エンジニアリング スクールでは...

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エンジニアリング スクールでは 学べない熱伝導解析 ホワイト ペーパー 流体力学(CFD)の利用は、もはや専門家だけのものではありません。「コンカレント CFD 」と呼ばれる新しいクラスのCFD解析ソフトウェアが、熱伝導解析に大きな有効性 を持つことが証明され、 CFD の専門家なしでも、機械エンジニアがワークステーション で主要な決定を迅速に行えるようになっています。 3D CAD環境に組み込まれたこの直 観的なプロセスによって、設計者は設計段階で製品を最適化でき、幅広い機械設計お よびシステムの分野で製造コストを削減できます。

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エンジニアリング スクールでは 学べない熱伝導解析

ホワイト ペーパー

流体力学(CFD)の利用は、もはや専門家だけのものではありません。「コンカレントCFD」と呼ばれる新しいクラスのCFD解析ソフトウェアが、熱伝導解析に大きな有効性を持つことが証明され、CFD の専門家なしでも、機械エンジニアがワークステーションで主要な決定を迅速に行えるようになっています。3D CAD環境に組み込まれたこの直 観的なプロセスによって、設計者は設計段階で製品を最適化でき、幅広い機械設計およびシステムの分野で製造コストを削減できます。

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流れの熱伝導:エンジニアリング スクールでは学べない熱伝導解析

最近まで、CFD向けの商用ソフトウェアは大体が専門家向けに設計されていて、一般的な使用には向いていませんでした。これらのツールは高価であるだけでなく扱いが難しく、使うのに時間がかかりました。このため、熱伝導などの用途のエンジニアリング解析は、メインストリームの設計開発部門とは別に解析部門の専門家によって行われるのが通例でした。

このため、機械設計者は、設計をテストして検証するために、試作品を作成し、物理テストをする必要がありました。しかし、このような労力のかかる方法は、多くの場合、不完全な結果が生じ、結果の読み取りは個別の箇所に限定されるため、基礎となる熱伝導を完全に把握して特性を知るのが困難でした。

幸いにも、SOLIDWORKS® 3D設計ソフトウェアなどのメインストリームの3D CAD環境のような、熱伝導解析を含む熱流体シミュレーションなど、広範な流れ解析が組み込まれた新しいツールが登場してきました。SOLIDWORKS Flow Simulationのエンジニアリング テクノロジは、特に機械設計エンジニアによる使用を想定しています。CFDの専門家を採用してトレーニングすることも、解析をコンサルタントに依頼することも、いくつもの高額の試作品でテストを行う必要もありません。

企業規模の大小に関わらず、標準的なトレーニングを受けた設計エンジニアであれば、既存の知識をもとに、使い慣れた3D CAD環境で熱伝導解析を行うことができます。SOLIDWORKS Flow Simulationは設計の生産性を向上させ、必要とされる試作品の数を大幅に減らすことが可能です。同じく重要なことは、設計者はより多くの「what-if」シナリオを検討して、設計を完成させることができます。

たしかに、正解を得るためにメッシュやソルバー設定を調整するより高度なCFDの知識が必要となる、非常に要求の厳しい用途は多少でも必ず存在するでしょう。しかし、CFDを限られた専門家による領域だけのものとせず、SOLIDWORKS Flow Simulationのようなツールをメインストリームで利用することで、CFDのトレーニングを受けていない設計エンジニアでも、従来のツール使用による時間の約25~35パーセントで解析が行えるようになるのです。これは、設計の効率性に根本から革新をもたらします。

3D CAD環境と熱伝導解析SOLIDWORKS機械設計とSOLIDWORKS Flow Simulation CFDソフトウェアは、ソリッド モデリングから問題のセットアップ 、実行、結果表示、設計最適化およびレポート作成まで、熱伝導解析のあらゆるフェーズが1つのパッケージにまとめられています。

