石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度...

177
平成 27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に関する調査 平成 28 3 一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター

Upload: others

Post on 11-Aug-2020

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

平成 27年度 石油製品需給適正化調査

石油製品の価格形成及び取引実態と

石油産業の収益構造に関する調査

平成 28年 3月

一般財団法人 日本エネルギー経済研究所

石油情報センター

Page 2: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 1 -

はじめに

平成 26 年度下期以降、原油価格の下落が継続している。この影響を受け、石油情報センタ

ーの調査では、全国平均のガソリン価格は平成 26年 7月の 169円/Lから、直近では 112円

/L 台まで下落している。この中にあって石油元売会社は、特約店や小売業者に対する石油卸

価格(仕切価格)の決定方式を、平成 20年 10月以降、従来の月決め方式に代わり、小売価格

により直近の石油市場の変動を反映させることを目的に、直近の製品スポット価格などを参考に

週単位で卸価格を設定する方式(週決め方式)に変更した。しかし同方式でも、原油を精製し自

系列内の SSに配送するコストを回収できないケースがあることがしだいに明らかとなってきた。

このため、平成 26 年夏ごろからは、従来の週決め方式を修正し、原油コストをより反映できる

仕切価格を設定する傾向にある。しかしこれに関しては、小売事業者を中心に不透明だとの批

判が強まっており、平成 26年 7月に総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会石油・天然

ガス小委員会が取りまとめた中間報告書において石油製品の価格指標が、「指標としての課題

を克服し、更に信頼性を高めていく取り組みも必要」との指摘にも反する結果ともなりかねない。

このような状況から、石油情報センターでは、経済産業省の平成 27 年度石油製品需給適正

化調査(石油製品の価格形成及び取引実態と石油産業の収益構造に関する調査)に応札し、

需給・価格の分析、欧米での実態調査、さらには独禁法の適用事例や日米市場での価格転嫁

等に関する統計的分析を実施し、透明で信頼性の高い価格指標を我が国に適用する上での課

題等の抽出を行った。

平成 27年 7月に公表された長期エネルギー見通しにおいても、平成 42年(2030年)の我

が国エネルギー供給に占める石油のシェアは全エネルギーの中で最大である。石油市場や石

油企業が今後も健全な発展を遂げることは、我が国エネルギー供給の安定につながる重要な

課題であり、本調査がその課題解決に向けた一助となれば幸甚である。

平成 28年 3月

一般財団法人日本エネルギー経済研究所

石 油 情 報 セ ン タ ー

Page 3: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 2 -

目 次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅰ.調査の概要

≪米国≫

1.石油製品供給 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

2.価格指標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

3.独占禁止政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

≪欧州≫

1.石油製品供給 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

2.価格指標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7

3.独占禁止政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

≪日本≫

1.石油製品供給 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

2.価格指標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

3.独占禁止政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

≪透明性の高い価格指標を確立する為の方策≫ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

Ⅱ.米国の石油産業

1.石油製品市場の現状と推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

(1)需給動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

(2)米国市場の流通概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

2.石油市場の主なプレーヤーとその変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

(1)精製事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

(2)タンク事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

(3)ジョバー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

(4)業界団体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

3.価格形成メカニズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

(1)取引形態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

(2)価格指標の利用概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

4.価格形成に影響を与える諸要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

(1)石油需給統計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53

Page 4: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 3 -

(2)在庫との関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57

(3)地政学的リスク ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

(4)地域需給等 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

5.マーケットの変化と企業の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

(1)石油流通市場の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

(2)企業の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 60

6.独占禁止政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

(1)関連法規 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

(2)独禁法関連の運用事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

(3)石油市場に対する監視 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69

Ⅲ.欧州の石油産業

1.石油製品市場の現状と推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70

(1)需給動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 70

(2)欧州市場の流通概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77

2.石油市場の主なプレーヤーとその変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87

(1)精製事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 87

(2)タンク事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88

(3)トレーダー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 89

(4)業界団体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90

3.価格形成メカニズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91

(1)取引形態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91

(2)価格指標の利用概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91

4.価格形成に影響を与える諸要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

5.マーケットの変化と企業の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

(1)市場の分断化とスポット市場の成長 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 105

(2)スーパー/ハイパーの伸張 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107

6.独占禁止政策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108

(1)各国の独禁法体系 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108

Ⅳ.我が国の石油産業と欧米との比較

Page 5: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 4 -

1.石油製品市場の現状と推移 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118

(1)需給動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118

(2)日本市場の流通概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123

2.石油市場の主なプレーヤーとその変遷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124

(1)精製事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 124

(2)燃料商社・輸入業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126

(3)タンク事業者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126

3.価格形成メカニズム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126

(1)取引形態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127

(2)価格指標の利用概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128

4.価格形成に影響を与える諸要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128

(1)原油価格 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128

(2)統計情報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 129

(3)価格転嫁タイムラグ及びシェア獲得競争等による影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 131

5.リスクヘッジの現状 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133

(1)リスクヘッジ需要の欠如 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133

(2)TOCOMにおける制度上の問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133

(3)税務上の問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134

(4)今後の見通し、対応について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135

6.価格指標の透明化に応じた市場の変化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 136

(1)日本の石油産業を取り巻く状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 136

(2)系列玉と業転玉の 2系統の流通ルートの存在 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 137

(3)卸価格差について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138

(4)卸価格決定に際して指標価格を採用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139

(5)指標価格の捉え方の違い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139

7.独禁政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139

(1)独禁政策と独占的状態の規制の事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 140

(2)不公正な取引方法(不当廉売、差別対価)に関する規制について・・・・・・・・・・ 140

Ⅴ.統計的手法による日米石油市場の分析

1.日本のガソリン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142

Page 6: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 5 -

(1)価格変動状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 142

(2)中長期的な均衡関係と転嫁関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144

(3)回帰モデル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 145

(4)転嫁率推計値 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146

2.日本の軽油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150

3.日本の灯油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154

4.米国 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 158

(1)ガソリン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 161

(2)軽油 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 166

5.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169

Ⅵ.透明性の高い価格指標を確立するための方策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 174

Page 7: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 6 -

Ⅰ.調査の概要

≪米国≫

1.石油製品供給

米国市場の特色としては精製、販売間に於いて垂直統合的な動きは無く、各段階に於い

てプレーヤーが異なっている状況にある。

これは経済的問題(過去における精製部門、流通部門における収益悪化)、メジャー合

併によるスーパーメジャー誕生に伴い独禁当局からの製油所・流通部門売却命令等により

推進されたと考えられる。結果、米国の精製能力は 17,900 千 b/d となっているが、スー

パーメジャーと言われる国際石油資本の製油所の精製能力は 5,897 千 b/d と米国全体

の約1/3を占めるにすぎない。会社別に見るとエクソンモービルの10.4%がトップシェアとな

っており、流通部門に於けるシェアトップ(SS数)はシェルマークSSの 9.4%という状況でい

ずれも 1割前後となっている。

石油製品市場のプレーヤーとしては大きく分けて精製事業者(スーパーメジャー、独立系

を含む 60社が 171 ヵ所の製油所を運営している)、油槽所、パイプラインを所有しているタ

ンク事業者、卸売・小売を担うジョバーがある。平均的なジョバーの燃料販売数量は約372

千KL/年、従業員数 550名となっている。

米国では、一般的に油槽所・ターミナルの段階で石油製品に添加剤を加えることにより、

それぞれの系列向け製品やノンブランド品の製品性状に違いを設けている。系列事業者向

け製品の卸売価格はブランドラック、非系列向け事業者向け卸売価格はアンブランドラック

と呼ばれているが、一般的にこの価格差が系列事業者のブランド料に該当する。

2.価格指標

米国では一般的にバージ、パイプラインなどによる大口取引をスポット価格、ブランドを有

するSSに対する油槽所渡し価格をブランドラック価格、PB事業者に対する油槽所渡しをア

ンブランドラック価格として分類している。

スポット市場における取引を調査し査定した価格をPlattsやArgusといった価格情報会社

が発表しており、業界における価格指標として位置づけられている。PlattsとArgusの価格査

定方法は異なるものの、取得する情報の信憑性を重視しており、価格情報以外に「売買当

事者」「受渡日時」「受渡形態」といった情報を明示できない取引は評価の対象外としてい

る。

油槽所渡しであるラック価格はスポット価格をもとに形成されるが、その価格は供給者で

ある精製事業者もしくはジョバーによって設定される。ブランドラック価格の決定要素はスポ

ット価格に加え他社の価格設定などによる競争要因が中心で、地域においてプライスリーダ

ーとなるブランドとのバランスを考慮して決定される。その他の要因としては精製マージン、

製油所の稼働状況、需給動向および地域戦略などが加味される。その一方でアンブランド

ラックは精製事業者の需給調整といった意味合いが強く、地域における需給環境によって

Page 8: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 7 -

大きく変動する。需給が逼迫している状況下ではアンブランド価格がブランド価格を上回る

ケースもあるが、基本的にはブランド価格は安定供給コスト、サインポール、カードシステム

などの販促支援などによりアンブランド価格よりも大よそ4セント/ガロン(約1.2円/L)程度割

高となる。

3.独占禁止政策

米国石油産業の流通部門に対する法規制には差別対価を禁じる1936年に制定された

ロビンソン・パットマン法 があるが、スーパーと一般小売市場など市場が異なる場合は同一

商品とはみなされないこと、また地理的に違う場所での競争(顧客から見た代替性がある

地理的な範囲外)も対象とはみなされないためこの規定は適用されないこと、さらに立証に

も難しい点が多いことなどから、石油製品市場での適用はかなり困難となっている。

州によっては小売店保護の為、石油会社が直接SSを運営することを禁止している分離

法、独立系のSSを精製会社やジョバーの運営する直営店から保護する目的で、直営店が

運営の必要経費をカバーできない価格を設定することを禁止するコスト割れ禁止(SBC、

Sales Below Cost)法等がある。

≪欧州≫

1.石油製品供給

欧州においてガソリンは輸出、軽油は輸入という製品バランスとなっており、需要に占める

生産の割合を国別にみるとイギリスではガソリン 75%、軽油 129%、フランスではガソリン 69%、

軽油 181%、ドイツではガソリン 86%、軽油 121%、となっている。

結果的に製品の輸出入が活発に行われており、特にフランスでは軽油の供給に占める

輸入の割合は大きくなっている。

流通段階ではハイパーSSのシェア拡大によりSSが淘汰されており、イギリスでは1990年

約 19 千ヵ所あった SS は 2010 年には約 9 千ヵ所と 20 年で約半数になっている。2011

年以降減少率は鈍化傾向にある。

フランスにおいては 1990 年時点の SS 数が約 25千ヵ所、2010 年には約 12千ヵ所と

20年でイギリス同様約半数にまで減っている。

一方、ドイツでは閉店法によりSS以外では夜間営業が禁止されており、この為ハイパーが

SSに進出していない。この結果、SS減少率は相対的に穏やかになっており 1990 年時点

の SS 数が約 19千ヵ所、2010 年時点で約 14千ヵ所と 20年で約 3割弱の減少に止ま

っている。

2.価格指標

イギリスのSS事業者は一般的にPlatts価格(UK CIF NWE)に諸経費いわゆるプレミアム

を加えた価格で契約している。世界有数の会計事務所であるDeloitteがイギリスの

Page 9: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 8 -

Department of Energy and Climate Change(DECC)に提出した報告書「Study of the UK

petroleum retail market」によれば、プレミアムはおよそ1.5ペンス/L(約2.4円/L)割高の水準

にあり、ここで挙げられているコストの内訳はクレジットやフリートなどのカードサービス、計量機

の保守管理料、燃料油の在庫管理料などとしており、2次供給や貯蔵に係る費用は含んでい

ない。

一方SS事業者のマージンは1990年代後半5~6ペンス/L (8.0~9.6円/L)程度の水準

から2012年の段階では4~5ペンス/L (6.4~8.0円/L)まで圧縮されている。石油会社とSS

事業者の典型的な契約は、5年契約を基本としており、価格水準はPlatts+諸経費、支払は

納入後3日以内、そして石油製品の供給は持ち届けで他社製品の納入は認めていない。

フランスは税金を差し引いた燃料油の中身価格が欧州一安いとされている。その背景には

市場の6割強を支配しているハイパーの存在が挙げられる。フランスのTotalはフランス北西部

において、Platts Northwest Europe(NWE)を指標価格としている。Platts NWE CIF価格は

ARA地区での輸入価格となり、この価格からプレミアムを調整したものが、SS事業者への卸売

価格となる。一方製油所出し価格となるNWE FOB価格はNWE CIF価格から欧州各地域から

ARA地区へのフレートを差し引いた価格となるが、この価格がスポット価格に該当し、CIF価格

とFOB価格の差額がプレミアムと認識されている。フレートはPlattsが査定し発表しているClean

Tanker wireとなるが、Plattsのメソドロジーによれば2016年1月4日時点におけるULSD(超低

硫黄軽油)のフレートは0.744㌦/㌧(0.75円/L)と査定されている。欧州では、このCIF価格

(プレミアム調整後)とFOB価格の差が下流部門における元売会社の収益源として認識されて

いる。なお、SS事業者の小売マージンはCPDPによると1.3セント/L (1.6円/L)の水準にあり、

今回調査したなかでも最も厳しい競争環境にある。

ドイツにおける卸売価格の指標は一般的にPlattsが使用されているが、内陸部や南部につ

いてはOil Market Report(O.M.R)が活用されている。O.M.RはPlattsにフレートおよび各地域に

おける需給状況を反映したものとなる。石油会社・トレーダーと独立系SS事業者との取引は約

8割の取引についてターム契約が結ばれるが、これらの価格にプレミアムの調整をしたものとな

る。PBのターム契約の期間は1年となっており、この間のプレミアム額は固定される。ブランド

物の特約店との契約は5~10年程度の長期契約となる。欧州にはブランド料という概念は無

いものの、販売マージンも一部で石油会社が投資したサインポールやカードシステム等の投資

回収は行っている。

ドイツShellの場合、SS事業者をセグメントで分類しており、Shellのマージンは最大となるC1カ

テゴリーは9セント/L(10.8円/L)からマージンがゼロとなるC10まで10段階に細分化されてい

る。SS事業者のセグメント状況は分からないが、卸売価格はかなり幅が設けられている状況に

ある。また、Shellブランドの飲料、食料品などを取り扱うショップを併設した場合、その店舗には

0.5セント/L(0.6円/L)のブランド料を徴収している。またSSのブランドによって「Aマーケット」

「Bマーケット」「Cマーケット」と3段階のカテゴリーに分類されている。Aマーケットは、Aral(BP)、

Shell、ExxonMobil、Totalといったメジャー系、BマーケットはJet、ConocoPhillips、Avia、Omv、

Page 10: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 9 -

Hemなどが該当し、Cマーケットはこれ以外となる。SSが得られるマージンはAマーケットが9セ

ント/L(10.8円/L)、Bマーケットが8セント/L(9.6円/L)、Cマーケットが6セント/L(7.2円/L)程

度となる。

なお、ドイツでは小売価格の透明性を高めることを目的にWebで販売価格を公表すること

が法的に義務付けられている。小売価格を変更した場合、5分以内にWebの情報を更新し

なければならない。一般の消費者に加えSS事業者も競合SSの価格動向を即座に確認する

ことができるためか、1日に何度も販売価格を変更し、その変動幅が8セント/Lにも達するよ

うな事象が見られる。

3.独占禁止政策

イギリス、フランス、ドイツとも欧州連合の機能に関する条約(Treaty on the Functioning

of European union)に準じており価格協定、生産・販売・技術開発または投資に関する制限、

市場または供給源の割り当て、取引の相手方を競争上不利にする差別的取り扱い、抱き

合わせ契約等を禁止している。

ドイツにおいて消費者利便性向上の観点より2011年から「Market Transparent Unit」を

通じて、すべてのSSからの価格情報収集を開始した。すべてのSSは、価格改定から5分以

内にこのシステムへの報告が義務付けられており、結果はインターネットを通じて公表される。

これにより、消費者への価格透明性が一段と向上した。

また、ドイツでは中小販売店保護の為、石油会社直営の店頭価格がディーラー向け卸

価格を下回ってはいけないという規制(プライスシザールール)がある。

≪日本≫

1.石油製品供給

日本では製油所の精製能力と製品別需要間の乖離が少なく、過去原油を海外から輸

入し国内で精製するという消費地精製方式を基本としてきたこともあって、地産地消に近い

需給構造となっている。

ただ近年の需要減少とともに余剰数量は増え、2014 年にはガソリンの輸出量は生産量

の 5%、軽油は 15%の水準にまで増加している。このような精製能力余剰状況を改善するた

めに 2010 年 7 月に「エネルギー供給構造高度化法」が制定され、精製事業者はコ―カ

ーや水素化分解装置などの 2 次装置の増設か常圧蒸留塔の削減を実施することが義務

付けられた。今後も需要減が見込まれる為、各社は能力削減にて対応中である。

流通においては元売ブランドを掲げるSS事業者は元売会社の製油所もしくは油槽所から

製品の供給を受け SS で販売する。自系列の製油所や油槽所が無いエリアでは一般的に

元売会社間でバーター契約を行っており、その契約の枠内で他ブランドの製油所から供給

を受けることとなる。バーター取引とは複数の供給者がその供給設備が無いエリアにおいて、

同量の石油製品を相互に融通しあう取引である。独立系 SS 事業者は独立系の卸売事業

Page 11: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 10 -

者から製品の供給を受けることになる。卸売事業を行っている代表的な事業者は商社系

列の燃料販売会社であり、所有する油槽所の貯蔵能力は国内の 30%を占めており(月間ガ

ソリンスタンド調べ)PB事業者への主要な供給源になっていると考えられる。

2.価格指標

日本市場の特徴としてTOCOMやRIMの価格指標の利用率が低い事が挙げられる。欧米

では時間差などによる価格変動リスクを回避するために先物市場およびスポット市場を活

用することが一般的であると言われており先物市場では実需の20倍近い取引が行われて

おり流動性が高い。一方日本ではTOCOM東京ガソリンでも1.5倍程度の水準に留まってい

おり流動性が低く価格指標性としては乏しいといえる。

一般のSS事業者が取引に参加できるローリー渡しのスポット市場においても、市場参加

者は商社などの供給サイドとPB事業者および他社買いと言われる系列ブランド以外の製品

を購入する一部のSS事業者に限られる。

スポット価格については海上RIMおよび陸上RIMといった指標はあるもののそれぞれの利

用者および評価対象が限定的であり、精製事業者とSS事業者双方が納得するような価格

指標が存在できるような取引環境にはない。海上RIMの取引事業者は主に精製事業者お

よびタンクを有する商社系や輸入事業者、陸上RIMは同じくタンクを有する商社系およびSS

事業者となる。その結果、精製事業者は仕切価格の週次改定において最も指標性の高い

原油スポット価格をもとにしたコストを積み上げた価格を仕切価格として打ち出し(先行指

標)、SS事業者は陸上RIM価格での卸売を主張し、双方の主張の差異を場合によっては先

行指標の下方修正といった形で折り合いをつけているように見受けられる。

3.独占禁止政策

我が国の競争政策を規定する基本的な法は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保

に関する法律」である。市場メカニズムを正常に機能させ、公正かつ自由な競争を促進して

事業者間の競争を促すことで、消費者利益を確保することを目的としている。

不当廉売注意件数は平成21年度をピークに減少傾向にあり排除措置命令事例は平成

18年度に1社、平成19年度 2社のみとなっている。これは不当廉売の定義が「供給に要

する費用を著しく下回る対価とは仕入れ価格を指す」という公取の見解があり、販売コストは

加味されていない事が影響していると思われる。

これを放置するとガソリン等の燃料油販売の収益に頼る必要のないスーパー等により市

場が席巻され資本力の無い中小企業が淘汰され、大資本のみが市場に残るという事にな

りかねない。短期的にみれば公取の見解は消費者側に立った見解と思われるが公平な競

争ルールについて議論の余地があると思われる。

また差別対価の定義は「不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又

は役務を継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれが

Page 12: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 11 -

あるもの」となっているが、現状、差別対価により元売が指摘されたという事例は無い。

今後、元売り合併等による価格支配力が高まると予想される中、ドイツにおいて施行され

ているプライスシザールール(石油会社直営の店頭価格がディーラー向け卸価格を下回っ

てはいけないという規制)が参考になると思われる。

≪透明性の高い価格指標を確立する為の方策≫

多数の石油元売り各社は事後調整が前提であった2008年以前の値決め方式から脱却

し、市場連動による新仕切価格方体系を導入、事後調整撤廃による価格の完全決着定着

に移行していった。市場連動方式はその後、原油コストと価格指標の乖離が大きくなり、元

売りの収益を悪化させていった。元売りはベースとする指標を変更したり、販売コストの見直

しを重ね、現在ではより原油コストを概ね反映する方式に切り替えている。

各価格指標には評価点がある反面、問題点も少なくない。元売り側の大前提である原油

コストがある程度反映できる、原油との連動性が高い指標は既存の価格指標の中には見当

たらない。

今回の調査で明らかになった日欧の環境の大きな違いとして、メジャー(日本では元売り)

の小売事業に対する関与の差、すなわち、日本においては、製油所からSSまでのサプライ

チェーンが系列ごとに確立されており、この維持のために特約店契約が継続してきており時

として特約店の収益悪化(特に業転格差に起因した場合)時には元売に補填を求め、元売

もまた応じるといった日本独自の慣習が自然と出来あがっていった。

それに対し、欧米では小売事業に対する関与が低下してきている事、また仕切り価格ル

ールが確立しており、販売が完了しているにも関わらず、遡及をする“事後調整”のシステム

は今回、欧州のヒアリング先には理解し難いようであった。

また、日本では誤解が多いものと思われるが、欧米で使われる「Plattsリンク」、「Argusリ

ンク」について、それぞれの絶対値がそのままリンクしていくわけではなく、ベースの部分の

「Platts」、「Argus」価格にそれぞれ「プレミアム」部分が付帯しており、この「プレミアム」は取

引条件その他個々の取り決めで決定している。

その取引価格情報提供についても、欧州が積極的に提供を行い、自ら指標形成を望ん

でいることに対して、日本では問われればやむなく答えるが、出来れば自社の取引内容は

隠匿しておきたい、さりとて他社情報には関心が高い、といった傾向が見られるものと思わ

れる。

現在の「RIM価格」はいまだに欧米の価格調査会社ほどにはIOSCO監査に対応しておらず、

利用者にすれば情報(取引実態)の公開も不充分との不満も強い。そもそもRIMは2割程度

の余剰玉が取引されるスポットマーケット価格であり、上述の通り、わが国の主流である元

売を軸とした商流の価格ではないことから、必ずしも原油との連動が保証されているもので

もないことが、現在の価格指標を巡る議論の根底にあるように思える。

次に、TOCOMは1999年にガソリン、灯油が上場されて2003年に取引のピークを迎えて、

Page 13: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 12 -

以降は縮小しており、参加者は減ってきている。その理由としては、決済が円建てとなって

いるため為替リスクの発生から海外投資家の参入が少ないこと、またICEのガスオイルのよう

な流動性の高い取扱商品がないこと、当初は投資家保護のためのクリアリングハウス(清算

機関)の整備が遅れていた、等の理由からマーケットが縮小、ヘッジャーとなるべき当業者

(元売等)の参加が減っていったことが考えられる。さらに石油市場にどのような動きがある

と値上がりし、どのような値動きがあると値下がりするといったような、米国の週間在庫統計

のような一般投資家が参考となるようなツールが整備されていない為、当業者以外は参加

しにくい状況が続いている。

一方で、業界紙等では、スポット価格に引きずられる形での元売による「先行指標の下

方改定」が行われていると報じられており、これは「事後調整復活」の誤解を与えかねず、

販売事業者間の不信感を助長する一助となりかねない。したがって、速やかに透明、公正

な値決め方式が確立されることが望まれるが、一方で精販それぞれの立場で納得できる価

格形成の環境整備として、第二次エネルギー供給構造高度化法を経て、適正な需給状況

の実現が必須である。

また、勢いに衰えのないPBSSについて、2015年にはCOSTCOも参入して一部店舗では

不当廉売が問題になるなど、系列業者との価格差がクローズアップされている。圧倒的な

販売量と全取扱商品数約4,000点で管理費等のコストが希釈できるCOSTCOと系列業者

が互角に勝負できる価格指標は存在しないものと思われる。それはそもそも、「価格指標」+

「プレミアム」の「プレミアム」部分において販売量や決済条件で系列販売業者が太刀打ち

できないレベルにあることが、欧米の例からも想像できる。

価格指標の透明化を議論する際には、精販どちらかに立場に傾くことがなく、業界全体と

して適正なマージンを確保しつつ、エネルギーセキュリティの視点からは継続的に安定供給

が維持できる価格水準を保ち、その上で、価格指標にどれを用いるかの議論とともにブラッ

クボックスになりがちな「プレミアム」部分についてのルール作りがまずは必要であろう。また

「ブランド料」についても、このプレミアムの一環として捉え、このプレミアムとそれによって提

供される有形、無形のサービスに不満であれば、系列を離脱するのが欧米では通常の商

行為である。

併せて、8割を占める系列取引価格を決める根拠が、残る2割のスポットマーケット価格

に委ねられていることが果たして正しいことなのかどうか、さらにスポット価格の指標として一

部使われているRIMはその算出根拠を明確にしておらず、偏ったソースに基づき価格公表

している事についても議論の余地があると思われる。

Page 14: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 13 -

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

2000 2005 2010 2014

LPG NaphthaMotor gasoline Jet and keroseneGasoil Residual fuel oilOther products

百万b/d

Ⅱ.米国の石油産業

1.石油製品市場の現状と推移

(1)需給動向

①米国における石油製品需給動向

2000年以降米国経済は拡大傾向にあったものの、2008年以降に問題が顕在化したサブ

プライムローン問題やリーマンショックにより 2008 年、2009 年と経済は縮小傾向にあった。

2010 年以降は量的緩和などの金融政策により経済は回復傾向にあり、GDP 伸び率は年率

平均+2%程度の水準で推移している。

米国の石油製品需要は 2005年の 2,117万 b/dをピークに減少傾向にあり、2014年には

2005 年比 183 万 b/d 減の 1,934 万 b/d の水準にあるが、景気が後退した 2008 年から

2009年の 2年間に 196千 b/d減少している。2010年からは景気が拡大傾向にあるなかで

石油製品需要は年率平均で+0.3%程度に留まっておりエネルギー消費の効率化が進んでい

ると考えられる。

図表 1 米国における石油製品需要

出所:IEA

石油製品別では、2014年の LPG需要は 236万 b/d と 2005年比 16%増加しているもの

の、その他の油種は減少傾向にある。同様に輸送用燃料として利用されるガソリン、軽油の需

要は、それぞれ 892万 b/d、401万 b/dと 2005年比▲3%の水準にあるが輸送用燃料の需

要比率が高く 7 割近い水準にある。米国原油需要の減少に大きく影響している油種として重

Page 15: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 14 -

LPG11%

Naphtha2%

Motor gasoline

43%

Jet and kerosene

9%

Gasoil19%

Residual fuel oil

5% Other products

11%

LPG13%

Naphtha1%

Motor gasoline

47%Jet and kerosene

8%

Gasoil21%

Residual fuel oil

1%

Other products

9%

油が挙げられる。重油の 2014需要は 26万 b/d と 2005年比▲72%の 66万 b/d減少し原

油需要減少分の 1/3 を占めているが、これは船舶燃料に対する環境規制や需要構成の変

化により、より収益性の高いガソリン、軽油への対応が求められたことが考えられる。

米国の石油製品需要の特徴として輸送用燃料の比率が高いことが挙げられる。その製品

別シェアではガソリンが 47%、軽油が 21%の水準にあり、この 2 油種だけで全体の 7 割近くを

占めている。

一般的にディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも CO2 の削減には向いているものの

NOXは増加する傾向にあるが、米国の環境規制は日本と同様に CO2よりも NOXの削減を重

視しており、ガソリン、軽油の価格に付加される税金も同水準にある。フォルクスワーゲン社に

よる米国排ガス規制の不正もあり、今後軽油よりもガソリンを重視する傾向は一段と強くなると

思われる。

図表 2 米国の石油製品シェア(%)

2000年 2014年

出所:IEA

②米国における石油製品供給動向

製油所の精製能力は 2000 年以降堅調に推移してきたが、2008~2009 年の景気後退

局面において原油需要も減少したため、この期間の製油所稼働率は 82%程度に留まり、製油

所収益は悪化し精製能力の削減に繋がった。2012 年以降、シェール革命による米国産原

油の独歩安を背景に石油製品輸出を前提とした設備投資なども見られ精製能力は回復傾

向にある。コンデンセート(API 50以上)の一種であるシェールオイルは、収益性の高い軽質留

分・中間留分の得率が高い。ExxonMobil はシェールオイルの増産に対応するために

Beaumont 製油所の精製能力拡大を発表し、またValero社、Marathon社などの精製事業者

に加え、パイプライン事業者である Kinder Morgan 社などコンデンセートスプリッターへの投資

を行っている。

Page 16: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 15 -

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

千b/d

図表 3 米国における製油所の精製能力

出所:BP統計

米国の製油所数は 121 ヵ所にのぼり、

その精製能力は 17,900 千 b/d に達し

ている。スーパーメジャーと言われる国

際石油資本の製油所の精製能力は

5,897 千 b/d と米国全体の約 1/3 に

達し、独立系では精製能力が 1,000千

b/d を超える事業者は Marathon

Petroleum 、 Valero Energy 、 Motiva

Enterprisesの3社合計で4,282千b/d

の水準にあり、上位 9 社で 57%近い精

製能力を保有している。Valero Energy

はイギリスにも製油所を所有し、また小

売市場においても独自ブランドを掲げる

事業体となる。Motiva Enterprisesの所

有する Port Arthur製油所の精製能力は 600千 b/d と全米屈指の処理能力を有し、同社の

1製油所当たりの平均精製能力は 360千 b/d超の水準にある。Marathon Petroleumは 80

会社 製油所数 精製能力BP 4 795,150

Chebron 5 965,865ExxonMobil 6 1,863,035Phillips 66 10 1,618,900

Shell 4 420,850Total 1 232,750

小計 30 5,896,550

Marathon 7 1,794,000Motiva 3 1,080,250Valero 10 1,407,200

小計 20 4,281,450

独立系 200千b/d強

8社 17 3,998,980

独立系 200千b/d未満

43社 54 3,726,497

合計 60社 171 17,903,477

国際石油資本

独立系 1,000千b/d強

出所:Oil & Gas JOURNAL

図表 4 精製事業者の構成

Page 17: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 16 -

1973 1980 1990 2000 2010 2012 2013 2014生産 6,504,829 6,625,526 6,999,528 8,016,374 7,899,259 7,723,644 7,861,275 8,180,010輸入 131,188 48,288 301,662 529,799 822,460 711,997 699,623 671,012輸出 4,001 1,326 61,175 159,565 337,716 507,120 504,888 595,765

輸出-輸入 ▲ 127,187 ▲ 46,962 ▲ 240,488 ▲ 370,234 ▲ 484,744 ▲ 204,876 ▲ 194,735 ▲ 75,247需要 6,632,016 6,672,489 7,240,016 8,386,608 8,384,003 7,928,520 8,056,010 8,255,257生産 2,820,125 2,827,095 3,019,134 3,696,829 4,303,296 4,544,264 4,697,450 4,846,936輸入 380,133 30,555 221,102 228,296 176,444 139,430 180,634 211,312輸出 8,870 3,352 116,519 175,525 666,331 1,006,896 1,130,057 1,116,527

輸出-輸入 ▲ 371,263 ▲ 27,203 ▲ 104,583 ▲ 52,772 489,887 867,465 949,423 905,215需要 3,191,388 2,854,298 3,123,717 3,749,600 3,813,409 3,676,799 3,748,027 3,941,721生産 13,437,347 14,614,104 14,751,146 16,514,393 16,472,091 15,948,014 16,229,164 16,695,352輸入 2,829,616 1,066,611 1,253,607 1,502,349 1,643,449 1,344,207 1,299,139 1,258,594輸出 253,023 263,563 813,406 988,529 2,257,522 2,840,660 2,929,787 3,095,804

輸出-輸入 ▲ 2,576,592 ▲ 803,047 ▲ 440,201 ▲ 513,820 614,072 1,496,453 1,630,648 1,837,210需要 16,013,940 15,417,152 15,191,347 17,028,213 15,858,019 14,451,560 14,598,516 14,858,142

米国

ガソリン

軽油

製品合計

ヵ所の油槽所から 5,600 ヵ所の SSに石油製品を供給している。

精製能力が 1,000 千 b/d を下回る製油所の事業者は 51 社、71 ヵ所の製油所で 7,700

千 b/d の精製能力を有し、これは米国全体の 43%を占めている。小規模事業者には、ガソリ

ンや軽油といった一般の石油製品の精製事業に加え潤滑油や石油化学製品の製造に重点

を置いている事業者や、アラスカ、ハワイといった隔離された地域に製品を供給する製油所も

あるなど、様々な事業者が存在している。ケンタッキー州南部に拠点を構える Continental

Refineryの精製能力は 6千 b/d程度だが、地域の石油製品供給拠点として機能している。

③米国における石油製品需給概況

米国での原油指標価格は WTI であるが、2010年の終わりから WTIは Brent を大きく下回

る水準で定着し、その一方で米国内の石油製品価格水準は国際市況並みといった環境が常

態化し、域内の製油所はアジアや欧州などの製油所と比較して収益性が高くなっていた。この

ような環境下、米国内の製油所は輸出量を増やしており、現在では石油製品の純輸出国に

転じており、2014年には石油製品純輸出量は生産量の11%を占めるまでになっている。主要

油種であるガソリンは純輸入基調にあるもののその数量は需要の 1%未満となっており、今後

輸出量が輸入量を上回る純輸出国に転じる可能性もある。

図表 5 米国の石油製品輸出入動向

出所:IEA

2014 年下期以降 OPEC はシェア確保を目的とした原油生産枠の維持を決定したことを発

端に、原油は供給過剰状態に陥り原油価格は下落傾向にあり、これに合わせて WTI と Brent

の価格差は縮小し 2015 年 12 月末以降同等の水準にある。また、2015 年 12 月には WTI

と Brent の価格差の要因となってきた米国の原油輸出規制も解除され、米国製油所の精製

流通マージンは国際的な水準に収斂されていく可能性がある。

④米国におけるマージン動向

シェール革命による原油生産量の増加に加え、原油の輸出を禁じてきた政策の影響もあり

米国内における原油需給の緩みにより 2011年 7月にはWTI原油は Brent原油を 20㌦/bbl

(約47セント/ガロン)以上下回る水準にまで下落した。その一方でガソリンのスポット価格は国

内的な価格水準に留まった結果、精製マージンは拡大傾向にあった。2014年 7月以降、原

油価格が下落するなかで、また 2015 年には原油輸出解禁の議論が報じられるといった要因

Page 18: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 17 -

もあり、Brent と WTI の価格差の減少傾向にあるなか精製マージンも圧縮傾向にある。2015

年 12月には米国産原油の輸出の解禁が決定されたことから、今後米国内の精製マージンは

国際市場並みの水準に落ち着くと見られる。

流通マージンは 2009年から 2011年にかけて1ガロン当たり 10セント台の水準にあったが、

シェール革命の影響もあり 2012年以降回復傾向にあり 20セント/ガロンを超える水準にまで

拡大した。今後精製マージンの圧縮が進むと予想されるなかで、今後も同様の流通マージン

を確保できるのか注視していく必要がある。

図表 6 米国における精製・流通マージン

出所:EIA

(2)米国市場の流通概況

図表7は米国内におけるパイプライン網であるが、米国東部のペンシルバニア州から、近代

石油産業の発祥地となるオハイオ州、そして製油所集積地となっているメキシコ湾岸を中心

に米国の東側を網羅している。西側はロッキー山脈により分断されており、米国内でも異なる

市場環境となる。なお、米国では図表 8 のように全土を 5 ヵ所の地域(PADD:Petroleum

Administration for Defense Districts)に分割しデータ管理を行っており、地域別の価格、需

給動向が把握することができる。

Page 19: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 18 -

図表 7 米国の製油所(□)、油槽所(△)、パイプライン図

出所:EIA

図表 8 米国の PADD (Petroleum Administration for Defense Districts)図

図表 9 は United States Department of Transportation の National Transportation

Statistics の Table1-61 から作成した米国内における石油製品の輸送形態別シェアとなる。

1975 年時点では船舶による輸送が全体の 50%を占めていたものの、2009 年時点では全体

の 1/4にまでに縮小している。物流の主役として船舶に取って代わった輸送手段はパイプライ

ンであり、2009年にはそのシェアは 63.3%(1975年比+20.8%)と全体の 3/2近い水準に達し

ている。輸送数量で見ると 1975 年時点で石油製品の輸送数量は 5,152 億トンマイルに達し

出所:EIA

Page 20: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 19 -

ていたが2009年には4,741億トンマイルまで減少している。同期間において米国の石油製品

需要は 14%増加しているなかで相反する推移となる。

このようなシェア、数量変動は第一にパイプラインが開通したことによる輸送手段の変更が

挙げられるが、その他の理由として変動は物流コスト削減を目的としたバーター取引や、製油

所もしくは SS 近隣でスポット製品として石油製品を売買することが一般的になったためだと考

えられる。

図表 9 米国における石油製品の輸送形態別シェア・輸送量

出所:United States Department of Transportation

米国には 1,527 ヵ所の石油製品油槽所があり、パイプライン、タンク事業者や石油会社が

運営を行っている。米国全土におけるガソリンの貯蔵可能容量は 251 百万 bbl、軽油が 184

百万 bbl と需要の 3~4 週間程度の貯蔵量となる。米国のタンク事業者の業界団体である

International Liquid Terminal Association (ILTA)にはPlillps 66 といった精製事業者からタン

ク事業者の Kinder Morgan といった企業が、約 90社が名を連ねている。タンク事業者はパイ

プラインからタンク、そしてローリーと石油製品が流通していく過程で、その流通量に対して課

金するかタンクの容量をリースすることにより収益を確保する。

ジョバーと言われる卸売事業者は、タンク事業者の所有するタンクをリースもしくは通油料

金を支払う、あるいは自社所有の油槽所から石油製品の販売を行っている。EIA の定義によ

ればジョバーとは以下の四つの条件を満たすものをいう。

Page 21: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 20 -

①ガソリン製品の販売、配達するために必要な設備と装置を持っていること。

②財政、施設、運営の点で供給者から独立した責任を有していること。

③自らの責任において系列内の製品の輸送および販売をすること。

④顧客との売買契約の締結もしくは解約について独立した裁量を有していること。

ジョバーが所属する業界団体 Society of Independent Gasoline Marketers of America

(SIGMA)には 263 社のジョバーが参加し、その石油製品取扱量は全米で流通するおよそ 5

割となる。その中の 1社である Duncan Oil Companyは、Phillips 66、Valero、Marathon といっ

たメジャーブランドへの製品供給に加え、PBSS 向けにノンブランド品の製品供給も行っている。

Duncan Oil Companyは SS事業者の要望によっては、先物市場を活用することにより製品価

格を固定し、価格変動リスクをヘッジするなどのサービスを行っている。

米国では、一般的にジョバーが製品を取り扱う段階で石油製品に添加剤を加えることにより、

それぞれの系列向け製品やノンブランド品の製品性状に違いを設けている。系列事業者向け

製品の卸売価格はブランドラック、非系列向け事業者向け卸売価格をノンブランドラックと呼

ばれているが、一般的にこの価格差が系列事業者のブランド料に該当する。

OPIS Jobber University 講習コースのテキスト(抜粋)

<ジョバーの卸価格の決め方>

"ジョバーの石油の買い方"

1つの 供給者に限定してはいけない。契約による供給とオープンラックの取引は供給の形態

を決定する重要なツールである。顧客の基地に効果的な供給を行うためには、様々な供給

契約を持つ必要がある。商売によい供給の手助けとなるためには、供給者とともに行動するこ

とである。 供給を要請することを恐れてはいけない。

“オープン”ラックの アカウントと契約のアカウントの両方を持つことは供給形態を満たすために

必要である。需要に合致するためには、いくつかのオプションを持つ必要がある。

もし、2つの市場で供給しているなら、その競争は、双方の世界で最善の利益を得ることを可

能にする。最も統合されたジョバーは、アンブランドの“スポット”、アンブランドの契約、ブランド

のラック、指標ベースのブランド等、いくつかの異なった方法で石油を買うことになろう。自らの

製品を供給しているジョバーでさえ、自らの在庫に供給するためにはラック契約は必要であ

る。

選択のために多くの指標ベースのフォーミュラーがあるかというと、これらは少ししかない。

- 日々のブランドとアンブランドの平均ラック

Page 22: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 21 -

- 日々の低価格アンブランドラック

- 日々の最低価格ラック (ブランド含む)

- 日々の最低から2番目のアンブランドラック

- 週ごとの 5日平均価格

- 週ごと OPISのニュースレター価格

木曜日発行・公表されるので、日曜日を挟んで月曜日に影響を与える金曜日の

価格(多くの政府機関がこれを使っている。)

