信頼性等が確認できたもの

評価単位 物質

682物質

212 物質

109物質

275 物質

10,792物質 11,979物質 11,897物質 11,810物質 11,924物質 11,840物質

製造輸入 数量10t超

447物質

166 物質

101物質

188 物質

7,054物質 7,819物質 7,699物質 7,678物質 7,677物質 7,663物質

優先評価 化学物質 相当

88物質 8物質 46物質 40物質 14物質 21物質 14物質 9物質

75 物質

20 物質

6 物質

4 物質

31 物質

21 物質

17 物質

23 物質

1 物質

13 物質

3 物質

18 物質

2 物質

12 物質

3 物質

6 物質

47

スクリーニング評価結果

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化審法のリスク評価が多段階なのは

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リスク評価(一次)

リスク評価(二次)

暴露要件に該当すれば

有害性調査指示

評価Ⅲ

評価Ⅰ

評価Ⅱ 既存の環境

モニタリング情報

PRTR情報

最小限の情報、デフォルト暴露シナリオによる評価で順位付け

公知の既知見も利用

して重層的に評価

不確実性解析で再評価に必要な情報を特定

新たに取得した暴露

情報を反映して再評価

有害性調査指示に基づく有害性情報を反映して再評価

製造数量等

の届出情報

新たな環境

モニタリング情報

取扱い状況の報告

最小限の情報で物質を絞り込む段階

公知のデータを追加して、さらに

詳細に評価する段階

産業界から情報を得て、さらに

詳細に評価する段階

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49

暴露評価に必要な情報は?

暴露評価

リスク評価

有害性評価

暴露量 有害性評価値

リスク推計

優先評価化学物質の 選定に用いた有害瀬情報

例: • 化審法の審査・判定の 根拠

• 既存点検結果 • HPV点検の結果 • ジャパンチャレンジの結果

毒性試験結果から有害性の閾値を導出

暴露量推計

環境中濃度推計

排出量推計

製造数量等届出書 届出者名 物質名 製造 都道府県 量

○○県 ●t ○○県 ●t

出荷 都道府県 用途 量 ○○県 XX-X ●t △△県 XX-X ●t ○○県 XX-X ●t

暴露量(人の摂取量)

環境中濃度推計

摂取量推計

環境中濃度

排出量推計

環境への排出量

製造量や出荷量

暴露評価のためには届出情報から環境への排出量を推計する必要がある。

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優先評価化学物質の届出制度

優先評価化学物質を製造し、又は輸入した者は、優先評価化学物質ごとに毎年度、主に以下の事項を経済産業大臣に届け出なければならない。 (届出期間:4月1日~6月30日※) ※電子届出は7月31日

• 化学物質名称: 優先評価化学物質を指定した際の官報に掲載された名称

(例:二硫化炭素)

• 物質管理番号: 優先評価化学物質に付与されている通し番 (例:1)

• 官報整理番号: 既存化学物質名簿等に付与されている番号 (例:1-172)

• その他の番号: CAS番号 (例:75-15-0)

• 都道府県ごとの製造数量: 前年度1年間の製造数量

• 輸入国ごとの輸入数量: 前年度1年間の輸入数量

• 都道府県ごとの詳細用途ごとの出荷数量:

前年度1年間の用途ごとの出荷数量

• 出荷に係る詳細用途番号: 化学物質用途分類表の中の用途番号(2桁の

数字+アルファベット1桁)から記載

(約280分類)

50

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排出係数一覧表

51

・製造段階、調合段階、使用段階別に排出係数を設定

・大気への排出は蒸気圧で排出係数を区分

・水域への排出は水溶解度で排出係数を区分

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52

排出源ごとの人の暴露シナリオ

排出源 排出先媒体 環境運命 摂取媒体 暴露集団

製造又は 調合又は 工業的使用

段階の事業所等

排出源周辺の一般国民

河川 飲料水

淡水魚

海水魚

海域

淡水魚

海水魚

希釈 濃縮

濃縮

化学物質の製造・使用等に係る排出源周辺に居住する一般国民が

環境経由で化学物質に暴露されるというシナリオ

大気

大気 大気

牛肉

乳製品

地上部農作物

地下部農作物

土壌

土壌間隙水

家畜

牧草

沈着

分配

拡散

移行

河川

吸入

経口

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評価段階

有害性 暴 露

有害性(簡易)