SOLIDWORKS Flow Simulationにより、設計者は解析に集中でき、製品の流体および固体領域の温度分布を知ることができます。これには、熱伝導、熱対流、流体間または固体の接触による熱伝導、輻射、ジュール熱、「what-if」シナリオによるさらに多くの要素が絡む複雑な物理プロセスの解析が含まれ、エンジニアは3D CADツールで製品のジオメトリを素早く修正して最適化することができます。たとえば図1は、SOLIDWORKS Flow Simulationによるシミュレーション後のオイル クーラーのようすを示しています。

図1:オイル クーラーの熱伝導をSOLIDWORKS Flow Simulation

のシミュレーションで可視化した画像

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SOLIDWORKS Flow Simulationは、3D環境における熱伝導の3つのすべてのモード(伝導、対流、輻射)に対応し、幅広い用途の解析が可能です。一般的な温度解析の用途として、熱交換器、射出成形機器の冷却、食品加工の殺菌、ソーラー タワー、レーザー システム、ブレーキ設計などがありますが、その他多くの用途があります。熱交換器の場合、エンジニアは熱効率を調べるだけでなく、熱交換器内の圧力損失を予測することもできます。これらのパラメータを組み合わせて1つのモデルにすることで、初期段階から優れた製品の設計が可能になります。

SOLIDWORKS Flow Simulationソフトウェアを使用するために設計者が必要とするのは、MCADシステムの知識と製品の物理特性です。SOLIDWORKS Flow Simulationをインストールすると、様々なCFDの流れ解析の実行に必要なすべてのメニューとコマンドがSOLIDWORKSメニュー システムに作成されます。このようにSOLIDWORKSとSOLIDWORKS Flow Simulationが完全統合されているので、極めて使いやすくなりました。実際、ほとんどの設計者は8時間足らずのトレーニングでSOLIDWORKS Flow Simulationを使用できるようになります。

あらゆる熱伝導解析の最初のポイントは、問題の境界条件全般の定義です。SOLIDWORKS Flow Simulationでは、材料特性の選択など、ウィザードの指示に従ってセットアップできます。SOLIDWORKS Flow Simulationを使用することで、設計者は既存の3D CADモデルを解析に利用でき、追加データをエクスポート/インポートする必要はなく、時間と労力を大きく節約できます。3D環境に組み込まれたSOLIDWORKS Flow Simulationでは、新規または既存の3D CAD形状やソリッド モデル情報を使用して、実際の使用条件下での製品シミュレーションが可能です。

モデルが作成されたら、メッシュを作成する必要があります。メッシュの作成は、従来CFDの専門家と機械エンジニアを隔てていたスキルです。SOLIDWORKS Flow Simulationでは、領域やセルを割り当てる面倒な作業に時間をかけることなく、数分で自動的に基本メッシュを作成できます。SOLIDWORKS Flow Simulationで作成されるアダプティブ メッシュは、セル サイズを小さくする(解像度を増す)ことで、図2のようにモデルの複雑な領域のシミュレーション結果の精度を高めます。

図2:四角形アダプティブ メッシュを使用するコンカレントCFD

ツール、SOLIDWORKS Flow

Simulationは、セル サイズを自動調整して、必要な箇所の解像度を高める

ソリッド モデル

基本メッシュ アダプティブ メッシュ:クリティカル領域の小さ

なセル

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高度な熱伝導の課題を解決熱伝導解析では、装置やデバイスの複雑な形状データを取り込むために、計算領域となるメッシュの作成が重要です。メッシュの概念は単純ですが、これは複雑なCFD計算の中核です。デバイス表面は、セルと呼ばれる小さな四角形に変換され、それぞれ、固体と流体のボリュームに分割されて別々に解析されます。その上で、すべてのセルを組み込んだ複合的な結果が作成されます。

SOLIDWORKS Flow Simulationには、製品内の放熱に何が起きているかを可視化する多くの機能があり、エンジニアが、設計の決定を正しく判断できるよう支援します。仮想化機能を使用することで、設計をより徹底して調査することができます。

