cadシステム導入を成功させるため...

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概要 ようこそ3次元の世界へ!あなたは革新的な製品を、より短期間に少ないエラーで設計するのに役立つ、新しいCAD ソフトウェアを購入されました。本ホワイトペーパーでは、この新しいツールがもたらすメリットの実現に役立つ 方法をご紹介します。 CADシステム導入を成功させるため 4つのヒント ホワイトペーパー BY L. STEPHEN WOLFE, P.E.

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Page 1: CADシステム導入を成功させるため の4つのヒントcad.weblike.jp/3d-solidworks/Whitepaper/SW_4Tips_Implementing_J… · SolidWorksとソフトウェアパートナーR&b

概要

ようこそ3次元の世界へ!あなたは革新的な製品を、より短期間に少ないエラーで設計するのに役立つ、新しいCADソフトウェアを購入されました。本ホワイトペーパーでは、この新しいツールがもたらすメリットの実現に役立つ 方法をご紹介します。

CADシステム導入を成功させるため

の4つのヒント

ホ ワ イト ペ ー パ ー

b y L . S t e p h e n W o L f e , p . e .

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はじめに

新しいツールを習得することは業務を改善する最初のステップにすぎません。そのツールから最大の効果を引き出すには、ツールを正しく使用し、適切な注意を払って取り扱い、現状のプロセスにどう影響するかについて調べる必要があります。準備が不足していたり、いきなり使い始めたりした場合、費用に対する効果が限定されるだけでなく、最悪の場合、ワークフローが中断され、生産性に悪影響を及ぼし、数時間、数日、場合によっては数週間の無駄が生じます。

導入の計画をしっかり立てないと、この新しいツールの提供できるメリットのすべてを得ることはできません。最も成功した企業では、新しいCADシステム導入時に以下のステップに従っています:

• 生産性の上がる作業を特定する。システムのメリットを早期にアピールすることで、設計者、管理者、エグゼクティブからより大きな支持を得ることができます。まず最初に、最も適用が簡単で、最もインパクトの大きい業務に適用することにより、新しいソフトウェアに対する興味と期待感をもたせてください。これをどこにするかはトレーニングを始める前に判断してください。

• 導入計画を作成する。新しいCADシステムの立ち上げは、小規模な会社でない限り時間のかかるものです。すべての人を同時に立ち上げることはできませんし、管理者にとって負荷がかかる場合もあります。詳細なスケジュールと予算を作り、スタッフと共有することによりすべての人がプロセスを理解し、自分がいつ、どのようにトレーニングを受けられるかを知ることができるようにしてください。

• ベストプラクティスの確立。すべての新しいシステムには、新しい手順、新しい基準、新しい規則が必要です。当然、使いながら理解していく事もありますが、まず最初に新しいツールを使うための明確かつしっかりと文書化されたガイドラインを作成し、必要に応じて調整するようにしてください。そうすれば、後から遅れを取り戻そうと苦労することはありません。

• システムアーキテクチャの計画。インストールの当日にあわてることのないようにしましょう。新しいシステムの必要条件を検証し、あらゆるハードウ ェア、ソフトウェア、サービスの準備が整っているか確認します。CADシステムの導入に関して時間をかけてよく検討することは、成功を計画すること になります。この段階で念入りに準備しておくことが、あなたと会社全体の 生産性向上につながり、従業員やクライアントの満足を確実なものにします。

生産性の上がる作業を特定する

新しいCADシステムの生産性を即座に実証することは重要です。エグゼクティブは投資が利益拡大につながっていることを確認したいですし、従業員には新しいツールを学習して使用する価値があることを示さなければなりません。

迅速に生産性を実現するには、新しいツールが得意な業務を見つけてください。たとえば次のようなものがあります:

• 繰り返しの業務、または類似・バリーエショナル設計。コンベヤーシステムや材料処理装置がこれにあたります。

• 可視化が難しい、または2次元レイアウトでは多数の図面ビューを必要とする部品やシステム。金型成形や鋳造部品、または自動車、航空機、コンシューマ製品アプリケーションがこれにあたります。

