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CCD/CMOS イメージセンサの基礎と応用 3-1 どうやって動くのだろう 藤川 真里 2010.9.3 CCD イメージセンサの動作を分解してみると、基本的に四つの基本動作 によって成り立っていると考えられる。 1. 光電変換 2. 電荷の蓄積 3. 電荷の転送 4. 電荷の検出 光電変換と電荷の蓄積はフォトダイオードで、電荷の転送は垂直 CCD と水 CCD で、電荷の検出は FD アンプで行われる。 Figure 1: 1

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Page 1: CCD/CMOSイメージセンサの基礎と応用 3-1 どうやって ...nakajima/M1M2seminar/...1 光電変換 1.1 光電効果 光電変換とは、撮像面に当たった光の強さに応じて電荷が発生することであ

CCD/CMOSイメージセンサの基礎と応用3-1 どうやって動くのだろう

藤川 真里

2010.9.3

CCDイメージセンサの動作を分解してみると、基本的に四つの基本動作によって成り立っていると考えられる。

1.  光電変換

2.  電荷の蓄積

3.  電荷の転送

4.  電荷の検出

光電変換と電荷の蓄積はフォトダイオードで、電荷の転送は垂直CCDと水平CCDで、電荷の検出は FDアンプで行われる。

Figure 1:

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1 光電変換1.1 光電効果光電変換とは、撮像面に当たった光の強さに応じて電荷が発生することである。光電効果には外部光電効果と内部光電効果があるが、半導体を用いたCCDイメージセンサは内部光電効果を利用して信号電荷を得ている。内部光電効果とは、エネルギバンドにおいて、価電子帯にある電子が光のエネルギを受けて伝導帯に励起される現象である。CCDイメージセンサに使われる Si単結晶の光電変換を得るためには、Si単結晶のエネルギバンドの状態から、光の波長は 1100nm以下である必要がある。

Figure 2:

1.2 光の吸収半導体に光が吸収される際、光子のエネルギが電子のエネルギなどに置き換わる。そのなかでも光子が電子を価電子帯から伝導帯に励起するのに必要なエネルギをもち、光電変換を起こす事を基礎吸収とよぶが、これは光の波長に対する感度に大きく影響するので重要である。光はすべて結晶表面で吸収されるのではなく、結晶の中に入り込みながら表面から徐々に吸収される。Si単結晶の基板表面の座標を 0として、表面に垂直な x軸方向に吸収されながら光が進んでいくとすると、基板表面からの深さ xにおける光強度を Iとすると、光強度 Iの深さ方向の分布は、

I = I0e−αx

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のように指数関数で表される。ただし、αは光の吸収係数で、I0は基板表面における光強度である。これは、αが大きければ光は基板表面近くですぐに吸収され、逆にαが小さいと基板深くまで光が進んでも光がなかなか吸収されないことを示している。可視光で考えると、波長の長い赤の光が吸収される深さは、青の光に比べて約 10倍の 3.0µmが必要である。

2 電荷の蓄積電荷の蓄積は、光電変換で得られた信号電荷を集め、出力するまでためておく動作である。信号電荷は正孔と電子が考えられるが、多くのCCDイメージセンサは電子の方を使う。フォトダイオードの中に、周りより電位の高い部分をなんらかの方法で作り出せば、電子がそこに集まり蓄積することができる。Si単結晶の中に周りより電位の高い部分を作る方法を簡単のためMOS1構造をした二つをもつキャパシタを例に考える。

2.1 表面型MOSキャパシタ図のように、MOSキャパシタの基板裏面 (Semiconductor側)を接地して、表の電極 (Metal側)に正電圧をかけると、電極下に位置する Si基板表面の電位が高くなる。この状態で電極にほど近い Si基板の表面は、周りが接地電位で囲まれ基板の中で最も高い電位になり、電位の井戸を形成するので電子を蓄積することができる。

2.2 埋め込み型MOSキャパシタMOSキャパシタを使った電荷の蓄積は、蓄積部を表面ではなく基板内部に作ることも可能である。構造的には表面にN型の層が形成されている点だけが違う。N型は電子が多数キャリアなので、空乏層を形成すると電子が逃げる分だけ正に帯電する。よってP型の領域とエネルギバンドの曲がりが反対になるので、図のように基板表面より少し深いN型の領域の中に、最も高い電位の井戸が現れる。