温度場を調べる方法の1つとして、図3のようにモデル内の平面上の温度分布を示す断面プロットが使用できます。断面プロットの結果を任意の結果パラメータで表示でき、コンター プロット、等値線、またはベクトル表示などの法王でプロットできます。速度の大きさや速度ベクトルなど、あらゆる組み合わせでプロットすることも可能です。断面プロットのほか、特定する面またはモデル全体のサーフェスプロットを自動的に表示することもできます。

熱分布の問題解決は、反復するプロセスです。初期の解析結果を見た後で、ほとんどの設計者はモデルを修正し、異なるシナリオを検討したいと考えます。SOLIDWORKS Flow Simulationでは、このような「what-if」解析を簡単に行えます。設計者は、詳細設計や試作品の作成にとりかかる前に、設計の代案を探り、欠陥を見つけて、製品性能の最適化が行えます。これにより設計エンジニアは、どの設計が成功し、どの設計が成功しそうにないかを素早く簡単に判断することができます。

代案を調べるために、SOLIDWORKS Flow Simulationで、ソリッド モデルのクローンを複数作成するだけで、熱源やその他境界条件などのすべての解析データが自動的に保持されます。エンジニアはソリッド モデルを修正したら、境界条件や材料特性を再度適用することなく、ただちに解析が行えます。

従来のCFDソフトウェアでは、形状を変更するたびに、通常は時間のかかる手作業によるメッシュの再作成が必要になります。これに対し、SOLIDWORKS Flow Simulationソフトウェアは修正された形状を直接操作し、新しいメッシュを自動的に作成して、以前に定義された境界条件で作業できます。このため、変更された形状からソルバーを実行し、結果を調べるまでの手順が大幅に高速化されます。また、さまざまなベント サイズによる解析を複数実行したり、パラメータ スタディを行うことも可能です。このような形で、SOLIDWORKS Flow Simulationにより、解析から得られた知識を素早く簡単に設計の改善に反映させ、反復する設計プロセスを加速させることができます。

図3:LEDランプ内中央部の温度を断面表示

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検証とベリフィケーションSOLIDWORKS Flow Simulationは、設計を検証するための強力な機能を立証するデータを提供しています 新バージョンのSOLIDWORKS Flow Simulationのリリースにあたり、研究開発エンジニアは300件の試験を行いリリースの検証を行っています。この厳格なベリフィケーションデータを基に、SOLIDWORKS Flow Simulationには、すぐに使える26のチュートリアル ベンチマーク サンプルが提供されています。

たとえば、設計者はこれらのベンチマーク サンプルを使用して、風洞内に配置したフィン型ヒートシンクの強制空冷をシミュレーションする良く知られたCFDの熱伝導ベンチマークを検証することができます。

コミュニケーション結果が得られたら、製品エンジニアは他のユーザーに報告する必要があるでしょう。 SOLIDWORKS Flow SimulationはMicrosoft® Word®およびExcel®と完全に統合されているので、エンジニアはレポート文書の作成や、SOLIDWORKS Flow Simulationプロジェクトから画像形式の重要なデータの収集を行うことができます。また、あらゆる解析の最後のステップであるレポート作成は、解析結果をまとめたExcelスプレッドシートとして自動で作成されます。

SOLIDWORKS Flow Simulationを使用することで、製品エンジニアはカスタマイズ レポートを作成できます。レポートは境界条件、材料特性、メッシュ定義や結果プロットを含めて、自動でWord文書に保存されます。このレポートは貴重なプロジェクトの資産となり、通常はデータ管理システムに格納されます。

次のレベルのコミュニケーションとして、すべての関係者や同僚により直感的に理解してもらえるように、シミュレーション結果を3Dで伝達することも可能です。3Dで結果を伝える最善の方法は、SOLIDWORKS 3Dコミュニケーション ツールのeDrawingsです。製品エンジニアがCFDの結果を3Dに保存することで、同僚はあらゆるデバイスで結果を見ることができます。