多くのジョバーは、ラックの“スポット”価格かバルク価格を使って購入する。

これは、彼らがパイプラインの“スポット”製品を買っていることを意味しているのではなく、むし

ろ価格形成のために、スポットを指標として使っているのである。

このことには注意すべきである。競争的価格を維持するためには、より低い価格である“スポッ

トプラス”とか“ラックマイナス”を得ることがベストである。RIN の価値は上がり続けると予測され

ている。

<需給状況によっては業転格差がマイナスになることもある>

ブランド価格が“逆転”またはアンブランド価格より低い時がある。これらの逆転の間は、ジョバ

ーがブランド製品にアクセスし、アンブランドサイトに流すことは非常に一般的である。メージャ

ーはこれらを“自由裁量”の引き取りと呼んでいる。

いくつかのアンブランドの供給者から製品を買うことは、市場が急騰したときの助けとなろう。取

引数量のうちいくらかを、前日公表された OPIS、 Axxis、 DTN、ラック価格をベースとしたベ

ンチマークで固定するために、複数の供給者と契約を締結すべきである。これらの価格は通

常 24時間有効である。

< 需要家のニーズに応えるために、ジョバーはヘッジを使っている。特に軽油。>

ジョバーとして、需要家から“固定”価格のオファーの要求を受けるかもしれない。“固定”価格

は、需要家のために特別な期間、価格を固定することを意味する。これは、軽油の購入では、

非常に一般的である。需要家への アドバンテージになるか、大きなアドバンテージになるか、

それは予算内で固定するためである。もし、石油価格が高騰していたら、彼らは価格固定によ

り、守られているということがわかるであろう。

政府機関、フリート、地域の輸送、農業会社、これらのすべての者は、有力な需要家であるだ

ろう。これらの取引先を愛することである。

これらにオファーするためは、“ヘッジ”しなければならない、それによって価格リスクのすべて、

または、一部を開放することができる。

固定した価格の製品を買うことは非常にリスクが大きい、それはジョバーと需要家が、何を買

い、それがいかに機能するかを理解するために避けられないことだ。もし、市場が下落すれ

ば、まだ製品を所有することになる。多くの供給者が、固定価格をオファーするか、ジョバーが

Page 23: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 22 -

NYMEXで口座を作って先物を買うかである。

<パイプラインの料金規制>

石油製品のパイプラインは、“コモンキャリア”と考えられており 連邦政府の FERC (Federal

Energy Regulatory Commission)に規制されている。

パイプライン会社は、要求しているレートが上昇した場合は、FERC に問合せ(apply)なければ

ならない。パイプラインで輸送するコストは、製品が輸送される距離をベースに変わる。

例えば、パイプラインに依存する 50マイルのコストは、$0.0090/ガロンで、一方 300マイルは

$0.0550/ガロン、そして 800マイルは $0.1300/ガロンとなる。

<バルクターミナルの標準的な料金の水準>

ターミナル料金は、どこでも $0.009 から $0.0350/ガロンである。大量輸送者は、ディスカウ

ントを受けられる。

ブレンド料金は、受入れコストと、エタノールの混合コストはエタノール 1ガロン当たり$0.0500 -

$0.0800/ガロン。バイオディーゼルブレンドは高く $0.14/ガロンである。

ガソリン添加剤料金は、いくつかのターミナルでは、無印のガソリン添加剤をアンブランド輸送

者に提供する。それは製品が積まれるときに注入される。そのコストは、$0.0025 から

$0.0100/ガロンである。

潤滑性能(lubricity)の料金は、ディーゼルがターミナルで受入れられたとき、潤滑性能が1回

分(batch)としてタンクにポンプで注入される。潤滑性能のコストと注入のコストは、

$0.0035-$0.0075/ガロンである。

<添加剤でブランドを識別>

多くの石油は、混合して貯蔵タンクの中に貯められている。これらのタンクは、一般的には “地

域共同体貯蔵(community storage)”と呼ばれている。アンブランドといくつかのブランドの輸

送者はこの共同体貯蔵庫に貯蔵している。ブランドのガソリンは、ブランドの所有者の添加剤を

製品がローリーに積み込まれるときに受け取る。

<ローリー業者の選定に当たって>

自社所有トラックを使うか運送業者を使うかどうかは、需要家が必要な時に供給できるだけの

設備を自ら持っているかどうかを確認する必要がある。

評判のよく、安全な記録を持つよき運送業者を見つけておくことが重要である。運送業者を探

すときに、いつも関連情報を収集し、地方のハイウエイパトロールの安全記録をチェックしておく

こと。

もし、石油を配送する際にアウトサイダーの運送業者を頼むなら、製品を在庫か供給者から積

み込むためには、少なくとも 3-4 社をセットしておく必要がある。 数量と地域的エリアによって

Page 24: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 23 -

はもっと多くを確保する必要がある。

<ちゃんと自分で情報を入手して、複数社を見比べて選ぶことが重要>

いくつかの運送業者はトラックを独占的に使用する。これは、ほとんど自社所有トラックを所有

しているようなものである。トラックを 1日 2交替で走らせるのに支払うことになり、そしてそれは

シフトを満たすための十分な仕事を供給するかどうかは自らの責任である。

いくつかの運送業者をセットすることは、よりよい配送の助けとなるばかりでなく、それは、適正

なレートで請求されているということを保証するため会社間のレートの比較が可能になる。

多くの運送業者は、公表されている運賃レートに加え燃料サーチャージコストをかける。ある者

は、毎週サーチャージを変更し、他は月次、四半期ごとに変える。サーチャージの合計は、

EIAから毎週発表されているディーゼルの小売価格の平均に基づいている。

<相場操縦を禁止する立法とガイドラインの公表>

https://www.ftc.gov/sites/default/files/documents/rules/prohibition-energy-market-

manipulation-rule/091113mmrguide.pdf

公正取引委員会 (FTC) のスタッフは、Energy Independence and Security Act of 2007

(EISA)(エネルギー自立安全法)と FTCの Petroleum Market Manipulation Rule(石油市場

操作規則)の詐欺対策に従うための手助けとして、上記のガイドブックを準備している。

FTCの規則による禁止行為の例として、

計画している価格または生産決定の虚偽またはミスリードな内容の公表。

連邦、州、地方政府に対する最新の在庫または精製事業者の操業状況の虚偽またはミスリ

ードな内容の報告。

過去の取引の価格または数量についての価格報告サービス会社に対する虚偽またはミスリー

ドな内容の提供。

実際の流動性や特別の資産、資産のための市場の市場価格を欺くための取引の実施。

図表 10は米国におけるブランド別 SS数となるが、メジャー系列の市場占有率は 1/3程度

でおよそ半数を中小の独立系 SS事業者が占めている。大手独立系 SS事業者の SS数シェ

アは 15%程度だが、2010 年に製油所を売却した Sunoco 以外は精製設備を所有しており、

業界内でのプレゼンスは高い。特にMarathon PetroleumやValero Energyの製油所はそれぞ

れ1,000千 b/d以上の精製能力を有している。なお、精製事業者が所有、運営を行っている

SSは全体の 3%程度であり、大半は SS事業者が運営を行っている。

Page 25: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 24 -

米国におけるハイパー系 SS シェアは 3%と欧州諸国との比較において非常に低い水準にあ

る。米国市場における激しい競争のなかで生き残るために SS 事業者は強靭な経営体質を有

しているとも言われている。

図表 10 米国におけるブランド別 SS数

出所:NPN

図表 11 は Association for Convenience & Fuel Retailing(NACS:旧名称 National

Association of Convenience Stores)が公表する事業者別 SS保有数となるが、全米で 15万

ヵ所ある SS のうち約 8 割にあたる 12 万ヵ所の SS にコンビニエンスストアが併設されており、

そのうち 58%にあたる 7万ヵ所の SSが、1SSのみを所有する事業者となっている。

ブランド 形態 2008 2009 2010 2011 2012Shell 14,300 14,459 14,000 14,000 14,350BP 11,700 11,500 11,300 11,300 10,100ExxonMobil 10,451 10,216 9,763 7,753 9,700Chevron 9,691 9,591 8,251 8,000 8,900Phillips 66 8,750 8,500 7,150 6,875 8,500CITGO 7,044 6,500 6,100 5,900 6,000Marathon 4,577 4,613 5,100 5,046 5,000Sunoco 4,720 4,711 4,921 4,933 4,900Valero Energy 5,000 4,000 4,000 5,000 4,450Sinclair Oil 2,600 2,600 2,700 2,700 2,700WAL-MART 1,153COSTCO 1,067WAL-MART(SAMS) 366SAFEWAY 479ROYAL AHOLD 337HEUER 204SHEB 172Freie(BFT) 196BJS 113GIANT EAGLE 103その他 77,275合計 161,068 162,350 159,006 157,393 156,065

82,235 85,660 85,721 85,886

メジャー

独立系

ハイパー

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

180,000

2008 2009 2010 2011 2012

PB・ハイパー他

Sinclair Oil

Valero Energy

Sunoco

Marathon

CITGO

Phillips 66

Chevron

ExxonMobil

BP

Shell

メジャー計0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2008 2009 2010 2011 2012

PB・ハイパー他

Sinclair Oil

Valero Energy

Sunoco

Marathon

CITGO

Phillips 66

Chevron

ExxonMobil

BP

Shell

メジャー計

Page 26: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 25 -

図表 11 事業者別所有 SS(ヵ所)

出所:NACS

2.石油市場の主なプレーヤーとその変遷

米国市場は、かつてはメジャーが支配的な地位を確保していた。しかし、第二次石油危機以

降、21 世紀初頭まで約 20 年続いた原油低価格は、上流部門を中心にメジャーの収益性を大

きく低下させ、さらに米国内では油田の減退、OPEC 主要国では資源の国有化によるメジャーの

活動範囲の縮小という事態に直面し、新たな資源を求めて開発コストの高い極地や深海への展

開の必要性が高まっていた。

この中にあってメジャーは、1997年から 2003年頃にかけて相次いで合併や買収によりスーパ

ーメジャーの道を目指し、新規地域での探鉱・開発資金を確保する一方で、統合により巨大化

した下流部門を、独占当局からの要請や自らの合理化方針から第三者への売却を進めた。

米国市場は、元々メジャーの小売市場までの独占を防止する意味から多くの制約を受け、そ

の中でジョバーと呼ばれる仲介業者(とはいえ、日本の元売りにも匹敵する規模のものもあるが)

やカリブ等から製品を調達するトレーダーなどが多く活動しており、これらの企業がメジャーの下

流部門のダウンサイジングによる資産整理の恩恵にあずかって多くのタンクや SSなどを入手する

にいたった。これらの業者に販売される製品は、いったん系列から離れ、ラックと呼ばれる製油

所や油槽所渡しの価格が設定されており、製品スポット市場とはやや異なる独特の卸売市場を

形成している。

多くの先進国で価格低下にもかかわらず石油需要の減少が続いているが、その中にあって米

市場では需要の増加が続いている。活動の中心はメジャーから中小の石油企業に移りつつある

が、シェール開発の恩恵もあって、石油産業の活況は当面続くものと思われる。

以下に代表的な市場のプレーヤーのプロフィールを概括する。

Page 27: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 26 -

(1)精製事業者

・ExxonMobil

ExxonMobilの前身である Standard Oilは 1870年 John Davison Rockefellerによって設立

された。石油需要の増加に伴い、Standard Oilは事業を拡大していき、1878年には米国にお

ける製油所の精製能力のうち 90%以上を有するまでになった。この石油市場の独占に対する

批判が高まるなか、連邦政府は 1890 年シャーマン法を制定し、Standard Oil の事業分割を

目論んだ。Rockefeller は本社を規制の緩いニュージャージー州へ移転するとともに、会社を

子会社に分割することにより対抗したが、1911 年最高裁から企業の解体を命ぜられ、34 社

に分割されることとなった。Standard Oilの分割会社を出身母体とする企業は、ExxonMobil、

Chevron、Conoco Phillips と 6大メジャーの半数を占め、またイギリスの BP も Standard Oilの

分割会社を傘下に納めることにより米国でのプレゼンスを強めていった。

米国でモータリゼーションが始まった 1910年代前半には石油産業の独占状態は解消され

ており、SS 事業の展開は個々の事業者の判断に委ねられる環境になっていた。Exxon

(Standard Oil New Jersey)および Mobil(Standard Oil New York)は、それぞれ独自に販路を

拡大していったが、1999年に合併することとなる。Federal Trade Commission (FTC)は市場

支配力の高まる地域において製油所、油槽所、SS、特約店、卸売業者の売却を条件とし、

ExxonMobil が合意したことで合併は成立した。合併条件はグアムでは Exxon の SS12 ヵ所と

油槽所 1 ヵ所を売却、Mobilに対し New Jersey州、Virginia州の SS全て売却といったように

具体的内容となっており、売却対象となった SSは全体で 2,731 ヵ所にのぼる。

2008 年 6 月、ExxonMobil ブランドの SS が米国全土に約 12,000 ヵ所あるうちの社有 SS

2,200 ヵ所(内 1,380 ヵ所 EM所有資産をディーラーが運営、820 ヵ所 所有運営とも EM)を

売却するとの方針を発表した。なお売却後もブランドおよび石油製品供給は引き続き

ExxonMobil が継続するとしている。同社はこの撤退を「SS 業界で利益を確保することが極め

て厳しくなったため」としているが、収益性の高い上流部門への経営資源を再配分する目的が

あったとされる。その後、ExxonMobilはドイツ、オーストリア、アルゼンチンおよび日本でも SSな

どの下流部門の資産売却を進めている。

米国では厳しい業界環境下、各流通段階においての効率化が求められており、配送コスト

を削減するために近隣の油槽所から製品の供給を受けることが一般的である。その結果、精

製事業者が精製した石油製品が、そのまま自社系列 SS へ流通することは少ない。

ExxonMobil の場合、その SS 網は PADD2 北西部を除いた地域に展開しているが、製油所は

6 ヵ所と地域が限定されおり、大半の SSが他社油槽所からの供給を受けることとなる。

・Total Petrochemicals & Refining USA, Inc

Total は現在 6 大メジャーの一角を占めているが、米国への進出は 1989 年に遡る。米国

のデンバー、コロラドなどの Road Runner ブランドを始めとした複数の SS 事業者を買収し、

1993年には 2,600 ヵ所の SS を傘下に収め、全ての SSの自社ブランド化を図った。しかしな

がらその 4年後の 1997 年、Total はすべての米国資産を売却し、米国から撤退することとな

Page 28: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 27 -

った。1999年 Totalはベルギーの Petrofinaと合併し、Petrofinaの米国資産を引き継ぐことと

なったが、Petrofina 所有の SS 資産および Big Spring 製油所は、テキサス州に拠点を持つ

ALONグループに売却され、Totalは米国テキサス州に Port Arthur製油所のみを傘下に収め

ている。現在ポリエチレンなど石化品を含む石油製品を精製している。

Total は米国内で SS 事業を展開しておらず、製油所で精製された輸送用燃料は主にパイ

プラインでロッキー山脈東側に輸送され、同社関連会社である Atlantic Trading & Marketing

を通じてスポット市場や先物市場において取引を行っている。

(2)タンク事業者

・Kinder Morgan

Kinder Morgan は北米で最大のエネルギーインフラ企業であり、所有するパイプラインは原

油、石油製品、天然ガス等を含め 84千マイル、油槽所は 180 ヵ所にのぼる。Kinder Morgan

は Richard D. Kinder とWilliam V. Morganによって 1997年に設立された。Richard D. Kinder

は 2001年に不正会計により経営破綻した Enronの経営幹部で Pipeline事業なども手掛けて

いたが 1996年に退社した。Kinder Morganが急成長した背景には Richard D. Kinderの経験

および MLP制度を活用といった要因が挙げられる。

そのビジネスモデルは大手精製事業者や独立系流通事業者に対して通油量に応じた手数

料を得ることであり、原油・石油製品の価格変動リスクは回避している。同社のホームページ

では2015年はキャッシュフローのうち85%がこの手数料収入だとしている。石油製品について

は 9 千マイルのパイプラインおよび 55 ヵ所の油槽所を通じて約 2,300 千 b/d を地域の市場

に供給しており、取引会社の要望によってはバイオ燃料などのブレンド作業を行っている。

図表 12 Kinder Morgan社のパイプラインおよび油槽所(石油関連:青)

Page 29: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 28 -

図表 13 Kinder Morgan ヒューストンにおける石油製品の供給体制

出所:Kinder Morgan

図表 13 はヒューストンにおける Kinder Morgan の供給体制となるが、Shell、Marathon とい

った製油所(点線部分)から製品が流入し、製品のブレンドが可能な 12 ヵ所の海上出荷設備、

11 ヵ所の輸出基地、9 ヵ所の陸上出荷設備および鉄道輸送設備へ供給可能となっている。

典型的なタンク使用料は、ガロン当たり 1.0~1.5 セント、保管料はガロン当たり 1.5 セント/

月である。在庫経費としては、タンクのロケーションにもよるが、10日から90日当たりで、ガロン

当たり 0.16~1.5セントとなる。

“企業所有(proprietary)”と呼ばれるタンクは、精製業者やブランド系販売業者によって所

有されており、ブランド系のジョバーや小売業者に製品を供給する。しかし、バーター等の契約

により、それ以外の業者のアクセスも可能である。

“事業者所有(public)”と呼ばれるタンクは、パイプライン会社や独立系のタンク業者あるい

はそのジョイントベンチャーによって保有されており、場合によっては自ら製品を手当てしてラッ

ク販売をしたり、地域のジョバーや精製業者にタンクスペースを貸し出したりしている。

パイプラインとともに、一部のタンクは複数の業者の共同所有となっており、また一部は長期

契約で貸し出されたりしている。この契約に関し競争当局は、タンクの容量が複数の主体に割

り当てられているかという観点で検討を行うことがある。

油槽所の所有に関し、FTCは以下の事例に介入したことがある。

- ExxonMobil の合併に際し、Exxon の競争会社が Mobil の桟橋を利用して製品の供給

を受けていたが、合併後も引き続き同条件で桟橋の利用を認めること。

- ConocPhillips の合併に際し、Phillips のターミナルを最大 8,500b/d、10 年間にわたっ

て競合会社に利用させること。

(3)ジョバー

・Duncan Oil Company (http://duncan-oil.com/ より抜粋)

60年以上の歴史を持つ Duncan Oil Companyは Valero Energyや Marathon Petroleumな

出所:Kinder Morgan

Page 30: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 29 -

どから石油製品の供給を受け、主な事業はスーパーマーケット併設 SS や独立系 SS 事業者

への製品供給となるが、SS の設計、建築、運営管理といった事業支援も行っている。同社の

配送圏はオハイオ州やケンタッキー州といった PADD2 の東寄りとなり、SS 事業者の要望によ

っては Duncan Oil Transport Solutions という関連会社によって石油製品を供給者が SSに配

送するいわゆる「持ち届け」といった配送サービスや供給者サイドに対してタンクのスペースをリ

ースするといった対応も可能である。

Duncan Oil Companyは実勢価格での製品供給といった一般的な取引の他にも、先物市場

などを活用することにより SS 事業者の価格変動リスクを肩代わりするといったサービスも行っ

ており、「Fixed Forward Contracts(契約期間内の売買価格を固定)」、「Maximum Price

Contracts(売買価格の上限を設定。実勢価格が上限価格を下回る場合は、その変動幅を

取引価格に反映)」、「Collar Contracts(売買価格に上下限を設け、その価格帯で取引を行う

方法)」といったメニューも用意している。

(4)業界団体

・American Petroleum Institute (API)

API は、石油・天然ガス産業の開発、精製、卸売、輸送といった供給面に携わる企業によっ

て構成されている。参加企業は ExxonMobil のようなメジャー系から小さな独立系企業までお

よそ 600 社が参加している。API の設立目的は公共政策に対する影響力を保持することであ

り、産業の発展を目的に議会、州政府、メディア等に働きかけを行っている。

API の活動は多岐に渉り、経済分析、業界動向データの集計および公表、開発設備や精

製設備の基準設定、品質や環境および労働安全に対する認証などを行っている。設備の認

証は 500項目にのぼり、その多くが政府機関に採用されており、内 100項目が国際標準とな

っている。

APIの組織には、その事業領域となる上流、中流、下流部門それぞれに委員会が設置され

ており、環境や安全衛生に対する対応、基準の策定などを行っている。

・Association for Convenience & Fuel Retailing

(NACS:旧名称 National Association of Convenience Stores)

NACSはコンビニエンスストアのオーナーとサプライヤーによって 1961年に設立された団体

となる。コンビニ事業者がおよそ2,200社、サプライヤーが1,600社を傘下に持つ業界の利益

団体であり、コンビニや SS 業界にとって有益な情報やコネクション、また事業の可能性などに

ついて情報提供を行っている。

NACS は小売業界の利益保護を事業目的としており、特に車両用燃料について政府機関

に対する要求項目は以下の通りとなる。

-バイオ燃料の基準

販売事業者にとって大きな設備負担が想定される E15 ガソリン(エタノール含有比率

15%)の基準の変更

-燃料規制改革

Page 31: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 30 -

E15ガソリンの使用が認められていない車両への給油および車両が故障した場合に発生

する責任に対する小売事業者の法的保護

-地下タンク

地下タンクの漏洩対策を目的した税が、他の用途に流用されている現状の是正

-燃料に対する課税

事業者にとって不利益が予想される燃料に課せられている税の一時的な失効の反対

・Society of Independent Gasoline Marketers of America (SIGMA)

SIGMA は 1958 年、独立系販売者の団体として設立された。現在では加盟事業者数は

260 社にのぼり、米国車両用燃料需要の約 5 割を供給する団体であり、ブランド系事業者や

PB事業者双方の利益を追求している。SIGMAの加盟事業者は製油所設備を持たない SS事

業者やジョバーが正規会員として位置づけられ、準会員として ExxonMobil や Valero Energy

といった精製事業者が名を連ねている。また、他の準会員構成メンバーとして金融サービス、

運送事業者、フリートカード事業者が参加している。

SIGMA は、政府関係機関との調整、業界全体の広報、法規制に対するアドバイスなどを会

員企業に対して提供している。また、以下の委員会を設置し、加盟各社へのサービスを行っ

ている。

連絡 - 加盟各社に提供すべき情報とその提供手段について検討

金融サービス - 金融サービス企業との交流を目的とした様々な機会の提供

燃料供給 – 燃料供給事業者との交流を目的とした様々な機会の提供

法規制 – 規制官庁との連携による規制動向や政策課題などに対するスタンスを検討

教育 – 教育プログラムの提供

メンバーシップ – 正会員や準会員の新規募集と維持

SIGMAPAC と政治活動

-基金を設立しSIGMAPACおよびSIGMA教育資金への貢献の重要性を会員に理化させる

-情報の習得により意識の高い政治的活動を行い、力強い立法力を開発

・Petroleum Marketers Association of America (PMAA)

PMAAは、1941年に設立された石油販売業約 8,000社からなる団体である。ガソリン、デ

ィーゼル、暖房油、潤滑油、再生燃料を卸売、小売する事業者が会員であり、会員が保有す

る SS やコンビニエンスストア、トラックステーション等は約 60,000 ヵ所である。また会員は、約

40,000 ヵ所の独立系 SS と約 70,000 ヵ所の家庭や事業所にも燃料を供給している。

PMAAの機能は以下のとおりである。

-販売事業者とその州単位での組織からの意見を取りまとめるとともに、連邦レベルでの制

度や規制を包括的に提供する

-連邦レベルでの重要な展開に関する知識の深化のため、会合やフォーラムを開催する

-連邦レベルの各種団体との相互理解を深める

Page 32: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 31 -

-会員会社やそれらが所属する州組織の利益を拡大するプログラムの推進

3.価格形成メカニズム

(1)取引形態

石油取引の形態は、契約の成立と製品受け渡しのタイミングが異なる先物取引(広義)とタ

イミングがほぼ同時である現物取引に区分される。先物取引は、取引所で不特定の相手と取

引を行う狭義の先物取引(Futures)と相対取引と呼ばれる当事者間で直接取引を行う先渡

し取引(Forwards)に分類される。現物取引は、元売会社からブランドSSへの供給に見られる

ような継続的な取引を前提とした卸取引と 1回限りの売買となるスポット取引に区分される。

先物取引(Futures)は取引所で行われる契約の成立と製品の受け渡しが異なる売買とな

るが、現物決済が可能であるものの差金決済によって清算されることが一般的である。差金

決済とは製品の受け渡し日前に反対売買を行うことにより製品の受け渡しを伴わず、当初の

契約時点における価格と反対売買を行った時点における価格の差額のみを決済する方式で

ある。米国の価格指標として利用されているWTIおよび RBOBガソリンは CMEグループが運

営するNew York Mercantile Exchange(NYMEX)で取引される狭義の先物取引となる。RBOB

ガソリンの 1枚当たりの数量は 42,000ガロン(1,000bbl)で 2016年 2月下旬における取引量

は 1日あたりおよそ 170千枚(170百万 b/d)と米国ガソリン需要の 20倍程度と非常に高い

流動性を誇っている。なお、RBOB ガソリンの輸送手段について以下の方法を選択することが

できる。

ⅰ買い手手配のバージ船による配送

ⅱ買い手が売り手の施設を利用できる場合、買い手のタンカーやパイプラインへの配送

ⅲ売り手合意のもと同タンク内における製品の名義変更

ⅳ売り手合意のもと帳簿上の名義変更

ⅴ売り手合意のもと内部設備への移送

ⅵそれぞれの設備を売り手買い手とも利用できる場合、RBOBの規定に基づいた内部

設備への移送

先渡し取引(Forwards)は契約の成立と受け渡しのタイミングが異なる取引となる。この点では

先物取引と同様の概念となるが、Over The Counter(OTC)と呼ばれる相対での取引となる点

と、取引の対象が製品の売買であれば現物の受け渡しが発生する点に相違がある。ヘッジを

目的とした現物の受け渡しを伴わない先渡し取引としては、例えば市場に連動した価格と固

定された価格の差額を取引対象とするスワップ取引などが挙げられるが、原油の市場連動価

格と重油の固定価格の差額を対象とするスワップ取引や契約期間を自由に設定できる取引

など、当事者間のニーズに合わせた取引が可能である。

スポット取引は継続を前提としない実際に現物の受け渡しを行う相対取引となる。相対取

Page 33: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 32 -

引という部分では先渡し取引と共通するが、契約の成立と現物の受け渡しがほぼ同時に発生

するという点で異なっている。引き渡し方法としてカーゴやバージ、パイプラインによる大口取

引から PB ブランド SS などへの油槽所からのローリー渡しも含まれる。Platts や Argus はバー

ジやパイプラインなどの大口取引を価格査定の対象としており、OPIS の調査するラック価格の

対象は油槽所からのローリー渡し価格をブランド系と非ブランド系に区別した価格となる。

SS事業者への引き渡し形態としてはラック取引と Dealer Tank Wagon (DTW)取引に分類

される。ラック取引は日本で言うところの「油槽所渡し」や「倉取り」に該当するが、SS事業者が

ローリーを手配し油槽所まで引き取りにくる形態となる。ラック取引を活用する主な事業者は

ハイパーや PB事業者となる。DTW取引は日本では「元売直送」「持ち届け」などと呼ばれ、精

製事業者がローリーを仕立てSSまで輸送する形態となり、主な利用者はブランド系SS事業者

となる。

図表 14は米国ガソリンの販売形態別の推移を示している。1990年代前半はラック取引は

過半を超えた程度で、メジャーが小売価格にまで影響力を持つ、DTWや直接販売が 40%以

上を占めていた。しかしその後メジャー等の SS 事業からの撤退やブランド系事業者の減少に

よりジョバー等へ売却するラック価格による販売が増加し、さらに 2009 年頃から石油会社に

よる直接販売の減少もあって、ラック取引が 80%以上へ増加する一方、DTW や石油会社に

よる直接販売の減少が顕著である。

図表 14 米国の販売形態別販売シェア

出所:EIA

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

19

94

19

95

19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

Rack

DTW

直接販売

Page 34: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 33 -

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

19

94

19

95

19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

Rack

DTW

直接販売(CO)

図表 15米国の販売形態別販売量(千ガロン/日)

出所:EIA

現物決済と差金決済

石油製品の先物取引には上記のように現物決済と差金決済ある。

現物決済の場合、納会日直前の流動性が急激に絞り込まれるため、このタイミングで買い

占めや玉締めなどの行為によって価格操作の影響を受けやすい。その点で、納会日直前

まで流動性が確保される差金決済の方が、恣意的な価格操作の影響を受けにくいといった

メリットがある。他方で差金決済の場合、参照する決済価格の正確性について疑義が示さ

れる場合もあり、価格報告会社への監視が重要という指摘もある。

2006 年 6 月、BP の米子会社が LPG 価格を操作し不当な利益を上げたとして、米商品

先物取引委員会(CFTC)が BP を告訴した。CFTC によると 2004年 2 月に BP子会社は生

産地のテキサス州と需要地の米北東部、中西部を結ぶパイプラインの輸送量の約 9 割相

当を買い占め、不当な利益を得ていたとしている。2007 年 10 月、BP は 3億ドルを支払う

ことで CFTC と和解したといった事例も発生している。

また、取り扱う商品の性質が不均質で、物流経費がかかる場合には、差金決済の方が

現物決済よりも有効性は増すとされている。

2006年の調査報告 A Survey on Physical Delivery Versus Cash Settlement in Futures

Contracts(http://ink.library.smu.edu.sg/cgi/viewcontent.cgi?article=1773&context=soe_research) に

よれば 1986年 Chicago Mercantile Exchange(CME)でフィーダー牛の先物取引を現物決

済から差金決済に切り替えた結果、現物市場と先物市場の連携が容易になり、ヘッジの有

Page 35: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 34 -

効性が増したとしている。

(2)価格指標の利用概況

米国では一般的にバージ、パイプラインなどによる大口取引をスポット価格、ブランドを有す

る SSに対する油槽所渡し価格をブランドラック価格、PB事業者に対する油槽所渡しをアンブ

ランドラック価格として分類している。

米国におけるガソリンのスポット価格は、特に北東部において NYMEX先物の RBOBガソリン

との連動性が高い。石油情報センター「平成 26 年度 石油産業体制等調査研究」では、

2009年から 2014年の NYMEX NYガソリン(先物)と EIAガソリン(現物)の相関係数は 0.84

から 0.97 であった。当業者は主に精製、貯蔵、輸送といった行程で生じる時間差などに起因

する価格変動リスクを回避するために先物市場を活用しており、当業者中心のスポット取引価

格との連動性が高くなる。また、スポット価格は契約時点における需給状況が反映された価

格となる一方で、先物価格の決済は 1 ヵ月後となるため契約時点における需給動向はあまり

反映されないが、裁定取引により収斂されることとなる。

スポット市場における取引を調査し査定した価格を Platts や Argus といった価格情報会社

が発表しており、業界における価格指標として位置づけられている。Platts と Argus の価格査

定方法は異なるものの、取得する情報の信憑性を重視しており、価格情報以外に「売買当事

者」「受渡日時」「受渡形態」といった情報を明示できない取引は評価の対象外としている。

油槽所渡しであるラック価格はスポット価格をもとに形成されるが、その価格は供給者であ

る精製事業者もしくはジョバーによって設定される。ブランドラック価格の決定要素はスポット

価格に加え他社の価格設定などによる競争要因が中心で、地域においてプライスリーダーと

なるブランドとのバランスを考慮して決定される。その他の要因としては精製マージン、製油所

の稼働状況、需給動向および地域戦略などが加味される。その一方でアンブランドラックは精

製事業者の需給調整といった意味合いが強く、地域における需給環境によって大きく変動す

る。需給が逼迫している状況下ではアンブランド価格がブランド価格を上回るケースもあるが、

基本的にはブランド価格は安定供給コスト、サインポール、カードシステムなどの販促支援など

によりアンブランド価格よりもおよそ 4セント/ガロン(約 1.2円/L)程度割高となる。

米国ではこのように複数の指標価格が混在する形となるが、精製事業者、ジョバーおよび

SS 事業者を問わずそれぞれの価格水準は至当だと捉えている。その一方でジョバーや複数

の SSを所有し仕入先の多様化を図ることができる SS事業者は、複数のブランドを掲げるもしく

は複数の仕入れ先を確保し、例えばAブランドの SSの契約価格は OPIS リンク、Bブランドから

の仕入価格は Argus リンクといったように、それぞれの契約ごとに採用する価格指標を変えリ

スクを分散する取り組みが行われている。

Page 36: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 35 -

価格調査会社の調査方法について

・PlattsとArgusは、スポット価格の調査である。各市場で取引されたデータ、ビット/オファーの

データ、その他にもグレードや取引市場の等の情報を分析し、評価作業(アセスメント)を経て公

表されている。スポット価格はコストで決まっている。Argus は日中のスポット市場の平均価格

を採用するのに対し、Platts は 16:30 に Platts に寄せられるビッド・オファーの値(Platts

Window)から算出する。いずれも機械的に平均するのではなく、担当者の査定を経る。Argus

は売り買い双方に電話で確認をする。これは、悪意的な価格操作を排除するため。

・どの取引も、実際の取引会社名がオープンになっており(ただし、Argus の米国市場は非公

表)、情報交換の場となっている。取引会社も、自らの取引を公表することが、健全なマーケッ

ト形成に貢献するとの認識を持っている。(この 10 年間で関係者の意識が非常に向上し、価

格形成に参加する権利との認識が広まった)

・OPIS は、ラック価格のほかに、スポット価格や小売価格の調査も行う。現在約 400 カ所ある

ラック価格の調査情報は、メジャー以外の石油会社、卸売事業者、販売事業者などから入手

する。メジャーのデータはジョバー(購入者)から毎日入手する。ラック価格には、購入者によっ

てはディスカウントがあるが、これは公表の対象にはなっていない。

・OPIS のデータには、価格情報のほか、契約条件なども掲載されている。また、Bottom Line

Report と呼ばれる、その日の最低価格をまとめたデータも掲載されている。

・これら価格調査会社は、すべて IOSCOのルールに基づいて、自らの原則を公表しており、さら

に定期的に IOSCOを含む、複数の規制当局や国際機関との意見交換を行っている。

Page 37: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 36 -

図表 16 OPISのラック価格

b:ブランド、u:アンブランド

取引条件:1-10 は、10 日以内に支払うと

1%の値引きの意

Page 38: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 37 -

出所:OPIS

図表 17 OPIS Bottom Line Report

図表 18 は各年におけるガソリンブランドラックとアンブランドラックの価格差を表したものとなる。

PADD1、PADD3 ともそれぞれ代表的な都市となる New York と Houston を選択したが、総じて

Houstonの方が日本で言うところのブランド料が割高になっている。ShellはHoustonにおいてブラン

ド品およびアンブランド品の供給を行っており、その価格差は Houstonにおける平均価格よりも上回

っている傾向にある。

図表 18 ガソリンのブランドラックとアンブランドラックの価格差

出所:OPIS

New Yorkでは 2012年にアンブランドラック価格がブランドラック価格を上回る逆転現象が発生

している。この事象は価格の上昇局面や下降局面においてそれぞれの価格変動にタイムラグが発

単位:セント/ガロン、( )内は\/㍑

New York ▲0.84 (▲0.19) 1.54 (0.43) 2.17 (0.69) 4.52 (1.44)

Houston 5.42 (1.24) 4.74 (1.32) 3.48 (1.10) 3.38 (1.08)

Shell (Houston) 5.82 (1.34) 5.22 (1.45) 3.95 (0.30) 3.28 (1.04)

2015年2014年2013年2012年

出所:OPIS

Page 39: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 38 -

生し逆転するケースや、自然災害によるアンブランド製品の供給懸念などが要因となる。自然災

害で影響が大きかったものとして 2012年 10月 29日に New Yorkを直撃したハリケーン・サンデ

ィが挙げられる。

図表 19 New Yorkにおけるガソリンの価格動向(セント/ガロン)

出所:OPIS

この直撃により同地域において石油製品の供給不足が発生、図表 19 に見られるように原油価

格が緩やかな上昇を見せるなか、アンブランド価格はブランド価格を 20 セント/ガロン上回る上昇

傾向を示した。2012 年 9 月にもアンブランド価格はブランド価格よりも 10 セント/ガロン近く高騰し

ている。これは米国内で約 5 割の精製能力を有する PADD3 にハリケーンアイザックが直撃、多く

の製油所が稼働停止に追い込まれ、PADD1のNew Yorkも供給不足に陥ったためだと考えられる。

図表 21 は Houston の推移となるが、ブランド、アンブランド間の価格差はほぼ皆無となったが、

New Yorkのように逆転現象にまでは至っていない。

Page 40: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 39 -

図表 20 Houstonにおけるガソリンの価格動向(セント/ガロン)

出所:OPIS

NYMEX 石油製品 現物

Gasoline

1 RBOB Gasoline Futures ○

2 RBOB Gasoline Options ○

3 RBOB Gasoline Brent Crack Spread Futures

4 RBOB Gasoline Financial Futures

5 RBOB Gasoline Crack Spread Futures

6 RBOB Gasoline Bullet Futures

7 RBOB Gasoline Average Price Options

8 RBOB Gasoline vs. NY Harbor ULSD Futures

9 EIA Flat Tax U.S. Retail Gasoline Futures

10 RBOB Gasoline BALMO Futures

11 RBOB Gasoline European Financial Option

12 RBOB Gasoline 3 Month Calendar Spread Options ○

13 RBOB Gasoline Crack Spread Options ○

Page 41: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 40 -

14 RBOB Gasoline Brent Crack Spread Average Price Options

15 RBOB Gasoline Crack Spread BALMO Futures

16 New York RBOB Gasoline vs. Brent (1000bbls) Crack Spread Future

17 New York RBOB Gasoline vs. Brent (1000bbls) Crack Spread BALMO Future

18 RBOB TAS Futures

19 E-mini RBOB Gasoline Futures

20 RBOB Gasoline 2 Month Calendar Spread Options ○

21 RBOB Gasoline 6 Month Calendar Spread Options ○

22 RBOB Gasoline Last Day Financial Futures

23 RBOB Gasoline Crack Spread Average Price Options

24 RBOB Gasoline 1 Month Calendar Spread Options ○

25 New York RBOB Gasoline vs. European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE

(Argus) (1000bbls) Spread BALMO Future

26 Mini New York RBOB Gasoline vs. European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE

(Argus) (35,000 gallons) Spread BALMO Future

27 RBOB Gasoline London Trade at Marker Futures

Gasoline(Platts Index)

28 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Platts) vs. RBOB Gasoline Futures

29 Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Futures

30 Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Brent Crack Spread Futures

31 Group Three Sub-octane Gasoline (Platts) vs. RBOB Futures

32 Chicago CBOB Gasoline (Platts) vs. RBOB Gasoline Futures

33 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M1 (Platts) vs. RBOB Gasoline Futures

34 Gulf Coast CBOB Gasoline A2 (Platts) vs. RBOB Gasoline Futures

35 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Platts) Crack Spread Futures

36 Premium Unleaded Gasoline 10 ppm FOB MED (Platts) Futures

37 Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) Futures

38 Gulf Coast Unl 87 (Platts) Up-Down BALMO Futures

39 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M1 (Platts) Crack Spread Futures

40 Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) BALMO Futures

41 Premium Unleaded Gasoline 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) Futures

42 NY RBOB (Platts) vs. RBOB Gasoline Futures

43 Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) BALMO Futures

44 Mini European Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Med (Platts) Calendar

Page 42: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 41 -

Month Future

45 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Platts) Futures

46 Premium Unleaded Gasoline 10 ppm FOB MED (Platts) BALMO Futures

47 European Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Med (Platts) BALMO Future

48 Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) vs. DME Oman Crude Oil Swap Futures

49 Singapore Gasoline 92 Unleaded (Platts) vs. European Gasoline Eurobob Oxy

Barges NWE (Argus) Spread Future

50 Gasoline 10 ppm FOB MED (Platts) Crack Spread Futures

51 EuroBob Gasoline 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) Futures

52 EuroBob Gasoline 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

53 Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) vs. Singapore Mogas 92 Unleaded

(Platts) Futures

54 Premium Unleaded Gasoline 10 ppm Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

55 Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Dubai (Platts) Crack Spread Futures

56 Singapore Mogas 97 Unleaded (Platts) Futures

57 Group Three Sub-octane Gasoline (Platts) Futures

58 European Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Med (Platts) Calendar Month

Future

59 Gulf Coast CBOB Gasoline A1 (Platts) vs. RBOB Gasoline Futures

60 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M1 (Platts) Futures

61 Gulf Coast CBOB Gasoline A2 (Platts) Futures

62 Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Average Price Option

63 Mini European Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Med (Platts) BALMO

Future

64 Gulf Coast CBOB Gasoline A2 (Platts) Crack Spread Futures

65 Gulf Coast Unl 87 (Platts) Crack Spread BALMO Futures

66 Premium Unleaded Gasoline 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

67 East-West Gasoline Spread (Platts-Argus) Futures

68 Chicago CBOB Gasoline (Platts) Futures

69 Singapore Mogas 97 Unleaded (Platts) BALMO Futures

70 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Platts) vs. RBOB Gasoline BALMO Futures

71 NY RBOB (Platts) Financial Futures

72 Gulf Coast CBOB Gasoline A1 (Platts) Crack Spread Futures

Gasoline(Argus Index)

Page 43: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 42 -

73 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Crack Spread Futures

74 Mini Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Futures

75 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Futures

76 RBOB Gasoline vs. Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) (350,000 gallons)

Futures

77 Mini RBOB Gasoline vs. Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Futures

78 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Crack Spread Average Price

Options

79 Mini Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) BALMO Futures

80 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) BALMO Futures

81 Argus Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE Crack Spread (1000mt) Futures

82 Mini Argus Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE Crack Spread (100mt) Futures

83 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Crack Spread BALMO Futures

84 Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Average Price Options

85 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) vs. European Naphtha

Cargoes CIF NWE (Platts) Spread BALMO Future

86 New York RBOB Gasoline vs. European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE

(Argus) (350,000 gallons) Spread Future

87 Mini European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) Calendar Month

Future

88 Mini European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) (100mt) Crack

Spread Future

89 New York RBOB Gasoline vs. European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE

(Argus) (350,000 gallons) Spread BALMO Future

90 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) BALMO Future

91 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Argus) Futures

92 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) vs. European Naphtha

Cargoes CIF NWE (Platts) Spread Future

93 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) (1000mt) Crack Spread

BALMO Future

94 Gulf Coast CBOB Gasoline A1 (Platts) Futures

95 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) (1000bbls) Crack Spread

BALMO Future

96 Daily Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Futures

97 Mini RBOB Gasoline vs. Gasoline Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) BALMO

Page 44: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 43 -

Futures

98 RBOB Gasoline vs. Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) Futures

99 Mini European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) vs. European Naphtha

Cargoes CIF NWE (Platts) Spread BALMO Future

100 RBOB Gasoline vs. Euro-bob Oxy NWE Barges (Argus) (1000mt) Average Price

Options

101 New York RBOB Gasoline vs. European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE

(Argus) (1000bbls) Spread Future

102 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) Calendar Month Future

103 Mini New York RBOB Gasoline vs. European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE

(Argus) (35,000 gallons) Spread Future

104 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) (1000mt) Crack Spread

Future

105 European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) (1000bbls) Crack Spread

Future

106 Gulf Coast Unl 87 (Argus) Futures

107 Mini European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) BALMO Future

108 Gulf Coast Unl 87 Gasoline M2 (Argus) vs. RBOB Gasoline Futures

109 Mini European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) vs. European Naphtha

Cargoes CIF NWE (Platts) Spread Future

110 Mini European Gasoline Eurobob Oxy Barges NWE (Argus) (100mt) Crack

Spread BALMO Future

111 Gulf Coast Unl 87 (Argus) Crack Spread Futures

Gasoline(Other Index)

