事業の目的・目標 事業の概要2013/01/29  ·...

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統合 BEMSは、ビルと CEMSの間に設置し、 ビルと CEMS 間での効率的な情報の授受、 大口需要家であるビルを特定の地域でビ ル群として管理することにより、デマン ドレスポンスへの対応能力の拡大を図 り、ベンチマーク手法を取り入れたビル 間比較などによるエネルギー情報の見え る化などのサービスを提供する。 また、BEMS 機能の一部をクラウドサービ スとして提供することによりスマート化 を図り、地域ビル群の低炭素化を目指す。 さらに、各種エネルギー情報の把握や自 動制御に重要な役割を果たし、ビル内に 数多く設置されるセンサについて、その 動作の異常の有無を自動的に診断し、継 続的な性能維持の仕組みを提供する。 平成23年度次世代エネルギー・社会システム実証事業成果報告 補助事業者名 :MM42 開発特定目的会社(丸紅株式会社出資) 共同申請者名 :株式会社東芝、三井不動産株式会社、三菱地所株式会社、 エムエムデベロップメント特定目的会社(三菱地所株式会社出資) 補助事業の名称 :Ⅰ-1-1 エネルギーマネジメントシステムの構築 C.業務部門での実証(BEMS(CEMSとの連携のもと))(横浜市) ビル群として管理することにより、CEMS等からの デマンドレスポンス(DR:Demand Response)に 対して大きな調整余力で対応を可能とするビル 群管理センター(以降、統合BEMS)を開発し、み なとみらい地区を対象にビルを接続し、実証す る。 事業の目的・目標 各ビルのエネルギー情報を統合 BEMS で集約し、 巨大な需要家として見なすことにより、デマンド レスポンスに対する調整余力がビル個別に実施 するよりも 5%以上向上することを実証する。平 成 24 年度までは開発とデマンドレスポンスの予 備試験を中心に実施。 事業の概要 図1 統合 BEMS とデマンドレスポンス機能 事業全体イメージと各社分担

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Page 1: 事業の目的・目標 事業の概要2013/01/29  · 者(MM42開発特定目的会社,三井不動産,三菱地所,エムエムデベロップメント特定目的会社)の4棟

統合 BEMSは、ビルと CEMSの間に設置し、

ビルと CEMS間での効率的な情報の授受、

大口需要家であるビルを特定の地域でビ

ル群として管理することにより、デマン

ドレスポンスへの対応能力の拡大を図

り、ベンチマーク手法を取り入れたビル

間比較などによるエネルギー情報の見え

る化などのサービスを提供する。

また、BEMS機能の一部をクラウドサービ

スとして提供することによりスマート化

を図り、地域ビル群の低炭素化を目指す。

さらに、各種エネルギー情報の把握や自

動制御に重要な役割を果たし、ビル内に

数多く設置されるセンサについて、その

動作の異常の有無を自動的に診断し、継

続的な性能維持の仕組みを提供する。

平成23年度次世代エネルギー・社会システム実証事業成果報告

補助事業者名 :MM42開発特定目的会社(丸紅株式会社出資)

共同申請者名 :株式会社東芝、三井不動産株式会社、三菱地所株式会社、

エムエムデベロップメント特定目的会社(三菱地所株式会社出資)

補助事業の名称 :Ⅰ-1-1 エネルギーマネジメントシステムの構築

C.業務部門での実証(BEMS(CEMSとの連携のもと))(横浜市)