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント2

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SolidWorksでモデル化した複雑な鋳造部品の例

• 多くの加工を必要とし、間違いや後工程での変更の影響が大きい設計。3次元モデリングは、金型またはダイカスト部品やスタンピング等、加工設計での後工程での変更を引き起こすエラーを回避するのに役立ちます。

• 複雑な加工。金型、スタンピング、ダイ、プログレッシブダイ、鍛造ダイ、複雑な部品やアセンブリを支えるためのフィクスチャは、特に顧客が3次元製品モデルを提供している場合、3次元設計の良い候補となります。

SolidWorksとソフトウェアパートナーR&b Mold Design SolutionsのMoldWorksで作成された

射出成形アセンブリの例

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント3

新しいCADシステムの生産性を即座に実証す

ることは重要です。経営者は投資が最適であ

ったか確認したいと考えています。

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• 問題の発生により、けがや生命に対する危険が生じうる製品への、3次元を用いた形状、適合性、および機能チェックの活用。feA(finite element Analysis)やCfD(Computational fluid Dynamics)を用いてこのようなデザインを解析すれば、内部荷重や故障状態の理解が深まり、製品の安全性がさらに向上します。

潜在的な危険性を持つ製品においては、エンジニアが内部応力や他の物理的動作の理解を

解析を通して深めることで、それらの安全性を向上できます。

• フラットパターン生成の自動化により、時間節約が可能な板金部品。

板金部品の3次元モデル(左側)からフラットパターンが自動生成できることにより、労働

力が節約できるだけでなく、製造上のエラーの削減にもつながります。

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問題の発生により、けがや生命に対する

危険が生じうる製品には、3次元を用いた

形状、適合性、および機能のチェックが

適しています。

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• 3軸、4軸、または5軸の数値制御工作機械を用い加工される各種の部品やツール。

SolidWorks®とパートナー アプリケーションSolidCAMを用いて作成された、5軸の数値制御

加工用ツール パスの例。

• 3次元による視覚化を行うことで完成前から販売促進が可能となる製品。

CADモデルのリアルなレンダリングにより、製品の外観を視覚化させることを支援すると

ともに、マーケティング担当者による販売資料開発等もプロトタイプの完成を待たずに行

えるようになります。

導入計画の策定

2次元の図面開発で主に使用されてきたCADソフトウェアから3次元設計・モデリングを実現するシステムへの移行には、開発プロセスを変更する必要があります。このような設計プロセスの変更は慎重に計画しないと、様々な処理に支障をきたしかねません。

CADの導入計画は、あなたが1人ないし2人程度の従業員規模の個人事業主のような立場である場合を除き、ずべての関係者が学習し覚えられるように、明確に文書化しなくてはいけません。CADの導入計画には次の要素を含む必要があります:

1. 実施すべき作業の目的と説明

2.コストと要員

3.スケジュール

2次元の図面開発で主に使用されてきたCADソフトウェアから3次元設計・モデリングを

実現するシステムに移行するには、開発プロ

セスを変更する必要があります。このような

設計プロセスの変更は慎重に計画しないと、

様々な処理に支障をきたしかねません。

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計画を記述する前に、次の質問に回答してください:

• 新しいCADシステムが最初に適用される設計業務は何ですか?

• 新しいシステムを最初に使用する従業員は誰ですか?

• システム管理、トレーニング プログラムの開発、およびライブラリ管理等を含む、サポート業務を実施するのは誰ですか?

前述したとおり、新しいCADソフトウェアを適用する設計業務には、次の様な業務上の利益を最大限に得られるものを選択してください:

• 時間と労働力の節約。

• 商談へのより素早い対応。

• 設計品質の向上や設計エラーの削減

自動化すべき業務に対し、それらの重要性に基づいた優先順位をつけてください。このような優先順位作成は、ビジネス上の決定権を持つ上級管理職と共に行う必要があります。

最初の設計業務とそれに携わる人員が決定したら、それらの人員すべてのトレーニングを計画します。トレーニングでは費用がかかるだけでなく、従業員の時間を拘束することになります。したがってこれらの要素を導入予算やスケジュールに組み込んでおく必要があります。

