米国法における会社の -...

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米国法における会社の パートナーシップ参加 市 川 兼 Ⅰ序 企業結合の法的仕組を経済的構造との関連において,探究しようと思う。企 業結合の法規制ほ.,今後の企業法,経済法の重要課題であると思われる。この 課題紅とって1′経済法(独禁法)的研究ほ不可欠である。しかし,当面は会社 法的側面からの探究を中心にしようと思う。そのためまず米国法に.おける会社 (以下特に,断わらない限りcorporationを意味する)のパ・qトナーシップ参加 を戟上げる。いうまでもなく,米国は独占資本主義が最も典型的紅成立した, 世界最大の資本主義国であり,企業結合の法規制に.ついて豊富な経験を有する 国である。この課題に.ついての米国法の検討を1つの辛がかりとして,商法第 55条の立法論的検討を試みるつもりである。 既に一個の経済単位として確立した企業-その米国における基本的な法的 形態が会社と考えられる-【が,結合する方法として-,パーートナーシップほ, 簡易な方法,すなわち契約による方法であり,それが個人間での共同企業の初 歩的方法であると同じく,企業間の合同またほ共同の初歩的方法でもある。米 国コモン・ロ・一上,営利を目的とする共同企業ほ,会社または.リミテッド・パ -トナ-シップとしての,制定法上の要件を備えないかぎり,パートナーシッ (1) プとされ,パ・-・トトーシップ法の適用を受ける。 最近,土建業などを始めとして,国際的および国内的な合弁事業が増加して いる。合弁事業が契約をもって行なわれるとき,米国ではそれにパ⊥十ナ-レ (1)坪田潤二郎「合弁事業の法的プランニング」国際商事法務3巻309(1975),CRANE &BROMBERG,LAW OF PARrNERS重工fP158以下参照。 OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

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米国法における会社の

パートナーシップ参加

市 川 兼

Ⅰ序

企業結合の法的仕組を経済的構造との関連において,探究しようと思う。企

業結合の法規制ほ.,今後の企業法,経済法の重要課題であると思われる。この

課題紅とって1′経済法(独禁法)的研究ほ不可欠である。しかし,当面は会社

法的側面からの探究を中心にしようと思う。そのためまず米国法に.おける会社

(以下特に,断わらない限りcorporationを意味する)のパ・qトナーシップ参加

を戟上げる。いうまでもなく,米国は独占資本主義が最も典型的紅成立した,

世界最大の資本主義国であり,企業結合の法規制に.ついて豊富な経験を有する

国である。この課題に.ついての米国法の検討を1つの辛がかりとして,商法第

55条の立法論的検討を試みるつもりである。

既に一個の経済単位として確立した企業-その米国における基本的な法的

形態が会社と考えられる-【が,結合する方法として-,パーートナーシップほ,

簡易な方法,すなわち契約による方法であり,それが個人間での共同企業の初

歩的方法であると同じく,企業間の合同またほ共同の初歩的方法でもある。米

国コモン・ロ・一上,営利を目的とする共同企業ほ,会社または.リミテッド・パ

-トナ-シップとしての,制定法上の要件を備えないかぎり,パートナーシッ (1)

プとされ,パ・-・トトーシップ法の適用を受ける。

最近,土建業などを始めとして,国際的および国内的な合弁事業が増加して

いる。合弁事業が契約をもって行なわれるとき,米国ではそれにパ⊥十ナ-レ

(1)坪田潤二郎「合弁事業の法的プランニング」国際商事法務3巻309(1975),CRANE

&BROMBERG,LAW OF PARrNERS重工fP158以下参照。

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第49巻 第5・6号 ー・6β -・ 516

‘ップ法が適用される。だが,合弁事業ほ多くの場合,当事者間にまず合弁契約

が締結され,この契約に基づいて合弁事業を遂行する手段として,合弁会社が

設立される。そして合弁会社設立後も当事者の関係を定めるものとして了,しば

しば合弁契約が合弁会社と並立して存続する。このような場合の合弁契約に.対

(2) しても,米国ではパ-トナーシップ法が通用される。 米国でほ企業間の共同活動の増加紅つれて,会社のパ一十ナー」ンッブ参加問

(3)

題の検討が,ますます重要となっている。

ⅠⅠ一般原則(GeneralRule)

①一般原則とその根拠

コモンエロー上,会社ほ.,制定法またはチャーターによって授権されないか く4)

ぎり,パ-トナ-となることはできなV (5)

スとして:引用されるのが,Whittenton Mills v.Uptonである。この事件の

概要を紹介する。

申立(petition)の概要は次のとラリである。

先にWilliam Masonが,パートナ-としての製造会社(manufacturing cor-

poration)とMason自身紅対し,支払不能訴訟手続(proceedingSininsolvency)

(2)参照,ハソタ-・へイル「米国のパ-トナー-レップ」国際商事法務3巻78(1975),

坪田前掲注(り309-308。 (3)TheCommitteeon Partnerships and UnincorporatedBusinessAssociations

of the Section of Corpocation Banking and Business Law,MayaCorporation be a Partne‡?17BusrNESS LAWYER514(1962)。

(4)MoRAWETZE,PRIVATE CoRPORAIION § 421(1884),BALLANTINE,ON CoRPORATIONS §87(1946),STEVENS,ON CoRPORATIONS § 57(1949),H・ HENN,LAW OF CoRPORATIONS351-352(1970),6FLETCHER,CYCLOPEDIA CoRPORATIONS §2520(Perm.1950),4T王王OMPSON,ONCoRPORATIONS S2421 (1927),W小 E。Shipley,Annotation,Corporation,s Power to Enterinto Partnership orJoint Venture,60AL‖Rい2d919(1958),Note,Power toC?rpO- rations to Become Member of Partnership,25TuLL.L.Rev.272(1951), ModelBus.、Corp.,Act Ann.2d §4(p)(1971),19Am.Jur.2d §′1047。なお この問題に関する判例については,FIEJTCHERおよびSbipleyが詳しい。

(5)76Mass.582(1858)。なおこの判決の一・部ほ後掲20に.おいても引用している。

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米国法に.おける会社のパートナーシップ参加 -6-9-- 517

を申立てた。その事続において任命された破産管財人(assigneeS)が,会社

財産に.干渉するのを止めさせるため,会社がその手続の取消を申立てこた。

事実の概要は次のとうりである。

TheWhittenton Mills CorIpOr・ationほ,綿製品を製造する目的のため,1836

年9月に.設立された。1845年6月にWhittenton Mi】1sとWi11iamMasonほ, (8)

William Mason&Companyの名の下軋,鋳物工場(foundry)と機械販売店

(machine shop)を共同経営(joint business)することに同意した。Mason

は技術と特許権のみを提供し,Whittenton Millsが必要な資金のすぺてを前

貸した。利潤は,Maspnに.認められた給料と特許料を差し引いたのち,両者

に平等K.分配されlた。Whittenton Millsに.とって,この鋳物工場と機械販売

店を支配し,Masonの特許権を利用できることほ,おおいに便宜であった。

や Whittenton Millsほ,その必要とする機械類の大部分をWilliam Mason&

Companyから購入した。William Mason&Company ほ,そのはかにも大

意の機械類を製造し,他の者紅売却した。1852年まで,William Maso王l&

Companyほ非常に順調であり,パートナqとしてのWhittenton MillsにL,

毎年多くの利益を配当した。1852年まで,WiⅢaJilMason&Companyは,

綿工場向け機械類のみを製造していたが,その年に.機関凍(locomotive engine)

の製造を始め■た。William Mason&Companyほ,1-852年以後欠損を生じ,

1857年紅支払不能(insolvency)となった。

判決の要点は次のとうりである。

「このチャータ-(The Whittenton Mills Corporationを設立するcharter

‥‥‥‥牒川注)が創立するような団体(society)とパートナ-シップという団体

との間紅は,ひとつの明白かつ重要な差異が存在する。会社の行為ほ,値按投

票(direct vote)/によるのであれ,その目的のため授権された代理人に,よるの

であれ,団体の集合意思(collectedwi11)の表明である。そのようなものとし

(6)companyという言葉ほ,一・般的な用法によれほ,法人格の有無に関係なく,団体 (association)を意味するものとして,使われる。PoLLOX,ONPARTふERSHIP26

(1952)。大塚市助「英・米パ-トナーシップ法論序説」国学院法学9巻1号17(昭和

46年)。

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第49巻 第5・6号 トー 7()-一、 518

ての会社のメンバ-・ほ団体を拘束できない。パ-トナ・-シップにおいては,各

々のメンバ」-ほ本人(principal)として団体を拘束する。もし会社が個人とパ

-トナーシップを形成できるとすれば,2人の本人,つまり各々が団体事業の

範囲内において,団体財産の処分さえも含めて,その事業を経営する十分な授

(7) 姪を有する,法人と自然人が存在するであろう。」 「改訂制定法策38号(chapter)第2条(section)は次のように規定してい

る,あらゆるそ・のような製造会社の事業は,その社長(president)と取締役

(directors),および会社がそ・の目的のため特に授権した他の役員(officers)

と代理人(a:gentSandfactors)紅よって:,経営され,指醸されるべきである。

パ、-トナ--シップが存在する場合,本条の規定が実行されえない,ということ

は明らかである。パ-トナ・」-ほ会社の事業を経営し指揮すること,およ.び彼の

行為に.よって会社を拘束することができる。そうするさいに,彼は.,会社から

受けた授権によって会社の役員もしくは代理人として行為しているのではな

くて,全員が平等であり,各々がそ・の個人的な意思紅よる行為に.よって団体 (8)

(society)を拘束できる,そのような団体の本人として行為している0」

「はんとう紅,製造会社の規制紅対する,我制定法全体の趣旨,我議会の

確立した政策は,次のとうりである,会社.はその事業を独立的かつ排他的に

(separately and excl11Sively)経営すべきであり,・一・定の権限咋.株主に・、よっ

て,他の権限ほ,会社の使用人(serVant$)であり,会社の名払おいてそのた

めに行為する,役員によって行使されるべきである。そして,会社もしくはそ

の任命した役員がその権限を奪われるような,あるいは,会社のフランチャイ

ズがその事業を指揮し支配する平等の権限をもつパートナ一にゆだねられるよ (9

うな,契約の形成もしくほ.関係への参加はその政策と完全に.矛盾する。」

以上のような理由から,パ-トナ1-シップ参加契約は,会社がそのチヤ-タ

ーで明示的または黙示的に(expr・eSSly or byimplication)与えられた権能

(7)前掲注(5)595。 (8)同595-596。

(9)同597。

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米国法における会社のパートナ-シップ参加 -7ユー 519

(10)

(powers)を越えており,違法かつ無効である(illegaland void)とされ, (11)

全株主の同意によっても有効にはならないとされた。したがって,Masonの申

立紅基づく支払不能訴訟手続は,Whittenton Millsの財産に影響する限り軋

(12) おいて取消されねばならないとされた。 会社がパ-トナーシップに参加できないことの根拠として,一・般に次のよう

なことがいわれて‥いる。たとえば,MoRAWELrZによると「会社が,他のカン㌧ペ

ニイもしくほ個人とのパー・トナ-シップに.参加する権限を黙示的に与えられて

いない,ということほ明らか軋思われる。パ-トナ-シップの存在は,正規紅

任命された役員に.よる会社の経営に干渉するのみならず,株主自身の権限を侵

害し,カムバニイの支配しない代理人による新たな責任にカンパニイを巻き込

(13) む。」。また,次のように.述べるものもある。パーートナノーは会社を拘束する極限を 有し,かくして,取締役会に.排他的紅ゆだねられている会社事業の経営に関与

(14)

する。パー11ナー・Vップへの参加において,会社の主体性(identity)が失わ

れるかまたほ他のものと融合される,そして事業指揮ほその設立法によって規 (15)

足された者以外の事におかれる。そして総括的に.次のように.いわれる。パ-・ト

ナーシップ合意ほ,制定法によって会社取締役紅与えられた経営権限を会社取

(1¢) 締役から奪い,株主を予期していない危険に服せしめる。 要するに,会社のパートナーシップ参加を禁止する主な理由として,次の4

つがあげられる。すなわち,(1)会社とパ-・トナ-シップほ佐賀上両立しな

い。(2)会社ほその事業を独立的かつ排他的に経営すべきである。会社のパ

-トナ-レップ参加は,(3)制定法が経営梅限行使者と定めた取締役から経営

(10)同598。

(11)同600。

(12)同所。

(13)MoRAWET・ZE,前掲注(4)§421。 (14)SrEVENS,前掲注(4)§57。 (ユ5)F王.ErC王王ER,前掲注(4)§2520。

(16)ModelBus・Corp.Act Ann.2d §4(p)TT2,19 Am.Jur。2d §1047,R. JENNINGS&N.LATTIN,CASES AND MATERIALS ON CoRPORAでIONS213-214

(1959),Sbipley,前掲注(4)919,927,930。

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第49巻 第5・6号 520 - 72 -

権限を奪い,(.4)株主を予期しない危険に服せしめる。これら4つの理由の

うち,より根本的な理由はどれであろうか。株主の予期しない危険は,会社の

パ・-トナ-」/ップ参加との関連でとりあげられる限/り,会社がその目的の範開

外の事業紅参加することにあるのではなく,株主の支配していないパ-トナ-

の行為によって会社が拘束されることに.ある。これはつまり,株主の選出した

正規の取締役以外の者が経営極限をもつことを問題としているのである。とす

れば,こ.の理由は,会社のパ-トナ-レップ参加は制定法が権限行使者と定め

た取締役から経営権限を奪う,という(3)の理由に吸収される。ところでこの

(3)の理由は,パートナ-・が会社経営紅干渉するこ.とを問題としているのであ

るから,結局のところ,会社ほその事喪を独立的かつ排他的紅(separately

andexclusively)経営すべきである,とする(2)の理由隼,すなわち,会社

の独立性を確保しようとする立法政策紅,吸収される。したがって.,】・般原則

の根本的理由ほ,会社とパ-トナ・-シップとが性質上両立しえない,とする

(1)の性質上の理由と,会社の独立性を確保しようとする(2)の立法政策上の

理由との2つ紅なるものと思われる。

④・山・般原則の適用除外

会社によってなされた合意が,会社役員から会社事業の指揮(dif・eCtion)を (17)

奪うものでないとすれば,その合意は問題ない。したがって.,会社は,パート

ナ・L-シップ事業の全経営が会社にまかされている場合には,パーートナーシップ (1畠) (19)

に参加できる。その1例はMarkowitzv.GreenwallTheatIicalCircuit Co.