112 Los Angeles CARBOB Gasoline (OPIS) vs. RBOB Gasoline Futures

113 Los Angeles CARBOB Gasoline (OPIS) Futures

114 Tokyo Bay Gasoline (RIM) Futures

Diesel

115 NY Harbor ULSD Futures ○

116 NY Harbor ULSD Option ○

117 NY Harbor ULSD Average Price Option

118 NY Harbor ULSD Brent Crack Spread Futures

119 NY Harbor ULSD Financial Futures

Page 45: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 44 -

120 NY Harbor ULSD Crack Spread Futures

121 EIA Flat Tax On-Highway Diesel Futures

122 European Low Sulphur Gasoil (100mt) Bullet Futures

123 NY Harbor ULSD Bullet Futures

124 NY Harbor ULSD Calendar Spread Option - 1 Month ○

125 NY Harbor ULSD vs. Low Sulphur Gasoil (1,000bbl) Futures

126 NY Harbor ULSD European Financial Option

127 E-mini NY Harbor ULSD Futures

128 European Low Sulphur Gasoil Calendar (6 month) Spread Options

129 NY Harbor ULSD Last Day Financial Futures

130 EIA Flat Tax On-Highway Diesel Average Price Options

131 NY Harbor ULSD Crack Spread Option ○

132 NY Harbor ULSD Crack Spread BALMO Futures

133 NY Harbor ULSD London Tradable Marker

134 NY Harbor ULSD Calendar Spread Option - 3 Month ○

135 European Low Sulphur Gasoil Calendar (3 month) Spread Options

136 NY Harbor ULSD Crack Spread Average Price Option

137 NY Harbor ULSD BALMO Futures

138 NY Harbor ULSD Calendar Spread Option - 12 Month ○

139 NY Harbor ULSD Calendar Spread Option - 2 Month ○

140 NY Harbor ULSD TAS

141 NY Harbor ULSD Calendar Spread Option - 6 Month ○

Diesel(Platts Index)

142 Gulf Coast ULSD (Platts) Up-Down Futures

143 Gulf Coast ULSD (Platts) Crack Spread Futures

144 Group Three ULSD (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

145 Gulf Coast ULSD (Platts) Futures

146 Gulf Coast ULSD (Platts) Up-Down BALMO Futures

147 Chicago ULSD (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

148 European Diesel 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil

Futures

149 Mini ULSD 10ppm Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

150 NY ULSD (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

151 ULSD 10ppm Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

Page 46: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 45 -

152 Mini European Diesel 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil

Futures

153 ULSD 10ppm CIF MED (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

154 Mini ULSD 10ppm Cargoes CIF MED (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

155 Chicago ULSD (Platts) Futures

156 ULSD 10ppm Cargoes CIF MED (Platts) Futures

157 ULSD 10ppm Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

158 Diesel 10ppm Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

159 ULSD 10ppm CIF MED (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

160 ULSD 10ppm Cargoes CIF NWE (Platts) vs. New York Harbor ULSD Futures

161 Gulf Coast ULSD (Platts) vs. Gulf Coast Jet (Platts) Futures

162 ULSD 10ppm Cargoes CIF NWE (Platts) BALMO Futures

163 ULSD 10ppm Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

164 NY ULSD (Platts) Futures

165 Group Three ULSD (Platts) Futures

166 Diesel 10ppm Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

167 ULSD 10ppm Cargoes CIF Med (Platts) vs. New York Harbor ULSD Futures

168 ULSD 10ppm CIF MED (Platts) BALMO Futures

169 European Diesel 10ppm Barges FOB Rdam (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

170 European Diesel 10 ppm Barges FOB Rdam (Platts) Futures

Diesel(Argus Index)

171 NY ULSD (Argus) vs. NY Harbor ULSD Futures

172 NY ULSD (Argus) vs. NY Harbor ULSD BALMO Futures

173 Gulf Coast ULSD (Argus) Futures

174 Gulf Coast ULSD (Argus) Crack Spread Futures

175 Gulf Coast ULSD (Argus) Up-Down BALMO Futures

176 NY ULSD (Argus) Futures

177 Gulf Coast ULSD (Argus) Up-Down Futures

Diesel(Other Index)

178 Los Angeles CARB Diesel (OPIS) vs. NY Harbor ULSD Futures

179 Los Angeles CARB Diesel (OPIS) Futures

180 Tokyo Bay 10ppm Gasoil (RIM) Futures

Page 47: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 46 -

Gas Oil/Heating Oil

181 European Low Sulphur Gasoil Brent Crack Spread Futures

182 Low Sulphur Gasoil Average Price Options

183 Low Sulphur Gasoil Mini Financial Futures

184 Low Sulphur Gasoil Crack Spread (1000mt) Financial Futures

185 European Low Sulphur Gasoil Calendar (1 month) Spread Options

186 European Low Sulphur Gasoil Financial Futures

187 European Low Sulphur Gasoil Brent Crack Average Price Options

188 Gasoil TAS Future

189 European Low Sulphur Gasoil (1000mt) Bullet Futures

190 Low Sulphur Gasoil Crack Spread (1000mt) BALMO Financial Futures

191 European Low Sulphur Gasoil Calendar (12 month) Spread Options

192 European-Style Low Sulphur Gasoil Options

193 Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

194 European Low Sulphur Gasoil Brent Crack Spread BALMO Futures

195 European Low Sulphur Gasoil Calendar (2 month) Spread Options

Gas Oil/Heating Oil(Platts Index)

196 Singapore Gasoil (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

197 Singapore Gasoil (Platts) Futures

198 Gulf Coast No. 2 (Platts) Up-Down Financial Futures

199 Middle East Gasoil FOB Arab Gulf (Platts) Futures

200 Singapore Gasoil (Platts) Average Price Options

201 Singapore Gasoil (Platts) BALMO Futures

202 Mini Gasoil 0.1 Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

203 Gasoil 0.1 Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

204 Mini Gasoil 0.1 Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

205 Gasoil 0.1 Cargoes CIF MED (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

206 Gasoil 0.1 Cargoes CIF MED (Platts) Futures

207 NY Heating Oil (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

208 Gasoil 0.1 Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

209 NY Heating Oil (Platts) Futures

210 Gasoil 0.1 Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

211 Gasoil 0.1 Barges FOB Rdam (Platts) Futures

212 Gasoil 0.1 Cargoes CIF NWE (Platts) BALMO Futures

Page 48: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 47 -

213 Singapore Gasoil 10 ppm (Platts) Futures

214 Middle East Gasoil FOB Arab Gulf (Platts) BALMO Futures

215 Mini Singapore Gasoil (Platts) Futures

216 Singapore Gasoil (Platts) vs. DME Oman Crude Oil Swap Futures

217 Gasoil 0.1 Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

218 Singapore Gasoil 10 ppm (Platts) vs. Singapore Gasoil (Platts) Futures

219 Gasoil 0.1 Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

230 Singapore Gasoil 10 ppm (Platts) BALMO Futures

231 Gasoil 0.1 Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

232 Gulf Coast Heating Oil (Platts) Futures

233 Gasoil 0.1 Cargoes CIF MED (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

Gas Oil/Heating Oil(Argus Index)

234 Gulf Coast Heating Oil (Argus) vs. NY Harbor ULSD Futures

235 Gulf Coast Heating Oil (Argus) Futures

Gas Oil/Heating Oil(Other Index)

236 Tokyo Bay Kerosene (RIM) Futures

Fuel Oil

237 European 1% Fuel Oil Cargoes FOB MED vs. European 1% Fuel Oil Cargoes FOB

NWE Spread (Platts) Futures

Fuel Oil(Platts Index)

238 Gulf Coast HSFO (Platts) Futures

239 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Crack Spread Futures

240 Gulf Coast HSFO (Platts) Crack Spread Futures

241 European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Futures

242 New York Harbor Residual Fuel 1.0% (Platts) Futures

243 Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) Futures

244 NY 1% Fuel Oil (Platts) vs. Gulf Coast HSFO (Platts) Futures

245 Gulf Coast HSFO (Platts) Brent Crack Spread Futures

246 NY 3.0% Fuel Oil (Platts) vs. Gulf Coast HSFO (Platts) Futures

247 Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) vs. European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam

(Platts) Futures

Page 49: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 48 -

248 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) Futures

249 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) vs. 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam

(Platts) Futures

250 Mini Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) Futures

251 European 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) Futures

252 Gulf Coast HSFO (Platts) BALMO Futures

253 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) vs. 380 cst (Platts) Futures

254 NY 3.0% Fuel Oil (Platts) Futures

255 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) vs. 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam

(Platts) Futures

256 3.5% Fuel Oil CIF MED (Platts) Futures

257 Mini European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

258 NY Fuel Oil 1.0% (Platts) vs. European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts)

Futures

259 East-West Fuel Oil Spread (Platts) Futures

260 Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) BALMO Futures

261 European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) Futures

262 Mini 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) Financial Futures

263 Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) 6.35 Dubai (Platts) Crack Spread Futures

264 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) 6.35 Brent Crack Spread Futures

265 European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

266 Mini Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) BALMO Futures

267 NY 2.2% Fuel Oil (Platts) Futures

268 Mini European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) Futures

269 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) Crack Spread Futures

270 Mini European 1% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Futures

271 1% Fuel Oil Rdam (Platts) vs. 1% Fuel Oil NWE (Platts) Futures

272 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) vs. 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam

(Platts) BALMO Futures

273 1% Fuel Oil Cargoes CIF MED (Platts) Futures

274 European 1% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Futures

275 Mini 1% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) Futures

276 Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) Average Price Options

277 European 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) BALMO Futures

278 1% Fuel Oil Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

Page 50: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 49 -

279 European 1% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) Futures

280 New York Harbor 1.0% Fuel Oil (Platts) BALMO Futures

281 Mini Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) BALMO Futures

282 Gulf Coast HSFO (Platts) vs. European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts)

BALMO Futures

283 Singapore Fuel Oil 380cst (Platts) Brent Crack Spread (1000mt) Futures

284 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) vs. 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam

(Platts) BALMO Futures

285 1% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) vs. 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts)

BALMO Futures

286 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) Crack Spread BALMO Futures

287 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) 6.35 Dubai (Platts) Crack Spread Futures

288 Mini 1% Fuel Oil Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

289 East-West Fuel Oil Spread (Platts) BALMO Futures

290 NY 1% Fuel Oil (Platts) vs. Gulf Coast HSFO (Platts) BALMO Futures

291 European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) BALMO Futures

292 3.5% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) Crack Spread Futures

293 NY 0.3% Fuel Oil (Platts) Futures

294 NY 2.2% Fuel Oil (Platts) BALMO Futures

295 Mini Middle East HSFO 180 cst FOB Arab Gulf (Platts) BALMO Futures

296 Gulf Coast HSFO (Platts) Average Price Options

297 Singapore Fuel Oil 380 cst (Platts) vs. European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam

(Platts) BALMO Futures

298 NY 0.7% Fuel Oil (Platts) Futures

299 European 1% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

300 NY 0.7% Fuel Oil (Platts) BALMO Futures

301 Mini Middle East HSFO 380 cst FOB Arab Gulf (Platts) BALMO Futures

302 Mini European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) BALMO Futures

303 3.5% Fuel Oil CIF MED (Platts) BALMO Futures

304 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Crack Spread BALMO Futures

305 European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Average Price Option

306 NY Fuel Oil 1.0% (Platts) vs. European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts)

BALMO Futures

307 Mini East-West Fuel Oil Spread (Platts) Futures

308 1% Fuel Oil Cargoes CIF MED (Platts) BALMO Futures

Page 51: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 50 -

309 Daily European 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Futures

310 European 3.5% Fuel Oil Barges Fob Rdam (Platts) Mini Weekly Spread Futures

311 European 1% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Average Price Option

312 NY 3.0% Fuel Oil (Platts) BALMO Futures

313 Mini 1% Fuel oil Cargoes FOB NWE (Platts) Crack Spread (100mt) Futures

314 Singapore 180cst Fuel Oil (Platts) Mini Weekly Spread Futures

315 New York Harbor Residual Fuel (Platts) Crack Spread Futures

316 Mini Singapore Fuel Oil 380cst (Platts) vs. European 3.5%Fuel Oil Barges FOB

Rdam (Platts) Futures

317 Gulf Coast HSFO (Platts) Crack Spread BALMO Futures

318 Gulf Coast HSFO (Platts) Crack Spread BALMO Futures

319 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) Average Price Options

320 NY 1% Fuel Oil (Platts) Crack Spread BALMO Futures

321 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) vs. 380 cst (Platts) BALMO Futures

322 NY 0.3% Fuel Oil HiPr (Platts) vs. NY Fuel Oil 1.0% (Platts) Futures

323 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) 6.35 Dubai (Platts) Crack Spread BALMO

Futures

324 NY 0.3% Fuel Oil HiPr (Platts) BALMO Futures

325 Singapore Fuel Oil 180 cst (Platts) BALMO Futures

326 Mini Middle East HSFO 180 cst FOB Arab Gulf (Platts) Futures

327 NY 0.3% Fuel Oil HiPr (Platts) Futures

328 Mini Middle East HSFO 380 cst FOB Arab Gulf (Platts) Futures

329 Daily European 1% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) Futures

330 Mini European 1% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

331 1% Fuel Oil Cargoes FOB MED (Platts) BALMO Futures

332 Singapore Fuel Oil 180cst (Platts) Brent Crack Spread (1000mt) Futures

333 1.0% Fuel Oil Cargoes FOB NWE (Platts) Crack Spread (1000mt) Futures

334 Mini 3.5% Fuel Oil Barges FOB Rdam (Platts) Crack Spread (100mt) Futures

335 Singapore 380cst Fuel Oil (Platts) Mini Weekly Spread Futures

Fuel Oil(Other Index)

336 Tokyo Bay A-Grade 1% Sulfur Fuel Oil (RIM) Futures

337 Tokyo Bay A-Grade 0.1% Sulfur Fuel Oil (RIM) Futures

Jet Fuel(Platts Index)

Page 52: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 51 -

338 Gulf Coast Jet (Platts) Up-Down Futures

339 Gulf Coast Jet (Platts) Up-Down BALMO Futures

340 Singapore Jet Kerosene (Platts) vs. Gasoil (Platts) Futures

341 Gulf Coast Jet Fuel (Platts) Average Price Options

342 NY Buckeye Jet Fuel (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

343 Singapore Jet Kerosene (Platts) Futures

344 Singapore Jet Kerosene (Platts) Average Price Options

345 Los Angeles Jet Fuel (Platts) vs. NY Harbor ULSD Futures

346 Gulf Coast Jet Fuel (Platts) Futures

347 Mini European Jet Kero Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil

Futures

348 Singapore Jet Kerosene (Platts) Dubai (Platts) Crack Spread Futures

349 European Jet Kerosene Cargoes CIF NWE (Platts) Average Price Option

350 European Jet Kerosene Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

351 Jet Aviation Fuel Cargoes FOB MED (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

352 Jet Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil Futures

353 Jet Aviation Fuel Cargoes FOB MED (Platts) Futures

354 Singapore Jet Kerosene (Platts) vs. DME Oman Crude Oil Swap Futures

355 NY Jet Fuel (Platts) Futures

356 Singapore Jet Kerosene (Platts) vs. Gasoil (Platts) BALMO Futures

357 Gulf Coast Jet (Argus) Up-Down Futures

358 NY Jet Fuel (Argus) vs. NY Harbor ULSD Futures

359 Jet Fuel Cargoes CIF NWE (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil BALMO Futures

360 Jet Fuel Barges FOB Rdam (Platts) BALMO Futures

361 European Jet Kerosene Barges FOB Rdam (Platts) Futures

362 Jet Fuel Cargoes CIF NWE (Platts) BALMO Futures

363 Jet Fuel Cargoes CIF NWE (Platts) Crack Spread Futures

364 NY Buckeye Jet Fuel (Platts) Futures

365 Singapore Jet Kerosene (Platts) BALMO Futures

366 Mini European Jet Kero Barges FOB Rdam (Platts) vs. Low Sulphur Gasoil

Futures

Jet Fuel(Argus Index)

367 NY Jet Fuel (Argus) Futures

368 Gulf Coast Jet (Argus) Futures

Page 53: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 52 -

369 Gulf Coast Jet (Argus) Up-Down BALMO Futures

Jet Fuel(Others Index)

370 Los Angeles Jet (OPIS) vs. NY Harbor ULSD Futures

371 Los Angeles Jet (OPIS) Futures

Naphtha(Platts Index)

372 European Naphtha (Platts) Crack Spread Futures

373 Mini European Naphtha CIF NWE (Platts) Futures

374 Japan C&F Naphtha (Platts) Futures

375 Japan C&F Naphtha (Platts) Brent Crack Spread Futures

376 Mini Japan C&F Naphtha (Platts) Futures

377 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Futures

378 Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Crack Spread (1000mt) Futures

379 Mini European Naphtha (Platts) BALMO Futures

380 European Naphtha (Platts) Crack Spread BALMO Futures

381 East-West Naphtha: Japan C&F vs. Cargoes CIF NWE Spread (Platts) Futures

382 European Naphtha (Platts) BALMO Futures

383 Japan C&F Naphtha (Platts) BALMO Futures

384 Mini Japan C&F Naphtha (Platts) BALMO Futures

385 Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Crack Spread (1000mt) BALMO Futures

386 Singapore Naphtha (Platts) BALMO Futures

387 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Calendar Month Future

388 Singapore Naphtha (Platts) Futures

389 Mini Japan C&F Naphtha (Platts) Calendar Month Future

390 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) (1000mt) Crack Spread Future

391 Daily European Naphtha CIF NWE (Platts) Futures

392 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) (1000bbls) Crack Spread Future

393 Japan C&F Naphtha (Platts) vs. European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts)

Spread BALMO Future

394 Mini Middle East Naphtha FOB Arab Gulf (Platts) BALMO Futures

395 Japan C&F Naphtha (Platts) BALMO Future

396 Mini European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) BALMO Future

397 Singapore Naphtha (Platts) BALMO Future

398 Mini European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) (100mt) Crack Spread BALMO

Page 54: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 53 -

Future

399 Japan C&F Naphtha (Platts) vs. European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts)

Spread Future

400 Japan C&F Naphtha (Platts) Calendar Month Future

401 Mini European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Calendar Month Future

402 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Average Price Option

403 Singapore Naphtha (Platts) Calendar Month Future

404 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) Average Price Option

405 Singapore Naphtha (Platts) Calendar Month Future

406 Mini European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) (100mt) Crack Spread Future

407 Mini Middle East Naphtha FOB Arab Gulf (Platts) Futures

408 Mini Japan C&F Naphtha (Platts) vs. European Naphtha Cargoes CIF NWE

(Platts) Spread BALMO Future

409 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) BALMO Future

410 Mini Japan C&F Naphtha (Platts) BALMO Future

411 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) (1000mt) Crack Spread BALMO

Future

412 European Naphtha Cargoes CIF NWE (Platts) (1000bbls) Crack Spread BALMO

Future

413 Japan C&F Naphtha Dubai (Platts) Crack Spread Futures

414 Japan C&F Naphtha (Platts) Average Price Option

415 Mini Japan C&F Naphtha (Platts) vs. European Naphtha Cargoes CIF NWE

(Platts) Spread Future

4.価格形成に影響を与える諸要因

(1)石油需給統計

①EIAの石油統計

EIA(The U.S. Energy Information Administration、米エネルギー情報局)は、DOE(Department

of Energy、米エネルギー省)の附置組織であり、エネルギー関係の情報を収集・分析することを

目的としている。設置法は、1974Federal Energy Administration (FEA) Actである。同法のほか

に、1976Energy Conservation and Production Act、1977Department of Energy (DOE)

Organization Actなど、合計で 14の関連法(*)に規定されている。2015年度の予算は 117百

万ドル(約 140億円)である。

組織は、統計、分析、サポート、人事の 4つのオフィスからなり、職員は総計約 320名である。

Page 55: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 54 -

図表 21 EIAの組織

出所:EIAホームページ

(注)EIA を規定する関連法

○主要法

1974: Federal Energy Administration (FEA) Act

1976: Energy Conservation and Production Act

1977: Department of Energy (DOE) Organization Act

1992: Energy Policy Act of 1992

2005: Energy Policy Act of 2005

2007: Energy Independence and Security Act

○その他の法

1974 Energy Supply and Environmental Coordination Act

1975 Energy Policy and Conservation Act

1978 Powerplant and Industrial Fuel Use Act of 1978

1982 Energy Emergency Preparedness Act

1983 Nuclear Regulatory Commission Authorization Act

1985 Energy Policy and Conservation Act Amendments of 1985

1986 Omnibus Budget Reconciliation Act

1987 Powerplant and Industrial Fuel Use Act Amendments

Page 56: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 55 -

EIAは、石油のみならずエネルギー全般、天然ガス、電力、石炭、ウラン、再生可能エネル

ギーに関する実績や予測を出しており、エネルギー政策の策定に加え、産業界、学会等での

各種の指標作りに有用なデータを提供している。この中で、石油関係の統計は、週次が 10、

月次が15、年次が4、4年毎が1となっており、原油の埋蔵量から石油製品の販売量や販売

価格までを広くカバーしている。

EIAが収集した石油統計は、法律上、提出が義務付けられており(1974年の FEA法:

Section13(b)of the Federal Energy Administration Act of 1974)、また違反の際の罰則も

定められている(2,750 ドル/日、ただし犯罪行為の場合は 5,000 ドル/日)。さらに統計目的と

は謳われるものの、法律(the Freedom of Information Act(FOIA)、DOE Regulations、Trade

Secrets Act等)に基づき議会、政府内の規制当局が石油市場の監視を目的に共有し、ある

いは個別企業の特定が可能であり、必要に応じて裁判所の判断を仰ぐことも可能である。SEC

や CFTCが相場操縦を監視する目的で利用するなどしており、現在 CFTCが EIAに対しタンク

在庫の統計の改善を求めている。

これらの統計データの中で、特に米国内市場での価格形成に大きな影響を与えるのが、

EIA801 の油槽所製品在庫と、EIA803 の原油在庫に関する週次データである。このデータは、

前週末の原油、石油製品(ガソリン、中間留分、プロパン)在庫を原則翌週の水曜日に公表し

ているが、在庫の増減が米国内の石油需要動向を示す指標となると意識され、NYMEX市場

の原油価格決定に大きな影響を与えている。

一例をあげると、2016年 2月 3日に公表された米原油在庫は、前週比 780万 bbl増と

市場予想(480万 bbl増=ロイター通信調べ)を大幅に上回る積み増しとなった。ディスティレ

ート(留出油)は 80万 bbl減(ロイター通信の市場予想は 110万 bbl減)、ガソリンは 590万

bblバレル増(同 170万バレル増)だった。相場はこの在庫週報の発表直後、予想以上の原

油在庫の増加に売り買いが交錯する展開となった。また 2月 10日の在庫週報は、原油在庫

が前週比 80万 bbl減と、市場予想(ロイター通信調べ)の 360万 bbl増に反して取り崩しとな

った。このため、原油相場は 29 ドル台に急伸する場面もあった、と報じられている。

Page 57: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 56 -

②APIの石油統計

API(American Petroleum Institute、米国石油協会、)は、EIA週間石油統計に先立つ毎週火

曜日夕刻に、週間統計を公表している。在庫データに関して言えば、EIAのデータは 1982年

から公表が開始されているのに対し、APIのデータは第二次世界大戦以前から存在し、歴史

的には APIのほうがはるかに古くなっている。しかしながら、厳密にデータ提供元を比較するこ

とが不可能であるため推測の域は出ないが、APIのデータはEIAのデータよりはカバー率が低く、

正確性にやや劣るとの評価が一般的で、市場関係者には APIのデータは、翌日に公表される

EIAデータの先行指標としての評価が多いように思われる。これに関し APIは、特に輸入製品

EIA番

号調

査内

容報

告義

務者

油種

頻度

報告

者数

量価

格調

査方

法・具

体的

内容

EIA-

800

製油

所の

投入

・産出

・在庫

精製

業者

・NG

Lプラ

ント

運営

者原

油・N

GL・

半製

品・製

品週

次12

9○

×

EIA-

801

石油

製品

在庫

量油

槽所

運営

者石

油製

品週

次73

7○

×

EIA-

802

パイ

プラ

イン

在庫

パイ

プラ

イン

運営

者石

油製

品週

次46

○×

EIA-

803

原油

在庫

量原

油生

産者

、製

油所

以外

のタ

ンク

運営

者、

アラ

スカ

原油

の輸

送者

原油

週次

75○

×

EIA-

804

輸入

量輸

入業

者原

油(国

別)・

NG

L・半

製品

・製品

週次

107

○×

EIA-

805

油槽

所の

投入

・産出

油槽

所運

営者

石油

製品

週次

737

○×

EIA-

809

含酸

素燃

料(エ

タノ

ール

)の生

産・在

庫燃

料用

エタ

ノー

ル生

産者

エタ

ノー

ル週

次15

0○

×

EIA-

877

暖房

油・家

庭用

プロ

パン

価格

(冬季

のみ

)小

売業

者暖

房油

・家庭

用プ

ロパ

ン週

次1,

500

×○

電話

聞き

取り

EIA-

878

ガソ

リン

小売

価格

小売

業者

自動

車用

ガソ

リン

週次

800

×○

電話

聞き

取り

EIA-

888

自動

車用

軽油

価格

トラ

ック

ステ

ーシ

ョン・小

売業

者自

動車

用軽

油週

次40

○電

話聞

き取

EIA-

14製

油所

の原

油取

得コ

スト

精製

業者

原油

(国産

・輸入

別)

月次

70○

EIA-

22M

バイ

オデ

ィー

ゼル

の生

産・販

売・在

庫バ

イオ

ディ

ーゼ

ル生

産者

B10

0(投

入し

た原

料も

)月

次13

5○

×

EIA-

182

国産

原油

の出

荷価

格油

田出

荷後

最初

に取

得し

た者

原油

月次

87○

EIA-

782A

石油

製品

出荷

価格

精製

業者

・NG

Lプラ

ント

操業

者石

油製

品月

次10

0○

○油

種別

・販売

形態

別(小

売、

業者

向け

DTW

、ラ

ック

、バ

ルク

EIA-

782B

石油

製品

出荷

価格

再販

業者

・小売

業者

石油

製品

月次

2,00

0○

○同

上な

るも

2012

年か

ら休

止(予

算上

の理

由)

EIA-

782C

石油

製品

販売

量州

を超

えて

販売

した

再販

業者

・小

売業

者石

油製

品月

次19

5○

×

EIA-

810

製油

所の

投入

・産出

・在庫

精製

業者

・NG

Lプラ

ント

運営

者原

油・N

GL・

半製

品・製

品月

次14

2○

×EI

A-80

0の月

次版

EIA-

812

パイ

プラ

イン

在庫

パイ

プラ

イン

運営

者石

油製

品月

次86

○×

EIA-

802の

月次

EIA-

813

原油

在庫

量原

油生

産者

、製

油所

以外

のタ

ンク

運営

者、

原油

の輸

送者

原油

月次

250

○×

EIA-

803の

月次

EIA-

814

輸入

量輸

入業

者原

油(国

別)・

NG

L・半

製品

・製品

月次

396

○×

EIA-

804に

API、

S分、

陸揚

げ地

を追

EIA-

815

油槽

所の

投入

・産出

油槽

所運

営者

石油

製品

月次

1,47

3○

×EI

A-80

5の月

次版

EIA-

816

NG

Lの投

入・生

産・出

荷・在

庫N

GLプ

ラン

ト操

業者

エタ

ン,プ

ロパ

ン,ブ

タン

,ペン

タン

+月

次42

6○

×

EIA-

817

タン

カー

・バー

ジに

よる

輸送

量PA

Dを

超え

て石

油を

輸送

する

者原

油・L

PG・石

油製

品月

次35

○×

EIA-

819

エタ

ノー

ル、

ETB

Eの生

産・在

庫含

酸素

燃料

を生

産す

る者

エタ

ノー

ル、

ETB

Eとそ

の混

合品

月次

202

○×

EIA-

856

輸入

原油

原油

輸入

業者

原油

(船別

、陸

揚げ

地別

)月

次43

○○

EIA-

23L

原油

・天然

ガス

の埋

蔵量

油田

の操

業者

原油

・随伴

ガス

・非随

伴ガ

ス・

コン

デン

セー

ト年

次50

0○

×

EIA-

64A

NG

L生産

量天

然ガ

スプ

ラン

トの

操業

者天

然ガ

スの

受け

入れ

とN

GL生

産年

次52

7○

×

EIA-

820

製油

所の

精製

能力

精製

業者

製油

所(休

廃止

を含

む)

年次

151

○×

EIA-

821

石油

製品

の用

途別

出荷

精製

業者

、5州

以上

にま

たが

って

販売

する

者、

各州

で5%

以上

の販

売シ

ェア

を持

つ者

石油

製品

(留出

油・重

油を

中心

に)

年次

3,05

5○

×

EIA-

863

石油

取扱

業者

調査

石油

取扱

業者

業者

の規

模、

所在

地等

4年ご

と24

,400

××

2012

年か

ら休

止(予

算上

の理

由)

*統計

の提

出(回

答)は

法律

によ

り義

務化

。違

反者

には

最大

5,00

0ドル

の罰

金出

所:E

IAホ

ーム

ペー

ジよ

り石

油情

報セ

ンタ

ー作

図表

22 

米エ

ネル

ギー

情報

局【E

IA】の

統計

調査

項目

(石油

関連

のみ

Page 58: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 57 -

の捕捉が完全にはできないことを認めており、これに対し法的な義務の下、最終的には 100%

の捕捉率となって月報段階で整合が完了する EIAデータの方を重視する傾向が強いと見ら

れる。

③在庫データに関する評価

EIAの在庫データが特に NYMEX市場で注目を集めることに対し、今回面談に応じた EIAの

担当者は、やや過剰に過ぎる反応だと評価している。現状で約 5億 bblに達する米国の原油

在庫において、毎週の増減は最大でも 1,000万 bbl、通常は 500万 bbl程度であり、1~2%

の変動が場合によっては 2 ドル以上の価格変動を招き、さらにそれが全世界の原油市場に波

及している現状に、EIAは余りに小さな誤差にフォーカスしすぎであるとしている。

(2)在庫との関係

先物市場では、契約期限を1ヵ月単位で設定しておりNYMEXの RBOBガソリンは契約月の

翌月から 36 ヵ月先まで取引を行うことができる。各契約期限を「限月」と呼んでいるが、契約

期限が 1 ヵ月先となる直近限月のものを「期近物」、それよりも後に限月を迎えるものは「期先

物」という。原油や石油製品を保持することにより発生する貯蔵費用や金利などにより、各決

済月の価格は期近物よりも期先物の方が高いことが一般的であるが、取引時点での石油製

品需給がタイト化している場合などには期近物が期先物よりも高い現象も発生する。期先物が

期近物よりも高い状況を「コンタンゴ(順ザヤ)、期近物が期先物よりも高い状況を「バックワー

デーション(逆ザヤ)」と呼んでおり、製品の需給環境を読み解く材料として利用されている。

図表 23は米国全土のガソリン在庫数量と NYMEXの RBOBガソリンを期近物から 4 ヵ月先

までの各限月ごとの価格差を比較したものとなる。在庫量が減少傾向にあるなかでは、バック

ワーデーションの傾向が見てとれる。図表 24は同様の値の相関性を調べたものだが、一定の

相関性を見ることができる。

Page 59: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 58 -

図表 23 米国ガソリン在庫と RBOBガソリンの限月別価格差の比較

図表 24 米国ガソリン在庫と RBOBガソリンの限月別価格差の相関性

2限月-1限月 3限月-1限月 4限月-1限月

ガソリン在庫 0.6079 0.7527 0.7204

(3)地政学的リスク

原油の生産地域が中東に偏在することから、原油価格には中東の政治情勢が大きく影響

する。第一次石油危機が、第四次中東戦争を発端とする産油国側の石油戦略の発動であっ

たことに始まり、それ以降もイラン・イラク戦争や、最近では 2010年以降急速に広がった「アラ

ブの春」による中東諸国の民主化の流れなどが地政学的リスクとして原油価格に大きな影響

を与えている。2008 年のリーマンショックによる原油価格急落後も、イランの核開発疑惑とそ

れに伴う経済制裁、リビア、エジプト、シリアなどでの民主化に伴う内政の混乱、そしてもっとも

最近では2014年夏のイラク国内における IS(イスラム国)の活動活発化が、原油価格の上昇

要因となっている。これらのリスクは、基本的にはNYMEXと ICEの先物市場の取引で真っ先に

反映され、その後石油製品市場にも原油価格の上昇を通じて反映されるのが一般的である。

(4)地域需給等

原油需給より市場に直接影響する要因、具体的には域内製油所のトラブルや寒波の襲来

による特定地域での暖房油需要の増加や災害による需給バランスの変化は、その地域が属

Page 60: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 59 -

する製品市場での価格指標に影響し、その影響が深刻化し、あるいは拡大するなどすると、

先物市場など全世界の石油価格に影響が拡大することがある。一方で、各取引所の参加者

のうち当業者が取引に際して取る各社の売り買い等のポジションが影響するのではないかとの

コメントも取引関係者の中では多く聞かれる。しかしながら、取引参加者のポジションを定量化

する方法がなく、市場内部での噂の域を出ないことが多い。

またWTI原油は、オクラホマ州クッシングという内陸が集積地であることから、国際市場との

乖離がしばしば指摘されている。WTI 原油を処理する精製業者にしてみれば、どの原油を購

入するかは海外原油と比較できる環境が必要であるが、過去数年、WTI 原油をメキシコ湾岸

まで搬送するパイプラインの能力が不足しており、WTI 原油と例えば北海 Brent といった海外

産の原油とは価格動向に差が生じていた。

5.マーケットの変化と企業の対応

(1)製品流通市場の状況

上述のように市場が透明化し、さらにスワップ取引のような石油取引に対する多様な取引

ツールが出現したことにより、石油市場のプレーヤーの製品調達も多様化してきた。

例えば、先物市場とスポット取引を利用すれば、下記のような取引/反対取引によるヘッジ

を行えば、軽油の購入/販売でマージンの確保が可能となり、現在では欧米の石油流通企業

では主要な市場活用方法となっている。

図表 25 先物市場の活用例

(相場が原油 50 ドル、軽油 65 ドルで、翌月原油 50 ドル、軽油 60 ドルとなった場合)

米国では、市場参加者の 60%は何らかのヘッジを行っているといわれ、ジョバーと呼ばれる

大手卸売業者の中には、専業でヘッジ業務のみを行う担当者を置く企業や、その担当者を養

成する専門のコースも開設されている。

取引価格に関しては、通常は売買契約の中でフォーミュラ化されており、OPIS、Platts、

Argus といった価格指標にプレミアム/ディスカウントを付して価格が決定されている。価格指

標にはブランド、アンブランドの区別もあるため、ブランド料の概念もこの取引形態の中に織り込

まれていると見られる。また、ボリュームディスカウント等の契約条件も、従来からの売買関係

に基づきフォーミュラの中に通常織り込まれるという。いずれの指標を使うかは当事者の合意

に基づくが、指標により価格差が生じることがあるため、複数仕入れが可能な事業者は、それ

産 油 国原油購入50$

製油所輸送精製 タイムラグ1ヵ月

SS事業者軽油売却60$

原油購入日軽油期近物

65$売却

原油購入当初予定されていた精製マージン15$を確保

先物受渡日軽油 スポット60$で購入

スポット市場で購入した軽油を先物市場充当し 5$ 収益確保

Page 61: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 60 -

ぞれの価格指標によるフォーミュラで複数の契約を保持し、取引実行の際に最も有利な価格

を選択できるようにしているといわれている。契約後に契約価格を調整するのは米国では

TVA(Temporary Voluntary Allowance)と呼ばれているが、化学品では時折見られるものの、

石油製品に関してこのような調整をすることは極めてまれであるという。

また取引に際してのタンクの活用では、投資銀行やトレーダーなどが積極的に Kinder

Morgan などのタンク業者のタンクを活用して収益を確保している。特に最近は石油価格も底

値に近いとの判断からタンク在庫を抱え、値上がりを待つ戦略を取る企業も増えている。

(2)企業の対応

(1)で述べたような柔軟な市場を提供するタンク等のインフラは、民間企業が純粋に収益

性を求めて建設したものもあるが、2000年前後に相次いだメジャーの大型合併に際しFTC等

の指示により売却(次項にて詳述)されたり、その後のメジャーの経営戦略に基づき専業者の

手に渡ったものも多く存在する。

1998 年、1999 年はメジャーにとって大変革の年であった。まず 1998 年に BP が Amoco

の買収を発表し、同年暮れにはExxonがMobilの、またTotalがPetrofinaの買収を発表した。

翌 1999年には、Amoco を買収して BPAmoco となった新会社が Arco を、Petrofina を買収

して Totalfina となった新会社が、ELF の買収を発表した。かつてセブンシスターズと呼ばれた

メジャーズが、メジャーや準大手石油企業の買収を行い、スーパーメジャーへの道を歩み始

める最初の年となった。

この合併には、次のような背景がある。第二次石油危機がもたらした原油価格の高騰は、

代替エネルギーの開発と石油需要の縮小を招き、供給過剰状態となった原油の価格は、

1986 年と 1997 年の二度にわたり 10 ドル前後まで値下がりした。この結果、メジャーの上流

資産の評価額は大きく減少し、各社はバランスシートの改善が急務となった。さらに 80年代か

らは、OPEC を中心とした産油国による資源の国有化が進み、上流から下流までの一貫操業

を行ってきたメジャーズの上流資源が減少してきていた。これに対応するため、メジャー各社

は非 OPEC産油地域への投資を増大させるとともに、積極的な M&A戦略で資源量を確保す

る方策を開始した。

1998年、1999年のメジャー同士の合併は、このように埋蔵量資源を確保するとともにキャ

ッシュフローを改善し、今後予想される高コスト油田への投資を可能とする新たな体制作りを

目標とするものであった。しかし同時にメジャー各社は、自社上流部門に見合った形に下流部

門を縮小するダウンサイジングを並行的に進め、多くの下流資産が中小の石油企業等に売却

されることとなった。さらに、2008年のリーマンショック後の 2009年に下流部門の収益が大き

く落ち込んだことやその後の原油価格低迷で、メジャー資産見直しの動きが加速している。

この背景には、2000 年以降台頭してきたハイパー等の新たな事業者との競合に向け、一

層のコストダウンを求められている状況も影響していると思われる。

Page 62: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 61 -

表 26 米系メジャーの部門別収益の推移

1995年の ExxonMobilは、Exxon と Mobilの合計 出所:Annual Report

その後メジャーの部門別利益は、リーマンショック後の 2009 年に、上流・下流ともに落ち込

んだ後は、原油価格の上昇に伴い急速に回復した。しかし、2014 年からは原油価格の下落

により上流部門が下落を始め、一方下流部門は回復基調にある。

この傾向を投資額の推移からみると、メジャーの上流投資は、2000 年前後は ExxonMobil

で 80億ドル/年、Shellで 60億ドル前後であった。その後は油価が高騰したこともあって、その

規模は ExxonMobilの場合300億ドル前後にまで拡大し、大深水や LNG、オイルサンド等への

開発に充てられた。その後も 2013 年まではリーマンショックの価格急落時も含めて、上昇基

調にあったものの、2014年以降、下流部門へのシフトが始まっている。

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

1995 2000 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

ExxonMobil 上流部門

ExxonMobil 下流部門

Chevron 上流部門

Chevron 下流部門

Page 63: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 62 -

図表 27 ExxonMobilの部門別投資額(百万ドル)

出所:Annual Report

さらに JOGMEC の分析によると、今後も下流特に精製と石化部門へのシフトが続くものとみ

られている。

図表 28 メジャーの投資動向

出所:JOGMEC

ただし、資産の整理については、現状で上流資産の処分は本格化はしていない。これが、上流

資産の保持によるものか、あまりの原油価格下落に買い手が見つからないためなのかは現状で

は不明である。

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

下流部門(右軸)

上流部門(左軸)

Page 64: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 63 -

図表 29 メジャーの最近の資産購入・売却状況

出所:JOGMEC

6.独占禁止政策

(1)関連法規

米国石油産業の流通部門に対する法規制には次のようなものがある。

・反トラスト法

反トラスト法の基本 3法は、1890年制定のシャーマン(Sherman)法、1914年制定のクレイ

トン(Clayton)法、1914年制定の連邦取引委員会(FTC、Federal Trade Commission)法であ

る。

・シャーマン法:カルテル・独占禁止行為の禁止とその差し止め、刑事罰等を規定。不当廉売

や略奪的価格設定を禁止している。判断基準としては、

①平均可変費用(Average Variable Cost)を下回る

②生ずる損失を将来埋め合わせられる可能性

③仕掛ける側の市場での力、の 3つを総合的に判断して認定する。

・クレイトン法:シャーマン法の予防的規制を目的とし、競争を阻害する価格差別や不当な排

他的条件付取引の禁止、合併等の企業結合の規制を規定

・FTC法:不公正な競争方法を禁止し、FTCの権限や手続き等を規定

・ロビンソン・パットマン(Robinson-Patman)法

クレイトン法第2条の強化を目的に 1936年に制定され、主に卸売事業者や小売事業者に

対する差別対価の設定やサービス内容の差別を禁じている。販売業者は「明らかなコスト差

が生じない限り、価格を変更してはならない」と規定、卸業者が小売業者に販売する場合、同

品質の商品は、同価格、同条件で販売しなくてはならないと規定する。

しかしスーパーと一般小売市場など市場が異なる場合は同一商品とはみなされず、また地

Page 65: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 64 -

理的に違う場所での競争(顧客から見た代替性がある地理的な範囲外)も対象とはみなされ

ないためこの規定は適用されないこと、さらに立証にも難しい点が多いことなどから、石油製品

市場での適用はかなり困難となっている。

また、CIGMAの顧問法律事務所である Steptoe & Johnsonによれば、差別対価としての認

定を避けるため、精製業者が TVA(Temporary Voluntary Allowance)を実施する場合は顧客

に公平に行うとともに、TVA自体も極端に市況が悪化した場合にのみ、限定的に行うに過ぎな

いとのことであった。

・分離(Divorcement)法

一部の州で州法として成立しており、石油会社が直接 SS を運営することを禁止している。

1974 年にメリーランド州で制定され、現在 6 州(ハワイ、メリーランド、コネチカット、ネバダ、バ

ージニア、ワシントン DC)で適用されている。ただし、スタンドの所有は禁止されておらず、フラ

ンチャイズ制で独立事業者の営業は認める、特定地域ではメジャーの運営も認める等、多く

の例外規定がある。さらにこの法律の制定目的が、1970 年代にメジャーが SS での利益も自

らのものにするために、自社保有の SSの運営者から運営権を取り上げることを禁じるための法

律であるため、現在の石油市場に適用すること自体課題が多くある。

なお、上流・下流を統合した垂直的統合が競争を促進するか否かについては、見解が分か

れている。1997年、アルコはサンディエゴとロサンゼルスで SS265 ヵ所を展開する Thrifty と

提携、後にアルコ・ブランドとした。Thriftyは、カリフォルニア南部では最大の独立系 SSであっ

た一方、アルコは独立系をも下回る低価格設定を時として行っていたため、この提携・買収が

競争状態に影響を与え、ガソリン価格の上昇を招くのではないかとの論争を起こした。これに

対し FTCは、マージンの若干の増加はあるものの、ガソリン価格そのものは大きく値上がりはし

ていないとして、この垂直統合的買収を容認する姿勢を示した。

図表 30 各州における分離法の概要

出所:日本エネルギー経済研究所

Page 66: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 65 -

・コスト割れ禁止(SBC、Sales Below Cost)法

一部の州で州法としてコスト割れ販売を禁止している。独立系の SS を精製会社やジョバー

の運営する直営店から保護する目的で、直営店が運営の必要経費をカバーできない価格を

設定することを禁止している。FTC は、同法の制定は同法のある州ではガソリン価格が高めに

設定されており、必ずしも消費者利益に一致していないとして同法に批判的である。

・PMPA法(Petroleum Marketing Practice Act)