ベスト プラクティスの確立

大多数の企業には詳細な図面規格が存在しますが、3次元手法を導入する際におけるそれらの規格の更新を忘れてしまうことは少なくありません。 3次元CADのための基準確立に費やした時間は、システムを運用する中で何倍でも取り戻すことができます。以下に、あなたの会社でも取り入れるべき確実なプラクティスを紹介します。

モデルおよび図面テンプレート新しいCADソフトウェアを運用する際には部品、アセンブリ、および図面に対するテンプレートを作成してください。テンプレートは、すべての新しいCADファイルに対して共通の各種設定情報を含むファイルです。それらは設計者の時間を節約し、新たに作成する各々の図面やモデルに対して一貫した作業の出発点となります。CADソフトウェアの設定により、それらを格納したファイル サーバー上のディレクトリ内でテンプレートを検索します。

テンプレートを作成する前には部品、アセンブリ、および図面で利用可能な各種オプションを学習し、それらを確実に理解してください。そのうえで、自社における現在の設計および図面習慣に最も適したオプションを選択します。

作成頻度の高い図面形態に対しては平面、正面、側面等を投影する図面ビューを組み込んだ特別なテンプレートを作成することにより、さらなる時間の節約が行えます。この際、支障がなければ、等角投影ビューを追加しておくことで、図面の理解をより容易なものとすることも可能です。

最初の設計業務とそれに携わる人員が決定し

たら、それらの人員すべてのトレーニングを

計画します。

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部品の作成基準の確立モデル座標系における部品配置に対し、社内基準を確立します。基準を定めることにより、設計者による部品の迅速な配置と部品同士の位置決めやデータム平面に対する位置決めが容易になります。基準となる部品方向を定めれば、定義済みの合致関係の適用も容易になります。

部品を原点に配置します。部品に対称平面がある場合には、該当する平面が原点と交わる主要平面の1つと一致しなくてはいけません。対称平面が2つある場合には、それらが2つの主要平面と一致しなくてはいけません。対称平面に対し平面、正面、または右側面を基準として選択します。

部品の合致面を原点において主要平面の1つに配置します。対象となるデザインに適した基準平面を選択してください。例えば、水平なベース部品の上にマウントされるデザインを作成する場合には、合致面を平面の参照平面に一致させてください。

円筒部品は同じ部品軸上に配置する必要があります。押し出しの断面スケッチはすべて同じ平面にスケッチします。押し出し方向を片方向にするか対称方向にするかは、部品の活用方法によって決定します。

この部品の対称平面は右側面(Right)の参照平面に位置付けられており、配置を容易にす

るために部品の正面を正面(front)の参照平面と一致させています。

フィーチャーおよび合致に対する名前付け3次元 CADモデルでは、比較的単純な幾何フィーチャーの組み合わせにより複雑な形状が構成されます。CADシステムは、これらのフィーチャーに対して押し出し1、押し出し2、穴1、穴2といった名前を自動で割り当てます。しかし、これらの名前は将来的に部品モデルの変更を行うであろうユーザーにとって、必ずしも分かりやすいものではありません。

CADモデルの頻繁な再利用が予測される場合、合致穴や合致面、あるいは製造よってその位置が変化するフランジ等、重要な部品フィーチャーに対しては理解しやすい名前を割り当ててください。 複数のフィーチャーで使用されるようなスケッチがある場合には、それらに対しても分かりやすい名前を割り当ててください。モデルの作成中にその可読性を改善するために行うこのような作業に費やす時間は、該当するモデルの再利用等において取り返すことができます。

基準を定めることにより、設計者による部品

の迅速な配置と部品同士の位置決めやデータ

ム平面に対する位置決めが容易になります。

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寸法と拘束の適用フィーチャー ベースのCADソフトウェアにおける強力な長所の1つは、設計者の意図をモデル内に反映させる能力にあります。 例えば対称形状で構成される部品の場合には、フィーチャーを対称線や対称平面を基準として配置することで、部品寸法等に対する変更が生じても、それらの対称性を保つことが可能となります。デザインで使用される共通部品への寸法付けに対しては基準を作成し、設計者に対して、それらの順守を促してください。

