就業継続しやすい環境整備...

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All Rights Reserved Copy rig ht( C)FRI 2007 1 就業継続しやすい環境整備 就業継続しやすい環境整備 に向けて に向けて ~働き方や業務の進め方の見直し等 ~働き方や業務の進め方の見直し等 2007.3.28 富士通総研 主任研究員 渥美由喜 第2回点検・評価分科会 資料4

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Page 1: 就業継続しやすい環境整備 に向けて(3)両立支援制度を利用することで周囲に対する迷惑 • 自分の利用は「迷惑をかける」が多く、人の利用は「ど

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1

就業継続しやすい環境整備就業継続しやすい環境整備に向けてに向けて

~働き方や業務の進め方の見直し等~働き方や業務の進め方の見直し等 ~~

2007.3.28

富士通総研 主任研究員

渥美由喜

第2回点検・評価分科会

資料4

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問題意識-依然として両立しようという男女は少ない

就労女性

100%

退職

29%

出産

71%

退職

7%

育休取らずに復職

14%

育休取得

50%

育休後、復職

14%

退職

36%

就業継続

28%

約7割

退職

72%

就労男性

100%育休取得

0.5%(低下傾向)

就業継続

99.5%

女性の7割が出産を機に退職し、男性の育休取得率はわずか0.6%女性の7割が出産を機に退職し、男性の育休取得率はわずか0.6%

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問題意識-両立困難な要因と対応策を探る3

就労

両立の坂道

就労継続

結婚・

出産の決断

第2子出産

女性7割退職

・両立支援制度の充実により、昔よりも「坂道の傾斜」は緩やかに。・しかし男女ともに、「両立の坂道」を上らない人が依然として多数なのは、坂道の傾斜が依然として厳しいこととともに、その手前に「ハードル」があるのではないか。

人生設計Life Plan

心理的・物理的なハードル

昔よりも傾斜は緩やかになった

男性99%育休取らず

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論点①両立支援策の利用促進に向けた対応策

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(1)両立支援策が利用されない理由ー企業回答

(資料)内閣府『企業における子育て支援とその導入効果に関する調査研究』2005年。

では、従業員は?⇒

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(2)両立支援策が利用されない理由-従業員回答

では、周囲はそんなに迷惑なのか?⇒(資料)富士通総研『中小企業の両立支援に関する従業員調査』2005年。

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(3)両立支援制度を利用することで周囲に対する迷惑

• 自分の利用は「迷惑をかける」が多く、人の利用は「どちらともいえない」が多い。

43.1

46.5

57.4

18.2

16.4

17.8

12.0

43.3

40.5

35.7

30.5

38.5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

部下が利用する場合

同僚が利用する場合

上司が利用する場合

自分が利用する場合

周囲に迷惑がかかる 周囲に迷惑がかからない どちらともいえない

c

n=4519

「遠慮」と「曖昧さ」に起因するのでは?⇒(資料)富士通総研『中小企業の両立支援に関する従業員調査』2005年。

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(4)両立し易い環境へ変化した契機は「トップダウン」

鶴の一声で、「遠慮」と「曖昧さ」を払拭⇒

42.6

20.3

20.0

14.4

13.9

5.0

2.8

1.4

17.5

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

経営陣の意識の変化(トップダウン)

企業の社会的責任を果たす観点から

有能な人材の確保を進めたかったから

人事労務管理部門の主導

従業員の要望が高まったから

業績の好転

業績の悪化

取扱商品の購買決定権が女性にシフト

その他 全体(n=1111)

(%)

(資料)富士通総研『中小企業の両立支援に関する企業調査』2005年。

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(5)両立先進企業における代替要員の考え方

① 育児休業者の人員の空きへの対処

• 育児休業中の社員に代替要員は確保していない企業も少なくない。

• その理由は、休業者がでた時に、組織・業務体制全体の見直しを図らなければいけないと考えているからである。代替要員を確保しても、育児休業の場合は半年から一年という短期間で代替要員を訓練することは難しい。そこで、職務を具体的に再編したり、無駄を省くといった形で対処している。

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(6)両立支援策の利用を推進する「組織・業務体制の見直し」

• 組織・業務体制の見直しで「両立支援策」の利用が進むとともに、「企業業績」へもプラスの影響。

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(7)最も大きなメリットは「仕事の進め方の見直し」

(資料)『両立支援・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)推進が企業等に与える影響に関する報告書』(2006年12月)、内閣府男女共同参画会議 少子化と男女共同参画に関する専門調査会