表面型の場合、Si基板の表面に信号電荷が蓄積されるが、Si基板の表面は結晶がその部分で途切れているため、エネルギバンドが理想的にできあがっ

1Metal Oxide Semiconductorの略で、集積回路で最もよく使われている構造。

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Figure 4:

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てる訳ではなく、その場所では電子が捕獲されたり、信号ではない電子が発生したりしやすく、ノイズが多くなる。それに対して埋め込み型はノイズを受けやすい基板表面を避けるため、電荷の蓄積においても、転送においてもノイズが少なくなる利点があるので、N型層とP型層を合わせた埋め込み型は、CCDイメージセンサにとって重要である。信号電荷の蓄積は、長時間は放っておくと蓄積している電荷の数が変わってしまったり、電位の井戸が消滅したりするので、過渡的な動作であるということも重要なポイントである。

3 電荷の転送電荷転送の原理を端的に言うと、電荷が蓄積された電位の井戸を移動する動作である。

3.1 電荷転送の仕組みCCDの基本的な構造である 4相CCDの例が図。複数のMOSキャパシタが隣接した構造になっていて、Si基板上に 2層のPoli-Si電極が酸化膜を絶縁材料として間にはさみながら、オーバーラップして配置されている。各電極に電圧を独立に与えることができるので、そえぞれのMOSキャパシタは異なる電位の井戸を形成することができる。また、四つの電極は一つの繰り返しになるように四つの端子に接続されていて、4相のクロックパルスを与えることができるようになっている。よって図のように電位の高い井戸と低い部分を形成しながら電極の並びに従ってその電位の井戸を移動することができる。このようにして、信号電荷を転送することができる。

3.2 取り扱い電荷量転送できる信号電荷の量、つまり取り扱い電荷量がどのくらいなのかは、MOSキャパシタを電気回路の容量に見立てて考えると簡単である。図のようにCCDの電極 φ1の下に信号電荷が蓄積されているが、その部分を一つの電極と仮定することにより、電極φ1と基板の空乏層端で挟まれた、二つの容量CgとCsを直列接続したキャパシタンスモデルとして扱える。CgとCsの接続点が信号電荷のたまる電位の井戸なので、その電圧を Vcとし、信号電荷がない場合を Vc−empとすると、信号電荷量Qcが蓄積されると、

Vc ≈ Vc−emp + Qc

Cg+Cs

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Figure 5:

のように電位の井戸を表すことができる。信号電荷の最大値Qc−fullは、信号電荷が隣の電極にあふれない条件を満たす必要があり、そのときの電位 Vc−fullは隣の電位 VN よりやや高い値で、電位差をもっていなければならない。その電位差 νdは電子の熱エネルギによる拡散が無視できるほど小さいという条件から決まる。このとき、取り扱い電荷量Qc−fullは近似的に、

Qc−full ≈ (Cg + Cs)(Vc−emp − VN − νd)

という簡単な式で近似できる。

3.3 転送効率転送効率とは、信号電荷を転送した後の減少した信号と元の信号の割合である。CCDでは、結晶欠陥や汚染などによる電子のトラップ準位、不均一な構造による電位のムラ (ディップやバリア)があり、転送時間が長くなったり、信号電荷の転送し残しが発生したりして、転送効率が劣化する。しかし、これらによって捕獲される信号電荷の量は限られているので、信号電荷の量が多くなれば、転送効率は向上する。

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Figure 6:

Figure 7:

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4 電荷の検出電荷の検出はCCDイメージセンサのフォトダイオードから、出力部直前まで転送されてきた信号電荷を電気信号に変換する動作である。基本的な原理は転送されてきた電荷をキャパシタ両端の電圧変化に変える方法が使われる。キャパシタ両端の電圧は、蓄積された電荷量に比例する式に従うので、キャパシタに送られてきた信号電荷は電圧の変化になって現れる。すなわち、キャパシタ両端の電圧変化∆VFDは、転送されてきた信号電荷量Qとキャパシタの容量CFDを使って次のような式で表される。

∆VFD = QCFD

この電圧変化を入力抵抗の非常に高いアンプで増幅すると、イメージセンサの外に信号電圧を出力できるようになる。

Figure 8:

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