変数に対する名前付け3次元 CADモデルのすべてのフィーチャー寸法には、変数が割り当てられます。この値を変更すれば、寸法も変わります。

異なる寸法を持つ同形部品のファミリーを作成する際はテーブル、関係式、および他の自動化ツールを使用することが可能です。様々な類似部品を設計する企業であれば、この手法を用いることで時間の節約が可能となります。

部品リストを含んだSolidWorks 3次元アセンブリ

フィーチャーの場合と同様に、CADソフトウェアではこれらの変数に対してD1、D2のような名前を自動で割り当てます。区別しやすい名前を与えることは変数においても重要です。たとえば、自動で割り当てられる“D7”のようなランダムな名前をそのまま残すのではなく、シャフトの長さを変える寸法であれば、“shaft length”といった名前に変更することをお薦めします。

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CADモデルの頻繁な再利用が予測される

場合、合致穴や合致面、あるいは製造

よってその位置が変化するフランジ等、

重要な部品フィーチャーに対しては理解

しやすい名前を割り当ててください。

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非グラフィック属性に対する基準デザインには材料とそれらのプロパティ、表面粗さ、メーカー名と部品番号、コスト、設計者名、設計日付等の非幾何学属性が含まれています。これらの情報をCAD部品やアセンブリ内に格納することにより、様々な目的でのアクセスが行えるようになります。

分かりやすい変数名を用いた設計テーブルの例

図面やMRp(Manufacturing Resource planning)システムに対する部品表は、部品モデル内にある非グラフィック属性から自動生成することが可能です。材料プロパティが部品と共に保存されていれば、重さや他の質量プロパティも計算できます。このような製品データを設計段階から入力し、製造までを通して参照できれば、精度の向上と時間の節約が図れます。

様々な種類の部品と共に保存される、このような非グラフィック データに対しても基準を確立してください。たとえば、すべての部品には名前、部品番号、およびリリース日付等を割り当てる必要があるはずです。また、購入部品や外部作成部品に対しては、異なる種類のデータを格納する必要があるかもしれません。

部品番号の割り当て部品番号の割り当ては帳簿付け作業のようなものです。 誰も好まない作業ですが、それを行わないと、生産性に悪影響を及ぼしかねない問題に遭遇することになります。 これを避けるためには、pDMシステムや変更管理システムを用いた、番号の自動割り当てを行います。 番号の自動割り当てにより時間が節約され、事務的な番号割り当ての手間から生じる遅延を最小限に抑えます。

このような製品データを設計段階から入力し、

製造をまでを通して参照できれば、精度の

向上と時間の節約が図れます。

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部品ファミリーの導入前述したとおり、類似する部品をファミリーとして設計すれば時間の節約が行えます。CADソフトウェアを導入する前に、組織においてどの種類の部品の設計を自動化すれば最大限の利益につながるかを考察してください。

スクールバスやトラクタといった複雑な製品設計を完全に自動化することは困難です。しかしながら、これらの複雑なシステムに含まれるシート、ブラケット、板金パネルのような多くのサブアセンブリについては、効果的な自動化を実現することが可能です。多くの企業では生産機械、運搬機械、および各種のツールを含む受注製品等について、自動化できるルーチン設計が多数存在するはずです。

設計者に対して、設計の自動化を図ることが可能な部品やサブアセンブリのファミリー特定を推奨してください。それらのリストを作成し、そこから最大限に得られる利益に基づいて優先順位を割り当てます。

SolidWorksのパートナー 製品であるDriveWorks®のような、設計自動化ソフトウェアを

用いれば、類似する様々な製品やサブアセンブリの自動設計を実現することが可能とな

ります。

フィーチャー ツリーの平坦化複雑な部品は、フィーチャー間の依存度を最小限に抑えた論理構造を用いて設計してください。部品内に多数の親子関係が存在すると、ツリー上位に位置するたった1つのフィーチャー変更により、複数のフィーチャーで問題が発生する可能性があります。