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(7)組織・業務体制の見直しは「一石ニ鳥」の効果

• 組織・業務体制の見直し→仕事と育児の両立を容易に– 部署間の重複業務の見直し、下位の役職への権限委譲を行うと、両立支援策の利用度が上がる。

• 組織・業務体制の見直し→企業の業績の向上へ– 中小企業では、社内の無駄な業務をなくし、労務管理権限などを下位の役職に委譲することで、業績を上げている。

• 組織・業務体制の見直しを並行して行なうことで、「両立支援」と「企業業績の向上」という一石二鳥の効果がある。– 両立支援策はコストがかかるから、実施しにくいというのは誤り。

抜本的な対策は、「組織・業務体制の見直し」⇒

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第3-3-●図 企業組織・業務の見直しと両立支援策の利用度の関係

0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08

部署間の重複業務の見直し

経営陣と管理職の権限の見直し

意思決定権限の分散化(下位職位への委譲)

管理職と一般社員の職務の見直し

部署等の組織の統廃合

組織のフラット化 職位階層の削減

イントラネットなどIT環境の整備

業務の効率化・コスト削減の推進

意思決定権限の集中化

社内業務のペーパレス化

業務のアウトソーシング化

新規事業の開拓

(利用度)

育児休業

勤務時間短縮

フレックスタイム

権限の下位への委譲

資料:富士通総研「中小企業の両立支援に関する企業調査」(2005年)(注) 利用度の算出方法は付注●-●-●参照。

「無駄な業務のカット」、「権限委譲」が不可欠⇒

(6)利用し易い企業は、組織・業務体制を見直している

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<ある両立先進企業の時間制度>

(1)残業と超過勤務の区別• 残業と超過勤務を概念的に明確に区別し、無駄な時間外労働を発生させないよう従業員に指示している。超過勤務が発生する場合には、まず、その内容を自分で判断した上で上司に相談する。上司はその内容から超過勤務の必要性を判断し、会社に申告する仕組みとなっている。

(2)時間券• 超過勤務となる場合は、当該業務を処理するために必要な時間を上司と協議の上で算出し、「時間券」を各部で発行して会社に申告する仕組みとなっている。時間券による申告がない場合は、時間外労働が認められない。

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論点②制度利用に伴う「3つのロス」への対応策

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(1)育児休業に伴う「3つのロス」

• 所得ロス、キャリアロス、業務知識ロスへの懸念が大きい。

• 正社員が育児休業や短時間勤務の利用を躊躇してしまう理由をみると、企業規模にかかわらず「所得ロス」への懸念がもっとも大きい。

• 従業員規模が大きくなるほどキャリアロスへの懸念が大きくなる。

0

10

20

30

40

50

60

0~20人 21~50人 51~100人 101~300人 301~1000人 1001人以上

(%)所得が減ってしまう懸念昇進昇給の遅れが生じてしまう懸念業務知識に遅れてしまう懸念参考となる先輩の不在その他

(資料)富士通総研「中小企業の仕事と育児の両立に関する調査」(2005年)

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<ある両立先進企業の取り組み><ある両立先進企業の取り組み>

①育児休業から早期に復職した従業員への賃金上乗せ

• 育児休業から早期に復職した従業員に対しては、個々の状況に合わせて雇用保険からの給付金(4割)に上乗せをしている。例えば、休業を続けた場合の埋め合わせに派遣社員を採用すると仮定して、発生する追加負担をある程度勘案した結果、月額8万円を賃金に上乗せすることとした。

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0

20

40

60

80

100

の所得

ロス

(5割適

の所得

ロス

(5割適

の所得

ロス

(8割適

50

35

20

(2)所得ロスへの対応策

• 現行制度は給付額の上限があることもあり、「夫取得+妻就労」と「夫就労+妻取得」で夫妻合計の所得に大きな差が発生⇒妻が取得する方が所得面では「得」

• 「パパクォーター制」の導入• 父親だけが取得できる育児休暇。ノルウェーが導入(男性取得率85%)。両親どちらが取得してもよい育児休暇のうち、6週間は父親のみが取得可。

• パパクォーター分の所得保障を「8割」に⇒給付額上限を撤廃しパパクォーター分の所得保障を引き上げ⇒夫妻での取得が中立に

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• 日本企業の大半がマイナス評価(キャリアロスがない企業は10に満たない)

• スウェーデンでは、 9割の企業でロス発生せず、 1割の企業が育児取得前よりも休業中を「プラス評価」

• その理由は、①社会的に意義のある行動(ボランティア休暇と同様)だから

②時間管理能力の向上などが見込まれるから

「時間あたりの生産性の把握」、「業務の標準化」が重要

(3)キャリアロスへの対応策

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<BT(British telecom)の取組み>

• 職種、役級ごとに、従業員一人ひとりの役割分担、生産量、結果、仕事の質、達成速度を表示するシステムが確立。それを個々の従業員に明確に伝えている。

• 全従業員をこの要素を元に評価する。よって簡単に成果レベルがわかり、手助けがいる場合を見極めることが可能になる。

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(4)業務知識(社内情報を含む)ロスへの対応策

0% 50% 100%

育児休暇中の雇用主と従業員との定期

的な連絡

育児休暇後の雇用主と従業員とのフォ

ローアップの話し合い

育児休暇を取得中の従業員の分業

育児休暇中の従業員への社内情報提供

はい、よく利用されています

はい、しかしあまり利用されていません

いいえ

問 御社では子どもを持つ従業員に対する独自の支援制度はありますか?  もしもあるのならば、それぞれの制度は従業員によってどの程度、使用  されていますか?