事業名称 :ビル群管理センター(統合 BEMS)の開発と実証

ビル群として管理することにより、CEMS等からの

デマンドレスポンス(DR:Demand Response)に

対して大きな調整余力で対応を可能とするビル

群管理センター(以降、統合BEMS)を開発し、み

なとみらい地区を対象にビルを接続し、実証す

る。

事業の目的・目標

各ビルのエネルギー情報を統合 BEMS で集約し、

巨大な需要家として見なすことにより、デマンド

レスポンスに対する調整余力がビル個別に実施

するよりも 5%以上向上することを実証する。平

成 24 年度までは開発とデマンドレスポンスの予

備試験を中心に実施。

事業の概要

図1 統合 BEMSとデマンドレスポンス機能

事業全体イメージと各社分担

Page 2: 事業の目的・目標 事業の概要2013/01/29  · 者(MM42開発特定目的会社,三井不動産,三菱地所,エムエムデベロップメント特定目的会社)の4棟

図2に統合 BEMSと YSCP参加ビルとの接続関係を示す。YSCP参加ビルは、統合 BEMSからのデマンドレ

スポンス要請に対して、負荷設備の電力抑制を行う「省エネ行動型ビル」と、創蓄エネルギー機器を用

いてピークシフトを行う「創蓄エネ型ビル」の 2種類に分類される。特に本補助事業における関連事業

者(MM42開発特定目的会社,三井不動産,三菱地所,エムエムデベロップメント特定目的会社)の4棟

は、省エネ行動型ビルとして、分析・見える化が行うために多量のビルデータをリモート収集可能なシ

ステムを構築する。

CEMS から統合 BEMS 経由で各ビルに対して実施するデマンドレスポンス実証は、フェーズ 1 実証と、フ

ェーズ 2実証の 2つを計画(図3)し、それぞれ以下を実施した。

実証スケジュール

図3 実証スケジュール

7月~9月 10月~12月 1月~3月

平成24年度 平成25年度 平成26年度

試運用試運用実証準備実証準備 デマンドレスポンス実証1PTR方式

デマンドレスポンス実証1PTR方式

4月~9月 10月~3月 4月~9月 10月~3月

予備期間予備期間デマンドレスポンス実証2CCP方式

デマンドレスポンス実証2CCP方式

事業全体イメージと各社分担

図2 統合 BEMSと YSCP参加ビルの接続検証

創蓄エネ型ビル創蓄エネ型ビル

創蓄エネ型マンション(2棟)創蓄エネ型マンション(2棟)

創蓄エネ型ビル創蓄エネ型ビル

創蓄エネ型ビル創蓄エネ型ビル

省エネ行動型ビル省エネ行動型ビル

創蓄エネ型ビル創蓄エネ型ビル

省エネ行動型ビル省エネ行動型ビル省エネ行動型ビル省エネ行動型ビル省エネ行動型ビル省エネ行動型ビル

CEMS

(東芝)

統合BEMS

(東芝)

オフィスビルBEMS

MMGCT

(MM42開発特定目的会社)※丸紅が出資

BEMS

オフィスビルBEMS

横浜三井ビルディング

(三井不動産)

オフィスビルBEMS

横浜ランドマークタワー

(三菱地所)

商業施設BEMS

MM34街区 マークイズみなとみらい

(エムエムデベロップメント特定目的会社)※三菱地所が出資

平成23年度 平成24年度

次世代型BEMS

(明電舎,NEC)

次世代型BEMS

(東芝,大成建設)

商業施設BEMS

(日揮,日揮情報システム)

FEMS

(住友電工,明電舎)

MEMS

(東芝,三井不動産レジデンシャル,JX-E)

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平成 23年度の開発では、統合 BEMSと接続し、通信仕様の確認を実施した。また、照明の照度コントロ

ールを実現するための画像人感センサを設置導入した。さらに、収集データを Webコンテンツとして表

示する機能(エネルギー見える化機能)の確認を完了した。

※1:建物概要および外観イメージ

みなとみらいグランドセントラルタワー/MM42開発特定目的会社(丸紅株式会社が 100%出資)

所在地 神奈川県横浜市西区みなとみらい四丁目 6番 2 (42街区)

交通 横浜高速鉄道みなとみらい線 「みなとみらい」駅徒歩 2分、「横浜」駅徒歩 11分

主要用途 事務所、店舗、駐車場

敷地面積 12,929.99m²(3,911.32坪)