設計者は重要なフィーチャーを最初に作成し、フィレット、面取り、ファスナー穴等の詳細化のためのフィーチャーについては最後に追加することを 学ばなくてはいけません。重要なフィーチャーを互いに関連付けるのでは なく、作図平面に関連付けることで、独立した位置付けを保つことが可能となります。

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製造までを意識したモデル化手法を導入し、

設計者に習得させることは、3次元 CADの

導入時における最も困難な課題の1つとい

えます。しかしながら、製造コストの削減

や変更が容易になる等、いくつもの恩恵が

得られます。

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論理的な構造を持ったモデルは、改良しやすく、製造計画への使用も簡単です。この例

では、左側の大まかな鋳造部品モデルをベースに、右側の切削加工された部品を作成し

ています。参照平面はモデルの上面に構成されています。鋳造部品フィーチャーが切削

フィーチャーやドリル穴フィーチャーの上位にあることが分かります。

途中処理段階のモデルを生成する必要がある場合には、適切に構造化された設計が特に重要となります。例えば、大まかな鋳造部品から始まり、続いて切削や旋盤加工が行われ、最後にドリル穴が開けられるような場合、部品のモデル化はそれらの製造過程毎に分解できるように行う必要があります。

このような手法を導入し、設計者に習熟させることは、3次元 CADの導入時における最も困難な課題の1つといえます。しかしながら、製造コストの削減や変更が容易になる等、いくつもの恩恵が得られます。

リリース前のモデル チェック 紙と鉛筆で図面を描いていた時代には、チェックを行わずに図面を出図する人はいませんでした。今日では、多くの企業が正式なチェック手順なしで3次元モデルをリリースしています。3次元モデルのチェックは多数のレベルで構成されます:

• 完成度、寸法精度、および形状および機能要件の満足度。

• モデル構造。モデル ツリーは可能な限り平坦か?部品内に埋め込まれたフィーチャーや何もない空間でのカットが存在しないか?フィレットや小さい穴が最後に適用されていないか?

• 社内規格への準拠。寸法が適切に適用されているか?

• 必要な非幾何学属性が含まれているか?

• ジオメトリの完全性。製造プロセスや解析プロセスで問題となりうる微小な面や幾何学的に異常な部品が含まれていないか?

自社の製品と社内規格の両方、および適切なCADモデリング プロセスを理解した経験豊かな設計者による、高いレベルのチェックを実施する必要があります。エンジニアはモデルの確認を支援するチェックリストを作成しなくてはいけません。

定型的なチェックは、SolidWorks® Design Checker等のソフトウェアにより、実施することが可能です。これらのソフトウェアでは不適切な単位、規格外の穴サイズ、部品プロパティの欠落、再構築エラーや不完全なスケッチ定義を含む部品等をチェックすることが可能です。

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定型的なチェックは、SolidWorks Design

Checker等のソフトウェアにより、実施するこ

とが可能です。

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構成部品ライブラリの計画設計者に対して、インターネット上に存在するあらゆる部品の利用を許可すると、コスト高になる可能性があります。このような出費は、製品で使用する部品の種類、ブランド、およびサイズ等を制限することにより抑えることが可能です。たとえば、大部分の企業では在庫として持つファスナー部品を利用可能なわずかなサイズに限定できるごとが分かっています。設計者が利用できる部品の選択内容を制限することにより購入量、在庫量、および製品のサポート コストを削減することが可能です。また、部品の大量購入による安価な仕入れも可能となります。

製品で共通に利用される構成部品のライブラリを構築すれば、設計者の時間や労働力を節約できます。大部分のCADソフトウェアはファスナー、形鋼、ばね、ベアリング、ギア スプロケット、およびプーリーのライブラリと共に提供されます。CADソフトウェアの提供企業ではポンプ、ギアボックス、電気コネクタ、フィクスチャ、金型ベース、バルブ等を含む、自社構成部品のオンライン ライブラリも提供しています。たとえばSolidWorks 3D Content Central®(www.3dcontentcentral.com)のサービスがこれにあたります。

