特殊相対論 - 九州大学(kyushu...
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特殊相対論
基幹物理学II (2017前期) 渡辺
特殊相対性原理 Special theory of Relativity
Einstein (1905)
お互いに等速運動する座標系(慣性系)では物理法則の
形は全く同じになる。(狭義の相対性原理)
光は発光体の速度に関わらず、すべての方向に対して
一定速度で伝わる。(光速度不変の原理)
2つの基本原理
すべての一般自然法則は、慣性座標系(お互いに等速運動する座標系)ではまったく同じ形式の法則になるように構成されていなければならない。その両座標系間の物理量(空間座標と時間)の数学的な関係はローレンツ変換で与えられる。
一般自然法則はローレンツ変換に関して共変(covariant)である。
ローレンツ変換
S座標系: 地上に固定した座標系
(x,y,z,t)
S’座標系: 速度vでx軸方向に移動
する座標系 (x’,y’,z’,t’)
(1) S’系の運動をS系で観測する場合
(2) S系の運動をS’系で観測する場合
,/1
''
22 cu
utxx
22
2
/1
/''
cu
cuxtt
, 'yy , 'zz
,/1
'22 cu
utxx
22
2
/1
/'
cu
cuxtt
, ' yy , ' zz
Maxwell方程式を
共変にする変換
ガリレイ(Galilei)変換
O O
’
v P (x, y, z, t)
(x’, y’, z’, t’)
等速運動
tt
zz
yy
utxx
'
'
'
'
ニュートンの第2法則
2
2
2
2
2
2
)(
)(
'
'
dt
xdm
td
utxdm
dt
xdmFx
慣性座標系(お互いに等速運動する座標系)では運動法則は同じ。
力学の実験結果からは、系が動いているのか静止しているのか言うことはできない。
同じ形
z
y
x, x’
z’
y’
参考:ローレンツ変換式の導出
)(' utxkx
)'( utxkx
O’系のx’はO系からみると、以下の形を取るに違いない(合理的な推論)
k: x、tには依存しないが、uの関数であるかもしれない。
O’系の観測者から見ると、O系は –ut’で動いているので
狭義の相対性原理(p.137 (1))より、O系もO’系も全く同等で、単に u と –u だけが違うだけ。よって、定式は同じ k を用いるべき
次に、時刻 t=t’=0 に発せられた光の信号を両系で観測する場合
光速度不変の原理(p.137 (2))より
ctx '' ctx O’系 :
O系 :
(A.1)
(A.2)
(A.3)
(A.4)
参考:ローレンツ変換式の導出
(A.3) ,(A.4)を(A.1),(A.2)に代入すれば、
)(' ucktct
)(' ucktct
(A.5)
(A.6)
両辺を掛け合わせて、
)( 2222 uckc
k は正であることが要求されるので、
222 1
1
/1
1
cuk
c
u
ここで、
tとt’について解けば、 (A.1),(A.2)に代入すれば、
,/1
/'
22
2
cu
cuxtt
22
2
/1
/''
cu
cuxtt
時間: 動いている時計は遅れる
22
0
/1 cu
tt
: 静止時の時間 0t
ある物理現象に要求される時間(例えば、鼓動の時間間隔)
注) 時間と時刻の違いを明確に!
2
0
22222 tctutc
上図の三角形より
光速度不変 光パルス時計
静止している観測者が見る光の軌跡
ut
u
u
長さ: 動いている物体の長さは縮む
22
0 /1 cuLL
Ref.) Concepts of Modern Physics, 5th ed. (1995)
: 静止時の長さ 0L
ローレンツ収縮
質量: 動いている物質の質量は増加する
22
0
/1 cu
mm
Ref.) Concepts of Modern Physics, 5th ed. (1995)
: 静止質量 0m
検討課題: 人工衛星 (7.5km/sec)の場合の質量増加率は?
エネルギー: エネルギーと質量は等価
2mcE
原子核エネルギー(核分裂・核融合)の源泉は質量エネルギーにあり。
2)( cmE
全エネルギー保存則より、反応の前後に変化した質量(減少)がエネルギーとして放出される。
宇宙線ミューオン
• 火山マグマの調査
• ピラミッドの空洞調査
• 溶鉱炉の劣化状態調査
• 建屋内の鉄筋柱数の調査
• テロ防止(UやPuなどの核物質)
宇宙線のうち約7割がミューオン
1分に1m2あたり約10,000個
物質透過性が高い
質量: 105.66 MeV(電子の約200倍) 電荷: +, -
崩壊形式: + → e+ + ne + n、 - → e- + ne + n
ニュートリノ
宇宙線ミューオンを使った
イメージング
http://legacy.kek.jp/newskek/2002/novdec/muon.html
読売新聞朝刊2012.1.8
ミュー()粒子の寿命
問題: 静止している粒子の寿命は2.2 x 10-6秒である。地上に向かって 0.998cの速度で飛んでくる宇宙線中の粒子の寿命を地上で測定するといくらか?
