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20201022石油市場の現状と背景及び今後の展望 石油天然ガス開発推進本部 野神 隆之

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  • 2020年10月22日

    石油市場の現状と背景及び今後の展望

    石油天然ガス開発推進本部野神 隆之

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    免責事項

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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    原油価格(2003~20年)

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    原油価格(2020年1~10月)

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    原油価格(2020年6~10月)

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    最近の石油市場(2020年6月下旬~10月中旬)(1)

    1. 2020年6月下旬~10月下旬の原油価格(WTI、以下特に言及のない限り同様)範囲:1バレル当たり36.13ドル(9月8日)~同43.78ドル(8月26日)(※2月下旬~6月中旬:54.50ドル(2月20日)~マイナス40.32ドル(4月20日))、比較的限られた範囲で変動、上昇もしくは下落傾向不明確(強弱材料が交錯)

    2. 主な上昇要因① 2020年世界石油需要見通し上方修正(7月7日(EIA)及び7月10日(IEA))② 米国原油在庫減少③ 高水準のOPECプラス産油国減産遵守率④ 米国金融当局が、中長期的に平均2%の物価上昇率に到達したうえで、同水準の物価上昇率が確実に維持でき

    るようになるまで、金融緩和姿勢を持続する方針である旨表明した他、別途2023年までは現状のゼロ近辺の金利が維持されるとの姿勢を示唆(9月15~16日FOMC)

    ⑤ 原油価格がさらに下振れした場合には、10月に臨時総会を開催する可能性がある旨サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が明らかに(9月17日報道)

    ⑥ 現状2020年末迄となっているOPECプラス産油国減産措置の2021年3月末の延長をサウジアラビアが検討しているとの情報(10月8日)

    ⑦ ハリケーン「ローラ」及び「サリー」等の暴風雨の米国メキシコ湾来襲による沖合原油生産関連施設からの従業員避難と原油生産の停止(8月下旬及び9月半ば)

    ⑧ 米国による対イラン国連制裁の全面復活手続きの開始表明(8月20日)⑨ 中国の堅調な原油輸入

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    最近の石油市場(2020年6月下旬~10月中旬)(2)

    3. 主な下落要因① 新型コロナウイルス感染拡大による、一部地域の個人の外出規制及び経済活動制限の強化② 米国追加経済対策(7月31日失業保険追加給付措置失効)を巡る米国トランプ政権、同国議会共和党と議会民主

    党との対立③ 2020~2021年世界石油需要見通し下方修正(8月13日IEA)④ 米国政府による、中国アプリ制作会社との取引禁止命令や香港当局幹部に対する制裁の発動(8月6日トランプ大

    統領令署名)⑤ リビアで対立する勢力間での停戦暫定合意の情報(8月12日)及び原油生産及び出荷に関する不可抗力条項の解

    除開始(9月20日)と原油生産量の増加⑥ サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコによる原油公式販売価格引き下げ(9月5日)⑦ 米国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期終了に伴う石油不需要期突入と製油所での秋場のメンテ

    ナンス作業実施による原油購入意欲減退観測⑧ 米国石油坑井掘削稼働数増加

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    石油市場を巡る今後の注目点及び展望

    1. 新型コロナウイルス感染再拡大により個人の外出規制及び経済活動制限の再強化が広がるようであれば、石油需要の伸びの減速と石油需給の緩和感が市場で再燃する結果、原油相場に下方圧力

    2. 効き目の強い新型コロナウイルスワクチン(もしくは治療薬)が実用化され感染が拡大しないとの展望が広がるようであれば、石油需要回復と石油需給の引き締まり期待が市場で強まる結果、原油相場に上方圧力

    3. OPECプラス産油国の減産遵守状況及び減産措置政策(12月1日OPECプラス産油国閣僚級会合)を巡る情勢(2021年1月1日以降日量580万バレル(現状同770万バレル)の減産へと規模を縮小するか?)

    4. 地政学的リスク要因(リビア等)5. 米国シェールオイル開発・生産状況(石油坑井掘削装置稼働数)6. 米国大統領選挙(11月3日)に向けて、もしくは選挙後の経済政策等を巡る市場の観測と株式相場及び米ドルの変

    動7. 低金利政策(米国政策金利0.00~0.25%に)長期化(物価上昇率2%超を容認):緩和マネー流入等で原油価格変

    動増幅の可能性8. 秋場後半から冬場にかけての気温:ラニーニャ現象発生及び継続で、北半球で厳冬観測、暖房用石油需要上振れ

    の恐れ

    ※原油価格下落(ないしは下落が予想される)局面においては、OPECプラス産油国による減産措置強化に関する姿勢(ないしは実際の減産措置強化)が示されることにより、原油価格を下支え、他方新型コロナウイルス感染を巡る不透明感が原油価格の上昇を抑制する格好に