通の部品を用いて、それぞれの顧客に合わせた製品を製造しています。

CADモデルは様々なソースから入手することが可能ですが、それぞれの企業では承認済み構成部品の専用ライブラリを作成しなくてはいけません。これらのCADモデルは自社のファイル サーバーに読み取り専用フォーマットを用いて格納するか、pDMシステムを用いて格納する必要があります。部品の重複を避け、それらが社内規格に準拠してモデル化され、必要な属性を含み、適切に分類されている状態を確保するには、構成部品ライブラリの管理担当者を割り当てなくてはいけません。

部品は種類別のフォルダに整理し、設計者が迅速に探せるようにしなくてはいけません。ライブラリに部品を追加する際は、時間を十分にとり、それら の部品が自社の部品モデリング規格に準拠していることを確認してください。 ベンダー名や部品番号だけでなく、必要に応じて企業独自の部品番号やベンダー番号、および他の情報(環境基準への準拠情報等)等、設計者や購買担当者が必要とするユーザー定義プロパティを入力してください。

標準フォーマットからインポートされた部品については、ご使用のCADソフトウェアのネイティブ フォーマットで格納しなくてはいけません。インポートした部品では修正作業が必要となるかもしれません。このような修正はライブラリ管理者により一括して行われるものであり、部品を使用するたびに行うものであってはいけません。ご使用のCADシステムによっては、スマート合致機能も部品に追加し、迅速な部品配置を可能にしてください。

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント12

サポートおよび各種問題解決、新しい材料

や部品の調査、メーカーとのやり取り、

オフサイト データバックアップの提供等、

インターネットはCADのあらゆる側面におい

て不可欠なツールとなっています。

大部分のCADソフトウェアはファスナー、

形鋼、ばね、ベアリング、ギア スプロ

ケット、およびプーリー等の共通部品

ライブラリと共に提供されます。

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ライブラリを早期に構築するためのヒント

CADソフトウェアと共に提供される部品ライブラリを使用するか、あるいはインターネット上の部品モデルをダウンロードし、それらを確認してください。ダウンロードした部品に寸法駆動のフィーチャーが存在しなくても問題はありません。購入部品では寸法変更の必要性は生じません。

SolidWorks 3D ContentCentralでは、機械システム設計に利用可能な何千もの商用部品に対

する3次元モデルを、エンジニアに提供しています。

部品モデルが利用できない場合は、時間の節約が可能となるパラメータ化された部品ファミリーを導入してください。部品モデルでは、設計者が形状、フィット、および機能をチェックするのに十分な詳細化のみを行います。

CADシステムの使用を開始するまでに、ライブラリ分類とファイリング スキームを設計しておいてください。この際、すべての部品をまとめて作成する必要はありません。必要に応じて部品を追加し、ライブラリにチェックインして再利用する方が迅速かつコストもかかりません。

あらゆるライブラリ部品において必要となる情報については、チェックリストを作成し、その利用方法を設計者に周知してください。このチェックリストにより、必要に応じてエンジニアが独自に部品を準備することができます。

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント13

製品で使用する部品の種類、ブランド、

およびサイズ等を制限すれば、費用を

節約できます。

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従業員のトレーニング従業員のトレーニングを行わなかった場合、その代償を後から支払うことになるでしょう。十分なトレーニングを受けていない従業員は、CADシステムの能力を完全に活用できず、修正を必要とするミスが生じるため、結果として生産性を落とします。

CADの代理店等、外部の専門家にトレーニングへの協力を仰ぐことも可能ですが、完全に任せることは適切ではありません。代理店や地域の学校では、従業員に対してスケッチやフィーチャーの作成法等、基本的な内容を教えることは可能ですが、自社の手順やプロセスについて教育することはできません。代理店や大学教授に、自社製品の最適な設計方法を期待してはいけません。トレーニング カリキュラムは自社のニーズに合致する形で開発する必要があります。ベンダーとの協議を通して、自社の計画に合ったトレーニングのアウトラインを開発してください。従業員の使うであろうシステム機能にフォーカスし、不必要な機能については省いてください。たとえば、板金と 形鋼から製品を開発する企業あれば、従業員に対して工業デザイン向けの 高度なサーフェス モデリング機能ついてトレーニングする理由はあまりありません。