である。本件払おいて.Gi11判事は,すべての権威が一・般原則に周志している

ことを認めるが,しかし・一・般原則は正規の(0Ⅰ・dina叩)パ′-トナ-シップに関

するものであり,相互代理(mutualagency)が存存する場合のものであると

(17)FIEIC耶R,前掲注(4)§2520,はぼ同旨STEVENS,前掲注(4)§57,Note,

前掲注(4)275。 (18)FLETCHER,前掲注(4)§2520,BALLANⅠINE,前掲注(4)§87,STEVENS,

前掲注(4)§57。 (19)ナ5S.W.74(Tex.Civ.App.1903)。

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米国法における会社のパーートナーシ ップ参加 -7」ヲ¶ 521

(20)

する。そして,他のパートナL-が匿名パ-トナー(silent or secret partner)

であり,パートナーーレップのため行為する権限を与えられていない場合には.,

そのようなパ・-トナーシップが,会社の側から,一-・般原則によって禁止されな

いことほ明らかであるとして-,損益分配の合意ほパートナ-シップであり,会 (21)(22)

社を拘束しないとの主張をしりぞけている。

会社ほ特定目的のための・一・時的なパノートナ-シップである汐ヨイント。グェ (23) (餌)

ンチ・ヤー・に参加できる。なぜならば,ジ ョイント・ヴュンチヤ-ほ,一・般に, (25)

会社事業に関する権限の不当な放棄(undueabdication)を含まない。・その1 (26)

例はBates v.Coronado Beach Co.である。本件に.おいて,会社と個人との

間の契約であって,特定の土地を共同で購入し処分する契約が有効かどうか争

われた。裁判所ほ次のように述べた。「会社設立目的を瞳接もしくほ間接に遂行

する効果を有し,事業(Venture)の利益と損失が両当事者庭平等に生じるt

とを内容とする契約を,会社が個人と締結するのを排除する法原則は存しな (27)

い。」。つまり,会社が,経営権限の不当な放棄を含まない限り,その設立月的を

(20)同77・一78。

(2ユ)同78~79。

(22)西FデイツのGmbH&Co.あるいはGhlbH&Co…KG.は,有限会社が唯一・の 無限茸任社員である合資会社を指すとすれば,それと同様のものは,こ.の判例の趣旨 から考えると,米国の-L般原則の下でも,合法となる。G叩bH&Co.については, 増田政章「西ドイツにおける有浪合資会社について」比較法政(近大)8号146(1976) および泉田栄一イGmbH&Coル とわが商法上の問題点」富大経済論集21巻2号41 (1975)参照。

(23)joint ventureという言葉は,joint adventure,ioint enterprise,ioint trade, joint business,Sindicate,pOOl等と同意義に用いられることもあり,また,しば しば,joint venture co声pOration,すなわら2つ以上の会社が共同出資して設立し た会社という意味にも用いられるが,ここでは,unincorpoIated.ioint ventureを

意味する。参風,抜山映子「汐ヨイント・ヴェンチャーの法的性格」ジ′エリスト369 号(1967.5.1)112,大塚前掲注(6)27。

(24)BAI・LANTINE,前掲注(4)§87,FLELTL℃frER,前掲注(4)§2520,Shipley,前 掲注(4)936。

(25)BAエ1LANTINE,前掲注(4)§87。

(26)109Cal.160,41P.855(1895)。 (27)41P.856。本件は,会社がパ-トナ・-シップ事業の全権限を有する場合としてしば

しば引用される(BALI.ANTINE,前掲注(4)§87,FLETCXER,前掲注(4)§2520,

ModelBus.Corp.Act Ann.2d §4(p)W4.01)。しかし土地購入は個人K.よって 行なわれでおり,Sbipley,前掲注(4)938のように,汐ヨイント・・グエンデヤ-の場

合と解すべきと思われる。

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第49巻 第5・6号 ・- 74・- 522

遂行するため,他者と共同事業を行う契約を締結することは,契約自由原則の

範囲内というこ.とに.なる。

会社ほ汐ヨイント・ヴェンチャー・に参加できるけれども,その参加紅よっ

て,その資産の重要部分(substantialpart)の排他的支配(exclusive control)

が他者にゆだねられることとなる場合には,会社はそのようなジョイント・グ (28)

ェンチヤ一に参加できない。また会社がその設立目的の範周内紅ない事業を遂 (29)

行するため,ジョイント。グェYチヤ一に・参加するこ・とほ認められない。

会社はリミテッド・パートナ-となることができるのであろうか。 Pof・t (き0)

Arthur Trust Co.v.Muldrowは,The Unform LimitedPa!tnerShipAct (81)

の下で,直接この問題を取扱った恐らく唯一の判決である。本件ほ,信託設定

者がジェ.ネラル・パートナ-・となり,受託会社がリミ.テッド。パ-トナーとし

て信託資産を出資する,リミテッド・パ一トナー・シップ設立の合法性を取扱っ

(32) た。裁判所は次のように述べた。「会社のパートナ・-シップ参加を禁止する根拠 は本件にあてほまらない,なぜならば,リミテッド・パー・トナ-シップのメン

バ-紅よつて行使される唯一一・の支配は,信託資産に.対するものである。会社資

産ほふれられないままでありら 会社自身の役員および取締役の管理と支配の下

(3$) にある。」。なお本件から「制定法の下で受託者として行為する合法的資格を有 する会社朋,信託目的遂行の太め組織され允リミテッド・パーートナ-シップに

(34)

参加できる。」と言いうるであろう。しかし本件が会社リミテッド・パ」-トナー

是認の一般的先例(generalprecedent)となるかどうかは疑問である。なぜ

なら,本件は,会社パ

(28)Brand v.Fernandez,91S.W.933,938-939(Tex.Civ・App・1935)。参照,

Shipley’,前掲注(4)939,FLErC王王ER,前掲注(4)§2520。

(29)FIEICI柑R,前掲注(4)§2520。

(30)155Tex.612,291S.W..2d312,60A.L.R.2d913(1956). (31)Richerd Singer,BusinessAssociation-UniformPartnershipAcトCorporation

as a PaI・tneI・,55Micb.L.Revn588,589(1957)。 (32)60Aユ.R.2d915。 (33)同916。

(34)同914,参照,S最pley,前掲注(4)929,ModelBus・Corp巾ActAnn・2d§4

(p)V4.01。

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米国法における会社のパ」-トナーシップ参加 …75- 523

(35)

易に.説明できる。いな,次のように述べるものもある。「仮紅会社が,実際紅・ま

たは効果紅おいて,リミテッド・パ-トナ・-であったとすれば,会社のパ・-ト

ナ-シップ参加に.対する通常の反対理由が,特に強くあてはまるであろう。パ

ートナ-シップ活動に伴う会社の全責任は制限されているが一一・方,会社ほパ・- (36)

トナⅦ」/ツプ経営活動に参加する全権限を引き渡す。」。 (37)

Strum v.Ulrichに.おいて,石油とガスの開発を目的とする会社の,石油開

発を目的とするマイエソグ・パー・トナ・⊥シップ参加ほ有効とされた。故判所ほ

マイニング・パートナ-・シップが正規の(or・dinafy)パー・トナ-シップと異な

る点として次のことをあげる。「パ-・トナ・-の死亡もしくは破産はパ・-トナ・-

シップを終結させない。パ・一トナ・-ほ彼の持分の全部または・一部を仲間の同意

なしにかつパ鵬・トナL-・シップを終結することなしに譲渡できる。持分の譲受人

ほ譲渡された持分の範囲で,その有効時(effectivedate)から,パ-トナ・-

となる。 パートナ-の他者を拘束する権限ほ,パ・-トナーーシップの目的

である鉱業(mining ventuIe)の開発に億接関係ある行為に厳密に・限られて

(38) いる。」。以上のようにマイエソグ。パ-トデ・-・レップの特徴を述べたのち,裁 判所は次のように.述べる。「会社機構の性質上,会社がマイニング・パ」-け

-シップあるいほその種のジョイント・アドプェンチヤ-のメンバ-・となるこ

とを阻止するものはなに.もない。 マイ・ニソグ・パ-トナ-の持分の譲渡

がパ一-トナ-・シップを終結させないこと,およびその理論がいったん始められ

た鉱業開発の妨害排除に・根拠づけられて.いることを考えたとき,もし(鉱業能

力(mini喝pOWe‡S)卑有する)会社がそのような持分を取得できず,またそ

のような性質の開発に加わることができないとすれば,それほ.,持分を譲渡す

(39) るパ-け-の自由と鱒業開発とに対する不幸な抑制となるであろう0」0しか

しながら,マイニング・パ-トナ-シップにおいても,ジェネラル・バーートナ

(35)SingeI,前掲注(31)590。

(36)TheCommittee,前掲注(3)515。 (37)10F.2d9(8tb Ci工・.1925)。

(38)同12。なお,miningpartnershipの特徴紅ついては参R軋へイル前掲注(2)78o

(39)前掲注(37)13。

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第49巻 第5・6号 524 ー 76-

ー・シップに.おけると同じく,パ-トナーほパ-トナーシップの名において行為

することに.よっで他者を拘束できる。かくして,会社のパ-トナ・-シップ参加

を禁止する主な根拠,すなおち,経営支配の喪失は,マイニソグ・パ-トナー

シップの場合紅も起りうる。鉱業会社のかかる特権是認の根拠ほ,鉱業の事業

(40) 〈41) 的性質もさりながら,鉱業に対する経済政策的考慮の優先にある,と思われる。 (42)

Al1en&Sons v.Woonscket Co.において,いつでも解約可能なパ・-ト

ナーシップへの参加が,会社の権限内とされた。「被告ほパ√-トナ・-シップを形

成する権利を有しない,会社ほそ・の正当な役鼠によってその事業を行なわねば

ならず,その事共に.その支配の及ばないような方法で権限を委任(delegate)

(4き) できない。」との被告の主張に対し,裁判所ほ次のよう紅述べた。「もしそのパ ートナーシップが一・定期間のためのものであったとすれほ,被告ほそのような

契約をなす権利を有しないと,主張されることもできたであろう。しかしそれ

ほ,当事者のいずれによってこもいつでも終結できる,任意紅解散可能なパー⊥ト

ナL-Vツプ(partnershipatwi11)に・すぎない。それゆえ,被告ほPhillipAllen

&Sons(パ-・トナー 市川注)をもっぱら代理人として使う場合より以

上に事業の支配を手放してはいない,代理人を使う権利は全く否認されえな (4塵)

い。」。

⑥・一般原則の背景

一般原則が判例払おいて確立したのほ,19世紀中頃であり,その経済的歴史 (・15)

的背景紅は,他会社株式所有禁止やウルトラ・プァイレス・ルール全般に通じ

(40)鉱業の事業的性質がジョイント・ヴェンチャー的共同企業に適していることについ

¢ ては参腰,ア-レンス&デービス「オー・ストラリアにおける合弁事業」国際商事法務

4巻395(1976)。 (41)参周,Note,The Corporation as a Partner,1955、Wash.U.L・Q・76,81

(1955)。 (42)11R.Ⅰ.288(1876)。

(43)同301。

(44)同所。 (45)米国コモン・ロ一紅おける会社の他会社株式所有禁止原則については参照,BAL・-

L,ANTINE,前掲注(4)§88,ModelBus.Corp・Act Ann・2d §4(g),NoYES, A TREATISE ONrHE LAW OFINIERCORPORATE RELALTIONS,2d §264(1909), HENN,LAW OF CoRPORATIONS349(1970),19Am.Jur.2d§1006,Freedland,

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米国法に.おける会社のパートナーシップ参加 -77- 525

ると同じものがある,と思われる。すなわち,当時,営利事業ほ,主として個

人企業形腰もしくはパートナ一-シップ形態で営まれており,会社ほ比較的少数 (46)

かつ小規模であり,営利事業の観織形態としてその当否が疑問とされていた。 (47)

それのみならず,会社は非常な恐怖の念でもって見られてこいた。すなわち,会

社は,それと取引する個人や小さい法人格なきグループを圧倒することを可能

とするような資産の集中をもたらすだろう。会社は個人商人を破滅させるの紅

十分な資金を競争紅投入するだろう。会社ほ,私的経済力に対する市場のコン (48)

トロールを破壊するであろう。このような大衆と議会の会社に対する恐怖心

が,会社の能力のあるゆる黙示的拡大を禁止.したり,あるいほ会社の独立性を

確保しようとするパブリック・ポリシイを作り出したものと思われる。その-

環として:,会社のパーーナナ・-シップ参加を能力外とする一・般原則が存在したと

思われる。

この叫・般原則は,産業革命の初期までほ,パ{トナ一間の人間関係もあって,

特に.裁判上問題とされることがなかったもの,と思われる。しかし産業革命の

進展に/つれての重工業の発達と共に,より大なる資本とより高度の専門的技能

が必要とされ始めると,・一・般原則が必然的紅裁判所で問題となる。この意味紅

おいて,リ・qディング・ケースとされるWhittenton Mills v.Uptonにお

る.パートナ-∵ンップが,当初,綿工場用機械製造をおこなっており,のち,ア

History of Holding Company Legislationin New York,24Ford・L・Rev・ 369.(1955),,.C.BoNBRIGHT & G.C・MEANS,THE HoLDING CoMPANY55

(1932),奥島孝康「株式相互保有の規制原理」企業法研究249胃24(1976)。企業間の

合同と共同の方式として,会社のパートナーシップ参加と,会社の他会社妹式所有と

は,同じ経済的機能をもつものである。米国法における会社の他会社株式所有に.つい

ては,別稿で扱う予定である。

(46)Scott Rowley,The CoIpOrate Partner,14Minn・L…Rev…777-778(1930)。 (47)たとえば,BIandeis裁判官は,初期の会社に.対する恐怖の念を次のよう紅述べて

いる。「個人の自由と機会に対する侵害の恐怖。資本への労働の従属の恐怖。独占の 恐怖。会社による資本の吸収と会社の永続的生命が死手(mo‡tmain)にともなった

と同様な弊害を生じるという恐怖。資本の大なる集積そのものに,それが会社濫.よっ て所有されている場合K,はとくに,険悪な危険(insidious menace)の観念が存在

した。.」Louis K Ligget Co.v.Lee,85A.L.R..699,715(1933)。 (48)HuRST,J.Wい,THE LEGITIMACY OF・THE BusINESS CoRPORAⅠIONSIN THE

LAW OF THE UNITED STATES,1780-1970,pp.43~44(1970)。

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第49巻 第5・6号 -- 7g・舶 526

メリカ鉄道業の生成期に,機関車製造に.手を出して失敗し,裁判所に持込まれ

たことは象徴的である。

④ 一山般原則と受託者トラスト し191

先に.述べたように,コモン。ロー上,営利を目的とする共同企業組織は,会

社または.リミ.テッド。パ・-F・ナ・-レツプとしての制定法上の要件を備えない限

り,パ-トデ-・シップとされる。このことは,会社を構成員とする共同企業組

織についても同じと考えられる。会社が他者と共同企業を営む主な法形式とし

ては,契約によるもの,す・なわち,パ」-トナーシップの外に・,法人格を利用す

るもの,すなわち,共同会社を利鳳する方法がある。しかし後者の方法は,コ (50)

