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中核拠点の現状と今後の取り組み
京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)
1
2017年12月13日
所長 山中伸弥
iPS細胞ストックプロジェクトの概要
2
iPS細胞による再生医療
再生医療用iPS細胞ストック
多額の費用と時間が必要
細胞採取
iPS細胞作製
品質評価
分化誘導 移植
品質評価
3
HLAホモドナー
HLAホモドナーの有用性
HLA型: 細胞の“血液型”数万種類以上
4
佐治博夫先生(HLA研究所)よりデータ提供
90%
80%
73%
0%
50%
100%
カバーする割合
HLAホモの型の種類
0 50 100 150 200 25010
HLAの種類とカバー率
75種類で日本人の80%、140種類で90%をカバー
5
200
100
03.7 万人
6.4 万人
16 万人
140種類
75種類
50種類
0 5 10 15 20
検査人数 (万人)
見つかる
HLA型の種類
佐治博夫先生(HLA研究所)よりデータ提供
検査人数と見つかるHLA型の種類
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現行の成果目標
「iPS細胞研究ロードマップ(H24.5.28)」に基く10年で日本人の大半をカバーするストック構築を目指す
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臨床グレードiPS細胞作製
徹底的な品質評価
同意取得と採血
iPS細胞研究所(CiRA)FiTHLAホモドナー
同定
臍帯血バンク
HLAホモ臍帯血
中核拠点・iPS細胞ストック事業の概要
(日赤血小板ドナー、骨髄バンクドナー)
出荷
京大病院・iPS細胞外来(京都)
海上ビル診療所(東京)
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これまでの研究成果
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味の素(株)
StemFit AK03
(株)ニッピ
iMatrix-511MG
培地 基材(足場材)
2014.1.22
培地について、生物由来原料を含まないことをPMDAが確認
2014.12.15
足場材について、生物由来原料基準に適合していることをPMDAが確認
Ff-iPS細胞プロジェクト
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CiRA-味の素-阪大-ニッピで共同開発
Nakagawa et al., Scientific Reports (2014)
Gene expression microarray
8 probes (3 genes)
HHLA1
C4ORF51
ABHD12B
分化抵抗性マーカー(DRRGs)
Differentiation-resistance
related genes (DRRGs)
Koyanagi-Aoi & Ohnuki et al., PNAS (2013) 11
全ゲノム
シークエンス(WGS)
ヒトゲノム配列へのマッピング
SNV/Indel検出
(確認)
アンプリコンシークエンス
SNP Array
構造多型(SV) Detection
SNV
Indelコピー数多型
(CNV) 検出
全エクソームシークエンス
(WES)
実験
情報解析
(確認)ddPCR
(オプション)
ゲノム評価:パイプラインの構築
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FAM
(A
lt.)
In
ten
sity
HEX
(Ref
.)In
ten
sityHeterogeneous
iPSC
Homogeneous iPSC
Hetero NegCon Clone1 Clone2 Clone3 Clone4 Clone5
Mutation ○ × ○ × ○ × ○
NO Mutation ○ ○ × ○ × ○ ×
Mutation
Mutation
変異を持つ細胞をddPCRで選別可能に
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0.00%
10.00%
20.00%
30.00%
40.00%
50.00%
60.00%
70.00%
80.00%
90.00%
100.00%
オリジン PCS 出荷 iPS継代 iPS長期培養
BC
OR変異率
CiRA
A施設
B施設
C施設
D施設
E施設
F施設
G施設
H施設
BC
OR変異率
BCOR遺伝子変異率の増大
iPS細胞の品質のばらつきは未だ大きく、さらなる研究が必要
さらなる研究の必要性
14
これまでの実績
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・ 連携先:日本赤十字社、骨髄バンク、臍帯血バンク
・ ドナーリクルート実績:
HLA型:1位~11位、13位、14位、17位、18位、22位24位、26位、43位、51位、66位、98位
※ 22種類で日本人の約59%をカバー※ 8位、9位、10位、14位は今後採血予定
ドナーリクルート実績
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ストック製造実績
末梢血由来
第1位(QHJI) :提供中第2位(RWMH):提供中第3位(DRXT) :評価中(製造済み)
臍帯血由来
第1位(YZWJ) :提供中(再製造)
今年度中にHLA第3位までのストックを出荷予定日本人の約32%カバーを達成
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(ILCL) :評価中(製造済み)第2位(GLKV) :評価中(製造済み)
評価用iPS細胞ストック
30 プロジェクト、30 機関
臨床用iPS細胞ストック
10 プロジェクト、11 機関
大日本住友製薬(株)ヘリオス高橋政代先生(理研)金村米博先生(大阪医療センター)澤先生(大阪大学)福田先生(慶應)高橋淳先生、江藤浩之先生、妻木範行先生 など
ストック提供実績(11月末現在)
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非営利機関には無償、営利機関には1株10万円で提供
失敗から学ぶ
2017年1月 臍帯血由来YZWJ株
異なる試薬を使用した可能性が判明し提供停止
再発防止に取り組んできました。
- 製造工程における対策
- タカラバイオとの共同研究
- 組織体制の強化19
失敗から学ぶ
- 製造工程における対策
- タカラバイオとの共同研究
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・民間のノウハウを参考に業務の見える化を行いリスクを分析
・作業工程と試薬管理の見直し
- 組織体制の強化
・ それまで別組織であった管理部門と製造評価部門を一体化
・教育訓練強化・作業者認定システム導入
・業務及び責任体制を明確化し、手順書等に反映
・新しい組織の幹部に企業出身者2名を招聘
CiRA/FiTに寄せられる期待
- 大日本住友製薬
- 武田薬品工業
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・ 日本で実用化を目指すiPS細胞製品の原料はCiRAのストックを使用する方向
・日本で実用化を目指すiPS細胞製品の原料はCiRAのストックを使用する方向
・ストック以降のiPSの製造工程に関してもMCB作製までの製造をCiRAに依頼したい
ストック普及の課題
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HLA型を合わせるか
非営利機関:合わせることを検討営利機関:合わせることに非積極的?