トレーニング コースには次のような項目も含まなくてはいけません:

• ファイルの命名、番号付け、格納、およびリリース手順

• ライブラリの場所と構成

• 利用可能なテンプレートとそれらの使い方

設計者は新しいCADシステムでより多くの経験を積むことで、より生産性の高い使用法を身に付けます。このような改善もトレーニング カリキュラムや参照用マテリアルに追加してください。

システムアーキテクチャの計画

CADシステムのアーキテクチャにはコンピュータ ハードウェア、ローカル ネットワーク設定、ソフトウェア設定、データ管理、およびインターネット サービスが含まれます。

ハードウェア要件2次元 CADソフトウェアから3次元 CADソフトウェアにアップグレードする場合は、設計者用ワークステーション、部署内のファイル サーバー、およびネットワーク機器についてもアップグレードを計画しなくてはいけません。

設計者用ワークステーションご使用のソフトウェア メーカーの推奨するプロフェッショナル グレード モデルを選択してください。 ソフトウェア メーカーに対しては、それぞれのエンジニアリング アプリケーションで推奨されるグラフィックス アダプタ、プロセッサの種類、RAM及びメモリ容量を問い合わせてください。

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント14

十分なトレーニングを受けていない

従業員は、CADシステムの能力を完全に

活用できず、修正を必要とするミスが生

じるため、結果として生産性を落とします。

CADシステムのアーキテクチャにはコンピ

ュータ ハードウェア、ローカル ネットワー

ク設定、ソフトウェア設定、データ管理、

およびインターネット サービスが含

まれます。

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部門内ファイル サーバーサーバーにはCADモデルおよび部品ライブラリが格納され、データ管理ソフトウェアが実行されます。CADファイル サーバーにとって最も重要なのは、ディスク容量と信頼性です。サーバーのディスク容量は、そこに接続されるすべてのCADワークステーションのディスク容量と等しくなることがひとつの適切な目安となります。

RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks)ストレージ システムは、冗長性を用いてエンジニアリング データを保護するものです。RAIDは複数のディスクにデータを分配し、ディスク ドライブ障害の影響を最小限に抑えるものであり、その方式によりレベル1から6まであります。1つのドライブが壊れても、情報を失うことはありません。

ネットワーク機器取り扱うファイルのサイズとローカル エリア ネットワークの速度によっては、ネットワーク機器のアップグレードも必要となるかもしれません。使用しているネットワークの容量をテストするには、代表的なサイズの部品とアセンブリをサーバーからクライアントに移動し、その転送速度が許容範囲にあるかを評価します。遅すぎると判断される場合は、ギガビット イーサネット機器を用いることで、手頃な価格で、ファイル サーバーとの大規模モデルのやり取りにおける遅延を解消できます。

オプション設定の標準化組織内に専任のCAD管理者がいる場合には、各ワークステーションにインストールされるオプションを標準化することで、人件費を削減できます。設計者に対して個別のオプション選択を許可すると、サポート要員による問題診断や質問への回答がより難しくなります。ソフトウェアのインストールでアドミニストレーティブ イメージを用いたことがない場合には、インストールの支援を代理店まで問い合わせてください。

データ管理社内にCADソフトウェア利用者が多数いたり、設計者がチームを構成して同じ製品に対する作業を行っているような場合には、pDM(product Data Management)ソフトウェアが必要です。pDMソフトウェアは設計プロセスの流れを制御しながら、ある設計者による他の設計者の作業の上書き等を 防止できる管理システムです。現在のリビジョンの識別や各種の属性やキーワードを用いた最新情報の検索も可能です。

社内にCADソフトウェア利用者が多数いたり、設計者がチームを構成して同じ製品に対する作業を行っているような場合には、pDM(product Data Management)ソフトウェアが必要です。pDMソフトウェアは設計プロセスの流れを制御しながら、ある設計者による他の設計者の作業の上書き等を 防止できる管理システムです。現在のリビジョンの識別や各種の属性やキーワードを用いた最新情報の検索も可能です。

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント15

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上の図は、エンジニアによるより効率的な管理業務の実施を支援する高度なア