モン・ロ一上他会社株式所有が原則として禁止されていたのみならず,会社の

設立紅制定法上の手練を必要とするので,事実上利用困難となる。そこで契約

による方法をとれば,共同企業組織ほ パートナーシップとして類別される。そ

のような法状況の下で,会社のパ・→トナーーレップ参加を禁止する一・般原則ほ,

企業結合に対して重要な阻止的役割を果たす-こととなる。そのきわだった例が

(51) (52) 受託者トラスト違法判決である。Malloryv.HananerOilWorksは受託者ト

テストの合法性が始めて問題となった事件である。それにおいてこ裁判所ほ次の

ように述べている。「-パー・トナーシップと会社ほ両立しない(incong‡uOuS)。

そ・のような契約ほ,厳密紅私的な営利事業会社であれ,運送業(common car・-

rier・)のような公的義務を負う会社であれ,会社に明示的に与えられた権能

(powers)の範囲と趣旨および明示的紅命令された義務と完全に矛盾(wholly

inc叩Sistent)する。パ・-け・-Vップに し5=11

園内において行為するとき,ファームを拘束する。会社は,その取締役または

(49)前掲1。

(50)前掲注(45)参照。 (51)受託者トラスト(tzust properまたはtrustdevice)の法的仕組と経済的機能にIつ

いては,多くの日本語文献がある。一たとえば参照,矢沢惇「アメリカ紅おける反トラ

スト法の形成」法律時報19巻215-220(昭和22年),小原敬士『アメリカ独占資本主

義の形成』26-50(昭和28年)。 (52)86Tenn小598,8S.W.396(1888)。 (53)大塚前掲注(6)3「firmはpartnershipの全構成メンバl-を集合的に呼ぶ場合

の名称であって,実質はパ-トナ・-シップの別名と言ってよいo」。

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米国法における会社のパートナーシップ参加 -7クー 527

授権された代理人を通して一行為しなければならない,そ・して:各メンバーは,メ

ンバ-・としては,会社を拘束できない。さて,もし会社がパ-・トナ-シップの

メンバーであるとすれは,それは団体(association)のどのメンバーによって

も拘束される,そして∴そうするさい,彼ほ.,会社の役員または代理人としてで

なく,会社から受けた権限紅よってでなく,全員が平等であり,各々がその行

為によって団体(society)を拘束できる団体(association)の本人として,行

為する。会社を創出し規制している法の全政策ほ,各会社事業の,そのチャー

タ」一に.よって二規定または授権された役員による,排他的経営と思われる。この

経営ほ.独立的かつ排他的(separate and exclusive)であらねほならず,会社

事業の支配をその株主,および授権され鱒役員・代理人から奪うあらゆる協定

(54) ほわが一一・般会社弦の政策に敵対するものである。」。以上のような理由から,契 (55)

約ほ全株主の同意によっても有効紅ならないとされ,会社のそのような結合が (56)

独占を創り出す傾向をもつものとして違法かどうか,検討する必要ほないとさ

れた。この事件の外軋,一・般鹿別に・よって-受託者トラスナを違法としたもの (57)

紅,Peoplev.NothRiverS11garRefiningCo.,Preser・Ver’sTrustv.Tayor (朗) (59)

Mfg.Co.,State v.Standard、OilCo.,American Bishop v.American (80)

PrIeSerVerS Co.,がある。受託者トラストほ,と,れらの諸判決によって,会社

間のパーけ・」-シップとして適法とされ,崩壊するに.至る。すなわち,受託者

トラストの崩壊をもたらしたものは,連邦反トラスト制定法(シャーマン法)

(54)8S.W.399。

(55)同所。 (56)同400。

(57)121Nl・Y巾582,24N.E..834,840(1890)「会社がパ・-トナ-∵ンップに参加するこ

とは違法である。……‥終わり紅引用した判例(Whittenton Mii王sv.,Upton…・h市川

注)が正確かつ十分な理由を与える。そ・れは,会社のため行為する者が2人の異なる

本人に対して負う2蚤の忠実義務(doul)le a11e唱iance)という全くの矛眉を示し,

会社の致命的諸特質がパ-トナ・-シップの優越的癖限(paIamO11ntautboごity)紅よ

って必然的に消される,ということを証明している。」。参照,矢沢前掲注(51)220。

(58)46Fedり154-155(1891)。

(59)490bioSt・137,30N・E・279,290(1892)。参胤 ′J\原前掲注(51)48-49。

(60)157Ili・284。41N..E.765,774(1895)。

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貨49巻 籍5・6号 ーー β0 --l 528

紅基づく連邦裁判所の判決ではなく,会社のパ一トナ・-レップ参加を禁止す (61)

る,コモン′。ロ」-の原則に基づく州裁判所の判決であった。

ⅠⅠ‡一-・般原則の後退

亘)--・般原則の批判 (62) (6二り

叫・般原則が批判されるとき,ロ・-リイがしばしば引用される。またローリイが

引用されていない場合でも,ロ-リイの論旨に含まれるとほぼ同じ批判のなさ

れることが多い。また,-・般原則の批判としてほ,ロ-リイの批判が最も鋭く

かつ包括的であると思われるので,ここ.では主としてこれを紹介する。

会社がパートナ-シップ参加権能を有しないとされる主な根拠ほ2つある。

第一・ほ,会社とノトートナ・-シップほ両立しないという性質上の理由であり,籍 (64)

二は,会社の独立性を確保しようとする立法政策上の理由である。 〈65)

第一・の理由に.対して,ロ-リイほ次のように批判する。「この理由ほ説得的で

ないと思われる。それ聴,会社がその設立目的を成功的に遂行するためパ一ト

ナー・シップ関係を原則として必要としない,ということを示す。しかし,結局

のところ,必要性と両立性は,各々の場合の特殊状況の下での,事実に基づく

決定の問題(matters for factualdetermination)である。裁判所は黙示的梅 (66)

能(implied powers)の範囲を制限するよりは拡大する傾向に・ある。」。

第二の理由については.,会社の独立的かつ排他的経営および経営権限行使者 (67)

の特定が立法政策であるかどうかが問題となる。

経営権限行使者の特定について,ロ-・リイほ次のよ.うに批判する。i‾会社の本

(61)参照,矢沢前掲注(51)220。

(62)Rowley,前掲注(46)。 (63)MichaelAr・mStrOZlg,CanCorporationsbePaI’tneIS?20BusinessLawyer899,

900(1965),Note,Corporations-CorporatePower・sandLiabilities-PaItnerShip- Power of a Corporation to enter、into a Limited Partne!Ship,35Texas L. Rev.265,267(1956)。

(64)参月乳 前掲5-6。

(65)参照,前掲3-4,12-13,注(57)。 (66)Rowley,前掲注(46)770。

(67)参照,前掲4,13。

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米国法における会社のパートナーシップ参加 -βノー 529

来的性質上,そのすべてこの行為は代理人によって遂行されねばならない。会社は

肉体と精神を有しないので,会社それ自体ほ.行為でき′ない。一・定の代理機能

(agenCyfunctio‡1S)ほグル十プとしての株主にゆだねられ,他の代理機能は

取締役にゆだねられる。会社役員は,種々の事柄において,会社を拘束できる。

同じことほたんなる代理人についても真実である。もし会社が,第三者(stran-

ger)を,契約または不法行為に∴おいてこ会社を拘束する,あるいほ総支配人

(generalmanager)としてサら行為する,代理人として一任命できるとすれば,

会社ほ,自己がメンバ」-である パートナー・シップにおいて,他のパートナ・-を

そのような代理人に任命できることが,なぜ理解できないのであろうか。通常

の代理と異なる諸要素がパ」-・トナ-シップによる代理には存在するというのは

本当であろうか。川‥会社のパ」-トナーほ.コカ■パートナーシップの定款(tIle

articles ofcorpartnership)紅おいて会社から受けた権限によって会社の代理

人である。あらゆるパ-・トナ・」-シップ紅おいて†1メンバ-の他のメンバ」-を

拘束する権限軋 各々に.よって.他の各々に与えられた代理である。制限なし

の,たんなるパー・トナ-シップ契約そのものがこの権限を与える。……い通常の

代理はいつでも取消可能であると主張される。…‥‥さらに.,通常の代理ほ,本

人によって指示され支配され解任される,そして真の支配がファーム紅あると

主張される。ある範囲常おいて,このことはパ-トナ一一間の代理についても真

実である。それはパL-トナ・-シップに.よらない代理紅おいて真実では.ない,と (68)

いうのほ.,ある型の代理は取消不可能である。」。ただしこの点については,・-・

般原則を批判しながらも,次のよう紅述べる者がある。「しかしながら,通常の

代理と異なって,支配紅関する特約なき限り,各パートナーは事業の経営紅平

等な発言権を有する。もし2人のパ→トナー,つまり個人と会社が存在すると

すれば,どちらも他方の黙認なしにほ政策を決定できない。 会社に.おい

て:ほ,取締役会のメンバ・-の過半数が政策を決定する。かくして,理論的には,

取締役会のメンバーは誰も1パ-トナ【の有する鼻の権限を有しない。それゆ

(68)Rowley,前掲注(46)771-772。同所n..13は自己の主張の袈付けとして前掲注(42)

判例を引用する。参照,前掲10。参月乳 Ar■mst王Ong,前掲注(63)900。

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第49巻 第5・6号 530 ーβ2・-

え,パ-トナーシップは正常な会社構造紅少なくともある種のゆがみを作り出 (¢9)

す。」。

独立的排他的経営について,ロ-・リイは次のように批判す-る。「会社事業の経

営と支配が会社軋よ.って引渡された,または引渡されうる顕著な事例がある。

この点について,会社そのものの経営とその事業の経営との間の明確な相違を

考慮し{:当然である。内部機構(internalorganization)はたやすくメンバ一

紅限られたかもしれない。しかしながら,この内部機構ですらも,ある種の状

況の下でほ,引渡されう諾’・川儲会の法律は, 一腰匿パブリック・ポリシ

イの宣言として受取られる。会社設立の目的を遂行するため,会社償・ある種の

責任を生じさせる権限をもつ代理人を(パ-トナーーシップ関係またほ他の方法

に皐.って)任命する権利を否認するはどにさえも・,会社がその事業経営の排他

的権限を,どのような状況の下でも,完全に保持しなければならない,という

パブリック・ポリシイは確かに存在しない。他方,議会は会社権能の付与を効

力あらしめるこ.とを意図しており,もし明示的紅与えられた権能の実行紅必要

ま■たほ便宜であり,パブリック・ポリシイまたは実定法(positivelaw)に反

しないならば,・-・定の列挙されていない権能が黙示的に.与えられる,という推

(71) 定は存在する。」。 なお一一般原則を否定すれば,株.主の保証が問題となる。これ紅つい七ほ,次

のような意見がある。-一般原則の根本ほ株主の保護にあるとして∴株主保護は,

会社のパ-トナーーシップ参加を認めても,反対株主紅 ,ミスマネイジメソトを

理由として,会社と取締役に対する,契約の執行差止請求権を与え.ること紅よ (72)

って,適切に守られる。会社のパ-トナ-シップ参加紅おいて,取締役が株主

全体から与え.られた権限を越える,ということが一・般原則の根拠セあるなら

(69)Note,前掲注(41)77n.10。 (70)ロ-リィは,この実例として,債権者,とく紅社債権者が株主総会で議決権を有す

る場合,および金融会社が債務会社の経営を支配する場合考あげる。Rowley,前掲

注(46)773-774nい16-17。

(71)同,773-774。

(72)Note,前掲注(41)82。

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米国法における会社のパ・-トナ-シ ップ参加 -β3- 531

ば,全株主の同意紅よって1会社のパ-トナ-シップ参加に反対する根拠ほな \丁31

くなる。

④ 会社参加パ′-トナーーシップ契約の効力

一・般原則に.よれは,制定法またはチヤ一夕-の授権なき限り,会社参加パ・-

トナーーシップ契約は無効である。それでは,裁判所は,そ・のような違法なパ・-

トナ-レップを現実に.ほどのように.扱うのであろうか。違法なパ-トナ・-レッ

プに関与した当事者は何の法的救済も受けないのであろうか。これがここでの

問題である。

まずパートナ・--レップ契約当事者,つまり自称(purprted)パ-け-・-・間 (74) (75)

の関係から見よう。個人パートナ--・も会社パ・-トナ-も,完全虹履行されたパ (76)

--・トナーーシップ契約の無効を他のメンバ一に対して主張できない。パ・-トナ」-

シップ契約が当事者の・一・方碇よって履行された場合,いずれのパ-・け-一-・もー

般原則を主張して∴パ-トナ・-」/ップ事業から生じた利益の計静を回避できな (rr)

い。その理由として\裁判所は,たとえば次のように述べる。「パブリック・ポ

リシイは,裁判所が会社紅よるそのような契約を違法(unlawhl)と宣言すべ

きこと,および本当に1日たりともその生命を引き延ばす判決をしてはならな

いこと,を要求しているが,・一方,エクイティのあらゆる原理は,そのような

契約から利益を受け・た会社が完全に履行した彼から受けたものを計算すべきで

あること,を要求している。その契約は,それ自体意(mal11min se)なので

はなく,禁止による恵(mal11mprOhibitum)にすぎない。それほ・,違法(ille- (78)

gal)ではあるが,不正(iniquitous)ではない。」。

(73)SrEVENS,前掲注(4)§57。ただしステイ-サンスは全株主の同意ある場合も琉

艇者の利益の害される恐れのあることを,とくに銀行の場合その恐れの大きいことを

指摘している,同所。

(74)Shipley,前掲注(4)930,判例についてはShipley同所参照。

(75)BALLANTINE,前掲注(4)§87,Shipley,前掲注(4)931,判例については Sbipley同所参照。

(76)AI・mstI・Ong,前掲注(63)905,Note,前掲注(4)275。

(77)FLE・TCⅡER,前掲注(4)§2522,Note,前掲注(4)274,ただしNote同所およ

ぴRowley,前掲注(46)775ほ,異なる少数判例のあることを認めている。

(78)Boydv.AmericanCarbon-BlackCo。,182Pa206,37A・937,938(1897)。

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第49巻 第5・6号 ー β4 - 532

一一・般原則ほ,パ-トナーシップ契約の将来紅おけ-る執行またほ継続を阻止で (79)

きる。これに.ついて,裁判所ほ,たとえば次のように述べる。「’その未履行部分

の強制執行ほ当然請求されえない。 法は,個人または.会社が違法な結合

から撤退するのを阻止するために,その力を用いるのでほなく,むしろ,遅し

といえども,悔い改めを促がす。違法な契約が当事者の一一・方の行為によって終

わったとき,違反行為から生じる将来の結果ほその当事者を損害應億訴訟に服 (80)

せしめない,当事者は契約の既履行部分に・ついてのみ責任を負う。」。

次に会社参加パートナ・-」/ップと第三者との間の法律関係についてみてみよ

う。会社と個人からなるパ-トナ」-シップほ,会社のパートナーシップ参加能

力にかかわりなく,雄三者とパ-トナーシップとの間の完全紅履行された契約 (81)

に.基づいて,発三者を訴えることができる。会社がメンバーの1人である自称

パ-トナーシップと取引した舞三者ほ,そのパ-トナーシップの違法性を理由 (82)

として責任を回避できない。その根拠について,裁判所は.次のように述べる?

