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発熱、両肩関節痛、左下肢痛を 主訴に来院した60歳女性の一例
徳之島徳洲会病院 内科
吉村伸大
症例:60歳女性
主訴:発熱、左下肢痛、左肩関節痛
現病歴:ADL自立、SLEと抗リン脂質抗体症候群で当院膠原病内科かかりつけの患者。
3月5日に左肩関節痛と発熱が出現、その後
左下肢にも痛みが広がってきた。整形外科を 受診したが症状は持続し、さらに左下肢の脱力も生じて歩行困難となったため当院を受診。
• 既往歴:子宮筋腫、SLE、抗リン脂質抗体症候群
• 内服歴:(怠薬なし)
プレドニゾロン5㎎、ワーファリン2.5㎎、カルフィーナ0.5μg、 アムロジピン5㎎、ネキシウム20㎎、プラバスタチンナトリウム5㎎、
フォマサック35㎎、イルベタン100㎎
• アレルギー歴:なし
来院時身体所見
• Vital sign:JCS 0 BP 171/111 RR 23/分 BT 39.0℃
SPO2 98% HR 132/分
• 頭頚部:眼瞼結膜蒼白なし リンパ節腫脹なし
• 胸部:呼吸音:清、左右差なし
• 腹部:膨隆・軟、下腹部正中に手術痕あり、圧痛なし
• 皮膚:明らかな創や蜂窩織炎なし、下肢に爪白癬あり、 明らかな皮疹なし
• 四肢:肩関節、膝関節の熱感、発赤、腫脹なし、 左下肢MMT1~2程度
採血検査 190U/I
41U/I
70U/I
218IU/I
433U/I
119U/ml
40U/ml
7.7g/dl
2.7g/dl
0.7mg/dl
30.3㎎1/dl
1.2mg/dl
4.5mg/dl
135.2mEq/l
3.7mEq/l
102.6mEq/l
8.1mg/dl
160mg/dl
23.12mg/dl
CPK
GOT
GPT
LDH
ALP
γ‐GTP
AMY
TP
Alb
T-bil
BUN
Cre
UA
Na
K
Cl
Ca
BS
CRP
WBC
RBC
Hb
Ht
Plt
Ne
Ly
Mo
異型リンパ
血沈/30分
血沈/1時間
血沈/2時間
13390μl
492万/μl
9.8g/dl
31.1%
23.8万/μl
92.8%
4.3%
2.8%
なし
78mm/h
122mm/h
128mm/hr
尿検査
1-4
5-9
1-4
(1+)
1個未満
(1+)
1~4/HPF
尿沈渣
赤血球
白血球
扁平上皮
粘液糸
移行上皮
細菌
顆粒円柱
尿一般
色調
清濁
PH
尿蛋白定性
尿糖定性
ケトン体
潜血
ウロビリノーゲン
黄
軽濁
5.5
2+
1+
(-)
(-)
N
胸部レントゲン検査
Problem list
• #1.原因不明の発熱(4日目)
• #2.大関節の多発関節痛
• #3.肝逸脱酵素上昇
治療経過①
• 3月5日 発熱、肩関節痛、下肢痛出現
• 3月8日 痛みで歩行困難となり来院、入院となる。AIH疑いPSL60㎎で治療開始。
• 3月11日 PSL投与開始して3日目だが発熱は持続しており新たな症状として構音障害も出現。
治療経過②
• 3月11日、血液培養でグラム陽性球菌を認めた。関節液のグラム染色でグラム陽性双球菌を 認めた。
• →侵襲性肺炎球菌感染症と診断。 バンコマイシン1gq12hr+セフトリアキソ2gq12hrで治療開始
• 3月13日、血液培養検査でPISPと判明。肺炎球菌にフォーカスを絞り、抗菌薬をセフトリアキソン2gq12hrのみにして治療を継続。
肩関節CT画像
検査所見
• 全身CT検査:左肩関節周囲に液体貯留あり、
肩甲骨と肋骨の間にも膿瘍が疑われる所見あり。右肩関節にも液体貯留あり。左腹壁に脂肪織濃度上昇認めるが液体貯留なし
• 肩関節穿刺液:莢膜を伴うグラム陽性双球菌を多数認める。
• 尿中肺炎球菌:陽性
• 頭部CT:左内包後脚に高吸収域認める
関節ドレナージ
莢膜を伴うグラム陽性双球菌を多数認める。
培養結果
• 関節液:グラム染色でGPDC、培養でPISP
• 髄液:グラム染色でGPDC、培養で陰性
• 血液培養(3月8日分):培養でPISP4本中2本陽性
• 血液培養(3月11日分):培養でPISP4本中2本陽性
結語
• 侵襲性肺炎球菌による全身感染症の一例を経験した。敗血症における鑑別、治療、対応を学ぶことが出来た。
• 今回、最初に発熱の原因として疑われたのは感染症と膠原病であった。
• 膠原病の治療に反応せず、他の熱源を検索する際に、血液培養検査の結果から速やかに感染症の治療へと方向修正を行うことが出来た。
• 初期治療で抗菌薬を投与する選択肢もあったが、 診断がはっきりしない時点での抗菌薬投与は症状を一部マスクしてしまい、正確な診断を困難にする。