sec 102.2 6
0
t
sec 34.8sec 108.34998.01
sec 102.2 6
2
6
t
寿命が延びる
移動距離
sec 108.34 6t
km 66.09980 102.2 6 c . h
km 4.109980 108.34' 6 c . h
粒子と一緒に動いている観測者によると、移動距離は縮んでいる(ローレンツ収縮)
1分に1m2あたり10,000個程
陽電子応用例 PET: Positron Emission Tomography
Full body PET scan with 18F-fluorodeoxy glucose (in Wikipedia) Citation: Advancing physics A2
PET scan of a normal brain showing
localized activity when the subject is
reading silently.
科学新聞 2015年5月29日(金)
PETの応用例
カーナビと相対論
GPS (Global Positioning System; 全地球測位システム)
地球を中心とした軌道上にある24個以
上の人工衛星とそこから発信される電波
信号を受け取る地上の受信機からなる。
人工衛星上には精密な原子時計が搭載
3個以上のGPS衛星との距離を知ること
で、受信機の3次元的な位置を特定できる。
)( iri ttcr
GPS衛星が電波を発した時刻
受信機で受信した時刻
光速
距離
Ref.) ニュートン4月号(2004)
1.57542GHz, 1.2276GHz
GPSの原理
GPS衛星1 GPS衛星2
GPS衛星3
カーナビ r1
r2
r3
理想的な場合 (GPS衛星と受信機の時計が正確)
受信機の誤差を考慮した場合(安価な水晶時計使用)
2222
2
2
2
2
2
2
2
2
2
1
2
1
2
1
2
1
)()()(
)()()(
)()()(
zzyyxxr
zzyyxxr
zzyyxxr
NNNN
(x,y,z)
未知数(x,y,z) ⇒ 最小3つのGPS衛星
)( iri ttcr
2222
2
2
2
2
2
2
2
2
2
1
2
1
2
1
2
1
)()()()'(
)()()()'(
)()()()'(
zzyyxxcr
zzyyxxcr
zzyyxxcr
NNNN
GPS衛星の位置はわかっている。
crr ii '
未知数(x,y,z,)
⇒ 4個以上のGPS衛星が
必要
時計の誤差 正確な距離
GPSの概念図
引用:飯島、佐々木、青山著、アビリティ物理 量子論と相対論(共立出版)
「光速度不変の原理」に基づいている。
地球の速度 30km/sec 光速の10-4
衛星の位置によって、GPSからの電波の速度が変化すれば
20 km x 10-4 = 2 kmの誤差となる。
高度
約20,000m
高精度の時刻同期の必要性
GPSに求められる距離の精度: 数 m
時間の精度: 10 n sec (10-8 sec) 光が1 nsec に進む距離
10-9 sec x (3 x 108 ) = 0.3m
10-12の精度の時計を使ったとする。
1日(=86400 sec)動かすと、
誤差: 8.64 x 104 sec x 10-12 = 8.64 x 10-8 sec
距離に換算すると、8.64 x 10-8 sec x 3 x 108 m/s = 25.9 m
数m程度の距離精度を実現するためには、頻繁に衛星の時刻を較正するか、高精度の時計が必要
高精度の原子時計(量子論) 相対論を考慮した補正
GPS衛星の原子時計にずれをもたらす相対論効果
GPS衛星: 高度約2万km, 速度4 km/sec
(1) 特殊相対論による補正
(2) 一般相対論による補正
22
0
/1 cv
tt
“動いている時計は遅れる”
2//1/122/122 cvcv
- 8.4 x 10-11
地表とGPS衛星上での重力ポテンシャルの差により、GPS衛星の時計は地表より早く進む。
102 1027.5 / cU
dtc
v
c
Ud
2
2
2 21
1日(=86400 sec) + 38. 3 sec
約11 kmの誤差
合わせて 対策: 時計にこのオフセットをかける。
太陽におけるエネルギー生成と放出
温度 1500万度
表面6000度
水素: 92.1 %
ヘリウム: 7.8%
圧力: 2500億気圧
密度:鉛の14倍
太陽の燃料: 水素の核融合
太陽の内部で起こっている主要な核融合反応
軽い原子核同士が反応して重い原子核になる。
水素4個 ⇒ ヘリウム原子核
非常にゆっくり起こる
約6億トン/秒の水素が消費
質量ゼロに近い
弱い力
重陽子