「■原告たらの1人が会社であるという理由での,彼らのパートナ・-シップを形

成する能力町対する異議についてほ,彼らがパ-トナ一-・シップの全権能を行使

できるか否かに関係なく,彼らの組織ほ訴えられた契約における原告たちの合

同利益を立証するに十分である,と述べさえすればよい。パートナー間の関係 (83)

は,被告に関係ない。」。また次のように・も述べられる。「被告たちほ.,原告がパ

-トナーVップに参加できないこと(Pearce v.R.R.Co.,21How.441,

16L.Ed.1鋸),および購入契約紅おいて,彼らが,財産を売却する権利を有す

る,財産の合同所有者としての,原告およびRo11ntree(原告会社のパ-トナ

‖‖l・∴市川注)と取引したことを,知っていたと非難される。この理由のた

(79)BAILAN工INE,前略庄(4)§87,TheCommittee,前掲注(3)516,Shipley, 前掲注(4)932。判例についてはShipley同所参照。

(80)Sabine Tr’am Co.v。Bancroft,16Tex.Civ.App.170,40S.W.837,839 (1897)。

(81)BALLANrINE,前掲注(4)§87,Armstrong,前掲注(63)905。 (82)Shipley,前掲注(4)935,Note,前掲注(4)275。判例K.ついてほ,Shipley同

所参照。 (83)F‡enCh vいI)onohue,29Minn111,12NパW.354,355(1882)。

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米国法紅おける会社のパートナーシップ参加 -β5- 533

め,彼らほ,購入契約の有効性,あるいは彼らがその履行を拒否したとき彼ら く84)

にふりかかる責任を争いえない。」。

自称パートナ-シップの個人パ-トナ・-は,完全に履行された契約に基づく (85〉

第三者に.よる訴において,パートナー・レップの有効性を否認できない。ある裁

判所は次のように.述べる。「パーートナーシップに・参加した会社甘パーートナーと

して責任を負わされえないとする判例もあるが,-・方,そ・の逆の判例もある。

州′しかし,本件紅おいては,パートナ・-シップ協定の他の当事者がそ・の関係

に参加できないという理由でパ-トナ-としての貴任を回避することを求めて

いるのは個人である。パー・トナーシップの債務者が,前掲凧enCbv.Donohue (86)

事件で,その問題を主張できなかったより以上に・,個人はその問題を主張でき

ないと,我々紅は思われる。契約に.はそれを違法にするよりほむしろ合法に.す

る解釈が与えられるべきであるという主張は正しいが,しかしそれほ,求めら (87)

れた解釈が公正で合理的なものでない限り,決定的でない。」。

会社がパ-・トナー・シップ参加能力を萌しないことを理由として,会社パ-ト

ナ-が,弟三者に射しパートナ-としての責任を回避できるか否かに・ついて

ほ,学者の判例分析に相違がある。バランタイソによれは,会社がパートナー

シップに参加できないことを理由に.して\,会社ほ,舞三者紅対しパ」-トナー・と (88)

しての責任を回避できない。ア-ムストロング紅よれば,パ一トナ・-シップ参

加がクルトラ。グァイレスであったとしても,貴任を生じる契約が,会社の設

立目的を助成する場合に.はとくに,第三者に.よるパ-トナ-・シップに対する訴 (89)

払おいて,会社ほ有効なバートナ-シップの存在を否認できない。シ/イプレイ

ほ判例を2群に区別する。すなわち,多数の裁判所によれば,会社が,その法

的無能力にもかかわらず,パ一-トナ-レップのメンバ一になると称す-る場合,そ

(84)Huguenot Mills v.Jempson,68S.C.363,47S.E.687,688(1904)。 (85)BAuANTINE,前掲注(4)§87,ArmstIOng,前掲注(63)905,Shipley,約掲

注(4)935。

(86)参照,前掲18,前掲注(83)。

(87)Moorev.Thorpe,133Minn、244,158NWい235,239(1916)。 (88)BAllANTINE,前掲注(4)§87。 (89)A王mstOng,前掲注(63)905。

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第49巻 第5・6号 ′ 534 ・-- β6 一-

のメシバ-シップに信赦してパ・-・トナーーシップと取引した第三者紅射し,会社 (90〉

はパ岬-トナ・-として責任を負う。たとえば,ある裁判所ほ.次のよう軋述べる。

「これらの取引は,破産宣告時に,完全紅履行されて.いた,上訴人ほ,自己の

法的権限の限界を越えてこいたことを示すことに・よって,自己が既に完了してし

まったものの法的結果を回避できない。破産管財人ほ,ウルトラ。ヴァイレス

な契約の執行を求めていないし,その≠一滴βの履行の強制も求めていない。彼ほ,

現実紅生じたもの紅よって創り出された状態が,そ・の創出当事者の申立紅基づ

いて-かつ善意の第三者の損害砿・おいて,すっかり無視されるべきでない,とい

うことを主張しているにすぎない。我々ほ,この申立を支持したことにおい (91)

て,下級裁判所ほ.明らかに正しかった,と信じる。」。しかしながら,他の諸判

例において,裁判所は会社≒パートナ・・-≒が禁反言(estoppel)の理論紅基づ

いて第三者に対する貴任を拒否することを認めた,通常その根拠ほ.,そ・のよう

な自称パ-トナ・-・シップと取引した人が,会社のパ・-トナ・-シップ関係維持無 (92)

能力を知っている,ということである。たとえば,先紅あげたり・-ゲイング・

ケ・-スに.おいて次のように.述べられている。「会社のチャータ」-・はパブリック・

ロ・Mの-・部である。Rev.Sts.c.2,§3。会社と取引する者ほ,その権能

(powerS)の範囲に注意しなければならない,そして会社が合法的にはパ-・ト

ナ-Vップ契約に参加不可能であること,その契約がその権限(authoIity)の

範囲を越えていること,およぴこの不可能ほ,この会社または∴そのメンバ・一に

特有な考慮からではなく,パブリック。ポリシイの-L般的根拠から,すなわち,

会社およびそれと取引する者が違反し打破することを認められない根拠から, (93)

生じていること,紅注意しなければならない。」。

(90)Shipley,前掲注(4)933。 (91)Wallersteinv..Ervin,112Fedい124,125-126(1901)。なお,会社が第三者に

対レミ-トナ-としての安住を負わされるのは,パ--トナ-シップが会社目的を助成

するものである場合が多いようである。参照,Sbipley,前掲注(4)933-934引用渚

判例。 (92)Shipley,前掲注(4)935。

(93)前掲注(5)598。なお,

されるのは,銀行会社に多いようである。参照,Shipley,前掲注(4)935,Anno- tation,Bank as Partnerinother Business,37A”L・R。1109(1924)。

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米国法紅おける会社のパー・トナ・-シップ参加 -β7- 535

⑧ ジョイント・ヴェンチャーの拡大

会社ほ,制定法またはチャータ-の授権な

きないが,しかしそれなしにでも,ジョイント・ヴュンチヤ、-を形成すること (鋸)

ほできる。でほパートナ-シップとジョイント・ヴェンチャーほ.どう異なるの

であろうか。この問題全般について,既にすぐれた簡潔な紹介が抜山弁護士に く95)

よってなされている。パ-トナーーシップとジョイント。ヴェンチャー・との相違

として通常いわれている諸点,および両者を区別する説と区別しない説につい

てほ,抜山論文および同論文引用諸文献を参照されたい。ここでほ,会社の参

加権能と閑適あると思われる点のみを取上げる。

両者の主な相違点はその結合目的にある。すなわち,′く-・トナ・-シップほ,

通常,特定種類の一・般的事業の取引(the transaction of a generalbusiness

ofa particular kind)のため形成されるが,iyヨイン (98)

通常り 単一-・取引(single transaction)に限定される。・それゆえi7ヨイント・

ヴェンチャラーの代理権の範囲は軍--・取引に限られており,パ-・トナーシップ

紅は・冊・般に存在する相互代理(m11tlユa】agency)~1パ-トナ-のパ冊トナ

-・シップ事業遂行上の行為は特に.反対の定めない限り全パートナ・-を拘束する

--すなわち,-・般に事業遂行上必要とされる黙示による大巾な代理権付与 (97)

ほ,ジョイントJヴュンチャ一にほ一・般に存在しない。いわば,ジョイン ト

グェンチヤ-は,その事菓範囲と期間が嘩・⊥取引紅限られている点払おいて特 (98)

殊なパートナ-シップである。純粋に米国裁判所の創造物としての本来の意味

(94)前掲24-26。

(95)前掲注(23)抜山論文。 (96)Armstrong,前掲注(63)908,TheCommittee,前掲注(3)517引用McRoberts

vりPbelps,391Pa.591,598岬599(1958)。参照,Rowley,前掲注(46)776,Note, A Partnership and aJoint AdventuIe Distinguished,33HaIV.L.Revり852

(1920),へイル前掲注(2)78-79,抜山前掲注(23)113,大塚前掲注(6)24-25。 (97)参照,Comment,TheJoint Venture:ProblemChildofPartnership,38Cal.

L.Rev.860,866-868(1950),MECHEM,ELEMENエS OF THE LAW OF PARLrNERSIiIP20(1920)。

(98)Berle,R.P.,DevelopmentsinthePatte;nOfCo王pOrateJointEnterprise, 14翫siness LawyeI309,3ユ0(1959)。

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第49巻 欝5・6号 536 ーーー ざ∂ -

におけるジョイント・グェンチヤ-・ほこのようなものであったと思われる。し

たがって,汐ヨイント・グェンチヤ-・形成は,・・・・・・般に,会社事業経営権限の不

当な放棄(undueabdication)を含まず,また会社が目的の遂行に・有益なジョ (99)

イント・プ工チャーー契約を締結できないという法原則ほ存在しない。しかし,

一L般的事業(generalbusiness)と単一一h取引(si喝1etransaction)はどう異な

るのであろうか。尊∵・取引といえども,統一ハパ-トナ鵬」/ツプ法の下での事業 (100)

(business)を構成する。HaImOn V.Martinにおいて,土地を購入し,小

分し,改良し,売却してその利潤を当事者の間で分配する合意はジョイント。 (101)

グェンチ・ヤ-であるとされた。多くの契約と数年間払わたる事業遂行を必要と

したけれども,裁判所はそれを利潤のためのSingle specificenterpriseと (102) (103)

して特徴づけた。Pfingstlv.Solomonに.おいて,草木が,売却のため栽培さ

れるほずであった。そ・の関係は,多数の活動を必要とし,時間的に制限のない

ものであったけれども,ジョイント・ヴェンチャーーと判断された。かくしてジ

ョイント・グェンチヤ-・は長期間にわたる複雑な商業取引を含むことができ (10集)

る。 (105)

Luhrig Collieries Co.Ⅴ.Interstate Coal&DockCo.において,個人間

の合意であったとすれば,パ-け・一-シップであろうけれども,会社が参加し

ているから,ジョイント・ヴェンチヤ-∴であるとされた。その理由を裁判所は

次のように.述べた。「係争中の合意が,もし個人間紅なされていたとすれば,パ

ートナーーシップを創り出した,ということほおそらく本当であろう。だが,私

の見たかぎりでほ,会社が当事者であるそのような契約が,パー・トナー-・シップ

が意図されていたにもかかわらず,無効にならない,ということは奇妙である。

問題が,確か紅当事者間においてと同様,全く意図の問題であるとすれば,当

(99)参照,前掲7-8。 (100)U.P.A.§2,Comment,前掲注(97)863。 (101)395Ill.595,71N.E、2d74,83(1947)。

(102)同所。 (103)240Ala..58,197So.12(1940)。 (104)Comment,前掲注(97)863。

(105)281Fedい265。(1922)。

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米国法における会社のパートナーシップ参加 一βクー 537

事者の一一方が会社であるとき,当事者がジョイント・グェンチヤ-‡こよってパ

-トナーーーシップの創出を意図していると推定すべきでない,というのが,私に

は正しい原則であると思われる。もしそ・の意図が爵極的に・あらわれているとす

れば,その契約は.もちろん無効である。しかし,法の禁止しているものが意図 (105)

され7::いると,なぜ推定すべきなのであろうか。」。さらに,Twyfordv.Sonken- (10丁)

GaユaI‡1baCor・p.において,合意文寄がパーー㌣ナ-シップと記していたにもかか

わらず,ジョイント・グ.ェンチヤ-と判決された。裁判所ほ,まず先例を次のよ

うに引用する。「すべての人は法を知っていると推定される。そして被告会社が

拘束力あるまたは当事者によって強制執行可能なパ-一トナ-シップ合意に参加

できないことを十分に知ったうえで,この契約は締結されていると推定され

る,そして同じく,誰も怯が強制しない契約の締結を望みもしないし意屈しも

しないと強く推定される。締結された契約ほ,もし契約の性質が会社チャータ

-の授権している事業の範囲内にあれば,そ・れ紅、ついてほ争いない,締結され

た契約ほ会社が参加権能を有するジョイント・ヴェンチャ一-の性質をより多く

(10$) 有するという意見紅我々ほ傾むく。」。そののち,次のよう紅判決した。「本件で ほ,原告とUnger Brothersは,其実のパートナーシップまたほ会社なしに.,

共同で利潤を求める SpeCific ventureに.おいて結合した。そのようなものは

ジョイント・アドヴェソテヤ--である。・…そのような場合,当事者間および

他者との関係に.おいて一生じる問題の解決紅,パ-トナ・ノーシップ法が適用され (109)

る。」。

これらの裁判所の態度ほ次のよう紅述べられる。「-パ-トナーとなる会社の黙

示的権能を禁止する原則を回避するため,裁判所によって最も普遍的軋用いら

れた方法は,智恵をノぐ-トナ・-シップとして:よりほ.ジョイント・エソタ・-プラ (110)

イズとして分類することであった。」「会社にパートナ一-シップ能力を否認す

(106)同274。

(107)1770kla.486,60P.2dlO50,1052(1936)。 (108)同所引用,MunicipalPaving Co.vいHerring,500kl.14170,150P.1067,

lo70。

(109)60P、.2dlO52。

(110)Note,前掲注(41)78。

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・-・90 -・ 第49巻 第5・6弓 538

る,いくぶんか慈恵的な原則は,裁判所に.よって先例拘束力の原則(staIe

decisis)として全く・一般的に.認められてきたけれども,≡裁判所は,その欠点を

悟っているので,事態が強く要求する場合にはいつでも,その有効な作用を回

避するため様々な手段を利用してきた,と思われる。裁判所が,・一方では会社

のパートナーーシップ関係を排除する原則を認めながら同時にジョイント・ヴェ

ンチャー・に・参加する権能を認めたこ.とほ,そのようないいのがれ(subterfuge) (111)

の1つである。.」。

それでほ,裁判所はどのような場合にジョイント。グ=ンチ・ヤ一-を認めるの

であろうか。これ紅ついて次のように述べられて/いる。「裁判所は,合意が比較

的短期間であり,第三者への支配の重要な委任を含まない場合には,合意を汐

ヨイント・ヴェンチャーと解する傾向がいちじるしいと思われる。もしジョイ

ント・ヴェンチャラ-が相互代理権限(mutualpowers ofrepresentation)

を有していたとすれば,会社権限(corporate powers)の放棄という理由で,

(ユ12) パ」-トナ-・シップと同じ攻撃を受けやすいと思われる。」「重要なととは商事団 体(businessassociation)への会社の参加がその取締役権限の不当な委任

(unduedelegation)となるかどうかである。会社ほ,全経営と支配が会社の

事に・ある場合紅は.,パートナ-シップ参加を禁止されない。なぜならば,その

ような場合,会社事業に対する取締役の支配ほふれられないままであり,株主

の根本的権限(ultimate authority)ほ害されてし、ない。会社がジョイント・

ヴェンチャーのメンバ」一に・なりうるかどうかは,パートナ・-シップへのその参 (113)