(資料)富士通総研『スウェーデン企業のワークライフバランス調査』(内閣府の委託事業)より作成。

• スウェーデン企業では、育休中の雇用主・同僚とのコミニケーションが密⇒wiwiw(資生堂)やアルモ(株ワークライフバランス)などの支援ソフトが有効

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(4)業務知識(社内情報を含む)ロスへの対応策

○より抜本的な対策としては、2分の1休暇といった「部分取得」、および複数回に分けた「分割取得」が有効。

○わが国でも育児休業を「1回のみ。継続した期間」ではなく、「分割取得・部分取得」を可能にして、育児休業中の部分的テレワークなど多様な選択肢を設けるべき。

○これにより、業務知識ロスのみならず、所得ロス、キャリアロスも軽減される。

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企業の子育て支援の取組みの促進に向けて

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基本的な視点

• 今後は、ひとにぎりの「先進企業」と多くの「後進企業」とに二極分化してしまうことが強く懸念される。

• 「やろうと思ってもどうしたらいいかわからない」、 「代替要員とかコスト増になりそうでとても無理」というように、 はじめから思考停止しているような企業をどうやって底上げしていくかという視点が重要。

• 「行動計画&クルミンマーク」は良い試みだが、インセンティブとしては、やや弱い。

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(1)企業の政策ニーズー費用負担軽減に期待大

(資料)内閣府『企業における子育て支援とその導入効果に関する調査研究』2005年。

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(1)企業の政策ニーズ

70.8

55.3

47.3

37.1

20.5

19.4

14.3

13.9

7.2

2.2

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

企業への補助金や税制優遇措置

を講ずるべき

託児所・保育所を整備すべき

家庭向けの補助金や税制優遇措置を講ずるべき

育児休業中の所得保障をもっと充実すべき

家事支援サービスを充実すべき

サービス残業をなくすための取り組みを進めるべき

代替要員の確保のために人材斡旋システムを作るべき

女性の就労が少ない分野など女性の進出を促進すべき

企業への表彰制度を拡充すべき

その他

全体(n=2543)

(%)

「仕事と育児の両立」の支援で国がとるべき施策(Q44:複数回答)

(資料)富士通総研『中小企業の両立支援に関する企業調査』2005年。

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(2)企業への税制優遇に拡充措置

• フランス政府は、二〇一〇年までに保育所の定員を五万人増やす計画を立てている。このうち、一万人を保育所企業内保育所で賄う方針だ。このためフランス政府は、保育所企業内保育所の建設費用の八割、運営費用の約四割を助成する制度を二〇〇三年度から導入した。

• 日本でも企業向け税制優遇(4月から実施)や公的助成制度はあるが、最大でも建設費用、運用費用の五割にとどまる(たいていは、それ以下)。しかも、五年の期限があり、六年目からは全額企業負担となる。フランスの助成は、わが国よりもかなり手厚くなっている。

• また、ベビーシッターや家事代行サービスにかかる費用の半額が個人の所得税から控除される。企業がそれらのサービスに利用できるバウチャーを従業員向けに発行した場合も、その経費の四割程度が法人税から税控除される。

• 企業が積極的に子育て支援をするように、税制優遇でインセンティブをつけるとともに、バウチャーで市場原理を働かせてサービス供給の拡大を図っているのだ。日本もぜひ学びたい戦略である。

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(2)WLBを広めるための方策、深めるための方策

①WLBを広めるための方策

• →コンサルティング(日本では一部の自治体のみ)

②WLBを深めていくための方策

• →ベンチマーク(日本ではなし)• →企業ランキング制度(日本では企業申告のみ)

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(3)コンサルティングの課題

個別企業の最適ミックスをきめ細やかにコンサルティングする役割が非常に重要である。

– 成功モデルは、業種、従業員規模、従業員構成、従業員のタイプ別分布状況等によって大きく異なる。

• チャレンジ基金のように、無料でコンサルタントを派遣する事業が必要。

• 自治体が先行(千葉県など)。

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(4)ベンチマークの課題

・ 企業の取り組みの絶対水準を測定するベンチマークを決めることが重要。

・ この点で、次世代法で、301人以上の企業に義務付けた「行動計画策定」は制度の上乗せのみを記述。

・ これまで取り組んできた企業ほど不利。企業によっては、「あとで書くことがなくならないように出し惜しみする」という本末転倒な対応も出ている。– 認定マーク(クルミンマーク)付与は魅力がやや薄い。