販売業者が精製業者やジョバーと契約を結ぶ際に、最低引き取り量を求められるが、その

際に販売業者に仕入れの裁量を残すよう規定した連邦法。違反した場合の、ブランド契約破

棄の条件を規定しているが、第二次石油危機の1979年のガソリン需給がタイトな時期に制定

されたもののその後ガソリン需給が緩和、またメジャーもブランドは堅持する姿勢が強いことか

ら近年では有名無実化しつつある。

・商標法

商標については、商標の濫用や意図的な他ブランドの混合によるフランチャイズ契約の破

棄については、上記 PMPA 法に定められている。一方、1946 年に制定されたランハム

(Lanham)法によれば、商標維持のために供給者はその権利を主張することを認める一方、

販売業者が他のブランドを販売する場合は、主商標の販売に影響を与えない範囲で別のタン

ク、計量機を設置すればアンブランド等のガソリンの販売も認めている。

(2)独禁法関連の運用事例

メジャー等大手石油企業の合併に際し、FTCが課した条件は、以下の通りであった。

○Shell と Texaco(1997年 12月)

・Shellの Anacortes製油所の売却

・Shellのハワイの油槽所

・Shellのハワイとカリフォルニアの SS

○BPの Amoco買収(1998年 12月)

・8地域で 134か所の SSの売却

・9 か所の油槽所の売却(クリーブランド、チャタヌガ、ノックスビル、ジャクソンビル、メリディア

ン、モービル、モンゴメリー、スパータンバーグ、ノースオーガスタ)

・1,600か所の独立系 SSに対する債権の解消と事業者の希望に応じたブランドの変更

○BPAmocoの Arco買収(1999年 9月)

・アラスカ原油の原油生産とカリフォルニアでの原油販売シェアが高くなりすぎるとの指摘に

訴訟問題に発展し、結局2000年4月、アラスカ州内の石油・天然ガス事業を売却すること

で決着(詳細は別項参照)

Page 67: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 66 -

○Exxonの Mobil買収(1999年 11月)

・2,431か所の SSの売却(全体の約 15%)

・Exxonの Benecla製油所(13万 B/D)の売却

・Mobilのアラスカパイプラインのシェアの 3%売却

・米西海岸のジェット燃料事業の売却

・その後、ExxonMobilは、2008年に米国の SS2,220 ヵ所(自社所有 820 ヵ所、ディーラー

所有 1,400 ヵ所)を売却(不採算による自主的売却)

○Conoco と Phillips

・2008年に SS600 ヵ所を Petrosun Westに売却(自主的売却)

なお FTC は、合併にあたり審査基準となる各地域における市場占有率について

Herfindahl-Hirschman Index(HHI)により算定している。HHI とは該当する業界の市場の集中

度を測る指標で、業界内各社の市場占有率を二乗した数値を合計することで算出される。合

併などが検討された場合、市場占有率とこの HHIの数値上昇分をもとに市場の寡占化が進ん

でいないか判断する材料となる。

図表 31 Herfindahl-Hirschman Index の算定方式

Page 68: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 67 -

図表 32 HHI指数と FTCによる合併審査

出所:FTC

Page 69: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 68 -

BPAmocoによる Arco買収問題

1999年 3月 31日、前年に Amoco との合併が決まり BPAmoco となった新会社は、Arco

(Atlantic Richfield)との合併に合意した。第 3四半期には両社の株主も合意、9月 29日に

は欧州委員会の同意も得て、残るは米国 FTC の同意を取り付けるだけとなった。しかし FTC

は両社の合併に難色を示し、大規模な訴訟に発展するなど、石油産業では米国独占禁止

問題の中で、1911年の Standard Oil解体、1980年代の Marathon Oilによる Mobilからの

買収差し止め訴訟と並ぶ、大規模な独占禁止事案となった。

この事案が時間を要した背景には、BP 側が Amoco との合併を比較的容易に実現し、FTC

の審査も早晩同意を得られるだろうと見ていたのに対し、FTC 側はこれに先立ち了承された

ExxonMobilの事例も踏まえ、米国下流部門があまりにも寡占化されつつある状況に何らかの

形で一線を画したいと考えていた点を見誤ったというのが、後日の検証では指摘されている。

Arco は、米西海岸を中心に事業を展開する石油会社でまたアラスカ原油に大きなシェア

を有していた。これに対し BP は、米西海岸では下流部門を有しておらず、アラスカ原油の持

ち分のみを整理すれば、合併は容易に認可されるというのが、多くの専門家の当初の見方で

あった。1998 年末に Arco が買収先を自ら求めた際には、Chevron がまず名乗りを上げた

が、同じく西海岸をベースにする 2社の合併は FTCの同意を取り付けるのが困難だろうという

のが一般的であった。そこで名乗りを上げた BPAmocoが最初に直面した障害が、アラスカ州

による抵抗であった。1999 年夏、アラスカ州は両社の合併に対し、両社が所有する 80 万

b/dのアラスカ原油のシェアを 20万 b/dまで縮小するなど多くの要求を公表した。これにより

BPAmocoは、合併スケジュールの大幅な見直しを余儀なくされた。

アラスカの権益売却は、結局 15.5万 b/dへ縮小することでアラスカ州政府と合意したもの

の、今度はFTCが、両社の権益がアラスカを含む米西海岸にあまりにも集中し過ぎていること

を問題にし、厳格な審査を実施することを言明した。この背景としては、FTC として大手石油

企業の合併があまりにも相次ぎ、米国市場の寡占化が進むことから合併へのハードルを引き

上げる必要に迫られたことに加え、当時米西海岸ではガソリン価格が全米平均に比べ割高と

の指摘がなされ、国会議員を巻き込んだ政治問題化の様相を呈していたことがあると言われ

ている。

1999年夏に FTCは、過去の事例が競争状態の維持には不十分であったとのレポートを公

表し、特に Exxon とMobil というかつて解体された Standard Oilを構成した両社の再合併は、

Exxon が提示された条件をあっさりと受諾したことで認可されたが、FTC はより厳しいスタンス

で臨むべきだったとの反省を表明している。

なお、本係争は、2000年 4月に BPAmoco・Arcoがアラスカに持つ全資産を売却すること

で FTC と合意し合併の実現にこぎつけた。

Page 70: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 69 -

(3)石油市場に対する監視

米国商品先物取引委員会(CFTC:Commodity Futures Trading Commission)と米国証券

取引委員会(Securities and Exchange Commission)と FTCの役割分担については以下の経

緯がある。

・1936年商品取引所法 (The Commodity Exchange Act) が制定された。相場操縦および

買占めに対する規制を強化するための様々な修正が加えられている。

・1974 年商品先物取引委員会法の立法化に伴い、独立の市場監督機関である商品先物

取引委員会 (CFTC) が設立された。商品先物取引委員会法に基づき、CFTC は相場操

縦を摘発するだけでなく、相場操縦を防止する環境を作るため、商品取引所などを規制す

る広範な権限を有している。

米国先物市場等での石油取引は、CFTC が監視している。連邦には、FERC(Federal

Energy Regulatory Commission)もあるが、FERCは電力やガスは現物取引を監視している一

方、石油に関してはパイプラインで州間を跨いで移動するものだけが対象となっている。しかし、

市場の不正操作等は、FTC や FERC と共同で監視を行っている。CFTC は、先物取引とその

裏側にある現物取引全体のポートフォリオを投資家から提出させる権限を有している。

価格指標に関しては、市場操作が行われていないか、先物決済の裏付けとなる現物取引

の価格調査方法がどこまで信頼できるか、などが関心事項である。特に、価格調査会社

(PRA)が一部の取引をして全体を代表しているかのような報告を行う点に問題があるのでは

ないかとの指摘が現地調査でなされた。そして、透明性を高めるには、政府が卸価格を調査

しそれを決済価格とする方法もあるのではないかとの意見もあった。

ちなみに卸価格の調査は、DTWやラックといった販売形態別に米 EIA(調査番号 EIA782A)

が、月次で精製業者と NGLプラントの操業者約100社からデータを収集し公表している。また

かつてはフランスの CPDP(石油調査の非営利団体)が、2008 年まで石油各社とスーパーマ

ーケットから油槽所出荷価格の調査を行い、全国平均に加工して公表していた。しかし、メジ

ャーからの反対が強く、この反対にスーパーも反発してデータ提供を中止したため、統計の収

集が不可能となった。現在は、年1回、フランス政府(DGEC)が調査を行っているだけで、この

統計の中止により、市場の透明性が後退したとの評価になっている。

CFTC は、相場操縦の徴候を示す要素として、①市場価格を遙かに超えてなされた買付、

②順次高値による急速な段階的買付、③市場規模と比較して大量の買付、を指摘している。

また、多数の判例を概観すれば、相場操縦を認定する基準として、①独占的な 買建玉の保

有、Great Western Food Distributors判決、Landon Butler審決②当該保有者による現物供

給の支配、③異常に高い人為的な手仕舞価格、 ④主観的意図に基づく行為、という要素を

指摘できる、としている。

Page 71: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 70 -

0.00

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

14.00

16.00

18.00

2000 2005 2010 2014

LPG NaphthaMotor gasoline Jet and keroseneGasoil Residual fuel oilOther products

百万b/d

Ⅲ.欧州の石油産業

1.石油製品市場の現状と推移

(1)需給動向

①欧州地域における石油製品需要動向

欧州経済は 2007 年まで順調な成長を続けたが、サブプライムローン問題に端を発した米

国経済の落ち込みやこれに続くリーマンショックの影響により、2009 年の GDP 伸び率は▲

4.5%まで落ち込んだ。2010 年以降も欧州債務危機や中国経済の伸び悩みなどにより、依然

経済は停滞傾向にある。

欧州の石油需要は 2005年の 1,574万 b/d をピークに減少しており、2014 年には 1,338

万 b/dの水準まで落ち込んでいる。国別の需要動向は、イギリスでは 2005年 182万 b/dが

2005 年には 151 万 b/d まで減少、フランスは 199 万 b/d から 165 万 b/d に減少、ドイツ

は 262万 b/dから 240万 b/dとなっており、同様の傾向を示している。経済状況の停滞に加

え、エネルギー分散化や環境対策を目的とした政策の影響を受けたものだと考えられる。

図表 33 欧州(OECD諸国)における石油製品需要

出所:IEA

石油製品別では、各油種とも減少傾向にあるなか、LPG 需要は 2014年に 107万 b/d と

2005 年比 4%増加している。欧州では環境負荷の低減を目的に LPG 車や LNG 車の普及に

努めており、今後も増加していくものと思われる。その一方で輸送用燃料の主力であったガソリ

ン、軽油の需要動向は振るわない。ディーゼルシフトの動きにより軽油車両のシェアの拡大に

Page 72: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 71 -

LPG6%

Naphtha9%

Motor gasoline

20%

Jet and kerosene

7%

Gasoil36%

Residual fuel oil

13%

Other products

9%LPG8%

Naphtha9%

Motor gasoline

14%

Jet and kerosene

9%

Gasoil44%

Residual fuel oil

7%

Other products

9%

合わせ軽油需要は 2007 年の 621 万 b/d まで増加したが、2014 年は 591 万 b/d と▲30

万 b/dと減少傾向にある。ガソリンにいたっては、2014年の需要は 191万 b/dと 2005年時

から 30%近い減少傾向にある。

欧州の石油製品需要の特徴として、輸送用車両におけるディーゼルシフトの影響により軽

油を中心とした中間留分のシェアが高く、相対的に軽質留分シェアが低いことが挙げられる。

この背景には、欧州各国の関係当局が、軽油に有利な税金体系の設定、CO²排出量に応じ

た課税制度、自動車メーカーに対するディーゼルエンジンの開発援助などを実施していること

が挙げられる。石油製品需要に対する軽油比率は 2014 年時点で 44%(2000 年比+8%)の

一方でガソリンは 14%(同▲6%)と減少傾向にある。

図表 34 欧州(OECD諸国)の石油製品シェア(%)

2000年 2014年

出所:IEA

この需要動向は、欧州各国共通の事象であるが、それぞれの国によって事象は異なる。最

もディーゼルシフトが進んでいる国はフランスであるが、軽油の製品シェアは 2014 年で 57%と

なっている。一方イギリスは同じ 2014年で 40%に留まっている。IEA調査による 2015年 11

月時点の小売価格および税額は以下の通りとなっている。イギリス、ガソリン 199.7 円/L(うち

税額 141.2 円/L)、軽油 205.1 円/L(同 142.2 円/L)。フランス、ガソリン 169.4 円/L(同

111.1 円/L)軽油 144.3 円/L(同 87.2 円/L)。ドイツ、ガソリン 174.2 円/L(うち税額 113.8

円/L)、軽油 147.7 円/L(同 85.3 円/L)。軽油に対する税制の違いが、イギリスとフランスの

軽油シェアの違いに表れている。

近年、欧州では大気汚染に対する問題が取り沙汰されている。パリやミラノなどの大都市で

は日時や車両番号によって通行制限を行うなどの対策を実施し大気汚染の緩和に努める事

例が発生している。これは大気汚染の原因の一つであるディーゼルから排出する NOXを減少

させることを目的としているが、フォルクスワーゲン(VW)社による排気ガス規制の回避の不正

問題等もあり、今後欧州の需要動向に影響を与える可能性もある。

Page 73: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 72 -

LPG8%

Naphtha4%

Motor gasoline

28%Jet and

kerosene18%

Gasoil29%

Residual fuel oil

5%

Other products

8% LPG7%

Naphtha1%

Motor gasoline

20%

Jet and kerosene

21%

Gasoil40%

Residual fuel oil

2%

Other products

9%

LPG5%

Naphtha10%

Motor gasoline

16%

Jet and kerosene

7%

Gasoil46%

Residual fuel oil

7%

Other products

9% LPG7%

Naphtha7%

Motor gasoline

10%

Jet and kerosene

9%Gasoil57%

Residual fuel oil

3%

Other products

7%

LPG3%

Naphtha16%

Motor gasoline

24%

Jet and kerosene

5%

Gasoil42%

Residual fuel oil

6%

Other products

4%

LPG4%

Naphtha18%

Motor gasoline

18%

Jet and kerosene

8%

Gasoil45%

Residual fuel oil

5%

Other products

2%

図表 35 イギリスの石油製品シェア(%)

2000年 2014年

出所:IEA

図表 36 フランスの石油製品シェア(%)

2000年 2014年

出所:IEA

図表 37 ドイツの石油製品シェア

2000年 2014年

出所:IEA

Page 74: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 73 -

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

Other Europe & Eurasia

United Kingdom

Turkey

Sweden

Spain

Norway

Netherlands

Italy

Greece

Germany

France

Belgium

②欧州地域における石油製品供給動向

欧州域内の石油製品需要が減少傾向にあることや、ディーゼルシフトが進み、ガソリンは輸

出が増加し、軽油は輸入が増加するなど、生産比率と域内の需要のバランスが乖離してきて

いることから製油所の経営は厳しい環境に晒されている。2000 年時点における製油所の精

製能力は 25,181 千 b/d あったが、2014 年には 23,724 千 b/d と 1,457 千 b/d(5.8%)の

能力削減が行われている。今回の調査対象国ではイギリスが2000年時点では1,778千 b/d

あった精製能力が 2014 年時点で 1,368 千 b/d と 410 千 b/d(23.1%)の減少、フランスは

1,984 千 b/d から 1,375 千 b/d と 609 千 b/d(30.7%)の減少、ドイツは 2,262 千 b/d から

2,060 千 b/d と 202 千 b/d(8.9%)の減少と欧州平均を上回る減少率を示している。各国の

精製能力はそれぞれの国の需要動向に近い水準で減少傾向にあることから、今後も需要に

見合った水準で減少していくものと考えられる。

図表 38 欧州域内における製油所の精製能力

出所:BP統計

③欧州地域における石油製品需給概況

欧州域内の需給動向は個々の製品によってその様相は異なる。石油製品合計で見た場

合、製油所の生産数量と需要数量の間には大きな乖離は見られず、12,986 千 b/d 近い域

内需要数量に対しその純輸入数量は 382千 b/d と 3%の水準にある。時系列では、1980年

の需要 15,274千 b/d強に対する純輸入数量は 854千 b/d と 6%近い水準まで上昇してい

たものの、その後は需要の減少により純輸入数量が低水準で推移している。イギリスの場合、

2012 年まで純輸出国であったが、スイス系企業である Petro Plus が事実上倒産し Coryton

製油所が閉鎖され純輸入国へ転落した。2014 年の純輸入量は 154 千 b/d と需要の 11%

千 b/d

Page 75: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 74 -

1973 1980 1990 2000 2010 2012 2013 2014生産 15,796,091 14,419,112 13,396,298 14,855,497 13,491,704 13,247,726 12,680,741 12,604,194輸入 3,167,303 3,620,406 4,372,328 5,042,110 6,729,497 6,621,571 6,829,890 6,761,763輸出 2,952,987 2,766,011 3,670,260 4,406,008 5,965,399 6,493,455 6,435,585 6,379,977

輸出-輸入 ▲ 214,316 ▲ 854,395 ▲ 702,068 ▲ 636,102 ▲ 764,097 ▲ 128,117 ▲ 394,305 ▲ 381,786需要 16,010,406 15,273,507 14,098,366 15,491,599 14,255,801 13,375,843 13,075,046 12,985,980生産 2,281,752 1,727,286 1,779,300 1,743,379 1,500,027 1,454,979 1,336,716 1,216,878輸入 369,489 186,673 219,061 286,966 484,179 524,482 569,085 579,504輸出 351,418 284,906 341,302 417,505 526,319 591,538 528,217 425,219

輸出-輸入 ▲ 18,072 98,233 122,241 130,540 42,140 67,057 ▲ 40,868 ▲ 154,285需要 2,299,824 1,629,053 1,657,059 1,612,839 1,457,887 1,387,922 1,377,584 1,371,163生産 2,701,499 2,336,532 1,581,683 1,788,507 1,471,537 1,260,129 1,199,069 1,200,967輸入 148,127 255,991 493,608 539,423 818,857 868,671 828,731 852,396輸出 271,478 275,678 285,068 417,485 460,130 402,382 380,050 389,439

輸出-輸入 123,352 19,687 ▲ 208,541 ▲ 121,938 ▲ 358,727 ▲ 466,289 ▲ 448,682 ▲ 462,957需要 2,578,147 2,316,845 1,790,223 1,910,445 1,830,264 1,726,417 1,647,750 1,663,924生産 2,816,915 2,756,420 2,139,461 2,341,701 2,118,118 2,108,507 2,047,810 2,023,499輸入 829,175 756,061 841,432 851,508 718,161 651,003 760,200 735,708輸出 196,789 225,764 205,007 375,587 362,422 377,344 407,813 398,142

輸出-輸入 ▲ 632,386 ▲ 530,297 ▲ 636,425 ▲ 475,920 ▲ 355,739 ▲ 273,659 ▲ 352,387 ▲ 337,566需要 3,449,301 3,286,717 2,775,885 2,817,622 2,473,857 2,382,166 2,400,197 2,361,065

EU計

イギリス

フランス

ドイツ

製品合計

までを占めるようになり、急速に純輸入国への道を歩み始めている状況にある。フランスの場

合、1990年代には純輸入国となっており 2014年の純輸入数量は需要の 1/4まで占めるよ

うになっている。ドイツは 1973 年当時から純輸入国となっている。これは第 2 次世界大戦時

の敗戦に起因するが 2014年時点でも、その純輸入数量は需要の 15%を占めている。

図表 39 欧州各国の石油製品輸出入動向(b/d)

出所:IEA(品転、バンカー油等は除外)

ガソリンの需要は CO2 削減を目的としたディーゼルシフトといった政策影響もあり、2014 年

には 1,704千 b/dと 1990年比▲47%の水準にある。各製油所は軽油を中心とした生産を行

っているものの、各国ともガソリンは輸出量が輸入量を超過する純輸出国となっている。欧州

域内における製油所の生産量は 2,700 千 b/dの水準にある一方で需要は 1,704 千 b/d に

留まっており、生産量の37%にあたる996千 b/dを輸出している。国別の純輸出数量はイギリ

スが 90千 b/d と生産量の 25%、フランスは 83千 b/d と生産量の 31%、ドイツは 63千 b/d

と生産量の 13%の水準に達している。一方、輸入数量は各国とも需要対比 1/3 から 1/2 の

水準にあり、国内の価格形成過程において輸入価格が与える影響が大きいことが伺える。

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

千bdEU 製品合計

生産

輸入

輸出

需要

Page 76: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 75 -

1973 1980 1990 2000 2010 2012 2013 2014生産 2,226,031 2,673,908 3,328,545 3,485,552 3,033,954 2,931,027 2,768,205 2,700,332輸入 374,328 508,888 848,442 875,354 636,634 671,687 614,769 599,534輸出 338,995 481,418 894,358 1,142,498 1,568,277 1,757,383 1,632,336 1,596,190

輸出-輸入 ▲ 35,332 ▲ 27,470 45,916 267,144 931,644 1,085,697 1,017,567 996,656需要 2,261,364 2,701,378 3,282,629 3,218,408 2,102,310 1,845,331 1,750,638 1,703,676生産 345,229 386,330 621,608 545,221 474,882 461,437 431,408 356,464輸入 78,550 62,198 44,357 56,825 72,967 97,321 104,881 90,110輸出 29,238 19,725 99,205 109,509 200,480 250,606 245,070 180,197

輸出-輸入 ▲ 49,312 ▲ 42,473 54,848 52,685 127,513 153,285 140,190 90,087需要 394,541 428,803 566,760 492,536 347,369 308,152 291,219 266,377生産 386,888 438,921 406,636 396,378 318,154 278,030 251,792 266,539輸入 10,025 15,003 102,252 56,406 20,074 8,676 4,722 10,188輸出 35,588 40,333 69,130 121,954 138,329 104,974 86,086 92,808

輸出-輸入 25,563 25,330 ▲ 33,123 65,547 118,255 96,298 81,364 82,620需要 361,325 413,591 439,759 330,831 199,899 181,733 170,428 183,919生産 438,782 582,693 565,620 627,376 513,750 482,279 475,626 465,112輸入 85,342 134,561 230,509 203,039 47,660 36,240 42,613 42,869輸出 33,541 33,751 42,822 107,207 113,626 116,115 117,139 105,834

輸出-輸入 ▲ 51,801 ▲ 100,810 ▲ 187,687 ▲ 95,832 65,966 79,876 74,526 62,966需要 490,582 683,503 753,307 723,208 447,784 402,403 401,100 402,147

ガソリン

EU計

イギリス

フランス

ドイツ

図表 40 欧州各国のガソリン輸出入動向(b/d)

出所:IEA(品転、バンカー油等は除外)

軽油はディーゼルシフトの影響により需要は高水準にあり、2014年の軽油需要は 5,974千

b/dで軽油の輸入依存度が一段と高まっている。2014年の軽油の純輸入数量は 693千

b/d と需要の 12%を占めるまでになっている。国別ではイギリスの純輸入数量が 133千 b/d

と需要対比 22%、ドイツの純輸入数量は 190千 b/d と需要対比 17%、フランスにいたっては

純輸入数量が 427千 b/d と需要対比 45%と主力石油製品のおよそ 5割を海外に依存して

おり、ガソリンと同様に輸入製品価格が国内の価格形成過程において大きな影響を与えてい

る。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

1973

1980

1990

2000

2010

2012

2013

2014

千bdEU ガソリン合計

生産

輸入

輸出

需要

Page 77: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 76 -

1973 1980 1990 2000 2010 2012 2013 2014生産 4,718,726 4,534,597 4,296,878 5,319,368 5,380,295 5,428,427 5,278,451 5,281,087輸入 1,140,235 1,241,630 1,420,629 1,596,583 2,555,346 2,568,202 2,741,744 2,596,775輸出 987,275 881,138 1,030,236 1,331,906 1,754,408 1,986,608 1,969,358 1,904,201

輸出-輸入 ▲ 152,961 ▲ 360,492 ▲ 390,393 ▲ 264,677 ▲ 800,938 ▲ 581,594 ▲ 772,386 ▲ 692,574需要 4,871,687 4,895,088 4,687,271 5,584,045 6,181,233 6,010,021 6,050,837 5,973,661生産 569,270 453,159 478,339 578,365 526,431 516,477 482,938 462,377輸入 32,129 28,961 27,387 77,972 171,968 219,242 219,365 241,888輸出 139,635 96,816 90,542 131,132 132,420 156,292 125,675 109,223

輸出-輸入 107,506 67,855 63,155 53,160 ▲ 39,548 ▲ 62,950 ▲ 93,689 ▲ 132,665需要 461,764 385,304 415,185 525,204 565,979 579,427 576,627 595,042生産 970,434 847,906 570,026 705,757 616,257 535,056 524,183 528,965輸入 54,121 73,128 228,603 222,267 394,849 479,525 473,352 463,174輸出 89,173 62,439 79,934 49,665 71,902 56,839 40,386 35,317

輸出-輸入 35,052 ▲ 10,689 ▲ 148,669 ▲ 172,602 ▲ 322,946 ▲ 422,686 ▲ 432,966 ▲ 427,857需要 935,382 858,595 718,694 878,359 939,204 957,741 957,149 956,822生産 1,025,760 983,657 831,187 949,259 932,255 940,471 921,627 899,226輸入 451,361 323,396 323,662 328,199 320,555 277,778 363,639 338,950輸出 45,496 43,391 71,902 111,348 139,390 130,070 144,622 148,526

輸出-輸入 ▲ 405,865 ▲ 280,005 ▲ 251,760 ▲ 216,851 ▲ 181,166 ▲ 147,708 ▲ 219,017 ▲ 190,424需要 1,431,625 1,263,663 1,082,947 1,166,110 1,113,420 1,088,179 1,140,644 1,089,651

フランス

ドイツ

軽油

EU計

イギリス

図表 41 欧州各国の軽油輸出入動向(b/d)

出所:IEA(品転、バンカー油等は除外)

欧州市場では国外への輸出数量割合が高水準にあることも一つの特徴として挙げられる。

例えば、欧州でのガソリン輸出数量は製油所における生産量の 59%を占めており、日本のよう

に単に国内需要の余剰分を輸出で相殺するような形態にはなっていない。その背景として(ⅰ)

欧州市場は EC 共同体として単一経済圏を形成していること、(ⅱ)事業者間の競争により効

率的なサプライチェーンが求められているなかで精製事業者や SS 事業者とも収益性の高い

製品の供給先、調達先を求めており、その事業活動において国産・輸出入といった区分けが

大きな意味を持たないこと、(ⅲ)石油製品市場においてタンク事業者が一定の地位を占めて

おり、石油製品へのアクセスが容易であること、などが考えられる。

石油製品の輸出入割合が高い地域では、裁定取引により輸入価格と国内市場価格は収

斂されていくが、この場合、石油事業者は各商圏における市場価格と輸入価格間で裁定取

引を行う機会が無いか注視し続ける必要がある。例えばドイツの場合、フランス、ベルギー、オ

ーストリアなど9ヵ国に囲まれおり各地域における輸出入実態および価格動向を管理し収益に

繋げる作業は、多大な労力を有する作業だと考えられる。このような市場環境のなかで取引

を円滑に進めるためには、事業者としても石油業界全体で共有できる価格指標を求めること

は、ある意味必然の流れだと考えられる。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

1973

1980

1990

2000

2010

2012

2013

2014

千bd EU 軽油合計

生産

輸入

輸出

需要

Page 78: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 77 -

(2)欧州市場の流通概況

①イギリス市場における流通インフラ概要

図表42はイギリス国内におけるパイプライン網となるが、これは主に製油所で精製された石

油製品を精製事業者自らが所有する油槽所へ転送する設備となる。政府が所有する

Government Pipelines Storage System (GPSS)は、そもそもイギリスの安全保障上の理由に

より防衛省が所管する施設であったが、経済効率性の観点からその安全保障を担保すること

を条件に 2015 年 4 月スペイン系民間企業である Compañía Logística de Hidrocarburos

(CLH)に売却する決定がなされた(出所:GOV.UK HP)。運営主体が民間事業者に変わった

ことにより、安全保障といった制約はあるものの、SS 事業者による調達多様化の一つとなる可

能性も考えられる。

なお、パイプラインによる輸送は主にガソリン、ジェット燃料、軽油といった製品になり、その

輸送量は 30 百万トン(およそ 650 千 b/d)とイギリス総需要のおよそ 5割がパイプラインを通

して各地に供給されている。

図表 42 イギリスの製油所、パイプライン、ターミナル網

出所:UKPIA

Page 79: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 78 -

イギリスでは、8 ヵ所の製油所および ExxonMobil、Valero といった精製事業者や Vopak、

NuStar といったパイプライン、ターミナルのオペレーターが運営する主要 5 ヵ所の輸入基地に

よって国内需要に対応している。また SS への配送を目的とした油槽所は近年の需要減退や

ベーパー回収装置の設置など環境規制対応といった投資が必要となり、各精製事業者間で

共同事業化を進めている。例えば Kingsbury に位置する Warwickshire 油槽所は、Total と

ConocoPhillips、Sunderland 油槽所は BP と Chevron、 Manchester 油槽所は ExxonMobil、

Total、Chevron、といった企業が共同所有している。その一方で図表 43 のように国際的なタ

ーミナルオペレーターが所有する油槽所も数多く見られ、コマーシャルベースでトレーダー等

がタンクスペースを使用し独立系 SS事業者やハイパーSSへの供給源となっている。

図表 43 イギリスにおける独立系事業者所有ターミナル

出所:Wood Mackenzie

イギリスにおける石油輸入の自由化は 1959 年に実施され、1960 年代から独立系 SS 事

業者や石油メジャーが小売市場に新規参入し、不採算 SS の淘汰が始まった。このような状

況のなか、1976 年に流通業大手 Sainsbury がハイパーSS を出店し徐々にその勢力が拡大

することとなった。1990年代に入るとハイパー系 SSは 100SS/年のペースで出店し、小売市

場の支配力を強めることとなった。SainsburyとTescoは 1993年から仕入先の多様化を目的

として独自の配送網を構築し精製事業者に対する価格交渉力を強めていき、ロッテルダムの

スポット市場にリンクした価格での取引が始まった。

このような、ハイパーSSの席捲により1990年19,465ヵ所あったSSは2000年には13,043

ヵ所と 1/3 の SS が減少、2010 年には 8,892 ヵ所と更に 1/3 程度淘汰されたが、2011 年

以降減少率は鈍化傾向にある。

Page 80: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 79 -

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1990 2000 2010 2012 2013 2014

図表 44 イギリスにおける SS数の推移

出所:energy institute

図表 45は 2014年時点における系列別 SSシェアを示したものとなる。イギリスが発祥の地

となる BP、Shellおよび米国 Essoの SS数が 1,000 ヵ所を超え精製事業者系列の SSは合計

で約 4,500 ヵ所となるが、この他にも Phillips66の JETブランド SSが約 300SSなどが存在す

る。運営主体別で見ればは国際石油資本が運営主体となる SS が 1,820 ヵ所にのぼり、約

3,000 ヵ所は SS 事業者が運営するサイトとなる。独立系 SS は約 100SS にブランドを掲げる

Harvest Energyから 1SSに至るまで多岐に渉る。ハイパー系 SSは 1,380 ヵ所とその SSシェ

アは全体の 16%に過ぎないが、燃料油販売シェアでは 43%超に達している。

1SS あたりの月間販売量は系列 SS と独立系 SS を含む一般 SS で約 240kl、ハイパーSS

は約 950kl、全平均では約 350klの水準にあり、ハイパーSSは一般 SSの 4倍近い販売量を

誇っている。

Page 81: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 80 -

図表 45 イギリスにおけるブランド別 SS数およびシェア

Morrisons、Sainsbury に代表されるハイパー系は 2010 年以降も増加傾向にあり、ともに

10%程度の増加率を示している。一方 PBはハイパー系の増加の影響が大きく、2014年の時

点で 2010年比 2割近い減少率を示している。

②フランス市場における流通インフラ概要

海外から輸入された原油は主に大西洋沿岸の Antifer、Donges および地中海沿岸の

Fos-Laveraで受入れされ、内陸も含め各製油所へパイプラインで転送される。

製油所で精製された石油製品は油槽所に移送されるが、その輸送方法はパイプラインが

54%、セーヌ川などを利用したバージ船が 32%、ローリーが10%、列車が5%程度となる。2009

年時点で油槽所の数は全国に 191ヵ所で貯蔵可能量は約 70,000千 bblと、フランスの石油

製品需要の約 42日分を貯蔵することができる。

ブランド 形態 2010 2011 2012 2013 2014BP 1,169 1,175 1,211 1,162 1,258Shell 876 839 1,032 1,019 1,022Esso 899 867 889 995 996Texaco 883 875 819 802 845JET 375 327 312 314 358メジャー計 4,202 4,083 4,263 4,292 4,479Tesco 476 492 497 499 504Morrisons 295 301 314 331 336Sainsbury 262 265 286 295 299Asda 187 195 218 233 261PB等 PB 3,343 3,341 3,012 2,966 2,611合計 8,765 8,677 8,590 8,616 8,490

ハイパー等

メジャー

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

2010 2011 2012 2013 2014

PB等

Asda

Sainsbury

Morrisons

Tesco

JET

Texaco

Esso

Shell

BP

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2010 2011 2012 2013 2014

PB等

Asda

Sainsbury

Morrisons

Tesco

JET

Texaco

Esso

Shell

BP

メジャー計メジャー計

出所:Forecourt Trader

Page 82: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 81 -

図表 46 フランスの製油所、パイプライン、ターミナル網

出所:IEA

油槽所の所有形態は多岐に渉り、フランスの国営会社であった Totalを筆頭に ExxonMobil

など含む大手石油会社や独立系タンク事業者の Campagnie Industrielle Maritime (CIM)や

Rubis Terminalなどがある。また、Carrefour, Petrovexなどハイパー系 4社で共同出資してい

る Union des mportateurs Independents Petrolieres (UIP)や Siplecは、輸入なども実施して

Page 83: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 82 -

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

1990 2000 2010 2012 2013 2014

おり独自の流通網を構築している。UIPは 25の油槽所(総貯蔵量 3,500千 bbl)を背景にハイ

パーSS などに対し、172 千 b/d の自動車用燃料を供給している。Carrefour 単体では、UIP

から供給を受けた石油製品を自ブランド約 1,300SS に加え、他ブランドのハイパー系 SS やコ

ンビニ併設 SS 約 100 ヵ所に供給しており、SS スルーの販売数量シェアは、ガソリン 13.4%、

軽油 9.4%の水準にある。Siplec はディストリビューターとしても Total に次ぐ地位を占めており、

2014年には持分所有もしくはリースしている 40ヵ所の油槽所から 160千 b/dとフランス総需

要の 10%近くを供給しており、物流段階においてもハイパー系事業者の市場占有率が高いこ

とが見てとれる。

図表 47 フランスにおける SS数の推移

1959年に施行された「SS設置令」は、距離規制によって SSの新設を事実上禁止していた

が、徐々に SS運営の効率化が求められたため、1969年から老朽化などによる廃止代替とし

て SS を新設するスクラップ&ビルドが認める「新 SS 設置令」が施行された。しかしながら 1SS

を新設するためには 3SS の廃止代替が必要とされたことから、多くの石油会社は廃止対象と

なった 3SS 分の販売量を確実に見込めるハイパー系にその廃止枠を提供したことが、現在の

市場構造に大きな影響を与えている。

1985 年には「新 SS設置令」も撤廃されたが、この時点のハイパーSS数は 2,250 ヵ所(SS

シェア 7%)に達していた。1990年には、フランス国内の SS数が 25,000 ヵ所と 6,000 ヵ所近

く減少するなかでハイパーSSは 3,750 ヵ所にまで増加しており、ハイパーの拡大が既存 SS事

業者の撤退を加速していることが見てとれる。

2014年におけるハイパーSS数は5,000ヵ所を超え全体の47%を占めるまでになっている。

元売系列では、フランス資本の Totalが 3,712ヵ所あり、激しい競争環境に置かれている地域

Page 84: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 83 -

では系列 SS を直営化することにより系列防衛を図っているが、2014 年の SS 数は 2013 年

比 3%減となっている。全体を俯瞰しても PBSSも含め一般的な SSは減少傾向にあり、今後一

段とハイパーSSの影響力が拡大していくものと考えられる。

図表 48 フランスにおけるブランド別 SS数およびシェア

③ドイツ市場における流通インフラ概要

ドイツはヨーロッパにおける石油製品貯蔵の拠点となっているアムステルダム、ロッテルダム、

アントワープ(ARA 地区)とのアクセスが良いことから、海外市場からの影響を受けやすい立地

にある。輸入される原油は旧西ドイツ側では主に国内の Wilhelmsharvenやロッテルダムやフラ

ンス、イタリアなどから、旧東ドイツの地域についてはドイツ国内の Rostockやチェコ、ポーランド

といった国からパイプラインを通じて内陸の製油所に輸送される。

石油製品については、主にロッテルダムと Rostockからドイツ国内に流入する。ドイツ西部に

ある RMR パイプラインは Shell(63%)、BP(35%)、ExxonMobil(2%)が共同所有しており、大手

石油会社はバーター取引などで共同利用している。

ブランド 形態 2010 2011 2012 2013 2014Agip 188 181 173 169 160Delek (BP) 402 402 393 414 400Esso 687 698 661 629 606Shell 198 87 89 89 90Total 4,259 4,046 3,911 3,813 3,712メジャー計 5,734 5,414 5,227 5,114 4,968Carfuel 1,269 1,301 1,295 1,258 1,288Distridyn 417 423 413 436 441SCA Petroles 1,576 1,564 1,590 1,607 1,619Petrovex 382 384 382 382 377Siplec 547 548 568 579 602Systeme U 672 687 716 721 742Avia 779 784 764 754 727Independants 782 895 187 99 96合計 12,158 12,000 11,142 10,950 10,860

PB等

メジャー

ハイパー

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2010 2011 2012 2013 2014

Independants

Avia

Systeme U

Siplec

Petrovex

SCA Petroles

Distridyn

Carfuel

Total

Shell

Esso

Delek (BP)

Agip

メジャー計0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

2010 2011 2012 2013 2014

Independants

Avia

Systeme U

Siplec

Petrovex

SCA Petroles

Distridyn

Carfuel

Total

Shell

Esso

Delek (BP)

Agip

メジャー計

出所:DGEC

Page 85: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 84 -

図表 49 ドイツの製油所、パイプライン、ターミナル網

出所: MWV

大手石油会社の油槽所以外にも独立系タンク事業者が油槽所運営を行っており、ドイツで

は 1972年にハンブルグで設立された世界第 2位の規模を誇る Oiltankingが最大手となる。

同社は 17 ヵ所の油槽所を主にライン川流域で運営しており、独立系 SSの主な供給源となっ

ている。

Page 86: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 85 -

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1990 2000 2010 2012 2013 2014

図表 50 ドイツにおける SS数の推移

ドイツでは 1960年代急速に増加する需要に対応するため SSは増加傾向にあったが、1960年

代後半からスーパー併設 SSやセルフ SSが参入し、SS数は 1970年の 46,091 ヵ所をピークに

減少に転じた。ドイツでは競争制限防止法によって、セルフ SS とフルサービス SS の販売価格に

ついて一定の価格差を設ける義務があったため、設備投資できない事業者が撤退を余儀なくさ

れるなど SS数の減少が急速に進み 1990年には 19,317 ヵ所と 20年の間に 26,774 ヵ所が閉

鎖に追い込まれた。1990年以降も SS数は減少傾向にあるものの、ペースは鈍化傾向にある。

Page 87: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 86 -

ブランド 形態 2010 2012 2013 2014 2015Aral(BP) 2,407 2,391 2,384 2,381 2,377Shell 2,080 2,088 2,077 2,044 1,985Esso 1,106 1,077 1,052 1,019 1,005Total 965 969 1,007 1,093 1,109Jet 733 753 765 779 792Orlen 520 567 558 555 558OMV 388 317 314 305 301Avia 775 787 789 809 837Agip 460 437 428 435 444HEM Tamoil 387 389 393 402 392Westfalen 249 247 249 250 250Oil 193 198 196 215 221Q1 157 166 174 176 182Baywa 106 110 108 105 94Calpam 56 57 56 56 57Score 43 44 43 43 43SVG 12 12 12 12 11Freie(BFT) 1,660 1,809 2,251 2,315 2,337その他 2,113 1,955 1,472 1,278 1,214合計 14,410 14,373 14,328 14,272 14,209

MWVドイツ石連会員企業

その他中小

ブランド

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

2010 2012 2013 2014 2015

その他

Freie(BFT)SVGScoreCalpamBaywaQ1OilWestfalenHEM TamoilAgipAviaOMVOrlenJetTotalEssoShellAral(BP)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

2010 2012 2013 2014 2015

その他

Freie(BFT)SVGScoreCalpamBaywaQ1OilWestfalenHEM TamoilAgipAviaOMVOrlenJetTotalEssoShellAral(BP)