CFDの結果をeDrawingsで伝達

図4:ヒート シンクの熱抵抗とレイノルズ数を実験データと比較

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実際の設計者の作業とSOLIDWORKS FLOW SIMULATIONの熱伝導解析SOLIDWORKS Flow Simulationにより、設計者は製品の性能と機能の向上に専念できます。 流体力学の専門知識は必要ありません。以下の実例は、SOLIDWORKS Flow Simulationにより設計者が厳しいスケジュールに対応し、期待する高品質を達成すると共にコストの最小化を実現した事例です。

熱シミュレーションによりLED照明の開発を簡素化 あらゆる形の電気照明には、不要な副産物である熱が発生します。白熱灯や蛍光灯の場合、多くのエンジニアが照明器具や取付具から発生する熱を最小にとどめるまたは 転送する方法を開発してきました。しかし、近年登場したLED照明は数と種類が増え続け、新たな別の課題が生まれています。熱の蓄積はLED照明の出力を低下させ、変色の原因となるとともに、部品の耐用期間を短くする原因になります。

LEDシステムの設計では、熱管理が最も重要な点であると言われています。LEDシステムの設計を成功させる鍵は、発生する機器の熱をPN接合から周囲に効率よく伝導させることにあります。その経路には、LEDを取り付けるプリント基板と、エンクロージャの両方が含まれます。

設計者は、ハウジングとシュラウドがLEDからの放熱を効率よく行えるようにする必要があります。設計検証の基準は、製品が新型の照明器具であれ既存設計の代替であれ、当然ながらLED機器の熱挙動を詳しく理解することにあります。

これは、元の機器の熱および冷却特性に合わせることが不可欠であるように、既存の取付具に取り付ける新しいLEDランプを開発する場合も、重要な点です。プロセスは、照明の機械設計から始まります。図5は、この初期設計段階の結果(設計)を示しています。図のシステム(設計)では、一体型コネクタ(黄色)がランプ ハウジングに取り付けられ、そのフィンがヒート シンクの役割をしています。コネクタが接続されるソケットは、さらに熱を分散させる設計により、ランプの冷却システムの一部として機能させることも可能です。しかし、このシステム(設計)の場合、ソケットは単にランプと支持部との接続手段とされています。光源は、メタル コアPCBに取り付けられたパワーLEDです。

図5:3D CADで表現したLED照明

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図 5 で は 、 ラ ン プ の レ ン ズ を 省 略 し て 、 L E D の よ う す を よ り 詳 細 に 表 し て い ま す 。 SOLIDWORKS Flow Simulationは、解析に必要とされる流体領域としてあらゆる内部空間を自動でモデル化します。

このステップは、パイプのように流体が内部を移動する場合には明らかに必要ですが、照明内や周囲の空気の流れを予測するためにも必要になります。次のステップでは、計算領域であるメッシュを作成します。これは、SOLIDWORKS Flow Simulationで自動で作成されます。

この照明のメッシュは、図6のとおりです。図6のセルはサイズが均一ではありません。 LEDの周囲のセルは、ハウジングの周辺部よりもずっと小さくなっています。SOLIDWORKS Flow Simulationのこの機能は、メッシュが必要と思われる箇所の解像度をさらに高くする機能です。次に、計算で使用される動作パラメータと制約となる境界条件を定義する必要があります。

外部の空気温度とLED機器から発生する熱量を指定する必要があります。これは、CFD解析が進むにつれ増加していきます。図7は、CFDの操作により断面表示させた結果を示しています。ランプを構成する物理的要素内の熱分布だけでなく、ランプ外側の対流によるエア フローの向きも表示されます。この例では、形状参照のため3D表示に戻していますが、流れベクトルは2次元の断面表示に基づいたものです。

この図では、表示色が赤(最高温度)から青(最低温度)に変化し、その間でオレンジ色から緑色へとグラデーションで示されています。当然ながら、この課題に対する目的は、提案されている設計案がLED光源から熱を移動して、周囲の環境に安全に伝わるようにすることにあります。図8(次ページ)のもう1つのコンカレントCFDの図は、この重要な問いへの答えを示しています。この図では、埃のように小さい重量のない粒子が空気の流れる経路をたどっています。ここでも、熱分布が色で表示され、色の凡例に値が示されています。流れのパターンとして、青(低温)の空気が下から上に流れ、照明を通過することで青緑に温度が上昇しているのがわかります。対流によって、暖められた空気がランプから上方に移動しています。この分布は、ランプ自体とその他ハウジングの最終設計として十分でしょうか。