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(5)企業ランキングの課題

○2006年6月に、月刊誌『日経ウーマン』編集部に協力して、女性を活用している企業ランキングづくりのプロジェクトに携わった。○上位ランクイン企業の従業員から「実際には使いづらいから、あのランキングには違和感があった」との声。○これまでの日本の同種の調査は、どれも同様に企業の回答のみに基づくという制約があった。

○イギリスの表彰制度のように民間が主導する仕組みを導入すべき。

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(6)従業員の声を反映させる仕組み

• プレゼンテーションした後に、質疑応答。

外部の中立的な民間シンクタンク

• 調査の実施

企業

• 要項に添った基礎データ(数ページにも及ぶ詳細な内容)とともに全従業員の名前と連絡先を提出。

• 企業の提出名簿から無作為で抽出した従業員に対してアンケート調査を発送

従業員

• 回答はweb上で集計

有識者の審議会

※ 調査費用は、貿易産業省が後援、企業も応募費用、残りは主宰団体が負担。

メディア委託

委託

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(ご参考)WLBしやすい職場環境作り

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(1)業務を抱え込まずオープンにする

• 従業員にも改善の余地がある。自分にしかできない、わからないということを重視してしまい、自ら休みにくくしている面もある。– 自分のしていること、自分がわかっていることをもっとオープンにして、他の人に代替されやすくする工夫も必要。

– 新しい仕事や次のステップへの移行を考えれば、「自分にしかできない。わからない」ことは、できるだけ「同僚や部下にも明瞭に」「誰にでもできるように」していくほうが賢明。

– 他の人に任せられれば、新しい仕事にチャレンジする余裕ができるし、次のステップに円滑に移行できる。

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(2)「多能工化」と「作業のマニュアル化」

• 普段、多能工は一人ですべての作業をこなして生産を行なっているが、あるラインで人手が足りなくなると、そのラインのサポートに駆けつける。こうして一人が急に休んだとしても、ラインの生産性は維持できる。– さらに、多能工として育成された人は、作業全体を俯瞰できるので、就労意欲がいっそう高まるというメリットもある。

• 一方、多能工の育成には時間がかかる。余剰人員を抱えていないとなかなか難しいという問題もある。そこで「多能工化」ではなく「作業のマニュアル化」を進めている企業も多い。– 作業マニュアルを作成するためには、すべての作業を洗い出さねばならない。そのなかで非効率な部分が明らかになり、いっそうの効率化が図れるというメリットもある。また、すべての人にわかりやすい説明を書こうとすると、それまで当然視してあまり深く考えてこなかった作業への理解が進むというメリットもある。

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(3)ホワイトカラー業務、知的生産業務の標準化

• ホワイトカラーの業務も八割は標準化できる。– 毎日、仕事を終える前に「明日以降にやる予定の業務」をすべて列挙して、それぞれの業務にかかる見込み時間を書き込む。筆者はそれを見て、業務の優先順位を入れ替えたり、見込み作業時間について標準時間と比較してコメントをする。

– 毎朝、一日の業務の進行予定および優先順位を頭に入れてから、業務を開始する。そして、仕事を終える前には、業務ごとに見込み時間と実際の時間を比較して、業務を効率的に進める改善点を考える。

– 原則としてチーム内では、すべてのメールをメーリングリストでやりとりする。

– つまり、チームメンバーは自分のみならず、他メンバーの業務予定や進捗状況に関する情報もリアルタイムで共有することで、全体の業務の進み方が把握できる。

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(4)業務の「誰でもできる化」

• 業務の「見える化」「誰でもできる化」を進めることで、チーム内に両立しやすい雰囲気が醸成される。– 残業せずに定時で帰宅することに抵抗感が生じなくなる。メンバーごとに業務の進捗状況がリアルタイムで共有されているので、定時に帰宅するメンバーがいても、「仕事に不熱心」との印象はまったく持たれない。

– むしろ「時間当たりの生産性が高い人だからこそ、残業をせずに帰宅できる」というイメージになる。

– もちろん、業務繁忙期には残業せざるをえない状況もあるだろうが、「誰でもできる化」を進めていれば、チーム外から応援を頼んでも円滑に業務を遂行できる。

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(5)まとめ

• ワーク・ライフ・バランス推進の本質は「従業員のやる気を引き出しつつ、業務体制を見直すことによる、個人とチームの生産性向上にある」。

• その結果、両立支援制度の利用は進むし、業績にもプラスの効果がある。

• 今後は、民間活力を活かしつつ、WLBを広め、深めていくための工夫が求められよう。

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