有害性(長期)

用途別数量

詳細用途別数量

分解性(良/難)

分解性(半減期)

蓄積性

物理化学的性状

P

R

T

R

情報

モニタリング情報

個別取扱い状況

スクリーニング評価

(一次)

リスク評価

評価Ⅰ

評価Ⅱ

評価Ⅲ

リスク評価(二次)

53

各段階で評価に用いる情報

赤は前段より追加、●又は●:必須、○又は○:入手できれば使用

● ○ ● ○

● ○ ● ○ ● ●

● ○ ● ● ● ● ○ ○

● ○ ● ● ● ● ○ ○ ●

● ● ● ● ● ○ ○ ●

長期毒性に係る有害性調査指示

少 →

情報量

多 →

物質数

評価が進むにつれて情報量が増え、物質が絞られていく。

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平成29年度までに27物質のリスク評価(1次)評価Ⅱを実施

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評価書審議日 優先 番号

物質名称 評価項目 評価結果

平成26年6月27日 48 イソプロペニルベンゼン 生態影響 評価Ⅱ継続

75 ビスフェノールA 生態影響 評価Ⅱ継続

平成26年12月19日 13 クロロエチレン 人健康影響 優先取消

平成27年7月24日 64 2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 生態影響 評価Ⅱ継続

49 1,2,4-トリメチルベンゼン 生態影響 評価Ⅱ継続

平成28年1月22日 4 1,3-ブタジエン 人健康影響 評価Ⅱ継続

20 1,2-エポキシプロパン 人健康影響 優先取消

33 アクリル酸n-ブチル 生態影響 優先取消

53 p-ジクロロベンゼン 生態影響 評価Ⅱ継続

平成28年3月25日 39 アクリロニトリル 人健康影響 評価Ⅱ継続

リスク評価(一次)評価Ⅱの結果

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評価書審議日 優先 番号

物質名称 評価項目 評価結果

平成28年6月17日 12 1,2-ジクロロプロパン 人健康影響 優先取消

9 ブロモメタン 生態影響 評価Ⅱ継続

76 ナフタレン 生態影響 評価Ⅱ継続

89 過酸化水素 生態影響 評価Ⅱ継続

平成29年1月31日 2 ヒドラジン 人健康・生態影響 評価Ⅲへ

7 ジクロロメタン 人健康影響 優先取消

128 安息香酸ベンジル 生態影響 評価Ⅱ継続

平成29年3月24日 125 キシレン 生態影響 評価Ⅱ継続

139 亜鉛ピリチオン 生態影響 評価Ⅱ継続

55

リスク評価(一次)評価Ⅱの結果

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評価書審議日 優先 番号

物質名称 評価項目 評価結果

平成29年6月23日 137 トリクロロイソシアヌル酸 生態影響 評価Ⅱ継続

平成29年11月24日 170 デカン-1-オール 生態影響 評価Ⅱ継続

平成30年1月19日 27 N,N-ジメチルホルムアミド 人健康影響 評価Ⅱ継続

158 フェノブカルブ 生態影響 評価Ⅱ継続

平成30年3月23日 19 エチレンオキシド 人健康影響 評価Ⅲへ

86 ノニルフェノールエトキシレート 生態影響 評価Ⅱ継続

159 ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 生態影響 評価Ⅱ継続

169 N,N-ジメチルアルカン-1-アミン=オキシド 生態影響 評価Ⅱ継続

56

リスク評価(一次)評価Ⅱの結果

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リスク評価における事業者と国の役割

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リスク評価

(二次)

スクリーニング評価

優先評価化学物質

リスク評価

(一次)