建築面積 7,737.85m²(2,340.69坪)

延床面積 114,539.16m²(34,648.09坪)

最高高さ 123.60m

階数 地上 26 階、地下 2 階、塔屋 1 階、事務所(地上 3 階〜25 階)、店舗(地上 1 階〜2 階)、駐

車場(地下 1階)

構造 地上部:鉄骨造、地下部:鉄骨鉄筋コンクリート造

耐震性能 制震構造(オイルダンパ、アンボンドブレース、CFT柱)

エレベータ オフィス用 22基(低層用 7基、中層用 8基、高層用 7基)、店舗用 3基、人荷用兼非常用 2

駐車場台数 450台(うち平置 44台)

事業主 MM42開発特定目的会社(丸紅株式会社 出資)

設計・監理 株式会社東畑建築事務所 東京事務所

施工 鹿島建設株式会社 横浜支店

平成23年度の成果

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平成24年度の成果

・デマンドレスポンス実証(PTR冬季)の実施

2013 年 1 月 7 日より、フェーズ 1 冬期のデマンドレスポンス実証実験を開始した。今回のデマンド

レスポンス実証では、6需要家が参加した。

(1) 実証結果※5

1月度は 7回(2月度はデマンドレ

スポンス要請先を分け3回要請)の

デマンドレスポンス要請が CEMS よ

り行われ、統合 BEMS より各需要家

に配送する実証を実施した。

表1に実証結果を示す。表1では、

地域単位の電力実績(CEMSが統

合 BEMSより取得する電力実績)で

はなく、統合 BEMS配下の全需要家の実績の総和としている。

削減量および削減率は、ベースラインからの結果であり、ベースラインの計算式に依存する部分があ

るが、デマンドレスポンスの制度としては、ベースラインを基準にインセンティブの付与を行うもの

のため、デマンドレスポンス実績としてはベースラインからの差分で良い。しかし、PTR等のインセ

ンティブ型のデマンドレスポンス方式では、需要家のモティベーション向上のため、需要家に有利な

条件を使用するのが一般的であるため、純粋な削減率とは言い難い点がある。

そこで、ベースラインからの差分よりも現実

的な方法として、今回の実証期間を通じたデ

マンドレスポンス実施日とデマンドレスポ

ンス非実施日の受電電力量の差分による効

果量の算出した結果を表2に示す。

この結果の方が実際のデマンドレスポンスによる需要家の効果量に近いが、非実施日は気温が高く、

空調等での消費電力がデマンドレスポンス実施日よりも低くなることを考えると、実際の効果量はも

う少し高いと考えられる。

※5:実証試験における削減量は、デマンドレスポンス実施による単独値ではなく、デマンドレスポンス発行時

間帯が帰宅時に掛かることや入居事業者(テナント)の突発的な使用状況の変化も含まれている。

(2) ベースラインの評価

年末年始(特異的な電力需要となる日)の影響

現行のベースライン値の算出方法では、年末年始の平日(12/31,1/2~4)を含むため、ベースラ

イン自体が低めとなる。

詳細説明

表1 全需要家のデマンドレスポンス1月度実績(1時間平均/日付別)

実施日 ベースライン

[kWh]

電力量

[kWh]

削減量

[kWh] 削減率

2013/01/09(水) 7,302.2 6,020.0 1,282.2 17.6%

2013/01/10(木) 7,324.3 6,072.7 1,251.6 17.1%

2013/01/11(金) 7,294.4 6,071.7 1,222.8 16.8%

2013/01/16(水) 7,226.7 5,931.3 1,295.3 17.9%

2013/01/17(木) 7,269.5 5,673.7 1,595.8 22.0%

2013/01/18(金) 7,243.7 6,213.7 1,030.1 14.2%

2013/01/29(火) 7,017.0 6,076.3 940.7 13.4%

平均 7,239.69 6,008.5 1,231.2 17.01%

表2 DR実施日と DR非実施日の電力需要の比較

12.14%DRによる削減率

※DR効果量÷DR非実施日の電力需要平均

830.02 差分(DR効果量) [kWh]