加資格の可否と同じ考慮によって決定されるペきである。」。

④ 制定法濫よる授権の拡大

会社がパ-トナ-シップ紅参加できないという一般原則は,制定法またはプ

ヤ-タ一に・よって授権された場合紅も,そのような参加資格を排除するはどの

(111)Rowiey,前掲注(46)776,同旨,Singer,前掲注(31)589。 (112)TheCommittee,前掲注(3)518。 (113)Comment,前掲注(97)866。参照,前掲8および前掲注(28)。

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米国法紅おける会社のパ→トナ・-シップ参加 -9ヱー 539

(1旭) (115)

憂さをもつものではない。米国紅おいて,1955年には少なくとも2州が,そし

(116) て1965年には少なくとも20州がそのような制定法上の授権を与えてし、た。これ らの制定法のたいていのものほ,最近採用されたものであり,模範事業会社法

(11r)

(ModelBusiness CorporationAct)の規定に基礎づけられている。

(114)Armstrong,前掲注(63)906。Shipley,前掲注(4)920n.11。 (115)Note,綿掲注(41)76n.2,同所によるとそれらは次のとうりである0‡王■1・ANN・

STAT.tit.32 §157小5(G)(1954);Mo.REV.STAT..§351.385(1949)。 (116)A‡mSt川ng,前掲注(63)906,同所n.58紅よれはそれらは次のとうりである。

AiaskaComp.Laws Ann.§10.05.009(7);Col.Rev.Stat.1953・3ト28-・1 (7);Ill.Bus.Co‡p小Act §157.5;IowaCode Ann.§496A叫4(7);Md.Ann・ Code art.23,旨9(a)(7);Miss.BusCorp.Act.§4(g);Mo.Rev.Stat・ Ann.§351.385(6);Nev.Rev.Stit.§78.070(8);N.Y.Bus.Coわ.Law §202(15);N.C.Gen.Stat.§55-17(b)(5)and(6);N・D・Bus・Corp・ Act §10→19MO4(7);Okla.Stat.Ann.Tit18 §ト19(7);Ore.Rev・Stat・ §57-030(7);S.C.Code §12-12.2(a)(14)(A);Tex.Busu Co工p.Act art・ 2.02(a)(7)(VeinOn,s);Utah.Bus.Corp.Act16~1O一・4(g);Va.Code Ann・ §13.1-3(g);Wis.Stat.Ann.§180.04(6);Wyo。Bus.CoIp.Act §17-・36.4 (g);and D.C。BlユS.Coでp.Act§29-904(g).参照,後掲注(117)。

(117)Armstrong,前掲注(63)906。ModelBus.Corp.Act Ann.2d §4(p)は次の 通りである。EachCorporationshallhave power:川(p)Tobe apr6moter, partner,member,aSSOCiate,Or manager Ofany paItne工Ship,joint ventuIe, trust orother enterprise.なおModeiBusLCorp,ActAnn.2d §4(p)7T3 によれば,各州制定法の状況は次のとうりである。ぺソシルバニアほ模範法と同一・の

規定を有する。アラスカ,ジョー・汐ア,ミズ一夕,バージニアおよびワイオミングほ

会社にパ-トナ・-ジップおよび様々な他のアソシ㌔エイションのメンバー・となる権能

を与えている。コネチカット,デテクェア,メイン,ミシガン,ネブラスカ,・ニュ-

汐ヤ-ジー,ノースカロライブ・,サクスカロライナおよびデネッジーは,会社が自ら

なす権能のある活動紅従事するパ-トナ-・シップまたはアソレ・エイジヨンに加入す

る権能を会社紅与える。コロラドとアイオワは会社がその目的を遂行す-るため様々な

パ小川トナーレップまたはアソシ㌧工インヲン紅加入することを認める。テネシ」-・紅おい

ておよび,会社設立法に特別の定めないかぎり,ミシガンにおいても,佃体加入権能

はチヤ-ター紅よる制限紅服す-る。ア-カンソ一に.おいては,会社は,基本定款また

は取締役選出権を有する株式の過半数の所有者の議決によって授権されれば,汐エネ

テル・パ-・トナ-・に、なりうるd基本定款上の授纏または前以っての株主の承認なしに

は,取締役会は,5年以内の間,攣独事業(Si喝1eundertaki咽)の共同遂行または

共同事巣の遂行のため,リミテッド・パ」一 トナ・-・または汐ヨイント・ヴェソチ・ヤ・-の

メンバ・-・になることを決議できる。アラバマ,アリゾウナ,キャリフォ・・-・tエア,フロ

リダ,ハワイィ,イリノイ,インディアナ,キヤソザス,ケンタッキ,ルイジアナ㌧ メアリランド,ミネソタタ,ミ∴ソシッピ,モシタナ・,ネヴァダ,、ニュ・-ハンプレヤ-,

,ニュ・-メキシコ,ノ-・スダコタ,オクラホマ,オレゴン,ロクドアイランド,サク

スタコタ,テキサス,,ユタ,バ・-・モント,ワシ∵/トン,クェストパー・ジ・ニア,ウイス

コン1ンン,およぴコロンビア区ほ会社にパートナ・-ジップ空たはアソシエイジヨンの

メンバ一になる梶能を与える規定を有しない。

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寛49巻 貨5・6号 ー92 - 540

それでは,そのような制定法の裁判上の効果はどのようなものであろうか。

チャーターーまたほ制定法が会社にパ-トナーシップ参加を授梅している場合,

裁判所ほ,はとんど例外なく,会社ほパ-トナーーシップに参加できると判決し (118) (119)

た,といわれている。けれども,テキサス州事業会社法についてなされている (120)

議論ほ参考になると思われるので次に.紹介する。「ar・ticle2.02A(7)ほ会社紅

パ-トナーレップ“ に.おける持分を…叫・獲得する…ノ’梅能を与えて (121)

いる。しかしながら,article2.02Bは次のように規定している,article2.02

Aは,本法,基本定款または州のあらゆる他の法律において明白に述べられて

いるこれらの諸権能に対する諸制限と両立しない,2.02A紅列挙された権能を

(122) 行使する権限を役員または取締役紅与え.るものでない。最後に,article2.31 ほ,その一周;において,‘‘会社の専業ほ取締役会によって経営されるべきであ

(118)AI・mStI・Ong,前掲注(63)ノ906。

(119)Texas Business Co工pOration Act,September6,1955。

(120)2CoRPORATIONMANUAL(1975),Texas38p39によれば,次のとうりである。

A.Subject to the provisions of sections B and C of this article,eaCh

COrpOration shal1have poweI:

(7)To purchase,reCeive,Subscribefor,OIOt王1erWiseacquire,OWn,hold,

vote,uSe,emPloy,mOrtgage,ユend,pledge,Selユ0‡OtherⅣise dispose of,

and otherwise use and dealin and with,ShaIeS Or Otherinterestsin,Or

obligationsof,Other domestic o工foreigncorporations,aSSOCiations,partner-

ships,Orindivid11als,Or direct orindirect obligations o董the United States

or of any other government,State,territory,gOVernment district,Or mu-

nicipality,Or Of anyinstrumentality thereof.

(121)同,Texas40に・よれば次のとうりである。 B.N戊bingin this article grants any authority too缶cersor directors of

a corporation for the exercise ofany Of the foregoing powers,inconsistent

withlimitations on any of the same which may be expressly set forthin

this act orin the articles ofincorporation 9rin any otherlaws of this

state.Authority of o缶cers and directors to act beyond the scope of the

purpose or purposes of a corporationisnot grantedby any provisionofthis

aIticle.

(122)同,Texas35に.よれば次のとうりである。 Board of Directors..-A.The business and affairsofa corporatiohshal1be

managed by a boa‡d of directoIS.Directors need not be residents of this

state or shateholders of the corporation unless the articles ofincorporation

o:bylaws so require.The articles ofincorporation orbylaws may prescribe

Other’quali負cations for directorsu

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米国法における会社のパ-トナ-シップ参加 -93- 541

る”,と述べている。こ.れら諸規定のもっともらしい解釈は次のとうりである,

会社が取締役会に.よって経営されるべきであるという要求ほ.,会社が今後パ-

トナ-シップ飴力を有するとの議会意思の明示を考慮すると特に,会社のパ一

トナーシップ能力に対する明示の制限をなすものではない。他方,会社経営に

対する制定法の構想(scbeme)ほ,会社のパ-トナ-シップに.参加する無制

限の権能を否認するものと判断される。この後宅の解釈ほ.,aIticle2.02A(7)

が,外観的に.ほパ-トナーシップに参加する直接的授梅よりはむしろ余剰資金

の会社投資(corporateinvestment)紅対する諸制限の緩和を意図した.,広い

-・般的な条文(a‡ticle)である,という事実に.よって強められる。その結果と

して,テヰサス裁判所ほ,新鎮のこれらの規定を解釈するとき,パートナーシ

ップ参加を望む会社に・白紙委任(Carte blanche)を与えるのlでなく,個々の翠

引の性質に応じて各々の事件を決定するであろう。そうするさい,裁判所はこ

の新たな立法せ自由に解釈するであろう,結果として,会社のパートナ-レッ (123)

プ能力欠如ほ原則というよりほむしろ例外となるであろう。一」

④ チャーター紅よる授権の拡大

元来チャーターという用語ほ,会社の設立を許す特許状または特別法(spe- (124)

Cia王act)を意味していた。この意味紅おけるチャ′一夕′-は会社設立法(act of

incorporation)でもあり,既に述べた制定法と同じく,明記することに.よって

会社にパ-・トナーシップ参加能力を与・え.ることができる。ここで問題となるの

ほ,制定法が然しているにもかかわらず,一・般法の下でのチヤ・一夕一-すなわち

基承定款(aricles ofincorporation)k.明記することに.よって,会社に.パート

ナ-シップ参加能力を与えることができるかどうかである。

2つの新開発行会社が各自の新聞発行を止め,共同して1つの新聞発行その

他の出版事業を営むため,パ→トナ-シップを形成した事件において,裁判所

(123)Note,前掲注(63)268。なお,同所での議論は1956年になされたものである。テキ

サス事業会社法は,1955年法律第64号によって完全に改正された。その後,若干の部

分的改正はおこなわれているが,同所引用の各部分ほ1975年まで変更されていない。

参照,前掲注(120)-(122)。

(124)高柳賢三・未延三次編集『英米法辞典.』CbaT・teI(1953)。長浜洋一・『アメリカ会社

法概説』37(1971)。

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第49巻 第5・6弓 -- 9リ ー・ 542

は,梅能がチャーター修正によって明示的に与え.られた場合右こほ,会社は有効 (125)

なパートナ・-シップを形成できる,と判決した。その理由ほ次のとうりである。

「この効果をもつ法原則(一般原則…・‥川市川注)ほ,古くよく確立されてい

る,がしかし,授権が与えられている場合,そのような権能の行使が完全に可

飽であり有効であるという反対命題より以上にほそうでない。こ.のこ.とは,権

能がチヤ-・タ」一紅おいて与えられている場合,その行使を禁止する原則の基礎

となっている理由がもはや存しないがゆえに,そうである。この基礎となって

いる理由とは,株主が,チャ-タ一における逆の表示ないかぎり,取締役がそ

の義務および責任を他者と分つことなしに会社事業を執行する,と仮定する権

利を与え.られていること,である。・・…それゆえ,パートナ-レップを形成

する会社の権能が本質的に.違法であったことほ決してなくまた現在もないこ

と,およびそのような梅能の存在と有効な行使咋・チャ・一夕一に・具体化されたも

のにのみ依存することほ明らか■である。本件において,契約を有効に・するとい

う明白な目的のため,あらかじめ株主全員の同意でもって,両会社(compa-

nies)のチヤ′-サーが修正されでいたこ.とは,既に見た。残る問題はその修正

そのものが有効かどうかである。我々はその修正を有効と考える。そ。鱒修正ほ,

それ自体恵であるもの(-れal11min se)または州の憲法や制定法砿よって禁止

(126) されているもの,を授権するものでない。」 さらに,なお,キャリフオ・-ニア州紅おいてほ,チヤ・一夕-払おける明示的

授権ないにもかかわらず,パ-トナーシップ参加の黙示的授権を認める判決が (127)

2つでて:いる。その理由ほ次のとうりである。「会社は,基本定款(articles of

incor・pOration)による授権があれば,パーートナ-シップに参加できる。・

会社がそう授権されていなかったことを示す証拠ほ存在しない。契約は会社の

(125)News-Register Co.・V.Rockingham Pub・Co,118Va・140,86S・E・874 (1915)。

(126)86SりE.876-877。 (127)UniversalPictures CoIp.VいRoy Davidge F・Laborato工y,7Cal・App・2d

366,45P.2dlO28(1935);Coronet Construction Co.v.Palmer,194Cal. App.2d603,15Cal。Rptr.601(1961)。

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米国法紅おける会社のパ・-トナーシップ参加 -・夕5- 543

利益のためであった,逆の立証がなされるまで,それはそ・の会社権能の適正な

(128) 行使においてなされたと推定される。」。 ⑥・一山般原則後退の経過と背景

1858年に-一腰原則が確立したとき,それはパブリック・ポリシイあるいは立 (129)

法政策であるとされた。したがって,パー・け-シップ参加が会社目的を促進

するものであるかどうかほ問題とならず,また全株主の同意紅よ・つても有効と (130)

ほならないとされた。-小般原則の下では,他のパートナ--およびパートナ-シ

ップの取引相手方またほ債権者の利益が問題となるが,山・般僚則はパブリック

・ロ-であるから,彼らはそれを知っていたほずであるという理由で,こrの利 (1飢)

益はしりぞけられた。しかしながら,もし会社の他者との共同行為をすべて二禁

止すると,会社の事業活動は極めて不便なものとなる。ある種の共同行為は合

法とせざるをえないが,その基準となるのが,会社経営権限の会社役員に・よる (182)

確保である。単一・取引に限られた共同行為は,たいていの場合,会社経営権限 (188)

の不当な放棄とはならず,ショイント・ヴュンチヤ-としで合法化される0

19世紀中葉における南北戦争と産轟革命ほ米国経済の急速な成長をもたらし

た。それに.引続いて∴鉄道網が拡大し,重工業が発展した。営利事業観繊として

の会社の優利性が明白となり,会社は数および規模に・おいて増大する。1875年

頃には,かなりの州において,あらゆる合法的目的のための会社が・一般法の下 (1紬)

で設立可能となる。・これは会社の正当性が事実上肯話されるに至ったことを示

すものと思われる。会社が営利事業の組織形態としで一般化すると,ノ」\規模会

社も含めて一腰的軋会社の独立性を要求することほ市場破壊の恐れに・関する限

(128)45P.2dlO29。同旨15Cal・Rptr・607。 (129)前掲3-4,20。

(130)前掲4,13。

(131)前掲20。

(132)前掲6。 (133)前掲7-8。 (134)Brandeis,前掲注(47)718。なお,あらゆる合法的事兼(anylawfulbusiness)