分化機関に対して「HLA型を合わせるか」をアンケート (平成29年度)
合わせない
可能なら合わせる
合わせる
出来れば合わせない
どちらとも言えない
非営利 営利
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ストック普及の課題
患者さんの負担を減らしたい
HLAを合わせた医療の実現(ストックプロジェクト)
企業が複数種のHLAを揃えられない理由 =公共性&コスト
1.ドナー: 企業の努力だけでドナーを集めることは困難2.製造コスト:企業に委託すると高額になる3.特許問題: 特許ライセンス料が高額になる恐れ4.規制: HLA型ごとの非臨床・臨床試験
これらの問題を解決しないとHLAホモストックは企業では使われない(実医療として普及しない)
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非営利機関であるCiRAが主体となることでストックの推進とコスト減に貢献する
CiRAが貢献できること
製造コスト
特許問題
規 制
公共性の高いインフラであるストックで利益を得ることは考えない
公共的な立場からの調整が可能
特許を回避するiPS細胞の研究・開発
(iPS細胞基本特許クロスライセンス等の手段)
CiRAで情報集約、分化機関と共に対応
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ドナー日赤、関連バンクやドナーとの間で公共性を基盤とした信頼関係を構築
今後の方向性
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今後の方向性(ストックの展開)
2.HLAホモストックの製造を継続する
• 現在は母集団が小さく、リクルートの方法を再考する必要あり
1.日本人の大半(80~90%)をカバーするHLAホモドナーの方を見つけることを目指して、リクルートを継続する
• 一般臨床への普及を目指して企業での利用性を高めるため、ストックのGMP・海外の規制対応をあわせて行う
• 日本人の50%カバーを当面の目標とする
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3.ストックで培った技術を活かして、アカデミアが行う治験や臨床研究をサポートする
• FiTにおけるiPS細胞の樹立・拡大培養の実施や、分化細胞の製造管理・品質管理業務の支援を行う
今後の方向性(ストックの研究開発)
4.ストック実用化のための必要な基礎研究を行う
5.関連研究の進展等を踏まえて柔軟に対応するため、3年後を目途に研究計画を再度見直す
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• 特許問題回避のバックアップとして、センダイウイルスベクターによるiPS細胞ストックの製造検討を開始する
• iPS細胞の品質のばらつきを抑えるための研究を継続する
• HLA編集など、次世代のiPS細胞の研究に取り組む
• ゲノム解析の標準化(がん遺伝子パネル等)
• H1fooなどの新技術によるiPS細胞の品質の均一化
• 培養自動化
HLA順位 ~FY2016 FY2017 FY2018 FY2019 FY2020 FY2021 FY2022
GMP
1位 ●
2位 ●
3位 ● ●
4位 ●
5位 ●
6位 ●
7位
8位
9位
10位
今後のストック出荷スケジュール
17%
32%
40%
43%
24%
50%
出荷済みストック
数字は累積カバー率
※ ドナーリクルートの状況で製造する順位、カバー率は変わりうる (8位~10位までは今後採血を予定)
GMP対応後MCB製造検討
GMP体制整備
アカデミアのiPS細胞・製造管理サポート(自家など)
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必要に応じて研究計画の見直し
●
●
●
●
● 出荷予定ストック
FY2017 FY2018 FY2019 FY2020 FY2021 FY2022
GMP
海外展開
ストック製造(ドナーリクルート)
ストック製造(本製造)
ストック製造(バックアップ株)
関連研究
規制対応
今後の全体スケジュール
日本人の50%カバーを目標に製造(末梢血・さい帯血) 研究計画の
日本人の大半(80~90%)をカバーするためのドナーリクルートを継続
事前検討 品質や需要を判断しながら製造要否を判断
HLAマッチの意義検討 (ストックを使用した臨床研究・治験)
30%まで製造
海外展開も可能な製造体制確立
ストック実用化のための研究の実施、実製造への反映
GMP体制整備
ドナーリクルート
体制整備
基礎的研究
事前検討
Phase 1 Phase 2
個別的対応CiRAと分化機関が共同してエビデンスを構築
(特に造腫瘍性) 30
必要に応じて
見直し