第二種特定化学物質

有害性

調査指示

一般化学物質

リスク低 リスク低

リスク低

改正化審法における規制措置の判断のためのリスク評価は、国が責任をもって行い、そのための情報提供は、基本的には事業者が行う。

製造・輸入数量、用途別出荷量の届出

製造・輸入数量及び用途情報等を用いて環境中への暴露状況を推計し、これに有害性等に関する既知見を踏まえたスクリーニング評価の実施

事業者

製造・輸入数量、都道府県別詳細用途別出荷量等の届出

有害性や用途等に関する追加情報を段階的に収集した、リスク評価の実施

有害性や詳細な用途等に関する追加情報の提供

長期毒性に関する調査、報告

長期毒性に関する情報を踏まえ、第二種特定化学物質への該当性の判断

製造予定数量等の届出、表示義務等

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1. 化審法制定の背景

2. 化審法の管理の範囲の広がり

3. 新規化学物質の事前審査制度

4. 化審法のリスク評価

5. 化審法のリスク管理

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リスク評価に基づく化学物質管理

有害性は

物質固有の性状

で不変

暴露量は 排出を抑制する等の 製造・使用状況の 管理によって 制御が可能

化学物質を安全に(リスクが懸念されない暴露量以下に抑えて)使用していくために化学物質の有害性を評価した上で暴露量を制御する必要がある

暴露量 有害性 評価値

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第二種特定化学物質の規制等

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第二種特定化学物質の要件

高蓄積性は有さないが難分解性で、継続的摂取又は暴露による人への長期毒性又は生活環境動植物への毒性がある化学物質であって、被害を生ずるおそれのある環境残留がある化学物質

取扱いに係る措置

• 取り扱う事業者がとるべき措置を技術上の指針として公表する。

• 容器、包装等に環境汚染を防止するための措置等に関して表示すべき事項を定める。

製造予定数量等/ 実績数量等の届出

• 第二種特定化学物質の製造・輸入予定数量/実績数量、政令で定める製品の輸入予定数量/実績数量等を届け出なければならない。

• 届出に係る製造・輸入予定数量の変更を命じることができる。

疑いのある化学物質に関する勧告

• 第二種特定化学物質の要件に該当すると疑うに足りる理由があるときは、その化学物質を使用する者に対し、製造、輸入の制限等の必要な勧告を行うことができる。

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監視化学物質の措置等

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監視化学物質の要件

難分解性を有しかつ高蓄積性の既存化学物質のうち、 毒性が明らかでない化学物質

製造数量等の届出等

• 毎年度、製造・輸入実績数量や用途の届出を行わなければならない。

• 必要に応じて環境中への放出を抑制する措置を講じるよう指導・助言が可能とされている。

有害性調査指示

• 環境汚染が生ずるおそれがあると認められる場合には、製造・輸入事業者に対して長期毒性に関する調査を行うよう指示を行い、第一種特定化学物質に該当すると判明した場合に速やかに指定する。

情報提供の努力義務

• 監視化学物質を事業者間で譲渡等する場合には監視化学物質であること等の情報を提供するよう努めなければならない。

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第一種特定化学物質の規制等

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第一種特定化学物質の要件

難分解性、高蓄積性かつ長期毒性(人又は高次捕食動物)を有する化学物質

製造及び輸入の許可制

• 第一種特定化学物質の製造又は輸入をしようとする者は、経済産業大臣の許可を受けなければならない。

製品の輸入禁止 • 第一種特定化学物質が使用されている製品(政令で定める製品)は輸入が禁止されている。

使用の制限 • 政令で定める用途以外は使用が認められていない。

指定等に伴う措置命令

• 主務大臣は第一種特定化学物質が使用されている製品の製造又は輸入の事業を営んでいた者に対して、それらの回収等を命ずることができる。

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リスク管理における事業者と国の役割

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事業者 国

(厚生労働省、経済産業省、環境省)

• 評価結果に基づく措置等の判断と指示

– 物質指定・取消し

– 有害性調査の求め・指示

– 指導・助言・勧告

• 情報の届出・報告 – 製造数量等(用途情報が含まれる)

– 有害性など性状データ

– 取扱いの状況※

• 評価の実施 – 審査・評価判定

– スクリーニング評価

– リスク評価(一次)

– リスク評価(二次)

• 措置等の遵守※

– 指導・助言に基づく取扱い状況の改善

– 技術上の指針の遵守 等

※ 製造・輸入事業者だけでなく、取り扱い事業者も含む

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【化審法関係HP】

○ NITE 化審法関連情報ホームページ

https://www.nite.go.jp/chem/kasinn/kasinn_index.html

○ 経済産業省 化学物質管理ホームページ

http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/index.html

【化審法関係データベース】

○ NITE 化学物質総合情報提供システム(NITE-CHRIP)

https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/systemTop

○ 化審法データベース(J-CHECK)

http://www.safe.nite.go.jp/jcheck/top.action?request_locale=ja

【化審法関係お問い合わせ】

○ 化審法連絡システム

https://www.nite.go.jp/chem/kasinn/kashinrenraku.html

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ご清聴ありがとうございました。