のため,会社設立を認めた,米国最初の一・般会社設立法(generalincorporation

act)ほ,1837年にコネチカット州に.おいて制定された。DoDD,AMER王CANBusINESS

CoRPORATIONS UNTIL1860,pp.416-417(1954)。

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第49巻 常5・6号 ー 96 - 544

り意味のないものとなる。

全国的鉄道網の完成と共に,米国全体が1つの市場となり,企業の活動も全

国的規模のものとなる。州内での他州会社の活動がありふれたものとなるが,

その統制を州法で行うことは.困難である。

会社の発起人や経営者ほ,各州会社法のうち,自己に最もつごうのよい会社

法を選択するようになる。各州ほ,税収入の増加を求め,競って,彼らにつと

うのよい会社法を制定するようになる。この設立勧誘競争(charter-mOngeri喝

COmpetition)の手段の1つとして,1888年から1893年紅かけて,ニュ-i7ヤ

・叫ジィ州が他会社株式所有を合法化し,他の諸州もつぎつぎとこれにみなら

(135) う。以後,企業結合の主な手段として,他会社株式所有が利用されることとな り,会社のパ-トトーレップ参加ほ企業結合の方式として-のその重要性をいち

じるしく減じる。地金杜株式所有の合法化は,もはや会社の独立性確保が州の

パブリック・ポリシイではなくなったことを示す。・-・般原則ほパブリック・ポ

リシイの実現よりほ/むしろ主とし■て株主保護を意図するものとなる。また19世

紀末より20世紀初め紅かけての企業合同の激発ほ,会社が他者と共同して事業

を営むこ.とを通常のこととする。会社の全国的規模での,合同と共同,および

市場支配の問題ほ連邦会社法ない以上,連邦反トラスト法にゆだねざるをえな

いこととなる。

・一般原則ほ実態に.合わなくなってくる。・一般麻則を知っているはず■であると

いう理由でパ・-トナ-シップ活動の結果を否認することは,当事者に不公平な

結果をもたらす。1897年になって,・一般原則が禁止に・よる恵(malum pr0-

hibitu.m)であり,その違反を1日たりとも延命してほならない,としながら

も,それ自体意(malumin se)ではないとし,エクイティの原理を適用し

て,履行済行為に・ついて,会社パ-トナ・一紅,パ・-トナ・一間での計算義務あり, (136)

とする判決が出る。ま・た1901年には.,第三者紅対してもパ・-トナ-として責任

(135)BoNBRIG‡王ノⅠ&M】‡ANS,前掲注(45)57。

(136)前掲17。

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米国法における会社のパ・-トナ・一シップ参加 -97- 545

.(137) (138)

あり,とする判決が出ている。その理由は第三者の信勅保箆である。

統一州法委員会全国会議(NationalConferenceof CommissionersonUnト

form States Laws)ほ1914年に凝一一ソミl--トナーーVップ法(Uniform PaItner-

Ship Act)を発表した。この紘律の第2条は,パ′-トナノー紅なりうる老として, (139)

個人,パ・-トナ-」/ップ,会社およぴその他の団体を含むと規定している。こ (1生0)

の規定は,会社のパ-トナ」-となりうる能力を規定したものでほないが,.しか

し少くとも,山般原則がパブリック・ポリシイでなくなっていることを示すも

(141) のと思われる。1915年紅ほ,基本定款の修正による授梅を合法とする判決が出 (142)

ている。それにおいて,会社のパートナ-シップ参加それ自体ほ意でもなく,

制定法の禁止するものでもない,したがって,基本定款に.明記すること紅よっ (Ⅰ生3)

て一会社にパ-トナ-シップ参加権能を与えることができる,とされた。これは

もほぞ」・般原則がパブリック・ポリレイの問題でほなくなり,株主保護の問題

となったことを宣言するものと思われる。1922年には,係争中の合意は,もし

個人間になされていたならパ・叫トナ-シップであることおよび当事者のパL-・ト

ナ-」/ツプとする明示の意図があればもちろん無効としながらも,当事者が違

法な七とを意図しているはずがないという理由で,会社の参加可能なジョイン し1l・い

ト・ヴェンチャーであるとする判決が出ている。会社が他者と協力して事業を

営むことが通常となった以上,株主保護よりほ取引安全保護を優先したものと

(137)前掲19-20。

(138)同所。 (139)SEC.2.〔.Definition of Terms.〕cl..1and3.In this act,‥刷・“PeISOn〃in一

Cludesindividuals,partnerShips,COrPOrations,and other associations.SEC. 6.〔Partnership Defined〕(1)A partneIShipis an association of two or more persons to carry on as co-OWnerS a b11Siness for profit.

(140)パ-トナ・-シップ法上,会社がバー・トナーとなりうることは,会社がパ-トナL-と

なる能力を有することを意味しない。会社がパ・-トナーとなりうる能力を有するか否

かほ,もっぱら会社法に.よる。Af-mstr・Ong,前掲注(63)904,へイル前掲注(2)

201。

(141)Rowley,前掲注(46)778。

(142)前掲28。

(143)同所。

(144)前掲22〝23。

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第49巻 第5・6号 ー 9β- 546

思われる。1930年になって∴,・-・般原則を全体的に.取り上げ,鋭く批判したロ-

リィ論文が出ている。彼ほ.・一般原則の経済的背景の変化紅ついて次のように述

べる。「パ・-トナ-シップ参加能力を否認する諸判例は,狭い,非論理的な,そ

してやや旧式の哲学と観点に・基礎づけられて.いる。その理論が確立されたとき

ほ,大衆と議会の会社紅対する反感が存在し,たいていの黙示的権能の排除を

議会の意図とした時代であった。その時代,会社ほ比較的少数かつ小規模であ

ったので,商事団体の会社形態牲廃し疑問が存在し,その疑問それ自体が当時

会社権能のあらゆる黙示的拡大を禁じるまさに届要なパブリック・ポリシイを

作り出した。

現在ではこ.の状況ほ磨った。会社は商事団体の手段としてそれ自身を正:当化

した。会社ほ規模紅おいても数払おいてもいちじるしく増加した。会社の黙示

的権能が増加した。もし黙示的権能が実定法に反することなく,そして会社の

明示的権能の促進に必要または便宜であるとすれば,その新寄ささえも,黒示 (145)

的権能の不当な制限をパリック・ポリシイまたほ議会の意図としない。」。

会社の正当性を是認する以上,会社目的の達成紅必要またほ便宜なすべての

黙示的権能が認められるべきであり,パ-トナ-シップ参加権能もそのような

ものとして認められるべきである,とするのは当然とも思われる。このような

観点に.,取引安全保護の観点が加:bって,目的追求のためであれば,基本定款 〈148)

に.おける授権なくとも,パートナーーシップに参加できるとする判決が出る。さ

らに.当事者ほ契約をパートナーーシップであると明記していても,すべての人は

法を知っているほ・ずであり,そのうえで,有効な契約を締結したほずであるか

く147) ら,契約はジョイント。グェンチヤ」-である,とする判決が√出る。ここまでく ると,企業間の共同活動の増加と共に多発するであろう紛争を未然に.防止する

ため,制定法によっで-・般原則を廃棄することは当然のこととなろう。

(145)Row】ey,前掲注(46)777一一778。

(146)前掲28-29。

(147)前掲23。

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米国法における会社のパートナ・・-シップ参加 -・99一 547

㊥・-・般原則の現状とその回避方法

仮に,企業支配の移転を伴う企業結合を合同と呼び,そ・うでない結合を共同

と呼ぶ,とする。会社のパートナ叫シップ参加は,米国において,この両者を

行なう方式として利用される。企業合同の典型的方式は会社の合併である。合

併は法人格の消滅を伴う。合併は株主,会社債権者および立法政策に影饗する

ことが明白であるため,複雑な制定法上の手続を厳格に.守って行なわれねばな

らない。会社のパ-トナ-レップ参加は,契約によってノ行なわれ,法人格の消

滅を伴わない。しかし,それが企薬合同の方式として利用された場合,株主, (148)

会社債権者および立法政策に・影響するところほ,合併にまさるとも劣らない。

それにもかかわらず,会社のパートナーーレップ参加は制定法上はとんど放置さ

れたままである。これは,会社のパ・-トナ・」-・シップ参加が,他者と共同して二宮

業活動を行なう方式として,ひんばんに利用されるため,柔軟な対応を必要と

し,固定的な制定法規制紅なじまないことによる,と思われる。しかし制定法

の放置ほ,その法的規制の不必要を意味するものでない。制定法に・代って,会

社のパ・-・トナ㌧-シップ参加を規制するのは,コモン・ローー。ル-ルである。そ

の一山般原則ほ,制定法たまはチヤ-タ-の授権なきかぎり,会社はパ-トナー (149)

シップに参加できない,という形式的画一∵的原則である。しかしこれでほ,契

約による共同軍業はまずパ一トナーシップと推定されるがゆえに,会社が契約

によって他者と共同事業を営むことは困難となり,会社の営業活動上きわめて

(148)受託者トラストほ,事実上の合併(practicalconsolidation)であり,制定法が

合併を認めているがゆえに,パブリック・ポリシイほそれを禁止していない,との受

託者トラスト弁護論紅対し,裁判所ほ次のように.反論している。「制定法の下では,そ

の賠果生じる結合は,それ自身その存在を州紅由来L,州に対し義務と茸任を負い,

州の支配と監督紅服する会社である。ここでのような,法人格なき団体,・会社機能 (corporatefunctions)を有せず,会社安着(corporateal1egiance)を負わない,

巨大なパ・-トナ・-シップではない。制定法の下でほ,各自にとって代る合併会社は,

吸収された諸会社(companies)の諾棒利とフランチャイズの公正な集合価値に等し

い蕊のみを資本として有する,ここでのような,その価値の疑わしい,弾力的に.また

無賓任に増大可能な資本でない。差異は非常に大きく,トラスト結合の内在的違法性

(inherentillegalty)を示すのにいっそう役立つ。」前掲注(57)引用判決,24N.

E.840。

(149)参照,前掲2。

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第49巻 第5・6号 -ヱ∂0- 548

不便である。またこれでは,会社参加パー・トナ-シップの他パ-・トナ-や取引

相手方の利益を害するこ.ともはなほだしい。そこ/で-・般原則ほ,姿をかえて,

会社の支配権限が取締役に確保されているかぎり,会社ほパートナ」-シップに (150)

参加できる,という実質的個別的な原則となる。これほ,企業支配の移転を基

準として.,会社のパ-トナ′-・シップ参加を区別し,企業間の共同の方式として

利用される場合を合法化したといってよいと思われる。この実質原則紅よっ

て,会社を唯一・のジェネラル・パ-トナ-とするリミテッド・パートナーーシッ (151) (152)

プや会社のジョイント・ヴェンチャー参加が可能となる。会社がリミテッド・

パートナーとなることは,その責任が限定されて了いるとはいえ,この実質原則 (153)

に反する恐れがあるので,・一般的紅は認められない。またジョイント・ヴェン

チヤ一参加も,常に認められるというわけではなく,実質原則紅反する場合紅

(154) ほ拒否される。最近に.なって,かなりの州が,制定法紅よって叫・般原則を廃棄 (155) (156) した。しかしこれほ必ずしも実質原則の廃棄までも意味するものでない。すな わち,会社のパートナ-シップ参加が合法化されたのちに.もなお,それが企業

合同の方式として利用された場合には,違法とされる懸念が残っている,と思 (157)

われる。

多くの裁判所は,会社のパートナ・-シップ参加を禁止する一山般原則の法的効 (158)

果をエクイティまたほエス.トッぺルの理由によって,およびパートナ-シップ (159)

をジョイント・グェンチヤ」-と呼ぶこと紅.よって,ずいぶん弱めてきた。かな (160)

りの州が制定法に・よって会社にパ-トナ-シップ参加権能を与えている。そう

でない州に.おいても,基本定款紅よってパ→トナーシップ参加権能を与えるこ

(150)参属,前掲6。 (151)参席,前掲6-7。 (152)参照,前掲7-8,21-22。 (153)参照,前掲8-9。 (154)参偲,前掲8,24。 (155)参照,前掲25。 (156)参照?前掲26-27。 (157)参照,同所。 (158)参照,前掲17-20,AI・mSt工0喝,前掲注(63)910。 (159)参牌,前掲21-・24。 (160)参照,前掲25。

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米国法における会社のパートナ-シップ参加 ・一封九仁一 549

(161)

とができる。だが,会社のパー・トナーシップ参加ほ.,制定法の授権ある場合に

(162) もなお,無効とされる恐れが述べられる,のに対し,基本定款に.よる授権ある (1¢3) 場合軋ほ,事実」二の合併とみられるときに.も,有効としている判決がある。

制定法も基本定款も会社のパートナ-シップ参加を授権していない場合に (164)

は,パ≠トナーシップ契約は未履行部分紅ついて-強制されえない,また,パ-

トナー・シップの取引相手方ほ,場合によると,会社がパートナ・-としての責任 (165)

を負わないことも考えなければならない。このような,-・般原則から生じる法

的困難を回避する恐らく最上の方法ほ,基本定款に.会社のパートナーシップ参 (166)

加権能を特に規定することである。なお,契約作成のさい紅,次の点紅留意す

ることによって,一一般原則から生じる法的困難を回避セきる,と述べられてい

る。「会社を当事者とするパートナ-シップの性質を有する契約の作成に∴おい

て,会社事業の経営に対する取締役支配の不当な委任またほ放棄(unduede-

legation orabdication)を回避するため,経営契約(management contract)

の作成紅おいてと同様に,取締役の究極的権限(ultimate aⅦt王10r′ity)を保持

すること,および正当事由ある相当な通告(reasonable notice for cause)に

よって,およびわずかの期間ののち叡締役会の選択紅よって-さえも,契約を終 (167)

わらせることで十分だろう。」。

ⅠⅤ 商法第55条と一般原則

① 類似と相違

米国法上のコーーポレ-ションとパートナ-レップほ ,日本法上の何に・相当す

るのであろうか。コ-ポノレーションが日本抜上における株式会社に相当するも

の(business corporation)を含むことは確実であり,またパ-トナ-Vツブ

(161)参照,

(162)参照,

(163)参照,

(164)参照,

(165)参照,

(166)Note,

前掲27-28。

前掲26-27。

前掲27--28。

前掲18。 前掲19-20。

前掲柱(4)275。参照,へイル前掲注(2)201。

(167)BALLANTINE,前掲注(4)§87,The Committee,前掲注(3)518。

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550 第49巻 第5・6号 ー・-JOご一一l

参加権能との関連で問題とされるかぎり,主としてそれを考え.ていることも明

(168) らかと思われる。したがって,コ」-ボレーションをいままで会社と訳してきた (169) (170)

が,日本法上の株式会社に周じとする。パ′-トナ・-」/ツプは,組合,商事組合, (171) (1r2)

合名会社と3とうりに訳される。コⅦボレーションのパーートナ-シップ参加権

能において問題となるパートナーーシップほ営利追求のための共同事業組織/であ

り,COmmerCialparlner・Ship またほtradingparItnerShipと考えてよいと

思われる。また.,コ-ボレん-ションのパ岬・トナ【シップ参加梅能との関連で問

題とするかぎり9 ジョイントヴェンチャーーとほ区別された意味払おけるパ′-・

トデ・-Vツプ,すなわち,単一L取引(sing1etr・anSaCtion)のためでなく,特定

種類の一・般的事業取引(the transaction of ageneralb11Sinessofap鋸tic-

ular・kind)のための継続的な共同事業轟織と考えてよいと思われる。もっと

も我民法上の組合紅よって継続的営利事業を営むこと.ほ可儲であり,そのよう

な場合,これほ米国法上のパートナ・-シrツプに近似すると思われる。このよう

な場合ほさておき,以下に.おいてほ,比較を単純化するため,-…応,パ-トナ

ーシップを我商法上の合名会社に同じものと考える。またリミテッド。パート

(168)参照,高柳・末延前掲注(124)Co‡pO柑tionっ (169)同Partner・Ship,なお同項目申において,1imitedpartnership隼は合資会社の