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    世界石油需要見通しの推移

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    米国原油供給見通しの推移

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    米国で未仕上坑井仕上げ数が相当増加するのに必要な原油価格(WTI)

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    米国で石油坑井掘削装置稼働数が相当増加するのに必要な原油価格(WTI)

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    米国石油坑井掘削装置リグ稼働数、原油生産量及び原油価格

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    世界石油需給シナリオ(2020年)

    ※リビア、イラン及びベネズエラの原油生産は2020年9月の水準が継続すると仮定

    (単位:日量百万バレル)2019 1Q20 2Q20 3Q20 4Q20 2020

    総需要① 100.07 94.08 83.02 93.56 96.13 91.71

    非OPEC石油生産 65.64 66.71 61.37 62.10 62.17 63.08

    OPEC原油生産 29.49 28.18 25.65 24.08 24.08 25.49OPEC NGL生産 5.44 5.42 5.17 5.09 5.14 5.20

    総供給② 100.57 100.31 92.19 91.26 91.39 93.77

    在庫変動その他(②-①) 0.50 6.22 9.17 -2.29 -4.74 2.06

    出所:各種データをもとに試算

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    世界石油需給シナリオ(2021年)

    ※リビア、イラン及びベネズエラの原油生産は2020年9月の水準が継続すると仮定

    (単位:日量百万バレル)2020 1Q21 2Q21 3Q21 4Q21 2021

    総需要① 91.71 95.61 96.12 98.21 98.81 97.20

    非OPEC石油生産 63.08 63.10 63.47 63.78 63.73 63.52

    OPEC原油生産 25.49 25.52 25.52 25.52 25.52 25.52OPEC NGL生産 5.20 5.29 5.31 5.31 5.31 5.30

    総供給② 93.77 93.91 94.30 94.61 94.56 94.35

    在庫変動その他(②-①) 2.06 -1.70 -1.81 -3.60 -4.25 -2.85

    出所:各種データをもとに試算

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    世界余剰石油在庫シナリオ(2020~21年)

    ※2020年10月20日現在

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    ラニーニャ現象:この冬は厳冬?

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    リビア情勢(1)

    1. 西部トリポリを拠点とする国民合意政府(GNA:Government of National Accord)(国連及びトルコ等が支援)と東部トブルクを拠点とする代表議会(または暫定議会)(HoR:House of Representatives)を支援する、ハフタル将軍を指導者とするリビア国民軍(LNA:Libya National Army)(エジプトやUAE等が支援)との間で内戦状態に。

    2. このため、2019年12月には日量114万バレルであった同国の原油生産量は2020年5月には同8万バレルに。3. 8月21日にGNAとHoRが停戦実施で合意。4. これに対し、LNAはGNAの軍が同国中部シルトへの進軍を中止していないとして、戦闘を継続する旨8月24日に明ら

    かに。5. ハフタル将軍は9月12日までに同国内のエネルギー部門の操業を完全に再開できるよう約束した旨在リビア米国大

    使館(現在はチュニジアのチュニスで臨時執務中)が9月12日に声明で発表。6. 9月18日にはLNAのハフタル将軍が、GNAとの間で石油販売収入を公平に分配する他、分配が公平に実施されてい

    るかを監視する委員会を設置する旨合意したことにより、封鎖されている油田関連施設の操業を1ヶ月間可能にする旨表明。

    7. 同国で安全が確認された原油生産・出荷関連施設で操業再開。8. 10月16日には日量50万バレル程度の原油生産水準に到達した旨の情報。9. GNAのマイテーグ(Maiteeg)副首相は、同国生産量は2020年10月末までに日量55~56万バレルに、2020年末まで

    に同100万バレルに到達すると発言(10月20日報道)10. 10月21日に両勢力は停戦延長で合意。しかし、依然として今後の停戦破棄、内戦再開、及び同国の原油生産の大

    幅減少となるリスクも存在することから、市場は警戒。

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    リビア情勢(2)

    出所:米国エネルギー省

    Sirte

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    リビア情勢(3)

    石油市場の現状と背景及び今後の展望免責事項原油価格(2003~20年)原油価格(2020年1~10月)原油価格(2020年6~10月)最近の石油市場(2020年6月下旬~10月中旬)(1)最近の石油市場(2020年6月下旬~10月中旬)(2)石油市場を巡る今後の注目点及び展望世界石油需要見通しの推移米国原油供給見通しの推移米国で未仕上坑井仕上げ数が相当増加するのに必要な原油価格(WTI)米国で石油坑井掘削装置稼働数が相当増加するのに必要な原油価格(WTI)米国石油坑井掘削装置リグ稼働数、原油生産量及び原油価格世界石油需給シナリオ(2020年)世界石油需給シナリオ(2021年)世界余剰石油在庫シナリオ(2020~21年)ラニーニャ現象:この冬は厳冬?リビア情勢(1)リビア情勢(2)リビア情勢(3)