図6:ランプ アセンブリの中央におけるメッシュの断面表示 図7:ランプ中央の温度断面図およびランプ周囲の自然対流による流れを示すベクトル図

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これは、エンジニアだけが応えられる問いですが、コンカレントCFDの解析により、十分な判断をするのに必要なデータが揃っています。図9は、もう少し詳しい図です。これは、 上述のLEDとハウジングの「前」の状態に熱勾配を適用した「後」の図です。ここでも凡例により、ハウジング内の温度の値が詳しく示されています。

図8:水平に下向きで取り付けたランプ周囲の流跡が、自然対流によってランプ ハウジングに沿って空気が滑らかに流れる様子を示している ランプ上部に行くにしたがって流れが加速し、熱上昇流が収束している

図9:3D CADモデル上に示された予測表面温度。

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SOLIDWORKS Flow SimulationのようなコンカレントCFDツールを使用した流れ シミュレーションおよび解析は、設計案の改善に不可欠となるでしょう。一連の試作品を作成してテストするよりもはるかにコストがかからず、また、コンカレントCFDに組み込まれた自動化機能によって、最初の評価サイクルの準備が簡単に行え、以後のすべての設計案評価もさらに迅速化できます。設計の真の最適化を達成するまで実験が行える環境です。たとえば、コンカレントCFDを用いることで、ベル状のハウジングの周囲への放熱を最大化するための最適なスロット数とその間の厚みを決定することができます。

SOLIDWORKS FLOW SIMULATIONにより電子部品パッケージングの冷却機構を最適化ラック型電子システムの効果的なパッケージングには、複数のプリント回路基板および複雑な熱伝導の課題が関係するため、POLYRACK Tech-グループのような企業が有する専門技術が必要です。同社は、電子産業における統合パッケージング ソリューションの主要プロバイダです。

開発マネージャBernd Knab氏によると、ある顧客が流体シミュレーションのコンサルティング サービスの提供をPOLYRACK社に打診してきたそうです。「顧客からパッケージング設計の流体シミュレーションの実施を求められたとき、これからの業務において流体解析の機能がますます重要になると思いました」とKnab氏は語ります。「この技術により、設計した構造内の流体挙動が視覚化され、時間の短縮、コストの削減、パフォーマンスの向上が可能になると考えました。」流体解析システムの評価において、POLYRACK社はCAD統合パッケージが望ましいと判断しました。「CADシステム内でシミュレーションを実行するほうがより適切です」とKnab氏は強調します。「他のフォーマットへデータを書き換えるには多くの時間がかかります。さらに、アプリケーション間の移動により作業が重複してしまいます。」POLYRACK社では、SOLIDWORKS Flow Simulation CFD解析ソフトウェアと電子部品冷却モジュールを導入して、電子システムの熱伝導挙動をシミュレーションすることにしました。

SOLIDWORKS Flow Simulationにより、POLYRACK社はパッケージング製品内の熱伝導の挙動を迅速にシミュレーションできます。これらのシミュレーションの90%は、具体的用途に合わせてカスタマイズされたものです。このシミュレーションから得られた情報を使用して、POLYRACK社のエンジニアは冷却パフォーマンスを向上させ、同時に時間短縮とコスト削減を実現することができます。たとえば、10枚の別個の高度集積基板を搭載する筐体で実施した流体シミュレーションでは、4台の大型ファンを使用することにより、当初の設計で使用されていた8台の小型ファンよりもシステムを効果的に冷却できることが分かりました。