訳をあてている。深見義一・『アメリカ合衆国の会社』151(昭和23年)0武巧春男『イ

ギリス会社法概説』(昭和26年)21ほ,イギリス法上のパ-トナー・シップについて,

組合と訳すが,24Ⅳ25ほ,我国の合名会社に最も近似するものとされる0 (170)林寿ニイパ・-・トナ・・-→ンップの法的構造について」国学院法学10巻4号1(昭和47

年)。 (171)志津田代治『英米商事法概説』100(1969年),大塚前掲注(6)29「単なる訳語の

問題としてならば,かつて鴻教授が,トヴンジミテ■ッド・カンパニ-・ という会社

もある。これは無限茸任会社ということになるわけであるが,やや特殊なものであ

る。合名会社はパ】トナ・-シップとして別にあるから,それとは別のものであるが,

有限責任の特典を社員に認められないというものである。」とされたことで,少なく とも商法学の立場からは,一応解決済みともいえよう。つまり,unlimited company

にはすでに「無限玄任会社」という訳語が略々定訳化されており,partnerShipも,

わが商法学者の間でほ普通「合名会社」と訳されているのでないかと思われるからで

ある。」。 (172)「組合または合名会社」とされることもある。長浜前掲注(124)9,伊藤正己編F英

米法概論』28(昭和37年)。

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米国法匿おける会社のパ-・トナーシップ参加 --ヱ0∂- 551

ナー・シップを合資会社に,ジェネルラ・パ一トナ・-を無限責任社員に,リミテ (173)

ッド・パ-トナーーを有限責任社員に同じものと考える。

商法第55粂「会社ハ他ノ会社ノ無限責任社員卜為ルコトヲ得ズ」に.よって,

日本法上の会社が合名会社の社員お声び合資会社の無限責任社員となる能力を

欠いていることほ,明らかと思われる。この規定は,外形上米国法の一・般原則

に極めて’類似している。しかし次のような相違点がある。会社ほ合名会社およ

び合資会社も含み,したがって,株式会社のみならず合名会社および合贅会社

も,合名会社の社員または合資会社の無限責任社員とほなりえない。これに対

し,パ-・トナ・-シップはその意思によって,パ-トナ」-またほジェネラル・パ

(174) -・トナーとなることができ,それ紅何の法的困難もない。会社ほ経営支配の保 持の如何に・関係なく,合名会社の社見または合資会社の無限責任社点となるこ

とができないが,商法算55条の反対解釈によって,合資会社の有限責任社員お (175)

よび株式会社の株主となることはできる。これに対しっ コーポレ・-ションは,

経営支配を保持しておれは,パ-トナーまたほジェネラルりミ仙トナ-となり (17$)

うるが,経営支配を失う場合に.ほ,リミテッド・パ…トナ-となることもでき (177)

ない。商法努55条ほ,株式会社の他会社株式所有を合法化し,株式会社間の株

(173)リミテッド・パ-・トナーシップが我国法上の合資会社に相当する,ということにつ

いてほはとんど異論がないと思われる。高柳・末建前掲注(124)Limited partner-

Sbip,長浜前掲注(124)16,志津田前掲注(171)101。ただ武市前掲注(169)21は有

限薯任組合と訳される。 (174)RowLELY,10N PART甲ERSliIP64-65(1960),統~パートナ■-シップ法の規定

に.ついては参照,前掲注(139)。

(175)田中誠ニ・書永栄助・山村忠平『仝訂コンメンタール会社法』20(昭和38年)。もっ

とも,会社に対しで民法第43条が類推適用されるとの立場をとれば,論理的にほ,会

社が合資会社の有限茸任社員および株式会社の株主となる能力を有するかどうかは,

そのことが会社の目的の範囲内か否かによって決まることとなる。しかし目的の覇開 の解釈にあたって,目的達成に必要な行為を含むとし,さらに,その必要性の判断に おいて,行為の外形から客観的抽象的に判断する以上,現実には会社が南限五任社員

および株主となる能力を欠く場合ほほとんど起りえないと思われる。参府,加美和照

「会社の能力と定款の目的」現代商法学の諸問題田中誠二先生古蘭記念134(昭和42

年)。 (176)参照,前掲6-7。

(177)参照,前掲8-9。

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--JO■才一・ 第49巻 第5・6号 552

式所有による企業結合を肯諾する。これに対し,・・一・}-・般原則ほ,コーポレ′-・レヨ (178)

ン問の株式所有禁止と並存して,企業結合庭阻止的役割を果した。要するに,

商法第55条は,形式的・画一・的に.会社が他の会社の無限責任社員となることを

禁止する。、こ.れ紅対し,-・般原則は,コ-ボレーションがその経営支配を実質

的に確保することをめざす。

(重 商法簡55条の立法理由

現行商法第55条ほ明治幽年の商法改正により第44条の2として一新設されたも

のである。当時,ドイツにおいて,「会社が他の会社の社員.たりうるか。」が盛ん (179)

紅議論されており,これを受けて,日本でも,同じ問題が議論されていた。政

府委員によれば,立法理由は,解釈上の疑義を明らかにし,「会社ノ無限責任社 (180)

員クル者ノ人的信用ノ基礎ヲ明ニスル」ため,である。判例ほ,立法理由と.し

て,「会社存立ノ基礎ヲ危フクシ会社債権者ノ担保ヲ害スルニ止マラス会社力自

ラ叫・定ノ目的ノ下二経営スベキ業務ヲ有レ設立セラルル趣旨二反スル」をあげ (181)

る。この判決の見解ほ,学者によって,会社の独立性を確保するものとして受 (182) (183)

取られている。またかなノりの数の学説が,判決とはば同じ立法理由をあげる。

その外に.,学説紅は,会社が自ら会社事業の遂行の任に当るという自然人に周

(178)参照,前掲12-14。

(179)参照,片1力義勝「会社は会社の社員たることを得るか」法学新報15巻12,13号(明

治38年)。 (180)法律新聞社編『-改正商法理由書』117(明治44年)。同じ理由を述べる学説として,

岡野敬次郎『会社法講義案』16(大正9年)がある。

(1飢)大判大正5年11月22日(民録22輯2276)。本条をめぐるもう1つの判決,東京捷判 大正13年12月22日ほ「会社ノ存立ノ基礎ヲ危クレ会社本来ノ性質二反スル」を立法理

由とする,法律新報37号17(大正ユ4年)。直接,本条に関係する判例はこの2つしか

見あたらない。そして前者ほ合資会社が合名会社の社員に・,後者は合資会社が他の合

資会社の無限責任社員になった事件である。米国法上の一・般原則によれば,恐らくい ずれも問題なく是認されると思われる,参照,前掲37。本条が人的会社の独立性確保

に.役立っ∴ていることを示すものと思われる。

(182)竹内昭夫『注釈会社法(1).』160-161(昭和46年)。石井照久『一会社法上巻商法‡Ⅰ』

20(昭和亜年)。

(183)田中・吉永・山村前掲注(175)19,田中誠二『会社法詳論上劉48(昭和45年),岡

本督八『合名・合資会社法』10(昭和34年),大森忠夫『新版会社法講義』18(昭和41

年),石井前掲注(182)20,西原寛+・『会社法(商法講義ⅠⅠ)』18(昭和44年),八木弘

『会社法(上)』17(昭和40年),菱田政宏『会社法』15(昭和50年)。

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米国法における会社のバ」-トナ“∴ンップ参加 叫∫∂ざ- 553

(エg4)

有な人的要素を具備していない,ことをその立法理由としてあげる者もある。

また,本条を,「無限責任社員自らが責任を回避せん為紅会社を組織することあ

(1∂5) るを慮って,その実任離脱を防止する為の規定」と解する者もある。 この4つの立法理由はすべて学説にノよって批判されている。第1の理由は次

のように批判される。会社の信用とほ,財産的意義のものであり,会社債榛名

に損失を与えないことであるから,財産上の能力があって,会社債権者に対し (186)

無限讃任を負担しうる者はすべて無限責任社員たりうる。第2の理由ほ次のよ

うに批判される。会社が無限責任を負うことがいけないというのであれば,会 (187)

社ほ・-・山切の取引をなすことができなくなる,会社が他の事業経営者のため保証

をなし,他人の事業濫つき無限に責任を負担する能力を認める以上,会社が他 (18S)

の会社の無限讃任社員となるを否認しえない,会社が他の会社に関与すること

がいけないというのであれば,会社が他会社の株主となることも否認せざるを (189)

えない。弟3の理由ほ次のように批判される。無能力者が法定代理人を通じて

無限責任社員となりうる以上,会社が代表機関を通じて無限貴任社員となるの (190)

を否認すべきでない,また無限賓任社員は必ずしも巣務執行に.あたらなくても (191)

よい。第4の理由についてほ,「此ノ如キ者二対シテハ既二商法第65条(現行商

(184)参照,竹内前掲注(182)162。

(185)佐藤義雄『有限会社法講義』22(昭和14年)。

(186)片山前掲注(179)13号58-59。

(187)竹周省「会社が他の会社の無限着任社員となるの可否」〔判批〕京都法学会雑誌12巻

1019(大正6年)。

(188)松本蒸治「会社が他の会社の無限安住社員たることの正否」〔判批〕法協35巻7号

1269(大正6年)。ただし,大阪地判昭和30年1月18日下級民集6巻1号19,35は将

来紅向って時間的に.も,金額的にも無制限な連帯保証を負担するととは,商法第55条

の立法精神紅反し無効であるとの主張を,このような保証は,無限安住社員に.なるこ

ととその法的性質な異に.すること,相当期間経過後任意に.解約しうること,および主

たる債務の発生原因よりして事実上期間と額が限定されていることを理由として,し

りぞけている。参照,鈴木竹雄〔判批〕衆京大学商法研究会『商事判例研究昭和30年 度』129-133。

(189)竹田前掲注(187)1019-1020,松本前掲注(188)1269。参照,竹内前掲注(182)

160w163。

(190)松本恭沿『商法改正案評論』22(明治崩年)。

(191)上柳克郎「会社の能力」株式会社法講座第1巻87(昭和30年)。参照,竹内前掲(182)

163。

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第49巻 第5・6号 554 ーJO6-

(192) 法貨83条)ノ制裁アリ」と批判される。 このような批判に.基づいて,学説は・一般紅本条を立法論的に・妥当な規定でな

(193) いとし,実質的根拠を欠き,実際的効果においても好ましくないから,削除す (194) ぺきであるとする。さらに.,本条の立法目的を出資者の保護にあるとして,出 (195) 資者全員の承諾があれば,本条違反の行為を有効とする学説もある。

政府委員のあげる人的信用とは何を意味するのであろうか。道徳的・倫理的

高潔を意味しているとすれば,それを無限責任社眉紀要求することほ見当はず

れである。人的信用を自然人がその全財産で責任を負うこと紅伴って生じる信

用と解することはできないであろうか。すなわち,自然人が会社と経済的運命

を一体としていることによって生じる信用と解することほできないであろう

か。社員の責任が限定されている物的会社劇,会社そのものが自然人によって

責任回避の手段として利用される。本条ほ,人的会社が物的会社を経由して自

然人によって貴任回避の手段として利用されるのを防止し,それによって人的 (196)

会社への一一・般的信用,すなわち,人的会社は自然人の資任回避の手段とならな (197)

い,を確保しようとしたもの,といえないであろうか。立法技術上の良否は別

(198) として,本条が基本定型混成を回避して人的会社への・一・般的信用を維持し,そ れと共に,籍4の理由のあげるように・,取引相手方あるいぼ会社債権者保護に

(192)松本前掲注(190)23。 (193)西原前掲注(183)18,大森前掲注(183)18,大隅健一郎『仝訂会社法論上劉25(昭

和29年),上柳前掲注(191)87。 (194)竹内前掲注(182)163。 (195)吉永栄助「GmbH&Co.の効用とわが商法上の問題点」海外商事法務122号11

(1972)。

(196)商法改正研究会『一会社法運用の実態とその分析』53-57(昭和47年)によれば,合 名会社を選択する第1の理由は「社員が直接連帯・無限の貸任を負うので,対外的信 用がある」であり,合資会社を選択する算1の理由は「有限安任社員の出資により安 定した企業経営が約束され,かつ無限茸任社員による事兼の対外的信用,信頼度が高 い」である。

(197)本条をこのよう\な趣旨の規定と解するとすれば,物的会社のみが無限賀任社員とな りえない旨の規定に変更されるべきであろう。なおスイス依務法貨552条第1項およ び同第594条第2項は無限安住を負う社員を自然人にのみ限っているが,このような 趣旨からすれば,その必要はないと思われる。参照,後掲注(199)0

(198)基本定型混成(Grundtypenvermischung)について-は参照,泉田前掲注(22)40N 41,増田前掲注(22)176-178。

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米国法における会社のパ・一トナーシップ参加 ~JO7- 555

(199)

役立っていることほ確かと思われる。

判例のあげる会社存立の基礎を危うぐするとほ何を意味するのであうろか。

琴実に企業結合が行なわれているとほいえ.,現実とそれに対する立法者の価値

判断ほ異なりうる。立法者闇会社の独立性碇保をその政策目的とすることもで

ぎる。ただ会社の独立性碇保という政策目的芙現のための規定とLてほ,本条

ほ極めて不十分である。なぜならば,本条は会社が無限責任社員となることの

みを禁止すること紅よって人的会社の独立性を碇探することばできるにして

も,反対解釈紅よって,会社が有限責任社員となることおよび他会社株式所有 (200)

を合法化す・る。会社は他会社株式を所有することによって企業結合を行なうこ

≒ができる三人的会社の独立性確保に・何はどの経済的意味があるか疑わしいう

え軋,物的会社の他会社株式所有による結合を放置している以上,経済実態から

見れほ,会社の独立性を確保することにはならない。しかし企業結合が無限責

任社員地位を利用して一行なわれる場合と,他会社株式所有を利用して行なわれ

る場合とでほ,かなり異なる。会社横務に対し,株主は責任を負わないが,無

限責任社員は無限に責任を負う。株主の会社支配力は株式所有に比例するが,

無限資任社員の会社支配力は.相互に.同等である。無限賓任社員ほその出資財産

巌あるいは薯任引受厳に応じた会社支閻力を有しない。無限茸任社属地位を利

(199)GmbH&Co.KGほ有限会社の病理的現象であり,人的宜任社員の危険負担を会

社債権者に転嫁する手段として利用されて-いること紅ついでは参照,河本一郎「ドイ

ツ会社法セミナーの概要」商事法務721号20-21(昭和50年)。西独の南限会社法改正

政府草案および商法改正案は,物的会社を唯嶋の無限責任社員とする合資会社に対

し,取引相手方あるいは会社債権者保護のために,物的会社の商号をその商号申に付

加するとと,そ・の営米審類に会社の法形態および物的会社の商号を記載すること,有

限茸任社員の出資が無限童任社員に対する持分によって行なわれている範囲で会社 債権者k,対し給付ないものとされること,資本補完的(kapitalersetzende)社員貸