図表 51 ドイツにおけるブランド別 SS数およびシェア

出所:MWV

ブランド別に見るとMineralölwirtschaftsverband e. V.(MWV:ドイツ石油連盟)に属する大手

石油会社のシェアが 57%と過半を占めている。2002 年から 2003 年にかけて小売市場の再

編が行われたが、連邦カルテル庁は BP、Shell、Total 3 社による独占的地位を防ぐために、

BP、Shellの SS を売却し、上位 3社の SS シェアを 50~52%にすることを M&Aの条件にした

ことから、各社とも SS資産を売却することとなった(BP 741 ヵ所、Shell 894 ヵ所売却)。2014

年時点では上記 3社の市場シェアは 1/3程度まで後退している。

大手石油会社は一般的に運営委託方式での SS 展開を進めており、精製事業者が SS の

小売価格の設定を行っている。

ドイツでは独立系 SS 事業者間で組合を設立し、仕入、品質保証、商標、法令対応などを

Page 88: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 87 -

共同で行うことにより事業の効率化を図っている。ドイツで最も大きい独立系団体 BFT は 500

以上の会員企業、2,337 ヵ所の SS を有し、ドイツ全土に展開している。他の大手独立系団体

として挙げられるAVIAは、スイスに中枢機能を持ち欧州 14ヵ国に展開している。同社は欧州

全体では 80 の SS事業者、2,900 ヵ所の SS を有しているが、ドイツでは 837 ヵ所の SS を展

開している。

ハイパー系事業者としては流通大手の Metro も SS 事業を手掛けているものの、イギリスや

フランスのように一大勢力にはなっていない。その背景にはドイツで施行されている閉店法の

影響があるとされている。閉店法は州毎に店舗を開店できる日時を定めている法律となって

いるが、SS はこの規制の適用除外となっており、日本におけるコンビニエンスストア的な機能も

果たしている。

2.石油市場の主なプレーヤーとその変遷

欧州石油市場では、メジャーと呼ばれる大手石油企業が支配的地位を占め、原油生産から

小売りまでの一貫操業を続けてきたが、1990年代の原油低価格の影響や 2000 年以降しだい

に顕著になっていく石油需要の減少により、急速に存在感を弱めていった。代わりに、欧州小売

市場で勢力を強めたのはスーパー/ハイパーマーケットであり、小売市場ではメジャーはブランド

は残すものの、実態は販売事業者に対する販売委託に過ぎない。

精製事業も、産油国やロシアの資本参加を得た独立系の精製業者が中心となりつつあり、例

えばイギリスのメジャー系の製油所はすべて売却された。このような、プレーヤーの細分化の結

果、これらをつなぐトレーダーや、トレーディングの際の重要なインフラとなるタンク業者の存在が

大きくなりつつある。

これら事業者が属する業界団体は各国に存在し、それぞれの地位を代表して政府や他団体

との調整を行っているが、これらを包括する組織として Fuels Europeがブリュッセルにあり、EU レ

ベルでの政策問題や環境問題に対応している。

以下に代表的な市場のプレーヤーのプロフィールを概括する。

(1)精製事業者

・BP

BP の由来は 1908 年に William Knox D'Arcy が設立した Anglo Persian Oil Company

(APOC)となる。1914 年 APOC はイギリス海軍と燃料供給の長期契約を締結したことを機に

2/3の株式をイギリス政府が保有、1987年にその当時政府が保有していた 1/3弱の株式を

手放したことにより完全な民間会社となった。

1999年、BPは米国の石油会社 Amoco (元 Standard Oil Indiana)と合併した。BPは世界

各国に 18,000 ヵ所、Amoco は全米に 9,000 ヵ所強の SS を有していたが、米国の Federal

Trade Commission (FTC)は各地域における市場占有率について Herfindahl-Hirschman

Index(HHI)により算定し、134 ヵ所の SSおよび 9 ヵ所の油槽所の資産分離、およびブランドデ

Page 89: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 88 -

ィーラーが所有する 1,600 ヵ所近い SS の商標変更を行うことを条件とし BP 側はこれを受け

入れた。欧州では Amocoが商圏を持っておらず、この合併における影響は無い。

BP は欧州における小売市場で、一定の影響力を有している。イギリスでは 2014 年時点で

1,163 ヵ所(シェア 13.5%)の系列 SS を有しており、これは同国内で最多となる。イギリスでは

精製事業から撤退しており、他の精製事業者もしくは輸入業者から石油製品を購入し系列SS

に供給するといったビジネスモデルとなる。フランスでは 2010 年に BP ブランドを掲げていた

416 ヵ所の SSおよび 3ヵ所の油槽所をイスラエル系の Delekに 180百万ユーロで売却した。

その契約内容は今後数年間、SS は BP のブランドを掲げ BP からの製品供給を受ける内容と

なっており、BP はフランスの小売市場において一定の影響力を維持し続けている。一部報道

ではこのフランスにおける資産売却は BPがメキシコ湾岸で起こした海底油田の漏洩事故に対

する補償費用の一部を捻出するためのものであるとされている。ドイツでは Aral ブランドの

2,377 ヵ所(シェア 16.7%)の SS に製品供給を行っている。Aral は元々ドイツ系の企業であっ

たが、2002年に BPが 51%の株式を取得した。当時 BPはドイツ小売市場に進出しており、約

650 ヵ所の SSが BPブランドを掲げていたが、この株式取得を機にドイツ国内 BPSSは認知度

が高い Aralブランドに切り替えたとの経緯がある。

(2)タンク事業者

・Oiltanking

Marquard & Bahlsの子会社である Oiltankingは 1972年にドイツのハンブルグで設立され

た独立系タンク事業者であり、現在では 20の国々におよそ 50 ヵ所の油槽所を有する世界第

2 位の位置を占めている。同社は石油会社やトレーダーが取り扱う石油製品の通油量から収

益を得るビジネスモデルであり、自社で石油製品の取引を行うことは無い。

欧州ではドイツに約 20ヵ所ある油槽所を中心に欧州物流の拠点であるオランダのアムステ

ルダム、ベルギーのアントワープなどに拠点を持っている。アムステルダムは欧州北西部にお

ける主要な輸出入拠点となっており、ガソリンは主に米国や西アフリカに輸出され、軽油は米

国やロシアなどから輸入される。その貯蔵能力は 10千 bblで顧客の要望に応じて添加剤など

のブレンドなどを行っている。アントワープ油槽所は、22 ヵ所の精製設備とパイプラインによって

供給を受けることが可能であり、12 ヵ所の桟橋、パイプライン、3 ヵ所の鉄道出荷設備、ローリ

ーによる陸上出荷設備に加え保税タンクも有している。

Page 90: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 89 -

図表 52 Marquard & Bahlsグループの事業イメージ

(3)トレーダー

・Certas Energy

Certas Energyはイギリス最大の卸売事業者で Valero Energy、Essar、Phillps 66 といった

精製事業者や BP、Shell といった大手石油会社から石油製品の供給を受け、イギリス全土を

対象に 150 ヵ所近くの油槽所から製品を供給している。同社はイギリス最大のシェアを誇る

BP よりも多いおよそ 1,300 ヵ所の独立系 SS 事業者に製品を供給しているが、それ以外にも

バンカー油、航空燃料に加え産業関連事業者にも製品を供給している。また、契約単価が

Platts リンクとなる法人向け燃料カードも用意しており、日本における大手燃料商社と同等の

機能を有している。

・SIPLEC

フランスの SIPLEC は 1979 年、ハイパーマーケット E. Leclerc の石油製品輸入会社として

設立された。E. Leclercは 1949年に第 1号店を設立したが、その設立思想は消費者の家計

負担を極力抑えることにある。1962年には、従来農業組合を介して納入されていた野菜を生

産者からの直接買い付ける、また 1975 年には漁業関連では卸売事業者の法外なマージン

を抑えるために漁師と共闘するなどの行為により、様々な規制や業界慣習を打破してきた。

石油産業においては 1970 年、当時統制価格となっていた石油製品の下限価格を下回る

価格で販売、EC の場でフランス政府と争い勝訴した。これを皮切りにその後 15 年間フランス

政府や石油ロビーに対し 467 件の訴訟を行った。石油製品の輸入についてもフランス政府は

1978年いったん輸入ライセンスを発行したが、1979年から 1980年にかけて輸入許可を撤

回、これに対して SIPLECは EC裁判所でフランス政府に勝訴し現在の礎を築いた。

・Mabanaft

Mabanaft は石油製品の取引を行う企業であるが、Oiltanking と同様に Marquard & Bahls

の子会社となる。基本的なビジネスモデルは、ドイツ、イギリス、オーストリアにおいて石油製品

出所:Oiltanking

Page 91: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 90 -

を海外から輸入し、同社が権利を持つ100ヵ所以上の油槽所から独立系石油会社に卸売す

る事業となる。

イギリスでは主に 5 ヵ所の油槽所から、卸売事業者、小売事業者、スーパーマーケットなど

への供給を行っている。ドイツでは 9 ヵ所の営業拠点と約 40 ヵ所の油槽所で活動しており、イ

ギリスと同様に小売事業者などへ供給しているが、ICE、NYMEX の先物市場でリスクヘッジを

行っている。また、Mabanaftは「Oil!」ブランドのSSをドイツ、オールストリア、スイスにおいて展

開しており、その SS数は約 500 ヵ所にのぼる。

(4)業界団体

・Fuels Europe

Fuels Europe は、環境問題を担当する CONCAWE と共に European Petroleum Refiners

Associationを構成しており、かつては EUROPIA と呼ばれた。EUROPIAは 1989年に設立され、

EU 内の精製事業者の権益を代表してきたが、2014 年 6 月に CONCAWE と合併し、現在の

形となった。EU内で操業する 41社を代表して、EU レベルでの政策課題に対応している。

・United kingdom Petroleum industry Association (UKPIA)

UKPIAは主に製油所を有する大手石油会社8社の団体で、精製事業、流通事業、小売事

業における業界団体である。加盟各社の取扱数量はイギリスの石油製品需要の 85%を占め、

所有 SS数は全体の 17%にあたる約 1,500ヵ所の SSを所有している。その活動領域は、業界

共通の課題である環境、労働安全、燃料油の品質、防犯セキュリティ、小売価格等の調査分

析および独立系事業者に対する供給を掲げている。なお、UKPIA ではガソリン、軽油について

12月時点の小売価格、税額、製油所出し価格などを公表している。

・Federation of European Tank Storage Associations (FETSA)

FESTAは Oiltanking をはじめ欧州の独立系タンク事業者 12団体が参加しており、保有す

るタンク貯蔵能力は 535百万 bbl にのぼる。FESTAの設立目的は EU当局による規制がタン

ク業界に与える影響について、当局政策立案者と協議により業界利益を保護することにある。

業界共通の課題である環境の保護、CO2削減志向が高まるなかで低コスト化により石油産

業の持続可能性を高めること、労働安全および緊急時における供給体制の構築についてテ

ーマとして掲げている。供給体制の構築については2007年のEUにおける供給保証委員会に

おいてタンク事業者は市場において重要な役割を担うと位置づけられた。原油の戦略的備蓄

は原油の供給途絶時において第一に機能する供給保証であり、FETSA は保有する在庫によ

って International Energy Agency (IEA)を通して OECD諸国における供給安定性を維持する

枠組みの一つに組み込まれている。

・Petrol Retailers Association(PRA)

PRAはイギリスにおける独立系 SS事業者の 70%が加入する組織である。2016年に掲げて

いるロビー活動は多岐に渉るが、代表的なもので、燃料に付加される消費税の税率、ベーパ

ー回収義務に対するリベート方式、燃料供給が停止した場合の緊急対策、E10 ガソリンの導

入、スーパーマーケットによるコストを下回る競争などを掲げている。

Page 92: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 91 -

独立系事業者に対するサービスは、燃料供給事業者の斡旋、取引条件など鍵となる項目

に対する一般的な基準についてのガイダンス、労働安全・防犯・事業リスクの低減、小売市場

に影響を及ぼすような業界動向に対する専門家知見の情報提供などが挙げられる。

3.価格形成メカニズム

(1)取引形態

石油製品の先物価格で代表的なものは、米国では RBOB ガソリンで、欧州では

Intercontinental Exchange (ICE)で上場されている軽油となる。ICE軽油の 1枚当たりの数量

は 100 トンで、現物市場において主要な受渡場所となっているアムステルダム、ロッテルダム、

アントワープ(ARA 地区)での製品の受け渡しも可能となっており、決済通貨は US ドルとなって

いる。2015 年における取扱量は軽油が 63 百万枚(約 129 百万 b/d:欧州域内 軽油生産

量の 24 倍程度)にまで増加しており、極めて流動性が高い。なお、精製事業者、トレーダーお

よび SS事業者に至るまで先物市場を活用することにより価格変動リスクのヘッジを行っている

と言われているが、BPの 2014年度の決算書では下流部門で 6,000百万ドル(約 7千億円)

の在庫評価損が計上されており、取り扱い全数量の価格変動リスクのヘッジはできていない。

スポット取引については、パイプラインやバージ、カーゴによる大口取引は米国と同様に

Plattsや Argusが価格査定を行っている。フランス、ドイツにおける価格指標は石油製品の集

散地である ARA 地区を中心とした欧州北部と、北アフリカ、中東、インドの影響を受ける地中

海側の価格指標が主に利用されており、両国とも北部と南部で異なる価格指標を用いている。

このような地域による指標は更に FOB Exportと呼ばれる輸出価格と CIF Domestic という輸入

価格に分類される。欧州北部における軽油の FOB Exportは ARA地区から輸出する製油所

出し価格を評価したものであり、CIF Domesticは ARA地区への輸入価格となる。一方でイギリ

スの価格指標は ARA地区から国内に輸入される CIF Domestic となる。

(2)価格指標の利用概況

イギリスの SS 事業者は一般的に Platts 価格に諸経費いわゆるプレミアムを加えた価格で

契約している。世界有数の会計事務所である Deloitte がイギリスの Department of Energy

and Climate Change(DECC)に提出した報告書「Study of the UK petroleum retail market」

によれば、プレミアムはおよそ 1.5ペンス/L(約 2.4円/L)割高の水準にあり、遠隔地であれば

7.5ペンス/L(約 12円)以上といった事例もあるとしている。ここで挙げられているコストの内訳

はクレジットやフリートなどのカードサービス、計量機の保守管理料、燃料油の在庫管理料など

としており、2 次供給や貯蔵に係る費用は含んでいない。一方 SS 事業者のマージンは 1990

年代後半 5~6 ペンス/L (8.0~9.6 円/L)程度の水準から 2012 年の段階では 4~5 ペン

ス/L (6.4~8.0円/L)まで圧縮されている。石油会社と SS事業者の典型的な契約は、5年

契約を基本としており、価格水準は Platts+諸経費、支払は納入後 3 日以内、そして石油製

品の供給は持ち届けで他社製品の納入は認めていない。

フランスは税金を差し引いた燃料油中身価格が欧州一安いとされている。その背景には市

Page 93: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 92 -

場の 6 割強を支配しているハイパーの存在が挙げられる。ハイパー事業者は隣接するハイパ

ーマーケットへの顧客来店を目的に小売価格を安く設定する傾向にある。またハイパー事業

者は石油製品の輸入事業者でもあり卸売段階においても影響力を有している。フランスの

Total はフランス北西部において、Platts Northwest Europe(NWE)を指標価格としている。

Platts NEW CIF価格は ARA地区での輸入価格となり、この価格からプレミアムを調整したもの

が、SS事業者への卸売価格となる。一方製油所出し価格となる NWE FOB価格は NWE CIF

価格から欧州各地域から ARA 地区へのフレートを差し引いた価格となるが、この価格がスポ

ット価格に該当し、CIF価格とFOB価格の差額がプレミアムと認識されている。フレートはPlatts

が査定し発表している Clean Tanker wire となるが、Plattsのメソドロジーによれば 2016年 1

月 4 日時点における ULSD(超低硫黄軽油)のフレートは 0.744 ㌦/㌧(0.75 円/L)と査定さ

れている。欧州では、この CIF 価格(プレミアム調整後)と FOB 価格の差が下流部門における

元売会社の収益源として認識されている。なお、SS 事業者の小売マージンは 1.3 セント/L

(1.6円/L)の水準にあり、今回調査したなかでも最も厳しい競争環境にある。

ドイツにおける卸売価格の指標は一般的に Platts が使用されているが、内陸部や南部につ

いては Oil Market Report(O.M.R)が活用されている。O.M.Rは Plattsにフレートおよび各地域

における需給状況を反映したものとなる。石油会社・トレーダーと独立系SS事業者との取引は

約 8 割の取引についてターム契約が結ばれるが、これらの価格にプレミアムの調整をしたもの

となる。ターム契約の期間は 1 年となっており、この間のプレミアム額は固定される。特約店と

の契約は5~10年程度の長期契約となる。欧州にはブランド料という概念は無いものの、マー

ジンという認識で石油会社が投資したサインポールやカードシステム等の投資回収は行って

いる。ドイツ Shellの場合、SS事業者をセグメントで分類しており、Shellのマージンは最大となる

C1 カテゴリーは 9セント/L(10.8円/L)からマージンがゼロとなる C10 まで 10段階に細分化

されている。SS 事業者のセグメント状況は分からないが、卸売価格はかなり幅が設けられてい

る状況にある。また、Shellブランドの飲料、食料品などを取り扱うショップを併設した場合、その

店舗には 0.5 セント/L(0.6 円/L)のブランド料を徴収している。また SS のブランドによって「A

マーケット」「B マーケット」「C マーケット」と 3 段階のカテゴリーに分類されている。A マーケット

は、Aral(BP)、Shell、ExxonMobil、Total といったメジャー系、B マーケットは Jet、

ConocoPhillips、Avia、Omv、Hemなどが該当し、Cマーケットはこれ以外となる。SSが得られる

マージンは Aマーケットが 9セント/L(10.8円/L)、Bマーケットが 8セント/L(9.6円/L)、Cマ

ーケットが 6 セント/L(7.2 円/L)程度となる。なお、ドイツでは小売価格の透明性を高めること

を目的にWebで販売価格を公表することが法的に義務付けられている。小売価格を変更した

場合、5分以内にWebの情報を更新しなければならない。一般の消費者に加え SS事業者も

競合 SSの価格動向を即座に確認することができるためか、1日に何度も販売価格を変更し、

その変動幅が 8セント/Lにも達するような事象が見られる。

Page 94: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 93 -

ICE 石油製品 現物

Gasoline

1 Gasoline Crack - RBOB Gasoline 1st Line vs Brent 1st Line Balmo Future (in

Bbls)

2 Gasoline Crack - RBOB Gasoline 1st Line vs Brent 1st Line Future

3 Gasoline Crack - RBOB Gasoline 1st Line vs WTI 1st Line Future

4 Gasoline Diff - Singapore Mogas 95 Unleaded vs Singapore Mogas 92

Unleaded Future

5 Gasoline Diff - Singapore Mogas 97 Unleaded vs Singapore Mogas 92

Unleaded Future

6 Gasoline Diff - Singapore Mogas 97 Unleaded vs Singapore Mogas 95

Unleaded Future

7 NYH (RBOB) Gasoline Futures

8 NYH (RBOB) Gasoline Futures TAS

9 NYH (RBOB) Gasoline/Heating Oil Futures Spread

10 NYH (RBOB) Gasoline/Low Sulphur Gasoil Futures Spread

11 NYH (RBOB) Gasoline/WTI Futures Crack

12 Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Med Cargoes Balmo Future

13 Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Med Cargoes Future

14 RBOB Gasoline 1st Line Future

15 RBOB Gasoline 1st Line Mini Future

16 RBOB Gasoline American-Style Option

17 RBOB Gasoline Average Price Option

18 RBOB Gasoline/Brent Crack Spread

19 Singapore Mogas 92 Unleaded vs Brent 1st Line Future

20 Singapore Mogas 95 Unleaded vs Brent 1st Line Future

21 Singapore Mogas 97 Unleaded vs Brent 1st Line Future

Gasoline(Platts Index)

22 Gasoline - Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Future

23 Gasoline - Singapore Mogas 97 Unleaded (Platts) Future

24 Gasoline Diff - Group 3 Sub-octane Gasoline (Platts) vs RBOB Gasoline 1st

Line Future

25 Gasoline Diff - Gulf Coast CBOB 87 Gasoline Prompt Pipeline (Platts) vs RBOB

Gasoline 1st Line Balmo Future

Page 95: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 94 -

26 Gasoline Diff - Gulf Coast CBOB 87 Gasoline Prompt Pipeline (Platts) vs RBOB

Gasoline 1st Line Future

27 Gasoline Diff - Gulf Coast Unl 87 Gasoline Prompt Pipeline (Platts) vs RBOB

Gasoline 1st Line Balmo Future

28 Gasoline Diff - Gulf Coast Unl 87 Gasoline Prompt Pipeline (Platts) vs RBOB

Gasoline 1st Line Future

29 Gasoline Diff - Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) vs Argus Eurobob Oxy

FOB Rotterdam Barges Future

30 Gasoline Outright - Eurobob Gasoline FOB Rotterdam Barges (Platts) Future

31 Gasoline Outright - Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Rotterdam Barges

(Platts) Balmo Future

32 Gasoline Outright - Premium Unleaded Gasoline 10ppm FOB Rotterdam Barges

(Platts) Future

33 Gasoline Outright - Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Balmo Future

34 Gasoline Outright - Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Balmo Mini Future

35 Gasoline Outright - Singapore Mogas 92 Unleaded (Platts) Mini Future

36 Gasoline Outright - Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) Balmo Future

37 Gasoline Outright - Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) Balmo Mini Future

38 Gasoline Outright - Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) Mini Future

39 Gasoline Outright - Singapore Mogas 97 Unleaded (Platts) Balmo Future

40 Gasoline Outright - Singapore Mogas 97 Unleaded (Platts) Balmo Mini Future

41 Gasoline Outright - Singapore Mogas 97 Unleaded (Platts) Mini Future

42 Platts Refined Diff - NYH RBOB 2:30 PM ET Settlement vs Platts 3:15 PM ET

2nd Month Spread Futures Assessment

43 Platts Refined Diff - NYH RBOB 2:30 PM ET Settlement vs Platts 3:15 PM ET

Futures Assessment

44 Premium Unleaded Gasoline 10ppm CIF NWE Cargoes (Platts) Future

Gasoline(Argus Index)

45 Gasoline Crack - Argus Euro-Bob Oxy FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st

Line Future

46 Gasoline Crack – Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st

Line Average Price Option

47 Gasoline Crack – Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st

Line Balmo Future

Page 96: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 95 -

48 Gasoline Crack-Argus Euro-Bob Oxy FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st

Line Balmo Future

49 Gasoline Diff - RBOB Gasoline 1st Line vs Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam

Barge Future

50 Gasoline Diff - RBOB Gasoline 1st Line vs Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam

Barges Balmo Future

51 Gasoline Diff - RBOB Gasoline 1st Line vs Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam

Barges Balmo Mini Future

52 Gasoline Diff - RBOB Gasoline 1st Line vs Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam

Barges Mini Future

53 Gasoline Outright - Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam Barges Balmo Mini

Future

54 Gasoline Outright – Daily Argus Eurobob Oxy FOB Rotterdam Barges Mini

Future

Diesel

55 Biodiesel Diff – Soybean Oil Penultimate Day 1st Line vs Low Sulphur Gasoil

1st Line Future

56 Biodiesel Outright - Soybean Oil Penultimate Day 1st Line Balmo Future

57 Biodiesel Outright - Soybean Oil Penultimate Day 1st Line Future

58 Diesel 10ppm (UK) CIF NWE Cargoes Future

59 Diesel 10ppm CIF NWE Cargoes Future

60 Diesel Crack - Gulf Coast ULSD vs Brent 1st Line Future

61 Diesel Crack - Gulf Coast ULSD vs WTI 1st Line Future

62 Diesel Crack - ULSD 10ppm CIF NWE Cargoes vs Brent 1st Line Future

63 Diesel Diff - Argus 62-Grade NYH ULSD vs Heating Oil 1st Line Future

64 Diesel Diff - Argus 67-Grade NYH ULSD vs Heating Oil 1st Line Future

65 Diesel Diff - Argus ULSD NYH Buckeye Pipeline vs Heating Oil 1st Line Future

66 Diesel Diff - Argus ULSD NYH Colonial Offline vs Heating Oil 1st Line Future

67 Diesel Diff - Diesel 10ppm (UK) CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st

Line Balmo Future

68 Diesel Diff - Diesel 10ppm (UK) CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st

Line Future

69 Diesel Diff - Diesel 10ppm CIF NWE (Le Havre) Cargoes vs Low Sulphur Gasoil

1st Line Balmo Future

Page 97: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 96 -

70 Diesel Diff - Diesel 10ppm CIF NWE (Le Havre) Cargoes vs Low Sulphur Gasoil

1st Line Future

71 Diesel Diff - Gulf Coast ULSD vs Heating Oil 1st Line Future

72 Diesel Diff - Gulf Coast ULSD vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Future

73 Diesel Diff - New York Harbour ULSD 1 Month Calendar Spread Option

74 Diesel Diff - ULSD 10ppm CIF Med Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Balmo Future

75 Diesel Diff - ULSD 10ppm CIF Med Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Future

76 Diesel Diff - ULSD 10ppm CIF NWE Cargoes (Platts) vs New York Harbour

ULSD Future

77 Diesel Diff - ULSD 10ppm CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Balmo Future

78 Diesel Diff - ULSD 10ppm CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Future

79 Gulf Coast ULSD Future

80 ULSD 10ppm CIF Med Cargoes Future

81 ULSD 10ppm CIF NWE Cargoes Balmo Future

82 ULSD 10ppm CIF NWE Cargoes Future

Diesel(Platts Index)

83 Diesel Crack – ULSD 10ppm CIF Med Cargoes (Platts) vs Brent 1st Line

Future (in bbls)

84 Diesel Diff - 67-Grade USGC ULSD (Platts) vs Heating Oil 1st Line Future

85 Diesel Diff - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) vs Gasoil 50ppm FOB

Rotterdam Barges (Platts) Future

86 Diesel Diff - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) vs Low Sulphur Gasoil

1st Line Balmo Future

87 Diesel Diff - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) vs Low Sulphur Gasoil

1st Line Future

88 Diesel Diff - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) vs New York Harbour

ULSD Future

89 Diesel Diff - Group 3 ULSD (Platts) vs Heating Oil 1st Line Future

90 Diesel Diff - Gulf Coast ULSD (Platts) vs Gulf Coast Jet Fuel (Platts) Future

91 Diesel Diff - ULSD 10ppm CIF Med Cargoes (Platts) vs New York Harbour

Page 98: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 97 -

ULSD Future

92 Diesel Diff - ULSD NYH Colonial Offline (Platts) vs Heating Oil 1st Line Future

93 Diesel Outright - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) Balmo Future

94 Diesel Outright - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) Bullet Future

95 Diesel Outright - Diesel 10PPM FOB ARA Barges (Platts) Future

96 Diesel Outright - Gulf Coast Export ULSD (Platts) Future

97 Diesel Outright - ULSD 10ppm CIF Med Cargoes (Platts) Mini Future

98 Gulf Coast ULSD (Platts) vs Heating Oil 1st Line Balmo Future

99 Singapore Mogas 95 Unleaded (Platts) Future

Diesel(Argus Index)

100 Argus Biodiesel FAME Zero FOB Rotterdam (RED Compliant) Future

101 Argus Biodiesel RME FOB Rotterdam (RED Compliant) Future

102 Biodiesel Diff Argus BioD FAME 0 FOB ARA Range (RED Compliant) vs Low

Sulphur Gasoil 1st Line Future

103 Biodiesel Diff-Argus Bio-D RME FOB ARA Range (RED Compliant) vs Low

Sulphur Gasoil 1st Line Future

Diesel(Other Index)

104 Diesel Diff - Group 3 ULSD (OPIS) vs Heating Oil 1st Line Future

Gas Oil/Heating Oil

105 Low Sulphur Gasoil Futures

106 Low Sulphur Gasoil/Brent Futures Crack

107 EU-Style Low Sulphur Gasoil Future

108 EU-Style Low Sulphur Gasoil Option

109 Gasoil 0.1% CIF Med Cargoes Future

110 Gasoil 0.1% CIF NWE Cargoes Balmo Future

111 Gasoil 0.1% CIF NWE Cargoes Future

112 Gasoil 0.1% FOB Med Cargoes Future

113 Gasoil 50ppm FOB Rotterdam Barges Balmo Future

114 Gasoil 50ppm FOB Rotterdam Barges Bullet Future

115 Gasoil 50ppm FOB Rotterdam Barges Future

116 Gasoil ARB Singapore Gasoil vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Future (In BBLS)

117 Gasoil Crack - Gasoil 0.1% CIF NWE Cargoes vs Brent 1st Line Future

Page 99: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 98 -

118 Gasoil Crack - Gasoil 50ppm FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st Line Future

119 Gasoil Crack - Low Sulphur Gasoil 1st Line vs Brent 1st Line Average Price

Option (in bbls)

120 Gasoil Crack - Low Sulphur Gasoil 1st Line vs Brent 1st Line Balmo Future (in

Bbls)

121 Gasoil Crack - Low Sulphur Gasoil 1st Line vs Brent 1st Line Balmo Future (in

MTs)

122 Gasoil Crack - Low Sulphur Gasoil 1st Line vs Brent 1st Line Future (in Bbls)

123 Gasoil Crack - Low Sulphur Gasoil 1st Line vs Brent 1st Line Future (in MTs)

124 Gasoil Crack - Low Sulphur Gasoil 1st Line vs Brent 1st Line Mini Future (in

bbls)

125 Gasoil Diff - Gasoil 0.1% CIF Med Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Balmo Future

126 Gasoil Diff - Gasoil 0.1% CIF Med Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Future

127 Gasoil Diff - Gasoil 0.1% CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Balmo Future

128 Gasoil Diff - Gasoil 0.1% CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Future

129 Gasoil Diff - Gasoil 50ppm FOB Rotterdam Barges vs Low Sulphur Gasoil 1st

Line Future

130 Gasoil Diff - Low Sulphur Gasoil 1-Month Calendar Spread Future

131 Gasoil Diff - Singapore 10PPM Gasoil VS Singapore Gasoil Future

132 Gasoil Outright - Singapore Gasoil Balmo Future

133 Heating Oil 1st Line Future

134 Heating Oil 1st Line Mini Future

135 Heating Oil American-Style Option

136 Heating Oil Arb - Heating Oil 1st Line vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Future (in

Bbls)

137 Heating Oil Arb - Heating Oil 1st Line vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Future (in

MTs)

138 Heating Oil Arb – Heating Oil 1st Line vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Balmo

Future

139 Heating Oil Average Price Option

140 Heating Oil Crack - Heating Oil 1st Line vs Brent 1st Line Future

Page 100: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 99 -

141 Heating Oil Crack - Heating Oil 1st Line vs WTI 1st Line Future

142 Heating Oil Diff - EU-Style Heating Oil vs Low Sulphur Gasoil Future

143 Heating Oil Diff - EU-Style Heating Oil vs Low Sulphur Gasoil Option

144 Heating Oil Futures

145 Heating Oil Futures TAS

146 Heating Oil/Brent Crack Spread

147 Heating Oil/Low Sulphur Gasoil Futures Spread

148 Low Sulphur Gasoil 1-Month Calendar Spread Option

149 Low Sulphur Gasoil 1st Line Balmo Future

150 Low Sulphur Gasoil 1st Line Future

151 Low Sulphur Gasoil Average Price Option

152 Low Sulphur Gasoil Bullet Future

153 Low Sulphur Gasoil Futures Singapore Minute Marker

154 Low Sulphur Gasoil Futures TAS

155 Low Sulphur Gasoil Futures U.S. Minute Marker

156 Low Sulphur Gasoil, American-Style Option

157 Mini Low Sulphur Gasoil Futures (10mt)

158 Singapore Gasoil 10ppm Future

159 Singapore Gasoil Future

Gas Oil/Heating Oil(Platts Index)

160 Gasoil Crack - Gasoil 0.1% FOB ARA Barges (Platts) VS Brent 1ST Line

Future (In MTS)

161 Gasoil Diff - Gasoil 0.1% FOB ARA Barges (Platts) vs Low Sulphur Gasoil 1st

Line Balmo Future

162 Gasoil Diff - Gasoil 0.1% FOB ARA Barges (Platts) vs Low Sulphur Gasoil 1st

Line Future

163 Gasoil Diff - Gasoil 50ppm FOB Rotterdam Barges (Platts) VS Gasoil 0.1%

FOB ARA Barges (Platts) Future

164 Gasoil Diff – Singapore Gasoil (Platts) vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Balmo

Future

165 Gasoil Outright - Gasoil 0.1% FOB ARA Barges (Platts) Balmo Future

166 Gasoil Outright - Gasoil 0.1% FOB ARA Barges (Platts) Future

167 Gasoil Outright - Gasoil 0.1% FOB ARA Barges (Platts) Mini Future

168 Gasoil Outright - Singapore Gasoil 10ppm (Platts) Balmo Future

Page 101: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 100 -

169 Platts Refined Diff - NYH Heating Oil 2:30 PM ET Settlement vs. Platts 3:15

PM ET 2nd Month Spread Futures Assessment

170 Platts Refined Diff - NYH Heating Oil 2:30 PM ET Settlement vs. Platts 3:15

PM ET Futures Assessment

171 Singapore Gasoil (Platts) Mini Future

Fuel Oil

172 Fuel Oil 180 CST Singapore Future

173 Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges Future

174 Fuel Oil - 3.5% CIF MED Cargoes Futures

175 Fuel Oil 1% CIF Med Cargoes Balmo Future

176 Fuel Oil 1% CIF Med Cargoes Future

177 Fuel Oil 1% CIF NWE Cargoes Future

178 Fuel Oil 1% FOB Med Cargoes Balmo Future

179 Fuel Oil 1% FOB Med Cargoes Future

180 Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes Balmo Future

181 Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes Future

182 Fuel Oil 1% FOB Rotterdam Barges Balmo Future

183 Fuel Oil 1% FOB Rotterdam Barges Future

184 Fuel Oil 180 CST Singapore Average Price Option

185 Fuel Oil 180 CST Singapore Balmo Future

186 Fuel Oil 3.5% CIF Med Cargoes Balmo Future

187 Fuel Oil 3.5% FOB Med Cargoes Balmo Future

188 Fuel Oil 3.5% FOB Med Cargoes Future

189 Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges Average Price Option

190 Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges Balmo Future

191 Fuel Oil 380 CST Singapore (Platts) Average Price Option

192 Fuel Oil 380 CST Singapore Balmo Future

193 Fuel Oil 380 CST Singapore Future

194 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes vs Brent 1st Line Future

195 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes vs Brent 1st Line Future (in

Bbls)

196 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 180 CST Singapore vs Brent 1st Line Future

197 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 180 CST Singapore vs Dubai 1st Line Future

198 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st Line Future

Page 102: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 101 -

199 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges vs Brent 1st Line Future

(in Bbls)

200 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 380 CST Singapore vs Brent 1st Line Future

201 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 380 CST Singapore vs Dubai 1st Line Future

202 Fuel Oil Crack - New York 1% Fuel Oil vs WTI 1st Line Balmo Future

203 Fuel Oil Crack - New York 1% Fuel Oil vs WTI 1st Line Future

204 Fuel Oil Crack- New York 1% Fuel Oil vs Brent 1st Line Future

205 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1 % FOB Rotterdam Barges vs 1% FOB Med Cargoes

Future

206 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% CIF Med Cargoes vs 1% FOB NWE Cargoes Future

207 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% CIF NWE Cargoes vs 1% FOB NWE Cargoes Future

208 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Balmo Future

209 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Future

210 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% FOB Rotterdam Barges vs 1% CIF NWE Cargoes

Future

211 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% FOB Rotterdam Barges vs 1% FOB NWE Cargoes

Balmo Future

212 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% FOB Rotterdam Barges vs 1% FOB NWE Cargoes

Future

213 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 180 CST Singapore vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Balmo Future

214 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 180 CST Singapore vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Future

215 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 180 CST Singapore vs 380 CST Singapore Balmo Future

216 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 180 CST Singapore vs 380 CST Singapore Future

217 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 3.5% FOB Med Cargoes vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Balmo Future

218 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 3.5% FOB Med Cargoes vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Future

219 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 380 cst Singapore vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Balmo Future

220 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 380 CST Singapore vs 3.5% FOB Rotterdam Barges

Future

Page 103: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 102 -

221 Fuel Oil Diff - New York 1% Fuel Oil vs 1% FOB NWE Cargoes Fuel Oil Balmo

Future

222 Fuel Oil Diff - New York 1% Fuel Oil vs 1% FOB NWE Cargoes Fuel Oil Future

223 Fuel Oil Mini 180 CST Singapore Future (100MT)

224 Fuel Oil Mini 3.5% FOB Rotterdam Barges Future (100MT)

225 Fuel Oil Mini 380 CST Singapore Future (100MT)

226 Fuel Oil Outright - New York 1% Fuel Oil Balmo Future

227 Fuel Oil Outright - New York 1% Fuel Oil Future

228 FUEL OIL STRAIGHT RUN 0.5-0.7% FOB NWE CARGOES FUTURE

Fuel Oil(Platts Index)

229 Fuel Oil Crack - Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges (Platts) vs Brent 1st

Line Balmo Future (in Bbls)

230 Fuel Oil Crack - USGC 3% Fuel Oil (Platts) vs Brent 1st Line Future

231 Fuel Oil Crack - USGC 3% Fuel Oil (Platts) vs WTI 1st Line Future

232 Fuel Oil Crack– USGC 3% Fuel Oil (Platts) vs Brent 1st Line Balmo Future

233 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 1% FOB Med Cargoes (Platts) vs 1% FOB NWE Cargoes

(Platts) Future

234 Fuel Oil Diff - Fuel Oil 3.5% 500 CST FOB Rotterdam Barges (Platts) vs 3.5%

FOB Rotterdam Barges (Platts) Future

235 Fuel Oil Diff - New York 1% Fuel Oil (Platts) vs USGC 3% Fuel Oil (Platts) Balmo

Future

236 Fuel Oil Diff - New York 1% Fuel Oil (Platts) vs USGC 3% Fuel Oil (platts)

Future

237 Fuel Oil Diff - USGC 3% Fuel Oil (Platts) vs Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam

Barges (Platts) Balmo Future (In bbls)

238 Fuel Oil Diff - USGC 3% Fuel Oil (Platts) vs Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam

Barges (Platts) Future (in bbls)

239 Fuel Oil Diff - USGC 3% Fuel Oil (Platts) vs Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam

Barges (Platts) Future (in mts)

240 Fuel Oil Diff – Fuel Oil 3.5% CIF Med Cargoes (Platts) vs Fuel Oil 3.5% FOB

MED Cargoes (Platts) Future

241 Fuel Oil Outright - Fuel Oil 1% CIF NWE Cargoes (Platts) Mini Future

242 Fuel Oil Outright - Fuel Oil 1% FOB Med Cargoes (Platts) Mini Future

243 Fuel Oil Outright - Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes (Platts) Average Price

Page 104: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 103 -

Option

244 Fuel Oil Outright - Fuel Oil 1% FOB NWE Cargoes (Platts) Mini Future

245 Fuel Oil Outright - Fuel Oil 1% FOB Rotterdam Barges (Platts) Mini Future

246 Fuel Oil Outright - Fuel Oil 3.5% FOB Med Cargoes (Platts) Mini Future

247 Fuel Oil Outright - USGC 3% Fuel Oil (Platts) Balmo Future

248 Fuel Oil Outright - USGC 3% Fuel Oil (Platts) Future

249 Fuel Oil Outright – Daily Fuel Oil 3.5% FOB Rotterdam Barges (Platts) Mini

Future

250 Fuel Oil Outright – USGC 3% Fuel Oil (Platts) Average Price Option

Jet Fuel

251 Gulf Coast Jet Fuel Future

252 Jet CIF NWE Cargoes Balmo Future

253 Jet CIF NWE Cargoes Future

254 Jet Fuel Crack - Gulf Coast Jet Fuel vs Brent 1ST Line Future

255 Jet Fuel Crack - Jet CIF NWE Cargoes vs Brent 1st Line Future

256 Jet Fuel Diff - Argus NYH Jet Fuel vs Heating Oil 1st Line Balmo Future

257 Jet Fuel Diff - Argus NYH Jet Fuel vs Heating Oil 1st Line Future

258 Jet Fuel Diff - Gulf Coast Jet Fuel vs Heating Oil 1st Line Future

259 Jet Fuel Diff - Jet CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Balmo

Future

260 Jet Fuel Diff - Jet CIF NWE Cargoes vs Low Sulphur Gasoil 1st Line Future

261 Jet Fuel Diff - Jet FOB Rotterdam Barges vs Jet CIF NWE Cargoes Future

262 Jet Fuel Diff - Jet FOB Rotterdam Barges vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Future

263 Jet Fuel Diff Singapore Jet Kero vs Singapore Gasoil Future

264 Singapore Jet Kerosene Balmo Future

265 Singapore Jet Kerosene Future

Jet Fuel(Platts Index)

266 Gulf Coast Jet Fuel (Platts) Average Price Option

267 Gulf Coast Jet Fuel (Platts) Mini Future

268 Jet CIF NWE Cargoes (Platts) Mini Future

269 Jet FOB Rotterdam Barges (Platts) Future

270 Jet Fuel Crack - Jet CIF NWE Cargoes (Platts) vs Brent 1st Line Mini Future

Page 105: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 104 -

271 Jet Fuel Diff - Gulf Coast Jet Fuel (Platts) vs Heating Oil 1st Line Balmo

Future

272 Jet Fuel Diff - LA Jet Fuel (Platts) vs Heating Oil 1st Line Balmo Future

273 Jet Fuel Diff - LA Jet Fuel (Platts) vs Heating Oil 1st Line Future

274 Jet Fuel Diff - Singapore Jet Kerosene (Platts) vs Low Sulphur Gasoil 1st Line

Future (in Bbls)

275 Jet Fuel Outright - Gulf Coast Jet Fuel (Platts) Balmo Future

276 Jet Fuel Outright - Jet FOB MED Cargoes (Platts) Future

277 Singapore Jet Kero (Platts) vs Singapore Gasoil (Platts) Balmo Future

278 Singapore Jet Kerosene (Platts) Mini Future

Naphtha

279 Naphtha - C+F Japan Cargo Future

280 Naphtha C+F Japan Balmo Future

281 Naphtha CIF NWE Cargoes Balmo Future

282 Naphtha CIF NWE Cargoes Future

283 Naphtha Crack - Naphtha CIF NWE Cargoes vs Brent 1st Line Balmo Future

284 Naphtha Crack - Naphtha CIF NWE Cargoes vs Brent 1st Line Future

285 Naphtha Diff - Naphtha C+F Japan vs Naphtha CIF NWE Cargoes Future

286 Singapore Naphtha Balmo Future

287 Singapore Naphtha Future

Naphtha(Platts Index)

288 Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) Average Price Option

289 Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) Mini Future

290 Naphtha Crack - Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) vs Brent 1st Line

Average Price Option (in MTs)