「空気の流れの特性がもたらす影響をシミュレーションするSOLIDWORKS Flow Simulationの機能により、大量かつ高額な試作品を作成する代わりに、ソフトウェアで熱伝導の問題に対処することが可能になりました」とKnab氏は説明します。「シミュレーション機能がなければ、10枚の基板を有するこのラック構成の冷却システムを最適化するのに、3ヶ月以上かかっていたかもしれません。SOLIDWORKS Flow Simulationにより、この作業はたった2週間で完了しました。」

熱伝導現象をシミュレーションし、パッケージ設計の小さな変更が冷却システムのパフォーマンスにどのような影響を与えるかを理解することにより、POLYRACK社は革新的なアプローチを開発し、コストのかかる試作品作成サイクルを削減しています。「重要なのは、電子構成部品の周囲に乱流の生じない理想的な量の空気の流れを確保することです」とKnab氏は指摘します。「ラック システムでは、空気の流れの大部分がファンの近くに設置された基板に当たり、その下のラックに設置された基板には十分に当たらないことがしばしばあります。」

「SOLIDWORKS Flow Simulationを使用した結果、ファンの前に穴を開けた金属板を設置し、PCB(プリント回路基板)の位置を変更することになりました。これにより、空気の流れを分散し、システム全体にわたって均一な通気が実現できると分かりました」とKnab氏は続けます。「このアプローチでは、各基板に対する空気の流れの速度と圧力が一定に保たれます。これは、SOLIDWORKS Flow Simulationがなければ試さなかったアプローチであり、本当にすばらしい成果でした。冷却システムの最適化に加えて、SOLIDWORKS Flow Simulationは各プロジェクトから平均2個の試作品を削減するのにも役立っています。」

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SOLIDWORKS Flow SimulationはSOLIDWORKS設計ソフトウェアに統合されているため、POLYRACK社は設計コンフィギュレーションを活用して、ヒート シンクをはじめとするさまざまな構成部品の熱伝導解析を効率的に実行しています。「たとえば、どのオプションが最適かを判断するために、コンフィギュレーションを使用して、5つの異なるヒート シンク設計についてシミュレーションを実行します」とKnab氏は指摘します。「最初に問題を定義するだけで、5つのシミュレーションすべてを一度に実行でき、時間が大幅に短縮されます。」

POLYRACK社は、SOLIDWORKS Flow Simulationツールを導入してから、当初、顧客がわずか1社だった流体シミュレーション コンサルティング業務を増やすことに成功しました。「SOLIDWORKS Flow Simulationは、生産性と効率性を向上させるだけでなく、熱移動の課題への取り組みにも役立っています。SOLIDWORKS Flow Simulationなしでこの課題を解決するのは不可能だったと考えています。」

POLYRACK社ではSOLIDWORKS

Flow Simulationを使用して、ラック型電子システムの設計を最適化。大量かつ高額な試作品の作成なしにパフォーマンスに優れた設計を実現

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火にも水強にも強い防火・防水ハードドライブをSOLIDWORKS FLOW SIMULATIONで設計ioSafe, Inc.は、ノートパソコンから大企業のデータセンターまで、さまざまなコンピュータ向けに災害に強いデータストレージデバイスを開発し、増え続ける個人や企業の重要なデータを簡単に保護する方法を提供したいと考えています。ioSafeのCEO、Robb Moore氏によれば、「データを保護する航空機用ブラックボックス」のような耐災害ハードウェアの開発には、ビジネス面と技術面の両方で大きな課題があるといいます。

同社が直面した技術面での最大の障害は、完全に防火、防水された筐体内で発熱した電子部品を冷却する方法を考案することでした。ioSafeでは、ドライブを約1227℃の炎から保護し、防水性を維持しつつ、電子部品を冷却する排気とファンシステムを搭載したユニークな筐体を開発する必要がありました。

SOLIDWORKSとSOLIDWORKS Flow Simulationを使用することにより、ioSafe社は、設計上避けることのできないこの矛盾を解決して、独自のハードドライブを考案しました。設計はまず、薄くて熱伝導の良い金属を使い、防水のバリアによってハードドライブを覆うところから始まりました。この保護バリアにハードドライブを収めれば、海に投げ込んで数日間放っておいても損傷はありません。ハードドライブから発生する熱は、この防水バリアを通って筐体内の空間に放出されます。