プリケーション、SolidWorks enterprise pDMを用いた承認プロセスに対するフロー

ダイアグラムの例です。

pDMソフトウェアを導入する際は、チェックインとファイルの追跡を行う簡単なシステムから開始してください。利用者が基本的なシステムに慣れたところで変更管理、部品表管理、サプライヤによる直接アクセス、あるいはMRp(Manufacturing Resource planning)等の機能を追加します。これらのアプリケーションでは、承認されたデータのみが製造向けにリリースできるようになるため、時間の節約やエラーの削減を行うことが可能となります。

インターネット サービスサポートおよび各種問題解決、新しい材料や部品の調査、メーカーとのやり取り、オフサイト データバックアップの提供等、インターネットはCADのあらゆる側面において不可欠なツールとなっています。いかなるインターネット接続においても、ファイルの破壊やシステム パフォーマンスの低下につながる悪質なソフトウェアから、CADワークステーションのネットワークを保護する必要があります。

ファイアウォール ルーターの導入により内部ネットワークを保護し、それぞれのワークステーションにアンチウィルス ソフトウェアをインストールすることにより、資産を守ってください。Googleのpostiniサービスのような、外部ネットワークで動作する新しい種類のセキュリティ ソフトウェアを用いれば、各種の脅威をそれらがファイアウォールに到達する前に捕獲することも可能です。

CADシステム導入を成功させるための4つのヒント16

pDMソフトウェアは、ある設計者による他の

設計者の作業の上書き等を防止します。現在

のリビジョンの識別や各種の属性やキーワー

ドを用いた最新情報の検索も可能です。

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まとめ

本ドキュメントを読むことに時間を割いて頂いたことで、3次元 CADシステムの導入を成功に導くための1歩を踏み出したことになります。生産性に最も寄与する業務を特定し、ベスト プラクティスを確立し、システムの導入計画とアーキテクチャ計画を十分に練れば、3次元 CADの導入による恩恵を最大限に得ることが可能となります。成功をさらに確実なものとするために、 次の点を心に留めてください:

• 急がないでください。全従業員のCADシステムを一度に新しいシステムに切り替えようとしてはいけません。新しいシステムの導入は、最も生産性の上がる業務から始め、段階的に行ってください。

• 進行状況を評価してください。導入計画には、定量化が可能なオブジェクトを含めてください。それらのゴールが達成されているか否かを確かめま しょう。達成できたゴールについては、その成功体験を他の従業員に啓蒙 してください。達成できなかったゴールについては、なぜシステムが 期待通りに機能しなかったのか、その理由を特定してください。

• 柔軟に対応してください。特定の業務において新しい技術から期待通りの生産性が得られなった場合には、計画内容を練り直し、別の方法を試 みてください。

• 進化を続けてください。成功を得ている大部分の企業では、常にプロセスの改善を図っています。生産性を向上するためにはゴールを設定し、従業員に対して手法改善のための時間を与えてください。

新しいCADシステムは強力な道具となります。これを活用すれば、作業プロセスに革命をもたらし、製品がさらに良いものとなり、ビジネスが成功し、場合によっては世界さえ変わるかもしれません。慎重に計画し、十分な トレーニングを実施し、最善の手法を導き出すことにより、より良い 製品設計を実現してください。

L. Stephen Wolfeはカリフォルニア州サンディエゴ在住のメカニカルエンジニアです。彼は、Computer Aided Design Report、およびproduct Data Management Reportの創立者であり発行人でもあります。過去20年以上に渡り、これらのレポートはCAD業界における「Consumer Reports」の役割を果たしてきました。WolfeはCAD/CAMシステムの選定方法について2冊の本、「the Smart Manager’s Guide to Selecting and purchasing CAD Systems」と「the CAD/CAM Strategic planning Guide」を執筆しています。彼は現在メカニカルエンジニアリングソフトウェア分野のコンサルタントとして、顧客の要件定義の支援、独立した調査の実施、ソフトウェアサプライヤの特定と 交渉、新しいソフトウェアの効率的な導入のサポートなどを行っています。

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