291 Naphtha Crack - Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) vs Brent 1st Line Future

(in bbls)

292 Naphtha Diff – Naphtha C+F Japan Cargoes (Platts) vs Naphtha CIF NWE

Cargoes (Platts) Balmo Future

293 Naphtha FOB Med Cargoes (Platts) Future

294 Naphtha Outright - Naphtha C+F Japan (Platts) Mini Future

295 Naphtha Outright - Daily Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) Mini Future

296 Naphtha Outright - Naphtha C+F Japan (Platts) Balmo Mini Future

Page 106: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 105 -

297 Naphtha Outright - Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) Future (in bbls)

298 Naphtha Outright - Singapore Naphtha (Platts) Mini Future

299 Naphtha Outright – Naphtha CIF NWE Cargoes (Platts) Balmo Mini Future

Ethanol

300 Chicago Ethanol Future

301 New York Ethanol Future

4.価格形成に影響を与える諸要因

欧州には、週次で欧州の石油需給や在庫をカバーする統計は存在しない。ECがWeekly

Oil Bulletinを公表しているが、これは加盟各国のガソリン、ディーゼル軽油、暖房油、重油の

税込みと税抜きの小売価格を国別に取りまとめているだけで、需給データではない。(Council

Decision 1999/280/EC)月別には、ECの輸入原油の価格と量を EC No.2964/95に基づ

き公表している。また、Euroilstock社が、ロイター通信を通じて原油、中間留分、重油の在庫

と原油処理量を集計・公表しているが、月次データであり、日々の取引に活用される統計とは

なっていない。このほかに、ARA地区のタンク在庫を週次で報告する PJK International と

Genscapeの 2社によるサービスがある。

このように、欧州の石油関係統計は月次が中心であり、石油関係者は正確性を重視したデ

ータ収集・公表の姿勢を評価する一方で、価格形成のツールとして活用する意思はないよう

に思える。その中で、欧州の価格形成の基準を提供している ICE市場のブレントや Gas Oilは、

米国の NYMEX市場やそこに影響を与えている EIAの在庫データを元に価格が形成されてお

り、NYMEXとほぼ同様の金融市場である ICEで形成される先物価格や、現物中心の市場であ

るロッテルダムの Plattsや Argusのアセスメントが、実質的な指標となっている。

地政学的リスクや地域需給は、政情が不安定な中東地域やロシアに隣接していることもあり、

米国 NYMEX 市場に比べ、より一層強く影響を受ける傾向にある。アラブの春に代表される中

東での混乱は、その発生の時刻がどの市場の取引時間かにもよるが、基本的には ICE のブレ

ントやGas Oilに真っ先に影響し、その後ロッテルダム市場に影響が及ぶというのが一般的であ

る。これに対し域内や、欧州に石油製品を供給するロシア、中東、インド等での製油所のトラブ

ル等は、直接 ARA市場での取引に影響を与えている。

5.マーケットの変化と企業の対応

(1)市場の分断化とスポット市場の成長

欧州メジャーも、かつては上流から下流までの一貫操業を行ってきた。しかし 1990 年代に

入り石油需要が減少に転じると、不採算であった下流部門資産の整理を開始、製油所や油

槽所、SS の売却を開始した。一部は閉鎖となったが、残りは独立系の事業者の集中に収まり、

採算性を最重要視した操業を開始することとなった。このような状況は卸売市場に大きな変

Page 107: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 106 -

-5,000

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

1995 2000 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

BP 上流部門

BP 下流部門

Shell 上流部門

Shell 下流部門

化をもたらし、輸入品と域内精製品をバランスしながら供給する卸売業者や、海外や域内か

ら半製品を調達し、品質調整を行うブレンダーが、重要な役割を演じるようになった。このため、

メジャーも自社系列での一貫操業を放棄し、自社ブランド SS への供給もいったん市場を通じ

て調達しメジャー内部の卸売機能に基づき SSに供給するようになった。

一方、精製部門は、これら卸売業者への供給だけを目的に、常時、最大の利益を確保す

ることだけを目的に精製ビジネスを展開するようになったことから、需要の減少と相まって供給

過剰状態が恒常化し、スーパー/ハイパーや PBブランドの SSが自由に製品を調達できるよう

になった。しかしマージンは大幅に低下し、下流部門の収益悪化を招いている。

図表 53 欧系メジャーの部門別収益推移

出所:Annual Report

このような中で、製油所が集中するARA地域や地中海沿岸では、精製業者やトレーダーが、

域内精製品や輸入製品を取引する際の場としてスポット市場が成長し、ほとんどの欧州諸国

が同一の基準で石油製品を調達するシステムが主流となった。また、イギリスに設置された

ICE市場では、北海の Brent原油と、欧州で主力の石油製品である Gas Oilが先物上場され、

米国のNYMEX市場におけるWTI原油、RBOBガソリンと同様の影響力を、スポット市場に対し

与えている。

Page 108: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 107 -

現物市場

ロッテルダム等

商社・貯蔵会社

トレーダーICE

先物市場

T 系列 SS事業者

T 精製事業者

輸入事業者

O 精製事業者

非系列 SS事業者

図表 54 欧州の取引概要(商流)

(2)スーパー/ハイパーの伸張

フランスでは 1960 年代からスーパーマーケットのガソリン小売市場への参入が始まってい

た。そして 1985年にルクレールがフランス小売価格規制に関し勝訴すると、規制緩和が行わ

れ、その後の 3年間で市場シェアを 2倍に拡大させた。当初メジャーをはじめとするブランド系

供給者は、品質やサービスを武器にスーパーよりも高めの価格設定を行っていたが、1990年

代に入るとスーパーと直接価格で対峙する戦略に転換した。一方でスーパー側も、2 大勢力

であるカルフールとルクレール(現在のブランドは Siplec)間で価格競争が激化するなど、厳し

い価格競争に突入し、石油会社もこれに追随せざるを得なくなった。この中で、BPと Shellはフ

ランス市場の活動を大幅に縮小、もしくは撤退し、ExxonMobil も 24時間営業の無人 SSで対

抗している。その中にあって、Petrofina と Elf を吸収合併した Total は、スーパーマーケットに

対抗すべく Total Access というブランドを立ち上げ、スーパーに近接した地域では時間単位で

価格を調整し、スーパーと同価格で対抗する戦略を取っている。

同様にイギリスでも、Tesco 等のハイパーが販売シェアでは 40%以上を確保し、特に中小の

独立系 SSへの圧力を強めている。メジャーは、1994年に Essoが「Price Watch」と称し、ハイ

パーと同価格で販売を開始する戦略を開始すると、他のメジャーもこれに追随した。現在も小

売市場においてメジャーは勢力を維持しているが、Total のようにイギリス市場を撤退したケー

スもあり、厳しい戦いが続いている。

Page 109: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 108 -

6.独占禁止政策

(1)各国の独禁法体系

①欧州連合

欧州連合の機能に関する条約(TFEU:Treaty on the Functioning of European Union)第

101 条で競争制限的協定・協調的行為の規制(価格協定、生産・販売・技術開発または投

資に関する制限、市場または供給源の割り当て、取引の相手方を競争上不利にする差別的

取り扱い、抱き合わせ契約)を禁止している。第102条では市場支配的地位の濫用行為の規

制(不公正な価格または取引条件を課すこと、需要者に不利となる生産・販売・技術開発の

制限、取引の相手方を競争上不利にする差別的取り扱い、抱き合わせ契約)を禁止している。

この執行機関は、欧州委員会(the European Commission)競争総局である。なお、企業合併

に関しては、これとは別に2004年の理事会規則139/2004号(企業連結規則)があり、全世

界での売り上げが 50億ユーロ超、もしくは当事者の少なくとも 2社の共同体内での売り上げが

1億ユーロ超、等に該当する企業に届け出を義務付けている。

②英国

英国の競争法は次の 4つからなる。

1973年公正取引法

1980年競争法

1998年競争法(反競争的協定及び支配的地位の濫用、競争委員会の設置等)

2002 年競争法(公正取引庁及び競争控訴審判所の設置、カルテル罪の新設、個人への

刑事罰の導入等)、1998 年競争法を補完するもの公正取引庁(OFT)は、英国ガソリン及び

ディーゼル油市場に関する調査を下記のとおり実施している。

1998年 英国自動車燃料市場の競争状態に関する調査

2000年 ハイランドと島嶼部におけるガソリンとディーゼル油価格

2001年 Lewis と Harrisにおけるガソリンとディーゼル油の小売市場調査

2011年 CH Jones社が、バンカー市場で独占的地位を行使していることへの警告

2012年 スコットランド島嶼部におけるガソリンとディーゼル油のマージンに係る分析

2012年 遠隔地における価格と消費者選択に関する報告

2013年 スコットランド西部における自動車用燃料調査

2013年 英国のガソリン及びディーゼル油市場調査(別項参照)

Page 110: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 109 -

ガソリン及びディーゼル油市場に関する調査(UK petrol and diesel sector)

2013 年、英国公正取引庁はガソリン及びディーゼル油市場に関する調査(UK petrol and

diesel sector)と題する調査報告を取りまとめた。ここでは、競争環境の低い地域では割高な価

格となっていないか、独立系事業者がスーパーマーケットと公正な競争を実現しているか、値

上がりは早く、値下がりは遅いという消費者からの指摘は正しいか、原油市場での作為的な行

為が製品価格上昇をもたらしていないか、不確かな価格情報が製品価格の上昇につながって

いないか、等の調査を行っている。

≪調査の概要≫

(1)競争環境の低い地域では割高な価格となっていないか

・競争状況、輸送コスト、地域間の格差等を調査したが、一部競争状態が緩和している地域

はあるものの、全般的に競争環境は維持されている

・反競争的な行為も、本調査の範囲では見つけられなかった

(2)独立系事業者がスーパーマーケットと公正な競争を実現しているか

・大手石油会社やスーパーマーケットが、支配的地位を行使して中小独立系 SS に圧力を加

えているという明確な証拠はなかった

・大手石油会社やスーパーマーケットが低コストで販売できるのは、大量仕入れ・大量販売に

よる仕入れ効果と固定費圧縮効果によるもので、独立事業者よりも低コスト運営が出来るの

は当然の結果である

・独立系事業者の SS閉鎖はペースダウンしてきており、現行市場でも生き残れる SSがあるこ

とを示している

(3)値上がりは早く、値下がりは遅いという消費者からの指摘は正しいか

・小売市場では、多くの小売業者が、多様な仕入れを行っており、このような状況で、指摘さ

れたような現象は生じにくいと考えられる

・英国の燃料油市場は、合理的かつ効率的に機能している

(4)原油市場での作為的な行為や不確かな価格情報が製品価格上昇をもたらしていないか

・原油市場で作為的な行為を行うことは不可能ではないが、実際にそのような行為は認めら

れなかった

・価格情報に関しては、価格を自らに有利なよう選択的に報告することや、価格情報会社

(PRA)も調査方法を明確にしていない場合があり、結果として消費者に不利な価格が報告

される可能性があるが、本調査では小売価格が高めに誘導されるような事例は認められな

かった

・本件は、疑われる事例が認められれば、OFTに報告するよう関係者に要請する

*本調査公表に先立ち、PRA(Petroleum Retailers Association)は、Esso、Shellが自社系列と

独立系事業者に異なる卸価格を適用し、競争上不利な条件を課していると批判していた。

Page 111: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 110 -

③フランス

商法典第 4 部「価格の自由及び競争」に規定され、独立した行政機関である競争委員会

が監視を行っている。反競争的行為としての禁止対象としては、反競争的協定、支配的地位

の濫用、経済的従属状態の濫用、生産者等による不当廉売である。また競争制限的行為に

よる禁止対象としては、原価割れ販売、再販価格の拘束、差別的取り扱いなどがある。この

他に企業結合も対象となる。

石油市場は、競争・消費・不正抑止総局(DGCCRF)が小売価格や公正取引慣行などを監

視している。

④ドイツ

ドイツの独占禁止法は、1957 年の競争制限禁止法で、執行機関は連邦カルテル庁、州カ

ルテル庁、連邦経済技術省である。連邦カルテル庁は、州をまたがる競争制限の影響が生じ

る事案を担当し、連邦経済技術大臣の所管であるが、別個の独立した機関としてボンにおか

れている。連邦経済技術省は、企業結合の大臣許可を与える権限を有し、それ以外の事項

は州カルテル庁が所管する。この他に、経済力集中の状況調査を行う独占委員会がある。

連邦カルテル庁は、2011年から「Market Transparent Unit」を通じて、すべての SSからの

価格情報収集を開始した。すべての SSは、価格改定から 5分以内にこのシステムへの報告

が義務付けられており、結果はインターネットを通じて公表される。これにより、消費者への価

格透明性が一段と向上した(別項参照)。

Page 112: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 111 -

ドイツの Market Transparency Unitの概要

ドイツカルテル庁は、2013年 12月 1日から「Market Transparency Unit(MTU)」によるガ

ソリンとディーゼル価格の公表制度を開始した。カルテル庁は、この制度の導入により、ドイツ

の自動車燃料市場の競争状態がより高まり、消費者利益が生み出されるとしている。

制度の概要は以下のとおりである。

約 14,650の小売事業者は、SS での価格変更を行った場合、直近の小売価格を 5 分以

内に MTU に報告しなければならない。MTU はこのデータを集計し、メディアに提供する。メデ

ィアは直ちにサービスデータを変更するので、消費者はパソコンやスマホで最新情報をチェッ

クできる仕組みになっている。データは、ベルリン、フランクフルト、ハンブルグなど 8 都市では

より詳細なものが提供されていいて、消費者にとっての透明性を高めるとともに、事業者にと

っても同業者の価格動向を容易に知ることが出来るようになって透明性が高まるとしている。

さらにカルテル庁は、このシステムについて、大手石油企業に対し、価格をより競争的なもの

に設定させるインセンティブになろうとしている。

現在 MTUがデータを提供しているメディアは約 50社あり、生活関連情報を流すサイトなどが

データを利用している。

2014 年 12月から 2015 年 5 月までの活動に関し、カルテル庁は以下のような報告を行っ

た。

・現在石油企業は夕刻に価格を引き上げ、翌日の日中に少しずつ値下げをするという行動

をしている。

・最も安い時間帯は午後 6 時から 8 時の間であった。8 時以降に値上げされるケースが多

かった。

・仮に消費者が常時、最安値の時間帯に給油していると、平均で 15~20 セント/L 安く購

入することが出来ていたと見られる。

・2015年春以降、大手石油会社は MTUが提供するデータからさらに値引きした価格の提

供を開始した。

Page 113: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 112 -

「欧米競争法」により規制対象となる行為について

【概要】

EUでは EC条約 81条、米国ではシャーマン法 1条にて規制。また,市場支配力を有する事業

者の行為については、EC条約 82条とシャーマン法 2条によっても規制される。カルテルなど競

争事業者間の競争制限行為に対する規制は、欧米ともに厳しい。

垂直的な取引関係における競争制限規制においては、 EUではEUを単一市場とする目的が強

く意識され、とくに市場支配力を有する事業者に対する規制が厳しいのに対し、米国では事業

者による自由な経済活動を尊重する傾向がみられる。EU でも米国でも、市場シェアは,競争法

上のリスクの判断基準として有効である。

【カルテル】

カルテルとは、競争事業者間で販売価格や顧客などを取り決める行為をいい、EUでは EC条約

81条違反、米国ではシャーマン法1条違反となる。販売価格の取決め(最高価格や割引率、マ

ージン率の設定などによるものを含む)、販売数量の取決め、顧客や市場分割の取決め、入札

に関する取決めは EU、米国ともにとくに違法性の高いものとして市場への影響度や合理性を判

断することなく違法とされ、「ハードコアカルテル」とも呼ばれる。

(参考)非ハードコアカルテル:共同研究開発、情報交換活動、共同生産、共同販売、購入、標

準化・規格化、社会公共目的の共同行為等、通常、競争制限以外の合理的な目的・効果を持

つカルテルのことをいう。

・EU

EC条約 81条 1項において、競争を制限する目的または効果を有する事業者間の協定、協調

行為が禁止されている。「協定」とは,共通の意思を表明することで足り、書面である必要はなく

黙示で成立。「協調行為」とは、協定の締結と呼びうる段階には至っていないが、互いに意識的

に事実上の協力を行うという事業者間の調整行為であり、情報を交換することも対象とする。

協定や協調行為が「競争を制限する目的または効果」を有するかどうかについて、欧州委員会

は目的があれば実際の効果を立証する必要がないとしている。カルテルの場合、その性質上競

争を制限する目的を有していないことを事業者が証明することは極めて難しい。

なお、カルテルに同意したり同調した行為を行っていなくとも、カルテルが行われた会議に参加

していた事業者は、公に当該協調行為から外れる旨の意思表示をしていない限り、責任を免れ

ない可能性がある。

・米国

シャーマン法 1条において、州間もしくは外国との取引または通商を制限する契約、結合または

共謀が禁止されている。「契約」とは拘束力のある合意、「結合」とは共通の目的を達成するため

の連合、「共謀」とは不法な行為、目的を達成するための合意を意味し、契約、結合、共謀を含

めて協調行為と呼ぶ。

Page 114: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 113 -

EU における協調行為とは概念が異なり、米国において協調行為は複数の競争事業者が違法

な目的を達成する共通の計画に意識的に合意した場合に成立する。合意は明示でなく黙示で

あっても足りる。

競争事業者間で会合や情報交換が行われていたという状況証拠などの追加的要素が加わる

と、共謀の存在を認定される可能性があり、競争事業者間での必要以上の接触には注意が必

要。 とくに現在および将来の販売価格や生産量、コスト等のセンシティブな情報の交換はシャ

ーマン法 1条違反と認定されるリスクが高い。

ハードコアカルテルと呼ばれる競争事業者間の販売価格協定、数量制限協定、市場分割協定

および入札談合は違法の原則が適用される。

(違法とされない競争者間の協調)

・EU

競争事業者間であっても、競争促進や技術促進に繋がるような協定や協調行為は認められ

る。その判断基準は EUおよび米国競争当局の規則やガイドライン等に示されている。

競争事業者間の協力関係であっても、 EC条約 81条 3項の免除事由(注1)に該当すれば違

法性はない。一般的には販売に制限をかけない協力関係であれば合法性が認められやすい。

(注1)

3 第1項の規定は、次のいずれかに該当する場合には適用できないことを宣言することができ

る。

(a) 事業者間の協定またはこれと同種のもの

(b) 事業者団体が行う決定またはこれと同種のもの

(c) 協調的行為またはこれと同種のものであって、製品の生産もしくは流通を改善しまたは技

術的もしくは経済的進歩を促進することに寄与し、かつ、その結果生ずる利益が利用者に公正

に与えられること。

ただし次のものを除く。

(i) 前記の目的の達成に不可欠でない制限を関係事業者に課すもの

(ii) これらの事業者に、当該製品の主要部分に関し、競争を排除する可能性を与えるもの

・米国

価格上昇や供給量減少につながるようなものではない競争促進を目的とする競争事業者間の

協調については、合理の原則により判断するとされており、参加事業者のシェアの合計が 20%未

満であればセーフハーバー(通常独禁法上の問題が生じることはないと考えられる範囲)として

規制対象外とする(競争者間協調ガイドライン)。ただし、ハードコアカルテルについては合理の

原則やセーフハーバーは適用されず違法となる。

Page 115: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 114 -

【共同の取引拒絶】

共同の取引拒絶(共同ボイコット)とは、主に複数の競争事業者間でメンバーまたは、一定の条

件を満たす者以外への供給を拒否することをいう。

・EU

共同ボイコットは競争制限的な競争事業者間の協定・協調行為として、 EC条約 81条により禁

止される。

・米国

特定の事業者を排除する競争事業者間の合意は、シャーマン法 1条により禁止される。

共同ボイコットを行った競争事業者が市場支配力を有しているか、またはボイコットが他の競争

事業者に対して競争に不可欠な要素へのアクセスを排除するものである場合は当然違法とな

る。しかしそれ以外の場合は、競争促進効果と競争阻害効果を比較して合理の原則に基づき

判断される。

【再販売価格維持】

再販売価格維持行為とは、メーカー等が自社製品を取り扱う販売店などに対し、販売価格や値

引き幅を一定額に制限する行為であり、垂直的な取引関係(売手と買手)における価格制限を

いう。とくに EUでは厳しく規制されている。

・EU

再販売価格維持は. EC条約 81条によって禁止される。再販売価格維持行為もカルテル同様

違法性が強いものとされており、市場シェアにかかわらず違法である。

価格の下落を防ぐための制限行為でなければ原則として規制対象とならず、最高販売価格の

設定については通常、違法とされない。

メーカーが販売店に対して行う推奨価格の設定については原則として禁止されないが、推奨価

格からの逸脱に対してリベートの減額や制裁、報復、威圧などを行えば最低販売価格の設定と

して違法と判断される。

・米国

シャーマン法1条違反行為であり、最低販売価格の設定については、違法の原則が適用されて

きた。ただし、販売業者に価格を決定する自由が留保されている限りにおいては再販売価格維

持に該当せず、また、メーカーと販売業者との問に明白な合意がない限り当然違法とはならな

いとし、裁判所では、違法となる再販売価格維持行為の範囲を限定的に解釈している。

なお,推奨価格の設定については. EU 同様、推奨価格からの逸脱に対する制裁や報復、威圧

などが行われると、最低販売価格の設定と同視され違法と判断されるおそれがある。

【テリトリー制】

テリトリー制(販売地域・顧客制限)とは、上流の会社(製造業者など)が下流の会社(卸売業者や

小売業者)に対しその販売地域や販売顧客を限定する垂直的制限行為である。

Page 116: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 115 -

米国ではテリトリー制を含むメーカーの流通戦略については規制が緩やかであるのに対し、加盟

国間の障壁を取り l除いて単一市場を目指すEUでは、メーカーと販売店間における非価格的な

ブランド内競争制限についても積極的に規制し,その規定も細かい。

・EU

EC 条約 81 条の規制対象であり、垂直的契約規則においてハードコア制限に指定されており違

法である。

但し、一括適用免除規則により、供給者の市場シェアが 30%未満の場合、かつ、販売店に排他

的販売権を付与したテリトリーや顧客がある場合、それらに対する他の販売店の能動的販売

(DM 送付、訪問、広告、店舗設置)を制限することができる。また、供給者自身による排他的販

売権についても同様となっている。

・米国

シャーマン法 1条で規制される垂直的制限行為となる。

消費者への充分なサービスなど、合理的目的・範囲でのテリトリー制であれば違法性が低いと考

えられる。たとえば,自動車のようにアフターサービスが適切にできるよう販売・サーピス拠点を

一定地域内に限定することは合理性があると判断される。

【排他条件付取引】

排他条件付取引とは、メーカーが販売店に対して他の競争事業者の商品を取り扱わないことを

条件に卸売する垂直的な競争制限行為。

・EU

垂直的関係にある売手と買手の間の競争制限行為として EC 条約 81 条により規制を受ける。

一方、市場支配的地位にある者による単独の排他行為と認められる場合は EC条約82条が適

用される。垂直的契約規則において、供給者から購入者に対して一定期間以上競争品の取扱

禁止義務を課すことは免除対象外制限に指定されており違法である。

実務上は次の 2点について注意が必要。

(ア) 販売店に対する競争品取扱禁止は 5年以内(垂直的契約規則 l条 b,5条 a)

(イ)販売店に対する契約終了後の製造販売の制限は 1年以内(垂直的契約規則 5条 b)

また, EUでは販売店に対するリベートを手段とした排他取引を積極的に規制している。

・米国

排他条件付取引はシャーマン法 1条とクレイトン法 3条の対象である。しかし近年は,市場支配

力を有しない事業者については問題とされる事例は少なく、市場支配力を有する事業者につい

ては排他的行為としてシャーマン法 2条違反に問われる場合が多い。

【抱き合わせ販売】

売手がある製品(抱き合わせる製品=tying product)を販売する際に、買手に対し別の製品

(抱き合わされる製品=tied product)を購入することを条件とする垂直的制限行為である。

Page 117: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 116 -

・EU

抱き合わせ販売は EC条約 81条の規制対象であるが、供給者のシェアが tying product、tied

productのいずれにおいても 30%以下であれば、垂直的契約規則により適用免除される。これを

超える場合の判断基準については垂直制限ガイドライン等にも指針が示されている。

一方、欧州委員会が規制してきた抱き合わせ事件の大半は、 EC 条約 82 条に基づくものであ

り、EU では市場支配的地位にある事業者による抱き合わせは違法と判断される可能性が高

い。

・米国

抱き合わせ販売は垂直的関係における競争制限行為として、シャーマン法 1条およびクレイトン

法 3条が適用されこれまでの判例上、次の 3要件に該当する場合は違法と判断されてきた。

① 2つの独立した別個の商品が存在し、 tying productを購入する場合、 tied product を

購入することが義務付けられていること

② tying product市場において、売手が tied productの購入を強制できるほどの市場支配力を

有すること

③ tied product 市場において実質的で、ないとはいえない(not insubstantial)量の取引が影響

を受けること

抱き合わせは対象商品がそれぞれ独立していることが前提であるが、tied product が tying

product と密接な補完関係にある場合(たとえば,自動車にスぺアタイヤを搭載する場合)や、技

術的な理由などからある商品にとって別の商品が必要不可欠である場合(たとえば組立てキット

と専用工具)には、抱き合わせることの合理性が高いため違法ではない。

【略奪的価格】

低価格は消費者の利益になるものであるが、競争事業者を市場から排除しその後、独占により

高価格を維持することを目的としている場合は.略奪的価格として規制される。どの程度の低価

格が略奪的価格と認定されるかの点については、欧米ともに販売価格がコスト割れしていること

が要件となっている。

・EU

略奪的価格は,市場支配的地位を濫用した排除行為として EC条約 82条で規制される。

米国同様,平均変動コスト(変動費)を下回る価格は略奪価格とするほか、平均変動コストを上

回っていても、平均総コスト(変動費+固定費)以下の価格であれば状況を総合的に判断して競

争事業者を市場から排除する意図が認められる場合、違法とされる(判例:アクゾー事件)。

コストのみならず排他意図をも重視しており、また埋め合わせテスト(市場支配力を有する事業

者が、市場から競争事業者を排除した後に価格を引き上げて損失を埋め合わせる可能性があ

ること)は要件としておらず、米国よりも違法性の判断の裁量は広い。

・米国

米国では,略奪的価格は独占化を企図する手段の 1 つとしてシャーマン法 2条で規制される。

Page 118: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 117 -

そのため①販売価格が平均変動コストを下回るという要件に加え、②埋め合わせテストが略奪

的価格の要件となっている。

【価格差別】

価格差別とは,メーカーなどが地域や買主によって異なる価格を設定することであるが、本来そ

れ自体は正当な行為である。ただし.その行為が競争事業者を不当に排除するものであったり、

購入者間の競争を実質的に阻害する場合は規制の対象となる。

・EU

不当な価格差別をすることは EC 条約 82 条の支配的地位の監用行為とされることが多い。EU

加盟国間で異なる価格を設定することは、ボリュームデイスカウントなどの正当な理由がある場

合を除き、 EU市場統合の目的に反するものとみなされる可能性が高い。

・米国

ロビンソン・パットマン法によって修正されたクレイトン法 2 条によって価格差別が規制されてい

る。ロビンソン・パットマン法は大規模小売店との競争に直面した中小小売店の声を反映して

1936年に立法されたものであり、仕入価格において大規模小売店に劣る中小小売店を保護す

る色合いが強い。シャーマン法 2条と異なり市場支配的地位を有しない事業者も規制対象。

【単独の取引拒絶】

単独の取引拒絶(単独ボイコツト)とは、事業者が他の事業者に対して単独で取引を拒絶したり

商品や役務の数量や内容を制限することをいう。

各事業者の独自の判断で取引先を選択することは事業活動の一環であり、基本的には違法性

はないが、市場支配力を持つ事業者が不合理に取引を拒絶すると違法性が高まる。

また,取引拒絶の目的が再販売価格維持や抱き合わせ販売など別の競争制限行為を強制す

ることにある場合には、当該競争制限行為として判断される。

・EU

単独ボイコットは市場支配的地位を有する事業者による監用行為として、EC 条約 82 条に基

づき規制される。市場支配的地位にある事業者に取引の自由を認めず供給義務を課すという

わけではないものの①取引拒絶の対象が新規参入事業者にとって不可欠であること②取引拒

絶されることにより新規参入事業者の競争活動が不可能になること③取引拒絶に客観的な合

理性がないこと、という要件が総合的に判断される。

・米国

市場支配力を有する者が、不当な目的を達成する手段として、特定の事業者との取引を拒

否したり解除したりする場合には、シャーマン法 2条の独占化の企図によって規制される。

Page 119: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 118 -

0.00

1.00

2.00

3.00

4.00

5.00

6.00

2000 2005 2010 2014

LPG NaphthaMotor gasoline Jet and keroseneGasoil Residual fuel oilOther products

百万b/d

Ⅳ.我が国の石油産業と欧米との比較

1.石油製品市場の現状と推移

(1)需給動向

①我が国における石油製品需要動向

我が国の GDP は 2000 年から 2011 年にかけてまでは 8%近く減少しており、年率平均で

0.7%程度の減少傾向にある。2012 年以降の経済動向は東日本大震災の反動やアベノミク

スなどの影響により、改善傾向にある。

石油製品需要は、バブル崩壊以降の経済停滞や輸送用車両の高効率化などにより 1999

年をピークに減少傾向にある。2000 年に 548 万 b/d あった製品需要は 2014 年に 435 万

b/d と 103 万 b/d(20.6%)減少しているが、これは他の先進諸国よりも速いスピードで石油製

品離れが進んでいる状況にある。

図表 55 我が国における石油製品需要

出所:IEA

石油製品別に見ても、需要は全油種とも減少傾向にある。SS で取り扱う製品ではガソリン

需要は2005年の105万 b/dをピークに 2014年は92万 b/dと13万 b/d(12.4%)の減少、

灯油は 2005年の 74万 b/dを最後に 2014年には 52万 b/dと22万 b/d(29.7%)の減少、

軽油(IEA 統計上は軽油+A 重油)は 1996 年の 129 万 b/d をピークに 81 万 b/d と 48 万

b/d(37%)の減少と需要の減少が著しい。

Page 120: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 119 -

LPG11%

Naphtha

14%

Motor gasolin

e

18%

Jet and kerose

ne

13%

Gasoil23%

Residual fuel

oil

12%

Other produc

ts

9%LPG12%

Naphtha

17%

Motor gasolin

e

21%Jet and kerose

ne

12%

Gasoil19%

Residual fuel

oil

9%

Other produc

ts

10%

日本の需要構造の特徴として、それぞれの石油製品需要が横並びの状態にあり、大きく突

出した油種が存在しないことが挙げられる。米国では需要の 47%をガソリンが占め、欧州では

需要の 44%を軽油が占めるなど偏った需要構成になっているが、我が国で最もシェアを占め

る石油製品はガソリンの 21%程度に留まっている。

留分別シェアでは 2000年時点では、軽質留分 43%、中間留分 36%、重質留分 21%の水

準だったが、2014 年には軽質留分 50%、中間留分 31%、重質留分 19%と、需要はより軽質

な留分への比重を高めており、国内製油所 2次装置の高度化が急がれる状況にある。

図表 56 我が国の石油製品シェア(%)

2000年 2014年

出所:IEA

②我が国における石油製品供給動向

我が国では「特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)」が廃止された 1996年以降、輸入

製品への対応に迫られ、精製各社はコスト削減の観点から小規模な製油所を中心に精製設

備の統廃合を実施し、2000年から 2005年の間に 500千 b/d近い精製能力の削減が行わ

れた。しかしながら 2000 年以降、石油製品需要が減少するなかで各社単体での精製能力

削減にも限りがあり、2009年以降製油所の稼働率は 80%を下回る水準まで落ち込んだ。

2010年 7月には精製事業者に対し、コ―カーや水素化分解装置などの 2次装置の増設

か常圧蒸留塔の削減を実施することを義務付ける「エネルギー供給構造高度化法」が制定さ

れた。精製事業者は物流提携などにより精製能力の削減等、需要減少への対応を進めてき

たが、これらの施策にも限りがあり、2015 年には出光と昭和シェル石油、および JX エネルギ

ーと東燃ゼネラル石油、それぞれが事業統合の基本合意契約を取り交わすまでに至った。

Page 121: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 120 -

-

1000

2000

3000

4000

5000

6000

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

製油所数 精製能力(b/d) 能力シェア 精製能力/ヵ所

JXエネルギー 7 1,425,700 37.4% 203,671

東燃ゼネラル 4 698,000 18.3% 174,500

小計 11 2,123,700 55.6% 193,064

出光興産 3 535,000 14.0% 178,333

昭和シェル 4 588,000 15.4% 147,000

小計 7 1,123,000 29.4% 160,429

コスモ石油 3 452,000 11.8% 150,667

太陽石油 1 118,000 3.1% 118,000

合計 22 3,816,700 100.0% 173,486

図表 57 我が国における製油所の精製能力

出所:BP統計

図表 58 精製事業者の構成

出所:石油連盟

③我が国における石油製品需給概況

米国ではガソリン需要の製品別シェアが 47%、欧州では軽油の製品別シェアが 44%の水準

にあり、製油所の得率調整では対応しきれない余剰分、不足分について輸出入で調整するこ

とが大前提となるが、日本では製油所の精製能力と製品別需要間の乖離が少なく、過去原

Page 122: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 121 -

1973 1980 1990 2000 2010 2012 2013 2014生産 460,856 584,973 733,048 974,908 1,000,308 909,593 933,481 915,687輸入 209 0 36,449 27,936 18,562 49,428 28,424 25,726輸出 1,512 0 814 5,978 37,635 19,701 29,448 53,382

輸出-輸入 1,303 0 ▲ 35,635 ▲ 21,958 19,073 ▲ 29,727 1,023 27,656需要 459,553 584,973 768,682 996,866 981,235 939,320 932,458 888,031生産 619,711 731,162 1,034,467 1,223,563 1,021,325 927,513 992,425 933,399輸入 48,378 26,059 114,537 48,337 10,689 11,650 5,375 11,670輸出 634 2,105 22,237 34,663 202,912 122,487 183,434 155,659

輸出-輸入 ▲ 47,744 ▲ 23,954 ▲ 92,300 ▲ 13,673 192,223 110,837 178,059 143,988需要 667,455 755,116 1,126,767 1,237,236 829,102 816,676 814,366 789,411生産 4,489,299 4,052,369 3,573,138 4,171,844 3,596,701 3,401,608 3,460,467 3,272,805輸入 537,283 573,608 1,163,410 1,030,366 874,203 1,021,119 918,504 895,102輸出 61,141 9,833 73,882 88,440 345,300 256,153 332,680 309,621

輸出-輸入 ▲ 476,142 ▲ 563,775 ▲ 1,089,528 ▲ 941,926 ▲ 528,904 ▲ 764,966 ▲ 585,824 ▲ 585,481需要 4,965,442 4,616,144 4,662,666 5,113,770 4,125,605 4,166,574 4,046,292 3,858,286

日本

ガソリン

軽油

製品合計

油を海外から輸入し国内で精製するという消費地精製方式を基本としてきたこともあって、地

産地消に近い需給構造となっている。

製品合計では、純輸入数量が需要の 10%以上で推移しているが、この主な要因はナフサ

輸入である。ナフサは主に石油化学製品の原料として利用されるが、その調達は石化産業が

独自で輸入しており、また、精製事業者はナフサよりも収益性の高いガソリンの製造に注力し

ていることから、石油製品は連産品といった特徴があるもののナフサが製油所の稼働率などに

影響を与える可能性は低い。

2000 年までガソリン、軽油は純輸入基調にあり、需要に不足する数量を輸入によって調達

するといった構図であった。その後需要の減少とともに余剰数量は増え、2014 年にはガソリン

の輸出量は生産量の 5%、軽油は 15%の水準にまで増加している。

図表 59 我が国の石油製品輸出入動向(b/d)

出所:IEA(品転、バンカー油等は除外)

④日本におけるマージン動向

図表 60は石油情報センター調べの小売価格と RIM社が査定している陸上 RIM価格(4場

所平均)を卸価格として作成した。本項では元売会社のブランド料は加味していない。

精製マージンは元売各社の収益が悪化した 2009年度には 9円/Lの水準を下回っている。

その後収益は回復傾向にあり、2010 年度から 2014 年度にかけて 12~13 円/L の水準を

推移している。需要が減少するなかで過剰な精製能力の削減も睨んだ「エネルギー供給構

造高度化法」が 2010 年に施行され、元売各社が精製能力の削減に取り組んだことも精製マ

ージンが回復する一因になったと考えられる。

流通マージンは 2009年度に 15円/L台となったものの、その後は 17~18円/Lの水準と

なっており、2009年度は精製、流通ともにマージンが圧縮された形となっている。石油情報セ

ンター調査の小売価格は、配送経費の負担が大きい離島や競争環境が穏やかな過疎地に

おける販売価格なども含め単純平均されていることから、市況陥没地区から見れば割高な価

格となる。2011年から 2015 年にかけて販売数量の減少、マージンを確保できないなどの要

因により 14%近い SS が減少している。日本では 10㎞四方内の SSは約 9 ヵ所あるが、欧米

ではイギリスに約 4 ヵ所、フランス約 2 ヵ所、ドイツ 4 ヵ所、米国 2 ヵ所の水準にあることから、

Page 123: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 122 -

このマージン環境を維持したとしても SSの減少は引き続き続くと見られる。

図表 60 日本における精製・流通マージン

0.00

5.00

10.00

15.00

20.00

25.00

30.00

35.00

40.00

45.00

50.00

精製マージン

流通マージン

(¥/㍑)

米国精製マージン

米国流通マージン

日米マージン比較

Page 124: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 123 -

(2)日本市場の流通概況

日本では、石油製品は内航船やタンク車(鉄道)によって全国各地の油槽所に転送し、地

域需要を支えている。油槽所のタンク数は 3,351 基、貯蔵可能量は 71,625 千 bbl と日本の

石油製品需要のおよそ 19 日分を貯蔵できるだけの能力を有している。製品別に見るとガソリ

ンのタンク数は 881基、貯蔵可能量は 10,032千 bbl と需要のおよそ 11日分、軽油のタンク

数は 663基、貯蔵可能量は 8,751千 bbl とこちらも需要の 11日分となる。このデータは資源

エネルギー庁の「石油設備調査」によるもので、石油備蓄義務者および備蓄義務者が使用権

を有する対象設備を所有する事業者 220 社を調査対象としており、これ以外に備蓄義務の

ない特約店等の保有によるタンクがある。

油槽所の所有・運営は、精製事業者、商社、輸入業者、日本 Vopakのようなタンク事業者、

全農および SS事業者など多岐に渉っている。苫小牧埠頭は港湾関係事業を基盤にタンク事

業に進出し、現在苫小牧と石狩に油槽所を有する独立系タンク事業者となるが、その貯蔵能

力は 900千 bbl と北海道にある油槽所貯蔵能力の 25%を占めており、独立系石油卸売事業

者の拠点となっている。

日本では元売ブランドを掲げるSS事業者は元売会社の製油所もしくは油槽所から製品の供

給を受けSSで販売する。自系列の製油所や油槽所が無いエリアでは一般的に元売会社間で

バーター契約を行っており、その契約の枠内で他ブランドの製油所から供給を受けることとな

る。バーター取引とは複数の供給者がその供給設備が無いエリアにおいて、同量の石油製品

を相互に融通しあう取引である。独立系SS事業者は独立系の卸売事業者から製品の供給を

受けることになる。卸売事業を行っている代表的な事業者は商社系列の燃料販売会社であり、

所有する油槽所の貯蔵能力は国内の30%を占めておりPB事業者への主要な供給源になって

いると考えられる。

図表 61はブランド別 SS数となるが、元売系列が全体の 75%を占めている。そのうち、元売

会社と直接取引を行っている所謂 2 者店の割合は 53%、2 者店を介して石油製品の供給を

受ける 3 者店は 47%となっている。その一方で PB 系列の SS 数は 8,235 ヵ所にのぼり、その

内訳は JA系列 SSが 1/3 を占め商社系列は 1割を超えている。商社系特約店は元売ブラ

ンドの SS も有しており、独自ブランドと合わせると 3,758 ヵ所にものぼり全体の 11%のシェアと

なる。日本ではハイパー系事業者の進出は限定的だが、地域の小売市況形成に影響を与え

ている。ハイパー系事業者として石油産業関係者が注目する事業者はペトラス、ジョイフル本

田、コストコなどが挙げられる。ペトラスはイオンと三菱商事エネルギーが出資するメガペトロが

運営する SSのブランドで、全国でおよそ 60 ヵ所の SSを運営している。ジョイフル本田は関東

近郊を拠点とするホームセンターに併設された SSで 15ヵ所を運営、コストコは米国の流通大

手となるが、日本では山形県や愛知県等において 5 ヵ所の SS 事業を展開している。(いずれ

も 2016年 3月現在)

Page 125: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 124 -

図表 61 我が国におけるブランド別 SS数

出所:月刊ガソリンスタンド

2.石油市場の主なプレーヤーとその変遷

(1)精製事業者

日本における精製事業者は一般的に石油元売と言われ、原油の調達、精製、物流および

販売までの機能を有している。

精製事業は、国内の石油製品需要が減少傾向にあるなかで需要に見合った供給構造を

構築することが求められている。元売各社は需要が減少していくなかで製油所の稼働率を下

げるなどにより系列内需要に見合った生産を行うか、製油所の稼働率はそのままに系列内需

要では吸収できない余剰品を輸出かいわゆる業転玉として系列外に販売するなどといった対

応を実施してきたが、国内需要の落ち込みが著しく収益悪化が避けられない状況となった。こ

のような中、資源エネルギー庁により「エネルギー供給構造高度化法」が施行された。2014

年 3 月には JX エネルギーが室蘭製油所を廃止、出光興産が徳山製油所を廃止するなどの

対応を行ったが、1 社単位での事業再編で合理化・収益改善を図るには限りがあり、コスモ石

ブランド 系列 2011 2012 2013 2014 2015

JXエネルギー 12,149 11,730 11,283 11,017 10,783

EMGマーケティング 3,979 3,777 3,475 3,379 3,481

MOCマーケティング※ 280 278 270 258 0

出光 4,148 3,997 3,861 3,786 3,725

昭和シェル 3,922 3,760 3,555 3,442 3,317

コスモ 3,609 3,498 3,325 3,228 3,133

キグナス 540 525 511 494 490

太陽 374 357 349 344 346

元売小計 29,001 27,922 26,629 25,948 25,275

カーエネクス 417 438 442 437 415

MC 197 194 196 189 185

丸紅 335 356 347 345 382

JA 2,831 2,734 2,612 2,584 2,529

その他PB他 5,996 6,099 6,123 5,203 4,724

PB計 9,776 9,821 9,720 8,758 8,235

合計 38,777 37,743 36,349 34,706 33,510

※2014/7MOCマーケティングはEMGマーケティングと統合

元売

PB

Page 126: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 125 -

(単位:千B/D)