「SOLIDWORKS Flow Simulationは、冷却のための空気の流れと、火災時の外側への蒸気の流れをバランスよく迅速に最適化する理想的なツールです」とMoore氏は強調しています。「試作品を仮想的に作ることで、製品開発コストを15,000ドル削減すると同時に、より最適化された設計を開発することができました。シミュレーションツールを使って気流を最適化できるため、火災や浸水からの保護と、通常動作時の通気確保を両立することができます」

SOLIDWORKSソリューションを使ってioSafe Soloの設計と最適化を行うことにより、開発サイクルが加速し、市場投入までの期間は75%短縮されました。

SOLIDWORKS Flow Simulation

ソフトウェアを使用するioSafe社は、冷却のための空気の流れと、火災時の外部への蒸気の流れをバランスよく最適化。

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コンカレントCFDのメリット コンカレントCFDは、設計エンジニアが製品のライフサイクルを通じてアップフロント流体解析を実行するための革新的テクノロジです。使い慣れた3D CADインタフェースのSOLIDWORKSを使用するコンカレントCFDは、従来の方式や製品と比べて設計時間を一桁短縮するとともに、シミュレーション時間を65~75パーセントも短縮します。ユーザーは製品性能を最適化しながら、時間や資材を無駄にすることなく、試作品や開発コストを削減できます。

従来のCFDでは、まず、モデル 形状をCADシステムからエクスポートします。それから、形状をユーザーのCFDツールに再度インポートし、メッシュを作成、計算し、結果を後処理して、最後に設計チームに報告されます。この作業は通常は専門家の解析グループで行われるか外部に委託されるので、設計チームに何をすべきか説明することが必要です。 しかし、結果が戻る頃には、多くの場合、設計チームの作業が進んでいて、解析モデルは「時機を逸してしまい」、結果に基づいてアクションを取ることが難しくなります。

アップフロントCFDとは、CADとCFDツール間のインタフェースを合理化することでこの状況を改善する試みです。その結果、形状のインポートはより完全な形で行えますが、解析はCADシステムの外で実行されることになります。CADとCFDソフトウェア間の頻繁なファイル移動は、情報の劣化を招く可能性があります。

さらに、これらのアプローチはともに、流れ空間を表現する「キャビティ」の作成が必要になります。従来のCFDメッシュ ツールのほとんどは、ソリッドな領域にメッシュを作成するため、空間領域にはメッシュが作成されません。この制約を避けるため、設計者は流れ空間を表現するソリッド オブジェクトを作成し、ブーリアン演算を使用し、周囲のソリッドとダミー モデルを分離する必要があります。通常これはCADシステムで行い、この反転した流れ空間をCFDシステムに送ってメッシュを作成します。これは明らかに手間のかかるプロセスで、設計と解析にエラーが生じやすくなります。

100%の時間

50%~70%の時間

25%~35%の時間

従来のCFD

アップフロントCFD

コンカレントCFD

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コンカレントCFDでは、まったく異なる操作をします。これは3D CADに組み込まれたCFDです。したがって、作業は設計者が使い慣れたMCAD環境で行われます。目的の製品性能にするために必要な設計変更はMCADモデルに対して直接行われるので、設計を常に解析に対して最新の状態にできます。SOLIDWORKS Flow Simulationでは解析のためのモデルの準備が非常に簡単です。流体(空の)領域を表す追加のソリッド部品を作成する必要がある従来のCFDプログラムと異なり、SOLIDWORKS Flow SimulationはMCAD形状の内部と外部の流れを自動で識別して、自動で流体領域を作成します。この結果、エンジニアは自分のプロジェクトに集中することができ、追加のジオメトリをCADシステムで作成しなくてもよいため、混乱を最小にとどめて、時間と労力を節約できます。