6,838.52 DR非実施日の電力需要の平均 [kWh]

6,008.50 DR実施日の電力需要平均 [kWh]

12.14%DRによる削減率

※DR効果量÷DR非実施日の電力需要平均

830.02 差分(DR効果量) [kWh]

6,838.52 DR非実施日の電力需要の平均 [kWh]

6,008.50 DR実施日の電力需要平均 [kWh]

Page 5: 事業の目的・目標 事業の概要2013/01/29  · 者(MM42開発特定目的会社,三井不動産,三菱地所,エムエムデベロップメント特定目的会社)の4棟

これらの日では、特にオフィスビルの受電実績

は、12 月 1 日~1 月 29 日までの最大需要の日と

比較して、表3のように大きく下がっており、こ

の実績が実証期間中を通じて影響を与えている。

また、デマンドレスポンス実施日がベースライン

計算から除外されるため、実証が進むにつ

れ、ベースラインが長期間更新されず、実需との剥離が大きくなる。

年末年始の平日を含めない形でベースラインを再計算すると平均削減率は、22.91%となる。

実施時間帯の影響

図7にデマンドレスポンス実施日である 2013年 1月 9日の 17:00~20:00のデマンドレスポンス実

績を示す。今回採用したベースライン計算

式では、デマンドレスポンス実施時間帯を

通じて同じ値となるため、時間経過ともに

ベースラインとの差分が大きく(削減量/

削減率が上昇)している。

これは、テナントが入居するオフィスビル

が、入居者の帰宅等での自然減の影響が出

ているためで、例えば、デマンドレスポン

スを実施していない日(1/8)では、17:00

~20:00の間で、みなとみらい地区全体で(オフィスビルはみなとみらい地区に集中)で 20%程度、

オフィスビルでは 30%~40%程度の電力需要の減少がある。

・まとめ

今年度事業において、統合 BEMS の規模拡大および機能強化により、MM21 地区 34 街区商業施設(マ

ークイズみなとみらい)など、合計 9棟のビル/マンションとの接続を開始した。

2013年 1月より CEMSとの連携によるデマンドレスポンス実証を開始し、デマンドレスポンス実証の

効果としては、ベースラインからの差分として 17.01%、デマンドレスポンス非実施日との比較で

12.14%の削減となった。また、2013 年度以降、統合 BEMS の機能の高度化に向けた開発についても

着実に進めた。

今後、2013 年 1 月より実施したデマンドレスポンス実証で明らかになったインセンティブなどのデ

マンドレスポンス条件の課題について、実用時に近い形での見直し行い、2013 年 7 月より夏季実証

を開始するとともに、ネガワット取引によるデマンドレスポンス実証(フェーズ 2)に向けた制度設

計/機能開発を進め、2013年 12月の実証開始を目指す。

同時に、統合 BEMSの機能強化も進めよりデマンドレスポンス対応力の強化を進める。

詳細説明

表3 年末年始平日のオフィスビルの電力需要(最大

需要との比較)

44.1%33.3%85.9%1/4

36.4%33.3%69.4%1/3

33.1%22.2%44.7%1/2

33.9%22.2%47.1%12/31

CビルBビルAビル日付

44.1%33.3%85.9%1/4

36.4%33.3%69.4%1/3

33.1%22.2%44.7%1/2

33.9%22.2%47.1%12/31

CビルBビルAビル日付

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

0:00 2:00 4:00 6:00 8:00 10:00 12:00 14:00 16:00 18:00 20:00 22:00

みなとみらい地区 ベースライン電力量(30分積算値)

図7 2013年 1月 9日の DR実績