地域JX日鉱日石エネルギー

出光興産東燃

ゼネラル石油昭和シェル

石油コスモ石油

北海道 苫小牧

東北 仙台

関東 鹿島・根岸 千葉 川崎、極東(千葉) 東亜(京浜) 千葉

東海 愛知 昭和四日市(四日市) 四日市

関西 大阪 和歌山・堺 堺

中国 水島・麻里布 西部(山口)

四国

九州 大分

合計/能力7製油所1425.7

3製油所555

4製油所708

3製油所445

3製油所452

(注)上記20製油所の設備能力は3,585.7千B/D。日本全体の製油所は、上記以外に富士石油/袖ヶ浦製油所143千B/D、太陽石油/四国事業所118千B/D、南西石油/西原製油所100千B/Dがあり、総合計は23製油所3,946.7千B/Dとなる。

出光興産 千葉製油所の能力を2万B/D削減 2015年4月~

昭和シェル石油 昭和四日市石油とコスモ石油四日市製油所との連携

四日市製油所にて昭和シェル石油と連携、トッパ―1基を廃止

千葉製油所にて東燃ゼネラル石油と連携、トッパ―1基を廃止

千葉製油所にてコスモ石油と連携

川崎製油所の能力を1万B/D削減 2015年4月~

コスモ石油

2017年3月末~

東燃ゼネラル石油

共同事業会社の設備一元化に合わせ

油と昭和シェル石油は四日市においてそれぞれが保有する製油所の事業提携、東燃ゼネラ

ルとコスモ石油は千葉で運営するそれぞれの製油所の共同事業化を目的に京葉精製共同

事業を設立などの動きが見られ、現状では出光興産と昭和シェル石油、および JX エネルギ

ーと東燃ゼネラルグループそれぞれが経営統合について検討を行うまでに至っている。この

経営統合が実現すれば、製油所統廃合の動きが加速され国内の需給バランスはさらに改善

し石油元売の収益が改善に向かうと期待されている。

図表 62 高度化法第一次告示後の精製体制

図表 63 高度化法第二次告示に向けた対応

物流段階においては石油製品のバーター取引や油槽所の共同運営等により、物流コストの

低減を図っている。前述の JX エネルギー室蘭製油所および出光興産徳山製油所廃止の一

方で、この撤退したエリアに石油製品を供給するために約 40千 b/dの石油製品相互供給取

引を行っている。。また東燃ゼネラルと昭和シェル石油も油槽所の共同運営、バーター取引

などで協力関係にある。その他にも東西オイルターミナルは JX エネルギーとコスモ石油が折

半出資によりしたタンク事業者であり、JXやコスモが所有する油槽所の運営を東西オイルター

ミナルに委託する形態などが見られる。

国内における自動車用燃料販売は、主に元売各社のブランドを掲げた SS を介して末端ユ

ーザーへ供給している。系列 SS の運営は元売各社と特約店契約や商標使用許諾契約を締

Page 127: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 126 -

結した特約店、代理店と呼ばれる事業者もしくは特約店を介してブランド品の供給を受ける販

売店となるが、元売が出資している販売子会社、複数の元売と契約を締結している商社や大

規模特約店から1SS のみを運営する小規模店に至るまで多岐にわたる。元売各社は、系列

店に対し自社又は自社の系列特約店を通じて供給を受けた自社のガソリンのみを販売するこ

とを義務付けるとともに,商品の誤認又は他社のガソリンと混同の生じるおそれのある行為、自

社の商標等を用いて他社の石油製品を混合したガソリン又は他社のガソリンを販売する行為、

商標等に関する元売の権利又は信用を侵害する行為等を行うことを禁じている。

(2)燃料商社・輸入業者

商社・輸入業者は、石油製品の調達、物流、販売といった石油元売と同等の機能を有して

おり、傘下 SSに POSシステムや提携カードなどの販促支援を行う商社も一部ある。

商社は基本的に複数のブランドを掲げ、そのブランドごとに石油製品の調達方法は異なって

くる。例えば伊藤忠エネクスの傘下 SSには ENEOSや昭和シェルなどすべての元売ブランドが

あるが、個々の SS は掲げる元売ブランドから製品の供給を受ける系列取引となる。その他に

一部商社は独自のプライベートブラントを掲げており、その SS に対する供給は元売から調達し

たスポット製品や輸入品となる。商社はスポット取引を行うために自社の油槽所を所有してお

り、国内製品需要の約 5日分にあたる 19,000千 bbl(大手 5社計)の貯蔵能力を有している

(月刊ガソリンスタンド調べ)。

商社系列 SS は、一般的に商社と販売店契約を結びブランドを掲げ運営しているが、商社

が出資している販売子会社、元売ブランドを掲げる SS 事業者、商社ブランドを掲げる販売事

業者などに分類される。その一方で商社系列に属さない PBSS や卸売事業者と商社間の取

引は、スポット取引となる。石油製品の供給責任は元売ブランドを掲げている SS はそれぞれ

の元売が負い、商社 PBブランドは商社、商社とスポット取引を行っている PB事業者は自らの

責任で製品を調達する必要がある。

(3)タンク事業者

タンク事業者は一般的にタンクの通油量に応じた課金やタンク容量をリースすることによっ

て収益を確保している。日本 Vopakはオランダのロッテルダムに本社を構える世界的なタンク

事業者 Royal Vopakの子会社であり、日本国内における貯蔵能力は約 1,300千 bblである。

その他にも苫小牧埠頭が約 3,100千 bbl、大東タンクターミナルは約 2,100千 bbl、ホームペ

ージで「全国シェア 35%を誇る大規模なターミナル事業を管理・運営」と謳っている辰巳商会

などがあり、タンク事業者が所有するタンクの貯蔵可能量の正確な実態の把握はできていな

い。

タンク事業者に関わらず、輸入業者、石油流通事業者、特約店などもタンクを保有し石油

製品の販売を行っている。中川物産は協力会社も含め約 1,200 千 bbl(同社 HP より)、全農

は約 1,500 千 bbl(月刊ガソリンスタンド調べ)、その他にもカメイ、モダ石油など油槽所を保有

する特約店は多数ある。

Page 128: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 127 -

3.価格形成メカニズム

(1)取引形態

欧米の ICE、NYMEX に該当する日本の先物市場は TOCOM(東京商品取引所)である。

TOCOM市場で ICEの Gasoil、NYMEXの RBOBガソリンと同様にバージ渡しとなる石油製品の

先物取引は TOCOM 東京のバージ渡しである。この取引は最小の取引単位が 50KL、受け渡

し単位が100KLで東京湾岸のTOCOMが指定した製油所もしくは油槽所での受け渡しが可能

である。2015年の出来高はガソリンが約 1,700千枚(約 1,450千 b/d)で需要の 1.6倍と欧

米の約 1/10の取引規模に過ぎず、軽油に至っては 200枚(172b/d)の水準に留まっている。

なお、TOCOMが公表している「地域別受け渡し件数及び受け渡し数量内訳」にはローリーによ

る受け渡し実績も含まれており、一般的に認識されているバージ取引といった概念と異なって

いる。なお、TOCOM東京ガソリンでは受け渡しについて以下のように定めている。

ⅰ受渡場所の選択権:渡方に帰属する

ⅱ受渡方法:内航船による受渡

ⅲ受渡日の選択権:原則として、受方に帰属する

ⅳ受渡当事者の決定:抽選により決定する。但し、納会日から抽選で決定するまでの間

に、合意により受渡当事者の組合せが成立した場合には、この限りではない

ⅴ分割受渡:受渡に当たっては、分割して受渡を行うことができる。

※NYMEX RBOBガソリン受渡条件は 32ページ参照

この他にも受渡条件調整制度や ADP 制度によって受渡の柔軟性を確保している。受渡条

件調整制度では同一タンク内における名義変更、バージ船、貨車、ローリーなどの輸送形態

などについて定めており当事者間の合意を持って上記から選んだ受渡を行うことができる。

ADP制度とは、納会後において、受渡当事者間でTOCOMが定めた受渡条件とは異なる方法

で受渡決済を行う旨の合意が成立した場合、その旨を TOCOM に承認を得ることによって、当

該受渡が完了したものと扱う制度となる。

日本の先物取引における特徴の一つとしてローリー渡しを取引対象とする TOCOM 中京が

挙げられる。2015 年のガソリン出来高は 15 千枚(2.6 千 b/d)TOCOM 東京の 1/100 の水

準となる。ローリーによる受け渡しといった制度設計のためか出来高に対する現物の受け渡し

比率は 44%(TOCOM東京 0.5%)と高水準にある。(2015年全限月平均、受渡÷出来高:東

京=7.4千b/d÷1,450千b/d、中京=1.1千b/d÷2.6千b/d)

日本の価格情報会社は RIM 情報開発(RIM)であり、製油所や油槽所からバージ船に受け

渡す大口の取引とローリーで受け渡す取引の価格査定をそれぞれ行っており、前者はジャパ

ン石油製品(通称:海上 RIM)、後者はローリーラック(通称:陸上 RIM)と称されている。海上

Page 129: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 128 -

RIMは 1ロット 200KLを基準とする取引で調査ポイントは東京湾と西日本(和歌山を含む大阪

湾岸との阪神および瀬戸内以西の大分を含む大西)の 2 地域となる。取引単位や受け渡し

方法から海外における PlattsやArgusと同様の取引形態を評価対象としている。価格評価の

方法は基本的には成約した取引について、数量を勘案した加重平均価格と件数による単純

平均価格の平均を取るといった計算式で求められる(RIM 社「ジャパン石油製品」アセスメント

メソドロジーによる)。陸上 RIMはローリーによる受け渡しが評価対象となるが、その最低ロットは

10KL で評価ポイントは北海道から福岡まで 12 ヵ所である。

陸上 RIM 市場に携わる主要な参加者は、商社、卸、販売業者、小売業者となる(2016 年

1月時点リムアセスメントメソドロジーによる)。RIM情報開発は 2015年から「証券監督者国際

機構(IOSCO)により定められた石油価格報告機関(PRAs)に関する原則の遵守」に取り組んで

おり、メソドロジーの見直し作業なども行われる。陸上 RIM のメソドロジーを従前のものと比較す

ると、変更点として元売・石油会社の取引を評価対象から外した点が挙げられるが、これは実

際に行っていた価格査定にメソドロジーを合わせたものだと考えられる。海外との比較において

は類似した取引形態を評価している指標は米国の OPIS となるが、陸上 RIM と異なる点として

OPISは石油会社のローリー渡し価格も評価対象としている点が挙げられる。

(2)価格指標の利用概況

日本市場の特徴としてTOCOMやRIMの価格指標の利用率が低い事が挙げられる。欧米で

は時間差などによる価格変動リスクを回避するために先物市場およびスポット市場を活用す

ることが一般的であると言われており先物市場では実需の20倍近い取引が行われているが、

日本では TOCOM 東京ガソリンでも 1.5 倍程度の水準に留まっている(2015 年出来高合計

84 百万 KL、ガソリン国内販売量合計 53 百万 KL)。また、TOCOM 中京ガソリンはその出来

高の 4割で製品の受け渡しが行われており、海外の先物市場の実態と相違が見られる。

一般の SS 事業者が取引に参加できるローリー渡しのスポット市場においても、市場参加者

は商社などの供給サイドと PB事業者および他社買いと言われる系列ブランド以外の製品を購

入する一部の SS事業者に限られる。スポット価格については海上 RIMおよび陸上 RIM といっ

た指標はあるもののそれぞれの利用者および評価対象が限定的であり、精製事業者と SS 事

業者双方が納得するような価格指標が存在できるような取引環境にはない。海上RIMの取引

事業者は主に精製事業者およびタンクを有する商社系や輸入事業者、陸上 RIM は同じくタン

クを有する商社系および SS事業者となる。その結果、精製事業者は仕切価格の週次改定に

おいて最も指標性の高い原油スポット価格をもとにしたコストを積み上げた価格を仕切価格と

して打ち出し、SS事業者は陸上RIM価格での卸売を主張し、双方の主張の差異を場合によっ

ては事後調整といった形で折り合いをつけているように見受けられる。

4.石油製品価格形成に影響を与える諸要因

(1)原油価格

石油製品価格の構成要素は原油価格+精製コスト+マージンとなりその中で原油価格が主

Page 130: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 129 -

要な要素となっている。図表 68の原油価格/製品価格推移表に見られるように原油価格と

製品価格は連動しており、2011年度平均と 2015年度上期平均との比較で見ると原油価格

16.2円/Lの下落に対しガソリンは 14.2円/Lの下落と約 88%の転嫁率となる。同様に軽油で

は 17.6円/L と約 109%の転嫁となっており油種毎でばらつきがあるものの相関関係は大きい

と言える。

また、下記の「石油元売各社の仕切価格方式の変遷」に示すように2014年4月以降石油

元売各社は仕切価格方式を従来のスポット価格(RIM陸上)連動から原油価格を基準とした

方式に変更した所が多く、石油元売仕切価格では原油価格をより反映させようとしてきてい

る。

図表 64 石油元売各社の仕切価格方式の変遷

(2)統計情報

①統計の種類

日本の石油関係の統計は、基本的には経済産業省が公表している。「生産動態統計」と

「資源・エネルギー統計」により、石油需給統計(原油の輸入・処理・製品の輸出入・油種別

の在庫量)が月単位で収集され、翌月の末に公表されている。また、原油・石油製品の輸出

入に関しては、財務省貿易統計が旬間と月間で原油と石油製品の輸出入の数量と価格を公

表している。

週次データについては、石油連盟が週報で製油所での製品生産、輸出、在庫等を集計し

ている。毎週月曜日にデータ収集し、有料会員には火曜日の夕刻、一般には水曜日の昼に

結果を公表している。また、経済産業省の委託を受けた石油情報センターが、毎週月曜日に

SS売りのガソリン、灯油、軽油の小売価格を調査し、水曜日に公表している。

実施時期 特徴 実施の契機ガソリン高/中間留分安 1974年3月~1996年3月 産業政策上、「ガソリン高、中間留分安」の価格 第一次石油危機

体系を設定して、国内産業の競争力を高めた。

月決め 1990年9月~2008年9月 ①月決め仕切価格方式 湾岸危機②行政指導による価格改定方式  ・原油FOB価格と為替レートを基に、前月対   比コスト変化を確定  ・コスト変化の対象は、原油関連コストのみ、  人件費、運賃等の固定費、変動費は対象外 ・原油調達コストの公表による価格の透明化  により消費者、需要家の信頼感が得られた  事から、元売会社はその後も自主的に継続  、市場に定着

国際価格ベース 1996年4月~2008年9月 ①月決め仕切価格方式の改定 特石法廃止、輸入自由化

②特石法廃止に伴い、国際価格体系に移行する為、

 ガソリン、灯油、軽油を税抜きで同一価格とす る新価格体系に変更

週決め(RIMベース) 2008年10月~2014年3月 ①新価格体系、透明性、公平性の確保 08年以降の原油価格急落時

②週決め、RIM価格連動、油種別、先決め

週決め(原油価格ベース) 2014年4月以降 ①原油価格、国内スポット価格(RIM)、海外スポ 2013年度の元売会社の  ット価格、国内小売市況等を総合的に判断して 赤字化  各元売各社が基準価格を決定。②週決め③先決めを原則とするが元売りにより先行指標の 下方修正もある模様

Page 131: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 130 -

経済産業省が公表している石油需給統計は月次統計のみであり、国内市場での価格形成

に影響を与えることはあまりない。石連週報も、製品輸入業者のカバー率が低く、流通在庫の

捕捉率が低いことから、国内価格に大きな影響を与えているとは言い難い。また石油情報セ

ンターの価格も、一部で消費者との掛売り決済に利用されている例があるが、国内の卸価格

形成にはほとんど影響を与えていない。

②統計情報(ガソリン在庫)と TOCOM との相関関係

図表 65は石油連盟が発表するガソリン在庫と TOCOMガソリンの限月別価格差を比較した

ものとなるが、総じて関連性は見られない。特に2015年6月から在庫が増加傾向にあるなか

で期近物が期先物よりも高くなるバックワーデーションの傾向にある。つまり石油製品の供給が

過剰な傾向を示しているにもかかわらず、その製品価値が上がっていることになり一般的な経

済原則に反した動向になっている。相関係数を求めてもほとんど相関性が無い。

図表 65 日本ガソリン在庫と TOCOMガソリンの限月別価格差の比較

図表 66 日本ガソリン在庫と TOCOMガソリンの限月別価格差の相関性

2限月-1限月 3限月-1限月 4限月-1限月 5限月-1限月 6限月-1限月

ガソリン在庫 0.3281 0.0627 ▲0.0600 ▲0.1460 ▲0.2047

米国の RBOB ガソリンとの比較ではその結果に差異が発生したが、この違いは市場参加者

の思惑の違いによるものだと考えられる。米国では石油製品の在庫保有期間に発生する時間

差による価格変動リスクのヘッジを目的に先物市場で取引をしているため、その保有期間に

該当する期近物取引が活発である。一方日本では当業者の参加割合が低く価格変動のヘッ

Page 132: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 131 -

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1限月 2限月 3限月 4限月 5限月 6限月

TOCOM 2015年

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

APR 16 MAY 16 JUN 16 JUL 16 AUG 16 SEP 16 OCT 16 NOV 16 DEC 16 JAN 17 FEB 17 MAR 17

NYMEXRBOBガソリン

ジニーズが少なく期近物の出来高は全取引の 7%程度で、5限月と最長の 6限月の取引でお

よそ 5割を占めている。

図表 67 TOCOM東京ガソリン、NYMEX RBOBガソリンの限月別 取組高

(3)価格転嫁タイムラグ及びシェア獲得競争等による影響

①価格転嫁タイムラグ

原油価格と製品価格とは基本的には連動しているが、上昇局面と下降局面に於いては価

格転嫁にタイムラグが見られる。図表 68にあるように、上昇局面にあった 2013年度は原油

が前年差 10.0円/L上昇に対しガソリンは 8.5円/L、軽油は 8.4円/Lの上昇に止まっており

ガソリンで 1.5円/L、軽油で 1.6円/Lのマージン減となっている。自家燃コスト上昇 0.4円/L

を加味すれば更に収益は悪化する。

一方、下降局面では 2014年度は原油で前年差、7.8円/Lの下落に対しガソリンは 4.2円

/L、軽油は 5.4円/Lの下落に止まっておりガソリンは 3.6円/L、軽油は 2.4円/Lのマージン

増となっている。当該期間では自家燃コストは 0.3円/Lの減少となり実質マージンはその分更

に収益良化となる。

上記のように 2012年度から 2014年度においては上昇局面も下降局面においてもタイム

ラグが発生している事が読み取れる。ただ 2015年度 4-12月に関しては前年との比較で原

油が前年差、19.4円/Lの下落に対しガソリンは 19.9円/L、軽油は 21.1円/Lの下落とタイ

ムラグが発生していない。特に軽油の下落が大きく、これは原油下落による自家燃コストの減

少(0.7円/L)を加味してもそれ以上の下落となっている。

②シェア獲得競争等による影響

原油価格以上に製品価格が下落したと考えられる要素としては元売り間の販売競争の激

化が挙げられる。2014年度からは前年度の大幅赤字を踏まえてスポット価格(RIM陸上)連

動から原油価格をベースとした仕切価格に変更しているが数量の伸び率で見ると元売りで対

応が分かれている。

図表 68にあるように、2014年度、ガソリンでは需要▲4.5%に対して出光、昭和シェルはそ

れぞれ▲3.5%、▲2.9%と需要を上回っている。一方、JX、コスモ、東燃は需要を下回っており

Page 133: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 132 -

それぞれ▲6.5%、▲5.5%、▲7.2%となっている。

同様に軽油では需要▲1.5%に対して出光、昭和シェルはそれぞれ+2.9%、+2.5%と需要を

大幅に上回っている。一方、JX、コスモ、東燃は需要を下回っておりそれぞれ▲7.1%、▲

5.6%、▲4.2%となっている。

2015年度は前年シェアを落とした元売りの若干の巻戻しがありガソリンでは出光、昭和シェ

ルはそれぞれ+0.2%、+0.1%に対し、JX+0.7%、東燃+2.1%と伸率が高い。コスモは▲0.3%と前

年に続いてのマイナスとなっている。軽油では出光、昭和シェルはそれぞれ▲1.0%、▲0.5%に

対し、JX+1.0%、コスモ+0.4%となっている。東燃は▲1.4%と前年に続いてのマイナスとなって

いる。

上記のように 2015年度は前年に新価格体系を導入したものの価格体系見直し内容の差

異によりシェアを落とした元売りがシェアを取り戻す過程で価格競争が激しくなったと推察され、

この事でタイムラグが発生せず原油価格下落以上に製品価格が下落した大きな要素と考え

られる。

図表 68 原油価格/製品価格推移、元売別販売数量前年比増減

*東燃、昭和シェルは 1-12月が対象

*2015年は東燃、昭和シェルは 1-12月、その他は 4-12月実績

(ガソリン) 単位:\/L2011 2012 2013 2014 2015 平均

ドバイFOB① 55.5 56.5 66.5 58.7 39.3 55.3RIM② 68.4 69.8 78.3 74.1 54.2 69.0

差異②-① 12.9 13.3 11.8 15.4 14.9 13.7自家燃コスト BASE 0.0 0.4 0.1 -0.6

自家燃補正後 12.9 13.3 11.3 15.3 15.5 13.7単位:%

平均JX -3.6 -0.8 -0.8 -6.5 0.7 -2.2

出光 -2.8 -2.2 -0.8 -3.5 0.2 -1.8コスモ -1.1 -4.0 0.9 -5.5 -0.3 -2.0東燃 -5.5 -1.4 -7.4 -7.2 2.1 -3.9

昭和シェル 4.5 -4.6 -1.2 -2.9 0.1 -0.8需要 -1.6 -1.8 -1.3 -4.5 1.5 -1.5

(軽油) 単位:\/L2011 2012 2013 2014 2015 平均

ドバイFOB① 55.5 56.5 66.5 58.7 39.3 55.3RIM② 68.5 69 77.4 72 50.9 67.6

差異②-① 13.0 12.5 10.9 13.3 11.6 12.3自家燃コスト BASE 0.0 0.4 0.1 -0.6

自家燃補正後 13.0 12.5 10.4 13.2 12.2 12.3単位:%

平均JX 1.5 3.9 4.3 -7.1 1 0.7

出光 -0.6 1.9 2.9 2.9 -1 1.2コスモ 3.4 -4.4 -0.4 -5.6 0.4 -1.3東燃 -6.7 -5.1 0.8 -4.2 -1.4 -3.3

昭和シェル 13.1 0.9 5.3 2.5 -0.5 4.3需要 -0.1 1.6 2.1 -1.5 1.1 0.6

単位:億円JX決算(石油精製) 1,943 1,149 386 -3,497 -1,673 -338

在庫除き 746 561 -775 571 408 302

出光決算(石油精製) 874 729 168 -1,116 -465 38在庫除き 529 479 -242 180 372 264

販売数量前年比増減

販売数量前年比増減

Page 134: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 133 -

*2015年需要(指定統計)は 4-9月実績

*RIMは highを採用

*自家燃コストは原油価格の 4%と想定

5.リスクヘッジの現状

日本でのリスクヘッジは欧米と比べ TOCOM取引実績(3.価格形成メカニズム参照)に見ら

れるように極めて少ない状況にある。その原因として下記のような要因が考えられる。

(1)リスクヘッジ需要の欠如

リスクヘッジの需要が日本では欧米と比べ少ない要因を元売り、商社、特約店、需要家の

各段階にて分解し下記のように整理する。

現状元売りは船積みベースの原油価格をベースに販売価格を決めている為、購入した原

油数量見合いは実質的にヘッジされていると考えている。但し、民間備蓄義務量 70日分の

在庫を抱えており、その部分では大きな価格リスクを抱えているといえる。

このリスクは短期的な決算をベースに考えればヘッジ対象となりえるが、長期的な目でみれ

ばリスクと捉えないという考え方もあり(在庫要因は会社の収益力とは別という考え)、日本で

は長期的な観点が重視され、備蓄義務に基づく在庫に対してヘッジされている事例は見受け

られない。この背景として、欧米ではリスクヘッジしない事で経営責任を追及される事があるが、

日本では同業他社との相対的な比較に重点が置かれており、ヘッジにより利益確定した後、

結果的に同業他社より利益が少なかった場合にヘッジ行為が問題とされる可能性がある事も

ヘッジをしない要因の一つと考えられる。よって日本ではリスクヘッジに対して最も需要がある

と思われる元売り段階での需要が少ない。

また、短期的な利益に敏感な商社が担う製品輸入段階においては日本では欧米のように

製品輸入のポジションでは無い為、ヘッジする在庫(需要)が少ない。特約店段階では日本で

は欧米のようなジョバー的な存在が少なく在庫を抱えて商売をする事が無い為、ヘッジの必

要も無いと考えられる。

需要家段階では航空会社(JET燃料)、海運会社(バンカーC重油)がヘッジしている(ホー

ムページ、新聞報道等より、比率、数量等は不明)と報じられているが TOCOMでは対象品が

無い事等により海外でのヘッジを利用していると思われる。

(2)TOCOMにおける制度上の問題

現在 TOCOMは、商品取引法に基づき設置運営されており現物の受渡しを条件としない先

物商品が上場出来ないことから参加者に制限となっている。

金融商品という位置付けにした場合、原油と石油製品の格差等ユーザーニーズを汲み取

る商品開発が可能となり取引の厚みも期待出来る。さらに、現状限月が最長 6 ヵ月であるが

期間の見直しをする事(より長期に変更)により需要の掘り起こしも可能になると考えられる。

又、テクニカル面では、市場の参加料金の設定で工夫する余地もあると考えられる。

Page 135: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 134 -

(例:インセンティブプログラム=取引量が増えるに従って、手数料が下がる仕組み、

マーケット・リウォーヅ=一定量以上の取引があると手数料が下がる仕組み)

建玉制限を見ると、TOCOM はドバイ原油に関しては、2015 年 6 月より制限を撤廃し

たが、それ以外の石油製品については、250~5,000 枚の上限が残されている。これに

対し欧米では制限がなくなる傾向が強く、比較的制限されている NYMEX の RBOB ガソ

リンでも、5,000~7,000 枚と TOCOM よりは大きめの制限が課されている。

(3)税務上の問題

現状税務当局は、ヘッジにより損金を経費算入として認めないケースがあり、ヘッジ行為の

リターンが、しない場合に比べ劣位になっている。

2013年 1月から 4月まで開催した店頭商品デリバティブ取引に関する研究会(非公開)

における議論(テーマ: 金融商品会計におけるヘッジ会計関連規定に対する要望について)

において当該問題が整理されており、ポイントを引用すると下記のとおりである。

Page 136: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 135 -

(4)今後の見通し、対応について

需要面では高度化法により2017年3月迄に現状設備の10%削減が義務付けられており、

今後、製品輸入が増える可能性がありヘッジニーズは現状より高まる可能性が高いと思われ

る。このような新規需要を取り込むには、TOCOMの制度上の問題解決、ユーザーニーズへの

対応、ヘッジ会計上の問題等を同時に解決する必要があり、実現すれば先物取引の活性化、

ひいては石油製品価格透明化に資する事になると考えられる。

(店頭商品デリバティブ取引に関する研究会における議論のポイント)①背景と実態      ・近年、エネルギー・資源価格の高騰および乱高下によって、リスクが高まっており、商品 デリバティブ取引により、価格変動リスクをヘッジする必要性が高まってきている。 ・しかし、現状では、企業としては現物取引の価格ヘッジを行うために商品デリバティブ取引 を行ったにもかかわらず、会計上、ヘッジ取引であったと認められず、損益計上されるという ケースが非常に多くなっている。

②要望内容 イ)リスク管理方針の内容の明確化 ヘッジ取引であると認められる為にはリスク管理方針の文書化が必要とされているがいか なる資料を作成すべきか明確ではない為文書の雛形等をホームページ等で紹介いただき たい。

ロ)異なる商品間でのヘッジ取引におけるヘッジ会計の適用について 流動性の問題等から、異なる商品間でのヘッジ取引を行う場合がある(例えば、A重油、 、ジェット燃料で原油のデリバティブ取引をヘッジ手段として行う場合)が、これらの取引 がヘッジ目的であることは明らかであるにもかかわらず、ヘッジ会計の適用が認められな いことが少なくない。  このような状況下、異なる商品間でのヘッジ取引におけるヘッジ会計の適用について ヘッジ会計の適応を認めて欲しい。

ハ)ロールオーバーにおけるヘッジ会計の適用について エネルギーの取引の場合、現物取引は実態上1年以上の長期契約による場合が多い。 一方、商品デリバティブ取引は、流動性の高い数ヶ月程度の取引により行うことが多いた め、現物取引の期間よりも、デリバティブ取引の期間の方が短い傾向にある。 現物取引とデリバティブ取引の期間の差を合わせ、適切にヘッジを行うため、一つのヘッジ 対象と複数のヘッジ手段を組み合わせる必要が生じる。そこで、エネルギーのヘッジ取引に おいては、デリバティブ取引の期間が終了する前後に、新たなデリバティブ取引を行うことで ヘッジ手段をつないでいく、いわゆるロールオーバーが行われることが多い。 このようなケースでヘッジ会計が適用されにくいという問題が発生しており、企業がヘッジ 取引を行う際の制約となっている。そこで、ロールオーバーを行った場合でもヘッジ会計を適用する運用を行っていただきたい。

二)予定取引に関する基準を適用しない取引類型の追加について エネルギーの現物取引については、1年を超える長期契約に基づく取引が大半であるが ヘッジ会計上原則として1年以上先の取引は認められていない。エネルギーの取引に関し ては3年以上先の取引においても認めて欲しい。  *当該研究会メンバーは下記の通り 伊藤忠商事株式会社 、コスモ石油株式会社、JX日鉱日石エネルギー株式会社 住友商事株式会社 、三井物産株式会社、株式会社みずほコーポレート銀行 モルガン・スタンレー・キャピタル・グループ株式会社 、モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 、インターナショナル・スワップス・アンド・デリバティブズ・アソシエーション・インク(ISDA) 、株式会社東京商品取引所 、株式会社日本商品清算機構 、ギンガ・エナジー・ジャパン

Page 137: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 136 -

6. 価格指標の透明化に応じた市場の変化

(1)日本の石油産業を取り巻く状況

わが国においては少子化や低燃費、次世代自動車普及等によるエネルギー効率の改善

等を背景として、ガソリンをはじめ、各石油製品の国内需要が減少している中、2009年7月に、

「エネルギー供給構造高度化法」が施行された結果、多くの元売り、石油精製会社は常圧蒸

留装置を廃棄することとなった。その結果、わが国の製油所の原油処理能力は 2008年 4月

初時点(28製油所、約 489万 b/d)に比して、約 2割削減された。

一方、石油業界は産業競争力強化法 50条が初めて適用され、需給構造などを調査した

結果、さらに石油製品の国内需要は減少していく見通しとなった。第 2次の告示として、2017

年3月末までに残油処理装置の装備率を50%程度までに引き上げ、トッパー能力ベースで約

40万 b/dの削減を目指す内容など、「エネルギー供給構造高度化法」の大臣告示が改正さ

れた。

国内の石油製品需要の増加が望めず、生き残り競争が加速してきた石油業界では、出光

興産と昭和シェル石油が合併による経営統合で基本合意したのに続き、JXエネルギーを傘

下に持つJXホールディングスと東燃ゼネラル石油も経営統合で大筋合意に達したと伝えられ

た。石油元売りはJX・東燃ゼネラル、出光興産・昭和シェル石油、コスモ石油の2.5社体制に

収斂することとなる。

2015年度の決算見込みでは JX、出光興産、コスモ石油等大手元売り各社においては、

原油価格の下落によって発生する原油在庫の評価損を受けて軒並み大幅な赤字が見込ま

れている。加えて前述の通り、石油製品の国内需要は縮小傾向にあることから、最低限の石

油精製マージン確保は元売各社にとって必須事項となっている。

一方、販売、流通業者にとっても一昨年以来の原油価格下落の中で原油下落を先取りし

た PB、無印 SSの安価な安値攻勢、また体力的に優位にある元売子会社やハイパー業者の

追随が加わり、販売競争が日常化、販売業者は厳しい経営環境に身を置いている。国内需

要の縮小ともに、SS数も毎年減少を重ねてはいるものの、下記に見られる通り、一般的に安

値傾向の強い PBSSにおいては系列 SSほどの落ち込みは見せていない。PBSS数のシェアは

SS総数の中で 25%弱(2014年度)月末時点)まで拡大しているが、その筆頭が全農である。

Page 138: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 137 -

40,84239,382

38,15837,033

35,48633,670

31,83130,339

29,00127,922

26,629 25,948 25,275

10,452 10,685 10,514 10,551 10,306 10,387 10,259 10,018 9,776 9,821 9,7208,758 8,235

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度

元売系列

PB等

図表 69 系列 SS と PBSS等の推移

出所:月間ガソリンスタンド

(2)系列玉と業転玉の 2系統の流通ルートの存在

SSにおけるガソリンの主力商品であるガソリンの流通経路では、系列サインポールを挙げた

SSで扱われる「系列玉」と、主に商社系及びホームセンター併設されている PBSS、無印 SS

等、系列以外に属する「業転玉」が存在する。「業転玉」は元売、精製事業者による余剰玉、

或いは商社等による海外からの輸入によって調達されている。こうした価格競争力に勝る「業

転玉」により小売マーケットでは常に PBSSや無印 SSは優位に立つことから系列事業者は売り

負け、撤退等の苦境に立たされるケースが多く、その都度「系列玉」と「業転玉」との価格差が

問題視されている。系列事業者においては、「業転玉」に繋がる余剰玉を放出する元売、精

製事業者に対する不満、業転格差に対する不満は過去から根強く存在し、需給ギャップから

発生するこの問題に対する解決策は現在においても見つかっていない。

また、近年では系列玉と非系列玉を区別することは難しくなっており、大手商社向け、大手

特約店などへの供給は、業転扱いなのか直需分なのか、あるいは準系列扱いなのか定義は

難しい。当然、大口取引は価格面での優遇措置があることから、小規模の特約店との間には

価格差が存在し安値で仕入れることが出来るような制度となっていることは間違いがない。

14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度

元売系列 40,842 39,382 38,158 37,033 35,486 33,670 31,831 30,339 29,001 27,922 26,629 25,948 25,275

PB等 10,452 10,685 10,514 10,551 10,306 10,387 10,259 10,018 9,776 9,821 9,720 8,758 8,235

総SS数 51,294 50,067 48,672 47,584 45,792 44,057 42,090 40,357 38,777 37,743 36,349 34,706 33,510

Page 139: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 138 -

▲ 2.0

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

0

20

40

60

80

100

120

1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月1月3月5月7月9月

11月

2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

円/ℓ円/ℓ

業転格差

卸価格

RIM価格

業転格差=卸価格(資エ庁調査)-RIM価格

①RIM価格:RIM情報開発。4地域陸上ラック平均価格+フレート1.5円加算②卸価格:資源エネルギー庁調査(月次卸価格調査)

【3.8】

2009年

【4.5】

2010年【5.2】

2011年

【4.9】

2012年【5.0】

2008年

【7.2】

2007年

2008年半ばより新価格体系導入 2010年半ばより新価格体系見直し

【4.4】

2006年

【5.2】

2013年

【6.7】

2015年

【5.2】

2014年

図表 70 ガソリンの主な流通ルート

(3)卸価格差について

卸価格差(「4地域 RIM平均+フレート 1.5円」と資源エネルギー庁調査の卸価格との差異)

は、第一次エネルギー供給構造高度化法が施行された後の 2010年では 4.5円/Lであった

のが2015年においては再び 6.7円/Lにまで拡大をしている(下記参照)。計算上はこの価格

差は系列元売が系列店に課しているサインポール、塗装費、POS運営費用等の販売関連コ

ストに、持ち届け(業転玉の場合は油槽所への倉取りが多い)の差となるものである。

図表 71 卸価格および RIM価格の推移

Page 140: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 139 -

(4)卸価格決定に際して指標価格を採用

前述の通り 2008年の週決め、市場連動方式(RIM公表価格或いは TOCOM先物価格)に

よる新価格体系を各社とも採用したものの、需給の影響を受けるスポット価格は 2009年のリ

ーマンショック以降の世界同時不況に端を発した需要減退期以降、実際の原油コストとの連

動が薄れ、元売の収益を圧迫する事態となった。それを受けて元売は 2010年に入り、「販売

関連コスト/ブランド料の引き上げ」或いは「各種インセンティブの見直し」を行ったものの、収益

の改善には至らずに、指標原油が軒並み 100 ドルを突破しピークにつけた 2014年 4月に各

社とも大幅な赤字を計上したことから、より「原油コスト連動」を色濃く反映した新・新仕切体系

に切り替えて行った。

(5)指標価格の捉え方の違い

「原油コスト連動」に切り替えた筈の卸価格ではあるが、依然として業転価格(スポット価格)

との価格差は解消せず、むしろ原油コストとの差が拡大して開いていったことから本来は廃止

した「事後調整」とでもいうべき仕切調整(元売は同月中の変更であるため事後調整とは呼ん

ではいない)の復活を許すことになり、系列間で、あるいは同一系列内での販売事業者の不

信を招く事態となっている。

現在、その指標価格には RIM社公表の陸上 RIM価格が使用されるケースが多いが、元売

側では効率を求めるためにサプライチェーンを一元化、そのための関連コストが発生するにも

関わらず、最終的な価格はRIM社のスポット価格の影響を受けており、収益悪化の原因となっ

ている。元売側は指標価格である RIM価格が、その算出根拠を明確にしておらず、偏ったソー

スに基づき価格公表をしており、不充分な指標であるとの認識を持っている。(現在 RIM社は

証券監督者国際機構(IOSCO)による価格算定ルールの遵守状況について整理を行ってい

る)

一方、系列販売事業者は指標価格に対して、上乗せされる販売関連コストについての情報

開示や交渉が充分に行われていないこと、また個別に行われる仕切調整についても不透明

感が強く不満を持ち続けている。

7.独禁政策

我が国の競争政策を規定する基本的な法は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に

関する法律」である。市場メカニズムを正常に機能させ、公正かつ自由な競争を促進して事

業者間の競争を促すことで、消費者利益を確保することを目的としている。

この競争政策の中で、大きな柱としては、①私的独占の禁止、②不当な取引制限、③事

業者団体の規制、④企業結合の規制、⑤独占的状態の規制、⑥不公正な取引方法の禁止

があるが、価格形成に関し、以下のいくつかの事例を例示する。

Page 141: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 140 -

(1)独禁政策と独占的状態の規制の事例

①独占的状態の定義

競争の結果,50%超のシェアを持つ事業者等がいる等の市場において,需要やコストが減

少しても価格が下がらないという価格に下方硬直性がみられるなどの市場への弊害が認めら

れる場合には,競争を回復するための措置として当該事業者の営業の一部譲渡を命じる場

合がある。

<過去の事例>

石油元売り業界については合併時当該事業者の営業の一部譲渡を命じられた事例は無い。

(理由)製品輸入の自由化等あり、エリアによっては 50%を超える所も有ったが合併により需

要やコストが減少しても価格が下がらないという価格に下方硬直性はみられないという見解。

(2)不公正な取引方法(不当廉売、差別対価)に関する規制について

<不当廉売>

①不当廉売の定義

・正当な理由がないのに商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続

して供給する行為。

・その他不当に商品又は役務を低い対価で供給する行為であって、他の事業者の事業活

動を困難にさせるおそれがあるものを指す。

②不当廉売注意件数(石油製品)

・H21年度をピークに減少傾向

③警告、排除措置命令事例

・警告事例 平成 21年度 高知県に所在する 7社

平成 24年度 福井県に所在する 1社

平成 27年度 愛知県に所在する 2社

・排除措置命令事例 平成 18年度 和歌山県に所在する 1社

平成 19年度 栃木県に所在する 2社

④問題点

・不当廉売の定義における供給に要する費用を著しく下回る対価とは仕入れ価格を指すと

いう公取の見解があり、販売コストは加味されていない。

・これは消費者側に立った見解であろうが長い目で見た場合資本力の無い中小企業が淘

汰され、大資本のみが市場に残るという事になりかねない。

H16年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度

30 130 259 306 430 956 714 444 426 452 326

Page 142: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 141 -

<差別対価>

①差別対価の定義

・不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもって、商品又は役務を継続して供給す

ることであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの。

②運用状況

・現状、差別対価により元売が指摘されたという事例は無い。

③問題点

・今後、元売り合併等による価格支配力が高まると予想される中、ドイツにおいて施行され

ているプライスシザールール(石油会社直営の店頭価格がディーラー向け卸価格を下回っ

てはいけないという規制)が参考になると思われる。

Page 143: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 142 -

Ⅴ.統計的手法による日米石油市場の分析

本章では、日本、米国のPADD I、III、Vにおける原油価格、石油製品—ガソリン、軽油、灯油

(日本のみ)—卸売価格、同小売価格の間の関係について定量的な分析を行う。対象とする期

間は、2013年~2015年の3年間である。取り扱うデータは原則として週次である。なお、日本

の分析においては、原油価格とは東京商品取引所のドバイ原油先物価格(期近物)を、石油

製品卸売価格とはRIM陸上、RIM海上、仕切価格の3種を、同小売価格とは経済産業省「給

油所小売価格調査」から計算した税抜価格を指す。米国の分析においては、原油価格とはニ

ューヨーク商品取引所の軽質低硫黄原油先物価格(期近物)、石油製品卸売価格とはエネ

ルギー情報局(EIA)のスポット価格とブランドラック価格、アンブランドラック価格を、同小売価

格とはEIAの小売価格を指す。

1. 日本のガソリン

(1)価格変動状況

日本のガソリン卸売・小売価格は、短期的には原油価格と乖離が見られる時期もあるが、

若干の時間差を持ちつつ原油価格とおおむね並行した動きを示している(図表72)。そうした

中、他の価格との違いが顕著となっているのが2014年度以降の仕切価格であり、特に足元に

かけて上振れ幅が拡大している。その背景には、石油元売各社が2014年4月から仕切価格

決定方式を順次変更した影響があると考えられる。

図表72 原油、ガソリン価格[日本]