SOLIDWORKS SIMULATIONとSOLIDWORKS FLOW SIMULATIONによる一方向FSI(流体構造連成解析)周囲の流体の流れによって変形する構造物という相互作用の解析は流体構造連成解析(FSI)と呼ばれ、多くのエンジニアリング システムの設計において重要な考慮事項です。多くの構造設計を成功させるには、製品開発プロセスのできるだけ早い段階で、設計の熱および機械的な応答を詳しく把握する必要があります。温度に依存する材料特性、温度勾配と熱による変形は、製品を成功させるために重要な設計の考慮事項です。

多くの動作不良や性能の問題は、熱に関連する問題が原因です。実際、熱は変形や応力を生じさせ、機械構造に直接影響を与えます。

たとえば、熱交換器や電子部品の設計では、熱が機器全体の構造性能に影響することから、温度変化を考慮した構造解析を行う必要があります。このようなアプローチを熱応力解析と呼びます。これは、熱応力や熱膨張を評価するため、熱温度の影響を考慮した静解析です。

SOLIDWORKS Simulationは完全に3D CADに組み込まれたソリューションで、製品エンジニアはSOLIDWORKS SimulationとSOLIDWORKS Flow Simulationでシームレスに熱応力解析が行えます。

設計者は応力解析を行い、力、圧力、または温度による部品やアセンブリの応答を知ることができます。SOLIDWORKS Flow Simulationの熱流体解析スタディから荷重をインポートすることで、マルチフィジックス解析も行えます。

この場合、モデルの壁の熱分布が自動で機械モデルに適用され、応力解析が実行されて、結果として熱応力と変形がわかります。

SOLIDWORKS SimulationとSOLIDWORKS Flow SimulationがSOLIDWORKS 3D CADに完全統合されることで、データの移動、変換、再作成が不要で、データの精度が維持されます。熱解析の結果は、操作を行うことなく構造解析モデルにシームレスに適用され、最高レベルの精度が得られます。

SOLIDWORKS Flow Simulationによる温度分布 (流体および固体)

SOLIDWORKS SimulationによるVon Mises応力分布

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ダッソー・システムズの3Dエクスペリエンス・プラットフォームでは、12の業界を対象に各ブランド製品を強力に統合し、各業界で必要とされるさまざまなインダストリー・ソリューション・エクスペリエンスを提供しています。ダッソー・システムズは、3Dエクスペリエンス企業として、企業や個人にバーチャル・ユニバースを提供することで、持続可能なイノベーションを提唱します。世界をリードするダッソー・システムズのソリューション群は製品設計、生産、保守に変革をもたらしています。ダッソー・システムズのコラボレーティブ・ソリューションはソーシャル・イノベーションを促進し、現実世界をより良いものとするためにバーチャル世界の可能性を押し広げています。ダッソー・システムズ・グループは140カ国以上、あらゆる規模、業種の約19万社のお客様に価値を提供しています。より詳細な情報は、www.3ds.com (英語)、www.3ds.com/ja (日本語)をご参照ください。

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あらゆる製品エンジニア向けのCFDエンジニアリングにおける熱伝導効果は、液体と周辺の固体材料との熱伝導および熱対流または輻射といった一連の複雑な物理的プロセスによって決定されます。実世界の形状は大変複雑ですが、CFDによる正確な予測をすることは優れた製品パフォーマンスを実現する上で不可欠であり、これを手作業で予測または計算することは極めて困難です。

SOLIDWORKS Flow Simulationは、ホット スポットを特定し、熱効率を数値化することで、電子部品冷却メカニズムをはじめオーブンや熱交換器といった熱伝導装置の熱効率の均一性を考慮できます。また、SOLIDWORKS Flow Simulationは製品開発プロセスと並行して機能するため、従来のCFDツールにありがちな、形状とメッシュの不整合による問題も発生しません。

20年の歴史を持つSOLIDWORKS Flow Simulationのコンカレント エンジニアリング アプローチにより、すべての製品エンジニアは自分の設計が現実の世界でどう機能するかを評価でき、設計と並行して解析を実行できるため、重要な設計を、自信を持って決断できます。

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