付は破産管財人によって否認されること,および計算書類について有限会社と同じ

方法で作成し同じ検査と開示の義務を負うこと,を要求している。参照,DIeS・ B6ttcher-Beinert~・Henne工ks,Die Zukunft de工・GmbH&Co nachdemEntwur董 einesneuen GmbH-Gesetzes,4wil-R Handelsrecht25,7.,1972(863)SS27N32, Ernst Gessier,Gesetzgeberische Probieme der GmbH & Co,In:Wirts- Chaftspraxis u.Rechtswissenschaft,Festschriftf。WaltherKastner155-167

(1972),大原栄一イ西ドイツにおける閉鎖会社としての有限合資会社(GmbH&Co

KG)」現代商法学の課題下鈴木竹雄先生古稀記念1263-1268(昭和50年)。

(200)参照,前掲37。

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第49巻 第5・6号 ーーJOβ- 556

用しての企業合同ほ,合併に事実上等しい影響を,またときによってはそれ以 (201)

上の影響を社員および会社債権者にもたらす。したがって,本条ほ,社員およ

び会社債権者保護のための制定法の厳格な合併手続を経ずして,企業合同を行

う手段として醸限責任社員地位が利用されるのを防止することによって,社員

および会社債権者保護に役立って-いる,ということができるであろう。もっと

もこのことほ,合併そのものほ許されている以上,会社が無限責任社員となる

ことを禁止する理由とほならない。ただ合併と同じ社風および会社債権者保護

手続を要求するのみである。なお,合併手続による場合紅は,合併後,会社は

1つしか存在せず,したがってその組織ほ簡単明瞭である。これに・対し,無限

音任社員地位を利用する場合にはノ,当事会社のすべてが存続し.,幾層にもわた

(202) って,種類の異なる会社を産み垂ぬることも可能であり,その組織浸複雑混沌 としたものとなることも可能であり,その点紅おいても制定法上の合併手続を

ないがしろにするものといいうる。本条がこのような事態を回避して,会社法

秩序を単純明白なものとすることに役立っていることも確かであると思われ (203)

る。

⑨ 会社ほパー・トナーとなりうるか,コ-ポレ-ジョンとパートナ-シップは

無限責任社員となりうるか。

(201) この課題を日本国内に.おける場合と米国内における場合とについて考える。 (205) そのさい,外国会社の属人法は設立準拠法であることを前提として考える。

日本国内 日米友好通商航海条約第22条第3項によって,コ-ボレージョン (206)

とパートナ-シップは,日本国の会社としての法律上の地位を認められる。こ

(201)参照,前掲33-34。

(202)参照,増田前掲注(22)i48,大原前掲注(199)1261。

(203)本条ゐ趣旨を,企業合同を行なう手段として,無限宜任社員地位が利用されるのを

防止するに参るとしても,制定法主義の行なわれる我国では,企業共同を行なう手段

として,無限資任社員地位が利用されるのを,解釈論吟よって合法化することほ,本

条あるかぎり,困難であろう。参照,前掲33-34。

(20・皇)海外合弁事業の増加に.つれて,この問題ほ慮要性をましつつあると思われる。

(205)参照,山田錬劇「外国会社」株式会社法講座第5巻1797-1811(昭和34年)。 (20S)コ-ポレ-・ジョンやパー・トナ-シップの日本国内での営業活動等については同条

約第7条~笥10条参照。

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米国法における会社のパートナ・-シップ参加 -J♂9一- 557

れによって,法人であるものについてほ,民法第36条第1項但苔の条約による (207)

認許がなされたものと解される。したがってコ-ポレ-ションは日本国におけ

る同啓のものと同一一・の私梅を有する(民法第36条第2項)こととなる。コ・-ポ (208)

レーションを株式会社と同種のものと解すると,コ-ポレ-レヨンほ無限責任

社員となる能力を有しないこととなる(商法弟55条)。パートナノーシップも,認

許された外国法人軋関する民法箆36条籍2墳を類推適用して,日本における同 (209)

種のものと同--・の私権を賀すると考えられる。パ-トナーシップを合名会社に (210〉

同種のものと解すると,パ一千ナーシップは無限責任社員と.なる能力を有しな

いこ.ととなる(商法第55条)。民法第36条第2項ほ,認許された外国法人にその

属人法上享有しえない私権といえども,同種の内国会社がそれを享有しうる場 (211)

合に.ほ,享有しうることまで認めたものではない。したがって,コ,「ボレー・ジ

ョンは,属人法上制定法またほ基本定款の授梅ないかぎり,その経営支配を失

うような場合には,取引安全保護の考慮ほ別として,合資会社の有限責任社員 (212)

となることもできない⊂ととなる。パ-トナーシップは,合名会社の有限責任

社員となる能力が商怯第55条によって制限されていない以上,合資会社の有限 (213)

責任社員となりうる。会社は,パートナーーシップを合名会社紅,リミテッド・パ (214)

--トナーシップを合資会社に同種のものと解する以上,商法第55条から,パ-

トナ-・またほ.ジェネラル・パートナ「となりえないが,その経営支配を失うよ

うな場合でもリミテッド・パノー・トナーとなりうるとととなる。

米国内 外国法人の権利能力を特に.制限する法規がないとの前提で考える。

会社は,パートナーーまたほジェネラル・パ-トナ」-が無限責任社員に同じと解 く215)

する以上,そのいずれに・もなりえない(商法発55条)。コ-ボレージョンとパ・-

(207)山田前掲注(205)1835。

(208)参照,前掲35-36。

(209)山田前掲注(205)ユ867-1868。

(210)参照,前掲36。

(211)山田前掲注(205)1840。

(212)参贋,前掲37。

(213)参照,同所。 (214)参照,前掲36-37。

(215)参照,同所。

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第49巻 第5・6号 558 -JJO--

トナ・-・シップが無限責任社員となりうるかどうかは,商法算55条が,会社の無

限責任社員として加入する能力のみならず,会社の麺限責任社員としで会社を

受入れる能力につい・ても規定したものであるかどうか紅よる。規定の文言上か (216)

ら見れば,前者のみと見えるが,その立法理由からして\後者をも含むものと解 (21T)

する。そうであるとすれば,コーポレーーレ′ヨンおよ‡ソニパ・--・トナ-シ、ップは無限

資任社員となりえないこととなる。コ・-ボレーションは,その経営支配を失う (218)

場合には,合資会社の有限責任社員となることもできないが,パートナ・-シッ

プは,商法算55粂が会社の有限責任社員としての受入れ能力を制限し’くいない

.以上,合資会社の有限安住社員にほなりうる。

以上のように解すると,合名会社,合資会社,パートナ・-シップ,リミテッ

ドりミ・-トナーーシップは,両国資本の合弁事業の法形態として,事実上利用で

きないことになり,実務上様々の不便が発生すると思われる。この不便は現地

子会社(株式会社またほコ-ボレーション)を設立して-,その子会社を通じて

合弁事業(株式会社またほコ・-ボレ岬・ンヨン,米国内においては子会社基本定 (219)

款の授権によってパ・-トナ・-∵ンツプまたほリミテッド・パ∬トナーシップも)

に参加することによって解決される。また子会社を通じて合弁事業匿参加すれ

ば,子会社株式に責任が限定されること,および子会社株式の処分に.よって合 (220)

弁事業から事実上脱退し投資を回収できるという利点もある。

④ 商法第55条の是非

商法第55条の排止に.よって,発生する主な効果ほ次の3つであると思われる。

(216)第1の立法理由,参照,前掲38,39㌦41。

(217)パ」-・け-シップが自然人をパートナーとして含む場合には,パ-・ト:ナ・-シップが

無限賞任社員となること紅ついて,第1の立法理由はあてはまらないこととなるが,

商法葦55条の規定の画一的な表現からして,自然人をパートナ叩として含むパーートナ

ー・シップを,特別扱いすることほできないものと解する。

(218)参照,前掲37。

(219)参照,前掲34-35。

(220)坪田前掲注(1)71。このような利点から,現地子会社を設立して,この子会社を

通じて合弁事業に.参加することが,現実に.も多いようである。参照,坪田同所,抜山

前掲注(23)112。ただこの方法は,合弁事業の法形態としで直接ノミ-・トナ■-シップを

利用する場合に.比べると税負担の増加する恐れがある。参照,長浜前掲注(124)15r 17,アーレンス&デーヒス前掲注(40)395。

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米国法における会社のパートナヤー・シップ参加 --ヱJヱ・- 559

(1)企業継続性の維持 無限責任社員が自然人であると,1その死亡に・よって,

企業解体の危険が発生する。この危険は合資会社の唯一無限責任社眉が死亡し, (221)

その妻子が営業を継続する能力を有しない場合にはとく紅明白である。このよ

うな場合,その妻子が物的会社を組織し,その物的会社が無限貴任社員地位を

(222) 引継ぐとすれば,企業ぬその商号を含めてあらゆる長所を維持できる。 (2)会社支配権限と無限責任の分離 鰻限眉任社員である物的会社の代表者

ほ,無限安住を負うこ.となく,会社を支配できることとなる。彼は,合資会社

でほ,有限責任社員の出資恩に関係なく,会社を支配できる。これによって彼

は,人的会社濫おける無限責任社員ゐ会社支配権を享受しながら,物的会社の

代表者の貴任を享受できる。すなわら,人的・物的両会社の長所が共紅利用可

能となる。このことほ企業活動の湾発化に資することとなるであろう。危険は

大きいが,小路本で大きな利潤の得られる可一能性のある分野ではこと紅そうで

あろう。 (223)

(3)企業結合の手段としての無限着任社員地位の利用 企業結合を行う手段

として,株式会社を利用した場合に比べ,人的会社を利用した場合にほ,参加

者ほ,出資額に関係なく,対等の会社支配力を有する,また,株式会社に関す

る制定法の厳格な規制に・とらわれることなく,会社内部関係を自由に・形成でき (2餌)

る。また,人的会社と物的会社を種み重ねることによって支配紅必要な資本を (225)

いらじるしく引下げることが可能となる。税制上.の利点は,日本でほないとし

(226) (227) ても,海外での合弁事業への人的会社の利用に・よって得られる可能性がある。

(221)このような場合に.は,米国法の一顧原則の下でも,コ-ポレ-・ションはパートデ‾

となりうる。参照,前掲6-7。

(222)参照,泉田前掲注(22)48。

(223)参偲,前掲33-34,41-42。 (224)このことほ,合弁事業忙しばしばみられる,いびつな2人株式会社をなくすことに

役立つであろう。 (225)たとえば,甲合資会社を支配するために・ほ,乙錬式会社は甲への出資の必要はな

く,その唯一蘭限箕任社員となれほよい。乙株式会社の株式の過半数を所有すること

によって,丙合資会社ほ乙を支配できる。丁株式会社は,丙への出資なくして,その

唯一蘭限箕任社員となること紅よって,丙を支配できる。

(226)増田前掲注(22)267-268。

(227)米国紅ついてほ参照,前掲注(220),西独紅ついてほ参照,増田前掲注(22)162-ユ630

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第49巻 第5・6弓 ーr jJ2- 560

こ.れらの効果に.関連して関係者の利益が害されないかどうか問題となる。利

害関係者としては,参加会社の社員および債権者と被参加会社の社員および債

権者がある。参加会社の現在の社員および債権者に.とって会社が他の会社の無 (228)

限責任社員となることは事実上合併紅等しい影響をもたらしうる。したがって

合併におけると同じ保護を彼らに与える必要があると思われる。被参加会社の

社員の利益は∴鰊限責任社員となるにほ,総社員の同意を必要とする(商法第

63粂,第72条,第147条)ので,これに.よって現行法上でも守られる。会社の外

紅.も無限責任を負う自然人が存在する場合に.ほ,被参加会社の債魔者の利益

は,無限晋任社員の加入またほ交替とかぁりなく,これに.特別の保護が必要と

されない以上,特に考慮する必要ほないと思われる。無限責任を負う自然人が

存在しなくなる場合にほ,被参加会社の債権者の利益は害される恐れがあり,

彼紅も合併におけ■ると同じ保護を与える必要があろう。またこの場合紅ほ被参

加会社の将来の債権者を保護することも必要となるが,このためには,商号中 (229)

において,麺限眉任社員が会社であることを周知させることが必要であろう。

なお参加会社の将来の社員および債権者の利益保護も問題となるが,これにつ

いては周知のよい方法ほ.ないと思われる。

なお以上のような保護が仮に与えられたとしても,人的会社が物的会社を経

由して自然人紅よって責任回避の手段とし・てあるいは無限定任社員の危険負担

を会社債権者紅転嫁する手段として利用されるようになることほ確実と思われ

る。したがって,人的会社に.対する・一・般的信用ほ下落することとなるであろう。 (230)

また異種会社の組合わせに.よって,会社法秩序が複雑化するであろうし,企業

結合を促進するこ.とに.もなろう。

先に.商法発55条の立法理由に関連してその効果を見,いまその排止の効果お

(228)参照,前掲33-34,′41-42。

(229)参腰,前掲注(199)も

(230)たとえば西独における最狭義(南限会社が合資会社の唯一・無限安住社員であり,同

時にその有限会社の社員のみが合資会社の有限安任社員である場合)のGmbH&Co をめ(llる議論を想起せよ。参鼎,Wolfgang Druchlaub,Die wechselseitige Be- teiligung zwischen einer GmbH:und einer Kommanditgeselischaftin der GmbH Co.KG,DB・Heft49vom6.12.1974,SS.2337-2342。

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Page 47: 米国法における会社の - 香川大学shark.lib.kagawa-u.ac.jp/kuir/file/4887/20190528140325/...米国法における会社の パートナーシップ参加 市 川 兼 Ⅰ序

米国法における会社のパ-一トナ-シップ参加 -Jヱ3- 561

よび排止したときの利害関係者の保護の方法に・?いて:見たのであるが,なお,

本条の是非を決しがたい。ただ強いていえば,本条を是とする方軋傾むく。そ

の主な理由は次のとうりである。人的会社に.対する--J・般的信用を維持すべきこ

(231) と,会社法秩序の単純明白さを維持すべきこと,無限賓任社員地位ほ,企業間 の合同またほ共同の手段として,合併または株式所有紅比べて,利害関係者へ

の影響がより大なりうるにもかかわらず,利害関係者の保護および周知に疑問

の残ること。

(231)西独においては,株式会社が法の予想した形で現実にも利用されているの紅対し,

人的会社はGmbH&Co.を通じて現実にはかなりいびつな用いられ方をされてい

るようである。参照,河本前掲注(199)19-21。これに対し,日本では,株式会社の

用い方が個人的企業にも利用されるといういびつな形となっているが,人的会社ほ,

個人企兼よりも税金が安くなるに.もかかわらず,個人企巣と同じ信用を獲得できるこ

ともあって;一応法の予想したとうりの用いられ方をされているようである○参腰,

金子宏「租税と企業形態」現代法と企業・現代法9巻亜(1966),前掲注(196)。この

人的会社の用いられ方を法は維持すべきでないかと思う。このことは同時紅人的会社 の取引相手方の信頼保護にもなろう。

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