各価格の変動(対前期差、階差)を観測すると、価格水準を時系列として見るよりも傾向を

捉えやすい部分もある。図は変動のヒストグラム、図は変動の基本的な統計量(平均、分散、

-40

-20

0

20

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

(2012年末比

)

原油

RIM海上

RIM陸上

仕切

小売

Page 144: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 143 -

歪度1、尖度2)である。前述のとおり仕切価格の異質性が示されるほか、海上RIMもまた特徴

的な動きであったことが分かる。

図表73 原油、ガソリン価格変動の頻度[日本、2013-2015年]

注: N = 153

図表74 原油、ガソリン価格変動の基本的統計量[日本、2013-2015年]

1 歪度は、正値の場合、標本が平均より値の小さな方に偏っていることを表す。 2 尖度は、正値の場合、正規分布に比べ標本が平均より離れた部分に多い(裾が重い)ことを

表す。

0

20

40

60

-3.0

-3.0

-2.5

-2.5

-2.0

-2.0

-1.5

-1.5

-1.0

-1.0

-0.5

-0.5

0.0

0.0

0.5

0.5

1.0

1.0

1.5

1.5

2.0

2.0

2.5

2.5

¥/L

原油

RIM海上

RIM陸上

仕切

小売

-0.2 -0.2 -0.2

0.0

-0.2

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

原油 RIM海上RIM陸上 仕切 小売

¥/L

平均

2.02.4

2.11.6

0.9

0.0

1.0

2.0

3.0

原油 RIM海上 RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)2

分散

-0.3

-0.1

-0.5

-0.1

-0.6-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

原油 RIM海上RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)3

歪度

3.3

0.7

2.0 2.0 2.0

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

原油 RIM海上 RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)4

尖度

Page 145: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 144 -

(2)中長期的な均衡関係と転嫁関係

原油価格、石油製品卸売価格、同小売価格の間の関係を分析するにあたり、2種類の関

係を区別する。すなわち、1つは中長期的な均衡関係であり、もう1つは短期的な転嫁関係で

ある。本章で注目するのは後者であるが、以下ではその2つの関係について原油価格とガソリ

ン小売価格を例として説明する。

原油価格とガソリン小売価格は完全に並行して推移するわけではないが、全く別々の動き

をするわけでもない。これは、原油コストがガソリン小売価格(税抜)の費用構成において重要

な地位を占めていることにもっぱら起因する(図表75)。

図表75 ガソリン小売価格費用構成[日本、2015年12月]

出所: 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」、財務省「貿易統計」より算出

ガソリン小売価格水準と原油価格水準との間には中長期的な均衡関係—原油価格が\●

/Lの時、ガソリン価格は平均すると\■/L—が成り立ちうると考えられる。しかし、そうした中長

期的な均衡関係は、原油価格変動のガソリン小売価格変動への転嫁3の関係—原油価格が

\○/L動く時、ガソリンは\□/L動く—を必ずしも表しているわけではない。中長期的な均衡関

係と転嫁関係とが同一構造の別表現に過ぎない場合もあるが、そうとはみなせない場合もあ

る。例えば、価格水準同士をプロットした図左では、原油価格\1/Lに対するガソリン小売価格

の傾きは平均\0.91/Lである。しかし、同じデータから価格変動を算出してプロットした図右で

は、原油価格\1/Lの変動に対するガソリン小売価格の変動の傾きは平均\0.46/Lである。

統計学的な視座においても、厳密性を重視するのであれば、これら2つの関係を峻別して分

析する必要がある。

3 転嫁という語感からは値上げ時の状況が連想されるかもしれないが、値下げ時の状況も対

象である。

0 20 40 60 80 100 120 140

¥/L

原油コスト

精製マージン

流通マージン

ガソリン税、消費税

Page 146: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 145 -

図表76 原油価格とガソリン小売価格との関係(水準、変動) [日本、2013-2015年]

価格水準 価格変動

(3)回帰モデル

上記、中長期の均衡関係と転嫁関係との違いは、回帰モデルとしては以下の2本の式の差

となる。

中長期の均衡関係:

uαα c ++/L][ +=/L][ 0 円円 原油価格水準ガソリン小売価格水準 (1)

転嫁関係:

vββ

vββ

c

c

原油価格変動ガソリン小売価格変動

原油価格水準ガソリン小売価格水準

0

0 ΔΔ (2)

実際の回帰分析においては、(2)式の説明変数として原油価格のみならず、需給の状況を

表す代理変数としてガソリン在庫も併用した。また、ガソリン小売価格水準と原油価格水準と

が共和分の関係にあると考えられる場合には、(1)式の推計誤差(図)の前期値をエラー修正

項として(2)式の説明変数に追加し、エラーコレクションモデルとした。さらに、原油価格の上昇

分と下落分とで転嫁の程度やその反映の時間遅れ(ラグ)が異なる可能性を考慮することとし

た。

y = 0.9079x + 37.537

R² = 0.9593

50

60

70

80

90

100

110

120

10 20 30 40 50 60 70 80

ガソリン小売価格水準

(¥/L

)

前期の原油価格水準(¥/L)

y = 0.4638x - 0.0917

R² = 0.4593

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

-8 -6 -4 -2 0 2 4 6ガソリン小売価格変動

(¥/L

)

前期の原油価格変動(¥/L)

Page 147: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 146 -

図表77 ガソリン小売価格水準の原油価格水準による回帰推計誤差[日本]

すなわち、転嫁関係の回帰モデル標準形は以下のとおりである。なお、原油価格のラグ長

や在庫のラグなどは、情報量規準などを参考に各推計式毎に適宜変更している。

ttets

l ltlcl ltlct

vββ

βββ

エラー修正項ガソリン在庫変動

原油価格変動原油価格変動ガソリン小売価格変動

1

,,0 0,min0,max

-

--

- ∑∑

ここで、

l lcβ , が原油価格上昇分のガソリン小売価格への転嫁率4、

l lcβ , が原油価格

下落分のガソリン小売価格への転嫁率に相当する。

原油価格ほかの各変数がどの期間・時点のデータを対象としているかを図に示す。

図表78 変数定義[日本]

(4)転嫁率推計値

転嫁関係の推計は、以下の組み合わせに対して行った。

4 原油価格変動¥1/Lあたりのガソリン小売価格変動[¥/L]

-20

0

20

40

60

80

100

120

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

ガソリン小売価格推計値

ガソリン小売価格実績値

原油価格

推計誤差

月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水

原油価格 ドバイ原油先物価格(期近物)

卸売価格 RIM陸上、RIM海上

仕切価格

小売価格 経済産業省「給油所小売価格調査」 ★

在庫 石油連盟「原油・石油製品供給統計週報」 ★

Page 148: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 147 -

図表79 推計したガソリン関連の転嫁関係[日本]

原油価格ガソリン卸売価格 ① 原油価格ガソリン RIM陸上価格

② 原油価格ガソリン RIM海上価格

③ 原油価格ガソリン仕切価格

ガソリン卸売価格ガソリン小売価格 ④ ガソリン RIM陸上価格ガソリン小売価格

⑤ ガソリン RIM海上価格ガソリン小売価格

⑥ ガソリン仕切価格ガソリン小売価格

推計された転嫁率の概要を示したものが図である。分析対象期間である2013年から2015

年においては、転嫁率100%の完全転嫁に近い状態、あるいはそれ以上の転嫁であったのは、

原油価格下落分のガソリン卸売価格への転嫁に限られている。それら以外の転嫁率はおしな

べて高くはなく、販売価格の変動は—社会が時に期待・想像するように—仕入れコストの変動を

そのまま素朴に反映していたわけではないことになる。

図表80 原油価格、ガソリン卸売価格、同小売価格間の転嫁率[日本、2013-2015年]

上昇分の転嫁率は下落分のそれを下回り、転嫁に非対称性が認められる。これは、例えば、

Chesnes (2016)5や栁澤(2012)6にあるような上昇分の転嫁率が下落分のそれを上回る非対

称な転嫁—いわゆる“rockets and feathers”—とは逆になっている。しかし、ここでの推計のよう

に上昇分転嫁率が下落分転嫁率を下回る現象は栁澤(2015)7でも示されている。それらの

分析から推察されるのは、転嫁構造は不変的なものではなく、将来価格の見通しなどに影響

5 Matthew Chesnes, “Asymmetric Pass-Through in U.S. Gasoline Prices,” Energy Journal,

Vol. 37, No. 1, 2016, pp.153-180. 分析対象期間は2000年~2013年。 6 栁澤 明「わが国における原油価格のガソリン価格への転嫁構造」, 『エネルギー経済』, 第

38巻, 第2号, 2012, p.44-52. 分析対象期間は2009年1月~2011年9月。 7 栁澤 明「ガソリン価格と原油価格の新たな関係」, 日本貨物運送協同組合連合会講演資

料, (2015). 分析対象期間は2014年6月~2015年4月。

82%

81%

75%

97%

113%

112%

50%

66%

66%

65%

61%

45%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

仕切→小売

RIM陸上→小売

RIM海上→小売

原油→仕切

原油→RIM陸上

原油→RIM海上

卸売→小売

原油→卸売

上昇分

下落分

原油

卸売

卸売小売

Page 149: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 148 -

を受ける—すなわち、先高観が濃厚な状況では上昇分の転嫁率は高めとなり、下落見通しに

支配されている時期は上昇分の転嫁率は低めとなる—可能性である。

もっとも、こうしたことは、原油価格変動がガソリン卸売価格変動の重大な影響要因であるこ

とを揺るがしはしない。推計された転嫁率などを用いて、原油価格変動などがガソリン卸売価

格変動に対してどの程度の寄与となっていたのかを図に示す。

Page 150: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 149 -

図表81 ガソリン卸売価格変動の寄与分解[日本]

原油 ガソリンRIM海上

原油 ガソリンRIM陸上

原油ガソリン仕切

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

ガソリン在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

ガソリン在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

ガソリン在庫寄与

原油価格寄与

実績値

Page 151: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 150 -

注: 原油価格変動やガソリン在庫変動の動向に関わらず分析対象期間を通じて一定のガソリ

ン卸売価格変動要因である趨勢寄与などは図示していない。

また、ガソリン卸売価格変動の総変動8は、推計値による変動と推計誤差による変動に分

介することができる—決定係数R2は推計値の変動の総変動に対する比である。推計値による編

動を、原油価格(単独)、ガソリン在庫(単独)、その他の寄与にさらに分解すると、図のとおりと

なる。

図表82 原油価格、ガソリン卸売価格の総変動と寄与[日本]

注: 2013年1月14日~2015年12月21日

2.日本の軽油

軽油の傾向は、ガソリンと同様である。

8 ここで言う変動とは偏差平方和(平均値からの差の2乗の和)のことである。

140

195

175

302

1

1

1

248

312

357

302

-100 0 100 200 300 400

仕切

RIM陸上

RIM海上

ガソリン

原油

(¥/L)2

原油価格寄与

(単独)

ガソリン在庫

寄与(単独)

その他寄与

推計誤差

実績

Page 152: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 151 -

図表83 原油、軽油価格[日本]

図表84 原油、軽油価格変動の頻度[日本、2013-2015年]

注: N = 153

-40

-20

0

20

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

(2012年末比

)

原油

RIM海上

RIM陸上

仕切

小売

0

20

40

60

-3.0

-3.0

-2.5

-2.5

-2.0

-2.0

-1.5

-1.5

-1.0

-1.0

-0.5

-0.5

0.0

0.0

0.5

0.5

1.0

1.0

1.5

1.5

2.0

2.0

2.5

2.5

¥/L

原油

RIM海上

RIM陸上

仕切

小売

Page 153: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 152 -

図表85 原油、軽油価格変動の基本的統計量[日本、2013-2015年]

図表86 原油価格、軽油卸売価格、同小売価格間の転嫁率[日本、2013-2015年]

-0.2 -0.2 -0.2

0.1

-0.1

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

0.1

原油 RIM海上RIM陸上 仕切 小売

¥/L

平均

2.02.5

1.91.5

0.7

0.0

1.0

2.0

3.0

原油 RIM海上 RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)2

分散

-0.3

0.1

-0.7

-0.2

-1.0-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

原油 RIM海上RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)3

歪度

3.3

1.0

2.83.2

2.8

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

原油 RIM海上 RIM陸上 仕切 小売(¥

/L)4

尖度

81%

68%

75%

84%

124%

111%

42%

39%

35%

54%

47%

70%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

仕切→小売

RIM陸上→小売

RIM海上→小売

原油→仕切

原油→RIM陸上

原油→RIM海上

卸売→小売

原油→卸売

上昇分

下落分

原油

卸売

卸売

小売

Page 154: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 153 -

図表87 軽油卸売価格変動の寄与分解[日本]

原油 軽油RIM海上

原油 軽油RIM陸上

原油軽油仕切

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

軽油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

軽油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

軽油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

Page 155: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 154 -

注: 原油価格変動や軽油在庫変動の動向に関わらず分析対象期間を通じて一定の軽油卸売

価格変動要因である趨勢寄与などは図示していない。

図表88 原油価格、軽油卸売価格の総変動と寄与[日本]

注: 2013年1月14日~2015年12月21日

3.日本の灯油

灯油の傾向も、ガソリン、軽油とおおむね同様であるが、ばらつきがやや大きい。

図表89 原油、灯油価格[日本]

115

179

158

302

0

1

3

219

285

374

302

-100 0 100 200 300 400

仕切

RIM陸上

RIM海上

軽油

原油

(¥/L)2

原油価格寄与

(単独)

軽油在庫寄与

(単独)

その他寄与

推計誤差

実績

-40

-20

0

20

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

(2012年末比

)

原油

RIM海上

RIM陸上

仕切

小売

Page 156: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 155 -

図表90 原油、灯油価格変動の頻度[日本、2013-2015年]

注: N = 153

図表91 原油、灯油価格変動の基本的統計量[日本、2013-2015年]

灯油は、その需要特性から、在庫の季節性がガソリンや軽油に比べて顕著である(図)。その

ため、在庫が前期比で増加となっていても需給状況が緩和していることを必ずしも意味しない。

そこで、灯油の回帰分析においては、需給の状況を表す代理変数として在庫の前期比ではなく

トレンドからの乖離を採用することとした。

0

20

40

60

-3.0

-3.0

-2.5

-2.5

-2.0

-2.0

-1.5

-1.5

-1.0

-1.0

-0.5

-0.5

0.0

0.0

0.5

0.5

1.0

1.0

1.5

1.5

2.0

2.0

2.5

2.5

¥/L

原油

RIM海上

RIM陸上

仕切

小売

-0.2-0.2 -0.2

0.0

-0.2

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

0.1

原油 RIM海上RIM陸上 仕切 小売

¥/L

平均

2.0

2.7

2.0

1.3

0.5

0.0

1.0

2.0

3.0

原油 RIM海上 RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)2

分散

-0.3 -0.2

-0.8-0.7

-1.4-1.5

-1.0

-0.5

0.0

原油 RIM海上RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)3

歪度

3.3

1.3

2.62.0

5.1

0.0

2.0

4.0

6.0

原油 RIM海上 RIM陸上 仕切 小売

(¥/L

)4

尖度

Page 157: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 156 -

図表92 灯油在庫[日本]

図表93 原油価格、灯油卸売価格、同小売価格間の転嫁率[日本、2013-2015年]

-50

0

50

100

150

200

250

300

350

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

万kL

灯油在庫

灯油在庫トレンド

灯油在庫の

トレンドからの乖離

ガソリン在庫

軽油在庫

参考

72%

59%

62%

82%

112%

99%

18%

28%

9%

40%

59%

70%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

仕切→小売

RIM陸上→小売

RIM海上→小売

原油→仕切

原油→RIM陸上

原油→RIM海上

卸売→小売

原油→卸売

上昇分

下落分

原油

卸売

卸売

小売

Page 158: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 157 -

図表94 灯油卸売価格変動の寄与分解[日本]

原油 灯油RIM海上

原油 灯油RIM陸上

原油灯油仕切

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

灯油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

灯油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-6

-4

-2

0

2

4

6

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

¥/L

エラー修正寄与、

推計誤差

灯油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

Page 159: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 158 -

注: 原油価格変動や灯油在庫の動向に関わらず分析対象期間を通じて一定の灯油卸売価格

変動要因である趨勢寄与などは図示していない。

図表95 原油価格、灯油卸売価格の総変動と寄与[日本]

注: 2013年2月4日~2015年12月7日

4.米国

米国についても日本と同様の手法に基づき分析を行う。ただし、灯油は、データの入手可能

性制約のため分析対象外とする。転嫁関係の推計は、図表に示す組み合わせに対して行った。

石油製品卸売価格・小売価格の定義は図表に示す。データの出所は、ラック価格がOil Price

Information Service (OPIS)、それ以外はいずれもEIAである。

図表96 推計した転嫁関係[米国]

ガソリン、PADD I及びIII

原油価格石油製品卸売価格 ① 原油価格スポット価格

石油製品卸売価格石油製品卸売価

② スポット価格ブランドラック価格

③ スポット価格アンブランドラック価格

石油製品卸売価格石油製品小売価

④ ブランドラック価格小売価格

⑤ アンブランドラック価格小売価格

95

158

178

290

1

4

8

191

267

384

290

-100 0 100 200 300 400

仕切

RIM陸上

RIM海上

灯油

原油

(¥/L)2

原油価格寄与

(単独)

灯油在庫寄与

(単独)

その他寄与

推計誤差

実績

Page 160: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 159 -

ガソリン、PADD V及び軽油

原油価格石油製品卸売価格 ① 原油価格スポット価格

石油製品卸売価格石油製品小売価

② スポット価格 小売り価格

図表97 対象石油製品卸売・小売価格データ[米国]

ガソリン

卸売 スポット PADD I New York Harbor Conventional Gasoline Regular Spot Price

FOB

PADD III U.S. Gulf Coast Conventional Gasoline Regular Spot Price FOB

PADD V Los Angeles Reformulated RBOB Regular Gasoline Spot Price

Rack PADD I New York (Un)branded Unlead Gasoline Rack Price

PADD III Houston (Un)branded Unlead Gasoline Rack Price

小売 PADD I East Coast Regular All Formulations Retail Gasoline Prices

PADD III Gulf Coast Regular All Formulations Retail Gasoline Prices

PADD V West Coast Regular All Formulations Retail Gasoline Prices

軽油

卸売 スポット PADD I New York Harbor Ultra-Low Sulfur No 2 Diesel Spot Price

PADD III U.S. Gulf Coast Ultra-Low Sulfur No 2 Diesel Spot Price

PADD V Los Angeles, CA Ultra-Low Sulfur CARB Diesel Spot Price

小売 PADD I East Coast No 2 Diesel Retail Prices

PADD III Gulf Coast No 2 Diesel Retail Prices

PADD V West Coast No 2 Diesel Retail Prices

注: データ出所は、Rack価格がOPIS、それ以外はEIA

原油価格ほかの各変数がどの期間・時点のデータを対象としているかを図に示す。

図表98 変数定義[米国]

なお、小売価格はいずれも税込みであるが、対象期間における税金の変化はわずかであるこ

とから、その影響を捨象して分析することとする(図)。

月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水

原油価格 WTI原油先物価格(期近物)

卸売価格 スポット価格[EIA]

ラック価格[OPIS]

小売価格 小売価格[EIA] ★

在庫 在庫[EIA] ★

Page 161: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 160 -

図表99 ガソリン、軽油の税と小売価格[米国]

ガソリン 軽油

注: 全国平均、月次

出所: International Energy Agency「Monthly oil prices」より算出

0

1

2

3

4

2013 2014 2015 2016

$/g

allo

n

小売価格 税

0

1

2

3

4

2013 2014 2015 2016$/g

allo

n

小売価格 税

Page 162: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 161 -

(1)ガソリン

図表100 原油、ガソリン価格[米国]

PADD I

PADD III

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n(2

012年末比

)

原油価格

スポット価格

ブランドラック価格

アンブランドラック価格

小売価格

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n(2

012年末比

)

原油価格

スポット価格

ブランドラック価格

アンブランドラック価格

小売価格

Page 163: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 162 -

PADD V

推計された転嫁率の概要を示したものが図である。分析対象期間である2013年から2015年

においては、PADD IとIIIでは、日本と比較するとおおむね転嫁率100%の完全転嫁に近い状態に

あり、かつ上昇分と下落分との間の非対称性は小さめであった。PADD Vでの転嫁関係は、その

地理的特性が影響してか、図からも容易に推察されうるように、PADD IやIIIとはかなり異なったも

のであった。

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n(2

012年末比

)

原油価格

スポット価格

小売価格

Page 164: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 163 -

図表101 原油価格、ガソリン卸売価格、同小売価格間の転嫁率[米国、2013-2015年]

PADD I

PADD III

PADD V

86%

77%

86%

97%

101%

96%

106%

107%

84%

110%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

アンブランドラック→

小売

ブランドラック→

小売

スポット→

アンブランドラック

スポット→

ブランドラック

原油→スポット

卸売→小売

卸売→卸売

上昇分

下落分

卸売

卸売

卸売

小売

89%

68%

87%

86%

101%

100%

104%

98%

102%

97%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

アンブランドラック→

小売

ブランドラック→

小売

スポット→

アンブランドラック

スポット→

ブランドラック

原油→スポット

卸売→小売

卸売→卸売

上昇分

下落分

卸売

卸売

卸売

小売

52%

146%

71%

114%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

スポット→小売

原油→スポット

上昇分

下落分

Page 165: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 164 -

図表102 ガソリンスポット価格変動の寄与分解[米国]

PADD I

PADD III

PADD V

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n

エラー修正寄与、

推計誤差

ガソリン在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n

エラー修正寄与、

推計誤差

ガソリン在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n

エラー修正寄与、

推計誤差

ガソリン在庫寄与

原油価格寄与

実績値

Page 166: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 165 -

注: 原油価格変動やガソリン在庫変動の動向に関わらず分析対象期間を通じて一定のガソリン

卸売価格変動要因である趨勢寄与などは図示していない。

図表103 原油価格、ガソリンスポット価格の総変動と寄与[米国]

注: 2013年1月14日~2015年12月28日

0.75

0.33

0.39

0.43

0.14

0.04

0.00

3.42

0.98

0.77

0.43

-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

PADD V

PADD III

PADD I

ガソリン

原油

($/gallon)2

原油価格寄与

(単独)

ガソリン在庫

寄与(単独)

その他寄与

推計誤差

実績

Page 167: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 166 -

(2)軽油

図表104 原油、軽油価格[米国]

PADD I

PADD III

PADD V

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n(2

012年末比

)

原油価格

スポット価格

小売価格

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n(2

012年末比

)

原油価格

スポット価格

小売価格

Page 168: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 167 -

図表105 原油価格、軽油卸売価格、同小売価格間の転嫁率[米国、2013-2015年]

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n(2

012年末比

)

原油価格

スポット価格

小売価格

61%

102%

74%

108%

44%

108%

63%

111%

52%

87%

61%

87%

0% 20% 40% 60% 80% 100% 120% 140% 160%

スポット→小売

原油→スポット

スポット→小売

原油→スポット

スポット→小売

原油→スポット

PA

DD

VPA

DD

III

PA

DD

I

上昇分

下落分

Page 169: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 168 -

図表106 軽油スポット価格変動の寄与分解[米国]

PADD I

PADD III

PADD V

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n

エラー修正寄与、

推計誤差

軽油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n

エラー修正寄与、

推計誤差

軽油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1

$/g

allo

n

エラー修正寄与、

推計誤差

軽油在庫寄与

原油価格寄与

実績値

Page 170: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 169 -

注: 原油価格変動や軽油在庫変動の動向に関わらず分析対象期間を通じて一定の軽油卸売

価格変動要因である趨勢寄与などは図示していない。

図表107 原油価格、軽油スポット価格の総変動と寄与[米国]

注: 2013年1月14日~2015年12月28日

5.まとめ

日本の転嫁率の推計結果の一覧を図表に、米国の転嫁率の推計結果の一覧を図表に示す。

なお、階差をとった経済系列の回帰分析で一般に見られるように、また、図でも見られたように、

決定係数は階差をとる前より下がっているが、米国PADD Vの一部などを除きこれらはそれほど

低い値というわけではない。

0.38

0.36

0.35

0.43

0.04

0.00

0.06

0.80

0.58

0.75

0.43

-0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

PADD V

PADD III

PADD I

軽油

原油

($/gallon)2

原油価格寄与

(単独)

軽油在庫寄与

(単独)

その他寄与

推計誤差

実績

Page 171: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 170 -

図表108 転嫁率推計結果一覧[日本、2013-2015年]

転嫁元 転嫁先 上昇分転嫁率 下落分転嫁率 在庫係数 R2

計 当期 1期前 2期前 計 当期 1期前 2期前 [(¥/L)/万kL]

原油 RIM海上 45% 44% 1% 112% 65% 47% -0.011 1期前 0.51

原油 RIM陸上 61% 19% 42% 113% 46% 67% -0.014 当期 0.65

原油 仕切 65% 23% 42% 97% 18% 24% 56% -0.013 1期前 0.53

RIM海上 小売 66% 12% 34% 20% 75% 21% 28% 25% -0.012 当期 0.77

RIM陸上 小売 66% 36% 30% 81% 28% 32% 22% -0.008 1期前 0.86

仕切 小売 50% 50% 82% 57% 25% -0.007 1期前 0.75

原油 RIM海上 70% 32% 18% 20% 111% 49% 33% 29% -0.015 1期前 0.47

原油 RIM陸上 47% 13% 34% 124% 34% 62% 28% -0.009 1期前 0.65

原油 仕切 54% 17% 36% 84% 33% 51% -0.005 当期 0.50

RIM海上 小売 35% 16% 18% 75% 21% 29% 24% - 0.74

RIM陸上 小売 39% 22% 17% 68% 26% 42% -0.002 当期 0.77

仕切 小売 42% 42% 81% 50% 18% 13% - 0.75

原油 RIM海上 70% 69% 1% 99% 67% 32% -0.052 1期前 0.55

原油 RIM陸上 59% 18% 37% 4% 112% 33% 60% 19% -0.035 1期前 0.67

原油 仕切 40% 14% 26% 82% 26% 56% -0.019 1期前 0.50

RIM海上 小売 9% 9% 62% 14% 19% 28% -0.021 3期前 0.67

RIM陸上 小売 28% 17% 12% 59% 20% 22% 16% -0.008 3期前 0.80

仕切 小売 18% 18% 72% 42% 14% 16% -0.013 当期 0.73

注: 灯油の在庫は前期比ではなくトレンドからの乖離である

ガソ

リン

軽油

灯油

Page 172: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 171 -

図表109 転嫁率推計結果一覧[米国、2013-2015年]

PADD I

PADD III

PADD V

2013年~2015年における石油製品卸売価格変動(上昇分累積、下落分累積別)の実績値

と上記の転嫁率から推計される原油価格転嫁分を比較したものが図 (日本)、図 (米国)である。

石油製品卸売価格は、原油価格のみならず、需給の状況など他の要因にも影響されうる。その

ため、米国PADD I、IIIにおけるガソリンのように完全転嫁(転嫁率100%)に近いようなケースでも、

原油価格変動と卸売価格変動とには違いが生じている。

日本では、原油価格の上昇は、いずれの石油製品においても卸売価格に十分に反映されて

いたわけではなかった(原油上昇分\60/Lに対し、例えば、RIM海上への転嫁は\27/L)。しかし、

上昇分累積同士で比較すると、灯油の陸上RIMを除くすべての卸売価格変動が結果として原油

価格変動を上回った(原油上昇分\60/Lに対し、例えば、RIM海上上昇分は\77/L)。一方、下

落分累積では、陸上・海上RIMはおよそ超過転嫁となっていたことから、卸売価格の実際の下落

幅は原油価格のそれを超えた。これに対して、仕切価格はRIMに比べて低い転嫁率が影響した

のに加え、原油価格以外の要因も下落幅の縮小に寄与した。そうした背後には仕切価格決定

方式の変更の影響もあると推察される。

転嫁元 転嫁先 上昇分転嫁率 下落分転嫁率 在庫係数 R2

計 当期 1期前 2期前 3期前 計 当期 1期前 2期前 3期前 4期前 [($/gallon)/Mbbl]

原油 スポット 110% 110% 101% 70% 32% -0.003 1期前 0.51

スポット ブランドラック 84% 59% 25% 97% 76% 21% -0.001 当期 0.85

スポット アンブランドラック 107% 80% 27% 86% 86% 0.000 当期 0.80

ブランドラック 小売 106% 80% 14% 12% 77% 37% 22% 18% -0.001 1期前 0.89

アンブランドラック 小売 96% 57% 18% 9% 11% 86% 31% 26% 16% 7% 7% 0.000 1期前 0.87

原油 スポット 87% 87% 108% 82% 26% -0.015 当期 0.52

スポット 小売 61% 30% 19% 13% 44% 15% 15% 14% -0.002 1期前 0.79軽油

ガソ

リン

転嫁元 転嫁先 上昇分転嫁率 下落分転嫁率 在庫係数 R2

計 当期 1期前 2期前 3期前 計 当期 1期前 2期前 3期前 4期前 [($/gallon)/Mbbl]

原油 スポット 97% 97% 101% 61% 40% -0.012 当期 0.38

スポット ブランドラック 102% 81% 21% 86% 76% 11% 0.000 1期前 0.86

スポット アンブランドラック 98% 88% 10% 87% 77% 9% -0.002 1期前 0.86

ブランドラック 小売 104% 77% 13% 14% 68% 32% 23% 13% -0.003 1期前 0.87

アンブランドラック 小売 100% 67% 18% 14% 89% 33% 25% 10% 10% 10% -0.002 1期前 0.87

原油 スポット 87% 87% 108% 85% 23% -0.002 当期 0.61

スポット 小売 52% 27% 16% 8% 74% 18% 20% 21% 15% 0.000 1期前 0.69

ガソ

リン

軽油

転嫁元 転嫁先 上昇分転嫁率 下落分転嫁率 在庫係数 R2

計 当期 1期前 2期前 3期前 計 当期 1期前 2期前 3期前 4期前 [($/gallon)/Mbbl]

原油 スポット 114% 114% 146% 146% -0.042 1期前 0.28

スポット 小売 71% 44% 15% 12% 52% 18% 19% 14% -0.009 1期前 0.77

原油 スポット 111% 90% 21% 102% 83% 19% -0.028 1期前 0.58

スポット 小売 63% 33% 22% 8% 61% 24% 16% 21% -0.002 当期 0.80軽油

ガソリン

Page 173: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 172 -

図表110 石油製品卸売価格変動と原油価格変動転嫁分[日本、2013-2015年]

米国では、原油価格のガソリン、軽油いずれの卸売(スポット)価格への転嫁も、完全転嫁に

近い状況であった。社会が時に期待・想像するような、原油価格変動の石油製品価格へのス

トレートな反映という意味においては、日本よりも米国の方が透明性が高いということになる。し

かし、スポット価格の実際の価格変動が原油価格変動と近しかったのかという問いに対しては、

PADD Vにおけるガソリンを例外扱いにしたとしても、必ずしもそうであったとは言い切れない。

図表111 石油製品スポット価格変動と原油価格変動転嫁分[米国、2013-2015年]

ところで、本「石油製品需給適正化調査(石油製品価格モニタリング事業(石油製品の価格

形成及び取引実態と石油産業の収益構造に関する調査))」の仕様書には、以下のような記

載がある。

60

7765 67

7864 66

76

56 62

-89

-106-96

-69

-104

-88

-57

-112

-94

-58

27 37 39 4228 32 42 35 24

-99 -99-83

-97 -108

-72-87 -98

-70

-150

-100

-50

0

50

100

RIM

海上

RIM

陸上

仕切 RIM

海上

RIM

陸上

仕切 RIM

海上

RIM

陸上

仕切

原油 ガソリン 軽油 灯油

下落分累積

¥/L

上昇分累積

実績

うち

原油価格

転嫁分

2.6

3.64.2

3.32.9

3.5

-3.9

-5.2-5.7

-5.3-4.9

-5.4

2.9 2.5 3.02.3 2.3

2.9

-3.9 -3.9

-5.7

-4.2 -4.2 -4.0

-6

-4

-2

0

2

4

6

PADD I PADD III PADD V PADD I PADD III PADD V

原油 ガソリン 軽油

下落分累積

$/g

allo

n上昇分累積

実績

うち

原油価格

転嫁分

8.3

-9.2

Page 174: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 173 -

...2014年7月頃から2015年1月頃にかけて、また、2015年7月以降の原油価格の下

落時において、石油製品のスポット市況は石油元売の仕切価格よりも早いスピードで

下落したことから系列販売店の小売価格にも影響が及び、石油元売各社は事後的な

仕切価格の調整を行わざるを得なくなった。他方で、こうした事後調整や系列販売店

への仕切価格の決定方式には不透明さが伴い、...

しかしながら、原油価格の各種転嫁関係の分析結果から浮かび上がるのは、「不透明さ」を

醸成したのは、スポット価格が結果として仕切価格よりも速いスピードで下落したのもさることな

がら、仕切価格が見せた他の価格より顕著な下方硬直性とその結果の上振れではないかと

いうことである。それは、石油元売各社が採算改善を図ったことの表れであるとも言える。とも

あれ、そうであれば、上記の文は例えば以下の方が、より実情を反映したものになるのではな

かろうか。

...2014年7月頃から2015年1月頃にかけて、また、2015年7月以降の原油価格の下

落時において、石油元売の仕切価格は原油価格ほどは下落しなかった一方で石油製

品のスポット市況は原油価格より大きく下落したことから系列販売店の小売価格にも影

響が及び、石油元売各社は事後的な仕切価格の調整を行わざるを得なくなった。他

方で、こうした事後調整や系列販売店への仕切価格の決定方式には不透明さが伴

い、...

Page 175: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 174 -

Ⅵ.透明性の高い価格指標を確立する為の方策

Ⅵ1.日本の価格指標の現状

図表 112 各価格指標の評価点と問題点

評価点 問題点

【陸上RIM】

元売会社 ・認知度が高く、現状、指標価格の中心になっている ・スポットマーケット(業転玉)であり、系列を対象にしていない

・カバーする油種、範囲が広い ・社名、取引数量、ヒアリング数が不明であり、根拠が不明確

・どの流通段階での価格なのか、不明確

・現時点(2016年3月)でIOSCO審査基準が満たされていない

・理屈上有り得ない海陸価格の逆転が見られることがある

中間(商社等)及び ・認知度が高く、現状、指標価格の中心になっている ・価格の根拠が不明確

   小売事業者等 ・(コストを考慮せずに良い立場から)実勢の価格である ・(小規模の小売事業者が)実際に購入できる価格ではない

・元売が仕切調整(事後調整)を行う際の指標となっている

【海上RIM】

元売会社 ・需要家の認知度が高い ・陸上RIMと連動しない

・陸上よりも元売りの動向に反応する(需給を反映) ・海陸価格の逆転が見られることがある

・TOCOMとの連動性が見られる

中間(商社等)及び ・輸入、販売時の指標として活用 元売りの市中買いの影響を受けやすい

   小売事業者等 ・陸上RIMと連動しない

・SS事業者とは直接関係がない価格である

【TOCOM】

元売会社 ・公設市場であり、透明性に問題はない ・当業者の参加が少なく、流動性は高くない

・主要油種を取り扱っている ・ビッドとオファが同一方向を向く場合が多い

・期近物と現物の取引価格との間に大きな乖離がみられる

・期近取引に比べて期先取引が圧倒的に多い

中間(商社等)及び

   小売事業者等 ・認知度が高く、(以前は)指標価格の一部になっていた ・当業者の参加が少なく、流動性が高くない

・公設市場であり、透明性に問題はない ・現物受渡しの自由度が制限される(元売系のタンクが多い)

その他投資家 ・純粋なデリバティブではないため、現物受渡の制限がある

・円建てであり海外マーケットとの連携が取りにくい(投資家)

【MOPS】

元売会社 ・現物取引の参考指標として活用 ・TOCOM,RIMよりも需要家の認知度が低い

・IOSCOの審査を取得しており、公正さをもつ ・国内需給の反映をしていない

・別途、フレートの反映が必要

中間(商社等)及び ・輸入時の参考指標として活用 ・国内取引で使用されるケースは少ない

   小売事業者等

【JOX】 ・参加している当業者33社の現物取引に限定される ・取引量が多くない

元売・大手商社等 ・需要家の認知度が低い

Page 176: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 175 -

前述したとおり、多数の石油元売り各社は事後調整が前提であった 2008年以前の値決め

方式から脱却し、市場連動による新仕切価格方体系を導入、事後調整撤廃による価格の完

全決着定着に移行していった。市場連動方式はその後、世界的不況による石油製品の需要

減退、あるいはアラブの春以降の原油高騰の中で、原油コストと価格指標の乖離が大きくなり、

元売りの収益を悪化させていった。元売りはベースとする指標を変更や販売コストの見直しを

重ね、現在ではより原油コストを概ね反映する方式に切り替えている。

図表 112に見るとおり、各価格指標には評価点がある反面、問題点も少なくなく、元売側

の大前提である原油コストがある程度反映できること、すなわち、原油との連動性が高い指標

は既存の価格指標の中には見当たらない。

一方、全石連が実施した販売事業者(組合員)向けの理想的な価格指標のアンケートにお

いて、「原油 CIF連動」、「原油卸指標連動」、「小売市況連動」、あるいは「新仕切体系以前

の月決方式を望む」等、幅広く多様な回答結果が出されており、万人が納得する価格指標を

絞り込むことの困難さが伺える。

今回の調査で明らかになった日欧の環境の大きな違いとして、メジャー(日本では元売)の

小売事業に対する関与の差、すなわち、日本においてはシェアの確保や効率の追求のために

製油所から SSまでのサプライチェーンが系列ごとに確立されており、この維持のために必要な

コスト(販売関連コスト)が発生せざるを得ないこと、そして長期間にわたる特約店契約が継続

していった結果、特約店には収益が悪化(特に業転格差に起因した場合)した際には元売に

補填を求め、元売もまた応じるといった日本独自の慣習が自然と出来あがっていった。

それに対し、米国では分離法による制限などもあり、また欧州では、コストと手間が発生する

小売事業の充実を求めるより、まずは製油所で生産した製品を完全に売り切ってしまうことが

優先されており、この差が小売市場においてシェア獲得を図る目的で一体化している日本と

欧米の大きな認識の違いだと思われる。本来は、販売が完了しているにも関わらず、遡及を

する“事後調整”のシステムは今回、欧州のヒアリング先には理解し難いようであった。

また、日本では誤解が多いものと思われるが、欧米で使われる「Platts リンク」、「Argus リン

ク」について、それぞれの絶対値がそのままリンクしていくわけではなく、ベースの部分の

「Platts」、「Argus」価格にそれぞれ「プレミアム」部分が付帯しており、この「プレミアム」は取引

条件その他個々の取り決めで決定している。従って日本の場合に当てはめると「RIM価格」+

「プレミアム」となり単一な「価格指標」ではないということとなる。その取引価格情報提供につ

いても、欧州が積極的に提供を行い、自ら指標形成を望んでいることに対して、日本では問わ

れればやむなく答えるが、出来れば自社の取引内容は隠匿しておきたい、さりとて他社情報に

は関心が高い、といった傾向が見られるものと思われる。

現在の「RIM 価格」はいまだに欧米の価格調査会社ほどには IOSCO 監査に対応しておらず、

利用者にすれば情報(取引実態)の公開も不充分との不満も強い。そもそも RIMは 2割程度

Page 177: 石油製品の価格形成及び取引実態と 石油産業の収益構造に ...平成27 年度 石油製品需給適正化調査 石油製品の価格形成及び取引実態と

- 176 -

の余剰玉が取引されるスポットマーケット価格であり、上述の通り、わが国の主流である元売を

軸とした商流の価格ではないことから、必ずしも原油との連動が保証されているものでもないこ

とが、現在の価格指標を巡る議論の根底にあるように思える。

次に、TOCOMは 1999年にガソリン、灯油が上場されて 2003年に取引のピークを迎えて

以降は縮小しており、参加者は減ってきている。その理由としては、決済が円建てとなっている

ため為替リスクの発生から海外投資家の参入が少ないこと、また ICEのガスオイルのような流

動性の高い取扱商品がないこと、当初は投資家保護のためのクリアリングハウス(清算機関)

の整備が遅れていた、等の理由からマーケットが縮小、ヘッジャーとなるべき当業者(元売等)

の参加が減っていったことが考えられる。さらに石油市場にどのような動きがあると値上がりし、

どのような値動きがあると値下がりするといったような、関連統計の提供も含めた一般投資家

を呼び込むようなツールも未整備なため、当業者以外は参加しにくい状況が続いている。また、

純粋なヘッジ取引に求められる、差金決済としての利用にも障害が残されており、欧米では整

備が終わっている、先物市場の形成に必須となる現物市場の育成も課題となっている。

一方で、業界紙等では、スポット価格に引きずられる形での元売による「先行指標の下方

改定」が行われていると報じられており、これは「事後調整復活」の誤解を与えかねず、販売

事業者間の不信感を助長する一助となりかねない。したがって、速やかに透明、公正な値決

め方式が確立されることが望まれるが、一方で精販それぞれの立場で納得できる価格形成の

環境整備として、第二次エネルギー供給構造高度化法を経て、適正な需給状況の実現が必

須である。

また、勢いに衰えのない PBSSについて、2015年にはコストコも参入して一部店舗では不当

廉売が問題になるなど、系列業者との価格差がクローズアップされている。圧倒的な販売量と

全取扱商品数約 4,000点で管理費等のコストが希釈できるコストコと系列業者が互角に勝負

できる価格指標は存在しないものと思われる。それはそもそも、「価格指標」+「プレミアム」の

「プレミアム」部分において販売量や決済条件で系列販売業者が太刀打ちできないレベルに

あることが、欧米の例からも想像できる。

価格指標の透明化を議論する際には、精販どちらかに立場に傾くことがなく、業界全体とし

て適正なマージンを確保しつつ、エネルギーセキュリティの視点からは継続的に安定供給が

維持できる価格水準を保ち、その上で、価格指標にどれを用いるかの議論とともにブラックボ

ックスになりがちな「プレミアム」部分についてのルール作りがまずは必要であろう。また「ブラン

ド料」についても、このプレミアムの一環として捉え、このプレミアムとそれによって提供される有

形、無形のサービスに不満であれば、系列を離脱するのが欧米では通常の商行為である。

併せて、8割を占める系列取引価格を決める根拠が、残る 2割のスポットマーケット価格に

委ねられていることが果たして正しいことなのかどうかも議論の余地があると思われる。